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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】超伝導体シャントを備えた冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/10 20230101AFI20240116BHJP
   H10N 10/01 20230101ALI20240116BHJP
   H10N 10/17 20230101ALI20240116BHJP
【FI】
H10N60/10 Z
H10N10/01
H10N10/17
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022534834
(86)(22)【出願日】2020-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 US2020061700
(87)【国際公開番号】W WO2021145957
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】16/741,341
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】プシビシュ、ジョン エックス.
(72)【発明者】
【氏名】ヤング、ロバート エム.
(72)【発明者】
【氏名】ハサウェイ、アーロン アシュリー
(72)【発明者】
【氏名】エングブレヒト、エドワード アール.
(72)【発明者】
【氏名】リリー、モニカ ピー.
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08301214(US,B1)
【文献】COURTOIS, Herve et al.,“High-performance electronic cooling with superconducting tunnel junctions”,Comptes Rendus Physique,2016年12月,Vol. 17, No. 10,p.1139-1145,DOI: 10.1016/j.crhy.2016.08.010
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/10
H10N 10/17
H10N 10/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体冷却装置であって、
第1の超伝導体シャントと、
前記第1の超伝導体シャント上に配置された第1の常伝導金属パッドと、
前記第1の常伝導金属パッド上に配置されるとともに間隙によって互いに分離された第1の絶縁体層および第2の絶縁体層と、
前記第1の絶縁体層上に配置された第1の超伝導体パッドおよび前記第2の絶縁体層上に配置された第2の超伝導体パッドと、
前記第1の超伝導体パッドに結合された第1の導電性パッドおよび前記第2の超伝導体パッドに結合された第2の導電性パッドと、を備え、
前記第1の導電性パッドと前記第2の導電性パッドとの間にバイアス電圧が印加されることにより前記第1の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去され、前記第1の超伝導体シャントが前記固体冷却装置全体における電流分布を均一化する、固体冷却装置。
【請求項2】
前記第1の導電性パッドおよび前記第2の導電性パッドの各々は常伝導金属で形成されており準粒子トラップとして機能する、請求項1に記載の固体冷却装置。
【請求項3】
前記第1の導電性パッド上に配置された第2の超伝導体シャントと、前記第2の導電性パッド上に配置された第3の超伝導体シャントとをさらに備え、
前記第2の超伝導体シャントと前記第3の超伝導体シャントとの間にバイアス電圧が印加されることにより前記第1の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去され、前記第2の超伝導体シャントが前記第1の導電性パッドにおける電流分布を均一化し、前記第3の超伝導体シャントが前記第2の導電性パッドにおける電流分布を均一化する、請求項1に記載の固体冷却装置。
【請求項4】
前記第1の導電性パッドは、第1の導電性コンタクトのセットによって前記第1の超伝導体パッドに結合されており、前記第2の導電性パッドは、第2の導電性コンタクトのセットによって前記第2の超伝導体パッドに結合されており、前記第2の超伝導体シャントが前記第1の導電性コンタクトのセットにおける電流分布を均一化し、前記第3の超伝導体シャントが前記第2の導電性コンタクトのセットにおける電流分布を均一化する、請求項3に記載の固体冷却装置。
【請求項5】
前記第1の超伝導体シャントが第1の基板上または該第1の基板内に配置されており、前記第2の超伝導体シャントおよび前記第3の超伝導体シャントが第2の基板上または該第2の基板内に配置されている、請求項4に記載の固体冷却装置。
【請求項6】
前記第1の基板における前記第1の超伝導体シャントの側とは反対側に温度センサが配置されている、請求項5に記載の固体冷却装置。
【請求項7】
第2の超伝導体シャントであって、前記第1の超伝導体シャントおよび前記第2の超伝導体シャントが第1の基板上または該第1の基板内に配置されるとともに間隙によって互いに分離されている、前記第2の超伝導体シャントと、
前記第2の超伝導体シャント上に配置された第2の常伝導金属パッドと、
前記第2の常伝導金属パッド上に配置されるとともに間隙によって分離された第3の絶縁体層および第4の絶縁体層と、
前記第3の絶縁体層上に配置された第3の超伝導体パッドおよび前記第4の絶縁体層上に配置された第4の超伝導体パッドであって、前記第2の導電性パッドの第1の端部が前記第2の超伝導体パッドに結合されており、前記第2の導電性パッドの第2の端部が前記第3の超伝導体パッドに結合されている、前記第3の超伝導体パッドおよび前記第4の超伝導体パッドと、
前記第4の超伝導体パッドに結合された第3の導電性パッドと、
をさらに備える請求項1に記載の固体冷却装置。
【請求項8】
複数の冷凍ステージを備える冷凍システムであって、前記複数の冷凍ステージのうちの最終のステージは、冷凍容器と、請求項1に記載の固体冷却装置であって前記冷凍容器に関して配置された複数の固体冷却装置とを含む、冷凍システム。
【請求項9】
固体冷却装置を製造する方法であって、
第1の基板上または該第1の基板内に第1の超伝導体シャントを形成すること、
