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特許7420946車輪情報伝送装置、車輪情報伝送方法、および車輪情報伝送装置を備えた車両
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  • 特許-車輪情報伝送装置、車輪情報伝送方法、および車輪情報伝送装置を備えた車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】車輪情報伝送装置、車輪情報伝送方法、および車輪情報伝送装置を備えた車両
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/42 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
G01P3/42 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022533609
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2020082280
(87)【国際公開番号】W WO2021110398
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-06-29
(31)【優先権主張番号】102019133440.3
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ クルフティンガー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヴィンディッシュ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス レヒナー
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハート ヴィーダー
(72)【発明者】
【氏名】カール-ハインツ シュミート
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ランマート
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス ティールフェルダー
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102010025872(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/101065(US,A1)
【文献】特開2018-88251(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/073250(US,A1)
【文献】特開昭63-62008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 3/00- 3/80
G01D 5/00- 5/62
G08C13/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪情報を検出または記憶するように構成された情報検出装置(26、28、44)と、
前記車輪情報を伝送媒体を介して伝送するように構成された情報伝送装置(44、36、38)とを備えた、
車輪情報伝送装置(10)であって、
前記情報伝送装置は、前記車輪情報の少なくとも第1の部分を、データパケットの各ビットが特定の情報に割り当てられ、かつすべてのビットが同時に伝送されるようにパラレルに、または前記データパケットの伝送がシーケンシャルであっても、すなわち、固定的な意味に割り当てられず、かつ伝送される情報が、複数の連続的に伝送されるデータパケットの個々のビットから合成されていても、データパケットの各ビットが特定の情報に割り当てられ、かつすべてのビットがデータパケットレベルで同時に伝送されるように疑似パラレルに伝送するように構成されており、
前記情報伝送装置は、前記車輪情報の前記第1の部分または前記車輪情報の第2の部分を、パラレルまたは疑似パラレルのデータ伝送においてシリアルに伝送するように構成されている、
車輪情報伝送装置(10)。
【請求項2】
