(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】2階以上の床における床根太の接合方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
E04B1/58 M
(21)【出願番号】P 2023010872
(22)【出願日】2023-01-27
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】594100779
【氏名又は名称】三菱地所ホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099357
【氏名又は名称】日高 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100105418
【氏名又は名称】平野 聖
(72)【発明者】
【氏名】石川 一
(72)【発明者】
【氏名】島村 昌悟
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏男
(72)【発明者】
【氏名】田中 暁
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-124097(JP,A)
【文献】実開平01-170703(JP,U)
【文献】実開昭48-004216(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38 - 1/61
E04B 1/02, 1/19
E04C 3/12, 3/16, 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の平行弦トラスユニットを、該平行弦トラスユニットの接合面下部が当接し、かつ接合面上部が長手方向に離間した状態に連結金物を用いて長手方向に連結して平行弦トラス根太を構成し、
前記平行弦トラス根太を建物において対向する一対の構造体に架設したことを特徴とする2階以上の床における床根太の接合方法。
【請求項2】
隣接する前記平行弦トラスユニットの下弦材同士に渡って配設される連結金物として上向きコ字状の下部連結金物が用いられることを特徴とする請求項1に記載の2階以上の床における床根太の接合方法。
【請求項3】
隣接する前記平行弦トラスユニット同士の上弦材の側面に沿って配設される連結金物としてプレート状の上部連結金物が用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の2階以上の床における床根太の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造の建物における2階以上の床における床根太の接合方法およびそれに用いられる連結金物に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの木造の建物は、柱や梁などによって構成される木造軸組工法や、木材で組まれた枠組に構造用合板を張った壁、床及び天井によって構成される木造枠組壁工法(いわゆるツーバイフォー工法)などにより建築されている。このような木造の建物の2階以上の床は、一対の略平行な壁や梁等の構造体間に、複数本の床根太を架け渡し、その上に床合材や床材が貼り付けられることで一般的に構成されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示される木造の建物の床梁は、左右方向に平行に延びる上弦材および下弦材と、上弦材および下弦材を垂直に連結する複数の垂直材と、上弦材および下弦材を斜めに連結する複数の斜材と、から構成される平行弦トラス根太が用いられている。この平行弦トラス根太は曲げ応力に対する強度に優れ、平行弦トラス根太の中央部分を支える耐力壁や柱を配置しなくても構造強度が確保されるため、平行弦トラス根太を架け渡すスパン長が長い場合、例えば、大きなリビングスペースを確保する場合などに適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-209725号公報(第6頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される平行弦トラス根太は、主に架け渡すスパン長が長い場合に用いられるため長尺であるが、長尺であると、上弦材および下弦材の断面が大きくなり材料費が高騰するばかりか、狭小地での建築において運搬が困難になるため、平行弦トラス根太を複数の平行弦トラスユニットに分割し、現場で長手方向に接続して平行弦トラス根太を構成する手法が採用されている。