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特許7421024高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向上させる方法及びその製品
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  • 特許-高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向上させる方法及びその製品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向上させる方法及びその製品
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20240117BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20240117BHJP
   A23L 29/244 20160101ALI20240117BHJP
   A23L 3/365 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A23L17/00 101B
A23L29/256
A23L29/244
A23L3/365 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023079726
(22)【出願日】2023-05-12
(65)【公開番号】P2023175639
(43)【公開日】2023-12-12
【審査請求日】2023-05-13
(31)【優先権主張番号】202210596588.6
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(73)【特許権者】
【識別番号】523177148
【氏名又は名称】泰州安井食品有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】許艶順
(72)【発明者】
【氏名】江恒
(72)【発明者】
【氏名】劉慈坤
(72)【発明者】
【氏名】房▲てぃ▼
(72)【発明者】
【氏名】黄建聯
(72)【発明者】
【氏名】▲やん▼小衛
(72)【発明者】
【氏名】夏文水
(72)【発明者】
【氏名】余達威
(72)【発明者】
【氏名】姚遠
(72)【発明者】
【氏名】劉▲しん▼
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-082053(JP,A)
【文献】特開昭62-262970(JP,A)
【文献】特開平04-071453(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111631359(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113796503(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108902442(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104856117(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114468247(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113017095(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103300379(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109172540(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109480217(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110101072(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111194879(CN,A)
【文献】Food Hydrocolloids,2021年,121,107040,http://doi.org/10.1016/j.foodhyd.2021.107040
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J,A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向上させる方法であって、
冷凍のすり身を中心温度-3~2℃に解凍するステップ、
解凍したすり身をチョッパー・ミキサーに入れ、1000~3000r/minで2分間
チョッピングする擂り潰しステップ、
擂り潰したすり身に塩を加え、1000~3000r/minで2分間チョッピングし続
ける塩切りステップ、
水、植物油、大豆分離蛋白質及び親水コロイドを用いてピカリング・エマルジョンを調製
