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特許7421157はんだ合金、はんだペースト及びはんだ継手
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  • 特許-はんだ合金、はんだペースト及びはんだ継手 図1
  • 特許-はんだ合金、はんだペースト及びはんだ継手 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】はんだ合金、はんだペースト及びはんだ継手
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/26 20060101AFI20240117BHJP
   B23K 35/22 20060101ALI20240117BHJP
   C22C 13/02 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B23K35/26 310A
B23K35/22 310A
C22C13/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023565129
(86)(22)【出願日】2023-08-11
(86)【国際出願番号】 JP2023029383
【審査請求日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2022128651
(32)【優先日】2022-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180426
【弁理士】
【氏名又は名称】剱物 英貴
(72)【発明者】
【氏名】横山 貴大
(72)【発明者】
【氏名】吉川 俊策
(72)【発明者】
【氏名】飯島 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】出井 寛大
(72)【発明者】
【氏名】松藤 貴大
(72)【発明者】
【氏名】杉澤 昂太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 滋人
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-28391(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181873(WO,A1)
【文献】特開2022-26827(JP,A)
【文献】特開2014-57974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/22
B23K 35/26
C22C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、Ag:0.1~3.9%、Cu:0.1~1.0%、Bi:0.6~1.4%、Sb:5.1~7.9%、Ni:0.01~0.30%、Co:0.001~0.100%以下、および残部がSnからなる合金組成を有することを特徴とするはんだ合金。
【請求項2】
前記合金組成は、更に、質量%で、In、Ga、As、Fe、Pd、Mn、Zn、Zr、およびMgの少なくとも1種を合計で0.1%以下の量を含有する、請求項1に記載のはんだ合金。
【請求項3】
前記合金組成は、下記(1)~(4)式の少なくとも1式を含有する、請求項1または2に記載のはんだ合金。
426≦(Ag×Cu)/(Ni×Co)≦8530 (1)
0.10≦Bi/Sb≦0.28 (2)
10.8≦Sn/Sb≦18.0 (3)
0.00004≦Bi×Sb×Ni×Co≦0.00254(4)
上記(1)~(4)式中、Sn、Ag、Cu、Bi、Sb、Ni、およびCoは、各々はんだ合金の質量%としての含有量である。
【請求項4】
請求項1または2に記載のはんだ合金を有することを特徴とするはんだペースト。
【請求項5】
請求項1または2に記載のはんだ合金を有することを特徴とするはんだ継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ合金、ソルダペースト及びはんだ継手に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車は、機械部品を電動化することにより高機能化や高性能化が図られている。自動車の高機能化および高性能化を実現するためには、小型化・高密度に対応するエレクトロニクス実装技術が必要とされている。この実装技術に対応するためには、プリント基板と電子部品とを接続するはんだ継手の高い信頼性が要求される。
【0003】
例えば、エンジンの近傍に搭載されるプリント基板は、著しい温度差の中で長期間の使用が要求される。ハイブリッド自動車においては、大電力を取り扱うインバータを搭載しており、インバータの駆動温度に耐えうるはんだ継手が要求される。このように、自動車のエレクトロニクス実装技術では、はんだ継手を構成するはんだ合金の高い信頼性が要求されているため、種々の検討が行われている。
