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特許7421027カンナビノイドナノミセル製剤及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】カンナビノイドナノミセル製剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20240117BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240117BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240117BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240117BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240117BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240117BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20240117BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A61K31/05
A61K9/14
A61K9/51
A61K47/34
A61K47/10
A61K47/32
A61K47/26
A61K47/40
A61K47/18
A61K47/14
A61K47/02
A61K9/19
A61K9/20
A61K9/02
A61K9/72
A61K9/70 401
A61K47/22
A61P25/20
A61P25/04
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022530142
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 CN2020128307
(87)【国際公開番号】W WO2021109823
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】201911243459.3
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520055124
【氏名又は名称】漢義生物科技(北京)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】譚▲しん▼
(72)【発明者】
【氏名】王曙賓
(72)【発明者】
【氏名】範徳凱
(72)【発明者】
【氏名】孫武興
(72)【発明者】
【氏名】▲しぃん▼俊波
(72)【発明者】
【氏名】張旭然
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-532940(JP,A)
【文献】特表2008-519806(JP,A)
【文献】特表2010-506886(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183011(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/05
A61K 9/14
A61K 9/51
A61K 47/34
A61K 47/10
A61K 47/32
A61K 47/26
A61K 47/40
A61K 47/18
A61K 47/14
A61K 47/02
A61K 9/19
A61K 9/20
A61K 9/02
A61K 9/72
A61K 9/70
A61K 47/22
A61P 25/20
A61P 25/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンナビノイドナノミセル製剤の製造方法であって、
前記カンナビノイドナノミセル製剤は、カンナビノイドと、両親媒性高分子とを含み、前
記カンナビノイドの含有量は1~40重量%であり、前記両親媒性高分子の含有量は1~
99%であり、前記製造方法は、
カンナビノイドと両親媒性高分子を用いてカンナビノイドナノミセル溶液を製造するステ
ップ(1)と、
ステップ(1)で得られたミセル溶液を希釈して乾燥させ、カンナビノイドナノミセル粉
末を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られたカンナビノイドナノミセル粉末を用いてカンナビノイドナノミ
セル製剤を製造するステップ(3)とを含み、
前記両親媒性高分子は、コハク酸ビタミンEポリエチレングリコール、両親媒性ポリウレ
タン、ポロキサマー、ポリ乳酸-ポリエチレングリコール-ポリ乳酸トリブロック共重合
体、ポリエチレングリコール-ポリアクリル酸ブロック共重合体、ポリエチレングリコー
ル-ポリアスパラギン酸ブロック共重合体、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸グリコー
ル酸ブロック共重合体、ポリエチレングリコール-ポリカプロラクトンブロック共重合体
、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸ブロック共重合体、及びポリエチレングリコール-
ポリスチレンブロック共重合体から選ばれ、
ステップ(2)に記載の乾燥は噴霧凍結乾燥である、製造方法。
【請求項2】
前記カンナビノイドは、CBD、CBDV、CBG、CBC、CBN、CBDB、CBE
、CBL、及びCBNDの純品から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、又は