して、塩切りしたすり身に加える乳化ステップ、
混合物を1000~3000r/minで3分間チョッピングし続けることによって、乳
化すり身ゾルを得る混合・チョッピングステップ、及び
乳化すり身ゾルを2段式加熱成型用の金型に入れ、水浴中で30分間加熱し、その後90
℃で30分間加熱することによって、熱成形した乳化すり身ゲルを得る加熱成型ステップ
を含むことを特徴とする、高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向上させる方法。
【請求項2】
前記擂り潰し、塩切り、混合・チョッピング過程の温度をいずれも10℃以下に制御する
ことを特徴とする、請求項1に記載の高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向上さ
せる方法。
【請求項3】
前記擂り潰しステップには、解凍したすり身をチョッパー・ミキサーに入れ、1000~
3000r/minで1分間チョッピングし、30秒間休止した後、同じ条件下で1分間
チョッピングし続ける過程が含まれることを特徴とする、請求項1または2に記載の高水
分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向上させる方法。
【請求項4】
前記塩切りステップにおいて、塩の添加量は、擂り潰したすり身の総質量の1.5%~3
.0%であることを特徴とする、請求項3に記載の高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安
定性を向上させる方法。
【請求項5】
前記乳化ステップにおいて、植物油には、大豆油、ヒマワリ種子油及び落花生油の1種以
上が含まれることを特徴とする、請求項1に記載の高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安
定性を向上させる方法。
【請求項6】
前記乳化ステップにおいて、親水コロイドには、アルギン酸ナトリウム、こんにゃくグル
コマンナン及びカラギーナンの1種以上が含まれることを特徴とする、請求項1に記載の
高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向上させる方法。
【請求項7】
前記ピカリング・エマルジョンの製造には、
水相に大豆分離蛋白質を添加し、4℃で2時間磁気撹拌することによって、大豆分離蛋
白質の水相分散液を得るステップ、
大豆分離蛋白質の水相分散液と植物油とを混合し、8000~15000r/minで
1~3分間均質化することによって、安定した大豆分離蛋白質のピカリング粗エマルジョ
ンを得るステップ、及び
粗エマルジョンに親水コロイドを添加し、8000~15000r/minで1~3分
間均質化を継続することによって、安定した大豆分離蛋白質-親水コロイドのピカリング
・エマルジョンを得るステップが含まれることを特徴とする、請求項1に記載の高水分乳
化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向上させる方法。
【請求項8】
大豆分離蛋白質の添加量は、添加した水相質量の1%~5%であり、磁気撹拌の回転速
度が300~500r/minであり、
大豆分離蛋白質の水相分散液と植物油の混合比が質量比で2:1~4:1であり、
親水コロイドの添加量は、安定した大豆分離蛋白質のピカリング・エマルジョン質量の
0.1%~2%であることを特徴とする、請求項7に記載の高水分乳化すり身ゲルの凍結
・融解安定性を向上させる方法。
【請求項9】
前記の混合・チョッピングステップには、
塩切り後のすり身を1000~3000r/minで1分間チョッピングし、30秒間
休止した後、同じ条件下で1分間チョッピングし続け、30秒間休止した後、同じ条件下
で1分間チョッピングし続け、合計3分間チョッピングすることによって、乳化すり身ゾ
ルを得るステップが含まれ、
前記乳化において、塩切り後のすり身とピカリング・エマルジョンの質量比が1:1~
3:1であることを特徴とする、請求項1に記載の高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安
定性を向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水産加工技術分野に属し、特に高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向
上させる方法及びその製品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、すり身及びすり身製品は、水産物加工の中で産業化と規模化の程度が最も高い製
品の1つになっており、すり身及びすり身製品の加工は、水産物加工率と産業利益の向上
に重要な役割を果たしている。現在、市販されているすり身製品は、主に水分含有量が少
なく、でんぷん含有量が多い冷凍調理品であり、その多くは硬く、食感が悪い。これに対
し、すり身を乳化させた「魚丸コンソメスープ」、「魚丸サンド溝」及び「魚丸四珍」は
、口当たりがなめらかで柔らかい食感と新鮮な味わいで消費者に人気がある。しかし、こ
