(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】スイッチング電源用半導体装置並びにスイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
(21)【出願番号】P 2019235114
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】有馬 聡史
(72)【発明者】
【氏名】松田 裕樹
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-057401(JP,A)
【文献】特開2014-023208(JP,A)
【文献】特開2002-369517(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0287682(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補助巻線を備えた電圧変換用のトランスの一次巻線と直列に接続されたスイッチング素子をオン、オフ制御する駆動信号を生成するスイッチング電源用半導体装置であって、
前記補助巻線に誘起された電圧が入力され共振電圧の減衰を検出する共振電圧減衰検出回路
と、
前記トランスの二次側から出力される電圧に応じた時間を計時するタイマー回路と、を備え、
前記共振電圧減衰検出回路が出力する減衰検出信号
と前記タイマー回路の出力信号に基づいて前記スイッチング素子をオンさせるタイミング信号を生成するターンオン制御回路と、
前記スイッチング素子をオフさせるタイミング信号を生成するターンオフ制御回路と、を有し、
前記共振電圧減衰検出回路が共振電圧の減衰を検出していないときは前記タイマー回路の出力が変化した後、前記共振電圧減衰検出回路の検出出力タイミングで前記スイッチング素子をオンさせるタイミング信号を生成し、
前記共振電圧減衰検出回路が共振電圧の減衰を検出しているときは前記タイマー回路の出力の変化タイミングで前記スイッチング素子をオンさせるタイミング信号を生成することを特徴とするスイッチング電源用半導体装置。
【請求項2】
前記共振電圧減衰検出回路は、
前記補助巻線の電圧と所定の第1電圧とを比較する
第1電圧比較回路と、該
第1電圧比較回路の出力に応じ計時動作を行うタイムアウト回路とを備え、
前記タイムアウト回路は、前記補助巻線のピーク電圧が前記第1電圧よりも低くなったことを前記
第1電圧比較回路が検出した時点で計時動作を開始し、前記補助巻線の電圧が前記第1電圧から該第1電圧よりも低い所定の第2電圧まで低下するのに要する時間が前記共振電圧の周期よりも長くか
つ所定の時間よりも短い場合に、減衰検出信号を出力するように構成されていることを特徴とする請求項
1に記載のスイッチング電源用半導体装置。
【請求項3】
前記タイムアウト回路は、定電流源と、該定電流源の電流によって充電可能な容量素子と、前記容量素子の充電電荷を放電可能なスイッチと、前記容量素子の電圧と所定の電圧とを比較する第2電圧比較回路とを備え、
前記スイッチは前記第1電圧比較回路の出力によってオン・オフされ、
前記第2電圧比較回路の出力信号を前記減衰検出信号として出力することを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源用半導体装置。
【請求項4】
補助巻線を備えた電圧変換用のトランスの一次巻線と直列に接続されたスイッチング素子をオン、オフ制御する駆動信号を生成するスイッチング電源用半導体装置であって、
前記トランスの二次側から出力される電圧に応じたフィードバック電圧が入力される第1外部端子と、
前記補助巻線に誘起された電圧が入力される第2外部端子と、
前記第2外部端子の電圧に基づいて前記補助巻線の電圧の共振を検出する共振検出回路と、
前記第2外部端子の電圧に基づいて前記補助巻線の共振電圧の減衰を検出する共振電圧減衰検出回路と、
前記共振検出回路の検出信号と前記共振電圧減衰検出回路の検出信号に基づいて前記スイッチング素子をオンさせるタイミング信号を生成するターンオン制御回路と、
前記第1外部端子の電圧と前記スイッチング素子に流れる電流に比例した電圧とに基づいて前記スイッチング素子をオフさせるタイミング信号を生成するターンオフ制御回路と、
前記ターンオン制御回路の出力信号および前記ターンオフ制御回路の出力信号に基づいて前記駆動信号の元となるパルス信号を生成する駆動用パルス生成回路と、
前記第1外部端子の電圧に応じた時間を計時するタイマー回路と、を備え、
前記ターンオン制御回路は、前記共振検出回路の検出信号と前記共振電圧減衰検出回路の検出信号と前記タイマー回路の出力信号に基づいて前記スイッチング素子をオンさせるタイミング信号を生成するように構成され、
前記共振電圧減衰検出回路が共振電圧の減衰を検出していないときは前記タイマー回路の出力が変化した後、前記共振検出回路の検出出力タイミングで前記パルス信号が立ち上がるように前記駆動用パルス生成回路を制御し、
前記共振電圧減衰検出回路が共振電圧の減衰を検出しているときは前記タイマー回路の出力の変化タイミングで前記パルス信号が立ち上がるように前記駆動用パルス生成回路を制御することを特徴とするスイッチング電源用半導体装置。
【請求項5】
前記共振検出回路は、前記第2外部端子の電圧と所定の第1電圧とを比較する第1電圧比較回路を備え、前記第2外部端子の電圧が前記第1電圧よりも低くなった場合に共振検出信号を出力し、
前記共振電圧減衰検出回路は、前記第2外部端子の電圧と前記第1電圧よりも高い所定の第2電圧とを比較する第2電圧比較回路と、前記タイマー回路の計時時間よりも短い所定の時間を計時可能な計時回路を備え、
前記計時回路は、前記第2外部端子のピーク電圧が前記第2電圧よりも低くなったことを前記第2電圧比較回路が検出した時点で計時動作を開始し、前記第2外部端子の電圧が前記第2電圧から前記第1電圧まで低下するのに要する時間が前記共振電圧の周期よりも長く、かつ予め想定した減衰に要する所定時間よりも短い場合に減衰検出信号を出力するように構成され、
前記ターンオン制御回路は、前記タイマー回路が所定の計時時間を計時する前に前記減衰検出信号が出力された場合には前記タイマー回路が所定の計時時間を計時したタイミングで前記パルス信号が立ち上がるように前記駆動用パルス生成回路を制御するように構成されていることを特徴とする請求項
4に記載のスイッチング電源用半導体装置。
【請求項6】
前記共振電圧減衰検出回路は、前記駆動用パルス生成回路から出力される信号を遅延する遅延回路と、該遅延回路の出力信号に基づいて前記第2電圧比較回路から出力される検出信号が前記計時回路へ供給されるのを禁止する論理回路と、を備えることを特徴とする請求項
5に記載のスイッチング電源用半導体装置。
【請求項7】
前記共振検出回路は、前記駆動用パルス生成回路から出力される信号を遅延する遅延回路と、該遅延回路の出力信号に基づいて前記第1電圧比較回路から検出信号が出力されるのを一時的に禁止する論理回路と、を備えることを特徴とする請求項
5に記載のスイッチング電源用半導体装置。
【請求項8】
前記遅延回路は、前記駆動用パルス生成回路から出力される信号を反転した信号を遅延し、
前記共振電圧減衰検出回路は、前記第2電圧比較回路の立下りで前記遅延回路の出力信号を取り込むラッチ回路と、該ラッチ回路の出力信号と前記計時回路の出力信号との論理和をとる論理回路と、を備えることを特徴とする請求項
6に記載のスイッチング電源用半導体装置。
【請求項9】
前記タイマー回路が計時する時間は、前記第1外部端子の電圧に応じて、前記第1外部端子の電圧が低いときは長くなり、前記第1外部端子の電圧が高いときは短くなるように設定されていることを特徴とする請求項
4~8のいずれかに記載のスイッチング電源用半導体装置。
【請求項10】
請求項
4~9のいずれかに記載のスイッチング電源用半導体装置と、補助巻線を備え交流電圧を整流して得られる電圧が一次巻線に印加されるトランスと、前記一次巻線に接続されたスイッチング素子とを備え、前記スイッチング電源用半導体装置を用いて前記スイッチング素子を制御することで二次巻線側に所定の電圧を出力し、外部からの信号に基づいて二次巻線側の出力電圧の大きさが切り替え可能に構成されていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間欠的に電流が流れる巻線に生じる共振の減衰を検出する共振電圧減衰検出回路およびスイッチング電源用半導体装置(電源制御用IC)並びにスイッチング電源装置に関し、特に電圧変換用トランスを備えた直流電源装置の一次側のスイッチング素子を制御する電源制御用ICおよびそれに内蔵して有効な共振電圧減衰検出回路並びにその電源制御用ICを用いたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電源装置には、交流電源を整流するダイオード・ブリッジ回路と、該回路で整流された直流電圧を所望の電圧の直流電圧に変換するDC-DCコンバータなどで構成された絶縁型スイッチング電源装置がある。絶縁型のスイッチング電源装置としては、例えば電圧変換用トランスの一次巻線と直列に接続されたスイッチング素子を、PWM(パルス幅変調)制御方式や擬似共振制御方式等でオン、オフ駆動して一次巻線に流れる電流を制御し、二次巻線に誘起される電圧を制御するようにしたスイッチング電源装置が知られている。
