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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】超音波眼圧計
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
A61B3/16 300
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019219894
(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公開番号】P2021087636
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】三輪 哲之
(72)【発明者】
【氏名】植村 努
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-068873(JP,A)
【文献】特開平05-253190(JP,A)
【文献】特開2011-212124(JP,A)
【文献】特開2010-082279(JP,A)
【文献】特開2011-045602(JP,A)
【文献】特開2011-000344(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0280998(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼圧を測定するための超音波眼圧計であって、
振動子を有し、前記被検眼に向けて超音波を発生させる超音波発生手段と、
前記超音波発生手段の出力を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出信号を監視する制御手段と、を備え、
前記検出手段は、前記超音波発生手段から前記被検眼に向けて照射される超音波の照射経路外に配置され
前記制御手段は、前記検出手段の検出信号の大きさに基づいて、前記超音波発生手段の異常の有無を判定することを特徴とする超音波眼圧計。
【請求項2】
被検眼の眼圧を測定するための超音波眼圧計であって、
振動子を有し、前記被検眼に向けて超音波を発生させる超音波発生手段と、
前記超音波発生手段の出力を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出信号を監視する制御手段と、を備え、
前記検出手段は、前記超音波発生手段から前記被検眼に向けて照射される超音波の照射経路外に配置され、
前記制御手段は、前記検出手段の検出信号の周波数に基づいて、前記超音波発生手段の異常の有無を判定することを特徴とする超音波眼圧計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波を用いて被検眼の眼圧を測定する超音波眼圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触式眼圧計としては、未だ空気噴射式眼圧計が一般的である。空気噴射式眼圧計は、角膜に空気を噴射したときの角膜の圧平状態と、角膜に噴射される空気圧とを検出することによって、所定の変形状態における空気圧を眼圧に換算していた。
【0003】
また、非接触式眼圧計としては、超音波を用いて眼圧を測定する超音波眼圧計が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1の超音波式眼圧計は、角膜に超音波を放射したときの角膜の圧平状態と、角膜に噴射される放射圧とを検出することによって、所定の変形状態における放射圧を眼圧に換算するものである。
【0004】
また、超音波眼圧計としては、角膜からの反射波の特性(振幅、位相)と眼圧との関係に基づいて眼圧を測定する装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
特許文献1の装置では、超音波出力測定用の超音波センサが設けられ、超音波出力レベルが帰還制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-253190
【文献】特開2009-268651
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のような装置において、超音波センサによって超音波が遮られ、被検眼に対して十分に超音波を照射することができなかった。したがって、角膜に対して超音波を適正に照射できず、実際に角膜を扁平または陥没させる程度の超音波を被検眼に加えることはできなかった。
【0008】
本開示は、従来の問題点を鑑み、超音波の照射に影響を与えないように超音波出力を監視する超音波眼圧計を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0010】
(1) 被検眼の眼圧を測定するための超音波眼圧計であって、振動子を有し、前記被検眼に向けて超音波を発生させる超音波発生手段と、前記超音波発生手段の出力を検出する検出手段と、前記検出手段の検出信号を監視する制御手段と、を備え、前記検出手段は、前記超音波発生手段から前記被検眼に向けて照射される超音波の照射経路外に配置され、前記制御手段は、前記検出手段の検出信号の大きさに基づいて、前記超音波発生手段の異常の有無を判定することを特徴とする。
(2) 被検眼の眼圧を測定するための超音波眼圧計であって、振動子を有し、前記被検眼に向けて超音波を発生させる超音波発生手段と、前記超音波発生手段の出力を検出する検出手段と、前記検出手段の検出信号を監視する制御手段と、を備え、前記検出手段は、前記超音波発生手段から前記被検眼に向けて照射される超音波の照射経路外に配置され、前記制御手段は、前記検出手段の検出信号の周波数に基づいて、前記超音波発生手段の異常の有無を判定することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施例の超音波眼圧計の外観図である。