当該車輪情報伝送装置はアクティブ回転数センサであり、該アクティブ回転数センサは、前記車輪情報の前記第1の部分をAKプロトコルによって伝送し、前記車輪情報の前記第1の部分または前記第2の部分をシリアルに伝送するように構成されている、
請求項1記載の車輪情報伝送装置(10)。
【請求項3】
前記車輪情報の前記第1の部分は、エアギャップリザーブ、信号振幅妥当性、回転方向妥当性、回転方向、またはパリティ情報であり、前記車輪情報の前記第2の部分は、センサシリアルナンバー、部品温度、暗号鍵、顧客情報、またはセンサ情報である、
請求項1または2記載の車輪情報伝送装置(10)。
【請求項4】
前記情報伝送装置(44、36、38)は、前記車輪情報の前記第1の部分または前記車輪情報の前記第2の部分を、1つまたは複数のシリアル伝送チャネルを介して伝送するように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の車輪情報伝送装置(10)。
【請求項5】
前記情報伝送装置(44、36、38)は、1つの伝送シーケンスが、データ伝送開始を表す初期ビット列と、伝送すべきデータタイプを表すタイプ値と、伝送すべきデータペイロードの長さを表す長さ値とから成る形態で、シリアルデータ伝送を行うように構成されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の車輪情報伝送装置(10)。
【請求項6】
前記情報伝送装置(44、36、38)は、1つの伝送シーケンスが付加的に、前記長さ値に記載された長さのデータペイロード、またはチェック情報、特にCRC値、を有する形態で、前記シリアルデータ伝送を行うように構成されている、
請求項5記載の車輪情報伝送装置(10)。
【請求項7】
前記情報伝送装置(44、36、38)は、前記車輪情報の前記第1の部分または前記車輪情報の前記第2の部分をシリアルにかつ暗号化して伝送する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の車輪情報伝送装置(10)。
【請求項8】
車輪情報伝送方法であって、当該車輪情報伝送方法は、
車輪情報伝送装置(10)の情報検出装置(26、28、44)により、車輪情報を検出または記憶するステップと、
前記車輪情報の第1の部分を情報伝送装置(44、36、38)により伝達するステップであって、該伝達を、データパケットの各ビットが特定の情報に割り当てられ、かつすべてのビットが同時に伝送されるようにパラレルまたは前記データパケットの伝送がシーケンシャルであっても、すなわち、固定的な意味に割り当てられず、かつ伝送される情報が、複数の連続的に伝送されるデータパケットの個々のビットから合成されていても、データパケットの各ビットが特定の情報に割り当てられ、かつすべてのビットがデータパケットレベルで同時に伝送されるように疑似パラレルに行うステップと、
前記車輪情報の前記第1の部分または前記車輪情報の第2の部分を前記情報伝送装置(44、36、38)により伝達するステップであって、該伝達を、パラレルまたは疑似パラレルの伝達においてシリアルに行うステップと
を有する、車輪情報伝送方法。
【請求項9】
前記車輪情報伝送装置はアクティブ回転数センサであり、
前記車輪情報の前記第1の部分の前記伝達をAKプロトコルによって行う、
請求項8記載の車輪情報伝送方法。
【請求項10】
前記車輪情報の前記第1の部分は、エアギャップリザーブ、信号振幅妥当性、回転方向妥当性、回転方向、またはパリティ情報であり、前記車輪情報の前記第2の部分は、センサシリアルナンバー、部品温度、暗号鍵、顧客情報、またはセンサ情報である、
請求項8または9記載の車輪情報伝送方法。
【請求項11】
前記車輪情報の前記第1の部分または前記車輪情報の前記第2の部分の前記伝達を、1つまたは複数のシリアル伝送チャネルを介して行う、
請求項8から10までのいずれか1項記載の車輪情報伝送方法。
【請求項12】
シリアルデータ伝送による前記車輪情報の前記第1の部分または前記車輪情報の第2の部分の前記伝達は、
データ伝送開始を表す初期ビット列を伝達するステップと、
伝送すべきデータタイプを表すタイプ値を伝達するステップと、
伝送すべきデータペイロードの長さを表す長さ値を伝達するステップと
を有する、
請求項8から11までのいずれか1項記載の車輪情報伝送方法。
【請求項13】
シリアルデータ伝送による前記車輪情報の前記第1の部分または前記車輪情報の第2の部分の伝達は、
