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特許7421048拡散機能を有するストローの製造装置および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】拡散機能を有するストローの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 53/08 20060101AFI20240117BHJP
   A47G 21/18 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B29C53/08
A47G21/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017255258
(22)【出願日】2017-12-30
(65)【公開番号】P2019119121
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】305056386
【氏名又は名称】杉山 早実
(73)【特許権者】
【識別番号】318003009
【氏名又は名称】株式会社辻金属製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】711013450
【氏名又は名称】株式会社エルモ
(72)【発明者】
【氏名】杉山 早実
(72)【発明者】
【氏名】辻 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】坂口 均
(72)【発明者】
【氏名】花井 美雄
(72)【発明者】
【氏名】坂口 毅
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06375091(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0065757(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0228400(US,A1)
【文献】特開2004-024408(JP,A)
【文献】実公昭38-000217(JP,Y1)
【文献】特開2018-069046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 53/08
A47G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製筒体の一端から予め定められた寸法Tよりも大きく、且つ前記寸法Tの2倍よりも小さい範囲に位置する前記筒体の周面に前記筒体の内部と外部を通じさせる吸引口を形成する穿孔モジュールと、
前記筒体の前記一端から前記寸法Tまでを押し潰して平板状の押し潰し部に成形する押し潰し部形成モジュールと、
前記押し潰し部と前記吸引口の対向を維持するように前記筒体を折り曲げて拡散部を形成する折り曲げモジュールと、
を備えることを特徴とする拡散機能を有するストローの製造装置。
【請求項2】
前記穿孔モジュールが、ヒータ加熱機能を備えた円錐状のヒータ棒アレー又は、パンチング機能を備えたパンチング棒アレーであることを特徴とする請求項1に記載の拡散機能を有するストロー製造装置。
【請求項3】
樹脂製筒体の一端から予め定められた寸法Tよりも大きく、且つ前記寸法Tの2倍よりも小さい範囲に位置する前記筒体の周面に前記筒体の内部と外部を通じさせる吸引口を形成する穿孔工程と、
前記筒体の前記一端から前記寸法Tまでを押し潰して平板状の押し潰し部に成形する成形工程と、
前記押し潰し部と前記吸引口の対向を維持するように前記筒体を折り曲げて拡散部を形成する折り曲げ工程と、
を含むことを特徴とする拡散機能を有するストローの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人がコップ等の容器からコーヒ、ジュースなどを飲む際に使用するストローの製造装置であって、更に詳しくは拡散機能を有するストローの製造装置及び、製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジュースなど飲料の飲食に使用されるストローには、ストレートストロー、屈曲可能な蛇腹を有するフレックスストロー、伸縮自在な伸縮部を有する伸縮ストローなどがある。ストレートストローは、ストローの原材料であるポリプロピレン等を溶融させ、押出成型機のダイスの先端から円筒状チューブに押出成型し、カッターで所定の長さに切断して製造される。フレックスストローはストレートストローを出発材料として、ストレートストローの一端部より所定の長さ位置に周知の蛇腹形成方法で約10mm長さの蛇腹を形成して製造される。伸縮ストローは二層管構造で、端部をテーパ状に絞った大径の外側管に、端部をテーパ状に拡張した小径の内側管を挿入して組立てられる。内外の絞り部は、引き延ばした時の係止部として機能する。
