IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社RSIの特許一覧 ▶ 篠原電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-液浸冷却システム 図1
  • 特許-液浸冷却システム 図2
  • 特許-液浸冷却システム 図3
  • 特許-液浸冷却システム 図4
  • 特許-液浸冷却システム 図5
  • 特許-液浸冷却システム 図6
  • 特許-液浸冷却システム 図7
  • 特許-液浸冷却システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】液浸冷却システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/427 20060101AFI20240117BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240117BHJP
   H01L 23/44 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
H01L23/46 A
H05K7/20 Q
H01L23/44
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020001066
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2021111660
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520007307
【氏名又は名称】株式会社RSI
(73)【特許権者】
【識別番号】000181572
【氏名又は名称】篠原電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 浩一
(72)【発明者】
【氏名】松原 利幸
(72)【発明者】
【氏名】上田 茂数
(72)【発明者】
【氏名】豊原 範之
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 公一
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢造
(72)【発明者】
【氏名】篠原 基一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 哲也
(72)【発明者】
【氏名】元木 正治
(72)【発明者】
【氏名】犀川 真一
(72)【発明者】
【氏名】山蔭 久明
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-229493(JP,A)
【文献】特開2013-119989(JP,A)
【文献】特開2009-135142(JP,A)
【文献】特開平02-214147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/427
H05K 7/20
H01L 23/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の低沸点冷媒(F)を冷却要素とする液浸ユニット(2)と、液浸ユニット(2)に送給される冷却水を冷却するクーリング装置(3)とを備えており、
液浸ユニット(2)は、冷却対象(B)を収容する密閉容器状のケーシング(5)と、ケーシング(5)の内部に配置されて、ガス化した低沸点冷媒(F)を液化する凝縮器(10)とを備えており、
ケーシング(5)は、液状の低沸点冷媒(F)を貯留する下側の冷媒液室(7)と、ガス化した低沸点冷媒(F)を貯留する上側の冷媒ガス室(8)とを備えており、冷媒ガス室(8)に凝縮器(10)が配置されており、
クーリング装置(3)は、クーリングケース(18)と、同ケース(18)の内部にV字状に配置される一対の熱交換器(19)と、熱交換空気を生成して熱交換器(19)に接触させる送風ファン(20)とを備えており、
凝縮器(10)と熱交換器(19)とは、冷却水を送給する送水路(28)を介して連通されており、送水路(28)の中途部に冷却水を凝縮器(10)と熱交換器(19)の間で強制的に循環させる循環ポンプ(29)が配置されており、
熱交換器(19)で冷却された冷却水を凝縮器(10)に送給しながら、冷媒ガス室(8)内の冷媒ガスを凝縮器(10)で液化しており、
送水路(28)が、循環ポンプ(29)で加圧された冷却水を熱交換器(19)に送給する高温側送水路(28a)と、熱交換後の冷却水を凝縮器(10)に送給する低温側送水路(28b)とを備えており、
高温側送水路(28a)と低温側送水路(28b)には、それぞれ冷却水の温度を検知する水温センサー(30・31)が設けられており、
クーリング装置(3)には、当該クーリング装置(3)の周辺の外気温度を検知する外気温度センサーが設けられており、