しかしながら、平行弦トラスユニット同士の接続部分に平行弦トラスユニットの自重や床材の荷重が集中するため、平行弦トラスユニット同士が谷型状に折れやすくなり、2階以上の床の床材を水平に保つことができない虞があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、搬送が簡便であり、かつ床材の水平を保つことができる2階以上の床における床根太の接合方法およびそれに用いられる連結金物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の2階以上の床における床根太の接合方法は、
複数の平行弦トラスユニットを、該平行弦トラスユニットの接合面下部が当接し、かつ接合面上部が長手方向に離間した状態に連結金物を用いて長手方向に連結して平行弦トラス根太を構成し、
前記平行弦トラス根太を建物において対向する一対の構造体に架設したことを特徴としている。
この特徴によれば、床根太である平行弦トラス根太を構成する複数の平行弦トラスユニットを分割した状態で搬送することができるとともに、平行弦トラス根太は、平行弦トラスユニット同士を山型に連結することで構成されていることから、平行弦トラスユニットの自重や床材の荷重により平行弦トラスユニットの接合端部同士が押し下げられたときに、平行弦トラスユニット同士が水平に近づくにつれて平行弦トラスユニットの接合面上部同士が圧接されるので平行弦トラスユニット同士が谷型に折れにくく、2階以上の床の床根太を水平に保つことができる。
【0008】
隣接する前記トラスユニットの下弦材同士に渡って配設される連結金物として上向きコ字状の下部連結金物が用いられることを特徴としている。
この特徴によれば、下部連結金物の底板によりトラスユニットの接合面下部が位置決めされるとともに、トラスユニットの接合面下部同士がそれ以上下方に下がることが規制される。
【0009】
隣接する前記トラスユニット同士の上弦材の側面に沿って配設される連結金物としてプレート状の上部連結金物が用いられることを特徴としている。
この特徴によれば、上弦材の上面よりも上方に上部連結金物が張り出さないようにできるため、上弦材の上面に床材を貼り付けやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例における2階以上の床における床根太の接合方法を用いた建物を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施例における連結金物を用いた平行弦トラス根太を示す正面図である。
【
図4】平行弦トラスユニットの接続端部を示す分解斜視図である。
【
図5】(a)は上部連結金物を示す正面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は上部連結金物における一方の貫通孔を示す概略図である。
【
図6】(a)は下部連結金物を示す正面図、(b)は(a)のB-B断面図、(c)は下部連結金物における一方の貫通孔を示す概略図である。
【
図7】(a)は中部連結金物を示す正面図、(b)は(a)のC-C断面図である。
【
図8】(a)は山型状の平行弦トラス根太を架設した状態を示す概略図、(b)は(a)の囲み部の概略図である。
【
図9】トラスユニットの接合部が押し下げられた状態を示す概略図、(b)は(a)の囲み部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る2階以上の床における床根太の接合方法およびそれを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0016】
実施例に係る2階以上の床における床根太の接合方法およびそれに用いられる連結金物につき、
図1から
図9を参照して説明する。以下、
図3の紙面手前側を床根太である平行弦トラス根太の正面側(前方側)とし、平行弦トラス根太を正面から見た左右を平行弦トラス根太の左右側として説明する。
【0017】
図2に示されるように、平行弦トラス根太1は、例えば、戸建て住宅やアパートなどの建物構造において、2階以上の床の床組を構成する床根太であって、本実施例においては2階建ての建物2に適用される。尚、本実施例の建物2は、2階建てである形態を例示するが、3階建て以上の建物であってもよい。
【0018】
図1及び
