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特許7421154フルオロポリエーテル基含有化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】フルオロポリエーテル基含有化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/32 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
C08G65/32
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023085016
(22)【出願日】2023-05-24
(65)【公開番号】P2023174585
(43)【公開日】2023-12-07
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2022085510
(32)【優先日】2022-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100206324
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 明子
(72)【発明者】
【氏名】山下 恒雄
(72)【発明者】
【氏名】久保田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】三橋 尚志
(72)【発明者】
【氏名】高野 真也
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-026795(JP,A)
【文献】特開2001-226482(JP,A)
【文献】特開2008-280294(JP,A)
【文献】特開2012-072069(JP,A)
【文献】特開2017-137511(JP,A)
【文献】特表2001-507351(JP,A)
【文献】国際公開第2018/135506(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0112036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
[式(1)中、
は、-OR1aまたは-NR1b を表す。
1aは、水素原子、1個もしくはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
1bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、1個もしくはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
は、-OR2aまたは-NR2b を表す。
2aは、水素原子、1個もしくはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
2bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、1個もしくはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表す。
F2は、-Rf -R-O-を表す。
Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基を表す。
は、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基を表す。
pは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1である。
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1である。]
で表される化合物に、反応媒体の存在下、還元剤を作用させることにより、
式(2)
【化2】
[式(2)中、R、R、XおよびRF2は、上記と同意義である。]
で表される化合物を得ることを含み、
前記反応媒体は含フッ素アルコールを含み、
前記含フッ素アルコールが、式(1)で表される化合物1モルに対して、0.1モル以上である、フルオロポリエーテル基含有化合物の製造方法。
【請求項2】
前記含フッ素アルコールの炭素数は、1~5である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記反応媒体は、含フッ素アルコール以外の含フッ素溶剤および非フッ素溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記反応媒体の沸点は、70℃以上200℃以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
式(1)で表される化合物に還元剤を作用させる際の圧力が、1MPa以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
式(1)で表される化合物に還元剤を作用させる際の温度が、100℃以上150℃以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記還元剤が、金属水素化物還元剤、金属還元剤、ヒドラジン還元剤、フォスフィン還元剤、フォスファイト還元剤、金属アルコキシド還元剤およびハロゲン化希土類金属還元剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記還元剤が、ホウ素系還元剤、アルミニウム系還元剤およびケイ素系還元剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記還元剤が、式(1)で表される化合物1モルに対して、2モル以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記含フッ素アルコールが、還元剤1モルに対して、0.1モル以上である、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フルオロポリエーテル基含有化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリエーテル基含有化合物の製造方法として、特許文献1には、炭素上に担持されたRuまたはRhを水素化触媒として、カルボキシル性またはケトン性末端基を有するパーフルオロポリエーテルを、ガス状水素と反応させることを含む、パーフルオロポリエーテルの製造方法が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、カルボニル基(-CO-)を両末端に有するパーフルオロポリエーテル化合物を加水分解、塩形成、あるいはエステル化する際に、LiAlHやNaBH等の還元剤を共存させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-339221号公報
