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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】電動式作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20240116BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20240116BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/26 A
E02F9/00 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023508649
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2022000331
(87)【国際公開番号】W WO2022201740
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2021047603
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 剛史
(72)【発明者】
【氏名】高木 渉
(72)【発明者】
【氏名】川口 浩
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-190231(JP,A)
【文献】特開2018-017011(JP,A)
【文献】特開2018-145698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/24
E02F 9/26
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体と、前記車体に取付けられた作業装置とを有し、
前記車体は、動力源に電力を供給する給電ケーブルが接続される給電口を備えた電動式作業機械において、
前記車体に取付けられた車体側支持部材に変位可能に設けられ、前記給電口に接続された前記給電ケーブルを把持するケーブル支持部材と、
前記ケーブル支持部材と前記車体側支持部材との間に設けられ、前記車体側支持部材に対する前記ケーブル支持部材の変位を一方向の直線的な変位に規制する案内部材と、
前記車体側支持部材に対する前記ケーブル支持部材の変位に応じた変化量を検出する負荷検出センサと、
前記負荷検出センサの検出値が所定の閾値を超えたときに報知を行うコントローラと、を備えたことを特徴とする電動式作業機械。
【請求項2】
前記ケーブル支持部材および前記案内部材は、前記ケーブル支持部材を水平方向にのみ変位可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項3】
前記車体側支持部材の端部は、前記車体から張り出しており、
前記ケーブル支持部材は、前記車体側支持部材の前記端部に変位可能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項4】
前記ケーブル支持部材の変位に伴って弾性変形する弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項5】
前記車体側支持部材に対する前記ケーブル支持部材の変位に応じて変化する変化部材を備え、
前記変化部材は、前記車体側と前記ケーブル支持部材側との両方に固定されており、
前記負荷検出センサは、前記変化量として前記変化部材に加わる負荷を検出することを特徴とする請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項6】
前記車体側支持部材に対する前記ケーブル支持部材の変位に応じて変化する変化部材を備え、
前記変化部材は、前記車体側と前記ケーブル支持部材側との間にかけわたされたワイヤであり、
前記負荷検出センサは、前記変化量として前記ワイヤの張力を検出することを特徴とする請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項7】
前記コントローラは、前記報知の方法として、警告音、警告灯、モニタ上での警告表示、または、動作の制限を行うことを特徴とする請求項1に記載の電動式作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、土木、解体、地下工事等の各種の作業現場で用いられる電動式油圧ショベル等の電動式作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルに代表される作業機械の多くは、ディーゼルエンジンを動力源としている。油圧ショベルは、ディーゼルエンジンに連結された油圧ポンプから供給される圧油により、アクチュエータ(例えば、油圧シリンダ、油圧モータ)を作動させ、掘削等の作業を行う。
【0003】
一般的に、軽油を燃料とするディーゼルエンジンは、ガソリンを燃料とするガソリンエンジンと比較して、排気ガスに粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)を多く含む。このため、排気ガスに含まれる粒子状物質、窒素酸化物を段階的に減らすように、ディーゼルエンジンに対する法規制が世界的に急速に進みつつある。このような背景から、今後、作業現場で排気ガスを排出しない作業機械、即ち、電力が動力源の電動式作業機械が多く導入される可能性がある。
【0004】
電動式作業機械として、例えば、作業現場に設けられた分電盤等の外部電源から給電ケーブルを介して車体に電力を供給する電動式油圧ショベルが知られている。電動式油圧ショベルは、給電ケーブルを介して供給される電力により電動モータを駆動し、この電動モータに連結された油圧ポンプを作動させる。ここで、例えば、外部電源から電動式油圧ショベルまで給電ケーブルを地面に這わせる場合を考える。この場合、電動式油圧ショベルの走行動作に伴って給電ケーブルが踏み付けられる可能性、または、上部旋回体の旋回動作に伴って給電ケーブルが巻き込まれる可能性がある。
【0005】
このため、電動式油圧ショベルを制限なく動作させてしまうと、給電ケーブル、または、給電ケーブルが接続された給電口が損傷する可能性がある。即ち、給電ケーブルを接続した状態で稼働する電動式油圧ショベルは、給電に関する機器を保護すべく、旋回動作および走行動作の制限、または、給電ケーブルに過負荷が加わることを抑制する必要がある。これに対して、特許文献1には、天井から垂れ下がった給電ケーブルを通じて車体に電力を供給する自走式作業機械が記載されている。特許文献1の自走式作業機械は、ロードリミッタにより検出される給電ケーブルの張力が閾値を超えたときに、そのときの操作方向への走行動作または旋回動作を禁止し、そのときの操作方向とは反対方向の走行動作または旋回動作を許容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-219461号公報
