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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240116BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240116BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20240116BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20240116BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20240116BHJP
   H10B 12/00 20230101ALI20240116BHJP
   H10B 41/70 20230101ALI20240116BHJP
【FI】
H01L29/78 619A
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/088 331E
H01L29/78 618B
H10B12/00 671Z
H10B12/00 801
H10B41/70
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023069136
(22)【出願日】2023-04-20
(62)【分割の表示】P 2020531830の分割
【原出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2023086839
(43)【公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2018141425
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】松林 大介
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 悠一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正弘
【審査官】田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-130647(JP,A)
【文献】国際公開第2017/072627(WO,A1)
【文献】特開2018-73995(JP,A)
【文献】特開2018-50044(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0170211(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/8234
H01L 27/088
H01L 29/786
H10B 12/00
H10B 41/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の酸化物と、第1乃至第4の絶縁体と、第1乃至第3の導電体と、第1および第2の酸化物絶縁体と、を有し、
前記第1の導電体は、前記第1の酸化物の上に配置され、
前記第2の導電体および前記第3の導電体は、前記第1の導電体を挟んで、前記第1の酸化物の上に配置され、
前記第1の酸化物絶縁体は、前記第2の導電体の上に配置され、
前記第2の酸化物絶縁体は、前記第3の導電体の上に配置され、
前記第2の酸化物は、前記第1の酸化物絶縁体の側面、前記第2の酸化物絶縁体の側面、および前記第1の酸化物の上面に接して配置され、
前記第1の絶縁体は、前記第1の導電体と前記第2の酸化物の間に配置され、
前記第1の導電体、前記第1の絶縁体、および前記第2の酸化物が、前記第1の酸化物絶縁体、および前記第2の酸化物絶縁体と重畳する領域を有し、
前記第2の絶縁体は、前記第2の導電体と前記第1の酸化物絶縁体の間に配置され、
前記第3の絶縁体は、前記第3の導電体と前記第2の酸化物絶縁体の間に配置され、
前記第4の絶縁体は、前記第1の酸化物絶縁体、前記第2の酸化物絶縁体、および前記第1の導電体を覆って配置され、
前記第1の酸化物絶縁体は、前記第2の絶縁体、前記第2の酸化物、および前記第4の絶縁体によって、前記第1の導電体、前記第2の導電体、前記第1の絶縁体、および前記第1の酸化物と、離隔され、
前記第2の酸化物絶縁体は、前記第3の絶縁体、前記第2の酸化物、および前記第4の絶縁体によって、前記第1の導電体、前記第3の導電体、前記第1の絶縁体、および前記第1の酸化物と、離隔され、
前記第4の絶縁体は、前記第1の酸化物絶縁体および前記第2の酸化物絶縁体より、酸素を拡散させにくい、半導体装置。
【請求項2】
第1および第2の酸化物と、第1乃至第4の絶縁体と、第1乃至第3の導電体と、第1および第2の酸化物絶縁体と、を有し、
前記第1の導電体は、前記第1の酸化物の上に配置され、
前記第2の導電体および前記第3の導電体は、前記第1の導電体を挟んで、前記第1の酸化物の上に配置され、
前記第1の酸化物絶縁体は、前記第2の導電体の上に配置され、
前記第2の酸化物絶縁体は、前記第3の導電体の上に配置され、
前記第2の酸化物は、前記第1の酸化物絶縁体の側面、前記第2の酸化物絶縁体の側面、および前記第1の酸化物の上面に接して配置され、
前記第1の絶縁体は、前記第1の導電体と前記第2の酸化物の間に配置され、
前記第1の導電体、前記第1の絶縁体、および前記第2の酸化物が、前記第1の酸化物絶縁体、および前記第2の酸化物絶縁体と重畳する領域を有し、
前記第4の絶縁体は、前記第2の導電体の側面と、前記第1の酸化物の側面に接して配置され、
前記第4の絶縁体は、前記第3の導電体の側面と、前記第1の酸化物の側面に接して配置され、
前記第4の絶縁体は、前記第1の酸化物絶縁体、前記第2の酸化物絶縁体、および前記第1の導電体の上に配置され、
前記第1の酸化物絶縁体は、前記第2の絶縁体、前記第2の酸化物、および前記第4の絶縁体によって、前記第1の導電体、前記第2の導電体、前記第1の絶縁体、および前記第1の酸化物と、離隔され、
前記第2の酸化物絶縁体は、前記第3の絶縁体、前記第2の酸化物、および前記第4の絶縁体によって、前記第1の導電体、前記第3の導電体、前記第1の絶縁体、および前記第1の酸化物と、離隔され、
前記第4の絶縁体は、前記第1の酸化物絶縁体および前記第2の酸化物絶縁体より、酸素を拡散させにくい、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置、ならびに半導体装置の作製方法に関する。または、本発明の一態様は、半導体ウエハ、モジュール、および電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能し得る装置全般を指す。トランジスタなどの半導体素子をはじめ、半導体回路、演算装置、記憶装置は、半導体装置の一態様である。表示装置(液晶表示装置、発光表示装置など)、投影装置、照明装置、電気光学装置、蓄電装置、記憶装置、半導体回路、撮像装置、および電子機器などは、半導体装置を有すると言える場合がある。
【0003】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。
【背景技術】
【0004】
近年、半導体装置の開発が進められ、LSIやCPUやメモリが主に用いられている。CPUは、半導体ウエハから切り離された半導体集積回路(少なくともトランジスタ及びメモリ)を有し、接続端子である電極が形成された半導体素子の集合体である。
【0005】
LSIやCPUやメモリなどの半導体回路(ICチップ)は、回路基板、例えばプリント配線板に実装され、様々な電子機器の部品の一つとして用いられる。
【0006】
また、絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(単に表示装置とも表記する)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0007】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流が小さいことが知られている。例えば、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を応用した低消費電力のCPUなどが開示されている(特許文献1参照)。また、例えば、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を応用して、長期にわたり記憶内容を保持することができる記憶装置などが、開示されている(特許文献2参照)。
【0008】
また、近年では電子機器の小型化、軽量化に伴い、集積回路のさらなる高密度化への要求が高まっている。また、集積回路を含む半導体装置の生産性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2012-257187号公報
【文献】特開2011-151383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一態様は、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、信頼性が良好な半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、オン電流が大きい半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、高い周波数特性を有する半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、オフ電流の小さい半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、消費電力が低減された半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、生産性の高い半導体装置を提供することを課題の一つとする。
【0011】
本発明の一態様は、長期間においてデータの保持が可能な半導体装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、情報の書き込み速度が速い半導体装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、設計自由度が高い半導体装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、消費電力を抑えることができる半導体装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、新規な半導体装置を提供することを課題の一つとする。
【0012】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、第1および第2の酸化物と、第1乃至第3の絶縁体と、第1乃至第3の導電体と、第1および第2の酸化物絶縁体と、を有し、第1の導電体は、第1の酸化物の上に配置され、第2の導電体および第3の導電体は、第1の導電体を挟んで、第1の酸化物の上に配置され、第1の酸化物絶縁体は、第2の導電体の上に配置され、第2の酸化物絶縁体は、第3の導電体の上に配置され、第2の酸化物は、第1の酸化物絶縁体の側面、第2の酸化物絶縁体の側面、および第1の酸化物の上面に接して配置され、第1の絶縁体は、第1の導電体と第2の酸化物の間に配置され、第2の絶縁体は、第2の導電体と第1の酸化物絶縁体の間に配置され、第3の絶縁体は、第3の導電体と第2の酸化物絶縁体の間に配置され、第1の酸化物絶縁体および第2の酸化物絶縁体は、第1乃至第3の導電体、第1の絶縁体、および第1の酸化物と、接しない、半導体装置である。
【0014】
また、本発明の他の一態様は、第1および第2の酸化物と、第1乃至第4の絶縁体と、第1乃至第3の導電体と、第1および第2の酸化物絶縁体と、を有し、第1の導電体は、第1の酸化物の上に配置され、第2の導電体および第3の導電体は、第1の導電体を挟んで、第1の酸化物の上に配置され、第1の酸化物絶縁体は、第2の導電体の上に配置され、第2の酸化物絶縁体は、第3の導電体の上に配置され、第2の酸化物は、第1の酸化物絶縁体の側面、第2の酸化物絶縁体の側面、および第1の酸化物の上面に接して配置され、第1の絶縁体は、第1の導電体と第2の酸化物の間に配置され、第1の導電体、第1の絶縁体、および第2の酸化物の一部が、第1の酸化物絶縁体の一部、および第2の酸化物絶縁体の一部と重畳し、第2の絶縁体は、第2の導電体と第1の酸化物絶縁体の間に配置され、第3の絶縁体は、第3の導電体と第2の酸化物絶縁体の間に配置され、第4の絶縁体は、第1の酸化物絶縁体、第2の酸化物絶縁体、および第1の導電体を覆って配置され、第1の酸化物絶縁体は、第2の絶縁体、第2の酸化物、および第4の絶縁体によって、第1の導電体、第2の導電体、第1の絶縁体、および第1の酸化物と、離隔され、第2の酸化物絶縁体は、第3の絶縁体、第2の酸化物、および第4の絶縁体によって、第1の導電体、第3の導電体、第1の絶縁体、および第1の酸化物と、離隔される、半導体装置である。
【0015】
また、本発明の他の一態様は、第1および第2の酸化物と、第1乃至第4の絶縁体と、第1乃至第3の導電体と、第1および第2の酸化物絶縁体と、を有し、第1の導電体は、第1の酸化物の上に配置され、第2の導電体および第3の導電体は、第1の導電体を挟んで、第1の酸化物の上に配置され、第1の酸化物絶縁体は、第2の導電体の上に配置され、第2の酸化物絶縁体は、第3の導電体の上に配置され、第2の酸化物は、第1の酸化物絶縁体の側面、第2の酸化物絶縁体の側面、および第1の酸化物の上面に接して配置され、第1の絶縁体は、第1の導電体と第2の酸化物の間に配置され、第1の導電体、第1の絶縁体、および第2の酸化物の一部が、第1の酸化物絶縁体の一部、および第2の酸化物絶縁体の一部と重畳し、第2の絶縁体は、第2の導電体の上面及び側面と、第1の酸化物の側面に接して配置され、第3の絶縁体は、第3の導電体の上面及び側面と、第1の酸化物の側面に接して配置され、第4の絶縁体は、第1の酸化物絶縁体、第2の酸化物絶縁体、および第1の導電体の上に配置され、第1の酸化物絶縁体は、第2の絶縁体、第2の酸化物、および第4の絶縁体によって、第1の導電体、第2の導電体、第1の絶縁体、および第1の酸化物と、離隔され、第2の酸化物絶縁体は、第3の絶縁体、第2の酸化物、および第4の絶縁体によって、第1の導電体、第3の導電体、第1の絶縁体、および第1の酸化物と、離隔される、半導体装置である。
【0016】
上記において、第1の酸化物絶縁体および第2の酸化物絶縁体の膜厚が、第1の酸化物と重畳する領域では、第1の酸化物と重畳しない領域より薄くてもよい。また、上記において、第1の酸化物絶縁体と第2の酸化物絶縁体が一体化し、第2の導電体と第3の導電体の間の領域と重畳して開口を有し、第2絶縁体と第3の絶縁体が一体化し、第2の導電体と第3の導電体の間の領域と重畳して開口を有してもよい。
【0017】
上記において、第4の絶縁体は、第1の酸化物絶縁体の上面および第2の酸化物絶縁体の上面に接することが好ましい。また、上記において、第4の絶縁体は、アルミニウムを含む酸化物であることが好ましい。また、上記において、第4の絶縁体は、第1の酸化物絶縁体および第2の酸化物絶縁体より、酸素を拡散させにくい、ことが好ましい。
【0018】
上記において、第2の絶縁体および第3の絶縁体は、第1の酸化物絶縁体および第2の酸化物絶縁体より、酸素を拡散させにくい、ことが好ましい。
【0019】
上記において、第1の酸化物、および第2の酸化物は、Inと、元素M(MはAl、Ga、Y、またはSn)と、Znと、を有する、ことが好ましい。
【0020】
上記において、さらに、第1の酸化物の下に第3の酸化物が設けられ、第3の酸化物は、Inと、元素M(MはAl、Ga、Y、またはSn)と、Znと、を有し、第3の酸化物における元素Mに対するInの原子数比は、第1の酸化物における元素Mに対するInの原子数比より小さい、ことが好ましい。
【0021】
上記において、さらに、第2の酸化物と第1の絶縁体の間に第4の酸化物が設けられ、第4の酸化物は、Inと、元素M(MはAl、Ga、Y、またはSn)と、Znと、を有し、第4の酸化物における元素Mに対するInの原子数比は、第2の酸化物における元素Mに対するInの原子数比より小さい、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様により、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、信頼性が良好な半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、オン電流が大きい半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、高い周波数特性を有する半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、オフ電流の小さい半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、生産性の高い半導体装置を提供することができる。
【0023】
または、長期間においてデータの保持が可能な半導体装置を提供することができる。または、データの書き込み速度が速い半導体装置を提供することができる。または、設計自由度が高い半導体装置を提供することができる。または、消費電力を抑えることができる半導体装置を提供することができる。または、新規な半導体装置を提供することができる。
【0024】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は本発明の一態様に係る半導体装置の断面図である。
図2図2(A)は本発明の一態様に係る半導体装置の上面図である。図2(B)および図2(C)は本発明の一態様に係る半導体装置の断面図である。
図3図3(A)および図3(B)は本発明の一態様に係る半導体装置の断面図である。
図4図4(A)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す上面図である。図4(B)および図4(C)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図5図5(A)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す上面図である。図5(B)および図5(C)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図6図6(A)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す上面図である。図6(B)および図6(C)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図7図7(A)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す上面図である。図7(B)および図7(C)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図8図8(A)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す上面図である。図8(B)および図8(C)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図9図9(A)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す上面図である。図9(B)および図9(C)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図10図10(A)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す上面図である。図10(B)および図10(C)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図11図11(A)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す上面図である。図11(B)および図11(C)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図12図12(A)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す上面図である。図12(B)および図12(C)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図13図13(A)は本発明の一態様に係る半導体装置の上面図である。図13(B)および図13(C)は本発明の一態様に係る半導体装置の断面図である。
図14図14(A)および図14(B)は本発明の一態様に係る半導体装置の断面図である。
図15図15(A)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す上面図である。図15(B)および図15(C)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図16図16(A)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す上面図である。図16(B)および図16(C)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図17図17(A)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す上面図である。図17(B)および図17(C)は本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す断面図である。
図18図18(A)は本発明の一態様に係る半導体装置の上面図である。図18(B)および図18(C)は本発明の一態様に係る半導体装置の断面図である。
図19図19(A)は本発明の一態様に係る半導体装置の上面図である。図19(B)および図19(C)は本発明の一態様に係る半導体装置の断面図である。
図20図20は本発明の一態様に係る記憶装置の構成を示す断面図である。
図21図21(A)は本発明の一態様に係る記憶装置の構成例を示すブロック図である。図21(B)は本発明の一態様に係る記憶装置の構成例を示す模式図である。
図22図22(A)乃至図22(H)は本発明の一態様に係る記憶装置の構成例を示す回路図である。
図23図23(A)および図23(B)は本発明の一態様に係る半導体装置の模式図である。
図24図24(A)乃至図24(E)は本発明の一態様に係る記憶装置の模式図である。
図25図25(A)乃至図25(F)は本発明の一態様に係る電子機器を示す図である。
図26図26(A)および図26(B)は本実施例に係る試料のTDS分析の結果を示す図である。
図27図27は本実施例に係る試料のTDS分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0027】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお、図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状または値などに限定されない。例えば、実際の製造工程において、エッチングなどの処理により層やレジストマスクなどが意図せずに目減りすることがあるが、理解を容易とするために省略することがある。また、図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0028】
また、特に上面図(「平面図」ともいう)や斜視図などにおいて、発明の理解を容易とするため、一部の構成要素の記載を省略する場合がある。また、一部の隠れ線などの記載を省略する場合がある。
【0029】
また、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
【0030】
また、本明細書等において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。したがって、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0031】
例えば、本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合と、XとYとが直接的に接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図または文章に示された接続関係に限定されず、図または文章に示された接続関係以外のものも、図または文章に開示されているものとする。
【0032】
ここで、X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
【0033】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができる場合がある。
【0034】
なお、本明細書等において、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャネル幅(以下、「実効的なチャネル幅」ともいう)と、トランジスタの上面図において示されるチャネル幅(以下、「見かけ上のチャネル幅」ともいう)と、が異なる場合がある。例えば、ゲート電極が半導体の側面を覆う場合、実効的なチャネル幅が、見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくなる場合がある。例えば、微細かつゲート電極が半導体の側面を覆うトランジスタでは、半導体の側面に形成されるチャネル形成領域の割合が大きくなる場合がある。その場合は、見かけ上のチャネル幅よりも、実効的なチャネル幅の方が大きくなる。
【0035】
このような場合、実効的なチャネル幅の、実測による見積もりが困難となる場合がある。例えば、設計値から実効的なチャネル幅を見積もるためには、半導体の形状が既知という仮定が必要である。したがって、半導体の形状が正確にわからない場合には、実効的なチャネル幅を正確に測定することは困難である。
【0036】
本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、見かけ上のチャネル幅を指す場合がある。または、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、実効的なチャネル幅を指す場合がある。なお、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅などは、断面TEM像などを解析することなどによって、値を決定することができる。
【0037】
なお、半導体の不純物とは、例えば、半導体を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物と言える。不純物が含まれることにより、例えば、半導体のDOS(Density of States)が高くなることや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸化物半導体である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、および酸化物半導体の主成分以外の遷移金属などがあり、例えば、水素、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。酸化物半導体の場合、水も不純物として機能する場合がある。また、酸化物半導体の場合、例えば不純物の混入によって酸素欠損を形成する場合がある。また、半導体がシリコンである場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、第13族元素、第15族元素などがある。
