(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】タイヤの管理方法および管理システム
(51)【国際特許分類】
B29D 30/06 20060101AFI20240117BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B29D30/06
B60C19/00 J
(21)【出願番号】P 2022177055
(22)【出願日】2022-11-04
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】北原 翼
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-031729(JP,A)
【文献】特開2005-216077(JP,A)
【文献】特許第7092240(JP,B1)
【文献】特表2018-526238(JP,A)
【文献】特開2018-134994(JP,A)
【文献】特開2020-055402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/06
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺体を切断してタイヤ1本分の個別サイズに形成されたタイヤ部材を含む複数種類のタイヤ部材を一体化してグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫することで製造されたタイヤの前記タイヤ部材の個別情報を含む前記タイヤの固有情報を、前記タイヤに設けられているRFIDタグと紐付けて記憶装置に記憶し、前記RFIDタグをタグリーダによって読み取ることで、前記固有情報を取得するタイヤの管理方法において、
前記RFIDタグの表面を前記タイヤの外側側面と同じレベルにして前記RFIDタグが前記タイヤの外側側部に配置されていて、前記RFIDタグの表面全体が前記タイヤの外側側面から突出しているゴム材により被覆されて前記RFIDタグが、前記タイヤの外表面に露出しない状態で前記タイヤに設けられていて、前記RFIDタグを、前記タイヤの外表面に配置されている特定の表面マークに相当する位置に配置するタイヤの管理方法。
【請求項2】
長尺体を切断してタイヤ1本分の個別サイズに形成されたタイヤ部材を含む複数種類のタイヤ部材を一体化してグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫することで製造されたタイヤの前記タイヤ部材の個別情報を含む前記タイヤの固有情報を、前記タイヤに設けられているRFIDタグと紐付けて記憶装置に記憶し、前記RFIDタグをタグリーダによって読み取ることで、前記固有情報を取得するタイヤの管理方法において、
前記RFIDタグが前記タイヤの外側側面の表面に突設されていて、前記RFIDタグの表面全体が前記タイヤの外側側面から突出しているゴム材により被覆されて前記RFIDタグが、前記タイヤの外表面に露出しない状態で前記タイヤに設けられていて、前記RFIDタグを、前記タイヤの外表面に配置されている特定の表面マークに相当する位置に配置するタイヤの管理方法。
【請求項3】
長尺体を切断してタイヤ1本分の個別サイズに形成されたタイヤ部材を含む複数種類のタイヤ部材を一体化してグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫することで製造されたタイヤの前記タイヤ部材の個別情報を含む前記タイヤの固有情報を、前記タイヤに設けられているRFIDタグと紐付けて記憶装置に記憶し、前記RFIDタグをタグリーダによって読み取ることで、前記固有情報を取得するタイヤの管理方法において、
前記RFIDタグが、前記タイヤの外表面に露出しない状態で前記タイヤに設けられていて、前記RFIDタグを、前記タイヤの外表面に配置されている特定の表面マークに相当する位置に配置
し、前記タイヤを台タイヤとして更生タイヤを製造する際に、前記更生タイヤに使用されるタイヤ部材の個別情報および前記更生タイヤの製造条件を、前記台タイヤに設けられている前記RFIDタグと紐付けて前記タイヤの前記固有情報として追加して前記記憶装置に記憶するタイヤの管理方法。
【請求項4】
前記特定の表面マークとして、前記タイヤの外側側面から突出しているゴム材を用いる請求項
1~3のいずれかに記載のタイヤの管理方法。
【請求項5】
前記特定の表面マークとして、前記タイヤの外側側面に対して窪んでいる凹部を用いる請求項1
~3のいずれかに記載のタイヤの管理方法。
【請求項6】
前記長尺体を製造した際に、前記長尺体のタイヤ1本分の個別サイズに相当する範囲毎に位置特定マークを付すとともに、それぞれの前記位置特定マークを付した範囲での前記長尺体の所定の品質情報を測定して、この測定した前記品質情報を前記位置特定マークと紐付けして記憶しておき、前記グリーンタイヤを成形する際に、使用される前記個別サイズに形成された前記タイヤ部材に付されている前記位置特定マークを読み取って前記位置特定マークに紐付けされている前記品質情報を、このタイヤ部材の前記個別情報とする請求項1
~3のいずれかに記載のタイヤの管理方法。
【請求項7】
前記記憶装置に記憶されている前記固有情報の変更とともに、前記RFIDタグには前記固有情報を変更したことを示す情報を記憶する請求項1
~3のいずれかに記載のタイヤの管理方法。
【請求項8】
長尺体を切断してタイヤ1本分の個別サイズに形成されたタイヤ部材を含む複数種類のタイヤ部材を一体化したグリーンタイヤを加硫して製造されたタイヤの前記タイヤ部材の個別情報を含む前記タイヤの固有情報と、前記タイヤに設けられているRFIDタグとが紐付けられて記憶される記憶装置と、前記RFIDタグを読み取ることにより前記固有情報を取得するタグリーダと、を備えたタイヤの管理システムにおいて、
前記RFIDタグの表面を前記タイヤの外側側面と同じレベルにして前記RFIDタグが前記タイヤの外側側部に配置されていて、前記RFIDタグの表面全体が前記タイヤの外側側面から突出しているゴム材により被覆されて前記RFIDタグが前記タイヤの外表面に露出しない状態で前記タイヤに設けられていて、或いは、前記RFIDタグが前記タイヤの外側側面の表面に突設されていて、前記RFIDタグの表面全体が前記タイヤの外側側面から突出しているゴム材により被覆されて前記RFIDタグが前記タイヤの外表面に露出しない状態で前記タイヤに設けられていて、前記RFIDタグが、前記タイヤの外表面に配置されている特定の表面マークに相当する位置に配置されているタイヤの管理システム。