【発明の概要】
【0007】
特許文献1の自走式作業機械は、作業現場の天井のレールに沿って移動するトロリーと給電ケーブルとの間にロードリミッタを設けている。しかし、例えば、給電ケーブルの設置位置、配設状況、引き回し方法、ロードリミッタから自走式作業機械までの給電ケーブルの長さ等は、稼働現場によってそれぞれ異なる場合が多い。このため、特許文献1の技術の場合は、そのときの稼働現場によってロードリミッタの張力検出値または制御に用いる閾値等を補正(調整)する必要があり、その作業が煩わしい。
【0008】
本発明の目的は、稼働現場に応じた給電ケーブルの過負荷検出装置の調整に要する時間を低減できる電動式作業機械を提供することにある。
【0009】
本発明の電動式作業機械は、走行可能な車体と、前記車体に取付けられた作業装置とを有し、前記車体は、動力源に電力を供給する給電ケーブルが接続される給電口を備えた電動式作業機械において、前記車体に取付けられた車体側支持部材に変位可能に設けられ、前記給電口に接続された前記給電ケーブルを持するケーブル支持部材と、前記ケーブル支持部材と前記車体側支持部材との間に設けられ、前記車体側支持部材に対する前記ケーブル支持部材の変位を一方向の直線的な変位に規制する案内部材と、前記車体側支持部材に対する前記ケーブル支持部材の変位に応じた変化量を検出する負荷検出センサと、前記負荷検出センサの検出値が所定の閾値を超えたときに報知を行うコントローラと、を備えている。
【0010】
本発明によれば、稼働現場に応じた給電ケーブルの過負荷検出装置の調整に要する時間を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態による電動式油圧ショベルを、上部旋回体の給電口に給電ケーブルを接続した状態で示す右側面図である。
図2図1の左側から電動式油圧ショベルをみた後面図である。
図3】キャブ、カウンタウエイト、ケーブル支持装置、受電ボックス、給電ケーブル等を拡大して示す斜視図である。
図4】キャブ、カウンタウエイト、ケーブル支持装置、受電ボックス、給電ケーブル等を拡大して示す左側面図である。
図5図4中の(V)部の拡大図である。
図6】ケーブルクランプ(ケーブル支持部材)がアーム部材(車体側支持部材)から離れる方向に変位した状態を示す図5と同様位置の拡大図である。
図7】電動式油圧ショベルの油圧ポンプを駆動するための電動駆動システムを示す回路構成図である。
図8図7中のコントローラによる処理を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態を、電動式作業機械を代表する電動式油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
なお、以下の説明では、電動式油圧ショベル1の前後方向は、前側を作業装置4側とし、後側を作業装置4とは反対側となるカウンタウエイト7側とする。また、電動式油圧ショベル1の左右方向は、前後方向と直交する方向とする。例えば、図1では、紙面の左右方向が電動式油圧ショベル1の前後方向(X方向)に対応し、紙面の表裏方向が電動式油圧ショベル1の左右方向(Y方向)に対応し、紙面の上下方向が電動式油圧ショベル1の上下方向(Z方向)に対応する。また、図8に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用いる(例えば、ステップ1=「S1」とする)。
【0014】
電動式作業機械としての電動式油圧ショベル1(以下、油圧ショベル1という)は、例えば、土木、解体、地下工事等の作業現場で用いられる。実施の形態の油圧ショベル1は、例えば、地下工事等の狭い作業現場での作業に適した小型(例えば、機械重量が1~6トン程度)の油圧ショベル(電動ミニショベル、電動式小型油圧ショベル)として構成されている。また、実施の形態の油圧ショベル1は、キャブ仕様の油圧ショベル1として構成されている。
【0015】
油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3に設けられた作業装置4とを備えている。下部走行体2および上部旋回体3は、油圧ショベル1の車体を構成している。車体は、走行可能であり、かつ、旋回可能である。上部旋回体3の前側には、スイング式の作業装置4が揺動可能に取付けられている。油圧ショベル1は、作業装置4を用いて土砂の掘削作業等を行う。
【0016】
下部走行体2は、例えば、無端状に形成されたトラックリンクに複数個のシューを取付けてなる履帯2Aと、履帯2Aを周回駆動させることにより油圧ショベル1を走行(自走)させる左右の走行用油圧モータ(図示せず)とを含んで構成されている。下部走行体2と上部旋回体3との間には、旋回軸受と旋回用油圧モータとを含んで構成される旋回装置が設けられている。
【0017】
フロント装置とも呼ばれる作業装置4は、旋回フレーム5の前側に左右方向に揺動可能に設けられたスイングポスト4Aを有している。スイングポスト4Aには、ブーム4Bが回動可能に取付けられている。ブーム4Bの先端には、アーム4Cが回動可能に取付けられている。アーム4Cの先端には、作業具としてのバケット4Dが回動可能に取付けられている。また、作業装置4は、スイングポスト4Aを揺動させるスイングシリンダ4Eと、ブーム4Bを回動させるブームシリンダ4Fと、アーム4Cを回動させるアームシリンダ4Gと、バケット4Dを回動させる作業具シリンダとしてのバケットシリンダ4Hとを備えている。
【0018】
上部旋回体3は、旋回装置の旋回用油圧モータが駆動することにより、下部走行体2上で旋回する。上部旋回体3は、支持構造体(ベースフレーム)となる旋回フレーム5を備えている。旋回フレーム5には、キャブ6、カウンタウエイト7、外装カバー8、電動モータ9、油圧ポンプ10、バッテリ装置11、コントロールバルブ装置(図示せず)等が搭載されている。この場合、旋回フレーム5の前側に作業装置4が取付けられている。旋回フレーム5の後側にカウンタウエイト7が取付けられている。
【0019】
キャブ6は、旋回フレーム5の左側に配置されている。キャブ6は、前面6A、後面6B、左側面6C、右側面6D、上面6Eによって囲まれたボックス状に形成されている。キャブ6の内部は、オペレータの運転室となっている。キャブ6内には、オペレータが座る運転席、油圧ショベル1を操作するための走行用レバー・ペダルおよび作業用レバーが設けられている。オペレータは、走行用レバー・ペダルおよび作業用レバーを操作することにより、下部走行体2による走行、上部旋回体3の旋回、作業装置4による掘削等を行うことができる。
【0020】