外気温度センサーと水温センサー(30・31)の検知結果に応じて、クーリング装置(3)と循環ポンプ(29)の運転状態を制御することを特徴とする液浸冷却システム。
【請求項2】
クーリング装置(3)が、チラー熱交換器(27)を含むチラーユニット(16)を備えており、
チラー熱交換器(27)が熱交換器(19)の吸風面(19a)側に配置されている請求項1に記載の液浸冷却システム。
【請求項3】
クーリング装置(3)が、熱交換器(19)の吸風面(19a)側に配置される霧化ノズル(34)と、冷却水を霧化ノズル(34)に加圧送給可能な給水源(36)と、給水源(36)と霧化ノズル(34)の間の給水路に配置される給水弁(35)を備えており、
霧化ノズル(34)で生成したミストを熱交換器(19)の吸風面(19a)に吸い込まれる空気に噴霧しながら、熱交換器(19)を通過する冷却水を冷却する請求項1に記載の液浸冷却システム。
【請求項4】
クーリング装置(3)とは別にバックアップ送水系を備えており、
バックアップ送水系は、冷却水を加圧送給可能な給水源(36)と、給水源(36)の冷却水をクーリング装置(3)へ送給する非常時送水路(43)と、熱交換後の冷却水を排出する排水路(44)を備えており、
非常時送水路(43)と排水路(44)が、クーリングユニット(15)の高温側送水路(28a)および低温側送水路(28b)に並列的に接続されており、
クーリング装置(3)が故障した状態において、バックアップ送水系を作動させて給水源(36)の冷却水を凝縮器(10)に送給できる請求項に記載の液浸冷却システム。
【請求項5】
クーリング装置(3)が冷凍機器を含んで構成されるチラー(47)を備えており、
チラー(47)は、クーリングユニット(15)の高温側送水路(28a)および低温側送水路(28b)に並列的に接続されており、
クーリングユニット(15)とチラー(47)は外気温の状態に応じて択一的に稼働する請求項に記載の液浸冷却システム。
【請求項6】
冷媒液室(7)内に、水冷式の熱交換器(40)が低沸点冷媒(F)の液中に浸漬する状態で配置されており、
熱交換器(40)は、クーリングユニット(15)の高温側送水路(28a)および低温側送水路(28b)に対して、凝縮器(10)と並列になる状態で接続されて、熱交換器(40)と低温側送水路(28b)の間の送水路に開閉弁(42)が設けられており、
必要時に、冷却水を低温側送水路(28b)から熱交換器(40)へ送給して、低沸点冷媒(F)を直接的に冷却する請求項に記載の液浸冷却システム。
【請求項7】
クーリング装置(3)が複数基のクーリングユニット(15)を備えており、
複数基のクーリングユニット(15)が、高温側送水路(28a)と低温側送水路(28b)に対して並列に接続されている請求項に記載の液浸冷却システム。
【請求項8】
冷媒液室(7)の上開口縁より外側に凝縮ピット(9)が膨出形成されており、その内部に凝縮器(10)が配置されている請求項から7のいずれかひとつに記載の液浸冷却システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マザーボードに代表される電子回路基板などを冷却対象とする液浸冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の液浸冷却装置は、例えば特許文献1に公知である。特許文献1の液浸冷却装置は、絶縁性の低沸点冷媒を貯留する密閉容器状のきょう体(ケーシング)と、きょう体内部の気相領域に配置される凝縮器を備えており、きょう体内部の液相領域にプリント板を浸漬して冷却する。また、きょう体の周囲壁とプリント板の間に整流板を配置して、凝縮器で液化された低沸点冷媒をきょう体の周囲壁と整流板の間の下降流室に沿って流動させ、プリント板の熱を奪ったガス状の低沸点冷媒を整流板とプリント板の間の上昇流室に沿って流動させるようにしている。きょう体の外には、凝縮器に冷媒液を送給する冷凍機器が配置してあると想像され、凝縮器は冷媒液の蒸発作用で冷却されて、ガス状の低沸点冷媒を液化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭61-59350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の液浸冷却装置は、きょう体内部に配置した凝縮器で気化した冷媒ガスを凝縮させて液相領域へ戻す。凝縮器には冷凍機器から送給された冷媒が循環すると想定されるが、プリント板の冷却を行うには、年間を通じて冷凍機器を継続して運転する必要があり、そのランニングコストが嵩むのを避けられない。また、例えばデータセンターでは大量の電子回路基板が使用されるが、大量の電子回路基板を冷却するには大規模な冷却システムが必要となるため、その導入コストが膨大になるうえ設置スペースも広大なものとなる。さらに、近年では多数個のCPUやGPUが電子回路基板に実装されているため、電子回路基板の発熱量が増加し、冷却装置の冷却能力をさらに増強できることが求められている。
【0005】
