(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/225 20060101AFI20240117BHJP
A47C 1/025 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B60N2/225
A47C1/025
(21)【出願番号】P 2020116089
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 信彦
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0164775(US,A1)
【文献】特開2002-112848(JP,A)
【文献】特開2006-034729(JP,A)
【文献】特開2013-094375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/225
A47C 1/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションに対してシートバックを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッション及び前記シートバックのいずれか一方に固定される第1フレーム及び他方に固定される第2フレームと、
前記第1フレームに連結されて外周面に外歯が形成され、内周面を構成するブッシュが組み付けられる外歯歯車と、
前記第2フレームに連結されて前記外歯に噛合可能であり当該外歯よりも歯数が多い内歯が形成され、前記内歯に対して外周面にて対向する円筒部が形成される内歯歯車と、
回転軸と、
前記回転軸に連結されることで当該回転軸の回転に伴い前記円筒部の外周面に対して摺動する連結部材と、
先端側ほど径方向の厚さが薄くなるようにくさび状に形成されて、前記先端側が互いに離れるように前記連結部材と前記ブッシュとの間に介挿される一方のカム及び他方のカムと、
前記一方のカムと前記他方のカムとを互いに離反させる方向に付勢するスプリングと、
を備え、
前記スプリングは、
軸方向に向けて延伸し、前記一方のカムを付勢する一方の付勢部と、
軸方向に向けて延伸し、前記他方のカムを付勢する他方の付勢部と、
所定の基準面に沿うように円弧状に形成されて、前記回転軸が挿通する弾性撓み部と、
前記一方の付勢部が前記所定の基準面に直交するように当該一方の付勢部の軸方向一側と前記弾性撓み部の一端とのそれぞれに接続し、前記弾性撓み部が前記一方の付勢部との接続箇所よりも軸方向他側に位置するように湾曲して形成される一方の接続部と、
前記他方の付勢部が前記所定の基準面に直交するように当該他方の付勢部の軸方向一側と前記弾性撓み部の他端とのそれぞれに接続し、前記弾性撓み部が前記他方の付勢部との接続箇所よりも軸方向他側に位置するように湾曲して形成される他方の接続部と、
を備えるように形成されることを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
前記回転軸は、
前記弾性撓み部の内方を挿通する軸本体と、
前記軸本体の軸方向一側に設けられて、前記一方の接続部の一部及び前記他方の接続部の一部が位置する切り欠きが形成されるフランジ部と、
前記軸本体の軸方向他側に設けられて、前記フランジ部との間に前記弾性撓み部が位置する凸部と、
を備えるように形成されることを特徴とする請求項1に記載のリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、シートクッションに対してシートバックを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シートクッションに対してシートバックを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置として下記特許文献1に開示されるリクライニング装置が知られている。このリクライニング装置は、内歯歯車の内周面を構成するブッシュと外歯歯車のボス部の外周面との間に、回転軸とともに回転するU字状の連結部材と一対のくさび状部材とを配置して、一対のくさび状部材を離反させるようにスプリングによって付勢するように構成されている。
【0003】