前記第1の超伝導体シャント上に第1の常伝導金属パッドを形成すること、
前記第1の常伝導金属パッド上に絶縁体層を形成すること、
前記絶縁体層上に超伝導体層を形成すること、
前記超伝導体層上にパターンマスクを形成すること、
エッチング処理を実行して前記パターンマスクに基づいて前記超伝導体層の一部と前記絶縁体層の一部とを除去することにより、前記第1の常伝導金属パッドと、前記第1の常伝導金属パッドを覆う第1の絶縁体層と、前記第1の絶縁体層を覆う第1の超伝導体パッドとを含む第1の常伝導金属-絶縁体-超伝導体(NIS)接合部と、前記第1の常伝導金属パッドと、前記第1の常伝導金属パッドを覆う第2の絶縁体層と、前記第2の絶縁体層を覆う第2の超伝導体パッドとを含む第2のNIS接合部とを形成することを含み、前記第1のNIS接合部と前記第2のNIS接合部とが間隙によって互いに分離されている、方法。
【請求項10】
前記第1の超伝導体パッドに第1の導電性パッドを結合すること、
前記第2の超伝導体パッドに第2の導電性パッドを結合すること、
をさらに備える請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の導電性パッド上に配置される第2の超伝導体シャントを形成すること、前記第2の導電性パッド上に配置される第3の超伝導体シャントを形成すること、をさらに備え、
前記第2の超伝導体シャントと前記第3の超伝導体シャントとの間にバイアス電圧が印加されることにより前記第1の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去され、前記第2の超伝導体シャントが前記第1の導電性パッドにおける電流分布を均一化し、前記第3の超伝導体シャントが前記第2の導電性パッドにおける電流分布を均一化する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の超伝導体パッドおよび前記第1の導電性パッドのうちの一方の上に第1の導電性コンタクトのセットを形成すること、
前記第2の超伝導体パッドおよび前記第2の導電性パッドのうちの一方の上に第2の導電性コンタクトのセットを形成すること、
前記第1の導電性コンタクトのセットにより前記第1の超伝導体パッドを前記第1の導電性パッドに結合するとともに、前記第2の導電性コンタクトのセットにより前記第2の超伝導体パッドを前記第2の導電性パッドに結合すること、
をさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第2の超伝導体シャントを形成することであって、前記第1の超伝導体シャントおよび前記第2の超伝導体シャントが前記第1の基板上または該第1の基板内に配置されるとともに間隙によって互いに分離される、前記第2の超伝導体シャントを形成すること、
前記第2の超伝導体シャント上に配置される第2の常伝導金属パッドを形成することであって、前記エッチング処理により、前記第2の常伝導金属パッド上に配置されかつ間隙によって分離される第3の絶縁体層および第4の絶縁体層が形成されるとともに前記第3の絶縁体層を覆う第3の超伝導体パッドと前記第4の絶縁体層を覆う第4の超伝導体パッドとが形成される、前記第2の超伝導体シャント上に配置される第2の常伝導金属パッドを形成すること、
前記第2の導電性パッドを前記第3の超伝導体パッドに結合することであって、前記第2の導電性パッドの第1の端部が前記第2の超伝導体パッドに結合されるとともに前記第2の導電性パッドの第2の端部が前記第3の超伝導体パッドに結合される、前記第2の導電性パッドを前記第3の超伝導体パッドに結合すること、
第3の導電性パッドを前記第4の超伝導体パッドに結合すること、
をさらに備える請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の導電性パッド上に配置される第3の超伝導体シャントを形成すること、
前記第2の導電性パッド上に配置される第4の超伝導体シャントを形成すること、
前記第3の導電性パッド上に配置される第5の超伝導体シャントを形成すること、
をさらに備え、
前記第3の超伝導体シャントと前記第5の超伝導体シャントとの間にバイアス電圧が印加されることにより前記第1の常伝導金属パッドおよび前記第2の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去され、前記第3の超伝導体シャントが前記第1の導電性パッドにおける電流分布を均一化し、前記第4の超伝導体シャントが前記第2の導電性パッドにおける電流分布を均一化し、前記第5の超伝導体シャントが前記第3の導電性パッドにおける電流分布を均一化する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第3の超伝導体シャントの端部に結合される第1の端子を形成すること、前記第5の超伝導体シャントの端部に結合される第2の端子を形成すること、をさらに備え、
前記第1の端子と前記第2の端子との間にバイアス電圧が印加されることにより前記第1の常伝導金属パッドおよび前記第2の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して冷凍に関し、具体的には、超伝導体シャントを備えた冷却装置に関する。本願は、2020年1月13日に出願された米国特許出願第16/741,341号に基づく優先権を主張するものであり、その全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
バイアス電圧を用いることによる常伝導金属(normal metal)-絶縁体-超伝導体(NIS)接合を介した「ホット」エレクトロンのトンネリングによる固体電子冷却は1K未満で動作することが証明されており、より一般的な室温付近のペルチェ熱電冷凍機のように実質的に動作する。これらのNISクライオ冷却器は、超伝導回路で使用されるジョセフソン接合と同じ材料かつ同じリソグラフィ製造工程で構成されており、ジョセフソン接合の構成要素と基本的には完全に互換性がある。これらは、ジョセフソン接合それ自体と共に一体化されて同時に製造され得る。しかしながら、現在、NIS冷却器の温度スローは非常に限られており、高温側と低温側の最大温度差は約150mKである。
【0003】
NIS冷却器の最大性能に対する主な制限の1つは、装置を流れる大電流から生じる非平衡準粒子が超伝導リード内に存在することである。超伝導体中の低い準粒子緩和速度と熱伝導率は、接合部の近傍でこれらのホットパーティクルを結合して超伝導電極の深刻な過熱をもたらす。超伝導体中の準粒子の蓄積を減らすためのいくつかの方法がある。最も一般的な方法は、準粒子トラップと呼ばれる超伝導体に結合される常伝導金属を使用することにより、準粒子を常伝導金属に移動させて電子-電子および電子-フォノンの相互作用によってエネルギーを緩和することである。この装置は、常伝導金属-絶縁体-超伝導体-常伝導(NISN)接合と呼ばれる。