カウンタウエイト7は、作業装置4との重量バランスをとるために、キャブ6よりも後側に位置して旋回フレーム5の後端に設けられている。カウンタウエイト7は、左右方向に延びつつ、左右方向の中央が後方に突出した円弧状の重量物として形成されている。これにより、カウンタウエイト7の後面7Aは、上部旋回体3が旋回したときに一定の旋回半径の仮想円内に収まる円弧面として形成されている。
【0021】
カウンタウエイト7は、旋回フレーム5の後端から上方に立ち上がり、バッテリ装置11等を後方から覆っている。カウンタウエイト7の上端には、前方に張出す張出し部7Bが形成されている。キャブ6の後部側は、張出し部7Bによって支持されている。張出し部7Bの左端側には、受電ボックス12が設けられている。張出し部7Bの右端側には、ケーブル支持装置21が設けられている。ケーブル支持装置21に把持された給電ケーブル91は、受電ボックス12に接続される。
【0022】
外装カバー8は、カウンタウエイト7の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。図1に示すように、外装カバー8は、電動モータ9、油圧ポンプ10、バッテリ装置11等を、カウンタウエイト7と共に覆っている。外装カバー8は、電動モータ9、油圧ポンプ10、バッテリ装置11等を右側および上側から覆う右外装カバー8Aと、バッテリ装置11等を左側から覆う左外装カバー8Bとを含んで構成されている。
【0023】
図3に示すように、受電ボックス12は、カウンタウエイト7の張出し部7Bの左端側に設けられている。受電ボックス12は、給電ケーブル91が接続される給電口12A(例えば、雌側コネクタとなるインレット)を有している。給電口12Aには、外部電源92(図7)から延びる給電ケーブル91の給電コネクタ91A(例えば、雄側コネクタとなるインレットプラグ)が接続される。このように、上部旋回体3は、給電ケーブル91が接続される給電口12Aを備えている。給電ケーブル91は、動力源となる電動モータ9に電力を供給する。受電ボックス12には、給電口12Aの下側に位置して信号コネクタ12Bが設けられている。信号コネクタ12Bには、後述の張力センサ29とコントローラ16とを接続するための信号ケーブル33が接続される。
【0024】
外装カバー8内には、電動モータ9、油圧ポンプ10、バッテリ装置11の他、後述の図7に示す整流器13、切換器14、インバータ15、コントローラ16が設けられている。整流器13は、外部電源92から供給される交流電流を直流電力に変換する。切換器14は、整流器13とバッテリ装置11とインバータ15との間で電力の供給状態を切換える。インバータ15は、切換器14から供給される直流電力を交流電力に変換し、電動モータ9に供給する。図7に示すように、給電口12Aと整流器13と切換器14とバッテリ装置11とインバータ15と電動モータ9は、それぞれ車内ケーブルにより通電可能に接続されている。
【0025】
電動モータ9は、油圧ショベル1の動力源である。電動モータ9は、油圧ポンプ10と機械的に、即ち、動力(回転)の伝達を可能に接続されている。油圧ポンプ10は、コントロールバルブ装置を介してブームシリンダ4F等の各種の油圧アクチュエータ(油圧シリンダ、油圧モータ)に圧油を供給する。コントロールバルブ装置は、複数の方向制御弁からなる制御弁群である。コントロールバルブ装置は、油圧ポンプ10から吐出された圧油を、走行用レバー・ペダルおよび作業用レバーの操作に応じてブームシリンダ4F等の複数の油圧アクチュエータ(油圧シリンダ、油圧モータ)に分配する。これにより、油圧ショベル1は、走行、旋回、掘削等を行うことができる。
【0026】
油圧ショベル1は、例えばバッテリ装置11に充電が十分されているときに、給電ケーブル91の給電コネクタ91Aを受電ボックス12の給電口12Aから取り外し、かつ、給電ケーブル91をケーブル支持装置21から取り外した状態で稼働できる。この場合、電動モータ9は、バッテリ装置11からの電力によって駆動される。また、油圧ショベル1は、給電ケーブル91の給電コネクタ91Aを受電ボックス12の給電口12Aに接続し、かつ、給電ケーブル91をケーブル支持装置21に取付けた状態で稼働することもできる。この場合、電動モータ9は、外部電源92からの電力と、不足分をバッテリ装置11からの電力とによって駆動される。
【0027】
給電ケーブル91が給電口12Aに接続されているときは、この状態のまま、油圧ショベル1による走行、旋回、掘削等を行う。このとき、給電口12Aに接続された給電ケーブル91の途中部位は、ケーブル支持装置21によって支持される。即ち、受電ボックス12の給電口12Aには、ケーブル支持装置21に支持された給電ケーブル91が接続される。ケーブルスタンドとも呼ばれるケーブル支持装置21は、軸部材22と、アーム部材23とを備えている。
【0028】
軸部材22は、軸心が上下方向に延びた状態で上部旋回体3(カウンタウエイト7の上面)に取付けられている。アーム部材23は、軸部材22の上下方向の軸心を中心とした回転を可能に軸部材22に取付けられている。アーム部材23は、軸部材22に回転可能に嵌合する有蓋円筒部24と、有蓋円筒部24から水平方向に延びるロッド部25とを含んで構成されている。アーム部材23の先端側、即ち、ロッド部25の先端側には、給電ケーブル91を把持するケーブルクランプ26が設けられている。
【0029】
アーム部材23は、図示しないロック機構により回転方向の複数の位置で軸部材22に固定が可能となっている。例えば、アーム部材23は、図1ないし図6に示すケーブル把持位置に固定される。また、図示は省略するが、アーム部材23は、キャブ6の右側面6Dに沿って配置されるキャブ側方格納位置に固定される。また、図示は省略するが、アーム部材23は、キャブ6の後面6Bに沿って配置されるキャブ後方格納位置に固定される。アーム部材23は、ケーブル把持位置とキャブ側方格納位置とキャブ後方格納位置との3位置のいずれかに選択的に固定される。
【0030】
給電口12Aに給電ケーブル91を接続した状態で油圧ショベル1により作業を行うときは、アーム部材23は、図1ないし図6に示すケーブル把持位置に固定される。即ち、アーム部材23は、アーム部材23(ロッド部25)の先端側が上部旋回体3(カウンタウエイト7の後面7A)から張り出す位置に固定される。これにより、油圧ショベル1の旋回時に給電ケーブル91の巻き込みを抑制し、かつ、油圧ショベル1の走行時に給電ケーブル91の踏み付けを抑制できる。
【0031】
図5および図6にケーブルクランプ26等を拡大して示す。ケーブルクランプ26は、ヒンジ機構26Dによって開閉可能となった一対のクランプ部材26A,26Bと、クランプ部材26A,26Bを閉じた状態で固定する錠前26Cとを有している。一対のクランプ部材26A,26Bは、給電ケーブル91を外周側から挟み込んで把持する閉位置と、給電ケーブル91を解放する開位置との間で、ヒンジ機構26Dを支点として開閉される。錠前26Cは、一対のクランプ部材26A,26Bを施錠することにより、給電ケーブル91の途中部位を把持した閉位置に固定する。
