(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】振動検出素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 5/02 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
G01N5/02 A
(21)【出願番号】P 2020027106
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2023-01-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 高橋 眞揮、高橋 友博、石井 祐樹、増本 憲泰、加藤 史仁,“面内圧縮塑性変形スパッタによるパラジウム薄膜の水素吸蔵特性の向上,”第36回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム,S-201,2019年11月
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 佐藤 優、石井 祐樹、増本 憲泰、加藤 史仁,“Wireless quartz crystal microbalance biosensor with high hydrogen-absorbing sputtered thinfilm for evaluating hydrogen concentration in breath、”6th International Conference on Bio-Sensing Technology,P2.50,2019年06月
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 先端計測分析技術・機器開発プログラム「超高感度無線無電極MEMS水晶振動子センサーの開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】392022570
【氏名又は名称】サムコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505360786
【氏名又は名称】加藤 史仁
(74)【代理人】
【識別番号】100112715
【氏名又は名称】松山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】荻 博次
(72)【発明者】
【氏名】野中 知行
(72)【発明者】
【氏名】加藤 史仁
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-138626(JP,A)
【文献】特開2011-124771(JP,A)
【文献】特開2007-043054(JP,A)
【文献】特開2018-077158(JP,A)
【文献】特開平11-023284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と前記第1の面に対向する第2の面とを有する空間部を含む基材と、
前記空間部の前記第1の面から前記第2の面の方向へ突出した第1の支持部材と、
前記空間部の前記第2の面から前記第1の面の方向へ突出した第2の支持部材と、
前記空間部内において振動可能に前記第1の支持部材または前記第2の支持部材に接して配置された振動子とを備え、
前記振動子は、
圧電体からなる基板と、
前記基板上に配置され、前記基板の面内方向に圧縮力または引張力が印加された薄膜とを含
み、
前記薄膜は、パラジウム、パラジウム合金、パラジウムを含む金属ガラス、白金、および金を担持した酸化タングステンのいずれかからなる、振動検出素子。
【請求項2】
基板ホルダーの円弧状の表面に圧電体からなる第1の基板を取り付ける第1の工程と、
前記第1の基板上に薄膜を形成して前記第1の基板と前記薄膜とからなる振動子を作製する第2の工程と、
前記振動子を前記基板ホルダーから取り外し、その取り外した振動子を第1の凹部
と前記第1の凹部の底面から突出した第1の支持部材
とを有する第2の基板の前記第1の支持部材に耐熱接着剤によって接着する第3の工程と、
前記振動子が前記耐熱接着剤によって
前記第1の支持部材に接着された
前記第2の基板を、第2の凹部
と前記第2の凹部の底面から突出した第2の支持部材
とを有する第3の基板の前記第2の支持部材に前記振動子が対向するように前記第3の基板と接合する第4の工程と、
前記第4の工程の後、前記耐熱接着剤を除去する第5の工程とを備え
、
