(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】ディーゼルエンジンの排気処理装置およびディーゼルエンジン
(51)【国際特許分類】
F01N 3/023 20060101AFI20240117BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
F01N3/023 Z
F01N3/023 K
F01N3/24 Z
(21)【出願番号】P 2020211467
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100187377
【氏名又は名称】芳野 理之
(74)【代理人】
【識別番号】100098796
【氏名又は名称】新井 全
(74)【代理人】
【識別番号】100121647
【氏名又は名称】野口 和孝
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】吉田 怜央
(72)【発明者】
【氏名】小村 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】坂口 久美子
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-24107(JP,A)
【文献】特開2019-127903(JP,A)
【文献】特開2001-73764(JP,A)
【文献】特開2006-291909(JP,A)
【文献】特開2007-85292(JP,A)
【文献】特開2020-41440(JP,A)
【文献】特開2008-298060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/023
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼル微粒子捕集フィルタを収容しているケーシングと、前記ケーシングの周囲に設けられる金属製の配管と、を有するディーゼルエンジンの排気処理装置であって、
前記配管を前記ケーシングに対して位置決めして固定するため
の板状の配管固定部材
と、
前記ディーゼル微粒子捕集フィルタで捕捉した粒子状物質の堆積量を予測するために、前記ディーゼル微粒子捕集フィルタの上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサと、
前記ケーシングの周囲に配置された帯状部材と、
を備え
、
前記配管は、
前記ディーゼル微粒子捕集フィルタの前記上流側と前記差圧センサとを接続する第1配管と、
前記ディーゼル微粒子捕集フィルタの前記下流側と前記差圧センサとを接続する第2配管と、
を有し、
前記配管固定部材は、
前記ケーシングと前記差圧センサとの間に配置されて前記帯状部材の外周面に沿って湾曲し前記ケーシングから前記差圧センサへ熱が伝わるのを遮断する遮熱部材と、
前記遮熱部材を前記帯状部材に固定する第1固定部と、
前記第1配管の位置を固定する第2固定部と、
前記第2配管の位置を固定する第3固定部と、
を有し、
前記第1固定部は、前記遮熱部材が前記外周面に沿って湾曲した方向の両側における前記帯状部材の縁部を挟み込む爪部分を有し、前記爪部分が前記縁部を挟むことで前記遮熱部材を前記帯状部材に固定したことを特徴とするディーゼルエンジンの排気処理装置。
【請求項2】
前記遮熱部材は、一端部に形成された前記第1固定部と、他端部に形成された延長部分と、を有し、
前記延長部分は、固定用部材と重ね合わせて前記固定用部材に固定されており、
前記第2固定部は、前記延長部分の一端部と前記固定用部材の一端部とにより構成され、
前記第3固定部は、前記延長部分の他端部と前記固定用部材の他端部とにより構成されたことを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジンの排気処理装置。
【請求項3】
前記第2固定部は、
前記延長部分の一端部と前記固定用部材の一端部とを重ね合わせることで前記第1配管の周囲面を
挟み込んで固定し、前記第3固定部は、
前記延長部分の他端部と前記固定用部材の他端部とを重ね合わせることで前記第2配管の周囲面を
挟み込んで固定することを特徴とする請求項
2に記載のディーゼルエンジンの排気処理装置。
【請求項4】
前記差圧センサは、可撓性を有する非金属製の第1接続管により前記第1配管に接続され、可撓性を有する非金属製の第2接続管により前記第2配管に接続されていることを特徴とする請求項
