(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】クロロトリフルオロエチレンの気相法
(51)【国際特許分類】
C07C 17/23 20060101AFI20240116BHJP
C07C 17/25 20060101ALI20240116BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20240116BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
C07C17/23
C07C17/25
C07C21/18
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022500688
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(86)【国際出願番号】 US2020040100
(87)【国際公開番号】W WO2021007061
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-01-06
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ネイル、ハリダサン ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】シン、ラジヴ ラタナ
(72)【発明者】
【氏名】マカー、マーク
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-173840(JP,A)
【文献】特開平3-264543(JP,A)
【文献】特開昭62-61936(JP,A)
【文献】特表2009-518288(JP,A)
【文献】特開平5-194289(JP,A)
【文献】特開平7-238039(JP,A)
【文献】特開平4-321634(JP,A)
【文献】特開平4-120032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-クロロ-1,2,2-トリフルオロエテン(CTFE)の生成のためのプロセスであって、気相中、ケイ素系触媒の存在下で、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(R-113)を反応させ、少なくとも95%のCTFE選択性及び少なくとも15%の転化率を有する、CTFE(CF
2=CFCl)を含む反応生成物を生成することを含み、前記ケイ素系触媒が、炭化ケイ素、窒化ケイ素、又は、炭化ケイ素及び窒化ケイ素の組み合わせを含み、
前記反応生成物が、CH
3
Cl、CF
2
(CH
3
)
2
、CF
2
=CHCl、123a及びCF
2
=CCl
2
の各々を含まない、プロセス。
【請求項2】
1-クロロ-1,2,2-トリフルオロエテン(CTFE)の生成のためのプロセスであって、気相中、炭化ケイ素、窒化ケイ素、又は、炭化ケイ素及び窒化ケイ素の組み合わせを含むケイ素系触媒の存在下で、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(R-113)と、メタン、プロパン、及び水素のうちの1つ以上を含む還元剤とを反応させ、CTFE(CF
2=CFCl)を生成することを含み、前記反応工程が、CH
3Cl、CF
2(CH
3)
2、123a、CF
2=CCl
2及びCF
2=CHClの各々を含まず、少なくとも96%のCTFE選択性及び少なくとも25%の転化率を有する、反応生成物をもたらす、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(本明細書では便宜上、CFC-113又はR-113と称する場合もある)の脱塩素化による1-クロロ-1,2,2-トリフルオロエテン(本明細書では便宜上、CTFEと称する場合もある)の調製のための気相法に関する。
【背景技術】
【0002】
CTFEは、フルオロポリマーの製造におけるモノマーとしての使用を含む、商業的に重要な化合物である。
【0003】
CTFEの調製には様々な方法が使用されてきた。これらの方法には、高価な材料の消費、低い生成物収率又はその両方を含む、ある欠点がある。例えば、CTFEは、メタノール又はエタノールなどの溶媒中で1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタンを亜鉛で脱塩素化することを含む液相法によって調製されている。米国特許第5,124,494号及び米国特許出願公開第2017/0166501号を参照されたい。CTFEは、このようなプロセスを使用して、潜在的に良好な収率で生成することができるが、出願人は、そのようなプロセスが多量の溶媒を必要とし、反応生成物から除去するのに手間がかかり高価である副生成物の塩化亜鉛を生成するという欠点を有することを理解している。米国特許第5,124,494号はまた、銅、ニッケル、又はコバルト触媒の存在下でR-113を水素と反応させることによってCTFEを生成するための方法についても言及しているが、そのようなプロセスが選択性の低さや大量の不純物という欠点に悩まされることを報告している。
【0004】
CTFEは、ジクロロフルオロメタン及びクロロジフルオロメタンの共熱分解によっても調製されている。しかしながら、そのような共熱分解によるCTFEの生成は、低収率でのCTFE生成という欠点を有する。
【0005】
CTFEは、様々な活性炭触媒の存在下で、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタンを水素で脱塩素化することによって調製されている。活性炭を使用する気相法では、空間速度は約500時間-1よりも大きくなり得ず、生産性は低くなる。Pd触媒を使用する気相脱塩素化が提案されているが、Pdは高価であり、短い反応時間で失活し、10~60秒の接触時間で反応が行われ、生産性が低い。また、CTFEの収率は不十分であった。
【0006】
CTFEは、米国特許第4,155,941号の気相脱塩素化プロセスに従って調製した。この方法の主な欠点としては、出発材料の転化率の低下、CTFE生成物の低い収率及び/又は望ましくない材料(CF2=CCl2)の相当量(Al2O3/FeCl3触媒によって、場合により70%超)の形成がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CTFEの製造プロセスを更に改善するために、当分野において継続的な必要性がある。本発明のプロセスは、優れた選択性、許容可能な転化率、望ましくは少量の有機副生成物かつ容易に分離される無機副生成物において、CTFEを生成する。
【0008】
本発明は、ハロエタンの脱塩素化のためのプロセスであって、気相中、ケイ素系触媒の存在下で、ハロエタンと、アルケン、アルカン、水素、又はこれらの2つ以上の組み合わせから好ましくは選択される還元剤とを反応させることを含む、プロセスを提供する。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス1と称される。
【0009】
本発明はまた、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)の脱塩素化のためのプロセスであって、気相中で、R-113と水素を反応させて、CTFE(CF2=CFCl)を生成することを含む、プロセスも提供する。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス2と称される。
【0010】
本発明のプロセスはまた、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、アルカン(例えば、メタン、エタン、ブチレン、イソブタンなど)、アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、又は水素、又はこれらの2つ以上の組み合わせから好ましくは選択される還元剤との気相混合物を、反応器内に提供することと、好ましくは反応混合物を触媒床の上部を通過させることによって、ケイ素系触媒の存在下で、混合物を約400℃~約600℃の反応温度で反応させ、CTFE(CF2=CFCl)を主反応生成物として生成することと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス3と称される。