本発明の目的は、電子回路基板などの冷却対象の冷却に要するランニングコストと、冷却システムの導入コストを削減できるようにした液浸冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液浸冷却システムは、絶縁性の低沸点冷媒Fを冷却要素とする液浸ユニット2と、液浸ユニット2に送給される冷却水を冷却するクーリング装置3とを備えている。液浸ユニット2は、冷却対象Bを収容する密閉容器状のケーシング5と、ケーシング5の内部に配置されて、ガス化した低沸点冷媒Fを液化する凝縮器10とを備えている。ケーシング5は、液状の低沸点冷媒Fを貯留する下側の冷媒液室7と、ガス化した低沸点冷媒Fを貯留する上側の冷媒ガス室8とを備えていて、冷媒ガス室8に凝縮器10が配置されている。クーリング装置3は、クーリングケース18と、同ケース18の内部にV字状に配置される一対の熱交換器19と、熱交換空気を生成して熱交換器19に接触させる送風ファン20とを備えている。凝縮器10と熱交換器19は、冷却水を送給する送水路28を介して連通されており、送水路28の中途部に冷却水を凝縮器10と熱交換器19の間で強制的に循環させる循環ポンプ29が配置されている。熱交換器19で冷却された冷却水を凝縮器10に送給しながら、冷媒ガス室8内の冷媒ガスを凝縮器10で液化する。送水路28は、循環ポンプ29で加圧された冷却水を熱交換器19に送給する高温側送水路28aと、熱交換後の冷却水を凝縮器10に送給する低温側送水路28bとを備えている。高温側送水路28aと低温側送水路28bには、それぞれ冷却水の温度を検知する水温センサー30・31が設けられている。クーリング装置3には、当該クーリング装置3の周辺の外気温度を検知する外気温度センサーが設けられている。外気温度センサーと水温センサー30・31の検知結果に応じて、クーリング装置3と循環ポンプ29の運転状態を制御する。
【0007】
クーリング装置3は、チラー熱交換器27を含むチラーユニット16を備えている。図3に示すように、チラー熱交換器27は熱交換器19の吸風面19a側に配置されている。
【0008】
クーリング装置3が、熱交換器19の吸風面19a側に配置される霧化ノズル34と、冷却水を霧化ノズル34に加圧送給可能な給水源36と、給水源36と霧化ノズル34の間の給水路に配置される給水弁35を備えている。図7に示すように、霧化ノズル34で生成したミストを熱交換器19の吸風面19aに吸い込まれる空気に噴霧しながら、熱交換器19を通過する冷却水を冷却する。
【0010】
クーリング装置3とは別にバックアップ送水系を備えている。バックアップ送水系は、冷却水を加圧送給可能な給水源36と、給水源36の冷却水をクーリング装置3へ送給する非常時送水路43と、熱交換後の冷却水を排出する排水路44を備えている。非常時送水路43と排水路44は、クーリングユニット15の高温側送水路28aおよび低温側送水路28bに並列的に接続されている。クーリング装置3が故障した状態において、バックアップ送水系を作動させて給水源36の冷却水を凝縮器10に送給できる。なお、給水源36の冷却水としては水道水、あるいは地下水、河川水などを使用でき、冷却水は必要に応じてクーリングユニット15に対してポンプで加圧送給する。
【0011】
クーリング装置3が冷凍機器を含んで構成されるチラー47を備えている。チラー47は、クーリングユニット15の高温側送水路28aおよび低温側送水路28bに並列的に接続されている。クーリングユニット15とチラー47は外気温の状態に応じて択一的に稼働する。
【0012】
冷媒液室7内に、水冷式の熱交換器40が低沸点冷媒Fの液中に浸漬する状態で配置されている。熱交換器40は、クーリングユニット15の高温側送水路28aおよび低温側送水路28bに対して、凝縮器10と並列になる状態で接続されて、熱交換器40と低温側送水路28bの間の送水路に開閉弁42が設けられている。必要時に、冷却水を低温側送水路28bから熱交換器40へ送給して、低沸点冷媒Fを直接的に冷却する。
【0013】
クーリング装置3は複数基のクーリングユニット15を備えている。複数基のクーリングユニット15は、高温側送水路28aと低温側送水路28bに対して並列に接続されている。
【0014】
冷媒液室7の上開口縁より外側に凝縮ピット9が膨出形成されており、その内部に凝縮器10が配置されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、液浸ユニット2が、密閉容器状のケーシング5と、ケーシング5の冷媒ガス室8に配置される凝縮器10を備えるようにした。また、クーリング装置3が、V字状に配置される一対の熱交換器19と、送風ファン20を備えるようにした。さらに凝縮器10と熱交換器19を送水路28で連通させ、送水路28の中途部に設けた循環ポンプ29で冷却水を強制的に循環させるようにした。こうした液浸冷却システムによれば、熱交換器19の送風ファン20と循環ポンプ29を作動させるだけで、冷媒ガスを凝縮器10で確実に液化できるので、液浸冷却システムを運転するときのランニングコストが少なくて済む。また、冷凍機器から送給された冷媒の熱で凝縮器10を作動させる場合に比べて、簡単な構造のクーリング装置3を用意すれば良いので、液浸冷却システムを導入する際のコストを削減できるうえ、クーリング装置3を配置するスペースが少なくなる利点もある。
