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特許7420904エポキシ樹脂組成物、電子部品実装構造体およびその製造方法
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  • 特許-エポキシ樹脂組成物、電子部品実装構造体およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物、電子部品実装構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20240116BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240116BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240116BHJP
   C08K 7/26 20060101ALI20240116BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240116BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H01L23/30 R
C08L63/00 C
C08K7/26
H01L23/12 501P
C08G59/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022198771
(22)【出願日】2022-12-13
(62)【分割の表示】P 2019523484の分割
【原出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2023036699
(43)【公開日】2023-03-14
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2017114687
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 康仁
(72)【発明者】
【氏名】菅 克司
(72)【発明者】
【氏名】大井 陽介
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-130796(JP,A)
【文献】特開2009-009110(JP,A)
【文献】特開平08-034608(JP,A)
【文献】特開2007-204510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
C08L 63/00
C08K 7/26
H01L 23/12
C08G 59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンアウトパネルレベルパッケージ用またはファンアウトウエハレベルパッケージ用の圧縮成形用材料である、エポキシ樹脂と、中空粒子を含み得る溶融シリカと、硬化剤及び/又は硬化促進剤と、を含むエポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物中の前記溶融シリカの含有量が、70~90質量%であり、
前記エポキシ樹脂組成物の硬化物を研磨して得られる研磨面であって、直径1.5μmより大きい孔を有さない領域における算術平均粗さRaが0.2μm以下になるまで研磨された研磨面において、25mmの範囲に観測される前記中空粒子の断面に由来する直径5μmより大きい孔の数が、1個以下であり、
前記エポキシ樹脂組成物を150℃で1時間熱硬化することにより形成された硬化物に前記研磨面を形成する、エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記25mmの範囲に観測される前記中空粒子の断面に由来する直径2μmより大きい孔の数が、1個以下である、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
溶融シリカの最大粒径が25μm以下であり、平均粒径が1μmより大きい、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記研磨面は再配線層を形成するための研磨面である、請求項1~3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
電子部品と、
前記電子部品を封止するエポキシ樹脂組成物の硬化物と、を具備し、
前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、中空粒子を含み得る溶融シリカと、硬化剤及び/又は硬化促進剤と、を含み、
前記エポキシ樹脂組成物中の前記溶融シリカの含有量が、70~90質量%であり、
前記硬化物が、直径1.5μmより大きい孔を有さない領域における算術平均粗さRaが0.2μm以下になるまで研磨された研磨面を有し、
前記研磨面において、25mmの範囲に観測される前記中空粒子の断面に由来する直径5μmより大きい孔の数が、1個以下である、ファンアウトパネルレベルパッケージまたはファンアウトウエハレベルパッケージである電子部品実装構造体。
【請求項6】
前記研磨面に再配線層が形成されている、請求項5に記載の電子部品実装構造体。
【請求項7】
電子部品と、請求項1~4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物と、を準備する工程と、