【0038】
なお、本明細書等において、酸化窒化シリコンとは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものである。また、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものである。
【0039】
また、本明細書等において、「絶縁体」という用語を、絶縁膜または絶縁層と言い換えることができる。また、「導電体」という用語を、導電膜または導電層と言い換えることができる。また、「半導体」という用語を、半導体膜または半導体層と言い換えることができる。
【0040】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10度以上10度以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、-5度以上5度以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が-30度以上30度以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80度以上100度以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85度以上95度以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60度以上120度以下の角度で配置されている状態をいう。
【0041】
なお、本明細書において、バリア膜とは、水、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する膜のことであり、当該バリア膜に導電性を有する場合は、導電性バリア膜と呼ぶことがある。
【0042】
本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い意味での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体(Oxide Semiconductorまたは単にOSともいう)などに分類される。例えば、トランジスタの半導体層に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、OS FETあるいはOSトランジスタと記載する場合においては、酸化物または酸化物半導体を有するトランジスタと換言することができる。
【0043】
また、本明細書等において、ノーマリーオフとは、ゲートに電位を印加しない、またはゲートに接地電位を与えたときに、トランジスタに流れるチャネル幅1μmあたりの電流が、室温において1×10-20A以下、85℃において1×10-18A以下、または125℃において1×10-16A以下であることをいう。
【0044】
(実施の形態1)
以下では、本発明の一態様に係る半導体装置の構成とその特性について説明する。
【0045】
図1に、本発明の一態様に係る半導体装置である、トランジスタ20の断面図を示す。
【0046】
図1に示すように、トランジスタ20は、酸化物22aと、酸化物22a上の導電体26と、導電体26を挟んで離隔して、酸化物22a上に配置される導電体28aおよび導電体28bと、導電体28a上の酸化物絶縁体36aと、導電体28b上の酸化物絶縁体36bと、酸化物絶縁体36aの側面、酸化物絶縁体36bの側面、および酸化物22aの上面に接して配置される、酸化物22bと、導電体26と酸化物22bの間に配置される絶縁体24と、導電体28aと酸化物絶縁体36aの間に配置される絶縁体34aと、導電体28bと酸化物絶縁体36bの間に配置される絶縁体34bと、を有する。なお、以下において、酸化物22aおよび酸化物22bをまとめて酸化物22と呼ぶ場合がある。また、導電体28aと導電体28bをまとめて導電体28と呼ぶ場合がある。また、絶縁体34aと絶縁体34bをまとめて絶縁体34と呼ぶ場合がある。また、酸化物絶縁体36aと酸化物絶縁体36bをまとめて酸化物絶縁体36と呼ぶ場合がある。
【0047】
ここで、導電体28aおよび導電体28bは、それぞれトランジスタ20のソース電極またはドレイン電極として機能する。また、導電体26はトランジスタ20のゲート電極として機能し、絶縁体24はトランジスタ20のゲート絶縁体として機能する。
【0048】
また、絶縁体34は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。例えば、絶縁体34は、酸化物絶縁体36より酸素を透過させにくいことが好ましい。このような酸素に対してバリア性を有する絶縁体としては、例えば、アルミニウム、およびハフニウムの一方または両方を含む酸化物を用いればよい。また、酸素に対してバリア性を有する絶縁体としては、例えば、シリコンを含む窒化物、またはシリコンを含む窒化酸化物を用いてもよい。また、酸素に対してバリア性を有する絶縁体としては、例えば、これらの酸化物、または窒化物を積層した絶縁膜を用いてもよい。
【0049】
また、絶縁体34は、水素(例えば、水素原子、水素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁体34は、酸化物絶縁体36より水素を透過させにくいことが好ましい。このような水素に対してバリア性を有する絶縁体としては、例えば、シリコンを含む窒化物、またはシリコンを含む窒化酸化物を用いればよい。
【0050】
また、酸化物絶縁体36は、加熱により脱離する酸素を含むことが好ましい。また、酸化物絶縁体36は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含んでもよい。なお、以下において、加熱により脱離する酸素のことを過剰酸素と呼ぶ場合がある。酸化物絶縁体36aおよび酸化物絶縁体36bは、導電体26、導電体28a、導電体28b、絶縁体24、および酸化物22aと接しないことが好ましい。
【0051】
ここで、酸化物絶縁体36aの導電体26側の側面は酸化物22bに接していることが好ましい。さらに、酸化物絶縁体36aの上面の一部が、酸化物22bに覆われていてもよい。また、同様に、酸化物絶縁体36bの導電体26側の側面は酸化物22bに接していることが好ましい。さらに、酸化物絶縁体36bの上面の一部が、酸化物22bに覆われていてもよい。このような構成にすることで、酸化物絶縁体36に含まれる酸素を、酸化物22bを介して、酸化物22a、および酸化物22aと酸化物22bの界面近傍に供給することができる。さらに、このような構成にすることで、酸化物絶縁体36を、酸化物22bによって、導電体26および絶縁体24と離隔することができる。これにより、酸化物絶縁体36に含まれる酸素が、導電体26および絶縁体24に直接的に拡散するのを防ぐことができる。
【0052】
また、酸化物絶縁体36aの下面が絶縁体34aに接することが好ましい。ここで、絶縁体34aが酸化物22bの側面、および導電体28aの上面に接することが好ましい。また、同様に、酸化物絶縁体36bの下面が絶縁体34bに接することが好ましい。ここで、絶縁体34bが酸化物22bの側面、および導電体28bの上面に接することが好ましい。このような構成にすることで、酸化物絶縁体36を、絶縁体34によって、導電体28および酸化物22aと離隔することができる。これにより、酸化物絶縁体36に含まれる酸素が、導電体28および酸化物22aに直接的に拡散するのを防ぐことができる。
【0053】
なお、図1において、絶縁体34は、導電体28a側に絶縁体34aを、導電体28b側に絶縁体34bを配置する構成にしたが、これに限られるものではない。例えば、絶縁体34aと絶縁体34bが一体化し、導電体28aと導電体28bの間の領域と重畳して開口を有する構成にしてもよい。また、同様に、酸化物絶縁体36も、酸化物絶縁体36aと酸化物絶縁体36bが一体化し、導電体28aと導電体28bの間の領域と重畳して開口を有する構成にしてもよい。
【0054】
また、トランジスタ20上に層間膜として機能する絶縁体を設けてもよい。ただし、層間膜として機能する絶縁体は、酸化物絶縁体36と接しないことが好ましい。例えば、層間膜として機能する絶縁体と酸化物絶縁体36の間に、絶縁体34と同様の絶縁体を配置すればよい。このような構成にすることで、酸化物絶縁体36に含まれる酸素が、層間膜として機能する絶縁体を介して、導電体26、導電体28、絶縁体24、および酸化物22aに拡散するのを防ぐことができる。
【0055】
酸化物22aは、導電体28aと導電体28bの間の領域にチャネル形成領域を有し、導電体28a(導電体28b)と重なる領域近傍に、チャネル形成領域を挟みこむようにソース領域とドレイン領域を有する。なお、ソース領域、および/またはドレイン領域が、導電体28a(導電体28b)より内側に突出する形状になる場合もある。また、トランジスタ20のチャネル形成領域は、酸化物22aだけでなく、酸化物22aと酸化物22bの界面近傍、および/または酸化物22bに形成される場合もある。
【0056】
ここで、トランジスタ20において、酸化物22aおよび酸化物22bは、酸化物半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう)を用いることが好ましい。例えば、酸化物22aおよび酸化物22bとなる金属酸化物としては、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、エネルギーギャップの広い金属酸化物を用いたトランジスタは、オフ電流(リーク電流)が小さい。このようなトランジスタを用いることで、低消費電力の半導体装置を提供できる。
【0057】
例えば、酸化物22aおよび酸化物22bとして、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、錫、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、または錫を用いるとよい。また、酸化物22aおよび酸化物22bとして、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。
【0058】
ここで、酸化物22aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物22bに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きくなってもよい。このように、酸化物22aの上に、酸化物22bを配置することで、酸化物22bよりも上方に形成された構造物から、酸化物22aに対する不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物22aと酸化物22bが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、酸化物22aと酸化物22bの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。酸化物22aと酸化物22bとの界面における欠陥準位密度を低くすることができるため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さく、高いオン電流が得られる。
【0059】
酸化物22aは、結晶性を有することが好ましい。特に、酸化物22aとして、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)を用いることが好ましい。また、酸化物22bも、酸化物22aと同様に、結晶性を有する構成にしてもよい。
【0060】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0061】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
【0062】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0063】
CAAC-OSは結晶性の高い金属酸化物である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、金属酸化物の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損(V:oxygen vacancyともいう)など)の少ない金属酸化物ともいえる。したがって、CAAC-OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
【0064】
ここで、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)によって解析したCAAC-OSの例について説明する。例えば、InGaZnOの結晶を有するCAAC-OSに対し、out-of-plane法による構造解析を行うと、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnOの結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC-OSの結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概略垂直な方向を向いているということができる。
【0065】
また、電子回折によって解析したCAAC-OSの例について説明する。例えば、InGaZnOの結晶を有するCAAC-OSに対し、試料面に平行にプローブ径が300nmの電子線を入射させると、回折パターン(制限視野透過電子回折パターンともいう)が現れる場合がある。この回折パターンには、InGaZnOの結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子回折によっても、CAAC-OSに含まれる結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプローブ径が300nmの電子線を入射させると、リング状の回折パターンが確認される。したがって、電子回折によっても、CAAC-OSに含まれる結晶のa軸およびb軸は配向性を有さないということができる。
【0066】
ここで、本実施の形態に係るトランジスタ20の作製工程中または作製後に熱処理を行ったときの、酸化物絶縁体36に含まれる酸素の挙動について、図1を用いて説明する。なお、図1に示す、矢印は酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の動きの一例を示し、白丸は酸化物22に形成される酸素欠損を示す。
【0067】
酸化物半導体を用いたトランジスタは、酸化物半導体中のチャネルが形成される領域に不純物および酸素欠損が存在すると、電気特性が変動しやすく、信頼性が悪くなる場合がある。また、酸化物半導体中のチャネルが形成される領域に酸素欠損が含まれている、または当該酸素欠損に不純物(代表的には水素)が取り込まれると、トランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。酸化物半導体は、熱処理を行うと、酸素が脱離して酸素欠損が形成されるおそれがある。
【0068】
例えば、トランジスタ20の作製工程中または作製後の熱処理によって、図1に示すように、酸化物22aから導電体28aおよび導電体28bに酸素が吸収され、酸化物22aに酸素欠損が形成される場合がある。ここで、酸化物22中の酸素は、上記熱処理によって、酸素欠損の濃度の勾配を低減するように、酸化物22中に拡散する。言い換えると、酸化物22aと導電体28の界面近傍に形成された酸素欠損は、酸化物22中に拡散する。これにより、酸化物22のチャネル形成領域として機能する部分にも、酸素欠損が形成されることになる。
【0069】
これに対して、酸化物半導体の近傍に過剰酸素を含む絶縁体を設け、熱処理を行うときに、当該絶縁体から酸化物半導体に酸素を供給できる構成にすればよい。上述の通り、本実施の形態に示す半導体装置では、酸化物22bに接して過剰酸素を含む酸化物絶縁体36を設けている。上記熱処理によって、図1に示すように、酸化物絶縁体36から酸素が脱離し、酸化物絶縁体36と酸化物22bの界面近傍の酸素欠損を補填するように、当該酸素が拡散する。上記と同様に、酸化物絶縁体36から供給された酸素も、酸素欠損の濃度の勾配を低減するように、酸化物22中に拡散する。これにより、酸化物22のチャネル形成領域として機能する部分にも、酸素が拡散し、酸素欠損が低減されることになる。
【0070】
ここで、上記熱処理中に、酸化物絶縁体36から過剰な量の酸素が奪われないことが好ましい。例えば、酸化物絶縁体36に接して、導電体26、導電体28aおよび導電体28bが配置されていると、酸化物絶縁体36に含まれる酸素が、これらの導電体に吸収され、酸化物22に供給されにくくなる恐れがある。また、例えば、酸化物絶縁体36に接して、絶縁体24が配置されていると、酸化物絶縁体36に含まれる酸素が、絶縁体24を介して導電体26に吸収され、酸化物22に供給されにくくなる恐れがある。
【0071】
上述の通り、本実施の形態に示す半導体装置では、過剰酸素を含む酸化物絶縁体36は、酸化物22bによって、導電体26および絶縁体24と離隔されている。さらに、過剰酸素を含む酸化物絶縁体36は、絶縁体34によって、導電体28と離隔されている。よって、上記熱処理を行っても、酸化物絶縁体36に含まれる酸素は、導電体26、絶縁体24、導電体28a、および導電体28bに、過剰には拡散しない。これにより、上記熱処理中に、酸化物絶縁体36中の酸素が過剰に減少しないので、酸化物絶縁体36から酸化物22に酸素を供給することができる。
【0072】
また、酸化物22のチャネル形成領域と絶縁体24の界面に過剰酸素が供給されると、チャネル形成領域と絶縁体24の界面に欠陥準位が形成され、トランジスタ20の信頼性が低下する場合がある。これに対し、本実施の形態では、酸化物絶縁体36と絶縁体24を離隔することで、絶縁体24に酸素が供給されるのを抑制している。これにより、チャネル形成領域と絶縁体24の界面に欠陥準位が形成されるのを防ぐことができるので、トランジスタ20の信頼性が低下するのを抑制することができる。
【0073】
また、酸化物22のチャネル形成領域に過剰酸素が供給されると、電圧、高温などのストレスにより、チャネル形成領域の過剰酸素の構造が変化し、トランジスタ20の信頼性が低下する場合がある。これに対し、本実施の形態では、酸化物絶縁体36からチャネル形成領域に直接酸素を供給するのではなく、酸化物22bを介してチャネル形成領域に酸素を供給している。これにより、チャネル形成領域に供給される酸素量を酸化物22bで緩和することができるので、チャネル形成領域に過剰酸素が供給され、トランジスタ20の信頼性が低下するのを抑制することができる。
【0074】
以上のようにして、トランジスタ20の作製工程中または作製後の熱処理によって、酸化物22中に発生した酸素欠損は、酸化物絶縁体36から供給される酸素によって、低減することができる。また、このとき、酸化物22のチャネル形成領域近傍、および酸化物22のチャネル形成領域と絶縁体24の界面近傍に、過剰な酸素が供給されるのを抑制することができる。以上により、過剰な熱処理(サーマルバジェット)による、トランジスタ20の電気特性および信頼性の劣化を抑制し、電気特性および信頼性が良好な半導体装置を提供することができる。
【0075】
なお、酸化物22bは、CAAC-OSであることが好ましい。CAAC-OSは、c軸方向よりもa-b面方向に酸素を拡散させやすい性質を有する。ここで、酸化物22bは、酸化物22aから離れた箇所では、酸化物絶縁体36、絶縁体34、および導電体28を被形成面として成膜される。よって、酸化物絶縁体36から酸化物22bに供給された酸素は、絶縁体24の方向より酸化物22aの方向に拡散しやすくなる。
【0076】
本発明の一態様により、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、信頼性が良好な半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、オン電流の大きい半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、高い周波数特性を有する半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、オフ電流の小さい半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。
【0077】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0078】
(実施の形態2)
以下では、先の実施の形態に示す半導体装置の具体的な構成の一例について、図2乃至図19を用いて説明する。
【0079】
<半導体装置の構成例>
図2(A)、図2(B)、および図2(C)は、本発明の一態様に係るトランジスタ200、およびトランジスタ200周辺の上面図および断面図である。トランジスタ200は、先の実施の形態に示すトランジスタ20に対応している。
【0080】
図2(A)は、トランジスタ200を有する半導体装置の上面図である。また、図2(B)、および図2(C)は、当該半導体装置の断面図である。ここで、図2(B)は、図2(A)にA1-A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル長方向の断面図でもある。また、図2(C)は、図2(A)にA3-A4の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図でもある。なお、図2(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0081】
本発明の一態様の半導体装置は、トランジスタ200と、層間膜として機能する絶縁体214、絶縁体274、および絶縁体281を有する。また、トランジスタ200と電気的に接続し、プラグとして機能する導電体240(導電体240a、および導電体240b)とを有する。なお、プラグとして機能する導電体240の側面に接して絶縁体241(絶縁体241a、および絶縁体241b)が設けられる。
【0082】
また、絶縁体244、酸化物絶縁体280、絶縁体274、および絶縁体281の開口の内壁に接して絶縁体241が設けられ、その側面に接して導電体240の第1の導電体が設けられ、さらに内側に導電体240の第2の導電体が設けられている。ここで、導電体240の上面の高さと、絶縁体281の上面の高さは同程度にできる。なお、トランジスタ200では、導電体240の第1の導電体および導電体240の第2の導電体を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体240を単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。構造体が積層構造を有する場合、形成順に序数を付与し、区別する場合がある。
【0083】
[トランジスタ200]
図2に示すように、トランジスタ200は、基板(図示せず)の上に配置された絶縁体214および絶縁体216と、絶縁体216に埋め込まれるように配置された導電体205と、絶縁体216の上および導電体205の上に配置された絶縁体222と、絶縁体222の上に配置された絶縁体224と、絶縁体224の上に配置された酸化物230(酸化物230a、酸化物230b、酸化物230c、および酸化物230d)と、酸化物230の上に配置された絶縁体250と、絶縁体250上に配置された導電体260(導電体260a、および導電体260b)と、酸化物230bの上面と接する導電体242aおよび導電体242bと、導電体242aの上に配置された絶縁体244aと、導電体242bの上に配置された絶縁体244bと、絶縁体244aの上に配置された酸化物絶縁体280aと、絶縁体244bの上に配置された酸化物絶縁体280bと、酸化物絶縁体280a、酸化物絶縁体280b、および導電体260を覆って配置された絶縁体274と、を有する。ここで、図2(A)(B)に示すように、導電体260、絶縁体250、酸化物230c、および酸化物230dの一部が、酸化物絶縁体280aの一部、および酸化物絶縁体280bの一部と重畳する。
【0084】
なお、酸化物230a、酸化物230b、酸化物230c、および酸化物230dをまとめて酸化物230と呼ぶ場合がある。また、導電体242aおよび導電体242bをまとめて導電体242と呼ぶ場合がある。また、絶縁体244aと絶縁体244bをまとめて絶縁体244と呼ぶ場合がある。また、酸化物絶縁体280aと酸化物絶縁体280bをまとめて酸化物絶縁体280と呼ぶ場合がある。
【0085】
ここで、酸化物230bは、先の実施の形態のトランジスタ20の酸化物22aに対応する。また、導電体242aおよび導電体242bは、先の実施の形態のトランジスタ20の導電体28aおよび導電体28bに対応する。また、絶縁体244は、先の実施の形態のトランジスタ20の絶縁体34に対応する。また、酸化物絶縁体280は、先の実施の形態のトランジスタ20の酸化物絶縁体36に対応する。また、酸化物230cは、先の実施の形態のトランジスタ20の酸化物22bに対応する。また、絶縁体250は、先の実施の形態のトランジスタ20の絶縁体24に対応する。また、導電体260は、先の実施の形態のトランジスタ20の導電体26に対応する。
【0086】
よって、先の実施の形態に示すトランジスタ20と同様に、トランジスタ200では、導電体260が酸化物230b上に配置され、導電体242aおよび導電体242bが、導電体260を挟んで、酸化物230b上に配置され、酸化物絶縁体280aが導電体242a上に配置され、酸化物絶縁体280bが導電体242b上に配置され、酸化物230cが酸化物絶縁体280aの側面、酸化物絶縁体280bの側面、および酸化物230bの上面に接して配置され、絶縁体250が導電体260と酸化物230cの間に配置され、絶縁体244aが導電体242aと酸化物絶縁体280aの間に配置され、絶縁体244bが導電体242bと酸化物絶縁体280bの間に配置される。
【0087】
また、酸化物絶縁体280は、加熱により脱離する酸素を含む領域を有することが好ましい。加熱により酸素が放出される酸化物絶縁体280を、酸化物230cと接して設けることで、酸化物絶縁体280中の酸素を、酸化物230cを通じて、酸化物230bへと効率良く供給することができる。
【0088】
絶縁体222、絶縁体244、および絶縁体274は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。また、絶縁体222、絶縁体244、および絶縁体274は、水素(例えば、水素原子、水素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁体222、絶縁体244、および絶縁体274は、それぞれ絶縁体224よりも酸素および水素の一方または双方の透過性が低いことが好ましい。絶縁体222、絶縁体244、および絶縁体274は、それぞれ絶縁体250よりも酸素および水素の一方または双方の透過性が低いことが好ましい。絶縁体222、絶縁体244、および絶縁体274は、それぞれ酸化物絶縁体280よりも酸素および水素の一方または双方の透過性が低いことが好ましい。
【0089】