【0032】
図3に示すように、給電ケーブル91は、ケーブル支持装置21の軸部材22から水平方向に延びたアーム部材23(ロッド部25)の先端でケーブルクランプ26に把持される。この状態で、給電ケーブル91の端部である給電コネクタ91Aは、受電ボックス12の給電口12Aに接続される。外部電源92の電力は、給電ケーブル91、給電コネクタ91A、受電ボックス12の給電口12Aを介して油圧ショベル1に供給される。
【0033】
ケーブルクランプ26は、アーム部材23(ロッド部25)の先端側に設けられたブラケット27に支持されている。この場合、ケーブルクランプ26は、ブラケット27に対して、弾性部材としてのばね部材28および図示しない案内部材を介して所定の方向(例えば、図4ないし図6の左右方向)への変位を可能に取付けられている。また、ケーブル支持装置21のアーム部材23(ロッド部25)には、負荷検出センサとしての張力センサ29が設けられている。張力センサ29は、ワイヤ30に加わる張力Sを検出する。
【0034】
ワイヤ30は、ケーブルクランプ26に固定されたクランプ側ワイヤ支持部31と、アーム部材23(より具体的には、有蓋円筒部24)に固定された車体側ワイヤ支持部32との間にかけわたされている。これにより、ワイヤ30は、給電ケーブル91側となるケーブルクランプ26と車体側となるアーム部材23(有蓋円筒部24)と両方にそれぞれ固定されている。
【0035】
ワイヤ30は、アーム部材23(ロッド部25)に対するケーブルクランプ26の変位に応じて、張力が変化する。即ち、ワイヤ30の張力は、ケーブルクランプ26がアーム部材23(ロッド部25)に対して遠ざかる方向(図4ないし図6の左右方向の右側)に変位する程、大きくなる。換言すれば、ワイヤ30の張力は、ケーブルクランプ26が車体から離れる方向に変位する程、大きくなる。張力センサ29は、ケーブルクランプ26の変位に応じて変化(緊張、弛緩)するワイヤ30の張力を検出する。これにより、張力センサ29は、ケーブルクランプ26に加わる負荷、延いては、給電ケーブル91に加わる負荷を検出することが可能となっている。
【0036】
即ち、張力センサ29は、給電ケーブル91に加わる負荷に対応するケーブルクランプ26の変位量をワイヤ30に加わる張力として検出する。張力センサ29は、コントローラ16と信号ケーブル33を介して接続されている。張力センサ29は、検出した張力に対応する信号(張力信号)をコントローラ16に出力する。図3に示すように、張力センサ29からコントローラ16に向けて延びる信号ケーブル33は、アーム部材23(有蓋円筒部24)に固定された車体側ワイヤ支持部32から受電ボックス12の信号コネクタ12Bを介して上部旋回体3内に配設(導入)されている。ワイヤ30と張力センサ29とコントローラ16は、給電ケーブル91の負荷を検出するためのケーブル負荷検出装置(過負荷検出装置)を構成している。
【0037】
ケーブルクランプ26とアーム部材23(ロッド部25)に固定されたブラケット27との間には、ばね部材28および案内部材が設けられている。案内部材は、ブラケット27(ロッド部25)に対してケーブルクランプ26を案内する。即ち、案内部材は、ケーブルクランプ26の変位がブラケット27に対して一方向(ロッド部25が延びる方向)の直線的な変位(図4ないし図6の左右方向)となるように規制する。案内部材は、例えば、ブラケット27に設けられる凸状のレール(直線部材)と、ケーブルクランプ26に設けられ、ブラケット27のレールと係合する凹部とにより構成することができる。
【0038】
ばね部材28は、ケーブルクランプ26の変位に応じて伸長、縮小する。油圧ショベル1の稼働時は、給電ケーブル91に加わる負荷に応じてケーブルクランプ26が図4ないし図6の左右方向に変位し、ばね部材28が伸長、縮小する。例えば、ケーブルクランプ26が図6に示すように右側(車体から離れる側)に変位すると、ワイヤ30が緊張し、張力センサ29の検出値が大きくなる。これとは逆に、ケーブルクランプ26が図5に示すように左側(車体に近付く側)に変位すると、ワイヤ30が弛緩し、張力センサ29の検出値が小さくなる。
【0039】
次に、油圧ショベル1の電動駆動システムについて、図7を参照しつつ説明する。
【0040】
図7に示すように、油圧ショベル1の電動駆動システムには、油圧ショベル1から離れた位置に配置された商用電源等の外部電源92から給電ケーブル91を介して電力が供給される。油圧ショベル1の電動駆動システムは、外部電源92からバッテリ装置11に電力を供給する機能(充電機能)と、外部電源92および/またはバッテリ装置11から電動モータ9に電力を供給する機能(駆動機能)とを備えている。バッテリ装置11への電力供給(充電)とインバータ15への電力供給は、コントローラ16からの指示に基づいて切換器14の内部回路に設けられたリレーを接続することにより行われる。
【0041】
外部電源92は、例えば、三相交流電力である。整流器13は、三相交流電力を直流電力に変換する。給電ケーブル91の給電コネクタ91Aを受電ボックス12の給電口12Aに接続したときは、外部電源92の電力を給電ケーブル91および給電口12Aを介して油圧ショベル1に供給できる。この場合、外部電源92の電力は、給電ケーブル91、給電口12A、整流器13、切換器14を介してバッテリ装置11に供給(充電)することができる。また、外部電源92の電力は、給電ケーブル91、給電口12A、整流器13、切換器14、インバータ15を介して電動モータ9に供給することができる。また、バッテリ装置11の電力は、切換器14、インバータ15を介して電動モータ9に供給することができる。
【0042】
コントローラ16の入力側は、張力センサ29、モニタ装置34、キースイッチ35、回転数ダイヤル36、充電スイッチ37、ロックスイッチ38、バッテリ装置11と接続されている。コントローラ16の出力側は、モニタ装置34、アラーム39、バッテリ装置11、切換器14、インバータ15に接続されている。コントローラ16は、油圧ショベル1の動作を制御する車体制御コントローラである。コントローラ16は、キースイッチ35、回転数ダイヤル36、ロックスイッチ38、充電スイッチ37、モニタ装置34、張力センサ29およびバッテリ装置11からの信号(入力信号)に基づいて、切換器14およびインバータ15を制御する。これにより、コントローラ16は、油圧ショベル1の駆動源となる電動モータ9の駆動を制御する。
【0043】
また、コントローラ16は、モニタ装置34の制御(情報表示制御)、アラームの制御(アラーム出力制御)を行う。さらに、コントローラ16は、張力センサ29により検出される検出値(張力)に応じて必要な制御(報知)を行う。これらのために、コントローラ16は、マイクロコンピュータを含んで構成されている。コントローラ16は、フラッシュメモリ、ROM、RAM、EEPROM等からなるメモリおよび演算回路(CPU)を有している。メモリには、張力センサ29の検出値(張力)に応じて必要な報知を行うための制御プログラム、即ち、後述の図8に示す処理フローを実行するための処理プログラムが格納されている。