のような乳化すり身製品は、水分含有量が高く、長期冷凍や凍結・融解過程に汁流失や蛋
白質の凍結変性が発生しやすく、食味の低下を招き、貯蔵の困難が大きく、現在でも手作
業加工のレベルにあり、遠距離の流通と販売が困難な状況である。従って、口当たりがな
めらかでやわらかい伝統的な特徴のある乳化すり身ゲル製品の工業化生産を実現し、その
凍結・融解安定性を向上させることは、重要な現実的意義を持っている。
【0003】
すでに開示されている文献において、公開番号がCN106332952Aである特許「
冷凍すり身の冷凍耐性を改善する方法」には、すり身の冷凍耐性を改善するための複合凍
結防止剤(トレハロース、乳酸ナトリウム、ビタミンC、グルコース、ジ酢酸ナトリウム
及びマルトデキストリン)が開示されている。公開番号がCN109007779Bの特
許「冷凍すり身用複合保水剤及びその調製方法と応用」には、冷凍すり身の保水力を向上
させ、すり身の解凍・凍結時のドリップロスを低減させるために、動的高圧マイクロジェ
ットで調製した複合均質の保水剤(カラギーナンオリゴ糖リポソーム、大豆分離蛋白質、
カゼインナトリウム、スクロースエステル、マルトデキストリン及びジ酢酸ナトリウム)
が開示されている。
【0004】
しかし、上記に開示された特許は、冷凍すり身の冷凍保存過程における蛋白質の冷凍変性
や生すり身の保水力の向上を目的としているが、加熱成型された高水分乳化すり身製品の
低い冷凍・解凍安定性に対する解決法についてはあまり報告されておらず、この問題に対
して効果的に解決されていないのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本セクションの目的は、本発明の実施形態の一部の態様を概説し、一部の好ましい実施形
態について簡潔に説明することである。このセクション、明細書の概要及び発明の名称の
目的を不明瞭にしないために、このセクション、本願の明細書の概要及び発明の名称にお
いて、いくつかの簡略化または省略がなされることがあり、このような簡略化または省略
は、本発明の範囲を限定するために使用することができない。
【0006】
本発明は、上記の問題点及び/または従来技術に存在する問題点に鑑みて提案されたも
のである。
【0007】
したがって、本発明の目的は、従来技術における欠点を克服し、高水分乳化すり身ゲルの
凍結・融解安定性を向上させる方法を提供することである。
【0008】
上記技術的課題を解決するために、本発明は、高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性
を向上させる方法の技術的解決策を提供する。
前記方法には、
冷凍のすり身を中心温度-3~2℃に解凍するステップ、
解凍したすり身をチョッパー・ミキサーに入れ、1000~3000r/minで2分間
チョッピングする擂り潰しステップ、
擂り潰したすり身に塩を加え、1000~3000r/minで2分間チョッピングし続
ける塩切りステップ、
水、植物油、大豆分離蛋白質及び親水コロイドを用いてピカリング・エマルジョンを調製
して、塩切りしたすり身に加える乳化ステップ、
上記混合物を1000~3000r/minで3分間チョッピングし続けることによって
、乳化すり身ゾルを得る混合・チョッピングステップ、及び
乳化すり身ゾルを2段式加熱成型用の金型に入れ、水浴中で30分間加熱し、その後90
℃で30分間加熱することによって、熱成形した乳化すり身ゲルを得る加熱成型ステップ
とが含まれる。
【0009】
本発明に記載の高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向上させる方法の好ましい実
施態様として、前記擂り潰し、塩切り、混合・チョッピング過程の温度をいずれも10℃
以下に制御する。
【0010】
本発明に記載の高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向上させる方法の好ましい実
施態様として、前記擂り潰しステップには、解凍したすり身をチョッパー・ミキサーに入
れ、1000~3000r/minで1分間チョッピングし、30秒間休止した後、同じ
条件下で1分間チョッピングし続ける過程が含まれる。
【0011】
本発明に記載の高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向上させる方法の好ましい実
施態様として、前記塩切りステップにおいて、塩の添加量は、擂り潰したすり身の総質量
の1.5%~3.0%である。
【0012】
本発明に記載の高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向上させる方法の好ましい実
施態様として、前記乳化ステップにおいて、植物油には、大豆油、ヒマワリ種子油及び落
花生油の1種以上が含まれる。
【0013】
本発明に記載の高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向上させる方法の好ましい
実施態様として、ここで、前記乳化ステップにおいて、親水コロイドには、アルギン酸ナ
