(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】開閉体の開閉装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
E06B 9/82 20060101AFI20240117BHJP
E06B 9/68 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
E06B9/82 H
E06B9/68 A
(21)【出願番号】P 2023190413
(22)【出願日】2023-10-19
【審査請求日】2023-10-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592185976
【氏名又は名称】株式会社ハアーモニー
(74)【代理人】
【識別番号】100210963
【氏名又は名称】松下 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】染矢 丈
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特許第6952232(JP,B1)
【文献】特開2013-155535(JP,A)
【文献】特開平11-71977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/82
E06B 9/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放方向及び閉鎖方向の双方向に動作可能に支持された開閉体の開閉動作を行うためのモータと、
該モータの回転に連動してその回転方向及び回転変化量が識別可能に出力されるモータ回転パルスのカウント値に基づいて前記開閉体の開閉位置を検出する位置検出部と、
前記開閉体の開閉動作又は停止を指示する操作信号を入力する操作入力部と、
前記操作信号及び前記位置検出部で検出した位置情報に基づいて前記モータを制御する制御部とを備えた開閉体の開閉装置の制御方法であって、
前記制御部は、
電源投入後において、前記操作信号及び前記位置情報に基づいて前記開閉体をあらかじめ設定した全開位置と全閉位置との間で開閉動作させる通常運転モードよりも前に、前記全開位置及び前記全閉位置の基準となる原点位置を検出するための運転を行う原点復帰運転モードを実行するようになっていて、
前記原点復帰運転モードにおいて、
電源投入後に前記開閉体を前記開放方向へ開放動作させることによって前記原点位置の検出が可能となる位置で前記開閉体が停止している状態で、前記開閉体を開放動作させて前記原点位置を検出するよりも前に閉鎖動作を指示する前記操作信号があった場合に、前記開閉体を前記閉鎖方向へ閉鎖動作させる第1閉鎖動作ステップと、
前記第1閉鎖動作ステップによる閉鎖動作中に前記開閉体が前記閉鎖方向へそれ以上動作出来ないことを検知して前記モータを停止させる第1障害検知停止ステップと、
前記第1障害検知停止ステップで前記モータが停止した位置を第1位置として記憶する第1位置記憶ステップと、
前記第1位置記憶ステップの後に前記開閉体を前記開放方向へ所定の移動量又は所定時間だけ自動的に開放動作させて前記モータを停止させる障害停止後自動開放動作ステップと、
前記障害停止後自動開放動作ステップによる開放動作後の停止から所定時間経過後に前記開閉体を再び前記閉鎖方向へ自動的に閉鎖動作させる第2閉鎖動作ステップと、
前記第2閉鎖動作ステップによる閉鎖動作中に前記開閉体が前記閉鎖方向へそれ以上動作出来ないことを検知して前記モータを停止させる第2障害検知停止ステップと、
前記第2障害検知停止ステップで前記モータが停止した位置を第2位置として記憶する第2位置記憶ステップと、
前記第1位置と前記第2位置が一致しているか否かを判定する位置判定ステップとを実行して、
前記位置判定ステップによって前記第1位置と前記第2位置が一致していると判定された場合には、その位置又は同位置に対して所定カウント値のオフセット量だけ補正した位置を前記原点位置に基づいて定まる前記全閉位置の仮の位置となる仮全閉位置に決定し、それ以降、前記原点位置を検出して当該原点復帰運転モードを終了するまでは、閉鎖動作を指示する前記操作信号があった場合に、前記開閉体を前記閉鎖方向へ閉鎖動作させて、前記仮全閉位置で停止させるようになっている
開閉体の開閉装置の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉体の開閉装置の制御方法であって、
前記原点復帰運転モードにおいて、
前記位置判定ステップによって前記第1位置と前記第2位置が一致していると判定されて、前記仮全閉位置が決定した場合に、該仮全閉位置のカウント値が前記全閉位置に相当するカウント値となるように、前記仮全閉位置のカウント値及び前記第2障害検知停止ステップで停止した位置のカウント値を置き換えてから、それ以降の処理を実行するようになっている
開閉体の開閉装置の制御方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の開閉体の開閉装置の制御方法であって、
前記原点復帰運転モードにおいて、
前記仮全閉位置の決定後に開放動作を指示する前記操作信号によって前記開閉体を前記開放方向へ開放動作させた場合に、前記仮全閉位置から見た前記開放方向への移動量が前記全閉位置と前記原点位置の間の距離に相当するカウント値を超える所定移動量に達しても前記原点位置が検出出来ないときは、前記原点位置の検出異常として前記モータを停止させると共に、前記仮全閉位置を破棄して該仮全閉位置の決定前の状態から当該原点復帰運転モードを再開させるようになっている
開閉体の開閉装置の制御方法。
【請求項4】
開放方向及び閉鎖方向の双方向に動作可能に支持された開閉体の開閉動作を行うためのモータと、
該モータの回転に連動してその回転方向及び回転変化量が識別可能に出力されるモータ回転パルスのカウント値に基づいて前記開閉体の開閉位置を検出する位置検出部と、
前記開閉体の開閉動作又は停止を指示する操作信号を入力する操作入力部と、
前記操作信号及び前記位置検出部で検出した位置情報に基づいて前記モータを制御する制御部とを備えた開閉体の開閉装置であって、
前記制御部は、
電源投入後において、前記操作信号及び前記位置情報に基づいて前記開閉体をあらかじめ設定した全開位置と全閉位置との間で開閉動作させる通常運転モードよりも前に、前記全開位置及び前記全閉位置の基準となる原点位置を検出するための運転を行う原点復帰運転モードを実行するようになっていて、
電源投入後に前記開閉体を前記開放方向へ開放動作させることによって前記原点位置の検出が可能となる位置で前記開閉体が停止している状態で、前記開閉体を開放動作させて前記原点位置を検出するよりも前に閉鎖動作を指示する前記操作信号があった場合に、前記開閉体を前記閉鎖方向へ閉鎖動作させる第1閉鎖動作手段と、
前記第1閉鎖動作手段による閉鎖動作中に前記開閉体が前記閉鎖方向へそれ以上動作出来ないことを検知して前記モータを停止させる第1障害検知停止手段と、
前記第1障害検知停止手段で前記モータが停止した位置を第1位置として記憶する第1位置記憶手段と、
前記第1位置記憶手段により前記第1位置を記憶した後に前記開閉体を前記開放方向へ所定の移動量又は所定時間だけ自動的に開放動作させて前記モータを停止させる障害停止後自動開放動作手段と、
前記障害停止後自動開放動作手段による開放動作後の停止から所定時間経過後に前記開閉体を再び前記閉鎖方向へ自動的に閉鎖動作させる第2閉鎖動作手段と、
前記第2閉鎖動作手段による閉鎖動作中に前記開閉体が前記閉鎖方向へそれ以上動作出来ないことを検知して前記モータを停止させる第2障害検知停止手段と、
前記第2障害検知停止手段で前記モータが停止した位置を第2位置として記憶する第2位置記憶手段と、
前記第1位置と前記第2位置が一致しているか否かを判定する位置判定手段とを備えて、これらを前記原点復帰運転モードにおいて実行し、
前記位置判定手段によって前記第1位置と前記第2位置が一致していると判定された場合には、その位置又は同位置に対して所定カウント値のオフセット量だけ補正した位置を前記原点位置に基づいて定まる前記全閉位置の仮の位置となる仮全閉位置に決定し、それ以降、前記原点位置を検出して前記原点復帰運転モードを終了するまでは、閉鎖動作を指示する前記操作信号があった場合に、前記開閉体を前記閉鎖方向へ閉鎖動作させて、前記仮全閉位置で停止させるようになっている
開閉体の開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅やビル、工場、倉庫、車庫などの建築物・構築物の開口部に設置される各種のシャッター等の開閉体の開閉装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
開閉体の開閉装置は、開閉体の開閉動作を行うためのモータと、このモータの回転に連動して開閉体の開閉位置を検出する位置検出部と、開閉体の開閉又は停止の操作信号を入力する操作入力部とを備えており、操作入力部からの操作信号と位置検出部で検出した位置情報に基づいてモータを制御することで、開閉体の開閉動作を行うようになっている。