絶縁体244aは、図2(B)に示すように、導電体242aの上面、および酸化物絶縁体280aの下面に接することが好ましい。また、絶縁体244bは、図2(B)に示すように、導電体242bの上面、および酸化物絶縁体280bの下面に接することが好ましい。また、絶縁体274は、図2(B)に示すように、導電体260の上面および側面、絶縁体250の側面、酸化物230c、および酸化物230dの側面、酸化物絶縁体280aの上面および側面、酸化物絶縁体280bの上面および側面、絶縁体244aの側面、絶縁体244bの側面、導電体242aの側面、導電体242bの側面、酸化物230aおよび酸化物230bの側面、ならびに絶縁体224の上面に接することが好ましい。また、絶縁体241aは、導電体240aと酸化物絶縁体280aの間に設けられることが好ましい。また、絶縁体241bは、導電体240bと酸化物絶縁体280bの間に設けられることが好ましい。
【0090】
上記のような構成にすることで、酸化物絶縁体280aを、絶縁体244a、絶縁体241a、絶縁体274、および酸化物230cによって、絶縁体281、導電体240a、導電体260、導電体242a、絶縁体250、および酸化物230bと離隔することができる。また、酸化物絶縁体280bを、絶縁体244b、絶縁体241b、絶縁体274、および酸化物230cによって、絶縁体281、導電体240b、導電体260、導電体242b、絶縁体250、および酸化物230bと離隔することができる。これにより、酸化物絶縁体280に含まれる酸素が、絶縁体281、導電体260、導電体240、導電体242、絶縁体250、および酸化物230bに直接的に拡散するのを防ぐことができる。
【0091】
ここで、酸化物230cは、酸化物絶縁体280aの側面および上面の一部と接し、且つ酸化物絶縁体280bの側面および上面の一部と接することが好ましい。さらに、導電体260の一部が、酸化物230c、酸化物230d、および導電体260を介して、酸化物絶縁体280aの一部、および酸化物絶縁体280bの一部と重畳することが好ましい。このような構成にすることで、酸化物絶縁体280a(酸化物絶縁体280b)と、導電体260および絶縁体250との間に、より確実に酸化物230cおよび酸化物230dを配置させることができる。よって、酸化物絶縁体280a(酸化物絶縁体280b)を導電体260および絶縁体250とより確実に離隔させることができる。
【0092】
また、酸化物230は、絶縁体224の上に配置された酸化物230aと、酸化物230aの上に配置された酸化物230bと、酸化物230bの上に配置され、少なくとも一部が酸化物230bの上面に接する酸化物230cと、を有することが好ましい。さらに、酸化物230cと絶縁体250の間に酸化物230dを設けてもよい。
【0093】
なお、トランジスタ200では、チャネルが形成される領域(以下、チャネル形成領域ともいう)と、その近傍において、酸化物230a、酸化物230b、酸化物230cおよび酸化物230dの4層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物230bと酸化物230cの2層構造、酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230cの3層構造、または5層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。
【0094】
ここで、導電体260は、トランジスタのゲート電極として機能し、導電体242aおよび導電体242bは、それぞれソース電極またはドレイン電極として機能する。導電体260は、酸化物230c、酸化物230d、および絶縁体250を介して、導電体242aと重なる領域、および導電体242bと重なる領域を有することが好ましい。導電体260をこのような形状にすることにより、導電体260に位置合わせのマージンを持たせることができるので、酸化物230bの導電体242aと導電体242bの間の領域に、導電体260を確実に重畳させることができる。
【0095】
また、トランジスタ200は、チャネル形成領域を含む酸化物230(酸化物230a、酸化物230b、酸化物230cおよび酸化物230d)に、酸化物半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう)を用いることが好ましい。
【0096】
チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたトランジスタ200は、非導通状態において極めてリーク電流(オフ電流)が小さいため、低消費電力の半導体装置を提供できる。また、酸化物半導体は、スパッタリング法などを用いて成膜できるため、高集積型の半導体装置を構成するトランジスタ200に用いることができる。
【0097】
例えば、酸化物230として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、錫、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、または錫を用いるとよい。また、酸化物230として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。
【0098】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、酸化物半導体中のチャネルが形成される領域に不純物および酸素欠損が存在すると、電気特性が変動しやすく、信頼性が悪くなる場合がある。また、酸化物半導体中のチャネルが形成される領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。したがって、チャネルが形成される領域中の酸素欠損はできる限り低減されていることが好ましい。例えば、酸化物230cなどを介して酸化物230bに酸素を供給し、酸素欠損を補填すればよい。これにより、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有するとともに、信頼性を向上させたトランジスタを提供することができる。
【0099】
また、酸化物230上に接するように設けられ、ソース電極やドレイン電極として機能する導電体242(導電体242a、および導電体242b)に含まれる元素(例えば、第2の元素)が、酸化物230の酸素を吸収する機能を有する場合、酸化物230と導電体242の間、または酸化物230の表面近傍に、部分的に低抵抗領域が形成される場合がある。この場合、当該低抵抗領域には、酸素欠損に入り込んだ不純物(水素、窒素、または金属元素等)がドナーとして機能し、キャリア密度が増加する場合がある。なお、以下において、酸素欠損に入り込んだ水素のことをVHと呼ぶ場合がある。
【0100】
また、図2(B)に示すように、酸化物230上に接するように導電体242が設けられ、酸化物230の、導電体242との界面とその近傍には、低抵抗領域として、領域243(領域243a、および領域243b)が形成される場合がある。酸化物230は、トランジスタ200のチャネル形成領域として機能する領域と、領域243の一部を含み、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域と、を有する。
【0101】
なお、領域243a、および領域243bは、酸化物230bの導電体242近傍において、深さ方向に拡散するように設けられる例を示しているが、本発明はこれに限らない。領域243aおよび領域243bは、求められるトランジスタの電気特性に合わせて適宜形成すればよい。また、酸化物230において、各領域の境界を明確に検出することが困難な場合がある。各領域内で検出される元素の濃度は、領域ごとの段階的な変化に限らず、各領域内でも連続的に変化(グラデーションともいう)していてもよい。
【0102】
以下では、本発明の一態様に係るトランジスタ200を有する半導体装置の詳細な構成について説明する。
【0103】
導電体205は、酸化物230、および導電体260と、重なるように配置する。また、導電体205は、絶縁体216に埋め込まれて設けることが好ましい。また、導電体205は、一部が絶縁体214に埋め込まれてもよい。ここで、導電体205の上面の平坦性を良好にすることが好ましい。例えば、導電体205上面の平均面粗さ(Ra)を1nm以下、好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.3nm以下にすればよい。これにより、導電体205の上に形成される、絶縁体224の平坦性を良好にし、酸化物230bおよび酸化物230cの結晶性の向上を図ることができる。
【0104】
ここで、導電体260は、第1のゲート(トップゲートともいう)電極として機能する場合がある。また、導電体205は、第2のゲート(ボトムゲートともいう)電極として機能する場合がある。その場合、導電体205に印加する電位を、導電体260に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ200のVthを制御することができる。特に、導電体205に負の電位を印加することにより、トランジスタ200のVthを0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体205に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体260に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0105】
なお、導電体205は、図2(A)に示すように、酸化物230bよりも、大きく設けるとよい。特に、図2(C)に示すように、導電体205は、酸化物230bのチャネル幅方向と交わる端部よりも外側の領域においても、延伸していることが好ましい。つまり、酸化物230bのチャネル幅方向における側面の外側において、導電体205と、導電体260とは、絶縁体を介して重畳していることが好ましい。
【0106】
上記構成を有することで、第1のゲート電極としての機能を有する導電体260の電界と、第2のゲート電極としての機能を有する導電体205の電界によって、酸化物230bのチャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。
【0107】
また、図2(C)に示すように、導電体205は延伸させて、配線としても機能させている。ただし、これに限られることなく、導電体205の下に、配線として機能する導電体を設ける構成にしてもよい。また、導電体205は、必ずしも各トランジスタに一個ずつ設ける必要はない。例えば、導電体205を複数のトランジスタで共有する構成にしてもよい。
【0108】
また、導電体205は、絶縁体216の開口の内壁に接して導電体205aが形成され、さらに内側に導電体205bが形成されている。ここで、導電体205aおよび導電体205bの高さと、絶縁体216の上面の高さは同程度にできる。なお、トランジスタ200では、導電体205aと導電体205bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体205は、単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。構造体が積層構造を有する場合、形成順に序数を付与し、区別する場合がある。
【0109】
また、導電体205aとして、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)導電体を用いてもよい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)導電体を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不純物、または酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、または上記酸素のいずれか一またはすべての拡散を抑制する機能とする。
【0110】
導電体205aとして、酸素の拡散を抑制する機能を有する導電体を用いることにより、導電体205が酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウムまたは酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。したがって、導電体205aとしては、上記導電性材料を単層または積層とすればよい。
【0111】
また、導電体205bとして、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。
【0112】
絶縁体214は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。また、絶縁体214は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ200に混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁体214は、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。
【0113】
例えば、絶縁体214として窒化シリコンなどを用いることが好ましい。これにより、水または水素などの不純物が絶縁体214よりも基板側からトランジスタ200側に拡散するのを抑制することができる。または、絶縁体224などに含まれる酸素が、絶縁体214よりも基板側に、拡散するのを抑制することができる。または、絶縁体214として、絶縁性材料であるアルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いてもよい。例えば、絶縁体214として、窒化シリコンとその上に酸化アルミニウムを積層した積層膜を用いればよい。
【0114】
また、絶縁体216、および絶縁体281は、絶縁体214よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体216、および絶縁体281として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、または空孔を有する酸化シリコンなどを適宜用いればよい。
【0115】
絶縁体222、および絶縁体224は、ゲート絶縁体としての機能を有する。
【0116】
ここで、酸化物230と接する絶縁体224は、加熱により酸素を脱離する機能を有してもよい。例えば、絶縁体224は、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンなどを適宜用いればよい。酸素を含む絶縁体を酸化物230aに接して設けることにより、酸化物230中の酸素欠損を低減し、トランジスタ200の信頼性を向上させることができる。
【0117】
また、図2(C)に示すように、絶縁体224は、絶縁体244と重ならず、且つ酸化物230bと重ならない領域の膜厚が、それ以外の領域の膜厚より薄くなる場合がある。絶縁体224において、絶縁体244と重ならず、且つ酸化物230bと重ならない領域の膜厚は、上記酸素を十分に拡散できる膜厚であることが好ましい。
【0118】
絶縁体222は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。例えば、絶縁体222は、絶縁体224より酸素透過性が低いことが好ましい。絶縁体222が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物230が有する酸素が、絶縁体220側へ拡散することを低減できるので、好ましい。また、導電体205が、絶縁体224や、酸化物230が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0119】
さらに、絶縁体222は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ200に混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。例えば、絶縁体222は、絶縁体224より水素透過性が低いことが好ましい。絶縁体222、および絶縁体244によって、絶縁体224および酸化物230などを囲むことにより、外方から水または水素などの不純物がトランジスタ200に侵入することを抑制することができる。
【0120】
絶縁体222は、絶縁性材料であるアルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体222を形成した場合、絶縁体222は、酸化物230からの酸素の放出や、トランジスタ200の周辺部から酸化物230への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0121】
または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0122】
また、絶縁体222は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)または(Ba,Sr)TiO(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いてもよい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁体の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁体として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0123】
なお、絶縁体222、および絶縁体224が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0124】
酸化物230は、酸化物230aと、酸化物230a上の酸化物230bと、酸化物230b上の酸化物230cと、を有する。酸化物230b下に酸化物230aを有することで、酸化物230aよりも下方に形成された構造物から、酸化物230bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物230b上に酸化物230cを有することで、酸化物230cよりも上方に形成された構造物から、酸化物230bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0125】
また、図2などに示すように、酸化物230cの上に配置された酸化物230dを有することが好ましい。酸化物230cは、酸化物230bに用いられる金属酸化物を構成する金属元素の少なくとも一つを含むことが好ましく、当該金属元素を全て含むことがより好ましい。これにより、酸化物230bと酸化物230cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。
【0126】
なお、酸化物230は、各金属原子の原子数比が異なる酸化物により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物230aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物230aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物230bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物230bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物230aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。
【0127】
このように、酸化物230aに含まれるInの原子数比を、酸化物230bに含まれるInの原子数比より小さくすることで、酸化物230aにおける酸素の拡散速度を、酸化物230bより小さくすることができる。また、酸化物230aに含まれる元素M(例えばGa)の原子数比を、酸化物230bに含まれる元素M(例えばGa)の原子数比より大きくすることで、酸化物230aにおける酸素の拡散速度を、酸化物230bより小さくすることができる。
【0128】
また、酸化物230cは、酸化物230aまたは酸化物230bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。また、酸化物230dに用いる金属酸化物において、構成元素中のInの原子数比が、酸化物230cに用いる金属酸化物における、構成元素中のInの原子数比より小さいことが好ましい。また、酸化物230dに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物230cに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より小さいことが好ましい。
【0129】
このように、酸化物230dに含まれるInの原子数比を、酸化物230cに含まれるInの原子数比より小さくすることで、酸化物230dにおける酸素の拡散速度を、酸化物230cより小さくすることができる。また、酸化物230dに含まれる元素M(例えばGa)の原子数比を、酸化物230cに含まれる元素M(例えばGa)の原子数比より大きくすることで、酸化物230dにおける酸素の拡散速度を、酸化物230cより小さくすることができる。また、酸化物230dによって、Inが絶縁体250側に拡散するのを抑制することができる。
【0130】
また、酸化物230bは、結晶性を有することが好ましい。例えば、CAAC-OSを用いることが好ましい。CAAC-OSなどの結晶性を有する酸化物は、不純物や欠陥(酸素欠損など)が少なく、結晶性の高い、緻密な構造を有している。よって、ソース電極またはドレイン電極による、酸化物230bからの酸素の引き抜きを低減することができる。これにより、熱処理を行っても、酸化物230bから酸素が引き抜かれることを低減できるので、トランジスタ200は、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対して安定である。
【0131】
また、酸化物230c、および酸化物230dは、結晶性を有することが好ましく、例えば、CAAC-OSを用いることが好ましい。
【0132】
また、酸化物230aおよび酸化物230dの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物230bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物230aおよび酸化物230dの電子親和力が、酸化物230bの電子親和力より小さいことが好ましい。
【0133】
ここで、酸化物230a、酸化物230b、酸化物230c、および酸化物230dの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物230a、酸化物230b、酸化物230c、および酸化物230dの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物230aと酸化物230bとの界面、酸化物230bと酸化物230c、および酸化物230cと酸化物230dとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0134】
具体的には、酸化物230aとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、または1:1:0.5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物230bとして、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、または3:1:2[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物230cとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、またはGa:Zn=2:5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物230cと、酸化物230dの組み合わせの具体例としては、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、Ga:Zn=2:1[原子数比]との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、Ga:Zn=2:5[原子数比]との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]と、酸化ガリウムとの積層構造などが挙げられる。
【0135】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物230b、および酸化物230bと酸化物230cの界面近傍となる。酸化物230a、酸化物230cを上述の構成とすることで、酸化物230aと酸化物230bとの界面、および酸化物230bと酸化物230cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ200は高いオン電流、および高い周波数特性を得ることができる。
【0136】
酸化物230は、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、領域234となる金属酸化物としては、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。このようなトランジスタを用いることで、低消費電力の半導体装置を提供できる。
【0137】
ここで、本実施の形態に係るトランジスタ200の作製工程中または作製後に熱処理を行ったときの、酸化物絶縁体280に含まれる酸素の挙動について、図3(A)(B)を用いて説明する。図3(A)は、トランジスタ200のチャネル長方向の拡大図であり、図3(B)は、トランジスタ200のチャネル幅方向の拡大図である。なお、図3(A)では、導電体242b側を図示しているが、導電体242a側も同様である。なお、図3(A)(B)に示す、実線矢印は熱処理で拡散される酸素の動きの一例を示し、点線矢印は絶縁体274の成膜時に添加される酸素の動きの一例を示し、白丸は酸化物230に形成される酸素欠損を示す。
【0138】
トランジスタ200の作製工程中または作製後の熱処理によって、図3(A)(B)に示すように、酸化物230bから導電体242b(導電体242aも同様)に酸素が吸収され、酸化物230bに酸素欠損が形成される場合がある。ここで、酸化物230中の酸素は、上記熱処理によって、酸素欠損の濃度の勾配を低減するように、酸化物230中に拡散する。言い換えると、酸化物230bと導電体242の界面近傍に形成された酸素欠損は、酸化物230中に拡散する。これにより、酸化物230のチャネル形成領域として機能する部分にも、酸素欠損が形成されることになる。
【0139】
上記熱処理によって、図3(A)(B)に示すように、酸化物絶縁体280から酸素が脱離し、酸化物絶縁体280と酸化物230cの界面近傍の酸素欠損を補填するように、当該酸素が拡散する。上記と同様に、酸化物絶縁体280から供給された酸素も、酸素欠損の濃度の勾配を低減するように、酸化物230中に拡散する。これにより、酸化物230のチャネル形成領域として機能する部分にも、酸素が拡散し、酸素欠損が低減されることになる。
【0140】
このとき、酸化物230c上に酸化物230dを設けることで、酸化物230c中の酸素が絶縁体250に拡散するのを低減することができる。
【0141】
なお、図3(A)(B)に示すように、酸化物絶縁体280上に、絶縁体274を、酸素を含む雰囲気でスパッタリング法を用いて成膜することで、酸化物絶縁体280に酸素を添加することができる。また、同時に絶縁体224に酸素を添加することができる。
【0142】