前記エポキシ樹脂組成物で前記電子部品を封止するとともに前記エポキシ樹脂組成物を硬化させ、前記電子部品と前記エポキシ樹脂組成物の硬化物とを含む封止体を形成する工程と、
前記硬化物の一部を研磨して研磨面を形成する工程と、
前記研磨面に再配線層を形成する工程と、を含む、ファンアウトパネルレベルパッケージまたはファンアウトウエハレベルパッケージである電子部品実装構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、電子部品実装構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製品の薄型化、小型化が求められており、パネルレベルパッケージ(PLP)およびウエハレベルパッケージ(WLP)といわれるパッケージ技術が注目されている。PLPおよびWLPの中でも、ファンアウトパネルレベルパッケージ(FOPLP)およびファンアウトウエハレベルパッケージ(FOWLP)は、半導体チップ等の外側にまで再配線を形成することができるため、実装面積を半導体チップ等の面積に比べて大きくすることが可能である。FOPLPやFOWLPはパッケージ基板を用いないことから、従来の半導体製品に比べて薄型であり、さらに配線長が短くなるため、伝送速度を高速化することもできる。
【0003】
半導体封止材には、電気絶縁性、耐熱性、耐湿性などが求められており、硬化性のエポキシ樹脂およびフィラーと称される無機物を含む組成物を用いることが主流である。フィラーの含有量を大きくすることで、半導体封止材の熱膨張率を低く抑えることができる。
【0004】
半導体封止材の硬化物を研削して薄型化を図る場合、研磨面には高い平坦性が求められる。特許文献1は、機能素子のウエハ上に絶縁樹脂層を形成した後、犠牲層と呼ばれる樹脂層で覆った後、絶縁樹脂層および犠牲層を研削または研磨し、表面を平坦化する技術を提案している。犠牲層は、その後、除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2013-528318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子機器の高機能化に伴い、半導体製品においては高密度な配線が求められている。再配線層の回路幅/回路間隔(L/S)は、5μm/5μmに達しており、更に微細化する傾向にある。平坦な支持体上に再配線層を形成してからフリップチップ接続して樹脂封止する組み立て方法では、配線パターンは一般には安定である。一方、半導体素子等の電子部品を樹脂封止後に封止材を研磨して研磨面に再配線層を形成する場合、微細な再配線層を形成するためには、研磨面に高い平坦性が求められる。平坦な支持体上に再配線層を形成してからフリップチップ接続して樹脂封止する組み立て方法であっても、両面に再配線層を形成するような場合は、他方の再配線層は封止材表面を研磨して形成するので、同様に研磨面に高い平坦性が求められる。
【0007】
しかし、半導体封止材の硬化物を研磨すると、研磨面に孔が形成され、凹凸が生じることがある。研磨面における凹凸は、フィラーの脱落などにより生じると考えられている。論理上は、フィラーの粒径を小さくすればフィラーに由来する凹凸を小さくすることができるが、フィラーを微小化すると半導体封止材が高粘度化して作業性が低下するため含有量をあげることができず、微小化には限界がある。すなわち、フィラーの粒径を制御することにより研磨面の凹凸を抑制することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、エポキシ樹脂と、中空粒子を含み得る溶融シリカと、硬化剤及び/又は硬化促進剤と、を含むエポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物を研磨して得られる研磨面において、25mmの範囲に観測される前記中空粒子の断面に由来する直径5μmより大きい孔の数が、1個以下である、エポキシ樹脂組成物に関する。
【0009】
本発明の別の側面は、電子部品もしくは基板と、前記電子部品もしくは基板を封止するエポキシ樹脂組成物の硬化物と、を具備し、前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、中空粒子を含み得る溶融シリカと、硬化剤及び/又は硬化促進剤と、を含み、前記硬化物が、研磨面を有し、前記研磨面において、25mmの範囲に観測される前記中空粒子の断面に由来する直径5μmより大きい孔の数が、1個以下である、電子部品実装構造体に関する。
【0010】
本発明の更に別の側面は、電子部品もしくは基板と、上記エポキシ樹脂組成物と、を準備する工程と、前記エポキシ樹脂組成物で前記電子部品もしくは基板を封止するとともに前記エポキシ樹脂組成物を硬化させ、前記電子部品もしくは基板と前記エポキシ樹脂組成物の硬化物とを含む封止体を形成する工程と、前記硬化物の一部を研磨して研磨面を形成する工程と、前記研磨面に再配線層を形成する工程と、を含む電子部品実装構造体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硬化後、研磨されたときに平坦性の高い研磨面を形成し得るエポキシ樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、平坦性の高い研磨面を有する電子部品実装構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1で得られた研磨面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を用いて撮影した画像であり、中空粒子の断面に由来する孔を示す図である。