【文献】米国特許第3847978号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような製造方法では、両末端に水酸基、アミノ基等の活性基を有するフルオロポリエーテル基含有化合物を製造する際、高圧下で還元反応を実施する必要があった。また、特許文献2に記載されているLiAlH、NaBHのような還元剤を用いて還元反応を実施する場合、ダイマーが生じてゲル化する不具合や、意図した還元反応が十分に進行しない不具合などが生じうることを見出した。
【0006】
本開示における課題は、従来よりも低圧下で、且つ高収率で、両末端に活性基を有するフルオロポリエーテル基含有化合物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の態様を含む。
[1]
式(1)
【0008】
【化1】
[式(1)中、
は、-OR1aまたは-NR1b を表す。
1aは、水素原子、1個もしくはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
1bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、1個もしくはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
は、-OR2aまたは-NR2b を表す。
2aは、水素原子、1個もしくはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
2bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、1個もしくはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表す。
F2は、-Rf -R-O-を表す。
Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基を表す。
は、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基を表す。
pは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1である。
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1である。]
で表される化合物に、反応媒体の存在下、還元剤を作用させることにより、
式(2)
【0009】
【化2】
[式(2)中、R、R、XおよびRF2は、上記と同意義である。]
で表される化合物を得ることを含み、
前記反応媒体は含フッ素アルコールを含む、フルオロポリエーテル基含有化合物の製造方法。
[2]
前記含フッ素アルコールの炭素数は、1~5である、[1]に記載の製造方法。
[3]
前記反応媒体は、含フッ素アルコール以外の含フッ素溶剤および非フッ素溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含む、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]
前記反応媒体の沸点は、70℃以上200℃以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の製造方法。
[5]
式(1)で表される化合物に還元剤を作用させる際の圧力が、1MPa以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
[6]
式(1)で表される化合物に還元剤を作用させる際の温度が、100℃以上150℃以下である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の製造方法。
[7]
前記還元剤が、金属水素化物還元剤、金属還元剤、ヒドラジン還元剤、フォスフィン還元剤、フォスファイト還元剤、金属アルコキシド還元剤およびハロゲン化希土類金属還元剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[1]~[6]のいずれか1つに記載の製造方法。
[8]
前記還元剤が、ホウ素系還元剤、アルミニウム系還元剤およびケイ素系還元剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[1]~[7]のいずれか1つに記載の製造方法。
[9]
前記還元剤が、式(1)で表される化合物1モルに対して、2モル以上である、[1]~[8]のいずれか1つに記載の製造方法。
[10]
前記含フッ素アルコールが、還元剤1モルに対して、0.1モル以上である、[1]~[9]のいずれか1つに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、両末端に活性基を有するフルオロポリエーテル基含有化合物を高収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示のフルオロポリエーテル基含有化合物の製造方法は、
式(1)
【0012】
【化3】
【0013】
[式(1)中、
は、-OR1aまたは-NR1b を表す。
1aは、水素原子、1個もしくはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
1bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、1個もしくはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
は、-OR2aまたは-NR2b を表す。
2aは、水素原子、1個もしくはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
2bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、1個もしくはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表す。
F2は、-Rf -R-O-を表す。
Rfは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基を表す。
は、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基を表す。
pは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1である。 qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1である。]
で表される化合物(以下、「化合物(1)」ともいう。)に、反応媒体の存在下、還元剤を作用させることにより、
式(2)
【0014】
【化4】
【0015】
[式(2)中、R、R、XおよびRF2は、上記と同意義である。]
で表される化合物(以下、「化合物(2)」ともいう。)を得ることを含み、前記反応媒体は、含フッ素アルコールを含む。
【0016】
