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特許7420975銅を含有する曲がったバー型導体のレーザー溶接の間に付着面積を監視する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】銅を含有する曲がったバー型導体のレーザー溶接の間に付着面積を監視する方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20240116BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240116BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B23K26/00 P
B23K26/21 L
H02K15/04 E
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022569116
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2021062708
(87)【国際公開番号】W WO2021228989
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】102020113179.8
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506065105
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー- ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser- und Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Strasse 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オリバー ボックスロッカー
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ シュペーカー
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-151360(JP,A)
【文献】特開2005-230913(JP,A)
【文献】特開2002-346776(JP,A)
【文献】特表2006-510490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B23K 26/21
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を含有する曲がったバー型導体(1a、1b)の、特に電気モータ用のヘアピンのレーザー溶接の間に付着面積(9)を監視するための方法であって、
2つのバー型導体(1a、1b)が部分的に重なるように配置され、加工用レーザービーム(7)によって互いに溶接され、
溶接ビード(8)が形成され、互いに接続された前記バー型導体(1a、1b)をもたらし、
前記溶接ビード(8)の温度とともに変化する少なくとも1つの測定変数が、前記溶接ビード(8)が冷却される間、前記加工用レーザービーム(7)への露光の終了後に少なくとも前記溶接ビード(8)の一部(56)において時間(t)の関数として測定され、
前記溶接ビード(8)の熱容量に依存するパラメータが、前記少なくとも1つの測定された測定変数から決定され、
前記付着面積(9)が前記パラメータから質的又は量的に決定される、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
端部領域(5a、5b)が互いに平行に且つ互いに隣接して横たわる状態で2つのバー型導体(1a、1b)が配置され、
特に、前記バー型導体(1a、1b)の前記端部領域(5a、5b)は互いに広範に押し付けられ、
前記バー型導体(1a、1b)の端面(6a、6b)が、前記バー型導体(1a、1b)の前記端部領域(5a、5b)の長手方向に関してほぼ同じ高さに配置され、
前記加工用レーザービーム(7)が、前記バー型導体(1a、1b)の前記端面(6a、6b)に前記溶接ビード(8)が形成されるように、2つのバー型導体(1a、1b)に向けられ、
特に、前記バー型導体(1a、1b)の前記端部領域(5a、5b)はほぼ垂直に上方に向けられ、前記加工用レーザービーム(7)はほぼ垂直に前記端面(6a、6b)に当たる、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記測定変数の測定のために、前記溶接ビード(8)の少なくとも一部(56)が可視スペクトル範囲及び/又は赤外スペクトル範囲で観察される、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記少なくとも1つの測定変数が、前記溶接ビードの一部(56)上で測定され、
特に、前記少なくとも1つの測定変数は、前記溶接ビード(8)の頂部の中央に位置する前記溶接ビード(8)の一部(56)で測定される、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つの測定変数が、前記溶接ビード(8)の少なくとも前記一部(56)の熱電子放出(44)の強度を含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記熱電子放出(44)の強度が、制限されたスペクトル範囲でのみ測定され、
特に、前記制限されたスペクトル範囲は800nm~1100nmを超えず、
特に、前記制限されたスペクトル範囲を制限する目的で、帯域フィルタ(49)及び/又は広帯域フィルタが、前記熱電子放出(44)の強度を測定するためのセンサデバイス(46)の前に配置され、
特に、前記加工用レーザービーム(7)の波長範囲は前記制限されたスペクトル範囲外に位置する、方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法であって、
前記溶接ビード(8)が、前記溶接ビード(8)が冷却される間、観察用光ビーム(71)、より詳細には観察用レーザービームによって照射され、
前記少なくとも1つの測定変数が、前記溶接ビード(8)の表面で反射された前記観察用光ビーム(71)の強度を含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記反射された観察用光ビーム(71)の強度が、前記観察用光ビーム(71)の中心波長を中心とした制限されたスペクトル範囲においてのみ測定され、
特に、前記制限されたスペクトル範囲は、前記観察用光ビーム(71)の中心波長を中心にして±20nm又は±10nmを超えず、
特に、前記制限されたスペクトル範囲を制限するために、前記反射された観察用光ビーム(71)の強度を測定するために使用されるセンサデバイス(46)の前に帯域フィルタ(73)が配置される、方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の方法であって、前記反射された観察用光ビーム(71)の強度を測定するために使用されるセンサデバイス(46)の前に偏光フィルタ(74)が配置され、
特に、前記偏光フィルタ(74)はライン偏光子として選択される、方法。
【請求項10】
請求項5~9のいずれか一項に記載の方法であって、
前記溶接ビード(8)がカメラ(47)を使用して観察され、前記溶接ビード(8)の一部(56)における熱電子放出(44)の強度及び/又は反射される観察用光ビーム(71)の強度が、前記カメラ(47)によって記録された画像(54)の部分領域(55)における前記カメラ(47)からの平均グレースケール値(G)が決定されることによって、前記カメラ(47)を使用して決定される、方法。
【請求項11】