このような開閉体の開閉装置では、開閉体の開閉位置を正しく認識するため、様々な手法が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車庫などに設置される電動シャッターの開閉機において、スラットカーテン(可動部としての開閉部材)の移動位置を検出する位置検出手段として、ポテンショメータを用いたものが開示されている。この電動シャッターの開閉機では、減速機構を有する駆動モータとスラットカーテンとの間の駆動伝達系において、駆動モータの減速機構の出力軸にポテンショメータが連動するように設けられて、前記出力軸の回転がスラットカーテンの巻胴を回転させる出力系とポテンショメータのそれぞれに伝達されるようになっている。そして、前記出力軸の回転に伴うポテンショメータの出力値(電圧値)を入力インターフェースを介して処理装置に入力することで、スラットカーテンの機械的な移動位置を絶対位置として検出するようになっている。
このポテンショメータを用いた電動シャッターの開閉機では、スラットカーテンの機械的な絶対位置とポテンショメータの出力値が連動していることにより、電源投入直後においても、ポテンショメータの出力値からスラットカーテンの機械的な絶対位置を認識することが可能となっている。
【0004】
また、特許文献2には、シートシャッター等の開閉体の開閉装置において、開閉体が所定の原点位置を通過したことを感知する原点センサと、開閉体の前記原点位置からの変化量をカウント値として認識するカウント手段を具備し、原点センサの感知信号があった場合に、カウント値を前記原点位置を示す動作原点値に補正するようにしたものが開示されている。本事例において、原点センサには、開閉機(電動モータ)の出力軸等の回転部分と同期して回転する機械式のカウンターと、該カウンターによる計数値が所定値になった際に接点信号を出力するリミットスイッチから構成された機械式のカウンタースイッチが用いられている。また、カウント手段は、エンコーダやホールセンサ等によって、開閉機の出力軸等の回転部分の回転量をカウントし、そのカウント値を出力する構成とされている。
この開閉体の開閉装置では、エンコーダやホールセンサ等を用いて出力軸等の回転量をカウントすることにより位置検出を行っているため、電源投入直後は開閉体の機械的な絶対位置が認識出来ない状態であり、動作中に原点センサの感知信号があった時点で、開閉体の動作原点が定まるようになっている。
【0005】
また、特許文献3には、ポテンショメータや原点センサなどの部品を位置検出の手段に用いず、モータ回転パルスのカウント値に基づいて開閉体の開閉位置を検出するシャッター開閉機等の開閉体の開閉装置が開示されている。この開閉体の開閉装置では、通常運転モードよりも前に実行される原点復帰運転モードにおける2回の開放動作によって、それぞれ開閉体が開放方向にそれ以上動作出来ないことを検知して記憶した第1位置と第2位置が一致している場合に、その位置を原点位置に決定している。ここで、開閉体が開放方向にそれ以上動作出来ないことを検知する場合とは、具体的には、開閉体の下端の座板部材が開閉体の収納部のまぐさ部に当接して、モータの回転が機械的にロックされた状態になることを意味する。
この開閉体の開閉装置も、特許文献2に記載の開閉装置と同様、電源投入直後は開閉体の機械的な絶対位置が認識出来ない状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-314285号公報
【文献】特開2013-217056号公報
【文献】特許第6952232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、特許文献2や特許文献3に記載の開閉体の開閉装置では、特許文献1に記載のポテンショメータを位置検出の手段に用いた場合とは異なり、電源投入直後から開閉体の機械的な絶対位置を認識することは出来ない。このため、これらの開閉装置では、電源投入後は、特許文献2の原点センサによる原点位置や特許文献3の開放動作で機械的なロック状態となる原点位置を検出するまで、原点位置から離れる方向への動作を制限するなど、動作上の一定の制限を設ける場合がある。
【0008】
例えば、特許文献2の開閉装置において、原点センサを検出する位置が開閉体の全開位置近くである場合には、特許文献2と特許文献3のいずれの場合も、原点位置を検出するためには、電源投入後に開放方向への開放動作を行う必要がある。このため、これとは逆の閉鎖方向への閉鎖動作に制限を設けて、原点位置を検出するまで、閉鎖動作を禁止にしたり、閉鎖動作を指示する操作スイッチの閉鎖ボタンを押下している間のみ閉鎖動作をさせる(閉鎖ボタンを離すとモータを停止させる)などの制限を加える場合がある。
【0009】
しかしながら、上記のような動作上の制限を設けることは、一般ユーザーには理解されにくく、ユーザーに不自然な操作を強制することにもなることから、苦情や問い合わせの原因となることがある。特に、特許文献3に記載の開閉体の開閉装置では、開放動作で機械的なロック状態となる位置が原点位置となることから、原点位置が通常の全開位置と略同じ位置か又はそれよりも上方に位置し、かつ、電源投入後にこの原点位置を検出するには、必ず開放動作を行う必要がある。このため、開閉体が全開状態で電源の再投入を行った場合には、通常のユーザーであれば、全閉状態となるまで閉鎖動作の操作を行いたいところ、ユーザーにとって不自然な開放動作の操作を強制することになる。
また、特許文献2に記載の開閉装置で、原点センサを検出する位置が全開位置近くである場合も同様であり、開閉体が原点センサの検出位置よりもわずかに下方となる全開状態に近い状態で電源の再投入を行った場合には、ユーザーは、やはり、開放動作の操作は行わずに、最初は全閉状態となるまで閉鎖動作の操作を行おうとするのが自然である。
このため、これらの開閉体の開閉装置でも、電源投入後に、ユーザーに動作上の制限による不自然な操作を強制することがないようにすることが望まれている。
【0010】
本発明の目的は、前記課題を解決するもので、電源投入後に原点位置を検出するまで、開閉体の機械的な絶対位置が認識出来ない状態であっても、ユーザーに動作上の制限による不自然な操作を強制することがないようにした開閉体の開閉装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための本発明の一態様は、開放方向及び閉鎖方向の双方向に動作可能に支持された開閉体の開閉動作を行うためのモータと、該モータの回転に連動してその回転方向及び回転変化量が識別可能に出力されるモータ回転パルスのカウント値に基づいて前記開閉体の開閉位置を検出する位置検出部と、前記開閉体の開閉動作又は停止を指示する操作信号を入力する操作入力部と、前記操作信号及び前記位置検出部で検出した位置情報に基づいて前記モータを制御する制御部とを備えた開閉体の開閉装置の制御方法であって、前記制御部は、電源投入後において、前記操作信号及び前記位置情報に基づいて前記開閉体をあらかじめ設定した全開位置と全閉位置との間で開閉動作させる通常運転モードよりも前に、前記全開位置及び前記全閉位置の基準となる原点位置を検出するための運転を行う原点復帰運転モードを実行するようになっていて、前記原点復帰運転モードにおいて、電源投入後に前記開閉体を前記開放方向へ開放動作させることによって前記原点位置の検出が可能となる位置で前記開閉体が停止している状態で、前記開閉体を開放動作させて前記原点位置を検出するよりも前に閉鎖動作を指示する前記操作信号があった場合に、前記開閉体を前記閉鎖方向へ閉鎖動作させる第1閉鎖動作ステップと、前記第1閉鎖動作ステップによる閉鎖動作中に前記開閉体が前記閉鎖方向へそれ以上動作出来ないことを検知して前記モータを停止させる第1障害検知停止ステップと、前記第1障害検知停止ステップで前記モータが停止した位置を第1位置として記憶する第1位置記憶ステップと、前記第1位置記憶ステップの後に前記開閉体を前記開放方向へ所定の移動量又は所定時間だけ自動的に開放動作させて前記モータを停止させる障害停止後自動開放動作ステップと、前記障害停止後自動開放動作ステップによる開放動作後の停止から所定時間経過後に前記開閉体を再び前記閉鎖方向へ自動的に閉鎖動作させる第2閉鎖動作ステップと、前記第2閉鎖動作ステップによる閉鎖動作中に前記開閉体が前記閉鎖方向へそれ以上動作出来ないことを検知して前記モータを停止させる第2障害検知停止ステップと、前記第2障害検知停止ステップで前記モータが停止した位置を第2位置として記憶する第2位置記憶ステップと、前記第1位置と前記第2位置が一致しているか否かを判定する位置判定ステップとを実行して、前記位置判定ステップによって前記第1位置と前記第2位置が一致していると判定された場合には、その位置又は同位置に対して所定カウント値のオフセット量だけ補正した位置を前記原点位置に基づいて定まる前記全閉位置の仮の位置となる仮全閉位置に決定し、それ以降、前記原点位置を検出して当該原点復帰運転モードを終了するまでは、閉鎖動作を指示する前記操作信号があった場合に、前記開閉体を前記閉鎖方向へ閉鎖動作させて、前記仮全閉位置で停止させるようになっている開閉体の開閉装置の制御方法である。
【0012】