図2】実施例2で得られた研磨面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を用いて撮影した画像であり、中空粒子の断面に由来する孔を示す図である。
図3】実施例3で得られた研磨面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を用いて撮影した画像であり、中空粒子の断面に由来する孔を示す図である。
図4】比較例1で得られた研磨面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を用いて撮影した画像であり、中空粒子の断面に由来する孔を示す図である。
図5】比較例2で得られた研磨面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を用いて撮影した画像であり、中空粒子の断面に由来する孔を示す図である。
図6】比較例3で得られた研磨面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を用いて撮影した画像であり、中空粒子の断面に由来する孔を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係るエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、中空粒子を含み得る溶融シリカと、硬化剤及び/又は硬化促進剤とを含む。エポキシ樹脂組成物の硬化物を研磨して得られる研磨面において、25mmの範囲に観測される中空粒子の断面に由来する直径5μmより大きい孔の数は、1個以下であり、0.1個以下が好ましく、直径5μmより大きい孔が実質的に存在しないことがより好ましい。このような研磨面は、微細な凹凸をほとんど有さないため、例えば再配線層を形成するためのコーティング材料の膜を形成するのに適している。平坦性の高い研磨面にコーティング材料を塗布する場合、コーティング材料の膜に平坦性が踏襲され、膜表面の平坦性も高くなる。
【0014】
なお、中空粒子の断面に由来する孔とは、貫通孔ではなく、中空粒子の中空に由来する窪みを意味する。また、孔が円形でないときは、孔の最大径を孔の直径と見なす。
【0015】
エポキシ樹脂組成物の硬化物の研磨面において、25mmの範囲に観測される中空粒子の断面に由来する孔の数は、例えば、超深度カラー3D形状測定顕微鏡(例えば(株)キーエンス製、VK-9510)により測定することができる。具体的には、研磨面から無作為に選択される25mmの範囲の10領域において、中空粒子の断面に由来する孔の直径および個数を測定し、所定の大きさの孔の個数の平均値を求めればよい。孔の直径もしくは最大径についても同様の装置により測定すればよい。
【0016】
球状溶融シリカは、例えば、粉砕したシリカ粉末を高温の火炎中で溶融し、表面張力により球状化させたものである。シリカの溶融時に気体が混入することで、中空部を含む中空粒子が副生成物として生成する。そのため、エポキシ樹脂組成物の硬化物には、中空粒子が含まれ得る。中空粒子を含む硬化物を研磨すると、研磨面には、中空粒子の断面に由来する孔が形成される。このような孔の存在により、研磨面に微細な凹凸が形成される。したがって、微細な凹凸の形成を回避するには、中空粒子を制御することが有効である。
【0017】
エポキシ樹脂組成物の硬化物の研磨面において、25mmの範囲に観測される中空粒子の断面に由来する孔の数を測定するときには、エポキシ樹脂組成物を例えば150℃で1時間熱硬化させて硬化物を形成すればよい。150℃で1時間熱硬化する前に、例えば100~125℃で10~20分間加熱してもよい。
【0018】
研磨面の形成方法は、特に限定されないが、表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)が0.2μm以下の領域が形成されるまで硬化物を研磨して、研磨面を形成することが好ましい。表面粗さは、研磨面のうち、直径1.5μmより大きい孔を有さない領域で測定すればよい。表面粗さは、JIS B0601(1994)に準拠した測定距離100μmの線粗さとして測定すればよく、例えば、超深度カラー3D形状測定顕微鏡(例えば(株)キーエンス製、VK-9510)により測定することができる。
【0019】
エポキシ樹脂組成物は、電子部品の封止材として用い得る。中でも、エポキシ樹脂組成物は、PLP、WLPといったパッケージ用途での封止材として用いられる圧縮成形用材料として適している。ただし、成形方法は圧縮成形に限るものではなく、印刷成形、トランスファー成形、ディスペンサなどによる塗布成形などであってもよい。このような成形用材料には、液状のエポキシ樹脂組成物、半硬化状態(いわゆるBステージ)のエポキシ樹脂組成物、シート状に成形されたエポキシ樹脂組成物、顆粒状に造粒されたエポキシ樹脂組成物などが含まれる。
【0020】
コーティング材料は、再配線形成用材料であり得る。WLPの中のFOWLPや、PLPの中のFOPLPでは、研磨面に微細な再配線層が形成される。微細な凹凸をほとんど有さず、平坦性の高い研磨面に再配線形成用材料を塗布する場合、再配線形成用材料の膜表面の平坦性も高くなる。よって、研磨面に微細な再配線層をより正確に形成することが容易となり、再配線の断線も生じにくい。
【0021】
本実施形態に係るエポキシ樹脂組成物は、大面積の電子部品もしくは基板を封止するのに適している。また、エポキシ樹脂組成物は、半導体素子等を搭載した電子部品もしくは基板に対してアンダーフィルとオーバーモールドとを一括して行う場合の封止材(モールドアンダーフィル材)としても適している。なお、本実施形態において、基板とは、電子部品を具備する基板、電子部品の集合体もしくは電子部品そのものを意味する。