【0011】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、水素との気相混合物を提供することと、好ましくは反応混合物を触媒床の上部を通過させることによって、金属が、鉄、ニッケル、ケイ素、チタン、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、金属系触媒の存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で反応させ、CTFE(CR2=CFCl)を生成することと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス4と称される。
【0012】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、水素との気相混合物を提供することと、金属が、鉄、ニッケル、ケイ素、チタン、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物、及びこれらの2つ以上の組み合わせの存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で混合物を反応させることと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス5と称される。
【0013】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、アルカン(例えば、メタン、エタン、ブチレン、イソブタンなど)、アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、又は水素、又はこれらの2つ以上の組み合わせから選択される還元剤との気相混合物を提供することと、ケイ素系触媒の存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で反応させることと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス6と称される。
【0014】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、アルカン(例えば、メタン、エタン、ブチレン、イソブタンなど)、アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、水素、又はこれらの2つ以上の組み合わせから選択される還元剤との気相混合物を提供することと、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及びこれらの2つ以上の組み合わせの存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で反応させることと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス7と称される。
【0015】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、水素との気相混合物を提供することと、ケイ素系、好ましくは炭化ケイ素触媒の存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で反応させることと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス8と称される。
【0016】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、アルカン(例えば、メタン、エタン、ブチレン、イソブタンなど)、アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、水素、又はこれらの2つ以上の組み合わせから選択される還元剤との気相混合物を提供することと、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及びこれらの2つ以上の組み合わせの存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で反応させることと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス9と称される。
【0017】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、アルカン(例えば、メタン、エタン、ブチレン、イソブタンなど)、アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、又は水素、又はこれらの2つ以上の組み合わせから選択される還元剤との気相混合物を提供することと、ケイ素系、好ましくは炭化ケイ素触媒の存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で反応させることであって、CFC-113の還元剤に対するモル比が約1:1~約1:10である、ことと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス10と称される。
【0018】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、アルカン(例えば、メタン、エタン、ブチレン、イソブタンなど)、アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、水素、又はこれらの2つ以上の組み合わせから選択される還元剤との気相混合物を提供することと、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及びこれらの2つ以上の組み合わせの存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で反応させることであって、CFC-113の還元剤に対するモル比が約1:1~約1:10である、ことと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス11と称される。
【0019】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、水素との気相混合物を提供することと、ケイ素系、好ましくは炭化ケイ素触媒の存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で反応させることであって、CFC-113の水素に対するモル比が約1:1~約1:10である、ことと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス12と称される。
【0020】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、アルカン(例えば、メタン、エタン、ブチレン、イソブタンなど)、アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、水素、又はこれらの2つ以上の組み合わせから選択される還元剤との気相混合物を提供することと、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及びこれらの2つ以上の組み合わせの存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で反応させ、CTFE(CF2=CFCl)を生成することであって、CFC-113の還元剤に対するモル比が約1:1~約1:10である、ことと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス13と称される。
【0021】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、アルカン(例えば、メタン、エタン、ブチレン、イソブタンなど)、アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、水素、又はこれらの2つ以上の組み合わせから選択される還元剤との気相混合物を提供することと、ケイ素系、好ましくは炭化ケイ素触媒の存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で反応させることであって、CFC-113の還元剤に対するモル比が約1:1~約1:3である、ことと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス14と称される。
