(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、燃料電池およびシール方法
(51)【国際特許分類】
C08F 290/04 20060101AFI20240117BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20240117BHJP
H01M 8/0284 20160101ALI20240117BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20240117BHJP
H01M 8/0286 20160101ALI20240117BHJP
【FI】
C08F290/04
H01M8/10 101
H01M8/0284
H01M8/0273
H01M8/0286
(21)【出願番号】P 2020562852
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2019040982
(87)【国際公開番号】W WO2020137111
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2018240570
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小山 昭広
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】福本 将之
(72)【発明者】
【氏名】曽我 哲徳
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-169922(JP,A)
【文献】国際公開第2016/024618(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/190415(WO,A1)
【文献】特開2013-216782(JP,A)
【文献】特開2004-111146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/04
H01M 8/10
H01M 8/0284
H01M 8/0273
H01M 8/0286
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(C)成分を含有
し、前記(B)成分の配合量が、(A)成分100質量部に対して、20~30質量部であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
(A)成分:一般式(1)で表される、(メタ)アクリロイル基を1以上と、-[CH
2C(CH
3)
2]-単位を含むポリイソブチレン骨格を有するオリゴマー
【化1】
(式(1)中、R
1は、一価もしくは多価芳香族炭化水素基、または一価もしくは多価脂肪族炭化水素基を示し、PIBは前記-[CH
2C(CH
3)
2]-単位を含むポリイソブチレン骨格を示し、R
4は酸素原子を含んでもよい炭素数2~6の2価の炭化水素基を表し、R
2及びR
3はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基を表し、R
5は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、nは1~6のいずれかの整数である。)
(B)成分
:テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートからなる群から少なくとも1以上選択される、(メタ)アクリロイルオキシ基と
テトラヒドロフラン環を有する単官能性モノマー
(C)成分:ラジカル重合開始剤
【請求項2】
前記(B)成分がテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンであることを特徴とする請求項1
または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を含む、燃料電池用硬化性シール剤。
【請求項5】
前記燃料電池用硬化性シール剤が、燃料電池における部材であるセパレーター、フレーム、電解質膜、燃料極、空気極、電解質膜電極接合体からなる群のいずれかの部材周辺用燃料電池用硬化性シール剤である、請求項4に記載の燃料電池用硬化性シール剤。
【請求項6】
前記燃料電池用硬化性シール剤が、燃料電池における隣り合うセパレーター同士との間のシール剤、燃料電池のフレームと電解質膜または電解質膜電極接合体との間のシール剤である、請求項4または5に記載の燃料電池用硬化性シール剤。
【請求項7】
前記燃料電池用硬化性シール剤が、固体高分子形燃料電池用硬化性シール剤である、請求項4~6のいずれか1項に記載の燃料電池用硬化性シール剤。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物または請求項4~7のいずれか1項に記載の燃料電池用硬化性シール剤を硬化させて得られる硬化物。
【請求項9】
燃料電池における隣り合うセパレーター同士との間のシール、及び燃料電池のフレームと電解質膜または電解質膜電極接合体との間のシールからなる群のいずれかを含む燃料電池であって、前記いずれかのシールが、請求項8に記載の硬化物である、燃料電池。
【請求項10】
前記燃料電池が、固体高分子形燃料電池である、請求項9に記載の燃料電池。
【請求項11】
少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方が活性エネルギー線の光を透過可能であり、前記フランジの少なくとも一方の表面に、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を塗布する工程、前記硬化性樹脂組成物を塗布した一方のフランジと他方のフランジとを前記硬化性樹脂組成物を介して貼り合わせる工程、及び、活性エネルギー線を前記光透過可能なフランジを通して照射して前記硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とする前記シール方法。
【請求項12】
少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方のフランジに、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を塗布する工程、前記塗布した硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して前記硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記硬化性樹脂組成物の硬化物からなるガスケットを形成する工程、他方のフランジを前記ガスケット上に配置して、硬化性樹脂組成物を塗布した一方のフランジと前記他方のフランジとを前記ガスケットを介して圧着し、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とする前記シール方法。
【請求項13】
少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方のフランジ上にガスケット形成用金型を配置する工程、前記ガスケット形成用金型と該金型を配置したフランジとの間の空隙の少なくとも一部に請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を注入する工程、前記硬化性樹脂組成物
に活性エネルギー線を照射して前記硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記硬化性樹脂組成物の硬化物からなるガスケットを形成する工程、前記金型を前記一方のフランジから取り外す工程、他方のフランジを前記ガスケット上に配置して、前記一方のフランジと前記他方のフランジとを前記ガスケットを介して圧着し、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とするシール方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、燃料電池およびシール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や家庭用の新しいエネルギーシステムとして燃料電池が注目されている。燃料電池とは、水素と酸素を化学的に反応させることにより電気を取り出す発電装置である。また、燃料電池は、発電時のエネルギー効率が高く、水素と酸素の反応により水が生成されることからクリーンな次世代の発電装置である。燃料電池は、固体高分子形燃料電池、りん酸形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、固体酸化物形燃料電池の4つの方式がある。中でも固体高分子形燃料電池は、運転温度が比較的低温(80℃前後)でありながら高発電効率であるので、自動車用動力源、家庭用発電装置、携帯電話などの電子機器用小型電源、非常電源等の用途で期待されている。
【0003】
図1に示すように、固体高分子形燃料電池のセル1とは、高分子電解質膜4が空気極(カソード)3a、燃料極(アノード)3bとの間に挟持された構造である電解質膜電極接合体(MEA)5と、前記MEAを支持するフレーム6と、ガスの流路が形成されているセパレーター2とを備えた構造である。
【0004】
固体高分子形燃料電池を起動するには、燃料極に水素を含む燃料ガスを、空気極には酸素を含む酸化ガスを別々に隔離して供給する必要がある。隔離が不十分で一方のガスが他方のガスへと混合してしまうと、発電効率の低下を起こしてしまう恐れがあるためである。このような背景から、燃料ガスや酸化ガスなどの漏れを防止する目的で、シール剤が多用されている。具体的には、隣り合うセパレーター同士との間、セパレーターとフレームとの間、フレームと電解質膜またはMEAとの間等にシール剤が使用されている。
【0005】
固体高分子形燃料電池に用いられるシール剤としては、耐気体透過性、低透湿性、耐熱性、耐酸性、可とう性に優れるゴム弾性体であることから、ポリイソブチレン系重合体を用いたヒドロシリル化反応する加熱硬化性樹脂組成物(特開2004-111146号公報参照)、フルオロポリエーテル化合物を用いたヒドロシリル化反応する加熱硬化性樹脂組成物(特開2004-075824号公報(US 2005/0043480 A1)参照)、フッ素ポリマーを用いたヒドロシリル化反応する加熱硬化性樹脂組成物(特開2007-100099号公報参照)、エチレン-プロピレン-ジエンゴムを用いた加熱硬化性樹脂組成物(特開2013-229323号公報参照)、2個または3個の末端アクリレート基を有するテレキーリックポリイソブチレン重合体を用いた重合体組成物(特開平2-88614号公報(EP 0 353 471 A2)参照)が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2004-111146号公報、特開2004-075824号公報(US 2005/0043480 A1)、特開2007-100099号公報、特開2013-229323号公報及び特開平2-88614号公報(EP 0 353 471 A2)の硬化性樹脂組成物は、シール性を向上させるために分子量が大きいポリイソブチレン系重合体を使用しているので、粘度が高くなり、塗布作業性が劣るという問題があった。また、一般的に硬化性樹脂組成物において粘度を下げるために反応性希釈剤を添加する手法が用いられるが、今度は、硬化物の圧縮永久歪み特性を低下させてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、低粘度でありながら、圧縮永久歪みが優れた硬化物が得られる硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨を次に説明する。