【発明の概要】
【0004】
一実施例において、第1の超伝導体シャントと、前記第1の超伝導体シャント上に配置された第1の常伝導金属パッドと、前記第1の常伝導金属パッド上に配置されるとともに間隙によって互いに分離された第1の絶縁体層および第2の絶縁体層とを含む固体冷却装置が提供される。前記固体冷却装置はさらに、前記第1の絶縁体層上に配置された第1の超伝導体パッドおよび前記第2の絶縁体層上に配置された第2の超伝導体パッドと、前記第1の超伝導体パッドに結合された第1の導電性パッドと、前記第2の超伝導体パッドに結合された第2の導電性パッドとを備える。前記第1の導電性パッドと前記第2の導電性パッドとの間にバイアス電圧が印加されることにより前記第1の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去され、前記第1の超伝導体シャントが前記固体冷却装置全体における電流分布を均一化する。
【0005】
別の実施例において、固体冷却装置を製造する方法が提供される。この方法は、第1の基板上または該第1の基板内に第1の超伝導体シャントを形成すること、前記第1の超伝導体シャント上に第1の常伝導金属パッドを形成すること、前記第1の常伝導金属パッド上に絶縁体層を形成すること、および前記絶縁体層上に超伝導体層を形成することを含む。前記方法はさらに、前記超伝導体層上にパターンマスクを形成すること、エッチング処理を実行して前記パターンマスクに基づいて前記超伝導体層の一部と前記絶縁体層の一部とを除去することにより、前記第1の常伝導金属パッド、前記第1の常伝導金属パッドを覆う第1の絶縁体層、および前記第1の絶縁体層を覆う第1の超伝導体パッドを含む第1の常伝導金属-絶縁体-超伝導体(NIS)接合部と、前記第1の常伝導金属パッド、前記第1の常伝導金属パッドを覆う第2の絶縁体層、および前記第2の絶縁体層を覆う第2の超伝導体パッドを含む第2のNIS接合部と、を形成することを含み、前記第1のNIS接合部と前記第2のNIS接合部とは間隙によって互いに分離されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、固体冷却装置の断面図を示す。
図2図2は、超伝導体シャントを備えない固体冷却装置の一部の電流密度フロー図を示す。
図3図3は、超伝導体シャントを備えた固体冷却装置の一部の電流密度フロー図を示す。
図4図4は、製造初期段階における固体冷却器の第1部分の断面図を示す。
図5図5は、エッチング処理とフォトレジスト材料層の剥離とを行った後の図4の構造の概略断面図を示す。
図6図6は、超伝導体堆積処理を行った後の図5の構造の概略断面図を示す。
図7図7は、化学的機械的研磨を行った後の図6の構造の概略断面図を示す。
図8図8は、誘電体層に常伝導金属パッドを形成した後の図7の構造の概略断面図を示す。
図9図9は、絶縁体材料の堆積処理後の図8の構造の概略断面図を示す。
図10図10は、超伝導体材料の堆積処理後の図9の構造の概略断面図を示す。
図11図11は、フォトレジストの堆積およびパターニング処理後にエッチング処理が行われているときの図10の構造の概略断面図を示す。
図12図12は、エッチング処理後にフォトレジスト材料層を剥離した後の図11の構造の概略断面図を示す。
図13図13は、裏面薄化処理後に温度センサを形成した後の図12の構造の概略断面図を示す。
図14図14は、フォトレジスト材料層の堆積およびパターニング後にエッチング処理が行われているときの製造初期段階における固体冷却器の第2部分の断面図を示す。
図15図15は、エッチング処理後にフォトレジスト材料層を除去した後の図14の構造の概略断面図を示す。
図16図16は、導電性材料の堆積処理後の図15の構造の概略断面図を示す。
図17図17は、導電性コンタクトを形成した後の図16の構造の概略断面図を示す。
図18図18は、図17の冷却器の第2部分を反転して図13の冷却器の第1部分に結合することにより形成された固体冷却器を示す。
図19図19は、図1の固体冷却装置などの固体装置を使用する冷凍システムのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、複数のNISまたはNISN接合部を含む固体冷却装置であって、それら接合部を形成するNIS装置の常伝導層(N)の表面上またはNISN装置の両方の常伝導層の表面上に超伝導体シャント(shunt)層が配置された固体冷却装置に関する。超伝導体シャント層は、より低い抵抗経路を提供することによって常伝導金属層からの電流を短絡する。常伝導金属に流れる電流が代わりに超伝導体シャント層を流れることで、常伝導金属層に関連するオーム損失が排除される。したがって、超伝導体は常伝導金属におけるI×R損失を防ぐように作用してNIS冷却器の全体的な効率を向上させる。
【0008】
接合部は特定のA/cmで動作するように設計されているため、接合部全体における電流分布は重要である。接合部を流れる電流がより小さな領域に集中する場合、局所的なA/cmが設計よりも高くなり、その結果、接合部は正常に駆動されると熱を発生し始める。また、バンプ接合部全体における電流分布も懸念される。これは、バンプ接合部が特定の電流に合わせたサイズであり、電流が増加するとバンプ接合部も熱を発生し始めるためである。したがって、NIS接合部の常伝導層またはNISN接合部の両方の常伝導層に超伝導体シャントを設けることで、バンプ接合部の不均一な電流分布を防ぎつつ、接合部を流れるときに電流が局所的に集中することを防ぐ。超伝導体シャントは、NIS接合部およびバンプ接合部の全体における均一な電流密度を促進し、NIS接合部における不均一な電流の流れによる発熱を軽減する。
【0009】
いくつかの実装において、NISまたはNISN接合部は、常伝導金属に銅を使用して形成される。NISまたはNISNの製造が現在の半導体製造プロセスとの互換性を有するには、接合部が形成される前に常伝導金属が堆積される必要がある。したがって、超伝導体製造プロセスとの互換性を有する常伝導金属が使用される必要がある。これらの互換性のある常伝導金属は非常に高い抵抗を有するため、NISまたはNISN冷却器におけるトンネル接合部下の常伝導金属層で大きなI×R損失が発生する。超伝導体シャント層は、NISまたはNISN接合の常伝導金属層を流れる電流のための低抵抗の経路を提供してI×R損失を低減することで、電流密度の均一化を図る。