前記カンナビノイドは、大麻抽出物であり、CBD、CBDV、CBG、CBC、CBN
、CBDB、CBE、CBL、及びCBNDのうちの1種又は2種以上の組み合わせを含
む、ことを特徴とする請求項1に記載のカンナビノイドナノミセル製剤の製造方法。
【請求項3】
前記コハク酸ビタミンEポリエチレングリコールは、TPGS200、238、400、
600、1000、2000、3400、3500、4000、6000から選ばれる1
種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載のカンナビノイドナノミセル製剤
の製造方法。
【請求項4】
前記両親媒性ポリウレタンは、ポリエチレングリコールセグメントとジイソシアネートを
含む原料とを交互共重合したものであり、前記両親媒性ポリウレタンの数平均分子量は1
000~50000であり、前記ポリエチレングリコールセグメントの数平均分子量は2
00~12000であり、前記ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、
トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、
シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシ
アネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネートから選ばれる、ことを特徴とする請
求項1に記載のカンナビノイドナノミセル製剤の製造方法。
【請求項5】
前記ポロキサマーは、ポロキサマー188、338、407、124、215、及び23
7から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、
前記ポリ乳酸-ポリエチレングリコール-ポリ乳酸トリブロック共重合体において、ポリ
エチレングリコール部分の数平均分子量は200~12000であり、ブロック比はPE
G:LA=1:5~50であり、
前記ポリエチレングリコール-ポリアクリル酸ブロック共重合体、ポリエチレングリコー
ル-ポリアスパラギン酸ブロック共重合体、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸グリコー
ル酸ブロック共重合体、ポリエチレングリコール-ポリカプロラクトンブロック共重合体
、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸ブロック共重合体、ポリエチレングリコール-ポリ
スチレンブロック共重合体の数平均分子量は500~50000であり、ポリエチレング
リコールはポリエチレングリコールモノメチルエーテルであり、ポリエチレングリコール
部分の数平均分子量は200~12000である、ことを特徴とする請求項1に記載のカ
ンナビノイドナノミセル製剤の製造方法。
【請求項6】
薬学的に許容できる凍結乾燥保護剤をさらに含み、前記凍結乾燥保護剤の含有量は1~1
0%であり、前記凍結乾燥保護剤は、乳糖、マンニトール、ソルビトール、シクロデキス
トリン、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン、EDTA-2Na、トレハロース、
グルコース、キシリトール、及びマルトースから選ばれる1種又は複数種である、ことを
特徴とする請求項1に記載のカンナビノイドナノミセル製剤の製造方法。
【請求項7】
pH調整剤をさらに含み、前記pH調整剤の含有量は0.01~10%であり、前記pH
調整剤は、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナト
リウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、塩酸、乳酸、及び水酸化ナト
リウムから選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項6に記載のカンナビ
ノイドナノミセル製剤の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(1)は、
前記カンナビノイドナノミセル製剤の原料成分を溶媒に加えて膨潤させるステップ(1-
1)と、
ステップ(1-1)で得られた混合物を高速せん断分散乳化機でせん断し、乳液を得るス
テップ(1-2)と、
ステップ(1-2)で得られた乳液を撹拌して、澄明なナノミセル溶液を得るステップ(
1-3)とを含む、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のカンナビノイ
ドナノミセル製剤の製造方法。
【請求項9】
ステップ(1-1)では、前記溶媒と原料成分との質量比は2~10:1であり、
ステップ(1-1)では、前記膨潤時間は0.1~2時間であり、
ステップ(1-2)では、前記せん断時間は1~30分間であり、
ステップ(1-3)では、前記撹拌温度は15~35℃である、ことを特徴とする請求項
8に記載のカンナビノイドナノミセル製剤の製造方法。
【請求項10】
前記カンナビノイドナノミセル溶液の粒子径が1~500nmである、ことを特徴とする
請求項8に記載のカンナビノイドナノミセル製剤の製造方法。
【請求項11】
ステップ(2)において、前記希釈倍数が2~100倍である、ことを特徴とする請求項
1~7のいずれか1項に記載のカンナビノイドナノミセル製剤の製造方法。
【請求項12】
ステップ(2)に記載の乾燥は噴霧凍結乾燥であり、噴霧方式は、空気圧噴霧、圧力噴霧
、遠心噴霧、超音波噴霧から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせである、ことを特徴
とする請求項1~7のいずれか1項に記載のカンナビノイドナノミセル製剤の製造方法。
【請求項13】
固体製剤又は半固体製剤である、ことを特徴とする請求項1に記載のカンナビノイドナノ
ミセル製剤の製造方法。
【請求項14】
前記製剤は吸入製剤である、ことを特徴とする請求項1に記載のカンナビノイドナノミセ
ル製剤の製造方法。
【請求項15】
前記製剤は乾燥粉末吸入製剤である、ことを特徴とする請求項14に記載のカンナビノイ
ドナノミセル製剤の製造方法。
【請求項16】
前記噴霧凍結乾燥は、噴霧、凍結及び乾燥のステップを含み、
前記噴霧方式は、空気圧噴霧、圧力噴霧、遠心噴霧、超音波噴霧から選ばれる1種又は2
種以上の組み合わせであり、
前記凍結温度は-10~-50℃であり、
前記乾燥ステップにおいて、真空度は40Pa以下、乾燥温度は10~35℃である、こ
とを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬製剤の技術分野に関し、具体的には、カンナビノイドナノミセル製剤及び
その製造方法、特にカンナビノイドナノミセル固体製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーミセルは、ブロック共重合体が水溶液にて自己集合してなるシェルコア型のナノ
顆粒である。疎水性薬物は疎水性コアに包埋され、親水性セグメントからなるシェルは水
和層のバリアを形成し、ミセルに安定性を持たせる。その両親媒性とは、親水性ブロック
と疎水性ブロックによって達成されることである。親水性ブロックは、ポリエチレングリ
コール(PEG)、ポリオキシエチレン(PEO)及びポリビニルピロリドン(PVP)
を含み、疎水性ブロックは、ポリプロピレン、ポリアミノ酸やポリ乳酸などを含む。ポリ
マーミセルは、両親媒性ブロック共重合体、トリブロック共重合体、架橋共重合体及びグ
ラフト共重合体に分けられる。ポリマーミセル溶液はほとんど10~100ナノの透明溶
液であり、100ナノよりも大きい溶液は透明ではなく、乳状又は懸濁状のものである。
薬剤学の分野では、サイズが1~1000nmの薬物担持粒子又は薬物ナノ結晶はナノ薬
物と呼ばれる。
【0003】
ポリマーナノミセルによる薬物担持には以下の複数の利点がある。1、薬物担持量が高く
、難溶性原料の水への溶解度が大幅に向上する。2、原料の化学構造を変更せずに可溶化
することができる。3、薬物の徐放、制御放出、生体内での長時間の安定した血中濃度が
可能である。4、経口投与の場合の薬物の吸収を促進する。5、標的化作用を有し、粒子
径が小さいため、透過性の低い腫瘍への透過に有利である。6、低いCMC(臨界ミセル
濃度)により、血液で希釈された場合のミセル構造の維持に有利である。
【0004】
ナノミセル製剤は通常液体経口製剤であり、特にカンナビノイド及び単量体製剤の分野で
は、固体状製剤がほぼなく、例えば特許WO2019008178A1にカンナビノイド
ミセル液体製剤が記載されている。
【0005】
カンナビノイドは脂溶性物質で、ほぼ水に不溶であり、製剤分野へのその発展が大幅に制
限される。大麻製剤はほとんど油溶液であるので、服用しにくく、安定性が劣り、吸収生
物学的利用能が低い。カンナビノイドの水溶液製剤にはナノエマルジョン、ナノカプセル
、ナノスフェア、シクロデキストリン包接物などが含まれており、薬物担持量が一般的に
低く、約0~3%程度であり、水液での安定性が悪く、胃液での安定性が悪い。
【発明の概要】
【0006】
従来技術の欠点を解決するために、本発明は、カンナビノイドナノミセル製剤及びその製
造方法を提供する。
【0007】
具体的には、上記のカンナビノイドナノミセル製剤は、カンナビノイドと、両親媒性高分
子と、必要に応じて、薬学的に許容できる凍結乾燥保護剤、pH調整剤とを含み、
カンナビノイドと両親媒性高分子を用いてカンナビノイドナノミセル溶液を製造するステ
ップ(1)と、
ステップ(1)で得られたミセル溶液を希釈して乾燥させ、カンナビノイドナノミセル粉
末を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られたカンナビノイドナノミセル粉末を用いてカンナビノイドナノミ
セル製剤を製造するステップ(3)とを含む方法で製造される。
【0008】
具体的には、上記のカンナビノイドナノミセル製剤において、カンナビノイドの含有量は
1~40重量%(具体的には、例えば1%、5%、10%、15%、20%、25%、3
0%、35%、40%)である。
【0009】
具体的には、上記のカンナビノイドナノミセル製剤において、両親媒性高分子の含有量は
1~99%(具体的には、例えば1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%
、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%
、85%、90%、95%、99%)である。
【0010】
本発明の一実施形態では、上記のカンナビノイドは、CBD、CBDV、CBG、CBC
、CBN、CBDB、CBE、CBL、及びCBNDの純品から選ばれる1種又は2種以
上の組み合わせであり、植物抽出類のカンナビノイド又は合成類のカンナビノイドであっ
てもよいが、好ましくは植物抽出類のカンナビノイドである。
【0011】
本発明の別の実施形態では、上記のカンナビノイドは、大麻抽出物であり、CBD、CB
DV、CBG、CBC、CBN、CBDB、CBE、CBL、及びCBNDのうちの1種
又は2種以上の組み合わせを含む。
【0012】
本発明の一実施例では、上記のカンナビノイドはCBDである。
【0013】
本発明の一実施形態では、上記の両親媒性高分子はコハク酸ビタミンEポリエチレングリ
コール(TPGS)である。
【0014】
具体的には、上記のTPGSは、TPGS200、238、400、600、1000、
2000、3400、3500、4000、6000から選ばれる1種又は複数種であり
、本発明の一実施例では、上記のTPGSはTPGS1000である。
【0015】
本発明の一実施形態では、上記の両親媒性高分子は両親媒性ポリウレタンである。
【0016】
具体的には、上記の両親媒性ポリウレタンは、親水性セグメントとジイソシアネートなど
とを交互共重合した交互共重合体であり、ここで、親水性セグメントはポリエチレングリ
コール、ポリオキシエチレンなどとしてもよく、ジイソシアネートは脂肪族又は脂環式ジ
イソシアネート、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチル-1,6-
ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジメチ
レンジイソシアネート、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シク
ロヘキサンジイソシアネートなどとしてもよい。
【0017】
具体的には、上記の両親媒性ポリウレタンの数平均分子量は1000~50000(具体
的には、例えば1000、2000、3000、4000、5000、6000、800
0、10000、12000、14000、16000、18000、20000、22
000、24000、26000、28000、30000、32000、34000、
36000、38000、40000、42000、44000、46000、4800
0、50000)である。
【0018】
本発明の一実施例では、上記の両親媒性ポリウレタン中の親水性セグメントはポリエチレ
ングリコールであり、ポリエチレングリコールセグメントの数平均分子量は200~12
000(具体的には、例えば200、400、500、600、750、1000、20
00、4000、5000、6000、8000、10000、12000)であっても
よく、本発明の一実施形態では、ポリエチレングリコールセグメントの数平均分子量は6
00~6000であってもよく、本発明の一実施例では、ポリエチレングリコールセグメ
ントの数平均分子量は1000又は1500である。
【0019】
本発明の一実施形態では、上記の両親媒性高分子は、2種以上のポリマーからなるブロッ
クポリマーである両親媒性高分子ブロック共重合体であり、その親水性部分はポリエチレ
ングリコール、ポリオキシエチレン、ポビドンなどとしてもよく、その疎水性部分はポリ
オキシプロピレン、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリカプロラクトン、ポリアミノ酸、ポリ
乳酸グリコール酸、ポリアクリル酸などとしてもよく、例えば、ポロキサマー(PEO-
PPO-PEO、Poloxamer)、ポリ乳酸-ポリエチレングリコール-ポリ乳酸
トリブロック共重合体(PLA-PEG-PLA)、ポリエチレングリコール-ポリアク
リル酸ブロック共重合体(PEG-PAA)、ポリエチレングリコール-ポリアスパラギ
ン酸ブロック共重合体(PEG-PASP)、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸グリコ
ール酸ブロック共重合体(PEG-PLAG)、ポリエチレングリコール-ポリカプロラ
クトンブロック共重合体(PEG-PCL)、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸ブロッ
ク共重合体(PEG-PLA/PTX)、ポリエチレングリコール-ポリスチレンブロッ
ク共重合体(PEG-b-PS)などのうちの1種又は2種以上の組み合わせが挙げられ
る。
【0020】
具体的には、上記のポロキサマーは、ポロキサマー188、338、407、124、2
15、237などから選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、本発明の一実施例
では、上記のポロキサマーはポロキサマー188又はポロキサマー338である。
【0021】
具体的には、上記のポリ乳酸-ポリエチレングリコール-ポリ乳酸トリブロック共重合体
において、ポリエチレングリコール部分の数平均分子量は200~12000(具体的に
は、例えば200、400、500、600、750、1000、2000、4000、
5000、6000、8000、10000、12000)であってもよく、本発明の一