【0004】
特許文献1には、150℃以上の高い使用温度または動作温度で高信頼性を必要とするはんだペーストに適したはんだ合金が開示されている。同文献に記載のはんだ合金は、液相線温度が220℃以上であるSn-Ag-Cu-Ni-Bi-Sb-Coはんだ合金である。
【0005】
特許文献2には、耐クリープ性を向上させるため、Pを含有するSn-Ag-Cu-Ni-Sb-Bi-Co-Pはんだ合金が開示されている。同文献の実施例には、はんだ合金の液相線温度が250℃以下の範囲内のはんだ合金が検討されている。
【0006】
特許文献3には、150℃で480時間の放置に耐えうるはんだ合金が開示されている。同文献の実施例には、Inを含有するSn-Ag-Cu-Ni-Sb-Bi-Co-Inはんだ合金が検討されている。
【0007】
特許文献4には、自動車、ハイパワーエレクトロニクス、エネルギー、LED照明などの分野において、例えば150℃以上で長時間の動作を許容するため、比較的高い融点を示すはんだ合金が開示されている。例えば、溶融温度が220℃以上であるSn-Ag-Cu-Ni-Bi-Sb-Co-Geはんだ合金が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6730999号公報
【文献】特許第6836040号公報
【文献】中国特許出願公開第112475664号公報
【文献】国際公開第2021/043437号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~4には、各文献に記載されている発明の目的を達成するために、液相線温度が200℃以上のSn-Ag-Cu-Ni-Bi-Sb-Co系はんだ合金が開示されている。例えば、SiC半導体デバイスの中には、200℃以上での高温動作が可能であるものがある。はんだ合金の融点が200℃より低いと動作時にはんだ合金が溶融するため、高性能の電子部品に対応することができない。特許文献1~4に記載のはんだ合金は、前述のように、高温で動作する電子部品の接続にも対応することは可能であると考えられる。しかし、はんだ継手としては、耐熱性を満たしても他の特性が劣ることがある。
【0010】
特許文献1に記載の発明では、濡れ性については評価されていないが、同文献の段落0043には、Biが溶融はんだの表面張力を低下させることによりぬれ性を向上させることが記載されている。このため、特許文献1に記載の発明では、濡れ性を向上させるためにはBiを多く含有した方がよい。
【0011】
一方、特許文献1に記載の発明では、高温放置後の引張強度が評価されている。そして、上記同段落には、「Biの添加によって合金の強度は高くなるが、その延性を著しく低下させ、はんだ継手を脆くすると共に耐熱疲労性を低下させる。本開示の実施形態において、1.5重量%以下のBi添加が過酷な環境の電子機器用途には好ましい。」と記載されている。すなわち、Biの含有量が少ない方が過酷な環境の電子機器用途には好ましいことが記載されている。このため、特許文献1に記載の発明では、Biの含有量を低減した方がよい。以上を鑑みると、特許文献1に開示されている上述のSn-Ag-Cu-Ni-Bi-Sb-Coはんだ合金は、高温放置後の引張強度の向上を目的としてBiの含有量を低減しているため、濡れ性が劣ることになる。
【0012】
特許文献2に記載の発明では、Pを含有するSn-Ag-Cu-Ni-Sb-Bi-Co-Pはんだ合金が開示されている。特許文献2には、耐クリープ性を向上させるためにPを含有する優れた発明である。ただ、特許文献2に記載の発明は、主としてプリフォームに用いられる。Pを含有するはんだ合金からなるはんだ粉末は凝集する恐れがあるため、はんだペーストとして用いられることは稀である。また、Pを多量に含有する場合は液相線温度が上昇してしまう。
【0013】
特許文献2には、Pを含有しないはんだ合金が比較例12に開示されている。しかし、特許文献2の比較例12は、特許文献1と同じ構成元素であるSn-Ag-Cu-Ni-Sb-Bi-Coはんだ合金ではあるものの、Biの含有量が少ないために濡れ性が劣ることになる。
【0014】
特許文献3に記載の発明では、濡れ性、引張強度、耐ヒートサイクル性、耐熱性が評価されている。しかし、特許文献3に記載の発明では、特に車載用電子部品と基板を接続するはんだ継手に必要な特性が評価されていない。例えば、険しい道を走行する際に外部からの応力が加わる環境下でも適応するためには、シェア強度や耐落下衝撃性が必要になる。これらは、はんだ継手にとって必要な効果である。このため、特許文献3に記載の発明では、シェア強度や耐落下衝撃性を向上させる検討の余地は十分にある。
【0015】
特許文献4に記載の発明では、濡れ性、硬度、引張強度、クリープ特性、接合界面のクラックが評価されている。しかし、特許文献3と同様に、シェア強度や耐落下衝撃性については評価されていない。このため、特許文献4に記載の発明では、特許文献3に記載の発明と同様に、シェア強度や耐落下衝撃性を向上させる検討の余地は十分にある。
【0016】