【0022】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、アルカン(例えば、メタン、エタン、ブチレン、イソブタンなど)、アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、水素、又はこれらの2つ以上の組み合わせから選択される還元剤との気相混合物を提供することと、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及びこれらの2つ以上の組み合わせの存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で反応させることであって、CFC-113の還元剤に対するモル比が約1:1~約1:3である、ことと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス15と称される。
【0023】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、水素との気相混合物を提供することと、ケイ素系、好ましくは炭化ケイ素触媒の存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で反応させることであって、CFC-113の水素に対するモル比が約1:1~約1:3である、ことと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス16と称される。
【0024】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、アルカン(例えば、メタン、エタン、ブチレン、イソブタンなど)、アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、水素、又はこれらの2つ以上の組み合わせから選択される還元剤との気相混合物を提供することと、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及びこれらの2つ以上の組み合わせの存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で反応させ、CTFE(CF2=CFCl)を生成することであって、CFC-113の還元剤に対するモル比が約1:1~約1:3である、ことと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス17と称される。
【0025】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、アルカン(例えば、メタン、エタン、ブチレン、イソブタンなど)、アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、又は水素、又はこれらの2つ以上の組み合わせから選択される還元剤との気相混合物を提供することと、ケイ素系、好ましくは炭化ケイ素 触媒の存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で反応させ、CTFEを含む反応生成物を生成することであって、CTFEに対する選択性が95%以上である、ことと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス18と称される。
【0026】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、アルカン(例えば、メタン、エタン、ブチレン、イソブタンなど)、アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなど)、水素、又はこれらの2つ以上の組み合わせから選択される還元剤との気相混合物を提供することと、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及びこれらの2つ以上の組み合わせの存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で反応させ、CTFEを含む反応生成物を生成することであって、CTFEに対する選択性が95%以上である、ことと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス19と称される。
【0027】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、水素との気相混合物を提供することと、ケイ素系、好ましくは炭化ケイ素触媒の存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で反応させ、CTFEを含む反応生成物を生成することであって、CTFEに対する選択性が95%以上である、ことと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス20と称される。
【0028】
本発明のプロセスは、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)と、アルカン(例えば、メタン、エタン、ブチレン、イソブタンなど)、水素、又はこれらの2つ以上の組み合わせから選択される還元剤との気相混合物を提供することと、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及びこれらの2つ以上の組み合わせの存在下で、混合物を約400℃~約600℃の温度で反応させ、CTFEを含む反応生成物を生成することであって、CTFEに対する選択性が95%以上である、ことと、を含む。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス21と称される。
【0029】
本発明はまた、ハロエタンの脱塩素化のためのプロセスであって、気相中、ケイ素系触媒の存在下で、ハロエタンと、アルケン、アルカン、水素、又はこれらの2つ以上の組み合わせから好ましくは選択される還元剤とを反応させ、CH3Cl、CF2(CH3)2、CF2=CHCl、F2ClCCCl2H(123a)、及びCF2=CCl2の各々を実質的に含まず、少なくとも約96%のCTFE選択性及び少なくとも約15%の転化率を有する、反応生成物を生成することを含む、プロセスも提供する。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス22と称される。
【0030】
本発明はまた、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CF2Cl-CFCl2;CFC-113)の脱塩素化のためのプロセスであって、気相中で、R-113と水素とを反応させ、CH3Cl、CF2(CH3)2、CF2=CHCl、F2ClCCCl2H(123a)、及びCF2=CCl2の各々を実質的に含まず、少なくとも約96%のCTFE選択性及び少なくとも約25%のCTFE(CF2=CFCl)転化率を有する、反応生成物を生成することを含む、プロセスも提供する。便宜上、本段落によるプロセスは、本明細書ではプロセス23と称される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、気相中で、ハロエタンと、アルケン、アルカン、水素、又はこれらの組み合わせなどの還元剤とを触媒の存在下で反応させることを含む、ハロエタンの脱塩素化による、ハロエチレン、特にパーハロエチレンを生成する方法を提供する。本発明の好ましい気相法は、ハロエチレンを提供するための、触媒の存在下でのハロエタンのビシナル脱塩素化を含む。好ましい態様では、還元剤が気相反応で使用され、脱塩素化によって生成される塩素と反応する。
定義:
【0032】
反応物に関する「転化率」という用語は、反応中に別の化合物に転化する特定の反応物のモル百分率を指す。
【0033】