図2】本実施例の光学系を示す概略図である。
図3】本実施例の制御系を示すブロック図である。
図4】本実施例の制御動作を示すフローチャートである。
図5】変形検出系の検出信号を示す図である。
図6】変形検出系の検出信号を示す図である。
図7】本実施例の制御動作を示すフローチャートである。
図8】変形検出系の検出信号を示す図である。
図9】本実施例の制御動作を示すフローチャートである。
図10】表示部の表示の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本開示に係る第1実施形態について説明する。第1実施形態の超音波眼圧計は、被検眼の眼圧を非侵襲で測定する。超音波眼圧計は、例えば、被検眼に超音波を照射したときの角膜形状の変化、または超音波の反射波に基づいて、被検眼の眼圧を測定する。
【0013】
超音波眼圧計は、例えば、超音波発生部(例えば、超音波ユニット100)と、検出部(例えば、検出部300)と、制御部(例えば、制御部70)を備える。超音波発生部は、例えば、振動子を有し、被検眼に向けて超音波を発生させる。検出部は、例えば、超音波発生部の出力を検出する。検出部は、例えば、超音波、放射圧、または振動子の振動状況などを検出する。制御部は、検出部の検出信号を受信する。
【0014】
なお、検出部は、照射経路の外に配置される。照射経路は、超音波発生部から被検眼に向かう超音波の照射経路である。照射経路は、例えば、超音波発生部の前面と、超音波の照射スポット(または照射目標)を結ぶ範囲である。この範囲の外側に検出部が配置されることによって、検出部が被検眼に照射される超音波の障害となる可能性を低減できる。
【0015】
例えば、被検眼に対面する方向を超音波発生部の前方とした場合、検出部は、超音波発生部の側方または後方に配置されてもよい。この場合、検出部は、超音波発生部の側方または後方から超音波発生部の出力を検出する。もちろん、検出部は、超音波発生部の内側または内部に配置されてもよい。例えば、検出部は、超音波発生部の開口部(例えば、開口部110)に配置されてもよいし、超音波発生部に組み込まれていてもよい。
【0016】
なお、検出部は、超音波を検出する超音波センサであってもよい。この場合、検出部は、振動子から発せられる超音波を、超音波センサによって検出する。検出部は、照射経路外(超音波発生部の側方または後方など)に漏れた超音波を検出する。超音波センサは、照射経路の近く、または超音波発生部の後方に配置されると、超音波を検出し易い。
【0017】
なお、検出部は、変位センサであってもよい。この場合、検出部は、変位センサによって振動子の変位を検出する。制御部は、検出部によって検出された振動子の変位を監視する。なお、変位センサは、例えば、レーザ変位計のように光学的に変位を検出するものであってもよい。
【0018】
なお、制御部は、検出部によって検出された検出信号の大きさ(強度)、振幅または周波数などに基づいて、超音波発生部の異常の有無を判定してもよい。例えば、制御部は、検出信号の強度、振幅、周波数などが所定範囲内であれば超音波発生部に異常はないと判定し、所定範囲よりも大きい、または小さい場合に超音波発生部に異常があると判定してもよい。これによって、超音波発生部の異常を自動的に判定することができる。
【0019】
また、制御部は、検出信号のイニシャル値と検出値との比較結果に基づいて、超音波発生部の異常の有無を判定してもよい。イニシャル値は、正常状態において検出部によって検出される検出信号の値(強度、振幅、または周波数など)である。検出値は、被検眼の検査時に検出部によって検出される検出信号の値である。イニシャル値は、例えば、超音波眼圧計に設けられた記憶部(例えば、記憶部74)に記憶される。制御部は、例えば、検出信号のイニシャル値と検出値の差が所定範囲内であれば超音波発生部に異常はないと判定し、差が所定範囲外であれば超音波発生部に異常があると判定してもよい。
【0020】
また、制御部は、検出部によって検出された検出信号の変化に基づいて、超音波発生部の異常の有無を判定してもよい。例えば、制御部は、検出部によって検出される検出信号が、所定量以上変化した場合に超音波発生部に異常があると判定してもよい。
【0021】
なお、制御部は、検出部の検出状態を表示部(例えば、表示部75)に表示させてもよい。検者は、表示部の検出状態を確認することによって、超音波が正常に照射されているか否か判断することができる。
【0022】
なお、本装置は、さらに報知部を備えてもよい。報知部は、超音波の出力に異常があったことを検者に報知する。報知部は、例えば、表示部、スピーカー、振動装置、ランプ等であってもよい。例えば、制御部は、超音波発生部に異常があると判定した場合、ディスプレイへの表示、スピーカーからの音、振動装置の振動、またはランプの点灯などによって、検者に超音波発生部の異常を報知する。これによって、検者は、超音波が正常に照射されていないことを把握することができる。
【0023】
また、制御部は、超音波発生部に異常があると判定した場合、被検眼の測定を中断させてもよい。これによって、不要な測定にかかる時間を削減できる。また、被検眼に不要な超音波を照射することを防げる。
【0024】
なお、制御部は、超音波発生部に異常があると判定した場合、超音波発生部の制御を変化させてもよい。例えば、制御部は、被検眼に加わる放射圧が正常になるように超音波発生部に加える電圧を自動で変化させてもよい。この場合、制御部は、検出部からの検出信号の値が正常値に戻るように超音波発生部に加える電圧を調整してもよい。これによって、超音波の出力が異常な場合であっても、すぐに正常な状態に戻して測定を行うことができる。もちろん、超音波発生部に対する自動調整の有無は任意に選択可能であってもよい。
【0025】