【0003】
PWM制御方式を採用した従来のスイッチング電源装置には、PWM制御方式とPFM(パルス周波数変調)制御方式とを切り替えて実行するように構成されているものがある。一方、擬似共振制御方式を採用した従来のスイッチング電源装置に関する発明としては、例えば特許文献1や2に記載されているものがある。特許文献1や2に記載されているように、擬似共振制御方式を採用した従来のスイッチング電源装置は、擬似共振制御モードでのみ動作するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-124038号公報
【文献】米国特許第9601983号公報
【文献】特開2011-78240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PWM制御と擬似共振制御にはそれぞれ長所と短所がある。例えばPWM制御は、スイッチング損失やスイッチングノイズが大きく電力効率がやや悪いという短所があるものの、音鳴きが小さく、電流連続モードでも動作可能でトランスの電流ピークを抑えることができるため、トランスサイズも小さくできるという長所を有する。一方、擬似共振制御は、ボトムスキップによる音鳴きがあるとともに、電流不連続モードでのみ動作するため、トランスや出力コンデンサなどの部品サイズが大きくなるという短所があるものの、ターンオン時にゼロ電流共振電圧のボトムでターンオンするソフトスイッチング(ソフトターンオン)を行うため、スイッチング損失やスイッチングノイズが小さく電力効率が良いという長所がある。
【0006】
なお、電源起動時のソフトスタート期間中はPWM制御とし、ソフトスタート期間終了後は周波数制御方式の擬似共振制御に切り替えることで、可聴域発振周波数を無くすようにしたスイッチング電源装置に関する発明がある(特許文献3)。
しかしながら、電源起動後の通常動作中に、一次側の制御IC(半導体装置)がPWM制御と擬似共振制御を切り替えることで、両制御方式の長所を併せ持つようにしたスイッチング電源装置が望まれている。
そこで、本出願人は、補助巻線を有するトランスを用い、補助巻線に誘起される電圧(分圧した電圧を含む)を監視して、電源起動後の通常動作中にPWM制御と擬似共振制御を切り替えて動作することで、トランスなどの部品サイズを小さくして電源装置の小型化を図ることができるスイッチング電源用半導体装置およびスイッチング電源装置の発明について出願をした(特願2018-188861号)。
【0007】
本発明者らは、その後上記先願発明のスイッチング電源用半導体装置およびスイッチング電源装置について検討したところ、上記先願発明は出力電圧が変更されず一定である電源装置に適用した場合には所望の効果が得られる。しかし、例えばUSB-PD規格で規定されているような、出力電圧の切替え(例えば5Vと20V)が可能な機能を有する電源装置に適用すると、出力電圧を低い電圧(例えば5V)に切り替えた場合に、トランスの補助巻線に誘起される電圧が平均して低くなる。
【0008】
そのため、補助巻線に生じる共振の振幅が小さくなることがあり、それによって所定のしきい値電圧で共振の振幅を検出することができたりできなかったりするぎりぎりの条件で回路が動作することがある。そして、その場合、共振の振幅を検出して一次巻線側のスイッチング素子をターンオフする場合と、共振の振幅を検出できずにスイッチング素子をタイマーの周期でターンオフする場合とが混在してしまい、スイッチング周期が大きく変動して出力電圧のリップルが大きくなったり、音鳴きが発生してしまったりするという課題があることが明らかとなった。
【0009】
本発明の目的は、間欠的に電流が流れる巻線に生じる共振の減衰を検出可能な共振電圧減衰検出回路を提供することにある。
本発明の他の目的は、スイッチング損失やスイッチングノイズが小さく電力効率が良いスイッチング電源用半導体装置およびスイッチング電源装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、出力電圧が切り替わることで、共振の振幅が小さくなって所定のしきい値電圧で共振の振幅を検出することができたりできなかったりするぎりぎりの条件が生じる場合においても、スイッチング周期が大きく変動することがなく、音鳴きを抑制できるスイッチング電源用半導体装置およびスイッチング電源装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、電源起動後の通常動作中に、PWM制御と擬似共振制御を切り替えることで、平均的な電力効率が高いとともに、トランスなどの部品サイズを小さくして電源装置の小型化を図ることができるスイッチング電源用半導体装置およびスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本出願に係る第1の発明は、
トランスの巻線の共振電圧の減衰を検出する共振電圧減衰検出回路において、
前記巻線の電圧と所定の第1電圧とを比較する第1の電圧比較回路と、該第1の電圧比較回路の出力に応じて計時動作を行うタイムアウト回路とを備え、
前記タイムアウト回路は、前記巻線のピーク電圧が前記第1電圧から該第1電圧よりも低い所定の第2電圧まで減衰するのに要する時間より短くなるように予め設定された時間を計時すると減衰検出信号を出力するように構成したものである。
かかる構成の共振電圧減衰検出回路によれば、間欠的に電流が流れる巻線に生じる共振の減衰を確実に検出することができる。
【0011】
ここで、望ましくは、前記タイムアウト回路は、定電流源と、該定電流源の電流によって充電可能な容量素子と、前記容量素子の充電電荷を放電可能なスイッチと、前記容量素子の電圧と所定の電圧とを比較する第2の電圧比較回路とを備え、
前記スイッチは前記第1の電圧比較回路の出力によってオン・オフされ、
前記第2の電圧比較回路の出力信号を前記減衰検出信号として出力するようにする。
かかる構成によれば、定電流源の電流値と容量素子の容量値によって、タイムアウト回路の計時時間を任意に設定することができる。
【0012】
本出願に係る第2の発明は、
補助巻線を備えた電圧変換用のトランスの一次巻線と直列に接続されたスイッチング素子をオン、オフ制御する駆動信号を生成するスイッチング電源用半導体装置において、
前記補助巻線に誘起された電圧が入力され共振電圧の減衰を検出する共振電圧減衰検出回路を備え、
前記共振電圧減衰検出回路が出力する減衰検出信号に基づいて前記スイッチング素子をオンさせるタイミング信号を生成するターンオン制御回路と、
前記スイッチング素子をオフさせるタイミング信号を生成するターンオフ制御回路と、を有し、擬似共振モードで動作可能であるように構成したものである。
かかる構成のスイッチング電源用半導体装置によれば、スイッチング損失やスイッチングノイズが小さく電力効率が良い直流電源装置を実現することができる。
【0013】
ここで、望ましくは、前記共振電圧減衰検出回路は、
前記補助巻線の電圧と所定の第1電圧とを比較する電圧比較回路と、該電圧比較回路の出力に応じ計時動作を行うタイムアウト回路とを備え、
前記タイムアウト回路は、前記補助巻線のピーク電圧が前記第1電圧よりも低くなったことを前記電圧比較回路が検出した時点で計時動作を開始し、前記補助巻線の電圧が前記第1電圧から該第1電圧よりも低い所定の第2電圧まで低下するのに要する時間が前記共振電圧の周期よりも長くかつ前記所定の時間よりも短い場合に、減衰検出信号を出力するように構成する。
かかる構成によれば、共振電圧減衰検出回路によって間欠的に電流が流れる巻線に生じる共振の減衰を確実に検出し、適切なタイミングでスイッチング素子をターンオンさせることができる。
【0014】
本出願に係る第3の発明は、
補助巻線を備えた電圧変換用のトランスの一次巻線と直列に接続されたスイッチング素子をオン、オフ制御する駆動信号を生成するスイッチング電源用半導体装置において、
前記トランスの二次側から出力される電圧に応じたフィードバック電圧が入力される第1外部端子と、
前記補助巻線に誘起された電圧が入力される第2外部端子と、
前記第2外部端子の電圧に基づいて前記補助巻線の電圧の共振を検出する共振検出回路と、
前記第2外部端子の電圧に基づいて前記補助巻線の共振電圧の減衰を検出する共振電圧減衰検出回路と、
前記共振検出回路の検出信号と前記共振電圧減衰検出回路の検出信号に基づいて前記スイッチング素子をオンさせるタイミング信号を生成するターンオン制御回路と、
前記第1外部端子の電圧と前記スイッチング素子に流れる電流に比例した電圧とに基づいて前記スイッチング素子をオフさせるタイミング信号を生成するターンオフ制御回路と、