請求項5~9のいずれか一項に記載の方法であって、前記溶接ビード(8)がフォトダイオード(90、91)を用いて観察され、少なくとも前記溶接ビード(8)の一部(56)における熱電子放出(44)の強度及び/又は反射された観察用光ビーム(71)の強度が前記フォトダイオード(90、91)からグレースケール値(G)として決定される、方法。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法であって、前記測定変数が、少なくとも前記溶接ビード(8)の一部(56)における温度(T)を含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記温度(T)が比率式パイロメータによって測定され、少なくとも前記溶接ビード(8)の前記一部(56)の熱電子放出(44)の強度が2つの異なる波長(λ1、λ2)で測定される、方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法であって、前記パラメータが、前記溶接ビード(8)が冷却される間に第1の定義された状態と第2の定義された状態との間で経過する持続時間である、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記第1の定義された状態が、前記加工用レーザービーム(7)の露光の終了である、方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の方法であって、前記第2の定義された状態が、前記溶接ビード(8)の完全な凝固である、方法。
【請求項17】
請求項14~16のいずれか一項に記載の方法であって、前記測定変数が閾値(SW1、SW5、SW7)に達することによって、前記第1の定義された状態及び/又は前記第2の定義された状態が認識される、方法。
【請求項18】
請求項14~16のいずれか一項に記載の方法であって、前記第1及び/又は前記第2の定義された状態が、前記測定変数の1次時間導関数及び/又は2次時間導関数が閾値(SW2、SW3、SW4、SW6)に達することによって、
特に、前記測定変数が予め決められた最小の持続時間にわたって特定の限度(G1、G2)内でしか先に変化しなかった後に、前記測定変数の1次時間導関数及び/又は2次時間導関数が前記閾値(SW2、SW3、SW4、SW6)に達することによって認識される、方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の方法であって、前記パラメータが時間に関する前記測定変数の勾配(G’ M、T’ M)であり、前記勾配は指定された時間において決定されるか、又は指定された期間にわたって平均化される、方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法であって、
前記パラメータ又は前記パラメータから量的に決定された付着面積(9)を判定値と比較し、
前記判定値に達しない場合、溶接部の前記付着面積(9)を小さすぎると認識し、特に、この場合変質したバー型導体(1a、1b)が取り除かれるか、又は後続の溶接が行われ、
前記判定値に達した場合、前記付着面積(9)を十分に大きいと認識し、変質したバー型導体(1a、1b)はさらなる使用を許可される、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記バー型導体(1a、1b)の断面(Q)のうち前記溶接ビード(8)によって覆われていない割合(QU)をカメラ(47)によって決定し、前記断面(Q)の前記覆われていない割合(QU)が限界値(GW)を超えた場合、前記判定値に達しているとしても、前記バー型導体(1a、1b)の前記溶接部の前記付着面積(9)を小さすぎると認識する、方法。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の方法であって、複数のバー型導体(1a、1b)の対が連続して溶接され、ここで、バー型導体(1a、1b)の前記対が溶接される際に、1つ又は複数の溶接パラメータが制御ループにおいて最適化及び/又は更新され、その結果、前記パラメータ又は前記パラメータから量的に決定される付着面積(9)が、溶接されるバー型導体(1a、1b)の前記対について所定の目標値に設定される、方法。
【請求項23】
銅を含有する曲がったバー型導体(1a、1b)、特に電気モータ用のヘアピンのレーザー溶接のための装置(40)であって、
保持デバイス(50)であって、これによって2つのバー型導体(1a、1b)を重ねて配置することができ、特に、溶接される複数のバー型導体(1a、1b)を備えるステータマウント(51)を構成する保持デバイス(50)を有し、及び、加工用レーザービーム(7)を供給するレーザー加工ヘッド(53)であって、これによって溶接ビード(8)が形成されるように前記2つのバー型導体(1a、1b)が互いに溶接され、それによって前記バー型導体(1a、1b)は相互に接続されるレーザー加工ヘッド(53)を有し、前記装置(40)はセンサデバイス(46)をさらに備え、これによって、前記溶接ビード(8)が冷却される間、前記加工用レーザービーム(7)への露光の終了後、少なくとも前記溶接ビード(8)の一部(56)において、前記溶接ビード(8)の温度とともに変化する少なくとも1つの測定変数が測定可能であり、
前記装置(40)は、少なくとも1つの測定された測定変数から前記溶接ビード(8)の熱容量に依存するパラメータを決定するように構成された、より具体的にはプログラムされた、電子評価デバイス(52)をさらに有し、
前記電子評価デバイス(52)はさらに、前記パラメータから前記溶接ビード(8)によって設定された付着面積(9)を質的に又は量的に決定するように形成されている、より具体的にはプログラムされている、装置(40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅を含有する曲がったバー型導体の、特に電気モータ用のヘアピンのレーザー溶接の間に付着面積を監視する方法に関し、
2つのバー型導体は部分的に重なり合うように配置され、加工用レーザービームによって互いに溶接され、
溶接ビードが形成され、互いに接続されたバー型導体をもたらす。
【背景技術】
【0002】
銅を含有する曲がったバー型導体、特にヘアピンとして知られているものは、電気モータ又は発電機などの電気力学的機械に設置される。バー型導体は、想定される電気的相互接続に従って配置され、こうして電磁石を構築するために互いに溶接される。この場合、電気力学的機械は通常、数十本、しばしば数百本の曲がったバー型導体を備え、それらは対になって互いに溶接されなければならない。
【0003】
ここで重要なのは、溶接によって、一方のバー型導体から他方のバー型導体へ電流を流すことができる十分な断面積(「付着面積」)を提供することである。付着面積が小さすぎると、著しいオーム加熱又は動作中の効率の低下の恐れがあり、さらには電気力学的機械が使い物にならなくなる恐れがある。
【0004】
バー型導体は、多くの場合、レーザービームによって溶接される(「レーザー溶接」)。この目的のために、レーザービームは、通常互いに静止している2つの重なり合ったバー型導体の端面に向けられ、その結果、バー型導体に熱が導入され、バー型導体は溶融され、凝固した後、再凝固した溶接ビードを介して相互に接続される。レーザービームは、原則としてバー型導体に対して所定の出力で所定の時間向けられ、その結果、一般に十分に大きな付着面積が得られる。
【0005】
しかしながら、バー型導体表面の汚れや粗さによって、バー型導体のレーザー光に対する反射率、ひいては実際のエネルギー入力が変化することがある。同様に、例えば隙間やオフセットがある場合など、バー型導体の位置が適切でない場合や、レーザービームの位置が適切でない場合も、実際のエネルギー入力にばらつきが生じる可能性がある。エネルギー入力が低すぎる場合、十分な材料が溶融されないため、十分な大きさのない溶接ビードが形成され、小さすぎる付着領域が提供される。レーザー溶接中にスパッタが大量に発生した場合も、小さすぎる溶接ビードが形成され、十分な大きさの付着面積が得られないことがある。