所望の反応生成物に関する「選択性」という用語は、全ての反応生成物の百分率としての反応によって生成される所望物の物質量を指す(未反応の供給物及び再利用される量は除く)。
【0034】
「接触時間」という用語は、理論平均滞留時間を意味し、反応器の自由空間を反応器の体積流量で除算することによって計算される。したがって、分単位の接触時間は、反応器内の加熱された触媒床の体積(又は、触媒を含まない反応器の場合は相当する体積)を、反応器に供給される供給物の1分間当たりの標準立方センチメートル(SSCM)で除算することによって計算される。
【0035】
「反応温度」という用語は、反応器内の反応物の平均温度を指す。
【0036】
本明細書で使用されるとき、「ケイ素系触媒」、「炭化ケイ素触媒」、「窒化ケイ素触媒」、「酸化ケイ素触媒」などの用語は広義で使用され、示された材料が反応中に存在するが、本発明の反応において反応物としては関与せず、存在する場合、示された材料を含まない同じプロセスと比較して、転化率、選択性、副生成物減少、又は他の反応パラメータのうちの1つ以上を改善する役割を果たすことを反映する。
【0037】
「実質的に含まない」という用語は、1%以下の反応生成物中のモル濃度をもたらす量を指す。
好ましいハロエタン反応物
【0038】
好ましい実施形態では、ハロエタン出発材料は、気相脱塩素化プロセスの間に除去される、炭素原子の各々に対して少なくとも1つの塩素を有する。
【0039】
好ましいハロエタン出発材料はR-113であり、好ましい反応生成物はCTFEであり、最終的な反応は、還元剤が水素であり、触媒が存在する場合、以下の反応スキームに従って進む。
【化1】
【0040】
好ましい実施形態によれば、ハロエタン反応物は、炭素の各々に対して少なくとも1つの塩素原子を有し、残りの置換基がフッ素原子である、パーハロエタンである。
【0041】
好ましいパーハロエタンとしては、1,2-ジクロロテトラフルオロエタン(フルオロカーボン114)及び1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(R-113)が挙げられ、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタンが特に好ましい。これらの好ましいハロ炭化水素から2個の塩素が除去する場合、生成物は、例えばテトラフルオロエチレン又はCTFEを含むパーハロエチレンである。
還元剤
【0042】
本発明のプロセスは、気相反応混合物の一部として、脱塩素化反応によって形成される塩素(Cl2)及び/又は塩素ラジカルとの反応するに役立つ還元剤を含む。便宜上、還元剤は、本明細書において塩素捕捉剤とも称される場合がある。塩素捕捉剤は、好ましくは、脱塩素化反応中に生成された塩素と反応し、それによりあらゆる実質的な塩素ガスを含まない反応生成物を生成する、アルカン、アルケン、又は水素である。
【0043】
出願人は、本発明による還元剤として水素を使用して実質的な利点を達成できることを見出しており、したがって、プロセス1~23の各々を含む本発明のプロセスは、水素を還元剤として使用することが好ましい。特に、出願人は、水素を含む還元反応の主副生成物が、他の還元剤を使用して頻繁に生成される副生成物と比較して、反応生成物混合物から比較的容易に除去されるHClであることを見出した。更に、出願人は、水素の使用が、CTFEに対する非常に高いレベルの選択性での全体的な反応の進行を可能にすることを見出した。この理由から、プロセス1~23の各々を含む本発明のプロセスは、水素を含むか、又は水素から本質的になるか、又は水素からなる還元剤の使用を含む。
【0044】
使用する場合、好ましいアルカンは、1~6個の炭素原子、より好ましくは1~4個の炭素原子を有する。脱塩素化反応において塩素捕捉剤として使用するアルカンとしては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサンなど、特にメタン、エタン、プロパン及びイソブタン、最も詳細にプロパンが挙げられる。あるいは、アルカンは、シクロペンタン及びシクロヘキサンなどのシクロアルカンであってもよい。
【0045】
好ましいアルケンは、2~6個の炭素原子、より好ましくは2個又は3個の炭素原子を有する。
【0046】
使用する場合、脱塩素化反応において塩素捕捉剤として使用する好ましいアルケンとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテンなどが挙げられる。又は、アルケンはシクロペンテン及びシクロヘキセンなどのシクロアルケンであってもよい。
【0047】
ハロエタン出発材料(例えば、CFC-113)の、プロセス1~23の各々を含む本発明による還元剤に対するモル比は、好ましくは約1:1~約1:10である。ハロエタン出発材料(例えば、CFC-113)の、プロセス1~23の各々を含む本発明による還元剤に対するモル比は、好ましくは約1:1~約1:3である。
好ましいパーハロエタン反応生成物流
【0048】
プロセス1~23の各々を含む本発明のプロセスは、CTFE及び未反応のハロエタン反応物を含む反応生成物流を生成する。好ましい実施形態では、少なくとも一部、好ましくはかなりの部分、好ましくは大部分の未反応ハロエタン(R-113など)は、反応生成物流から分離され、反応工程に再利用される。
【0049】
プロセス1~23の各々を含む本発明のプロセスはまた、CTFE及び、特に未反応のR-113を含む未反応のハロエタン反応物を含むが、CH3Cl、CF2(CH3)2、CF2=CHCl、CF2=CFH、F2ClC-CCl2H(123a)、及びCF2=CCl2のうち少なくとも1つを実質的に含まない、反応生成物流も好ましくは生成する。
【0050】
プロセス1~23の各々を含む本発明のプロセスはまた、CTFE及び、特に未反応のR-113を含む未反応のハロエタン反応物を含むが、CH3Cl、CF2(CH3)2、CF2=CHCl、CF2=CFH、F2ClC-CCl2H(123a)、及びCF2=CCl2のうち少なくとも1つを実質的に含まない、反応生成物流も好ましくは生成する。
【0051】
プロセス1~23の各々を含む本発明のプロセスはまた、CTFE及び、特に未反応のR-113を含む未反応のハロエタン反応物を含むが、CH3Cl、CF2(CH3)2、CF2=CHCl、CF2=CFH、F2ClC-CCl2H(123a)、及びCF2=CCl2のうち少なくとも1つを実質的に含まない、反応生成物流も好ましくは生成する。
【0052】
プロセス1~23の各々を含む本発明のプロセスはまた、CTFE及び、特に未反応のR-113を含む未反応のハロエタン反応物を含むが、CH3Cl、CF2(CH3)2、CF2=CHCl、CF2=CFH、F2ClC-CCl2H(123a)、及びCF2=CCl2のうち少なくとも1つを500ppm(モル)未満で含有する、反応生成物流も好ましくは生成する。
【0053】
プロセス1~23の各々を含む本発明のプロセスはまた、CTFE及び、特に未反応のR-113を含む未反応のハロエタン反応物を含むが、CH3Cl、CF2(CH3)2、CF2=CHCl、CF2=CFH、F2ClC-CCl2H(123a)、及びCF2=CCl2の各々を実質的に含まない、反応生成物流も好ましくは生成する。
【0054】
プロセス1~23の各々を含む本発明のプロセスはまた、CTFE及び、特に未反応のR-113を含む未反応のハロエタン反応物を含むが、CH3Cl、CF2(CH3)2、CF2=CHCl、CF2=CFH、F2ClC-CCl2H(123a)、及びCF2=CCl2の各々を500ppm(モル)未満で含有する、反応生成物流も好ましくは生成する。
触媒
【0055】
特にプロセス2、4、5、8、12、16、20、及び22を含む本発明に従って使用され得る触媒材料は、金属酸化物、金属塩化物、金属フッ化物、金属炭化物、金属窒化物、及びこれらの組み合わせを含む。特定の好ましい実施形態では、特にプロセス2、4、5、8、12、16、20、及び22の各々を含む本発明による金属系触媒の金属は、第8族、第9族、又は第10族の遷移金属、ケイ素、及びこれらの2つ以上の組み合わせから選択される。存在する場合、触媒の遷移金属は、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Cu及びAgから選択され得る。
【0056】