このように構成されることで、回転軸が回転しない場合には、スプリングによる付勢によって一対のくさび状部材がそれぞれ連結部材とブッシュとの間に嵌まり込むので、外歯歯車と内歯歯車との相対回転が規制されて、シートクッションに対するシートバックの傾動角度が保持される。その一方で、回転軸が回転する際、回転軸とともに回転する連結部材から受ける摩擦力によって一方のくさび状部材が嵌まり込んでいたくさび空間から抜け出すことで、くさび状部材による規制が解除される。これにより、回転軸の回転に応じて外歯歯車及び内歯歯車が相対回転することで、シートバックがシートクッションに対して傾動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シートの小型軽量化等の要求に伴い、リクライニング装置の厚み(軸方向の長さ)を小さくする要望が高まっている。そのため、リクライニング装置として必要な強度を維持しつつ、更なる厚みの減少を図る必要がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、必要な強度を維持しつつ、リクライニング装置の軸方向の長さを短縮可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の発明は、
シートクッション(11)に対してシートバック(12)を傾動可能に保持するシート(10)のリクライニング装置(20)であって、
前記シートクッション及び前記シートバックのいずれか一方に固定される第1フレーム(21)及び他方に固定される第2フレーム(22)と、
前記第1フレームに連結されて外周面に外歯(23a)が形成され、内周面を構成するブッシュ(23b)が組み付けられる外歯歯車(23)と、
前記第2フレームに連結されて前記外歯に噛合可能であり当該外歯よりも歯数が多い内歯(24c)が形成され、前記内歯に対して外周面にて対向する円筒部(24e)が形成される内歯歯車(24)と、
回転軸(25)と、
前記回転軸に連結されることで当該回転軸の回転に伴い前記円筒部の外周面に対して摺動する連結部材(28)と、
先端側ほど径方向の厚さが薄くなるようにくさび状に形成されて、前記先端側が互いに離れるように前記連結部材と前記ブッシュとの間に介挿される一方のカム(31a)及び他方のカム(31b)と、
前記一方のカムと前記他方のカムとを互いに離反させる方向に付勢するスプリング(29)と、
を備え、
前記スプリングは、
軸方向に向けて延伸し、前記一方のカムを付勢する一方の付勢部(29a)と、
軸方向に向けて延伸し、前記他方のカムを付勢する他方の付勢部(29b)と、
所定の基準面(E)に沿うように円弧状に形成されて、前記回転軸が挿通する弾性撓み部(29c)と、
前記一方の付勢部が前記所定の基準面に直交するように当該一方の付勢部の軸方向一側と前記弾性撓み部の一端とのそれぞれに接続し、前記弾性撓み部が前記一方の付勢部との接続箇所よりも軸方向他側に位置するように湾曲して形成される一方の接続部(29d)と、
前記他方の付勢部が前記所定の基準面に直交するように当該他方の付勢部の軸方向一側と前記弾性撓み部の他端とのそれぞれに接続し、前記弾性撓み部が前記他方の付勢部との接続箇所よりも軸方向他側に位置するように湾曲して形成される他方の接続部(29e)と、
を備えるように形成される。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明では、回転軸の回転に伴い内歯歯車における円筒部の外周面に対して摺動する連結部材と、先端側が互いに離れるように連結部材と外歯歯車の内周面を構成するブッシュとの間に介挿されるくさび状の一方のカム及び他方のカムと、一方のカムと他方のカムとを互いに離反させる方向に付勢するスプリングとが設けられる。スプリングは、軸方向に向けて延伸し、一方のカムを付勢する一方の付勢部と、軸方向に向けて延伸し、他方のカムを付勢する他方の付勢部と、所定の基準面に沿うように円弧状に形成されて回転軸が挿通する弾性撓み部と、一方の付勢部が上記所定の基準面に直交するように当該一方の付勢部の軸方向一側と弾性撓み部の一端とのそれぞれに接続し、弾性撓み部が一方の付勢部との接続箇所よりも軸方向他側に位置するように湾曲して形成される一方の接続部と、他方の付勢部が上記所定の基準面に直交するように当該他方の付勢部の軸方向一側と弾性撓み部の他端とのそれぞれに接続し、弾性撓み部が他方の付勢部との接続箇所よりも軸方向他側に位置するように湾曲して形成される他方の接続部と、を備えるように形成される。
【0009】
これにより、一方のカム及び他方のカムを一方の付勢部及び他方の付勢部にて付勢しているスプリングの弾性撓み部は、回転軸が挿通した状態で、一方の付勢部の接続部位や他方の付勢部の接続部位よりも軸方向他側に位置する。このため、スプリングが回転軸に対して軸方向にて積み重なるように配置されることもないので、スプリングが回転軸に対して軸方向にて積み重なるように配置される構成と比較して、リクライニング装置の軸方向長さを短くすることができる。したがって、必要な強度を維持しつつ、リクライニング装置の軸方向の長さを短縮することができる。