実施形態では、ポリエチレングリコール部分の数平均分子量は1000~6000であっ
てもよく、本発明の一実施例では、ポリエチレングリコール部分の数平均分子量は100
0又は2000であり、ブロック比はPEG:LA=1:5~50(モル比)(具体的に
は、例えば1:5、1:10、1:12、1:15、1:20、1:25、1:30、1
:40、1:50)であり、本発明の一実施例では、ブロック比はPEG:LA=1:1
0又は1:20である。
【0022】
具体的には、上記のポリエチレングリコール-ポリアクリル酸ブロック共重合体、ポリエ
チレングリコール-ポリアスパラギン酸ブロック共重合体、ポリエチレングリコール-ポ
リ乳酸グリコール酸ブロック共重合体、ポリエチレングリコール-ポリカプロラクトンブ
ロック共重合体、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸ブロック共重合体、ポリエチレング
リコール-ポリスチレンブロック共重合体の数平均分子量は500~50000(具体的
には、例えば500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、
8000、10000、12000、14000、16000、18000、20000
、22000、24000、26000、28000、30000、32000、340
00、36000、38000、40000、42000、44000、46000、4
8000、50000)であり、ここで、ポリエチレングリコールはポリエチレングリコ
ールモノメチルエーテルであり、ポリエチレングリコール部分の数平均分子量は200~
12000(具体的には、例えば200、400、500、600、750、1000、
2000、4000、5000、6000、8000、10000、12000)であっ
てもよく、本発明の一実施形態では、ポリエチレングリコール部分の数平均分子量は10
00~6000であってもよく、本発明の一実施例では、ポリエチレングリコール部分の
数平均分子量は1000、2000又は5000である。
【0023】
本発明の一実施形態では、上記のカンナビノイドナノミセル製剤は、薬学的に許容できる
凍結乾燥保護剤をさらに含む。
【0024】
具体的には、上記のカンナビノイドナノミセル製剤において、凍結乾燥保護剤の含有量は
1~10%(具体的には、例えば1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9
%、10%)である。
【0025】
具体的には、上記の凍結乾燥保護剤は、乳糖、マンニトール、ソルビトール、シクロデキ
ストリン、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン、EDTA-2Na、トレハロース
、グルコース、キシリトール、マルトースから選ばれる1種又は複数種であり、
本発明の一実施形態では、上記のカンナビノイドナノミセル製剤はpH調整剤をさらに含
む。
【0026】
具体的には、上記のカンナビノイドナノミセル製剤において、pH調整剤の含有量は0.
01~10%(具体的には、例えば0.01%、0.05%、0.1%、0.2%、0.
3%、0.4%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、
10%)である。
【0027】
具体的には、上記のpH調整剤は、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナト
リウム、酢酸、酢酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、塩酸
、乳酸、水酸化ナトリウムから選ばれる1種又は複数種である。
【0028】
本発明の一実施形態では、上記のステップ(1)は、
上記のカンナビノイドナノミセル製剤の原料成分を溶媒に加えて膨潤させるステップ(1
-1)と、
ステップ(1-1)で得られた混合物を高速せん断分散乳化機でせん断し、乳液を得るス
テップ(1-2)と、
ステップ(1-2)で得られた乳液を撹拌して、澄明なナノミセル溶液を得るステップ(
1-3)とを含む。
【0029】
本発明の一実施例では、ステップ(1-1)において、溶媒は水、例えば注射用水である
【0030】
具体的には、ステップ(1-1)において、溶媒の使用量は、原料成分の2~10倍(質
量比、具体的には、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10倍)である。
【0031】
具体的には、ステップ(1-1)において、膨潤時間は0.1~2時間(具体的には、例
えば0.1、0.5、1、1.5、2時間)である。
【0032】
具体的には、ステップ(1-2)において、せん断時間は1~30分間(具体的には、例
えば1、5、10、15、20、25、30分間)である。
【0033】
具体的には、ステップ(1-3)において、撹拌温度は15~35℃(具体的には、例え
ば15、20、25、30、35℃)、撹拌時間は1~48時間(具体的には、例えば1
、6、12、24、36、48時間)である。
【0034】
具体的には、上記のカンナビノイドナノミセル溶液の粒子径が1~500nm(具体的に
は、例えば1、10、50、100、150、200、250、300、350、400
、450、500nm)である。
【0035】
具体的には、ステップ(2)において、希釈に使用される溶媒は水、特に注射用水である
【0036】
具体的には、ステップ(2)において、希釈倍数は2~100倍(具体的には、例えば2
、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100倍)である。
【0037】
具体的には、ステップ(2)における乾燥は、噴霧凍結乾燥又は凍結乾燥である。
【0038】
具体的には、上記の噴霧凍結乾燥は、噴霧、凍結、及び乾燥ステップを含み、噴霧方式は
、空気圧噴霧、圧力噴霧、遠心噴霧、超音波噴霧から選ばれる1種又は2種以上の組み合
わせであり、凍結温度は-10~-50℃(具体的には、例えば-10、-15、-20
、-25、-30、-35、-40、-45、-50℃)であり、乾燥ステップにおいて
、真空度は40Pa以下(具体的には、例えば40、30、20、10Pa)、乾燥温度
は10~35℃(具体的には、例えば10、15、20、25、30、35℃)である。
【0039】
具体的には、上記の凍結乾燥は、予備凍結、昇華乾燥、及び真空乾燥のステップを含み、
予備凍結温度は-30~-50℃(具体的には、例えば-30、-35、-40、-45
、-50℃)、予備凍結時間は0.5~3h(具体的には、例えば0.5、1、2、3h
)であり、予備凍結ステップにおいて、真空度は1~100Pa(1、10、20、30
、40、50、60、80、100Pa)に制御され、昇華乾燥温度は-20~10℃(
具体的には、例えば-20、-10、-5、0、5、10℃)であり、昇華乾燥時間は1
~36h(具体的には、例えば1、6、12、18、24、30、36h)であり、真空
乾燥温度は10℃~30℃(具体的には、例えば10、15、20、25、30℃)であ
り、真空乾燥時間は1~24h(具体的には、例えば1、6、12、18、24h)であ
る。
【0040】
具体的には、上記のカンナビノイドナノミセル製剤は固体製剤又は半固体製剤である。
【0041】
本発明の一実施形態では、上記のカンナビノイドナノミセル製剤は、経口製剤、例えば発
泡錠、徐放錠、高速崩壊錠、滴丸剤などである。
【0042】
本発明の別の実施形態では、上記のカンナビノイドナノミセル製剤は、粘膜投与製剤、例
えば坐剤などである。
【0043】
本発明の別の実施形態では、上記のカンナビノイドナノミセル製剤は、吸入製剤、例えば
乾燥粉末吸入剤などである。
【0044】
本発明の別の実施形態では、上記のカンナビノイドナノミセル製剤は、経皮投与製剤、例
えばゲルパッチ剤などである。
【0045】
本発明の一実施例では、上記のカンナビノイドナノミセル製剤は、粒子径1~5μm(具
体的には、例えば1、2、3、4、5μm)の吸入剤であり、上記のステップ(2)にお
ける乾燥は噴霧凍結乾燥である。
【0046】
本発明の別の実施例では、上記のカンナビノイドナノミセル製剤は、発泡錠、徐放錠、高
速崩壊錠、滴丸剤、坐剤又はゲルパッチ剤であり、上記のステップ(2)における乾燥は
凍結乾燥である。
【0047】
本発明で提供されるカンナビノイドナノミセル製剤の製造方法は、
カンナビノイドと両親媒性高分子を用いてカンナビノイドナノミセル溶液を製造するステ
ップ(1)と、
ステップ(1)で得られたミセル溶液を希釈して乾燥させ、カンナビノイドナノミセル粉
末を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られたカンナビノイドナノミセル粉末を用いてカンナビノイドナノミ
セル製剤を製造するステップ(3)とを含む。
【0048】
本発明の一実施形態では、上記のステップ(1)は、
上記のカンナビノイドナノミセル製剤の原料成分を溶媒に加えて膨潤させるステップ(1
-1)と、
ステップ(1-1)で得られた混合物を高速せん断分散乳化機でせん断し、乳液を得るス
テップ(1-2)と、
ステップ(1-2)で得られた乳液を撹拌して、澄明なナノミセル溶液を得るステップ(
1-3)とを含む。
【0049】
本発明の一実施例では、ステップ(1-1)において、溶媒は、水、例えば注射用水であ
る。
【0050】
具体的には、ステップ(1-1)において、溶媒の使用量は原料成分の2~10倍(質量
比、具体的には、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10倍)である。
【0051】
具体的には、ステップ(1-1)において、膨潤時間は0.1~2時間(具体的には、例
えば0.1、0.5、1、1.5、2時間)である。
【0052】
具体的には、ステップ(1-2)において、せん断時間は1~30分間(具体的には、例
えば1、5、10、15、20、25、30分間)である。
【0053】
具体的には、ステップ(1-3)において、撹拌温度は15~35℃(具体的には、例え
ば15、20、25、30、35℃)、撹拌時間は1~48時間(具体的には、例えば1
、6、12、24、36、48時間)である。
【0054】
具体的には、上記のカンナビノイドナノミセル溶液の粒子径が、1~500nm(具体的
には、例えば1、10、50、100、150、200、250、300、350、40
0、450、500nm)である。
【0055】
具体的には、ステップ(2)において、希釈に使用される溶媒は、水、特に注射用水であ
る。
【0056】
具体的には、ステップ(2)において、希釈倍数は、2~100倍(具体的には、例えば
2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100倍)である。
【0057】
具体的には、ステップ(2)における乾燥は噴霧凍結乾燥又は凍結乾燥である。
【0058】
具体的には、上記の噴霧凍結乾燥は、噴霧、凍結、及び乾燥のステップを含み、噴霧方式
は空気圧噴霧、圧力噴霧、遠心噴霧、超音波噴霧から選ばれる1種又は2種以上の組み合
わせであり、凍結温度は-10~-50℃(具体的には、例えば-10、-15、-20
、-25、-30、-35、-40、-45、-50℃)であり、乾燥ステップにおいて
、真空度は40Pa以下(具体的には、例えば40、30、20、10Pa)であり、乾
燥温度は10~35℃(具体的には、例えば10、15、20、25、30、35℃)で
ある。
【0059】
具体的には、上記の凍結乾燥は、予備凍結、昇華乾燥、及び真空乾燥のステップを含み、
予備凍結温度は-30~-50℃(具体的には、例えば-30、-35、-40、-45
、-50℃)、予備凍結時間は0.5~3h(具体的には、例えば0.5、1、2、3h
)であり、予備凍結ステップにおいて、真空度は1~100Pa(1、10、20、30
、40、50、60、80、100Pa)に制御され、昇華乾燥温度は-20~10℃(
具体的には、例えば-20、-10、-5、0、5、10℃)、昇華乾燥時間は1~36
h(具体的には、例えば1、6、12、18、24、30、36h)であり、真空乾燥温
度は10℃~30℃(具体的には、例えば10、15、20、25、30℃)、真空乾燥
時間は1~24h(具体的には、例えば1、6、12、18、24h)である。
【0060】
本発明はまた、それを必要とする被検体に本発明の上記のカンナビノイドナノミセル製剤
の有効量を投与するステップを含む、疾患の予防及び/又は治療方法を提供する。
【0061】
具体的には、上記の方法において、カンナビノイドナノミセル製剤は本発明で上述した定
義を有する。
【0062】
具体的には、上記の方法において、前記疾患は、上記のカンナビノイドナノミセル製剤に
おけるカンナビノイドの適応症、例えば疼痛(例えば慢性痛)、炎症(例えば皮膚炎)、
腫瘍(例えば神経膠腫、白血病、前立腺癌など)、肝臓損傷(例えば虚血性肝臓損傷、慢
性アルコール依存症により引き起こされる肝臓損傷)、神経系疾患(例えばてんかん、多
発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病など)など(例えば、「郭蓉、陳しゅん
、郭鴻彦.テトラヒドロカンナビノールとカンナビノールの薬理研究進展.天然産物の研
究と開発、2017,29:449-1453.」参照)である。
【0063】
本発明の一実施形態では、上記の被検体は哺乳類、特にヒトである。
【0064】
具体的には、上記のカンナビノイドナノミセル製剤の有効量は、患者の年齢、体重、性別
、自然健康状況、栄養状況、服用時間、代謝速度、重症度及び診療医師の主観的判断など
を含む多くの要素により決められる。
【0065】
本発明はまた、本発明の上記のカンナビノイドナノミセル製剤を含むサプリメントを提供
する。
【0066】
本発明はまた、それを必要とする被検体に上記のサプリメントの有効量を投与するステッ
プを含む免疫力、抗酸化の向上方法を提供する。
【0067】
本発明で提供されるカンナビノイドナノミセル製剤は、有効成分の被覆率や移行率が高く
、薬物担持量が高く、安定性が高く、新たな常温自己集合技術を採用することで、活性成
分であるカンナビノイドの高温での分解や変色を回避し、活性成分の生物学的利用能が向
上し、単回投与量が低減される。特に乾燥粉末吸入剤の場合、薬物担持量が高く(10%
以上)、安定性が高く(品質保証期間:2~3年)、インビトロ蓄積率が高く(胃内容排
出率は95%、有効蓄積率は45%)、吸入すると効き目が早く、持続した安定的な血中
濃度が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0068】
特に断らない限り、本発明で使用される全ての科学的用語及び技術的用語は、当業者が一
般的に理解するものと同じ定義を有し、例えば、本発明に記載の以下の略語及びこれらに
対応する物質は以下のとおりである。
【0069】
CBDV カンナビジバリン
CBD カンナビジオール
CBG カンナビゲロール
CBN カンナビノール
CBC カンナビジバリン
CBDB 4-butyl-5′-methyl-2′-(prop-1-en-2-yl)-1′,2′, 3′,4′-tetra
hydro-(1,1′-biphenyl)-2,6-diol, Cannabidibutol
CBE カンナビエルソイン(cannabielsoin)
CBL カンナビシクロール
CBND カンナビノジオール
TPGS コハク酸ビタミンEポリエチレングリコール
Poloxamer ポロキサマー
PEG-PAA ポリエチレングリコール-ポリアクリル酸ブロック共重合体
PEG-PASP ポリエチレングリコール-ポリアスパラギン酸ブロック共重合体
PEG-PLAG ポリエチレングリコール-ポリ乳酸グリコール酸ブロック共重
合体
PEG-PCL ポリエチレングリコール-ポリカプロラクトンブロック共重合

