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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】水力発電システム及び水力発電方法
(51)【国際特許分類】
   F03B 7/00 20060101AFI20240117BHJP
   F03B 11/00 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
F03B7/00
F03B11/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023010822
(22)【出願日】2023-01-27
【審査請求日】2023-02-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522029350
【氏名又は名称】株式会社ノワール
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 隆明
【審査官】西山 智宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-273853(JP,A)
【文献】特開平05-157038(JP,A)
【文献】登録実用新案第3024499(JP,U)
【文献】特開2021-127769(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0181771(US,A1)
【文献】特開平01-100383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 7/00
F03B 11/00
F03B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水部と、前記貯水部の水を下方に流すための管状体と、前記管状体の内部に配置された水車部と、前記管状体の先端部に配置される発電装置と、を備え、
前記水車部は、前記水の流れによって回動する略筒形状の水車部本体と、前記水車部本体の回動軸を形成する軸部と、を有し、
前記水車部本体は、前記管状体の長さ方向に沿って、略同軸上に複数配置され、
前記軸部は、前記管状体の長さ方向の略全長に亘って延び、前記発電装置に接続され、
前記発電装置は、前記各水車部本体の回動に伴う前記軸部の回転動力を電力に変換し、
前記管状体は、内部に前記水車部本体が配置され、前記長さ方向に所定の間隙を空けて設けられた複数の単位管状体と、前記間隙を覆うことで、前記各単位管状体同士を連結する連結管と、を有し、
前記各水車部本体の外周面及び内周面には、それぞれ、周方向に所定の間隔を空けて複数の水受け部が設けられ、
前記各水受け部は、前記各単位管状体の基端側から先端側に螺旋状に延びて設けられ、
前記各単位管状体及び前記各連結管は、それぞれが略同軸上に配置され、
最上方の前記単位管状体から最下方の前記単位管状体に亘って、複数の前記水車部本体が配置され
前記水車部本体及び前記単位管状体の軸方向の長さは、前記連結管の軸方向の長さよりも長く構成され、
最上方の前記単位管状体の基端は、最上方の前記連結管よりも上方に位置している、水力発電システム。
【請求項2】
前記連結管は、前記長さ方向に沿った摺動により、前記間隙と前記管状体の外部空間とを連通する、請求項1に記載の水力発電システム。
【請求項3】
前記各水車部本体の回動軸は、前記管状体の中心軸よりも下方に配置されている、請求項1に記載の水力発電システム。
【請求項4】
前記管状体の先端部には、前記水の流れを制御する制水弁が設けられている、請求項1に記載の水力発電システム。
【請求項5】
請求項1に記載の水力発電システムを用いた水力発電方法であって、
前記各単位管状体において、最下方の前記単位管状体から最上方の前記単位管状体の内部まで前記水を貯留する貯留工程と、貯留された前記水を下方に流す放水工程と、を有する、水力発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電システム及び水力発電方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、水資源が豊富で高低差が大きい我が国において、再生可能エネルギーとして水力発電を利用することが広く行われてきた。
【0003】
ここで、一般的な水力発電設備において、流路の途中または最下部にフランシス水車やペルトン水車を設けて発電する、いわば「点」による発電が行われてきた。