このように、従来のSn-Ag-Cu-Ni-Bi-Sb-Coはんだ合金は、同じ構成元素であっても、上述のすべての効果を同時に満足するものがなかった。これは、従来の検討では、特定の効果に絞った検討が行われていなかったためである。近年では、自動車の電気化にともない、車載用基板の数は増加していることから、種々の効果を同時に満足するようなはんだ合金が望まれている。
【0017】
本発明の課題は、適度な溶融温度を示し、濡れ性に優れ、引張強度およびシェア強度が高く、更には耐落下衝撃性にも優れるはんだ合金、はんだペースト及びはんだ継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、適度な溶融温度を示すはんだ合金として、特許文献1~4に開示されている合金組成を抽出し、各々の課題を調査した。
特許文献1のNo.2には、Sn-3.54Ag-1.04Cu-0.05Ni-3.46Sb-0.29Bi-0.05Coはんだ合金(数値は質量%を表す。以下も同様である。)が開示されている。特許文献1には、このはんだ合金の液相線温度が226℃であり、適度な温度であることが開示されている。しかし、このはんだ合金は、前述のように、Biの含有量が少なく濡れ性が劣る知見が得られた。
【0019】
上記はんだ合金は、引張強度が劣る知見が得られた。これは、Biの含有量が少ないために固溶強化および析出強化が不十分であるとともに、Sbの含有量が少ないためにSbによる固溶強化も不十分であることによると推察される。また、シェア強度も劣る知見が得られた。これは、Cuの含有量が多く接合界面に粗大な金属間化合物が析出したためであると推察される。
【0020】
特許文献2の比較例12には、Sn-3.4Ag-0.70Cu-0.06Ni-6.0Sb-0.5Bi-0.008Coはんだ合金が開示されている。このはんだ合金は、特許文献1に開示されているはんだ合金と同様に、Biの含有量が少ないため、濡れ性が劣る知見が得られた。
【0021】
特許文献3の実施例7には、Sn-3Ag-0.5Cu-0.05Ni-3.5Sb-7Bi-0.03Co-0.2Inはんだ合金が開示されている。特許文献4の例38には、Sn-3.5Ag-0.7Cu-0.05Ni-4Sb-3.1Bi-0.05Co-0.01Geはんだ合金が開示されている。これらのはんだ合金は、いずれも耐落下衝撃性が劣ると考えられる。これは、いずれもBiの含有量が多いためにBiが偏析し、脆化したためであると推察される。
【0022】
このように、従来から検討されてきたSn-Ag-Cu-Ni-Bi-Sb-Coはんだ合金では、特定の効果に着目しているために使用環境を鑑みた実情に適応することが難しい。しかし、従来と同じ構成元素であっても、1つの合金組成で、適度な溶融温度を示し、濡れ性に優れ、引張強度とシェア強度が高く、更には耐落下衝撃性にも優れるはんだ合金があるとも思われる。
【0023】
ここで、耐落下衝撃性は、試験基板自体を落下させるため、基板の強度や配線と基板との接合強度などのすべての要因が結果に含まれる。このように、耐落下衝撃性における破壊の要因は、はんだ合金であるとは限らない。
【0024】
そこで、本発明者らは、耐落下衝撃性とは別に、耐落下衝撃性よりもより過酷な条件で評価することに着目し、従来よりも遥かに速い速度でシェア強度試験を行った。この評価は、従来から行われているシェア強度の試験条件とは大きく異なり、瞬時にはんだ継手を破断した時の破壊モードを確認することができる評価である。
【0025】
本発明者らは、従来のはんだ合金において、上述のすべての効果を同時に発揮するはんだ合金を探索するため、すべての構成元素について再度詳細な検討を行った。その結果、Sn-Ag-Cu-Ni-Bi-Sb-Coはんだ合金において、従来では効果が証明されていない各構成元素の含有量において、初めて、実用上問題ない程度の効果を発揮する知見を得た。詳細には、はんだ合金が溶融してから凝固後の合金組織を鑑みて1つの合金組成で賄うことにより、適度な溶融温度を示し、濡れ性に優れ、シェア強度および引張強度が高く、更には耐落下衝撃性にも優れることに加えて、耐落下衝撃性より過酷な条件で瞬時にはんだ継手を破断するハイスピードシェア試験において、適切な破壊モードを示す知見が得られ、本発明は完成した。
これらの知見により得られた本発明は次の通りである。
【0026】
(0)質量%で、Ag:0.1~3.9%、Cu:0.1~1.0%、Bi:0.6~1.4%、Sb:5.1~7.9%、Ni:0.01~0.30%、Co:0.001~0.100%、および残部がSnからなるはんだ合金。
(1)質量%で、Ag:0.1~3.9%、Cu:0.1~1.0%、Bi:0.6~1.4%、Sb:5.1~7.9%、Ni:0.01~0.30%、Co:0.001~0.100%、および残部がSnからなる合金組成を有することを特徴とするはんだ合金。
【0027】
(2)合金組成は、更に、質量%で、In、Ga、As、Fe、Pd、Mn、Zn、Zr、およびMgの少なくとも1種を合計で0.1%以下の量を含有する、上記(0)または上記(1)に記載のはんだ合金。