【0044】
バッテリ装置11には、バッテリ監視装置が設けられている。コントローラ16は、バッテリ監視装置と接続されている。バッテリ監視装置は、バッテリ装置11の状態(バッテリ状態)、例えば、SOC(充電状態)、温度、異常等を監視する。バッテリ監視装置は、バッテリ状態に対応する信号を、コントローラ16に出力する。
【0045】
モニタ装置34は、車載モニタ(モニタ)である。モニタ装置34は、例えば油圧ショベル1のキャブ6内に設けられている。モニタ装置34は、油圧ショベル1を操縦するオペレータに伝えるべき情報を表示する。例えば、モニタ装置34は、油圧ショベル1の稼働状態、バッテリ装置11の電池残量に対応するSOC、各種機器の不調情報、警告情報、現在時刻等を表示する。モニタ装置34は、画面を用いてオペレータに情報を報知する情報報知装置である。
【0046】
キースイッチ35は、例えば油圧ショベル1のキャブ6内に設けられている。キースイッチ35は、油圧ショベル1の始動(電源ON)、停止(電源OFF)を行う始動停止スイッチである。キースイッチ35の信号(ON信号、OFF信号)は、コントローラ16に出力される。オペレータは、例えば、キースイッチ35にキーを差し込み、キーを回転することにより、油圧ショベル1の始動、停止の操作を行うことができる。
【0047】
充電スイッチ37は、例えば油圧ショベル1のキャブ6内、または、受電ボックス12に設けられている。充電スイッチ37は、給電ケーブル91が給電口12Aに接続されているときに、外部電源92の電力をバッテリ装置11に供給するか否かを選択するスイッチである。即ち、充電スイッチ37は、バッテリ装置11の充電を行うか否かを選択するスイッチである。充電スイッチ37の信号(充電ON信号、充電OFF信号)は、コントローラ16に入力される。オペレータは、給電ケーブル91が給電口12Aに接続されているときに、充電スイッチ37をONにすることにより、バッテリ装置11の充電を行うことができる。
【0048】
ロックスイッチ38は、ゲートロックレバー(図示せず)の位置を検出する検出スイッチである。即ち、ロックスイッチ38は、ゲートロックレバーの位置が、油圧ショベル1の油圧アクチュエータの駆動を禁止するロック位置(上げ位置)であるか、油圧アクチュエータの駆動を許可するロック解除位置(下げ位置)であるかを検出する。ロックスイッチ38の信号(ロック信号、ロック解除信号)は、コントローラ16に出力される。ゲートロックレバーは、オペレータによって、キャブ6の乗降口を閉鎖する(閉じる)乗降規制位置(ロック解除位置)、または、乗降口を開放する(開く)乗降許可位置(ロック位置)に操作される。油圧ショベル1は、ゲートロックレバーがロック解除位置に操作されているときに、油圧アクチュエータを駆動することができる。
【0049】
アラーム39は、コントローラ16の判定に基づいて、オペレータに対して警告音、警告音声を出力する。アラーム39は、音によりオペレータに情報を報知する情報報知装置である。
【0050】
回転数ダイヤル36は、電動モータ9の回転数を可変に設定するダイヤルである。回転数ダイヤル36は、オペレータにより操作される。回転数ダイヤル36は、オペレータの操作に応じたモータ回転数の指令(信号)をコントローラ16に出力する。コントローラ16は、回転数ダイヤルの指令により、インバータ15を制御する。即ち、インバータ15は、コントローラ16からのモータ回転数指令により、電動モータ9への供給電圧の周波数を制御し、電動モータ9の回転数を制御する。
【0051】
電動モータ9には、油圧ポンプ10が接続されている。油圧ショベル1は、油圧ポンプ10から吐出する作動油がコントロールバルブ装置を介して各種の油圧アクチュエータへ供給されることにより駆動する。油圧ポンプ10から吐出される作動油の量は、油圧ポンプ10の回転速度に対応する。このため、電動モータ9の回転速度が高い程、油圧アクチュエータの速度が高くなり、回転速度が低い程、油圧アクチュエータの速度は低くなる。また、電動モータ9の回転を停止することで、油圧ショベル1を停止できる。
【0052】
ところで、前述の特許文献1に記載された自走式作業機械は、作業現場の天井のレールに沿って移動するトロリーと給電ケーブルとの間にロードリミッタを設けている。このため、特許文献1の技術の場合は、そのときの稼働現場によってロードリミッタの張力検出値または制御に用いる閾値等を補正(調整)する必要がある。これに対して、実施の形態の油圧ショベル1は、給電ケーブル91の負荷を検出するためのケーブル負荷検出装置(過負荷検出装置)を備えている。この場合、実施の形態では、給電ケーブル91の負荷検出を車体側の支持部となるケーブル支持装置21で行う。これにより、実施の形態では、稼働現場に応じた給電ケーブル91の過負荷検出装置の調整に要する時間を低減することができる。
【0053】
即ち、実施の形態によれば、油圧ショベル1は、外部電源92から給電ケーブル91を介して給電される。換言すれば、油圧ショベル1は、油圧ショベル1の外部からの供給電力により充電され、駆動される。油圧ショベル1には、給電ケーブル91が接続される給電口12A(ケーブル接続部)と、給電口12Aに導かれる給電ケーブル91を支持するケーブル支持装置21と、給電ケーブル91に加わる負荷を検出する負荷検出センサとしての張力センサ29と、張力センサ29の検出値が入力される制御装置としてのコントローラ16と、が設けられている。張力センサ29の検出値は、給電ケーブル91の負荷に対応する。コントローラ16は、張力センサ29の検出値(負荷)に基づいて、油圧ショベル1の駆動を制限または制御する。
【0054】
ここで、ケーブル支持装置21は、車体上の設置位置から伸長可能なように車体に支持されている。即ち、ケーブル支持装置21は、アーム部材23をキャブ側方格納位置またはキャブ後方格納位置から図1ないし図6に示すケーブル把持位置に回転することにより、アーム部材23の先端側を上部旋回体3から伸長させることができる。張力センサ29は、ケーブル支持装置21に加わる負荷を検出する。即ち、給電ケーブル91は、アーム部材23の先端側に設けられたケーブルクランプ26に支持されている。ケーブルクランプ26の負荷は、給電ケーブル91の負荷に直接的に対応する。張力センサ29は、ケーブルクランプ26の負荷に対応するワイヤ30(変化部材)の張力(変化量)を検出する。
【0055】