上記熱処理中に、酸化物絶縁体280から過剰な量の酸素が奪われないことが好ましい。例えば、酸化物絶縁体280に接して、導電体260、導電体242aおよび導電体242bが配置されていると、酸化物絶縁体280に含まれる酸素が、これらの導電体に吸収され、酸化物230に供給されにくくなる恐れがある。また、例えば、酸化物絶縁体280に接して、絶縁体250または絶縁体281が配置されていると、酸化物絶縁体280に含まれる酸素が、絶縁体250または絶縁体281を介して導電体260に吸収され、酸化物230に供給されにくくなる恐れがある。
【0143】
上述の通り、本実施の形態に示す半導体装置では、過剰酸素を含む酸化物絶縁体280は、酸化物230cおよび酸化物230dによって、導電体260および絶縁体250と離隔されている。さらに、過剰酸素を含む酸化物絶縁体280は、絶縁体244によって、導電体242と離隔されている。さらに、過剰酸素を含む酸化物絶縁体280は、絶縁体274によって、絶縁体281と離隔されている。よって、上記熱処理を行っても、酸化物絶縁体280に含まれる酸素は、絶縁体281、導電体260、絶縁体250、導電体242a、および導電体242bに、過剰には拡散しない。これにより、上記熱処理中に、酸化物絶縁体280中の酸素が過剰に減少しないので、酸化物絶縁体280から酸化物230に酸素を供給することができる。
【0144】
また、本実施の形態では、酸化物絶縁体280と絶縁体250を離隔することで、絶縁体250に酸素が供給されるのを抑制している。これにより、チャネル形成領域と絶縁体250の界面に欠陥準位が形成されるのを防ぐことができるので、トランジスタ200の信頼性が低下するのを抑制することができる。
【0145】
また、本実施の形態では、酸化物絶縁体280からチャネル形成領域に直接酸素を供給するのではなく、酸化物230cを介してチャネル形成領域に酸素を供給している。これにより、チャネル形成領域に供給される酸素量を酸化物230cで緩和することができるので、チャネル形成領域に過剰酸素が供給され、トランジスタ200の信頼性が低下するのを抑制することができる。
【0146】
また、図3(A)(B)に示すように、絶縁体224から酸化物230のチャネル形成領域に酸素を供給することもできる。ここで、酸化物230bと絶縁体224の間に酸化物230aおよび酸化物230cが設けられており、酸化物230aおよび酸化物230cを介してチャネル形成領域に酸素を供給している。これにより、チャネル形成領域に供給される酸素量を酸化物230aおよび酸化物230cで緩和することができるので、トランジスタ200の信頼性が低下するのを抑制することができる。
【0147】
以上のようにして、トランジスタ200の作製工程中または作製後の熱処理によって、酸化物230中に発生した酸素欠損は、酸化物絶縁体280から供給される酸素によって、低減することができる。また、このとき、酸化物230のチャネル形成領域近傍、および酸化物230のチャネル形成領域と絶縁体250の界面近傍に、過剰な酸素が供給されるのを抑制することができる。以上により、過剰な熱処理(サーマルバジェット)による、トランジスタ200の電気特性および信頼性の劣化を抑制し、電気特性および信頼性が良好な半導体装置を提供することができる。
【0148】
酸化物230b上には、ソース電極、およびドレイン電極として機能する導電体242(導電体242a、および導電体242b)が設けられる。導電体242の膜厚は、例えば、1nm以上50nm以下、好ましくは2nm以上25nm以下、とすればよい。
【0149】
導電体242としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。
【0150】
絶縁体244は、絶縁体222などと同様に、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。例えば、絶縁体244は、絶縁体224より酸素透過性が低いことが好ましい。さらに、図2(B)(C)に示すように、絶縁体244a(絶縁体244b)は、導電体242a(導電体242b)の上面、および酸化物絶縁体280a(酸化物絶縁体280b)の下面に接することが好ましい。このような構成にすることで、酸化物絶縁体280に含まれる酸素が、導電体242に吸収されるのを抑制することができる。
【0151】
さらに、水または水素などの不純物が、酸化物絶縁体280から導電体242に混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。例えば、絶縁体244は、絶縁体224より水素透過性が低いことが好ましい。
【0152】
また、絶縁体244は、2層以上の多層構造とすることができる。例えば、絶縁体244として、酸素を含む雰囲気でスパッタリング法を用いて1層目を成膜し、次にALD法を用いて2層目を成膜し、2層構造としてもよい。ALD法は、被覆性の良好な成膜法なので、1層目の凹凸によって、段切れなどが形成されるのを防ぐことができる。
【0153】
絶縁体244としては、例えば、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を成膜するとよい。なお、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。また、絶縁体244として、窒化シリコンなどのバリア性の高い窒化物を用いてもよい。
【0154】
絶縁体250は、ゲート絶縁体として機能する。絶縁体250は、酸化物230dの上面に接して配置することが好ましい。絶縁体250は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0155】
また、絶縁体250と導電体260との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体250から導電体260への酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体250から導電体260への酸素の拡散が抑制され、導電体260の酸化を防ぐことができる。
【0156】
また、当該金属酸化物は、ゲート絶縁体の一部としての機能を有する場合がある。したがって、絶縁体250に酸化シリコンや酸化窒化シリコンなどを用いる場合、当該金属酸化物は、比誘電率が高いhigh-k材料である金属酸化物を用いることが好ましい。ゲート絶縁体を、絶縁体250と当該金属酸化物との積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、ゲート絶縁体の物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁体として機能する絶縁体の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
【0157】
具体的には、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。特に、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。
【0158】
導電体260は、図2では導電体260aの上に導電体260bが配置される、2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0159】
導電体260aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0160】
また、導電体260aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体250に含まれる酸素により、導電体260bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。
【0161】
また、導電体260bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体260は、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体260bは積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0162】
導電体260は、酸化物230bのチャネル形成領域として機能する部分の側面および上面を酸化物230c、酸化物230d、および絶縁体250を介して覆う構成であることが好ましい。これにより、導電体260の電界を酸化物230bのチャネル形成領域として機能する部分に作用させやすくなる。よって、トランジスタ200のオン電流を増大させ、周波数特性を向上させることができる。
【0163】
酸化物絶縁体280aは、絶縁体274、酸化物230c、および絶縁体244aに囲まれるように設けられる。また、酸化物絶縁体280bは、絶縁体274、酸化物230c、および絶縁体244bに囲まれるように設けられる。酸化物絶縁体280は、加熱により脱離する酸素を含むことが好ましい。また、酸化物絶縁体280は、多くの酸素を含むことができるよう、膜厚が厚いことが好ましく、例えば、膜厚30nm以上が好ましい。ただし、酸化物絶縁体280は、上記膜厚に限られず、十分な量の酸素を供給できればよい。
【0164】
例えば、酸化物絶縁体280として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、または空孔を有する酸化シリコンなどを有することが好ましい。特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、空孔を有する酸化シリコンなどの材料は、加熱により脱離する酸素を含む領域を容易に形成することができるため好ましい。
【0165】
酸化物絶縁体280として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm以上、または3.0×1020atoms/cm以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0166】
また、酸化物絶縁体280中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。また、酸化物絶縁体280中の水素の拡散係数が低いことが好ましい。
【0167】
ここで、酸化物絶縁体280aの側面、絶縁体244aの側面、および導電体242aの側面は、上面視において概略一致していることが好ましい。または、酸化物絶縁体280aの側面、絶縁体244aの側面、および導電体242aの側面は、概略面一であることが好ましい。また、酸化物絶縁体280bの側面、絶縁体244bの側面、および導電体242bの側面も同様である。このような構成にすることで、絶縁体274で、酸化物絶縁体280、絶縁体244、および導電体242を被覆性良く覆うことができる。よって、酸化物絶縁体280から酸素が拡散するのを防ぐことができる。また、酸化物絶縁体280および導電体242に不純物が混入するのを防ぐことができる。
【0168】
絶縁体274は、絶縁体244などと同様に、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。絶縁体274は、酸化物絶縁体280より酸素透過性が低いことが好ましい。絶縁体274としては、絶縁体244等に用いることができる絶縁体を用いればよい。絶縁体274として、例えば、スパッタリング法で成膜された酸化アルミニウムを用いればよい。また、例えば、スパッタリング法で成膜された酸化アルミニウムと、その上に成膜された窒化シリコンの積層膜を用いればよい。
【0169】
さらに、絶縁体274は、水または水素などの不純物が、絶縁体281側からトランジスタ200に混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。例えば、絶縁体274は、酸化物絶縁体280より水素透過性が低いことが好ましい。
【0170】
絶縁体274は、導電体260の上面および側面、絶縁体250の側面、酸化物230c、および酸化物230dの側面、酸化物絶縁体280aの上面および側面、酸化物絶縁体280bの上面および側面、絶縁体244aの側面、絶縁体244bの側面、導電体242aの側面、導電体242bの側面、酸化物230aおよび酸化物230bの側面、ならびに絶縁体224の上面に接することが好ましい。
【0171】
上記のような構成にすることで、酸化物絶縁体280を、絶縁体244、絶縁体274、および酸化物230cによって、導電体260、導電体242、絶縁体250、酸化物230b、および絶縁体281と離隔することができる。これにより、酸化物絶縁体280に含まれる酸素が、導電体260、導電体242、絶縁体250、酸化物230b、および絶縁体281に直接的に拡散するのを防ぐことができる。
【0172】
絶縁体274は、スパッタリング法を用いて成膜されることが好ましい。絶縁体274は、酸素を含む雰囲気で、スパッタリング法を用いて成膜されることがより好ましい。絶縁体274を、スパッタリング法を用いて成膜することで、酸化物絶縁体280の絶縁体274と接する領域近傍に過剰酸素を添加することができる。これにより、当該領域から、酸化物230cを介して酸化物230b中に酸素を供給することができる。ここで、絶縁体274が、酸素の拡散を抑制する機能を有することで、酸素が酸化物絶縁体280の上方および側面方向へ拡散することを防ぐことができる。また、絶縁体244が、下方への酸素の拡散を抑制する機能を有することで、酸素が酸化物絶縁体280から下方へ拡散することを防ぐことができる。このようにして、酸化物230のチャネル形成領域として機能する領域に酸素が供給される。これにより、酸化物230のチャネル形成領域として機能する領域の酸素欠損を低減し、トランジスタのノーマリーオン化を抑制することができる。
【0173】
また、絶縁体274を、スパッタリング法を用いて成膜する際に、絶縁体224の絶縁体274と接する領域近傍にも過剰酸素を添加することができる。
【0174】
なお、酸化物230a、酸化物230b、導電体242、絶縁体244、および酸化物絶縁体280のチャネル幅方向側の側面まで、絶縁体274に覆われることが好ましい。このような構成にすることで、絶縁体281に含まれる不純物が、酸化物230a、酸化物230b、導電体242、絶縁体244、および酸化物絶縁体280に吸収されるのを抑制することができる。
【0175】
また、絶縁体274の上に、層間膜として機能する絶縁体281を設けることが好ましい。絶縁体281は、絶縁体224などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0176】
また、絶縁体281、絶縁体274、酸化物絶縁体280、および絶縁体244に形成された開口に、導電体240aおよび導電体240bを配置する。導電体240aおよび導電体240bは、導電体260を挟んで対向して設ける。なお、導電体240aおよび導電体240bの上面の高さは、絶縁体281の上面と、同一平面上としてもよい。
【0177】
なお、絶縁体281、絶縁体274、酸化物絶縁体280、および絶縁体244の開口の内壁に接して、絶縁体241aが設けられ、その側面に接して導電体240aの第1の導電体が形成されている。当該開口の底部の少なくとも一部には導電体242aが位置しており、導電体240aが導電体242aと接する。同様に、絶縁体281、絶縁体274、酸化物絶縁体280、および絶縁体244の開口の内壁に接して、絶縁体241bが設けられ、その側面に接して導電体240bの第1の導電体が形成されている。当該開口の底部の少なくとも一部には導電体242bが位置しており、導電体240bが導電体242bと接する。
【0178】
導電体240aおよび導電体240bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体240aおよび導電体240bは積層構造としてもよい。
【0179】
また、導電体240を積層構造とする場合、酸化物230a、酸化物230b、導電体242、絶縁体244、酸化物絶縁体280、絶縁体274、および絶縁体281と接する導電体には、水または水素などの不純物の透過を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。例えば、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、水または水素などの不純物の透過を抑制する機能を有する導電性材料は、単層または積層で用いてもよい。当該導電性材料を用いることで、酸化物絶縁体280に添加された酸素が導電体240aおよび導電体240bに吸収されるのを防ぐことができる。また、絶縁体281より上層から水または水素などの不純物が、導電体240aおよび導電体240bを通じて酸化物230に混入するのを抑制することができる。
【0180】
絶縁体241aおよび絶縁体241bとしては、絶縁体244等に用いることができる絶縁体(例えば、酸化アルミニウム、または窒化シリコンなど)を用いればよい。絶縁体241aおよび絶縁体241bは、絶縁体244に接して設けられるので、酸化物絶縁体280などから水または水素などの不純物が、導電体240aおよび導電体240bを通じて酸化物230に混入するのを抑制することができる。また、酸化物絶縁体280に含まれる酸素が導電体240aおよび導電体240bに吸収されるのを防ぐことができる。
【0181】
また、図示しないが、導電体240aの上面、および導電体240bの上面に接して配線として機能する導電体を配置してもよい。配線として機能する導電体は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、当該導電体は、積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。なお、当該導電体は、絶縁体に設けられた開口に埋め込むように形成してもよい。
【0182】
<半導体装置の構成材料>
以下では、半導体装置に用いることができる構成材料について説明する。
【0183】
<<基板>>
トランジスタ200を形成する基板としては、例えば、絶縁体基板、半導体基板、または導電体基板を用いればよい。絶縁体基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、安定化ジルコニア基板(イットリア安定化ジルコニア基板など)、樹脂基板などがある。また、半導体基板としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムを材料とした半導体基板、または炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムからなる化合物半導体基板などがある。さらには、前述の半導体基板内部に絶縁体領域を有する半導体基板、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板などがある。導電体基板としては、黒鉛基板、金属基板、合金基板、導電性樹脂基板などがある。または、金属の窒化物を有する基板、金属の酸化物を有する基板などがある。さらには、絶縁体基板に導電体または半導体が設けられた基板、半導体基板に導電体または絶縁体が設けられた基板、導電体基板に半導体または絶縁体が設けられた基板などがある。または、これらの基板に素子が設けられたものを用いてもよい。基板に設けられる素子としては、容量素子、抵抗素子、スイッチ素子、発光素子、記憶素子などがある。
【0184】
<<絶縁体>>
絶縁体としては、絶縁性を有する酸化物、窒化物、酸化窒化物、窒化酸化物、金属酸化物、金属酸化窒化物、金属窒化酸化物などがある。
【0185】
例えば、トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁体の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁体として機能する絶縁体に、high-k材料を用いることで物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時の低電圧化が可能となる。一方、層間膜として機能する絶縁体には、比誘電率が低い材料を用いることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。したがって、絶縁体の機能に応じて、材料を選択するとよい。
【0186】
また、比誘電率の高い絶縁体としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物、またはシリコンおよびハフニウムを有する窒化物などがある。
【0187】
また、比誘電率が低い絶縁体としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などがある。
【0188】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体(絶縁体214、絶縁体222、絶縁体244、および絶縁体274など)で囲うことによって、トランジスタの電気特性を安定にすることができる。水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウム、またはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。具体的には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、または酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムチタン、窒化チタン、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどの金属窒化物を用いることができる。
【0189】
また、ゲート絶縁体として機能する絶縁体は、加熱により脱離する酸素を含む領域を有する絶縁体であることが好ましい。例えば、加熱により脱離する酸素を含む領域を有する酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを酸化物230と接する構造とすることで、酸化物230が有する酸素欠損を補償することができる。
【0190】
<<導電体>>
導電体としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンなどから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
【0191】
また、上記の材料で形成される導電層を複数積層して用いてもよい。例えば、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。
【0192】
なお、トランジスタのチャネル形成領域に酸化物を用いる場合において、ゲート電極として機能する導電体には、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造を用いることが好ましい。この場合は、酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けるとよい。酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けることで、当該導電性材料から離脱した酸素がチャネル形成領域に供給されやすくなる。
【0193】
特に、ゲート電極として機能する導電体として、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる金属元素および酸素を含む導電性材料を用いることが好ましい。また、前述した金属元素および窒素を含む導電性材料を用いてもよい。例えば、窒化チタン、窒化タンタルなどの窒素を含む導電性材料を用いてもよい。また、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、シリコンを添加したインジウム錫酸化物を用いてもよい。また、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物を用いてもよい。このような材料を用いることで、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる水素を捕獲することができる場合がある。または、外方の絶縁体などから混入する水素を捕獲することができる場合がある。
【0194】
<<金属酸化物>>
酸化物230として、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。以下では、本発明に係る酸化物230に適用可能な金属酸化物について説明する。
【0195】
金属酸化物は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特に、インジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたは錫などが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0196】
ここでは、金属酸化物が、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有するIn-M-Zn酸化物である場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、または錫などとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。
【0197】
なお、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
【0198】
[金属酸化物の構造]
酸化物半導体(金属酸化物)は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、および非晶質酸化物半導体などがある。
【0199】
[不純物]
ここで、金属酸化物中における各不純物の影響について説明する。
【0200】
また、金属酸化物にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。したがって、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、金属酸化物中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる金属酸化物中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1016atoms/cm以下にする。
【0201】
また、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。当該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている金属酸化物を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。
【0202】
このため、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm未満、好ましくは1×1019atoms/cm未満、より好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満とする。不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0203】
<半導体装置の作製方法>
次に、図2に示す、本発明に係るトランジスタ200を有する半導体装置について、作製方法を図4乃至図12を用いて説明する。また、図4乃至図12において、各図の(A)は上面図を示す。また、各図の(B)は、(A)に示すA1-A2の一点鎖線で示す部位に対応する断面図であり、トランジスタ200のチャネル長方向の断面図でもある。また、各図の(C)は、(A)にA3-A4の一点鎖線で示す部位に対応する断面図であり、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図でもある。なお、各図の(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0204】