【請求項9】
長尺体を切断してタイヤ1本分の個別サイズに形成されたタイヤ部材を含む複数種類のタイヤ部材を一体化したグリーンタイヤを加硫して製造されたタイヤの前記タイヤ部材の個別情報を含む前記タイヤの固有情報と、前記タイヤに設けられているRFIDタグとが紐付けられて記憶される記憶装置と、前記RFIDタグを読み取ることにより前記固有情報を取得するタグリーダと、を備えたタイヤの管理システムにおいて、
前記RFIDタグが、前記タイヤの外表面に露出しない状態で前記タイヤに設けられていて、前記RFIDタグが、前記タイヤの外表面に配置されている特定の表面マークに相当する位置に配置されていて、前記タイヤを台タイヤとして更生タイヤが製造される際に、前記更生タイヤに使用されるタイヤ部材の個別情報および前記更生タイヤの製造条件が、前記台タイヤに設けられている前記RFIDタグと紐付けられて前記タイヤの前記固有情報として追加して前記記憶装置に記憶されるタイヤの管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの管理方法および管理システムに関し、さらに詳しくは、タイヤ部材の個別情報を含むタイヤの固有情報を、長期間に渡り安定してより確実に把握できるタイヤの管理方法および管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、押出機等によって押出された未加硫ゴムや、未加硫ゴムと補強コードとで形成された補強層など、様々なタイヤ部材を用いて製造されている。タイヤを製造する際には、これら様々なタイヤ部材を成形工程で一体化してグリーンタイヤが成形される。次いで、このグリーンタイヤを加硫することでタイヤが製造される。製造されたタイヤには識別ラベル(バーコードやICタグなどの公知の様々なもの)が取り付けられて、この識別ラベルを読み取ることで、そのタイヤ部材の個別情報を含むタイヤの固有情報を取得することができる(特許文献1参照)。
【0003】
このように識別ラベルを利用することで、タイヤ品質のトレーサビリティを向上させることができる。しかしながら、この識別ラベルはタイヤの外表面に露出した状態であるため、損傷や脱落が発生するリスクがある。識別ラベルが損傷、或いは、タイヤから脱落すると、そのタイヤの固有情報を取得できなくなる。それ故、タイヤ部材の個別情報を含むタイヤの固有情報を、長期間に渡り安定してより確実に把握するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、タイヤ部材の個別情報を含むタイヤの固有情報を、長期間に渡り安定してより確実に把握できるタイヤの管理方法および管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のタイヤ管理方法は、長尺体を切断してタイヤ1本分の個別サイズに形成されたタイヤ部材を含む複数種類のタイヤ部材を一体化してグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫することで製造されたタイヤの前記タイヤ部材の個別情報を含む前記タイヤの固有情報を、前記タイヤに設けられているRFIDタグと紐付けて記憶装置に記憶し、前記RFIDタグをタグリーダによって読み取ることで、前記固有情報を取得するタイヤの管理方法において、前記RFIDタグの表面を前記タイヤの外側側面と同じレベルにして前記RFIDタグが前記タイヤの外側側部に配置されていて、前記RFIDタグの表面全体が前記タイヤの外側側面から突出しているゴム材により被覆されて前記RFIDタグが、前記タイヤの外表面に露出しない状態で前記タイヤに設けられていて、前記RFIDタグを、前記タイヤの外表面に配置されている特定の表面マークに相当する位置に配置することを特徴とする。
本発明の別のタイヤの管理方法は、長尺体を切断してタイヤ1本分の個別サイズに形成されたタイヤ部材を含む複数種類のタイヤ部材を一体化してグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫することで製造されたタイヤの前記タイヤ部材の個別情報を含む前記タイヤの固有情報を、前記タイヤに設けられているRFIDタグと紐付けて記憶装置に記憶し、前記RFIDタグをタグリーダによって読み取ることで、前記固有情報を取得するタイヤの管理方法において、前記RFIDタグが前記タイヤの外側側面の表面に突設されていて、前記RFIDタグの表面全体が前記タイヤの外側側面から突出しているゴム材により被覆されて前記RFIDタグが、前記タイヤの外表面に露出しない状態で前記タイヤに設けられていて、前記RFIDタグを、前記タイヤの外表面に配置されていることを特徴とする。
本発明のさらに別のタイヤの管理方法は、長尺体を切断してタイヤ1本分の個別サイズに形成されたタイヤ部材を含む複数種類のタイヤ部材を一体化してグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫することで製造されたタイヤの前記タイヤ部材の個別情報を含む前記タイヤの固有情報を、前記タイヤに設けられているRFIDタグと紐付けて記憶装置に記憶し、前記RFIDタグをタグリーダによって読み取ることで、前記固有情報を取得するタイヤの管理方法において、前記RFIDタグが、前記タイヤの外表面に露出しない状態で前記タイヤに設けられていて、前記RFIDタグを、前記タイヤの外表面に配置されている特定の表面マークに相当する位置に配置し、前記タイヤを台タイヤとして更生タイヤを製造する際に、前記更生タイヤに使用されるタイヤ部材の個別情報および前記更生タイヤの製造条件を、前記台タイヤに設けられている前記RFIDタグと紐付けて前記タイヤの前記固有情報として追加して前記記憶装置に記憶することを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤの管理システムは、長尺体を切断してタイヤ1本分