図5および図6に示すように、張力センサ29の検出値をSとし、アーム部材23にばね部材28を介して取付けられたケーブルクランプ26の初期位置からの変位をXとする。ワイヤ30の張力は、ケーブルクランプ26の変位Xに応じて変化する。即ち、張力センサ29の検出値Sは、ケーブルクランプ26の変位Xと比例関係となり、ケーブルクランプ26の変位X(車体側から離れる方向の変位X)が大きくなる程、ワイヤ30の張力(検出値S)も大きくなる。コントローラ16は、ワイヤ30の張力(検出値S)が所定の値(第1閾値T1、第2閾値T2)を超えたときに報知(オペレータへの警告、油圧ショベル1の稼働の制限)を行う。
【0056】
実施の形態では、ケーブルクランプ26の変位量X1を第1許容値とし、ケーブルクランプ26の変位Xが第1許容値X1のときの張力センサ29の検出値Sの値をT1とする。また、ケーブルクランプ26の変位量X2を第2許容値とし、ケーブルクランプ26の変位Xが第2許容値X2のときの張力センサ29の検出値Sの値をT2とする。第1許容値X1に対応する張力T1は、警報を発すると共に電動モータ9の回転数を制限するか否かの閾値(第1閾値T1)としている。第2許容値X2に対応する張力T2は、警報を発すると共に電動モータ9の回転を停止する閾値(第2閾値T2)としている。
【0057】
ケーブルクランプ26の変位量XがX1よりも小さい(X<X1)とき、即ち、張力センサ29の検出値Sが第1閾値T1よりも低い(S<T1)ときは、給電ケーブル91に加わる負荷は小さい。この場合、コントローラ16は、警報を発しない。また、コントローラ16は、電動モータ9の回転数を制限しない。これに対して、ケーブルクランプ26の変位量XがX1以上、かつ、X2よりも小さい(X1≦X<X2)とき、即ち、張力センサ29の検出値Sが第1閾値T1以上、かつ、第2閾値T2よりも低い(T1≦S<T2)ときは、給電ケーブル91に加わる負荷が大きい。
【0058】
この場合、コントローラ16は、アラーム39およびモニタ装置34より警報を発すると共に電動モータ9の回転数を制限する。さらに、ケーブルクランプ26の変位量XがX2以上(X2≦X)のとき、即ち、張力センサ29の検出値Sが第2閾値T2以上(T2≦S)のときは、給電ケーブル91に加わる負荷がさらに大きくなる。この場合、コントローラ16は、アラーム39およびモニタ装置34より警報を発しつつ電動モータ9の回転を停止する。
【0059】
第1閾値T1および第2閾値T2は、給電ケーブル91および給電口12Aの損傷を抑制できる値となるように、予め実験、計算、シミュレーション等により求めておく。この場合、第1閾値T1は、例えば給電ケーブル91または給電口12Aの最大許容負荷に対応する最大許容張力の70~80%とし、第2閾値T2は、例えば給電ケーブル91または給電口12Aの最大許容負荷に対応する最大許容張力の90~95%とすることができる。
【0060】
実施の形態では、給電ケーブル91の負荷検出を車両上の特定の区間で行う。即ち、給電ケーブル91の負荷検出を、クランプ側ワイヤ支持部31と車体側ワイヤ支持部32との間のワイヤ30の変化(張力の変化)を検出することにより行う。このため、実施の形態では、稼働現場によるケーブルの長さ、設置個所等の相違に伴う閾値、検出値の補正を不要にできる。なお、コントローラ16による張力センサ29の検出値に応じた報知の制御、即ち、図8に示す制御処理については、後で詳しく述べる。
【0061】
実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0062】
例えば、作業現場に外部電源92がある場合には、外部電源92から延びる給電ケーブル91を油圧ショベル1の給電口12Aに接続する。これにより、外部電源92からの電力は、整流器13、切換器14、インバータ15を介して電動モータ9に供給される。また、外部電源92からの電力は、バッテリ装置11に充電することもできる。電動モータ9は、外部電源92および/またはバッテリ装置11からの電力によって油圧ポンプ10を駆動する。
【0063】
ここで、外部電源92からの電力によって油圧ショベル1を駆動するときは、図1ないし図6に示すように、給電ケーブル91の途中部位をケーブル支持装置21によって支持した状態で油圧ショベル1を稼働する。即ち、この状態で、オペレータが走行用レバー・ペダルを操作することにより、油圧ショベル1を走行させる。また、オペレータが作業用レバーを操作することにより、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4によって土砂等の掘削作業を行う。このとき、油圧ショベル1の動作する方向と給電ケーブル91の長さと外部電源92の位置との関係によっては、給電ケーブル91に大きな力が加わる場合がある。油圧ショベル1のコントローラ16は、張力センサ29の検出値Sが所定の閾値T1または閾値T2を超えたときに、閾値T1に応じた報知、または、閾値T2に応じた報知を行う。
【0064】
次に、コントローラ16で行われる制御処理、即ち、張力センサ29の検出値Sに応じて報知を行う制御処理について、図8を参照しつつ説明する。なお、図8の制御処理は、例えば、コントローラ16に通電している間、所定の制御周期(例えば、10ms)で繰り返し実行される。
【0065】
例えば、キースイッチがONされることにより、コントローラ16が起動すると、図8の制御処理が開始される。コントローラ16は、S1で、張力センサ29の検出値Sを読み込む。続く、S2では、S1で読み込んだ検出値Sと第1閾値T1とを比較する。即ち、検出値Sが第1閾値T1以上(T1≦S)であるか否かを判定する。S2で「YES」、即ち、検出値Sが第1閾値T1以上(T1≦S)であると判定した場合は、S3に進む。S3では、警報をONにする。例えば、S3では、モニタ装置34の表示画面に警告を表示することにより、および/または、アラーム39より警告音、警告音声を発することにより、オペレータに報知を行う。
【0066】
S3に続くS4では、電動モータ9の回転数を低速に制限する。即ち、コントローラ16は、インバータ15に対する回転数指令を小さくし、油圧ショベル1の駆動速度を低下させる。この場合、電動モータ9の回転数(回転速度)は、油圧ショベル1の駆動を継続しても、給電ケーブル91または給電口12Aの負荷が急上昇しないような値に制限する。例えば、回転数ダイヤル36で設定されている回転数の20~50%の回転数に制限する。
【0067】
S4で電動モータ9の回転数を低速に制限したら、S5に進む。S5では、S1で読み込んだ検出値Sと第2閾値T2とを比較する。即ち、検出値Sが第2閾値T2以上(T2≦S)であるか否かを判定する。S5で「NO」、即ち、検出値Sが第2閾値T2よりも小さい(T2>S)と判定した場合は、終了に進む。即ち、終了を介して、開始に進み、S1以降の処理を繰り返す。
【0068】