【0028】
(3)合金組成は、下記(1)~(4)式の少なくとも1式を含有する、上記(0
)~上記(2)のいずれか1項に記載のはんだ合金。
426≦(Ag×Cu)/(Ni×Co)≦8530 (1)
0.10≦Bi/Sb≦0.28 (2)
10.8≦Sn/Sb≦18.0 (3)
0.00004≦Bi×Sb×Ni×Co≦0.00254 (4)
上記(1)~(4)式中、Sn、Ag、Cu、Bi、Sb、Ni、およびCoは、各々はんだ合金の質量%としての含有量である。
【0029】
(4)上記(0)~上記(3)のいずれか1項に記載のはんだ合金を有することを特徴とするはんだペースト。
【0030】
(5)上記(0)~上記(3)のいずれか1項に記載のはんだ合金を有することを特徴とするはんだ継手。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、実施例5のHSSシェア試験後におけるPCB基板表面の光学顕微鏡写真である。
図2図2は、比較例8のHSSシェア試験後におけるPCB基板表面の光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明を以下により詳しく説明する。本明細書において、はんだ合金組成に関する「%」は、特に指定しない限り「質量%」である。
【0033】
1. はんだ合金
(1) Ag:0.1~3.9%
Agは、溶融はんだの濡れ性を向上させ、融点上昇を抑制する。さらに、Agは、ハイスピードシェア試験(以下、単に「HSS」と称する。)において、接合界面破壊や耐落下衝撃性の低下を妨げる。
【0034】
Agの含有量が0.1%未満では、溶融はんだの濡れ性が劣化する。Agの含有量の下限は0.1%以上であり、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1.0%以上であり、より好ましくは1.4%以上であり、更に好ましくは2.0%以上であり、更により好ましくは3.3%以上であり、特に好ましくは3.4%以上である。
【0035】
一方、Agの含有量が3.9%を超えると、粗大なAgSn化合物が形成され、HSSにより接合界面破壊が発生する。また、これにともない耐落下衝撃性も劣化する。Agの含有量の上限は3.9%以下であり、好ましくは3.7%以下であり、より好ましくは3.5%以下である。
【0036】
(2) Cu:0.1~1.0%
Cuは、溶融はんだの濡れ性を向上させる。また、Cuは、はんだ合金の析出強化により引張強度の上昇に寄与する。さらに、HSSによる接合界面破壊を抑制することができる。これに加えて、シェア強度も向上する。
【0037】
Cuの含有量が0.1%未満では、濡れ性が低下する。Cuの含有量の下限は0.1%以上であり、好ましくは0.3%以上であり、より好ましくは0.5%以上であり、更に好ましくは0.6%以上である。
【0038】
一方、Cuの含有量が1.0%を超えると、濡れ性が劣化する。また、初晶として晶出する粗大なCuSn化合物がバルク中に析出するために引張強度が大きく劣化する。さらに、接合界面にてCuSn金属間化合物やCuSn金属間化合物が粗大に成長するため、シェア強度が劣化する。加えてHSSにより接合界面破壊が発生する。Cuの含有量の上限は1.0%以下であり、好ましくは0.9%以下であり、より好ましくは0.8%以下であり、更に好ましくは0.7%以下である。
【0039】
(3) Bi:0.6~1.4%
Biは、濡れ性を向上させる。また、Bi量を適切な量とすることで、脆性にならないため、HSSによる接合界面破壊を抑制することができる。
【0040】
Biの含有量が0.5%未満であると濡れ性が低下する。Biの含有量の下限は0.6%以上であり、好ましくは0.7%以上であり、より好ましくは0.8%以上であり、更に好ましくは0.9%以上である。
【0041】
一方、Biの含有量が1.4%を超えると、脆性になるためにHSSにより接合界面破壊が発生する。Biの含有量の上限は1.4%以下であり、好ましくは1.3%以下であり、より好ましくは1.2%以下であり、更に好ましくは1.1%以下であり、特に好ましくは1.0%以下である。
【0042】
(4) Sb:5.1~7.9%
Sbは、Snマトリックス中に侵入する固溶強化型の元素であるとともに、Snへの固溶限を超えた分が微細なSnSb金属間化合物を形成する析出分散強化型のはんだ合金を形成する。このため、引張強度が向上する。また、Biに比べて脆性になりにくいため、HSSによる接合界面破壊を抑制することができる。また、耐落下衝撃性の低下を妨げる。
【0043】
Sbの含有量が5.1%未満であると、SnSb化合物の析出が不十分となり、引張強度が低下する。Sb含有量の下限は5.1%以上であり、より好ましくは5.3%以上であり、更に好ましくは5.5%以上であり、特に好ましくは5.7%以上であり、最も好ましくは6.0%以上である。
【0044】
一方、Sbの含有量が7.9%を超えると、濡れ性や耐落下衝撃性も低下する。また、HSSによる接合界面破壊が発生する。Sbの含有量の上限は7.9%以下であり、より好ましくは7.5%以下であり、更に好ましくは7.0%以下であり、特に好ましくは6.5%以下であり、最も好ましくは6.3%以下である。