1~3のいずれか1項に記載のディーゼルエンジンの排気処理装置。
【請求項5】
前記第1固定部が
前記遮熱部材を前記帯状部材
に固定した状態では、前記遮熱部材と前記帯状部材との間には、隙間が設けられていることを特徴とする請求項
1~4のいずれか1項に記載のディーゼルエンジンの排気処理装置。
【請求項6】
ディーゼル微粒子捕集フィルタを収容しているケーシングと、前記ケーシングの周囲に設けられる金属製の配管と、を有するディーゼルエンジンの排気処理装置を備えるディーゼルエンジンであって、
前記ディーゼルエンジンの排気処理装置は、
前記配管を前記ケーシングに対して位置決めして固定するため
の板状の配管固定部材
と、
前記ディーゼル微粒子捕集フィルタで捕捉した粒子状物質の堆積量を予測するために、前記ディーゼル微粒子捕集フィルタの上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサと、
前記ケーシングの周囲に配置された帯状部材と、
を備え
、
前記配管は、
前記ディーゼル微粒子捕集フィルタの前記上流側と前記差圧センサとを接続する第1配管と、
前記ディーゼル微粒子捕集フィルタの前記下流側と前記差圧センサとを接続する第2配管と、
を有し、
前記配管固定部材は、
前記ケーシングと前記差圧センサとの間に配置されて前記帯状部材の外周面に沿って湾曲し前記ケーシングから前記差圧センサへ熱が伝わるのを遮断する遮熱部材と、
前記遮熱部材を前記帯状部材に固定する第1固定部と、
前記第1配管の位置を固定する第2固定部と、
前記第2配管の位置を固定する第3固定部と、
を有し、
前記第1固定部は、前記遮熱部材が前記外周面に沿って湾曲した方向の両側における前記帯状部材の縁部を挟み込む爪部分を有し、前記爪部分が前記縁部を挟むことで前記遮熱部材を前記帯状部材に固定したことを特徴とするディーゼルエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気処理装置およびディーゼルエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気処理装置は、DPFマフラともいい、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ:ディーゼル微粒子捕集フィルタ)およびDOC(ディーゼル酸化触媒)等を有している。DPFは、PM(粒子状物質の略称)を捕集する。DOCは、HC(炭化水素)とCO(一酸化炭素)を酸化させる。DOCは、排気ガスを昇温させ、DPF内のPMを燃焼させる。排気処理装置は、DPFで捕捉したPMの堆積量を予測するために、差圧センサを用いて圧力を測定している。差圧センサは、DPFの上流側と下流側との差圧を検出する。排気処理装置は、DPFにより排気中のPMを捕捉して、差圧センサにより検出したDPFの上流側と下流側との差圧に基づいて、PM堆積量を推定する。PM堆積量が所定の再生要求量になると、排気処理装置は、排気温度を上げて、DPFに堆積したPMを燃焼して除去することで、DPFを再生する。
【0003】
排気処理装置では、鋼管がDPFのアッセンブリのボスに組み付けられており、差圧センサはDPFの周辺に配置されている。差圧センサのボディ部分は樹脂製である。排気処理装置の内部では、温度が高くなりしかも圧力が高いために、排気処理装置の材料としてSUS材が使用されている。また、シール構造はメタルタッチである。さらに、鋼管が排気処理装置の振動により共振して破損しないように、鋼管の振れを抑制するステーが組付けられている場合もある。特許文献1には、差圧センサを備える排気処理装置が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の排気処理装置では、製造工程において鋼管を組み付ける時に、ステーが無いと鋼管の位置が決まらないので鋼管の組付け作業が難しい。すなわち、鋼管の固定構造が鋼管の取付ネジ部による一か所の固定構造になるために、鋼管の回転方向を規制することができない。鋼管の回転方向の規制を行うためにステーを追加して使用すると、ステーを固定するために、銀ロウ付け工程が必要になるので、排気処理装置の製造コストのアップにつながる。
【0005】