一方、このような発電方式の場合、水が持つすべての位置エネルギーを利用することができないため、効率化の余地が多くあった。
【0004】
そこで、本発明の発明者は、特許文献1に記載の、水の流れ方向を軸に回動する略筒形状の水車を用いた、水力発電装置を提案した。
このような水力発電装置によれば、水が持っている位置エネルギーを、始点から終点まで回転エネルギーに変換して「線」で発電することができるため、より効率的かつ安定的な発電が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許7114138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、一般的に、水力発電装置は、大型化する程、その発電効率が向上する。
このため、本発明の発明者は、特許文献1に記載の、水の流れを「線」で発電する水力発電装置について、その規模を拡張した発電システムを構築する必要がある、との考えに至った。
【0007】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであり、略筒形状の水車を用いた発電システム及び発電方法であって、その発電効率をより向上させた水力発電システム及び水力発電方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、貯水部と、前記貯水部の水を下方に流すための管状体と、前記管状体の内部に配置された水車部と、前記管状体の先端部に配置される発電装置と、を備え、
前記水車部は、前記水の流れによって回動する略筒形状の水車部本体と、前記水車部本体の回動軸を形成する軸部と、を有し、
前記水車部本体は、前記管状体の長さ方向に沿って、略同軸上に複数配置され、
前記軸部は、前記管状体の長さ方向の略全長に亘って延び、前記発電装置に接続され、
前記発電装置は、前記各水車部本体の回動に伴う前記軸部の回転動力を電力に変換する。
【0009】
本発明によれば、一の管状体に複数の水車部本体が設けられていることで、貯水部から管状体に流れる水を、効率的に軸部の回転動力に変換することができ、発電システムの大型化及び、これに伴う発電効率の向上に資する。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記管状体は、内部に前記水車部本体が配置され、前記長さ方向に所定の間隙を空けて設けられた複数の単位管状体と、前記間隙を覆うことで、前記各単位管状体同士を連結する連結管と、を有し、
前記各単位管状体は、それぞれが略同軸上に配置され、
前記連結管は、前記長さ方向に沿った摺動により、前記間隙と前記管状体の外部空間とを連通する。
【0011】
このような構成とすることで、例えば、管状体の内径を、人が入り込める程度の大きさとした場合、管状体の内部や水車部のメンテナンス時において、人が間隙を介して入り込むことができ、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記各水車部本体の回動軸は、前記管状体の中心軸よりも下方に配置されている。
【0013】
このような構成とすることで、管状体の内部を流れる水量が少ない場合であっても、各水車部本体の回動を軸部のトルクに変換する変換効率の減少を抑制することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記管状体の先端部には、前記水の流れを制御する制水弁が設けられている。
【0015】
このような構成とすることで、制水弁の作用により、管状体の内部に所定量の水を貯留した上で、管状体からこの水を放水する、という流れでの発電(各水車部本体による軸部の回動)ができ、水の位置エネルギーを、終点(管状体の先端部)から所定の高さまで蓄えた、より効率の良い発電を行うことができる。
また、管状体の内部を流れる水量が少ない場合であっても、上記の通り、所定量の水を貯留して放水することにより、各水車部本体の回動動作、及びこれに伴う軸部へのトルクの伝達を確実に行わせることができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記貯水部から延びる既設の管状体と、前記既設の管状体を流れる前記水の位置エネルギーを用いて発電を行う水力発電設備と、を備え、
前記管状体は、前記既設の管状体と連通している。
【0017】
本発明によれば、既設の水力発電設備に本水力発電システムを適用することができ、本水力発電システムの汎用性が向上する。
【0018】
また、本発明は上述した水力発電システムを用いた水力発電方法であって、
前記管状体の内部に所定量の前記水を貯留する貯留工程と、貯留された前記水を下方に流す放水工程と、を有する。