PEG-PLA/PTX ポリエチレングリコール-ポリ乳酸ブロック共重合体
PEG-b-PS ポリエチレングリコール-ポリスチレンブロック共重合体
SFD 噴霧凍結乾燥
【0070】
本発明では、「カンナビノイド」という用語とは、大麻植物に固有のアルキルとモノテル
ペン基分子構造を含有する二次代謝産物、例えば、CBD、CBDV、CBG、CBC、
CBN、CBDB、CBE、CBL、CBNDなど(例えば「陳しゅん、楊明、郭鴻彦.
大麻植物のカンナビノイド成分の研究進展、植物学報、2011,46(2):197-
205」に記載)である。
【0071】
本発明では、CBD、CBDV、CBG、CBC、CBN、CBDB、CBE、CBL及
びCBNDの純品とは、上記の化合物の純粋な製品、特に対応する市販品であり、化合物
の純度は少なくとも99.5%以上、特に99.9%以上(残りは不純物)である。
【0072】
以下、本発明の実施例を参照しながら、本発明の技術的解決手段を明確かつ完全に説明す
るが、明らかに、説明される実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、全ての実施例では
ない。当業者が本発明の実施例に基づいて創造的な努力を必要とせずに得る他の全ての実
施例は、本発明の特許範囲に属する。
【0073】
実施例1:カンナビノイドナノミセル溶液の製造
1、カンナビノイドナノミセル溶液の具体的な処方を下表に示す。
表1 カンナビノイドナノミセル溶液の処方表