特にプロセス2、4、5、8、12、16、20、及び22の各々を含む本発明による好ましい触媒材料としては、金属酸化物、例えば、酸化ケイ素、酸化鉄(III)、酸化ニッケル(II)、酸化銅(II)、及びそれらの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。これらはまた、銅(II)、鉄(III)、及び鉄(III)などの遷移金属も含む。
【0057】
特にプロセス2、4、5、8、12、16、20及び22の各々を含む本発明による鉄化合物の中で好ましいのは、鉄(II)及び酸化鉄(III)を含む原子価状態3の鉄である。
【0058】
特にプロセス2、4、5、8、12、16、20、及び22の各々を含む本発明によるニッケル化合物の中で好ましいのは、ニッケル(II)化合物を含む、例えばNiOを含む原子価状態2のニッケルである。
【0059】
特にプロセス2、4、5、8、12、16、20及び22の各々を含む本発明による銅化合物の中で好ましいのは、CuO、CuF2及びCuCl2を含む原子価状態2の銅である。
【0060】
特にプロセス1~23の各々を含む本発明の好ましい実施形態によると、脱塩素化触媒は、ケイ素及び/又はケイ素の窒化物、炭化物、若しくは酸化物を含むか、本質的にこれらからなるか、又はこれらからなる。ケイ素系触媒の中で、炭化ケイ素及び窒化ケイ素が好ましい。本明細書で使用されるとき、炭化ケイ素という用語は、ケイ素及び炭素からなる全ての化合物を指す。好ましい炭化ケイ素(カーボランダム)は、Washington Mills又はAdvanced Ceramics-Materials GmbH(Germany)による商品名Carborex(登録商標)のものを含む、いくつかの供給元から入手可能である。本明細書で使用されるとき、窒化ケイ素という用語は、ケイ素及び窒素からなる全ての化合物を指す。窒化ケイ素の中で好ましいのはSi3N4である。好ましい窒化ケイ素は、UBE Industries,LTDを含むいくつかの供給元から入手可能である。
【0061】
プロセス1~23の各々を含む本発明の好ましい実施形態によると、脱塩素化触媒は、炭化ケイ素を含むか、本質的にこれからなるか、又はこれからなる。
【0062】
プロセス1~23の各々を含む本発明の好ましい実施形態によると、脱塩素化触媒は、窒化ケイ素を含むか、本質的にこれからなるか、又はこれからなる。
【0063】
プロセス1~23の各々を含む本発明の好ましい実施形態によると、脱塩素化触媒は、酸化ケイ素を含むか、本質的にこれからなるか、又はこれからなる。
【0064】
出願人は、ケイ素系触媒の使用が、プロセス1~23の各々を含む本発明のプロセスに従って、いくつかの重要で予想外の利点を提供することを見出した。特に、炭化ケイ素触媒は、非常に堅牢で熱的に安定であるが、同時に、CFTEに対する非常に高いレベルの選択性を提供する。結果として、炭化ケイ素触媒を使用する本発明の好ましいプロセスは、比較的長い実行時間、すなわち、他の触媒と比較して長い実行時間を提供する。更に、炭化ケイ素触媒を使用する本発明の好ましいプロセスは、高い触媒活性を維持するため、比較的低頻度の再生を必要とし、場合によっては再生を必要としない。
【0065】
プロセス1~23の各々を含む本発明のプロセスにおいて、触媒は、担体なしで、又は担体上で使用され得る。プロセス1~23の各々を含む本発明のプロセスで使用されるとき、担体は、好ましくは炭素を含み、市販されているペレット又は粒状タイプのいずれかであり得る。プロセス1~23の各々を含む本発明のプロセスでは、担体上の触媒量(担体が使用される実施形態について)は、担体上で約2%~約25%、又は約5%~約20%であり得る。出願人は、特に炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び酸化ケイ素を含む本発明の好ましいケイ素系触媒が、使用中に非常に堅牢であるという予想外の利点を有し、触媒が担持されていない場合であっても、この堅牢な特徴が存在することを見出した。したがって、本発明は、ケイ素系触媒が、非担持炭化ケイ素、非担持窒化ケイ素、及び非担持酸化ケイ素などの非担持形態で使用される、プロセス1~23の各々を含むプロセスを含む。
【0066】
プロセス1~23の各々を含む本発明のプロセスでは、触媒は、炭素上に担持された炭化ケイ素、炭素上に担持された窒化ケイ素、及び/又は炭素上に担持された酸化ケイ素を含み得る。
【0067】
触媒の再生が必要とされるか、又は望ましい程度においてかつその場合、触媒は、任意選択的にその場で再生され得る。触媒の再生は、触媒上に酸化剤を通過させることによって、例えば触媒上に任意に窒素で希釈した空気又は酸素を通過させることによって行ってもよい。再生は、反応器のサイズに応じて、約400℃~約650℃、好ましくは約500℃~約625℃の温度にて、約4時間~約48時間行われてもよい。
【0068】
好ましい実施形態では、プロセス1~23の各々を含む本発明のプロセスは、触媒を再生することなく、かつハロエタン反応物の転化率の低減がなく、又は最小限のみに抑えながら、長い反応時間が進行する。好ましい実施形態では、プロセス1~23の各々を含む本発明のプロセスは、触媒を再生することなく、かつハロエタン反応物の転化率の低下がなく、又は最小限のみに抑え、かつCTFEに対する選択性の低下がなく、又は最小限に抑えながら、長い反応時間が進行する。本明細書で使用されるとき、転化率に関する最小限の低下という用語は、定常状態の転化率に達した後、長い反応時間、例えば、5時間、又は6時間、又は6時間を超える反応実施時間において、平均定常状態値から約10%(相対)を超えて低下しないことを意味する。本明細書で使用されるとき、選択性に関する最小限の低下という用語は、選択性が初期選択性と比較して1%を超えて低下しないことを意味する。本明細書で使用されるとき、「長い反応時間」という用語は、触媒の再生又は処理を行うことなく、反応が少なくとも5時間進行することを意味する。
プロセス構成及び条件
【0069】
本発明による好ましいプロセスを示す一般化されたプロセスフロー図を
図1に提供する。一般に、好ましいプロセスは、ハロエタン反応物流1及び還元剤流2を受容する反応器10を含む。流1及び2は、反応器に別々に供給されるものとして示されているが、それらの供給流の内容物を反応器の前に組み合わせ、単一の供給流として反応器に導入することが可能であり、プロセス1~23の各々を含むいくつかの実施形態では望ましい場合があることが当業者には理解されよう。このような実施形態の両方は、本発明の範囲内である。好ましくは、プロセス1~23の各々を含む本発明による反応器は、以下でより詳細に説明されるように、1つ以上の再利用流5を受容することができる。反応生成物4は反応器を出て、好ましくはプロセス1~23の各々を含み、比較的純粋な所望の反応生成物流6及び1つ以上の副生成物流7が生成される分離段階20に導入される。
【0070】
上記のように、反応生成物流4は、未反応供給流1及び2の一部を含み得、プロセス1~23の各々を含む好ましい実施形態では、そのような未反応供給流の一部(好ましくは、プロセス1~23の各々を含む多くの実施形態では、未反応供給物の実質的に全て)が反応生成物から分離され、再利用流5を介して反応器10に戻される。しかしながら、任意の特定の操作の必要性に応じて、再利用流5を排除し、未反応供給成分を生成物流6及び/又は副生成物流7に含めることを可能にすることが考えられ得ると理解されよう。
【0071】
プロセス1~23の各々を含む本発明の反応は、バッチ式、連続式、又はバッチ式と連続式の組み合わせで行われ得るが、一般に連続反応器が好ましい。プロセス1~23の各々を含む好ましい実施形態では、反応器は管状連続反応器を含み、この反応器は、固体形態の触媒を充填床又はないしは別のものとして含有し、好ましい反応温度範囲内の反応温度を維持するための内部熱源及び/又は外部熱源を有する。プロセス1~23の各々を含む本発明によれば、反応器自体は、単一又は複数の段階であり得、気相脱塩素化反応に好適な任意の反応器の任意の形態をとることができる。好ましくは、プロセス1~23の各々を含む本発明によれば、反応器は、塩素、触媒、又は副生成物による腐食作用に耐性を示す材料、例えばステンレス鋼、Hastelloy、Inconel、Monelで構成される。
【0072】
