(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】一体型の電気駆動システムおよび電気自動車
(51)【国際特許分類】
B60L 9/18 20060101AFI20240116BHJP
B60K 11/02 20060101ALI20240116BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B60L9/18 Z
B60K11/02
B60K1/00
(21)【出願番号】P 2022519229
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2020075005
(87)【国際公開番号】W WO2021058273
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】201910924340.6
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シャオユン ヅァン
(72)【発明者】
【氏名】チーリン ホアン
(72)【発明者】
【氏名】シューダン リウ
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-234052(JP,A)
【文献】特開2003-309903(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0288739(US,A1)
【文献】特開2005-333747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-58/40
B60W 10/00-20/50
B60K 11/02
B60K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体型の電気駆動システムであって、
第1のハウジング(11)と出力軸とを備える電気機械(10)と、
第2のハウジング(21)と駆動軸(22)とを備え、前記出力軸の入力トルクを受け取り、該入力トルクを前記駆動軸(22)を介して出力するトランスミッション(20)と、
第3のハウジング(31)と、前記電気機械(10)に電力を供給するように構成された電子装置とを備えるパワーエレクトロニクスモジュール(30)と、
を備える、一体型の電気駆動システムにおいて、
前記パワーエレクトロニクスモジュール(30)は、前記駆動軸(22)を取り囲んで配置されるように構成されて
おり、
前記トランスミッション(20)の前記駆動軸(22)と前記電気機械(10)とは、前記トランスミッション(20)の同じ側に配置されており、
前記パワーエレクトロニクスモジュール(30)と前記電気機械(10)とは、前記トランスミッション(20)の同じ側に配置されている、
ことを特徴とする、一体型の電気駆動システム。
【請求項2】
前記パワーエレクトロニクスモジュール(30)は、中空構造であるように構成されており、前記駆動軸(22)は、前記パワーエレクトロニクスモジュール(30)の前記第3のハウジング(31)を貫いていることを特徴とする、請求項1記載の一体型の電気駆動システム。
【請求項3】
前記電子装置は、前記第3のハウジング(31)の内側で前記駆動軸(22)を取り囲んで配置されていることを特徴とする、請求項2記載の一体型の電気駆動システム。
【請求項4】
前記第3のハウジング(31)は、前記第1のハウジング(11)に接続されている、または前記第1のハウジング(11)と一体に形成されており、もしくは、前記第1のハウジング(11)と、前記第2のハウジング(21)と、前記第3のハウジング(31)とは、接続されている、または一体形に形成されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の一体型の電気駆動システム。
【請求項5】
前記第1のハウジング(11)、前記第2のハウジング(21)および前記第3のハウジング(31)のうちの少なくとも1つに冷却回路が設けられていることを特徴とする、請求項1記載の一体型の電気駆動システム。
【請求項6】
前記第1のハウジング(11)の第1の冷却回路(41)と、前記第3のハウジング(31)の第3の冷却回路(43)とが接続されていることを特徴とする、請求項5記載の一体型の電気駆動システム。
【請求項7】
前記第1のハウジング(11)の第1の冷却回路(41)と、前記第2のハウジング(21)の第2の冷却回路と、前記第3のハウジング(31)の第3の冷却回路(43)とが接続されていることを特徴とする、請求項5記載の一体型の電気駆動システム。