【0019】
本発明によれば、管状体の内部に所定量の水を貯留した上で、管状体からこの水を放水する、という流れでの発電(各水車部本体による軸部の回動)ができ、水の位置エネルギーを、終点(管状体の先端部)から所定の高さまで蓄えた、効率の良い発電を行うことができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記各単位管状体において、最下方の前記単位管状体から最上方の前記単位管状体の内部まで前記水を貯留する貯留工程と、貯留された前記水を下方に流す放水工程と、を有する。
【0021】
このような構成とすることで、水の位置エネルギーを、終点(管状体の先端部)から始点(管状体の基端部)に極力近い位置まで蓄えることができ、より効率の良い発電を行うことができる。
【0022】
また、本発明は、貯水部に連通され、水を下方に流すための管状体の内部に所定量の前記水を貯留する貯留工程と、貯留された前記水を下方に流す放水工程と、下方に流れる前記水を用いて発電を行う発電工程と、を有する水力発電方法である。
【0023】
本発明によれば、本水力発電システムの適用にあたり新設した管状体、或いは既設の水力発電設備における既設の管状体、何れかの管状体の内部に所定量の水を貯留した上で、管状体からこの水を放水する、という流れでの発電ができ、水の位置エネルギーを、終点(管状体の先端部)から所定の高さまで蓄えた、効率の良い発電を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、略筒形状の水車を用いた発電システム及び発電方法であって、その発電効率をより向上させた水力発電システム及び水力発電方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る水力発電システム全体の俯瞰図である。
図2】本発明の実施形態に係る水力発電システムの拡大図である。
図3】本発明の実施形態に係る水車部を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る単位管状体及び水車部を示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る単位管状体及び水車部を示すPP´線断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る連結管を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る連結管の動作態様を示すQQ´線断面図である。
図8】本発明の実施形態に係る水力発電システムの拡大図である。
図9】本発明の実施形態に係る水力発電システムを用いた水力発電方法の説明図である。
図10】本発明の実施形態に係る水力発電システムを用いた水力発電方法の説明図である。
図11】本発明の実施形態に係る水力発電システムを用いた水力発電方法の説明図である。
図12】本発明の実施形態に係る水力発電システムの変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<水力発電システム>
以下、図1図7を用いて、本実施形態に係る水力発電システムについて説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。
また、これらの図において、符号Xは、本実施形態に係る水力発電システムを示し、以下では、既設の水力発電設備等を利用した水力発電システムについて説明する。
【0027】
図1及び図2に示すように、水力発電システムXは、貯水部1と、貯水部1の水Wを下方に流すための管状体2と、管状体2の内部に配置された水車部3と、管状体2の先端部に配置される発電装置4と、管状体2を支持する支持部5と、を備えている。
なお、図2は、図1におけるA方向から見た、水力発電システムXの拡大正面図であり、(a)にて管状体2の基端部側を示し、(b)にて管状体2の先端部側を示している。
【0028】
貯水部1は、本実施形態においては、ダムDの水Wをポンプ(図示せず)等により汲み上げて貯水する、水力発電において一般的に用いられる既設の貯水槽である。
【0029】
管状体2は、特に図2に示すように、内部に後述する水車部本体31が配置され、長さ方向に所定の間隙を空けて設けられた複数の単位管状体21と、これらの間隙を覆うことで、各単位管状体21同士を連結する連結管22と、を有している。
【0030】
単位管状体21は、略円筒状体であり、それぞれが略同軸上に配置されている。
また、一の単位管状体21には、一の水車部本体31が配置されている。