の個別サイズに形成されたタイヤ部材を含む複数種類のタイヤ部材を一体化したグリーンタイヤを加硫して製造されたタイヤの前記タイヤ部材の個別情報を含む前記タイヤの固有情報と、前記タイヤに設けられているRFIDタグとが紐付けられて記憶される記憶装置と、前記RFIDタグを読み取ることにより前記固有情報を取得するタグリーダと、を備えたタイヤの管理システムにおいて、前記RFIDタグの表面を前記タイヤの外側側面と同じレベルにして前記RFIDタグが前記タイヤの外側側部に配置されていて、前記RFIDタグの表面全体が前記タイヤの外側側面から突出しているゴム材により被覆されて前記RFIDタグが前記タイヤの外表面に露出しない状態で前記タイヤに設けられていて、或いは、前記RFIDタグが前記タイヤの外側側面の表面に突設されていて、前記RFIDタグの表面全体が前記タイヤの外側側面から突出しているゴム材により被覆されて前記RFIDタグが前記タイヤの外表面に露出しない状態で前記タイヤに設けられていて、前記RFIDタグが、前記タイヤの外表面に配置されている特定の表面マークに相当する位置に配置されていることを特徴とする。
本発明の別のタイヤの管理システムは、長尺体を切断してタイヤ1本分の個別サイズに形成されたタイヤ部材を含む複数種類のタイヤ部材を一体化したグリーンタイヤを加硫して製造されたタイヤの前記タイヤ部材の個別情報を含む前記タイヤの固有情報と、前記タイヤに設けられているRFIDタグとが紐付けられて記憶される記憶装置と、前記RFIDタグを読み取ることにより前記固有情報を取得するタグリーダと、を備えたタイヤの管理システムにおいて、
前記RFIDタグが、前記タイヤの外表面に露出しない状態で前記タイヤに設けられていて、前記RFIDタグが、前記タイヤの外表面に配置されている特定の表面マークに相当する位置に配置されていて、前記タイヤを台タイヤとして更生タイヤが製造される際に、前記更生タイヤに使用されるタイヤ部材の個別情報および前記更生タイヤの製造条件が、前記台タイヤに設けられている前記RFIDタグと紐付けられて前記タイヤの前記固有情報として追加して前記記憶装置に記憶されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記記憶装置に記憶されている前記タイヤの固有情報と紐付けられている前記RFIDタグが、前記タイヤの外表面に露出しない状態で前記タイヤに設けられているので、前記RFIDタグの損傷や前記RFIDタグの前記タイヤからの脱落が抑制される。また、前記RFIDタグが、前記タイヤの外表面に配置されている特定の表面マークに相当する位置に配置されているので、前記タイヤにおける前記RFIDタグの位置が前記タイヤの外側からの目視によって把握し易くなり、前記RFIDタグをタグリーダによって確実に読み取り易くなる。それ故、タイヤ部材の個別情報を含むタイヤの固有情報を、長期間に渡り安定してより確実に把握するには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のタイヤの管理システムを模式的に例示する説明図である。
【
図2】RFIDタグが配置されているタイヤを横断面視で例示する説明図である。
【
図4】
図2のタイヤの外側側面の一部を例示する説明図である。
【
図5】
図1の管理システムが適用されたタイヤ製造設備を例示する説明図である。
【
図6】
図5のタイヤ製造設備の一部を拡大して例示する説明図である。
【
図8】
RFIDタグを読み取ってタイヤの固有情報を取得している状態を例示する説明図である。
【
図9】RFIDタグの別の配置を、タイヤの一部を拡大して横断面視で例示する説明図である。
【
図10】
図9のタイヤの外側側面の一部を例示する説明図である。
【
図11】RFIDタグのさらに別の配置を、タイヤの一部を拡大して横断面視で例示する説明図である。
【
図12】RFIDタグのさらに別の配置を、タイヤの一部を拡大して横断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のタイヤの管理方法および管理システムを、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1に例示する本発明のタイヤの管理システム1の実施形態は、
図2~
図4に例示するタイヤTに設けられている
RFIDタグ8をタグリーダ7によって読み取ることで、そのタイヤTの固有情報Dを取得する。タイヤTは、複数種類のタイヤ部材E(タイヤ部材E1、タイヤ部材Ewなど)を一体化して成形されたグリーンタイヤGを加硫して製造されている。固有情報Dには、そのタイヤTを構成するタイヤ部材E1の個別情報QLxが含まれている。タイヤ部材E1は、長尺体Lを切断してタイヤ1本分の個別サイズに形成されていて、個別情報QLxはそれぞれのタイヤ部材E1の製造時の品質情報QLである。
【0012】
この管理システム1は、タイヤTの固有情報DとタイヤTに設けられているRFIDタグ8とが紐付けて記憶される記憶装置9と、RFIDタグ8を読み取るタグリーダ7とに加えて、その他の構成要素を有している。その他の構成要素を例示すると、長尺体Lに位置特定マーク3を付すマーク付与機2と、長尺体Lの所定の品質情報QLを測定する測定機4と、この品質情報QLと位置特定マーク3とが紐付けして記憶される記憶部5と、位置特定マーク3を読み取る位置特定マークリーダ6である。
【0013】
マーク付与機2は、長尺体Lが製造された際に、長尺体Lのタイヤ1本分の個別サイズ(即ち、1つのタイヤ部材E1の長さ)に相当する範囲毎に位置特定マーク3を付す。例えば、長尺体Lの表面にインクなどを噴射、転写などによって塗布することで位置特定マーク3を付す機器などをマーク付与機2として用いることができる。搬送移動されている長尺体Lに対して、マーク付与機2を用いて位置特定マーク3を付すことができる。尚、長尺体Lのタイヤ1本分の個別サイズに相当するそれぞれの範囲毎に少なくとも1つの位置特定マーク3を付せばよい。
【0014】
位置特定マーク3は、これを付された位置を特定できればその仕様は特に限定されない。様々な文字、数字、記号、二次元コード、或いは、これらの組み合わせを位置特定マーク3として用いることができるが、位置特定マーク3を付した順番を示す追番を含めるとよい。
【0015】
