(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】電気回路
(51)【国際特許分類】
H02H 9/02 20060101AFI20240117BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20240117BHJP
H02H 7/12 20060101ALI20240117BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240117BHJP
【FI】
H02H9/02 H
H02P27/06
H02H7/12
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2022157757
(22)【出願日】2022-09-30
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷向 一馬
(72)【発明者】
【氏名】土居 弘宜
(72)【発明者】
【氏名】河野 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】谷口 智勇
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-128357(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098625(WO,A1)
【文献】特開2004-320851(JP,A)
【文献】特開2004-215323(JP,A)
【文献】特開2007-166810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 9/02
H02P 27/06
H02H 7/12
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部(10)と、電源(2)から前記電源部(10)を介して電力が供給される主回路部(50)とを備えた電気回路であって、
前記電源部(10)は、
前記電源(2)からの電流に重畳する雷サージ電流を含む電流の一部を流すバイパス経路(40,40a~40c)を含むとともに、
当該バイパス経路(40,40a~40c)を流れる電流に基づいて、前記電源(2)と前記主回路部(50)との間の等価的なインピーダンスを上昇させるインピーダンス上昇回路(11)を備えたことを特徴とする電気回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電気回路において、
前記インピーダンス上昇回路(11)は、前記バイパス経路(40, 40a~40c)に前記雷サージ電流を含む電流の一部が流れるときに、前記バイパス経路(40, 40a~40c)に送られる電気エネルギーにより、前記インピーダンスを上昇させることを特徴とする電気回路。
【請求項3】
請求項1に記載の電気回路において、
前記インピーダンス上昇回路(11)は、前記バイパス経路(40, 40a~40c)を流れる電流に基づいて、前記電源(2)と前記主回路部(50)との間に、前記雷サージ電流を含む電流が前記主回路部(50)に流れるのを抑制する方向の電圧を発生させることを特徴とする電気回路。
【請求項4】
請求項3に記載の電気回路において、
前記インピーダンス上昇回路(11)は、
前記電源(2)から前記主回路部(50)に電力を供給する経路上に設けられる主巻線(30)と、前記バイパス経路(40)に設けられ、前記主巻線(30)と磁気結合された補助巻線(41)とを有し、前記雷サージ電流を含む電流の一部を前記補助巻線(41)に流すことによって、前記主巻線(30)を通る磁束を変化させて、前記電圧を発生させることを特徴とする電気回路。
【請求項5】
請求項4に記載の電気回路において、
前記バイパス経路(40,40a~40c)には、前記補助巻線(41)と直列に接続されたサージアブソーバ(42)が設けられていることを特徴とする電気回路。
【請求項6】
請求項4に記載の電気回路において、
前記主巻線(30)と前記補助巻線(41)とは、互いに極性が同じ向きであることを特徴とする電気回路。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の電気回路において、
前記電源(2)は交流電源であり、
前記電源部(10)は、
前記電源(2)から出力される交流を整流する整流回路(20)を備え、
前記主回路部(50)は、
前記整流回路(20)により出力された直流をスイッチング動作により交流に変換するインバータ回路(60)と、
前記インバータ回路(60)の入力ノード(60a,60b)間に接続され、前記整流回路(20)の出力電圧の脈動を許容するコンデンサ(70)とを有することを特徴とする電気回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源部と、電源から前記電源部を介して電力が供給される主回路部とを備えた電気回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電源部と、交流電源から電源部を介して電力が供給される主回路部とを備えた電気回路が開示されている。この電気回路では、電源部が、リアクトル及びコンバータ回路を有し、主回路部が、コンデンサ及びインバータ回路を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような電気回路では、落雷時に、雷サージによって主回路部が破壊される虞がある。