【0010】
請求項2の発明では、回転軸は、弾性撓み部の内方を挿通する軸本体と、軸本体の軸方向一側に設けられて、一方の接続部の一部及び他方の接続部の一部が位置する切り欠きが形成されるフランジ部と、軸本体の軸方向他側に設けられて、フランジ部との間に弾性撓み部が位置する凸部と、を備えるように形成される。
【0011】
これにより、スプリングが軸方向他側に外れようとしても、弾性撓み部が凸部に当たることで外れ難くなるので、回転軸に対してスプリングの外れ防止機能を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のリクライニング装置を搭載する車両用シートの一例を概念的に示す側面図である。
【
図4】
図2のリクライニング装置の分解斜視図である。
【
図8】
図8(A)は、
図7のスプリングの正面図であり、
図8(B)は、
図7のスプリングの側面図である。
【
図13】
図2に示すX1-X1線相当の切断面による断面図である。
【
図14】
図2に示すX2-X2線相当の切断面による断面図である。
【
図15】連結部材が回転する際にカムが受ける内周面側からの摩擦力と外周面側からの摩擦力との関係を説明する説明図である。
【
図16】
図14に示す状態から、シャフト、連結部材、一対のカム及び外歯歯車を回転させた状態を説明する断面図である。
【
図17】従来のリクライニング装置における
図3に相当する断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明に係るリクライニング装置20を搭載する車両用シート10の一実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、本発明のリクライニング装置20を備えた車両用シート10は、着座者の座部を受けるシートクッション11と、このシートクッション11に対して傾動可能であって着座者の背部を受けるシートバック12とを備えている。
【0014】
シートクッション11の骨格となるシートクッションフレーム11aと、シートバック12の骨格となるシートバックフレーム12aとが、シートクッションフレーム11aの端部に設置されたリクライニング装置20の第1フレーム21及び第2フレーム22等を介して連結されている。そして、当該リクライニング装置20に設けられる傾動用モータ(図示略)の回転駆動に応じて、シートバック12がシートクッション11に対して傾動可能となっている。
【0015】
次に、リクライニング装置20の構成について、図面を参照して説明する。
図2~
図4に示すように、リクライニング装置20は、上述した両フレーム21,22に加えて、外歯歯車23、内歯歯車24、シャフト25、プレートカバー26、シャフトカバー27、連結部材28、スプリング29及び一対のカム31a,31bを備えている。なお、
図2及び
図3では、説明の便宜上、両フレーム21,22の記載を省略している。
【0016】
図4に示すように、外歯歯車23は、略円環状に形成されており、その外周面には、外歯23aが形成されている。また、外歯歯車23の内周面には、耐摩耗性に優れ、カム31a,31bの接触部分での摩擦力を低減するために、摩擦係数の小さな円筒形の樹脂製のブッシュ23bが嵌め込まれている。すなわち、外歯歯車23には、内周面を構成する樹脂製のブッシュ23bが組み付けられる。また、外歯歯車23の第1フレーム21側の側面には、第1フレーム21に組み付けるための4つの略円弧状の突起23cが設けられている。
【0017】
図4に示すように、内歯歯車24は、内周面に内歯24cが形成される外筒部24aと、貫通穴24dを中心とする円筒状の内筒部24eが形成される側板部24bとを備えている。内歯24cは、外歯23aに対して偏心して噛合するように当該外歯23aよりも歯数が多くなるように形成されている。具体的には、例えば、外歯23aの歯数が32に設定される場合には、内歯24cの歯数が33に設定される。
【0018】
また、内歯24cは、その幅(軸方向長さ)が外歯23aの幅よりも長くなるように設定されており、側板部24b側の部位が、外歯歯車23及び内歯歯車24の噛合時に外歯23aに噛合しないように形成されている。また、側板部24bには、当該内歯歯車24を第2フレーム22に固定するための3つの略円弧状の突起24fが設けられている。なお、内筒部24eは、「円筒部」の一例に相当し得る。
【0019】
図5及び