差圧センサは、差圧パイプを介してDPFの上流側と下流側に接続されている。差圧パイプは、可撓性を有するゴムチューブを少なくとも一部に有しており、高温の熱源であるDPFの近傍に配置されている。そのため、差圧センサと差圧パイプのうちのゴムチューブとは、DPFから熱害の影響を受け易い。特に、小型のディーゼルエンジンでは、排気処理装置の設置スペースが限られる。そのために、差圧センサと差圧パイプのうちのゴムチューブとは、高温の熱源であるDPFに近接してしまい、DPFから熱害の影響をより受け易いという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、ディーゼル微粒子捕集フィルタを有するケーシングの周囲に配置される配管の組付け性を改善して、ケーシングに対する配管の位置決めを確実にしかも容易に行うことができるディーゼルエンジンの排気処理装置およびディーゼルエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、ディーゼル微粒子捕集フィルタを収容しているケーシングと、前記ケーシングの周囲に設けられる金属製の配管と、を有するディーゼルエンジンの排気処理装置であって、前記配管を前記ケーシングに対して位置決めして固定するための耐熱性を有する板状の配管固定部材を備えることを特徴とする本発明に係るディーゼルエンジンの排気処理装置により解決される。
【0009】
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置は、配管をケーシングに対して位置決めして固定するための耐熱性を有する板状の配管固定部材を備えるので、ディーゼル微粒子捕集フィルタを有するケーシングの周囲に配置される配管の組付け性を改善して、ケーシングに対する配管の位置決めを確実にしかも容易に行うことができる。配管はケーシングに対して確実に固定でき、配管の耐振動性を向上できる。
【0010】
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置は、好ましくは、前記ディーゼル微粒子捕集フィルタで捕捉した粒子状物質の堆積量を予測するために、前記ディーゼル微粒子捕集フィルタの上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサをさらに備え、前記配管は、前記ディーゼル微粒子捕集フィルタの前記上流側と前記差圧センサとを接続する第1配管と、前記ディーゼル微粒子捕集フィルタの前記下流側と前記差圧センサとを接続する第2配管と、を有することを特徴とする。
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置は、差圧センサに接続される第1配管と第2配管の組付け性を改善して、ケーシングに対する第1配管と第2配管との位置決めを確実にしかも容易に行うことができる。
【0011】
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置において、好ましくは、前記配管固定部材は、前記ケーシングと前記差圧センサとの間に配置されて前記ケーシングから前記差圧センサへの輻射熱が伝わるのを遮断する遮熱部材を有することを特徴とする。
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置によれば、遮熱部材がケーシングと差圧センサとの間に配置されているので、遮熱部材がケーシングからの熱を遮断して差圧センサに伝わるのを防ぎ、差圧センサに対する熱害の影響を軽減もしくは無くすことができる。
【0012】
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置において、好ましくは、前記差圧センサは、可撓性を有する非金属製の第1接続管により前記第1配管に接続され、可撓性を有する非金属製の第2接続管により前記第2配管に接続されていることを特徴とする。
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置によれば、可撓性を有する非金属製の第1接続管および第2接続管が第1配管および第2配管から伝わる振動を減衰するため、第1接続管および第2接続管に接続される差圧センサの耐振動性を改善できる。さらに、遮熱部材がケーシングからの熱を遮断して第1接続管と第2接続管と差圧センサとに対する熱害の影響を軽減もしくは無くすことができる。
【0013】
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置は、好ましくは、前記ケーシングの周囲に配置された帯状部材をさらに備え、前記配管固定部材は、前記遮熱部材を前記帯状部材に固定する第1固定部と、前記第1配管の位置を固定する第2固定部と、前記第2配管の位置を固定する第3固定部と、を有することを特徴とする。