さらに、最下方の単位管状体21の先端部には、水Wの流れを制御する制水弁v1が設けられ、最上方の単位管状体21の基端部には、同様に水Wの流れを制御する副制水弁v2が設けられている。
なお、制水弁v1及び副制水弁v2は、遠隔にて開閉制御可能な電動弁であることが好ましいが、手動にて開閉を行うものであっても良い。
【0031】
連結管22は、略円筒状体であり、長さ方向に沿った摺動により、各単位管状体21の間隙と管状体2の外部空間とを連通可能に構成されている。
なお、連結管22の具体的な構成(摺動態様)については、図7を用いて後述する。
【0032】
ここで、管状体2は、水力発電において一般的に用いられる水圧鉄管M(既設の管状体)と上方から枝分かれするように、その基端部において、水圧鉄管Mと連通している。
また、管状体2は、全体として、上方から下方に向かって、略一直線上に傾斜して、発電装置4まで延びている。
なお、単位管状体21や連結管22の肉厚は、例えば3mm~20mmとすることが好ましく、ステンレス等の金属素材により形成されることが好ましいが、塩化ビニール等のプラスチック素材を用いても良い。
【0033】
なお、水圧鉄管Mには、貯水部1によりダムDから汲み上げられた水Wが流れる。
また、水圧鉄管Mは、その長さ方向に所定の間隔を空けて設けられた支持ブロックbにより支持されている。
【0034】
水車部3は、水Wの流れによって回動する略筒形状の水車部本体31と、水車部本体31の回動軸を形成する軸部32と、を有している。
なお、図2(及び図10)において、水車部本体31を仮想的に点線の四角で示し、軸部32を仮想的に一点鎖線で示している。
【0035】
水車部本体31は、管状体2の長さ方向に沿って、略同軸上に複数配置されている。
また、軸部32は、管状体2の長さ方向の略全長に亘って延び、発電装置4に接続されている。
なお、水車部本体31のより具体的な構成は、図3図5を用いて後述する。
【0036】
発電装置4は、水圧鉄管Mを流れる水Wの位置エネルギーを用いて発電を行う既設の水力発電設備Zとは別に設けられたものであり、各水車部本体31の回動に伴う軸部32の回転動力を電力に変換する。
なお、発電装置4のより具体的な構成については、水力発電方法の説明の中で、図11を用いて後述する。
【0037】
支持部5は、ダムDが建設されている山肌に設けられたメタルロードであり、山肌から上方に延びる複数の脚部51と、各脚部51の上部に連結され、上方から下方に向かって、略一直線上に傾斜する基台部52と、基台部52に連結され、各単位管状体21の外周面を囲って当接することで、管状体2全体を基台部52上に位置決めする複数の固定リング53と、を有している。
【0038】
以下、図3図5を用いて、水車部本体31の構成について説明する。
なお、図3(a)は、水車部3の分解斜視図、図3(b)は、後述する主部31aの内部を示す斜視図である。
【0039】
水車部本体31は、略円筒状の主部31aと、主部31aの両端に配置される一対の軸受け部31bと、を含む。
【0040】
主部31aの外周面及び内周面には、それぞれ、周方向に所定の間隔を空けて複数の水受け部sが設けられ、主部31aの内部には、軸部挿通部kが設けられている。
【0041】
各水受け部sは、外周面及び内周面から、それぞれ外方及び内方に突設された、断面略三角形状の突起であり、主部31aの全長に亘って設けられた、螺旋状の羽部材である。
これにより、各水受け部sは、水Wの回転軸方向の流れを、主部31aを回動させる力に変換する。
【0042】
また、各水受け部sは、例えば、約45度の迎え角(回動軸とのなす角)でもって、外周面及び内周面それぞれに巻かれるようにして設けられている。
なお、迎え角は、主部31aの全長において螺旋が一周するような角度に設定されていても良い。これにより、水Wの流れを効率的に主部31aの回動に生かすことができる。
【0043】
軸部挿通部kは、主部31aの略全長に亘って延び、主部31aと略同軸上に配置された略円筒状の軸部挿通部本体k1と、軸部挿通部本体k1を主部31aの内部にて位置決めするための複数の支持板k2と、により構成さている。
【0044】
軸部挿通部本体k1には、後述する軸部構成体32aが挿通される。
また、軸部挿通部本体k1は、例えば、その内径と軸部構成体32aの外径とを略同一に構成されることで、軸部構成体32aが嵌め込まれる態様となり、主部31aと軸部構成体32aとが一体的に回転可能に構成されている。
さらに、軸部挿通部本体k1は、その全長が主部31aの全長よりも長く構成されることで、主部31aの両端から突出し、各軸受け部31bに当接することで(図7参照)、主部31aの軸方向のブレを防止している。