図6に示すように、シャフト25は、樹脂製の回転軸であって、内歯歯車24の内筒部24eに対して同軸的であって回転自在に嵌合するように形成されている。このシャフト25は、シートバック12をシートクッション11に対して傾動させるときに上記傾動用モータの回転駆動に応じて所定の減速比で回転されるものであり、軸本体25a、フランジ部25b及び凸部25cを備えるように構成されている。軸本体25aの内面には、傾動用モータの回転駆動に応じて回転する回転部材を連結するためのセレーションが形成されている。
【0020】
フランジ部25bは、軸本体25aの軸方向一側(
図6(B)の左右方向の左側)となる位置に設けられており、連結部材28に係合するための複数の係合突起25dが外周面に設けられている。また、フランジ部25bには、後述するスプリング29の両接続部29d,29e等が入り込んで位置するように、切り欠き25eが形成されている。
【0021】
凸部25cは、軸本体25aの軸方向他側(
図6(B)の左右方向の右側)となる位置に設けられており、フランジ部25bとの間に後述するスプリング29の弾性撓み部29cが位置するように、外周方向に向けて突出して形成されている。
【0022】
スプリング29は、カム31aとカム31bとを互いに離反させる方向に付勢する付勢部材として機能するもので、1本の鋼線を弾性変形可能に曲げようにして形成される。スプリング29は、
図7及び
図8に示すように、カム31aを付勢する付勢部29aと、カム31bを付勢する付勢部29bと、略円弧状の弾性撓み部29cと、付勢部29aと弾性撓み部29cの一端とを接続する接続部29dと、付勢部29bと弾性撓み部29cの他端とを接続する接続部29eと、を備えるように形成される。なお、
図8(A)では、カム31a及びカム31bから抗力を受けて弾性変形している状態を、実線にて図示し、外力が作用していない状態を、一点鎖線にて図示している。
【0023】
付勢部29a及び付勢部29bは、それぞれ軸方向に向けて延伸するように形成されている。弾性撓み部29cは、所定の基準面(
図8(B)の符号E参照)に沿うように円弧状に形成されて、シャフト25の軸本体25aが挿通するように配置される。
【0024】
接続部29dは、付勢部29aが所定の基準面Eに直交するように当該付勢部29aの軸方向一側(
図8(B)の左右方向の左側)と弾性撓み部29cの一端とのそれぞれに接続するように、略L字状に湾曲して形成される。同様に、接続部29eは、付勢部29bが所定の基準面Eに直交するように当該付勢部29bの軸方向一側と弾性撓み部29cの他端とのそれぞれに接続するように、略L字状に湾曲して形成される。
【0025】
このため、弾性撓み部29cは、接続部29dと付勢部29aとの接続箇所や接続部29eと付勢部29bとの接続箇所よりも軸方向他側(
図8(B)の左右方向の右側)に位置するように配置される。すなわち、カム31a及びカム31bを付勢部29a及び付勢部29bにて付勢しているスプリング29の弾性撓み部29cは、シャフト25の軸本体25aが挿通した状態で、付勢部29a及び付勢部29bに対して軸方向他側よりに位置する。なお、付勢部29aは、「一方の付勢部」の一例に相当し、付勢部29bは、「他方の付勢部」の一例に相当し得る。また、接続部29dは、「一方の接続部」の一例に相当し、接続部29eは、「他方の接続部」の一例に相当し得る。
【0026】
連結部材28及び一対のカム31a,31bは、外歯歯車23の内周面を構成するブッシュ23bと内歯歯車24の内筒部24eの外周面との間に配置(介挿)されることで、外歯歯車23に対して内歯歯車24を偏心させた状態で、外歯23aに内歯24cの一部を噛合させるものである。
【0027】
図9及び
図10に示すように、連結部材28は、金属(例えば、SK5)製の板材料を曲げたプレス加工によって成形されるもので、隙間28aを除くと、径方向の厚さが一定の薄肉円筒状となるように形成されている。連結部材28には、第1フレーム21側に、シャフト25の各係合突起25dが係合する係合凹部28bが複数形成され、第2フレーム22側に、2つの凹部28cが形成されている。この連結部材28は、内周面にて内筒部24eの外周面に対して摺動可能に形成されている。
【0028】
図4及び
図11に示す一対のカム31a,31bは、対称形状であるため、カム31aについて、詳細形状について説明する。
図11及び
図12に示すように、カム31aは、金属(例えば、SCM415)製のくさび状部材であって、先端部に設けられる凸部32を除いて、先端側ほど径方向の厚さが薄くなるようにくさび状に形成されている。例えば、