この開閉体の開閉装置の制御方法では、モータ回転パルスのカウント値に基づいて開閉体の開閉位置を検出しており、通常運転モードよりも前に実行する原点復帰運転モードにおいて、全開位置及び全閉位置の基準となる原点位置を検出するようになっている。そして、この原点復帰運転モードにおいて、電源投入後に開閉体を開放方向へ開放動作させることによって原点位置の検出が可能となる位置で開閉体が停止している状態で、開閉体を開放動作させて原点位置を検出するよりも前に閉鎖動作を指示する操作信号があった場合に、これを制限することなく、まず、操作指示通りに開閉体を閉鎖方向(原点位置が検出可能な開放方向とは逆方向)へ閉鎖動作させる(第1閉鎖動作ステップ)。
【0013】
さらに、この閉鎖動作中に開閉体が閉鎖方向へそれ以上動作出来ないことを検知した時にモータを停止させ(第1障害検知停止ステップ)、その位置を第1位置として記憶する(第1位置記憶ステップ)。なお、開閉体が閉鎖方向へそれ以上動作出来ないことを検知する場合とは、具体的には、開閉体と床面の間に障害物が挟まった場合のほか、開閉体の下端の座板部材が床面に当接して、モータの回転が機械的にロックされた状態になる場合が挙げられる。
【0014】
また、開閉体が閉鎖方向へそれ以上動作出来ないことを検知する手法としては、モータ回転パルスから算出されるモータの回転数が規定値を下回ったことや、規定時間内にモータ回転パルスの変化が無かったことによって判定する手法が挙げられる。また、モータ回転パルスによる位置検出の手段とは別に、モータの負荷電流を検出する手段が設けられている場合には、モータの負荷電流が急激に変化したことを検知するによって判定する手法も挙げられる。
【0015】
そして、第1位置を記憶した後は、開閉体を開放方向へ所定の移動量又は所定時間だけ自動的に開放動作させてモータを停止させる(障害停止後自動開放動作ステップ)。この自動的な開放動作は、開閉体と床面の間に障害物が挟まったままにならないようにするため、障害物を検知した際に行う一般的な動作である。
【0016】
さらに、上記の自動的な開放動作後の停止から所定時間経過後に、開閉体を再び閉鎖方向へ自動的に閉鎖動作させる(第2閉鎖動作ステップ)。この自動的な閉鎖動作も、障害物を検知して障害物が除去された後に、開閉体が開きっぱなしの状態にならないようにするため、障害物を検知した際に行う一連の動作の1つである。
そして、最初の閉鎖動作時と同様に、自動的な2回目の閉鎖動作中に開閉体が閉鎖方向へそれ以上動作出来ないことを検知した時にモータを停止させ(第2障害検知停止ステップ)、その位置を第2位置として記憶する(第2位置記憶ステップ)。
【0017】
次いで、第1位置と第2位置が一致しているか否かを判定し(位置判定ステップ)、両位置が一致していると判定された場合には、その位置又は同位置に対して所定カウント値のオフセット量だけ補正した位置を原点位置に基づいて定まる全閉位置の仮の位置となる仮全閉位置に決定する。ここで、第1位置と第2位置が一致する場合とは、障害物を挟み込んで除去されないままになっている場合などを除き、1回目の閉鎖動作と2回目の閉鎖動作の両方で、開閉体の下端の座板部材が床面に当接して、モータの回転が機械的にロックされた場合を想定している。また、仮全閉位置を決定する際の所定カウント値のオフセット量は、モータの回転が機械的にロックされた状態になった時の開閉体のたわみ具合などを考慮して決める値である。これにより、床面付近の位置が仮全閉位置となる。そして、それ以降、原点位置を検出して原点復帰運転モードを終了するまでは、閉鎖動作を指示する操作信号があった場合に、開閉体を閉鎖方向へ閉鎖動作させて、仮全閉位置で停止させるようになっている。これにより、原点位置を検出するまでは、仮全閉位置で通常時と同等の停止処理を行うことが可能となる。
【0018】
なお、2回目の閉鎖動作で第2位置を記憶した後は、1回目の閉鎖動作で第1位置を記憶した後と同じく、障害物を検知した際に行う動作として、開閉体を開放方向に所定の移動量又は所定時間だけ自動的に開放動作させても良いし、前回と同じ位置で障害物を検知した場合に行う動作として、通常よりも短い移動量又時間だけ開放動作させても良い。また、仮全閉位置を正常に検知出来たとして、開放動作を行わず、停止したままにしても良い。
【0019】
また、仮全閉位置を決定した後に、開放動作を指示する操作信号があった場合は、そのまま開放方向に開放動作を行えば、原点位置を検出することが可能になるので、決定した仮全閉位置を停止処理で使用することなく、原点位置を検出して、原点復帰運転モードを終了することもある。また、電源投入後に、始めから原点位置を検出する方向への動作を指示する操作信号があった場合には、上記の制御方法によらずに、原点位置を検出して、原点復帰運転モードを終了することになる。
【0020】
以上により、この開閉体の開閉装置の制御方法によれば、電源投入後に原点位置を検出するまで、開閉体の機械的な絶対位置が認識出来ない開閉装置において、電源投入後に開閉体を開放方向へ開放動作させることによって原点位置の検出が可能となる位置で開閉体が停止している状態で、原点位置を検出するよりも前に閉鎖動作を指示する操作信号があった場合に、これを制限することなく、操作指示通りに開閉体を閉鎖方向へ閉鎖動作させることができる。さらに、その後は、障害物を検知した際に行う一連の動作によって、床面付近の位置が仮全閉位置に決定され、原点位置を検出するまでは、仮全閉位置で通常時と同等の停止処理を行うことができる。このため、ユーザーに動作上の制限による不自然な操作を強制することがない。
【0021】
なお、この開閉体の開閉装置の制御方法は、特許文献2に記載の開閉体の開閉装置のように、機械式のカウンタースイッチ等の原点センサを位置検出の手段に用いたものに適用しても良いし、特許文献3に記載の開閉体の開閉装置のように、原点センサなどの部品を用いず、開放動作で機械的なロック状態となる位置を原点位置とするものに適用しても良い。
特に、特許文献3に記載の開閉体の開閉装置では、原点位置が通常の全開位置と略同じ位置か又はそれよりも上方に位置するが、開閉体が全開状態で電源の再投入を行った場合には、ユーザーは最初に閉鎖動作(原点位置を検出する方向とは逆方向への動作)を行おうとするのが自然である。よって、この制御方法を適用する効果は大きい。
【0022】
また、上述の開閉体の開閉装置の制御方法であって、前記原点復帰運転モードにおいて、前記位置判定ステップによって前記第1位置と前記第2位置が一致していると判定されて、前記仮全閉位置が決定した場合に、該仮全閉位置のカウント値が前記全閉位置に相当するカウント値となるように、前記仮全閉位置のカウント値及び前記第2障害検知停止ステップで停止した位置のカウント値を置き換えてから、それ以降の処理を実行するようになっている開閉体の開閉装置の制御方法としても良い。
【0023】
この開閉体の開閉装置の制御方法では、原点復帰運転モードにおいて、第1位置と第2位置が一致していると判定されて仮全閉位置が決定した場合に、この仮全閉位置のカウント値が全閉位置に相当するカウント値となるように、仮全閉位置のカウント値及び第2障害検知停止ステップで停止した位置のカウント値を置き換えてから、それ以降の処理を実行するようになっている。つまり、本来であれば、原点位置の検出によって初めて現在位置のカウント値の補正が行われて、正規の位置情報に基づく運転に移行するところ、仮全閉位置の決定時に仮全閉位置のカウント値が正規の全閉位置に相当するカウント値となるように、仮全閉位置のカウント値及び現在位置のカウント値の仮補正を行うようになっている。これにより、仮全閉位置を決定した後の原点復帰運転モード中の処理において、位置情報に基づいて行う各種処理を通常運転モードとほぼ同等に行うことが可能となる。ここで、位置情報に基づいて行う処理としては、例えば、通常運転モード時の感度の高い障害物の検知処理(モータの回転が機械的にロックされた状態になるよりも前に高い感度で判定を行う)や位置情報に基づく移報接点出力などの出力処理が挙げられる。
【0024】
さらに、上述のいずれかの開閉体の開閉装置の制御方法であって、前記原点復帰運転モードにおいて、前記仮全閉位置の決定後に開放動作を指示する前記操作信号によって前記開閉体を前記開放方向へ開放動作させた場合に、前記仮全閉位置から見た前記開放方向への移動量が前記全閉位置と前記原点位置の間の距離に相当するカウント値を超える所定移動量に達しても前記原点位置が検出出来ないときは、前記原点位置の検出異常として前記モータを停止させると共に、前記仮全閉位置を破棄して該仮全閉位置の決定前の状態から当該原点復帰運転モードを再開させるようになっている開閉体の開閉装置の制御方法としても良い。
【0025】
この開閉体の開閉装置の制御方法では、原点復帰運転モードにおいて、仮全閉位置の決定後に開閉体を開放方向へ開放動作させた場合に、仮全閉位置から見た開放方向への移動量が正規の全閉位置と原点位置の間の距離に相当するカウント値を超える所定移動量に達しても原点位置が検出出来ないときは、原点位置の検出異常としてモータを停止させる。また、このとき、仮全閉位置を破棄(=決定の取消し)して、仮全閉位置の決定前の状態から原点復帰運転モードを再開させる。これにより、仮全閉位置の決定後に開放動作させた場合に、機械的な故障等の何らかの異常によって原点位置が検出出来ないときでも、あらかじめ設定した所定移動量に達すれば異常を検知してモータを停止させるので、異常状態のまま運転が継続することがなく、安全である。また、その後は、仮全閉位置の決定前の状態にリセットされるので、異常状態が発生した時の仮全閉位置を継続して使用することがない。
【0026】