前記長さ値に記載された長さのデータペイロードを伝達するステップ、または
チェック情報、特にCRC値、を伝達するステップ
をさらに有する、
請求項12記載の車輪情報伝送方法。
【請求項14】
シリアルデータ伝送による前記車輪情報の前記第1の部分または前記車輪情報の第2の部分の伝達を暗号化して行う、
請求項8から13までのいずれか1項記載の車輪情報伝送方法。
【請求項15】
請求項1から7までのいずれか1項記載の車輪情報伝送装置(10)を備えた自動車、特に商用自動車またはトラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪情報伝送装置、車輪情報伝送方法、および車輪情報伝送装置を備えた車両に関し、さらに特に、付加情報を伝送するようにした、車輪回転数を検出する装置および方法に関する。
【0002】
従来技術によれば、特に乗用車において、アクティブな車輪回転数センサが公知であり、このセンサは、車輪の回転数を検出し、回転数パルスを用い伝送媒体として2芯ケーブルを介して評価装置に、たとえばアンチロックシステム用の制御装置に、伝達する。自動車業界の研究チームによるそれ自体公知のAKプロトコルによれば、付加情報を伝送することができる。AKプロトコルは電流プロトコルであって、これによればアクティブ回転数センサに電圧が供給される。センサ内部抵抗の変化およびこれにより引き起こされる電流の変調によって、付加情報が伝送される。伝送される情報は、回転数のほか、回転方向、エアギャップリザーブおよび信号バリデーションなどの情報によって拡張される。その際に商用車での自律走行機能に対する要求ゆえに、乗用車によって知られている車輪回転数センサが商用車に組み込まれることが増えてきている。この場合、商用車特有の要求は乗用車による要求を上回るものである。つまりたとえば、過熱したブレーキを識別するために、センサから温度信号を伝送するのが望ましい。また、センサ内に記憶された情報を介して、たとえば、制御装置において検出されて記憶された走行距離状況について妥当性チェックを実施し、制御装置における不正操作を場合によっては明らかにすることもできる。これによればシリアルナンバーなどセンサ内に記憶されている他の情報も、これまでは読み出すことはできない。
【0003】
独国特許出願公開第102014216295号明細書および国際公開第2015/039895号から、AKプロトコルの拡張が公知であり、これによれば、回転数センサによって回転数に依存するセンサ情報を生成する方法が教示され、その際に回転数センサは、回転数と共に回転する物理的な発振器フィールドの予め定められた角度位置において、回転数パルスを送出するように構成されている。この方法は、物理的な発振器フィールドの角度位置に依存するディジタル角度信号を生成するステップと、このディジタル角度信号の予め定められた個数の最上位ビットをセンサ情報として送出するステップとを含む。この教示の目指すところは、AKプロトコルを変更し、それによって低速時にいっそう高密度の情報伝送を可能にすることであるが、既存の評価回路を引き続き利用できないことから、不利なことにそのためにはそれらの評価回路の交換が必要とされる。
【0004】
本発明の課題は、従来技術の欠点を解消し、商用車に関連する付加的な車輪情報を伝送する教示を提供することである。
【0005】
この課題は、車輪情報伝送装置に関する請求項1記載の教示、車輪情報伝送方法に関する請求項8記載の教示、さらに車両に関する請求項15記載の教示によって解決される。従属請求項には有利な発展形態が記載されている。
【0006】
ここに開示されるのは、車輪関連情報を検出または記憶するように構成された情報検出装置と、車輪関連情報を伝送媒体を介して伝送するように構成された情報伝送装置とを備えた、車輪情報伝送装置である。情報伝送装置は、車輪関連情報の少なくとも第1の部分を、パラレルまたは疑似パラレルに伝送するように構成されており、さらに情報伝送装置は、車輪関連情報の第1の部分または車輪関連情報の第2の部分を、パラレルまたは疑似パラレルのデータ伝送においてシリアルに伝送するように構成されている。
【0007】
この場合、特に、車輪情報伝送装置はアクティブ回転数センサであり、このアクティブ回転数センサは、車輪情報の第1の部分をAKプロトコルによって伝送し、車輪情報の第1の部分または第2の部分をシリアルに伝送するように構成されている。
【0008】