【0005】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、電源から電力が供給される主回路部を、雷サージによって破壊されにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、電源部(10)と、電源(2)から前記電源部(10)を介して電力が供給される主回路部(50)とを備えた電気回路であって、前記電源部(10)は、前記電源(2)からの電流に重畳する雷サージ電流を含む電流の一部を流すバイパス経路(40,40a~40c)を含むとともに、当該バイパス経路(40,40a~40c)を流れる電流に基づいて、前記電源(2)と前記主回路部(50)との間の等価的なインピーダンスを上昇させるインピーダンス上昇回路(11)を備えたことを特徴とする。
【0007】
ここで、雷サージ電流は、電源(2)から通常供給される電圧によって流れる電流に重畳する電流である。また、雷サージ電流は、雷サージの発生により電源(2)の電圧が上昇したときに流れる。第1の態様では、電源(2)からの電流に雷サージ電流が重畳した場合に、バイパス経路(40, 40a~40c)に雷サージ電流を含む電流の一部を流すとともに、電源(2)と主回路部(50)との間の等価的なインピーダンスを上昇させることにより、電源(2)から主回路部(50)に流れる電流を低減させる。したがって、主回路部(50)が雷サージによって破壊されにくい。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記インピーダンス上昇回路(11)は、前記バイパス経路(40, 40a~40c)に前記雷サージ電流を含む電流の一部が流れるときに、前記バイパス経路(40, 40a~40c)に送られる電気エネルギーにより、前記インピーダンスを上昇させることを特徴とする。
【0009】
第2の態様では、雷サージ電流の電気エネルギーを用いて、主回路部(50)への雷サージ電流の侵入を抑制できるため、エネルギーを有効に活用できる。
【0010】
第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記インピーダンス上昇回路(11)は、前記バイパス経路(40, 40a~40c)を流れる電流に基づいて、前記電源(2)と前記主回路部(50)との間に、前記雷サージ電流を含む電流が前記主回路部(50)に流れるのを抑制する方向の電圧を発生させることを特徴とする。
【0011】
第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、前記インピーダンス上昇回路(11)は、前記電源(2)から前記主回路部(50)に電力を供給する経路上に設けられる主巻線(30)と、前記バイパス経路(40)に設けられ、前記主巻線(30)と磁気結合された補助巻線(41)とを有し、前記雷サージ電流を含む電流の一部を前記補助巻線(41)に流すことによって、前記主巻線(30)を通る磁束を変化させて、前記電圧を発生させることを特徴とする。
【0012】
第4の態様では、電源(2)からの任意の2線間に雷サージが印加されたときに、電源(2)と主回路部(50)との間の等価的なインピーダンスを上昇させ、主回路部(50)の電圧上昇を抑制することができる。
【0013】
第5の態様は、第4の態様において、前記バイパス経路(40,40a~40c)には、前記補助巻線(41)と直列に接続されたサージアブソーバ(42)が設けられていることを特徴とする。
【0014】
第5の態様では、雷サージが生じていないときにバイパス経路(40,40a~40c)に電流が流れるのをサージアブソーバ(42)が規制する。一方、雷サージが生じたときには、サージアブソーバ(42)の短絡により、バイパス経路(40,40a~40c)に電流が流れる。したがって、バイパス経路(40,40a~40c)に電流を流すか否かをコンピュータに制御させなくてよいので、雷サージの発生からバイパス経路(40,40a~40c)に電流が流れるまでの遅延時間を短縮できる。
【0015】
第6の態様は、第4又は第5の態様のいずれか1つにおいて、前記主巻線(30)と前記補助巻線(41)とは、互いに極性が同じ向きであることを特徴とする。
【0016】
第6の態様では、バイパス経路(40,40a~40c)に電流が流れた際に、雷サージ電流を含む電流が主回路部(50)に流れるのを抑制する方向の電圧を主巻線(30)に発生させることができる。
【0017】