【0009】
[1] 下記の(A)~(C)成分を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
(A)成分:(メタ)アクリロイル基を1以上と、-[CH2C(CH3)2]-単位を含むポリイソブチレン骨格を有するオリゴマー
(B)成分:(メタ)アクリロイルオキシ基と4員環以上の飽和ヘテロ環を有する単官能性モノマー
(C)成分:ラジカル重合開始剤。
【0010】
[2] 前記(A)成分が、一般式(1)で表されるポリイソブチレン骨格を有するオリゴマーである、[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
【0011】
【0012】
上記一般式(1)中、R1は、一価もしくは多価芳香族炭化水素基、または一価もしくは多価脂肪族炭化水素基を表し;PIBは、前記-[CH2C(CH3)2]-単位を含むポリイソブチレン骨格を表し;R4は、酸素原子を含んでもよい炭素数2~6の2価の炭化水素基を表し;R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~20の1価の炭化水素基を表し;R5は、水素原子、メチル基またはエチル基を表し;nは、1~6の整数である。
【0013】
[3] 前記(B)成分の飽和ヘテロ環を構成するヘテロ原子が酸素原子であることを特徴とする[1]または[2]に記載の硬化性樹脂組成物。
【0014】
[4] 前記(A)成分100質量部に対して、(B)成分を5~500質量部を含むことを特徴とする[1]~[3]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0015】
[5] 前記(B)成分が、(2ーメチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート、およびカプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする[1]~[4]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0016】
[6] [1]~[5]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を含む、燃料電池用硬化性シール剤。
【0017】
[7] 前記燃料電池用硬化性シール剤が、燃料電池における部材であるセパレーター、フレーム、電解質膜、燃料極、空気極、および電解質膜電極接合体からなる群から選択されるいずれかの部材の周辺をシールするために使用される、[6]に記載の燃料電池用硬化性シール剤。
【0018】
燃料電池(特に固体高分子形燃料電池)における部材であるセパレーター、フレーム、電解質膜、燃料極、空気極、および電解質膜電極接合体からなる群から選択されるいずれかの部材の周辺をシールするための[1]~[5]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の使用。
【0019】
[8] 前記燃料電池用硬化性シール剤が、燃料電池における隣り合うセパレーター同士の間をシールする、または燃料電池のフレームと電解質膜もしくは電解質膜電極接合体との間をシールするために使用される、[6]、[7]に記載の燃料電池用硬化性シール剤。
【0020】
燃料電池(特に固体高分子形燃料電池)における隣り合うセパレーター同士の間をシールする、または燃料電池のフレームと電解質膜もしくは電解質膜電極接合体との間をシールするための[1]~[5]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の使用。
【0021】
[9] 前記燃料電池用硬化性シール剤が、固体高分子形燃料電池用硬化性シール剤である、[6]~[8]のいずれか1項に記載の燃料電池用硬化性シール剤。
【0022】
[10] [1]~[5]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物または[6]~[9]のいずれか1項に記載の燃料電池用硬化性シール剤を硬化させて得られる硬化物。
【0023】
[11] 燃料電池における隣り合うセパレーター同士との間のシール、及び燃料電池のフレームと電解質膜または電解質膜電極接合体との間のシールからなる群から選択されるいずれかを含む燃料電池であって、前記いずれかのシールが、[10]に記載の硬化物である、燃料電池。
【0024】
[12] 前記燃料電池が、固体高分子形燃料電池である、[11]に記載の燃料電池。
【0025】
[13] 少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方が活性エネルギー線の光を透過可能であり、前記フランジの少なくとも一方の表面に、[1]~[5]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を塗布する工程、前記硬化性樹脂組成物を塗布した一方のフランジと他方のフランジとを前記硬化性樹脂組成物を介して貼り合わせる工程、及び、活性エネルギー線を前記光透過可能なフランジを通して照射して前記硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とする前記シール方法。
【0026】
[14] 少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方のフランジに、[1]~[5]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を塗布する工程、前記塗布した硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して前記硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記硬化性樹脂組成物の硬化物からなるガスケットを形成する工程、他方のフランジを前記ガスケット上に配置して、硬化性樹脂組成物を塗布した一方のフランジと前記他方のフランジとを前記ガスケットを介して圧着し、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とする前記シール方法。
【0027】
[15] 少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方のフランジ上にガスケット形成用金型を配置する工程、前記ガスケット形成用金型と該金型を配置したフランジとの間の空隙の少なくとも一部に[1]~[5]のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を注入する工程、前記硬化性樹脂組成物に前記活性エネルギー線を照射して前記硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記硬化性樹脂組成物の硬化物からなるガスケットを形成する工程、前記金型を前記一方のフランジから取り外す工程、他方のフランジを前記ガスケット上に配置して、前記一方のフランジと前記他方のフランジとを前記ガスケットを介して圧着し、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とするシール方法。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】燃料電池の単セルの概略断面図である。
図1中、1は固体高分子形燃料電池のセルを、2はセパレーターを、3aは空気極(カソード)を、3bは燃料極(アノード)を、4は高分子電解質膜を、5は電解質膜電極接合体(MEA)を、6はフレームを、7は接着剤またはシール剤を、8aは酸化ガス流路を、8bは燃料ガス流路を、9は冷却水流路を、それぞれ、示す。
【
図2】燃料電池全体を表す概略図である。
図2中、10はセルスタックを、11は固体高分子形燃料電池を、それぞれ、示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第1の側面は、(メタ)アクリロイル基および-[CH2C(CH3)2]-単位を含むポリイソブチレン骨格を有するオリゴマー((A)成分);(メタ)アクリロイルオキシ基および4員環以上の飽和ヘテロ環を有する単官能性モノマー((B)成分);ならびにラジカル重合開始剤((C)成分)を含有する硬化性樹脂組成物に関する。本発明の硬化性樹脂組成物によれば、低粘度でありながら、圧縮永久歪みが優れた硬化物が得られる。なお、本明細書では、「-CH2-C(CH3)2-単位を含むポリイソブチレン単位」を単に「ポリイソブチレン単位」とも称する。
【0030】
以下に発明の詳細を説明する。
【0031】
<(A)成分>
本発明に用いられる(A)成分とは、(メタ)アクリロイル基を1以上有し、かつ-[CH2C(CH3)2]-単位を含むポリイソブチレン骨格を有するオリゴマーであれば特に限定されるものではない。(A)成分としては、例えば、(メタ)アクリロイル基(CH2=CH-C(=O)-またはCH2=C(CH3)-C(=O)-)および-[CH2C(CH3)2]-単位(ポリイソブチレン骨格)を有すればよく、「-[CH2C(CH3)2]-単位以外の他の構成単位」を含むオリゴマーであってもよい。(A)成分は、-[CH2C(CH3)2]-単位を、構成単位全量((A)成分)に対して、例えば70質量%以上含み、好ましくは75質量%以上含み、より好ましくは80質量%以上含むことが適当である。また、(A)成分は、-[CH2C(CH3)2]-単位を、構成単位全量((A)成分)に対して、例えば100質量%以下含み、別の態様では100質量%未満含み、別の態様では95質量%以下含み、また別の態様では90質量%以下含むことが適当である。または、(A)成分は、-[CH2C(CH3)2]-単位を、ポリイソブチレン骨格に対して、例えば80質量%以上含み、好ましくは85質量%以上含み、より好ましくは90質量%以上含み、さらに好ましくは95質量%を超えて含むことが適当である。また、(A)成分は、-[CH2C(CH3)2]-単位を、ポリイソブチレン骨格に対して、例えば100質量%以下含み、他の態様では100質量%未満含むことが適当である。(A)成分は、(メタ)アクリロイル基を、好ましくは1~12個、より好ましくは2~8個、さらに好ましくは2~4個、特に好ましくは2個有することが適当である。なお、本発明において、オリゴマーとは、下記理論にとらわれないが、例えば、オリゴマーの主鎖にモノマーの繰り返し単位を伴う構造で、100以上の繰り返し単位からなる化合物を指すと定義できる。1つのポリイソブチレン骨格(下記一般式(1)中のPIB)における-[CH2C(CH3)2]-単位の数は、例えば100以上、好ましくは120~300、より好ましくは150~250である。また、(メタ)アクリロイル基は分子の側鎖、および/または、末端のいずれに存在していてもかまわないが、圧縮永久歪みが優れるという観点から分子の末端に存在することが好ましい。
【0032】
前記(A)成分としては、圧縮永久歪みが優れる硬化物が得られるという観点から、下記一般式(1)で表されるポリイソブチレン骨格を有するオリゴマーが好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、(A)成分が、下記一般式(1)で表されるポリイソブチレン骨格を有するオリゴマーである。
【0033】