測定機4は、長尺体Lが製造された際に、位置特定マーク3を付したそれぞれの範囲での長尺体Lの所定の品質情報QLを測定する。品質情報QLの種類としては、例えば、長尺体Lの質量、温度、形状のうちの少なくとも1つが含まれる。測定する品質情報QLの種類に応じて、その品質情報QLの測定に適した公知の測定機4を用いることができる。
【0016】
記憶部5には、測定機4により測定された品質情報QLと、その品質情報QLを測定した範囲に付されている位置特定マーク3とが紐付けして記憶される。記憶部5としては、コンピュータ(コンピュータメモリ)が用いられる。
【0017】
位置特定マークリーダ6は、タイヤ部材E1を含む様々なタイヤ部材Eを一体化させてグリーンタイヤGが成形される際に、使用されるタイヤ部材E1に付されている位置特定マーク3を読み取る。位置特定マークリーダ6は、長尺体Lが製造された際に、その表面に付された位置特定マーク3を読み取るためにも使用される。位置特定マークリーダ6としては、例えば、画像データを取得するデジタルカメラ等を備えた公知のスキャナ類を用いることができる。搬送移動されているタイヤ部材E1、長尺体Lに付されている位置特定マーク3を、位置特定マークリーダ6を用いて読み取ることができる。
【0018】
タグリーダ7およびRFIDタグ8は、従来から使用されている公知の様々なものを使用することができる。RFIDタグ8は、ICチップとICチップに接続されたアンテナ部を有しているパッシブタイプのICタグである。このICチップには、そのRFIDタグ8の個別識別情報が記憶されていて、その他に様々な情報が記憶されるとともに、その情報の一部が書き換え可能になっている。RFIDタグ8の厚さは例えば10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは3mm以下である。タグリーダ7としては、RFIDタグ8のICチップに記憶された情報を読み取る非接触型の公知のスキャナ類を用いることができる。
【0019】
タグリーダ7から電波W1が発信されると、この電波W1に応じてRFIDタグ8から電波W2が返信されてタグリーダ7に受信される。この電波W2によってICチップに記憶された情報がタグリーダ7に送信されて、RFIDタグ8とタグリーダ7との間で無線通信が行われる。
【0020】
RFIDタグ8は、タイヤTの外表面に露出しない状態でタイヤTに設けられている。この実施形態では、RFIDタグ8はタイヤTの外側側部に埋設されている。タイヤTの外側側部とは、タイヤTの側面部分においてカーカス材E1dよりも外側の領域である。詳述すると、ビードフィラE1gの外側側面を覆っているカーカス材E1dに当接するようにRFIDタグ8が配置されている。
【0021】
タイヤTでのRFIDタグ8の配置は限定されないが、タイヤTの側面部分が好ましく、特にビードワイヤEwやビードフィラE1gの周辺は、その他の部分に比して剛性が高いのでRFIDタグ8を保護するには有利になる。また、タイヤTの内表面にRFIDタグ8を貼り付けることによってもRFIDタグ8を保護するには有利になる。RFIDタグ8とタグリーダ7との間の無線通信を良好にするには、タイヤTの外側側部にRFIDタグ8を配置するとよい。
【0022】
さらにRFIDタグ8は、タイヤTの外表面に配置されている特定の表面マークSMに相当する位置に配置されている。この表面マークSMは、タイヤTに従来から付されている公知のもの(サイズ表示、ブランドロゴ、製造ロット表示など)を用いることができる。これら公知の表示マークSMの予め決定した特定の位置(例えば先頭部、中央部または末尾部)に相当する位置にRFIDタグ8を配置する。表面マークSMは、RFIDタグ8の位置を示すために特別に設けられたものでもよい。尚、後述するそれぞれの実施形態では、表面マークSMは、RFIDタグ8の位置を示すために特別に設けられている。
【0023】
記憶装置9には、タイヤTの固有情報DとこのタイヤTに設けられているRFIDタグ8とが紐付けて記憶される。記憶装置9としては、コンピュータサーバやコンピュータが用いられる。記憶装置9と記憶部5とを別々のコンピュータとして、互いを通信可能に構成することも、1つのコンピュータ(コンピュータサーバ)に記憶装置9と記憶部5とを設けた構成にすることもできる。
【0024】
図5に例示するように、この管理システム1はタイヤ製造設備に適用される。このタイヤ製造設備は、混練機11と、押出機12と、ストック手段14と、成形機15と、加硫装置16とを備えている。タイヤ製造設備にはビード製造機など、その他の設備が備わるが
図5では省略されている。
【0025】
混練機11は、複数種類の原材料M(原料ゴム、各種配合剤)を混練して未加硫ゴムRを製造する。混練機11としてはバンバリーミキサなどが使用される。製造された未加硫ゴムRは、ベルトコンベヤなどの搬送機構13によって次工程の押出機12に投入される。
【0026】
押出機12は、未加硫ゴムRを適度な粘度にして予め設定された断面形状に型付けして長尺体Lとして押出す。カレンダー装置によって未加硫ゴムRをシート状の長尺体Lを製造することも、未加硫ゴムRと多数本の引き揃えられた補強コードとを一体化させたシート状の長尺体Lを製造することもある。製造された長尺体Lは、ベルトコンベヤなどの搬送機構13によってストック手段14に搬送される。
【0027】
ストック手段14は、長尺体Lを次工程で必要になる時まで一時的にストックする。ストック手段14としては例えば、長尺体Lをライナとともに巻き取る巻取りドラム装置が使用される。製造された長尺体Lが次工程で直ちに使用される押出・成形直結ラインなどの場合は、ストック手段14は不要になる。
【0028】
次いで、ストック手段14から繰り出された長尺体Lは、ベルトコンベヤなどの搬送機構13によって成形機15に搬送される。成形機15は、回転する成形ドラム15aを有していて、様々な種類のタイヤ部材Eが成形ドラム15a上で一体化されてグリーンタイヤGが成形される。タイヤ部材Eとしては、長尺体Lが切断されてタイヤ1本分の個別単位に形成されたタイヤ部材E1と、その他にビードワイヤEwなどを例示できる。タイヤ部材E1としては、トレッドゴムE1a、サイドゴムE1b、インナーライナE1c、カーカス材E1d、ベルト材E1e、ベルトカバー材E1f、ビードフィラE1gなどを例示できる。長尺体Lは、成形機15に供給される前に例えば、搬送機構13上でカッター14aによって切断されてタイヤ1本分の個別単位のタイヤ部材E1に形成される。成形されたそれぞれのグリーンタイヤGには、そのグリーンタイヤGを他のグリーンタイヤGと識別できるRFIDタグ8が取り付けられる。