2、製造プロセス
(1)第1群の製造プロセス(プロセス1)
処方1~6の配合比で原料を投入してカンナビノイドミセル溶液を製造し、具体的には、
以下のとおりである。
a、膨潤:表1の処方に従って原料100gを取り、これを水800gに加えて、2h膨
潤させる。
b、乳化:膨潤させて得られた混合物を高速せん断分散乳化機にて50HZで30min
せん断する。
c、撹拌:乳化系の温度を30℃に制御して、48h撹拌し、撹拌した溶液は、粒子径5
00nm未満の澄明なナノミセル溶液である。
上記の製造プロセスにより得られたカンナビノイドナノミセル溶液の品質の比較を下表に
示す。
表2 カンナビノイドナノミセル溶液の品質の比較


(2)第2群の製造プロセス(プロセス2)
処方1~6の配合比で材料を投入してカンナビノイドミセル溶液を調製し、具体的には、
以下のとおりである。
a、溶融:表1における処方1~6に従って、TPGS1000、Poloxamer1
88、ポリウレタン4000、PEG2000-PAA2000、PEG2000-PA
SP1000、PEG1000-PLAG3000、PEG1000-PCL2000、
PEG3400-PLA/PTX4000、PEG5000-b-PS5000を処方量
で加えて、70℃で溶融した後、カンナビノイド及び他の単量体を加え、均一に分散させ
、液体1とする。
b、溶解:表1における処方1~6に従って、マンニトール、ソルビトール、クエン酸、
酒石酸、シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン、EDTA-2
Na、トレハロース、ロイシン、乳糖を8倍の水で溶解し、液体2とする。
c、混合溶解:液体1、液体2を40℃で混合して溶解させ、低速で12h撹拌し、溶液
の粒子径を500nm未満とする。
上記の製造プロセスにより得られたカンナビノイドナノミセル溶液の品質の比較を下表に
示す。
表3 カンナビノイドナノミセル溶液の品質の比較