なお、制御部は、検出部によって検出された検出信号に基づいて、照射経路内の超音波の出力を推定してもよい。例えば、検出部の検出信号と、照射経路内を伝わる超音波の大きさとの相関関係を予め、この相関関係を表す数値テーブルを記憶部に記憶させておく。制御部は、記憶部に記憶された数値テーブルと、検出部の検出信号とに基づいて超音波の出力を算出する。これによって、制御部は、照射経路内を伝わる超音波の大きさを監視することができる。
【0026】
<第2実施形態>
以下、本開示に係る第2実施形態について説明する。第2実施形態の超音波眼圧計は、例えば、超音波発生部と、変形検出部(変形検出系260)と、制御部を備える。超音波発生部は、被検眼に向けて超音波を発生させる。変形検出部は、角膜の変形状態を検出する。変形検出部は、例えば、光学的に角膜の変形状態を検出する。例えば、変形検出部は、角膜が所定形状に変形した場合に検出信号の強度が最も大きくなるように設けられてもよい。また、変形検出部は、画像を撮影することによって角膜の変形状態を検出してもよい。制御部は、超音波発生部を制御する。
【0027】
制御部は、変形検出部によって得られた検出信号に基づいて、超音波発生部による超音波の照射を停止させる。例えば、制御部は、眼圧を測定できる形状まで角膜が変形したことを検出信号に基づいて検知した場合に、超音波の照射を停止させる。このように、検出信号に基づいて超音波の照射を停止させることによって、被検眼に必要以上に超音波を照射することを防止できる。これによって、被検者に不快感を与えないようにできる。
【0028】
なお、眼圧を測定できる所定形状に角膜が変形したときに検出信号の強度が最大となるように変形検出部が調整されている場合、制御部は、検出信号の最大値に基づいて超音波の照射を停止させてもよい。ここで、最大値とは、例えば、変形検出部によって得られる検出信号全体の中で最大の強度である。例えば、制御部は、検出信号の最大値が出現した場合に超音波の照射を停止させてもよい。
【0029】
例えば、制御部は、検出信号の極大値を最大値とみなし、超音波を停止させてもよい。ただし、変形検出部の誤検出によって検出信号の極大値が複数出現する場合があるため、制御部は、検出信号の極大値が最大値とみなせるかどうか確認するための処理を実行してもよい。
【0030】
検出信号が最大値をとった後も超音波の照射が継続される場合、音響放射圧が大きくなり、角膜が所定形状からさらに大きく変形する。このため、検出信号が低下するはずである。したがって、制御部は、検出信号が極大値をとった後も超音波の照射を継続させ、検出信号の強度が所定量低下した場合に極大値を最大値とみなし、超音波の照射を停止させてもよい。これによって、誤検出された最大でない極大値に基づいて超音波を停止させてしまうことを防げる。
【0031】
また、制御部は、検出信号が極大値をとった後、所定時間内に検出信号の最大値が更新されない場合、超音波の照射を停止させてもよい。つまり、検出信号の強度が所定時間減衰を続けている場合、制御部は、検出信号が減衰する前の時点で角膜が所定形状に変形したと判定し、超音波の照射を停止させてもよい。
【0032】
なお、制御部は、検出信号が極大値をとるまでの超音波の照射時間に基づいて眼圧を算出してもよい。例えば、超音波の照射時間と、被検眼に生じる音響放射圧とは相関がある。したがって、制御部は、超音波の照射時間に対応する音響放射圧の大きさに基づいて、被検眼の眼圧を算出してもよい。例えば、角膜が所定形状に変形するときの音響放射圧の大きさを、各眼圧の被検眼に対して予め測定しておき、音響放射圧と眼圧の対応関係を記憶部に記憶させてもよい。そして、制御部は、記憶部に記憶された対応関係に基づいて被検眼の眼圧を決定してもよい。
【0033】
なお、制御部は、検出信号が複数の極大値をとる場合、複数の極大値の中で最大の極大値(つまり、最大値)が出現した時刻を基準として眼圧を算出してもよい。つまり、検出信号が最大値をとったときの超音波の照射時間に基づいて眼圧を算出してもよい。また、制御部は、検出信号が複数の極大値をとった場合、検出信号が各極大値をとったときの照射時間の統計(例えば、平均など)に基づいて眼圧を算出してもよい。
【0034】
<第3実施形態>
以下、本開示に係る第3実施形態について説明する。第3実施形態の超音波眼圧計は、超音波発生部と、制御部を備える。超音波発生部は、被検眼に向けて超音波を発生させる。制御部は、超音波発生部を制御する。制御部は、超音波発生部によって被検眼に超音波を照射させ、所定の照射時間が経過すると超音波の照射を停止させる。これによって、本装置は、被検者に与える不快感を低減できる。
【0035】
なお、本装置は、被検眼の角膜の変形状態を検出する変形検出部をさらに備えてもよい。制御部は、変形検出部によって得られる検出信号に基づいて、眼圧が測定可能な所定形状に角膜が変形したか否かを判定してもよい。制御部は、角膜が所定形状に変形したことが検出された場合、変形検出部によって得られた検出信号に基づいて被検眼の眼圧を算出してもよい。また、制御部は、角膜が所定形状に変形したことが検出されなかった場合、次回照射する超音波の照射時間を変更してもよい。例えば、制御部は、次回の超音波の照射時間を長くしてもよい。
【0036】
被検眼に超音波を照射する場合、照射時間が長いと被検者に不快感を与える可能性がある。例えば、10ミリ秒(msec)以上超音波を照射する場合、被検者に不快感を与える場合がある。そこで、制御部は、被検者に不快感を与えないように、1回目の測定では10msec以下で超音波の照射を行い、1回目の測定でピークが出なければ、2回目以降の測定で、10msec以上の超音波を照射してもよい。なお、1回目の測定において、制御部は、2msec以下で超音波の照射を行ってもよい。これによって、被検者に不快感を与える可能性をさらに低減できる。
【0037】