これら、汎用的に流通しているストローの製造方法や、製造装置は特許文献1~3などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-146899
【文献】特公平01-051244
【文献】特許第3713351号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
拡散機能を有するストローは、新規に発明されたストローであり開示のある刊行物は皆無である。この拡散機能を有するストローの特徴は、フレックスストロー、ストレートストローや、伸縮ストローの一端部に平板状の拡散部が設けられ、拡散部との対向部に吸引口が設けられる点にある。人が本ストローを口腔内に挿入して液体飲料を吸引すると、液体飲料は吸引口から吸引されて拡散部に衝突、反射、飛散し、口腔内に一様に拡散される。即ち、吸引された飲料は舌の全領域にほぼ均一に散布される。このため、熱い飲料であっても、一部に集中して噴射するフレックスストロー、ストレートストロー、伸縮ストローに比べ、火傷を負う危険は遥かに小く、また舌の特定部位に偏在する全ての芽胞とも容易に接触するので、飲料の味を十分堪能することができる。しかし、この拡散機能を有するストローは新規な発明品であるため製造方法や製造装置についての先行技術の開示は皆無である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、拡散機能を有するストローの製造装置であって、少なくとも次の(1)~(3)の3つの機能を有する装置モジュールを含んで構成される装置である。
(1)樹脂製筒体の一端から、寸法Tよりも大きく、且つ寸法Tの2倍よりも小さい範囲(図3・Bに示すT~2Tの範囲)となる筒体の周面に、筒体の内部と外部を通じさせる吸引口を穿孔できる穿孔モジュール。
(2)樹脂製筒体表面の一端から寸法Tまで(図3・Cに示すTの範囲)を押し潰して、板状の押し潰部に成形する押し潰し部形成モジュール。
(3)拡散部と吸引口を対向させるように、一端から寸法Tの位置(図3・Dに示す位置)で押し潰し部の端部を所定の角度(100~170度)で折り曲げ、拡散部を成形する折り曲げモジュール。なお、厳密には拡散部の長さ寸法は、Tから突起43(図10)により形成される折り溝15の幅寸法を減じた寸法になる。
なお、本発明の押し潰し部形成モジュールと折り曲げモジュールは、独立した個別モジュール
である必要はなく、両機能を合わせもつ複合モジュールとしてもよい。
【0006】
また、請求項1に記載されたストローの製造装置、次の(1)~(3)の行程を順次実施して、拡散機能を有するストローを製造することができる
(1)ストロー製造装置の穿孔モジュールを作動させ、筒体の一端から、寸法T~2Tの範囲に吸引口を穿孔する(図3・B参照)。
(2)次いで、ストロー製造装置の押し潰し部形成モジュールを作動させ、筒体の一端からT寸法の範囲を押し潰して板状の押し潰し部を形成する(図3・C参照)。
(3)次いで、筒体の一端からT寸法の位置で、板状の押し潰し部が吸引口に対向するよう所定の角度(100~170度)で折り曲げて拡散部を形成させる(図3・D参照)。
なお、本発明の拡散機能を有するストローの製造装置では、板状の押し潰し部の形成工程と、折り曲げ工程を独立に実施する装置である必要はなく、板状の押し潰し部を形成しながら同時に折り曲げを実施して拡散部を形成する装置であってよい。
【0007】
請求項に記載の発明は、穿孔モジュールが次の(1)、(2)の何れであってもよい。
(1)ヒータ加熱機能を備えたヒータ棒アレーの穿孔モジュールであって、ヒータ棒に装着された電気ヒータを通電加熱し、樹脂ストローの溶融温度以上に昇温させた状態で、ヒータ棒の先端部をストローの周面に突き当て、樹脂ストローを溶融させ穿孔を行う。