【0022】
大面積の基板は、例えばウエハレベルパッケージ(WLP)もしくはパネルレベルパッケージ(PLP)といったパッケージを形成し得る。中でもFOPLPおよびFOWLPは、より大面積の再配線層を形成し得る点で注目されている。大面積の基板とは、直径200mm(8インチ)以上もしくは直径300mm (12インチ)以上のウエハ、面積30000mm以上のパネルもしくはウエハ、300mm角以上(例えば320mm×320mm)もしくは400mm角以上(例えば410mm×515mm、508mm×610mm、500mm×510mm、610mm×457mm)のサイズのパネル等であり得る。基板の片面あたり、エポキシ樹脂組成物により封止される領域の面積は、基板面積の例えば90%以上であればよく、片面封止であってもよく、両面封止であってもよい。
【0023】
基板には、ウエハおよびパネルの他に、電子部品を具備するガラス基板、樹脂基板、プリント配線基板等も包含される。ウエハとしては、シリコンウエハ、サファイアウエハ、化合物半導体ウエハなどが挙げられる。樹脂基板としては、ビスマレイミドトリアジン基板、ポリイミド基板、フッ素樹脂基板などが挙げる。
【0024】
エポキシ樹脂組成物の硬化物を研磨して得られる研磨面において、25mmの範囲に観測される中空粒子の断面に由来する直径5μmより大きい孔の数は、1個以下であり、0.1個以下がより好ましく、実質的には存在しないことが最も好ましい。また、直径3μmより大きい孔の数は、1個以下が好ましく、0.1個以下がより好ましく、直径3μmより大きい孔は実質的に存在しないことが最も好ましい。更には、直径2μmより大きい孔の数は、2個以下が好ましく、1個以下がより好ましく、0.1個以下がさらに好ましく、直径2μmより大きい孔は実質的に存在しないことが最も好ましい。これにより、回路幅/回路間隔(L/S)が2μm/2μmよりも微細な再配線層を研磨面に形成することも容易となる。
【0025】
なお、エポキシ樹脂組成物を150℃で1時間熱硬化させて得られた硬化物の研磨面から無作為に選択される25mmの範囲の10領域において、直径5μmより大きい孔(または直径3μmより大きい孔、もしくは直径2μmより大きい孔)が観測されない場合、エポキシ樹脂組成物は、実質的に直径5μm(または3μmもしくは2μm)より大きい中空を有する中空粒子を含まないと見なすことができる。
【0026】
次に、本発明の実施形態に係る電子部品実装構造体は、電子部品もしくは基板と、電子部品もしくは基板を封止するエポキシ樹脂組成物の硬化物とを具備する。電子部品は、例えば半導体チップを含むデバイスであり得るが、特に限定されない。エポキシ樹脂組成物の硬化物は、研磨面を有する。
【0027】
研磨面において、算術平均粗さ(Ra)は、0.2μm以下が好ましく、0.15μm以下がより好ましい。
【0028】
次に、本発明の実施形態に係る電子部品実装構造体の製造方法は、(i)電子部品もしくは基板と、上記エポキシ樹脂組成物とを準備する工程と、(ii)エポキシ樹脂組成物で電子部品もしくは基板を封止するとともにエポキシ樹脂組成物を硬化させ、電子部品もしくは基板とエポキシ樹脂組成物の硬化物とを含む封止体を形成する工程と、(iii)硬化物の一部を研磨して研磨面を形成する工程と、(iv)研磨面にコーティング材料膜もしくは再配線層を形成する工程とを含む。
【0029】
以下、エポキシ樹脂組成物をFOPLPやFOWLPの圧縮成形用材料(封止材)として用いる場合を例にとって説明する。
【0030】
工程(i)
電子部品としては、例えば、樹脂フィルム上に配列された複数の個片化された半導体チップの集合体が準備される。このような集合体は、例えば、半導体ウエハをダイシングで個片化した後、樹脂フィルムに載置することにより準備される。
【0031】
エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、中空粒子を含み得る溶融シリカと、硬化剤及び/又は硬化促進剤とを含む組成物として調製される。
【0032】
工程(ii)
エポキシ樹脂組成物による電子部品の封止は、例えば、圧縮成形により行われるが、成形方法は圧縮成形に限るものではなく、印刷成形、トランスファー成形、ディスペンサなどによる塗布成形などであってもよい。圧縮成形では、例えば、金型内に電子部品とエポキシ樹脂組成物とが配置され、所定の圧力下でエポキシ樹脂組成物が加熱される。エポキシ樹脂組成物が硬化することにより、封止体が形成される。
【0033】
硬化条件は、特に限定されないが、硬化を十分に進行させるためには、加熱(成形時加熱)と後硬化とを行うことが好ましい。
【0034】
加熱(成形時加熱)は成形方法により異なるが、50~200℃で行うことが好ましく、70~180℃で行うことがより好ましい。加熱の時間は成形方法により異なるが、1秒~120分が好ましく、3秒~30分がより好ましい。
【0035】
後硬化は成形時加熱の条件などにより異なるが、80~200℃で行うことが好ましく、100~180℃で行うことがより好ましい。後硬化の時間は成形時加熱条件などにより異なるが、10~300分間が好ましく、30~180分間がより好ましい。
【0036】
工程(iii)