【0029】
加硫装置16は、グリーンタイヤGを加硫モールド17の中で加硫して所定形状に型付けされたタイヤTを製造する。製造されたタイヤTには、そのままRFIDタグ8が設けられている。
【0030】
図6、
図7に例示するように、このタイヤ製造設備では、未加硫ゴムRが押出機12から押出されて長尺体Lとして製造された際に、長尺体Lの3種類の所定の品質情報QLが測定機4a、4b、4cによって測定される。長尺体Lの温度を検知する測定機4a、長尺体Lの形状を測定する測定機4b、長尺体Lの質量を測定する測定機4cが長尺体Lの搬送方向に順に配置されている。測定機4aと測定機4bとの間にマーク付与機2が配置され、測定機4cの下流側(
図6、7では右側)に位置特定マークリーダ6が配置されている。それぞれの測定機4a、4b、4cおよびマーク付与機2の配列順序は特に限定されず、任意に設定することができる。位置特定マークリーダ6は、マーク付与機2の下流側に配置される。それぞれの測定機4a、4b、4cが、位置特定マークリーダ6の上流側に配置される構成にすることも、下流側に配置される構成にすることもできる。
【0031】
長尺体Lの温度を検知する測定機4aとしては、公知の非接触型の温度センサなどを用いることができる。長尺体Lの形状を測定する測定機4bとしては、レーザ光などを長尺体Lの表面に照射、反射させて長尺体Lの表面形状(断面形状)を取得する非接触型の公知のプロファイルセンサなどを用いることができる。長尺体Lの質量を測定する測定機4cとしては、搬送機構13の下面に設置され、搬送されている長尺体Lの質量を連続的に測定できる公知の重量計などを用いることができる。
【0032】
次に、管理システム1を用いた本発明のタイヤの管理方法の手順を、長尺体Lが、未加硫ゴムRが押出されて製造されたものである場合を例にして説明する。
【0033】
図5に例示するように、混練機11によって製造された未加硫ゴムRを用いて、押出機12によって、所定のプロファイル形状に型付けされた長尺体Lを製造する。押出機12の口金から押出された長尺体Lは、前方に配置された搬送機構13によってストック手段14に搬送される。長尺体Lの搬送速度は常に制御装置によって把握されている。
【0034】
図6、
図7に例示するように、この搬送区間で、搬送されている長尺体Lの所定の品質情報QLが測定機4(4a、4b、4c)によって測定される。それぞれの測定機4によって測定された品質情報QLは、記憶部5に入力されて記憶される。搬送されている長尺体Lの表面には、マーク付与機2によって長尺体Lのタイヤ1本分の個別サイズに相当する範囲毎に順次、位置特定マーク3が付される。位置特定マークリーダ6は、搬送されている長尺体Lに付されている位置特定マーク3を順次読み取り、その読み取った位置特定マーク3(表記情報)は記憶部5に入力されて記憶される。
【0035】
それぞれの測定機4と位置特定マークリーダ6の配置(離間距離)は既知であり、長尺体Lの搬送速度も把握されている。したがって、位置特定マークリーダ6が読み取った位置特定マーク3が、それぞれの測定機4を通過した時刻は判明する。即ち、それぞれの位置特定マーク3が位置特定マークリーダ6によって読み取られた時点よりもどの程度前の時点で、その位置特定マーク3が付された範囲の品質情報QLがそれぞれの測定機4によって測定されているかが判明する。
【0036】
そこで、
図1に例示するように、記憶部5では、それぞれの位置特定マーク3を付した範囲で測定された長尺体Lの所定の品質情報QLと、それぞれの位置特定マーク3とが紐付けして記憶される。尚、位置特定マークリーダ6が測定機4よりも上流側に配置されている場合は、それぞれの位置特定マーク3が位置特定マークリーダ6によって読み取られた時点よりもどの程度後の時点で、その位置特定マーク3が付された範囲の品質情報QLがそれぞれの測定機4によって測定されているかが判明する。したがって、この場合も同様に、それぞれの位置特定マーク3を付した範囲で測定された長尺体Lの所定の品質情報QLと、それぞれの位置特定マーク3とが紐付けして記憶部5に記憶される。
【0037】
次いで、
図5に例示するように、ストック手段14から長尺体Lは繰り出されて、搬送機構13によって成形機15に搬送される。この搬送区間では、カッター14aによって長尺体Lが切断されて、タイヤ1本分の個別サイズのタイヤ部材E1が形成される。形成されたそれぞれのタイヤ部材E1の表面には位置特定マーク3が付されている。
【0038】
それぞれのタイヤ部材E1が成形機15で使用される際には、そのタイヤ部材E1に付されている位置特定マーク3が位置特定マークリーダ6によって読み取られる。成形機15にはタイヤ部材E1を含む様々なタイヤ部材Eが搬送されて、これらタイヤ部材Eが成形ドラム15a上で一体化されてグリーンタイヤGが成形される。
【0039】
成形されるそれぞれのグリーンタイヤGには、別のグリーンタイヤGと識別するためのRFIDタグ8が付与されて貼り付けられる。それぞれのRFIDタグ8に記憶されている情報が、記憶装置9に入力されて記憶される。また、記憶装置9には、それぞれのグリーンタイヤGの様々な固有情報DがそのRFIDタグ8に紐付けられて記憶される。固有情報Dとしては、製造されるタイヤTの品番、サイズ、製造日時、製造場所、製造ロット、使用されているそれぞれのタイヤ部材Eの品番、加工条件、品質情報などを例示できる。
【0040】
図1に例示するように、それぞれのグリーンタイヤGの成形に用いられたタイヤ部材E1の位置特定マーク3は、グリーンタイヤGを成形する際に位置特定マークリーダ6によって読み取られている。そこで、記憶部5に記憶されているその位置特定マーク3と、そのタイヤ部材E1が使用されたグリーンタイヤGに付された記憶装置9に記憶されている
RFIDタグ8とが紐付けされる。記憶部5に記憶されているそれぞれの位置特定マーク3は、測定された品質情報QLと紐付けされている。一方、記憶装置9に記憶されているそれぞれの