前記ターンオン制御回路の出力信号および前記ターンオフ制御回路の出力信号に基づいて前記駆動信号の元となるパルス信号を生成する駆動用パルス生成回路と、を備え、前記ターンオン制御回路が前記補助巻線の電圧の共振のボトム近傍で前記スイッチング素子をオンさせるタイミング信号を生成することによって擬似共振モードで動作可能であるように構成したものである。
かかる構成のスイッチング電源用半導体装置によれば、スイッチング損失やスイッチングノイズが小さく電力効率が良い直流電源装置を実現することができる。
【0015】
ここで、望ましくは、前記第1外部端子の電圧に応じた時間を計時するタイマー回路を備え、
前記ターンオン制御回路は、前記共振検出回路の検出信号と前記共振電圧減衰検出回路の検出信号と前記タイマー回路の出力信号に基づいて前記スイッチング素子をオンさせるタイミング信号を生成するように構成され、
前記共振電圧減衰検出回路が共振電圧の減衰を検出していないときは前記タイマー回路の出力が変化した後、前記共振検出回路の検出出力タイミングで前記パルス信号が立ち上がるように前記駆動用パルス生成回路を制御し、
前記共振電圧減衰検出回路が共振電圧の減衰を検出しているときは前記タイマー回路の出力の変化タイミングで前記パルス信号が立ち上がるように前記駆動用パルス生成回路を制御するように構成する。
【0016】
かかる構成によれば、共振電圧の減衰を検出していないときは疑似共振モードでスイッチング素子がターンオンし、共振電圧の減衰を検出しているときはPWMモードでスイッチング素子がターンオンするため、平均的な電力効率を高めることができるとともに、トランスなどの部品サイズを小さくして電源装置の小型化を図ることができる。
【0017】
また、望ましくは、前記共振検出回路は、前記第2外部端子の電圧と所定の第1電圧とを比較する第1電圧比較回路を備え、前記第2外部端子の電圧が前記第1電圧よりも低くなった場合に共振検出信号を出力し、
前記共振電圧減衰検出回路は、前記第2外部端子の電圧と前記第1電圧よりも高い所定の第2電圧とを比較する第2電圧比較回路と、前記タイマー回路の計時時間よりも短い所定の時間を計時可能な計時回路を備え、
前記計時回路は、前記第2外部端子のピーク電圧が前記第2電圧よりも低くなったことを前記第2電圧比較回路が検出した時点で計時動作を開始し、前記第2外部端子の電圧が前記第2電圧から前記第1電圧まで低下するのに要する時間が前記共振電圧の周期よりも長く、かつ予め想定した減衰に要する所定時間よりも短い場合に減衰検出信号を出力するように構成され、
前記ターンオン制御回路は、前記タイマー回路が所定の計時時間を計時する前に前記減衰検出信号が出力された場合には前記タイマー回路が所定の計時時間を計時したタイミングで前記パルス信号が立ち上がるように前記駆動用パルス生成回路を制御するように構成する。
かかる構成によれば、共振の振幅が小さくなって所定のしきい値電圧で共振の振幅を検出することができたりできなかったりするぎりぎりの条件が生じる場合においても、スイッチング周期が大きく変動することがなく、出力電圧のリップルが大きくなったり音鳴きが発生したりするのを防止することができる。また、ゼロ電流共振期間が相対的に長くなるような場合に、補助巻線の共振電圧の減衰を検出してスイッチング素子を適切なタイミングでターンオンさせることができる。
【0018】
さらに、望ましくは、前記共振電圧減衰検出回路は、前記駆動用パルス生成回路から出力される信号を遅延する遅延回路と、該遅延回路の出力信号に基づいて前記電圧比較回路から出力される検出信号が前記計時回路へ供給されるのを一時的に禁止する論理回路と、を備えるように構成する。
同様に、前記共振検出回路が、前記駆動用パルス生成回路から出力される信号を遅延する遅延回路と、該遅延回路の出力信号に基づいて前記第1電圧比較回路から検出信号が出力されるのを禁止する論理回路と、を備えるように構成しても良い。
上記のような構成によれば、補助巻線の電圧(スイッチング素子のドレイン電圧)の立ち上がり直後のリンギングの発生に伴う共振検出回路の誤検出など意図しない動作を防止することができる。
【0019】
さらに、望ましくは、前記遅延回路は前記駆動用パルス生成回路から出力される信号を反転した信号を遅延し、
前記共振電圧減衰検出回路は、前記第2電圧比較回路の立下りで前記遅延回路の出力信号を取り込むラッチ回路と、該ラッチ回路の出力信号と前記計時回路の出力信号との論理和をとる論理回路と、を備えるように構成する。
かかる構成によれば、電流連続モードによる動作が可能な条件が多くなるため、トランスサイズを小さくすることができ、部品の小型化および低コスト化が可能となる。
【0020】
また、望ましくは、前記タイマー回路が計時する時間は、前記第1外部端子の電圧に応じて、前記第1外部端子の電圧が低いときは長くなり、前記第1外部端子の電圧が高いときは短くなるように設定する。
かかる構成によれば、第1外部端子(FB)の電圧が高いときはタイマー回路が計時する時間が短くなり、また第1外部端子の電圧が低いときはタイマー回路が計時する時間が長くなるので、電源起動後の通常動作中に、PWM制御と擬似共振制御とが切り替わることができ、平均的な電力効率を高めることができるとともに、トランスなどの部品サイズを小さくして電源装置の小型化を図ることができる。
【0021】
本出願の第4の発明に係るスイッチング電源装置は、
上記のような構成を有するスイッチング電源用半導体装置と、補助巻線を備え交流電圧を整流して得られる電圧が一次巻線に印加されるトランスと、前記一次巻線に接続されたスイッチング素子とを備え、前記スイッチング電源用半導体装置を用いて前記スイッチング素子を制御することで二次巻線側に所定の電圧を出力し、外部からの信号に基づいて二次巻線側の出力電圧の大きさが切り替え可能にように構成したものである。
かかる構成によれば、出力電圧の大きさが切り替え可能なスイッチング電源装置において、出力電圧が切り替わることで、出力電圧のリップルが大きくなったり音鳴きが発生したりするのを防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、間欠的に電流が流れる巻線に生じる共振の減衰を検出可能な共振電圧減衰検出回路を提供することができる。また、スイッチング損失やスイッチングノイズが小さく電力効率が良いスイッチング電源用半導体装置およびスイッチング電源装置を提供することができる。
さらに、出力電圧が切り替わることで、共振の振幅が小さくなって所定のしきい値電圧で共振の振幅を検出することができたりできなかったりするぎりぎりの条件が生じる場合においても、スイッチング周期が大きく変動することがなく、出力電圧のリップルが大きくなったり音鳴きが発生したりするのを抑制できるスイッチング電源用半導体装置およびスイッチング電源装置を実現することができる。
また、電源起動後の通常動作中に、PWM制御と擬似共振制御を切り替えることで、平均的な電力効率が高いとともに、トランスなどの部品サイズを小さくして電源装置の小型化を図ることができるスイッチング電源用半導体装置およびスイッチング電源装置を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係るスイッチング電源用半導体装置を適用して有効な直流電源装置としてのDC-DCコンバータの一実施形態を示す回路構成図である。
【
図2】
図1のDC-DCコンバータにおいてトランスの一次側に設けられる本発明に係るスイッチング電源用半導体装置の第1実施例を示す機能ブロック図である。
【
図3】スイッチング電源用半導体装置を構成する共振検出回路による好適な検出タイミングを説明するための波形図である。
【
図4】スイッチング電源用半導体装置を構成するタイムアウト回路の具体例を示す回路構成図である。
【
図5】スイッチング電源用半導体装置を構成するタイマー回路の具体例を示す回路構成図である。
【
図6】(A), (B)はそれぞれ第1実施例と第2実施例のスイッチング電源用半導体装置を構成するターンオン制御回路の具体例を示す回路構成図である。
【
図7】第1実施例と第2実施例のスイッチング電源用半導体装置を構成するターンオフトリガ生成回路の具体例を示す回路構成図である。
【
図8】(A)は第1実施例のスイッチング電源用半導体装置におけるFB端子の電圧とタイマー回路の計時時間との関係を示すグラフ、(B)はFB端子の電圧とターンオフトリガ生成回路のVcsのスレッショルドとの関係を示すグラフである。
【
図9】第1実施例のスイッチング電源用半導体装置がFB端子の電圧が充分に高く共振電圧の振幅も大きな状況で動作する際の各部の信号の変化を示すタイミングチャートである。
【
図10】第1実施例のスイッチング電源用半導体装置がFB端子の電圧が低い状況で動作する際の各部の信号の変化を示すタイミングチャートである。
【
図11】第1実施例のスイッチング電源用半導体装置がFB端子の電圧が高く共振電圧の振幅が小さな状況で動作する際の各部の信号の変化を示すタイミングチャートである。
【
図12】
図1のDC-DCコンバータにおいてトランスの一次側に設けられる本発明に係るスイッチング電源用半導体装置の第2実施例を示す回路構成図である。
【
図13】(A)は第2実施例のスイッチング電源用半導体装置を構成する共振電圧の減衰検出回路の具体例を示す回路構成図、(B)は実施例の減衰検出回路における共振電圧と参照電圧との関係を示す波形図である。