また、前記課題を解決するための本発明の他の態様は、開放方向及び閉鎖方向の双方向に動作可能に支持された開閉体の開閉動作を行うためのモータと、該モータの回転に連動してその回転方向及び回転変化量が識別可能に出力されるモータ回転パルスのカウント値に基づいて前記開閉体の開閉位置を検出する位置検出部と、前記開閉体の開閉動作又は停止を指示する操作信号を入力する操作入力部と、前記操作信号及び前記位置検出部で検出した位置情報に基づいて前記モータを制御する制御部とを備えた開閉体の開閉装置であって、前記制御部は、電源投入後において、前記操作信号及び前記位置情報に基づいて前記開閉体をあらかじめ設定した全開位置と全閉位置との間で開閉動作させる通常運転モードよりも前に、前記全開位置及び前記全閉位置の基準となる原点位置を検出するための運転を行う原点復帰運転モードを実行するようになっていて、電源投入後に前記開閉体を前記開放方向へ開放動作させることによって前記原点位置の検出が可能となる位置で前記開閉体が停止している状態で、前記開閉体を開放動作させて前記原点位置を検出するよりも前に閉鎖動作を指示する前記操作信号があった場合に、前記開閉体を前記閉鎖方向へ閉鎖動作させる第1閉鎖動作手段と、前記第1閉鎖動作手段による閉鎖動作中に前記開閉体が前記閉鎖方向へそれ以上動作出来ないことを検知して前記モータを停止させる第1障害検知停止手段と、前記第1障害検知停止手段で前記モータが停止した位置を第1位置として記憶する第1位置記憶手段と、前記第1位置記憶手段により前記第1位置を記憶した後に前記開閉体を前記開放方向へ所定の移動量又は所定時間だけ自動的に開放動作させて前記モータを停止させる障害停止後自動開放動作手段と、前記障害停止後自動開放動作手段による開放動作後の停止から所定時間経過後に前記開閉体を再び前記閉鎖方向へ自動的に閉鎖動作させる第2閉鎖動作手段と、前記第2閉鎖動作手段による閉鎖動作中に前記開閉体が前記閉鎖方向へそれ以上動作出来ないことを検知して前記モータを停止させる第2障害検知停止手段と、前記第2障害検知停止手段で前記モータが停止した位置を第2位置として記憶する第2位置記憶手段と、前記第1位置と前記第2位置が一致しているか否かを判定する位置判定手段とを備えて、これらを前記原点復帰運転モードにおいて実行し、前記位置判定手段によって前記第1位置と前記第2位置が一致していると判定された場合には、その位置又は同位置に対して所定カウント値のオフセット量だけ補正した位置を前記原点位置に基づいて定まる前記全閉位置の仮の位置となる仮全閉位置に決定し、それ以降、前記原点位置を検出して前記原点復帰運転モードを終了するまでは、閉鎖動作を指示する前記操作信号があった場合に、前記開閉体を前記閉鎖方向へ閉鎖動作させて、前記仮全閉位置で停止させるようになっている開閉体の開閉装置である。
【0027】
この開閉体の開閉装置では、前述の制御方法において既に説明したように、電源投入後に開閉体を開放方向へ開放動作させることによって原点位置の検出が可能となる位置で開閉体が停止している状態で、原点位置を検出するよりも前に閉鎖動作を指示する操作信号があった場合に、これを制限することなく、操作指示通りに開閉体を閉鎖方向へ閉鎖動作させることができる。また、その後は、障害物を検知した際に行う一連の動作によって、床面付近の位置が仮全閉位置に決定され、原点位置を検出するまでは、仮全閉位置で通常時と同等の停止処理を行うことができる。これにより、ユーザーに動作上の制限による不自然な操作を強制することがない開閉体の開閉装置とすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の開閉体の開閉装置及びその制御方法によれば、電源投入後に原点位置を検出するまで、開閉体の機械的な絶対位置が認識出来ない状態であっても、ユーザーに動作上の制限による不自然な操作を強制することがない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1~第2実施形態に係る開閉体であるシャッターのスラットカーテン、及び、その開閉装置であるシャッター開閉機の取り付け状態を示す外観全体の説明図。
【
図2】第1~第2実施形態に係るシャッター開閉機の電気的な構成を示す説明図。
【
図3】第1~第2実施形態に係るシャッター開閉機の電源投入後における原点復帰運転モードと通常運転モードの実行順の関係を示すフローチャート。
【
図4】第1~第2実施形態に係るシャッター開閉機の通常運転モードにおける動作のうち、閉鎖動作の部分を示すフローチャート。
【
図5】第1~第2実施形態に係るシャッター開閉機の通常運転モードにおける動作のうち、開放動作の部分を示すフローチャート。
【
図6】第1~第2実施形態に係るシャッター開閉機の原点復帰運転モードにおける動作のうち、仮全閉位置を決定するまでの最初の部分を示すフローチャート。
【
図7】第1~第2実施形態に係るシャッター開閉機の原点復帰運転モードにおける動作のうち、仮全閉位置を決定するまでの2番目の部分を示すフローチャート。
【
図8】第1~第2実施形態に係るシャッター開閉機の原点復帰運転モードにおける動作のうち、仮全閉位置を決定する部分を示すフローチャート。
【
図9】第1~第2実施形態に係るシャッター開閉機の原点復帰運転モードにおける動作のうち、仮全閉位置を決定した後の部分を示すフローチャート。
【
図10】第2実施形態に係るシャッター開閉機の原点復帰運転モードにおける動作のうち、仮全閉位置を決定した後の動作の一部を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、車庫などに設置される電動シャッターに本発明を適用した例を示す。
図1は、本実施形態に係る開閉体であるシャッターのスラットカーテン10、及び、その開閉装置であるシャッター開閉機1の取り付け状態を示す外観全体の説明図である。また、
図2は、シャッター開閉機1の電気的な構成を示す説明図である。なお、本実施形態に係るスラットカーテン10(開閉体)及びシャッター開閉機1(開閉装置)の基本的な構成は、特許文献3に記載の実施形態と同等のものである。
まず、
図1を参照しつつ、シャッターのスラットカーテン10及びシャッター開閉機1の機械的な構造や、シャッターの開閉動作の仕組み等について説明する。
【0031】
図1に示すように、開閉体であるシャッターのスラットカーテン10は、水平方向に延びる略矩形板状の複数の金属板が垂直方向に連結された構成であり、その水平方向の両側がガイドレール11に挟まれて吊下状態で支持され、車庫などの建築物の開口部に設置されている。そして、開閉装置であるシャッター開閉機1が作動すると、スラットカーテン10の垂直方向の上端側10bが駆動系を介して巻き取られるようになっており、これにより、スラットカーテン10は、その垂直方向について、開放方向DO(
図1において上方)及び閉鎖方向DC(
図1において下方)の双方向に動作可能になっている。
また、スラットカーテン10の垂直方向の下端部には座板部10aが設けられており、スラットカーテン10が開放方向DOへ開放動作して全開状態になったときに、この座板部10aが、建築物の開口部上端のまぐさ部12に当接するようになっている。一方、スラットカーテン10が閉鎖方向DCへ閉鎖動作して全閉状態になったときは、座板部10aが、建築物の開口部の床面18に当接するようになっている。
【0032】
シャッター開閉機1は、スラットカーテン10の開閉動作を行うためのモータ2と、このモータ2を制御する制御部3とを備えており、このシャッター開閉機1は、スラットカーテン10を巻き取るための駆動系の固定部分をなす棒状のシャフト13に固定されている。また、シャフト13の両端部は、建築物の開口部よりも上方に設けられた板状のブラケット14に固定されている。そして、シャフト13の軸方向の中間部分の径方向外側には、前記駆動系の可動部分をなす円盤状のアウター回転ホイール15が設けられている。このアウター回転ホイール15は、シャフト13に固定されて可動しない径方向内側の固定部(図示しない)と、その径方向外側に位置して、可動部分としてシャフト13の径方向外周を回転する回転部(図示しない)とからなる。また、アウター回転ホイール15には、回転部の回転のためにシャッター開閉機1のモータ2の出力軸ギア2aと噛み合うギア(図示しない)が設けられている。
【0033】
また、シャフト13の軸方向の両端寄りの部分及び中間部分の径方向外側には、複数の円盤状の巻取用ホイール16が設けられている。さらに、この巻取用ホイール16とアウター回転ホイール15の回転部には、複数の棒状のステー17がシャフト13の軸方向に沿って挿通されており、ステー17を介して、巻取用ホイール16とアウター回転ホイール15の回転部が互いに連結されている。また、巻取用ホイール16には、スラットカーテン10の上端部が固定されており、シャッター開閉機1のモータ2が回転することで、これに連動して、アウター回転ホイール15の回転部、巻取用ホイール16及びステー17が一体となってシャフト13の径方向外周を回転し、スラットカーテン10が巻取用ホイール16の外周に巻き取られるようになっている。
図1から分かるように、スラットカーテン10が巻取用ホイール16の外周に巻き取られた状態のとき、シャッター開閉機1は、巻き取られたスラットカーテン10の内側に収容されて、外側から見えない状態となる。
【0034】