(A)成分の具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシフェニル基を有するポリイソブチレンが挙げられる。なお、本発明における(A)成分の主骨格がポリイソブチレン骨格であるが、このポリイソブチレン骨格を構成するモノマーとしてはイソブチレンを主として用いる他には、本発明の効果を損なわない範囲であれば他のモノマーを共重合してもよい。なお、(A)成分は、硬化性樹脂組成物の塗布作業性が優れることから、常温(25℃)で液状であることが好ましい。
【0034】
【0035】
上記一般式(1)中、R1は、一価もしくは多価芳香族炭化水素基、または一価もしくは多価脂肪族炭化水素基を表す。ここで、芳香族炭化水素基は、特に制限されないが、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アントラセン、アズレン、ヘプタレン、アセナフタレン、フェナレン、フルオレン、アントラキノン、フェナントレン、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニル、キンクフェニル、セキシフェニル、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェン、ヘキサフェン、ヘキサセン、ルビセン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ピラントレン等由来の基を挙げることができる。これらのうち、圧縮永久歪みが優れる硬化物が得られるという観点から、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル由来の基が好ましく、ベンゼン由来の基がより好ましい。また、脂肪族炭化水素基は、特に制限されないが、炭素数1~12の直鎖または分岐鎖アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基)、炭素数1~12の直鎖または分岐鎖アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、sec-ペンチレン基、tert-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、イソヘキシレン基、sec-ヘキシレン基、tert-ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、2-エチルヘキシレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基)などが挙げられる。R1は、一価または多価の基であり、脂肪族炭化水素が三価以上の基の場合は、例えば、上記挙げた脂肪族炭化水素基から水素原子を除いた基が挙げられる。ここで、R1の価数は、特に制限されないが、圧縮永久歪みが優れる硬化物が得られるという観点から、好ましくは1~12、より好ましくは2~8、さらに好ましくは2~4、特に好ましくは2である。すなわち、R1は、好ましくは多価芳香族炭化水素基であり、より好ましくは2~4価のベンゼン由来の基であり、特にさらに好ましくは2価のフェニレン基(o,m,p-フェニレン基)であり、特に好ましくは2価のp-フェニレン基である。PIBは-[CH2C(CH3)2]-単位を含む(または-[CH2C(CH3)2]-単位からなる)ポリイソブチレン骨格を示す。前者(即ち、PIBが-[CH2C(CH3)2]-単位に加えて他の単位を含む)場合の、他の単位としては、特に制限されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基(-CH(CH3)CH2-)、イソプロピレン基(-C(CH3)2-)等の、炭素数1~6の直鎖または分岐鎖アルキレン基が挙げられる。これらのうち、PIBは、-[CH2C(CH3)2]-単位からなるまたは炭素数2~6の直鎖または分岐鎖アルキレン基及び-[CH2C(CH3)2]-単位からなることが好ましく、炭素数3~5の分岐鎖アルキレン基及び-[CH2C(CH3)2]-単位からなることがより好ましく、イソプロピレン基(-C(CH3)2-)及び-[CH2C(CH3)2]-単位からなる(例えば、[-C(CH3)2-[CH2C(CH3)2]-]単位または[-C(CH3)2-[C(CH3)2CH2]-]単位である)ことが特に好ましい。R4は酸素原子を含んでもよい炭素数2~6の2価の炭化水素基を表す。ここで、炭素数2~6の2価の炭化水素基としては、特に制限されないが、上記PIBと同様の基が例示できる。好ましくは、R4は、炭素数2または3の2価の炭化水素基(例えば、エチレン基(-CH2-CH2-)、トリメチレン基(-CH2-CH2-CH2-)、プロピレン基(-CH(CH3)CH2-)、イソプロピレン基(-C(CH3)2-)等)であり、特に好ましくはエチレン基である。なお、R4が酸素原子を含む場合の酸素原子の位置は特に制限されない。例えば、上記アルキレン基の少なくとも一方の末端にもしくは上記アルキレン基を構成する隣り合う炭素原子の間に、酸素原子が導入される、または上記アルキレン基を構成する1以上の水素原子が酸素原子で置換される。これらのうち、圧縮永久歪みが優れる硬化物が得られるという観点から、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基が好ましい。R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~20の1価の炭化水素基を表す。ここで、R2及びR3は、同じであってもまたは異なるものであってもよい。炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、2-テトラオクチル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、2-ヘキシルデシル基、n-ヘプタデシル基、1-オクチルノニル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基などの直鎖または分岐鎖のアルキル基;シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の環状のアルキル基などが挙げられる。これらのうち、R2及びR3は、好ましくは水素原子、炭素数1~8の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1~3の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子である。R5は、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。nは、1~6のいずれかの整数であり、より好ましくは2~4の整数であり、特に好ましくは2である。
【0036】
前記(A)成分の分子量は特に制限は無いが、圧縮永久歪みが優れる硬化物が得られるという観点からクロマトグラフィー測定による数平均分子量が、例えば、200~500,000であることが好ましく、より好ましくは500~300,000であり、さらに好ましくは1,000~200,000であり、さらにより好ましくは1,000~100,000であり、特に好ましくは3,000~50,000である。なお、前記数平均分子量は、サイズ浸透クロマトグラフィー(SEC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。
【0037】
前記(A)成分の25℃での粘度は、特に制限は無いが、作業性などの面から、例えば5Pa・s以上、好ましくは50Pa・s以上、より好ましくは100Pa・s以上であり、例えば、3000Pa・s以下、好ましくは2500Pa・s以下、より好ましくは2000Pa・s以下である。特に好ましい粘度は1550Pa・s以下である。なお、特に断りがない限り、粘度の測定は、コーンプレート型粘度計を用い、25℃での粘度を測定した値である。
【0038】
(A)成分は、単独で用いてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0039】
前記(A)成分の製造方法としては、特に限定されないが、公知の手法を用いることができる。例えば、Polymer Bulletin、第6巻、135~141頁(1981)、T.P.Liao及びJ.P.KennedyおよびPolymer Bulletin、第20巻、253~260頁(1988)、Puskas et al.で開示された末端水酸基ポリイソブチレンと塩化アクリロイルまたは塩化メタクリロイルとを反応させて得る方法などが挙げられる。また、他の(A)成分の製造方法としては、末端水酸基ポリイソブチレンと(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を有する化合物とを反応させて得る方法や末端水酸基ポリイソブチレンとイソシアネート基を有する化合物と(メタ)アクリロイル基と水酸基を有する化合物とを反応させて得る方法や末端水酸基ポリイソブチレンと(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸低級エステルとを脱水エステル化法またはエステル交換法を用いて反応させて得る方法などが挙げられる。
【0040】
また、前記の一般式(1)で表されるポリイソブチレン骨格を有するオリゴマーの製造方法としては、特に限定されないが、好ましくは、特開2013-216782号公報で開示されたハロゲン末端ポリイソブチレンと一般式(2)で表されるような(メタ)アクリロイル基およびフェノキシ基を有する化合物とを反応させる手法が挙げられる。また、前記ハロゲン末端ポリイソブチレンは、公知の手法により得られるが、例えばカチオン重合により得られ、より好ましくはリビングカチオン重合により得られる。
【0041】
【0042】
上記一般式(2)中、R2、R3、R4、及びR5は、上記一般式(1)で定義したとおりであってもよい。具体的には、R4は炭素数2~6の酸素原子を含んでもよい2価の炭化水素基を表す。R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基を表す。R5は水素原子、メチル基、エチル基を表す。なお、上記一般式(2)中のR2、R3、R4、及びR5は、上記一般式(1)と同様の定義であることが好ましいため、ここでは説明を省略する。上記一般式(2)で示される化合物としては、例えばフェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、好ましくはフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシペンチル(メタ)アクリレート等である。
【0043】
<(B)成分>
本発明の(B)成分は、1個の(メタ)アクリロイルオキシ基(CH2=CH-C(=O)-O-またはCH2=C(CH3)-C(=O)-O-)および4員環以上の飽和ヘテロ環を有する単官能性モノマーである。本発明の(B)成分は、本発明のその他成分との組み合わせにより、低粘度でありながら、圧縮永久歪みが優れた硬化物が得られる硬化性樹脂組成物を提供するものである。前記ヘテロ環を構成するヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などがあげられる。(B)成分は、1つのヘテロ原子を1個または2個以上を有してもよい。また、(B)成分は、2種以上の異なるヘテロ原子を1個または2個以上を有してもよい。より一層、低粘度でありながら圧縮永久歪みが優れた硬化物が得られる硬化性樹脂組成物が得られることから、中でも酸素原子を含むことが好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、(B)成分のヘテロ環を構成するヘテロ原子が酸素原子である。