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置によれば、配管固定部材は、第1固定部により遮熱部材をケーシングの帯状部材に確実に固定した状態で、第2固定部と第3固定部とにより第1配管と第2配管とのそれぞれの位置を固定することができる。従って、第1配管と第2配管とが振動するのを防ぎ、第1配管と第2配管との耐振動性を向上できる。
【0014】
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置において、好ましくは、前記第1固定部は、前記帯状部材の両側の縁部を挟むことで前記遮熱部材を前記帯状部材に対して固定し、前記第2固定部は、前記第1配管の周囲面を固定し、前記第3固定部は、前記第2配管の周囲面を固定することを特徴とする。
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置によれば、第1固定部は、帯状部材の両側の縁部を挟むだけで、遮熱部材を帯状部材に確実に固定できる。第2固定部と第3固定部とは、第1配管と第2配管とのそれぞれの位置を固定することができる。従って、第1配管と第2配管とが振動するのを防ぎ、第1配管と第2配管との耐振動性を向上できる。
【0015】
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置において、好ましくは、前記第1固定部が前記帯状部材の前記両側の縁部を挟んで固定した状態では、前記遮熱部材と前記帯状部材との間には、隙間が設けられていることを特徴とする。
本発明のディーゼルエンジンの排気処理装置によれば、隙間が遮熱部材と帯状部材との間に形成されているので、ケーシングの熱が、帯状部材を通じて遮熱部材には直接的には伝熱しない。従って、遮熱部材自体が高温になってしまうのを防いでいて、遮熱部材が高温になるのを抑制できる。これにより、遮熱部材は、差圧センサを遮熱するための遮熱効果を上げることができる。
【0016】
また、前記課題は、ディーゼル微粒子捕集フィルタを収容しているケーシングと、前記ケーシングの周囲に設けられる金属製の配管と、を有するディーゼルエンジンの排気処理装置を備えるディーゼルエンジンであって、前記ディーゼルエンジンの排気処理装置は、前記配管を前記ケーシングに対して位置決めして固定するための耐熱性を有する板状の配管固定部材を備えることを特徴とする本発明に係るディーゼルエンジンにより解決される。
【0017】
本発明のディーゼルエンジンによれば、排気処理装置は、配管をケーシングに対して位置決めして固定するための耐熱性を有する板状の配管固定部材を備えるので、ディーゼル微粒子捕集フィルタを有するケーシングの周囲に配置される配管の組付け性を改善して、ケーシングに対する配管の位置決めを確実にしかも容易に行うことができる。配管はケーシングに対して確実に固定でき、配管の耐振動性を向上できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ディーゼル微粒子捕集フィルタを有するケーシングの周囲に配置される配管の組付け性を改善して、ケーシングに対する配管の位置決めを確実にしかも容易に行うことができるディーゼルエンジンの排気処理装置およびディーゼルエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンの排気処理装置を示す断面図である。
【
図2】
図1に示すディーゼルエンジンの排気処理装置が搭載されているディーゼルエンジンを示す斜視図である。
【
図3】
図2に示すディーゼルエンジンの排気処理装置が搭載されているディーゼルエンジンを示す正面図である。
【
図4】ディーゼルエンジンの排気処理装置が搭載されているディーゼルエンジンを示す側面図である。
【
図5】配管固定部材の好ましい構造例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0021】
(ディーゼルエンジンの排気処理装置1の構成例)
図1は、本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンの排気処理装置を示す断面図である。
図1に示すディーゼルエンジンの排気処理装置1は、例えば産業用のディーゼルエンジンに搭載される。産業用のディーゼルエンジンとしては、例えば建設機械、農業機械、芝刈り機等に搭載されるが、ディーゼルエンジン100が搭載される機器の種類は、特に限定されない。