本開示の製造方法によれば、含フッ素アルコールを含む反応媒体の存在下で還元剤を作用させることにより、従来よりも低圧下で、且つ高い収率で、両末端に活性基を有するフルオロポリエーテル基含有化合物を製造することができる。
【0017】
式(1)および(2)において、Rは、-OR1aまたは-NR1b を表す。
【0018】
1aは、水素原子、1個もしくはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
1bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、1個もしくはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
【0019】
1aおよびR1bで表される、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基は、それぞれ独立に、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-6アルキル基、特に直鎖または分枝鎖のC1-3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6アルキル基、特に直鎖のC1-3アルキル基である。
【0020】
1aおよびR1bで表される、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基は、それぞれ独立に、好ましくは1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-16アルキル基であり、より好ましくはCFH-C1-15パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-16パーフルオロアルキル基である。
【0021】
上記C1-16パーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF、-CFCF、またはCFCFCFである。
【0022】
1aおよびR1bで表されるハロゲン原子としては、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
【0023】
一の態様において、R1aとしては、水素原子が好ましい。
【0024】
一の態様において、R1bの少なくとも1つは水素原子であることが好ましく、R1bはいずれも水素原子であることがより好ましい。
【0025】
式(1)および(2)において、Rは、-OR2aまたは-NR2b を表す。
【0026】
2aは、水素原子、1個もしくはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
【0027】
2bは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、1個もしくはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基、または、ハロゲン原子を表す。
【0028】
2aおよびR2bで表される、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基は、それぞれ独立に、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-6アルキル基、特に直鎖または分枝鎖のC1-3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6アルキル基、特に直鎖のC1-3アルキル基である。
【0029】
2aおよびR2bで表される、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基は、それぞれ独立に、好ましくは1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-16アルキル基であり、より好ましくはCFH-C1-15パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-16パーフルオロアルキル基である。
【0030】
上記C1-16パーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF、-CFCF、またはCFCFCFである。
【0031】
2aおよびR2bで表されるハロゲン原子としては、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子が好ましい。
【0032】
一の態様において、R2aとしては、水素原子が好ましい。
【0033】
一の態様において、R2bの少なくとも1つは水素原子であることが好ましく、R2bはいずれも水素原子であることがより好ましい。
【0034】
式(1)および(2)において、RF2は、-Rf -R-O-を表す。
【0035】
Rfで表される、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3アルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3アルキレン基である。
【0036】
Rfは、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-6アルキレン基であり、より好ましくはC1-6パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-3パーフルオロアルキレン基である。
【0037】
上記C1-6パーフルオロアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖のC1-3パーフルオロアルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3パーフルオロアルキレン基、具体的には-CF-、-CFCF-または-CFCFCF-である。
【0038】
上記式において、pは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1である。一の態様において、pは0である。別の態様においてpは1である。
【0039】
上記式において、qは、各出現においてそれぞれ独立して、0または1である。一の態様において、qは0である。別の態様においてqは1である。
【0040】
上記式(1)および(2)において、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基を表す。
【0041】
は、好ましくは、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中、
Faは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または塩素原子を表す。
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は1以上である。a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。ただし、すべてのRFaが水素原子または塩素原子である場合、a、b、c、eおよびfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基である。