【0006】
得られた付着面積のサイズは、X線分析によって決定することができる。このために、バー型導体を適切なX線機械に運び、溶接後のX線画像を作成しなければならないが、これは装置の観点から見て複雑である。また、溶接ビードの金属組織検鏡試片を作製することも知られているが、これは非常に複雑で、溶接部を破壊する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、銅を含有する曲がったバー型導体のレーザー溶接の間に付着面積を監視するための方法を提供することであり、前記方法は簡単に、素早くそして非破壊的に実行することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、以下の事実によって区別される導入部において述べたタイプの方法によって本発明に従って達成される。
溶接ビードの温度とともに変化する少なくとも1つの測定変数が、溶接ビードが冷却される間、加工用レーザービームへの露光の終了後に少なくとも溶接ビードの一部において時間の関数として測定されるという事実、
溶接ビードの熱容量に依存するパラメータが、少なくとも1つの測定された測定変数から決定されるという事実、
付着面積がパラメータから質的又は量的に決定されるという事実。
【0009】
本発明による方法の範囲内で、溶接ビードのサイズ又は質量は、レーザー溶接によって導入された熱の導出を介してレーザー溶接手順の終了後に溶接ビードから間接的に決定される。一般に、次いで付着面積のサイズを溶接ビードのサイズから推測することができ、したがって付着面積を監視することが可能である。
【0010】
本発明者らの経験では、例えば溶接ビードの光学画像を分析することによって溶接ビードのサイズを直接決定することは、バー型導体の不規則性、特にバー型導体端部の斜めの表面のために、一般に十分な信頼性をもってできないという事実に注意されたい。
【0011】
加工用レーザービームの露光終了時、溶接ビードはバー型導体材料の蒸発温度にほぼ達しており、したがって、溶接ビードの質量にほぼ比例した熱が、前記溶接ビードに蓄積される。
【0012】
この蓄積された熱は、所与の溶接状況に存在する熱伝導経路を介して導出されるが、熱伝導経路は、バー型導体及びバー型導体材料の寸法によって特定され、溶接ビードのサイズには依存しない(通常の溶接の間、すなわち、溶接ビードがその全断面にわたってバー型導体と接触する場合)。良好な近似に対して、溶接ビードに蓄積される熱量の導出は、2つのバー型導体を通して1次元的に実施される。この場合、バー型導体を通る熱の流れは制限される。
【0013】
溶接ビードに元々蓄積されていた熱量が多いほど、溶接ビードはゆっくりと冷却される。この冷却挙動は、測定変数によって観察される。したがって、元々蓄積されていた熱量、つまり(絶対)熱容量は、冷却挙動から推測することができる。
【0014】
温度によって直接的又は間接的に(例えば相状態を介して)影響を受ける溶接ビードの少なくとも一部の特性を記述する測定変数は、時間の関数として測定され、その結果、溶接ビードの冷却挙動が観察され、溶接ビードの(絶対)熱容量に依存するパラメータを決定することができる。溶接ビードの(絶対)熱容量は溶接ビードの質量に比例するため、(絶対)熱容量に依存するパラメータは溶接ビードの質量を示す。
【0015】
溶接ビードの質量は、その幾何学的なサイズを決定し、したがって、特に電流の伝導のための、溶接ビード又は溶接によってバー型導体間に提供される付着面積を決定する。所与の溶接状況(特にバー型導体及びバー型導体材料の寸法)に対する較正によって、パラメータから付着面積を推測することが可能である。
【0016】
付着面積の監視を較正するために、測定変数を測定することができ、パラメータはいくつかの溶接部のそれぞれについてそれから決定することができ、実際の付着面積はさらにそれぞれ従来通り(例えば、X線検査又は金属組織微細切断によって)決定することができる(「較正実験」)。(所与の溶接状況に対する)パラメータと実際の付着面積との関係が、較正実験から明らかになる。その後の溶接(同じ溶接状況)において、この関係を利用して、パラメータから付着面積を質的又は量的に決定することができ、その後に実際の付着面積を従来式に決定する必要はない。
【0017】
付着面積の典型的な質的決定は、付着面積が十分に大きい(溶接「io」、順当(in order))か、十分に大きくない(溶接「nio」、順当でない(not in order))かの記述に制限される。典型的な量的な記述は、付着面積の直接的な表面仕様(例えば、「5.5mm」)である。
【0018】
発明の好ましい実施形態
一般的な変形例
本発明による方法の好ましい変形例は、以下を提供する。
端部領域が互いに平行に且つ互いに隣接して横たわる状態で2つのバー型導体が配置されること。
特に、バー型導体の端部領域は互いに広範に押し付けられ、
バー型導体の端面は、バー型導体の端部領域の長手方向に関してほぼ同じ高さに配置され、
加工用レーザービームは、バー型導体の端面に溶接ビードが形成されるように、2つのバー型導体に向けられ、
特に、バー型導体の端部領域はほぼ垂直に上方に向けられ、加工用レーザービームはほぼ垂直に端面に当たる。バー型導体の端面上に溶接ビードが形成されると、溶接ビードからの熱放散が良好に定義され、本発明による方法は特に正確である。典型的に加工用レーザービームは端面に直接向けられ、加工中、バー型導体の間を、例えば円軌道で前後に移動する。バー型導体の端部領域(脚部)が垂直に上向きに整列されると、その上に生成された(最初はまだ液体の)溶接ビードは特に安定して横たわる。
【0019】
測定変数の測定のために、溶接ビードの少なくとも一部が可視スペクトル範囲及び/又は赤外スペクトル範囲で観察される変形例が特に好ましい。可視スペクトル範囲又は赤外スペクトル範囲の低コストの観察は、例えばカメラ又はフォトダイオードを用いて簡単に可能である。多くの溶接装置は、例えばレーザービームとワークピースの相対的な位置合わせのために、利用可能な光学観察システムをすでに有しており、これらはまた、本発明による方法によって使用することができる。観察は好ましくは少なくとも100Hzの周波数で実施されるという事実に注意されたい。
【0020】
この変形例の好ましい発展において、少なくとも1つの測定変数は、加工用レーザービームが作用したバー型導体の部分領域とは反対側にある溶接ビードの部分上で測定され、
特に、少なくとも1つの測定変数は、溶接ビードの頂部の中央に位置する溶接ビードの部分で測定される。この部分で測定変数を測定することにより、熱放散を特に確実に観察することができ、特に、バー型導体の凹凸によるエッジ効果が最小限に抑えられる。溶接ビードの凝固は通常、溶接ビードの頂部の中央で終了するため、ここで凝固時間を特に容易に決定することができる。
【0021】
測定変数に関する変形例
有利な変形例において、少なくとも1つの測定変数は、溶接ビードの少なくとも前記一部の熱電子放出の強度を含んでいる。熱電子放出の強度を測定し評価することは、比較的容易である。
【0022】
この点で有利な発展は、熱電子放出の強度が、制限されたスペクトル範囲でのみ測定されることを提供し、
特に、制限されたスペクトル範囲は800nm~1100nmを超えず、
特に、制限されたスペクトル範囲を制限する目的で、帯域フィルタ及び/又は広帯域フィルタが、熱電子放出の強度を測定するためのセンサデバイスの前に配置され、
特に、加工用レーザービームの波長範囲は制限されたスペクトル範囲外に位置する。銅を含有するバー型導体の場合、800nmから1100nmのスペクトル範囲は、温度に依存する測定変数の決定に特に有益である。使用するセンサデバイスの過負荷は、加工用レーザービームの波長を遮断することで回避することができる。加工用レーザービームの波長が約1030nmの場合、例えば、帯域フィルタを用いて測定スペクトルを800~1000nmに制限するか、広帯域フィルタを用いて1030nm付近の波長範囲を的を絞って遮断することが可能である。特に、測定されるスペクトル範囲を1000nm未満に選択することも可能である。