トリウム、こんにゃくグルコマンナン、カラギーナンの1種以上が含まれる。
【0014】
本発明に記載の高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向上させる方法の好ましい実
施態様として、前記ピカリング・エマルジョンの製造には以下のステップが含まれる。
【0015】
水相に大豆分離蛋白質を添加し、4℃で2時間磁気撹拌することによって、大豆分離蛋白
質の水相分散液を得る。
【0016】
大豆分離蛋白質の水相分散液と植物油とを混合し、8000~15000r/minで1
~3分間均質化することによって、安定した大豆分離蛋白質のピカリング粗エマルジョン
を得る。
【0017】
粗エマルジョンに親水コロイドを添加し、8000~15000r/minで1~3分間
均質化を続けることによって、安定した大豆分離蛋白質-親水コロイドのピカリング・エ
マルジョンを得る。
【0018】
本発明に記載の高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向上させる方法の好ましい実
施態様として、ここで、大豆分離蛋白質の添加量は、添加した水相質量の1%~5%で、
磁気撹拌の回転速度が300~500r/minである。
【0019】
大豆分離蛋白質の水相分散液と植物油の混合比が質量比で2:1~4:1である。
【0020】
親水コロイドの添加量は、安定した大豆分離蛋白質のピカリング・エマルジョン質量の
0.1%~2%である。
【0021】
本発明に記載の高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を向上させる方法の好ましい
実施態様として、前記の混合・チョッピングには、以下のステップが含まれる。
【0022】
塩切り後のすり身を1000~3000r/minで1分間チョッピングし、30秒間休
止した後、同じ条件下で1分間チョッピングし続け、30秒間休止した後、同じ条件下で
1分間チョッピングし続け、合計3分間チョッピングすることによって、乳化すり身ゾル
を得る。前記乳化において、塩切り後のすり身とピカリング・エマルジョンの質量比が1
:1~3:1である。
【0023】
本発明のさらなる目的は、従来技術における欠陥を克服し、高水分乳化すり身ゲルの凍
結・融解安定性を向上させる方法によって製造された製品を提供することである。前記製
品は、4回の凍結・融解サイクルを経過した後、保水力が78.86%~85.57%で
、汁損失率が1.10%~2.20%である。
【効果】
【0024】
本発明の有益な効果
本発明は、安定的なエマルジョン・システムを構築することに基づいて、高水分乳化すり
身ゲルの凍結・融解安定性のプロセスを向上させる。一方で、設計されたピカリング・エ
マルジョン・システムは、相互に不相溶の水相と油相の再配置と安定化を実現すると共に
、大豆分離蛋白質-親水コロイドのネットワークバックボーンの形成は、水相と油相の移
動を制御する。他方で、乳化液の添加により、すり身ゲルの3次元ネットワーク構造の形
成が促進され、ゲルの束縛水の能力が向上させる。高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安
定性を向上させる好ましいプロセスを用いて、塩切り後のすり身ゾルに、安定した大豆分
離蛋白質-親水コロイドのピカリング・エマルジョンを添加し、その後混合・チョッピン
グ及び加熱成型する。4回の凍結・融解サイクルを経た後、乳化液を添加する方法で調製
した高水分乳化すり身ゲルの保水力は、直接乳化した比較群(水、植物油、大豆分離蛋白
)と比較して、3.14%~13.70%増加し、汁損失率は56.00%~78.00
%低下した。
本発明は、高水分乳化すり身ゲルに添加した水分、油脂、大豆分離蛋白質、親水コロイド
を再編成することによって、安定した乳化システムを設計・調製し、他の界面活性剤を添
加しない上で、水分と油脂の再配置を実現し、ピカリング・エマルションを構築する方法
に基づいて、高水分乳化蛋白ゲル製品の冷凍・解凍安定性を向上させる方法を提案する。
本発明に係るプロセスは簡単で、時間が短く、コストが安いため、広い応用と普及の将来
性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の実施形態の技術的解決策をより明確に説明するために、以下、実施形態の説明
で使用する必要がある添付図面を簡単に説明する。明らかに、以下の説明における添付図
面は、本発明の一部の実施形態に過ぎず、当業者であれば、創造的労力を要することなく
、これらの図面に基づいて、他の添付図面を得ることができる。
図1】本発明の実施形態におけるプロセスのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより明確かつ理解しやすくするために、以下、本発明
の具体的な実施形態について明細書の実施例と結合して詳細に説明する。
【0027】
以下の説明では、本発明を充分に理解するために多くの具体的な詳細を説明するが、本発
明は、ここに説明した以外の他の方法で実施することができる。当業者は、本発明の内容