【0022】
ディーゼルエンジン100の排気処理装置(以下、排気処理装置という)1は、DPFマフラともいい、耐熱性を有する金属製の円筒状のケーシング2と、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ:ディーゼル微粒子捕集フィルタ)3と、DOC(ディーゼル酸化触媒)4と、一方と他方の断熱材5,6と、排気ガス導入部7と、排気ガス排出部8等を有している。ケーシング2は、DPF3とDOC4を収容している。ディーゼルエンジンから排出される排気ガスGは、矢印で示すように、排気ガス導入部7からケーシング2内の排気ガス流路内に導入され、DOC4に通して排気ガスGの昇温を行うことで排気ガスG中のHCとCOが酸化され、そしてDPF3を通過すると、排気ガスG中のPM(粒子状物質の略称)がDPF3に捕集されてPMは燃焼される。その後、排気ガスGは、排気ガス排出部8からディーゼルエンジン100の排気系に送られる。
【0023】
(ディーゼルエンジン100)
図2は、
図1に示す排気処理装置1が搭載されているディーゼルエンジン100を示す斜視図である。
図2に示すように、排気処理装置1のケーシング2の断熱材6寄りの位置は、ディーゼルエンジン100のケーシング固定部101に対して、ブラケット9とボルト9A等を用いて固定されている。同様にして、ケーシング2の
図1に示す断熱材5寄りの位置は、
図2に示すディーゼルエンジン100のケーシング固定部101に対して、ブラケット9とボルト9A等を用いて固定されている。
【0024】
(配管固定部材20と第1配管11と第2配管12)
次に、
図2から
図5を参照して、配管固定部材20と第1配管11と第2配管12を説明する。
図3は、
図2に示す排気処理装置1が搭載されているディーゼルエンジン100を示す正面図である。
図4は、排気処理装置1が搭載されているディーゼルエンジン100を示す側面図である。
図5は、配管固定部材20の好ましい構造例を示す斜視図である。
【0025】
図2から
図4に示すように、ケーシング2の外周面には、断熱材6とDPF3の間の位置に、Vバンドと呼ばれている帯状部材としてのバンド10が、ケーシング2の全周に渡って巻き付けて固定されている。バンド10は、耐熱性の金属板材である。配管固定部材20は、バンド10を利用してバンド10に対して固定されている。
【0026】
図2と
図3に示すように、ケーシング2は、第1配管11と、第2配管12を有している。第1配管11と第2配管12は、ケーシング2の周辺に配置されており、耐熱性を有する金属製のチューブである。第1配管11は、第2配管12に比べて長くなっている。第1配管11は、J字型の湾曲部分11Cと、直線部分11Dと、円弧部分11Eとを有している。第2配管12は、直線部分12C、12Dを有し、ほぼS字型に形成されている。配管固定部材20は、ケーシング2の周辺において、第1配管11と、第2配管12の位置決めをして固定する役割を果たす。
【0027】
図2と
図3に示すように、第1配管11の一端部11Aは、ケーシング2のDPF3に対応する位置に着脱可能に接続されている。第2配管12の一端部12Aは、ケーシング2の断熱材6に近い位置に着脱可能に接続されている。第1配管11の他端部11Bは、可撓性を有する非金属製の第1接続管13の一端部13Aに着脱可能に接続されている。第2配管12の他端部12Bは、可撓性を有する非金属製の第2接続管14の一端部14Aに着脱可能に接続されている。第1接続管13と第2接続管14は、ゴム管等の可撓性を有する非金属製のチューブである。
図2に示すように、第1接続管13の他端部13Bと第2接続管14の他端部14Bは、差圧センサ40に接続されている。
【0028】
(差圧センサ40)
図2に示す差圧センサ40は、ディーゼル微粒子捕集フィルタであるDPF3で捕捉したPMの堆積量を予測するために、DPF3の上流側と下流側との差圧を検出する。差圧センサ40は、第1配管11と第1接続管13を通じてDPF3の上流側の圧力を得て、第2配管12と第2接続管14を通じてDPF3の下流側の圧力を得ることで、DPF3の上流側と下流側との差圧を検出する。そして、
図2に示すディーゼルエンジン100のエンジンECU(電子制御ユニット)のような制御部200は、差圧センサ40により検出したDPF3の上流側と下流側との差圧に基づいて、DPF3におけるPM堆積量を推定して、PM堆積量が所定の再生要求量になると、排気温度を上げて、DPF3に堆積したPMを燃焼して除去することで、DPF3を再生する。