前記第2の工程において、パラジウム、パラジウム合金、パラジウムを含む金属ガラス、白金、および金を担持した酸化タングステンのいずれかからなる前記薄膜を前記第1の基板上に形成して前記振動子を作製する、振動検出素子の製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程において、前記基板ホルダーから前記第1の基板の方向へ突出するように湾曲した前記基板ホルダーの円弧状の表面に前記第1の基板を取り付ける、請求項
2に記載の振動検出素子の製造方法。
【請求項4】
前記第2の工程において、スパッタリング法によって前記薄膜を前記第1の基板上に形成して前記振動子を作製する、請求項
2または請求項
3に記載の振動検出素子の製造方法。
【請求項5】
前記第4の工程は、
前記振動子
を接着剤によって第4の基板
に接着する第1のサブ工程と、
前記第1のサブ工程の後、前記第4の基板に接着された前記振動子を前記耐熱接着剤によって前記第1の支持部材に接着し、前記接着剤および前記第4の基板を除去して前記振動子が前記耐熱接着剤によって前記第1の支持部材に接着された前記第2の基板を作製する第
2のサブ工程と、
前記第
2のサブ工程の後、前記振動子が前記第2の支持部材に対向するように前記第2の基板を前記第3の基板と接合する第
3のサブ工程とを含む、請求項
2から請求項
4のいずれか1項に記載の振動検出素子の製造方法。
【請求項6】
前記第
2のサブ工程は、
前記第1の凹部と前記第1の支持部材とを
前記第2の基板に形成するサブ工程Aと、
前記第4の基板に接着さ
れた前記振動子の露出した表面に耐熱接着剤を塗布し、その塗布した耐熱接着剤によって前記振動子を前記第1の支持部材に接着するサブ工程Bと
、
前記接着剤および前記第4の基板を除去するサブ工程Cとを含み、
前記第
3のサブ工程は、
前記第2の凹部と前記第2の支持部材とを
前記第3の基板に形成するサブ工程
Dと、
前記サブ工程
Cの後、前記振動子の露出した表面が前記第2の支持部材に対向するように前記第2の基板を前記第3の基板と接合するサブ工程
Eとを含む、請求項
5に記載の振動検出素子の製造方法。
【請求項7】
前記第5の工程において、前記耐熱接着剤は、塩基性の溶液、酸性の溶液および有機系の溶液のいずれかによって除去される、請求項
2から請求項
6のいずれか1項に記載の振動検出素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動検出素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載された水素センサが知られている。特許文献1に記載された水素センサは、保持層と、試料極と、標準極と、水素イオン伝導体と、演算装置とを備える。
【0003】
試料極は、保持層に接して保持層上に形成される。そして、試料極は、Pd-Au(パラジウム-金)、Pd-Ag(パラジウム-銀)およびPd-Cu(パラジウム-銅)のいずれかからなる。試料極の厚さは、圧延により形成可能な薄膜の厚さよりも薄く、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である。また、試料極の厚さは、Pd原子の1原子層の幅である0.27nmよりも厚い。
【0004】
保持層は、複数の流通孔を備えた多孔質膜からなる。標準極は、Pd-Au(パラジウム-金)、Pd-Ag(パラジウム-銀)、Pd-Pt(パラジウム-白金)、Pd-Cu(パラジウム-銅)等からなる。水素イオン伝導体は、試料極と標準極との間に配置される。
【0005】
演算装置は、標準極と試料極との間に生じた起電力、標準極における水素分圧、及び試料の温度に基づいて、次のネルンストの式を用いて試料極における水素分圧を算出する。
【0006】
E=(RT/2F)ln(P1/P2)
このネルンストの式において、Eは、起電力であり、Rは、気体定数であり、Tは、温度(K)であり、Fは、ファラデー定数であり、P1は、試料極の水素ポテンシャルに相当する水素分圧であり、P2は、標準極の水素ポテンシャルに相当する水素分圧である。
【0007】
そして、特許文献1は、試料極の膜厚が薄いほど、水素センサの応答性を向上させることができ、より速やかに試料の水素濃度を検出することができることを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1は、試料極として、Pd-Au(パラジウム-金)、Pd-Ag(パラウム-銀)およびPd-Cu(パラジウム-銅)のいずれかを用い、標準極として、Pd-Au(パラジウム-金)、Pd-Ag(パラジウム-銀)、Pd-Pt(パラジウム-白金)およびPd-Cu(パラジウム-銅)のいずれかを用いたとき、水素の検出感度を向上できることを開示していない。