【0042】
Faは、好ましくは、水素原子またはフッ素原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。ただし、すべてのRFaが水素原子または塩素原子である場合、a、b、c、eおよびfの少なくとも1つは、1以上である。
【0043】
a、b、c、d、eおよびfは、好ましくは、それぞれ独立して、0~100の整数であってもよい。
【0044】
a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上または20以上であってもよい。a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは60以下であり、例えば50以下または30以下であってもよい。
【0045】
これら繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよく、環構造を含んでいてもよい。例えば、-(OC12)-は、-(OCFCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCFCF(CF))-等であってもよい。-(OC10)-は、-(OCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCF(CF))-等であってもよい。-(OC)-は、-(OCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCF)-、-(OCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCF(CF))-、-(OC(CFCF)-、-(OCFC(CF)-、-(OCF(CF)CF(CF))-、-(OCF(C)CF)-および-(OCFCF(C))-のいずれであってもよい。-(OC)-(即ち、上記式中、RFaはフッ素原子である)は、-(OCFCFCF)-、-(OCF(CF)CF)-および-(OCFCF(CF))-のいずれであってもよい。-(OC)-は、-(OCFCF)-および-(OCF(CF))-のいずれであってもよい。
【0046】
上記環構造は、下記三員環、四員環、五員環、または六員環であり得る。
【0047】
【化5】
[式中、*は、結合位置を示す。]
【0048】
上記環構造は、好ましくは四員環、五員環、または六員環、より好ましくは四員環、または六員環であり得る。
【0049】
環構造を有する繰り返し単位は、好ましくは、下記の単位であり得る。
【0050】
【化6】
[式中、*は、結合位置を示す。]
【0051】
一の態様において、上記繰り返し単位は直鎖状である。
【0052】
一の態様において、上記繰り返し単位は分枝鎖状である。
【0053】
一の態様において、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、下記式(f1)~(f6)のいずれかで表される基である。
-(OC-(OC- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは0または1である。];
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、eおよびfの和は2以上であり、
添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。];
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCFまたはOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10およびOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。];
-(R-R-R-(R7’-R6’g’- (f4)
[式中、Rは、OCFまたはOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、
6’は、OCFまたはOCであり、
7’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
は、
【0054】
【化7】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0055】
上記式(f1)において、dは、好ましくは5~200、より好ましくは10~100、さらに好ましくは15~50、例えば25~35の整数である。上記式(f1)におけるOCは、好ましくは、(OCFCFCF)、(OCF(CF)CF)または(OCFCF(CF))であり、より好ましくは、(OCFCFCF)である。上記式(f1)における(OC)は、好ましくは、(OCFCF)または(OCF(CF))であり、より好ましくは、(OCFCF)である。一の態様において、eは0である。別の態様において、eは1である。
【0056】
上記式(f2)において、eおよびfは、それぞれ独立して、好ましくは5~200、より好ましくは10~200の整数である。また、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上または20以上であってもよい。一の態様において、上記式(f2)は、好ましくは、-(OCFCFCFCF-(OCFCFCF-(OCFCF-(OCF-で表される基である。別の態様において、式(f2)は、-(OC-(OCF-で表される基であってもよい。
【0057】
上記式(f3)において、Rは、好ましくは、OCである。上記(f3)において、Rは、好ましくは、OC、OCおよびOCから選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせであり、より好ましくは、OCおよびOCから選択される基である。OC、OCおよびOCから独立して選択される2または3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-および-OCOCOC-等が挙げられる。上記式(f3)において、gは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上の整数である。上記gは、好ましくは50以下の整数である。上記式(f3)において、OC、OC、OC、OC10およびOC12は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、上記式(f3)は、好ましくは、-(OC-OC-または-(OC-OC-である。
【0058】
上記式(f4)において、R、R及びgは、上記式(f3)の記載と同意義であり、同様の態様を有する。R6’、R7’及びg’は、それぞれ、上記式(f3)に記載のR、R及びgと同意義であり、同様の態様を有する。Rは、好ましくは、
【0059】
【化8】