【0016】
チラー熱交換器27を含むチラーユニット16を備えるクーリング装置3において、チラー熱交換器27を熱交換器19の吸風面19a側に配置するようにした。こうした液浸冷却システムによれば、外気温度が高く熱交換器19から凝縮器10へ送給される冷却水の温度を充分に下げられない場合であっても、チラーユニット16を作動させて、チラー熱交換器27で冷却された空気を熱交換器19に送り込むことにより、熱交換器19から凝縮器10へ送給される冷却水の温度を充分に低下させることができる。従って、凝縮器10による低沸点冷媒ガスの液化を確実に行えるうえ、液浸冷却システムの冷却能力をさらに増強して、熱負荷の大きな冷却対象Bにも対応出来る液浸冷却システムとすることができる。
【0017】
熱交換器の吸風面19a側に配置される霧化ノズル34と、冷却水を加圧送給可能な給水源36と給水弁35を備えているクーリング装置3においては、霧化ノズル34で生成したミストを熱交換器19の吸風面19aに吸い込まれる空気に噴霧しながら、熱交換器19を通過する冷却水を冷却できるようにした。こうした液浸冷却システムによれば、外気温度が高い状況であっても、熱交換器19に導入される外気をミストの蒸発作用により冷却することができ、熱交換器19から凝縮器10へ送給される冷却水の温度を充分に下げて、凝縮器10の液化作用を促進することで冷媒ガスを効果的に液化することができる。また、霧化ノズル34から噴出されたミストの蒸発熱を利用するので、液浸冷却システムのランニングコストを削減できる。
【0018】
クーリング装置3の周辺の外気温度を検知する外気温度センサーを設け、送水路28を構成する高温側送水路28aと低温側送水路28bのそれぞれに、水温センサー30・31を設け、外気温度センサーと水温センサー30・31の検知結果に応じて、クーリング装置3と循環ポンプ29の運転状態を制御するようにした。こうした液浸冷却システムによれば、送風ファン20と循環ポンプ29を、外気温度の変化と冷却水の温度変化に応じて無駄のない状態で作動させることができるので、液浸冷却システムのランニングコストをさらに削減できる。
【0019】
クーリング装置3とは別にバックアップ送水系を備える液浸冷却システムにおいて、バックアップ送水系の非常時送水路43と排水路44を、クーリングユニット15の高温側送水路28aおよび低温側送水路28bに並列的に接続するようにした。こうした液浸冷却システムによれば、例えば循環ポンプ29が故障するなどクーリング装置3が故障した場合であっても、バックアップ送水系を作動させ、給水源36の冷却水を非常時送水路43で凝縮器10に送給して、冷媒ガス室8内の冷媒ガスを効果的に液化することができる。従って、データセンターやスーパーコンピュータの作動を停止する必要もなく、クーリング装置3の故障個所の復旧作業を行える。
【0020】
チラー47を備えるクーリング装置3において、チラー47をクーリングユニット15の高温側送水路28aおよび低温側送水路28bに並列的に接続するようにした。また、クーリングユニット15とチラー47は外気温の状態に応じて択一的に稼働するようにした。こうした液浸冷却システムによれば、チラー47で冷却された低温の冷却水を凝縮器10に直接送給して冷媒ガスを液化できるので、チラー47の冷却水で熱交換風を間接的に冷却する液浸冷却システムに比べて、凝縮器10による凝縮効率を高くすることができる。従って、外気温が高い状況下であっても、冷媒ガスを効果的に液化できる。また、外気温が低い状況下では、クーリングユニット15を稼働させればよいので、液浸冷却システムのランニングコストを削減できる。
【0021】
冷媒液室7内に配置した水冷式の熱交換器40を、クーリングユニット15の高温側送水路28aおよび低温側送水路28bに対して、凝縮器10と並列になる状態で接続するようにした。こうした液浸冷却システムによれば、例えば緊急時や、液浸ユニット2の内部のメンテナンスを行う場合などに、冷却水を低温側送水路28bから熱交換器40へ送給することにより、低沸点冷媒Fの温度を効果的に低下させて沸点以下にし、低沸点冷媒Fの気化を停止させることができる。従って、緊急時における液浸冷却システムの安全性を向上できるうえ、液浸ユニット2の内部のメンテナンスを行う場合の作業時間を短縮できる。
【0022】
複数基のクーリングユニット15でクーリング装置3を構成し、各クーリングユニット15を、高温側送水路28aと低温側送水路28bに対して並列に接続するようにした。こうした液浸冷却システムによれば、単位時間当たりに冷却できる冷却水量を増強できるので、凝縮器10の液化作用を促進して、熱負荷の大きな冷却対象Bにも支障なく対応出来る液浸冷却システムとすることができる。
【0023】