【請求項8】
前記第3のハウジング(31)に、外部回路に接続可能である接続ポート(32)が設けられていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の一体型の電気駆動システム。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の一体型の電気駆動システムを備える電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、車両駆動の技術分野、特に一体型の電気駆動システムおよびこの一体型の電気駆動システムを備える電気自動車に関する。
【0002】
背景技術
エネルギー危機および環境汚染問題が深刻に受け止められ、電気駆動技術が発達するにつれて、ますます多くの車両が、動力用に搭載型の電源を使用して、電気駆動システム(「電気駆動車軸」または「電動車軸」とも呼ばれるeAxle)によって車両を動かそうとしている。電気駆動システムは、実質的に、電気機械と、トランスミッションと、パワーエレクトロニクスモジュール(例えばインバータ)とを一体化した動力駆動アセンブリである。この種の一体型の電気駆動システムは、電力密度の増加、コンポーネントの個数の削減、高電圧ケーブルの長さの短縮および構造的なコンパクトさの点で明らかな利点を有している。
【0003】
既存の一体型の電気駆動システムでは、電気機械のハウジングが、トランスミッションハウジングに不動に接続されているかまたはトランスミッションハウジングと一体に形成されており、電気機械の出力軸が、トランスミッション内の変速機構を駆動し、次いで、トランスミッションの駆動軸を駆動して、電気自動車のホイールを駆動する。電気機械とトランスミッションとの間の運動協働関係に基づき、電気機械とトランスミッションとは、通常、電気機械出力軸の延在方向で不動に連結されており、電気機械出力軸とトランスミッション駆動軸とは、レイアウトに応じて、トランスミッションの同じ側または2つの側に配置されるように構成されていてもよい。過度に多くのスペースを占めることを回避するために、パワーエレクトロニクスモジュールが、トランスミッション駆動軸の一方の側、例えば、トランスミッション駆動軸の上側、下側、左側または右側に配置されていてもよい。したがって、トランスミッションと車両ホイールとの間のスペースを、パワーエレクトロニクスモジュールを収容するために使用することができる。しかしながら、このようなレイアウトは相変わらず欠点を有している。例えば、パワーエレクトロニクスモジュールが、トランスミッション駆動軸の一方の側に配置されていると、この側におけるスペースの量が、パワーエレクトロニクスモジュールの寸法を制限して、パワーエレクトロニクスモジュール内の電子装置の配置および放熱に影響を与えてしまい、それと同時に、駆動軸の別の側のスペースが使用されず、このスペースが無駄になってしまう。
【0004】
したがって、既存の一体型の電気駆動システムを改良して、スペースを十分に利用しかつ効率のよい放熱を達成する必要がある。
【0005】
発明の概要
本願の目的は、上述した技術的な問題を克服するための一体型の電気駆動システムを提案することである。
【0006】
このために、本願の1つの態様によれば、一体型の電気駆動システムであって、
第1のハウジングと出力軸とを備える電気機械と、
第2のハウジングと駆動軸とを備え、出力軸の入力トルクを受け取り、この入力トルクを駆動軸を介して出力するトランスミッションと、
第3のハウジングと、電気機械に電力を供給するように構成された電子装置とを備えるパワーエレクトロニクスモジュールと、
を備え、
パワーエレクトロニクスモジュールは、駆動軸を取り囲んで配置されるように構成されている、
一体型の電気駆動システムが提供される。
【0007】
任意選択的には、パワーエレクトロニクスモジュールは、中空構造であるように構成されており、駆動軸は、パワーエレクトロニクスモジュールの第3のハウジングを貫いている。
【0008】
任意選択的には、電子装置は、第3のハウジングの内側で駆動軸を取り囲んで配置されている。
【0009】
任意選択的には、パワーエレクトロニクスモジュールと電気機械とは、トランスミッションの同じ側に配置されており、第3のハウジングは、第1のハウジングに接続されている、または第1のハウジングと一体に形成されており、または第1ハウジングと、第2ハウジングと、第3ハウジングとは、接続されている、または一体形に形成されている。