まず、基板(図示しない)を準備し、当該基板上に絶縁体214を成膜する。絶縁体214の成膜は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、パルスレーザ堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、またはALD(Atomic Layer Deposition)法などを用いて行うことができる。
【0205】
なお、CVD法は、プラズマを利用するプラズマCVD(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法、熱を利用する熱CVD(TCVD:Thermal CVD)法、光を利用する光CVD(Photo CVD)法などに分類できる。さらに用いる原料ガスによって金属CVD(MCVD:Metal CVD)法、有機金属CVD(MOCVD:Metal Organic CVD)法に分けることができる。
【0206】
プラズマCVD法は、比較的低温で高品質の膜が得られる。また、熱CVD法は、プラズマを用いないため、被処理物へのプラズマダメージを小さくすることが可能な成膜方法である。例えば、半導体装置に含まれる配線、電極、素子(トランジスタ、容量素子など)などは、プラズマから電荷を受け取ることでチャージアップする場合がある。このとき、蓄積した電荷によって、半導体装置に含まれる配線、電極、素子などが破壊される場合がある。一方、プラズマを用いない熱CVD法の場合、こういったプラズマダメージが生じないため、半導体装置の歩留まりを高くすることができる。また、熱CVD法では、成膜中のプラズマダメージが生じないため、欠陥の少ない膜が得られる。
【0207】
また、ALD法は、原子の性質である自己制御性を利用し、一層ずつ原子を堆積することができるので、極薄の成膜が可能、アスペクト比の高い構造への成膜が可能、ピンホールなどの欠陥の少ない成膜が可能、被覆性に優れた成膜が可能、および低温での成膜が可能、などの効果がある。また、ALD法には、プラズマを利用した成膜方法PEALD(Plasma Enhanced ALD)法も含まれる。プラズマを利用することで、より低温での成膜が可能となり好ましい場合がある。なお、ALD法で用いるプリカーサには炭素などの不純物を含むものがある。このため、ALD法により設けられた膜は、他の成膜法により設けられた膜と比較して、炭素などの不純物を多く含む場合がある。なお、不純物の定量は、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて行うことができる。
【0208】
CVD法およびALD法は、ターゲットなどから放出される粒子が堆積する成膜方法とは異なり、被処理物の表面における反応により膜が形成される成膜方法である。したがって、被処理物の形状の影響を受けにくく、良好な段差被覆性を有する成膜方法である。特に、ALD法は、優れた段差被覆性と、優れた厚さの均一性を有するため、アスペクト比の高い開口部の表面を被覆する場合などに好適である。ただし、ALD法は、比較的成膜速度が遅いため、成膜速度の速いCVD法などの他の成膜方法と組み合わせて用いることが好ましい場合もある。
【0209】
CVD法およびALD法は、原料ガスの流量比によって、得られる膜の組成を制御することができる。例えば、CVD法およびALD法では、原料ガスの流量比によって、任意の組成の膜を成膜することができる。また、例えば、CVD法およびALD法では、成膜しながら原料ガスの流量比を変化させることによって、組成が連続的に変化した膜を成膜することができる。原料ガスの流量比を変化させながら成膜する場合、複数の成膜室を用いて成膜する場合と比べて、搬送や圧力調整に掛かる時間を要さない分、成膜に掛かる時間を短くすることができる。したがって、半導体装置の生産性を高めることができる場合がある。
【0210】
本実施の形態では、絶縁体214として、CVD法によって窒化シリコンを成膜する。このように、絶縁体214として、窒化シリコンなどの銅が透過しにくい絶縁体を用いることにより、絶縁体214より下層(図示せず)の導電体に銅など拡散しやすい金属を用いても、当該金属が絶縁体214より上の層に拡散するのを抑制することができる。
【0211】
次に絶縁体214上に絶縁体216を成膜する。絶縁体216の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、絶縁体216として、CVD法によって酸化シリコンを成膜する。
【0212】
次に、リソグラフィー法を用いて、絶縁体216に、絶縁体214に達する開口を形成する。開口とは、例えば、溝やスリットなども含まれる。また、開口が形成された領域を指して開口部とする場合がある。開口の形成にはウェットエッチング法を用いてもよいが、ドライエッチング法を用いるほうが微細加工には好ましい。また、絶縁体214は、絶縁体216をエッチングして開口を形成する際のエッチングストッパとして機能する絶縁体を選択することが好ましい。例えば、開口を形成する絶縁体216に酸化シリコンを用いた場合は、絶縁体214は、エッチングストッパとして機能する絶縁体として、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウムを用いるとよい。
【0213】
なお、リソグラフィー法では、まず、マスクを介してレジストを露光する。次に、露光された領域を、現像液を用いて除去または残存させてレジストマスクを形成する。次に、当該レジストマスクを介してエッチング処理することで導電体、半導体または絶縁体などを所望の形状に加工することができる。例えば、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、EUV(Extreme Ultraviolet)光などを用いて、レジストを露光することでレジストマスクを形成すればよい。また、基板と投影レンズとの間に液体(例えば水)を満たして露光する、液浸技術を用いてもよい。また、前述した光に代えて、電子ビームやイオンビームを用いてもよい。なお、電子ビームやイオンビームを用いる場合には、マスクは不要となる。なお、レジストマスクの除去には、アッシングなどのドライエッチング処理を行う、ウェットエッチング処理を行う、ドライエッチング処理後にウェットエッチング処理を行う、またはウェットエッチング処理後にドライエッチング処理を行うことができる。
【0214】
また、レジストマスクの代わりに絶縁体や導電体からなるハードマスクを用いてもよい。ハードマスクを用いる場合、絶縁体216となる絶縁膜上にハードマスク材料となる絶縁膜や導電膜を形成し、その上にレジストマスクを形成し、ハードマスク材料をエッチングすることで所望の形状のハードマスクを形成することができる。絶縁体216となる絶縁膜のエッチングは、レジストマスクを除去してから行っても良いし、レジストマスクを残したまま行っても良い。後者の場合、エッチング中にレジストマスクが消失することがある。絶縁体216となる絶縁膜のエッチング後にハードマスクをエッチングにより除去しても良い。一方、ハードマスクの材料が後工程に影響が無い、あるいは後工程で利用できる場合、必ずしもハードマスクを除去する必要は無い。
【0215】
ドライエッチング装置としては、平行平板型電極を有する容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)エッチング装置を用いることができる。平行平板型電極を有する容量結合型プラズマエッチング装置は、平行平板型電極の一方の電極に高周波電源を印加する構成でもよい。または平行平板型電極の一方の電極に複数の異なった高周波電源を印加する構成でもよい。または平行平板型電極それぞれに同じ周波数の高周波電源を印加する構成でもよい。または平行平板型電極それぞれに周波数の異なる高周波電源を印加する構成でもよい。または高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置を用いることができる。高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置は、例えば、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)エッチング装置などを用いることができる。
【0216】
開口の形成後に、導電体205aとなる導電膜を成膜する。当該導電膜は、不純物や酸素の透過を抑制する機能を有する導電性バリア膜を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化タングステン、窒化チタンなどを用いることができる。またはタンタル、タングステン、チタン、モリブデン、アルミニウム、銅、モリブデンタングステン合金との積層膜とすることができる。導電体205aとなる導電膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。
【0217】
本実施の形態では、導電体205aとなる導電膜として、窒化タンタル、または、窒化タンタルの上に窒化チタンを積層した膜を成膜する。導電体205aとしてこのような金属窒化物を用いることにより、導電体205bで銅など拡散しやすい金属を用いても、当該金属が導電体205aから外に拡散するのを抑制することができる。
【0218】
次に、導電体205aとなる導電膜上に、導電体205bとなる導電膜を成膜する。当該導電膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、導電体205bとなる導電膜として、タングステン、銅、アルミニウムなどの低抵抗導電性材料を成膜する。
【0219】
次に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことで、導電体205aとなる導電膜、および導電体205bとなる導電膜の一部を研磨により除去し、絶縁体216を露出する。その結果、開口部のみに、導電体205aとなる導電膜、および導電体205bとなる導電膜が残存する。これにより、上面が平坦な、導電体205a、および導電体205bを含む導電体205を形成することができる(図4参照)。なお、当該CMP処理により、絶縁体216の一部が除去される場合がある。
【0220】
なお、絶縁体216および導電体205の作製方法は上記に限られるものではない。例えば、絶縁体214の上に導電体205となる導電膜を成膜し、リソグラフィー法を用いて当該導電膜加工することで導電体205を形成する。次に、導電体205を覆うように絶縁体216となる絶縁膜を設け、CMP処理により当該絶縁膜の一部を、導電体205の一部が露出するまで除去することで導電体205、および絶縁体216を形成してもよい。
【0221】
上記のようにCMP処理を用いて導電体205、および絶縁体216を形成することで、導電体205と絶縁体216の上面の平坦性を向上させることができ、後工程にて酸化物230a、酸化物230bおよび酸化物230cを構成するCAAC-OSの結晶性を向上させることができる。
【0222】
次に、絶縁体216、および導電体205上に絶縁体222を成膜する。絶縁体222として、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を成膜するとよい。なお、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体は、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する。絶縁体222が、水素および水に対するバリア性を有することで、トランジスタ200の周辺に設けられた構造体に含まれる水素、および水が、絶縁体222を通じてトランジスタ200の内側へ拡散することが抑制され、酸化物230中の酸素欠損の生成を抑制することができる。
【0223】
絶縁体222の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。
【0224】
次に、絶縁体222上に絶縁体224となる絶縁膜を成膜する。絶縁体224となる絶縁膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。
【0225】
続いて、加熱処理を行うと好ましい。加熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下、さらに好ましくは320℃以上450℃以下で行えばよい。なお、加熱処理は、窒素または不活性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行う。また、加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、加熱処理は、窒素または不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
【0226】
本実施の形態では、窒素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行った後に、連続して酸素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行う。当該加熱処理によって、絶縁体224に含まれる水、水素などの不純物を除去することなどができる。
【0227】
また、加熱処理は、絶縁体222の成膜後に行ってよい。当該加熱処理は、上述した加熱処理条件を用いることができる。
【0228】
ここで、絶縁体224に過剰酸素領域を形成するために、減圧状態で酸素を含むプラズマ処理を行ってもよい。酸素を含むプラズマ処理は、例えばマイクロ波を用いた高密度プラズマを発生させる電源を有する装置を用いることが好ましい。または、基板側にRF(Radio Frequency)を印加する電源を有してもよい。高密度プラズマを用いることより、高密度の酸素ラジカルを生成することができ、基板側にRFを印加することで、高密度プラズマによって生成された酸素ラジカルを効率よく絶縁体224内に導くことができる。または、この装置を用いて不活性ガスを含むプラズマ処理を行った後に、脱離した酸素を補うために酸素を含むプラズマ処理を行ってもよい。なお、当該プラズマ処理の条件を適宜選択することにより、絶縁体224に含まれる水、水素などの不純物を除去することができる。その場合、加熱処理は行わなくてもよい。
【0229】
ここで、絶縁体224上に、例えば、スパッタリング法によって、酸化アルミニウムを成膜し、該酸化アルミニウムを絶縁体224に達するまで、CMPを行ってもよい。当該CMPを行うことで絶縁体224表面の平坦化および絶縁体224表面の平滑化を行うことができる。当該酸化アルミニウムを絶縁体224上に配置してCMPを行うことで、CMPの終点検出が容易となる。また、CMPによって、絶縁体224の一部が研磨されて、絶縁体224の膜厚が薄くなることがあるが、絶縁体224の成膜時に膜厚を調整すればよい。絶縁体224表面の平坦化および平滑化を行うことで、後に成膜する酸化物の被覆率の悪化を防止し、半導体装置の歩留りの低下を防ぐことができる場合がある。また、絶縁体224上に、スパッタリング法によって、酸化アルミニウムを成膜することにより、絶縁体224に酸素を添加することができるので好ましい。
【0230】
次に、絶縁体224上に、酸化膜230A、酸化膜230Bを順に成膜する。なお、上記酸化膜は、大気環境にさらさずに連続して成膜することが好ましい。大気開放せずに成膜することで、酸化膜230A、および酸化膜230Bとなる酸化膜上に大気環境からの不純物または水分が付着することを防ぐことができ、酸化膜230Aと酸化膜230Bとの界面近傍を清浄に保つことができる。
【0231】
酸化膜230Aおよび、酸化膜230Bの成膜はスパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。
【0232】
例えば、酸化膜230A、および酸化膜230Bをスパッタリング法によって成膜する場合は、スパッタリングガスとして酸素、または、酸素と希ガスの混合ガスを用いる。スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を高めることで、成膜される酸化膜中の過剰酸素を増やすことができる。また、上記の酸化膜をスパッタリング法によって成膜する場合は、上記のIn-M-Zn酸化物ターゲットを用いることができる。
【0233】
特に、酸化膜230Aの成膜時に、スパッタリングガスに含まれる酸素の一部が絶縁体224に供給される場合がある。したがって、酸化膜230Aのスパッタリングガスに含まれる酸素の割合は70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは100%とすればよい。
【0234】
また、酸化膜230Bをスパッタリング法で形成する場合、スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を1%以上30%以下、好ましくは5%以上20%以下として成膜すると、酸素欠乏型の酸化物半導体が形成される。酸素欠乏型の酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られる。また、基板を加熱しながら成膜を行うことによって、当該酸化膜の結晶性を向上させることができる。ただし、本発明の一態様はこれに限定されない。酸化膜230Bをスパッタリング法で形成する場合、スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を、30%を超えて100%以下、好ましくは70%以上100%以下として成膜すると、酸素過剰型の酸化物半導体が形成される。酸素過剰型の酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、比較的高い信頼性が得られる。
【0235】
本実施の形態では、酸化膜230Aとして、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=1:1:0.5[原子数比](2:2:1[原子数比])、あるいは1:3:4[原子数比]のターゲットを用いて成膜する。また、酸化膜230Bとして、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]のターゲットを用いて成膜する。なお、各酸化膜は、成膜条件、および原子数比を適宜選択することで、酸化物230に求める特性に合わせて形成するとよい。
【0236】
ここで、絶縁体222、絶縁体224、酸化膜230A、および酸化膜230Bを、大気に暴露することなく成膜することが好ましい。例えば、マルチチャンバー方式の成膜装置を用いればよい。
【0237】
次に、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、上述した加熱処理条件を用いることができる。加熱処理によって、酸化膜230A、および酸化膜230B中の水、水素などの不純物を除去することなどができる。本実施の形態では、窒素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行った後に、連続して酸素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行う。
【0238】
次に、酸化膜230B上に導電膜242Aを成膜する(図4参照)。導電膜242Aの成膜はスパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。
【0239】
次に、導電膜242A上に、絶縁膜244Aを成膜する。絶縁膜244Aは、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁膜を成膜するとよい。なお、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁膜として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁膜は、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する。絶縁膜244Aの成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。
【0240】
次に、絶縁膜244A上に、酸化物絶縁膜280Aを成膜する。酸化物絶縁膜280Aの成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。例えば、酸化物絶縁膜280Aとして、PECVD法を用いて酸化窒化シリコン膜を成膜すればよい。また、例えば、酸化物絶縁膜280Aとなる絶縁膜として、スパッタリング法を用いて酸化シリコン膜を成膜すればよい。また、例えば、酸化物絶縁膜280Aとなる絶縁膜として、スパッタリング法を用いて酸化シリコン膜を成膜し、その上にPECVD法を用いて酸化窒化シリコン膜を成膜してもよい。
【0241】
次に、酸化物絶縁膜280A上に、導電膜284Aを成膜する(図5参照)。導電膜284Aの成膜はスパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。導電膜284Aは導電膜242Aと同様の導電膜を用いることが好ましい。
【0242】
尚、上述の絶縁体222、絶縁体224、酸化膜230A、酸化膜230B、導電膜242A、絶縁膜244A、酸化物絶縁膜280A、および導電膜284Aを順に連続成膜してもよい。
【0243】
絶縁体222、絶縁体224、酸化膜230A、酸化膜230B、導電膜242A、絶縁膜244A、酸化物絶縁膜280A、および導電膜284Aを大気にさらすことなく順に連続成膜することで、表面吸着水などが絶縁膜、酸化膜および導電膜のそれぞれの表面に吸着することを防ぐことができる。従って、上記積層膜の各界面は、大気に曝されないため、不純物濃度が低減される。また、水、または水素などの不純物が絶縁膜、酸化膜および導電膜などへ侵入することを抑制できる。
【0244】
絶縁体222、絶縁体224、酸化膜230A、酸化膜230B、導電膜242A、絶縁膜244A、および導電膜284Aを大気にさらすことなく順に成膜するためには、異なる膜種が連続成膜可能となる複数の処理室を有する、マルチチャンバー装置を用いることが好ましい。
【0245】
次に、リソグラフィー法によって、導電膜284Aを加工し、導電体層284Bを形成する(図6参照)。該加工においては、断面形状がテーパー形状を有することが好ましい。該テーパー角度は、基板底面と平行な面に対して、30度以上75度未満、好ましくは30度以上70度未満とする。このようなテーパー角度を有することによって、以降の成膜工程における膜の被覆性が向上する。また、該加工はドライエッチング法を用いることが好ましい。ドライエッチング法による加工は微細加工および上述のテーパー形状の加工に適している。
【0246】
次に、リソグラフィー法を用いて、導電体層284B、酸化物絶縁膜280A、絶縁膜244Aおよび導電膜242Aを島状にエッチングし、導電体284a、導電体284b、絶縁体層280B、絶縁体層244B、および導電体層242Bを形成する(図7参照)。
【0247】
次に、導電体284a、導電体284b、絶縁体層280B、および絶縁体層244Bの表面が露出している部分をエッチングマスクとして、酸化膜230Aおよび酸化膜230Bをエッチングし、酸化物230aおよび酸化物230bを形成する。同時に、導電体層242B上であって、導電体284aと導電体284bに挟まれる領域の絶縁体層280Bおよび絶縁体層244Bがエッチングされることによって、酸化物絶縁体280a、酸化物絶縁体280b、絶縁体244aおよび絶縁体244bを形成する(図8参照)。
【0248】
導電体284a、導電体284bおよび導電体層242Bのエッチング速度に対して、酸化膜230Aおよび酸化膜230Bのエッチング速度が速いエッチング条件を用いて加工することが好ましい。導電体284a、導電体284bおよび導電体層242Bのエッチング速度を1とすると、酸化膜230Aおよび酸化膜230Bのエッチング速度は3以上50以下、好ましくは、5以上30以下とする。
【0249】
次に、導電体284a、導電体284b、および導電体層242Bの表面が露出している部分をエッチングし、導電体242a、および導電体242bを形成する(図9参照)。このとき、絶縁体224の上部がエッチングによって、除去されることがある。
【0250】
ここで、酸化物230a、酸化物230b、導電体242aおよび導電体242bは、少なくとも一部が導電体205と重なるように形成する。また、酸化物230aの側面、酸化物230bの側面、導電体242aの側面および導電体242bの側面は、それぞれ、絶縁体222の上面に対し、概略垂直であることが好ましい。概略垂直であることで、複数のトランジスタ200を設ける際に、小面積化、高密度化が可能となる。または、酸化物230aの側面、酸化物230bの側面、導電体242aの側面および導電体242bの側面と、それぞれ、絶縁体222と、の上面のなす角が低い角度になる構成にしてもよい。その場合、酸化物230aの側面、酸化物230bの側面、導電体242aの側面および導電体242bの側面と、それぞれ、絶縁体222と、の上面のなす角は60°以上70°未満が好ましい。この様な形状とすることで、これより後の工程において、絶縁体244などの被覆性が向上し、鬆などの欠陥を低減することができる。
【0251】
なお、当該酸化膜および導電膜の加工はリソグラフィー法を用いて行えばよい。また、当該加工はドライエッチング法やウェットエッチング法を用いることができる。ドライエッチング法による加工は微細加工に適している。
【0252】
これまでのドライエッチングなどの処理を行うことによって、エッチングガスなどに起因した不純物が酸化物230a、および酸化物230bなどの表面または内部に付着または拡散することがある。不純物としては、例えば、フッ素または塩素などがある。
【0253】
上記の不純物などを除去するために、洗浄を行う。洗浄方法としては、洗浄液など用いたウェット洗浄、プラズマを用いたプラズマ処理、または熱処理による洗浄などがあり、上記洗浄を適宜組み合わせて行ってもよい。
【0254】
ウェット洗浄としては、シュウ酸、リン酸、またはフッ化水素酸などを炭酸水または純水で希釈した水溶液を用いて洗浄処理を行ってもよい。または、純水または炭酸水を用いた超音波洗浄を行ってもよい。
【0255】
次に加熱処理を行っても良い。加熱処理は、減圧下で行い、大気に暴露することなく、連続して酸化膜230Cを成膜してもよい。このような処理を行うことによって、酸化物230bの表面などに吸着している水分および水素を除去し、さらに酸化物230aおよび酸化物230b中の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。加熱処理の温度は、100℃以上400℃以下が好ましい。本実施の形態では、加熱処理の温度を200℃とする(図10参照)。
【0256】
酸化膜230Cの成膜はスパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。酸化膜230Cに求める特性に合わせて、酸化膜230A、または酸化膜230Bと同様の成膜方法を用いて、酸化膜230Cを成膜すればよい。本実施の形態では、酸化膜230Cを、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]のターゲットを用いて成膜する。
【0257】
特に、酸化膜230Cの成膜時に、スパッタリングガスに含まれる酸素の一部が酸化物230aおよび酸化物230bに供給される場合がある。したがって、酸化膜230Cのスパッタリングガスに含まれる酸素の割合は70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは100%とすればよい。