これによって、AKプロトコルを介して伝送される情報のほかに、回転数センサによって検出可能な任意のさらなる情報を伝達することができる。
【0009】
さらに開示されているのは車輪情報伝送方法であって、この車輪情報伝送方法は、車輪情報伝送装置の情報検出装置により、車輪情報を検出または記憶するステップと、車輪情報の第1の部分を情報伝送装置により伝達するステップであって、この伝達をパラレルまたは疑似パラレルに行うステップと、車輪情報の第1の部分または車輪情報の第2の部分を情報伝送装置により伝達するステップであって、この伝達を、パラレルまたは疑似パラレルの伝達においてシリアルに行うステップとを有する。
【0010】
さらに開示されているのは、車輪情報伝送装置に関する請求項のうちのいずれか1つに記載された車輪情報伝送装置を備えた自動車、特に商用自動車またはトラックである。
【0011】
次に、図面に基づき1つの実施例を用いて本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による車輪情報伝送装置を備えた車両を示す概略図である。
図2図1の走行ダイナミック制御における車輪情報伝送装置のうちの1つを示す概略図である。
図3図1による車輪情報伝送装置のパルス信号を示す図である。
【0013】
図1には、車両2の概略図が示されており、これはたとえば公知の走行ダイナミック制御を備えた商用車である。
【0014】
車両2は、シャーシ4と、たとえば4つの車輪6を備えた2本の車軸とを含む。択一的に、この車両は、2本よりも多くの車軸と、それに応じたいっそう多くの個数の車輪を有することができ、またはこの車両には牽引されたトレーラを設けることができ、またはトラクタとセミトレーラとから成るものとすることができ、その場合にはこれらの要素が、それぞれ固有の車軸および車輪を有する。車両2の動きを減速させる目的で、位置固定されてシャーシ4に取り付けられたブレーキ8を介して、各車輪6をシャーシ4に対し制動させることができる。
【0015】
その際に車両2の車輪6は、公知のようにそれらのロードグリップを失う可能性があり、しかも車両2は、たとえばここには図示されていないステアリングホイールを介して設定された軌跡から、アンダーステアリングまたはオーバーステアリングによって離れる方向に移動する。このことは、アンチロックシステムおよび走行ダイナミック制御といったそれ自体公知の制御回路によって回避される。
【0016】
本実施形態によれば、車両2はそのために車輪6のところに、車輪6の回転数12を検出する車輪情報伝送装置10を有する。さらに車両2は、車両2の走行ダイナミックデータ16を検出する慣性センサ14を有し、走行ダイナミックデータはたとえば、ピッチレート、ロールレート、ヨーレート、横方向加速度、長手方向加速度、または垂直方向加速度を含むことができる。
【0017】
検出された回転数12と走行ダイナミックデータ16とに基づき、コントローラ18の形態の評価装置は公知のように、車両2が車線上でスリップしているのか、またはそれどころか上述の設定された軌跡から逸脱しているのか、を判定することができ、これに応じてそれ自体公知のコントローラ出力信号20によって、それに対して対応措置をとることができる。次いで、調整装置22によりコントローラ出力信号20を用いることができ、これによってブレーキ8などの調整部材を調整信号24によって制御し、この調整部材は、スリップおよび設定された軌跡からの逸脱に対し、それ自体公知の手法で応答する。
【0018】
図2には、図1の走行ダイナミック制御における車輪情報伝送装置10のうちの1つの概略図が示されている。
【0019】
車輪情報伝送装置10は回転数センサ11を含み、本実施形態によればアクティブ回転数センサとして実装されており、このセンサは、位置固定されて車輪6に取り付けられたエンコーダホイール26と、位置固定されてシャーシ4に取り付けられた読み取りヘッド28とを含む。以降、本明細書においては、磁気エンコーダホイール26であるものとして言及する。ただし、これまでパッシブ回転数センサにおいて使用されていたような強磁性エンコーダまたは磁極ホイールを用いることもできる。重要な技術的相違点は、このケースでは、必要とされる磁界が読み取りヘッド28の後方に固定的に組み込まれた磁石によって生成される、ということにある。
【0020】