冷媒液室7の上開口縁より外側に凝縮ピット9を膨出形成し、その内部に凝縮器10を配置するようにした。こうした液浸冷却システムによれば、冷媒液室7に収容した冷却対象Bの出し入れや、液浸ユニット2の内部のメンテナンスを行う場合などに、凝縮器10に邪魔されることもなくメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例1に係る液浸冷却システムの原理構造を示す概略正面図である。
図2】実施例1に係る液浸ユニットの概略構造を示す縦断正面図である。
図3】実施例1に係るクーリング装置の概略構造を示す縦断正面図である。
図4】本発明の実施例2に係る液浸冷却システムの原理構造を示す概略正面図である。
図5】本発明の実施例3に係る液浸冷却システムの原理構造を示す概略正面図である。
図6】本発明の実施例4に係る液浸冷却システムの原理構造を示す概略正面図である。
図7】本発明の実施例5に係る液浸冷却システムのクーリング装置の概略構造を示す縦断正面図である。
図8】本発明の実施例6に係る液浸冷却システムのクーリング装置の概略構造を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施例1) 本発明に係る液浸冷却システムの実施例1を図1ないし図3に示す。本実施例における前後、左右、上下とは、図1に示す交差矢印と、各矢印の近傍の前後、左右、上下の各表記に従う。図1に示すように、液浸冷却システムは冷却ブース1に配置される、絶縁性の低沸点冷媒Fを冷却要素とする液浸ユニット2と、液浸ユニット2に送給される冷却水を冷却するクーリング装置3などで構成される。本液浸冷却システムは、例えばデータセンターやスーパーコンピュータに適用することができる。本液浸冷却システムをデータセンターに適用した場合には、冷却ブース1はサーバー室であり、クーリング装置3はサーバー室の外(屋内あるいは屋外)に設置される。冷却ブース1は、液浸ユニット2で使用される絶縁性の低沸点冷媒Fが、誤って環境中に排出されるのを防ぐために密閉されていることが好ましい。
【0026】
液浸ユニット2は、密閉容器状のケーシング5と、ケーシング5の内部に配置されて、ガス化した低沸点冷媒Fを液化する凝縮器10を備えている。より詳しくは、液浸ユニット2は直方体状に組まれたフレーム4と、密閉容器状のケーシング5と、ケーシング5の上開口を気密状に塞ぐ上壁6を備えており、ケーシング5の内部下側に液状の低沸点冷媒Fを貯留する冷媒液室7が設けられ、ケーシング5の内部上側にガス化した低沸点冷媒Fを貯留する冷媒ガス室8が設けられている。低沸点冷媒Fは、市販されているフロリナート(登録商標)と称されるペルフルオロカーボンを使用しており、この実施例においては3M社のFC-72を低沸点冷媒Fとして使用しており、その沸点は摂氏56度(華氏133度)である。上壁6には、冷媒ガス室8の内部の圧力が大気圧を越えて過大になるのを防ぐベローズ13や、緊急開放バルブなどが設けられている。
【0027】
図2に示すように、冷媒液室7の上開口縁より外側左右には凝縮ピット9が膨出形成されており、その内部に凝縮器10が配置されている。凝縮器10はクロスフィンチューブ構造とされており、ガス化した低沸点冷媒Fを液化する。凝縮器10のフィン板は、液化した低沸点冷媒Fの流下を促進するために、前後に一定間隔おきに配置されており、冷媒管はフィン板を厚み方向に貫通する状態で蛇行状に配置されている。凝縮ピット9の底壁11は、凝縮器10から滴下した低沸点冷媒Fの液滴を速やかに冷媒液室7へ戻すために、冷媒液室7に向かって下り傾斜されている。図2に示すように冷媒液室7には、低沸点冷媒Fが底壁11の近傍付近にまで貯留されており、その液中にマザーボードや電子回路基板などの冷却対象Bの一群が浸漬されて、支持部材12で起立保持されている。実際には、一群の電子回路基板からなる冷却対象Bの発熱面に、ポーラス状銅板などのロータス金属板や、焼結金属板などの伝熱体を配置し、支持部材12に相当するホルダーで一定間隔(約7mm)おきに起立保持した状態でフレームに収め、フレームごと冷却対象Bを冷媒液室7の底壁から所定距離だけ離れた状態で収容し、低沸点冷媒Fを冷媒液室7に充填して冷却対象Bを浸漬状態にする。
【0028】
図1および図3に示すようにクーリング装置3は、左右一対のクーリングユニット15と、各クーリングユニット15に併設される水冷式のチラーユニット16とで構成されている。各クーリングユニット15は、直方体状に組まれたフレーム17と、フレーム17の前後面に固定される逆台形状のクーリングケース18と、同ケース18の内部にV字状に配置される一対のクロスフィンチューブ構造の熱交換器19と、熱交換空気を生成して熱交換器19に接触させる送風ファン20などを備えている。この実施例では、フレーム17の上開口を上壁21で塞ぎ、その中央に開口した排風口22の上部に導風筒23を配置し、その内部に送風ファン20を収容した。送風ファン20を駆動すると、クーリングケース18と熱交換器19で囲まれた空間の空気が上向きに排出されるので、外部空気が吸風面19a側から吸い込まれて熱交換器19を通過する冷却水の熱を奪う。
【0029】