【0010】
一例において、NISまたはNISN接合部は各々、チタンタングステン合金(TiW)またはチタン(Ti)で形成された常伝導金属層と、酸化アルミニウムまたは他の絶縁体で形成された絶縁体と、インジウム、ニオブ、アルミニウム、または他の超伝導金属で形成された超伝導体層とを含む。常伝導金属は、極低温の操作装置の温度で超伝導を起こさない金属である。NISまたはNISN装置内の絶縁体は、2つの材料の界面でバンドの相対レベルが変化し得ることから、常伝導金属と超伝導体材料との間のバンドギャップの制御を容易化するものである。また、この絶縁体は、低温の常伝導金属への熱の戻りを妨げることから、超伝導体金属から常伝導金属への熱の戻りを妨げる。
【0011】
図1は、均一な電流密度をもたらすための超伝導体シャント層を備えた1つまたは複数のNISまたはNISN装置を使用する固体冷却装置10の一例の断面図を示す。固体冷却装置10は、極低温冷却用途で使用される冷凍ステージとして構成され得るものであり、この固体構造は、真空中に存在して超伝導回路を保持する冷凍容器に関して配置される複数の固体冷却装置のうちの1つである。複数の固体構造は、極低温冷凍システムの最終ステージを提供し、低温側の冷凍ステージから熱を除去することによって効率的な冷却を可能にするとともに、複数の冷凍ステージのうちの最後の冷凍ステージの高温側からの熱の戻りを防ぐことができる。
【0012】
図1に示されるように、固体冷却装置10は、冷凍ステージの低温側に配置された第1の基板12と、冷凍ステージの高温側に配置された第2の基板32とを含む。第1の基板12は超伝導回路を含む第1のチップであってよく、第2の基板32は従来型のまたは超伝導回路を含む第2のチップであってよい。あるいは、第1および第2の基板12,32は、半導体または絶縁体などの材料の固体ブロックであってよい。第1の超伝導体シャント層26は第1の基板12内に配置されており、第2の超伝導体シャント層27は、第1の超伝導体シャント層26に隣接して第1の基板12内に配置されるとともに間隙15によって分離されている。第1の常伝導金属パッド14は第1の超伝導体シャント層26の上面に配置されており、第2の常伝導金属パッド16は第2の超伝導体シャント層27の上面に配置されている。第1の常伝導金属パッド14および第2の常伝導金属パッド16は誘電体層13内に配置されており、チタンタングステン(TiW)またはチタン(Ti)などの常伝導金属で形成されている。第1の超伝導体シャント層26および第2の超伝導体シャント層27は、ニオブ(Nb)などの超伝導体材料で形成され得る。温度センサ50は、第1の基板12の下側に位置しており、酸化ルテニウムで形成され得る。
【0013】
第1の絶縁体層28は、第1の常伝導金属パッド14の第1の端部上に配置されており、第2の絶縁体層29は、第1の常伝導金属パッド14の第2の端部上に配置されて第1の絶縁体層28とは間隙49によって分離されている。第3の絶縁体層35は、第2の常伝導金属パッド16の第1の端部上に配置されており、第4の絶縁体層41は、第2の常伝導金属パッド16の第2の端部上に配置されて第3の絶縁体層35とは間隙51によって分離されている。一例では、第1、第2、第3、および第4の絶縁体層は酸化アルミニウムで形成されている。第1の絶縁体層28は第1の超伝導体パッド30でキャップされており、第2の絶縁体層29は第2の超伝導体パッド31でキャップされており、第3の絶縁体層35は第3の超伝導体パッド37でキャップされており、第4の絶縁体層41は第4の超伝導体パッド43でキャップされている。
【0014】
第1、第2、第3、および第4の絶縁体層28,29,35,41は、NISまたはNISNトンネル接合部に絶縁体を提供するのに十分な厚さ(例えば、約9オングストローム)を有するように選択されている。第1の常伝導金属パッド14、第1の絶縁体層28、および第1の超伝導体パッド30は、第1のNIS接合部18を形成する。第1の常伝導金属パッド14、第2の絶縁体層29、および第2の超伝導体パッド31は、第2のNIS接合部20を形成する。第2の常伝導金属パッド16、第3の絶縁体層35、および第3の超伝導体パッド37は、第3のNIS接合部22を形成する。第2の常伝導金属パッド16、第4の絶縁体層41、および第4の超伝導体パッド43は、第4のNIS接合部24を形成する。
【0015】
第1、第2、第3、および第4のNIS接合部18,20,22,24の各々は、複数の導電性パッド(例えば、金パッド)に対する複数の導電性コンタクト40(例えば、金などの常伝導金属)を介して第2の基板32に結合されている。第1、第2、第3、および第4のNIS接合部18,20,22,24は第1の基板12上にあるものとして示されているが、第1、第2、第3、および第4のNIS接合部18,20,22,24またはその一部は第1の基板12内に埋め込まれてもよい。複数の導電性コンタクト40は、第1の基板12と第2の基板32との機械的接合部として機能するとともに、電流および熱の両方を輸送するように機能する複数のバンプ接合部であり得る。
【0016】
第1の導電性パッド34は第2の基板32内に位置しており、第1の導電性コンタクトのセットを介して第1の超伝導体パッド30に結合されている。第1の導電性パッド34は、第1のNIS接合部18が第1のNISN接合部を形成するための準粒子トラップとして機能し得る。第2の導電性パッド36は第2の基板32内に位置しており、第2の導電性コンタクトのセットを介して第2の超伝導体パッド31に結合される第1の端部を有している。第2の導電性パッド36の第2の端部は、第3の導電性コンタクトのセットを介して第3の超伝導体パッド37に結合されている。第3の導電性パッド38は第2の基板32内に位置しており、第4の導電性コンタクトのセットを介して第4の超伝導体パッド43に結合されている。
【0017】
第3の超伝導体シャント層52が第1の導電性パッド34上に配置されており、第4の超伝導体シャント層53が第2の導電性パッド36上に配置されており、第5の超伝導体シャント層54が第3の導電性パッド38上に配置されている。第3の超伝導体シャント層52は、第1の導電性パッド34を超えて延在する第1のオーバーハング領域を有しており、第5の超伝導体シャント層54は、第3の導電性パッド38を超えて延在する第2のオーバーハング領域を有している。第1のコンタクト端子42は第2の基板32内に埋め込まれており、第3の超導体シャント層52の第1のオーバーハング領域に結合されるとともに第1の電気ワイヤ44に接続されている。第2のコンタクト端子46は第2の基板32内に埋め込まれており、第5の超伝導体シャント層54の第2のオーバーハング領域に結合されるとともに第2の電気ワイヤ48に接続されている。あるいは、第1の導電性パッド34、第2の導電性パッド36、および第3の導電性パッド38(ならびに42および46)は、第2の基板32を覆うものであってもよい。