エンコーダホイール26は、本実施形態によれば、隣り合って並置されたN磁極30とS磁極32とから成り、これらの磁極が合わさって、ここには図示されていない発振器磁界が励磁される。車輪6に取り付けられたエンコーダホイール26がこれと共に回転方向34に回転すれば、発振器磁界が一緒に回転する。読み出しヘッド28は、本実施形態によれば磁歪素子であり、これはエンコーダホイール26により励磁された発振器磁界の角度位置に依存して、自身の電気抵抗を変化させる。
【0021】
回転数12を検出するために、エンコーダホイール26の角度位置の変化、ひいては読み出しヘッド28の電気抵抗の変化、が検出される。抵抗変化によって、N磁極30およびS磁極32の個数に相関する立ち上がり縁および立ち下がり縁を有する信号が生成される。この目的で読み取りヘッド28を公知のように、ここには図示されていないたとえば公知のブリッジ回路のような抵抗測定回路に接続することができる。読み取りヘッド28の電気抵抗に依存して、以下では回転数発生器信号36と称する周期的な出力信号が抵抗測定回路において生成される。回転数発生器信号36に基づき公知のように、読み取りヘッド28の後段に配置された信号処理回路38が、回転数12に依存し図3に概略的に示したパルス信号40を生成して、コントローラ18に送出することができる。車輪情報伝送装置10はさらに、電子データ処理装置44を含み、これは部品温度のようなさらなる情報を検出し、この温度、シリアルナンバーまたは鍵のような情報およびさらなる情報を記憶して伝達することができる。データ処理装置44はこの実施例によれば、任意選択的に回転数センサ11内に設けられている。
【0022】
図3には、パルス信号40が時間48の軸上に電流値46の形式で示されている。
【0023】
パルス信号40は回転数12に関する情報を、以下ではハイパルスレベル51と称する第1のパルスレベル51を有する速度パルス50として搬送する。この速度パルス50は最高優先度で伝送され、つまりこのことは、1つの比較的短い周期72において、1つの速度パルス50の伝送により他のすべての情報の伝送が後回しにされるかまたは中断される、ということを意味する。
【0024】
速度パルス50のほか、パルス信号40内に少なくとも1つのさらなる情報パルス52~68が取り込まれ、この情報パルスは伝送すべき情報に依存してたとえば、以下ではミディアムパルスレベル70と称する第2のパルスレベル70、または以下ではローパスルレベル71と称する第3のパルスレベル71を有することができる。図3の場合、見やすくするために、すべての情報パルス52~68はミディアムパルスレベル70によって描かれている。あるパルスが論理値0をとるか1をとるかは、マンチェスタ符号化に基づき実装される。この場合、パルス中心に対しミディアムパルスレベル70まで立ち上がる側縁は、論理値1として値が定められ、パルス中心に対しローパスルレベル71まで立ち下がる側縁は、論理値0として評価される。本実施形態によれば、自動車業界の研究チームによるそれ自体公知のAKプロトコルに基づき、速度パルス50の後、パルス信号40に9つの情報パルス52~68が取り込まれる。その際に各情報パルス52~68は、ビット#0~#8を搬送する。AKプロトコルは従来すでに、図2には示されていないエンコーダホイール26と読み取りヘッド28との間のエアギャップを監視するために用いられていたものであり、この場合、個々の情報パルス52~68は、下記のとおり以下のようにして割り当てられていた。すなわち、AKプロトコル4.0の仕様書によれば、自由に利用可能なビットを有する2つのグループが形成されている。参照符号74が付されたグループ1は、参照符号54~56の付された2つのビット#1および#2を有し、参照符号76の付されたグループ2は、参照符号62~66の付された3つのビット#5~#7を有する。以下の表には、すでに付加的に割り当てられたビット#1、#5~#7が示されており、これらは自動車業界では往々にしてこのように割り当てられる。
【0025】
【表1】
【0026】
車両の場合、車輪回転数センサシステムの信号チェーンとして、車両2のすべての車輪回転数センサ11の車輪回転数12が、以下では例示的にコントローラ18であるとする制御装置において合流し、それらを制御装置18のほか、多数のさらなる車両システムのために処理して供給することができる。
【0027】