【
図14】第2実施例のスイッチング電源用半導体装置において、ゼロ電流共振電圧の減衰前にタイマー回路が計時を開始する状況における各部の信号の変化を示すタイミングチャートである。
【
図15】ゼロ電流共振電圧の減衰後にタイマー回路が計時を開始する状況における各部の信号の変化を示すタイミングチャートである。
【
図16】二次巻線の消磁期間中においてDMG端子の電圧が低い状態(低出力電圧)でタイマー回路が計時を開始する状況における各部の信号の変化を示すタイミングチャートである。
【
図17】二次巻線の消磁期間中においてDMG端子の電圧が充分に高い状態(高出力電圧)でタイマー回路が計時を開始する状況における各部の信号の変化を示すタイミングチャートである。
【
図18】
図12の第2実施例に係るスイッチング電源用半導体装置の変形例を示す機能ブロック図である。
【
図19】
図18の変形例のスイッチング電源用半導体装置を構成する共振電圧の減衰検出回路の具体例を示す回路構成図である。
【
図20】
図18の変形例のスイッチング電源用半導体装置において、二次巻線の消磁期間中においてDMG端子の電圧が充分に高い状態(高出力電圧)でタイマー回路が計時を開始する状況における各部の信号の変化を示すタイミングチャートである。
【
図21】(A)は第2実施例と変形例のスイッチング電源用半導体装置における負荷電流に対するオン電流ピーク(一次巻線に流れる電流のピーク)の特性を示すグラフ、(B)は第2実施例と変形例のスイッチング電源用半導体装置における負荷へ出力される負荷電流に対するスイッチング周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るスイッチング電源用半導体装置を適用した直流電源装置としてのDC-DCコンバータの一実施形態を示す回路構成図である。
本実施形態のDC-DCコンバータは、直流電圧が入力される一対の電圧入力端子11と、一次巻線Npと二次巻線Nsおよび補助巻線Nbとを有する電圧変換用のトランス12と、このトランス12の一次巻線Npと直列に接続されたスイッチングトランジスタSW1と、該スイッチングトランジスタSW1をオン、オフ駆動するスイッチング電源用半導体装置(以下、電源制御用ICと称する)13を有する。スイッチング電源装置を構成する場合には、入力端子11の前段にAC電源からの交流電圧を整流するダイオード・ブリッジ回路と平滑コンデンサが接続される。
【0025】
本実施形態では、上記スイッチングトランジスタSW1は、NチャネルMOSFET(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)により、ディスクリートの部品として構成されている。電源制御用IC13には、トランジスタSW1のゲートを駆動するゲート駆動信号の出力端子GATEが設けられている。
また、本実施形態のDC-DCコンバータでは、トランス12の一次側に、上記補助巻線Nbと直列に接続された整流用ダイオードD1と、このダイオードD1のカソード端子と接地点GNDとの間に接続された平滑用コンデンサC1とからなる整流平滑回路が設けられ、該整流平滑回路で整流、平滑された電圧が電源制御用IC13の電源電圧端子VDDに印加されている。また、電源制御用IC13には、補助巻線Nbに誘起された電圧を抵抗R1,R2で分圧した電圧VDMGが印加される外部端子DMGが設けられている。
【0026】
さらに、電源制御用IC13には、二次側の出力検出信号をフィードバック電圧VFBとして一次側へ伝達するためのフォトカプラを構成するフォトトランジスタ(受光素子)PTが接続される外部端子FBが設けられている。
また、電源制御用IC13は、スイッチングトランジスタSW1のソース端子と接地点GNDとの間に接続された電流検出用の抵抗Rsにより電流-電圧変換された電圧Vcsが入力される電流検出端子としての外部端子CSが設けられている。
【0027】
一方、上記トランス12の二次側には、二次巻線Nsと直列に接続された整流用ダイオードD2と、このダイオードD2のカソード端子と二次巻線Nsの他方の端子との間に接続された平滑用コンデンサC2とが設けられ、一次巻線Npに間歇的に電流を流すことで二次巻線Nsに誘起される交流電圧を整流し平滑することによって直流電圧Voutを生成し出力する。
さらに、トランス12の二次側には、出力電圧Voutを検出する出力電圧検出回路を構成する定電圧制御回路(シャントレギュレータ)14と、該定電圧制御回路14の検出電圧に応じた出力電圧検出信号を一次側へ伝達するためのフォトカプラを構成するフォトダイオード(発光素子)PDが設けられている。
フォトダイオードPDには、定電圧制御回路14によって検出電圧に応じた電流が流され、検出電圧に応じた強度を有する光信号として一次側へ伝達されることで、光強度に応じた電流がフォトトランジスタPTに流れて電源制御用IC13内部のプルアップ抵抗(
図2のRp)等で電圧VFBに変換されて入力される。
【0028】
定電圧制御回路14は、フォトダイオードPDと直列に接続されたバイポーラ・トランジスタTR1と、二次側の出力電圧Voutを分圧する抵抗R3,R4と、分圧された電圧と基準電圧Vref0とを比較して電位差に応じた電圧を出力する誤差アンプAMP0と、位相補償回路14aとを備え、誤差アンプAMP0の出力電圧が上記トランジスタTR1のベース端子に印加され、出力電圧Voutに応じた電流が流れるように構成されている。本実施例では、二次側の出力電圧Voutが高いほどフォトダイオードPDに流れる電流とフォトトランジスタPTに流れる電流が多くなり、電源制御用IC13の外部端子FBの電圧VFBが低くなるように構成されている。
さらに、本実施例においては、特に限定されるものでないが、負荷装置側からの出力電圧切替え信号VCに応じて定電圧制御回路14へ切替え信号を供給する出力電圧切替え回路15が設けられており、出力電圧切替え回路15からの切替え信号によって例えば基準電圧Vref0を切り替えることで、出力電圧Voutを例えば5Vまたは20Vに切り替えて出力できるように構成されている。ここで、二次側回路の構成は、整流用ダイオードD2をスイッチに置き換えた同期整流方式でも良い。
【0029】
(第1実施例)
次に、
図1の電源装置における一次側の電源制御用IC13の第1実施例の機能ブロック構成および各ブロックの機能について、
図2~
図11を用いて説明する。
図2に示すように、本実施例の電源制御用IC13は、外部端子DMGの電圧VDMGを監視して共振していることを検出するためのコンパレータ(電圧比較回路)を有する共振検出回路31と、共振の検出により計時を開始して所定時間T2を計時すると出力信号を立ち上げるタイムアウト回路32と、外部端子FBの電圧VFBと所定の参照電圧VFBREFとを比較してVFBがVFBREF以下になっているか判定するFBコンパレータ33と、外部端子FBの電圧VFBに応じた時間を計時することでスイッチング素子SW1のスイッチング周期を生成するタイマー回路34を備える。タイムアウト回路32は、タイマー回路34が所定時間T1を計時する前に共振検出回路31が共振を検出しなくなった場合に、所定の時間T2を計時したらスイッチング素子SW1を強制的にターンオンさせるために設けられた回路である。
【0030】
また、電源制御用IC13は、上記共振検出回路31とタイムアウト回路32とFBコンパレータ33およびタイマー回路34の出力信号を入力としスイッチング素子SW1をターンオンさせるタイミング信号を生成するターンオン制御回路35と、外部端子FBの電圧VFBと外部端子CSの電圧Vcsとを入力電圧としSW1をターンオフさせるタイミング信号を生成するターンオフトリガ生成回路36と、ターンオン制御回路35の出力とターンオフトリガ生成回路36の出力を入力とするRSフリップフロップなどからなるラッチ回路37と、ラッチ回路37の出力ENに応じて前記スイッチング素子SW1を駆動するゲート駆動信号を生成して外部端子GATEより出力するドライバ回路38を備えている。
また、上記ラッチ回路37の出力ENは、タイマー回路34を有効化させる信号としてタイマー回路34に入力されるとともに、ターンオン制御回路35をリセットさせる信号としてターンオン制御回路35に入力されている。以下、上記各機能ブロックの具体例および動作について説明する。
【0031】
電源制御用IC13を構成する機能ブロック31~38のうち共振検出回路31は、例えば外部端子DMGの電圧VDMGと所定の参照電圧VDMGREFとを比較して、VDMGがVDMGREFを越えた場合に出力がロウレベル(またはハイレベル)に変化するコンパレータ(電圧比較回路)により構成することができる。
ここで、共振検出回路31は、疑似共振モードにおいてスイッチング素子SW1をターンオンさせるタイミングを検出するために設けられる回路である。そのため、