(2)穴開けパンチング棒とダイがアレー状に配列された、パンチング機能を備えるパンチング棒アレーであって、パンチング棒とダイの間に樹脂ストローを挿入して、パンチング動作で穿孔を行う。
【0008】
請求項に記載の発明はストロー製造方法の発明であって、少なくとも次の(1)~(3)の3つの行程を含んで製造される拡散機能を有するストローの製造方法である。
(1)樹脂製筒体の一端から、寸法Tよりも大きく、且つ寸法Tの2倍よりも小さい範囲(図3・Bに示すT~2Tの範囲)の筒体の周面に、筒体の内部と外部を通じさせる吸引口を穿孔する。
(2)樹脂製筒体表面の一端から寸法Tまで(図3・Cに示すTの範囲)を押し潰して、板状の押し潰し部を成形する。
(3)押し潰し部と吸引口の対向を維持するように、一端から寸法Tの位置(図3・Dに示す位置)で押し潰し部を所定の角度(100~170度)で折り曲げて拡散部を形成する。
なお、本発明の拡散機能を有するストローの製造方法では、板状の押し潰し部の形成工程と折り曲げ工程は必ずしも別々に実施する必要はなく、板状の押し潰し部を形成しながら同時に折り曲げて拡散部を形成してもよい。





【発明の効果】
【0009】
本発明の拡散機能を有するストローの製造装置や、拡散機能を有するストローの製造方法は、
フレックスストロー、ストレートストロー、伸縮ストローを用い、複数本を一時に加工できるので、生
産効率の向上が図れる。また、穿孔モジュールや押し潰し部形成モジュール、折り曲げモジュ
ールは、ワークを搭載するパレットを共通化できるので、これら装置モジュール間をX-Yテーブ
ルで結ぶことにより、最初にワークをパレットに搭載すれば、最終工程まで取り外す必要がない。
従って、装置の自動化が容易で高い生産性を図ることができる。また、穿孔モジュールにヒータ
加熱機能を備えた棒状アレーを採用することで、パンチングくずを出さない装置となり、加工くずの混入の恐れの無い安定した品質を保証できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】拡散機能を有するストローの外観
図2】拡散機能の説明図
図3】製造プロセスの説明図
図4】拡散機能を有するストローの製造装置の全体図
図5】溶融方式穿孔モジュールの外観
図6】溶融方式穿孔法の説明図
図7】パンチング方式穿孔モジュールの外観
図8】パンチング穿孔法の説明図
図9】押し潰しによる押し潰し部形成モジュールの外観
図10】ヒートプレスによる押し潰し方法の説明図
図11】折り曲げモジュールの外観
図12】ヒートプレスによる折り曲げ方法の説明
【発明を実施するための形態】
【0011】
<拡散機能を有するストローの説明>
最初に本発明の拡散機能を有するストロー製造装置を用いて製造する拡散機能を有するストローの形態と、機能について説明する。
まず、図1を用い拡散機能を有するストロー10の形態について説明する。
拡散機能を有するストロー10のサイズは様々なサイズとすることが可能であり、サイズで限定されるものではないが、一例を述べれば次になる。ストローの先端解放部12は、単純な円形切断面になっており、ストレート部11の外径は6mm、長さ210mm、肉厚0.16mm、屈曲部16より約48mmの位置に長さ約8mmの蛇腹17が設けられるが蛇腹17は必須ではなく、無しでもよい。拡散部14の長さは約9mm、吸引口13の穴径は3~5mm、屈曲部16と吸引口13の中心との間の寸法は約6mm、吸引口13の形状は円、楕円、三角、四角、星形、任意の多角形など、何れの形状であってよい。また、吸引口13の個数も1つに限定されず2以上の複数個であってよく、吸引口13の穴径も3~5mmに限定されず5mm以上、3mm以下であってよい。吸引口を複数個とする場合の穴径は、3mm以下のサイズが含まれてよい。
【0012】
次に拡散機能を有するストロー10の機能について、図2を用いて説明する。
拡散機能を有するストロー10の先端部を口腔内に挿入して吸引すると、液体飲料は吸引口13から吸引方向6で吸引され、拡散部14に反射点7で衝突し、反射方向8で飛散する。このときの飛散は飛散領域5に示すように屈曲部16を除く全方向となる。また、飛散領域5で飛散する液体飲料は結果的に舌全体にほぼ一様に散布されることになる。
【0013】
<製造装置の全体構成>