[式中、*は、結合位置を示す。]
であり、より好ましくは
【0060】
【化9】
[式中、*は、結合位置を示す。]
である。
【0061】
上記式(f5)において、eは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0062】
上記式(f6)において、fは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、eおよびfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0063】
一の態様において、上記Rは、上記式(f1)で表される基である。
【0064】
一の態様において、上記Rは、上記式(f2)で表される基である。
【0065】
一の態様において、上記Rは、上記式(f3)または(f4)で表される基である。
【0066】
一の態様において、上記Rは、上記式(f3)で表される基である。
【0067】
一の態様において、上記Rは、上記式(f4)で表される基である。
【0068】
一の態様において、上記Rは、上記式(f5)で表される基である。
【0069】
一の態様において、上記Rは、上記式(f6)で表される基である。
【0070】
上記Rにおいて、fに対するeの比(以下、「e/f比」という)は、0.1~10であり、好ましくは0.2~5であり、より好ましくは0.2~2であり、さらに好ましくは0.2~1.5であり、さらにより好ましくは0.2~0.85である。一方、e/f比を0.1以上にすることにより、化合物の安定性をより高めることができる。e/f比がより大きいほど、化合物の安定性はより向上する。
【0071】
上記フルオロポリエーテル基含有化合物において、RF1およびRF2部分の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば500~30,000、好ましくは1,500~30,000、より好ましくは2,000~10,000である。本明細書において、RF1およびRF2の数平均分子量は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0072】
別の態様において、RF1およびRF2部分の数平均分子量は、500~30,000、好ましくは1,000~20,000、より好ましくは2,000~15,000、さらにより好ましくは2,000~10,000、例えば3,000~6,000であり得る。
【0073】
別の態様において、RF1およびRF2部分の数平均分子量は、4,000~30,000、好ましくは5,000~10,000、より好ましくは6,000~10,000であり得る。
【0074】
は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基である。
【0075】
で表される2価の有機基としては、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz1-O-(CHz2-(式中、z1は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)、または、-(CHz3-フェニレン-(CHz4-(式中、z3は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、およびC2-6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0076】
好ましい態様において、Xで表される2価の有機基は、C1-6アルキレン基または-(CHz3-フェニレン-(CHz4-であり、好ましくは-フェニレン-(CHz4-である。
【0077】
別の好ましい態様において、上記Xはは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Xは、単結合または-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Xは、単結合または-CHCH-であり得る。
【0078】
一の態様において、Xは単結合である。
【0079】
式(1)で表されるフルオロポリエーテル基含有化合物は、特に限定されるものではないが、5×10~1×10の平均分子量を有しうる。かかる範囲のなかでも、2,000~32,000、より好ましくは2,500~12,000の平均分子量を有することが好ましい。なお、かかる「平均分子量」は、数平均分子量を言い、「平均分子量」は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0080】
上記反応媒体は、化合物(1)を還元反応する際の媒体であり、含フッ素アルコールを含む。特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、反応媒体が含フッ素アルコールを含み、化合物(2)の反応媒体への溶解性が良好であるため、化合物(1)の還元反応が促進され、従来よりも低圧下で、且つ高収率で、化合物(2)を製造できると考えられる。
【0081】
上記含フッ素アルコールとしては、フッ素原子を有するアルコールが挙げられ、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換された炭化水素基と1個以上の水酸基とが結合している化合物が挙げられる。
【0082】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素および水素を含む基であって、炭化水素から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。1個またはそれ以上のフッ素原子により置換された炭化水素基は、上記炭化水素基に含まれる水素原子をフッ素原子で置換した基を意味する。
【0083】
かかる含フッ素アルコールとしては、特に限定されるものではないが、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換された脂肪族炭化水素基と水酸基とが結合したアルコール;1個またはそれ以上のフッ素原子により置換された芳香族炭化水素基と水酸基とが結合したアルコールが挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてよい。
【0084】
一の態様において、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換された炭化水素基は、好ましくは直鎖または分枝鎖のC1-20フルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖または分枝鎖のC1-10フルオロアルキル基であり、さらに好ましくは直鎖または分枝鎖のC1-5フルオロアルキル基であり、特に直鎖のC1-5フルオロアルキル基である。
【0085】
上記含フッ素アルコールの炭素数(すなわち、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換された炭化水素基の炭素数)は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、さらに好ましくは1~5である。