【0018】
動作時において、第1の電気ワイヤ44と第2の電気ワイヤ48との間にバイアス電圧が印加されると、第1のコンタクト端子42から第2のコンタクト端子46に向けて電流が流れる。すなわち、電流は、第1のコンタクト端子42から、第3の超伝導体シャント層52、第1の導電性パッド34、第1のNISN接合部18、第1の超伝導体シャント層26、第2のNISN接合部20、第2の導電性パッド36、第4の超伝導体シャント層54、第2の導電性パッド36(逆側から)、第3のNISN接合部22、第2の超伝導体シャント層27、第4のNISN接合部24、第3の導電性パッド38、および第5の超伝導体シャント層56を通って、第2のコンタクト端子46まで流れる。バイアス電圧は、第1の常伝導金属パッド14および第2の常伝導金属パッド16上でホットエレクトロンおよびホットホールのエネルギーレベルを上昇させ、ここで、フェルミレベルより上のホットエレクトロンおよびフェルミレベルより下のホットホールは導電性パッドに向けて絶縁層を横切って超伝導パッドへとトンネルすることで第1および第2の常伝導金属パッド14,16から熱を除去する。これにより、固体冷却装置10の高温側と低温側との間の温度の低下およびデルタ温度の上昇がもたらされる。
【0019】
装置10内の常伝導金属は、金、白金などの常伝導金属か、あるいは、チタン、ルテニウム、クロム、またはそれらの組み合わせなどの超伝導転移温度を超える金属で形成され得る。超伝導金属は、インジウム、ニオブ、アルミニウム、または他のいくつかの超伝導金属などの超伝導体で形成され得る。図1の例では、4つのNIS装置またはNISN装置が示されているが、2つのNIS装置またはNISN装置の任意の倍数により、固体冷却器を上記のように動作させることができる。
【0020】
図2は、上部常伝導金属パッドと下部常伝導金属パッドとを備えた第1のNISN接合部302と第2のNISN接合部304との間を流れる電流の電流密度フロー図300を示し、図3は、上部超伝導体シャントと下部超伝導体シャントとを備えた第1のNISN接合部322と第2のNISN接合部324との間を流れる電流の電流密度フロー図320を示している。図2では、2つの接合部302,304は、常伝導金属の配線上部および下部を用いて接続されている。電流は抵抗が最も小さい経路を辿ることとなるため、電流の大部分は、上部常伝導金属層の入力端、上部常伝導金属層の入力端に最も近い最初のバンプ接合部、NISN接合部の超伝導体層、および第2のNISN接合部に最も近い位置に接続された下部常伝導金属層の接続端を通って流れる。これは、第1または第2のNISN接合部302,304のいずれにおいても上部常伝導金属層、超伝導体層、絶縁体、および下部常伝導金属層の間の境界を電流が均等に横切らないことを意味する。この結果、接合部の動作が非効率になる。
【0021】
図3では、第1および第2のNISN接合部の上部および下部に存在する超伝導体シャントを用いて2つの接合部が接続されている。図3は、電流が装置内を移動するときに電流が均等に分布することを示している。すなわち、電流は、上部超伝導体シャント、上部常伝導金属層、バンプ接合部を流れるとともに、各NISN接合部の超伝導体層、絶縁体、および常伝導金属層を流れて、最後に下部超伝導体シャントに均等に分配される。これは、各NISN接合部の上部および下部に超伝導体シャントが存在するためである。最小抵抗の経路は、接合部のすべての箇所で均一分布を可能にする超伝導体シャントを通る経路である。
【0022】
次に、図4図18を参照して、図1の固体冷却器の形成に関連した製造について説明する。本実施例は、固体冷却器の第1部分および第2部分が連続して製造されるものとして示されているが、両方の部分を同時に製造することもできるし、または最初に第2部分を製造して次に第1部分を製造する逆の順序で製造することもできる。
【0023】
図4は、製造の初期段階における固体冷却器の第1部分の断面図を示している。フォトレジスト材料層55は、第1の基板60を覆った後、フォトレジスト材料層55に開口部56を露出させるようにパターニングおよび現像される。フォトレジスト材料層55は、フォトレジスト材料層55をパターニングするために使用される放射の波長に対応して異なる厚さを有し得る。フォトレジスト材料層55は、スピンコーティングまたはスピンキャスティング堆積技術により第1の基板60上に形成されるとともに、開口部56を形成するように選択的に(例えば、深紫外線(DUV)照射により)照射されて現像され得る。
【0024】
また、図4は、第1の基板60に対してエッチング200(例えば、異方性反応性イオンエッチング(RIE))を行うことにより、フォトレジスト材料層55のパターンに基づいて第1の基板60内に拡張開口部57(図5)を形成することを示している。その後、フォトレジスト材料層55が剥離される(例えば、Oプラズマでアッシングする)ことにより、図5に示された構造が得られる。次に、図6に示されるように、構造体に対してコンタクト材料の充填を行うことにより、開口部57内に超伝導体61が堆積される。超伝導体は、標準的なコンタクト材料堆積を使用して堆積することができる。あるいは、フォトレジストリフトオフ処理を使用することができる。この超伝導体の堆積に続き、超伝導体材料が例えば化学的機械的研磨(CMP)により基板60の表面まで研磨されることにより、図7に示されるように、第1の超伝導体シャント58が第2の超伝導体シャント59と隣接しつつ間隙65によって分離されるように形成される。
【0025】
次に、第1の常伝導金属パッド62および第2の常伝導金属パッド64が第1の基板60上に集合的に存在するように誘電体層66(例えば、酸化シリコン(SiO))内に配置されることで、図8の構造が形成される。第1の常伝導金属パッド62および第2の常伝導金属パッド64は、チタンタングステン合金(TiW)またはチタン(Ti)などの常伝導金属で形成されており、第1の常伝導金属パッド62は第1の超伝導体シャント58上に配置されており、第2の常伝導金属パッド64は第2の超伝導体シャント59上に配置されている。第1の常伝導金属パッド62および第2の常伝導金属パッド64は、基板60上への誘電体層66の堆積、パターニングされたフォトレジスト層内における常伝導金属レイアウトのフォトリソグラフィ処理、誘電体層66内への常伝導金属レイアウトのエッチングによる誘電体層66内における拡張開口部の形成およびレジストの剥離、堆積された物理蒸着(physical vapor deposition)チタン(Ti)/窒化チタン(TiN)ライナー上へのタングステン(W)の化学蒸着(chemical vapor deposition)などの常伝導金属の蒸着、および誘電体層66とともに常伝導金属を平坦化するべく常伝導金属に対する化学的機械的研磨(CMP)処理によって形成され得る。