1基の液浸ユニット2に対して、2基のクーリングユニット15を用意し、合計4基の熱交換器19で冷却水を冷却するのは、液浸ユニット2における冷却対象Bの発熱量が大きいからである。因みに1基のクーリングユニット15の幅×高さ×奥行は、1300×1571×1470mmであり、その冷却能力は冷却水量が80L/minの場合に22kWとなる。但し、熱交換器19に流入する冷却水温度が45度C、外気温度が35度Cである場合であり、このときの送風ファン20の消費電力量は0.7kWである。2基のクーリングユニット15のうち、隣接面に臨む熱交換器19の吸風面19aどうしは、近距離で対向するため左右両側の開放面に臨む吸風面19aに比べて吸風量が低下する傾向がある。こうした吸風量の低下を極力避けるために、各熱交換器19をV字状に傾斜させた状態で配置するようにした。この実施例では、熱交換器19の水平面に対する傾斜角度を75度とした。
【0030】
チラーユニット16は、冷凍機器を構成する圧縮機、膨張弁、凝縮器、蒸発器などがひとつのパッケージとしてまとめられたチラー本体26と、チラー熱交換器27と、チラー本体26で冷却された冷却水をチラー熱交換器27へ送給する送給ポンプ32などを備えており、チラー熱交換器27が4個の熱交換器19の吸風面19a側に配置されている。チラー本体26から送給された冷媒液は、チラー熱交換器27を通過する間に冷熱を放出して、各熱交換器19を通過する空気の温度を下げる。チラーユニット16は、外気温度が高いような状況において稼働されて、熱交換器19の冷却能力を補う。なお、チラー本体26は空冷式、あるいは水冷式のいずれであってもよく、本実施例では空冷式のチラー本体26を採用している。
【0031】
凝縮器10における低沸点冷媒Fの液化を効果的に行うために、凝縮器10と熱交換器19は冷却水を送給する送水路28を介して連通されており、送水路28の中途部には冷却水を凝縮器10と熱交換器19の間で強制的に循環させる循環ポンプ29が設けられている。送水路28は、循環ポンプ29で加圧された冷却水を熱交換器19に送給する高温側送水路28aと、熱交換後の冷却水を凝縮器10に送給する低温側送水路28bとを備えている。各クーリングユニット15の熱交換器19は、高温側送水路28aと低温側送水路28bに対して並列に接続されている。このように、2基ずつの熱交換器19が各送水路28a・28bに対して並列に接続されていると、単位時間当たりに冷却できる冷却水量を増強できるので、凝縮器10の液化作用を促進して、熱負荷の大きな冷却対象Bにも支障なく対応出来る液浸冷却システムを得ることができる。高温側送水路28aには、先の循環ポンプ29と冷却水の温度を検知する水温センサー30が設けられ、低温側送水路28bには熱交換後の冷却水の温度を検知する水温センサー31が設けられている。なお、この液浸冷却システムには、水温センサー30・31以外に、クーリング装置3の周辺の外気温度を検知する外気温センサーや、冷媒液の温度や液位、あるいは冷媒ガスの温度および圧力を検知するセンサーや、冷却ブース1内の冷媒ガス濃度を検知するセンサーなどが設けられる。
【0032】
以上のように構成した液浸冷却システムは、例えばサーバーシステムと併用されて、低沸点冷媒Fに浸漬された状態のマザーボードや電子回路基板などの冷却対象Bを冷却する。冷却対象Bの熱は低沸点冷媒Fが沸騰し気化することで奪われ、気化した低沸点冷媒Fのガスは冷媒ガス室8内に充満する。このとき、熱交換器19で冷却された冷却水を凝縮器10に送給しながら、冷媒ガス室8内の冷媒ガスを凝縮器10で液化することにより、凝縮器10の液化作用を促進して冷媒ガスを効果的に液化することができる。
【0033】
外気温がさほど高くない状況では、熱交換器19の送風ファン20と循環ポンプ29とを作動させるだけで、冷媒ガスを凝縮器10で確実に液化できるので、液浸冷却システムを運転するときのランニングコストは少なくて済む。また、冷凍機器から送給された冷媒の熱で凝縮器10を作動させる場合に比べて、簡単な構造のクーリングユニット15を用意すれば良いので、液浸冷却システムを導入する際のコストを削減できるうえ、クーリング装置3を配置するスペースが少なくなる利点もある。冷却ブース1内の液浸ユニット2と、冷却ブース1の外に設置されるクーリング装置3は、高温側送水路28aおよび低温側送水路28bで接続すればよいので、大形の気密構造の冷却ブース1を用意する必要がない点でも有利である。冷媒液室7の上開口縁より外側左右に凝縮ピット9を膨出形成し、その内部に凝縮器10を配置するので、冷媒液室7に収容した冷却対象Bの出し入れや、液浸ユニット2の内部のメンテナンスを行う場合などに、凝縮器10に邪魔されることもなく作業を行うことができる。
【0034】