図3(A)に示すスイッチング素子SW1のドレイン電圧VDの共振のボトムの近傍(〇印を付けた部位)を検出できるように構成されるのが望ましい。しかし、SW1のドレイン電圧VDは、電源装置の仕様によっては500Vを超える場合もあり、分圧したとしても損失や部品が大きくなるとともに共振電圧の中心値は入力電圧に依存するため、半導体装置での基準設定が困難でありドレイン電圧VDから半導体装置でボトムを検出することは難しい。
【0032】
そこで、本実施例では、トランス12の補助巻線Nbに現れる電圧を抵抗R1,R2で分圧した電圧が入力される外部端子DMGを設けてその電圧VDMGを監視することとした。そして、共振検出回路31として上記のようにコンパレータを使用し、共振するVDMGの波形に対して参照電圧VDMGREFを
図3(B)に示すように、0V(ゼロボルト)よりも若干高い値に設定している。
補助巻線Nbの共振電圧は、0Vを中心として変動するので、半導体装置で基準となる電圧VDMGREFを設定し易くなる。なお、半導体装置においては一般に外部端子に静電破壊を防止するためのダイオード(ESD保護ダイオード)が設けられており、本実施例の電源制御用IC13においても、
図2に示すように、DMG端子にESD保護ダイオードDESDが設けられており、このダイオードDESDの順方向電圧により、DMG端子の電圧は-0.7V程度にクランプされる。
【0033】
共振検出回路31としてコンパレータを使用した場合、ドレイン電圧VDのボトムでスイッチング素子SW1をターンオンできるように、コンパレータ、ドライバ、スイッチのターンオンなどの遅延(td)を加味して参照電圧VDMGREFを設定することが望ましい。そこで、本実施例においては、参照電圧VDMGREFを
図3(B)に示すように0Vよりも少しだけ高い電圧に設定している。
なお、本実施例ではコンパレータを用いて補助巻線Nbに現れる電圧を抵抗分圧した電圧VDMGのボトム直前を検出するようにしているが、共振の所定の位相を検出するようにしても良い。共振の位相からターンオンのタイミングを検出する場合には、共振開始を0°として、90°~180°の範囲で検出できるように検出回路を構成すると良い。
【0034】
図4には、タイムアウト回路32の具体的な回路構成例が示されている。
図4に示すように、タイムアウト回路32は、定電流源CC0および該定電流源CC0と直列に接続されたコンデンサC0と、該コンデンサC0と並列に設けられたMOSトランジスタM0と、共振検出回路31の出力信号を反転してMOSトランジスタM0のゲート端子に印加するインバータINV0と、上記定電流源CC0とコンデンサC0と接続ノードN0の電圧が非反転入力端子に印加され反転入力端子に参照電圧VTOREFが印加されたコンパレータCMP0とを備える。
【0035】
このタイムアウト回路32は、通常はMOSトランジスタM0がオンされていて接続ノードN0の電圧はロウレベル(接地電位)でコンパレータCMP0の出力TOもロウレベルであるが、共振検出回路31が共振を検出して出力信号RSNがハイレベルに変化すると、MOSトランジスタM0がオフされて所定時間T2の計時動作を開始してコンデンサC0が定電流源CC0によって充電され、接続ノードN0の電圧が徐々に上昇して参照電圧VTOREFを越えるとコンパレータCMP0の出力TOがハイレベルに変化する。コンデンサC0の充電を開始してから、接続ノードN0の電圧が参照電圧VTOREFに達するまでの時間がタイムアウト回路32の計時時間T2である。
【0036】
図5には、タイマー回路34の具体的な回路構成例が示されている。
図5に示すように、タイマー回路34は、外部端子FBの電圧VFBを増幅するオペアンプ(演算増幅回路)AMP2、その出力を分圧する分圧抵抗R7,R8、抵抗R8と接地点との間に設けられR7,R8の接続ノードN1の電圧を所定量押し上げる基準電圧Vref1を備えた増幅回路341と、該増幅回路341の出力電圧を演算増幅しつつクランプするクランプ回路342と、可変タイマー343とを備える。クランプ回路342は、電圧クランプ機能を有する演算回路によって構成される。
可変タイマー343は、オペアンプAMP3とMOSトランジスタM1と抵抗R9を有しクランプ回路342の出力電圧を電流に変換する電圧-電流変換手段と、MOSトランジスタM2,M3からなり変換された電流に比例した電流を生成するカレントミラー回路と、MOSトランジスタM3の電流によって充電されるコンデンサC3と、該コンデンサC3の電荷を放電するための放電用スイッチS3を備える。
【0037】
また、可変タイマー343は、コンデンサC3の充電電圧を入力とする2つのコンパレータCMP3,CMP4と、コンパレータCMP3,CMP4の出力をそれぞれラッチするためのRSフリップフロップFF1,FF2と、コンパレータCMP4の出力とRSフリップフロップFF2の反転出力/Qを入力とするANDゲートG1を備える。
上記放電用スイッチS3はフリップフロップFF1の出力によってオン、オフされ、RSフリップフロップFF1はコンパレータCMP3の出力によってセットされ、RSフリップフロップFF2はANDゲートG1の出力によってセットされる。また、RSフリップフロップFF1,FF2は、前記ラッチ回路33の出力ENによってリセットされる。そして、RSフリップフロップFF1がリセットされると放電用スイッチS3がオフされて計時を開始するように構成されている。
【0038】
コンパレータCMP3の反転入力端子に印加される比較電圧Vref2とコンパレータCMP3の非反転入力端子に印加される比較電圧Vref3は、Vref2>Vref3の関係になるように設定されており、コンデンサC3の充電電圧がVref3に達すると、FF2がリセットされていることを条件にCMP4の出力によりRSフリップフロップFF2がセットされ、その出力がロウレベルからハイレベルに変化する。このFF2の出力がタイムアウト信号TIMとして、上記ターンオン制御回路35へ供給される。また、コンデンサC3の充電電圧がVref2に達すると、CMP3の出力によりRSフリップフロップFF1がセットされてその出力がロウレベルからハイレベルに変化して放電用スイッチS3をオンさせ、コンデンサC3の充電電荷を放電させるように構成されている。
【0039】
図8(A)には、タイマー回路34によって計時される時間T1と外部端子FBの電圧VFBとの関係が示されている。
図8(A)に示すように、タイマー回路34の計時時間T1は、外部端子FBの電圧VFBに対して破線で示すような関係になるように設計されている。なお、計時時間T1の最大値はクランプ回路342に印加されるクランプ電圧VMINで制限され、最小値はクランプ回路342に印加されるクランプ電圧VMAX(VMAX>VMIN)で制限される。また、VMIN-VMAX間のT1-VFB曲線は、クランプ回路342の持つ演算機能によって与えられる。
【0040】
従って、タイマー回路34は外部端子FBの電圧VFBが高いほど(二次側の負荷電流が少ないほど)短い時間を計時することとなる。以下の説明で明らかとなるように、本実施例では、この計時時間を、PWMモード(電流連続モード)におけるスイッチング周期として、また擬似共振モード(電流不連続モード)におけるゼロ電流検出期間として使用するようにしている。よって、本実施例の電源制御用IC13を使用したスイッチング電源装置においては、タイマー回路34の計時時間T1の逆数がスイッチング周波数となる。
【0041】
図6(A)には、第1実施例の電源制御用IC13のターンオン制御回路35の具体的な回路構成例が示されている。
図6(A)に示すように、ターンオン制御回路35は、タイムアウト回路32の出力信号TOとFBコンパレータ33の出力信号FBLを入力とするORゲートG2と、該ORゲートG2の出力信号とタイマー回路34の出力信号TIMを入力とするANDゲートG3と、タイマー回路34の出力信号TIMがデータ端子Dに入力されるとともにラッチ回路37の出力信号ENをインバータINV1で反転した信号がリセット端子に入力されているフリップフロップFF3と、フリップフロップFF3の出力信号と上記ANDゲートG3の出力信号入力とするORゲートG4とを備えている。
【0042】
この実施例のターンオン制御回路35においては、フリップフロップFF3は共振検出回路31の出力信号RSNがクロック端子に入力されているため、共振検出回路31の出力信号RSNの立ち上がりに同期してデータ端子Dの入力信号であるタイマー回路34の出力信号TIMを取り込むので、共振検出回路31の出力信号RSNの立ち上がった際にタイマー回路34の出力信号TIMがハイレベルであると、ターンオン信号である出力SETがハイレベルに変化する。
【0043】
また、タイマー回路34の出力信号TIMがハイレベルであることを条件に、タイムアウト回路32がタイムアウトしてその出力信号TOがハイレベルに変化すると、ターンオン制御回路35の出力SETがハイレベルに変化する。また、FBコンパレータ33の出力信号FBLがハイレベルすなわち外部端子FBの電圧VFBが参照電圧VFBREFよりも低い場合には、タイマー回路34の出力信号TIMのハイレベルへの変化で出力SETがハイレベルに変化する。そして、ターンオン制御回路35の出力SETがハイレベルに変化すると、