図2に示されるように、本実施例の建物2は、木材で組まれた枠組に構造用合板を張った壁、床及び天井によって構成される木造枠組壁工法(いわゆるツーバイフォー工法)により建築されている。
【0019】
この建物2は、基礎Fと、1階部分の側壁を構成する複数の構造壁3と、1階部分の床材4と、2階部分の床組を構成する複数の平行弦トラス根太1と、2階部分の床材5と、2階部分の側壁を構成する複数の構造壁6と、屋根7と、から主に構成されている。
【0020】
具体的には、基礎Fの上方には、複数の構造壁3が立設して配置されている。1階部分の構造壁3の上端には左右方向に延びる平行弦トラス根太1が前後方向に複数並んだ状態で固定されているとともに、構造壁3の上方に2階部分の構造壁6が立設されている。複数の平行弦トラス根太1の上方には床材5が貼り付けられている。また、屋根7は、2階部分の構造壁6の上方に複数並んで配置された図示しない屋根トラスまたは垂木に屋根材を固定することで構成されている。
【0021】
尚、本実施例では、構造壁3の内側面に平行弦トラス根太1が固定される形態を例示したが、構造壁3の上面に平行弦トラス根太1を固定し、平行弦トラス根太1の上面に貼り付けられている床材5の上面に構造壁6を立設させるようにしてもよい。この場合、平行弦トラス根太1の外側を外壁材で被覆すればよい。
【0022】
構造壁3,6は、例えば、幅38mm、厚さが89mmの木材で組まれた枠組に構造用合板を貼った壁で構成されており、左右方向または前後方向に並設されることにより建物2の側壁を構成している。また、一部の構造壁3及び構造壁6には、窓枠8が設置される。尚、窓枠8に代えて、構造壁3同士及び構造壁6同士が離間した部位を開口としてもよいし、窓枠8に代えて他の構造部材を配置してもよい。
【0023】
図3に示されるように、平行弦トラス根太1は、平行弦トラスユニットとしての2つのトラスユニット10A,10Bを上部連結金物20、下部連結金物30、中部連結金物40、およびボルトナット9により左右方向に連結することで構成されている。
【0024】
トラスユニット10Aは、左右方向に延び上下に離間して平行に配置される上弦材11および下弦材12と、上弦材11および下弦材12を垂直に連結する複数の垂直材13(本実施例では7本)と、上弦材11および下弦材12を斜めに連結する複数の斜材14(本実施例では8本)と、から構成されている。トラスユニット10Aを構成する各部材は、接続金具15により連結されている(
図4参照)。
【0025】
トラスユニット10Bは、左右方向に延び上下に離間して平行に配置される上弦材11’および下弦材12’と、上弦材11’および下弦材12’を垂直に連結する複数の垂直材13’(本実施例では7本)と、上弦材11’および下弦材12’を斜めに連結する複数の斜材14’(本実施例では8本)と、から構成されている。トラスユニット10Bを構成する各部材は、接続金具15により連結されている(
図4参照)。
【0026】
図4に示されるように、トラスユニット10Aにおける上弦材11の右端部(トラスユニット10B側の端部)には、前後方向に貫通する貫通孔11aが左右方向に離間して3つ設けられている。これら貫通孔11aは、上弦材11の延設方向と平行に並んでいる。
【0027】
また、トラスユニット10Aにおける下弦材12の右端部にも同様に、前後方向に貫通する貫通孔12aが左右方向に離間して3つ設けられている。これら貫通孔12aは、下弦材12の延設方向と平行に並んでいる。
【0028】
トラスユニット10Aにおける上弦材11と下弦材12の右端部同士を連結する垂直材13には、前後方向に貫通する貫通孔13aが上下方向に離間して2つ設けられている。これら貫通孔11a、12a,13aは、ボルトナット9のボルト軸よりも大径に形成されている。
【0029】
また、上弦材11、下弦材12、垂直材13の各右端面は、面一に形成されており、トラスユニット10B側に面する接合面10aを構成している。
【0030】
トラスユニット10Bにおける上弦材11’の左端部(トラスユニット10A側の端部)には、前後方向に貫通する貫通孔11a’が左右方向に離間して3つ設けられている。これら貫通孔11a’は、上弦材11’の延設方向と平行に並んでいる。
【0031】
また、トラスユニット10Bにおける下弦材12’の右端部にも同様に、前後方向に貫通する貫通孔12a’が左右方向に離間して3つ設けられている。これら貫通孔12a’は、下弦材12’の延設方向と平行に並んでいる。
【0032】