【0010】
任意選択的には、第1のハウジング、第2のハウジングおよび第3のハウジングのうちの少なくとも1つに冷却回路が設けられている。
【0011】
任意選択的には、第1のハウジングの第1の冷却回路と、第3のハウジングの第3の冷却回路とが接続されている。
【0012】
任意選択的には、第1のハウジングの第1の冷却回路と、第2のハウジングの第2の冷却回路と、第3のハウジングの第3の冷却回路とが接続されている。
【0013】
任意選択的には、第3のハウジングに、外部回路に接続可能である接続ポートが設けられている。
【0014】
本願の別の態様によれば、上述した一体型の電気駆動システムを備える電気自動車が提供される。
【0015】
本願の一体型の電気駆動システムによって、トランスミッションの駆動軸を取り囲むスペースを十分に利用することができ、アセンブリ全体をよりコンパクトにすることができ、設置スペースをより小さくすることができ、冷却回路の配置を容易にすることができ、放熱能をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本願の例示的な実施形態を図面を参照しながら以下に詳しく説明する。当然ながら、以下に説明する実施形態は、単に本願を説明することを意図しているにすぎず、本願の範囲を限定するものではない。
【
図1】本願の一実施形態による一体型の電気駆動システムの概略的な斜視図である。
【
図2】対応するハウジングおよび冷却回路だけが残された、
図1に示した一体型の電気駆動システムの概略的な断面図である。
【0017】
発明の詳細な説明
本願の好適な実施形態を例を参照しながら以下に詳しく説明する。本願の実施形態では、本願を説明するための一例として、電気自動車用の一体型の電気駆動システムを挙げている。しかしながら、当業者であれば、こういった例示的な実施形態が本願のいかなる限定をも意味しないことを理解するはずである。さらに、矛盾がなければ、本願の実施形態における特徴同士は互いに組み合わされてもよい。それぞれ異なる図面において、同一または類似のコンポーネントには、同一の参照符号が付してあり、簡潔にするために、別のコンポーネントは省略してあるものの、このことは、本願の一体型の電気駆動システムが別のコンポーネントを含むことができないことを示すものではない。当然ながら、図中のコンポーネントの大きさ、比率関係およびコンポーネントの数量は、本願における限定ではない。
【0018】
図1に示したように、本願の実施形態による一体型の電気駆動システムは、実質的に、電気機械10と、トランスミッション20と、パワーエレクトロニクスモジュール30とを備えている。電気機械10は、第1のハウジング11と出力軸(
図1には示さず)とを備えていてもよい。トランスミッション20は、第2のハウジング21と駆動軸22とを備えていてもよい。トランスミッション20は、電気機械10の出力軸の入力トルクを受け取り、この入力トルクを駆動軸22を介して出力して、電気自動車のホイールを回転駆動させる。パワーエレクトロニクスモジュール30は、第3のハウジング31と電子装置(
図1には示さず)とを備えていてもよい。この電子装置は、電気機械10に電力を供給するように構成されている。パワーエレクトロニクスモジュール30は、例えばインバータであってもよい。念のために付言しておくと、本願の一体型の電気駆動システムのパワーエレクトロニクスモジュール30は、
図1に示したように、トランスミッション20の駆動軸22を取り囲んで配置されるように構成されている。つまり、パワーエレクトロニクスモジュール30は、中空構造であるように構成されており、駆動軸22が、パワーエレクトロニクスモジュール30の第3のハウジング31を貫いている。相応して、パワーエレクトロニクスモジュール30の電子装置は、第3のハウジング31の内側で駆動軸22を取り囲んで配置されていてもよい。したがって、パワーエレクトロニクスモジュール30とトランスミッション20の駆動軸22とを内外配置構造として形成することにより、駆動軸22を取り囲むスペースを十分に利用することができ、装置全体をよりコンパクトにすることができ、設置スペースをより小さくすることができ、相応して、車両において利用されるスペースを増大させることができる。
【0019】
念のために付言しておくと、