【0023】
以下を提供する変形例が好ましい。
溶接ビードが、前記溶接ビードが冷却される間、観察用光ビーム、より詳細には観察用レーザービームによって照射されること、
及び、少なくとも1つの測定変数が、溶接ビードの表面で反射された観察用光ビームの強度を含むこと。溶接ビードが冷却されると、特に相転移(凝固)の場合に、観察用光ビームに対する前記溶接ビードの反射率が変化し、これをこの変形例で活用することができる。観察用光ビームは、典型的には狭帯域(例えば、全スペクトル幅が40nm以下、通常は20nm以下)を有し、好ましくは観察用レーザー、特にダイオードレーザー、又はLED若しくはLEDリングから発せられる。観察用光ビームを使用する結果、付着面積を特に正確に監視することができる。実際には、溶接ビードの熱電子放出は、反射された観察用光ビームに重ねられ、2つの効果(又は関連する強度)は、例えばカメラからの画像の部分領域における平均グレースケール値として、又はフォトダイオードからのグレースケール値として、原則的に一緒に測定されるという事実に注意されたい。
【0024】
以下を提供するこの変形例の発展が好ましい。
反射された観察用光ビームの強度が、観察用光ビームの中心波長を中心とした制限されたスペクトル範囲においてのみ測定されること。
特に、制限されたスペクトル範囲は、観察用光ビームの中心波長を中心にして±20nm又は±10nmを超えず、
特に、制限されたスペクトル範囲を制限するために、反射された観察用光ビームの強度を測定するために使用されるセンサデバイスの前に帯域フィルタが配置される。観察用光ビームの中心波長を中心とした制限されたスペクトル範囲への制限によって達成されることは、(追加的に存在する)熱電子放出が、より少ない程度で測定変数の測定に重ねられる、又は測定変数の測定を偽ることである。
【0025】
同様に、反射された観察用光ビームの強度を測定するために使用されるセンサデバイスの前に偏光フィルタを配置する発展が好ましく、
特に、偏光フィルタはライン偏光子として選択される。これにより、反射される観察用光ビームにより溶接ビードを観察する際のコントラストを向上させることができる。
【0026】
熱電子放出の強度及び/又は反射される観察用光ビームの強度の観察を含む変形例の発展として、溶接ビードがカメラを使用して観察されること、及び溶接ビードの一部における熱電子放出の強度及び/又は反射される観察用光ビームの強度が、カメラによって記録された画像の部分領域におけるカメラからの平均グレースケール値が決定されることによって、カメラを使用して決定されることが提供される。この手順は比較的簡単であり、実際にその価値が証明されており、適切なカメラは、溶接のセットアップにおいて、例えばワークピース上にレーザービームを位置決めする目的のために、どのような場合でも利用可能であることが多い。
【0027】
熱電子放出及び/又は反射される観察用光ビームの強度の観察を含む変形例の別の発展において、溶接ビードがフォトダイオードを用いて観察されること、及び少なくとも溶接ビードの一部における熱電子放出及び/又は反射される観察用光ビームの強度がフォトダイオードからグレースケール値として決定されることが提供される。フォトダイオードを用いてグレースケール値を決定することは、特に費用対効果に優れている。
【0028】
さらに、測定変数が少なくとも溶接ビードの一部における温度を含む変形例が好ましい。少なくとも溶接ビード自体の一部の温度を測定することは、溶接ビードの冷却挙動を直接的に記述し得るため、付着面積を特に正確且つ確実に監視することができる。しかしながら、温度を測定することは、装置の観点から比較的複雑である。
【0029】
温度が比率式パイロメータ(quotient pyrometry)によって測定され、少なくとも溶接ビードの一部の熱電子放出の強度が2つの異なる波長で測定される、この変形例の発展が好ましい。比率式パイロメータによる測定は、特に信頼性が高い。このため、2つの異なる波長に対して選択的な狭帯域の帯域フィルタを備えたフォトダイオードを使用することができる。或いは、サーモグラフィーカメラを使用することもでき、又は測定されるスペクトルをグレーの発光体(例えば、銅)に適合させることもできる。
【0030】
パラメータに関する変形例
パラメータが、溶接ビードが冷却される間に第1の定義された状態と第2の定義された状態との間で経過する持続時間である変形例が、特に好ましい。持続時間は、比較的容易に測定することができる。典型的には、定義された状態のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの測定変数の時間プロファイルによって認識される。典型的な定義された状態は、特定の温度又は識別された相転移の取得である。
【0031】
本変形例の好ましい発展において、第1の定義された状態は、加工用レーザービーム露光の終了である。加工用レーザービーム露光の終了時間(「非活性化」)は、典型的には、溶接プロセスの制御装置によって知られているか又は指定され、したがって個別に確認する必要はない。
【0032】
第2の定義された状態が溶接ビードの完全な凝固である発展も、同様に好ましい。一般に、液体から固体への相転移は光学的に容易に認識できるため、第2の定義された状態によく適している。このプロセスでは、発光挙動と反射率の両方が大きく変化する。さらに、(完全な)凝固は、溶接ビード上の動きが完全に停止していることによっても、光学的に認識することができる。
【0033】
有利な発展において、測定変数が閾値に達することによって、第1及び/又は第2の定義された状態が認識される。この手順は特に簡単である。特に、溶接ビードの完全な凝固は、熱電子放出の強度が閾値に達する(又は閾値より低くなる)ことによって認識することができる。
【0034】
第1及び/又は第2の定義された状態が、測定変数の1次及び/又は2次時間導関数が閾値に達することによって、
特に、測定変数が予め決められた最小の持続時間にわたって特定の限度内でしか先に変化しなかった後に、測定変数の1次及び/又は2次時間導関数が閾値に達することによって、認識される発展もまた好ましい。冷却プロファイルに関する情報、特に相転移に関する情報は、測定変数そのものよりも、測定変数の1次又は2次導関数において、しばしばより容易に認識可能である。特に、溶接ビードの凝固は、観察用光ビームに対する反射率の増加をもたらし、これは、反射されたレーザー放射の強度の1次導関数における正の勾配として容易に認識可能である。
【0035】
パラメータが時間に関する測定変数の勾配であり、それは指定された時間において決定されるか、又は指定された期間にわたって平均化される変形例が、好ましい。例として、勾配は、加工用レーザービーム露光の終了直後に決定することができ、又は加工期間の終了後、数10ミリ秒にわたって平均化された形で決定することができる。特に、測定変数は、熱電子放出の温度又は強度とすることができる。特に、熱電子放出の温度又は強度の勾配は、溶接ビードがまだ完全に液体である間に決定することができる。
【0036】
パラメータを評価するための変形例
本発明による方法の好ましい変形例は、以下を提供する。
パラメータ又はパラメータから量的に決定された付着面積を判定値と比較すること、
判定値に達しない場合、溶接部の付着面積を小さすぎると認識すること、特に、この場合変質したバー型導体が取り除かれるか、又は後続の溶接が行われる、
判定値に達した場合、付着面積を十分に大きいと認識すること、変質したバー型導体はさらなる使用を許可される。この手順は特に簡単である。
【0037】
バー型導体の断面のうち溶接ビードによって覆われていない割合をカメラによって決定すること、及び断面の覆われていない割合が限界値を超えた場合、判定値に達しているとしても、バー型導体の溶接部の付着面積を小さすぎると認識することを提供するこの変形例の発展が有利である。溶接ビードがバー型導体の断面を不完全に覆っている場合、バー型導体の相互付着面積は、例外的に、溶接ビードの質量やサイズによって十分に特徴付けられることはない。むしろ、バー型導体間の電気伝導を制限する断面が、溶接ビードとバー型導体の接触領域にあると仮定することができる。接触領域が小さすぎる場合、溶接ビードが小さすぎる場合と同じように、溶接部が使用不可能になる。この発展により、電気的に使用不可能な溶接部を認識する信頼性がさらに高められる。