RFIDタグ8は、固有情報Dと紐付けされている。それ故、位置特定マーク3と
RFIDタグ8とを紐付けることで、その位置特定マーク3に紐付けされている品質情報QLを、その位置特定マーク3が付されているタイヤ部材E1の個別情報QLxとして、その
RFIDタグ8が付されたグリーンタイヤG(タイヤT)の固有情報D
を含めることができる。
【0041】
次いで、
図5に例示するように、
RFIDタグ8が設けられたグリーンタイヤGは、加硫装置16によって加硫されることで加硫モールド17によって型付けされたタイヤTになる。この加硫済みタイヤTには
RFIDタグ8が設けられている。
【0042】
図8に例示するように、
RFIDタグ8をタグリーダ7によって読み取ることで、読み取った
RFIDタグ8(ICチップ)に記憶されている情報が記憶装置9に入力される。記憶装置9には、
RFIDタグ8とそのタイヤTの固有情報Dとが紐付けされているので、入力された
RFIDタグ8の情報に基づいて、紐付けされている固有情報Dを例えばモニタ10に表示させることができる。尚、グリーンタイヤGに設けられている
RFIDタグ8をタグリーダ7によって読み取ることで、そのグリーンタイヤGに使用されているタイヤ部材E1の品質情報QL(個別情報QLx)を、タイヤTが完成する加硫前の段階で把握することができる。
【0043】
したがって、タイヤTに設けられているRFIDタグ8をタグリーダ7によって読み取ることで、長尺体Lが切断して製造されているタイヤ部材E1のその長尺体Lが製造された時点での品質情報QL(個別情報QLx)をより高い精度で取得することができる。即ち、タイヤTの様々な固有情報Dとともに、タイヤ部材E1となる長尺体Lの製造時の品質情報QLを、タイヤ1本分の個別サイズ単位で、より高い精度で把握できる。
【0044】
タイヤTの品質は、長尺体Lが製造された時点での長尺体Lの品質情報QLに影響を受けることがある。そのため、本発明を用いることで、タイヤ品質のトレーサビリィを向上させるに有利になる。また、本発明によれば、タイヤ品質が改善または悪化する要因を、タイヤ部材E1となる長尺体Lの製造時点に遡って分析できるので、タイヤ品質を改良するには大きく寄与する。
【0045】
また、長尺体Lに過度に変形、変質した不良部分(例えば先端部や後端部など)が存在する場合、その不良部分を除去して長尺体Lをストック手段14にストックすることがある。このように不良部分を除去した場合であっても、ストックされた長尺体Lには、タイヤ1本分の個別サイズに相当する範囲毎に位置特定マーク3が付されている。そのため、このような長尺体Lを使用してグリーンタイヤGを成形し、タイヤTを製造しても、そのタイヤT(グリーンタイヤG)に設けられているRFIDタグ8をタグリーダ7によって読み取ることで、タイヤ部材E1となる長尺体Lの製造時の品質情報QLを、タイヤ1本分の個別サイズ単位で、より高い精度で把握できる。
【0046】
長尺体Lの製造時の質量、温度、形状は、タイヤTの品質に比較的大きく影響するため、測定機4によって測定する品質情報QLとしては、これらの測定項目のうちの少なくとも1項目を含めることが好ましい。これら測定項目のうち、2項目または全項目を品質情報QLとして測定することがより好ましい。測定機4によって測定する長尺体Lの品質情報QLとしては、その他に任意に必要な項目を含めることができる。
【0047】
グリーンタイヤGに使用された未加硫ゴムRの所定の品質情報QLを、そのグリーンタイヤGに付されたRFIDタグ8に紐付けて、記憶部5または記憶装置9に記憶することもできる。これにより、記憶した未加硫ゴムRの所定の品質情報QLを、そのグリーンタイヤGを加硫して製造されたタイヤTの固有情報Dとして含めることができる。未加硫ゴムRの所定の品質情報QLとしては、製造時の粘度、温度などのデータを例示できる。
【0048】
長尺体Lのそれぞれの位置特定マーク3を付した範囲が製造された際の製造条件を、対応する位置特定マーク3と紐付けて、記憶部5または記憶装置9に記憶してもよい。即ち、長尺体Lの製造条件として、長尺体Lを押出す際の押出機12の押出圧力(ヘッド圧力)、押出速度などのデータをタイヤTの固有情報Dとして含めることができる。
【0049】
また、グリーンタイヤGの成形条件およびグリーンタイヤGの加硫条件を、そのグリーンタイヤGに付されたRFIDタグ8に紐付けて記憶装置9に記憶することもできる。これにより、記憶した成形条件および加硫条件を、そのグリーンタイヤGを加硫して製造されたタイヤTの固有情報Dとして含めることができる。
【0050】
この成形条件としては、そのグリーンタイヤGの成形に使用された成形機15の機番、成形時間、成形時刻、成形機15を操作した担当者名などのデータを例示できる。この加硫条件としては、そのグリーンタイヤGの加硫に使用された加硫装置16の機番、使用された加硫モールド17の固体番号および洗浄履歴、加硫時間、加硫時刻、加熱温度履歴、加圧圧力履歴、加硫装置16を操作した担当者名などのデータを例示できる。
【0051】
このように、タイヤTの固有情報Dとして、そのタイヤTに使用されている長尺体Lの上述した品質情報QLを含めたそれぞれのタイヤ部材Eの品質情報、それぞれのタイヤ部材Eの製造条件、グリーンタイヤGの成形条件、加硫条件のデータを含めることが望ましい。これにより、タイヤTを製造する上流側から下流側までの一連の工程での品質情報および製造条件のデータを、そのタイヤTに付されているRFIDタグ8をタグリーダ7によって読み取ることで、迅速かつ精度よく把握することが可能になる。これに伴い、タイヤ品質のトレーサビリティが一段と向上する。
【0052】
本発明は空気入りタイヤに限らず、その他の種々のタイプのタイヤTを管理するために用いることができる。
【0053】
この実施形態によれば、RFIDタグ8が、タイヤTの外表面に露出しない状態でタイヤTに設けられているので、タイヤTの製造現場、流通過程、或いは、使用中にタイヤTが他の物体と接触しても、RFIDタグ8に直接接触することはない。そのため、RFIDタグ8の損傷やRFIDタグ8のタイヤTから脱落する不具合が抑制される。
【0054】