【0029】
(配管固定部材20の詳しい構造例の説明)
次に、
図2から
図5を参照して、配管固定部材20の構造例を詳しく説明する。
図5は、配管固定部材20の構造例を示しているが、配管固定部材20は、鉄板のような耐熱性の金属板材を例えばプレス成型することにより作られている板状の部材であり、排気処理装置1が発生する熱により変形しない。
【0030】
配管固定部材20は、第1配管11と第2配管12をケーシング2に対して位置決めして固定する位置決め固定の役割だけでなく、差圧センサ40と、可撓性を有する例えばゴム管である第1接続管13と第2接続管14とを、ケーシング2から発生している高熱を遮断する遮熱の役割をも果たす。
【0031】
図5と
図3に示すように、配管固定部材20は、第1固定部21と、第2固定部22と、第3固定部23と、遮熱部材24を有する。遮熱部材24は、例えばほぼ矩形の板材であり、バンド10の外周面10Rに沿って湾曲している。遮熱部材24の一端部には、第1固定部21が形成されており、遮熱部材24の他端部には、延長部分25が形成されている。
図5に示すように、第1固定部21は、バンド10の両方の縁部10F、10Fを挟み込む爪部分21R、21Rを有する。これにより、遮熱部材24は、爪部分21R、21Rによりバンド10を挟み込むようにして固定されている。
【0032】
図5と
図4に示すように、好ましくは、遮熱部材24の内面とバンド10の表面との間は、所定の隙間DSだけ離している。隙間DSが遮熱部材24の内面とバンド10の表面との間に形成されているので、ケーシング2の高熱が、金属製のバンド10を通じて遮熱部材24には直接的には伝熱しない。これにより、遮熱部材24自体が高温になってしまうのをできる限り防いでいて、遮熱部材24が高温になるのを抑制できるので、遮熱部材24は、差圧センサ40と第1接続管13と第2接続管14を遮熱するための遮熱効果を上げることができる。
【0033】
図5に示すように、延長部分25は、固定用の部材26と重ね合わせてあり、延長部分25と固定用の部材26は、2組のボルト27とナット28により固定されている。延長部分25の一端部と固定用の部材26の一端部は、第2固定部22を構成しており、延長部分25の他端部と固定用の部材26の他端部は、第3固定部23を構成している。第2固定部22は、延長部分25のほぼC字型の部分25Gと、固定用の部材26のほぼC字型の部分26Gとを重ね合わせ、そしてボルト27とナット28を用いることで、第1配管11の直線部分11Dの周囲面を挟み込んで固定している。同様にして、第3固定部23は、延長部分25のほぼC字型の部分25Hと、固定用の部材26のほぼC字型の部分26Hとを重ね合わせ、そしてボルト27とナット28を用いることで、第2配管12の直線部分12Dの周囲面を挟み込んで固定している。
【0034】
このように、ボルトとナットを使用するだけで、第1配管11と第2配管12は、配管固定部材20を用いて、ケーシング2に対して確実にしかも簡単に位置決めして固定できる。配管固定部材20は安価であり、第1配管11と第2配管12の位置決め固定作業が容易なために、組み立て作業時における第1配管11と第2配管12の固定作業性が向上する。第1配管11と第2配管12の位置決め固定には、従来のようにステーを銀ロウ付けする作業が不要なので、作業効率が改善し、コストダウンが図れる。
【0035】
第2固定部22は、第1配管11の直線部分11Dの周囲面を挟み込むようにして接触して固定し、第3固定部23は、第2配管12の直線部分12Dの周囲面を挟み込むようにして接触して固定している。これにより、ディーゼルエンジン100の図示しない冷却ファンからの冷却風CLを受けると、第2固定部22と第3固定部23は、第1配管11と第2配管12を冷却できる冷却部として機能するので、第1配管11と第2配管12の放熱性が向上し、第1配管11と第2配管12の冷却を促進できる。
【0036】
以上説明したように、板状の配管固定部材20は、ケーシング2に対して、第1配管11と、第2配管12の位置決めをして固定する役割を果たす。しかも、配管固定部材20は、ケーシング2とディーゼルエンジン100との間の狭いスペースにおいて、第1配管11と、第2配管12の位置決めをして固定することができる。しかも、板状の配管固定部材20の遮熱部材24は、樹脂製の差圧センサ40と、可撓性を有する例えばゴム管である第1接続管13と第2接続管14とを、ケーシング2から発生している高温度の輻射熱を遮断する遮熱の役割をも果たす。板状の遮熱部材24による遮熱効果により、ケーシング2の周辺に配置されている周辺部品である樹脂製の差圧センサ40と、可撓性を有する例えばゴム管である第1接続管13と第2接続管14の熱害の影響を軽減もしくは無くすことができる。