【0258】
さらに連続して、酸化膜230Dの成膜を、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。酸化膜230Dに求める特性に合わせて、酸化膜230A、または酸化膜230Bと同様の成膜方法を用いて、酸化膜230Dを成膜すればよい。本実施の形態では、酸化膜230Dを、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]のターゲットを用いて成膜する。
【0259】
次に加熱処理を行っても良い。加熱処理は、減圧下で行い、大気に暴露することなく、連続して絶縁膜250Aを成膜してもよい。このような処理を行うことによって、酸化膜230Dの表面などに吸着している水分および水素を除去し、さらに酸化物230a、酸化物230b、酸化膜230C、および酸化膜230D中の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。加熱処理の温度は、100℃以上400℃以下が好ましい。
【0260】
絶縁膜250Aは、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて成膜することができる。絶縁膜250Aとして、CVD法により、酸化窒化シリコンを成膜することが好ましい。なお、絶縁膜250Aを成膜する際の成膜温度は、350℃以上450℃未満、特に400℃前後とすることが好ましい。絶縁膜250Aを、400℃で成膜することで、不純物が少ない絶縁体を成膜することができる。
【0261】
次に、導電膜260Aおよび導電膜260Bを成膜する。導電膜260Aおよび導電膜260Bの成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。例えば、CVD法を用いることが好ましい。本実施の形態では、ALD法を用いて、導電膜260Aを成膜し、CVD法を用いて導電膜260Bを成膜する(図10参照)。
【0262】
次に、フォトリソグラフィ法を用いて、酸化膜230C、酸化膜230D、絶縁膜250A、導電膜260A、および導電膜260Bの一部を選択的に除去して、酸化物230c、酸化物230d、絶縁体250、導電体260a、および導電体260bを形成する(図11参照)。酸化膜230C、絶縁膜250A、導電膜260A、および導電膜260Bのエッチングは、ドライエッチング法やウェットエッチング法を用いることができる。ドライエッチング法による加工は微細加工に適している。
【0263】
このように、酸化膜230C、酸化膜230D、絶縁膜250A、導電膜260A、および導電膜260Bを同じマスクを用いてエッチングすることで、トランジスタ200の作製工程の簡略化を図ることができる。この場合、上面視において、酸化物230c、酸化物230d、絶縁体250、導電体260a、および導電体260bの端部は、概略一致する場合がある。
【0264】
次に、加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では、窒素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行う。該加熱処理によって、絶縁体250および酸化物絶縁体280中の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。
【0265】
次に、導電体260、絶縁体250、酸化物絶縁体280、酸化物230、絶縁体244、導電体242、および絶縁体224を覆って絶縁体274を成膜する(図12参照)。絶縁体274は、スパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。また、絶縁体274は、水または水素などの不純物が透過しにくい絶縁性材料を用いることが好ましい。例えば、絶縁体274は、バリア性を有するアルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を用いることが好ましい。本実施の形態では、絶縁体274として、酸素を含む雰囲気でスパッタリング法を用いて酸化アルミニウム膜を成膜する。また、酸化アルミニウム膜の上に、スパッタリング法を用いて窒化シリコンを成膜してもよい。
【0266】
スパッタリング法を用いて、酸素を含む雰囲気で絶縁体274の成膜を行えばよい。これにより、絶縁体274を成膜しながら、酸化物絶縁体280に酸素を導入することができる。また、このとき、同時に絶縁体224に酸素を導入することができる。ここで、酸素は、例えば、酸素ラジカルとして添加されるが、酸素が添加されるときの状態はこれに限定されない。酸素は、酸素原子、又は酸素イオンなどの状態で添加されてもよい。後の工程の熱処理によって、酸素を拡散させて酸化物230に効果的に酸素を供給することができる。
【0267】
なお、絶縁体274を成膜する際に、基板加熱を行うことが好ましい。基板加熱は、100℃よりも高く、300℃以下であることが好ましい。より、好ましくは120℃以上250℃以下で行えばよい。基板温度を、100℃よりも高くすることで、酸化物230中の水を除去することができる。また、形成した膜上に、表面吸着水が付着することを防止することができる。また、このように基板加熱を行いながら絶縁体274を成膜することにより、成膜しながら酸素を酸化物絶縁体280から、絶縁体224および酸化物230に拡散させることができる。
【0268】
また、トランジスタ200を、絶縁体274と絶縁体222で挟まれる構造とすることによって、酸素を外方拡散させず、酸化物絶縁体280、絶縁体224、および酸化物230中に多くの酸素を含有させることができる。さらに、絶縁体274の上方および絶縁体222の下方から水または水素などの不純物が混入するのを防ぎ、酸化物絶縁体280、絶縁体224、および酸化物230中の不純物濃度を低減させることができる。
【0269】
続いて、加熱処理を行う。当該加熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下で行えばよい。当該加熱処理は、酸素雰囲気で行えばよい。または、不活性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上もしくは10%以上含む雰囲気で行えばよい。ここで不活性ガスとしては、例えば窒素ガスまたは希ガスなどを用いることができる。当該加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、当該加熱処理は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上、1%以上または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では、酸素ガス雰囲気中で400℃、1時間の加熱処理を行う。
【0270】
本実施の形態では、酸化物絶縁体280が酸化物230cに接して設けられ、且つ酸化物絶縁体280は、絶縁体281、導電体260、絶縁体250、導電体242、および酸化物230bと離隔されている。このため、当該熱処理において、酸化物絶縁体280に添加された酸素は、図3に示したように、絶縁体281、導電体260、絶縁体250、および導電体242に直接拡散せず、酸化物230cを介して酸化物230bに拡散する。絶縁体224に含まれる酸素は、絶縁体222により下方拡散することなく、酸化物230aを介して酸化物230bに拡散する。これにより、酸化物230、特にチャネル形成領域に酸素を供給し、酸素欠損を低減することができる。
【0271】
なお、絶縁体274を透過して、酸化物絶縁体280に酸素を添加してもよい。酸素の添加方法として、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマ処理法、およびプラズマイマージョンイオンインプランテーション法から選ばれた一、または複数の方法を用いることができる。このとき、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法を用いることで、酸化物絶縁体280に制御よく酸素を添加できるため、好ましい。また、酸化物絶縁体280への酸素の添加は、絶縁体274の成膜前に行ってもよい。
【0272】
次に絶縁体274上に、絶縁体281となる絶縁体を成膜してもよい。絶縁体281となる絶縁膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。
【0273】
次に、絶縁体244、酸化物絶縁体280、絶縁体274および絶縁体281に、導電体242aおよび導電体242bに達する開口を形成する。当該開口の形成は、リソグラフィー法を用いて行えばよい。
【0274】
次に、絶縁体241となる絶縁膜を成膜し、当該絶縁膜を異方性エッチングして絶縁体241を形成する。当該絶縁膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。絶縁体241となる絶縁膜としては、酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁膜を用いることが好ましい。例えば、ALD法によって、酸化アルミニウム膜を成膜することが好ましい。また、異方性エッチングは、例えばドライエッチング法などを行えばよい。開口の側壁部をこのような構成とすることで、外方からの酸素の透過を抑制し、次に形成する導電体240aおよび導電体240bの酸化を防止することができる。また、導電体240aおよび導電体240bから、水、水素などの不純物が外部に拡散することを防ぐことができる。
【0275】
次に、導電体240aおよび導電体240bとなる導電膜を成膜する。導電体240aおよび導電体240bとなる導電膜は、水、水素など不純物の透過を抑制する機能を有する導電体を含む積層構造とすることが望ましい。たとえば、窒化タンタル、窒化チタンなどと、タングステン、モリブデン、銅など、と、の積層とすることができる。導電体240となる導電膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。
【0276】
次に、CMP処理を行うことで、導電体240aおよび導電体240bとなる導電膜の一部を除去し、絶縁体281を露出する。その結果、上記開口のみに、当該導電膜が残存することで上面が平坦な導電体240aおよび導電体240bを形成することができる(図2参照)。なお、当該CMP処理により、絶縁体281の一部が除去する場合がある。
【0277】
また、絶縁体281の上に、配線、回路素子などを設けてもよい。配線、回路素子などを作製する際に、熱処理を行っても、酸化物230中に発生する酸素欠損を、酸化物絶縁体280から供給される酸素によって、低減することができる。このように、トランジスタ200を有する半導体装置は、過剰な熱処理(サーマルバジェット)によって、電気特性及び信頼性が劣化することなく作製することができる。
【0278】
以上により、図2に示すトランジスタ200を有する半導体装置を作製することができる。図4乃至図12に示すように、本実施の形態に示す半導体装置の作製方法を用いることで、トランジスタ200を作製することができる。
【0279】
本発明の一態様により、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、信頼性が良好な半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、オン電流の大きい半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、高い周波数特性を有する半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、オフ電流の小さい半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、生産性の高い半導体装置を提供することができる。
【0280】
<半導体装置の変形例>
以下では、図13乃至図19を用いて、先の<半導体装置の構成例>で示したものとは異なる、本発明の一態様に係るトランジスタ200を有する半導体装置の一例について説明する。
【0281】
また、図13図15乃至図19において、各図の(A)は上面図を示す。また、各図の(B)は、各図の(A)に示すA1-A2の一点鎖線で示す部位に対応する断面図であり、トランジスタ200のチャネル長方向の断面図でもある。また、各図の(C)は、各図の(A)にA3-A4の一点鎖線で示す部位に対応する断面図であり、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図でもある。なお、各図の(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0282】
なお、図13乃至図19に示す半導体装置において、<半導体装置の構成例>に示した半導体装置(図2参照)を構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。なお、本項目において、トランジスタ200の構成材料については<半導体装置の構成例>で詳細に説明した材料を用いることができる。
【0283】
<半導体装置の変形例1>
図13に示すトランジスタ200は、絶縁体244および酸化物絶縁体280が、絶縁体224、酸化物230a、酸化物230b、および導電体242を覆って設けられている点において、図2に示すトランジスタ200と異なる。図13では、絶縁体244が、導電体242aの上面および側面と、導電体242bの上面および側面と、酸化物230bの側面に接して設けられる。また、酸化物絶縁体280が絶縁体244の上面に接して設けられる。
【0284】
図2に示すトランジスタ200では、導電体242aおよび導電体242bと重畳する領域のみに酸化物絶縁体280が設けられていたが、図13に示すトランジスタ200では、導電体242aおよび導電体242bと重畳しない領域にも酸化物絶縁体280を設けることができる。これにより、より多くの酸素を酸化物絶縁体280に含有させることができる。よって、サーマルバジェットがより高温、またはより長時間になっても、トランジスタ200の電気特性及び信頼性の劣化を抑制することができる。
【0285】
なお、図13に示すトランジスタ200では、絶縁体244および酸化物絶縁体280が、導電体242a側と導電体242b側で一体化し、導電体242aと導電体242bの間の領域と重畳して開口を有する構成にしている。ただし、本実施の形態はこれに限られるものではなく、図2に示すトランジスタと同様に、絶縁体244および酸化物絶縁体280が、導電体242a側の絶縁体244aおよび酸化物絶縁体280aと、導電体242b側の絶縁体244bおよび酸化物絶縁体280bと、に分割されている構成にしてもよい。
【0286】
ここで、図13に示すトランジスタ200の作製工程中または作製後に熱処理を行ったときの、酸化物絶縁体280に含まれる酸素の挙動について、図14(A)(B)に示す。図14(A)は、トランジスタ200のチャネル長方向の拡大図であり、図14(B)は、トランジスタ200のチャネル幅方向の拡大図である。なお、図14(A)では、導電体242b側を図示しているが、導電体242a側も同様である。なお、図14(A)(B)に示す、実線矢印は熱処理で拡散される酸素の動きの一例を示し、点線矢印は絶縁体274の成膜時に添加される酸素の動きの一例を示し、白丸は酸化物230に形成される酸素欠損を示す。
【0287】
図14(A)(B)に示すように、導電体242と重ならない領域においても、酸化物絶縁体280の上に絶縁体274が成膜されるので、より多くの酸素を酸化物絶縁体280に含有させることができる。また、図14(B)に示すように、トランジスタ200のチャネル幅方向においても、酸化物絶縁体280と酸化物230cが接している領域があり、当該領域から酸素を拡散させることができるので、より多くの酸素を酸化物230に供給することができる。
【0288】
なお、図14では、絶縁体274が絶縁体224に接していないので、絶縁体274の成膜時に絶縁体224に過剰酸素が形成されていない。しかしながら、絶縁体244の成膜を、酸素を含む雰囲気でスパッタリング法を用いて行う、またはイオン注入法などで絶縁体224に酸素を添加する、ことで絶縁体224に過剰酸素を形成することができる。よって、図13に示すトランジスタ200においても、絶縁体224から酸化物230aおよび酸化物230cに酸素を拡散させることができる。
【0289】
ここで、図13に示すトランジスタ200の作製方法について、図15乃至図17を用いて説明する。
【0290】
まず、上述の方法を用いて、図4に示す工程まで進め、絶縁体214、導電体205、絶縁体216、絶縁体222、絶縁体224、酸化膜230A、酸化膜230B、および導電膜242Aを形成する。
【0291】
次に、酸化膜230A、酸化膜230Bおよび導電膜242Aを島状に加工して、酸化物230a、酸化物230bおよび導電体層242Bを形成する。なお、当該工程において、絶縁体224の酸化物230aと重ならない領域の膜厚が薄くなることがある(図15参照)。ここで、酸化物230a、酸化物230bおよび導電体層242Bは、少なくとも一部が導電体205と重なるように形成する。
【0292】
なお、当該酸化膜および導電膜の加工はリソグラフィー法を用いて行えばよい。また、当該加工はドライエッチング法やウェットエッチング法を用いることができる。ドライエッチング法による加工は微細加工に適している。
【0293】
次に絶縁体224、酸化物230a、酸化物230bおよび導電体層242Bの上に、絶縁膜244Aを成膜する(図16参照)。
【0294】
絶縁膜244Aは、酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁膜を用いることが好ましい。例えば、スパッタリング法によって、酸化アルミニウム膜を成膜することが好ましい。スパッタリング法によって、酸素を含むガスを用いて酸化アルミニウム膜を成膜することによって、絶縁体224中へ酸素を注入することができる。つまり、絶縁体224は過剰酸素を有することができる。
【0295】
次に、絶縁膜244A上に、酸化物絶縁体280となる酸化物絶縁膜280Aを成膜する(図16参照)。酸化物絶縁膜280Aの成膜は上記と同様の方法を用いればよい。
【0296】
次に、酸化物絶縁膜280Aの一部、絶縁膜244Aの一部、および導電体層242Bの一部を加工して、酸化物230bに達する開口を形成する。該開口は、導電体205と重なるように形成することが好ましい。該開口によって、導電体242a、導電体242b、絶縁体244、および酸化物絶縁体280を形成する(図17参照)。
【0297】
また、酸化物絶縁体280の一部、絶縁膜244Aの一部、および導電体の一部の加工は、それぞれ異なる条件で加工してもよい。例えば、酸化物絶縁膜280Aの一部をドライエッチング法で加工し、絶縁膜244Aの一部をウェットエッチング法で加工し、導電体層242Bの一部をドライエッチング法で加工してもよい。
【0298】
上記と同様の方法を用いて、酸化物230b表面などに残った不純物を除去することができる。以下、図10乃至図12に係る方法を用いてトランジスタ200を作製することができる。
【0299】
<半導体装置の変形例2>
図18に示すトランジスタ200は、酸化物絶縁体280の上面が平坦化されている点において、図13に示すトランジスタ200と異なる。図18(B)に示すように、酸化物絶縁体280の膜厚が、酸化物230bと重畳する領域では、酸化物230bと重畳しない領域より薄くなる。酸化物絶縁体280の上面を平坦化することで、絶縁体274の被覆性を良好にし、酸化物絶縁体280と絶縁体281をより確実に離隔することができる。
【0300】
図18に示すトランジスタ200は、図16に示す工程において、酸化物絶縁膜280Aを厚く成膜し、CMP処理を行えばよい。酸化物絶縁膜280Aを厚く成膜することで、酸化物絶縁体280の体積をより大きくすることができるので、より多くの酸素を酸化物絶縁体280に含有させることができる。よって、サーマルバジェットがより高温、またはより長時間になっても、トランジスタ200の電気特性及び信頼性の劣化を抑制することができる。
【0301】
なお、図18に示すトランジスタ200においても、絶縁体244および酸化物絶縁体280が、導電体242a側と導電体242b側で一体化し、導電体242aと導電体242bの間の領域と重畳して開口を有する構成にしている。ただし、本実施の形態はこれに限られるものではなく、図2に示すトランジスタと同様に、絶縁体244および酸化物絶縁体280が、導電体242a側の絶縁体244aおよび酸化物絶縁体280aと、導電体242b側の絶縁体244bおよび酸化物絶縁体280bと、に分割されている構成にしてもよい。
【0302】
また、図19に示すように、酸化物230c、酸化物230d、絶縁体250、および導電体260の酸化物絶縁体280より上の部分を除去する構成にすることもできる。ここで、絶縁体274は、酸化物230c、酸化物230d、絶縁体250、および導電体260のそれぞれの上面と接する。絶縁体274と、酸化物230cの上面および酸化物230dの上面が接することで、酸化物絶縁体280と、導電体260および絶縁体250と、を離隔することができる。
【0303】
酸化物230c、酸化物230d、絶縁体250、および導電体260の酸化物絶縁体280より上の部分は、酸化膜230C、酸化膜230D、絶縁膜250A、導電膜260Aおよび導電膜260Bを酸化物絶縁体280が露出するまで研磨することによって、除去すればよい。例えば、CMP処理を用いて、酸化物230c、酸化物230d、絶縁体250、および導電体260の酸化物絶縁体280より上の部分を除去すればよい。
【0304】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態や実施例に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0305】
(実施の形態3)
本実施の形態では、半導体装置の一形態を、図20を用いて説明する。
【0306】
[記憶装置1]
本発明の一態様である容量素子を使用した、半導体装置(記憶装置)の一例を図20に示す。本発明の一態様の半導体装置は、トランジスタ200はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子100はトランジスタ300、およびトランジスタ200の上方に設けられている。なお、本実施の形態に係る半導体装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはGPU(Graphics Processing Unit)に代表されるロジック回路、あるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)またはNVM(Non-Volatile Memory)に代表されるメモリ回路に適用することができる。
【0307】
なお、トランジスタ200として、先の実施の形態で説明したトランジスタ200などを用いることができる。また、図20において、トランジスタ200として、図2に記載のトランジスタ200を用いているが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、図13図18、および図19に示すトランジスタ200を用いることができる。
【0308】
トランジスタ200は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成されるトランジスタである。トランジスタ200は、オフ電流が小さいため、これを記憶装置に用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、あるいは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ないため、記憶装置の消費電力を十分に低減することができる。また、半導体層にシリコンを用いるトランジスタと比較して、トランジスタ200は、高温における電気特性が良好である。例えば、トランジスタ200は、125℃乃至150℃の温度範囲においても良好な電気特性を示す。また、125℃乃至150℃の温度範囲において、トランジスタ200は、トランジスタのオン/オフ比が10桁以上を有する。別言すると、半導体層にシリコンを用いるトランジスタと比較して、トランジスタ200は、トランジスタ特性の一例であるオン電流、周波数特性などが高温になるほど優れた特性を有する。
【0309】
図20に示す半導体装置において、配線1001はトランジスタ300のソースと電気的に接続され、配線1002はトランジスタ300のドレインと電気的に接続されている。また、配線1003はトランジスタ200のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、配線1004はトランジスタ200の第1のゲートと電気的に接続され、配線1006はトランジスタ200の第2のゲートと電気的に接続されている。そして、トランジスタ300のゲート、およびトランジスタ200のソースおよびドレインの他方は、容量素子100の電極の一方と電気的に接続され、配線1005は容量素子100の電極の他方と電気的に接続されている。
【0310】
図20に示す半導体装置は、トランジスタ200のスイッチングによって、容量素子100の電極の一方に充電された電荷が保持可能という特性を有することで、情報の書き込み、保持、読み出しが可能である。また、トランジスタ200は、ソース、ゲート(フロントゲート)、ドレインに加え、バックゲートが設けられた素子である。すなわち、4端子素子であるため、MTJ(Magnetic Tunnel Junction)特性を利用したMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、ReRAM(Resistive Random Access Memory)、相変化メモリ(Phase-change memory)などに代表される2端子素子と比較して、入出力の独立制御が簡便に行うことができるといった特徴を有する。また、MRAM、ReRAM、相変化メモリは、情報の書き換えの際に、原子レベルで構造変化が生じる場合がある。一方で図20に示す半導体装置は、情報の書き換えの際にトランジスタ及び容量素子を利用した電子のチャージ、またはディスチャージにより動作するため、繰り返し書き換え耐性に優れ、構造変化も少ないといった特徴を有する。
【0311】
また、図20に示す記憶装置は、マトリクス状に配置することで、メモリセルアレイを構成することができる。この場合、トランジスタ300は、当該メモリセルアレイに接続される読み出し回路、または駆動回路などとして用いることもできる。また、図20に示す半導体装置をメモリ素子として用いた場合、例えば、駆動電圧が2.5V、評価環境温度が-40℃乃至85℃の範囲において、200MHz以上の動作周波数を実現することができる。
【0312】
<トランジスタ300>
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、ゲート電極として機能する導電体316、ゲート絶縁体として機能する絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、ならびにソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bを有する。トランジスタ300は、pチャネル型、またはnチャネル型のいずれでもよい。
【0313】