次に、エポキシ樹脂組成物の硬化物の一部を研磨して、再配線層を形成するための研磨面を形成する。研磨は、封止体の片面だけに対して行ってもよく、両面に対して行ってもよい。すなわち、必要に応じて、封止体の両面に再配線層を形成してもよい。このとき、研磨面のRaが0.2μm以下、更には0.15μm以下になるまで硬化物を研磨することが好ましい。研磨はグラインダーなどの研磨機を用いて機械的研磨を実施してもよいし、化学的研磨を実施してもよい。
【0037】
工程(iv)
研磨面には、例えば、コーティング材料もしくは再配線形成用材料の膜が形成される。コーティング材料もしくは再配線形成用材料の膜を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工、スピンコート法、ダイコート法、スプレーコート法などにより、コーティング材料もしくは再配線形成用材料を塗布する方法などが挙げられる。研磨面は、平坦性が高いため、コーティング材料もしくは再配線形成用材料の膜を均一な厚みで容易に形成することができる。再配線(RDL)の形成、バンプ形成などが行われた後、ダイシングを行えば、個片化されたデバイス(電子部品実装構造体)が得られる。
【0038】
次に、エポキシ樹脂組成物を構成する材料について更に説明する。
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂としては、特に限定されないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビスフェノール型エポキシ樹脂が部分縮合したオリゴマー混合物;ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレン型エポキシ樹脂等のフルオレン型エポキシ樹脂;1,6-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ナフタレン等のナフタレン型エポキシ樹脂;ビフェニル型またはテトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂;トリグリシジル-p-アミノフェノール(p-アミノフェノール型エポキシ樹脂)などのアミノフェノール型エポキシ樹脂;ジグリシジルアニリンなどのアニリン型エポキシ樹脂;ジグリシジルオルソトルイジンなどのトルイジン型エポキシ樹脂;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどのジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジエポキシリモネン等の脂環式エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル等のトリメチロールアルカン型エポキシ樹脂;ポリエーテル型エポキシ樹脂;シリコーン変性エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;カテコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエーテル、2,5-ジイソプロピルヒドロキノンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル等のベンゼン環を1個有する一核体芳香族エポキシ樹脂類;これらの核水添型エポキシ樹脂などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂が耐湿性の点でさらに好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
エポキシ樹脂組成物中、エポキシ樹脂の含有量は、耐熱性、耐湿性、電気絶縁性などに優れた硬化物を得るために、1~30質量%であることが好ましく、3~10質量%であることがより好ましい。
【0040】
(溶融シリカ)
エポキシ樹脂組成物には、エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱膨張率を低く抑えるために、溶融シリカが含まれる。溶融シリカとしては、球状溶融シリカ、破砕溶融シリカなどを用いることができる。流動性の点からは球状溶融シリカが好ましい。球状溶融シリカとしては、粉砕したシリカ粉末を高温の火炎中で溶融し、表面張力により球状化させたものが主流である。
【0041】
球状溶融シリカには、溶融時に気体が混入することで、中空部を含む中空粒子が副生成物として生成する。溶融シリカを含むエポキシ樹脂組成物の硬化物を研磨して得られる研磨面の中空粒子の断面に由来する孔の直径は、溶融シリカの粒径にも影響される。中空粒子の断面に由来する孔の直径を小さくする観点から、溶融シリカの平均粒径は、10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましい。ただし、エポキシ樹脂組成物の高粘度化を抑制するとともに溶融シリカの含有量を高める観点から、溶融シリカの平均粒径は1μmより大きいことが好ましく、2μmより大きいことがより好ましい。
【0042】
硬化前のエポキシ樹脂組成物に含まれる溶融シリカの平均粒径は、例えば、体積粒度分布の累計体積50%における粒径(D50)として求められる。平均粒径(D50)は、レーザー回折式の粒度分布測定装置を用いて、レーザー回折法によって測定すればよい。硬化前のエポキシ樹脂組成物は、その性状にかかわらず、エポキシ樹脂などを溶解する溶剤を用いて溶融シリカのみを分離可能である。
【0043】
また、中空粒子の断面に由来する孔の直径を小さくする観点から、溶融シリカの最大粒径は、25μm以下が好ましく、20μm以下であることがより好ましい。なお、トップカットされた溶融シリカを用いる場合は、最大粒径はトップカット値を意味する。
【0044】