また、スラットカーテン10及びガイドレール11に近接する建築物の壁面には、スラットカーテン10の開閉動作又は停止を指示するための操作入力を行う押ボタンスイッチボックス4が設置されている。押ボタンスイッチボックス4には、上昇(開放)ボタンPBU、下降(閉鎖)ボタンPBD及び停止ボタンPBSが設けられており、この押ボタンスイッチボックス4は、シャッター開閉機1の制御部3に電気的に接続されている。そして、シャッター開閉機1のモータ2が停止している状態で押ボタンスイッチボックス4の上昇(開放)ボタンPBUを押下すると、モータ2が所定の方向に回転して、シャッターのスラットカーテン10が開放動作(上昇)を開始する。同様に、シャッター開閉機1のモータ2が停止している状態で押ボタンスイッチボックス4の下降(閉鎖)ボタンPBDを押下すると、モータ2が上記の開放動作の場合とは逆方向に回転して、シャッターのスラットカーテン10が閉鎖動作(下降)を開始する。また、シャッターのスラットカーテン10が開放動作又は閉鎖動作を行っているときに、押ボタンスイッチボックス4の停止ボタンPBSを押下すると、モータ2の回転が停止して、スラットカーテン10の開放動作又は閉鎖動作が停止する。
【0035】
なお、
図2に示すように、シャッター開閉機1のモータ2は、モータ本体、減速機及びブレーキから構成されており、スラットカーテン10の開放動作中又は閉鎖動作中には、モータ2のブレーキは解除状態となっている。また、モータ2の回転が停止して、スラットカーテン10の開放動作又は閉鎖動作が停止した際には、モータ2のブレーキが復帰するようになっている。
次いで、この
図2を参照しつつ、本実施形態に係るシャッター開閉機1の電気的な構成について説明する。
【0036】
既に説明したように、シャッター開閉機1は、スラットカーテン10の開閉動作を行うためのモータ2と、このモータ2を制御する制御部3とを備えている。モータ2は、モータ本体、減速機及びブレーキからなり、このモータ2の出力軸(減速機による減速後)に設けられた出力軸ギア2aがアウター回転ホイール15(
図1参照)のギアに噛み合うようになっている。なお、本実施形態において、モータ2のモータ本体は、コンデンサラン形の単相100V用誘導モータである。また、モータ2のブレーキは、非通電時にモータ2の出力軸(減速機による減速後)に制動をかける無励磁作動形の電磁ブレーキである。制御部3は、制御プログラムを実行するマイクロプロセッサ3aと、これに接続されたモータ駆動回路3c及びブレーキ駆動回路3dを備えており、これらモータ駆動回路3a及びブレーキ駆動回路3dには、AC100V電源(図示しない)が接続されている。また、モータ駆動回路3cには、モータコンデンサ(図示しない)も接続されている。また、制御部3は、マイクロプロセッサ3aやその他の回路の制御用の電源を生成する制御用電源回路(図示しない)も備えている。以上により、制御部3のマイクロプロセッサ3aからモータ駆動回路3c及びブレーキ駆動回路3dを通じて、モータ2に対して、モータ駆動信号Mu,Mv,Mx、及び、ブレーキ駆動信号B+,B-が出力される。
【0037】
また、モータ2には、このモータ2のモータ本体の回転軸(減速機による減速前)の回転を検出するためのモータ回転パルス検出センサ2bが取り付けられている。モータ回転パルス検出センサ2bは、具体的には、モータ2のモータ本体の回転軸シャフトの外周に設けられたリング状の回転検出用磁石と、この回転検出用磁石の回転による磁界の変化を検出する2つのホールセンサからなり、モータ2の回転方向に応じて、互いの位相関係が逆転する2相のモータ回転パルスHa,Hbが出力される。つまり、このモータ回転パルスHa,Hbによって、モータ2の回転方向及び回転変化量が識別可能になっている。そして、このモータ回転パルスHa,Hbは、制御部3のモータ回転パルス入力回路3eを通じて、制御部3のマイクロプロセッサ3aに入力される。また、このマイクロプロセッサ3aに入力されたモータ回転パルスHa,Hbは、マイクロプロセッサ3aのプログラム又は内部カウンタによるモータ回転パルスカウント処理部3a1で処理されて、モータ2の回転方向に応じて加算又は減算されたカウント値CTに変換される。この結果、カウント値CTは、スラットカーテン10の開閉位置を検出した位置情報となる。
なお、本実施形態では、原点センサなどの部品を位置検出の手段に用いておらず、モータ回転パルス検出センサ2bが出力するモータ回転パルスHa,Hbのみが位置検出の手段となっている。
【0038】
また、制御部3には、
図1において既に説明した押ボタンスイッチボックス4が接続されており、上昇(開放)ボタンPBUの操作に対応する開放操作信号SU、下降(閉鎖)ボタンPBDの操作に対応する閉鎖操作信号SD、及び、停止ボタンPBSの操作に対応する停止操作信号SSが押ボタン入力回路3bを通じて、マイクロプロセッサ3aに入力される。以上により、制御部3のマイクロプロセッサ3aは、上記の各操作信号SU,SD,SS、及び、カウント値CTによるスラットカーテン10の開閉位置の位置情報に基づいて、モータ2の制御を行うようになっている。
【0039】
次いで、
図3~
図9を参照しつつ、本実施形態に係るシャッター開閉機1の制御方法について説明する。
図3は、本実施形態に係るシャッター開閉機1の電源投入後における原点復帰運転モードと通常運転モードの実行順の関係を示すフローチャートである。また、
図4~
図5は、本実施形態に係るシャッター開閉機1の通常運転モードにおける動作を示すフローチャートである。さらに、
図6~
図9は、本実施形態に係るシャッター開閉機1の原点復帰運転モードにおける動作を示すフローチャートである。これらのフローチャートは、いずれも制御部3のマイクロプロセッサ3aが実行する制御プログラムの処理内容を示すものである。
【0040】
図3に示すように、シャッター開閉機1は、電源投入後に、ステップS1の原点復帰運転モードを実行し、この原点復帰運転モードの終了後に、ステップS2の通常運転モードを実行するようになっている。ここでは、後から実行される通常運転モードについて先に説明する。
通常運転モードは、前述した操作信号SU,SD,SS、及び、カウント値CTによる位置情報に基づいて、開閉体であるシャッターのスラットカーテン10をあらかじめ設定した全開位置UL(=上限リミット、
図5のステップS209参照)と全閉位置DL(=下限リミット、
図4のステップS204参照)の間で開閉動作させる運転モードである。なお、全開位置ULと全閉位置DLの設定は、シャッターの設置時に行われるが、ここでは、その方法等についての説明は省略する。
【0041】
通常運転モードでは、モータ2が停止している状態で、まず、
図4のステップS201において、閉鎖操作信号SDがあるか否かのチェックが行われる。そして、閉鎖操作信号SDがあった場合(Yes)には、ステップS202に進んで、スラットカーテン10の閉鎖方向DCへの閉鎖動作を開始する。一方、閉鎖操作信号SDがなかった場合(No)には、
図5のステップS206に進むようになっている。また、ステップS206では、開放操作信号SUがあるか否かのチェックが行われる。そして、開放操作信号SUがあった場合(Yes)には、ステップS207に進んで、スラットカーテン10の開放方向DOへの開放動作を開始する。一方、開放操作信号SUがなかった場合(No)には、
図4のステップS201に戻るようになっている。
【0042】
また、ステップS202で閉鎖方向DCへの閉鎖動作を開始した後は、ステップS203で停止操作信号SSがあるか否かのチェックが行われる。そして、停止操作信号SSがあった場合(Yes)には、ステップS205に進んで、モータ2を停止する。一方、停止操作信号SSがなかった場合(No)には、ステップS204に進み、カウント値CTによる位置情報に基づいて全閉位置DLを検出したか否かのチェックが行われる。そして、全閉位置DLを検出した場合(Yes)には、ステップS205に進んで、モータ2を停止し、全閉位置DLを検出していない場合(No)には、閉鎖方向DCへの閉鎖動作を継続したまま、ステップS203に戻り、ステップS203及びステップS204のチェックを繰り返すようになっている。また、ステップS205でモータ2を停止した後は、既に説明した
図5のステップS206に進むようになっている。
【0043】
同様に、
図5のステップS207で開放方向DOへの開放動作を開始した後は、ステップS208で停止操作信号SSがあるか否かのチェックが行われる。そして、停止操作信号SSがあった場合(Yes)には、ステップS210に進んで、モータ2を停止する。一方、停止操作信号SSがなかった場合(No)には、ステップS209に進み、カウント値CTによる位置情報に基づいて全開位置ULを検出したか否かのチェックが行われる。そして、全開位置ULを検出した場合(Yes)には、ステップS210に進んで、モータ2を停止し、全開位置ULを検出していない場合(No)には、開放方向DOへの開放動作を継続したまま、ステップS208に戻り、ステップS208及びステップS209のチェックを繰り返すようになっている。また、ステップS210でモータ2を停止した後は、既に説明した
図4のステップS201に戻るようになっている。
【0044】
なお、
図4~
図5のフローチャートでは、開放動作中又は閉鎖動作中に障害を検知した場合などの異常時の処理についての記載は省略してある。また、全開位置ULを検出した状態での開放動作の開始や全閉位置DLを検出した状態での閉鎖動作の開始は、それぞれ禁止されるが、