【0086】
上記含フッ素アルコールは、1級、2級または3級アルコールであり得、好ましくは1級アルコールである。
【0087】
上記含フッ素アルコールは、例えば、CFCHOH、CFCFCHOH、CHFCFCHOH、CHFCHOH、CFCH(OH)CF、CFCH(OH)CH、CHFCH(OH)CHF、CHFCH(OH)CHF、CFCFCFCHOH、CFCHFCFCHOH、CHFCFCFCHOH、CFCHCHCHOH、(CFCFCHOH、CFCFCH(OH)CF、CFCFCH(OH)CH、(CFCOH、CH(CFCOH、CF(CHCOH、CFCFCFCFCHOH、CFCFCHCHCHOH、CFCHCHCHCHOH、CHF(CFCFCHCHOH、(CFCCHOH、CFCFCFCH(OH)CF、CFCFCFCH(OH)CH、CFCFC(CFOH、CFCFC(CHOH、CHFCFC(CFOH、CFCFCFCHOH等であってよく、好ましくは、CFCHOH、CFCFCHOH、CFCFCFCHOH、CFCFCFCFCHOH等であってよい。
【0088】
上記含フッ素アルコールの沸点は、好ましくは30℃以上200℃以下、より好ましくは50℃以上200℃以下、さらに好ましくは70℃以上150℃以下であってよい。
【0089】
上記含フッ素アルコールの使用量は、1モルの化合物(1)に対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.1モル以上50モル以下、さらに好ましくは1モル以上30モル以下であり、一の態様において、いっそう好ましくは1モル以上10モル以下であり、別の態様において、いっそう好ましくは10モル以上30モル以下である。
【0090】
上記含フッ素アルコールの使用量は、1モルの上記還元剤に対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.1モル以上50モル以下、さらに好ましくは1モル以上10モル以下である。上記含フッ素アルコールの使用量は、1モルの上記還元剤に対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは1モル以上であり、好ましくは50モル以下、より好ましくは10モル以下である。
【0091】
反応媒体における含フッ素アルコールの含有率は、好ましくは0.01質量%以上99.9質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上70質量%以下である。
【0092】
上記反応媒体は、含フッ素アルコール以外の含フッ素溶剤および非フッ素溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
【0093】
上記含フッ素アルコール以外の含フッ素溶剤としては、分子中にフッ素原子を有し、含フッ素アルコールと相溶しうる溶剤を用いることができる。一の態様において、含フッ素アルコール以外の含フッ素溶剤としては、フルオロエーテル、フルオロカーボン、含フッ素芳香炭化水素類が挙げられる。
【0094】
上記フルオロエーテルとしては、パーフルオロブチルエチルエーテル、パーフルオロヘキシルメチルエーテル等のハイドロフルオロエーテル;ガルデンHT PFPE、AE-3000、HFE7100、HFE7200、HFE7300等のハイドロフルオロエーテル等が挙げられる。
上記フルオロカーボンとしては、パーフルオロヘキサン等のパーフルオロカーボン;ゼオローラH等のハイドロフルオロカーボン;1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジクロロ-1,2,2,3,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC225)等のハイドロクロロフルオロカーボン等が挙げられる。
上記含フッ素芳香族炭化水素類としては、m-ヘキサフルオロメタキシレン、ヘキサフルオロベンゼン等が挙げられる。
【0095】
反応媒体中、含フッ素アルコール以外の含フッ素溶剤は、含フッ素アルコール100質量部に対して、好ましくは100質量部以上20,000質量部以下、より好ましくは200質量部以上15,000質量部以下、さらに好ましくは200質量部以上10,000質量部以下である。
【0096】
上記非フッ素溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類;等が挙げられる。
【0097】
反応媒体中、非フッ素溶剤は、含フッ素溶剤100質量部に対して、好ましくは1質量部以上100質量部以下、より好ましくは2質量部以上50質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上20質量部以下である。
【0098】
一の態様において、反応媒体は、含フッ素アルコールと、含フッ素アルコール以外の含フッ素溶剤として含フッ素芳香族炭化水素類と、非フッ素溶剤としてグリコールエーテル類とを含むことが好ましい。
【0099】
上記反応媒体の沸点は、好ましくは70℃以上200℃以下、より好ましくは80℃以上175℃以下、さらに好ましくは100℃以上150℃以下である。上記反応媒体の沸点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは175℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。
【0100】
上記反応媒体は、化合物(1)1質量部に対して、好ましくは1質量部以上50質量部以下、より好ましくは1質量部以上30質量部以下、さらに好ましくは1質量部以上10質量部以下である。
【0101】
上記還元剤としては、化合物(1)に含まれるカルボニル基(-CO-)の炭素に作用して、カルボニル基をメチレン基(-CH-)とする機能を有する化合物を用いることができる。
【0102】
上記還元剤としては、具体的には、金属水素化物還元剤、金属還元剤、ヒドラジン還元剤、フォスフィン還元剤、フォスファイト還元剤、金属アルコキシド還元剤、ハロゲン化希土類還元剤、ギ酸系還元剤、ジトレイトール、ハンチュ・エステル、ヨウ化水素等が挙げられる。
【0103】
上記金属水素化物還元剤は、代表的には、金属と、該金属に結合している水素原子とを含む還元剤を表し、ホウ素系還元剤、アルミニウム系還元剤、ケイ素系還元剤、その他の金属水素化物還元剤が挙げられる。
【0104】
上記ホウ素系還元剤としては、ボラン-アンモニア錯体、ボラン-tert-ブチルアミン錯体、ボラン-ジメチルアミン錯体、ボラン-ジシクロヘキシルアミン錯体、ボラン-トリメチルアミン錯体、ボラン-トリエチルアミン錯体、ボラン-N,N-ジエチルアニリン錯体、ボラン-ピリジン錯体、ボラン-2-メチルピリジン錯体、ボラン-モルホリン錯体、ボラン-テトラヒドロフラン錯体、ボラン-ジメチルスルフィド錯体、ボラン-1,2-ビス(tert-ブチルチオ)エタン錯体等のボラン錯体化合物;水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素テトラブチルアンモニウム、水素化ホウ素テトラエチルアンモニウム、水素化ホウ素ベンジルトリエチルアンモニウム、水素化ホウ素テトラブチルアンモニウム、トリアセトキシ水素化ホウ素テトラメチルアンモニウム等の水素化ホウ素化合物が挙げられる。