【0037】
また、板状の遮熱部材24の面積を大きく確保することで、ディーゼルエンジン100の冷却ファン(図示せず)からの冷却風がこの遮熱部材24に当たることから、遮熱部材24自体の温度を下げることができる。従って、遮熱部材24により樹脂製の差圧センサ40と、可撓性を有する例えばゴム管である第1接続管13と第2接続管14に対して、ケーシング2から発生している高熱を遮断する遮熱の能力が増す。特に、小型のディーゼルエンジンの場合には、設置スペースの制約からケーシング2と、差圧センサ40や第1接続管13と第2接続管14との位置がより近接してしまうが、遮熱部材24を有する板状の配管固定部材20は、小型のディーゼルエンジンの場合であっても、遮熱の能力を確保でき、特に有用である。
【0038】
板状の配管固定部材20は、第1配管11と第2配管12の位置決めをして固定できるので、第1配管11と第2配管12の耐振動性を向上できる。さらに、可撓性を有する第1接続管13と第2接続管14とが、第1配管11および第2配管12から伝わる振動を減衰することと相まって、第1接続管13および第2接続管14に接続される差圧センサ40が、ディーゼルエンジンの振動により大きく振動するのを抑制できる。従って、第1接続管13と第2接続管14および差圧センサ40の耐振動性をも改善できる。
【0039】
板状の配管固定部材20は、第1配管11と第2配管12と第1接続管13と第2接続管14を、ケーシング2とディーゼルエンジン100との間の狭いスペースにおいて、組み付ける組付け作業性を改善できる。ディーゼル微粒子捕集フィルタと差圧センサとを接続する配管の組付け性を改善して、ディーゼル微粒子捕集フィルタに対する配管の位置決めを確実にしかも容易に行うことができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
例えば、図示例では、配管固定部材20が固定される対象が、ケーシング2の外周面に取り付けられているバンド10であるが、
図4に示す排気ガス排出部8等であっても良く、特に限定されない。
【0041】
図5に示すように、配管固定部材20の延長部分25と固定用の部材26は、2組のボルト27とナット28により固定することで、第2固定部22と第3固定部23を得ている。しかし、固定用の部材26は用いずに、延長部分25の両端部には例えばバネ性を有するC字型もしくはΩ(オーム)型の第2固定部22と第3固定部23を形成して、C字型の第2固定部22と第3固定部23には、第1配管11の直線部分11Dと第2配管12の直線部分12Dをそれぞれはめ込む。これにより、配管固定部材20が第1配管11と第2配管12を固定するようにしても良く、配管固定部材20の構造が簡単になり、部品点数を減らすことができる。
【0042】
図示例では、板状の配管固定部材により固定される配管としては、差圧センサに接続される配管を例に挙げているが、これに限らず、配管固定部材は、ケーシングの周囲に配置される各種の配管の固定に用いることができる。耐熱性を有する板状の配管固定部材は、金属材に限らず、非金属材例えばセラミック板であっても良い。
【符号の説明】
【0043】
1:排気処理装置、 2:ケーシング、 3:DPF、 4:DOC、 5、6:断熱材、 7:排気ガス導入部、 8:排気ガス排出部、 9:ブラケット、 9A:ボルト、 10:バンド、 10F:縁部、 10R:外周面、 11:第1配管、 11A:一端部、 11B:他端部、 11C:湾曲部分、 11D:直線部分、 11E:円弧部分、 12:第2配管、 12A:一端部、 12B:他端部、 12C、12D:直線部分、 13:第1接続管、 13A:一端部、 13B:他端部、 14:第2接続管、 14A:一端部、 14B:他端部、 20:配管固定部材、 21:第1固定部、 21R:爪部分、 22:第2固定部、 23:第3固定部、 24:遮熱部材、 25:延長部分、 25G、25H:部分、 26:部材、 26G、26H:部分、 27:ボルト、 28:ナット、 40:差圧センサ、 100:ディーゼルエンジン、 101:ケーシング固定部、 200:制御部、 CL:冷却風、 DS:隙間、 G:排気ガス