図12(A)に示すように、カム31aの先端側部位の径方向の厚さt1は、カム31aの基端側(反先端側)部位の径方向の厚さt2よりも薄くなっている。凸部32は、後述する介挿状態時に、連結部材28の凹部28cに隙間を介して入り込むもので、その円周方向の長さが凹部28cよりも短くなるように形成されている。このカム31aの基端側の端面には、付勢部材として機能するスプリング29からの付勢力を受けるための溝部33が設けられている。
【0029】
このように構成される連結部材28及び一対のカム31a,31bは、凸部32が凹部28cに入り込んだ状態で、
図13及び
図14に示すように、噛合状態の外歯歯車23のブッシュ23bと内歯歯車24の内筒部24eの外周面との間に介挿される。また、連結部材28は、
図13に示すように、係合凹部28bにてシャフト25の係合突起25dに係合しており、シャフト25とともに回転可能な状態になっている。
【0030】
そして、
図13に示すように、一対のカム31a,31bは、スプリング29の付勢部29a,29bによって互いに離反する方向に付勢される。その際、スプリング29は、両接続部29d,29e等がシャフト25の切り欠き25eに入り込み、弾性撓み部29cがシャフト25のフランジ部25bと凸部25cとの間に位置する。
【0031】
このような組み付け状態で、噛合状態の内歯歯車24の外筒部24aの端部にプレートカバー26を溶接することで、外歯歯車23の軸方向の移動が規制される。そして、シャフトカバー27にてシャフト25等を位置決めした状態で、突起23cを利用して外歯歯車23を第1フレーム21に溶接固定するとともに、突起24fを利用して内歯歯車24を第2フレーム22に溶接固定することで、リクライニング装置20の組み付けが完了する。
【0032】
この組み付け状態では、
図3に示すように、スプリング29は、シャフト25の切り欠き25e内に両接続部29d,29e等が入り込んでも、シャフト25のフランジ部25bよりも軸方向一側(
図3の左右方向の左側)に突出することもない。このような構成により、シャフトカバー27とシャフト25との間にスプリング29が入り込むこともないので、
図17に示す従来のリクライニング装置100でのシャフト101とシャフトカバー102との間にスプリング103が入り込む場合の軸方向長さLoと比較して、リクライニング装置20の軸方向長さLを短くすることができる。なお、スプリング103は、接続部29d,29eを除いて、弾性撓み部29cに相当する弾性撓み部103cの一端に付勢部29aに相当する付勢部103aを直接接続するとともに、他端に付勢部29bに相当する付勢部103bを直接接続するように構成される。
【0033】
次に、連結部材28及び一対のカム31a,31b等の動作について、
図14~
図16を参照して説明する。
上述のような介挿状態では、
図14に示すように、連結部材28は、内周面にて内筒部24eの外周面に面接触し、一対のカム31a,31bは、スプリング29から付勢力を受けることで、それぞれ外周側にてブッシュ23bに面接触するとともに内周側にて連結部材28に面接触する。
【0034】
このような接触状態では、シャフト25が回転しない場合には、スプリング29による付勢によって一対のカム31a,31bが連結部材28とブッシュ23bとによって構成されるくさび空間にそれぞれ嵌まり込むので、シャフト25が回転しない状態での外歯歯車23と内歯歯車24との相対回転が規制される。
【0035】
これに対して、
図15に示すように、シャフト25が矢印S方向に回転する場合には、シャフト25とともに回転する連結部材28によって、カム31bはスプリング29による付勢方向に沿う摩擦力を受け、カム31aはスプリング29による付勢方向に抗するように内周面側から摩擦力F1を受ける。その際、カム31aは、上記内周面側からの摩擦力F1による回転を妨げようとする摩擦力F2を、ブッシュ23bに接触している外周面側から受ける。
【0036】
連結部材28及び一対のカム31a,31bは金属製であって、ブッシュ23bは摩擦係数が小さくなる樹脂製であることから、内周面側からの摩擦力(回転させようとする力)F1が外周面側からの摩擦力(回転を妨げる力)F2によりも大きくなる。このため、径方向の厚さが一定の連結部材28であっても、カム31aを、嵌まり込んでいたくさび空間から抜け出すように、スプリング29による付勢に抗して回転させることができる。これにより、
図16に示すように、連結部材28とともに回転するカム31bから回転方向の摩擦力を受けている外歯歯車23を、カム31a及びカム31bとともに矢印S方向に回転させることができる。
【0037】