【0044】
具体的には、4員環以上の飽和ヘテロ環としては、以下に制限されないが、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、オキセパン環、ジオキソラン環、ジオキサン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環などが挙げられる。これらのうち、低粘度でありながら圧縮永久歪みが優れた硬化物が得られる硬化性樹脂組成物が得られることから、4員環以上の飽和ヘテロ環は、ジオキソラン環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環が好ましく、テトラヒドロフラン環がより好ましい。
【0045】
より具体的には、前記(B)成分としては、特に限定されないが、例えば、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどがあげられ、中でも(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが好ましく、特に好ましくは、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートである。またこれらは単独で用いてもよく、2種以上が併用されてもよい。すなわち、本発明の好ましい形態では、(B)成分は、(2ーメチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレートおよびカプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートからなる群から少なくとも1種である。本発明のより好ましい形態では、(B)成分は、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート及びカプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートからなる群から少なくとも1種である。本発明の特に好ましい形態では、(B)成分は、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート及びテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートからなる群から少なくとも1種である。
【0046】
前記(B)成分の市販品としては、特に制限されないが、ビスコート#150、ビスコート#200、THF-A、MEDOL-10、OXE-10、OXE-30(大阪有機化学工業株式会社製)、KAYARAD TC-110S(日本化薬株式会社製)、FA-711MM、FA-712HM(日立化成株式会社製)などがあげられる。
【0047】
前記(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して5~500質量部が好ましく、より好ましくは、6~300質量部であり、さらに好ましくは7~100質量部であり、特に好ましくは10質量部を超えて50質量部未満である。すなわち、本発明の好ましい形態では、(A)成分100質量部に対して、(B)成分を5~500質量部を含む。上記の範囲内であることで、より一層に、低粘度でありながら、圧縮永久歪みが優れた硬化物が得られる。
【0048】
<(C)成分>
本発明で使用することができる(C)成分は、ラジカル開始剤である。このような(C)としては、光ラジカル開始剤、有機過酸化物(熱ラジカル開始剤)等が挙げられる。本発明のラジカル硬化性樹脂組成物の硬化形態は、本発明の(C)成分の選択により、光硬化、加熱硬化又はレドックス硬化を選択することが可能である。例えば、ラジカル硬化性樹脂組成物に関して「光硬化性」を付与したい場合は、光ラジカル開始剤を選択し、「加熱硬化又はレドックス反応による硬化」を付与したい場合は、有機過酸化物を選択すればよい。
【0049】
前記(C)成分の配合量は、特に限定されないが、前記(A)成分100質量部に対して、圧縮永久歪みが優れた硬化物が得られるという観点から好ましくは0.1~30質量部であり、更に好ましくは0.3~15質量部であり、特に好ましくは、0.5~10質量部である。
【0050】
前記(C)成分の一つである光ラジカル開始剤は、活性エネルギー線を照射することにより、ラジカルが発生する化合物であれば限定されるものではない。ここで活性エネルギー線とは、α線やβ線等の放射線、γ線やX線等の電磁波、電子線(EB)、波長が100~400nm程度の紫外線、波長が400~800nm程度の可視光線等の広義の光全てを含むものであり、好ましくは紫外線である。(C)成分としては、例えば、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、チタノセン系光ラジカル重合開始剤等が挙げられ、この中でも、活性エネルギー線を照射することにより圧縮永久歪みに優れる硬化物が得られるという観点からアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤が好ましい。またこれらは単独で用いてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
前記アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、例えばジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等が挙げられるが、この限りではない。前記アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤の市販品としては、IRGACURE184、IRGACUR1173、IRGACURE2959、IRGACURE127(BASF社製)、ESACUREKIP-150(Lamberti s.p.a.社製)が挙げられる。
【0052】
前記アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-フォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等が挙げられるが、この限りではない。前記アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤の市販品としては、IRGACURE TPO、IRGACURE819、IRGACURE819DW(BASF社製)が挙げられる。
【0053】
前記(C)成分の一つである有機過酸化物は、加熱又はレドックス反応によりラジカル種が発生する化合物であり得る。ここで、加熱は、例えば50℃以上の温度、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上であることが適当であり、加熱による場合は特に熱ラジカル重合開始剤とも言う。レドックス反応とは、酸化還元反応ともいい、有機過酸化物から放出されるラジカル種によって酸化還元反応が起こる現象である。レドックス反応を用いると、室温でラジカル種を発生させることができるので好ましい。有機過酸化物としては特に限定されるものではないが、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1-ビス(t-ブチルパーオシキ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオシキ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジt-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド類;アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジn-プロピルパーオキシジカーボネート、ビス-(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、ジ2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジt-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート等のパーオキシエステル類;及びアセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアリルカーボネート等が挙げられる。これらの有機過酸化物は単独で使用されてもよく、又は複数併用されてもよい。これらのうち、硬化性の観点から、クメンハイドロパーオキサイドが好ましく使用される。
【0054】
前記(C)成分として有機過酸化物を用いた場合、レドックス反応を促進させる目的で硬化促進剤を配合させることができる。そのような硬化促進剤としては、特に限定されないが、好ましくは、サッカリン(o-ベンゾイックスルフィミド)、ヒドラジン化合物、アミン化合物、メルカプタン化合物、遷移金属含有化合物等が使用される。
【0055】
前記ヒドラジン化合物としては、例えば、1-アセチル-2-フェニルヒドラジン、1-アセチル-2(p-トリル)ヒドラジン、1-ベンゾイル-2-フェニルヒドラジン、1-(1’,1’,1’-トリフルオロ)アセチル-2-フェニルヒドラジン、1,5-ジフェニル-カルボヒドラジン、1-フォーミル-2-フェニルヒドラジン、1-アセチル-2-(p-ブロモフェニル)ヒドラジン、1-アセチル-2-(p-ニトロフェニル)ヒドラジン、1-アセチル-2-(2’-フェニルエチルヒドラジン)、エチルカルバゼート、p-ニトロフェニルヒドラジン、p-トリスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
【0056】
前記アミン化合物としては、例えば、2-エチルヘキシルアミン、1,2,3,4-テトラヒドロキノン、1,2,3,4-テトラヒドロキナルジン等の複素環第二級アミン;キノリン、メチルキノリン、キナルジン、キノキサリンフェナジン等の複素環第三級アミン;N,N-ジメチル-パラ-トルイジン、N,N-ジメチル-アニシジン、N,N-ジメチルアニリン等の芳香族第三級アミン;1,2,4-トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ベンゾキサゾール、1,2,3-ベンゾチアジアゾール、3-メルカプトベンゾトリゾール等のアゾール系化合物等が挙げられる。
【0057】
前記メルカプタン化合物としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート等が挙げられる。
【0058】
前記遷移金属含有化合物としては、好ましくは金属キレート錯体塩が使用される。例えば、ペンタジオン鉄、ペンタジオンコバルト、ペンタジオン銅、プロピレンジアミン銅、エチレンジアミン銅、鉄ナフテート、ニッケルナフテート、コバルトナフテート、銅ナフテート、銅オクテート、鉄ヘキソエート、鉄プロピオネート、アセチルアセトンバナジウム等が挙げられる。
【0059】
前記の硬化促進剤は、単独で使用されてもよく、又は複数併用されてもよい。これらのうち、サッカリン、ヒドラジン系化合物、アミン系化合物及び遷移金属含有化合物の混合物が、硬化促進効果が良好であるためにより好ましい。
【0060】
<任意成分>
本発明の硬化性樹脂組成物に対し、本発明の目的を損なわない範囲で、(メタ)アクリレートモノマー(本発明の(B)成分を含まない)、(メタ)アクリロイル基を有するポリマーまたはオリゴマー(本発明の(A)成分を含まない)、スチレン系共重合体等の各種エラストマー、充填材、保存安定剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、顔料、難燃剤、及び界面活性剤等の添加剤を使用することができる。