【0038】
複数のバー型導体の対が連続して溶接され、ここで、バー型導体の対が溶接される際に、1つ又は複数の溶接パラメータが制御ループにおいて最適化及び/又は更新され、その結果、パラメータ又はパラメータから量的に決定される付着面積が、溶接されるバー型導体の対について所定の目標値に設定される、変形例もまた好ましい。この処置により、形成される溶接部の品質を高めることが可能になり、除去処置及び/又はその後の溶接処置の回数を最小限に抑えることが可能になる。
【0039】
本発明による方法のためのレーザー溶接のための装置
本発明の範囲はまた、銅を含有する曲がったバー型導体、特に電気モータ用のヘアピンのレーザー溶接のための装置を含み、装置は、
保持デバイスであって、これによって2つのバー型導体を重ねて配置することができ、特に、溶接される複数のバー型導体を備えるステータマウントを構成する、保持デバイスを有し、
また、加工用レーザービームを供給するレーザー加工ヘッドであって、これによって2つのバー型導体が互いに溶接されるレーザー加工ヘッドを有し、
その結果、溶接ビードが形成され、それによってバー型導体が相互に接続され、
装置は以下において区別される。
装置はセンサデバイスをさらに備え、これによって、溶接ビードが冷却される間、加工用レーザービームへの露光の終了後、少なくとも溶接ビードの一部において、溶接ビードの温度とともに変化する少なくとも1つの測定変数が測定可能であること。
装置は、少なくとも1つの測定された測定変数から溶接ビードの熱容量に依存するパラメータを決定するように構成された、より具体的にはプログラムされた、電子評価デバイスをさらに有すること。
電子評価デバイスがさらに、パラメータから溶接ビードによって設定された付着面積を質的に又は量的に決定するように形成されている、より具体的にはプログラムされていること。本発明による装置は、特に本発明による上述の方法を実施するように構成され、又は、本発明による上述の方法を実施するために使用することができる。この装置を使用することにより、銅を含有する曲がったバー型導体のレーザー溶接中に、特に溶接部の製造中にオンラインでも、容易に、迅速に、且つ非破壊的に付着面積を監視することが可能になる。
【0040】
本発明の更なる利点が説明及び図面から明らかになるであろう。同様に、本発明によれば、上記の特徴及びなおも更に説明される特徴は、それぞれの場合において、それら自体で個別に又は任意の所望の組み合わせで複数として使用することができる。図示及び説明される実施形態は、網羅的な列挙として理解されるべきではなく、むしろ本発明を概説するための例示的な特徴のものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1a】本発明の範囲内で互いに溶接されるべき、部分的に重ねて配置された2つの曲がったバー型導体の概略側面図を示す。
図1b図1aの2つのバー型導体の隣接する端部領域の概略斜視図を示し、図は端面のものである。
図2】本発明に従って溶接され、溶接ビードによって相互接続された2つのバー型導体の端部領域の概略側面図を示し、付着面積がマークされている。
図3】6つの例示的な溶接された測定サンプルについて、X線によって決定された付着面積と、測定された凝固時間とを表すダイアグラムを示す。
図4】溶接ビードの一部における熱電子放出の強度のカメラによる測定を伴う、レーザー溶接のための本発明による装置の第1の実施形態を概略的な表現で示す。
図5a】本発明に従って溶接され、溶接ビードによって相互接続された2つのバー型導体の端部領域の概略側面図を示し、図4の装置のカメラによって記録された画像と、溶接ビードの中央、上部に対応するこの画像の部分領域(この部分領域は熱電子放出の決定のために選択された)とがマークされている。
図5b】本発明に従って溶接され、溶接ビードによって相互接続された2つのバー型導体の端部領域の概略側面図を示し、代替的に配置されたカメラによって記録された画像と、溶接ビードの側部に位置する溶接ビードの部分に対応するこの画像の部分領域(この部分領域は熱電子放出の決定のために選択された)とがマークされている。
図6】本発明に関する、時間の関数として冷却中の溶接ビードの一部で観察された熱電子放出の強度に対応する平均グレースケール値(上)、及び時間に関するグレースケール値の1次導関数(中)及び時間に関するグレースケール値の2次導関数(下)を表す概略的なダイアグラムを示す。
図7】溶接ビードで反射された観察用レーザービームの強度のカメラによる測定を伴う、レーザー溶接のための本発明による装置の第2の実施形態の概略的な表現を示す。
図8】本発明に関する、時間の関数として冷却中の溶接ビードの一部において図7の装置を用いて観察された熱電子放出の強度と反射した観察用レーザービームの強度との重ね合わせに対応する平均グレースケール値(上)、及び時間に関するグレースケール値の1次導関数(中)、及び時間に関するグレースケール値の2次導関数(下)を表す概略的なダイアグラムを示す。
図9】溶接ビードの温度の比率式パイロメータによる測定を伴う、レーザー溶接のための本発明による装置の第3の実施形態の概略的な表現を示す。
図10】本発明に関する、時間の関数としてその冷却中に溶接ビードの一部で図9の装置において観察された温度(上)、及び時間に関する温度の1次導関数(中)、及び時間に関する温度の2次導関数(下)を表すダイアグラムを示す。
図11a】本発明に関する、2つの溶接されたバー型導体の端部領域上の端部における溶接ビードの概略平面図を示し、バー型導体の端部領域の断面は、溶接ビードによって完全に覆われている。
図11b】本発明に関する、2つの溶接されたバー型導体の端部領域上の端部の溶接ビードの概略平面図を示し、バー型導体の端部領域の断面は、溶接ビードによって部分的にのみ覆われている。
【発明を実施するための形態】
【0042】
概略的な側面図において、図1aは、電気力学的機械、例えば電気モータの製造用の銅を含有する2つの曲がったバー型導体1a、1bを示し、それらはヘアピンとして知られるものの形態である。各バー型導体1a、1bは概ねU字形を有し、2つの脚部(肢)2a、3a及び2b、3bと、脚部を接続する中央部4a、4bとを備える。
【0043】
本発明は、バー型導体1a、1bを電気伝導的に相互接続するためのものであり、このため、これらはそれらの端部領域5a、5bで互いに溶接される。このため、第1のバー型導体1aの脚部3a及び第2のバー型導体1bの脚部2bは重なるように、またこの場合隣接して、配置される。
【0044】
図1bの端部領域5a、5bの概略的な斜めから見た図から明らかなように、2つのバー型導体1a、1bの端面6a、6bは概ね同じ高さに配置され、脚部3a、2bの端部領域5a、5bの長い側面11a、11bは広範囲にわたって当接し、互いに同一平面状にあり、脚部3a、2bはこれ以上詳細には描かれない態様で互いに押し付けられる。脚部3a、2bは、互いに平行且つ垂直に整列され、その結果、2つの端面6a、6bは上向きに整列される。
【0045】
加工用レーザービーム7が、2つの端部領域5a、5bを溶接するために使用され、この場合レーザービームは、反復する円形軌道12で端面6a、6b上を移動する。この場合、加工用レーザービーム7は、ほぼ垂直に端面6a、6bに当たる。ここで、以下の事実に注意されたい。加工用レーザービーム7の入射角は、様々なバー型導体の対の製造の間、典型的にわずかに変化し、一般にステータマウント(ここではさらに詳細に描かれないが、例えば図4を参照のこと)に取り付けられるバー型導体1a、1bをそれほど頻繁に変位しなくてもよいようにする。この場合、加工用レーザービーム7は、典型的に、垂直入射から40°を超えて逸脱しない。
【0046】