【0026】
次に、構造体に対する材料堆積が行われて図8の構造上に絶縁体層67(例えば、酸化アルミニウム)が形成されることで、図9の構造が提供される。絶縁体層67は、標準的なコンタクト材料堆積を使用して堆積することができる。あるいは、アルミニウム層を堆積および酸化することで酸化アルミニウム層が形成されてもよい。絶縁体層67は、トンネル障壁として機能するように少なくとも9オングストロームの厚さを有する。次に、超伝導体材料層69(例えば、ニオブ)が絶縁体層67の上に堆積されることで、図10の構造が提供される。超伝導体材料層69は、標準的なコンタクト材料堆積を使用して堆積することができる。
【0027】
次に、フォトレジスト材料層85が図10の構造上に形成され、超伝導体材料層69上で開口部87がパターニングされることで、図11の構造が提供される。次に、エッチング処理210が図11の構造に対して行われることで、パターニングされた開口部87が誘電体層66、第1の常伝導金属パッド62、および第2の常伝導金属パッド64まで延長される。次に、フォトレジスト材料層85が除去されることで、第1のNIS接合部86、第2のNIS接合部88、第3のNIS接合部90、および第4のNIS接合部92を含む図12の構造が提供される。
【0028】
第1のNIS接合部86は、第1の常伝導金属パッド62、第1の絶縁体層70、および第1の超伝導体パッド79で形成される。第2のNIS接合部88は、第1の常伝導金属パッド62、第2の絶縁体層72、および第2の超伝導体パッド83で形成される。第3のNIS接合部90は、第2の常伝導金属パッド64、第3の絶縁体層74、および第3の超伝導体パッド83で形成され、第4のNIS接合部92は、第2の常伝導金属パッド64、第4の絶縁体層76、および第4の超伝導体パッド85で形成される。第1、第2、第3、および第4の絶縁体層70,72,74,76は、NISまたはNISNトンネル接合部に絶縁体を提供するのに十分な厚さ(例えば、約9オングストローム)を有するように選択される。
【0029】
次に、第1の基板60の裏面が研削または化学的機械的研磨によって薄化される。任意の温度センサ84は、第1の基板60の裏面に形成され得る。この温度センサ84は、図13に示されるように、酸化ルテニウムの層を堆積し、次いで、パターニングされたフォトレジスト材料で覆った後に、酸化ルテニウムの層をエッチングすることで、第1の基板60の底部側に配置される。
【0030】
図14は、製造の初期段階における固体冷却器の第2部分を示している。フォトレジスト材料層110は、第2の基板100を覆う誘電体層108を覆っている。第2の基板100は、第3の超伝導体シャント102、第4の超伝導体シャント104、および第5の超伝導体シャント106を含む。また、図14は、誘電体層108に対してエッチング210(例えば、異方性反応性イオンエッチング(RIE))を行うことにより、フォトレジスト材料層110のパターンに基づいて誘電体層108内に拡張開口部116,118(図15)を形成して、第3の超伝導体シャント102、第4の超伝導体シャント104、および第5の超伝導体シャント106の表面を露出させることを示している。その後、フォトレジスト材料層110が剥離される(例えば、Oプラズマでアッシングする)ことにより、図15に示された構造が得られる。
【0031】
次に、構造体に対してコンタクト材料の充填を行うことにより、開口部116,118内に金が堆積される。金は、標準的なコンタクト材料堆積を使用して堆積することができる。金の堆積に続いて、第1のコンタクト端子から離間した第1の導電性パッド120と第1のコンタクト端子との双方が第3の超伝導体シャント102を覆うように形成され、第2の導電性パッド122が第4の超伝導体シャント104を覆うように形成され、第2のコンタクト端子から離間した第3の導電性パッド124と第2のコンタクト端子との双方が第5の超伝導体シャント106を覆うように形成される。あるいは、図14図16に示される処理は、フォトレジストの堆積およびパターニング、パターニングされた開口部内への金属の蒸着、および余分な金属とフォトレジストのリフトオフ処理を行うことによって置き換えることができる。
【0032】
次に、複数の導電性コンタクト130(例えば、バンプ接合部)が、第1の導電性パッド120、第2の導電性パッド122、および第3の導電性パッド124の表面上に形成される。導電性コンタクト130は、超伝導金属および/または常伝導金属から製造され得る。導電性コンタクト130は、標準的なリフトオフ処理を使用して、またはエッチングによって形成され得る。あるいは、導電性コンタクトは、堆積され得る。導電性コンタクトは、図示されるような導電性パッド上または図13の超伝導体パッド上のいずれかに形成され得る。
【0033】
次に、第2の基板100が反転されるとともに第1の基板60上に配置されて結合されることで、第3の導電性パッド124が第1の超伝導体パッド79に位置合わせされるとともに結合され、第2の導電性パッド122の第1の端部が第2の超伝導体パッド81に位置合わせされるとともに結合され、第2の導電性パッド122の第2の端部が第3の超伝導体パッド83に位置合わせされるとともに結合され、第1の導電性パッド120が第4の超伝導体パッド85に位置合わせされるとともに結合される。その結果、図18の構造が得られる。
【0034】
図19は、図1の固体冷却装置10などの固体装置を使用する冷凍システム250のブロック図を示している。冷凍システム250は、ステージ#1~ステージ#Nの複数のステージを含み、ここで、Nは、2以上の整数である。各冷凍ステージが前のステージからの追加の温度低下をもたらすことで、N番目のステージが最終ステージとなって最後の温度低下をもたらすとともに冷凍システム250の最低温度を提供する。他の例では、N番目のステージは最終ステージではなく、最初または中間のステージである。冷凍システム250におけるステージ#Nは冷凍容器260を含み、この容器には図1に示されるものと同様の複数の固体装置270が配置され、それら複数の固体装置270は容器260内で冷凍システム250の最終的な最低温度を提供するように協働する。容器260は、真空環境に位置するとともに超伝導回路を収容するように構成され得る。別の例では、他のステージの1つ以上は、ステージ#N内のものと同様な固体装置を使用することで冷凍システム250全体に段階的な温度降下を提供する。他の例では、冷凍容器260は、各固体装置270の最終的な常伝導金属層を提供する常伝導金属で形成され得る。