次に拡散機能を有するストローの製造装置について図3図4を用いて説明するが、ここに示す拡散機能を有するストローの製造装置は、一実施例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。図3は本製造装置により製作される拡散機能を有するストローの製造プロセスの進行に伴い変化するワークの形態を説明するものであり、図4は各製造プロセスに対応する各装置モジュールを含む装置全体の構成を説明するものである。
【0014】
まず本発明装置の構成と機能について概説する。
拡散機能を有するストローの製造装置80は、装置ベース74上に溶融方式穿孔モジュール30、押し潰し部形成モジュール40、折り曲げモジュール60が配置され、これら各モジュールは、装置ベース74上に敷設されるX方向レール73、およびY方向レール72で連結される。ワークカセット34は加工途中のワーク(ストロー)19を搭載してX方向レール73、およびY方向レール72上を移動して各モジュールへのワークの搬入と搬出を行う。ワーク19は制御ボックス71に収納される制御装置により、まず、溶融方式穿孔モジュール30で吸引口13の穿孔加工を受け、次いで押し潰し部形成モジュール40で押しつぶし部18の形成加工を受け、最後に折り曲げモジュール60で押しつぶし部18の折り曲げ加工を受けて拡散部14が形成され、拡散機能を有するストローに仕上げられる。
【0015】
次に、各モジュールにおける作業内容の詳細について説明する。
最初にフレックスストロー、ストレートストロー、または伸縮ストローからなる複数のワーク19が先端部を揃えて、ワークカセット34にセットされる。セット作業には図示されない自動ワークセット機を使用しても、手動で行ってもよい。ワークカセット34はX方向レール73と、Y方向レール72で構成されるXYテーブル上に載置されている。なお、XYテーブルの駆動は、サーボモータとエンコーダとボールネジからなる駆動機構や、リニアパルスモータを使用した駆動機構、或いは手動式によるものであってよい。次いでワークカセット34は、Y方向レール72上を穿孔モジュール30の方向に移動し、ワーク先端部を穿孔モジュール30に挿入して吸引口13を形成する。穿孔モジュール30による吸引口13の形成方法の詳細は後述する。
【0016】
吸引口13の形成が終了すると、ワークカセット34はY方向レール72上を元の位置まで戻り、X方向レール73上を左方向に移動して、押し潰し部形成モジュール40に位置合わせして停止する。次いでワークカセット34はY方向レール72上を押し潰し部形成モジュール40方向に移動し、先端部を押し潰し部形成モジュール40に挿入してヒートプレスにより、押し潰し部18を形成する。押し潰し部形成モジュール40による押し潰し部18の形成方法の詳細は後述する。
【0017】
押し潰し部18の形成が終了すると、ワークカセット34はY方向レール72上を元の位置まで戻り、X方向レール73上を左方向に移動して、折り曲モジュール60に位置合わせして停止する。次いでワークカセット34はY方向レール72上を折り曲モジュール60方向に移動し、先端部を折り曲モジュール60に挿入してヒートプレスにより、押し潰し部18を折り曲げて拡散部14を形成し、拡散機能を有するストロー10を完成させる。
完成したワーク19のワークカセット34からの取出しは、図示されない自動ワーク取出機を使用しても、手動で行ってもよい。
【0018】
<穿孔モジュールの説明>
図5に示す溶融方式穿孔モジュールと、図7に示すパンチング方式穿孔モジュールの2種類の穿孔モジュールについて、順次説明を行う。
まず、図5の溶融方式穿孔モジュールについて説明を行う。
溶融方式穿孔モジュール30は、ベース39の両サイドに1対のガイド支柱36が立設され、フレーム33の左右両端が1対のガイド支柱36にスライド自在に挿入される。ベース39とフレーム33の間には伸縮自在にバネ37が挿入される。また、フレーム33の中央、上方にはカム38がフレーム33に当接されて配置される。カム38は図示しない駆動モータで回動自在であり、バネ37と共働してフレーム33を上下させる。フレーム33にはヒータ32が組込まれた複数本のヒータ棒31がアレー状に取付けられる。ヒータ棒31はヒータ32の通電加熱により、容易にワークの溶融点以上の温度に昇温し、図示しない温度コントローラにより設定温度に保持される。
【0019】