に反することなく同様な拡張を行うことが可能であり、したがって、本発明は、以下に開
示される特定の実施形態によって制限されるものではない。
【0028】
次に、本明細書でいう「一実施形態」または「実施形態」とは、本発明の少なくとも1つ
の実施形態に含まれ得る特定の特徴、構造または特性を意味する。本明細書の異なる箇所
に現れる「一実施形態において」という言葉は、すべてが同じ実施形態を指すものではな
く、他の実施形態と相互に排他的な別個または選択的な実施形態を指すものでもない。
【0029】
実施例1
(1)解凍ステップ:冷凍のすり身を中心温度-3~2℃に解凍する。
(2)擂り潰しステップ:解凍したすり身をチョッパー・ミキサーに入れ、2000r/
minで2分間チョッピングする。
(3)塩切りステップ:擂り潰したすり身に2.5%(m/m)の塩を加え、2000r
/minで2分間チョッピングし続ける。
(4)乳化ステップ:まず、水相に4.0%(m/m)の大豆分離蛋白質を添加し、4℃
で2時間磁気撹拌することによって、大豆分離蛋白質の水相分散液を得る。その後、大豆
分離蛋白質の水相分散液を植物油と3:1(m/m)で混合し、15、000r/min
で2分間均質化することによって、安定した大豆分離蛋白質のピカリング粗エマルジョン
を得る。次に、上記粗エマルジョンに0.5%(m/m)のアルギン酸ナトリウムを加え
、15、000r/minで2分間均質化し続けることによって、安定した大豆分離蛋白
質-アルギン酸ナトリウムのピカリング・エマルジョンを得る。最後に、上記ピカリング
・エマルジョンを、塩切り後のすり身ゾル(乳化液を添加し、塩切り後のすり身とピカリ
ング・エマルジョンの質量比は1.4:1である)に添加する。
(5)混合・チョッピングステップ:上記混合物を2000r/minで3分間チョッピ
ングし続けることによって、乳化すり身ゾルを得る。
(6)加熱成型ステップ:すり身ゾルを2段式加熱成型用の特定の金型に入れ、40℃の
水浴中で30分間加熱し、その後90℃で30分間加熱することによって、熱成形した乳
化すり身ゲルを得る。本実施例のプロセスのフロー図については、図1を参照する。
【0030】
実施例2
(1)解凍ステップ:冷凍のすり身を中心温度-3~2℃に解凍する。
(2)擂り潰しステップ:解凍したすり身をチョッパー・ミキサーに入れ、2000r/
minで2分間チョッピングする。
(3)塩切りステップ:擂り潰したすり身に2.5%(m/m)の塩を加え、2000r
/minで2分間チョッピングし続ける。
(4)乳化ステップ:まず、水相に4.0%(m/m)の大豆分離蛋白質を添加し、4℃
で2時間磁気撹拌することによって、大豆分離蛋白質の水相分散液を得る。その後、大豆
分離蛋白質の水相分散液を植物油と3:1(m/m)で混合し、15、000r/min
で2分間均質化し、安定した大豆分離蛋白質のピカリング粗エマルジョンを得る。次に、
上記粗エマルジョンに1.0%(m/m)のアルギン酸ナトリウムを加え、15、000
r/minで2分間均質化し続けることによって、安定した大豆分離蛋白質-アルギン酸
ナトリウムのピカリング・エマルジョンを得る。最後に、上記ピカリング・エマルジョン
を、塩切り後のすり身ゾル(乳化液を添加し、塩切り後のすり身とピカリング・エマルジ
ョンの質量比が1.4:1である)に添加する。
(5)混合・チョッピングステップ:上記混合物を2000r/minで3分間チョッピ
ングし続けることによって、乳化すり身ゾルを得る。
(6)加熱成型ステップ:すり身ゾルを2段式加熱成型用の特定の金型に入れ、40℃の
水浴中で30分間加熱し、その後90℃で30分間加熱することによって、熱成形した乳
化すり身ゲルを得る。
【0031】
実施例3
(1)解凍ステップ:冷凍のすり身を中心温度-3~2℃に解凍する。
(2)擂り潰しステップ:解凍したすり身をチョッパー・ミキサーに入れ、2000r/
minで2分間チョッピングする。
(3)塩切りステップ:擂り潰したすり身に2.5%(m/m)の塩を加え、2000r
/minで2分間チョッピングし続ける。
(4)乳化ステップ:まず、水相に4.0%(m/m)の大豆分離蛋白質を添加し、4℃
で2時間磁気撹拌することによって、大豆分離蛋白質の水相分散液を得る。その後、大豆
分離蛋白質の水相分散液を植物油と3:1(m/m)で混合し、15、000r/min
で2分間均質化し、安定した大豆分離蛋白質のピカリング粗エマルジョンを得る。次に、
上記粗エマルジョンに1.5%(m/m)のアルギン酸ナトリウムを加え、15、000
r/minで2分間均質化し続けることによって、安定した大豆分離蛋白質-アルギン酸
ナトリウムのピカリング・エマルジョンを得る。最後に、上記ピカリング・エマルジョン
を、塩切り後のすり身ゾル(乳化液を添加し、塩切り後のすり身とピカリング・エマルジ
ョンの質量比が1.4:1である)に添加する。
(5)混合・チョッピングステップ:上記混合物を2000r/minで3分間チョッピ
ングし続けることによって、乳化すり身ゾルを得る。
(6)加熱成型ステップ:すり身ゾルを2段式加熱成型用の特定の金型に入れ、40℃の
水浴中で30分間加熱し、その後90℃で30分間加熱することによって、熱成形した乳