図4~
図5のフローチャートでは、これらの処理についての記載も省略している。
【0045】
次いで、
図6~
図9のフローチャートを参照しつつ、本実施形態に係るシャッター開閉機1の制御方法による原点復帰運転モードについて説明する。本実施形態では、既に説明したように、モータ回転パルス検出センサ2bが出力するモータ回転パルスHa,Hbのみが位置検出の手段となっている。そして、このモータ回転パルスHa,Hbからは、モータ2の回転方向及び回転変化量が識別可能なだけであり、電源投入時に、スラットカーテン10の開閉位置の機械的な絶対位置を識別することは出来ない。すなわち、電源投入時には、スラットカーテン10が全開状態なのか、全閉状態なのか、あるいは、中間位置で停止した状態なのかを、シャッター開閉機1の制御部3が認識出来ず、シャッター設置時にあらかじめ設定した全開位置UL及び全閉位置DLについても、どこにあるかが分からない状態となっている。
【0046】
よって、本実施形態に係るシャッター開閉機1の制御方法では、スラットカーテン10を開放動作させたときに、スラットカーテン10の座板部10aがまぐさ部12に当接する位置を、全開位置UL及び全閉位置DLの基準となる原点位置OP(
図9のステップS149参照)に定め、この原点位置OPを正しく検出するための運転を原点復帰運転モードで行うようになっている。つまり、電源投入後に原点復帰運転モード(
図3のステップS1)を実行して原点位置OPを決定し、その後に実行する通常運転モード(
図3のステップS2)では、この原点位置OPを基準に定まる全開位置ULと全開位置DLとの間で開閉動作を行うようになっているのである。なお、全開位置ULの位置は、原点位置OPに対してわずかに閉鎖方向DC寄りの位置に設定されているものとする。
【0047】
以下に、原点復帰運転モードにおける動作を順に説明する。なお、以下では、開放動作中又は閉鎖動作中に停止操作信号SSがあった場合のモータ2の停止処理については、説明を省略している。
電源投入後に原点復帰運転モード(
図3のステップS1)が開始されたとき、開閉体であるスラットカーテン10の開閉位置は、まちまちであり、全開状態のときもあれば、全閉状態のときもあれば、それ以外の状態のときもある。そして、本実施形態では、スラットカーテン10の座板部10aがまぐさ部12に当接する位置を原点位置OPとしているため、電源投入後に開放方向DOへの開放動作を行えば、原点位置OPを検出するための運転となる。この開放動作による原点位置OPの検出については、特許文献3で説明されており、詳細な説明は省略する。
ここでは、前回の通常運転モードで開閉体であるスラットカーテン10が全開位置UL又はその付近で停止した状態で電源の再投入が行われた場合について考える。
【0048】
電源の再投入による原点復帰運転モードの開始後、
図6のステップS101では、開閉体であるスラットカーテン10が全開位置UL(又はその付近)で停止中の状態となっている。そして、続くステップS102において、開放操作信号SUがあるか否かのチェックが行われる。開放操作信号SUがあった場合(Yes)には、ステップS111に進んで、スラットカーテン10の開放方向DOへの開放動作を開始する。これにより、原点位置OPを検出するための処理へと進む(詳細は省略)。
【0049】
一方、開放操作信号SUがなかった場合(No)には、ステップS103へ進み、閉鎖操作信号SDがあるか否かのチェックが行われる。そして、閉鎖操作信号SDがなかった場合(No)には、ステップS102に戻り、開放操作信号SUと閉鎖操作信号SDのいずれかがあるまで、ステップS102とステップS103を繰り返す。
なお、ここでは、スラットカーテン10が全開位置UL(又はその付近)で停止中の状態(すなわち、全開状態に近い状態)なので、通常のユーザーであれば、開放動作の操作は行わずに、最初に全閉状態となるまで閉鎖方向DCへの閉鎖動作の操作を行おうとするのが自然である。よって、以下では、開放操作信号SUよりも先に閉鎖操作信号SDがあった場合について説明する。
【0050】
ステップS103で閉鎖操作信号SDがあった場合(Yes)には、ステップS121へ進み、そのままスラットカーテン10の閉鎖方向DCへの閉鎖動作を開始する。この閉鎖動作は、原点位置OPを検出する方向とは逆方向への動作となるが、本実施形態に係るシャッター開閉機1の制御方法では、原点位置OPの検出前であっても、動作上の制限なく、閉鎖操作信号SDの指示通りに、スラットカーテン10の閉鎖動作が可能になっている。
【0051】
ステップS121でスラットカーテン10の閉鎖動作を開始した後は、ステップS122において、閉鎖動作中に障害検知があったか否かのチェックが行われる。そして、閉鎖動作中に障害検知がなかった場合(No)には、このステップS122のチェックを繰り返しながら、閉鎖方向DCへの閉鎖動作を継続し、ステップS122で障害検知があった場合(Yes)、すなわち、スラットカーテン10が閉鎖方向DCへそれ以上動作出来ないことを検知した場合は、ステップS123に進んで、モータ2を停止する。
【0052】
本実施形態において、閉鎖動作中に障害検知となる場合、すなわち、スラットカーテン10が閉鎖方向DCへそれ以上動作出来なくなる場合とは、スラットカーテン10の下端の座板部10aと床面18の間に障害物が挟まった場合のほか、スラットカーテン10の座板部10aが床面18に当接して、モータ2の回転が機械的にロックされた状態になる場合を意味する。そして、そのような状態を検知する手法としては、例えば、モータ回転パルスHa,Hbから算出されるモータ2の回転数が規定値を下回ったことや、規定時間内にモータ回転パルスHa,Hbの変化が無かったことによって判定する手法が挙げられる。
【0053】
ステップS122からステップS123に進み、モータ2を停止した後は、続く
図7のステップS124において、モータ2が停止した位置(すなわち、このときのカウント値CT)を第1位置P1として記憶する。また、ステップS124で第1位置P1を記憶した後は、続くステップS125で、自動的にスラットカーテン10の開放方向DOへの開放動作を開始する。さらに、続くステップS126では、開放動作開始から所定時間(例えば、1.5秒~2.5秒程度)が経過したか否かを判定し、所定時間が経過していない場合(No)は、そのまま開放動作を継続する。そして、ステップS126で、開放動作開始から所定時間が経過した場合(Yes)は、ステップS127へ進み、モータ2を停止させる。ここで、ステップS125~ステップS127の自動的な開放動作は、スラットカーテン10の下端の座板部10aと床面18の間に障害物が挟まったままにならないようにするため、障害物を検知した際に行う一般的な動作である。なお、ステップS126では、開放動作開始から所定時間が経過したか否かを判定したが、これに代えて、開放動作開始から所定の移動量(例えば、10cm程度)だけ開放動作を行ったか否か(=所定の移動量に相当するカウント値CTの変化があったか否か)を判定しても良い。
【0054】
次いで、ステップS127に続くステップS128では、ステップS127でのモータ2の停止から所定時間(例えば、10秒程度)が経過したか否かを判定し、所定時間が経過していない場合(No)は、そのまま停止状態を継続する。そして、所定時間が経過した場合(Yes)は、ステップS129へ進んで、スラットカーテン10の閉鎖方向DCへの閉鎖動作を自動的に開始する。このステップS128~S129の自動的な閉鎖動作も、障害物を検知して障害物が除去された後に、スラットカーテン10が開きっぱなしの状態にならないようにするため、障害物を検知した際に行う一連の動作の1つである。
【0055】
そして、ステップS129でスラットカーテン10の閉鎖動作を開始した後は、最初の閉鎖動作時のステップS122での判定と同様に、ステップS130で、閉鎖動作中に障害検知があったか否かのチェックが行われる。そして、閉鎖動作中に障害検知がなかった場合(No)には、このステップS130のチェックを繰り返しながら、閉鎖方向DCへの閉鎖動作を継続し、ステップS130で障害検知があった場合(Yes)、すなわち、スラットカーテン10が閉鎖方向DCへそれ以上動作出来ないことを検知した場合は、ステップS131に進んで、モータ2を停止する。
【0056】
さらに、ステップS131でモータ2を停止した後は、続く
図8のステップS132において、モータ2が停止した位置(すなわち、このときのカウント値CT)を第2位置P2として記憶する。そして、続くステップS133において、記憶した第1位置P1と第2位置P2が一致しているか否かを判定する。ここで、第1位置P1と第2位置P2が一致する場合は、障害物を挟み込んで除去されないままになっている場合などを除き、1回目の閉鎖動作と2回目の閉鎖動作の両方で、スラットカーテン10の下端の座板部10aが床面18に当接して、モータ2の回転が機械的にロックされた場合が想定される。そこで、ステップS133で、第1位置P1と第2位置P2が一致していると判定された場合(Yes)には、ステップS134に進み、一致した第1位置P1と第2位置P2のその位置(又はカウント値CTで、その位置に対して所定カウント値のオフセット量だけ補正した位置)を原点位置OPに基づいて定まる全閉位置DLの仮の位置となる仮全閉位置TDLに決定する。