加工用レーザービーム7露出の結果として、バー型導体1a、1bの材料は端面6a、6bの近くで溶融し、それは溶融ビードの形態として知られる。以下の事実に注意されたい。原則的に、この場合、指定されたレーザービームが、複数のバー型導体の対を溶接するために所定期間使用され、その付着面積は本発明の範囲内で監視されるように意図されている。
【0047】
図2はレーザー溶接後のバー型導体1a、1bの端部領域5a、5bを示す。バー型導体1a、1bは溶接ビード8によって電気伝導的に相互接続される。この場合、溶接ビード8は一般に両方のバー型導体1a、1bの全体面積の上に着座する、すなわち、それらの完全なそれぞれの断面積Qa、Qbを覆う(この点でさらなる詳細に関して以下の図11aも参照されたい)。
【0048】
2つのバー型導体1a、1bの間の電気伝導的な接続の質は、付着面積9として知られるものによって実質的に決定される。これは第1のバー型導体1aから第2のバー型導体1bへ電流を伝導するための溶接ビード8によって利用可能にされる断面積であり、概ねバー型導体1a、1bの脚部3a、2bの隣接する長い側面11a、11bの接触平面における溶接ビード8のセクションに対応する。
【0049】
一般に、付着面積9は、溶接ビード8が大きくなるにつれて、増大する。溶接ビード8のサイズ(高さHであれ体積であれ)は、バー型導体1a、1bの端部領域5a、5bの頻繁な不規則性(例えば、溶接プロセスの開始前に既にある不規則な又は斜めの縮み)のせいで決定が非常に困難であり、特に、直接的な画像評価によって溶接ビード8のサイズを確実に決定することはほとんど不可能であるということが本発明者らの経験である。
【0050】
したがって、本発明は、加工用レーザービームの不活性化後に溶接ビード8の冷却プロファイルを追跡することによる溶接ビード8のサイズの間接的な決定を提供する。加工用レーザービームが不活性化されると、溶接ビード8全体は典型的にバー型導体1a、1bの材料の溶融温度Tである(加工用レーザービームはバー型導体1a、1bの材料を特定の範囲まで蒸発するという事実に注意されたい)。次に溶接ビード8からの熱の放散が2つのバー型導体1a、1bによって実際に排他的に実行され、したがって、それはバー型導体の材料の熱伝導率及び利用可能なその断面積Qa、Qbによって制限される(「1次元熱放散」)。溶接ビード8が大きいほど、多くの熱エネルギーがバー型導体1a、1bを介して放散されるにちがいない。熱放散が制限される場合、これは大きな溶接ビード8の温度がより小さな溶接ビード8の温度よりもゆっくりと経時的に低下することにつながる。
【0051】
したがって、本発明は、時間の関数としての溶接ビード8(又は溶接ビード8の一部)の温度に依存する測定変数の測定と、この測定変数からの溶接ビードの(絶対)熱容量に依存するパラメータの決定とを提供する。溶接ビード8の(絶対)熱容量は、その質量に比例し、したがってその体積又はサイズに比例する。したがって、続いて付着面積をパラメータから質的に又は量的に決定することできる。
【0052】
温度依存性測定変数を、特に同じく光学手段によって測定することは比較的易しい。例として、カメラ又はフォトダイオードを使用して溶接ビードの熱電子放出の強度を測定することは、特に容易に可能であり、同様に、溶接ビードの少なくとも一部の温度は測定変数として機能することができる。決定することが特に容易である溶接ビード8の熱容量に依存するパラメータは、加工用レーザービームの不活性化と溶接ビードの(完全な)凝固との間の持続時間(「凝固時間」)であり、同様に温度勾配はパラメータとして使用することができる。
【0053】
バー型導体ダミーの端部領域が図1b及び図2に示す形状に対応する加工用レーザービームを使用する本発明のために溶接された、異なる実験的測定サンプルのダイアグラムにおいて、図3はそれぞれ光学的観察によって決定された凝固時間(円形マーキング参照)及び従来型X線分析によって決定された実際の付着面積(正方形マーキング参照)を示す。付着面積が凝固面積に著しく相関することが明らかである。したがって、付着面積は、凝固時間から推測可能であり、質的又は量的に決定することができる。
【0054】
図3のダイアグラムから、約8mmの付着面積が約140msの凝固時間後に得られることが明らかである。例として、少なくとも8mmの付着面積がバー型導体溶接の付着面積を監視する範囲内でこの解決策において保証されるべきである場合、8mm未満の不十分な付着面積は140ms未満の凝固時間から推測可能であり、一方で8mm以上の十分な付着面積は140msを超える凝固時間に関して推測可能である。これは付着面積の典型的な質的決定であり得る。小さすぎると認識される付着面積を有する溶接は、典型的に、後続の溶接に供給される。
【0055】
所望なら、例えば、凝固時間と付着面積との間の単純な線形関数関係を同じくダイアグラムから得ることができる。良好な近似に対して、この場合、凝固時間EZと付着面積AFは次式のようになる。
AF(EZ)=0.0419mm/ms*EZ+2.426mm
【0056】
付着面積に関する量的なステートメントは、同じく、そのような関数関係によりパラメータとしての凝固時間から容易に作成することができる。
【0057】
パラメータからの付着面積の質的又は量的な決定は、それぞれの溶接状況(特に、バー型導体のサイズ、配置及び材料)に関して、図3に示されるように、較正測定値を必要とする。
【0058】
所望なら、溶接パラメータ(加工用レーザービームのレーザーパワー又は持続時間など)は、付着面積の量的決定に基づいて、特定の付着面積に関して最適化又は調整することもできる。
【0059】
概略的な表現において、図4は、本発明による方法を実行できる、レーザー溶接用の本発明による第1の装置40の構造を示す。
【0060】
装置40は、加工用レーザー41を備え、それによってこの場合1030nmの波長を有する加工用レーザービーム(これ以上詳細に描写されず、この点において図1bを参照のこと)を、半透明ミラー42を介して、及びプログラム可能な集束光学ユニット43aのスキャナミラー43を介して、バー型導体1a、1bの対の端部領域5a、5bに仕向けることができる。バー型導体1a、1bは、ここでは電気モータ用のステータマウント51として具現化される保持デバイス50内に配置され、保持デバイス50は典型的に30対を超えるバー型導体を同時に保持する。
【0061】
加工用レーザービームの不活性化後、生じた溶接ビード(これ以上詳細に描写されず、この点において図2を参照のこと)は熱電子放出44を呈する。スキャナミラー43、半透明ミラー42及びミラー45並びにコリメーションレンズ57を介して、熱電子放出44は、この場合カメラ47であるセンサデバイス46内に画像化され、或いは、フォトダイオードをセンサデバイス46(これ以上詳細に描写されず、図9を参照のこと)として使用することもできる。光学フィルタ48がカメラ47の前に配置され、この場合、これは、800nm~1000nmのスペクトル範囲のみを通過させる帯域フィルタ49である。カメラ47は電子評価デバイス52に接続される。ここで描写されるビーム経路によれば、カメラ47は上からバー型導体1a、1bの端部領域5a、5b又はそこで溶接ビードに方向付けられる。
【0062】
プログラム可能な集束光学ユニット43a並びにミラー42、45及びカメラ47は、この場合、レーザー加工ヘッド53を形成するために統合されるが、カメラは、特に側方から溶接ビードに方向付けられるために、レーザー加工ヘッドから独立して配置されてもよいという事実に注意されたい。
【0063】
この場合、溶接ビード8の画像54は、図5aに概略的に示されるように、カメラ47を使用して上から撮られる。平均グレースケール値(平均輝度)は画像54の部分領域55から測定変数として決定され、このグレースケール値は、部分領域55に対応する溶接ビード8の部分56の溶接ビード8の熱電子放出の強度に対応し、この部分56はこの場合溶接ビード8の上面の中心に位置する。したがって、部分56は、加工用レーザービームが先に入射した(この点について図1b参照のこと)前の部分エリア(端面)の反対側に位置する。