化すり身ゲルを得る。
【0032】
実施例4
(1)解凍ステップ:冷凍のすり身を中心温度-3~2℃に解凍する。
(2)擂り潰しステップ:解凍したすり身をチョッパー・ミキサーに入れ、2000r/
minで2分間チョッピングする。
(3)塩切りステップ:擂り潰したすり身に2.5%(m/m)の塩を加え、2000r
/minで2分間チョッピングし続ける。
(4)乳化ステップ:まず、水相に4.0%(m/m)の大豆分離蛋白質を添加し、4℃
で2時間磁気撹拌することによって、大豆分離蛋白質の水相分散液を得る。その後、大豆
分離蛋白質の水相分散液を植物油と3:1(m/m)で混合し、15、000r/min
で2分間均質化し、安定した大豆分離蛋白質のピカリング粗エマルジョンを得る。次に、
上記粗エマルジョンに0.2%(m/m)のこんにゃくグルコマンナンを加え、15、0
00r/minで2分間均質化し続けることによって、安定した大豆分離蛋白質-こんに
ゃくグルコマンナンのピカリング・エマルジョンを得る。最後に、上記ピカリング・エマ
ルジョンを、塩切り後のすり身ゾル(乳化液を添加し、塩切り後のすり身とピカリング・
エマルジョンの質量比が1.4:1である)に添加する。
(5)混合・チョッピングステップ:上記混合物を2000r/minで3分間チョッピ
ングし続けることによって、乳化すり身ゾルを得る。
(6)加熱成型ステップ:すり身ゾルを2段式加熱成型用の特定の金型に入れ、40℃の
水浴中で30分間加熱し、その後90℃で30分間加熱することによって、熱成形した乳
化すり身ゲルを得る。
【0033】
実施例5
(1)解凍ステップ:冷凍のすり身を中心温度-3~2℃に解凍する。
(2)擂り潰しステップ:解凍したすり身をチョッパー・ミキサーに入れ、2000r/
minで2分間チョッピングする。
(3)塩切りステップ:擂り潰したすり身に2.5%(m/m)の塩を加え、2000r
/minで2分間チョッピングし続ける。
(4)乳化ステップ:まず、水相に4.0%(m/m)の大豆分離蛋白質を添加し、4℃
で2時間磁気撹拌することによって、大豆分離蛋白質の水相分散液を得る。その後、大豆
分離蛋白質の水相分散液を植物油と3:1(m/m)で混合し、15、000r/min
で2分間均質化し、安定した大豆分離蛋白質のピカリング粗エマルジョンを得る。次に、
上記粗エマルジョンに0.5%(m/m)のこんにゃくグルコマンナンを加え、15、0
00r/minで2分間均質化し続けることによって、安定した大豆分離蛋白質-こんに
ゃくグルコマンナンのピカリング・エマルジョンを得る。最後に、上記ピカリング・エマ
ルジョンを、塩切り後のすり身ゾル(乳化液を添加し、塩切り後のすり身とピカリング・
エマルジョンの質量比が1.4:1である)に添加する。
(5)混合・チョッピングステップ:上記混合物を2000r/minで3分間チョッピ
ングし続けることによって、乳化すり身ゾルを得る。
(6)加熱成型ステップ:すり身ゾルを2段式加熱成型用の特定の金型に入れ、40℃の
水浴中で30分間加熱し、その後90℃で30分間加熱することによって、熱成形した乳
化すり身ゲルを得る。
【0034】
実施例6
(1)解凍ステップ:冷凍のすり身を中心温度-3~2℃に解凍する。
(2)擂り潰しステップ:解凍したすり身をチョッパー・ミキサーに入れ、2000r/
minで2分間チョッピングする。
(3)塩切りステップ:擂り潰したすり身に2.5%(m/m)の塩を加え、2000r
/minで2分間チョッピングし続ける。
(4)乳化ステップ:まず、水相に4.0%(m/m)の大豆分離蛋白質を添加し、4℃
で2時間磁気撹拌することによって、大豆分離蛋白質の水相分散液を得る。その後、大豆
分離蛋白質の水相分散液を植物油と3:1(m/m)で混合し、15、000r/min
で2分間均質化し、安定した大豆分離蛋白質のピカリング粗エマルジョンを得る。次に、
上記粗エマルジョンに1.0%(m/m)のこんにゃくグルコマンナンを加え、15、0
00r/minで2分間均質化し続けることによって、安定した大豆分離蛋白質-こんに
ゃくグルコマンナンのピカリング・エマルジョンを得る。最後に、上記ピカリング・エマ
ルジョンを、塩切り後のすり身ゾル(乳化液を添加し、塩切り後のすり身とピカリング・
エマルジョンの質量比が1.4:1である)に添加する。
(5)混合・チョッピングステップ:上記混合物を2000r/minで3分間チョッピ
ングし続けることによって、乳化すり身ゾルを得る。
(6)加熱成型ステップ:すり身ゾルを2段式加熱成型用の特定の金型に入れ、40℃の
水浴中で30分間加熱し、その後90℃で30分間加熱することによって、熱成形した乳
化すり身ゲルを得る。
【0035】
比較例1
(1)解凍ステップ:冷凍のすり身を中心温度-3~2℃に解凍する。
(2)擂り潰しステップ:解凍したすり身をチョッパー・ミキサーに入れ、2000r/
minで2分間チョッピングする。
(3)塩切りステップ:擂り潰したすり身に2.5%(m/m)の塩を加え、2000r
/minで2分間チョッピングし続ける。
(4)乳化ステップ:塩切りしたすり身ゾルに、水、10.0%(m/m)の植物油及び
4.0%(m/m)の大豆分離蛋白質を直接加える(直接乳化)。