図1に示した本願の実施形態では、トランスミッション20の駆動軸22と電気機械10とが、互いに平行に配置されている。つまり、トランスミッション20の駆動軸22と電気機械10とが、トランスミッション20の同じ側に配置されており、相応して、パワーエレクトロニクスモジュール30と電気機械10とが、トランスミッション20の同じ側に配置されている。しかしながら、トランスミッション20の駆動軸22と電気機械10とが、それぞれトランスミッション20の2つの側に配置されている実施形態では、パワーエレクトロニクスモジュール30が、駆動軸22を取り囲むスペース全体を同じく十分に利用することができ、利用されずに残されるスペースの量を既存の配置構造と比較して減じることができる。
【0020】
第3のハウジング31には、接続ポート32、例えば、ポート拡張ユニット(PEU)の補助コンポーネント、例えばDC-DCコネクタが設けられていてもよい。この接続ポート32は、外部回路、例えば、外部電源の電源回路、コントローラの制御回路等に接続されてもよい。したがって、接続ポート32も駆動軸22の周辺のスペースを十分に利用することができ、接続ポート32の配置が容易になる。
【0021】
図1に示したように、パワーエレクトロニクスモジュール30と電気機械10とが、トランスミッション20の同じ側に配置されている場合には、パワーエレクトロニクスモジュール30の第3のハウジング31は、電気機械10の第1のハウジング11に接続されていてもよいし、電気機械10の第1のハウジング11と一体に形成されていてもよい。これによって、装置の構造全体をよりコンパクトにすることができ、設置を容易にすることができ、パワーエレクトロニクスモジュール30から電気機械10までのケーブル長さを短くすることができ、これによって、コストおよび重量を減じることができる。当然ながら、本願の別の実施形態では、電気機械10の第1のハウジング11と、トランスミッション20の第2のハウジング21と、パワーエレクトロニクスモジュール30の第3のハウジング31とが、密に接続されていてもよいし、一体形に形成されてもよい。このことは、相応して、更なる技術的な効果を達成することができる。
【0022】
本願の一体型の電気駆動システムが十分な冷却を得ることを可能にするために、電気機械10の第1のハウジング11、トランスミッション20の第2のハウジング21およびパワーエレクトロニクスモジュール30の第3のハウジング31のうちの少なくとも1つに冷却回路が配置されていてもよい。
図2には、電気機械10の第1のハウジング11に配置された第1の冷却回路41と、パワーエレクトロニクスモジュール30の第3のハウジングに配置された第3の冷却回路43とが示してある。第1の冷却回路41と第3の冷却回路43とは、1つの共通の冷却回路40を形成するように互いに接続されている。当然ながら、本願の別の実施形態では、第1のハウジング11の第1の冷却回路41と、第2のハウジング21の第2の冷却回路(
図2には示さず)と、第3のハウジング31の第3の冷却回路43とが、互いに接続されていてもよい。したがって、1つの共通の冷却回路を形成することによって、統合されたより高度な冷却を達成することができ、コンポーネントの個数を減じることができ、保守作業を容易にすることができる。さらに、
図2には、共通の冷却回路40の冷却液入口45および冷却液出口46も示してある。冷却液入口45は、第3のハウジング31に配置されており、冷却液出口46は、第1のハウジング11に配置されている。しかしながら、冷却液入口45と冷却液出口46とは、同一のハウジングに配置されていてもよい。
【0023】
本願の別の実施形態によれば、電気自動車は、上述した一体型の電気駆動システムを備えていてもよく、さらに、車体構造、動力バッテリ、操舵構造および制動構造等を備えていてもよい。これらについては、本明細書ではこれ以上説明しない。
【0024】
本願の一体型の電気駆動システムは、より高度に一体化されたよりコンパクトな構造と、より良好な放熱能とを有していて、電気自動車に設置される場合には、電気自動車のスペース最適化および軽量設計を容易にする。
【0025】
本願を特定の実施形態を参照しながら詳しく上述してきた。上述しかつ図示した全ての実施形態は、明らかに一例と解すべきものであり、本願を限定するものではない。例えば、好適な実施形態では、電気自動車用の一体型の電気駆動システムを本願を説明するための一例として挙げたが、本願は、電気自動車の分野だけでなく、駆動作用を提供するために一体型の電気駆動システムを使用することが必要となるあらゆる分野に適用することもできる。当業者であれば、本願の範囲から逸脱することなく、本願に対する様々な変更または修正を行うことができ、このような全ての変更または修正は本願の範囲内にある。