また、RFIDタグ8が、タイヤTの外表面に配置されている特定の表面マークSMに相当する位置に配置されている。タイヤTを目視してもRFIDタグ8を直接視認することはできないが、その表面マークSMを一見すれば、その表面マークSMの近傍位置にRFIDタグ8が配置されていることを容易に把握することができる。このように、タイヤTにおけるRFIDタグ8の位置がタイヤTの外側からの目視によって把握し易くなるので、その表面マークSMの近傍位置にタグリーダ7を配置することで、RFIDタグ8をタグリーダ7によって確実に読み取り易くなる。それ故、タイヤ部材E1の個別情報QLxを含むタイヤTの固有情報Dを、長期間に渡り安定してより確実に把握するには有利になる。
【0055】
RFIDタグ8はパッシブ型のICタグであるため、タグリーダ7との無線通信可能距離は1m~2m程度である。そのため、タグリーダ7をなるべくRFIDタグ8に近づけて無線通信をする必要がある。また、複数のタイヤTが隣接して配置されている場合に、中途半端な距離でタグリーダ7から電波W1を発信すると、どのタイヤTに設けられているRFIDタグ8と通信したのか不明確になる。したがって、それぞれのタイヤTに設けられているRFIDタグ8に対してタグリーダ7を確実に近づけて無線通信を行うことができるこの実施形態は、当業者にとっては大きなメリットである。
【0056】
図9、
図10に例示するように、表面マークSMとして、タイヤTの外側側面に対して窪んでいる凹部を用いることもできる。この実施形態では、タイヤTの外側側面にRFIDタグ8が埋設されていて、このRFIDタグ8の周囲を囲むようにタイヤTの外側側面の表面に形成された環状溝が表面マークSMになっている。表面マークSMとして凹部を採用すると、凸部や印刷(塗布)などで形成された表面マークSMに比してタイヤTの外表面から消失し難くなる。その結果、表面マークSMを長期に渡って存続させるには有利になる。凹部(環状溝)の深さは例えば1mm~3mm程度である。
【0057】
凹部からなる表面マークSMは、RFIDタグ8の周囲を囲む環状溝ではなく、RFIDタグ8の近傍に形成された窪みでもよく、その形状は限定されない。この実施形態では、RFIDタグ8の表面が表面マークSMの溝深さと同じ深さ位置に配置されている。RFIDタグ8が表面マークSMの溝深さ以上の深さ位置に埋設されていると、RFIDタグ8の脱落を防止するには有利になる。
【0058】
図11に例示する実施形態では、RFIDタグ8の表面をタイヤTの外側側面と同じレベルにしてRFIDタグ8がタイヤTの外側側部に配置されている。そして、RFIDタグ8の表面全体がタイヤTの外側側面から突出しているゴム材からなる表面マークSMにより被覆されている。この表面マークSM(ゴム材)によってRFIDタグ8がタイヤTの外表面に露出しない状態になっている。
【0059】
この実施形態では、タイヤTに対するRFIDタグ8の埋設深さが最小限になる。RFIDタグ8はタイヤTにとっては異物になるので、埋設深さを最小限にすることでRFIDタグ8を起点としてタイヤTが損傷する不具合を回避するには有利になる。また、この実施形態では、RFIDタグ8の表面全体を被覆するゴム材がタイヤTの外側側面から突出しているので、表面マークSMとしても機能させることができる。この表面マークSM(ゴム材)の厚さは1mm~3mm程度である。
【0060】
図12に例示する実施形態では、RFIDタグ8がタイヤTの外側側面の表面に突設されている。そして、RFIDタグ8の表面全体がタイヤTの外側側面から突出しているゴム材からなる表面マークSMにより被覆されている。この表面マークSM(ゴム材)によってRFIDタグ8がタイヤTの外表面に露出しない状態になっている。
【0061】
この実施形態では、本来のタイヤTに対してRFIDタグ8が埋設されていないので、
RFIDタグ8を起点としてタイヤTが損傷する不具合を回避するには益々有利になる。この実施形態においても、RFIDタグ8の表面全体を被覆するゴム材を、表面マークSMとしても機能させることができる。この表面マークSM(ゴム材)の厚さは1mm~3mm程度である。
【0062】
図11、
図12に例示する実施形態では、表面マークSMとして、タイヤTの外側側面から突出しているゴム材を用いているが、このゴム材にはタイヤTの外側側面と強固に接合できる(一体化できる)ゴム種を用いる。したがって、このゴム材にはタイヤTの外側側面と同種のゴムを用いるとよい。また、このゴム材とは別の表面マークSMを用いることもできる。即ち、
図11、
図12に例示する実施形態においても、上述した種々の表面マークSMを用いることもできる。
【0063】
この管理システム1は、タイヤTを台タイヤとして更生タイヤを製造する際にも活用することができる。更生タイヤを製造する際には、タイヤTのトレッドゴムE1aは除去されて台タイヤとなる。この台タイヤに対して新たな未加硫のトレッドゴムE1aが貼付けて加硫することで更生タイヤが製造される。したがって、RFIDタグ8を既述したようにタイヤTの側面部分に設けておけば、このRFIDタグ8を製造した更生タイヤにおいても引き続き使用できる。
【0064】
そこで、更生タイヤに使用されるタイヤ部材E1(新たなトレッドゴムE1a)の個別情報QLxおよび更生タイヤの製造条件(成形条件および加硫条件)を、台タイヤに設けられているRFIDタグ8と紐付けて、このタイヤT(更生タイヤ)の固有情報Dとして追加して記憶装置9に記憶する。更生タイヤの成形条件としては、その更生タイヤの成形に使用された成形機の機番、成形時間、成形時刻、成形機を操作した担当者名などのデータを例示できる。更生タイヤの加硫条件としては、その更生タイヤの加硫に使用された加硫装置の機番、使用された加硫モールドの固体番号および洗浄履歴、加硫時間、加硫時刻、加熱温度履歴、加圧圧力履歴、加硫装置を操作した担当者名などのデータを例示できる。
【0065】
タイヤTを更生する度(更生タイヤを製造する度)に、上述したように、更生タイヤに使用されるタイヤ部材E1(新たなトレッドゴムE1a)の個別情報QLxおよび更生タイヤの製造条件(成形条件および加硫条件)を、固有情報Dとして追加して記憶装置9に記憶する。RFIDタグ8はタイヤTの外表面に露出しない状態でタイヤTに取付けられているので、タイヤTの使用中にRFIDタグ8が損傷または脱落するリスクが低い。これにより更生タイヤの固有情報Dをより確実に安定して把握することが可能になる。