溶融シリカの粒径は、例えば、風力による精密分級により調整することができる。また破壊分級、湿式分級などの精密分級で、大きい中空を有する粒子を選択的に除外することもできる。
【0045】
エポキシ樹脂組成物中の溶融シリカの含有量は、50~95質量%であることが好ましく、70~90質量%であることがより好ましい。
【0046】
(硬化剤)
エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤としては、酸無水物、フェノール樹脂、アミン化合物などを用いることができる。
【0047】
酸無水物としては、特に限定されないが、例えば、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、アルキルヘキサヒドロ無水フタル酸(例えばメチルヘキサヒドロ無水フタル酸)、テトラヒドロ無水フタル酸、アルキルテトラヒドロ無水フタル酸(例えば3-メチルテトラヒドロ無水フタル酸)、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、無水コハク酸、無水メチルナジック酸、無水トリメリット酸、無水ピロメット酸、メチルノルボルナン-2,3-ジカルボン酸などを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
フェノール樹脂としては、特に限定されないが、フェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノールノボラック樹脂は、フェノール類またはナフトール類(例えば、フェノール、クレゾール、ナフトール、アルキルフェノール、ビスフェノール、テルペンフェノール、ナフトールなど)と、ホルムアルデヒドとを、縮合重合させたものである。より具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ブチルフェノールノボラック等のアルキルフェノールノボラック樹脂、ビフェニルフェノールノボラック樹脂、テルペンフェノールノボラック樹脂、α-ナフトールノボラック樹脂、β-ナフトールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ-o-ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ-m-ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ-p-ヒドロキシフェニル)メタンなどが挙げられる。これらのうち耐水性の観点からはナフトールノボラック樹脂が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、テトラメチルジアミノジフェニルメタン、テトラエチルジアミノジフェニルメタン、ジエチルジメチルジアミノジフェニルメタン、ジメチルジアミノトルエン、ジアミノジブチルトルエン、ジアミノジプロピルトルエン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジトリルスルホン、ジエチルジアミノトルエン、ビス(4-アミノ-3-エチルフェニル)メタン、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエートなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
硬化剤は、エポキシ基1当量に対して、硬化剤の官能基の当量数が0.05~1.5当量、さらには0.1~1.2当量となる量を用いることが好ましい。これにより、エポキシ樹脂組成物の硬化性が高くなり、硬化物の強度が高くなる。
【0051】
(その他)
エポキシ樹脂組成物には、エポキシ樹脂、溶融シリカ、硬化剤以外に、硬化促進剤、シランカップリング剤などが含まれてもよい。カーボンブラック、消泡剤、レベリング剤、顔料、応力緩和剤、プレゲル化剤、イオンキャッチャーなどを目的に応じて、適量添加することもできる。
【0052】
硬化促進剤としては、特に限定されないが、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、有機金属化合物、ホスホニウム塩系硬化促進剤、双環式アミジン類とその誘導体、有機金属化合物もしくは有機金属錯体、ポリアミンの尿素化物などが挙げられる。硬化促進剤は、潜在性を有することが好ましい。潜在性硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール系促進剤、リン系促進剤、アミン系硬化促進剤、マイクロカプセル型硬化促進剤などが挙げられる。硬化促進剤を用いる場合、配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1~40質量部が好ましく、1~30質量部がより好ましい。
【0053】
イミダゾール系硬化促進剤としては、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2- ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール等の2-置換イミダゾール化合物、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト等のトリメリット酸塩、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2, 4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン等のトリアジン付加物、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0054】