【0045】
(5) Ni:0.01~0.30%
Niは、Snと反応して生じるSnNi化合物がはんだ合金中に分散析出し、はんだ合金の組織が微細になることで引張強度を調整することができる。また、耐落下衝撃性およびシェア強度が向上し、HSSによる接合界面破壊が抑制される。さらに、Niは、電極とはんだ合金との接合界面付近に析出する金属間化合物中に均一に分散し、金属間化合物層が改質し、電極とはんだ合金との接合界面での破断を抑制するため、シェア強度が向上する。
【0046】
Niの含有量が0.01%未満であると、金属間化合物層が改質せず、HSSにより接合界面破壊が発生し、耐落下衝撃性も劣化する。Niの含有量の下限は0.01%以上であり、好ましくは0.02%以上であり、より好ましくは0.03%以上であり、更に好ましくは0.04%以上であり、特に好ましくは0.05%以上であり、最も好ましくは0.06%以上である。
【0047】
一方、Niの含有量が0.30%を超えると、液相線温度が上昇し、濡れ性が劣化する。また、初晶として晶出する粗大なSnNi化合物により引張強度が大きく劣化する。さらに、接合界面に金属間化合物が粗大に成長するため、シェア強度が劣化するとともに、HSSにより接合界面破壊が発生する。Niの含有量の上限は0.30%以下であり、好ましくは0.25%以下であり、より好ましくは0.20%以下であり、更に好ましくは0.15%以下であり、特に好ましくは0.10%以下であり、最も好ましくは0.08%以下である。
【0048】
(6) Co:0.001~0.100%
Coは、Niと同時に添加されることによりNiの前述の効果を高め、また、Snと反応して生じるSnCo化合物がはんだ合金中に分散析出し、はんだ合金の組織が微細になる。このため、接合界面に形成される金属間化合物も微細になり、シェア強度を改善する。
【0049】
Co含有量が0.001%未満であると、Niとの相乗的効果を発揮することができず、シェア強度が劣化する。Co含有量の下限は0.001%以上であり、好ましくは0.003%以上であり、より好ましくは0.004%以上であり、更に好ましくは0.005%以上であり、特に好ましくは0.006%以上であり、最も好ましくは0.007%以上である。
【0050】
一方、Co含有量が0.100%を超えると、濡れ性が劣化する。Co含有量の上限は0.100%以下であり、好ましくは0.090%以下であり、より好ましくは0.080%以下であり、更に好ましくは0.070%以下であり、特に好ましくは0.060%以下であり、最も好ましくは0.050%以下である。
【0051】
(7)In、Ga、As、Fe、Pd、Mn、Zn、Zr、およびMgの少なくとも1種を合計で0.1%以下
本発明に係るはんだ合金は、上記必須元素に加えて、本発明の効果を劣化させない程度において、In、Ga、As、Fe、Pd、Mn、Zn、Zr、およびMgの少なくとも1種を合計で0.1%以下の量を含有することができる。下限は特に限定されないが、0.0001%以上であればよい。
【0052】
(8) 残部:Sn
本発明に係るはんだ合金の残部はSnであり、前述の元素の他に不可避的不純物を含有してもよい。本発明に係るはんだ合金は、残部がSn及び不可避不純物からなるものであってもよい。不可避的不純物を含有する場合であっても前述の効果に影響することはない。なお、Pは、はんだ粉末が凝集するために含有しない方がよい。また、Pを多量に含有する場合は液相線温度が上昇してしまう。
【0053】
(9) 融点
本発明に係るはんだ合金は、液相線温度が210℃以上251℃以下であることが好ましく、上限が235℃以下であることが更に好ましい。電子部品の駆動温度を鑑みると、液相線温度は218℃以上であることが更に好ましい。固相線温度は210℃以上であればよい。固相線温度は液相線温度以下である。
【0054】
(10) (1)~(4)式
426≦(Ag×Cu)/(Ni×Co)≦8530 (1)
0.10≦Bi/Sb≦0.28 (2)
10.8≦Sn/Sb≦18.0 (3)
0.00004≦Bi×Sb×Ni×Co≦0.00254 (4)
上記(1)~(4)式中、Sn、Ag、Cu、Bi、Sb、Ni、およびCoは、各々はんだ合金の質量%としての含有量である。
【0055】
本発明に係るはんだ合金は、(1)~(4)式を満たすことが好ましい。(1)式に関して、AgとCuは析出強化元素であり、NiとCoは接合界面の微細析出物の形成に寄与する元素である。本発明では、引張強度のみ、もしくはシェア強度のみを向上させるのではなく、これらのバランスを鑑みることにより、両効果とも実用上問題ない程度の効果が発揮されるようにした方がよい。また、溶融はんだにおける固相の析出挙動を鑑みると、濡れ性も更に向上する。さらに、HSSにおいて接合界面の破壊を避ける必要がある。このため、(1)式を満たすことにより、引張強度とシェア強度のバランスがよく、濡れ性に更に優れ、HSSにより接合界面での破壊を回避することができる。