これに対して、S5で「YES」、即ち、検出値Sが第2閾値T2以上(T2≦S)であると判定した場合は、S6に進む。この場合は、給電ケーブル91または給電口12Aの負荷が許容値に達した、または、許容値を超えたとみなすことができる。このため、S6では、電動モータ9を停止する。即ち、コントローラ16は、インバータ15に対する回転数指令を0にし、油圧ショベル1の駆動を停止する。これにより、検出値Sが第2閾値T2を下回らない限り、油圧ショベル1の駆動を禁止し、給電ケーブル91および給電口12Aの損傷を抑制する。
【0069】
一方、S2で「NO」、即ち、検出値Sが第1閾値T1よりも小さい(T1>S)と判定した場合は、S7に進む。S7では、警報をOFFにする。即ち、S7では、モニタ装置34の表示画面に警告を表示している場合はその表示を停止し、アラーム39より警告音、警告音声を出力している場合はその出力を停止する。S7に続くS8では、電動モータ9の出力の制限をOFFにする。即ち、S8では、電動モータ9の回転数を制限している場合はその制限を解除し、回転数ダイヤル36で設定されている回転数に戻す。S8で電動モータ9の制限を解除したら、終了を介して、開始に進み、S1以降の処理を繰り返す。
【0070】
以上のように、実施の形態の油圧ショベル1は、ケーブル支持部材としてのケーブルクランプ26と、負荷検出センサとしての張力センサ29と、制御装置となるコントローラ16と、を備えている。ケーブルクランプ26は、車体を構成する上部旋回体3に設けられている。ケーブルクランプ26は、給電口12Aに接続された給電ケーブル91を支持する。張力センサ29は、給電ケーブル91からケーブルクランプ26に加わる負荷に対応する状態量(張力)を検出する。コントローラ16は、張力センサ29の検出値(即ち、張力センサ29により検出される状態量)が所定の閾値(閾値T1、閾値T2)を超えたときに、報知を行う。
【0071】
このように、実施の形態によれば、上部旋回体3の給電口12Aに接続された給電ケーブル91を支持するケーブルクランプ26は、車体を構成する上部旋回体3に設けられている。このため、張力センサ29の検出値、即ち、給電ケーブル91からケーブルクランプ26に加わる負荷に対応する状態量(張力)を、給電ケーブル91に加わる負荷とほぼ直接的に対応させることができる。そして、この対応関係は、稼働現場が変わってもほぼ変化しない。このため、いずれの稼働現場でも、報知に用いる閾値(閾値T1,閾値T2)、即ち、給電ケーブル91および給電口12Aの損傷を抑制するための報知の処理に用いる閾値(閾値T1,閾値T2)を同じにできる。この結果、稼働現場に応じた給電ケーブル91の過負荷検出装置(ケーブル負荷検出装置)の調整に要する時間を低減できる。
【0072】
実施の形態によれば、ケーブルクランプ26は、上部旋回体3に取付けられた車体側支持部材としてのアーム部材23を介して、上部旋回体3に支持されている。そして、張力センサ29は、状態量としてアーム部材23に対するケーブルクランプ26の変位に応じた変化量(張力の変化量)を検出する。即ち、張力センサ29は、上部旋回体3に取付けられたアーム部材23に対するケーブルクランプ26の変位に応じた変化量(張力の変化量)を検出する。このため、「ケーブルクランプ26の変位に応じた変化量」と「給電ケーブル91に加わる負荷」との対応関係に基づいて、報知を行うか否かを判定するための閾値を設定することができる。
【0073】
実施の形態によれば、アーム部材23の端部(先端)は、上部旋回体3から張り出しており、ケーブルクランプ26は、アーム部材23の端部(先端)に変位可能に支持されている。即ち、ケーブルクランプ26は、上部旋回体3から張り出した部位(突出した部位)となるアーム部材23の端部(先端)に変位可能に支持されている。このため、例えば、給電ケーブル91のうちケーブルクランプ26に支持(把持)される部位と給電口12Aとの間の距離を長くでき、給電ケーブル91の取り回しの自由度を向上できる。また、給電ケーブル91が上部旋回体3から張り出した部位で支持されるため、給電ケーブル91が下部走行体2に踏み付けられる可能性、上部旋回体3の旋回に伴って給電ケーブル91が巻き込まれる可能性をより低減できる。
【0074】
実施の形態によれば、ケーブルクランプ26とアーム部材23(ブラケット27)との間には、アーム部材23(ブラケット27)に対してケーブルクランプ26が変位する方向を規制する案内部材(図示せず)が設けられている。また、ケーブルクランプ26とアーム部材23(ブラケット27)との間には、ケーブルクランプ26の変位に伴って弾性変形する弾性部材としてのばね部材28が設けられている。このため、ケーブルクランプ26の変位の方向を規制できると共に、給電ケーブル91に加わる負荷が小さいにも拘わらずケーブルクランプ26が大きく変位することを抑制できる。これにより、「アーム部材23に対するケーブルクランプ26の変位に応じた変化量」と「給電ケーブル91に加わる負荷」との対応関係を精度よく得ることができる。これと共に、給電ケーブル91に加わる負荷が小さいにも拘わらず、コントローラ16が報知を行うことを抑制できる。これにより、コントローラ16の不必要な報知を抑制でき、報知の精度を向上できる。
【0075】
実施の形態によれば、アーム部材23に対するケーブルクランプ26の変位に応じて変化する変化部材を備えている。この上で、負荷検出センサとしての張力センサ29は、変化部材となるワイヤ30の変化量(張力)を検出する。このため、「ワイヤ30の変化量(張力)」と「給電ケーブル91に加わる負荷」との対応関係に基づいて、報知を行うか否かを判定するための閾値を設定することができる。
【0076】
実施の形態によれば、変化部材としてのワイヤ30は、車体側(車体側ワイヤ支持部32)とケーブルクランプ26側(車体側ワイヤ支持部32)との両方に固定されている。そして、張力センサ29は、状態量としてワイヤ30に加わる負荷を検出する。即ち、張力センサ29は、車体側(車体側ワイヤ支持部32)とケーブルクランプ26側(車体側ワイヤ支持部32)との両方に固定されたワイヤ30に加わる負荷(張力)を検出する。このため、「ワイヤ30に加わる負荷(張力)」と「給電ケーブル91に加わる負荷」との対応関係に基づいて、報知を行うか否かを判定するための閾値を設定することができる。
【0077】
より具体的には、実施の形態によれば、アーム部材23に対するケーブルクランプ26の変位に応じて変化する変化部材として、ワイヤ30を採用している。ワイヤ30は、車体側(車体側ワイヤ支持部32)とケーブルクランプ26側(クランプ側ワイヤ支持部31)との間にかけわたされている。ワイヤ30は、ケーブルクランプ26の変位に応じて張力が変化する。張力センサ29は、ワイヤ30の張力を検出する。このため、「ワイヤ30の張力」と「給電ケーブル91に加わる負荷」との対応関係に基づいて、報知を行うか否かを判定するための閾値を設定することができる。
【0078】