図2のラッチ回路37がセットされ、ドライバ回路38の出力であるゲート駆動信号(GATE)がハイレベルに変化してスイッチング素子SW1がオンされる。なお、
図6(B)の第2実施例のターンオン制御回路については後に説明する。
【0044】
図7には、ターンオフトリガ生成回路36の具体的な回路構成例が示されている。
図7に示すように、ターンオフトリガ生成回路36は、例えばオペアンプAMP1およびその出力電圧を分圧する分圧抵抗R5,R6からなり外部端子CSの電圧Vcsを増幅する増幅回路と、該増幅回路の出力電圧と外部端子FBの電圧VFBとを比較するコンパレータCMP1とを備えて構成される。オペアンプAMP1の出力端子と接地点との間には分圧抵抗R5,R6が設けられており、オペアンプAMP1は仮想接地動作で入力分圧抵抗R5,R6の接続ノードの電圧を非反転入力端子の電圧Vcsに一致させるように増幅した電圧Vcs’を出力する。そして、オペアンプAMP1の出力電圧Vcs’がVFBを越えるとコンパレータCMP1の出力RSTがハイレベルに変化する。
【0045】
図8(B)には、ターンオフトリガ生成回路36における外部端子CSの電圧Vcsのスレッショルド(ターンオフするときのVcs電圧)と外部端子FBの電圧VFBとの関係が示されている。
図8(B)に示すように、電圧Vcsのスレッショルドと電圧VFBは比例関係にあり、電圧VFBが高くなるほど電圧Vcsのスレッショルドも高くなる。Vcsのスレッショルドと電圧VFBの関係を表わす直線の傾きは、
図7の分圧抵抗R5,R6の抵抗比によって調整することができる。
【0046】
次に、上記のような構成を有する電源制御用IC13の動作について、
図9および
図10のタイミングチャートを用いて説明する。このうち
図9は外部端子FBの電圧VFBが高くかつ外部端子DMGの電圧VDMGに現れる共振の振幅が充分に大きな状況における電源制御用IC13の各部の信号の変化を、
図10は外部端子FBの電圧VFBが低いが外部端子DMGの電圧VDMGの共振の振幅が比較的大きな状況における電源制御用IC13の各部の信号の変化をそれぞれ示す。
図9においては、タイミングt11,t14でタイマー回路34が計時を完了してその出力信号TIMがロウレベルからハイレベルへ変化した後、最初に電圧VDMGが参照電圧VDMGREFよりも低くなって共振検出回路31の出力RSNがハイレベルに変化したタイミングt12,t15で、ターンオン制御回路35の出力SETがハイレベルに変化し、ラッチ回路37の出力ENがハイレベルに変化してドライバ回路38から出力されるゲート駆動信号(GATE)がハイレベルに変化し、スイッチング素子SW1がオンされる。なお、ラッチ回路37の出力ENがハイレベルに変化すると、タイマー回路34のフリップフロップFF2がリセットされてTIM信号はロウレベルへ変化する(t12,t15)。また、フリップフロップFF1もリセットされ、放電用スイッチS3がオフされて次サイクルの計時を開始する
【0047】
また、スイッチング素子SW1がオンされるとトランスの一次巻線に電流が流れてセンス抵抗の電位すなわち外部端子CSの電圧Vcsが次第に高くなって、ターンオフトリガ生成回路36のアンプAMP1の出力電圧Vcs’が外部端子FBの電圧VFBに到達したタイミングt13,t16でターンオフトリガ生成回路36の出力RSTがロウレベルからハイレベルへ変化し、ドライバ回路38が出力されるゲート駆動信号(GATE)がロウレベルに変化してスイッチング素子SW1がオフされる。
このように
図9の場合、外部端子DMGの電圧VDMGが共振を開始した後のボトムを共振検出回路31が検出した時点でスイッチング素子SW1をオンさせるので、電源制御用IC13は擬似共振モードでスイッチング制御することになる。なお、
図9の場合、外部端子FBの電圧VFBが高いためタイマー回路34の計時時間T1が短くなるので、スイッチング周期が短くなり、スイッチング素子SW1のオン時間が周期に対して相対的に長くなる。
【0048】
一方、外部端子FBの電圧VFBが低い場合、タイマー回路34の計時時間T1は長くなるが、出力電圧Voutが例えば25Vのように高く設定されていることにより、
図10に示すように、二次巻線Nsの消磁期間における外部端子DMGの電圧VDMGが比較的高い状況では、タイミングt21でトランスの二次巻線Nsの消磁期間が終了してゼロ電流共振を開始した後、共振検出回路31が共振を検出できなくなる前に、タイマー回路34が設定時間T1を計時することとなる。
そのため、タイマー回路34が設定時間T1を計時した時点(t22)で、タイマー回路34の出力信号TIMがハイレベルに変化する。そして、TIMがハイレベルに変化すると、ターンオントリガ信号SETがハイレベルへ変化し、ラッチ回路37の出力ENがハイレベルに変化してドライバ回路38から出力されるゲート駆動信号(GATE)がハイレベルに変化し、スイッチング素子SW1がオンされる。
【0049】
また、スイッチング素子SW1がオンされるとトランスの一次巻線に電流が流れてセンス抵抗Rsにおける電圧降下が大きくなって外部端子CSの電圧Vcsが次第に高くなる。そして、ターンオフトリガ生成回路36のアンプAMP1の出力電圧Vcs’が外部端子FBの電圧VFBに到達したタイミングt23で、ターンオフトリガ生成回路36の出力RSTがロウレベルからハイレベルへ変化し、ドライバ回路38が出力されるゲート駆動信号(GATE)がロウレベルに変化してスイッチング素子SW1がオフされる。このように、
図10の場合、タイマー回路34が設定時間T1を計時した時点でスイッチング素子SW1をオンさせるので、電源制御用IC13はPWMモードでスイッチング制御することになる。
【0050】
以上の動作説明から、ターンオン制御回路35は、PWMモードと擬似共振モードの切替え手段として機能することが分かる。そして、本実施形態の電源制御用IC13においては、タイマー回路34が計時する時間T1等を適宜に設計することにより、負荷電流が定格負荷電流の100%近傍になる領域ではPWMモードで動作させ、それ未満では擬似共振モードで動作させることができる。また、本実施形態の電源制御用IC13を使用した電源装置においては、PWMモードは擬似共振モードに比べて電力効率が悪いため電源装置が定格負荷電流の100%近傍で動作している時の効率は良くないが、例えば75%,50%,25%のようなところでは、電力効率の良い擬似共振モードで動作するため、すべての領域においてPWMモードで動作する電源装置に比べて平均的な電力効率を向上させることができるという利点がある。
【0051】
また、トランス12のサイズは、トランスの一次巻線に流れる巻線電流の最大時にコアが飽和しないサイズが必要で、巻線電流が大きいほどサイズの大きなトランスが必要となる。擬似共振モードでは必ず電流不連続モード動作のため、定格負荷付近ではスイッチング周波数が低下し、巻線電流のピークが大きくなる。これに対してPWMモードでは電流連続モードの動作のため、定格負荷付近でも周波数が低下しないので、巻線電流のピークが擬似共振モードより小さく、トランスのサイズも単一擬似共振モードと比較して小さくすることが可能となる。
さらに、出力コンデンサは、周波数が高いほどインピーダンスが小さくかつ出力リップルの抑制効果が高いので、上記のように定格負荷付近ではPWMモードで動作させた方が擬似共振モードで動作させる場合よりも周波数が高くなるため、出力コンデンサの容量およびサイズを抑えることが可能となる。
【0052】
ところで、上記第1実施例の電源制御用IC13を用いたスイッチング電源装置は、出力電圧Voutが例えば5Vのように低い電圧に切り替えられたことにより、
図11に示すように、二次巻線Nsの消磁期間における外部端子DMGの電圧VDMGが低い状況では、タイミングt31でトランスの二次巻線Nsの消磁期間が終了して共振を開始した後、参照電圧VDMGREの近傍に達すると共振検出回路31が共振を検出できるかできないかぎりぎりの状態になることがある。
このような状態がタイマー回路34の設定時間T1の終了時点で発生すると、タイミングt32のように、タイマー回路34が設定時間T1を計時後の最初の共振検出と同時にタイマー回路34の出力TIMがハイレベルに変化してターンオン信号SETが立ち上がってスイッチング素子SW1をオンさせる場合と、タイマー回路34が設定時間T1を計時する前に共振を検出することができなくなってタイムアウト回路32が設定時間T2を計時してタイムアウトしたタイミングt33でターンオン信号SETが立ち上がってスイッチング素子SW1をオンさせる場合と、があり、上記2つの動作が混在してしまうことがある。
【0053】
ここで、タイマーの設定時間T1を25μs、T2を9μsのような値に設定したとすると、周期TP1の最小値は25μsで、周期TP2の最大値は34μsとなるため、共振が検出できるかどうかぎりぎりの条件では、スイッチング周期が25μs~34μsの間で混在することになり、出力電圧に大きなリップルが生じたり音鳴きが発生したりしてしまうという不具合がある。
そこで、上記不具合を解消すべく改良した電源制御用ICを考案した。以下、改良した電源制御用ICを第2実施例として、その詳細を