表2及び表3の結果から分かるように、同じ処方では、第1群のプロセスにより製造され
たカンナビノイドナノミセルは、第2群のプロセスにより製造されたカンナビノイドナノ
ミセルよりも移行率が高く、これは、第2群のプロセスでは、溶融ステップにより、カン
ナビノイドが分解したためであると考えられる。
【0074】
実施例2:カンナビノイドナノミセル粉末の製造
ミセル粉末を製造するための乾燥方式は、真空乾燥、噴霧凍結乾燥、ナノ噴霧乾燥、超臨
界流体技術、凍結乾燥を含み、実施例1では、第1群のプロセスにより製造された処方1
について、上記の複数の乾燥技術でカンナビノイドナノミセル粉末をそれぞれ製造して品
質を比較して検討し、具体的な乾燥方式の比較を表4に示す。
噴霧凍結乾燥:カンナビノイドナノミセル溶液を噴霧凍結乾燥機に噴霧してカンナビノイ
ドミセル微粉を発生させ、具体的な手順は以下のとおりである。
a、噴霧:
実施例1における「プロセス1」により製造されたナノミセル溶液を、精製水で100倍
まで希釈し、噴霧凍結乾燥機を用いて噴霧凍結乾燥を行い、噴霧装置として超音波噴霧を
用いる。
b、凍結:
固形分:空気圧噴霧、圧力噴霧、遠心噴霧の場合は40%、超音波噴霧の場合は10%;
フィード流量:10ml/min;
凍結温度:-45℃;
c、乾燥:
真空度:40Pa以下;
乾燥温度:30℃。
凍結乾燥プロセス:カンナビノイドナノミセル溶液を凍結乾燥箱に投入して、-40℃で
3h凍結させ、真空度を10Paよりも小さく制御し、一次乾燥温度-10℃で24h乾
燥させ、二次乾燥温度25℃で12h乾燥させ、乾燥済みの材料を1~5#篩にかけて整
粒した。
上記の複数の乾燥プロセスにより製造される粉末の品質の比較を下表に示す。
表4 各乾燥プロセスにより得られた粉末の品質の比較