第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、前記電源(2)は交流電源であり、前記電源部(10)は、前記電源(2)から出力される交流を整流する整流回路(20)を備え、前記主回路部(50)は、前記整流回路(20)により出力された直流をスイッチング動作により交流に変換するインバータ回路(60)と、前記インバータ回路(60)の入力ノード(60a,60b)間に接続され、前記整流回路(20)の出力電圧の脈動を許容するコンデンサ(70)とを有することを特徴とする。
【0018】
第7の態様では、電源(2)からの電流に雷サージ電流が重畳した場合に、電源(2)からコンデンサ(70)に流れる電流を低減し、コンデンサ(70)の電圧上昇を抑制できる。したがって、コンデンサ(70)を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係る電気回路としての電力変換装置の構成を示す回路図である。
【
図3】
図3は、比較例におけるバイパス経路の両端の電圧、主回路部の入力電圧、主巻線の電圧、及び主回路部の入力電流を示す。
【
図4】
図4は、実施形態1におけるバイパス経路の両端の電圧、主回路部の入力電圧、主巻線の電圧、主回路部の入力電流、及び補助巻線の電圧を実線で示し、比較例におけるバイパス経路の両端の電圧、主回路部の入力電圧、主巻線の電圧、及び主回路部の入力電流を破線で示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0021】
《実施形態1》
図1は、本開示の実施形態1に係る電気回路としての電力変換装置(1)を示す。この電力変換装置(1)は、電源(2)から供給される入力交流を、所望周波数及び所望電圧を有する交流に変換して、負荷(3)に供給する。電源(2)は、三相交流電源である。負荷(3)は、モータである。
【0022】
電力変換装置(1)は、電源部(10)と、電源(2)から電源部(10)を介して電力が供給される主回路部(50)と、図示しない制御装置とを備えている。
【0023】
電源部(10)は、整流回路(20)と、主巻線(30)と、バイパス経路(40)とを備えている。
【0024】
整流回路(20)は、電源(2)から第1~第3の電力線(L1~L3)に出力された三相交流を直流に整流する。整流回路(20)は、第1~第3の電力線(L1~L3)に接続された第1~第3の入力端(20a~20c)と、直流を出力する第1及び第2の出力端(20d,20e)とを有する。詳しくは、整流回路(20)は、全波整流回路である。整流回路(20)は、ブリッジ状に結線された6つの整流素子としてのダイオード(21~26)を有している。これらのダイオード(21~26)は、そのカソードを第1の出力端(20d)側に向けるとともに、そのアノードを第2の出力端(20e)側に向けている。
【0025】
主巻線(30)は、電源(2)から主回路部(50)に電力を供給する経路上に設けられている。具体的には、主巻線(30)の一端は、整流回路(20)の第1の出力端(20d)に接続され、主巻線(30)の他端は、後で詳述する主回路部(50)に接続されている。つまり、主巻線(30)は、整流回路(20)及び主回路部(50)と直列に接続されている。
【0026】
バイパス経路(40)の両端は、整流回路(20)の第1及び第2の出力端(20d,20e)に接続されている。バイパス経路(40)には、主巻線(30)と磁気結合された補助巻線(41)と、補助巻線(41)と直列に接続されたサージアブソーバとしてのバリスタ(42)とが第1の出力端(20d)側から順に設けられている。主巻線(30)と補助巻線(41)とは、互いに極性が同じ向きになっている。
【0027】
主巻線(30)と補助巻線(41)とで、バイパス経路(40)を流れる電流に基づいて、電源(2)と主回路部(50)との間の等価的なインピーダンスを上昇させるインピーダンス上昇回路(11)が構成される。ここで、等価的なインピーダンスは、バイパス経路(40)の両端の電圧をVb、電源部(10)から主回路部(50)に流れる電流をImとしたときの、|Vb|/|Im|を意味する。
【0028】
主回路部(50)は、インバータ回路(60)と、コンデンサ(70)とを備えている。
【0029】
インバータ回路(60)は、整流回路(20)により出力された直流を三相交流にスイッチング動作により変換して負荷(3)に供給する。インバータ回路(60)は、図示しない制御装置によってPWM(Pulse Width Modulation)制御方式で制御される。詳しくは、インバータ回路(60)は、6つのスイッチング素子(61a~66a)と、6つの還流ダイオード(61b~66b)とを有している。6つのスイッチング素子(61a~66a)は、ブリッジ結線されている。詳しく説明すると、インバータ回路(60)は、その第1及び第2の入力ノード(60a,60b)間に接続された3つのスイッチングレグを備えている。スイッチングレグは、2つのスイッチング素子(61a~66a)が互いに直列に接続されたものである。第1の入力ノード(60a)は、主巻線(30)の他端に接続され、第2の入力ノード(60b)は、整流回路(20)の第2の出力端(20e)に接続されている。
【0030】