夏季などの外気温度が高い状況では、熱交換器19から凝縮器10へ送給される冷却水の温度を充分に下げられないことがある。そうした場合には、チラーユニット16を作動させて、チラー熱交換器27で冷却された空気を熱交換器19に送り込むことにより、熱交換器19から凝縮器10へ送給される冷却水の温度を充分に低下させることができる。従って、凝縮器10による低沸点冷媒Fの液化を確実に行えるうえ、液浸冷却システムの冷却能力をさらに増強して、熱負荷の大きな冷却対象Bにも対応出来る液浸冷却システムとすることができる。また、複数基のクーリングユニット15でクーリング装置3を構成し、各クーリングユニット15を、高温側送水路28aと低温側送水路28bに対して並列に接続し、単位時間当たりに冷却できる冷却水量を増強できるので、凝縮器10の液化作用を促進して、熱負荷の大きな冷却対象Bにも支障なく対応出来る液浸冷却システムとすることができる。
【0035】
熱交換器19およびチラーユニット16の運転状態は、図示していない制御装置によって制御されており、外気温度センサー(図示していない)と水温センサー30・31の検知結果に応じて、送風ファン20、循環ポンプ29、チラー本体26、および送給ポンプ32の運転状態を好適化する。このように各機器20・29・26・32の運転状態を好適化することにより、各機器20・29・26・32を無駄のない状態で作動させることができるので、液浸冷却システムのランニングコストをさらに削減できる。
【0036】
以上のように、熱交換器19とチラーユニット16を備えた液浸冷却システムによれば、夏季などの外気温度が高い状況下においては、熱交換器19とチラーユニット16を同時に作動させることにより、チラー熱交換器27で冷却された空気を熱交換器19に送り込み、熱交換器19から凝縮器10へ送給される冷却水の温度を充分に低下させることができる。従って、凝縮器10の液化作用を促進して低沸点冷媒ガスをさらに効果的に液化することができる。また、冷却対象Bの熱負荷が大きい場合でも、チラーユニット16を断続的に作動させることにより支障なく対応できる。
【0037】
(実施例2) 図4は実施例2に係る液浸冷却システムを示している。この実施例におけるクーリング装置3は、基本的に実施例1の液浸冷却システムと同じであるが、冷媒液室7内に水冷式の熱交換器40を配置し、送水路28から分岐した分岐送水路41の分岐部分に給水弁(開閉弁)42を設ける点が実施例1の液浸冷却システムと異なる。図4ではクーリングユニット15の片方のみを図示しているが、実施例1と同様に2基のクーリングユニット15と、各クーリングユニット15に併設されるチラーユニット16で液浸冷却システムが構成されている。
【0038】
上記のように、冷媒液室7内に水冷式の熱交換器40を配置した液浸冷却システムによれば、例えば緊急時や、液浸ユニット2の内部のメンテナンスを行う場合などに、冷却水を低温側送水路28bから熱交換器40へ送給することにより、低沸点冷媒Fの温度を効果的に低下させて沸点以下にし、低沸点冷媒Fの気化を停止させることができる。従って、緊急時における液浸冷却システムの安全性を向上できるうえ、液浸ユニット2の内部のメンテナンスを行う場合に、短時間でケーシング5を開放して作業時間を短縮できる。なお、液浸冷却システムが通常運転されている状態では、給水弁42は閉止される。
【0039】
(実施例3) 図5は実施例3に係る液浸冷却システムを示している。この実施例におけるクーリング装置3は基本的に実施例1の液浸冷却システムと同じであるが、循環ポンプ29が故障した場合などに備えて、バックアップ送水系を備えるようにした点が、実施例1の液浸冷却システムと異なる。バックアップ送水系は、冷却水を加圧送給可能な給水源36と、給水源36と低温側送水路28bを接続する非常時送水路43と、高温側送水路28aから分岐される排水路44と、開閉弁45および開閉弁46を備えている。開閉弁45は、高温側送水路28aおよび低温側送水路28bにそれぞれ設けられており、開閉弁46は、非常時送水路43および排水路44にそれぞれ設けられている。非常時送水路43は、低温側送水路28bの開閉弁45の下流側に接続されており、排水路44は高温側送水路28aの開閉弁45の上流側に接続されている。給水源36の冷却水としては水道水、あるいは地下水、河川水などをポンプにより加圧送給して使用できるが、外気温の温度の変化の影響を受けにくい地下水を使用するのが好ましく、複数の水源を併用できるようにしてあってもよい。
【0040】
液浸冷却システムが通常状態で運転されているときは、バックアップ送水系側の開閉弁46は閉止されており、送水路28側の開閉弁45は開放されている。しかし、循環ポンプ29が故障した場合や、クーリングユニット15の駆動電源が停電状態となったときは、バックアップ送水系側の開閉弁46を開放し、送水路28側の開閉弁45は閉止して、給水源36から送給される冷却水を凝縮器10に送給する。熱交換後の冷却水は、排水路44を介して冷却ブース1の外へ排出される。以上のように構成した液浸冷却システムによれば、例えば循環ポンプ29が故障するなどクーリング装置3が故障した場合であっても、バックアップ送水系を作動させ、給水源36の冷却水を非常時送水路43で凝縮器10に送給して、冷媒ガス室8内の冷媒ガスを効果的に液化することができる。従って、データセンターやスーパーコンピュータの作動を停止する必要もなく、クーリング装置3の故障個所の復旧作業を行える。
【0041】