トラスユニット10Bにおける上弦材11’と下弦材12’の左端部同士を連結する垂直材13’には、前後方向に貫通する貫通孔13a’が上下方向に離間して2つ設けられている。これら貫通孔11a’、12a’,13a’は、ボルトナット9のボルト軸よりも大径に形成されている。
【0033】
また、上弦材11’、下弦材12’、垂直材13’の各右端面は、面一に形成されており、トラスユニット10A側に面する接合面10a’を構成している。
【0034】
上部連結金物20は、上弦材11,11’の前面と後面とに沿ってそれぞれ配置されている。上弦材11,11’同士は、前後の上部連結金物20,20と、上弦材11,11’の各貫通孔11a,11a’に挿通されるボルトナット9により左右方向に接続されている。
【0035】
具体的には、
図5に示されるように、上部連結金物20は、プレート状をなす金属板であって、上弦材11において最も左側に位置する貫通孔11aに対応する貫通孔21と、上弦材11において中央に位置する貫通孔11aに対応する貫通孔22と、上弦材11において最も右側に位置する貫通孔11aに対応する貫通孔23と、上弦材11’において最も右側に位置する貫通孔11a’に対応する貫通孔21’と、上弦材11’において中央に位置する貫通孔11a’に対応する貫通孔22’と、上弦材11’において最も左側に位置する貫通孔11a’に対応する貫通孔23’と、を備えている。上部連結金物20における各貫通孔は、ボルトナット9のボルト軸と同径となっている。
【0036】
一方のボルト孔である貫通孔21,22,23は、上部連結金物20の左右中央に向かうにつれて高い位置になるように並んで配置されている。他方のボルト孔である貫通孔21’,22’,23’も同様に、上部連結金物20の左右中央に向かうにつれて高い位置になるように並んで配置されている。尚、
図5(c)では、わかりやすく説明するために、貫通孔21,22,23の上下位置の相対的なずれを実際よりも大きく図示している。
【0037】
これら貫通孔21,22,23と貫通孔21’,22’,23’とは、上部連結金物20の左右中央を通る仮想線Xを基準として左右対称の位置に設けられている。
【0038】
図4に戻って、下部連結金物30は、下弦材12,12’に渡って下方から嵌合される上向きコ字状をなしている。具体的には、
図6に示されるように、下部連結金物30は、金属板を上向きコ字状に折り曲げることにより構成されており、底板30Aと、底板30Aの前端から立ち上がる前板30Bと、底板30Aの後端から立ち上がる後板30Cと、を備えている。前板30B及び後板30Cは底板30Aの左右端部から左右方向に張り出している。言い換えれば、下部連結金物30の左右端部には、底板30Aが切り欠かれた切欠き部34,34が形成されている。
【0039】
前板30B及び後板30Cには、下弦材12において最も左側に位置する貫通孔12aに対応する貫通孔31と、下弦材12において中央に位置する貫通孔12aに対応する貫通孔32と、下弦材12において最も右側に位置する貫通孔12aに対応する貫通孔33と、下弦材12’において最も右側に位置する貫通孔12a’に対応する貫通孔31’と、下弦材12’において中央に位置する貫通孔12a’に対応する貫通孔32’と、下弦材12’において最も左側に位置する貫通孔12a’に対応する貫通孔33’と、を備えている。下部連結金物30における各貫通孔は、ボルトナット9のボルト軸と同径となっている。
【0040】
一方のボルト孔である貫通孔31,32,33は、下部連結金物30の左右中央に向かうにつれて高い位置になるように並んで配置されている。他方のボルト孔である貫通孔31’,32’,33’も同様に、下部連結金物30の左右中央に向かうにつれて高い位置になるように並んで配置されている。尚、
図6(c)では、わかりやすく説明するために、貫通孔31,32,33の上下位置の相対的なずれを実際よりも大きく図示している。
【0041】
これら貫通孔31,32,33と貫通孔31’,32’,33’とは、下部連結金物30の左右中央を通る仮想線Yを基準として左右対称の位置に設けられている。
【0042】
図4に戻って、中部連結金物40は、トラスユニット10Aの右端部に配置される垂直材13およびトラスユニット10Bの左端部に配置される垂直材13’の前面と後面とに沿ってそれぞれ配置されている。垂直材13,13’同士は、前後の中部連結金物40,40と、垂直材13,13’の各貫通孔13a,13a’に挿通されるボルトナット9により左右方向に接続されている。
【0043】
具体的には、