【0105】
上記アルミニウム系還元剤としては、水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム等のアルミニウム水素化物が挙げられる。
【0106】
上記ケイ素系還元剤としては、トリエチルシラン、トリス(トリメチルシリル)シラン、トリフェニルシラン、トリヘキシルシラン、トリイソプロピルシラン、1,1,2,2-テトラフェニルジシラン、メチルジフェニルシラン、ジメトキシ(メチル)シラン、ジメチルフェニルシラン、ジエトキシメチルシラン、ジフェニルシラン、フェニルシラン、トリクロロシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン等のケイ素水素化物が挙げられる。
【0107】
その他の金属水素化物還元剤としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属;水素化カルシウム等の水素化アルカリ金属;ジルコノセンクロリドヒドリド等が挙げられる。
【0108】
上記金属還元剤としては、金属ナトリウム、金属カリウム等のアルカリ金属;金属マグネシウム、金属カルシウム等のアルカリ土類金属;金属亜鉛等が挙げられる。
【0109】
上記ヒドラジン還元剤としては、ヒドラジン一水酸化物、ヒドラジン無水物、N’-イソプロピルデン-2-ニトロベンゼンスルホノヒドラジド等が挙げられる。
【0110】
上記フォスフィン還元剤としては、トリフェニルフォスフィン、トリス(2-カルボキシエチル)フォスフィン塩酸塩等が挙げられる。
【0111】
上記フォスファイト還元剤としては、トリエチルフォスファイト、トリメチルフォスファイト等が挙げられる。
【0112】
上記金属アルコキシド還元剤としては、アルミニウムイソプロポキシド等のトリアルコキシアルミニウム等が挙げられる。
【0113】
上記ハロゲン化希土類金属還元剤としては、ヨウ化サマリウム、ヨウ化セリウム等のヨウ化希土類金属;塩化サマリウム、塩化セリウム等の塩化希土類金属等が挙げられる。
【0114】
上記ギ酸系還元剤としては、ギ酸、ギ酸ナトリウム、ギ酸トリエチルアミン等が挙げられる。
【0115】
一の態様において、上記還元剤は、金属水素化物還元剤、金属還元剤、ヒドラジン還元剤、フォスフィン還元剤、フォスファイト還元剤、金属アルコキシド還元剤およびハロゲン化希土類金属還元剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、金属水酸化物還元剤を含むことがより好ましく、ホウ素系還元剤、アルミニウム系還元剤およびケイ素系還元剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
【0116】
一の態様において、上記還元剤は、ホウ素系還元剤である。別の態様において、上記還元剤は、アルミニウム系還元剤である。
【0117】
上記還元剤の使用量は、化合物(1)1モルに対して、好ましくは2モル以上であり、より好ましくは2モル以上20モル以下、より好ましくは3モル以上10モル以下である。上記還元剤の使用量は、化合物(1)1モルに対して、好ましくは2モル以上、より好ましくは3モル以上であり、好ましくは20モル以下、より好ましくは10モル以下である。これにより、両末端に活性基を有するフルオロポリエーテル基含有化合物を低圧下で、且つ高い収率で、製造することが容易となる。
【0118】
化合物(1)に還元剤を作用させる際の温度は、好ましくは80℃以上150℃以下、より好ましくは100℃以上150℃以下、さらに好ましくは110℃以上140℃以下である。化合物(1)に還元剤を作用させる際の温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。
【0119】
化合物(1)に還元剤を作用させる際の圧力は、好ましくは1MPa以下であり、より好ましくは0.05MPa以上0.5MPa以下、さらに好ましくは0.08MPa以上0.2MPa以下である。一の態様において、常圧下で、化合物(1)に還元剤を作用させてもよい。化合物(1)に還元剤を作用させる際の圧力は、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下、さらに好ましくは0.2MPa以下であり、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.08MPa以上である。
【0120】
化合物(1)に還元剤を作用させる際、必要に応じてルイス酸等の触媒を共存させてもよい。
【0121】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例
【0122】
以下、本開示の製造法について、実施例において説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、フルオロポリエーテルを構成する繰り返し単位の存在順序は任意であり、以下に示される化学式は平均組成を示す。
【0123】
(試験例1~13)
冷却管、温度計を備えた200ml三ツ口フラスコへ、常圧下、ヘキサフルオロベンゼン40mlに溶解したHOOCCF-O(CFCFO)-(CFO)-CFCOOH(m≒26、n≒24、以下「化合物(1-A)」ともいう)20.0gに、表1に示す所定量のペンタフルオロプロパノールと、ジグライム4mlを加え、80℃に加熱した。この溶液に、所定量の水素化ホウ素ナトリウムを複数回に分割して加え、所定の温度まで加熱し、常圧下で3時間撹拌した。
【0124】
室温に戻したのち10%塩酸水で反応をクエンチし分液した下層を19F-NMRによって分析した。HOOCCF-O(CFCFO)-(CFO)-CFCOOHとHOCHCF-(CFCFO)-(CFO)-CFCHOHのβ位-CF-の積分値よりそれぞれの存在比を決定した結果を表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
表1より、110~130℃、3時間の反応条件において、ペンタフルオロプロパノールを反応媒体として用いることで、常圧下で、且つ高収率で、両末端に活性基を有するフルオロポリエーテル基含有化合物を製造することが確認された。特に、1モルの化合物(1)に対し、ペンタフルオロプロパノールを1モル当量以上添加することで、無添加の場合に比べて、十分に還元を促進させることができた。また、1モルの化合物(1)に対し、水素化ホウ素ナトリウム6モル当量以上かつペンタフルオロプロパノール15モル当量を用いるか、または、1モルの化合物(1)に対し、水素化ホウ素ナトリウム6.6モル当量以上かつペンタフルオロプロパノール10モル当量以上を用いることで、さらに十分に反応を完結できた。