9つのビットの形態でリストアップされたこれらの情報は、速度パルス50後にデータパケットとして、エンコーダホイール26の歯のエッジごとに内部抵抗の変化およびそれにより引き起こされる電流の変調によって、疑似パラレルに伝送される。この場合、パラレル伝送とは、データパケットの各ビットが1つの特定の情報に割り当てられており、すべてのビットが同時に伝送される、ということを意味する。疑似パラレル伝送とは、データパケットの各ビットが1つの特定の情報に割り当てられており、たとえデータパケットの伝送がシーケンシャルに行われるにしても、データパケットのレベルではすべてのビットが同時に伝送される、ということを意味する。このことが当てはまるのは特に、ビット#0~#8が固有のデータチャネルと見なされるAKプロトコルの場合のように、それらのデータチャネルが同期時分割多重方式で伝送される場合である。パラレル伝送および疑似パラレル伝送は、各ビットが基本的に1つの情報と固定的にリンクされている、という点で共通している。
【0028】
よって、100個のN磁極30と100個のS磁極32とを有する、商用車に一般的に組み込まれているエンコーダホイール26の場合には、ホイールが1回転するたびに立ち上がり信号側縁もしくは立ち下がり信号側縁ごとに、200個のデータパケットを伝送することができる。
【0029】
AKプロトコルの場合、データパケットにおいてビット#2は利用されない。疑似パラレルデータパケットにおける単に1つのビットとして、伝送可能な情報が制限されている。よって、この実施例によれば、このビット#2は、シリアルデータ伝送チャネルとして使用される。シーケンシャルデータ伝送とは、1つのビットが固定的な意味に割り当てられておらず、伝送される情報が、複数の連続的に伝送されるデータパケットの個々のビット#2から合成される、ということを意味する。この実施例では、AKプロトコルは、それ以外についてはそのまま維持されている。商用車の場合、シリアルプロトコルが伝送される予期される周波数範囲は、3~900Hzの間に位置している。さらに回転数センサ11は通常、静止状態識別を行うことができ、速度が低くなって以降、そのつど150m秒後に静止状態信号を供給する。これは約3.3Hzの周波数に相応する。通信速度は、車輪の回転数に従って変化し得る。センサ側では、0Hz~2000Hzの範囲が可能である。車輪が速く回転すればするほど、次の速度パルスが速く到来する。データパケットの伝達が終了する前に次の速度パルスが発生するならば、AKプロトコルのデータパケットがそれに応じて切り離される。最後のビット#8、すなわちパリティビットは、ほぼ900Hz(約100km/h)のときに、相応にすでに早めに切り離される。ビット#2までのすべてのビットがカットに至るまでには、約2000Hz(>200km/h)が必要とされる。よって、トラック(およびたいていの乗用車)の通常の運転走行中であれば、すべてのビットを利用することができる。パリティビットを介して、伝送されるすべてのビットをエラーについてチェックすることができる。かくして本発明によるシリアル通信を介して、伝送される情報が妥当であることも保証される。シリアル通信は、パリティビットを介して妥当性チェックされている。速度が低いならば、シリアルデータ流も緩慢になる。この場合、これに対抗するために、可変の速度を有する情報伝送を適用することができる。遅い速度または静止状態のときには、発明者の視点によれば、温度の伝送だけしか意味がない。したがって速度に依存して、いっそう多いまたはいっそう少ない情報ブロックを伝送することができる。
【0030】
慣用のように、回転数センサ11は、80ビットから成るシリアルナンバーを記憶し、-40℃~+210℃までの部品温度を、8ビットを有する値において検出する。
【0031】
この実施例の場合、ビット#2を介して伝送されるシリアルデータ伝送プロトコルが、初期化ビット列を有する伝送シーケンスが生じるように、実装されている。この実施例によれば、初期化ビット列は、常に“010101”(2A HEX)の形態である7ビット長の値から成る。
【0032】
この後に、伝送すべき情報を特定する7ビット長のタイプ値が続く。つまりたとえば、値“1010100”は、続いて温度が伝送されることを表し、値“01010011”は、続いてシリアルナンバーが伝送されることを表す。
【0033】
この後に、伝送すべき情報のビットの長さを表す7ビット長の長さ値が続く。温度を伝送する場合には、8ビット長の値を伝送しなければならず、したがって値“0001000”を送出する必要がある。シリアルナンバーを伝送する場合には、80ビット長の値を伝送しなければならず、したがってここでは値“1010000”を伝送する必要がある。