3つのスイッチングレグの各々において、上アームのスイッチング素子(61a~63a)と下アームのスイッチング素子(64a~66a)との中点が、負荷(3)の各相のコイル(u相、v相、w相のコイル)にそれぞれ接続されている。各スイッチング素子(61a~66a)には、還流ダイオード(61b~66b)が1つずつ逆並列に接続されている。各スイッチング素子(61a~66a)は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)で構成されている。しかし、各スイッチング素子(61a~66a)を、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)等のワイドバンドギャップ半導体を含むパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)で構成してもよい。
【0031】
コンデンサ(70)は、インバータ回路(60)の第1及び第2の入力ノード(60a,60b)間に接続されている。コンデンサ(70)は、フィルムコンデンサ又はセラミックコンデンサである。フィルムコンデンサ及びセラミックコンデンサは、一般的に電解コンデンサよりも静電容量が小さいので、コンデンサ(70)は、整流回路(20)の出力電圧を十分に平滑しない。言い換えれば、コンデンサ(70)は、整流回路(20)の出力電圧の脈動を許容する。よって、インバータ回路(60)の第1及び第2の入力ノード(60a,60b)間の電圧は、脈動成分を有する。整流回路(20)は、全波整流を行うので、この脈動成分の周波数は、電源(2)により出力される交流電圧の周波数の2N倍(Nは電源(2)の相数)となる。
【0032】
ここで、主巻線(30)のインダクタンスをL(H)、インバータ回路(60)のPWM制御のキャリア周波数をfc(Hz)、コンデンサ(70)の静電容量をC(F)、定数Kの値を1/4としたときに、以下の式1が成り立つように、主巻線(30)のインダクタンス、及びコンデンサ(70)の静電容量を設定する。
【0033】
【0034】
これにより、インバータ回路(60)で生じるスイッチングノイズを主巻線(30)及びコンデンサ(70)で吸収することができる。ここで、各スイッチング素子(61a~66a)に炭化ケイ素や窒化ガリウムの高速でスイッチング可能なパワーMOSFETを使用することにより、キャリア周波数fcを上げることができ、主巻線(30)のインダクタンス及びコンデンサ(70)の静電容量を低減できる。
【0035】
また、電源(2)の電源電圧をVac(V)、負荷(3)の最大消費電力をPmax(W)としたときに、以下の式2が成り立つように、コンデンサ(70)の静電容量を設定する。
【0036】
【0037】
このようにコンデンサ(70)の静電容量を設定することで、整流回路(20)からの第5次高調波、第7次高調波を低減できる。
【0038】
図2に、比較例に係る電力変換装置(1)を示す。この比較例では、電力変換装置(1)のバイパス経路(40)に補助巻線(41)が設けられていない。その他の構成は、実施形態1と同じである。
【0039】
図3に、比較例におけるバイパス経路(40)の両端の電圧Vb、主回路部(50)の入力電圧V
DC、主巻線(30)の電圧V
L、及び主巻線(30)の電流Imを上から順に示す。
図4に、実施形態1におけるバイパス経路(40)の両端の電圧Vb、主回路部(50)の入力電圧V
DC、主巻線(30)の電圧V
L、主巻線(30)の電流Im、及び補助巻線(41)の電流Isを実線で上から順に示す。
図4中、比較例におけるバイパス経路(40)の両端の電圧Vb、主回路部(50)の入力電圧V
DC、主巻線(30)の電圧V
L、及び主巻線(30)の電流Imも破線で示す。
図3及び
図4に示される各電圧及び各電流は、インバータ回路(60)のスイッチング素子(61a~66a)のスイッチングを、図示しない制御装置の制御によって停止させているときのものである。
図3及び
図4において、Vmaxは、雷サージが生じていないときに電源(2)によって供給される電源電圧の波高値を示す。
【0040】
実施形態1において、雷サージが生じると、
図4中矢印で示すように、バイパス経路(40)の両端の電圧Vbが上昇する。これに応じて、主巻線(30)に雷サージ電流を含む電流Imが流れ、コンデンサ(70)に徐々に電荷をチャージすることにより、主回路部(50)の入力電圧V
DCが上昇する。ここで、雷サージ電流は、電源(2)から通常供給される電圧によって流れる電流に重畳する電流である。雷サージ電流は、雷サージの発生により電源(2)の電圧が上昇したときに流れる。また、電源(2)からの電流に重畳する雷サージ電流を含む電流の一部が、補助巻線(41)を含むバイパス経路(40)に電流Isとして流れ、電源(2)及び電源部(10)から主回路部(50)に流れる電流を低減させる。バイパス経路(40)を電流Isが流れることにより、補助巻線(41)は、バイパス経路(40)に送られる電気エネルギーにより、主巻線(30)を通る磁束を変化させて、主巻線(30)に、すなわち電源(2)と主回路部(50)との間に、雷サージ電流を含む電流が主回路部(50)に流れるのを抑制する方向の電圧を発生させる。これにより、電源(2)と主回路部(50)との間の等価的なインピーダンスが上昇する。したがって、