なお、仮全閉位置TDLを決定する際に、所定カウント値のオフセット量を用いる場合は、モータ2の回転が機械的にロックされた状態になった時のスラットカーテン10のたわみ具合などを考慮してオフセット量を決定する。
また、ステップS133で、第1位置P1と第2位置P2が一致していないと判定された場合(No)には、障害物を検知した際に行う所定の処理を行った後に、次の操作信号SU,SDの受付処理へと進む(詳細は省略)。
【0057】
さらに、第1位置P1と第2位置P2が一致して、ステップS134で仮全閉位置TDLを決定した後は、続くステップS135で、仮全閉位置TDLのカウント値が正規の全閉位置DLに相当するカウント値となるように、仮全閉位置TDLのカウント値及び現在位置(=ステップS131で停止した位置)のカウント値CTを置き換える。すなわち、本来であれば、原点位置OPの検出によってカウント値CTの補正が行われて、正規の位置情報に基づく運転に移行するところ、それより前のこの時点で仮全閉位置TDLのカウント値及び現在位置のカウント値CTの仮補正が行われる。このステップS135の処理は省略することも可能であるが、このステップS135の処理を実行することで、本実施形態では、それ以降の原点復帰運転モード中の処理において、位置情報に基づいて行う各種処理を通常運転モードとほぼ同等に行うことが可能となっている。なお、位置情報に基づいて行う処理としては、通常運転モード時の感度の高い障害物の検知処理や位置情報に基づく移報接点出力などの出力処理が挙げられるが、ここでは詳細な説明は省略する。
【0058】
さらに、続くステップS136~ステップS138で、ステップS125~ステップS127で行ったのと同様に、障害物を検知した際に行う動作として、スラットカーテン10の開放方向DOへの開放動作を自動的に行い、所定時間経過後にモータ2を停止する。なお、このステップS136~ステップS138の動作は、前回と同じ位置で障害物を検知した場合に行う動作として、通常よりも短い時間(又は移動量)だけ開放動作を行うようにしても良い。また、仮全閉位置TDLを正常に検知(決定)出来たとして、ステップS136~ステップS138の動作を行わず、ステップS134及びステップS135の後は停止したままにしても良い。
【0059】
そして、ステップS138の後は、
図9のステップS139に進み、これ以降は、原点復帰運転モードの動作のうち、仮全閉位置TDLを決定した後の動作となる。ステップS139では、開放操作信号SUがあるか否かのチェックが行われ、開放操作信号SUがなかった場合(No)には、ステップS140へ進み、閉鎖操作信号SDがあるか否かのチェックが行われる。そして、閉鎖操作信号SDがなかった場合(No)には、ステップS139に戻り、開放操作信号SUと閉鎖操作信号SDのいずれかがあるまで、ステップS139とステップS140を繰り返す。
【0060】
ステップS139で、開放操作信号SUがあった場合(Yes)には、ステップS141に進んで、スラットカーテン10の開放方向DOへの開放動作を開始する。そして、この開放動作は、原点位置OPを検出するための動作となり、原点位置OPを検出した場合(ステップS149)には、原点復帰運転モードを終了し、通常運転モード(
図3のステップS2)に移行する。
【0061】
一方、ステップS140で、閉鎖操作信号SDがあった場合(Yes)には、ステップS151に進んで、スラットカーテン10の閉鎖方向DCへの閉鎖動作を開始する。この閉鎖動作は、原点位置OPを検出する方向とは逆方向への動作となるが、仮全閉位置TDLの決定前のステップS121と同様、動作上の制限なく、閉鎖操作信号SDの指示通りに、スラットカーテン10の閉鎖動作が可能である。
【0062】
さらに、ステップS151で閉鎖動作を開始した後は、ステップS152に進み、仮全閉位置TDL(=ステップS134で決定した位置(本実施形態では、さらにステップS135でカウント値を置き換えた位置))を検出したか否か(カウント値CTが仮全閉位置TDLに一致したか否か)を判定する。そして、ステップS152で、仮全閉位置TDLを検出していない場合(No)は、そのまま閉鎖動作を継続し、仮全閉位置TDLを検出した場合(Yes)は、ステップS153に進み、通常運転モードでの全閉位置DLでの停止と同様に、モータ2を正常停止させる。
そして、その後は、ステップS139に戻り、開放方向DOへの開放動作を行って、原点位置OPを検出するまで、原点復帰運転モードを継続する。また、それまでは、閉鎖方向DCへの閉鎖動作は制限されることなく、閉鎖動作を行った場合は、仮全閉位置TDLで正常停止するようになっている。
【0063】
このように、本実施形態に係るシャッター開閉機1及びその制御方法では、電源投入後にスラットカーテン10を開放方向DOへ開放動作させることによって原点位置OPの検出が可能となる位置でスラットカーテン10が停止している状態で、原点位置OPを検出するよりも前に閉鎖動作を指示する閉鎖操作信号SDがあった場合に、これを制限することなく、操作指示通りにスラットカーテン10を閉鎖方向DCへ閉鎖動作させることができる。また、その後は、障害物を検知した際に行う一連の動作によって、床面18付近の位置が仮全閉位置TDLに決定され、原点位置OPを検出するまでは、仮全閉位置TDLで通常時と同等の停止処理を行うことができる。これにより、ユーザーに動作上の制限による不自然な操作を強制することがない。
特に、本実施形態では、スラットカーテン10の座板部10aがまぐさ部12に当接する位置が原点位置OPとなり、この原点位置OPは全開位置ULよりも上方に位置する。スラットカーテン10が全開状態で電源の再投入を行った場合には、ユーザーは最初に閉鎖動作(原点位置OPを検出する方向とは逆方向への動作)を行おうとするのが自然であるので、本発明を適用する効果は大きい。
【0064】
以上により、開閉体をシャッターのスラットカーテン10として、また、その開閉装置をシャッター開閉機1として、本発明の開閉体の開閉装置及びその制御方法を第1実施形態に即して説明した。
本実施形態では、モータ回転パルス検出センサ2b、制御部3のモータ回転パルス入力回路3e、及び、マイクロプロセッサ3aのモータ回転パルスカウント処理部3a1が本発明の位置検出部に相当する。また、押ボタンスイッチボックス4、及び、制御部3の押ボタン入力回路3bが本発明の操作入力部に相当し、開放操作信号SU、閉鎖操作信号SD、及び、停止操作信号SSが本発明の操作信号に相当する。
【0065】
また、本実施形態では、ステップS103及びステップS121が本発明の第1閉鎖動作ステップに相当し、マイクロプロセッサ3aが実行するこれらのステップが本発明の第1閉鎖動作手段に相当する。また、ステップS122~ステップS123が本発明の第1障害検知停止ステップに相当し、マイクロプロセッサ3aが実行するこれらのステップが本発明の第1障害検知停止手段に相当する。また、ステップS124が本発明の第1位置記憶ステップに相当し、マイクロステップ3aが実行するこのステップS124が本発明の第1位置記憶手段に相当する。
【0066】
さらに、ステップS125~ステップS127が本発明の障害停止後自動開放動作ステップに相当し、マイクロプロセッサ3aが実行するこれらのステップが本発明の障害停止後自動開放動作手段に相当する。また、ステップS128~ステップS129が本発明の第2閉鎖動作ステップに相当し、マイクロプロセッサ3aが実行するこれらのステップが本発明の第2閉鎖動作手段に相当する。また、ステップS130~ステップS131が本発明の第2障害検知停止ステップに相当し、マイクロプロセッサ3aが実行するこれらのステップが本発明の第2障害検知停止手段に相当する。また、ステップS132が本発明の第2位置記憶ステップに相当し、マイクロステップ3aが実行するこのステップS132が本発明の第2位置記憶手段に相当する。また、ステップS133が本発明の位置判定ステップに相当し、マイクロステップ3aが実行するこのステップS133が本発明の位置判定手段に相当する。
【0067】
(第2実施形態)
次いで、本発明の第2実施形態について、
図6~
図9及び
図10のフローチャートを参照しつつ説明する。
本実施形態は、第1実施形態に係るシャッター開閉機1の制御方法のうち、原点復帰運転モードで仮全閉位置TDLを決定した後の処理の一部を変更したものであり、具体的には、仮全閉位置TDLの決定後に行う開放動作において、原点位置OPが検出出来ない場合の処理を追加したものである。このため、第1実施形態と共通の部分については説明を省略する。
【0068】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、電源投入後の原点復帰運転モードにおいて、開放操作信号SUよりも先に閉鎖操作信号SDがあった場合には、
図6のステップS103からステップS121に進み、スラットカーテン10の閉鎖方向DCへの閉鎖動作を開始した後、
図6~
図7の各ステップの処理を経て、
図8のステップS134で仮全閉位置TDLを決定し、さらに、
図9のステップS139まで進む。その後も第1実施形態と同様であり、仮全閉位置TDLが決定した後は、開放操作信号SUと閉鎖操作信号SDのいずれかがあるまで、
図9のステップS139とステップS140を繰り返し、これらの操作信号SU,SDがあった場合には、ステップS141又はステップS151に進んで、開放動作又は閉鎖動作のいずれかを開始する。