フレーム33にアレー状に取り付けられるヒータ棒31の本数は、図5では10本になっているが、10本を遥かに越える本数であっても、10本以下であってもよい。また、ベース39の上面にはテーブル35が載置され、テーブ35上にワークカセット34が載置される。ワークカセット34には、複数の溝が設けられ、溝数に対応した本数のワーク19が溝に嵌合して並べられる。ワーク19はワークカセット34に並べられた後に、図6に示すようにカセットカバー24で上面を押さえられ、扁平に変形させられて溝内に固定される。ワークカセットの溝数は、フレーム33に取付けられるヒータ棒31の本数の整数倍であることが好ましいが、これに限定される必要はない。
【0020】
溶融法による穿孔は、ヒータ棒31をワーク19の溶融点温度以上に加熱させて、カム38の回動駆動によりフレーム33を下降させ、図6の破線に示すように、ヒータ棒31の先端部をワーク19の上面に刺し込むことでワーク19の表面が穿孔されて吸引口13が形成される。なお、図6ではヒータ棒の形状を穿孔形状が円形になるよう円錐形状としているが、穿孔形状を円形以外の形状にする場合は、希望する形状となるようヒータ棒の先端形状を変形させることができる。
【0021】
次に図7、8を用いて、パンチング方式穿孔モジュールについて説明を行う。
パンチング方式穿孔モジュール20はベース29の両サイドにガイド支柱26が立設され、フレーム23の左右両端がガイド支柱26にスライド自在に挿入される。ベース29とフレーム23の間には伸縮自在にバネ27が挿入される。また、フレーム23の中央、上方にはカム28がフレーム23に当接されて配置される。カム28は図示しない駆動モータで回動自在であり、バネ27と共働してフレーム23を上下させる。フレーム23には複数の穴開けパンチ21がアレー状に取付けられる。
【0022】
各穴開けパンチ21は、ベース29の上面に載置されたテーブル25に取付けられたパンチダイ22とそれぞれ対をなして嵌合する。また、ベース29の上面に載置されたテーブル25には、ワークカセット34が載置される。ワークカセット34には、複数の溝が設けられ、溝数に対応した本数のワーク19が溝に嵌合させて並べられる。ワーク19はワークカセット34に並べられた後に、カセットカバー24で上部を押さえられ、扁平に変形させられて溝内に固定される。
パンチング穿孔法による穿孔は、図8に示すように、パンチダイ22をワークカセット34に並べられたワークに挿入し、カム28を回動駆動させてフレーム23を下降させ、穴開けパンチ21をパンチダイ22に刺し込むことで、ワーク19の表面が穿孔されて吸引口13が形成される。
【0023】
<押し潰し部形成モジュールの説明>
図9、10を用い、押し潰しによる押し潰し部形成モジュールの実施方法を説明する。押し潰し部形成モジュール40は、ベース51上に左右1対のガイド支柱49が立設され、ガイド支柱49には上部ヒータホルダー55と下部ヒータホルダー56が対をなしてスライド自在に挿入される。これら上部ヒータホルダー55と下部ヒータホルダー56にはそれぞれ図示しないヒータが組込まれており、上部ヒートプレス板41と、下部ヒートプレス板42をそれぞれ、所定の設定温度に保持する。初期状態では、上部ヒータホルダー55と下部ヒータホルダー56間は、1対のバネ50の伸長力により、所定の間隔に離隔される。また、装置が初期状態にあるとき、ワークカセット34は、ワークカセット34に搭載されたワーク19の先端部の寸法Tの領域が、上部ヒートプレス板41と、下部ヒートプレス板42に挟まれてプレスされる位置に到達するまで、Y方向にスライドさせられる。
【0024】
上部ヒータホルダー55には押圧バネシリンダ48が取付けられ、押圧バネシリンダ48内には図示されない弾性バネが挿入されている。上部に配置されたモータ45に直結されたカム44の回動により上部ヒータホルダー55は下方に押し下げられ、内臓された弾性バネが圧縮されて所定の圧力で上部ヒートプレス板を下方に押し付ける。押圧バネシリンダ48の上部には検出部52が設けられており、検出部52が下死点スイッチ47を作動させると、モータ45が停止し、図示しないタイマーが作動し、所定時間押圧状態が保持される。この間ワーク19の先端部(T寸法部)はヒートプレス状態が維持される。所定時間の経過後、モータ45は反転駆動され、上部ヒータホルダー55はバネ50の伸長力により上方に持ち上げられ、検出部52が上死点スイッチ46を作動させると、モータ45は停止し、押し潰しによる押し潰し部18の形成工程は終了する。
【0025】