【0010】
そこで、この発明の実施の形態によれば、検出感度を向上可能な振動検出素子を提供する。
【0011】
また、この発明の実施の形態によれば、検出感度を向上可能な振動検出素子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(構成1)
この発明の実施の形態によれば、振動検出素子は、基材と、第1の支持部材と、第2の支持部材と、振動子とを備える。基材第1の面と第1の面に対向する第2の面とを有する空間部を含む。第1の支持部材は、空間部の第1の面から第2の面の方向へ突出している。第2の支持部材は、空間部の第2の面から第1の面の方向へ突出している。振動子は、空間部内において振動可能に第1の支持部材または第2の支持部材に接して配置される。そして、振動子は、圧電体からなる基板と、基板上に配置され、基板の面内方向に圧縮力または引張力が印加された薄膜とを含む。
【0013】
(構成2)
構成1において、薄膜は、有機材料または無機材料からなる。
【0014】
(構成3)
構成2において、薄膜は、パラジウム、パラジウム合金、パラジウムを含む金属ガラス、白金、および金を担持した酸化タングステンのいずれかからなる。
【0015】
(構成4)
また、この発明の実施の形態によれば、振動検出素子の製造方法は、基板ホルダーの円弧状の表面に圧電体からなる第1の基板を取り付ける第1の工程と、
第1の基板上に薄膜を形成して第1の基板と薄膜とからなる振動子を作製する第2の工程と、
振動子を基板ホルダーから取り外し、その取り外した振動子を第1の凹部の底面から突出した第1の支持部材に耐熱接着剤によって接着する第3の工程と、
振動子が耐熱接着剤によって接着された第2の基板を、第2の凹部の底面から突出した第2の支持部材を有する第3の基板の第2の支持部材に振動子が対向するように第3の基板と接合する第4の工程と、
第4の工程の後、耐熱接着剤を除去する第5の工程とを備える。
【0016】
(構成5)
構成4の第2の工程において、有機材料または無機材料からなる薄膜を第1の基板上に形成して振動子を作製する。
【0017】
(構成6)
構成4または構成5の第2の工程において、パラジウム、パラジウム合金、パラジウムを含む金属ガラス、白金、および金を担持した酸化タングステンのいずれかからなる薄膜を第1の基板上に形成して振動子を作製する。
【0018】
(構成7)
構成4から構成6のいずれかの第1の工程において、基板ホルダーから第1の基板の方向へ突出するように湾曲した基板ホルダーの円弧状の表面に第1の基板を取り付ける。
【0019】
(構成8)
構成4から構成6のいずれかの第2の工程において、スパッタリング法によって薄膜を第1の基板上に形成して振動子を作製する。
【0020】
(構成9)
構成4から構成8のいずれかにおいて、第4の工程は、
振動子が接着された第4の基板を用いて、振動子が耐熱接着剤によって第1の支持部材に接着された第2の基板を作製する第1のサブ工程と、
前記第1のサブ工程の後、振動子が第2の支持部材に対向するように第2の基板を第3の基板と接合する第2のサブ工程とを含む。
【0021】
(構成10)
構成9において、第1のサブ工程は、
第1の凹部と第1の支持部材とを第2の基板に形成するサブ工程Aと、
振動子を第4の基板に接着させ、振動子の露出した表面に耐熱接着剤を塗布し、その塗布した耐熱接着剤によって振動子を第1の支持部材に接着するサブ工程Bとを含み、
第2のサブ工程は、
第2の凹部と第2の支持部材とを第3の基板に形成するサブ工程Cと、
サブ工程Bの後、振動子の露出した表面が第2の支持部材に対向するように第2の基板を第3の基板と接合するサブ工程Dとを含む。
【0022】
(構成11)
構成4から構成10のいずれかの第5の工程において、耐熱接着剤は、塩基性の溶液、酸性の溶液および有機系の溶液のいずれかによって除去される。
【発明の効果】
【0023】
振動検出素子の検出感度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明の実施の形態による振動検出素子の斜視図である。
【
図2】
図1に示す線II-II間における振動検出素子の断面図である。
【
図3】
図2に示す空間部およびその周辺の拡大図である。
【
図5】
図1および
図2に示す振動子の製造方法を示す工程図である。
【
図7】
図1および
図2に示す振動検出素子の製造方法を示す工程図である。
【
図8】