なお、制御部は、変形検出部によって角膜が所定形状に変形したことが検出された場合、変形検出部によって得られた検出信号に基づいて被検眼の眼圧を算出し、角膜が所定形状に変形したことが検出されなかった場合、次回の超音波の照射において照射出力を変更してもよい。このように、制御部は、測定可能となるまで徐々に超音波の出力を大きくすることによって、被検者に与える不快感を低減させてもよい。
【0038】
なお、制御部は、前回の照射から10msec以内に次の超音波を照射させてもよい。これによって、測定時間を短縮させることができる。また、制御部は、前回の照射から1~2msec程度間隔を空けて次の超音波を照射させてもよい。これによって、本装置は、被検者に不快感を与える可能性を低減できる。
【0039】
<実施例>
以下、本開示に係る実施例について説明する。本実施例の超音波眼圧計は、例えば、超音波を用いて非接触にて被検眼の眼圧を測定する。
【0040】
図1は、装置の外観を示している。超音波眼圧計1は、例えば、基台2と、測定部3と、顔支持部4、駆動部5等を備える。測定部3については後述する。顔支持部4は、被検眼の顔を支持する。顔支持部4は、例えば、基台2に設置される。駆動部5は、例えば、アライメントのために基台2に対して測定部3を移動させる。
【0041】
図2は、測定部3の主な構成の概略図である。測定部3は、例えば、被検眼の測定・観察等を行う。測定部3は、例えば、超音波ユニット100と、光学ユニット200、検出部300等を備える。超音波ユニット100、光学ユニット200、検出部300について図2を用いて順に説明する。
【0042】
超音波ユニット100は、例えば、超音波を被検眼Eに照射する。例えば、超音波ユニット100は、角膜に対して超音波を照射し、角膜に音響放射圧を発生させる。音響放射圧は、例えば、音波の進む方向に働く力である。本実施例の超音波眼圧計1は、例えば、この音響放射圧を利用して、角膜を変形させる。超音波ユニット100は、例えば、超音波素子を備える。超音波素子は、例えば、超音波を発生させる。例えば、超音波素子は圧電素子(例えば、圧電セラミックス)、磁歪素子等であってもよい。
【0043】
なお、超音波ユニット100は、開口部110を備えてもよい。例えば、開口部110は、後述の光学ユニット200からの光を通過させるように形成されてもよい。
【0044】
超音波ユニット100は、ボルト締めランジュバン型振動子(Bolt-clamped Langevin-type Transducer: BLT)であってもよい。BLTは、例えば、積層された2つの圧電素子を金属ブロックで挟み、それをボルト締めしたものである。これによって、圧電素子の引っ張り強度を強くし、発振による大きな引っ張り応力にも耐えられるようになる。また、超音波ユニット100は、パラメトリックスピーカーであってもよい。パラメトリックスピーカーは、例えば、複数の超音波素子を並列させた構成である。
【0045】
光学ユニット200は、例えば、被検眼の観察、または測定等を行う。光学ユニット200は、例えば、対物系210、観察系220、固視標投影系230、指標投影系250、変形検出系260、ダイクロイックミラー201、ビームスプリッタ202、ビームスプリッタ203、ビームスプリッタ204等を備える。
【0046】
対物系210は、例えば、光学ユニット200に測定部3の外からの光を取り込む、または光学ユニット200からの光を測定部3の外に照射するための光学系である。対物系210は、例えば、光学素子を備える。対物系210は、光学素子(対物レンズ、リレーレンズなど)を備えてもよい。
【0047】
照明光学系240は、被検眼を照明する。照明光学系240は、例えば、被検眼を赤外光によって照明する。照明光学系240は、例えば、照明光源241を備える。照明光源241は、例えば、被検眼の斜め前方に配置される。照明光源241は、例えば、赤外光を出射する。照明光学系240は、複数の照明光源241を備えてもよい。
【0048】
観察系220は、例えば、被検眼の観察画像を撮影する。観察系220は、例えば、被検眼の前眼部画像を撮影する。観察系220は、例えば、受光レンズ221、受光素子222等を備える。観察系220は、例えば、被検眼によって反射した照明光源241からの光を受光する。観察系は、例えば、光軸O1を中心とする被検眼からの反射光束を受光する。例えば、被検眼からの反射光は、超音波ユニット100の開口部110を通り、対物系210、受光レンズ221を介して受光素子222に受光される。
【0049】
固視標投影系230は、例えば、被検眼に固視標を投影する。固視標投影系230は、例えば、視標光源231、絞り232、投光レンズ233、絞り234等を備える。視標光源231からの光は、光軸O2に沿って絞り232、投光レンズ233、絞り232等を通り、ダイクロイックミラー201によって反射される。ダイクロイックミラー201は、例えば、固視標投影系230の光軸O2を光軸O1と同軸にする。ビームスプリッタ201によって反射された視標光源231からの光は、光軸O1に沿って対物系210を通り、被検眼に照射される。固視標投影系230の視標が被検者によって固視されることで、被検者の視線が安定する。
【0050】
指標投影系250は、例えば、被検眼に指標を投影する。指標投影系250は、被検眼にXYアライメント用の指標を投影する。指標投影系250は、例えば、指標光源(例えば、赤外光源であってもよい)251と、絞り252、投光レンズ253等を備える。指標光源251からの光は、光軸O3に沿って絞り252、投光レンズ253を通り、ビームスプリッタ202によって反射される。ビームスプリッタ202は、例えば、指標投影系250の光軸O3を光軸O1と同軸にする。ビームスプリッタ202によって反射された指標光源251の光は、光軸O1に沿って対物系210を通り、被検眼に照射される。被検眼に照射された指標光源251の光は、被検眼によって反射され、再び光軸O1に沿って対物系210と受光レンズ221等を通り、受光素子222によって受光される。受光素子によって受光された指標は、例えば、XYアライメントに利用される。この場合、例えば、指標投影系250および観察系220は、XYアライメント検出手段として機能する。