【0061】
本発明に更に(メタ)アクリレートモノマー(本発明の(B)成分を含まない)を配合してもよい。(メタ)アクリレートモノマーとは本発明の(C)成分が発生するラジカル種により重合する化合物であり、反応性希釈剤として用いられる。但し、本発明の(B)成分を除くものとする。さらに(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば単官能性、二官能性、三官能性及び多官能性のモノマー等を使用することができ、これらの中でも、本発明の(A)成分と相溶し、硬化性が優れることから、炭素数5~30のアルキル基または脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。
【0062】
前記の炭素数5~30のアルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレート、イソオクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデカン(メタ)アクリレート、3-へプチルデシル-1-(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、前記の炭素数5~30の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートモノマー(本発明の(B)成分を除くものとする。)としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。(メタ)アクリレートモノマーは単独で若しくは二種以上の混合物として用いることができる。
【0063】
前記(メタ)アクリレートモノマーの配合量は、特に制限されず、通常の量が使用できる。(メタ)アクリレートモノマーの配合量は、(A)成分100質量部に対して3~300質量部が好ましく、より好ましくは、5~200質量部であり、特に好ましくは10~100質量部である。
【0064】
前記(メタ)アクリロイル基を有するポリマーまたはオリゴマー(本発明の(A)成分を含まない)としては、特に限定されないが、例えば、ポリブタジエン骨格のウレタン(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエン骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリカーボネート骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ひまし油骨格のウレタン(メタ)アクリレート、イソプレン系(メタ)アクリレート、水添イソプレン系(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル基含有アクリルポリマーなどがあげられ、中でも、本発明の(A)成分や(B)成分と相溶性に優れることから、ポリブタジエン骨格のウレタン(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエン骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ひまし油骨格のウレタン(メタ)アクリレート、イソプレン系(メタ)アクリレート、水添イソプレン系(メタ)アクリレートが好ましい。なお、本発明において、オリゴマーとは、主鎖にモノマーの繰り返し単位を伴う構造で、2~100の繰り返し単位からなる化合物を指す。またこれらは単独で用いてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
前記(メタ)アクリロイル基を有するポリマーまたはオリゴマーの配合量は、特に制限されず、通常の量が使用できる。(メタ)アクリロイル基を有するポリマーまたはオリゴマーの配合量は、(A)成分100質量部に対して3~300質量部程度が好ましい。
【0066】
本発明に対して、硬化物のゴム物性を調整する目的で、スチレン系共重合体を配合してもよい。スチレン系共重合体としては特に限定されないが、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体(SIP)、スチレン-ブタジエン共重合体(SB)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体(ABS)などが挙げられる。
【0067】
本発明に対し、硬化物の弾性率、流動性などの改良を目的として、保存安定性を阻害しない程度の充填材を添加してもよい。具体的には有機質粉体、無機質粉体、金属質粉体等が挙げられる。無機質粉体の充填材としては、ガラス、フュームドシリカ、アルミナ、マイカ、セラミックス、シリコーンゴム粉体、炭酸カルシウム、窒化アルミ、カーボン粉、カオリンクレー、乾燥粘土鉱物、乾燥珪藻土等が挙げられる。無機質粉体の配合量は、特に制限されず、通常の量が使用できる。無機質粉体の配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.1~100質量部程度が好ましい。
【0068】
フュームドシリカは、硬化性樹脂組成物の粘度調整又は硬化物の機械的強度を向上させる目的で配合できる。好ましくは、オルガノクロロシラン類、ポリオルガノシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどで疎水化処理したものなどが用いることができる。フュームドシリカの具体例としては、例えば、日本アエロジル製の商品名アエロジルR974、R972、R972V、R972CF、R805、R812、R812S、R816、R8200、RY200、RX200、RY200S、R202等の市販品が挙げられる。
【0069】
有機質粉体の充填材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、架橋アクリル、架橋ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネートが挙げられる。有機質粉体の配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.1~100質量部程度が好ましい。
【0070】
本発明に対し保存安定剤を添加してもよい。保存安定剤としては、ベンゾキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のラジカル吸収剤、エチレンジアミン4酢酸又はその2-ナトリウム塩、シユウ酸、アセチルアセトン、o-アミノフエノール等の金属キレート化剤等を添加することもできる。
【0071】
前記保存安定剤の配合量は、特に制限されず、通常の量が使用できる。保存安定剤の配合量、(A)成分100質量部に対して0.001~15質量部程度が好ましい。
【0072】
本発明に対し酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、例えば、β-ナフトキノン、2-メトキシ-1,4-ナフトキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノ-tert-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン等のキノン系化合物;フェノチアジン、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、カテコール、tert-ブチルカテコール、2-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-〔1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル〕-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、3,9-ビス〔2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニロキシ〕-1,1-ジメチルエチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、チオジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド〕、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ,C7-C9側鎖アルキルエステル、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕フォスフォネート、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a”-(メシチレン-2,4,6-トリル)トリ-p-クレゾール、カルシウムジエチルビス〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕フォスフォネート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ヘキサメチレンビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス〔(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル〕-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、N-フェニルベンゼンアミンと2,4,6-トリメチルペンテンとの反応生成物、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、ピクリン酸、クエン酸等のフェノール類(フェノール系化合物);トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス〔2-〔〔2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサフォスフェフィン-6-イル〕オキシ〕エチル〕アミン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリートールジフォスファイト、ビス〔2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル〕エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)〔1,1-ビスフェニル〕-4,4‘-ジイルビスホスフォナイト、6-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンズ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサフォスフェフィン等のリン系化合物;ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、2-メルカプトベンズイミダゾール等のイオウ系化合物;フェノチアジン等のアミン系化合物;ラクトン系化合物;ビタミンE系化合物等が挙げられる。中でもフェノール系化合物が好適である。
【0073】
前記酸化防止剤の配合量は、特に制限されず、通常の量が使用できる。酸化防止剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1~15質量部程度が好ましい。
【0074】