図7に示す工程S2の詳細な工程を示す工程図である。
【
図9】
図7に示す工程S3の詳細な工程を示す第1の工程図である。
【
図10】
図7に示す工程S3の詳細な工程を示す第2の工程図である。
【
図11】
図7に示す工程S3の別の詳細な工程を示す第1の工程図である。
【
図12】
図7に示す工程S3の別の詳細な工程を示す第2の工程図である。
【
図13】
図7に示す工程S3の更に別の詳細な工程を示す第1の工程図である。
【
図14】
図7に示す工程S3の更に別の詳細な工程を示す第2の工程図である。
【
図15】
図7に示す工程S4の詳細な工程を示す第1の工程図である。
【
図16】
図7に示す工程S4の詳細な工程を示す第2の工程図である。
【
図17】
図7に示す工程S5の詳細な工程を示す図である。
【
図18】
図7に示す工程S5の別の詳細な工程を示す図である。
【
図19】この発明の実施の形態による別の振動検出素子の斜視図である。
【
図20】
図19に示す線XX-XX間における振動検出素子の断面図である。
【
図22】
図21に示す基板53側から見た振動子54および支持部材522の平面図である。
【
図23】支持部材522の高さを説明するための図である。
【
図25】
図24に示す工程S2Aの詳細な工程を示す工程図である。
【
図26】
図24に示す工程S3の詳細な工程を示す第1の工程図である。
【
図27】
図24に示す工程S3の詳細な工程を示す第1の工程図である。
【
図28】
図24に示す工程S4Aの詳細な工程を示す第1の工程図である。
【
図29】
図24に示す工程S4Aの詳細な工程を示す第2の工程図である。
【
図30】
図24に示す工程S5の詳細な工程を示す工程図である。
【
図31】この発明の実施の形態による更に別の振動検出素子の斜視図である。
【
図32】
図31に示す線XXXII-XXXII間における振動検出素子の断面図である。
【
図33】
図32に示す空間部SP3およびその周辺の拡大図である。
【
図34】
図33に示す基板63側から見た振動子64および支持部材622の平面図である。
【
図41】入力電圧および受信信号のタイミングチャートである。
【
図43】
図1および
図2に示す振動検出素子の変形例を示す断面図である。
【
図44】共振周波数の変化量の時間依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0026】
図1は、この発明の実施の形態による振動検出素子の斜視図である。
図2は、
図1に示す線II-II間における振動検出素子の断面図である。なお、
図1においては、アンテナが省略されている。
【0027】
図1および
図2を参照して、この発明の実施の形態による振動検出素子10は、基板1~3と、振動子4と、アンテナ5,6とを備える。
【0028】
基板2は、凹部21と、支持部材22とを有する。基板3は、凹部31と、支持部材32と、送廃液口33とを有する。支持部材22は、凹部21の底面21Aから凹部32の底面31Aへ向かって突出している。支持部材32は、凹部31の底面31Aから凹部21の底面21Aへ向かって突出している。基板3の凹部31は、基板2の凹部21に対向している。支持部材22,32の各々は、例えば、円柱形状からなる。送廃液口33は、基板3の外表面から凹部31の底面31Aに至るまで基板3を厚み方向に貫通する。
【0029】
基板1は、陽極接合によって基板2の一方の面に接合される。基板3は、凹部31が凹部21に対向するように陽極接合によって基板2の他方の面に接合される。その結果、凹部21,31によって空間部SP1が形成される。
【0030】
振動子4は、例えば、四角形の平面形状を有する。振動子4は、基板41と、薄膜42とからなる。基板41は、例えば、水晶、リチウムナイオベイトおよびリチウムタンタレート等からなり、一般的には、圧電体からなる。薄膜42は、基板41に接して基板41上に配置される。薄膜42は、一般的には、有機材料または無機材料からなる。そして、有機材料としては、多孔質高分子有機材料、多孔質高分子ゲル、グラファイト、グラヘン、および自己組織化単分子膜等を用いることができる。また、無機材料としては、パラジウム、パラジウム合金、パラジウムを含む金属ガラス、白金、および金を担持した酸化タングステン等を用いることができる。圧電体と薄膜との密着性を高めるためにチタンおよびクロム等の密着層を圧電体と薄膜との間に形成してもよい。そして、薄膜42には、基板41の面内方向に圧縮力または引張力が印加されている。基板41の厚みは、一般的には、10μmよりも薄く、例えば、3μmである。薄膜42の厚みは、例えば、数nm~数百nmである。