結果の分析:複数の乾燥方式について、プロセス制御性、粉末吸湿性、溶解性、表面形態
、粒子径分布、インビトロ蓄積率の測定などの指標を比較して分析した結果、噴霧凍結乾
燥は吸入製剤では他の粉末よりも好適であり、凍結乾燥粉末は他の固体製剤の製造により
適していることを確認した。
【0075】
実施例3:カンナビノイドナノミセル吸入製剤
実施例2において噴霧凍結乾燥により得られた粉末は、粒子径が1~5μmであり、表面
形態が球状であり、流動性が良好であり、胃内容排出率が95%であり、蓄積率が45%
であるので、吸入粉末として好適であり、2番~00番カプセル、ベシクル、リポジトリ
に充填されるか、又はそのまま粉末として吸入投与する。
上記のカンナビノイドナノミセル吸入粉末の生物学的利用能と特許出願WO201900
8178A1の実施例に記載の方法により製造されるミセル溶液との生物学的利用能の比
較を下表に示す。
表5 生物学的利用能の比較


実施例4:カンナビノイドナノミセル発泡錠の製造
1、処方:カンナビノイドミセル粉末(実施例2において凍結乾燥プロセスにより得られ
た粉末)、DL酒石酸、クエン酸、重炭酸ナトリウム、マンニトール、乳糖、アスパルテ
ーム、キシリトール、ポリエチレングリコールを含む。具体的な処方表を下表に示す。
表6 カンナビノイドナノミセル発泡錠の処方表


規格:1錠の重量2g。
2、製造プロセス
表6の処方に従って、カンナビノイドミセル粉末、DL酒石酸、クエン酸、マンニトール
、ポリエチレングリコールを流動床又は湿式造粒により顆粒1とし、重炭酸ナトリウム、
アスパルテーム、乳糖、キシリトール、ポリエチレングリコールを流動床又は湿式造粒に
より顆粒2とし、顆粒1、顆粒2、カンナビノイドミセル粉末を均一に混合したものをプ
レスして発泡錠とし、1錠の重量を2gに制御した。
各処方による発泡錠の品質の比較を下表に示す。
表7 カンナビノイドナノミセル発泡錠の品質の比較


結果分析:上記の複数の発泡錠は全て発泡錠の品質基準による要件を満たし、素早く水に
溶解し、使用も携帯も簡便であり、カンナビノイド粉末の溶解速度が速くなり、発泡後の
溶液はカンナビノイドナノミセル溶液になり、そのまま服用できる。
【0076】
実施例5:カンナビノイドナノミセル徐放錠の製造
1、処方:カンナビノイドミセル粉末(実施例2において凍結乾燥プロセスにより得られ
た粉末)、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、乳糖、マイクロ
パウダーシリカ、ステアリン酸マグネシウム。具体的な処方表を下表に示す。
表8 カンナビノイドナノミセル徐放錠の処方表