【0051】
変形検出系260は、例えば、被検眼の角膜形状を検出する。変形検出系260は、例えば、被検眼の角膜の変形を検出する。変形検出系260は、例えば、受光レンズ261、絞り262、受光素子263等を備える。変形検出系260は、例えば、受光素子263によって受光された角膜反射光に基づいて、角膜の変形を検出してもよい。例えば、変形検出系260は、指標光源251からの光が被検眼の角膜によって反射した光を受光素子263で受光することによって角膜の変形を検出してもよい。例えば、角膜反射光は、光軸O1に沿って対物系210を通り、ビームスプリッタ202、ビームスプリッタ203によって反射される。そして、角膜反射光は、光軸O4に沿って受光レンズ261および絞り262を通過し、受光素子263によって受光される。
【0052】
変形検出系260は、例えば、受光素子236の受光信号の大きさに基づいて角膜の変形状態を検出してもよい。例えば、変形検出系260は、受光素子236の受光量が最大となったときに角膜が圧平状態になったことを検出してもよい。この場合、例えば、変形検出系260は、被検眼の角膜が圧平状態になったときに受光量が最大となるように設定される。
【0053】
なお、変形検出系260は、OCT又はシャインプルーフカメラ等の前眼部断面像撮像ユニットであってもよい。例えば、変形検出系260は、角膜の変形量または変形速度などを検出してもよい。
【0054】
角膜厚測定系270は、例えば、被検眼の角膜厚を測定する。角膜厚測定系270は、例えば、測定光源271と、投光レンズ272と、絞り273と、受光レンズ274と、受光素子275等を備えてもよい。光源271からの光は、例えば、光軸O5に沿って投光レンズ272、絞り273を通り、被検眼に照射される。そして、被検眼によって反射された反射光は、光軸O6に沿って受光レンズ274によって集光され、受光素子275によって受光される。
【0055】
Zアライメント検出系280は、例えば、Z方向のアライメント状態を検出する。Zアライメント検出系280は、例えば、受光素子281を備える。Zアライメント検出系280は、例えば、角膜からの反射光を検出することによって、Z方向のアライメント状態を検出してもよい。例えば、Zアライメント検出系は、光源271からの光が被検眼の角膜によって反射した反射光を受光してもよい。この場合、Zアライメント検出系280は、例えば、光源271からの光が被検眼の角膜によって反射してできた輝点を受光してもよい。このように、光源271は、Zアライメント検出用の光源として兼用されてもよい。例えば、角膜によって反射した光源271からの光は、光軸O6に沿ってビームスプリッタ204によって反射され、受光素子281によって受光される。
【0056】
<検出部>
検出部300は、例えば、超音波ユニット100の出力を検出する。検出部300は、例えば、超音波センサ、変位センサ、圧力センサ等のセンサである。超音波センサは、超音波ユニット100から発生した超音波を検出する。変位センサは、超音波ユニット100の変位を検出する。変位センサは、変位を継続的に検出することによって、超音波ユニット100が超音波を発生させるときの振動を検出してもよい。
【0057】
図2に示すように、検出部300は、超音波の照射経路Aの外に配置される。照射経路Aは、例えば、超音波ユニットの前面Fと、超音波の照射目標Tiを結ぶ領域である。検出部300は、例えば、超音波ユニット100の側方または後方などに配置される。本実施例のように、検出部300が側方に配置される場合、観察系220での被検眼の観察を行い易い。検出部300として超音波センサが用いられる場合、検出部300は、超音波ユニット100の側方または後方から漏れる超音波を検出する。検出部300として変位センサが用いられる場合、検出部300は、超音波ユニット100の側方または後方から超音波ユニット100の変位を検出する。変位センサは、例えば、超音波ユニット100にレーザ光を照射し、反射したレーザ光に基づいて超音波ユニット100の変位を検出する。検出部300によって検出された検出信号は、制御部に送られる。
【0058】
<制御部>
次に、図3を用いて、制御系の構成について説明する。制御部70は、例えば、装置全体の制御、測定値の演算処理等を行う。制御部70は、例えば、一般的なCPU(Central Processing Unit)71、ROM72、RAM73等で実現される。ROM72には、端末装置10の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されている。RAM73は、各種情報を一時的に記憶する。なお、制御部70は、1つの制御部または複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。制御部70は、例えば、記憶部74、表示部75、操作部76、超音波ユニット100、光学ユニット200、検出部300等と接続されてもよい。制御部70は、検出部300からの検出信号を受信する。
【0059】
記憶部74は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、着脱可能なUSBメモリ等を記憶部74として使用することができる。
【0060】
表示部75は、例えば、被検眼の測定結果を表示する。表示部75は、タッチパネル機能を備えてもよい。
【0061】
操作部76は、検者による各種操作指示を受け付ける。操作部76は、入力された操作指示に応じた操作信号を制御部70に出力する。操作部76には、例えば、タッチパネル、マウス、ジョイスティック、キーボード等の少なくともいずれかのユーザーインターフェイスを用いればよい。なお、表示部75がタッチパネルである場合、表示部75は、操作部76として機能してもよい。