【0056】
(1)~(4)式の計算には、合金組成の実測値である表1に示す数値を用いた。計算では、使用されるすべての値が同じ桁数(それぞれの関係式の下限値と上限値に示されている桁に基づく。)で構成されていることを確認するために、表に示されている値にゼロが追加されています。表示されていない数字については、例えば、Ag含有量が測定値として1.00%である場合、(1)~(4)式の計算に使用されるAg含有量は、Coの含有量における桁数に合わせて追加の桁「0」を含むように修正される。(1)~(4)式は、各構成元素の含有量において、10進数で下3桁目まで用いて計算されます。そして、上限値と下限値の桁から、(1)式は10進数で下1桁目を四捨五入、(2)式は10進数で下3桁目を四捨五入、(3)式は10進数で下2桁目を四捨五入、(4)式は10進数で下6桁目を四捨五入して計算されます。この計算規則は本出願で使用され、また、すべての組成物が同じ方法で扱われなければならないため、他の文献で説明されるさらなる組成物に関する計算にも使用される。(2)式におけるSnの含有量は、不可避的不純物を考慮せず、不可避的不純物の含有量を0質量%として扱う。したがって、必須の要素とオプションの要素のみが考慮される。
【0057】
(1)式の下限は、好ましくは426以上であり、より好ましくは595以上であり、より更に好ましくは661以上であり、更に好ましくは1063以上であり、特に好ましくは1190以上であり、2975以上、3063以上、3188以上、4375以上、4958以上、5313以上、5950以上、6563以上であってもよい。(1)式の上限は、好ましくは8530以下であり、より好ましくは7438以下である。
【0058】
(2)式は、BiとSbの含有量のバランスを示す関係式である。BiとSbは、微細なSnSb化合物の析出に寄与し、溶融はんだの固相成分の析出量を制御することにより、濡れ性の更なる向上を図ることができる。
【0059】
(2)式の下限は、好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.11以上であり、より更に好ましくは0.12以上であり、更に好ましくは0.13以上であり、特に好ましくは0.14以上であり、最も好ましくは0.16以上であり、0.17以上、0.18以上、0.19以上、0.20以上であってもよい。(2)式の上限は、好ましくは0.28以下であり、より好ましくは、0.27以下であり、より更に好ましくは0.26以下であり、更に好ましくは0.25以下であり、特に好ましくは0.24以下であり、最も好ましくは0.24以下であり、0.23以下、0.22以下、0.21以下であってもよい。
【0060】
(3)式は、SnとSbの含有量のバランスを鑑みた関係式である。詳細には、SbによるSnの固溶強化により引張強度が改善する効果と、SnSb化合物の分散析出効果によるシェア強度改善効果のバランスがよいため、微細なSnSbの析出により引張強度やシェア強度の更なる向上を図ることもできる。
【0061】
(3)式の下限は、好ましくは10.8以上であり、より好ましくは11.0以上であり、より更に好ましくは11.1以上であり、更に好ましくは12.5以上であり、特に好ましくは12.6以上であり、最も好ましくは14.7以上であり、14.8以上、15.6以上、15.7以上、16.2以上、16.3以上、16.9以上、17.0以上、17.5以上であってもよい。(3)式の上限は、好ましくは18.0以下であり、より好ましくは、17.7以下であり、更に好ましくは17.6以下である。
【0062】
(4)式は、SnSb化合物、SnNi化合物、およびSnCo化合物の析出に寄与する元素群の含有量を鑑みた関係式である。Bi、Sb、Ni、およびCoの含有量がバランスよく配合されることにより、はんだ合金の過度な硬化を抑制し、HSSでの接合界面破壊を十分に抑制することができる。また、(4)式は、いずれの元素も過度な添加により濡れ性が劣ることになるため、濡れ性の更なる向上に寄与するための関係式でもある。
【0063】
(4)式の下限は、好ましくは0.00004以上であり、より好ましくは0.00010以上であり、より更に好ましくは0.00020以上であり、更に好ましくは0.00041以上であり、特に好ましくは0.00098以上であり、最も好ましくは0.00102以上であり、0.00106以上、0.00109以上、0.00115以上、0.00131以上、0.00134以上、0.00136以上、0.00141以上、0.00146以上、0.00152以上、0.00154以上であってもよい。(4)式の上限は、好ましくは0.00254以下であり、より好ましくは、0.00253以下であり、より更に好ましくは0.00246以下であり、更に好ましくは0.0245以下であり、特に好ましくは0.00237以下であり、最も好ましくは0.00230以下であり、0.00228以下、0.00224以下、0.00219以下、0.00211以下、0.00204以下、0.00196以下、0.00192以下、0.00182以下、0.00176以下、0.00170以下、0.00163以下であってもよい。