任意選択的に、不活性希釈剤を脱塩素化反応と共に使用してもよい。不活性希釈剤は、反応条件下で気相中に存在し、脱塩素化反応中に反応器内に存在する成分のいずれに対しても非反応性である、任意の材料である。不活性希釈剤は、窒素などを含んでもよい。
【0073】
プロセス1~23の各々を含む本発明によれば、脱塩素化反応の温度範囲は、触媒、ハロエタン出発材料、及び還元剤の組み合わせに応じて変化し得る。脱塩素化反応を気相で生じさせるためには、プロセス1~23の各々を含む本発明による温度及び圧力は、全ての反応物質が気相中に存在するようにあるべきである。また、プロセス1~23の各々を含む本発明によれば、反応物及び生成物の分解温度以上の温度は回避されるべきである。
【0074】
プロセス1~23の各々を含む本発明による好ましい脱塩素化反応温度は、約400℃~約650℃、より好ましくは約450℃~約600℃、更により好ましくは約500℃~約600℃である。プロセス1~23の各々を含む本発明による気相脱塩素化反応の温度は、500℃超、又は約550℃超、最大約600℃であり得る。
【0075】
本発明による反応器内の接触時間は、特定の用途の特定の必要性に応じて変化し得る。一般に、反応温度が約400~約650℃である好ましい実施形態では、反応器は、プロセス1~23の各々を含む本発明に従って、約1~約6秒、より好ましくは約3~約5秒の接触時間を有するように構成されている。更に、反応温度が約400~約650℃である好ましい実施形態では、反応器は、プロセス1~23の各々を含む本発明に従って、約1~約6秒、より好ましくは約3~約5秒の接触時間を有するように構成されている。
【0076】
プロセス1~23の各々を含む本発明による好ましい実施形態では、反応工程は、反応温度、接触時間、触媒タイプ、及び反応物比の組み合わせを利用して、少なくとも80%である、所望のハロアルカン生成物、好ましくはCTFEに対する選択性をもたらす。
【0077】
プロセス1~23の各々を含む本発明による好ましい実施形態では、反応工程は、反応温度、接触時間、触媒タイプ、及び反応物比の組み合わせを利用して、少なくとも90%である、所望のハロアルカン生成物、好ましくはCTFEに対する選択性をもたらす。
【0078】
プロセス1~23の各々を含む本発明による好ましい実施形態では、反応工程は、反応温度、接触時間、触媒タイプ、及び反応物比の組み合わせを利用して、少なくとも約95%である、所望のハロアルカン生成物、好ましくはCTFEに対する選択性をもたらす。
【0079】
プロセス1~23の各々を含む本発明による好ましい実施形態では、反応工程は、反応温度、接触時間、触媒タイプ、及び反応物比の組み合わせを利用して、少なくとも約96%である、所望のハロアルカン生成物、好ましくはCTFEに対する選択性をもたらす。
【0080】
好ましい実施形態では、プロセス1~23の各々を含む本発明の反応工程は、反応温度、接触時間、触媒タイプ、及び反応物比の組み合わせを利用して、2%未満、より好ましくは1.5%未満、更により好ましくは1%未満である、全ハロカーボン副生成物及びヒドロハロカーボン副生成物の収率をもたらす。
【0081】
本発明のプロセスによる出発ハロアルカンの転化率は、広く変化し得る。一般に、プロセス1~23の各々を含む本発明による転化率は、好ましくは約10%~約95%である。
【0082】
還元剤が、水素を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、触媒が、ケイ素系触媒を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる、好ましい実施形態では、プロセス1~23の各々を含む本発明によれば、転化率は、好ましくは約15%~約60%である。
【0083】
還元剤が、水素を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、触媒が、ケイ素系触媒を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる、好ましい実施形態では、プロセス1~23の各々を含む本発明によれば、転化率は、好ましくは約15%~約50%である。
【0084】
還元剤が、水素を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなり、触媒が、ケイ素系触媒を含むか、本質的にそれからなるか、又はそれからなる、好ましい実施形態では、プロセス1~23の各々を含む本発明によれば、転化率は、好ましくは約15%~約50%であり、CTFEに対する選択性は、少なくとも約95%である。
【0085】
以下の非限定的な実施例は、本発明のある実施形態を例示する役割を果たすが、制限的であるとして解釈されるべきではない。変形態様及び追加的又は代替的実施形態は、本明細書で提供される開示に基づいて当業者にただちに明らかとなるであろう。
【0086】
実施例及び比較例では、転化率及び選択性は、以下のように計算された値である。
R113の転化率(%)=100×((R-113F-R-113U)/R113F)
式中、R113Fは、反応器供給物中の原料R113の物質量であり、
R113Uは、未反応の物質量であり、「原料」R113は、反応器に供給されるが、再利用されたR113を含まないR113を指す。
CTFEに対する選択性=生成されたCTFE/全ての反応生成物(未反応の供給物及び再利用した量を除く)(全て物質量)
【実施例】
【0087】
各実施例について、~0.5インチの内径及び8フィートの長さを有するステンレス鋼又はMonelの管状気相反応器が使用される。管状反応器には、16cm3の加熱ゾーンが設けられる。各実施例について、示された触媒を10.83cmの床として反応器内に充填した。示されたモル比のCF2Cl-CFCl2(R-113)と、水素、メタン、又はプロパンのうちの1つとの混合物を、加熱した反応器に供給した。使用した接触時間(CT)は3~5秒の範囲であった。
【0088】
反応器からの出口ガスを水(20mL)及び乾燥カラム(CaCl2、Drierite)に通過させ、GC/GC-MSによる分析のためにTedlar(登録商標)ガスバッグ又は小型の金属容器に収集した。
実施例1-水素及び炭化ケイ素触媒による、CF2Cl-CFCl2のCTFEへの気相脱塩素化
【0089】
実験は、以下の表1に記載されるような炭化ケイ素触媒、水素還元剤、及びプロセス条件によって、一般に上記のプロセスを使用して実施した。結果を以下の表1に報告する。
【表1】
*123aは、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン
【0090】
上記の結果から分かるように、本発明のプロセスは、非常に高い選択性(試験された全ての場合において約96%以上)、低い副生成物量、及び、極めて望ましくない副生成物であるCH3Cl、CF2(CH3)2、又はCF2=CHClの生成が測定されない状態で、反応生成物を生成できる。更に、反応温度が500℃以上の場合、全て15%超であり、31.5%に達する転化率は、本発明のプロセス、特に上記のように未転化R-113の再利用を利用する好ましいプロセスにおいて許容可能である。
実施例2-炭化ケイ素触媒を用いて還元剤を用いない、CF2Cl-CFCl2のCTFEへの気相脱塩素化
【0091】
実験は、以下の表2に記載されるような炭化ケイ素触媒を用い、還元剤は用いず、及びプロセス条件によって、一般に上記のプロセスを使用して実施した。結果を以下の表2に報告する。
【表2】
*123aは、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン
【0092】
上記で報告された結果から分かるように、還元剤が使用されない本発明のプロセスは、高い選択性(試験された全ての場合において86%以上)、全て約8%超で28.6%に達する転化率で反応生成物を生成することができ、本発明のプロセス、特に上記のように未転化113の再利用を利用する好ましいプロセスにおいて許容可能である。しかしながら、プロセスは、望まれない副生成物であるCF2=CCl2を生成し、いくつかの用途においては好ましい結果ではない。
実施例3-水素を用いずにTiSiC触媒を用いる、CF2Cl-CFCl2のCTFEへの気相脱塩素化
【0093】