図12~
図17を用いて説明する。
【0054】
(第2実施例)
図12には、第2実施例の電源制御用IC13の機能ブロックの構成が示されている。
図12に示す第2実施例の電源制御用ICは
図2に示す第1実施例の電源制御用ICとほぼ同様な構成を有する。
図2に示す第1実施例の電源制御用ICとの差異は、第2実施例の電源制御用ICにおいては、第1実施例の電源制御用ICにおけるFBコンパレータ33がない代わりに、外部端子DMGの電圧VDMGを監視して共振電圧が減衰していることを検出するための減衰検出回路39を設けている点にある。なお、
図12に示す第2実施例の電源制御用IC13には、第1実施例の電源制御用ICにおけるタイムアウト回路32が示されていないが、第2実施例においては、第1実施例のタイムアウト回路32と同様な機能を減衰検出回路39が備えるように構成されているので、実質的な差異は、FBコンパレータ33を減衰検出回路39に置き換えた点にある。
【0055】
図13(A)には、減衰検出回路39の具体的な回路例が示されている。
図13(A)に示すように、この実施例の減衰検出回路39は、
図4に示されているタイムアウト回路32におけるインバータINV0をコンパレータCMP5に置き換えたものと同様な構成を有する。
コンパレータCMP5は、外部端子DMGに入力される補助巻線Nbの電圧を抵抗分圧した電圧VDMGと所定の参照電圧VDMGREF2とを比較するもので、外部端子DMGの電圧VDMGが参照電圧VDMGREF2よりも低くなると、出力がロウレベルに変化してMOSトランジスタM0がオフされ、後段のタイムアウト回路(M0,CC0,C0,CMP0)が計時動作を開始する。
【0056】
コンパレータCMP5の反転入力端子に印加される参照電圧VDMGREF2は、
図13(B)に示すように、コンパレータ、ドライバ、スイッチのターンオンなどの遅延(td)を加味して共振のボトムでターンオンできるように設定した電圧VDMGREF1(例えば0.1V)よりも高い電圧であって、共振振幅が、
図13(B)に破線Bで示すように、VDMGREF2からVDMGREF1まで減衰するのに要する時間Taよりも充分に短くかつ共振の周期よりも長い時間となるような電圧に設定される。具体的には、予め想定した減衰に要する時間Taが40μsで、共振の周期が5μsのような場合、タイムアウト回路(M0,CC0,C0,CMP0)の計時時間T2は例えば9μsに設定すればよく、その場合、参照電圧VDMGREF2は0.5Vのような電圧に設定される。
【0057】
ターンオン制御回路35は、
図6(B)に示すように、
図6(A)の第1実施例のターンオン制御回路35からORゲートG2を省略し、ANDゲートG3に減衰検出回路39の出力ATTが入力されるように構成される。
共振検出回路31、タイマー回路34、ターンオフトリガ生成回路36、ラッチ回路37およびドライバ回路38は、第1実施例のものと同一の構成で良いので、以下、上記減衰検出回路39を備えた第2実施例の電源制御用IC13の動作について
図14~
図17のタイミングチャートを用いて説明する。
図14には、第2実施例のスイッチング電源制御用IC13において、ゼロ電流共振電圧の減衰前にタイマー回路34が計時を開始する状況における各部の信号の変化を示すタイミングチャートが示されている。
【0058】
図14のタイミングチャートにおいては、共振検出回路31および減衰検出回路39のコンパレータCMP5がタイミングt41でVDMGの共振を検出して、その出力RSNとATCMPがそれぞれ反転する。そして、減衰検出回路39のタイムアウト回路(M0,CC0,C0,CMP0)がCMP5の出力ATCMPの立下りの度に所定の設定時間T2の計時を開始するが、T2を計時する前に出力ATCMPが立ち上がるため、ATCMPのロウレベルの期間Tbは所定時間T2よりも短いすなわちVDMGの共振は減衰していないと判断して減衰検出回路39の出力ATTはロウレベルを維持する。
【0059】
そのため、タイマー回路34が計時を開始して出力TIMがハイレベルに変化したタイミングt42の後、共振検出回路31が最初に共振を検出したタイミングt43で、ターンオン制御回路35の出力SETがハイレベルに変化してラッチ回路37がセットされ、スイッチング素子SW1がターンオンされる。そして、ターンオフトリガ生成回路36が端子CSの電圧Vcsに比例した電圧Vcs’(
図7のアンプAMP1の出力)が端子FBの電圧VFBに達したことを検出したタイミングt44でラッチ回路37をリセットさせ、スイッチング素子SW1がターンオフされる。
上記のような動作によって、電源制御用IC13は、この状況下では擬似共振モードで動作することとなる。
【0060】
図15には、第2実施例のスイッチング電源制御用IC13において、ゼロ電流共振電圧の減衰後にタイマー回路34が設定時間T1の計時を完了する状況における各部の信号の変化を示すタイミングチャートが示されている。
図15のタイミングチャートにおいては、共振検出回路31および減衰検出回路39のコンパレータCMP5がタイミングt51でVDMGの共振を検出して、その出力RSNとATCMPがそれぞれ反転する。そして、減衰検出回路39のタイムアウト回路がCMP5の出力ATCMPの立下りの度に設定時間T2の計時を開始するが、共振が減衰していると、T2を計時してもATCMPが立ち上がらなくなるため、減衰検出回路39は、VDMGの共振は減衰していると判断し、T2を計時したタイミングt52で出力ATTがハイレベルに変化する。
【0061】
そのため、タイマー回路34が計時を開始して出力TIMがハイレベルに変化したタイミングt53と同時に、ターンオン制御回路35の出力SETがハイレベルに変化してラッチ回路37がセットされ、スイッチング素子SW1がターンオンされる。そして、ターンオフトリガ生成回路36が端子CSの電圧Vcsに比例した電圧Vcs’(
図7のアンプAMP1の出力)が端子FBの電圧VFBに達したことを検出したタイミングt54でラッチ回路37をリセットさせ、スイッチング素子SW1がターンオフされる。
上記のような動作によって、ゼロ電流共振期間が相対的に長くなるような場合に、VDMGの減衰を検出してスイッチング素子SW1をターンオンさせることができる。
【0062】
図16には、第2実施例のスイッチング電源制御用IC13において、出力電圧Voutが低い値(例えば5V)に設定されることによりトランス12の二次巻線の消磁期間中の外部端子DMGの電圧VDMGが、減衰検出回路39内の参照電圧VDMGREF2よりも低くかつ消磁期間中にタイマー回路34が設定時間T1の計時を完了する状況における各部の信号の変化を示すタイミングチャートが示されている。
【0063】
図16のタイミングチャートにおいては、減衰検出回路39のコンパレータCMP5の出力ATCMPが連続してロウレベルを維持しコンパレータCMP0の出力ATTがハイレベルを維持しているつまり電圧VDMGが減衰していると判定している。そのため、タイミングt61,t63でタイマー回路34が設定時間T1を計時して出力TIMがハイレベルに変化するのと同時に、ターンオン制御回路35の出力SETがハイレベルに変化してラッチ回路37がセットされ、スイッチング素子SW1がターンオンされる。つまり、二次巻線の消磁期間中にSW1がターンオンするいわゆる電流連続モードで動作する。そして、ターンオフトリガ生成回路36が端子CSの電圧Vcsに比例した電圧Vcs’(
図7のアンプAMP1の出力)が端子FBの電圧VFBに達したことを検出したタイミングt62,t64でラッチ回路37をリセットさせ、スイッチング素子SW1がターンオフされる。
上記のような動作によって、電源制御用IC13は、この状況下ではPWMモードで動作することとなる。
【0064】
図17には、第2実施例のスイッチング電源制御用IC13において、出力電圧Voutが高い値(例えば25V)に設定されることによりトランス12の二次巻線の消磁期間中の外部端子DMGの電圧VDMGが、減衰検出回路39内の参照電圧VDMGREF2よりも充分に高くかつ消磁期間中にタイマー回路34が計時を開始する状況における各部の信号の変化を示すタイミングチャートが示されている。
【0065】
図17のタイミングチャートにおいては、共振検出回路31がタイミングt71,t73でVDMGの立ち下がりを検出して、その出力RSNがハイレベルに変化する。一方、減衰検出回路39のコンパレータCMP5の出力ATCMPは、二次巻線の消磁期間T3中ハイレベルを維持しコンパレータCMP0の出力ATTがロウレベルを維持しているつまり電圧VDMGが減衰していないと判定している。そのため、タイミングt72でタイマー回路34が計時を開始した後に二次巻線の消磁が終了してゼロ電流共振に入りVDMGの立ち下がったタイミングt73で出力TIMがロウレベルに変化し、ターンオン制御回路35の出力SETがハイレベルに変化してラッチ回路37がセットされ、スイッチング素子SW1がターンオンされる。
そして、ターンオフトリガ生成回路36が端子CSの電圧Vcsに比例した電圧Vcs’(