ここで、図20に示すトランジスタ300はチャネルが形成される半導体領域313(基板311の一部)が凸形状を有する。また、半導体領域313の側面および上面を、絶縁体315を介して、導電体316が覆うように設けられている。なお、導電体316は仕事関数を調整する材料を用いてもよい。このようなトランジスタ300は半導体基板の凸部を利用していることからFIN型トランジスタとも呼ばれる。なお、凸部の上部に接して、凸部を形成するためのマスクとして機能する絶縁体を有していてもよい。また、ここでは半導体基板の一部を加工して凸部を形成する場合を示したが、SOI基板を加工して凸形状を有する半導体膜を形成してもよい。
【0314】
なお、図20に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0315】
また、図20に示すように半導体装置は、トランジスタ300と、トランジスタ200とを、積層して設けている。例えば、トランジスタ300をシリコン系半導体材料で形成し、トランジスタ200を酸化物半導体で形成することができる。このように、図20に示す半導体装置は、シリコン系半導体材料と、酸化物半導体とを、ことなるレイヤーに混載して形成することが可能である。また、図20に示す半導体装置は、シリコン系半導体材料で用いる製造装置と同様のプロセスで作製することが可能であり、高集積化することも可能である。
【0316】
<容量素子100>
容量素子100は、トランジスタ200の上方に設けられる。容量素子100は、第1の電極として機能する導電体110、第2の電極として機能する導電体120、および誘電体として機能する絶縁体130を有する。
【0317】
また、例えば、導電体240上に設けた導電体112と、導電体110は、同時に形成することができる。なお、導電体112は、容量素子100、トランジスタ200、またはトランジスタ300と電気的に接続するプラグ、または配線としての機能を有する。
【0318】
図20では、導電体112、および導電体110は単層構造を示したが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、および導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
【0319】
また、絶縁体130は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化酸化ハフニウム、窒化ハフニウムなどを用いればよく、積層または単層で設けることができる。例えば、絶縁体130として、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムの順番で積層された絶縁膜を用いることができる。
【0320】
例えば、絶縁体130には、酸化窒化シリコンなどの絶縁耐力が大きい材料と、高誘電率(high-k)材料との積層構造を用いることが好ましい。当該構成により、容量素子100は、高誘電率(high-k)の絶縁体を有することで、十分な容量を確保でき、絶縁耐力が大きい絶縁体を有することで、絶縁耐力が向上し、容量素子100の静電破壊を抑制することができる。
【0321】
なお、高誘電率(high-k)材料(高い比誘電率の材料)の絶縁体としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する窒化物などがある。このようなhigh-k材料を用いることで、絶縁体130を厚くしても容量素子100の静電容量を十分確保することができる。絶縁体130を厚くすることにより、導電体110と導電体120の間に生じるリーク電流を抑制することができる。
【0322】
一方、絶縁耐力が大きい材料(低い比誘電率の材料)としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、樹脂などがある。例えば、ALD法を用いて成膜したSiN、PEALD法を用いて成膜したSiO、ALD法を用いて成膜したSiNの順番で積層された絶縁膜を用いることができる。このような、絶縁耐力が大きい絶縁体を用いることで、絶縁耐力が向上し、容量素子100の静電破壊を抑制することができる。
【0323】
また、トランジスタ200は、酸化物半導体を用いる構成であるため、容量素子100との相性が優れている。具体的には、酸化物半導体を用いるトランジスタ200は、オフ電流が小さいため、容量素子100と組み合わせて用いることで長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。
【0324】
<配線層>
各構造体の間には、層間膜、配線、プラグ等が設けられた配線層が設けられていてもよい。また、配線層は、設計に応じて複数層設けることができる。ここで、プラグまたは配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と電気的に接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、および導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0325】
例えば、基板311上には、層間膜として、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326が順に積層して設けられている。なお、絶縁体315、および導電体316は、絶縁体320に埋め込まれるように設けられている。また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326には容量素子100、またはトランジスタ200と電気的に接続する導電体328、および導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、および導電体330はプラグ、または配線として機能する。
【0326】
また、層間膜として機能する絶縁体は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0327】
絶縁体326、および導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、図20において、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、プラグ、または配線として機能する。
【0328】
絶縁体354、および導電体356上には、絶縁体210、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216が順に積層して設けられている。また、絶縁体210、絶縁体212、絶縁体214、および絶縁体216には、導電体218、及びトランジスタ200を構成する導電体(導電体205)等が埋め込まれている。なお、導電体218は、容量素子100、またはトランジスタ300と電気的に接続するプラグ、または配線としての機能を有する。さらに、導電体120、および絶縁体130上には、絶縁体150が設けられている。
【0329】
層間膜として用いることができる絶縁体としては、絶縁性を有する酸化物、窒化物、酸化窒化物、窒化酸化物、金属酸化物、金属酸化窒化物、金属窒化酸化物などがある。
【0330】
例えば、層間膜として機能する絶縁体には、比誘電率が低い材料を用いることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。したがって、絶縁体の機能に応じて、材料を選択するとよい。
【0331】
例えば、絶縁体212、絶縁体352、絶縁体354等には、比誘電率の低い絶縁体を有することが好ましい。例えば、当該絶縁体は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、樹脂などを有することが好ましい。または、当該絶縁体は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコンまたは空孔を有する酸化シリコンと、樹脂と、の積層構造を有することが好ましい。酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、樹脂と組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の低い積層構造とすることができる。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリルなどがある。
【0332】
また、導電体112、または導電体120上に設けられる絶縁体130、および絶縁体150の一方、または両方を抵抗率が1.0×1012Ωcm以上1.0×1015Ωcm以下、好ましくは5.0×1012Ωcm以上1.0×1014Ωcm以下、より好ましくは1.0×1013Ωcm以上5.0×1013Ωcm以下の絶縁体とすることが好ましい。絶縁体130、および絶縁体150の一方、または両方を上記のような抵抗率を有する絶縁体とすることで、当該絶縁体は、絶縁性を維持しつつ、トランジスタ200、トランジスタ300、容量素子100、および導電体112、導電体120等の配線間に蓄積される電荷を分散し、該電荷によるトランジスタ、該トランジスタを有する記憶装置の特性不良や静電破壊を抑制することができ、好ましい。このような絶縁体として、窒化シリコン、または窒化酸化シリコンを用いることができる。
【0333】
また、上記のような抵抗率を有する絶縁体として、絶縁体140を導電体112の下層に設けてもよい。この場合、絶縁体281上に絶縁体140を形成し、絶縁体140、絶縁体281、絶縁体274、酸化物絶縁体280、絶縁体224、絶縁体222などに開口部を形成し、当該開口部内に絶縁体241の形成や、トランジスタ200、導電体218などと電気的に接続する導電体240の形成を行えばよい。絶縁体140は、絶縁体130、または絶縁体150と同様の材料を用いることができる。
【0334】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体で囲うことによって、トランジスタの電気特性を安定にすることができる。従って、絶縁体210、絶縁体350等には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体を用いればよい。
【0335】
水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。具体的には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いることができる。
【0336】
配線、プラグに用いることができる導電体としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウムなどから選ばれた金属元素を1種以上含む材料を用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
【0337】
例えば、導電体328、導電体330、導電体356、導電体218、導電体110、導電体112、導電体120等としては、上記の材料で形成される金属材料、合金材料、金属窒化物材料、金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0338】
<<酸化物半導体が設けられた層の配線、またはプラグ>>
なお、トランジスタ200に、酸化物半導体を用いる場合、酸化物半導体の近傍に過剰酸素領域を有する絶縁体が設けることがある。その場合、該過剰酸素領域を有する絶縁体と、該過剰酸素領域を有する絶縁体に設ける導電体との間に、バリア性を有する絶縁体を設けることが好ましい。
【0339】
例えば、図20では、絶縁体281、絶縁体274、酸化物絶縁体280、絶縁体224、および絶縁体222と、導電体240との間に、絶縁体241を設けるとよい。絶縁体241が、絶縁体281、絶縁体274、酸化物絶縁体280、絶縁体224、および絶縁体222と、導電体240との間に存在することで、導電体240による、絶縁体に含まれる酸素の吸収、すなわち導電体240の酸化を抑制することができる。
【0340】
つまり、絶縁体241を設けることで、酸化物絶縁体280または絶縁体281などが有する過剰酸素が、導電体240に吸収されることを抑制することができる。また、絶縁体241を有することで、不純物である水素が、導電体240を介して、トランジスタ200へ拡散することを抑制することができる。
【0341】
なお、絶縁体241としては、水、水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いることができる。
【0342】
以上が構成例についての説明である。本構成を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。または、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。
【0343】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0344】
(実施の形態4)
本実施の形態では、図21および図22を用いて、本発明の一態様に係る、酸化物を半導体に用いたトランジスタ(以下、OSトランジスタと呼ぶ場合がある)、および容量素子が適用されている記憶装置(以下、OSメモリ装置と呼ぶ場合がある)について説明する。OSメモリ装置は、少なくとも容量素子と、容量素子の充放電を制御するOSトランジスタを有する記憶装置である。OSトランジスタのオフ電流は極めて小さいので、OSメモリ装置は優れた保持特性をもち、不揮発性メモリとして機能させることができる。
【0345】
<記憶装置の構成例>
図21(A)にOSメモリ装置の構成の一例を示す。記憶装置1400は、周辺回路1411、およびメモリセルアレイ1470を有する。周辺回路1411は、行回路1420、列回路1430、出力回路1440、およびコントロールロジック回路1460を有する。
【0346】
列回路1430は、例えば、列デコーダ、プリチャージ回路、センスアンプ、書き込み回路等を有する。プリチャージ回路は、配線をプリチャージする機能を有する。センスアンプは、メモリセルから読み出されたデータ信号を増幅する機能を有する。なお、上記配線は、メモリセルアレイ1470が有するメモリセルに接続されている配線であり、詳しくは後述する。増幅されたデータ信号は、出力回路1440を介して、データ信号RDATAとして記憶装置1400の外部に出力される。また、行回路1420は、例えば、行デコーダ、ワード線ドライバ回路等を有し、アクセスする行を選択することができる。
【0347】
記憶装置1400には、外部から電源電圧として低電源電圧(VSS)、周辺回路1411用の高電源電圧(VDD)、メモリセルアレイ1470用の高電源電圧(VIL)が供給される。また、記憶装置1400には、制御信号(CE、WE、RE)、アドレス信号ADDR、データ信号WDATAが外部から入力される。アドレス信号ADDRは、行デコーダおよび列デコーダに入力され、データ信号WDATAは書き込み回路に入力される。
【0348】
コントロールロジック回路1460は、外部からの入力信号(CE、WE、RE)を処理して、行デコーダ、列デコーダの制御信号を生成する。CEは、チップイネーブル信号であり、WEは、書き込みイネーブル信号であり、REは、読み出しイネーブル信号である。コントロールロジック回路1460が処理する信号は、これに限定されるものではなく、必要に応じて、他の制御信号を入力すればよい。
【0349】
メモリセルアレイ1470は、行列状に配置された、複数個のメモリセルMCと、複数の配線を有する。なお、メモリセルアレイ1470と行回路1420とを接続している配線の数は、メモリセルMCの構成、一列に有するメモリセルMCの数などによって決まる。また、メモリセルアレイ1470と列回路1430とを接続している配線の数は、メモリセルMCの構成、一行に有するメモリセルMCの数などによって決まる。
【0350】
なお、図21(A)において、周辺回路1411とメモリセルアレイ1470を同一平面上に形成する例について示したが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、図21(B)に示すように、周辺回路1411の一部の上に、メモリセルアレイ1470が重なるように設けられてもよい。例えば、メモリセルアレイ1470の下に重なるように、センスアンプを設ける構成にしてもよい。
【0351】
図22に上述のメモリセルMCに適用できるメモリセルの構成例について説明する。
【0352】
[DOSRAM]
図22(A)乃至(C)に、DRAMのメモリセルの回路構成例を示す。本明細書等において、1OSトランジスタ1容量素子型のメモリセルを用いたDRAMを、DOSRAMと呼ぶ場合がある。図22(A)に示す、メモリセル1471は、トランジスタM1と、容量素子CAと、を有する。なお、トランジスタM1は、ゲート(トップゲートと呼ぶ場合がある)、及びバックゲートを有する。
【0353】
トランジスタM1の第1端子は、容量素子CAの第1端子と接続され、トランジスタM1の第2端子は、配線BILと接続され、トランジスタM1のゲートは、配線WOLと接続され、トランジスタM1のバックゲートは、配線BGLと接続されている。容量素子CAの第2端子は、配線CALと接続されている。
【0354】
配線BILは、ビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能する。配線CALは、容量素子CAの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。データの書き込み時、及び読み出し時において、配線CALには、低レベル電位を印加するのが好ましい。配線BGLは、トランジスタM1のバックゲートに電位を印加するための配線として機能する。配線BGLに任意の電位を印加することによって、トランジスタM1のしきい値電圧を増減することができる。
【0355】
また、メモリセルMCは、メモリセル1471に限定されず、回路構成の変更を行うことができる。例えば、メモリセルMCは、図22(B)に示すメモリセル1472のように、トランジスタM1のバックゲートが、配線BGLでなく、配線WOLと接続される構成にしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、図22(C)に示すメモリセル1473ように、シングルゲート構造のトランジスタ、つまりバックゲートを有さないトランジスタM1で構成されたメモリセルとしてもよい。
【0356】
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1471等に用いる場合、トランジスタM1としてトランジスタ200を用い、容量素子CAとして容量素子100を用いることができる。トランジスタM1としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM1のリーク電流を非常に低くすることができる。つまり、書き込んだデータをトランジスタM1によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュの頻度を少なくすることができる。また、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に低いため、メモリセル1471、メモリセル1472、メモリセル1473に対して多値データ、又はアナログデータを保持することができる。
【0357】
また、DOSRAMにおいて、上記のように、メモリセルアレイ1470の下に重なるように、センスアンプを設ける構成にすると、ビット線を短くすることができる。これにより、ビット線容量が小さくなり、メモリセルの保持容量を低減することができる。
【0358】
[NOSRAM]
図22(D)乃至(G)に、2トランジスタ1容量素子のゲインセル型のメモリセルの回路構成例を示す。図22(D)に示す、メモリセル1474は、トランジスタM2と、トランジスタM3と、容量素子CBと、を有する。なお、トランジスタM2は、トップゲート(単にゲートと呼ぶ場合がある)、及びバックゲートを有する。本明細書等において、トランジスタM2にOSトランジスタを用いたゲインセル型のメモリセルを有する記憶装置を、NOSRAM(Nonvolatile Oxide Semiconductor RAM)と呼ぶ場合がある。
【0359】
トランジスタM2の第1端子は、容量素子CBの第1端子と接続され、トランジスタM2の第2端子は、配線WBLと接続され、トランジスタM2のゲートは、配線WOLと接続され、トランジスタM2のバックゲートは、配線BGLと接続されている。容量素子CBの第2端子は、配線CALと接続されている。トランジスタM3の第1端子は、配線RBLと接続され、トランジスタM3の第2端子は、配線SLと接続され、トランジスタM3のゲートは、容量素子CBの第1端子と接続されている。
【0360】
配線WBLは、書き込みビット線として機能し、配線RBLは、読み出しビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能する。配線CALは、容量素子CBの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。データの書き込み時、データ保持の最中、データの読み出し時において、配線CALには、低レベル電位を印加するのが好ましい。配線BGLは、トランジスタM2のバックゲートに電位を印加するための配線として機能する。配線BGLに任意の電位を印加することによって、トランジスタM2のしきい値電圧を増減することができる。
【0361】
また、メモリセルMCは、メモリセル1474に限定されず、回路の構成を適宜変更することができる。例えば、メモリセルMCは、図22(E)に示すメモリセル1475のように、トランジスタM2のバックゲートが、配線BGLでなく、配線WOLと接続される構成にしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、図22(F)に示すメモリセル1476のように、シングルゲート構造のトランジスタ、つまりバックゲートを有さないトランジスタM2で構成されたメモリセルとしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、図22(G)に示すメモリセル1477のように、配線WBLと配線RBLを一本の配線BILとしてまとめた構成であってもよい。
【0362】
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1474等に用いる場合、トランジスタM2としてトランジスタ200を用い、トランジスタM3としてトランジスタ300を用い、容量素子CBとして容量素子100を用いることができる。トランジスタM2としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM2のリーク電流を非常に低くすることができる。これにより、書き込んだデータをトランジスタM2によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュの頻度を少なくすることができる。また、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に低いため、メモリセル1474に多値データ、又はアナログデータを保持することができる。メモリセル1475乃至メモリセル1477も同様である。
【0363】
なお、トランジスタM3は、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタ(以下、Siトランジスタと呼ぶ場合がある)であってもよい。Siトランジスタの導電型は、nチャネル型としてもよいし、pチャネル型としてもよい。Siトランジスタは、OSトランジスタよりも電界効果移動度が高くなる場合がある。よって、読み出しトランジスタとして機能するトランジスタM3として、Siトランジスタを用いてもよい。また、トランジスタM3にSiトランジスタを用いることで、トランジスタM3の上に積層してトランジスタM2を設けることができるので、メモリセルの占有面積を低減し、記憶装置の高集積化を図ることができる。
【0364】
また、トランジスタM3はOSトランジスタであってもよい。トランジスタM2およびトランジスタM3にOSトランジスタを用いた場合、メモリセルアレイ1470をn型トランジスタのみを用いて回路を構成することができる。
【0365】
また、図22(H)に3トランジスタ1容量素子のゲインセル型のメモリセルの一例を示す。図22(H)に示すメモリセル1478は、トランジスタM4乃至トランジスタM6、および容量素子CCを有する。容量素子CCは適宜設けられる。メモリセル1478は、配線BIL、配線RWL、配線WWL、配線BGL、および配線GNDLに電気的に接続されている。配線GNDLは低レベル電位を与える配線である。なお、メモリセル1478を、配線BILに代えて、配線RBL、配線WBLに電気的に接続してもよい。
【0366】
トランジスタM4は、バックゲートを有するOSトランジスタであり、バックゲートは配線BGLに電気的に接続されている。なお、トランジスタM4のバックゲートとゲートとを互いに電気的に接続してもよい。あるいは、トランジスタM4はバックゲートを有さなくてもよい。
【0367】
なお、トランジスタM5、トランジスタM6はそれぞれ、nチャネル型Siトランジスタまたはpチャネル型Siトランジスタでもよい。或いは、トランジスタM4乃至トランジスタM6がOSトランジスタでもよい、この場合、メモリセルアレイ1470をn型トランジスタのみを用いて回路を構成することができる。
【0368】
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1478に用いる場合、トランジスタM4としてトランジスタ200を用い、トランジスタM5、トランジスタM6としてトランジスタ300を用い、容量素子CCとして容量素子100を用いることができる。トランジスタM4としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM4のリーク電流を非常に低くすることができる。
【0369】
なお、本実施の形態に示す、周辺回路1411、メモリセルアレイ1470等の構成は、上記に限定されるものではない。これらの回路、および当該回路に接続される配線、回路素子等の、配置または機能は、必要に応じて、変更、削除、または追加してもよい。
【0370】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態、実施例などに示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0371】
(実施の形態5)
本実施の形態では、図23を用いて、本発明の半導体装置が実装されたチップ1200の一例を示す。チップ1200には、複数の回路(システム)が実装されている。このように、複数の回路(システム)を一つのチップに集積する技術を、システムオンチップ(System on Chip:SoC)と呼ぶ場合がある。
【0372】
図23(A)に示すように、チップ1200は、CPU(Central Processing Unit)1211、GPU(Graphics Processing Unit)1212、一または複数のアナログ演算部1213、一または複数のメモリコントローラ1214、一または複数のインターフェース1215、一または複数のネットワーク回路1216等を有する。
【0373】
チップ1200には、バンプ(図示しない)が設けられ、図23(B)に示すように、プリント基板(Printed Circuit Board:PCB)1201の第1の面と接続する。また、PCB1201の第1の面の裏面には、複数のバンプ1202が設けられており、マザーボード1203と接続する。
【0374】