【0045】
各支持板k2は、軸部挿通部本体k1の外周面及び主部31aの内周面に連接されている。
【0046】
各軸受け部31bは、軸部挿通部本体k1と略同軸上に配置される軸受け部本体j1と、軸受け部本体j1から放射状に延びる複数の支持板j2と、各支持板の先端部が連接される輪状体j3と、により構成されている。
なお、軸受け部本体j1は、図7に示すように、転がり軸受とすることができる。
【0047】
上記の通り構成された水車部本体31及び軸部構成体32aは、図4に示すように組上げられ、管状体2の内部に配置される。
なお、各輪状体j3の外径は、単位管状体21の内径と略同一に構成されており、各輪状体j3の外周面が単位管状体21の内周面に当接した状態で、水車部本体31及び軸部32が組上げられる。
【0048】
また、図5に示すように、本実施形態において、管状体2(単位管状体21)、及び主部31a(軸部挿通部本体k1)は、略同軸上に配置されている。
即ち、管状体2の中心軸と水車部本体31の回動軸とが一致している。
なお、図5において、軸受け部31bの図示は省略しているが、各軸受け部31b(各軸受け部本体j1)も、略同軸上に配置されている。
【0049】
以下、図6及び図7を用いて、連結管22(及び軸部32)の構成について説明する。
なお、図6において、管状体2の内部構成を点線にて示している。
【0050】
図6に示すように、連結管22は、管状体2の長さ方向に沿って摺動する連結管本体22aと、単位管状体21と連結管22との水密状態を確保する水密部22bと、を含む。
【0051】
軸部32は、軸部挿通部本体k1及び軸受け部本体j1に挿通された、略円柱状の軸部構成体32aが、図6下部(及び図7)に示すように、その各端部で、略円筒状の連結部材c1に挿通され、各軸部構成体32a及び連結部材c1を貫通するボルト等の締結部材c2より連結されることで、構成されている。
即ち、一の単位管状体21に対して一の軸部構成体32aが設けられている。
また、各軸部構成体32aは、その端部が、各単位管状体21の間隙に突出する長さに構成されている。
【0052】
連結管本体22aは、略円筒状体であり、各単位管状体21と略同軸上に配置されている。
【0053】
水密部22bは、一方の単位管状体21の先端部に設けられた第一水密部p1と、他方の単位管状体21の基端部に設けられた第二水密部p2(図7参照)と、により構成されている。
【0054】
第一水密部p1は、連結管本体22aの先端部側の摺動を抑制する、リング状のストッパー部p11と、ストッパー部p11の内周面に設けられたリング状のパッキンp12(図7参照)と、により構成されている。
ストッパー部p11には、連結管本体22aの先端部が嵌合する溝が設けられており、パッキンp12は、この溝により形成された対向する内周面に沿って、一対設けられている。
【0055】
第二水密部p2は、リング状のパッキンであり、基端部側から先端部側に向かうに伴って、中心に向かって傾斜するように構成されている。
また、連結管本体22aにおける先端部側の内周面は、この傾斜に適合するように、基端部側から先端部側に向かうに伴って、中心に向かって傾斜するように構成されている。
【0056】
上記の通り構成された連結管22(連結管本体22a)は、図7(a)から図7(b)に示すように摺動動作する。
【0057】
即ち、図7(a)においては、第一水密部p1及び第二水密部p2により水密性が確保されつつ、その摩擦力(及びストッパー部p11)により、摺動動作が抑制されている。
そして、連結管本体22aに先端部方向に沿って、水密部22bの摩擦力を凌駕する力を加えることで、図7(b)に示すように、先端部側に摺動し、間隙と管状体2の外部空間とが連通する。
なお、上記した第二水密部p2及び連結管本体22aの傾斜により、図7(a)に示す閉状態においては、第二水密部p2が連結管本体22aの開口端に対してくさびの作用により水密性が担保され、図7(b)に示す開状態とする際には、接触面積が少ないことにより、一定の摺動性が担保されている。
【0058】
<水力発電方法>
以下、図8図11を用いて、本実施形態に係る水力発電方法について説明する。
なお、図8及び図9は、図1におけるB方向から見た、水力発電システムXの拡大側面図であり、管状体2の開口端(水圧鉄管Mとの連通箇所)を点線丸にて示している。
【0059】
ここで、本実施形態における水力発電方法を実施するにあたり、図8下部に示すように、水圧鉄管Mの流出口dの内径を、水圧鉄管M全体の内径に比して小さくしておくことが好ましい。