本発明に対し光安定剤を添加してもよい。光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-〔2-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕-4-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル-メタアクリレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル,1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、N,N’,N”,N”’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ〔〔6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル〕〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕〕、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物、2,2,4,4-テトラメチル-20-(β-ラウリルオキシカルボニル)エチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ〔5・1・11・2〕ヘネイコサン-21-オン、β-アラニン,N,-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ドデシルエステル/テトラデシルエステル、N-アセチル-3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)ピロリジン-2,5-ジオン、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ〔5,1,11,2〕ヘネイコサン-21-オン、2,2,4,4-テトラメチル-21-オキサ-3,20-ジアザジシクロ-〔5,1,11,2〕-ヘネイコサン-20-プロパン酸ドデシルエステル/テトラデシルエステル、プロパンジオイックアシッド,〔(4-メトキシフェニル)-メチレン〕-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)エステル、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールの高級脂肪酸エステル、1,3-ベンゼンジカルボキシアミド,N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)等のヒンダートアミン系化合物;オクタベンゾン等のベンゾフェノン系化合物;2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド-メチル)-5-メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールの反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系化合物;2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系化合物;2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-〔(ヘキシル)オキシ〕フェノール等のトリアジン系化合物等が挙げられる。特に好ましくは、ヒンダートアミン系化合物である。
【0075】
前記光安定剤の配合量は、特に制限されず、通常の量が使用できる。光安定剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.05~15質量部程度が好ましい。
【0076】
本発明に対し密着付与剤を添加してもよい。密着付与剤としては3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-ユレイドプロピルトリエトキシシラン、ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸エステル、メタクリロキシオキシエチルアシッドフォスフェート、メタクリロキシオキシエチルアシッドフォスフェートモノエチルアミンハーフソルト、2-ヒドロキシエチルメタクリル酸フォスフェート等があげられる。これらの中では、ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸エステル、メタクリロキシオキシエチルアシッドフォスフェート、メタクリロキシオキシエチルアシッドフォスフェートモノエチルアミンハーフソルト、2-ヒドロキシエチルメタクリル酸フォスフェート等が好ましい。前記密着性付与剤の配合量は、特に制限されず、通常の量が使用できる。密着性付与剤の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.05~30質量部が好ましく、更に好ましくは0.2~10質量部である。
【0077】
本発明の硬化性樹脂組成物は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、(A)成分~(C)成分および必要であれば上記任意成分の所定量を配合して、ミキサー(例えば、プラネタリーミキサー)等の混合手段を使用して、好ましくは10~70℃の温度で好ましくは0.1~5時間混合することにより製造することができる。また、遮光環境下で製造することが好ましい。
【0078】
本発明の硬化性樹脂組成物は、低粘度である。このため、本発明の硬化性樹脂組成物であれば、容易に塗布できる(塗布作業性に優れる)。具体的には、硬化性樹脂組成物の粘度は、塗布作業性の観点から、750Pa・s以下であり、好ましくは600Pa・s未満であり、特に好ましくは520Pa・s以下である。なお、硬化性樹脂組成物の粘度の下限は、粘度が低いほど好ましいため、特に制限されない。例えば、硬化性樹脂組成物の粘度は、0.1Pa・s以上であればよく、好ましくは3Pa・s以上である。なお、本明細書において、硬化性樹脂組成物の粘度は、下記実施例に記載される方法によって測定される値を採用する。
【0079】
また、本発明の硬化性樹脂組成物を用いることにより、圧縮永久歪みの低い硬化物が得られる。具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物の圧縮永久歪みは、5%以下(下限:0%)である。なお、本明細書において、硬化物の圧縮永久歪みは、下記実施例に記載される方法によって測定される値を採用する。
【0080】
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物を得る方法は、特に制限されず、所望の用途によって適切に選択できる。一例としては、硬化性樹脂組成物を被着体に塗布して塗膜を形成した(塗布方法/工程)後、上記塗膜を硬化する(硬化方法/工程)方法がある。以下、上記方法を説明するが、本発明は下記方法に限定されない。
【0081】
<塗布方法/工程>
本発明の硬化性樹脂組成物を被着体への塗布する方法としては、公知のシール剤や接着剤の方法が用いられる。例えば、自動塗布機を用いたディスペンシング、スプレー、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、ディッピング、スピンコートなどの方法を用いることができる。なお、本発明の硬化性樹脂組成物は、塗布性の観点から25℃で液状であることが好ましい。
【0082】
<硬化方法>
本発明の硬化性樹脂組成物を、活性エネルギー線(例えば、紫外線、可視光等の光)を照射することにより硬化させるに際しての光源は特に限定されず、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LED、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。光照射の照射量(積算光量)は硬化物の特性の観点から、5kJ/m2以上であることが好ましく、より好ましくは15kJ/m2以上である。また、光照射の照射量(積算光量)は、圧縮永久歪みの優れる硬化物が得られるとのの観点から、100kJ/m2以下であることが好ましく、より好ましくは150kJ/m2以下である。また、本発明の硬化性樹脂組成物は加熱で硬化させることができる。この際の加熱方法は、特に限定されないが、恒温槽、遠赤外線ヒータなどが挙げられる。硬化条件は、例えば、40~300℃、好ましくは60~200℃、特に好ましくは80~150℃の温度で、例えば、10秒~3時間、好ましくは20秒~60分、特に好ましくは30秒~30分の条件で加熱することが適当である。
【0083】
<硬化物>
本発明の硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物に対し、上記硬化方法によって紫外線等の活性エネルギー線を照射または加熱することにより硬化させてなる。本発明の硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物が硬化したものであれば、その硬化方法の如何は問わない。すなわち、本発明は、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物をも提供する。
【0084】
<用途及びシール剤>
本発明の硬化性樹脂組成物またはその硬化物が好適に用いられる用途としては、硬化性シール剤である。本発明においてシール剤とは、接着剤、コーティング剤、注型剤、ポッティング剤等の用途も含まれるものである。なお、このような用途で使用するにあたり、本発明の硬化性樹脂組成物は25℃で液状であることが好ましい。
【0085】
シール剤の具体的な用途としては、本発明の硬化性樹脂組成物またはその硬化物は、低気体透過性、低透湿性、耐熱性、耐酸性、可とう性に優れるゴム弾性体であることから、燃料電池、太陽電池、色素増感型太陽電池、リチウムイオン電池、電解コンデンサ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー、LED、ハードディスク装置、フォトダイオード、光通信・回路、電線・ケーブル・光ファイバー、光アイソレータ、ICカード等の積層体、センサー、基板、医薬・医療用器具・機器等が挙げられる。これらの用途の中でも、本発明の硬化性樹脂組成物は、低粘度でありながら、圧縮永久歪みが優れることから燃料電池用途、特に固体高分子形燃料電池用途が特に好ましい。燃料電池(特に固体高分子形燃料電池)に用いるシール剤には、運転温度の80℃より高い温度での圧縮永久歪みが5%以下であることが求められるが、本発明は特性を満たすことから好適である。すなわち、本発明は、本発明の硬化性樹脂組成物を含む、燃料電池用硬化性シール剤をも提供する。また、上記態様の好ましい形態では、燃料電池用硬化性シール剤が、固体高分子形燃料電池用硬化性シール剤である。また、本発明は、本発明の燃料電池用硬化性シール剤を硬化させて得られる硬化物をも提供する。
【0086】
本発明に係る燃料電池用硬化性シール剤は、いずれの部位に使用されてもよいが、燃料電池における部材であるセパレーター、フレーム、電解質膜、燃料極、空気極、電解質膜電極接合体等の部材の周辺に使用されることが好ましい。より好ましくは、燃料電池における隣り合うセパレーター間のシールに、および燃料電池のフレームと電解質膜または電解質膜電極接合体(MEA)との間のシールに、使用されることがより好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、燃料電池用硬化性シール剤は、燃料電池における部材であるセパレーター、フレーム、電解質膜、燃料極、空気極、電解質膜電極接合体からなる群のいずれかの部材周辺用燃料電池用硬化性シール剤である(燃料電池における部材であるセパレーター、フレーム、電解質膜、燃料極、空気極、および電解質膜電極接合体からなる群から選択されるいずれかの部材の周辺をシールするために使用される)。本発明のより好ましい形態では、燃料電池用硬化性シール剤が、燃料電池における隣り合うセパレーター同士との間のシール剤、燃料電池のフレームと電解質膜または電解質膜電極接合体との間のシール剤である(燃料電池における隣り合うセパレーター間をシールする、または燃料電池のフレームと電解質膜もしくは電解質膜電極接合体との間をシールするために使用される)。