【0035】
説明を簡単にする目的のために、「覆う」という用語(および派生語)は、本開示全体を通じて、選択された方向における2つの隣接する表面の相対位置を示すために使用されている。さらに、本開示全体を通じて使用される「上」および「下」という用語は、選択された方向の対向する表面を示す。また、「上」および「下」という用語は、説明を目的として、選択された方向の相対位置を示す。実際、本開示全体で使用される例では、1つの選択された方向が示されている。しかしながら、記載された例では、選択された向きは任意であり、本開示の範囲内で他の向き(例えば、逆さま、90度回転など)が可能である。
【0036】
以上の説明は、本主題の開示の例示である。本開示を説明する目的のために構成要素または方法のあらゆる考えられる組み合わせを記載することは勿論不可能であり、当業者は本開示のさらなる多くの組み合わせおよび置換が可能であることを認識し得る。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲を含む本出願の範囲内に含まれるすべてのそのような代替、変形、および変更を包含することが意図される。また、本開示または請求項が「1つの~」、「第1の~」、または「別の~」という要素を列挙するかまたはそれらの同等物を列挙する場合には、1つまたは2つ以上のそのような要素を含むと解釈されるべきであり、2つ以上のそのような要素を必須とするものでも、2つ以上のそのような要素を除外するものでもない。また、本明細書において使用される「含む」という用語は、含むがそれに限定されないことを意味する。最後に、「~に基づく」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。
本開示に含まれる技術的思想を以下に記載する。
(付記1)
固体冷却装置であって、
第1の超伝導体シャントと、
前記第1の超伝導体シャント上に配置された第1の常伝導金属パッドと、
前記第1の常伝導金属パッド上に配置されるとともに間隙によって互いに分離された第1の絶縁体層および第2の絶縁体層と、
前記第1の絶縁体層上に配置された第1の超伝導体パッドおよび前記第2の絶縁体層上に配置された第2の超伝導体パッドと、
前記第1の超伝導体パッドに結合された第1の導電性パッドおよび前記第2の超伝導体パッドに結合された第2の導電性パッドと、を備え、
前記第1の導電性パッドと前記第2の導電性パッドとの間にバイアス電圧が印加されることにより前記第1の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去され、前記第1の超伝導体シャントが前記固体冷却装置全体における電流分布を均一化する、固体冷却装置。
(付記2)
前記第1の導電性パッドおよび前記第2の導電性パッドの各々は常伝導金属で形成されており準粒子トラップとして機能する、付記1に記載の固体冷却装置。
(付記3)
前記第1の導電性パッド上に配置された第2の超伝導体シャントと、前記第2の導電性パッド上に配置された第3の超伝導体シャントとをさらに備え、
前記第2の超伝導体シャントと前記第3の超伝導体シャントとの間にバイアス電圧が印加されることにより前記第1の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去され、前記第2の超伝導体シャントが前記第1の導電性パッドにおける電流分布を均一化し、前記第3の超伝導体シャントが前記第2の導電性パッドにおける電流分布を均一化する、付記1に記載の固体冷却装置。
(付記4)
前記第1の導電性パッドは、第1の導電性コンタクトのセットによって前記第1の超伝導体パッドに結合されており、前記第2の導電性パッドは、第2の導電性コンタクトのセットによって前記第2の超伝導体パッドに結合されており、前記第2の超伝導体シャントが前記第1の導電性コンタクトのセットにおける電流分布を均一化し、前記第3の超伝導体シャントが前記第2の導電性コンタクトのセットにおける電流分布を均一化する、付記3に記載の固体冷却装置。
(付記5)
前記第1の超伝導体シャントが第1の基板上または該第1の基板内に配置されており、前記第2の超伝導体シャントおよび前記第3の超伝導体シャントが第2の基板上または該第2の基板内に配置されている、付記4に記載の固体冷却装置。
(付記6)
前記第1の導電性コンタクトのセットおよび前記第2の導電性コンタクトのセットがバンプ接合部であり、前記バンプ接合部により前記第1の基板が前記第2の基板に結合されている、付記5に記載の固体冷却装置。
(付記7)
前記第1の基板における前記第1の超伝導体シャントの側とは反対側に温度センサが配置されている、付記5に記載の固体冷却装置。
(付記8)
第2の超伝導体シャントであって、前記第1の超伝導体シャントおよび前記第2の超伝導体シャントが第1の基板上または該第1の基板内に配置されるとともに間隙によって互いに分離されている、前記第2の超伝導体シャントと、
前記第2の超伝導体シャント上に配置された第2の常伝導金属パッドと、
前記第2の常伝導金属パッド上に配置されるとともに間隙によって分離された第3の絶縁体層および第4の絶縁体層と、
前記第3の絶縁体層上に配置された第3の超伝導体パッドおよび前記第4の絶縁体層上に配置された第4の超伝導体パッドであって、前記第2の導電性パッドの第1の端部が前記第2の超伝導体パッドに結合されており、前記第2の導電性パッドの第2の端部が前記第3の超伝導体パッドに結合されている、前記第3の超伝導体パッドおよび前記第4の超伝導体パッドと、
前記第4の超伝導体パッドに結合された第3の導電性パッドと、
をさらに備える付記1に記載の固体冷却装置。
(付記9)
前記第1の導電性パッド上に配置された第3の超伝導体シャントと、前記第2の導電性パッド上に配置された第4の超伝導体シャントと、前記第3の導電性パッド上に配置された第5の超伝導体シャントとをさらに備え、前記第3の超伝導体シャントと前記第5の超伝導体シャントとの間にバイアス電圧が印加されることにより前記第1の常伝導金属パッドおよび前記第2の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去され、前記第3の超伝導体シャントが前記第1の導電性パッドにおける電流分布を均一化し、前記第4の超伝導体シャントが前記第2の導電性パッドにおける電流分布を均一化し、前記第5の超伝導体シャントが前記第3の導電性パッドにおける電流分布を均一化する、付記8に記載の固体冷却装置。