(5)混合・チョッピングステップ:上記混合物を2000r/minで3分間チョッピ
ングし続けることによって、乳化すり身ゾルを得る。
(6)加熱成型ステップ:すり身ゾルを2段式加熱成型用の特定の金型に入れ、40℃の
水浴中で30分間加熱し、その後90℃で30分間加熱することによって、熱成形した乳
化すり身ゲルを得る。
【0036】
比較例2
(1)解凍ステップ:冷凍のすり身を中心温度-3~2℃に解凍する。
(2)擂り潰しステップ:解凍したすり身をチョッパー・ミキサーに入れ、2000r/
minで2分間チョッピングする。
(3)塩切りステップ:擂り潰したすり身に2.5%(m/m)の塩を加え、2000r
/minで2分間チョッピングし続ける。
(4)乳化ステップ:塩切りしたすり身ゾルに、水、10.0%(m/m)の植物油、4
.0%(m/m)の大豆分離蛋白質及び1.0%(m/m)のアルギン酸ナトリウムを直
接加える(直接乳化)。
(5)混合・チョッピングステップ:上記混合物を2000r/minで3分間チョッピ
ングし続けることによって、乳化すり身ゾルを得る。
(6)加熱成型ステップ:すり身ゾルを2段式加熱成型用の特定の金型に入れ、40℃の
水浴中で30分間加熱し、その後90℃で30分間加熱することによって、熱成形した乳
化すり身ゲルを得る。
【0037】
比較例3
(1)解凍ステップ:冷凍のすり身を中心温度-3~2℃に解凍する。
(2)擂り潰しステップ:解凍したすり身をチョッパー・ミキサーに入れ、2000r/
minで2分間チョッピングする。
(3)塩切りステップ:擂り潰したすり身に2.5%(m/m)の塩を加え、2000r
/minで2分間チョッピングし続ける。
(4)乳化ステップ:塩切りしたすり身ゾルに、水、10.0%(m/m)の植物油、4
.0%(m/m)の大豆分離蛋白質及び1.0%(m/m)のこんにゃくグルコマンナン
を直接加える(直接乳化)。
(5)混合・チョッピングステップ:上記混合物を2000r/minで3分間チョッピ
ングし続けることによって、乳化すり身ゾルを得る。
(6)加熱成型ステップ:すり身ゾルを2段式加熱成型用の特定の金型に入れ、40℃の
水浴中で30分間加熱し、その後90℃で30分間加熱することによって、熱成形した乳
化すり身ゲルを得る。
【0038】
比較例4
(1)解凍ステップ:冷凍のすり身を中心温度-3~2℃に解凍する。
(2)擂り潰しステップ:解凍したすり身をチョッパー・ミキサーに入れ、2000r/
minで2分間チョッピングする。
(3)塩切りステップ:擂り潰したすり身に2.5%(m/m)の塩を加え、2000r
/minで2分間チョッピングし続ける。
(4)乳化ステップ:まず、水相に4.0%(m/m)の大豆分離蛋白質を添加し、4℃
で2時間磁気撹拌することによって、大豆分離蛋白質の水相分散液を得る。その後、大豆
分離蛋白質の水相分散液を植物油と3:1(m/m)で混合し、15、000r/min
で2分間均質化し、安定した大豆分離蛋白質のピカリング粗エマルジョンを得る。次に、
上記粗エマルジョンに0.5%(m/m)のカードランガムを加え、15、000r/m
inで2分間均質化し続けることによって、安定した大豆分離蛋白質-カードランガムの
ピカリング・エマルジョンを得る。最後に、上記ピカリング・エマルジョンを、塩切り後
のすり身ゾル(乳化液を添加し、塩切り後のすり身とピカリング・エマルジョンの質量比
が1.4:1である)に添加する。
(5)混合・チョッピングステップ:上記混合物を2000r/minで3分間チョッピ
ングし続けることによって、乳化すり身ゾルを得る。
(6)加熱成型ステップ:すり身ゾルを2段式加熱成型用の特定の金型に入れ、40℃の
水浴中で30分間加熱し、その後90℃で30分間加熱することによって、熱成形した乳
化すり身ゲルを得る。
【0039】
まず、実施例1~6と比較例1~4で調製したすり身ゲルを凍結・融解実験を行った。
-18℃の冷蔵庫で24時間凍結保存し、その後4℃で24時間融解、すなわち1回目の
凍結・融解を行う。すべてのすり身ゲルは、合計0、2及び4回の凍結・融解サイクルに
かけられる。
【0040】
一定質量のすり身ゲルのサンプルを計量し、Wgとして記録する。サンプルを2層のろ
紙で包み、50mLの遠心分離管に入れ、5000rpmで10分間遠心分離を行った。
遠心分離が終了すると、サンプルの質量を秤量し、Wgとして記録する。保水力は、以
下の式:
保水力(%)=W/W×100に従って算出する。
【0041】
高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解サイクルを変えた場合の保水力の結果を表1に示す。
【0042】
実施例1~6と比較例1~4(比較群)のすり身ゲルの保水力に対してテストする。
【0043】
[表1]高水分乳化すり身ゲルの保水力に及ぼす凍結・融解サイクルの影響

【0044】
表1に示すように、凍結・融解していない比較例1での保水力は83.02%であり、実
施例1~6での保水力は83.08%~88.28%であった。実施例の保水力はいずれ
も比較例1より高く、特に実施例3及び実施例6では、保水力が88.28%及び87.