なお、図8下部は、水力発電設備Zの内部の水車(フランシス水車等)に向かう、水圧鉄管Mの先端部であって、その開口端のみを断面にて示した部分拡大図である。
これにより、水圧鉄管Mの内部における水Wの単位時間当たりの流入量を、流出量よりも大きくし、貯水部1から流出した水Wが、水圧鉄管Mの内部に貯留されていく構成とすることができる
また、本実施形態における水力発電方法を実施するにあたり、制水弁v1を閉状態としておく。
【0060】
まず、本実施形態に係る水力発電方法では、水圧鉄管M及び管状体2の内部に所定量の水Wを貯留する、貯留工程を実施する。
【0061】
詳述すれば、図9(a)から図9(b)に示すように、貯水部1から水圧鉄管Mに水Wを流入させ、上記の通り、水圧鉄管Mの内部に水Wを貯留させていく。
そして、図9(b)に示す位置(管状体2の開口端)まで水Wが貯留されると、管状体2に水Wが流入する。
なお、このとき、水Wは、流出口dから流出しているため、既設の水力発電設備Zによる水力発電(発電工程)が実施される。
【0062】
管状体2に流入した水Wは、図10に示すように、閉状態とされた制水弁v1により管状体2からの流出が抑制され、管状体2の内部に貯留されていく。
そして、本実施形態に係る水力発電方法では、最下方の単位管状体21から最上方の単位管状体21の内部まで水Wを貯留する。
【0063】
次に、本実施形態に係る水力発電方法では、管状体2に貯留された水Wを下方に流す、放水工程を実施する。
【0064】
詳述すれば、制水弁v1を開状態とし、図11に示すように、発電装置4の内部まで延びる管状体2にまで水Wを流す。
そして、この水Wの流れでもって、各水車部本体31を一挙に回動させ、このトルクを軸部32に伝達させる。
なお、図11においては、軸部32を一点鎖線で仮想的に示している。
【0065】
ここで、図11に概略的に示すように、管状体2は、発電装置4の内部において湾曲しており、その先端部は、図1に示す河川Rへと向かっている。
これにより、管状体2を流れる水Wは、河川Rへと放水される。
【0066】
また、図11に概略的に示すように、軸部32は、管状体2の湾曲部分において、管状体2を貫通し、増速機41及び発電装置本体42に接続されている。
増速機41及び発電装置本体42は、例えば風力発電機等において広く用いられているような、中心軸の回動を利用した、一般的な増速機及び発電装置である。
なお、貫通箇所hについては、水密性及び軸部32の滑らかな回動動作を担保するために、転がり軸受け等の軸受けを設けておく。
【0067】
以上の貯留工程及び放水工程でもって、発電装置4(発電装置本体42)による発電工程が実施され、発電装置4を介して、種々の電子機器への配電や蓄電等が行われる。
また、上記の通り、これと並行して、水力発電設備Zによる発電工程も実施される。
【0068】
<効果>
本実施形態によれば、一の管状体2に複数の水車部本体31が設けられていることで、貯水部1から管状体2に流れる水Wを、効率的に軸部32の回転動力に変換することができ、水力発電システムXの大型化及び、これに伴う発電効率の向上に資する
【0069】
また、単位管状体21の内径を、人が入り込める程度の大きさとした場合、連結管22により、単位管状体21の内部や水車部3のメンテナンス時において、人が間隙を介して入り込むことができ、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0070】
また、水圧鉄管Mと管状体2とを連通させることで、既設の水力発電設備Zに水力発電システムXを適用することができ、水力発電システムXの汎用性が向上する。
【0071】
また、貯留工程において、最下方の単位管状体21から最上方の単位管状体21の内部まで水Wを貯留することで、水Wの位置エネルギーを、終点(管状体2の先端部)から始点(管状体2の基端部)に極力近い位置まで蓄えることができ、より効率の良い発電を行うことができる。
【0072】
また、管状体2の内部を流れる水量が少ない場合であっても、貯留工程でもって、所定量の水Wを貯留して放水することにより、各水車部本体31の各水受け部sに確実に水Wの流れを受けさせ、軸部32へのトルクの伝達を確実に行わせることができる。
【0073】
<変更例>
なお、上述の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0074】
例えば、図12(a)に示すように、各水車部本体31の回動軸は、管状体2の中心軸よりも下方に配置されていても良い。
これにより、管状体2の内部を流れる水量が少ない場合であっても、各水車部本体31の回動を軸部32のトルクに変換する変換効率の減少を、抑制することができる。