リン系硬化促進剤としては、トリブチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン化合物、 トリフェニルホスフィン等のトリアリールホスフィン化合物が挙げられる。
【0055】
アミン系硬化促進剤としては、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミンおよび4,4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。アミン系硬化促進剤は、アミンアダクトであってもよい。
【0056】
有機金属化合物もしくは有機金属錯体としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ 、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)およびトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
【0057】
マイクロカプセル型硬化促進剤としては、例えば、アミン化合物の粉末をエポキシ樹脂中に分散した微粒子組成物等を使用することができる。アミン化合物は、所望の増粘倍率に基づいて選択すればよい。アミン化合物としては、脂肪族第一アミン、脂環式第一アミン、芳香族第一アミン、脂肪族第二アミン、脂環式第二アミン、芳香族第二アミン、イミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、これらの化合物とカルボン酸、スルホン酸、イソシアネートまたはエポキシ化合物との反応生成物等が挙げられる。これらは1種または2種以上を併用することができる。例えば、脂肪族第一アミン、脂環式第一アミン、芳香族第一アミン、脂肪族第二アミン、脂環式第二アミン、芳香族第二アミン、イミダゾール化合物またはイミダゾリン化合物と上記反応生成物とを併用してもよい。アミン化合物の粉末の平均粒径は、50μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。ここでも平均粒径は、体積粒度分布の累計体積50%における粒径(D50)として求められる。アミン化合物の粉末は、融点または軟化点が60℃以上であることが、室温もしくは25℃での増粘を抑える観点から好ましい。
【0058】
シランカップリング剤は、溶融シリカの表面と反応させ、エポキシ樹脂組成物中での溶融シリカの分散性を高めるために配合される。シランカップリング剤としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シランカップリング剤を用いる場合、配合量は、溶融シリカ100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。
【0059】
(エポキシ樹脂組成物の調製)
エポキシ樹脂組成物は、各成分を所定の比率で配合し、例えば60~480分間攪拌し、その後、減圧下で脱泡してから用いるとよい。エポキシ樹脂組成物は、液状またはシート状であってもよく、半硬化状態であってもよい。
【0060】
(コーティング材料)
研磨面に塗布などにより膜化されるコーティング材料としては、特に限定されず、エポキシ樹脂組成物の硬化物の用途に応じて選択することができる。エポキシ樹脂組成物をFOWLPやFOPLPの封止材として用いる場合、再配線形成用材料として、例えば表面保護膜形成用材料が選択される。表面保護膜形成用材料には、例えば、感光性ポリイミド、感光性ポリベンゾオキサゾールなどが用いられる。再配線形成用材料の膜を形成する方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、デイップ、インクジェット、スクリーン印刷、ジェットディスペンスなどにより、研磨面に再配線形成用材料を塗布する方法などが挙げられる。塗膜形成後、露光、現像、エッチングなどの処理を経て、再配線層が形成される。または研磨面にスパッタリングや無電解メッキでシード層(Cuなど)を形成し、パターン形成してから、再配線層を形成してもよい。再配線層はCu、Cu合金、Al、Al合金等であってよい。
【0061】
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
[実施例1]
(1)エポキシ樹脂組成物の調製
以下を配合して120分間攪拌し、その後、減圧下で脱泡してエポキシ樹脂組成物を調製した。
<エポキシ樹脂> 100質量部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、RE-310、エポキシ当量184g/eq)
<硬化剤> 100質量部
メチルテトラヒドロ無水フタル酸(日立化成株式会社製、酸無水物当量164g/eq)
<硬化促進剤> 6質量部
アミンアダクト系潜在性硬化促進剤(味の素株式会社製、アミキュアPN-23)
<シランカップリング剤> 3質量部
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
<カーボンブラック> 1質量部
三菱化学株式会社製、#2600
<溶融シリカA> 1500質量部
【0063】
溶融シリカAは、精密分級により、できるだけ中空粒子を除去するとともに、最大粒径20μm以下、平均粒径4.5μmとしたものを用いた。最大粒径および平均粒径は、レーザー回折式の粒度分布測定装置を用いて、レーザー回折法によって測定した。