【0034】
これに続いてデータ値において、予め知らせた長さの本来の情報の伝送が行われる。
【0035】
このプロトコルによれば、0~128ビットの長さの有効データが可能である。21ビット長のヘッダ情報を含め、伝送シーケンスは21~149ビットの長さを有し、回転数センサ11の場合、1車輪回転内に200個の信号側縁によって伝送する。最小のケースの場合、すなわち車輪静止状態では、伝送レートは6.6ビット/秒となる。このため伝送シーケンスの伝送期間は、3.15秒~22.35秒となる。この実施例の1つの有利な発展形態によれば、回転数が低いときには、たとえば温度のためのものなどのような短い伝送シーケンスだけが伝達される(4.35秒未満)。
【0036】
この実施例によれば、以下の伝送情報が定義されている。
【0037】
【表2】
【0038】
この実施例の1つの有利な発展形態によれば、タイプ値、長さ値およびデータ値のデータ伝送が暗号化される。この目的で、公開鍵/秘密鍵システムを使用することができ、これによればコントローラ18には回転数センサの公開鍵が既知であり、または回転数センサは、使用される公開鍵を伝送シーケンスによって通知する。
【0039】
シリアルデータ伝送をチェック値、たとえばCRC値、によって終了させることができ、これによってシリアルデータ伝送の妥当性チェックが可能となる。
【0040】
保護として、メッセージに番号を付け加えることができる。受信機は、目下最大の連続番号を有するメッセージだけしか承認しない。本発明によれば、連続番号をたとえば、センサの実行時間とすることができ、または走行距離としてもよい。このようにすれば、通信の暗号化および実行時間または走行距離に関する情報について改善策が得られる。しかもこの情報を、タコグラフに対する異議および妥当性チェックの際に利用することができる。
【0041】
この実施例の1つの有利な発展形態によれば、AKプロトコルにおいて、シリアル伝送チャネルとしてビット#2だけではなく、たとえばビット#1または#5~#7も用いることができる。AKプロトコルの改訂版4.0によれば、これらのビットは任意に割り当て可能である。
【0042】
コントローラ18は、これがシリアル伝送された情報を検出して評価できるよう、ソフトウェア側で整合されている。しかしながら本発明によるセンサを、慣用のコントローラ18と共に使用することもでき、この場合にはシリアル伝送された情報は無視され、システムはそれ以外については機能したまま維持される。
【0043】
実施例は、請求項により定義されているような本発明の例示的な構成として想定されているにすぎず、請求項により定義されている本発明の限定を表すものではない。当業者には自明のとおり、請求項の保護範囲の枠内で、実施例とは相違する可能性のある構成が可能である。
【0044】
明細書中、用語「および」、「または」、さらに「であるかまたは~のいずれか」は、論理的接続詞の意味での結合詞(数学的なAND)として、論理的付加詞の意味での結合詞(数学的なOR、しばしば「および/または」とも)として、もしくは論理的な逆の合致の意味での結合詞として(数学的な排他的OR)、用いられる。
【0045】
明細書または請求項に記載された方法のステップは、必要とされる方法のステップのリストアップという役割を果たしているにすぎない。それらのステップは、順序が明示的に記載されているか、または当業者にとって必要であると思われる箇所においてのみ、順序を含意している。特にこのリストアップは、確定的な列挙を含意するものではない。
【符号の説明】
【0046】
2 商用車
4 シャーシ
6 車輪
8 ブレーキ
10 車輪情報伝送装置
11 回転数センサ
12 回転数
14 慣性センサ
16 走行ダイナミックデータ
18 コントローラ
20 コントローラ出力信号
22 調整装置
24 調整信号
26 エンコーダホイール
28 読み取りヘッド
30 N磁極
32 S磁極
34 回転方向
36 回転数発生器信号
38 信号処理回路
40 パルス信号
44 データ処理装置
46 電流値
48 時間
50 速度パルス
51 ハイパルスレベル
52~68 情報パルス
70 ミディアムパルスレベル
71 ローパスルレベル
72 周期
74 グループ1
76 グループ2
図1
図2
図3