【0064】
或いは、カメラは、図5bに描写されるように、溶接ビード8に横方向に方向付けられてもよい。次に、対応する画像54の部分領域55が、典型的に、溶接ビード8のエッジから距離をあけて、概ね溶接ビード8の中心に選択される。
【0065】
図6は、一番上に、図4の装置を用いて観察された、溶接ビードが冷却される間の、時間tの関数としての平均グレースケール値Gの典型的なプロファイルの概略的なダイアグラムを示す。グレースケール値Gは、溶接ビードの熱電子放出の強度に対応する。平均グレースケール値測定は、加工用レーザーの不活性化から溶接ビードの液-固相転移まで実行される。
【0066】
バー型導体の材料の蒸発温度Tに対応するグレースケール値G(T)は、加工用レーザービームが不活性化するとすぐに測定される。加工用レーザーの不活性化(「レーザーオフ」と表示)後、グレースケール値Gは時間間隔I、II、IIIの間に依然として完全に液体の溶接ビードの温度降下に従って降下し、次に、間隔IVにおいて、底部から頂部まで進む溶接ビードの再結晶(凝固)の相の間に、バー型導体の材料の溶融温度Tに対応する実際に一定の値G(T)で保たれる。間隔IVにおいて、グレースケール値Gは、液体であり続ける溶接ビードの部分において決定される。ここで観察された溶接ビードの最後の依然として液体の上部は、間隔V、VI及びVIIで凝固し、ここでグレースケール値は、熱電子放出が液-固相転移後に大幅に低下するので、大幅に降下する。間隔VIの間、凝固前部は、カメラの画像の評価された部分領域を通って移動し、この場合Gは最も急なほぼ直線のプロファイルを有する。次に、後続の間隔VIIIにおいて、グレースケール値Gは、完全に凝固した溶接ビードの温度において漸進的なさらなる低下に従って非常によりゆっくりとではあるが、降下し続ける。
【0067】
間隔VIの(予想される)値範囲からのグレースケール値に好ましくは対応する、第1の閾値SW1の線とグレースケール値G(t)の曲線の交点SP1により、例えば電子評価ユニットを使用して、実際の凝固時間EZ(間隔Iの開始から間隔VIIの終了までの時間間隔に対応する)を良好な近似で容易に決定することが可能である(間隔VII及びVIIIの領域の平坦なプロファイルは、そこでの交点の決定が著しくより大きな誤りを有することにつながり得るという事実に注意されたい)。さらに、間隔V、VI及びVIIは、間隔I、II、III及びIVと比較して典型的に短いという事実に注意されたい。所望なら、交点SP1と凝固の終了との間の既知の(予想される)時間オフセットZVを、決定された交点SP1の時間に追加して、実際の凝固時間EZの近似値をさらに良好に求めることができる。
【0068】
凝固時間EZを決定する別の方法として、時間に対するグレースケール値Gの1次導関数G’に頼ることが可能である(図6の中央のダイアグラムを参照)。この導関数は数値的に計算することが可能である。間隔V、VI、VIIで溶接ビードが凝固する間の熱電子放出の降下を、Gの曲線よりも1次導関数G’の方でよりよく識別することができる。間隔Vの凝固を、G’が負になった結果として容易に識別することができる。しかしながら、G’の同様の(負の)値は、例えば間隔Iの冷却の開始時にも生じるので、凝固時間EZは、G’の曲線と「ゼロ」のすぐ下の第2の閾値SW2の線との交点SP2によってほぼ決定され、それに関してGの曲線は以前に最小持続時間MDにわたって特定の限界G1、G2内でしか変化しなかった。後者の基準は、間隔IV(G’がほぼ「ゼロ」である)及び間隔Vの開始時の交点SP2の前でのみ満たされ(例えば、間隔I、II及びVIIでは満たされない)、その結果、第2の交点SP2は一意に決定される。間隔V、VI、VIIが間隔I、II、III及びIVと比較して短いという事実に再び注意されたい。所望ならば、凝固時間EZをさらに正確に決定するために、交点SP2と凝固終了の間の既知の(予想される)時間オフセットを交点SP1の時間に加えることが再び可能である(上記を参照のこと)。
【0069】
凝固時間EZのわずかにより正確な決定は、時間に関するグレースケール値Gの2次導関数G’’に基づいても可能である。図6の下のダイアグラムを参照されたい。2次時間導関数もまた、例えば電子評価ユニットにおいて数値的に計算することができる。この場合、完全な凝固は、G’’の曲線と第3の閾値SW3の線との交点SP3によって極めて正確に決定され、この閾値SW3は「ゼロ」の上に明確に選択されて、この閾値SW3が間隔VIIにおいて初めて到達されるように(例えば間隔IIIにおいて前もって到達されないように)大きくなっている。必要であれば、ここでは、グレースケール値Gが特定の限界内でしか変化しなかった、以前に経過した最小持続時間による保証も可能であり、EZをより正確に決定するために、決定された交点SP3と凝固の実際の終了の間の既知の(予想される)時間オフセットを追加することが再び可能である(それぞれこれ以上詳細に描写されておらず、上記を参照されたい)。
【0070】
また、好ましくは間隔II内で選択される2つの時点t1とt2との間の所定の時間におけるグレースケール値Gの(時間に対する)平均勾配G’は、(凝固時間EZに加えて)絶対熱容量に依存するパラメータであることが好適である。この間隔II内で、G’の絶対値は比較的大きく、ほぼ一定であり、したがって良好に決定することができる。
【0071】
G、G’及びG’’の曲線は、ここでは理想化された形で描写されており、実際には、一般にここに描写されたプロファイルを中心に時間的に変化するが、十分に大きな積分領域(カメラで観察される画像の部分領域)によって、良好な曲線平滑化が達成できるという事実に注意されたい。
【0072】
概略的な表現において、図7は、本発明による方法を実行できる、レーザー溶接用の本発明による第2の装置40の構造を示す。図4の装置に関する顕著な差についてのみ説明する。
【0073】
バー型導体1a、1bの溶接ビードが図7の装置40において冷却される間、溶接ビードは、観察用光源70、この場合観察用レーザーから、この場合810nmの(平均)波長を有する観察用光ビーム71、この場合観察用レーザービームによって、半透明ミラー45aを介して照射される。観察用光源70は著しい量のエネルギーをバー型導体1a、1bに導入しないが、観察用レーザービーム71は、溶接ビードの温度に依存して溶接ビードで反射される。溶接ビードで反射される観察用光ビーム71の強度は、溶接ビードの熱電子放出44とともにカメラ47に記録される。
【0074】
この場合800nm~820nmの範囲の波長のみ通過させる光学フィルタ48としての狭帯域の帯域フィルタ73が、カメラ47の前に配置され、カメラ47での測定された強度又は測定されたグレースケール値における熱電子放出44の比率を最小限に抑えるようにする。
【0075】
任意選択的に、偏光フィルタ74がさらにカメラ47の前に提供されてもよく、それを使用してカメラ47によって記録される画像のコントラストを改善することができる。
【0076】
図8は、一番上に、図7の装置を用いて観察された、溶接ビードが冷却される間の、時間tの関数としての平均グレースケール値Gの典型的なプロファイルの概略的なダイアグラムを示す。グレースケール値Gは、溶接ビードの熱電子放出の強度及び反射された観察用レーザービームの強度の重ね合わせに対応する。図6に関する顕著な差についてのみ説明する。
【0077】
第1の間隔I、II及びIIIにおいて、熱電子放出がカメラで測定された強度を支配し、それはしたがって図6のプロファイルにほぼ一致する。グレースケール値Gは、温度とともに減少する液体溶接ビードの熱電子放出に従って低下する。グレースケール値Gは、間隔IVで再び一定となる。
【0078】
しかしながら、間隔IVからは、溶接ビードで反射した観察用レーザービームの強度がグレースケール値を支配している。間隔Vで液-固相転移が始まると、溶接ビードの反射率が大きく増加し(又は吸収率が大きく減少し)、それに伴いグレースケール値Gが増加する。間隔VIIIにおいて、溶接ビードが完全に凝固した後、反射したレーザー光の強度はほぼ一定に保たれる。