図4の二点鎖線で囲まれた箇所に示すように、実施形態1では、雷サージ発生時に、電流Isがバイパス経路(40)を流れたときに、主巻線(30)の電圧V
Lが、比較例に比べて高くなっている。また、
図4中矢印で示すように、主巻線(30)の電流Imが、比較例に比べて小さくなっている。その結果、主回路部(50)の入力電圧V
DCの上昇を、比較例に比べて抑制できている。したがって、比較例に比べ、主回路部(50)が雷サージによって破壊されにくい。
【0041】
また、本実施形態1では、比較例に比べて、電源(2)からの電流に雷サージ電流が重畳した場合に電源(2)から主巻線(30)及びコンデンサ(70)に流れる電流を低減できる。したがって、比較例に比べて、主巻線(30)及びコンデンサ(70)を小型化できる。
【0042】
また、本実施形態1では、雷サージ電流の電気エネルギーを用いて、主回路部(50)への雷サージ電流の侵入を抑制できるため、エネルギーを有効に活用できる。
【0043】
また、本実施形態1では、バイパス経路(40)にバリスタ(42)を設けたので、雷サージが生じていないときにバイパス経路(40)に電流が流れるのを規制できる。一方、雷サージが生じたときには、サージアブソーバ(42)の短絡により、バイパス経路(40)に電流を流すことができる。したがって、バイパス経路(40)に電流を流すか否かをコンピュータに制御させなくてよいので、雷サージの発生からバイパス経路(40)に電流が流れるまでの遅延時間を短縮できる。
【0044】
図3及び
図4には、スイッチング素子(61a~66a)のスイッチングを停止しているときの各電圧及び各電流を例示した。スイッチング素子(61a~66a)のスイッチングを停止しているとき、コンデンサ(70)の電荷が負荷(3)に流れないため、主回路部(50)の入力電圧V
DCの上昇がより顕著となる。しかし、スイッチング素子(61a~66a)にスイッチング動作を実行させ、負荷(3)に電流を供給している場合においても、雷サージ発生時に電源(2)から主巻線(30)及びコンデンサ(70)に流れる電流を低減する効果を得ることができる。
【0045】
《実施形態1の変形例》
図5は、本開示の実施形態1の変形例に係る電力変換装置(1)を示す。本変形例では、主巻線(30)の一端が、整流回路(20)の第2の出力端(20e)に接続され、主巻線(30)の他端が、インバータ回路(60)の第2の入力ノード(60b)に接続されている。また、インバータ回路(60)の第1の入力ノード(60a)が、整流回路(20)の第1の出力端(20d)に接続されている。バイパス経路(40)には、補助巻線(41)と、バリスタ(42)とが第2の出力端(20e)側から順に設けられている。
【0046】
その他の構成は実施形態1と同じであるので、同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0047】
《実施形態2》
図6は、本開示の実施形態2に係る電力変換装置(1)を示す。本実施形態2では、第1~第3の主巻線(30a~30c)及び第1~第3のバイパス経路(40a~40c)が、電源(2)と整流回路(20)との間に設けられている。
【0048】
詳しくは、第1の主巻線(30a)は、電源(2)と整流回路(20)の第1の入力端(20a)との間、すなわち第1の電力線(L1)に設けられている。
【0049】
第2の主巻線(30b)は、電源(2)と整流回路(20)の第2の入力端(20a)との間、すなわち第2の電力線(L2)に設けられている。
【0050】
第3の主巻線(30c)は、電源(2)と整流回路(20)の第3の入力端(20c)との間、すなわち第3の電力線(L3)に設けられている。
【0051】
また、バイパス経路(40)として、第1~第3のバイパス経路(40a~40c)が設けられている。
【0052】
第1のバイパス経路(40a)の一端は、第1の電力線(L1)に第1の主巻線(30a)よりも電源(2)側で接続されている。一方、第1のバイパス経路(40a)の他端は、第2の電力線(L2)に第2の主巻線(30b)よりも整流回路(20)で接続されている。第1のバイパス経路(40a)の補助巻線(41)及びバリスタ(42)は、第1の電力線(L1)側から順に接続されている。
【0053】
第2のバイパス経路(40b)の一端は、第2の電力線(L2)に第2の主巻線(30b)よりも電源(2)側で接続されている。一方、第2のバイパス経路(40b)の他端は、第3の電力線(L3)に第3の主巻線(30c)よりも整流回路(20)で接続されている。第2のバイパス経路(40b)の補助巻線(41)及びバリスタ(42)は、第2の電力線(L2)側から順に接続されている。
【0054】
第3のバイパス経路(40c)の一端は、第3の電力線(L3)に第3の主巻線(30c)よりも電源(2)側で接続されている。一方、第3のバイパス経路(40c)の他端は、第1の電力線(L1)に第1の主巻線(30a)よりも整流回路(20)で接続されている。第3のバイパス経路(40c)の補助巻線(41)及びバリスタ(42)は、第3の電力線(L3)側から順に接続されている。