【0075】
また、図12(b)に示すように、連結管22による連通手段は、摺動動作によるものに限られず、その外周にハッチHを設けても良い。
【0076】
この他、水力発電システムX、及びこれを用いた水力発電方法について、以下のような変更例が考えられる。
【0077】
例えば、本実施形態においては、管状体2を水圧鉄管Mから分岐させる例を示したが、貯水部1、或いはダムDから直接管状体2を延ばす構成としても良い。
ダムDから直接管状体2を延ばす構成とした場合、ダムD自体が、貯水部1として機能する。
【0078】
また、本実施形態においては、水力発電システムXの構築にあたり、既設の水力発電設備Zや水圧鉄管Mを利用する例を示したが、貯水部1を含めて、水力発電システムXを、既設の水力発電設備Zから離間した場所に新設しても良い。
【0079】
また、本実施形態においては、最上方の単位管状体21まで水Wを貯留する例を示したが、ダムDの貯水量等に応じて、より下方の単位管状体21まで貯留して、放水しても良く、貯留する水量については、特に限定されない。
【0080】
また、本実施形態においては、制水弁v1を完全閉じて、管状体2に水Wを貯留する例を示したが、制水弁v1の開口度合いを調整し、単位時間当たりの流入量を流出量よりも大きくすることで、少しずつ放水しながら貯留工程を実施しても良い。
【0081】
また、本実施形態においては、管状体2への水Wの貯留にあたって制水弁v1を用いる例を示したが、図8下部に示す水圧鉄管Mの例のように、制水弁v1を用いず、流出口の内径を、管状体2全体の内径よりも小さくすることで、単位時間当たりの流入量を流出量より大きくする構成を採用しても良い。
【0082】
また、本実施形態においては、水圧鉄管Mを介して管状体2に水Wを貯留することで、貯留工程を実施する例を示したが、副制水弁v2を閉状態としておき、水圧鉄管Mのみで貯留工程を実施し、水力発電設備Zへの放水にて放水工程、及び発電工程を実施しても良い。
即ち、水力発電システムXを用いず、既設の水力発電設備Zや水圧鉄管Mのみで、水力発電方法(貯留工程、放水工程及び発電工程)を実施しても良い。
【0083】
また、本実施形態においては、水力発電システムXの構成として、一の管状体2を用いる例を示したが、複数の管状体2を用いても良く、この場合、各管状体2が、所定の間隔を空けて水圧鉄管Mから分岐される構成としても良い。
なお、この場合、各管状体2に対応して、増速機41や発電装置本体42も増設されることとなる。
【0084】
ここで、上記構成とする場合、ダムDの貯水量等に応じて、水Wを貯留工程や放水工程を実施する管状体2を選択することができる。
即ち、例えばダムDの貯水量が少ない場合、最下方の管状体2の副制水弁v2を開状態とし、この管状体2のみでもって貯留工程や放水工程を実施し、対応する発電装置本体42による発電工程を実施することができる。
また、例えばダムDの貯水量が多い場合、最上方の管状体2以外の副制水弁v2を閉状態とし、図9(b)に示すように、最上方の管状体2のみでもって貯留工程や放水工程を実施し、対応する発電装置本体42による発電工程を実施することができる。
さらに、図9(b)に示す状態から、各管状体2の副制水弁v2を開状態とすることで、各管状体2を用いて、貯留工程や放水工程を実施し、それぞれに対応する発電装置本体42による発電工程を、一挙に実施することができる。
【符号の説明】
【0085】
X 水力発電システム
1 貯水部
2 管状体
21 単位管状体
22 連結管
3 水車部
31 水車部本体
32 軸部
4 発電装置
41 増速機
42 発電装置本体
5 支持部
51 脚部
52 基台部
53 固定リング
D ダム
M 水圧鉄管(既設の管状体)
Z 水力発電設備
W 水
【要約】
【課題】略筒形状の水車を用いた発電システム及び発電方法であって、その発電効率をより向上させた水力発電システム及び水力発電方法を提供する。
【解決手段】貯水部1と、貯水部1の水Wを下方に流すための管状体2と、管状体2の内部に配置された水車部3と、管状体2の先端部に配置される発電装置4と、を備え、水車部3は、水Wの流れによって回動する略筒形状の水車部本体31と、水車部本体31の回動軸を形成する軸部32と、を有し、水車部本体31は、管状体2の長さ方向に沿って、略同軸上に複数配置され、軸部32は、管状体2の長さ方向の略全長に亘って延び、発電装置4に接続され、発電装置4は、各水車部本体31の回動に伴う軸部32の回転動力を電力に変換する。
【選択図】図1
図1
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図12