実施の形態によれば、コントローラ16は、アラーム39から警告音を発することにより、および/または、モニタとしてのモニタ装置34の画面に警告を表示することにより、報知を行う。これに加えて、コントローラ16は、油圧ショベル1の動作を制限(電動モータ9の回転を制限)することにより、報知を行う。このため、コントローラ16の報知に基づいて、オペレータは、必要な操作(動作を制限するための操作)を行うことができる。また、コントローラ16の報知に基づいて、自動的に油圧ショベル1の動作が制限(電動モータ9、延いては、油圧ポンプ10の出力が制限)される。これらにより、給電ケーブル91の損傷を抑制できる。なお、コントローラ16は、例えば、キャブ6内に設けた警告灯を点灯することにより報知を行ってもよい。即ち、コントローラ16は、報知の方法として、警告音、警告灯、モニタ上での警告表示、または、動作の制限を行う。
【0079】
いずれにしても、実施の形態によれば、上部旋回体3に固定された軸部材22、アーム部材23、ケーブルクランプ26、ばね部材28、ワイヤ30の位置関係は、稼働現場が変わってもほぼ変化しない。そして、コントローラ16は、ケーブルクランプ26の変位量に応じた張力センサ29の検出値Sを用いて給電ケーブル91の負荷の大きさを判定する。このため、給電ケーブル91の負荷の大きさを判定するための閾値T1,T2を補正しなくてよい。即ち、稼働現場に応じて閾値T1,T2の調整に要する時間を低減することができ、給電ケーブル91を保護するための制御(動作制御)を容易に行うことができる。
【0080】
なお、実施の形態では、アーム部材23に対するケーブルクランプ26の変位に応じて変化する変化部材をワイヤ30とすると共に、アーム部材23に対するケーブルクランプ26の変位に応じた変化量(負荷)を検出する負荷検出センサを張力センサ29とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、変化部材をアーム部材(車体側支持部材)とケーブルクランプ(ケーブル支持部材)との間に設けたばね部材とすると共に、負荷検出センサを荷重センサ、即ち、ばね部材に加わる負荷を検出する荷重センサとしてもよい。また、負荷検出センサとして、ばね部材の長さを検出する変位センサを用いてもよい。
【0081】
実施の形態では、アーム部材23に対するケーブルクランプ26の変位に応じて変化する変化部材(ワイヤ30)を設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、変位部材は設けずに(省略し)、負荷検出センサとして、アーム部材(車体側支持部材)に対するケーブルクランプ(ケーブル支持部材)の変位を検出する変位センサを設ける構成としてもよい。さらに、アーム部材(車体側支持部材)とケーブルクランプ(ケーブル支持部材)との間に負荷検出センサとなる荷重センサを設け、荷重センサによりアーム部材(車体側支持部材)とケーブルクランプ(ケーブル支持部材)との間に加わる荷重(状態量)を検出してもよい。負荷検出センサにより検出する状態量は、給電ケーブルを介してケーブルクランプ(ケーブル支持部材)に加わる負荷に対応する状態量であればよく、変位、荷重に限らず、これら以外の状態量を用いてもよい。
【0082】
実施の形態では、2つの閾値T1,T2を設定すると共に、閾値T1を超えた場合は、警告による報知および油圧ショベル1の動作の制限による報知を行い、閾値T1よりも大きい値となる閾値T2を超えた場合は、警告による報知および油圧ショベル1の動作の停止による報知を行う構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、閾値T1を超えた場合に警告による報知を行い、閾値T1よりも大きい値となる閾値T2を超えた場合に油圧ショベル1の動作の制限による報知を行い、閾値T2よりも大きい値となる閾値T3を超えた場合に油圧ショベル1の動作の停止による報知を行ってもよい。また、閾値を1つとし、この1つの閾値を超えたら、油圧ショベル1の動作の停止による報知を行ってもよい。「閾値」および閾値を超えたときの「報知」は、給電ケーブルおよび給電口の損傷を抑制できるように設定(選択)することができる。
【0083】
実施の形態では、スイング式の作業装置4を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、モノブーム式の作業装置を備えた油圧ショベル、オフセット式の作業装置を備えた油圧ショベル等、他の型式の作業装置(フロント装置)を備えた油圧ショベルにも適用することができる。また、作業装置4の作業具をバケット4Dとした場合を例に挙げて説明したが、例えば、圧砕機等の他の作業具を備えた作業装置を用いてもよい。
【0084】
実施の形態では、上部旋回体3にバッテリ装置11が搭載され油圧ショベル1を例に挙げて説明した。即ち、実施の形態では、外部電源92からの電力によって電動モータ9が駆動されると共に、バッテリ装置11に充電された電力によっても電動モータ9が駆動される電動式油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えばバッテリ装置が搭載されておらず、外部電源からの電力のみによって電動モータが駆動される電動式作業機械を用いてもよい。
【0085】
実施の形態では、キャブ6を備えたキャブ仕様の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、キャノピ仕様の油圧ショベルを用いてもよい。
【0086】
実施の形態では、小型の油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、例えば、中型以上の油圧ショベルに適用してもよい。また、車体を下部走行体2と上部旋回体3とにより構成した場合を例に挙げて説明したが、旋回体を有しない車体(例えば、前輪を有する前部車体と後輪を有する後部車体とを連結軸を介して屈曲可能に連結してなるアーティキュレート式の車体)としてもよい。
【0087】
実施の形態では、作業機械として油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えばホイールローダ、フォークリフト、トラクター、コンバイン等、各種の作業機械に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 電動式油圧ショベル(電動式作業機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
4 作業装置
9 電動モータ(動力源)
12A 給電口
16 コントローラ
23 アーム部材(車体側支持部材)
26 ケーブルクランプ(ケーブル支持部材)
28 ばね部材(弾性部材)
29 張力センサ(負荷検出センサ)
30 ワイヤ(変化部材)
34 モニタ装置(モニタ)
39 アラーム
91 給電ケーブル
図1
図2
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図8