(実施例4) 図6は実施例4に係る液浸冷却システムを示している。実施例4に係るクーリング装置3では、一対のクーリングユニット15に加え、高温側送水路28aおよび低温側送水路28bに並列的に接続されるチラー47を設けるようにした。詳しくは、チラー47の送水路48を低温側送水路28bに接続し、チラー47の帰還送水路49を高温側送水路28aに接続し、送給ポンプ32と低温側送水路28bの間の送水路48に逆止弁50を設けるようにした。また、低温側送水路28に開閉弁51と逆止弁52を設けて、チラー47から送給される低温の冷却水がクーリングユニット15側へ流れるのを防止した。さらに、帰還送水路49に開閉弁53を設けて、熱交換後の冷却水をチラー47へ還流させるようにした。本実施例のチラー47は、実施例1におけるチラー本体26と同様の構成を有している。
【0042】
実施例4に係る液浸冷却システムでは、外気温が高い場合には、チラー47を作動させ、該チラー47で冷却された低温の冷却水を凝縮器10に送給することにより、冷媒ガスを効果的に液化できる。また、外気温が低い場合には、クーリングユニット15を作動させて冷媒ガスを液化させる。つまり、クーリングユニット15とチラー47は外気温の状態に応じて択一的に稼働される。このように、チラー47で冷却された低温の冷却水を凝縮器10に直接送給して冷媒ガスを液化すると、チラーユニット16の冷却水で熱交換風を間接的に冷却する実施例1の液浸冷却システムに比べて、凝縮器10による凝縮効率を高くすることができる。従って、外気温が高い状況下であっても、冷媒ガスを効果的に液化できる。また、外気温が低い状況下では、クーリングユニット15を稼働させればよいので、液浸冷却システムのランニングコストを削減できる。
【0043】
(実施例5) 図7は実施例5に係る液浸冷却システムを示している。実施例5におけるクーリング装置3は実施例1におけるチラーユニット16が省略されている。具体的にはクーリング装置3は、一対のクーリングユニット15を備えており、各クーリングユニット15に熱交換器19がV字状に配置されて、各熱交換器19の吸風面19a側に霧化ノズル34が配置されている。霧化ノズル34は、冷却水を加圧送給可能な給水源36と給水路を介して接続されており、給水路の中途部には給水弁35が設けてある。給水源36から送給された冷却水は霧化ノズル34でミスト化されて、熱交換器19の吸風面19aに吸い込まれる空気に噴霧される。こうした液浸冷却システムによれば、熱交換器19を通過する空気を霧化ノズル34から噴出されたミストの蒸発作用により冷却できるので、上記のチラーユニット16を併用する液浸冷却システムと同様に、夏季などの外気温度が高い状況であっても、熱交換器19から凝縮器10へ送給される冷却水の温度を充分に下げて、凝縮器10の液化作用を促進することで冷媒ガスを効果的に液化することができる。また、霧化ノズル34から噴出されたミストの蒸発熱を利用するので、液浸冷却システムのランニングコストを削減できる。実施例3と同様に給水源としては、水道水、地下水、河川水などを使用できる。
【0044】
(実施例6) 図8は実施例6に係る液浸冷却システムを示している。この実施例におけるクーリング装置3の各クーリングユニット15には、熱交換器19と送風ファン20を設け、チラーユニット16や霧化ノズル34は使用しないようにした。こうしたシンプルな液浸冷却システムは、夏季でも外気温度が高くならない地方や環境に設置されたサーバーシステムで使用するのに適しており、チラーユニット16や霧化ノズル34を省略できる分だけ、液浸冷却システムの導入コストとランニングコストを著しく削減できる。
【0045】
上記の実施例では、液浸冷却システムの原理構造を理解しやすくするために、1基の液浸ユニット2と2基のクーリングユニット15を備えたクーリング装置3の組み合わせとして説明したが、大量の電子回路基板が使用されるデータセンターなどでは、液浸冷却システムが多数個の一群の液浸ユニット2と、多数個の一群のクーリング装置3の組み合わせとして使用されることが想定される。クーリングユニット15の送風ファン20は、個々の熱交換器19に対応して2個設けてあってもよい。また、送風ファン20は熱交換器19の吸風面19aへ向かって空気を送給する形態であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
2 液浸ユニット
3 クーリング装置
7 冷媒液室
8 冷媒ガス室
9 凝縮ピット
10 凝縮器
15 クーリングユニット
16 チラーユニット
19 熱交換器
19a 吸風面
20 送風ファン
27 チラー熱交換器
28 送水路
28a 高温側送水路
28b 低温側送水路
29 循環ポンプ
30 水温センサー
31 水温センサー
34 霧化ノズル
35 給水弁
36 給水源
40 熱交換器
42 開閉弁(給水弁)
43 非常時送水路
44 排水路
47 チラー
F 低沸点冷媒
B 冷却対象
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8