【0064】
2.ソルダペースト
本発明のソルダペーストは、上述の合金組成を有するはんだ粉末とフラックスとの混合物である。本発明において使用するフラックスは、常法によりはんだ付けが可能であれば特に制限されない。したがって、一般的に用いられるロジン、有機酸、活性剤、そして溶剤を適宜配合したものを使用すればよい。本発明において金属粉末成分とフラックス成分との配合割合は特に制限されないが、好ましくは、金属粉末成分:70~90質量%、フラックス成分:10~30質量%である。
【0065】
3.はんだ継手
本発明に係るはんだ継手は、半導体パッケージにおけるICチップとその基板(インターポーザ)との接続、或いは半導体パッケージとプリント配線板との接続に使用するのに適している。ここで、「はんだ継手」とは電極の接合部をいう。
【0066】
4.その他
本発明に係るはんだ合金の製造方法は常法に従って行えばよい。本発明に係るはんだ合金を用いた接合方法は、例えばリフロー法を用いて常法に従って行えばよい。また、本発明に係るはんだ合金を用いて接合する場合には、凝固時の冷却速度を考慮した方がさらに組織を微細にすることができる。例えば2~3℃/s以上の冷却速度ではんだ継手を冷却する。この他の接合条件は、はんだ合金の合金組成に応じて適宜調整することができる。
【0067】
本発明に係るはんだ合金は、その原材料として低α線材を使用することにより低α線合金を製造することができる。このような低α線合金は、メモリ周辺のはんだバンプの形成に用いられるとソフトエラーを抑制することが可能となる。
【実施例
【0068】
表1に示す合金組成からなるはんだ合金を用いて、評価1:固相線温度および液相線温度、評価2:濡れ性、評価3:引張強度、評価4:シェア強度、評価5:HSSシェア強度、評価6:耐落下衝撃性、の評価を行った。各々の評価方法について以下に説明する。
【0069】
評価1. 固相線温度および液相線温度
表1に記載した各合金組成を有するはんだ合金について、DSC曲線から各々の温度を求めた。DSC曲線は、セイコーインスツルメンツ社製のDSC(型番:Q2000)により、大気中で5℃/minで昇温して得られた。得られたDSC曲線から液相線温度を求め、溶融温度とした。また、DSC曲線から固相線温度も評価した。固相線温度が210℃以上であるとともに、液相線温度が235℃未満である場合には、「◎」と判定した。固相線温度が210℃以上であるとともに、液相線温度が235℃以上251℃以下である場合には、「〇」と判定した。固相線温度が210℃未満であるか、または液相線温度が251℃を超える場合には、「×」と判定した。
【0070】
評価2. 濡れ性
(1)試験板の作製
はんだ合金の濡れ性は、メニスコグラフ試験の方法に準拠して測定された。フラックス(千住金属工業株式会社製「ES-1100」)を、銅板(幅10mm×長さ30mm×厚さ0.3mm)に対して塗布した。フラックスを塗布した銅板を、120℃で15分間、大気雰囲気で加熱処理して、試験板を得た。このような試験板を、表1に示す各実施例及び各比較例のそれぞれについて、5枚ずつ用意した。
【0071】
(2)評価方法
得られた試験板を、それぞれ、表1に示す合金組成を有する溶融はんだが導入されているはんだ槽に浸漬させ、ゼロクロスタイム(sec)を得た。ここで、試験装置としてSolder Checker SAT-5100(RHESCA社製)を用い、次のように評価した。各実施例及び各比較例の5枚の試験板のゼロクロスタイム(sec)の平均値により、はんだ濡れ性を評価した。試験条件は、以下のように設定した。
【0072】
はんだ槽への浸漬速度:10mm/sec
はんだ槽への浸漬深さ:4mm
はんだ槽への浸漬時間:10sec
はんだ槽温度:255℃
ゼロクロスタイム(sec)の平均値が短いほど、濡れ速度は速くなり、はんだ濡れ性が良いことを意味する。
【0073】
(3)判定基準
ゼロクロスタイム(sec)の平均値が1.3秒以下である場合には「◎」と判定し、1.3秒を超え、1.5秒以下である場合には「〇」と判定し、1.5秒を超える場合には、「×」と判定した。
【0074】
評価3. 引張強度
引張強度は、JISZ3198-2に準じて測定された。表1に記載の各はんだ合金について、金型に鋳込み、ゲージ長が30mm、直径8mmの試験片が作製された。作製された試験片は、Instron社製のType5966により、室温で、6mm/minのストロークで引っ張られ、試験片が破断したときの強度が計測された。
【0075】
引張強度が60MPa以上の場合には「◎」と評価し、55MPa以上60MPa未満の場合には「〇」と評価し、55MPa未満の場合には「×」と評価した。
【0076】
評価4. シェア強度