【0066】
この管理システム1では、記憶装置9に記憶されている固有情報Dを変更した際に、RFIDタグ8のICチップにはその固有情報Dを変更したことを示す情報を記憶するようにしてもよい。即ち、記憶装置9に記憶されているタイヤTの固有情報Dを変更(追加、変更、修正、更新など)した場合には、そのタイヤTに設けられているRFIDタグ8のICチップに対して、タグリーダ7を用いてその固有情報Dに変更があったことを示す情報を記憶する。例えば、どのような種類の固有情報Dがいつ変更されたのを把握できる情報をICチップに記憶する。このように記憶装置9に記憶されている固有情報Dの変更とともに、RFIDタグ8にはその固有情報Dを変更したことを示す情報を記憶することで、記憶装置9に記憶されている固有情報Dが不用意に、或いは、意図せずに変更されることを防止するには有利になる。
【0067】
本開示は以下の発明を包含する。
[発明1]長尺体を切断してタイヤ1本分の個別サイズに形成されたタイヤ部材を含む複数種類のタイヤ部材を一体化してグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤを加硫することで製造されたタイヤの前記タイヤ部材の個別情報を含む前記タイヤの固有情報を、前記タイヤに設けられているRFIDタグと紐付けて記憶装置に記憶し、前記RFIDタグをタグリーダによって読み取ることで、前記固有情報を取得するタイヤの管理方法において、前記RFIDタグが、前記タイヤの外表面に露出しない状態で前記タイヤに設けられていて、前記RFIDタグを、前記タイヤの外表面に配置されている特定の表面マークに相当する位置に配置するタイヤの管理方法。
[発明2]前記RFIDタグの表面を前記タイヤの外側側面と同じレベルにして前記RFIDタグが前記タイヤの外側側部に配置されていて、前記RFIDタグの表面全体が前記タイヤの外側側面から突出しているゴム材により被覆されて前記RFIDタグが前記タイヤの外表面に露出しない状態になっている[発明1]に記載のタイヤの管理方法。
[発明3]前記RFIDタグが前記タイヤの外側側面の表面に突設されていて、前記RFIDタグの表面全体が前記タイヤの外側側面から突出しているゴム材により被覆されて前記RFIDタグが前記タイヤの外表面に露出しない状態になっている[発明1]に記載のタイヤの管理方法。
[発明4]前記特定の表面マークとして、前記タイヤの外側側面から突出しているゴム材を用いる[発明2]または[発明3]に記載のタイヤの管理方法。
[発明5]前記特定の表面マークとして、前記タイヤの外側側面に対して窪んでいる凹部を用いる[発明1]~[発明4]のいずれかに記載のタイヤの管理方法。
[発明6]前記長尺体を製造した際に、前記長尺体のタイヤ1本分の個別サイズに相当する範囲毎に位置特定マークを付すとともに、それぞれの前記位置特定マークを付した範囲での前記長尺体の所定の品質情報を測定して、この測定した前記品質情報を前記位置特定マークと紐付けして記憶しておき、前記グリーンタイヤを成形する際に、使用される前記個別サイズに形成された前記タイヤ部材に付されている前記位置特定マークを読み取って前記位置特定マークに紐付けされている前記品質情報を、このタイヤ部材の前記個別情報とする[発明1]~[発明5]のいずれかに記載のタイヤの管理方法。
[発明7]前記タイヤを台タイヤとして更生タイヤを製造する際に、前記更生タイヤに使用されるタイヤ部材の個別情報および前記更生タイヤの製造条件を、前記台タイヤに設けられている前記RFIDタグと紐付けて前記タイヤの前記固有情報として追加して前記記憶装置に記憶する[発明1]~[発明6]のいずれかに記載のタイヤの管理方法。
[発明8]前記記憶装置に記憶されている前記固有情報の変更とともに、前記RFIDタグには前記固有情報の変更をしたことを示す情報を記憶する[発明1]~[発明7]のいずれかに記載のタイヤの管理方法。
[発明9]
長尺体を切断してタイヤ1本分の個別サイズに形成されたタイヤ部材を含む複数種類のタイヤ部材を一体化したグリーンタイヤを加硫して製造されたタイヤの前記タイヤ部材の個別情報を含む前記タイヤの固有情報と、前記タイヤに設けられているRFIDタグとが紐付けられて記憶される記憶装置と、前記RFIDタグを読み取ることにより前記固有情報を取得するタグリーダと、を備えたタイヤの管理システムにおいて、
前記RFIDタグが、前記タイヤの外表面に露出しない状態で前記タイヤに設けられていて、前記RFIDタグが、前記タイヤの外表面に配置されている特定の表面マークに相当する位置に配置されているタイヤの管理システム。
【符号の説明】
【0068】
1 管理システム
2 マーク付与機
3 位置特定マーク
4(4a、4b、4c) 測定機
5 記憶部
6 位置特定マークリーダ
7 タグリーダ
8 RFIDタグ
9 記憶装置
10 モニタ
11 混練機
12 押出機
13 搬送機構
14 ストック手段
14a カッター
15 成形機
15a 成形ドラム
16 加硫装置
17 加硫モールド
G グリーンタイヤ
T 加硫済みタイヤ
SM 特定の表面マーク
L 長尺体
E(E1、Ew) タイヤ部材
E1a トレッドゴム
E1b サイドゴム
E1c インナーライナ
E1d カーカス材
E1e ベルト材
E1f ベルトカバー材
E1g ビードフィラ
Ew ビードワイヤ
R 未加硫ゴム
M 原材料
D 固有情報
QL 長尺体の品質情報
QLx タイヤ部材E1の個別情報
【要約】
【課題】タイヤ部材の個別情報を含むタイヤの固有情報を、長期間に渡り安定してより確実に把握できるタイヤの管理方法および管理システムを提供する。
【解決手段】長尺体Lを切断してタイヤ1本分の個別サイズに形成されたタイヤ部材E1を含む複数種類のタイヤ部材Eを一体化したグリーンタイヤGを加硫することで製造されたタイヤTのタイヤ部材E1の個別情報QLxを含むタイヤTの固有情報DをRFIDタグ8と紐付けて記憶装置9に記憶し、RFIDタグ8をタイヤTの外表面に露出しない状態でタイヤTに設けるとともに、タイヤTの外表面に配置されている特定の表面マークSMに相当する位置に配置して、RFIDタグ8をタグリーダ7によって読み取ることで固有情報Dを取得する。
【選択図】
図5