実験は、以下の表3に記載されるような、触媒としてチタンと炭化ケイ素の組み合わせを含む材料(本明細書では、便宜上TiSiCと称する)、水素還元剤、及びプロセス条件によって、上記の本発明のプロセスを使用して実施した。結果を以下の表3に報告する。
【表3】
*123aは、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン
【0094】
上記の結果から分かるように、本発明のプロセスは、非常に高い選択性(試験された全ての場合において約92%以上)、低い副生成物量、及び、極めて望ましくない副生成物であるCH3Cl、CF2(CH3)2、又はCF2=CHClの生成が測定されない状態で、反応生成物を生成できる。更に、全て22%超であり、65.3%に達する転化率は、本発明のプロセス、特に上記のように未転化113の再利用を利用する好ましいプロセスにおいて許容可能である。
実施例4-還元剤を用いずにTiSiC触媒を用いる、CF2Cl-CFCl2のCTFEへの気相脱塩素化
【0095】
実験は、以下の表4に記載されるようなTiSiC触媒、水素還元剤、及びプロセス条件によって、一般に上記のプロセスを使用して実施した。結果を以下の表4に報告する。
【表4】
*123aは、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン
【0096】
上記の結果から分かるように、還元剤が使用されない本発明のプロセスは、高い選択性及び転化率で反応生成物を生成することができる。しかしながら、プロセスは、望まれない副生成物であるCF2=CCl2を生成し、いくつかの用途においては好ましい結果ではない。
実施例5-水素及び触媒としての316パッキングによる、CF2Cl-CFCl2のCTFEへの気相脱塩素化
【0097】
実験は、以下の表5に記載されるような316SSパッキング、及び水素還元剤、及びプロセス条件によって、一般に上記のプロセスを使用して実施した。結果を以下の表5に報告する。
【表5】
【0098】
この実施例のプロセスは望ましい副生成物プロファイルを有するが、選択性は、いくつかの用途にとって望ましいものよりも低い。
実施例6-水素及び触媒としてのMonelによる、CF2Cl-CFCl2のCTFEへの気相脱塩素化
【0099】
実験は、以下の表6に記載されるようなMonelパッキング、及び水素還元剤、及びプロセス条件によって、一般に上記のプロセスを使用して実施した。結果を以下の表6に報告する。
【表6】
【0100】
この実施例のプロセスは望ましい副生成物プロファイルを有するが、選択性は、いくつかの用途にとって望ましいものよりも低い。
実施例7-水素及び触媒としてのMonelによる、CF2Cl-CFCl2のCTFEへの気相脱塩素化
【0101】
実験は、以下の表7に記載されるようなMonelパッキング、及び水素還元剤、及びプロセス条件によって、一般に上記のプロセスを使用して実施した。結果を以下の表7に報告する。
【表7】
【0102】
この実施例のプロセスは望ましい副生成物プロファイルを有するが、選択性は、いくつかの用途にとって望ましいものよりも低い。
実施例8-水素及び触媒としてのニッケルによる、CF2Cl-CFCl2のCTFEへの気相脱塩素化
【0103】
実験は、以下の表8に記載されるような触媒としてのニッケルパッキング、及び水素還元剤、及びプロセス条件によって、一般に上記のプロセスを使用して実施した。結果を以下の表8に報告する。
【表8】
【0104】
上記の結果から分かるように、本発明のプロセスは、高い選択性(試験された全ての場合において約82%以上)、極めて望ましくない副生成物であるCH3Cl、CF2(CH3)2、又はCF2=CHClの生成が測定されない状態で、反応生成物を生成できる。更に、全て12%超であり、31.5%に達する転化率は、本発明のプロセス、特に上記のように未転化113の再利用を利用する好ましいプロセスにおいて許容可能である。しかしながら、高い転化率での副生成物生成の量は、いくつかの用途にとって望ましいものよりも高い。
実施例9-炭化ケイ素触媒及びプロパン還元剤による、CF2Cl-CFCl2のCTFEへの気相脱塩素化
【0105】
実験は、以下の表9に記載されるような炭化ケイ素触媒、プロパン還元剤、及びプロセス条件によって、一般に上記のプロセスを使用して実施した。結果を以下の表9に報告する。
【表9】
*123aは、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン
【0106】
上記の結果から分かるように、プロパン還元剤を使用する本発明のプロセスは、非常に高い選択性(90%以上)、低い副生成物量、及び、極めて望ましくない副生成物であるCH3Cl、CF2(CH3)2、又はCF2=CHClの生成が測定されない状態で、反応生成物を生成できる。しかしながら、未転化113の再利用が上記のように使用される場合でも、転化率は、いくつかの用途にとって望ましいものよりも低い。
実施例10-TiSiC触媒及びプロパン還元剤による、CF2Cl-CFCl2のCTFEへの気相脱塩素化
【0107】
実験は、以下の表10に記載されるような炭化ケイ素触媒、プロパン還元剤、及びプロセス条件によって、一般に上記のプロセスを使用して実施した。結果を以下の表10に報告する。
【表10】
*123aは、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン
【0108】
上記の結果から分かるように、プロパン還元剤が使用される本発明のプロセスは、22%以上の転化率で反応生成物を生成することができる。しかしながら、選択性の値は好ましい用途で望まれるものよりも低く、副生成物の生成は好ましい用途で望まれるものよりも高い。
実施例11-TiSiC触媒及びメタン還元剤による、CF2Cl-CFCl2のCTFEへの気相脱塩素化
【0109】
実験は、以下の表11に記載されるようなTiSiC触媒、メタン還元剤、及びプロセス条件によって、一般に上記のプロセスを使用して実施した。結果を以下の表11に報告する。
【表11】
【0110】
上記の結果から分かるように、メタン還元剤が使用される本発明のプロセスは、20.4%以上の転化率、かつ約96%以上の選択性で反応生成物を生成することができる。しかしながら、このプロセスは、いくつかの用途において望まれない副産物である、CH3Clを生成する。
実施例12-水素及び炭化ケイ素触媒による、CF2Cl-CFCl2のCTFEへの気相脱塩素化の長時間反応
【0111】
本発明の好ましいプロセスの、約6時間の長い反応時間の過程にわたる選択性及び転化率の維持能力を試験するため、実験を実施した。プロセスは、炭化ケイ素触媒、水素還元剤を1:1のモル比で、3秒の接触時間、及び525℃の平均反応温度を用いて、上記のように一般に実行される。以下の表12に報告されるように、長時間反応の過程中の間隔で反応生成物を得て、転化率、選択性、及び副生成物について試験する。
【表12】
*123aは、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン
【0112】
上記の結果から分かるように、水素還元剤及び炭化ケイ素触媒を使用する本発明のプロセスは、転化率及び選択性の両方に関して予想外に堅牢な性能を示す。特に、転化率は、3時間反応後と6時間反応後で本質的に同じであり、その間、選択性も変化しなかった。実際、初期転化率(0.15時間の試料で予測される)を含めても、反応過程にわたる平均転化率は21.3%であり、反応過程にわたる転化率の変化は低い。これらの結果は、長い反応時間の過程にわたる性能維持に対する、本発明のプロセスの優れた予想外かつ有利な能力を示す。
実施例13-水素及び炭化ケイ素触媒による、CF2Cl-CFCl2のCTFEへの気相脱塩素化の長時間反応
【0113】
本発明の好ましいプロセスの、約5時間の長い反応時間の過程にわたる選択性及び転化率の維持能力を試験するため、実験を実施した。プロセスは、炭化ケイ素触媒、水素還元剤を1:1のモル比で、5秒の接触時間、及び545℃の平均反応温度を用いて、上記のように一般に実行される。以下の表13に報告されるように、長時間反応の過程中の間隔で反応生成物を得て、転化率、選択性、及び副生成物について試験する。
【表13】
*123aは、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン
【0114】