図7に示されるように、中部連結金物40は、プレート状をなす金属板であって、垂直材13の貫通孔13aに対応する貫通孔41と、垂直材13’の貫通孔13a’に対応する貫通孔41’と、を備えている。上方の貫通孔41,41’同士、下方の貫通孔41,41’同士は同じ高さに配設されている。各貫通孔は、ボルトナット9のボルト軸と同径となっている。
【0044】
次いで、2階部分の床材5を貼り付ける手順について説明する。先ず、工場等で組み立てたトラスユニット10A,10Bを建築現場に搬送し、建築現場にてトラスユニット10A,10Bを上部連結金物20、下部連結金物30、中部連結金物40、およびボルトナット9により左右方向に連結して平行弦トラス根太1を組み立てる。
【0045】
前述のように、上部連結金物20の貫通孔21~23,21’~23’と、下部連結金物30の貫通孔31~33,31’~33’とは、左右中央に向かうにつれて高い位置になるように並んで配置されているため、トラスユニット10A,10Bを接続すると、
図8(a)に示されるように、トラスユニット10A,10Bが正面視山型状に連結される。トラスユニット10A,10Bが連結された状態にあっては、トラスユニット10A,10Bの接合面10a,10a’の下部同士が当接し、接合面10a,10a’の上部同士が左右方向に離間した状態となっている。
【0046】
詳しくは、
図8(b)に示されるように、ボルトナット9のボルト軸は、該ボルト軸よりも大径に形成された貫通孔11aに対して相対的に右側に寄せて配置されている。尚、図示しないが、ボルトナット9のボルト軸は、貫通孔12a,13aに対しても相対的に右側に寄せて配置されているとともに、貫通孔11a’,12a’,13a’に対して相対的に左側に寄せて配置されている。
【0047】
下部連結金物30は、上向きコ字状をなし、下弦材12,12’に渡って下方から嵌合されているため、底板30Aによりトラスユニット10A,10Bの接合面10a,10a’の下部の上下位置が位置決めされるとともに、前板30B及び後板30Cにより下弦材12,12’の前後のずれを抑制できる。
【0048】
さらに下部連結金物30の左右端部には、底板30Aが切り欠かれた切欠き部34,34が形成されているため、トラスユニット10A,10Bを正面視山型状に連結したときに、接合面10a,10a’の下部が底板30Aから上方に大きく離間することを抑えることができる。
【0049】
また、トラスユニット10A,10Bが正面視山型に連結された状態にあっては、上部連結金物20は、上弦材11,11’の上面11b,11b’よりも下方に配置される。すなわち、上弦材11,11’の上面11b,11b’よりも上方に上部連結金物20が張り出さないようにできるため、上弦材11,11’の上面11b,11b’に床材5を貼り付けやすい。
【0050】
また、上部連結金物20の貫通孔21,22,23と貫通孔21’,22’,23’とは、左右対称の位置に設けられており、下部連結金物30の貫通孔31,32,33と貫通孔31’,32’,33’とは、左右対称の位置に設けられているため、左右対称にトラスユニット10A,10Bをバランスよく連結することができる。
【0051】
次いで、
図2を参照して、正面視山型状に連結された平行弦トラス根太1を、1階部分において左右方向に対向する構造壁3の上端に前後方向に複数並べて架設する。その後、架設された複数の平行弦トラス根太1の上面に2階部分の床材5を貼り付ける。
【0052】
トラスユニット10A,10Bには、トラスユニット10A,10Bの自重や床材5の荷重等によりトラスユニット10A,10Bの接合端部同士を押し下げる方向に力が作用する。トラスユニット10A,10Bの接合端部同士を押し下げる方向に力が作用すると、
図9(a)に示されるように、トラスユニット10A,10B同士が水平に近づくように相対移動する。
【0053】
トラスユニット10A,10Bは正面視山型状に連結されているため、トラスユニット10A,10B同士が水平に近づくにつれて接合面10a,10a’の上部同士が圧接される。これによりトラスユニット10A,10B同士が正面視谷型状に折れにくく、2階の床材5を水平に保つことができる。
【0054】
また、
図9(b)に示されるように、ボルトナット9のボルト軸は、貫通孔11aに対して左側に寄せて配置されるようになる。尚、図示しないが、ボルトナット9のボルト軸は、貫通孔12a,13aに対しても左側に寄せて配置されるとともに、貫通孔11a’,12a’,13a’に対して右側に寄せて配置されるようになる。
【0055】