【0062】
<制御動作>
以上のような構成を備える装置の制御動作について説明する。まず、制御部70は、顔支持部4に顔を支持された被検者の被検眼に対する測定部3のアライメントを行う。例えば、制御部70は、受光素子222によって取得される前眼部画像から指標投影系250による輝点を検出し、輝点の位置が所定の位置になるように駆動部5を駆動させる。もちろん、検者は、表示部75を見ながら、操作部76等を用いて被検眼に対するアライメントを手動で行ってもよい。制御部70は、駆動部5を駆動させると、前眼部画像の輝点の位置が所定の位置であるか否かによってアライメントの適否を判定する。
【0063】
被検眼Eに対するアライメント完了後、制御部70は、角膜厚測定系270によって角膜厚を測定する。例えば、制御部70は、受光素子275によって受光された受光信号に基づいて角膜厚を算出する。例えば、制御部70は、受光信号に基づいて、角膜表面の反射光によるピーク値と、角膜裏面の反射光のピーク値との位置関係から角膜厚を求めてもよい。制御部70は、例えば、求めた角膜厚を記憶部74等に記憶させる。
【0064】
続いて制御部70は、超音波ユニット100を用いて被検眼の眼圧を測定する。例えば、制御部70は、超音波素子に電圧を印加し、被検眼Eに超音波を照射する。制御部70は、例えば、超音波によって音響放射圧を生じさせることによって角膜を変形させる。そして、制御部70は、変形検出系260によって角膜の変形状態を検出する。例えば、制御部70は、受光素子263の受光信号に基づいて角膜が所定形状(圧平状態または扁平状態)に変形したことを検出する。
【0065】
制御部70は、例えば、被検眼の角膜が所定形状に変形したときの音響放射圧に基づいて被検眼の眼圧を算出する。被検眼に加わる音響放射圧は超音波の照射時間と相関があり、超音波の照射時間が長くなるにつれて大きくなる。したがって、制御部70は、超音波の照射時間に基づいて、角膜が所定形状に変形したときの音響放射圧を求める。角膜が所定形状に変形するときの音響放射圧と、被検眼の眼圧との関係は、予め実験等によって求められ、記憶部74等に記憶される。制御部70は、角膜が所定形状に変形したときの音響放射圧と、記憶部74に記憶された関係に基づいて被検眼の眼圧を決定する。
【0066】
もちろん、眼圧の算出方法は、上記に限らず、種々の方法が用いられてもよい。例えば、制御部70は、変形検出系260によって角膜の変形量を求め、変形量に換算係数を掛けることによって眼圧を求めてもよい。なお、制御部70は、例えば、記憶部74に記憶された角膜厚に応じて算出した眼圧値を補正してもよい。
【0067】
<超音波の照射制御>
以下、眼圧測定を行う際の超音波の照射制御について図4のフローチャートに基づいて説明する。図4は、角膜測定終了後から眼圧の算出前までの制御について示している。
【0068】
(ステップS1-1:超音波照射)
ステップS1-1において、制御部70は、超音波ユニット100によって超音波を発生させる。発生した超音波は、被検眼に照射される。超音波によって被検眼に音響放射圧が加わり、角膜が変形する。変形検出系260は、角膜の変形を検出し、検出信号を制御部70に送信する。
【0069】
(ステップS1-2:検出信号の取得)
ステップS1-2において、制御部70は、変形検出系260から検出信号を取得する。
【0070】
(ステップS1-3:検出信号の低下判定)
ステップS1-3において、制御部70は、検出信号が極大値をとった後、検出信号の強度が所定量低下したか否か判定する。例えば、図5に示すように、制御部70は、信号強度の極大値と、極大値をとった後の信号強度の最小値との差Dを、所定量Daと比較する。制御部70は、差Dが所定量Daよりも小さい場合はステップS1-4に進み、差Dが所定量Daよりも大きい場合はステップS1-5に進む。例えば、図5の時刻T1の場合、検出信号の極大値P1と、極大値P1の出現以降の最小値M1との差Dは、所定量Daよりも小さいため、制御部70はステップS1-4に進む。図5の時刻T2の場合、検出信号の最大値は、極大値P1よりも大きな極大値P2に更新されている。極大値P2と、極大値P2の出現以降の最小値M2との差Dは、所定量Daよりも大きいため、制御部70は、ステップS1-5に進む。
【0071】
(ステップS1-4:所定時間の経過判定)
ステップS1-4において、制御部70は、検出信号の最大値が更新されてから所定時間Taが経過したか否か判定する。例えば、図6に示すように、制御部70は、最大値が更新された時刻から現時点までの経過時間Tを、所定時間Taと比較する。制御部70は、経過時間Tが所定時間Taよりも長い場合はステップS1-5に進み、経過時間Tが所定時間Taよりも短い場合はステップS1-2に戻る。図6の時刻T4の場合、直近の最大値である極大値P1が検出された時刻T3からの経過時間Tbは、所定時間Taよりも短いため、制御部70はステップS1-2に戻る。図6の時刻T6の場合、直近の最大値である極大値P2が検出された時刻T5からの経過時間Tcは、所定時間Taよりも長いため、制御部70はステップS1-5に進む。
【0072】
(ステップS1-5:超音波停止)
ステップS1-5において、制御部70は、超音波ユニット100を制御して超音波を停止させ、眼圧の算出に移る。
【0073】
以上のように、制御部70は、検出信号に基づいて超音波の照射を停止させることによって、被検眼に必要以上に超音波を照射させ、被検者に不快感を与える可能性を抑制できる。
【0074】
従来の空気噴出式の装置では、被検眼に余分な空気が噴射されることを防ぐため、角膜が所定形状に変形する前に空気噴出部の駆動を停止させ、その後はピストンの惰性によって空気を噴出させていた。しかし、超音波式の場合は、角膜の変形が始まった段階で超音波ユニット100の駆動を停止させると、すぐに超音波の照射が終わってしまい、角膜を所定状態まで変形させるだけの音響放射圧を得ることができない。そこで、本実施例のように、制御部70は、検出信号が極大値をとった後、所定量低下することを確認することによって、検出された極大値が誤検出によるものか、角膜が所定形状に変形したことによるものかを容易に判定することができる。これによって、超音波の照射時間が足らず、眼圧測定が不正確になる可能性を低減できる。