【0031】
振動子4は、空間部SP1内において、支持部材22(または支持部材32)に接して配置される。
図2においては、2個の支持部材22が図示されているが、実際には、
図1に示すように、2個よりも多くの支持部材22が凹部21内に形成されている。支持部材32についても同様である。そして、N1個の支持部材22およびN2個の支持部材32が設けられる。N1個およびN2個の各々は、振動子4が撓みによって凹部21の底面21Aまたは凹部31の底面31Aに接触するのを防止することができる個数である。N1個の具体的な数値は、振動子4が撓みによって凹部21の底面21Aに接触するのを防止することができるように支持部材22間の距離を考慮して決定され、N2個の具体的な数値は、振動子4が撓みによって凹部31の底面31Aに接触するのを防止することができるように支持部材32間の距離を考慮して決定される。なお、N1およびN2は、相互に同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0032】
領域REGに形成される支持部材22は、検査対象の溶液を流路7から空間部SP1の全域に流すように機能する。つまり、領域REGに形成される支持部材22は、検査対象の溶液が空間部SP1の中心付近を通過して流路8へ流れるのではなく、検査対象の溶液が振動子4の面内方向にも広がって空間部SP1を通過し、流路8へ流れるように機能する。
【0033】
基板2,3が相互に接合されることによって、流路7,8が形成されるとともに、導入口9および排出口11が形成される。
【0034】
流路7は、一方端が導入口9に連通し、他方端が空間部SP1に連通する。流路8は、一方端が排出口11に連通し、他方端が空間部SP1に連通する。導入口9は、流路7の一方端に連通する。排出口11は、流路8の一方端に連通する。
【0035】
基板1,3の各々は、例えば、ガラスからなる。基板2は、例えば、シリコン(Si)からなる。
【0036】
アンテナ5,6の各々は、例えば、0.2mmφ~1mmφの直径を有する銅線からなる。アンテナ5は、基板3に接して基板3上に配置される。アンテナ6は、基板1に接して基板1の下側に配置される。このように、アンテナ6は、振動子4に対してアンテナ5と反対側に配置される。
【0037】
振動子4は、アンテナ5によって電磁場が印加されると、振動する。アンテナ5は、電磁場を振動子4に印加する。アンテナ6は、電磁場が印加されたことによって振動子4が振動したときの振動信号からなる受信信号を受信する。
【0038】
このように、振動検出素子10は、接地電位に接続されたアンテナを用いずに振動子4を振動させるとともに振動子4の振動を非接触で検出する。
【0039】
なお、アンテナ5,6は、相互に対向するように配置される必要はなく、振動子4に対向するように配置されていればよい。例えば、アンテナ5が、
図2の紙面上、振動子4の幅方向の中心よりも左側に配置され、アンテナ6が、
図2の紙面上、振動子4の幅方向の中心よりも右側に配置されていてもよく、また、その逆であってもよい。
【0040】
図3は、
図2に示す空間部SP1およびその周辺の拡大図である。
図3を参照して、基板1の厚みD1は、例えば、250μmであり、基板2の厚みD2は、例えば、60μmであり、基板3の厚みD3は、例えば、250μmである。
【0041】
空間部SP1(
図3における斜線部)の幅Wは、例えば、2mmであり、空間部SP1の高さH1は、例えば、90μmである。
図3の紙面に垂直な方向における空間部SP1の長さは、例えば、2.9mmである。支持部材22,32の高さH2は、例えば、30μmであり、支持部材22,32の直径は、例えば、60μmである。振動子4と支持部材32との間隔GPは、例えば、20μmである。
【0042】
振動子4は、
図3の紙面の左右方向において、例えば、1.7mmの長さを有し、
図3の紙面に垂直な方向において、例えば、2.5mmの長さを有する。
【0043】
なお、
図3は、基板1が基板3よりも下側に配置されているので、振動子4は、基板2の支持部材22に接しているが、
図3に示す基板1と基板3とを逆転した場合には、振動子4は、基板3の支持部材32に接し、振動子4と支持部材22との間隔は、例えば、20μmである。
【0044】
上述したように、振動子4は、空間部SP1内において、凹部21の底面21Aまたは凹部31の底面31Aに接触せず、支持部材22または支持部材32に接触した状態で保持されるので、安定に振動することができる。
【0045】