【0079】
これは、時間に対するグレースケール値Gの1次導関数G’によって最もよく決定することができる(図8の中央のダイアグラムを参照)。G’の曲線が、ゼロよりわずかに上で選択された閾値SW4の線と最初に交差するところで、交点SP4が凝固時間EZに良好な近似で対応する。所望なら、交点SP4の時間と凝固の終了(間隔VIIの終了時)の間の既知の(予想される)時間オフセットZVは、EZをさらに正確に決定するために交点SP4の決定された時間に加えることができる。
【0080】
或いは、グレースケール値Gの閾値SW5(交点SP5における)に達すること、又はグレースケール値Gの2次導関数G’’の閾値SW6(交点SP6における)に達すること(下のダイアグラム参照)もまた、凝固時間EZの決定のために提供することができるが、これらは、グレースケール値Gが特定の限界G1、G2(交点SP5を保証するために上のダイアグラムのGで例示的にプロットされる)内でのみ変化する先行する最小持続時間MDによって保証されるはずである。
【0081】
概略的な表現において、図9は、本発明による方法を実行できる、レーザー溶接用の本発明による第3の装置40の構造を示す。再度、図4の装置に関する顕著な差についてのみ説明する。
【0082】
装置40は比率式パイロメータに設定され、したがって、この場合2つのフォトダイオード90、91として形成される2つのセンサデバイス46を備え、それらはバー型導体1a、1bの溶接ビードの熱電子放出44によって照射される。両方のフォトダイオード90、91は、電子評価デバイス52に接続される。
【0083】
フォトダイオード90の前方には、典型的には±30nm以下、好ましくは±20nmの小さな周辺波長間隔を含む第1の中心波長λ1の光のみを通過させる狭帯域の帯域フィルタ93の形態の光学フィルタ48が配置される。フォトダイオード91の前方には、典型的には±30nm以下、好ましくは±20nmの小さな周辺波長間隔を含む第2の中心波長λ2の光のみを通過させる狭帯域の帯域フィルタ94の形態の光学フィルタ48が同様に配置される。例として、λ1は1550nmであり、λ2は1620nmである。測定変数としての溶接ビード(又はその観察された部分)の温度は、2つの波長λ1及びλ2における強度の比から決定することができる。
【0084】
図10は、一番上に、図9の装置を用いて観察された、溶接ビードが冷却される間の、時間tの関数としての温度Tの典型的なプロファイルの概略的なダイアグラムを示す。この場合、温度は、溶接ビードの中央、上部で観察される。温度Tのプロファイルは、図6で説明した熱電子放出のグレースケール値のプロファイルとほぼ類似しており、特に、間隔I、II及びIIIにおいて、初期に著しい温度降下を有し、間隔IVにおいて比較的長期間にわたって一定であり、溶融温度Tに対応する温度Tを有するので、温度Tの評価はこの点で熱電子放出(任意の量)のグレースケール値の評価に類似する方法で実施可能であり、そうした理由でここでは繰り返しを控えることが可能である。しかしながら、(観察された部分的領域における)(平均)温度は、間隔V、VI及びVIIにおいて、最も長い期間液体のままである溶接ビードの最後の部分の凝固の間、実質的に一定で、非常にわずかしか変化せず、その部分はこの場合観察された溶接ビードの一番上の部分であり、温度は、ほぼ一定の勾配T’で再びゆっくりと降下し始めるだけであり、間隔VIIの終了時に溶接ビードは完全に凝固するという事実に注意されたい。好ましくは、交点SP7の時間によって非常に良好な近似でパラメータとして凝固時間EZを決定するために、溶融温度Tのすぐ下(例えば、予想される間隔VIIIの開始時)の閾値SW7がこの場合温度Tに適用される。同様に、間隔IIにおける時点t1とt2との間の平均温度勾配T’をパラメータとして決定することも、極めて可能である。
【0085】
バー型導体1a、1bの端部領域5a、5bのレーザー溶接の間、バー型導体1a、1bの断面Qa、Qb(脚部3a、2bの範囲の方向に垂直)は、図11aの平面図に概略的に示されているように、一般に溶接ビード8によって完全に覆われる。
【0086】
しかしながら、例えばスパッタの形成の結果としてごくたまに起こるのは、図11bに描写されているように、溶接ビード8がバー型導体1a、1bの一方、さもなければバー型導体1a、1bの両方の断面を完全に覆っていないことである。図示の例では、バー型導体1aの断面Qaの約1/3が覆われていない割合QaUであり、断面Qaの約2/3が溶接ビード8によって覆われている割合QaBである。バー型導体1bについては、断面Qbの約1/50が覆われていない割合QbUであり、断面Qbの約49/50が溶接ビード8によって覆われている割合QbBであり、これはほとんど意味がない。全体として、この場合、バー型導体1a、1bの全断面Q=Qa+Qbの約1/6が覆われておらず、これは全断面Qの覆われていない割合QUが約1/6であることに相当する。
【0087】
本発明の範囲内において、測定変数の観察及びそれから決定されるパラメータとは無関係に、Qの覆われていない割合QUが限界値GWを超える場合にも、付着面積を不十分と分類することができる。好ましくは、限界値GWは、全断面Qに対して0.10以下、好ましくは0.05以下と決定される。その結果、バー型導体1a、1b間の電気接続不良を認識でき、これは任意選択的にその後の溶接によって改善することができる。
【0088】
溶接ビードによって覆われるバー型導体1a、1bの全断面Qの小さすぎる割合QBも、溶接ビード8からの質の低い熱放散につながるため、危険である。溶接ビード8の冷却が遅くなることで、実際には付着面積が小さすぎるにもかかわらず、温度依存性測定変数及びそれから決定されるパラメータの本発明による観察中に、より大きな溶接ビード8、ひいては、十分に大きな付着面積を装うことになる。この問題は、溶接ビードの平面図の光学的評価によって容易に可能な、覆われていない割合QUの追加的決定によって改善することができる。QU+QB=1であるという事実に注意が必要である。
【符号の説明】
【0089】
1a、1b バー型導体
2a、2b (左)脚部
3a、3b (右)脚部
4a、4b 中央部
5a、5b 端部領域
6a、6b 端面
7 加工用レーザービーム
8 溶接ビード
9 付着面積
11a、11b 長い側面
12 円形軌道
40 装置
41 加工用レーザー
42 半透明ミラー
43 スキャナミラー
43a プログラム可能な集束光学ユニット
44 熱電子放出
45 ミラー
45a 半透明ミラー
46 センサデバイス
47 カメラ
48 光学フィルタ
49 帯域フィルタ
50 保持デバイス
51 ステータマウント
52 電子評価デバイス
53 レーザー加工ヘッド
54 画像
55 画像の部分領域
56 溶接ビードの一部
57 コリメーションレンズ
70 観察用光源
71 観察用光ビーム
73 帯域フィルタ
74 偏光フィルタ
90 フォトダイオード
91 フォトダイオード
93 帯域フィルタ
94 帯域フィルタ
EZ 凝固時間
G グレースケール値
G’ 時間に関するグレースケール値の1次導関数
G’M グレースケール値の平均勾配
G’’ 時間に関するグレースケール値の2次導関数
G1、G2 限界(測定変数の)
GW 限界値(覆われない割合の)
H 溶接ビードの高さ
MD 最小持続時間
Q 両方のバー型導体の断面
Qa バー型導体1aの断面
Qb バー型導体1bの断面
QaB バー型導体1aの断面の覆われた割合
QbB バー型導体1bの断面の覆われた割合
QaU バー型導体1aの断面の覆われない割合
QbU バー型導体1bの断面の覆われない割合
QU 両方のバー型導体の断面の覆われない割合
SP1-SP7 交点
SW1-SW7 閾値
t 時間
、t 時間
T 温度
T’ 時間に関する温度の1次導関数
T’ 温度の平均勾配
T’’ 時間に関する温度の2次導関数
溶融温度
蒸発温度
ZV 時間オフセット
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b