上記の結果から分かるように、水素還元剤及び炭化ケイ素触媒を使用する本発明のプロセスは、転化率及び選択性の両方に関して予想外に堅牢な性能を示す。特に、反応の過程にわたる平均転化率は21.01%であり、反応の定常状態部分の過程にわたる転化率の変化が低いのと同時に、選択性は、初期測定後に全ての測定について95%以上に留まる。これらの結果は、長い反応時間の過程にわたる性能維持に対する、本発明のプロセスの優れた予想外かつ有利な能力を示す。
実施例14-メタン及び炭化ケイ素触媒による、CF2Cl-CFCl2のCTFEへの気相脱塩素化の長時間反応
【0115】
本発明の好ましいプロセスの、約5時間の長い反応時間の過程にわたる選択性及び転化率の維持能力を試験するため、実験を実施した。プロセスは、炭化ケイ素触媒、メタン還元剤を1:1のモル比で、4秒の接触時間、及び545℃の平均反応温度を用いて、上記のように一般に実行される。以下の表14に報告されるように、長時間反応の過程中の間隔で反応生成物を得て、転化率、選択性、及び副生成物について試験する。
【表14】
*123aは、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン
【0116】
上記の結果から分かるように、メタン還元剤及び炭化ケイ素触媒を使用する本発明のプロセスは、転化率及び選択性の両方に関して予想外に堅牢な性能を示す。特に、反応過程にわたる平均転化率は41.33%であり、反応の定常状態部分にわたる転化率の変化は、実際に改善されたように思われる。更に、最初の測定後の全ての測定について、約97%以上の選択性が維持される。これらの結果は、長い反応時間の過程にわたる性能維持に対する、本発明のプロセスの優れた予想外かつ有利な能力を示す。
実施例15-還元剤を用いず、炭化ケイ素触媒による、CF2Cl-CFCl2のCTFEへの気相脱塩素化の長時間反応
【0117】
本発明の好ましいプロセスの、約5時間の長い反応時間の過程にわたる選択性及び転化率の維持能力を試験するため、実験を実施した。プロセスは、炭化ケイ素触媒を用い、追加の還元剤の非存在下で、3秒の接触時間、及び525℃の平均反応温度を用いて、上記のように一般に実行される。以下の表15に報告されるように、長時間反応の過程中の間隔で反応生成物を得て、転化率、選択性、及び副生成物について試験する。
【表15】
*123aは、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン
実施例16-水素還元剤を用いず、ニッケルパッキング触媒による、CF
2Cl-CFCl
2のCTFEへの気相脱塩素化の長時間反応
【0118】
本発明の好ましいプロセスの、約6時間の長い反応時間の過程にわたる選択性及び転化率の維持能力を試験するため、実験を実施した。プロセスは、水素還元剤の存在下でニッケルパッキング触媒を用い、2秒の接触時間、及び500℃の平均反応温度を用いて、上記のように一般に実行される。以下の表16に報告されるように、長時間反応の過程中の間隔で反応生成物を得て、転化率、選択性、及び副生成物について試験する。
【表16】
*123aは、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン
【0119】
上記で報告された結果から分かるように、触媒としてニッケルパッキングを水素還元剤と共に使用する本発明のプロセスは、転化率に関して堅牢な性能を示さない。
実施例17-水素還元剤を用い、追加の触媒を用いない、CF2Cl-CFCl2のCTFEへの気相脱塩素化の長時間反応
【0120】
本発明の好ましいプロセスの、約5.5時間の長い反応時間の過程にわたる選択性及び転化率の維持能力を試験するため、実験を実施した。プロセスは、水素還元剤を用い、3秒の接触時間、及び550℃の平均反応温度を用いるが、ステンレス鋼反応器内に触媒を加えずに、上記のように一般に実行される。以下の表17に報告されるように、長時間反応の過程中の間隔で反応生成物の試料を得て、転化率、選択性、及び副生成物について試験した。
【表17】
*123aは、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン
【0121】
上記で報告された結果から分かるように、触媒を用いずに水素還元剤を使用する本発明のプロセスは、転化率に関して堅牢な性能を示す。特に、反応過程にわたる平均転化率は約18%であり、反応の定常状態部分にわたる転化率の変化は低い。しかしながら、反応の選択性は多くの用途にとって所望されるものよりも低く、副生成物の生成は多くの用途にとって所望されるものよりも高い。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
1-クロロ-1,2,2-トリフルオロエテン(CTFE)の生成のためのプロセスであって、気相中、ケイ素系触媒の存在下で、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(R-113)を反応させ、少なくとも約95%のCTFE選択性及び少なくとも約15%の転化率を有する、CTFE(CF
2
=CFCl)を含む反応生成物を生成することを含む、プロセス。
[2]
前記気相中の反応工程が、前記R-113を還元剤と反応させることを更に含み、前記還元剤が、アルカン、アルケン、水素、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、[1]に記載のプロセス。
[3]
前記還元剤が、メタン、プロパン、水素、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、[2]に記載のプロセス。
[4]
前記反応生成物が、CH
3
Cl、CF
2
(CH
3
)
2
、CF
2
=CHCl、CF
2
=CFH、123a及びCF
2
=CCl
2
の各々を実質的に含まない、[1]に記載のプロセス。
[5]
前記反応工程が、未反応のR-113を含む反応生成物流を生成し、前記反応生成物流から前記未反応のR-113の少なくとも一部を分離する、連続プロセスであり、前記分離されたR-113の少なくとも一部を前記反応工程に再利用することを更に含む、[1]に記載のプロセス。
[6]
前記転化率が少なくとも約20%であり、前記選択性が少なくとも約97%である、[1]に記載のプロセス。
[7]
1-クロロ-1,2,2-トリフルオロエテン(CTFE)の生成のためのプロセスであって、気相中で、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(R-113)と水素とを反応させ、CTFE(CF
2
=CFCl)を生成することを含み、前記反応工程が、少なくとも約92%のCTFE選択性及び少なくとも約20%の転化率をもたらす、プロセス。
[8]
前記気相中の反応工程が、ケイ素系触媒の存在下で前記R-133を前記水素と反応させることを更に含む、[7]に記載のプロセス。
[9]
前記ケイ素系触媒が、炭化ケイ素を含む、[8]に記載のプロセス。
[10]
前記ケイ素系触媒が、炭化ケイ素から本質的になる、[9]に記載のプロセス。
[11]
前記ケイ素系触媒が、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び酸化ケイ素のうちの1つ以上を含む、[10]に記載のプロセス。
[12]
1-クロロ-1,2,2-トリフルオロエテン(CTFE)の生成のためのプロセスであって、気相中、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び酸化ケイ素のうちの1つ以上を含むケイ素系触媒の存在下で、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(R-113)と、メタン、プロパン、及び水素のうちの1つ以上を含む還元剤とを反応させ、CTFE(CF
2
=CFCl)を生成することを含み、前記反応工程が、CH
3
Cl、CF
2
(CH
3
)
2
、及びCF
2
=CHClの各々を実質的に含まず、少なくとも約96%のCTFE選択性及び少なくとも約25%の転化率を有する、反応生成物をもたらす、プロセス。
[13]
前記還元剤が、水素からなる、[12]に記載のプロセス。
[14]
前記触媒が、炭化ケイ素を含む、[13]に記載のプロセス。
[15]
前記触媒が、チタンと、炭化ケイ素と、を含む、[14]に記載のプロセス。