【0055】
その他の構成は実施形態1と同じであるので、同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0056】
《実施形態3》
図7は、本開示の実施形態3に係る電力変換装置(1)を示す。本実施形態3では、電源(2)が単相交流電源である。したがって、整流回路(20)は、入力端として、第1及び第2の電力線(L1,L2)に接続された第1及び第2の入力端(20a,20b)だけを備える。また、整流回路(20)に設けられるダイオード(21~24)の個数は、4つとなる。また、主巻線(30)が、電源(2)と整流回路(20)との間に設けられている。つまり、整流回路(20)は、主巻線(30)を介して電源(2)に接続されている。
【0057】
詳しくは、主巻線(30)は、第1の電力線(L1)に、すなわち電源(2)と整流回路(20)の第1の入力端(20a)との間に設けられている。
【0058】
また、バイパス経路(40)の一端は、第1の電力線(L1)に主巻線(30)よりも電源(2)側で接続されている。一方、バイパス経路(40)の他端は、第2の電力線(L2)に接続されている。補助巻線(41)及びバリスタ(42)は、第1の電力線(L1)側から順に接続されている。
【0059】
また、コンデンサ(70)の容量が、最大値が最小値の2倍以上となる整流回路(20)の出力電圧の脈動を許容するように設定されている。
【0060】
その他の構成は実施形態1と同じであるので、同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0061】
《実施形態3の変形例》
図8は、本開示の実施形態3の変形例に係る電力変換装置(1)を示す。本変形例では、主巻線(30)が、第2の電力線(L2)、すなわち電源(2)と整流回路(20)の第2の入力端(20b)との間に設けられている。また、バイパス経路(40)の一端は、第2の電力線(L2)に主巻線(30)よりも電源(2)側で接続されている。一方、バイパス経路(40)の他端は、第1の電力線(L1)に接続されている。補助巻線(41)及びバリスタ(42)は、第2の電力線(L2)側から順に接続されている。
【0062】
その他の構成は実施形態3と同じであるので、同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0063】
《実施形態4》
図9は、本開示の実施形態4に係る電力変換装置(1)を示す。本実施形態4では、電源(2)が、直流電源である。また、電源部(10)が整流回路(20)を備えていない。
【0064】
その他の構成は実施形態1と同じであるので、同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0065】
なお、上記実施形態1において、電源(2)を単相交流電源とし、整流回路(20)を、上記実施形態3の整流回路(20)、すなわち、ダイオード(21~24)の個数が4つの整流回路(20)としてもよい。
【0066】
なお、上記実施形態1~4、及び実施形態1,3の変形例において、インバータ回路(60)に代えて、スイッチング動作によって、直流電圧の昇圧または降圧等の電力変換を行う機能を有するDC-DCコンバータ等、他の電力変換回路を設けてもよい。そして、当該電力変換回路が、主回路部(50)を構成するようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態1~4、及び実施形態1,3の変形例では、主回路部(50)に、インバータ回路(60)による電力変換機能を持たせたが、電力変換機能を持たせなくてもよい。
【0068】
また、上記実施形態1~4、及び実施形態1,3の変形例において、整流回路(20)の一部又は全部を、ダイオード(21~26)に代えて、IGBT、炭化ケイ素や窒化ガリウム等のワイドバンドギャップ半導体を含むパワーMOSFETで構成してもよい。
【0069】
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、本開示は、電源部と、電源から前記電源部を介して電力が供給される主回路部とを備えた電気回路として有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 電力変換装置
2 電源
10 電源部
11 インピーダンス上昇回路
20 整流回路
30 主巻線
40 バイパス経路
41 補助巻線
42 バリスタ(サージアブソーバ)
50 主回路部
60 インバータ回路
60a 第1の入力ノード
60b 第2の入力ノード
70 コンデンサ
【要約】
【課題】電源から電力が供給される主回路部を、雷サージによって破壊されにくくする。
【解決手段】電源部(10)に、電源(2)からの電流に重畳する雷サージ電流を含む電流の一部を流すバイパス経路(40,40a~40c)を設けるとともに、バイパス経路(40,40a~40c)を流れる電流に基づいて、電源(2)と主回路部(50)との間の等価的なインピーダンスを上昇させるインピーダンス上昇回路(11)を設ける。
【選択図】
図1