また、シャフト25が矢印Sに対して逆方向に回転する場合には、シャフト25とともに回転する連結部材28によって、カム31bを、嵌まり込んでいたくさび空間から抜け出すように、スプリング29による付勢に抗して上記逆方向に回転させることができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係るリクライニング装置20では、シャフト25の回転に伴い内歯歯車24における内筒部24eの外周面に対して摺動する連結部材28と、先端側が互いに離れるように連結部材28と外歯歯車23の内周面を構成するブッシュ23bとの間に介挿されるくさび状のカム31a及びカム31bと、カム31aとカム31bとを互いに離反させる方向に付勢するスプリング29とが設けられる。スプリング29は、軸方向に向けて延伸し、カム31aを付勢する付勢部29aと、軸方向に向けて延伸し、カム31bを付勢する付勢部29bと、所定の基準面Eに沿うように円弧状に形成されてシャフト25が挿通する弾性撓み部29cと、付勢部29aが上記所定の基準面Eに直交するように当該付勢部29aの軸方向一側と弾性撓み部29cの一端とのそれぞれに接続し、弾性撓み部29cが付勢部29aとの接続箇所よりも軸方向他側に位置するように湾曲して形成される接続部29dと、付勢部29bが上記所定の基準面Eに直交するように当該付勢部29bの軸方向一側と弾性撓み部29cの他端とのそれぞれに接続し、弾性撓み部29cが付勢部29bとの接続箇所よりも軸方向他側に位置するように湾曲して形成される他方の接続部29eと、を備えるように形成される。
【0039】
これにより、カム31a及びカム31bを付勢部29a及び付勢部29bにて付勢しているスプリング29の弾性撓み部29cは、シャフト25が挿通した状態で、付勢部29aの接続部位や付勢部29bの接続部位よりも軸方向他側に位置する。このため、スプリング29がシャフト25に対して軸方向にて積み重なるように配置されることもないので、スプリング29がシャフト25に対して軸方向にて積み重なるように配置される構成(
図17参照)と比較して、リクライニング装置20の軸方向長さLを短くすることができる。したがって、必要な強度を維持しつつ、リクライニング装置の軸方向の長さLを短縮することができる。
【0040】
特に、シャフト25は、弾性撓み部29cの内方を挿通する軸本体25aと、軸本体25aの軸方向一側に設けられて、接続部29dの一部及び接続部29eの一部が位置する切り欠き25eが形成されるフランジ部25bと、軸本体25aの軸方向他側に設けられて、フランジ部25bとの間に弾性撓み部29cが位置する凸部25cと、を備えるように形成される。
【0041】
これにより、スプリング29が軸方向他側に外れようとしても、弾性撓み部29cが凸部25cに当たることで外れ難くなるので、シャフト25に対してスプリング29の外れ防止機能を持たせることができる。
【0042】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)スプリング29の接続部29d,29eは、略L字状に湾曲して形成されることに限らず、付勢部29a,29bが所定の基準面Eにほぼ直交し、弾性撓み部29cが付勢部29aの接続部位や付勢部29bの接続部位よりも軸方向他側に位置するように形成されればよい。
【0043】
(2)連結部材28とシャフト25とは、係合凹部28bと係合突起25dとの係合によって同軸的に回転するように連結されることに限らず、他の形状、例えば、連結部材28に形成される凸部とシャフト25に形成される凹部との嵌合等によって同軸的に回転するように連結されてもよい。
【0044】
(3)第1フレーム21がシートクッションフレーム11aに連結されるとともに第2フレーム22がシートバックフレーム12aに連結されることに限らず、第1フレーム21がシートバックフレーム12aに連結されるとともに第2フレーム22がシートクッションフレーム11aに連結されてもよい。また、第1フレーム21及び第2フレーム22は、シートクッションフレーム11aやシートバックフレーム12aの一部であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…車両用シート
11…シートクッション
12…シートバック
20…リクライニング装置
21…第1フレーム
22…第2フレーム
23…外歯歯車
23a…外歯
23b…ブッシュ
24…内歯歯車
24c…内歯
24e…内筒部(円筒部)
25…シャフト(回転軸)
25a…軸本体
25b…フランジ部
25c…凸部
25e…切り欠き
28…連結部材
29…スプリング
29a…付勢部(一方の付勢部)
29b…付勢部(他方の付勢部)
29c…弾性撓み部
29d…接続部(一方の接続部)
29e…接続部(他方の接続部)
31a,31b…カム
E…所定の基準面