【0069】
ここで、ステップS141に進んで、開放動作を開始した後、原点位置OPを検出した場合(
図9のステップS149)には、原点復帰運転モードを終了して通常運転モードに移行する。但し、開放動作を行った場合に、何らかの異常によって原点位置OPが検出出来ないことも想定される。そこで、本実施形態では、第1実施形態の制御方法に対して、仮全閉位置TDLの決定後の開放動作において、原点位置OPが検出出来ない場合の処理を追加している。
図10は、その追加した処理を含む、仮全閉位置TDLを決定した後の動作の一部を示すフローチャートである。この
図10において、
図9と同じ符号で示すステップS139~ステップS141及びステップS151の各ステップの処理は、
図9と同じ処理である。また、
図10では、ステップS151の後の処理(
図9のステップS152~ステップS153)については、記載を省略している。以下では、
図9のステップS141以降の処理に代わる
図10のステップS141以降の処理について説明する。
【0070】
開放操作信号SUがあって、
図10のステップS141に進み、開放動作を開始した場合、本実施形態では、続く
図10のステップS142において、開放動作中の移動量があらかじめ設定した所定移動量に達したか否かのチェックが行われる。ここで、判定に用いる開放動作中の移動量は、仮全閉位置TDLから見た開放方向DOへの移動量である。また、その判定値となる所定移動量は、正規の全閉位置DLと原点位置OPの間の距離に相当するカウント値を超える値に設定してある。つまり、所定移動量は、開放方向DCへの通常の開放動作で想定される移動量を超える値に設定してある。そして、ステップS142で開放動作中の移動量が所定移動量に達していない場合(No)は、ステップS143に進み、開放動作中に障害検知があったか否かのチェックが行われる。
【0071】
本実施形態では、第1実施形態と同様、スラットカーテン10の座板部10aがまぐさ部12に当接する位置を原点位置OPとしているため、開放動作中に障害検知があった場合は、ステップS143でYesとなって、それ以降は、原点位置OPの検出処理となる(詳細は省略)。また、開放動作中に障害検知がない場合には、ステップS143でNoとなって、ステップS143からステップS142に戻り、ステップS142とステップS143のチェックを繰り返しながら、開放動作を継続する。
【0072】
ここで、通常であれば、開放動作中の移動量が所定移動量に達する前に、開放動作中に障害検知があって(ステップS143でYes)、原点位置OPの検出処理へと進むはずである。しかしながら、機械的な故障等の何らかの異常によって、開放動作中に原点位置OPが検出出来ない場合も有り得る。そこで、本実施形態では、ステップS142で開放動作中の移動量が所定移動量に達した場合(Yes)は、ステップS144に進み、その時点で原点位置OPの検出異常としてモータ2を停止させるようになっている。さらに、続くステップS145では、仮全閉位置TDLを破棄(=決定の取消し)し、その後は、仮全閉位置TDLの決定前の状態から原点復帰運転モードを再開するようになっている。
【0073】
このように、本実施形態では、何らかの異常によって原点位置OPが検出出来ないときでも、あらかじめ設定した所定移動量に達すれば異常を検知してモータ2を停止させるようになっているので、異常状態のまま運転が継続することがなく、安全である。また、その後は、仮全閉位置TDLの決定前の状態にリセットされるので、異常状態が発生した時の仮全閉位置TDLを継続して使用することがない。
【0074】
なお、原点位置OPが検出出来ない何らかの異常としては、開閉装置であるシャッター開閉機1の本体(モータ2、制御部3)の故障のほか、開閉体であるスラットカーテン10や座板部10a、ガイドレール11、まぐさ部12などの機械的な故障が挙げられる。また、仮全閉位置TDLを決定した際に、スラットカーテン10のたわみ量が大きくなり過ぎていたなど、異常な状態で仮全閉位置TDLを決定した場合も考えられる。また、特許文献2に記載の開閉体の開閉装置のように、機械式のカウンタースイッチ等の原点センサを用いて原点位置の検出を行う場合には、その原点センサ自体が故障した場合も挙げられる。
【0075】
以上において、本発明を第1~第2実施形態に即して説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0076】
例えば、第1~第2実施形態では、原点センサなどの部品を用いず、開放動作で機械的なロック状態となる位置を原点位置としていたが、機械式のカウンタースイッチ等の原点センサを位置検出の手段に用いた開閉装置に本発明を適用しても良く、原点センサを検出する位置が開閉体の全開位置近くである場合には、実施形態の場合と同等の効果が得られる。
また、第1~第2実施形態では、開閉体であるシャッターのスラットカーテンが巻き取られた状態のときに、開閉装置であるシャッター開閉機が開閉体の内側に収容されるようになっていたが、開閉体の形状、及び、開閉体と開閉装置の取り付け状態は、これに限定されない。
また、第1~第2実施形態では、開閉装置のモータがコンデンサラン形の単相100V用誘導モータである場合を示したが、三相200V用誘導モータや、三相DCブラシレスモータを用いた開閉装置であっても良い。
【0077】
また、第1~第2実施形態では、位置検出部として、回転検出用磁石と2つのホールセンサからなるモータ回転パルス検出センサによって、モータ回転パルスを出力する例を示したが、モータ回転パルスを出力する位置検出部としては、ロータリーエンコーダーなどを用いても良い。また、モータが三相DCブラシレスモータの場合には、ローターの回転位置を検出するための磁石と3つのホールセンサの組み合わせをそのまま位置検出部として用いれば良い。
【0078】
また、第1~第2実施形態では、開閉体であるシャッターのスラットカーテンが閉鎖方向へそれ以上動作出来ないことを検知する手法として、モータ回転パルスから算出されるモータの回転数が規定値を下回ったことや、規定時間内にモータ回転パルスの変化が無かったことによって判定する手法を挙げたが、他の手法を用いて検知を行っても良い。例えば、モータ回転パルスによる位置検出の手段とは別に、モータの負荷電流を検出する手段が設けられている場合には、モータの負荷電流が急激に変化したことを検知するによって判定する手法を用いても良い。
【符号の説明】
【0079】
1 シャッター開閉機(開閉装置)
2 モータ
2a モータの出力軸ギア
2b モータ回転パルス検出センサ(位置検出部)
3 制御部
3a マイクロプロセッサ
3a1 モータ回転パルスカウント処理部(位置検出部)
3b 押ボタン入力回路(操作入力部)
3c モータ駆動回路
3d ブレーキ駆動回路
3e モータ回転パルス入力回路(位置検出部)
4 押ボタンスイッチボックス(操作入力部)
10 スラットカーテン(開閉体)
10a 座板部
10b スラットカーテンの上端側
11 ガイドレール
12 まぐさ部
13 シャフト
14 ブラケット
15 アウター回転ホイール
16 巻取用ホイール
17 ステー
18 床面
DO 開放方向
DC 閉鎖方向
PBU 上昇(開放)ボタン
PBD 下降(閉鎖)ボタン
PBS 停止ボタン
SU 開放操作信号(操作信号)
SD 閉鎖操作信号(操作信号)
SS 停止操作信号(操作信号)
Mu,Mv,Mx モータ駆動信号
B+,B- ブレーキ駆動信号
Ha,Hb モータ回転パルス
CT カウント値
UL 全開位置(上限リミット)
DL 全閉位置(下限リミット)
OP 原点位置
P1 第1位置
P2 第2位置
TDL 仮全閉位置
S1 原点復帰運転モード
S2 通常運転モード
S103,S121 第1閉鎖動作ステップ(第1閉鎖動作手段)
S122~S123 第1障害検知停止ステップ(第1障害検知停止手段)
S124 第1位置記憶ステップ(第1位置記憶手段)
S125~S127 障害停止後自動開放動作ステップ(障害停止後自動開放動作手段)
S128~S129 第2閉鎖動作ステップ(第2閉鎖動作手段)
S130~S131 第2障害検知停止ステップ(第2障害検知停止手段)
S132 第2位置記憶ステップ(第2位置記憶手段)
S133 位置判定ステップ(位置判定手段)
【要約】
【課題】電源投入後に開閉体の機械的な絶対位置が認識出来ない状態であっても、動作上の制限による不自然な操作を強制しない開閉体の開閉装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】電源投入後の原点復帰運転モードにおいて、閉鎖動作を指示する操作信号があった場合の1回目の閉鎖動作中に開閉体10が閉鎖方向へそれ以上動作出来ないことを検知してモータ2が停止した位置を第1位置P1として記憶し、自動的な2回目の開放動作中に開閉体10が開放方向へそれ以上動作出来ないことを検知してモータ2が停止した位置を第2位置P2として記憶し、第1位置P1と第2位置P2が一致していると判定された場合にその位置を仮全閉位置TDLに決定して、それ以降、原点位置OPを検出して原点復帰運転モードを終了するまでは、閉鎖動作を指示する操作信号があった場合に、閉鎖動作させて仮全閉位置TDLで停止させる開閉体10の開閉装置1の制御方法。
【選択図】
図1