詳しくは、このとき、各ボルトナット9は、上弦材11,11’と上部連結金物20との間、下弦材12,12’と下部連結金物30との間、垂直材13,13’と中部連結金物40との間でせん断方向に狭持されるので、トラスユニット10A,10Bが正面視谷型状に折れることが規制される(
図9(b)参照)。すなわち、トラスユニット10A,10Bが略水平をなすときには、トラスユニット10A,10Bに設けられる各貫通孔とボルトナット9のボルト軸との隙間がほとんどなくなるため、トラスユニット10A,10Bを水平に接続することができる。
【0056】
加えて、トラスユニット10A,10Bの接合端部同士を押し下げる方向に力が作用したときには、下部連結金物30の底板30Aによりトラスユニット10A,10Bの接合面10a,10a’の下部同士がそれ以上、下方に下がることが規制される。
【0057】
このように、平行弦トラス根太1をトラスユニット10A,10Bとして長手方向に分割できるため、狭小地での建築においても運搬が簡便であるとともに、上弦材11,11’および下弦材12,12’の長さを短くでき、材料費を抑えることができる。また、トラスユニット10A,10B同士が谷型状に折れることを防止できるため、トラスユニット10A,10Bの接続端部の下方に耐力壁や柱を配置しなくてもよいため、1階に大きなリビングスペースを確保することができる。
【0058】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0059】
例えば、前記実施例では、木造枠組壁工法により建築される建物の床組に平行弦トラス根太を用いる例に説明したが、木造軸組工法により建築される建物の床組に平行弦トラス根太を用いてもよい。
【0060】
また、前記実施例では、平行弦トラス根太が2つの平行弦トラスユニットに分割された形態を例示したが、平行弦トラス根太が3つ以上の平行弦トラスユニットにより構成されていてもよい。
【0061】
また、前記実施例では、上部連結金物20、下部連結金物30、中部連結金物40を用いて平行弦トラスユニットを連結する形態を例示したが、上部連結金物または下部連結金物の一方のみで連結されていてもよく、中部連結金物を省略してもよい。また、連結金物は平行弦トラスユニットの前面または後面の一方にのみ沿って設けられていてもよいが、接続強度の観点から前後両面に配置されることが望ましい。
【0062】
また、前記実施例では、平行弦トラス根太が左右に対向する一対の構造壁に架設される形態を例示したが、これに限られず、平行弦トラス根太は、建物において対向する一対の根太などの構造体に架設されてもよい。
【0063】
また、前記実施例では、平行弦トラス根太が前後方向に離間して複数配置される形態を例示したが、各平行弦トラス根太が前後方向に延びる接続材により接続されていてもよい。
【0064】
また、前記実施例では、平行弦トラスユニットの接続端部に垂直材が配設される形態を例示したが、平行弦トラスユニットの接続端部に垂直材が配設されていなくてもよい。この場合、上部連結金物を上向きコ字状に構成してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 平行弦トラス根太(床根太)
3 構造壁(一対の構造体)
5 床材
9 ボルトナット(連結金具)
10A,10B トラスユニット(平行弦トラスユニット)
10a,10a’ 接合面
11,11’ 上弦材
11a,11a’ 貫通孔
12,12’ 下弦材
12a,12a’ 貫通孔
13,13’ 垂直材
14,14’ 斜材
20 上部連結金物(連結金具)
21~23 貫通孔(一方のボルト孔)
21’~23’ 貫通孔(他方のボルト孔)
30 下部連結金物(連結金具)
30A 底板
30B 前板
30C 後板
31~33 貫通孔(一方のボルト孔)
31’~33’ 貫通孔(他方のボルト孔)
X,Y 仮想線
【要約】
【課題】搬送が簡便であり、かつ床材の水平を保つことができる2階以上の床における床根太の接合方法およびそれに用いられる連結金物を提供する。
【解決手段】複数の平行弦トラスユニット10A,10Bを連結金物20,30を用いて平行弦トラスユニット10A,10Bの接合面10a,10a’下部が当接し、接合面10a,10a’上部が長手方向に離間した状態で長手方向に連結して山型になるように平行弦トラス根太1を構成し、建物において対向する一対の構造体3に架設した平行弦トラス根太1が水平に近づくので平行弦トラスユニット10A,10Bの接合部で谷型に折れにくく、2階以上の床材を水平に保つ。
【選択図】
図8