2、製造プロセス:表8の処方に従って、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドン、エチ
ルセルロース、乳糖、酒石酸を投入して、一定量の無水エタノールで造粒し、カンナビノ
イドミセル粉末、マイクロパウダーシリカ、ステアリン酸マグネシウムを加えて均一に混
合し、プレスして1gの徐放錠とした。
各処方による徐放錠の品質の比較を下表に示す。
表9 カンナビノイドナノミセル徐放錠の品質の比較


上記の処方による徐放錠では、性状、1錠の重量の変動、硬度、インビトロ溶出度、安定
性は全て要件を満たし、カンナビノイドを腸管内で徐放し、血液に入った後にもカンナビ
ノイドナノミセルからカンナビノイドが徐放され、このように、二重徐放作用が果たされ
、カンナビノイドは生体内で長期間にわたって安定した血中濃度を維持し、慢性痛につい
て長期的に効く。
【0077】
実施例6:カンナビノイドナノミセル口腔内崩壊錠の製造
1、処方:カンナビノイドミセル粉末(実施例2において凍結乾燥プロセスにより得られ
た粉末)、L-HPC、乳糖、微結晶性セルロース、アルファ化デンプン、マイクロパウ
ダーシリカ、ステアリン酸マグネシウム。具体的な処方を下表に示す。
表10 カンナビノイドナノミセル口腔内崩壊錠の処方表


2、製造プロセス
上記の材料を湿式法又はワンステップ法により造粒して顆粒とし、プレスして0.5gの
高速崩壊錠とする。
各処方による速放錠の品質の比較を下表に示す。
表11 カンナビノイドナノミセル速放錠の品質の比較


3つの処方による口腔内崩壊錠では、性状、1錠の重量の変動、崩壊時間、1錠の重量の
変動、安定性は全て要件を満たし、口腔内に入れると素早く崩壊し、舌下で吸収されて血
液に入り、このように、初回通過効果を回避し、また飲み込みにくい患者により服用され
やすい。
【0078】
実施例7:カンナビノイドナノミセルゲルの製造
処方:カンナビノイドミセル粉末(実施例2において凍結乾燥プロセスにより得られた粉
末)、カルボマー、グリセリン、プロピレングリコール、トリエタノールアミン、EDT
A-2Na、エチルパラベン。具体的な処方を下表に示す。

表12 カンナビノイドナノミセルゲルの処方表


2、製造プロセス:表12の処方に従って、カルボマーに100倍の水を加えて膨潤させ
、トリエタノールアミンを加えて、ゲル基質を形成し、次に、カンナビノイドミセル粉末
、グリセリン、プロピレングリコール、EDTA-2Na、エチルパラベンを加えて、均
一に撹拌すればよい。
各処方によるゲルの品質の比較を下表に示す。
表13 カンナビノイドナノミセルゲルの品質の比較


3つの処方によるゲルでは、性状、均一性、安定性は全て要件を満たし、そのまま患部に
塗布すると、皮膚炎、慢性関節痛を治療したり、にきびやそばかすを取り除く役割を果た
す。
【0079】
実施例8:カンナビノイドナノミセル滴丸剤の製造
1、処方:カンナビノイドミセル粉末(実施例2において凍結乾燥プロセスにより得られ
た粉末)、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000。具体的
な処方を下表に示す。
表14 カンナビノイドナノミセル滴丸剤の処方表


2、製造プロセス:表14の処方に従って、カンナビノイドミセル粉末、ポリエチレング
リコール4000、ポリエチレングリコール6000、精製水を70℃で加熱して溶融さ
せ、スラリー1とし、パラフィンオイルの凝縮温度を10℃に制御して、スラリー1を滴
丸剤製造装置に投入し、50mg/粒の滴丸剤とし、滴下で製造した滴丸剤について吸油
綿で表面のパラフィンオイルを吸収すればよい。
各処方による滴丸剤の品質の比較を下表に示す。
表15 カンナビノイドナノミセル滴丸剤の品質の比較

3つの処方による滴丸剤では、性状、1粒あたりの重量の変動、崩壊時間、安定性は全て
要件を満たし、経口投与しても舌下投与してもよく、効き目が早く、しかも血中濃度が長
期間にわたって維持される。
【0080】
実施例9:カンナビノイドナノミセル坐剤の製造
1、処方:カンナビノイドミセル粉末(実施例2において凍結乾燥プロセスにより得られ
た粉末)、カカオバター、混合脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、エチルパラ
ベン。具体的な処方を下表に示す。
表16 カンナビノイドナノミセル坐剤の処方表


2、製造プロセス:上記の表の処方に従って、カンナビノイドミセル粉末、カカオバター
、混合脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、エチルパラベンを40~60℃で溶
融し、坐剤製造装置に入れて、球状坐剤、弾丸型、カプセル型などの坐剤を製造する。
各処方による坐剤の品質の比較を下表に示す。
表17 カンナビノイドナノミセル坐剤の品質の比較


3つの処方による坐剤では、性状、重量の変動、メルト時間、安定性は全て要件を満たし
、病変部位に作用して抗炎症作用を果たしたり、全身投与して慢性痛を治療したりするこ
とができ、これにより、カンナビノイドの適用範囲が広がる。
【0081】
以上は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の主旨
及び原則を逸脱せずに行われる修正や同等置換などであれば、本発明の特許範囲に含まれ
るべきである。