【0075】
なお、ステップS1-4のように、検出信号の最大値が更新されるまでの時間に制限を設けることによって、超音波の照射が不要に長引くことを防げる。
【0076】
<超音波停止の変容例>
なお、制御部70は、眼圧測定を行う際の超音波の照射制御について図7のフローチャートに示すような制御動作を実行させてもよい。図7に示す制御動作は、図4の制御動作に対して超音波を停止させるタイミングが異なる。また、図7は、角膜測定終了後から眼圧の算出前までの制御について示している。
【0077】
(ステップS2-1:超音波照射)
ステップS2-1において、制御部70は、超音波ユニット100によって超音波を発生させる。発生した超音波は、被検眼に照射させる。超音波によって被検眼に音響放射圧が加わり、角膜が変形する。変形検出系260は、角膜の変形を検出し、検出信号を制御部70に送信する。
【0078】
(ステップS2-2:超音波停止)
ステップS2-2において、制御部70は、所定の照射時間が経過すると、超音波ユニット100を制御して超音波を停止させる。
【0079】
(ステップS2-3:極大値の有無判定)
ステップS2-3において、制御部70は、変形検出系260から受信した検出信号の変化を監視し、検出信号の極大値の有無を判定する。例えば、制御部70は、時間に対する検出信号のグラフの傾きを算出し、その正負に基づいて極大値の有無を判定する。もちろん、制御部70は、単に検出信号の強度の増減に基づいて極大値の有無を判定してもよい。なお、誤検出による極大値が出現する可能性もあるため、制御部70は、超音波の照射終了時点で最大となる極大値が有るか否かを判定してもよい。この場合、例えば、制御部70は、超音波の照射終了時点で最大となる極大値がないと判定した場合はステップS2-4に進み、最大となる極大値があると判定した場合は眼圧の算出に移る。なお、制御部70は、前述の実施例のように、検出信号が極大値をとった後に所定量低下したか否かを判定基準に用いてもよい。
【0080】
(ステップS2-4:照射時間変更)
ステップS2-4において、制御部70は、検出信号にピークが出ていない場合、照射時間を長くする。例えば、図8に示すように、超音波の1回目の照射において、照射時間Tdで超音波を照射した場合、検出信号の極大値P1は検出されない。この場合、制御部70は、超音波の照射時間Tdを照射時間Teに変更する。本実施例において、照射時間Teは、本装置において測定可能な最大の眼圧を求めるための照射時間に設定される。
【0081】
制御部70は、照射時間を変更すると、ステップS2-1に戻る。制御部70は、ステップS2-1、ステップS2-2において、再度、超音波ユニット100によって照射時間Teで超音波を照射する。上記のように、超音波の照射時間が最大に変更された場合、ステップS2-3において検出信号に極大値P1が出現する(図8参照)。
【0082】
以上のように、予め設定された照射時間で超音波の照射を停止させることによって、正常な眼圧の被検者に与える不快感を低減することができる。
【0083】
なお、制御部70は、上記のように、始めから最大の照射時間Teに変更しなくてもよく、ステップS2-1~S2-4の処理が繰り返される度、徐々に照射時間を長くしてもよい。これによって、本装置は、超音波が照射される感覚を被検者に徐々に覚えさせ、恐怖心の弱まった状態で測定を行うことができる。
【0084】
なお、制御部70は、前回の超音波の照射から次回の超音波の照射までの照射間隔を10msec以内にしてもよい。これによって、被検眼に不快感を与えずに、より短時間で測定を行うことができる。
【0085】
なお、ステップS2-4において、測定時のアライメントがずれた場合、または被検者の瞬きなどによって正常に測定が行われなかった場合、制御部70は、超音波の照射時間を変更しなくてもよい。例えば、制御部70は、超音波照射時の観察系220によって撮影された前眼部画像、またはZアライメント検出系280の検出結果に基づいて、アライメントのずれ、または被検者の瞬きを検知してもよい。アライメントずれ、または瞬きが検出された場合、制御部70は、同じ照射時間で再度測定を行ってもよい。このように、制御部70は、角膜が変形しない要因が超音波の出力以外に考えられる場合、超音波の照射時間を維持することによって、次回の測定で必要以上に超音波を照射することを抑制できる。
【0086】
<超音波の監視>
次に、眼圧測定時における超音波出力の監視についての制御動作を図9のフローチャートに基づいて説明する。制御部70は、超音波ユニット100によって超音波を照射する際に、以下の処理を実行し、超音波出力を監視する。
【0087】
(ステップS3-1:検出部による検出)
ステップS3-1において、検出部300は、超音波ユニット100の側面から漏れた超音波を検出し、検出信号を制御部70に送信する。なお、図10に示すように、制御部70は、検出信号を表示部75に表示してもよい。これによって、検者は、表示部75の検出状態を確認することで、超音波が正常に照射されているか否か判断することができる。
【0088】
(ステップS3-2:異常の有無判定)