【0087】
また、本発明は、燃料電池における隣り合うセパレーター間のシール、及び燃料電池のフレームと電解質膜または電解質膜電極接合体との間のシールからなる群のいずれかを含む燃料電池であって、前記いずれかのシールが、本発明の硬化物である、燃料電池(燃料電池における隣り合うセパレーター間、または燃料電池のフレームと電解質膜もしくは電解質膜電極接合体との間が本発明に係る硬化物でシールされる)をも提供する。また、上記態様において、燃料電池が、固体高分子形燃料電池であることが好ましい。
【0088】
<燃料電池>
燃料電池とは、水素と酸素を化学的に反応させることにより電気を発生させる発電装置である。また、燃料電池には、固体高分子形燃料電池、りん酸形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、固体酸化物形燃料電池の4つの方式がある。中でも固体高分子形燃料電池は、運転温度が比較的低温(80℃前後)でありながら高発電効率であるので、自動車用動力源、家庭用発電装置、携帯電話などの電子機器用小型電源、非常電源等の用途に用いられる。
【0089】
図1に示すように、代表的な固体高分子形燃料電池のセル1とは、高分子電解質膜4が空気極3a、燃料極3bとの間に挟持された構造である電解質膜電極接合体5(MEA)と、前記MEAを支持するフレーム6と、ガスの流路が形成されているセパレーター2とを備えた構造である。また、固体高分子形燃料電池の起動時には、燃料ガス(水素ガス)および酸化ガス(酸素ガス)が、酸化ガス流路8aおよび燃料ガス流路8bを通じて供給される。また、発電の際の発熱を緩和する目的で冷却水が流路9を流れる。なお、このセルを数百枚重ねてパッケージにしたものを、
図2に示すようにセルスタック10と呼んでいる。固体高分子形燃料電池11は、このセルスタック10を有する。
【0090】
燃料極に燃料ガス(水素ガス)、酸素極(空気極)に酸化ガス(酸素ガス)を供給すると、各電極では次のような反応が起こり、全体としては水が生成される反応(H2+1/2O2→H2O)が起こる。詳細に説明すると、下記のように燃料極で生成されるプロトン(H+)は固体高分子膜(高分子電解質膜)中を拡散して酸素極側に移動し、酸素と反応して生成された水(H2O)は酸素極側から排出される。
【0091】
【0092】
固体高分子形燃料電池を起動するには、アノード電極に水素を含む燃料ガスを、カソード電極には酸素を含む酸化ガスを別々に隔離して供給する必要がある。隔離が不十分で一方のガスが他方のガスへと混合してしまうと、発電効率の低下を起こしてしまう恐れがあるためである。このような背景から、燃料ガスや酸素ガスなどの漏れを防止する目的で、シール剤が多用される。具体的には、隣り合うセパレーター同士との間、セパレーターとフレームとの間、フレームと電解質膜または電解質膜電極接合体(MEA)との間等にシール剤が使用されている。すなわち、本発明の好ましい形態では、本発明に係る燃料電池用硬化性シール剤は、燃料電池における隣り合うセパレーター同士との間のシール剤、燃料電池のフレームと電解質膜または電解質膜電極接合体との間のシール剤である。
【0093】
前記高分子電解質膜とは、イオン伝導性を有する陽イオン交換膜があげられ、好ましくは化学的に安定であり、高温での動作に強いことから、スルホン酸基を持つフッ素系ポリマーなどが挙げられる。市販品としては、デュポン社のナフィオン(登録商標)、AGC株式会社(旧旭硝子株式会社)製のフレミオン(登録商標)、旭化成株式会社製のアシプレックス(登録商標)などが挙げられる。通常、高分子電解質膜は難接着な材質であるが、本発明の硬化性樹脂組成物を用いることで、接着することができる。
【0094】
【0095】
前記燃料極は、水素極、アノードと呼ばれるものであり、公知のものが使用される。例えば、カーボンに白金、ニッケル、ルテニウムなどの触媒を担体させたものが用いられている。また、前記空気極は、酸素極、カソードと呼ばれるものであり、公知のものが使用される。例えば、カーボンに白金、合金などの触媒を担体させたものが用いられている。各電極の表面には、ガスを拡散や電解質の保湿させる働きをするガス拡散層が備えられていてもよい。ガス拡散層は、公知のものが使用されるが、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、炭素繊維などが挙げられる。
【0096】
上記セパレーター2は、
図1に示すように凸凹の細かい流路があり、そこを燃料ガスや酸化ガスが通り、電極に供給される。また、セパレーターは、アルミニウム、ステンレス、チタン、グラファイト、カーボン等により構成されている。
【0097】
前記フレームとは、薄膜な電解質膜またはMEAが破けないように支持、補強するものである。前記フレームの材質は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。また、本発明の硬化性樹脂組成物またはその硬化物を用いて部材を貼り合わせるためには、部材が光透過することものが好ましい。
【0098】
本発明の燃料電池とは、本発明の硬化性樹脂組成物またはその硬化物によりシールされたことを特徴とする燃料電池である。燃料電池におけるシールが必要な部材としては、セパレーター、フレーム、電解質膜、燃料極、空気極、MEA等が挙げられる。より具体的なシール箇所としては、隣り合うセパレーター同士との間、セパレーターとフレームとの間、フレームと電解質膜またはMEAとの間等が挙げられる。なお、「セパレーターとフレームとの間」または「高分子電解質膜またはMEAとフレームとの間」の主なシールの目的は、ガスの混合や漏れを防ぐことであり、隣り合うセパレーター同士との間のシールの目的はガスの漏れを防ぐことと冷却水流路から外部に冷却水が漏洩することを防ぐことである。なお、電解質膜から発生する酸により強酸雰囲気になるので、シール剤には耐酸性が求められる。
【0099】
<シール方法>
本発明の硬化性樹脂組成物を用いたシール手法としては、特に限定されないが、代表的には、FIPG(フォームインプレイスガスケット)、CIPG(キュアーインプレイスガスケット)、MIPG(モールドインプレイスガスケット)、液体射出成形などが挙げられる。
【0100】
本発明の硬化性樹脂組成物は圧縮永久歪みが優れた硬化物が得られるという特徴を有することから圧縮シール性能が要求されるCIPG、MIPGに好適である。
【0101】
FIPGとは、被シール部品のフランジに本発明の硬化性樹脂組成物を自動塗布装置などにより塗布し、もう一方のフランジと貼り合わせた状態で、紫外線等の活性エネルギー線を光透過可能なフランジ側から照射して、硬化性樹脂組成物を硬化させて、接着シールする手法である。より具体的には、少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方が活性エネルギー線の光を透過可能であり、前記フランジの少なくとも一方の表面に、上述した硬化性樹脂組成物を塗布する工程、前記硬化性樹脂組成物を塗布した一方のフランジと他方のフランジとを前記硬化性樹脂組成物を介して貼り合わせる工程、及び、活性エネルギー線を前記光透過可能なフランジを通して照射して前記硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とするシール方法である。
【0102】
CIPGとは、被シール部品のフランジに本発明の硬化性樹脂組成物を自動塗布装置などによりビード塗布し、紫外線等の活性エネルギー線を照射して、硬化性樹脂組成物を硬化させてガスケットを形成する。そして、もう一方のフランジと貼り合わせて、圧縮シールする手法である。より具体的には、少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方のフランジに、上述した硬化性樹脂組成物を塗布する工程、前記塗布した硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して前記硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記硬化性樹脂組成物の硬化物からなるガスケットを形成する工程、他方のフランジを前記ガスケット上に配置して、硬化性樹脂組成物を塗布した一方のフランジと前記他方のフランジとを前記ガスケットを介して圧着し、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とするシール方法である。
【0103】
MIPGとは、予め被シール部品のフランジに金型を圧接し、光透過可能な材質の金型とフランジ間に生じたキャビティーに硬化性樹脂組成物を注入し、紫外線等の活性エネルギー線を照射して、光硬化させガスケットを形成する。そして、もう一方のフランジと貼り合わせて、圧縮シールする手法である。なお、金型は、光透過可能な材質であることが好ましく、具体的には、ガラス、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、オレフィン等が挙げられる。また、ガスケット形成後、金型から取り出しやすくするために金型には、予めフッ素系、シリコーン系などの離型剤を塗布しておくことが好ましい。より具体的には、少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方のフランジ上にガスケット形成用金型を配置する工程、前記ガスケット形成用金型と該金型を配置したフランジとの間の空隙の少なくとも一部に上述した硬化性樹脂組成物を注入する工程、前記硬化性樹脂組成物に前記活性エネルギー線を照射して前記硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記硬化性樹脂組成物の硬化物からなるガスケットを形成する工程、前記金型を前記一方のフランジから取り外す工程、他方のフランジを前記ガスケット上に配置して、前記一方のフランジと前記他方のフランジとを前記ガスケットを介して圧着し、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とするシール方法である。
【0104】
液体射出成形とは、本発明の硬化性樹脂組成物を特定圧力により光透過可能な材質の金型に流し込み、紫外線等の活性エネルギー線を照射して、光硬化させガスケットを形成する。そして、もう一方のフランジと貼り合わせて、圧縮シールする手法である。なお、金型は、光透過可能な材質であることが好ましく、具体的には、ガラス、PMMA、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、オレフィン等が挙げられる。また、ガスケット形成後、金型から取り出しやすくするために金型には、予めフッ素系、シリコーン系などの離型剤を塗布しておくことが好ましい。
【0105】
なお、上記FIPG、CIPG、MIPGおよび液体射出成形による具体的な操作、条件などは、本発明の硬化性樹脂組成物または硬化物を使用する以外は、従来公知の操作、条件などと同様にしてまたは適宜修飾して使用できる。
【実施例】