51%に達し、これは、安定した大豆分離蛋白質-アルギン酸ナトリウム/こんにゃくグ
ルコマンナンのピカリング・エマルションの添加により、未凍結・融解ゲルの保水力が向
上されたことを示している。2回及び4回の凍結・融解を経た後、比較例1での保水力は
77.55%及び75.26%に急激に低下し、これは、凍結・融解の処理により、この
グループのゲルの微細構造が著しく破壊され、保水力の低下を招いたことを示している。
比較的に、実施例1~6では、4回の凍結・融解処理しても保水力が78.86%~85
.57%に維持することができる。この結果は、直接乳化した場合と比較して、ピカリン
グ・エマルションを添加した乳化方式では、凍結・融解過程でのサンプルの保水力を効果
的に向上させることを示している。同時に、実施例1~6において、4回の凍結・融解さ
れた後の保水力は、いずれも比較例4の保水力より高く、これは、安定した大豆分離蛋白
質-アルギン酸ナトリウム/こんにゃくグルコマンナンのピカリング・エマルジョンによ
り、ゲルの凍結・融解安定性が著しく向上できることを実証する。また、4回の凍結・融
解を経た後、実施例2及び実施例6での保水力は85.57%及び81.27%で、それ
ぞれ比較例2及び比較例3での保水力より高く、親水コロイドの添加による影響を排除し
、保水量は、ピカリング・エマルジョンの添加により、高水分乳化すり身ゲルの凍結・融
解安定性を有意に向上させることをさらに実証する。これは、一方で、安定した大豆分離
蛋白質-親水コロイドのピコリン・エマルジョン系による水相と油相の移動を抑制するこ
とに起因する可能性があり、他の一方、この乳化液の添加により、すり身ゲルの3次元ネ
ットワーク構造の形成が促進され、凍結・融解過程にゲルの束縛水能力が向上したことに
も起因する可能性がある。
【0045】
実施例1~6のと比較例1~4(比較群)のすり身ゲルに対する汁損失のテスト
まず、実施例1~6と比較例1~4で調製したすり身ゲルに対して凍結・融解実験を行っ
た。-18℃の冷凍庫に24時間入れ凍結貯蔵し、その後4℃で24時間解凍、すなわち
1回目の凍結・融解を行う。すべてのすり身ゲルは、合計0、2及び4回の凍結・融解サ
イクルにかけられた。
【0046】
凍結・融解していないすり身ゲルのサンプルを秤量し、Wgとして記録する。2回及び
4回の凍結・融解サイクルを経た後、サンプルの表面をろ紙で拭き取り、サンプルの質量
をWgとして記録する。汁損失率は、以下の式:
汁損失率(%)=(W-W)/W×100%に従って算出する。
【0047】
凍結・融解サイクルを変えた場合の高水分乳化すり身ゲルの汁損失率の結果を表1に示し
ている。
【0048】
[表2]高水分乳化すり身ゲルの汁損失率に及ぼす凍結・融解サイクルの影響

【0049】
汁損失率は、高水分乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性を評価する重要な指標であり、製
品の品質と消費者の受容度に直接影響する。表2に示すように、比較例1では、2回と4
回の凍結・融解サイクルを経た後に汁損失率が3.95%と5.00%に達した。しかし
、実施例1~6のサンプルでは、4回の凍結・融解サイクルを経た後、汁損失率がわずか
1.10%~2.20%であった。ピカリング・エマルジョンの形態で水と油脂を加える
ことにより、乳化すり身ゲルの汁損失率(56.0%~78.0%)は、比較群に比べて
有意に低下した。また、比較例4のサンプルでは、4回の凍結・融解サイクルを経た後、
汁損失率は4.12%に達し、実施例1~6のサンプルの汁損失率より有意に高く、これ
は、安定した大豆分離蛋白質-アルギン酸ナトリウム/こんにゃくグルコマンナンのピカ
リング・エマルションにより、サンプルの凍結・融解安定性が向上される独自性を示して
いる。また、比較例2及び3と比較して、実施例2と6の汁損失率の結果は、ピカリング
・エマルションの添加により、乳化すり身ゲルの凍結・融解安定性が著しく向上されるこ
とをさらに実証する。
【0050】
まとめると、以上の結果は、安定した大豆分離蛋白質-アルギン酸ナトリウム/こんに
ゃくグルコマンナンのピコリン・エマルジョンにより、高水分乳化すり身ゲルの水分と油
脂を安定化させるだけでなく、凍結・融解過程におけるこのサンプルの凍結・融解劣化を
抑制し、汁の損失を低減することが実証された。本発明は、高水分乳化ゲル配合に添加さ
れる成分(水、油脂、大豆分離蛋白質及び親水コロイド)に基づいて、再構成と設計を行
い、いかなる界面活性剤を追加することなく、ピカリング・エマルジョンの形態で凍結・
融解安定性の高い高水分乳化すり身ゲルを製造することができ、プロセスが簡単で、時間
が短く、コストが安くて、広い応用と普及の将来性を有する。
【0051】
上記の実施形態は、本発明の技術的解決策を例示するためのものであって、それを限定
するものではないことに留意すべきである。本発明は、好ましい実施形態を参照して詳細
に説明されるが、当業者は、本発明の技術的解決策の精神及び範囲から逸脱することなく
、本発明に対して行った変更または均等の置換を行うことができ、これらは、いずれも本
発明の特許請求範囲によってカバーされることが理解されるべきである。
図1