ステップS3-2において、制御部70は、検出部300から受け取った検出信号の大きさに基づいて、超音波ユニット100の異常の有無を判定する。例えば、制御部70は、記憶部74記憶された検出信号のイニシャル値と、測定時の検出信号の検出値との比較結果に基づいて、超音波ユニット100の異常の有無を判定する。イニシャル値は、例えば、超音波ユニット100が正常な状態において検出部300によって検出される検出信号の値である。制御部70は、例えば、検出値とイニシャル値の差が正常範囲内であれば超音波ユニット100に異常はないと判定し、正常範囲外であれば超音波ユニット100に異常があると判定する。正常範囲は記憶部74に記憶されており、検者によって適宜設定可能であってもよい。超音波ユニット100に異常があると判定された場合はステップ3-3に進み、異常がないと判定された場合はステップ3-1に戻って超音波の検出を続ける。
【0089】
(ステップS3-3:測定中止)
ステップS3-3において、制御部70は、超音波ユニット100による超音波の発生を中止させ、測定を中断する。これによって、不正確な測定にかかる時間を短縮できる。また、被検眼に不要な超音波を照射することを防げる。
【0090】
(ステップS3-4:報知)
ステップS3-4において、制御部70は、超音波ユニット100に異常があったことを検者に報知する。例えば、図10に示すように、制御部70は、超音波に異常がある旨の警告79を表示部75に表示させる。検者は、表示部75の表示を確認することによって、超音波が正常に照射されていないことを把握することができる。なお、表示部75への表示に限らず、制御部70は、スピーカーの音、振動装置の振動、またはランプの点灯などによって、検者に超音波ユニット100の異常を報知してもよい。
【0091】
例えば、検出部300が照射経路A(図2参照)の中に配置される場合、検出部300によって超音波が乱れ、被検眼に対して十分な出力の超音波を照射することができない可能性があった。この場合、被検眼を十分に変形させることができず、眼圧を測定することが難しい。しかしながら、上記のように、検出部300を超音波の照射経路Aの外に配置することによって、被検者に照射される超音波が検出部300によって遮られることを抑制できる。したがって、超音波の出力を監視することに加え、被検眼を変形させるのに十分な超音波を照射できる。これによって、本装置は、超音波出力の過不足を監視することができ、安全に眼圧測定を行うことができる。
【0092】
なお、制御部70は、超音波ユニット100に異常があると判定した場合、超音波ユニット100の制御を変化させてもよい。例えば、制御部70は、被検眼に加わる放射圧が正常になるように超音波ユニット100に加える電圧を自動で変化させてもよい。この場合、制御部70は、検出部300からの検出信号の値が正常値に戻るように超音波ユニット100に加える電圧を調整してもよい。これによって、制御部70は、超音波の出力が異常な場合であっても、すぐに正常な状態に戻して測定を行うことができる。もちろん、超音波ユニット100に対する自動調整の有無は任意に選択可能であってもよい。
【0093】
なお、以上の説明において、検出信号のイニシャル値との比較に基づいて超音波ユニット100の異常の有無を判定したが、これに限らない。例えば、検出信号の正常範囲が予め設定されており、検出信号が正常範囲内に入るか否かで超音波ユニット100の異常の有無を判定してもよい。
【0094】
また、制御部70は、検出部300によって検出された検出信号の変化に基づいて、超音波ユニット100の異常の有無を判定してもよい。例えば、制御部70は、検出部300によって検出される検出信号が、所定の変化量より大きく変化した場合に超音波ユニット100に異常があると判定してもよい。例えば、検出信号が30%以上変化した場合に超音波ユニット100に異常があると判定してもよい。
【0095】
なお、制御部70は、検出部300によって検出された検出信号に基づいて、照射経路Aの中の超音波の出力を推定してもよい。例えば、超音波の照射目標Tiの位置に超音波センサを設置し、超音波センサによって検出される超音波の大きさと、検出部300によって検出される検出信号の大きさの相関関係を求め、この相関関係を表す数値テーブルを記憶部74に記憶させておく。この場合、制御部70は、記憶部74に記憶された数値テーブルに基づいて、検出部300の検出信号の大きさを超音波の出力値に換算する。これによって、制御部70は、照射経路Aの中を伝わる超音波の大きさを監視することができる。
【0096】
なお、以上の実施例は、超音波の出力が一定である場合を想定しているが、超音波の出力値を調整できる構成であってもよい。例えば、超音波の出力は徐々に大きくなるように出力されてもよい。このような場合、制御部70は、検出部300の検出信号に基づいて、超音波出力の変化を検出してもよい。
【0097】
なお、図6のように、検出信号が複数の極大値(極大値P1,P2)をとる場合、制御部70は、最大の極大値(例えば、極大値P2)をとる時刻(例えば、時刻T5)を基準に眼圧を算出してもよいし、複数の極大値の各時刻(例えば、時刻T3,T5)の平均時刻等を基準として眼圧を算出してもよい。これらの眼圧の算出方法は、検者によって適宜設定可能であってもよい。
【0098】
なお、制御部70は、検出部300の検出結果を眼圧の測定に利用してもよい。例えば、制御部70は、超音波の照射時間に基づいて算出した眼圧を、検出部300によって得られた検出信号に基づいて補正してもよい。これによって、制御部70は、超音波ユニット100の出力が不安定な場合であっても、より正確に被検眼の眼圧を算出することができる。
【0099】
なお、制御部70は、被検眼によって反射した超音波に基づいて眼圧を測定してもよい。例えば、被検眼によって反射した超音波の特性変化に基づいて眼圧を測定してもよいし、被検眼によって反射した超音波から角膜の変形量を取得し、その変形量に基づいて眼圧を測定してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 超音波眼圧計
2 基台
3 測定部
4 顔支持部
70 制御部
100 超音波ユニット
200 光学ユニット
300 検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10