【0106】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細の説明をするが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0107】
合成例1
<a1の製造>
アクリロイルオキシエトキシフェニル基を有するポリイソブチレン(a1)の製造
5Lのセパラブルフラスコの容器内を窒素置換した後、n-ヘキサン200mL及び塩化ブチル2000mLを加え、窒素雰囲気下で攪拌しながら-70℃まで冷却した。次いで、イソブチレン840mL(9mol)、p-ジクミルクロライド12g(0.05mol)及び2-メチルピリジン1.1g(0.012mol)を加えた。反応混合物が-70℃まで冷却された後で、四塩化チタン5.0mL(0.05mol)を加えて重合を開始した。重合開始3時間後に、フェノキシエチルアクリレート(ライトアクリレートPO-A、共栄社化学株式会社製)40gと四塩化チタン110mlを添加した。その後、-70℃で4時間攪拌を続けた後、メタノール1000mlを添加して反応を停止させた。
【0108】
反応溶液から上澄み液を分取し、溶剤等を留去した後、生成物をn-ヘキサン3000mlに溶解させ、3000mlの純水で3回水洗を行い、メタノールから再沈殿した後、溶媒を減圧下に留去して、得られた重合体を80℃で24時間真空乾燥することにより、アクリロイルオキシエトキシフェニル基を有するポリイソブチレン(a1)を得た。
【0109】
前記a1は、-[CH2C(CH3)2]-単位を含み、アクリロイル基を2個含有する。より具体的には、a1は、一般式(1)において、R1はフェニレン基を示し、PIBは-[CH2C(CH3)2]-単位を含むポリイソブチレン骨格を示し、R4は炭素数2の炭化水素基(エチレン基)を示し、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子を示し、R5は水素原子であり、nは2であるオリゴマーである。なお、a1成分の数平均分子量(クロマトグラフィー法、ポリスチレン換算)は11100であり、a1成分の粘度(25℃)は1550Pa・sであった。また、a1成分は、25℃で液状であった。
【0110】
<硬化性樹脂組成物の調製>
・実施例1
本発明の(A)成分として上記合成例1で得られたアクリロイルオキシエトキシフェニル基を有するポリイソブチレン(a1)100質量部と、
(B)成分としてテトラヒドロフルフリルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製ビスコート#150)20質量部と、
(C)成分として2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン 1質量部と、
をプラネタリーミキサーに添加し、遮光下で常温(25℃)にてプラネタリーミキサーで60分混合し、硬化性樹脂組成物である実施例1を得た。本例で得られた硬化性樹脂組成物は、25℃で液状であった。
【0111】
・実施例2
実施例1において、テトラヒドロフルフリルアクリレートの添加量を30質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、硬化性樹脂組成物(実施例2)を得た。本例で得られた硬化性樹脂組成物は、25℃で液状であった。
【0112】
・比較例1
実施例1において、テトラヒドロフルフリルアクリレートの代わりに、ラウリルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社LA)を用いた以外は、実施例1と同様にして調製し、比較例1を得た。
【0113】
・比較例2
実施例1において、テトラヒドロフルフリルアクリレートの代わりに、ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成株式会社FA-513M)を用いた以外は、実施例1と同様にして調製し、比較例2を得た。
【0114】
・比較例3
実施例1において、テトラヒドロフルフリルアクリレートの代わりに、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製A-DCP)を用いた以外は、実施例1と同様にして調製し、比較例3を得た。
【0115】
上記実施例1~2および比較例1~3の硬化性樹脂組成物について、下記方法に従い、粘度および圧縮永久歪みを評価した。結果を下記表1に示す。表1の実施例、比較例において使用した試験方法は下記の通りである。
【0116】
(1)粘度測定方法
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のレオメーター HAAKE MARSIIIにより下記の測定条件に基づき、各硬化性樹脂組成物の粘度(Pa・s)を測定した。本発明は塗布性の観点から粘度は、750Pa・s以下が好ましく、特に好ましくは600Pa・s以下である。
【0117】
(測定条件)
せん断速度 1(1/s)
温度 25℃。
【0118】
(2)圧縮永久歪み試験
各硬化樹脂組成物を自動塗布機にて、70mm×70mmのアルミ板に対して高さ2mm、幅3mmのビートを塗布して、積算光量30kJ/m2の紫外線を照射して硬化させて試験片とした。次に、当該試験片を用い、これをJIS-K-6262(2013)にて規定される治具とスペーサを用いて25%の圧縮率で圧縮を行った状態で90℃のオーブン中に静置した。72時間経過後にオーブンから取り出し、その後、各試験片の厚さを測定し、以下の式により圧縮永久歪みを測定した。結果を下記の基準に基づき評価してその結果を表1示す。本発明において燃料電池シール剤として用いた場合の信頼性に優れるという観点から圧縮永久歪みは、5%以下であることが好ましい。
【0119】
【0120】
<評価基準>
合格:圧縮永久歪みが5%以下
不合格:圧縮永久歪みが5%超
【0121】
【0122】
表1の実施例1、2によれば、本発明は、低粘度でありながら、圧縮永久歪みが優れた硬化物が得られる硬化性樹脂組成物を提供できることがわかる。
【0123】
また、表1の比較例1~3は、本発明の(B)成分ではないラウリルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートを用いた硬化性樹脂組成物であるが、圧縮永久歪みが劣る結果であった。また、比較例3の粘度は1050Pa・sと高粘度であった。
【0124】
さらに、上記実施例1~2および比較例1~3の硬化性樹脂組成物について、(3)透湿度(水蒸気バリア性)、(4)水素ガスバリア性の試験、(5)硬化物の硬さ、(6)伸び率、(7)引っ張り強さの試験を行った。
【0125】
(3)透湿度(水蒸気バリア性)
200mm×200mm×1.0mmの枠に実施例1の硬化性樹脂組成物を流し込んだ。その後、紫外線照射機により積算光量45kJ/m2になるように紫外線を20秒間照射し、厚さ1.0mmのシート状の硬化物を作製した。塩化カルシウム(無水)5gを直径30mmの開口部を有するアルミニウム製カップに入れて、前記硬化物をカップにセットした。「初期の全重量」(g)を測定した後、雰囲気温度40℃で相対湿度95%RHに保たれた恒温恒湿槽に24時間放置し、「放置後の全重量」(g)を測定して、透湿度(g/m2・24h)を計算した。詳細な試験方法はJIS Z 0208に準拠する。実施例1の試験結果は50g/m2・24h未満であり、燃料電池用硬化性シール剤に求められる水蒸気バリア性を満たしていることが確認された。
【0126】
(4)水素ガスバリア性試験
上記(3)透湿度(水蒸気バリア性)と同様にして、実施例1の硬化性樹脂組成物を用いて紫外線照射機により積算光量45kJ/m2になるように紫外線を20秒間照射し、厚さ1.0mmのシート状の硬化物を作製した。次にシート状の硬化物を用いて、JIS K7126-1:2006(プラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度試験方法-第1部:差圧法)に準拠し測定した。尚、試験の種類は圧力センサ法であり、条件は23℃、高圧側の試験ガス(水素ガス)は100kPaにて測定した。実施例1の試験結果は、1×10-15mol・m/m2・s・Pa未満であり、燃料電池用光硬化性シール剤に求められる水素ガスバリア性を有していることが確認された。
【0127】
(5)硬さの測定
上記(3)透湿度(水蒸気バリア性)と同様にして、実施例1~2及び比較例1~3の硬化性樹脂組成物の厚さを1mmに設定し、積算光量45kJ/m2の紫外線を照射して硬化させてシート状の硬化物を作製する。A型デュロメータ(硬度計)の加圧面を試験片(各シート状の硬化物を6枚重ねて、厚さ6mmに設定した状態のもの)に対して平行に保ちながら、10Nの力で押しつけ、加圧面と試料とを密着させる。測定時に最大値を読み取り、最大値を「硬さ」とする。詳細はJIS K 6253(2012)に従う。結果は表2に示す。
【0128】
なお、本発明において、硬化物の圧縮永久歪みが優れるという観点から硬さが30~45の範囲であることが好ましい。
【0129】
(6)硬化物の伸び率の測定方法
上記(3)透湿度(水蒸気バリア性)と同様にして、実施例1~2及び比較例1~3の硬化性樹脂組成物の厚さを1mmに設定し、積算光量45kJ/m2の紫外線を照射して硬化させてシート状の硬化物を作製する。3号ダンベルで打ち抜いてテストピースを作製し、20mm間隔の標線をテストピースに記入する。
【0130】
下記(7)引張強さの測定と同じ要領でチャックに固定して、引張速度500mm/minで試験片の切断に至るまで引っ張る。測定時にテストピースが伸びて標線の間隔の広がるため、テストピースが切断されるまでノギスにより標線の間隔を計測する。初期の標線間隔を基準として、伸びた割合を「伸び率(%)」とする。下記の基準に基づき評価し、結果を表2に示す。なお、本発明において、硬化物の圧縮永久歪みが優れるという観点から硬化物の伸び率が150%以上であることが好ましい。
【0131】
(7)引張強さ(引張強度)の測定
上記(3)透湿度(水蒸気バリア性)と同様にして、実施例1~2及び比較例1~3の硬化性樹脂組成物の厚さを1mmに設定し、積算光量45kJ/m2の紫外線を照射して硬化させてシート状の硬化物を作製する。3号ダンベルで打ち抜いてテストピースを作製する。テストピースの長軸とチャックの中心が一直線になる様に、テストピースの両端をチャックに固定する。引張速度50mm/minでテストピースを引張り、最大荷重を測定する。当該最大荷重時の強度を「引張強さ(MPa)」とする。結果を表2に示す。詳細はJIS K 6251(2010)に従う。なお、本発明において、硬化物の圧縮永久歪みが優れるという観点から硬化物の引張強さは0.8~3.5MPaの範囲であることが好ましい。
【0132】
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、低粘度でありながら、圧縮永久歪みが優れた硬化物が得られる硬化性樹脂組成物なので、各種シール用途に使用することが可能である。特に、燃料電池用硬化性シール剤として有効であることから産業上有用である。
【0134】
本出願は、2018年12月25日に出願された日本特許出願番号2018-240570号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
【符号の説明】
【0135】
1 固体高分子形燃料電池のセル
2 セパレーター
3a 空気極(カソード)
3b 燃料極(アノード)
4 高分子電解質膜
5 電解質膜電極接合体(MEA)
6 フレーム
7 接着剤またはシール剤
8a 酸化ガス流路
8b 燃料ガス流路
9 冷却水流路
10 セルスタック
11 固体高分子形燃料電池