図7のアンプAMP1の出力)が端子FBの電圧VFBに達したことを検出したタイミングt74でラッチ回路37をリセットさせ、スイッチング素子SW1がターンオフされる。
【0066】
上記のような動作によって、電源制御用IC13は、この状況下ではPWMモードで動作することとなる。
第2実施例の電源制御用ICにおいても、定格負荷付近ではPWMモードで動作させそれ以外においては擬似共振モードで動作させることにより、二次側出力端子に接続するコンデンサの容量値およびサイズを抑えることが可能である。また、第2実施例の電源制御用ICによれば、出力電圧Voutを切り替えた場合に、減衰検出回路39のコンパレータCMP5の参照電圧VDMGREF2を変更することなく、共振電圧の減衰を検出することができるという利点がある。
【0067】
(変形例)
図18には第2実施例の電源制御用IC13の変形例の機能ブロックの構成が、また
図19にはこの変形例の電源制御用IC13における減衰検出回路39の回路構成例が示されている。
図18に示すように、この変形例の電源制御用IC13においては、減衰検出回路39にラッチ回路37の出力ENが入力される端子が設けられている。そして、このEN入力端子を有する減衰検出回路39は、
図19に示すように構成される。
図13(A)に示されている上記第2実施例の電源制御用IC13を構成する減衰検出回路39と比較すると分かるように、この変形例の減衰検出回路39は、
図13(A)に示す回路に対して破線で囲まれた部分の回路が追加された構成を有する。
【0068】
具体的には、この変形例の電源制御用IC13の減衰検出回路39には、
図19に示すように、ラッチ回路37の出力ENを論理反転するインバータINV2と、該インバータINV2の出力を1~3μs程度のような短い時間Tdだけ遅延する遅延回路DLYと、外部端子DMGの電圧VDGMと参照電圧VDMGREF2とを比較するコンパレータCMP5の出力ATCMPと上記遅延回路DLYの出力/EN_DELとの論理積をとるANDゲートG5と、コンパレータCMP5の出力を反転するインバータINV3と、該インバータINV3の出力をクロック信号として遅延回路DLYの出力/EN_DELを取り込むフリップフロップFF4と、フリップフロップFF4の反転出力/QとコンパレータCMP0の出力との論理和をとるORゲートG6が追加されている。
【0069】
図20には、本変形例の電源制御用IC13において、出力電圧Voutが高い電圧値(例えば25V)に設定されることによりトランス12の二次巻線の消磁期間中の外部端子DMGの電圧VDMGが、減衰検出回路39内の参照電圧VDMGREF2よりも充分に高くかつ消磁期間中にタイマー回路34が計時を開始する状況における各部の信号の変化を示すタイミングチャートが示されている。
図20のタイミングチャートにおいては、タイミングt81でラッチ回路37の出力ENがハイレベルに変化してスイッチング素子SW1がオンされることで電圧VDMGが立ち下がるのを共振検出回路31が検出して、その出力RSNがハイレベルに変化する。また、RSNはVDMGが立ち上がるタイミングt83でロウレベルに変化する。
【0070】
本変形例の電源制御用IC13では、減衰検出回路39において、遅延回路DLYによりラッチ回路37の出力ENの反転信号をTdだけ遅延した信号/EN_DELが生成され、この信号によって、外部端子DMGの電圧VDMGの立ち上がり直後のリンギングRGのマスク期間が設けられる。また、遅延回路DLYの遅延信号/EN_DELが、コンパレータCMP5の出力ATCMPの立ち下がり(t82)によってフリップフロップFF4にラッチされ、FF4の反転出力/Qがハイレベルに変化される(図示省略)。
これにより、コンパレータCMP5の出力ATCMPが二次巻線の消磁期間T3中にハイレベルへ変化されるが、フリップフロップFF4の反転出力/QによってORゲートG6の出力ATTはハイレベルを維持している。そのため、
図6(B)に示すターンオン制御回路35のANDゲートG3が開かれ、タイマー回路34による計時完了と同時に出力TIMがハイレベルに変化したタイミング(
図20のt84)で、ターンオン制御回路35の出力SETがハイレベルに変化してラッチ回路37がセットされ、ラッチ回路37の出力ENがハイレベルに変化してスイッチング素子SW1がターンオンされる。ターンオフの動作は、前記第2実施例と同様である。
【0071】
前記実施例のようなフライバック型の電源装置にあっては、スイッチのターンオフ直後にトランスのリーケージインダクタンスと、その周辺部品の容量成分によってスイッチング素子SW1のドレイン電圧VDおよび端子DMGの電圧VGMDに、
図20に示すように、リンギングRGが乗ることがあり、それにより共振検出回路31が誤検出するおそれがあるが、本変形例のスイッチング電源制御用IC13においては、電圧VDMGの立ち上がり直後のリンギング期間を、遅延回路DLYの出力信号によりマスクするANDゲートG5を設けているため、共振検出回路31の誤検出など意図しない動作を防止することができる。上記遅延回路DLYおよびANDゲートG5と同様な回路を共振検出回路31に設けるようにしても良く、これにより上記と同様に、電圧VDMGのリンギングによる誤動作を回避する効果が得られる。
【0072】
また、前述の第2実施例の電源制御用IC13においては、消磁期間中に外部端子DMGの電圧VDGMが参照電圧VDMGREF2以下となる場合(
図16参照)を除き、電流不連続モードでのみの動作となるが、
図18および
図19に示す変形例の電源制御用IC13においては、遅延回路DLYとフリップフロップFF4とORゲートG6とを設けているため、例えば
図20からも分かるように、上記条件(VDGM<VDMGREF2)以外においても電流連続モードによる動作が可能となる。そのため、トランスサイズを小さくすることができ、部品の小型化および低コスト化が可能となるという利点がある。
【0073】
図21(A),(B)には、前記第2実施例の電源制御用ICと上記変形例の電源制御用ICの負荷電流に対する一次巻線に流れる電流のピークの特性とスイッチング周波数特性が示されている。
図21(A),(B)において、破線は第2実施例の電源制御用ICの特性を、また実線は変形例の電源制御用ICの特性をそれぞれ示す。
図21(A)より、変形例の電源制御用ICの方が、負荷電流が増大しても一次巻線に流れる電流のピークの増大が少ないことが分かる。これにより、変形例の電源制御用ICは、第2実施例の電源制御用ICに比べてトランスが飽和しにくくなるため、トランスを小型化できるとともに、スイッチング素子SW1に定格電流が低く安価な部品を使用できるという利点がある。
【0074】
また、
図21(B)より、第2実施例の電源制御用ICは負荷電流が多い領域においてスイッチング周波数が低下するが、変形例の電源制御用ICは負荷電流が多い領域においてスイッチング周波数が低下せず高い状態を維持できることが分かる。これにより、変形例の電源制御用ICは、第2実施例の電源制御用ICに比べて出力電圧のリップルを小さくすることができ、所定の出力電圧リップルの規格値に対して、出力コンデンサとして容量値すなわちサイズが小さく安価なコンデンサを使用することができるという利点がある。
【0075】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば前記実施形態では、外付け素子としての抵抗R1,R2で補助巻線の電圧を分圧した電圧を外部端子DMGへ入力しているが、補助巻線の電圧を直接外部端子DMGへ入力しても良いし、電源制御用IC内部に設けた抵抗素子で分圧した電圧あるいは電源制御用IC内部に設けた抵抗素子と外付けの抵抗素子で分圧した電圧を外部端子DMGへ入力しても良い。
【0076】
また、前記実施形態では、スイッチングトランジスタSW1および電流センス抵抗Rsを、電源制御用IC13とは別個の素子としているが、スイッチングトランジスタSW1を電源制御用IC13に取り込んで1つの半導体集積回路(電流センス抵抗Rsは外付け素子)として構成、あるいはスイッチングトランジスタSW1と電流センス抵抗Rsを電源制御用IC13に取り込んでもよい。また、電流センス抵抗Rsを設けて電圧Vcsを生成して検出する代わりに、内部のスイッチングトランジスタSW1のドレイン電圧からドレイン電流の大きさを検出するように構成しても良い。
さらに、前記実施形態では、本発明を、出力電圧を切り替えることができる機能を有するスイッチング電源装置に適用した場合を例にとって説明したが、本発明は出力電圧を切り替える機能のないスイッチング電源装置にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
12…トランス、13…スイッチング電源用半導体装置(電源制御用IC)、14…定電圧制御回路、31…共振検出回路、32…タイムアウト回路、33…FBコンパレータ、34…タイマー回路、35…ターンオン制御回路、36…ターンオフトリガ生成回路(ターンオフ制御回路)、37…ラッチ回路(駆動用パルス生成回路)、38…ドライバ回路、39…減衰検出回路(共振電圧減衰検出回路)