【0064】
(2)試験片の作製
樹脂フィルム上に配列された複数の個片化された半導体チップ(厚さ1mm)上に、(1)で調製したエポキシ樹脂組成物を塗布し、圧縮成形により硬化させた。圧縮成形において、加熱は125℃で10分間、後硬化は150℃で1時間とした。
【0065】
(3)試験片の研磨
(2)で作製した試験片の硬化物の表面をグラインダーで研磨し、研磨面を形成した。
【0066】
(4)評価
(3)で得られた試験片の硬化物の研磨面を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡((株)キーエンス製、VK-9510)を用いて測定した。研磨面の写真を図1に示す。また、研磨面から無作為に選択した25mmの範囲の10領域において、中空粒子の断面に由来する孔の直径および個数を測定した。直径が1.5μmより大きく5μm以下の孔、直径が5μmより大きく10μm以下の孔、直径が10μmより大きい孔の個数をそれぞれ測定し、平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0067】
孔によって凹凸が生じている平坦性の低い部分(凹凸部)について、観察された孔のうち、最も大きい孔の直径および深さ、ならびにその孔を有する中空粒子の粒径を測定し、研磨面の算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Ry)、十点平均粗さ(Rz)を測定した。計測距離は100μmとした。孔のない平坦性の高い部分(平坦部)についても同様に、算術平均粗さ(Ra)、最大高さ(Ry)、十点平均粗さ(Rz)を測定した。結果を表2に示す。
【0068】
さらに、研磨面の表面に、感光性ポリイミド樹脂をスピンコートで塗布し、露光して硬化膜(硬化後膜厚5μm)を形成し、電子顕微鏡撮影(100倍)でその硬化膜の表面観察を行った。
【0069】
[実施例2]
溶融シリカとして溶融シリカBを用いたこと以外、実施例1と同様にエポキシ樹脂組成物を調製し、試験片を作製した。溶融シリカBは、精密分級により、できるだけ中空粒子を除去するとともに、最大粒径10μm以下、平均粒径3μmとしたものを用いた。研磨面の写真を図2に、研磨面を評価した結果を表1および表2に示す。
【0070】
[実施例3]
溶融シリカとして溶融シリカCを用いたこと以外、実施例1と同様にエポキシ樹脂組成物を調製し、試験片を作製した。溶融シリカCは、風力による精密分級により、できるだけ中空粒子を除去するとともに、最大粒径10μm以下、平均粒径2μmとしたものを用いた。研磨面の写真を図3に、研磨面を評価した結果を表1および表2に示す。
【0071】
[比較例1]
溶融シリカとして溶融シリカDを用いたこと以外、実施例1と同様にエポキシ樹脂組成物を調製し、試験片を作製した。溶融シリカDは、最大粒径25μm以下、平均粒径7μmのものを用いた。研磨面の写真を図4に、研磨面を評価した結果を表1および表2に示す。
【0072】
[比較例2]
溶融シリカとして溶融シリカEを用いたこと以外、実施例1と同様にエポキシ樹脂組成物を調製し、試験片を作製した。溶融シリカEは、最大粒径が75μm以下、平均粒径は20μmであった。研磨面の写真を図5に、研磨面を評価した結果を表1および表2に示す。
【0073】
[比較例3]
溶融シリカとして溶融シリカFを用いたこと以外、実施例1と同様にエポキシ樹脂組成物を調製し、試験片を作製した。溶融シリカFは、溶融シリカCの精密分級前の溶融シリカである。溶融シリカFの最大粒径は45μm、平均粒径は2μmであった。研磨面の写真を図6に、研磨面を評価した結果を表1および表2に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
図1図2および図3に示すように、実施例1、実施例2および実施例3で得られた試験片の研磨面でも、中空粒子の断面に由来する孔が観察された。しかし、いずれも直径が5μm以下の孔であった。直径が5μmより大きな孔が存在しないことから、表2に示すように、研磨面の平坦性は非常に高いものであった。また、研磨面に形成した感光性ポリイミド樹脂硬化膜の表面も平坦性が非常に高いことが確認できた。
【0077】
比較例1、比較例2および比較例3で得られた試験片の研磨面では、直径10μm以下の孔が存在し、特に比較例1および比較例3では、直径5μm以下の孔も存在していた。しかし、その一方で、図4図5および図6に示すように、直径10μmより大きな孔も確認された。このため、表2に示すように、研磨面の平坦性は低かった。また、研磨面に形成した感光性ポリイミド樹脂硬化膜の表面には凹部が観察され、平坦性が低いことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物によれば、硬化物を研磨したときに平坦性の高い研磨面を形成することができ、研磨面に微細な再配線層を形成することが可能である。本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、ファンアウトウエハレベルパッケージ(FOWLP)やファンアウトオアネルレベルパッケージ(FOPLP)の封止材として有用である。
【符号の説明】
【0079】
1:実施例1で観察された中空粒子断面に由来する孔
2:実施例2で観察された中空粒子断面に由来する孔
3:実施例3で観察された中空粒子断面に由来する孔
4:比較例1で観察された中空粒子断面に由来する孔
5:比較例2で観察された中空粒子断面に由来する孔
6:比較例3で観察された中空粒子断面に由来する孔

図1
図2
図3
図4
図5
図6