ここで、ヒートプレスによる押し潰し方法につい図10を用い、更に詳述する。図9には割愛されているが、上部ヒートプレス板41と、下部ヒートプレス板42の前面には一対の上ガイドローラ53と、下ガイドローラ54が回動自在に配置される。図10・Aに示すように上ガイドローラ53と下ガイドローラ54の間隔は、ワーク19の外径より小さく設定されるので、ワークは扁平に変形された状態で上部ヒートプレス板41と、下部ヒートプレス板42間に寸法Tだけ挿入される。また、下部ヒートプレス板42には突起43が設けられているので、ヒートプレス後の形状は図10・Bに示すように折り溝15が形成され、押し潰し部18も水平方向に対し、適度の角度(0~90度)を保って成形される。
【0026】
<折り曲モジュールの説明>
図11を用い折り曲モジュールの実施方法を説明する。折り曲モジュール60は、ベース57上に左右1対のガイド支柱69が立設され、ガイド支柱69には上部ヒータホルダー58と下部ヒータホルダー59が対をなしてスライド自在に挿入される。これら上部ヒータホルダー58と下部ヒータホルダー59にはそれぞれ図示しないヒータが組込まれており、上部ヒートプレス板61と、下部ヒートプレス板62をそれぞれ、所定の設定温度に保持する。初期状態では、上部ヒータホルダー58と下部ヒータホルダー59間は、1対のバネ70の伸長力により所定の間隔に離隔される。また、装置が初期状態にあるとき、図12・Aに示すように押し潰し部18の先端部を上部ヒートプレス板61に当接させてワーク19をY方向(矢印方向)にスライドさせる。この時ワーク19はワークカセット34にセットされた状態で、ワークカセット34をY方向にスライドさせることで、図12・Bに示すように折り溝15で折り曲げられ、折り溝15を先頭にして寸法Tだけ上部ヒータホルダー58と、下部ヒータホルダー59間に侵入する。
【0027】
上部ヒータホルダー58には押圧バネシリンダ68が取付けられ、押圧バネシリンダ68内には図示されない弾性バネが挿入されている。上部に配置されたモータ63に直結されたカム64の回動により上部ヒータホルダー58は下方に押し下げられ、内臓された弾性バネが圧縮されて所定の圧力で上部ヒートプレス板61を下方に押し付ける。押圧バネシリンダ68の上部には検出部75が設けられており、検出部75が下死点スイッチ67を作動させると、図示しないタイマーが作動し、所定時間押圧状態が保持され、この間ワーク19は先端を折り曲げられた状態で先端のT寸法部分をヒートプレスされる。所定時間の経過後、モータ63は反転し、上部ヒータホルダー58はバネ70の伸長力により上方に持ち上げられる。検出部75が上死点スイッチ66を作動させると、モータ63は停止し、ヒートプレスによる折り曲げ工程は終了する。図12・Cは折り曲げ工程の終了後の形態であり、拡散機能を有するストローの完成形態を示す。なお、厳密には拡散部14の長さ寸法は、寸法Tより若干短く、T寸法から突起43により形成される折り溝15の幅寸法を減じた寸法になる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
ストローには、通常の飲食で使用される狭義のストローと、幼児用の吸引チューブ付コップや、手の不自由な方がスープや流動食の飲食に使用するストローなどを含む広い意味でのストロー、即ち広義のストローとがある。本発明のストロー製造装置は、これら広義のストローについても口腔内に挿入される先端部に拡散部を設けることで、拡散機能を有するストローとすることができる。従って、本発明のストロー製造装置を用いれば広義のストローについても拡散機能を有するストローの製造ができる。
【符号の説明】
【0029】
5 飛散領域
10 拡散機能を有するストロー
13 吸引口
14 拡散部
15 折り溝
16 屈曲部
18 押し潰し部
19 ワーク(ストロー)
20 パンチング方式穿孔モジュール
30 溶融方式穿孔モジュール
31 ヒータ棒
32 ヒータ
34 ワークカセット
36 ガイド支柱
37 バネ
38 カム
40 押し潰し部形成モジュール
41 上部ヒートプレス板
42 下部ヒートプレス板
43 突起
46 上死点スイッチ
47 下死点スイッチ
48 押圧バネシリンダ
49 ガイド支柱
50 バネ
52 検出部
53 上ガイドローラ
54 下ガイドローラ
55 上部ヒータホルダー
56 下部ヒータホルダー
60 折り曲モジュール
71 制御ボックス
72 Y方向レール
73 X方向レール
80 拡散機能を有するストローの製造装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12