(付記10)
前記第3の超伝導体シャントの端部に結合された第1の端子と、前記第5の超伝導体シャントに結合された第2の端子とをさらに備え、前記第1の端子と前記第2の端子との間にバイアス電圧が印加されることにより前記第1の常伝導金属パッドおよび前記第2の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去される、付記9に記載の固体冷却装置。
(付記11)
複数の冷凍ステージを備える冷凍システムであって、前記複数の冷凍ステージのうちの最終のステージは、冷凍容器と、付記1に記載の固体冷却装置であって前記冷凍容器に関して配置された複数の固体冷却装置とを含む、冷凍システム。
(付記12)
固体冷却装置を製造する方法であって、
第1の基板上または該第1の基板内に第1の超伝導体シャントを形成すること、
前記第1の超伝導体シャント上に第1の常伝導金属パッドを形成すること、
前記第1の常伝導金属パッド上に絶縁体層を形成すること、
前記絶縁体層上に超伝導体層を形成すること、
前記超伝導体層上にパターンマスクを形成すること、
エッチング処理を実行して前記パターンマスクに基づいて前記超伝導体層の一部と前記絶縁体層の一部とを除去することにより、前記第1の常伝導金属パッドと、前記第1の常伝導金属パッドを覆う第1の絶縁体層と、前記第1の絶縁体層を覆う第1の超伝導体パッドとを含む第1の常伝導金属-絶縁体-超伝導体(NIS)接合部と、前記第1の常伝導金属パッドと、前記第1の常伝導金属パッドを覆う第2の絶縁体層と、前記第2の絶縁体層を覆う第2の超伝導体パッドとを含む第2のNIS接合部とを形成することを含み、前記第1のNIS接合部と前記第2のNIS接合部とが間隙によって互いに分離されている、方法。
(付記13)
前記第1の超伝導体パッドに第1の導電性パッドを結合すること、
前記第2の超伝導体パッドに第2の導電性パッドを結合すること、
をさらに備える付記12に記載の方法。
(付記14)
前記第1の導電性パッド上に配置される第2の超伝導体シャントを形成すること、前記第2の導電性パッド上に配置される第3の超伝導体シャントを形成すること、をさらに備え、
前記第2の超伝導体シャントと前記第3の超伝導体シャントとの間にバイアス電圧が印加されることにより前記第1の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去され、前記第2の超伝導体シャントが前記第1の導電性パッドにおける電流分布を均一化し、前記第3の超伝導体シャントが前記第2の導電性パッドにおける電流分布を均一化する、付記12に記載の方法。
(付記15)
前記第1の超伝導体パッドおよび前記第1の導電性パッドのうちの一方の上に第1の導電性コンタクトのセットを形成すること、
前記第2の超伝導体パッドおよび前記第2の導電性パッドのうちの一方の上に第2の導電性コンタクトのセットを形成すること、
前記第1の導電性コンタクトのセットにより前記第1の超伝導体パッドを前記第1の導電性パッドに結合するとともに、前記第2の導電性コンタクトのセットにより前記第2の超伝導体パッドを前記第2の導電性パッドに結合すること、
をさらに備える付記14に記載の方法。
(付記16)
前記第1の導電性パッドおよび前記第2の導電性パッドが第2の基板上または該第2の基板内に配置されている、付記15に記載の方法。
(付記17)
前記第1の導電性コンタクトのセットおよび前記第2の導電性コンタクトのセットがバンプ接合部であり、前記バンプ接合部により前記第1の基板が第2の基板に結合されている、付記15に記載の方法。
(付記18)
第2の超伝導体シャントを形成することであって、前記第1の超伝導体シャントおよび前記第2の超伝導体シャントが前記第1の基板上または該第1の基板内に配置されるとともに間隙によって互いに分離される、前記第2の超伝導体シャントを形成すること、
前記第2の超伝導体シャント上に配置される第2の常伝導金属パッドを形成することであって、前記エッチング処理により、前記第2の常伝導金属パッド上に配置されかつ間隙によって分離される第3の絶縁体層および第4の絶縁体層が形成されるとともに前記第3の絶縁体層を覆う第3の超伝導体パッドと前記第4の絶縁体層を覆う第4の超伝導体パッドとが形成される、前記第2の超伝導体シャント上に配置される第2の常伝導金属パッドを形成すること、
前記第2の導電性パッドを前記第3の超伝導体パッドに結合することであって、前記第2の導電性パッドの第1の端部が前記第2の超伝導体パッドに結合されるとともに前記第2の導電性パッドの第2の端部が前記第3の超伝導体パッドに結合される、前記第2の導電性パッドを前記第3の超伝導体パッドに結合すること、
第3の導電性パッドを前記第4の超伝導体パッドに結合すること、
をさらに備える付記12に記載の方法。
(付記19)
前記第1の導電性パッド上に配置される第3の超伝導体シャントを形成すること、
前記第2の導電性パッド上に配置される第4の超伝導体シャントを形成すること、
前記第3の導電性パッド上に配置される第5の超伝導体シャントを形成すること、
をさらに備え、
前記第3の超伝導体シャントと前記第5の超伝導体シャントとの間にバイアス電圧が印加されることにより前記第1の常伝導金属パッドおよび前記第2の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去され、前記第3の超伝導体シャントが前記第1の導電性パッドにおける電流分布を均一化し、前記第4の超伝導体シャントが前記第2の導電性パッドにおける電流分布を均一化し、前記第5の超伝導体シャントが前記第3の導電性パッドにおける電流分布を均一化する、付記18に記載の方法。
(付記20)
前記第3の超伝導体シャントの端部に結合される第1の端子を形成すること、前記第5の超伝導体シャントの端部に結合される第2の端子を形成すること、をさらに備え、
前記第1の端子と前記第2の端子との間にバイアス電圧が印加されることにより前記第1の常伝導金属パッドおよび前記第2の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去される、付記19に記載の方法。
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