サイズが110mm×110mm、厚さが1.6mmのFR-4のガラスエポキシ基板内のはんだ付けパターン(1.6×0.8mm)に、大きさが3.2×1.6×0.55(mm)の3216チップ抵抗部品をはんだ付けした。はんだ付けは、150μm厚のメタルマスクを用いて、ソルダペーストを基板に印刷後、ピーク温度が245℃、保持時間を40秒としてリフロー炉で加熱した。その後、継手強度試験機STR-5100を用いて、シェア速度が6mm/min、試験高さは基板表面から100μmの条件でシェア強度を測定した。
【0077】
シェア強度が65N以上である場合には「◎」と評価し、45~64Nである場合には「〇」と評価し、45N未満である場合には「×」と評価した。
【0078】
評価5. HSSシェア試験
HSSシェア試験は、下記のように行われた。サイズが36mm×50.4mm、厚さが1.2mmのFR-4のガラスエポキシ基板を用いたPCB基板に、表1の合金組成を有する直径0.3mmのはんだボールを載置した。そして、ピーク温度が245℃、保持時間を40秒としてリフロー炉で加熱した。その後、ハイスピードボンドテスター4000HSを用いて、シェア速度が4000mm/sec(240000mm/min)の速度でシェア試験を実施し、破壊モードを目視にて確認した。
【0079】
破壊モードがバルク破壊の場合には「◎」と評価し、バルク破壊+接合界面破壊の場合には「〇」と評価し、接合界面破壊の場合には「×」と評価した。
【0080】
評価6. 耐落下衝撃性
外形12×12(mm)、電極196個のバンプを有するCuめっきのCSPを用意した。30×120(mm)のガラスエポキシプリント基板中央にソルダペーストを塗布し、CSPを搭載しリフロー炉で加熱してCSPをプリント基板にはんだ付けを行った。
【0081】
CSPがはんだ付けされたプリント基板の両端を、落下治具上に治具と1cmの間隔をあけて固定した。落下治具に加速度1500Gが負荷する高さから落下させてプリント基板に衝撃を与える。このとき両端を治具に固定されたプリント基板は、中央部が振動し、プリント基板とCSPのはんだ継手は、この振動による衝撃を受ける。この落下試験でCSPのはんだ継手に亀裂が進展している状況を、電気抵抗値が初期値から50%上昇するかどうかで確認した。
【0082】
電気抵抗値が初期値から50%上昇した回数が100回より大きい場合は「◎」と評価し、50~100回までは「〇」と評価し、50回未満は「×」と評価した。
【0083】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】
【0084】
表1に示すように、実施例1~58では、すべての評価で実用上問題ない程度の結果が得られた。これらの中で、(1)~(4)式を満たす実施例は、いずれも上述の判断基準において最高評価を示した。
【0085】
一方、比較例1は、Agの含有量が少ないため、濡れ性が劣った。比較例2は、Agの含有量が多いため、HSSシェア試験で接合界面破壊が発生し、耐落下衝撃性も劣った。
【0086】
比較例3は、Cuの含有量が少ないため、濡れ性が劣った。比較例4は、Cuの含有量が多いため、濡れ性、引張強度、およびシェア強度が劣り、HSSシェア試験で接合界面破壊が発生した。
【0087】
比較例5は、Niの含有量が少ないため、耐落下衝撃性が劣り、HSSシェア試験で接合界面破壊が発生した。比較例6は、Niの含有量が多すぎるため、すべての評価項目が劣った。
【0088】
比較例7は、Sbの含有量が少ないため、引張強度が劣った。比較例8は、Sbの含有量が多いため、濡れ性が劣り、HSSシェア試験で接合界面破壊が発生した。
【0089】
比較例9は、Biの含有量が少ないため、濡れ性が劣った。比較例10は、Biの含有量が多いため、HSSシェア試験で接合界面破壊が発生した。
【0090】
比較例11は、Coの含有量が少ないため、シェア強度が劣った。比較例12は、Coの含有量が多いため、濡れ性が劣った。
【0091】
比較例13および14は、Sbの含有量が少なく、かつBiの含有量が多いため、HSSシェア試験で接合界面破壊が発生し、耐落下衝撃性も劣った。比較例15は、Cuの含有量が多く、SbおよびBiの含有量がいずれも少ないため、濡れ性、引張強度、シェア強度が劣り、HSSシェア試験で接合界面破壊が発生した。
【0092】
図1は、実施例5のHSSシェア試験後におけるPCB基板表面の光学顕微鏡写真であり、図2は、比較例8のHSSシェア試験後におけるPCB基板表面の光学顕微鏡写真である。図1から明らかなように、実施例5では電極にはんだ合金が残存していることから、バルク破壊であることがわかった。一方、図2では、はんだ合金が残存していなおらず、金属間化合物が露出しているため、接合界面破壊であることがわかった。実施例5以下の実施例も、バルク破壊もしくはバルク破壊+接合界面破壊であることを確認した。
【要約】
適度な溶融温度を示し、濡れ性に優れ、引張強度およびシェア強度が高く、更には耐落下衝撃性にも優れるはんだ合金、はんだペースト及びはんだ継手を提供する。はんだ合金は以下の合金組成を有する。合金組成は、質量%で、Ag:0.1~3.9%、Cu:0.1~1.0%、Bi:0.6~1.4%、Sb:5.1~7.9%、Ni:0.01~0.30%、Co:0.001~0.100%以下、および残部がSnからなる合金組成を有する。
図1
図2