マザーボード1203には、DRAM1221、フラッシュメモリ1222等の記憶装置が設けられていてもよい。例えば、DRAM1221に先の実施の形態に示すDOSRAMを用いることができる。また、例えば、フラッシュメモリ1222に先の実施の形態に示すNOSRAMを用いることができる。
【0375】
CPU1211は、複数のCPUコアを有することが好ましい。また、GPU1212は、複数のGPUコアを有することが好ましい。また、CPU1211、およびGPU1212は、それぞれ一時的にデータを格納するメモリを有していてもよい。または、CPU1211、およびGPU1212に共通のメモリが、チップ1200に設けられていてもよい。該メモリには、前述したNOSRAMや、DOSRAMを用いることができる。また、GPU1212は、多数のデータの並列計算に適しており、画像処理や積和演算に用いることができる。GPU1212に、本発明の酸化物半導体を用いた画像処理回路や、積和演算回路を設けることで、画像処理、および積和演算を低消費電力で実行することが可能になる。
【0376】
また、CPU1211、およびGPU1212が同一チップに設けられていることで、CPU1211およびGPU1212間の配線を短くすることができ、CPU1211からGPU1212へのデータ転送、CPU1211、およびGPU1212が有するメモリ間のデータ転送、およびGPU1212での演算後に、GPU1212からCPU1211への演算結果の転送を高速に行うことができる。
【0377】
アナログ演算部1213はA/D(アナログ/デジタル)変換回路、およびD/A(デジタル/アナログ)変換回路の一、または両方を有する。また、アナログ演算部1213に上記積和演算回路を設けてもよい。
【0378】
メモリコントローラ1214は、DRAM1221のコントローラとして機能する回路、およびフラッシュメモリ1222のインターフェースとして機能する回路を有する。
【0379】
インターフェース1215は、表示装置、スピーカー、マイクロフォン、カメラ、コントローラなどの外部接続機器とのインターフェース回路を有する。コントローラとは、マウス、キーボード、ゲーム用コントローラなどを含む。このようなインターフェースとして、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)などを用いることができる。
【0380】
ネットワーク回路1216は、LAN(Local Area Network)などのネットワーク回路を有する。また、ネットワークセキュリティー用の回路を有してもよい。
【0381】
チップ1200には、上記回路(システム)を同一の製造プロセスで形成することが可能である。そのため、チップ1200に必要な回路の数が増えても、製造プロセスを増やす必要が無く、チップ1200を低コストで作製することができる。
【0382】
GPU1212を有するチップ1200が設けられたPCB1201、DRAM1221、およびフラッシュメモリ1222が設けられたマザーボード1203は、GPUモジュール1204と呼ぶことができる。
【0383】
GPUモジュール1204は、SoC技術を用いたチップ1200を有しているため、そのサイズを小さくすることができる。また、画像処理に優れていることから、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップPC、携帯型(持ち出し可能な)ゲーム機などの携帯型電子機器に用いることが好適である。また、GPU1212を用いた積和演算回路により、ディープニューラルネットワーク(DNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、自己符号化器、深層ボルツマンマシン(DBM)、深層信念ネットワーク(DBN)などの手法を実行することができるため、チップ1200をAIチップ、またはGPUモジュール1204をAIシステムモジュールとして用いることができる。
【0384】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態、実施例などに示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0385】
(実施の形態6)
本実施の形態では、先の実施の形態に示す半導体装置を用いた記憶装置の応用例について説明する。先の実施の形態に示す半導体装置は、例えば、各種電子機器(例えば、情報端末、コンピュータ、スマートフォン、電子書籍端末、デジタルカメラ(ビデオカメラも含む)、録画再生装置、ナビゲーションシステムなど)の記憶装置に適用できる。なお、ここで、コンピュータとは、タブレット型のコンピュータ、ノート型のコンピュータ、デスクトップ型のコンピュータの他、サーバシステムのような大型のコンピュータを含むものである。または、先の実施の形態に示す半導体装置は、メモリカード(例えば、SDカード)、USBメモリ、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)等の各種のリムーバブル記憶装置に適用される。図24にリムーバブル記憶装置の幾つかの構成例を模式的に示す。例えば、先の実施の形態に示す半導体装置は、パッケージングされたメモリチップに加工され、様々なストレージ装置、リムーバブルメモリに用いられる。
【0386】
図24(A)はUSBメモリの模式図である。USBメモリ1100は、筐体1101、キャップ1102、USBコネクタ1103および基板1104を有する。基板1104は、筐体1101に収納されている。例えば、基板1104には、メモリチップ1105、コントローラチップ1106が取り付けられている。基板1104のメモリチップ1105などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0387】
図24(B)はSDカードの外観の模式図であり、図24(C)は、SDカードの内部構造の模式図である。SDカード1110は、筐体1111、コネクタ1112および基板1113を有する。基板1113は筐体1111に収納されている。例えば、基板1113には、メモリチップ1114、コントローラチップ1115が取り付けられている。基板1113の裏面側にもメモリチップ1114を設けることで、SDカード1110の容量を増やすことができる。また、無線通信機能を備えた無線チップを基板1113に設けてもよい。これによって、ホスト装置とSDカード1110間の無線通信によって、メモリチップ1114のデータの読み出し、書き込みが可能となる。基板1113のメモリチップ1114などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0388】
図24(D)はSSDの外観の模式図であり、図24(E)は、SSDの内部構造の模式図である。SSD1150は、筐体1151、コネクタ1152および基板1153を有する。基板1153は筐体1151に収納されている。例えば、基板1153には、メモリチップ1154、メモリチップ1155、コントローラチップ1156が取り付けられている。メモリチップ1155はコントローラチップ1156のワークメモリであり、例えばDOSRAMチップを用いればよい。基板1153の裏面側にもメモリチップ1154を設けることで、SSD1150の容量を増やすことができる。基板1153のメモリチップ1154などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0389】
本実施の形態は、他の実施の形態、実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0390】
(実施の形態7)
本発明の一態様に係る半導体装置は、CPUやGPUなどのプロセッサ、またはチップに用いることができる。図25に、本発明の一態様に係るCPUやGPUなどのプロセッサ、またはチップを備えた電子機器の具体例を示す。
【0391】
<電子機器・システム>
本発明の一態様に係るGPU又はチップは、様々な電子機器に搭載することができる。電子機器の例としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)、パチンコ機などの大型ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、などが挙げられる。また、本発明の一態様に係る集積回路又はチップを電子機器に設けることにより、電子機器に人工知能を搭載することができる。
【0392】
本発明の一態様の電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信することで、表示部で映像や情報等の表示を行うことができる。また、電子機器がアンテナ及び二次電池を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
【0393】
本発明の一態様の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
【0394】
本発明の一態様の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出す機能等を有することができる。図25に、電子機器の例を示す。
【0395】
[携帯電話]
図25(A)には、情報端末の一種である携帯電話(スマートフォン)が図示されている。情報端末5500は、筐体5510と、表示部5511と、を有しており、入力用インターフェースとして、タッチパネルが表示部5511に備えられ、ボタンが筐体5510に備えられている。
【0396】
情報端末5500は、本発明の一態様のチップを適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、会話を認識してその会話内容を表示部5511に表示するアプリケーション、表示部5511に備えるタッチパネルに対してユーザが入力した文字、図形などを認識して、表示部5511に表示するアプリケーション、指紋や声紋などの生体認証を行うアプリケーションなどが挙げられる。
【0397】
[情報端末]
図25(B)には、デスクトップ型情報端末5300が図示されている。デスクトップ型情報端末5300は、情報端末の本体5301と、ディスプレイ5302と、キーボード5303と、を有する。
【0398】
デスクトップ型情報端末5300は、先述した情報端末5500と同様に、本発明の一態様のチップを適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、設計支援ソフトウェア、文章添削ソフトウェア、献立自動生成ソフトウェアなどが挙げられる。また、デスクトップ型情報端末5300を用いることで、新規の人工知能の開発を行うことができる。
【0399】
なお、上述では、電子機器としてスマートフォン、及びデスクトップ用情報端末を例として、それぞれ図25(A)、(B)に図示したが、スマートフォン、及びデスクトップ用情報端末以外の情報端末を適用することができる。スマートフォン、及びデスクトップ用情報端末以外の情報端末としては、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型情報端末、ワークステーションなどが挙げられる。
【0400】
[電化製品]
図25(C)は、電化製品の一例である電気冷凍冷蔵庫5800を示している。電気冷凍冷蔵庫5800は、筐体5801、冷蔵室用扉5802、冷凍室用扉5803等を有する。
【0401】
電気冷凍冷蔵庫5800に本発明の一態様のチップを適用することによって、人工知能を有する電気冷凍冷蔵庫5800を実現することができる。人工知能を利用することによって電気冷凍冷蔵庫5800は、電気冷凍冷蔵庫5800に保存されている食材、その食材の消費期限などを基に献立を自動生成する機能や、電気冷凍冷蔵庫5800に保存されている食材に合わせた温度に自動的に調節する機能などを有することができる。
【0402】
本一例では、電化製品として電気冷凍冷蔵庫について説明したが、その他の電化製品としては、例えば、掃除機、電子レンジ、電子オーブン、炊飯器、湯沸かし器、IH調理器、ウォーターサーバ、エアーコンディショナーを含む冷暖房器具、洗濯機、乾燥機、オーディオビジュアル機器などが挙げられる。
【0403】
[ゲーム機]
図25(D)は、ゲーム機の一例である携帯ゲーム機5200を示している。携帯ゲーム機は、筐体5201、表示部5202、ボタン5203等を有する。
【0404】
携帯ゲーム機5200に本発明の一態様のGPU又はチップを適用することによって、低消費電力の携帯ゲーム機5200を実現することができる。また、低消費電力により、回路からの発熱を低減することができるため、発熱によるその回路自体、周辺回路、及びモジュールへの影響を少なくすることができる。
【0405】
更に、携帯ゲーム機5200に本発明の一態様のGPU又はチップを適用することによって、人工知能を有する携帯ゲーム機5200を実現することができる。
【0406】
本来、ゲームの進行、ゲーム上に登場する生物の言動、ゲーム上で発生する現象などの表現は、そのゲームが有するプログラムによって定められているが、携帯ゲーム機5200に人工知能を適用することにより、ゲームのプログラムに限定されない表現が可能になる。例えば、プレイヤーが問いかける内容、ゲームの進行状況、時刻、ゲーム上に登場する人物の言動が変化するといった表現が可能となる。
【0407】
また、携帯ゲーム機5200で複数のプレイヤーが必要なゲームを行う場合、人工知能によって擬人的にゲームプレイヤーを構成することができるため、対戦相手を人工知能によるゲームプレイヤーとすることによって、1人でもゲームを行うことができる。
【0408】
図25(D)では、ゲーム機の一例として携帯ゲーム機を図示しているが、本発明の一態様のGPU又はチップを適用するゲーム機はこれに限定されない。本発明の一態様のGPU又はチップを適用するゲーム機としては、例えば、家庭用の据え置き型ゲーム機、娯楽施設(ゲームセンター、遊園地など)に設置されるアーケードゲーム機、スポーツ施設に設置されるバッティング練習用の投球マシンなどが挙げられる。
【0409】
[移動体]
本発明の一態様のGPU又はチップは、移動体である自動車、及び自動車の運転席周辺に適用することができる。
【0410】
図25(E1)は移動体の一例である自動車5700を示し、図25(E2)は、自動車の室内におけるフロントガラス周辺を示す図である。図25(E2)では、ダッシュボードに取り付けられた表示パネル5701、表示パネル5702、表示パネル5703の他、ピラーに取り付けられた表示パネル5704を図示している。
【0411】
表示パネル5701乃至表示パネル5703は、スピードメーターやタコメーター、走行距離、燃料計、ギア状態、エアコンの設定などを表示することで、様々な情報を提供することができる。また、表示パネルに表示される表示項目やレイアウトなどは、ユーザの好みに合わせて適宜変更することができ、デザイン性を高めることが可能である。表示パネル5701乃至表示パネル5703は、照明装置として用いることも可能である。
【0412】
表示パネル5704には、自動車5700に設けられた撮像装置(図示しない)からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界(死角)を補完することができる。すなわち、自動車5700の外側に設けられた撮像装置からの画像を表示することによって、死角を補い、安全性を高めることができる。また、見えない部分を補完する映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。表示パネル5704は、照明装置として用いることもできる。
【0413】
本発明の一態様のGPU又はチップは人工知能の構成要素として適用できるため、例えば、当該チップを自動車5700の自動運転システムに用いることができる。また、当該チップを道路案内、危険予測などを行うシステムに用いることができる。表示パネル5701乃至表示パネル5704には、道路案内、危険予測などの情報を表示する構成としてもよい。
【0414】
なお、上述では、移動体の一例として自動車について説明しているが、移動体は自動車に限定されない。例えば、移動体としては、電車、モノレール、船、飛行体(ヘリコプター、無人航空機(ドローン)、飛行機、ロケット)なども挙げることができ、これらの移動体に本発明の一態様のチップを適用して、人工知能を利用したシステムを付与することができる。
【0415】
[放送システム]
本発明の一態様のGPU又はチップは、放送システムに適用することができる。
【0416】
図25(F)は、放送システムにおけるデータ伝送を模式的に示している。具体的には、図25(F)は、放送局5680から送信された電波(放送信号)が、各家庭のテレビジョン受信装置(TV)5600に届くまでの経路を示している。TV5600は、受信装置を備え(図示しない)、アンテナ5650で受信された放送信号は、当該受信装置を介して、TV5600に送信される。
【0417】
図25(F)では、アンテナ5650は、UHF(Ultra High Frequency)アンテナを図示しているが、アンテナ5650としては、BS・110°CSアンテナ、CSアンテナなども適用できる。
【0418】
電波5675A、電波5675Bは地上波放送用の放送信号であり、電波塔5670は受信した電波5675Aを増幅して、電波5675Bの送信を行う。各家庭では、アンテナ5650で電波5675Bを受信することで、TV5600で地上波TV放送を視聴することができる。なお、放送システムは、図25(F)に示す地上波放送に限定せず、人工衛星を用いた衛星放送、光回線によるデータ放送などとしてもよい。
【0419】
上述した放送システムは、本発明の一態様のチップを適用して、人工知能を利用した放送システムとしてもよい。放送局5680から各家庭のTV5600に放送データを送信するとき、エンコーダによって放送データの圧縮が行われ、アンテナ5650が当該放送データを受信したとき、TV5600に含まれる受信装置のデコーダによって当該放送データの復元が行われる。人工知能を利用することによって、例えば、エンコーダの圧縮方法の一である動き補償予測において、表示画像に含まれる表示パターンの認識を行うことができる。また、人工知能を利用したフレーム内予測などを行うこともできる。また、例えば、解像度の低い放送データを受信して、解像度の高いTV5600で当該放送データの表示を行うとき、デコーダによる放送データの復元において、アップコンバートなどの画像の補間処理を行うことができる。
【0420】
上述した人工知能を利用した放送システムは、放送データの量が増大する超高精細度テレビジョン(UHDTV:4K、8K)放送に対して好適である。
【0421】
また、TV5600側における人工知能の応用として、例えば、TV5600に人工知能を有する録画装置を設けてもよい。このような構成にすることによって、当該録画装置にユーザの好みを人工知能に学習させることで、ユーザの好みにあった番組を自動的に録画することができる。
【0422】
本実施の形態で説明した電子機器、その電子機器の機能、人工知能の応用例、その効果などは、他の電子機器の記載と適宜組み合わせることができる。
【0423】
本実施の形態は、他の実施の形態、実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例
【0424】
本実施例では、図1に示す、酸化物絶縁体36、酸化物22b、および絶縁体24に対応する試料1A、試料1B、試料2A、および試料2Bを作製し、これらの試料について分析した結果について説明する。
【0425】
まず、試料1A、試料1B、試料2A、および試料2Bの作製方法について説明する。
【0426】
まず、試料1A、試料1B、試料2A、および試料2Bで、シリコンウェハを熱酸化し、シリコンウェハ表面に膜厚100nm狙いで酸化シリコン膜を形成した。
【0427】
次に、試料1A、試料1B、試料2A、および試料2Bに、ALD法を用いて膜厚7nmを狙って、酸化アルミニウム膜を成膜した。
【0428】
次に、試料1A、試料1B、試料2A、および試料2Bに、PECVD法を用いて膜厚35nmを狙って、酸化窒化シリコン膜を成膜した。成膜ガスとしてSiHガス1sccmおよびNOガス800sccmを用い、成膜圧力を40Paとし、成膜電力を150W(60MHz)とし、基板温度を400℃とし、電極間距離を28mmとした。当該酸化窒化シリコン膜が酸化物絶縁体36に対応する。
【0429】
次に、試料1A、試料1B、試料2A、および試料2Bに、RFスパッタリング法を用いて膜厚50nmを狙って、酸化アルミニウム膜を成膜した。なお、酸化アルミニウム膜の成膜には、Alターゲットを用いた。成膜ガスとしてアルゴンガス25sccmおよび酸素ガス25sccmを用い、成膜圧力を0.4Pa(キヤノンアネルバ製B-AゲージBRG-1Bによって計測した)とし、成膜電力を2500Wとし、基板温度を250℃とし、ターゲット-基板間距離を60mmとした。当該酸化アルミニウム膜の成膜によって、酸化物絶縁体36に酸素を添加した。
【0430】
次に、試料1A、試料1B、試料2A、および試料2Bに、CMP処理を行って、当該酸化アルミニウム膜を除去した。
【0431】
次に、試料1A、試料1B、試料2A、および試料2Bで、上記酸化窒化シリコン膜上に、In-Ga-Zn酸化物膜(以下、IGZO膜と呼ぶ)を、DCスパッタリング法を用いて膜厚5nm狙いで成膜した。
【0432】
試料1Aおよび試料1Bでは、IGZO膜の成膜に、In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]ターゲットを用いた(以下、当該IGZO膜をIGZO膜(423)と呼ぶ)。成膜ガスとして酸素ガス45sccmを用い、成膜圧力を0.7Pa(キヤノンアネルバ製ミニチュアゲージMG-2によって計測した)とし、成膜電力を500Wとし、基板温度を200℃とし、ターゲット-基板間距離を60mmとした。当該IGZO膜(423)が酸化物22bに対応する。
【0433】
試料2Aおよび試料2Bでは、IGZO膜の成膜に、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]ターゲットを用いた(以下、当該IGZO膜をIGZO膜(134)と呼ぶ)。成膜ガスとして酸素ガス45sccmを用い、成膜圧力を0.7Pa(キヤノンアネルバ製ミニチュアゲージMG-2によって計測した)とし、成膜電力を500Wとし、基板温度を200℃とし、ターゲット-基板間距離を60mmとした。当該IGZO膜(134)が酸化物22bに対応する。
【0434】
次に、試料1A、試料1B、試料2A、および試料2Bに、PECVD法を用いて膜厚10nmを狙って、酸化窒化シリコン膜を成膜した。成膜ガスとしてSiHガス1sccmおよびNOガス800sccmを用い、成膜圧力を200Paとし、成膜電力を150W(60MHz)とし、基板温度を400℃とし、電極間距離を28mmとした。当該酸化窒化シリコン膜が絶縁体24に対応する。
【0435】
次に、試料1Aおよび試料2Aに、窒素雰囲気下で400℃1時間の加熱処理を行った。
【0436】
次に、試料1A、試料1B、試料2A、および試料2Bに、液温60℃で、アンモニア過水(過酸化水素水とアンモニア水と水の混合液)を用いて、でウェットエッチングを行って、膜厚10nmの酸化窒化シリコン膜と、膜厚5nmのIGZO膜を除去した。
【0437】
以上のようにして作製した試料1A及び試料1Bに、TDS分析を行った結果を図26(A)に示す。また、試料2A及び試料2Bに、TDS分析を行った結果を図26(B)に示す。なお、当該TDS分析においては、酸素分子に相当する質量電荷比m/z=32の放出量を測定した。図26(A)(B)で横軸は基板の加熱温度[℃]をとり、縦軸は質量電荷比の放出量に比例する強度をとる。
【0438】
図26(A)に示すTDSプロファイルから、試料1A及び試料1Bの酸素分子の放出量を計算すると、試料1Aは9.5×1014molecules/cmであり、試料1Bは1.1×1015molecules/cmであった。つまり、加熱処理を行った試料1Aは、加熱処理を行っていない試料1Bより酸素分子の放出量が少ない。よって、加熱処理を行った試料1Aでは、酸化窒化シリコン膜に含まれていた酸素が、IGZO膜(423)に拡散していることが推測される。
【0439】
また、図26(B)に示すTDSプロファイルから、試料2A及び試料2Bの酸素分子の放出量を計算すると、試料2Aは9.3×1014molecules/cmであり、試料2Bは1.1×1015molecules/cmであった。つまり、加熱処理を行った試料2Aは、加熱処理を行っていない試料2Bより酸素分子の放出量が少ない。よって、加熱処理を行った試料2Aでは、酸化窒化シリコン膜に含まれていた酸素が、IGZO膜(134)に拡散していることが推測される。
【0440】
以上より、図1に係るモデルに示すように、酸化物絶縁体36に含まれる過剰酸素が、酸化物22bに拡散すること示唆された。
【0441】
次に、図1に示す、酸化物絶縁体36、酸化物22b、絶縁体24、および導電体26に対応する試料2Cを作製し、TDS分析を行った。
【0442】
試料2Cは、試料2Aの作製工程において、絶縁体24に対応する酸化窒化シリコン膜の成膜後に、導電体26に対応する導電膜を成膜した試料である。当該導電膜は、CVD装置を用いて、膜厚10nmの窒化チタン膜、膜厚150nmのタングステン膜の順に成膜した導電膜である。
【0443】
試料2A及び試料2Cに、TDS分析を行った結果を図27に示す。なお、当該TDS分析においては、酸素分子に相当する質量電荷比m/z=32の放出量を測定した。図27で横軸は基板の加熱温度[℃]をとり、縦軸は質量電荷比の放出量に比例する強度をとる。
【0444】
図27に示すように、試料2Aおよび試料2Cのプロファイルはほぼ同様の形状であり、酸素分子の放出量に大きな差は見られなかった。このことから、導電体26に対応する導電膜の有無によって、酸化物絶縁体36に対応する酸化窒化シリコンから吸収される酸素の量は変わらないことが示された。
【0445】
以上より、図1に係るモデルに示すように、酸化物絶縁体36が酸化物22bを介して絶縁体24および導電体26と離隔されることにより、加熱処理時に、酸化物絶縁体36から過剰な量の酸素が絶縁体24を介して導電体26に吸収されないことが示唆される。
【符号の説明】
【0446】
20:トランジスタ、22:酸化物、22a:酸化物、22b:酸化物、24:絶縁体、26:導電体、28:導電体、28a:導電体、28b:導電体、34:絶縁体、34a:絶縁体、34b:絶縁体、36:酸化物絶縁体、36a:酸化物絶縁体、36b:酸化物絶縁体、200:トランジスタ、205:導電体、205a:導電体、205b:導電体、210:絶縁体、212:絶縁体、214:絶縁体、216:絶縁体、218:導電体、220:絶縁体、222:絶縁体、224:絶縁体、230:酸化物、230a:酸化物、230A:酸化膜、230b:酸化物、230B:酸化膜、230c:酸化物、230C:酸化膜、230d:酸化物、230D:酸化膜、234:領域、240:導電体、240a:導電体、240b:導電体、241:絶縁体、241a:絶縁体、241b:絶縁体、242:導電体、242a:導電体、242A:導電膜、242b:導電体、242B:導電体層、243:領域、243a:領域、243b:領域、244:絶縁体、244a:絶縁体、244A:絶縁膜、244b:絶縁体、244B:絶縁体層、250:絶縁体、250A:絶縁膜、260:導電体、260a:導電体、260A:導電膜、260b:導電体、260B:導電膜、274:絶縁体、280:酸化物絶縁体、280a:酸化物絶縁体、280A:酸化物絶縁膜、280b:酸化物絶縁体、280B:絶縁体層、281:絶縁体、284a:導電体、284A:導電膜、284b:導電体、284B:導電体層
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