図4は、スパッタ装置の概略図である。
図4を参照して、スパッタ装置200は、チャンバ201と、基板ホルダー202と、支持台203と、高周波電源204と、ジグ205A,205Bと、ネジ206A,206Bとを備える。
【0046】
チャンバ201は、例えば、中空の立方体形状からなり、ガス導入口201Aと、排気口201Bとを有する。ガス導入口201Aには、図示省略した配管が接続され、アルゴン(Ar)ガスが配管およびガス導入口201Aを介してチャンバ201内へ導入される。
【0047】
排気口201Bには、ターボ分子ポンプ、メカニカルブースタポンプおよびロータリーポンプからなる排気装置が接続される。この場合、ターボ分子ポンプ、メカニカルブースタポンプおよびロータリーポンプは、排気口201Bに近い方から、ターボ分子ポンプ、メカニカルブースタポンプおよびロータリーポンプの順で配置される。
【0048】
基板ホルダー202は、チャンバ201の内部の上方に配置され、図示省略した支持部材によってチャンバ201に固定される。基板ホルダー202は、ヒーターを内蔵するとともに、支持台203の方向へ突出した凸面202Aを有する。凸面202Aの曲率は、永久ひずみを生じる材料を基板とした場合、応力-ひずみ線図における降伏点未満となる曲率であり、永久ひずみを生じない材料(シリコンおよびバネ材料等)を基板とした場合、破断応力を生じる曲率未満である。
【0049】
ジグ205Aは、基板ホルダー202の凸面202Aに沿う方向の中央部に段差を有する断面形状からなる。そして、ジグ205Aは、基板ホルダー202の一方端において、一部が基板ホルダー202の凸面202Aに接し、残部が基板ホルダー202の凸面202Aとの間で所定の隙間を有するように基板ホルダー202の凸面202Aの下側に配置され、基板ホルダー202の凸面202Aに接する部分がネジ206Aによって基板ホルダー202の凸面202Aに固定される。
【0050】
ジグ205Bは、基板ホルダー202の他方端において、基板ホルダー202の凸面202Aに沿う方向の中央部に段差を有する断面形状からなる。そして、ジグ205Bは、一部が基板ホルダー202の凸面202Aに接し、残部が基板ホルダー202の凸面202Aとの間で所定の隙間を有するように基板ホルダー202の凸面202の凸面202Aとジグ205Aとの隙間、および基板ホルダー202の凸面202Aとジグ205Bとの隙間に基板の端部を挿入することによって、基板は、ジグ205A,205Bによって基板ホルダー202の凸面202Aに固定される。
【0051】
支持台203は、チャンバ201の内部において、基板ホルダー202に対向するように配置され、図示省略した支持部材によってチャンバ201に固定される。そして、支持台203は、ターゲットを支持する。
【0052】
高周波電源204は、支持台103と接地電位GNDとの間に電気的に接続される。そして、高周波電源204は、例えば、13.56MHzの高周波電力を支持台203に印加する。
【0053】
なお、スパッタ装置200においては、基板ホルダー202に代えて基板ホルダー209を使用することができる。基板ホルダー209は、平板状の断面形状を有し、ヒーターを内蔵する。基板ホルダー209が使用される場合、基板ホルダー209は、図示省略した支持部材によってチャンバ201に固定される。そして、基板は、ジグ205A,205Bおよびネジ206A,206Bによって基板ホルダー209の平面状の表面209Aに固定される。
【0054】
図5は、
図1および
図2に示す振動子4の製造方法を示す工程図である。
図5を参照して、振動子4の製造が開始されると、ジグ205A,205Bおよびネジ206A,206Bによって基板41を基板ホルダー202の凸面202Aに固定する。また、ターゲット材料207を支持台203上に配置する(工程(a)参照)。
【0055】
そして、チャンバ201内を排気装置によって真空引きし(例えば、1×10-5Pa以下)、その後、ガス導入口201Aを介してチャンバ201内にArガスを導入し、チャンバ201内の圧力を、例えば、5Paに設定する。また、基板ホルダー202に内蔵されたヒーターによって基板41の温度を、例えば、400℃に設定する。
【0056】
そうすると、高周波電源204によって高周波電力を支持台203に印加し、Arガスを放電させる。この場合、高周波電力は、例えば、100Wである。これによって、Arがイオン化し、イオン化したアルゴン(Ar+)がターゲット材料207に衝突することによって、ターゲット原子がターゲット材料207から弾き出され、基板41の表面に付着する。これによって、ターゲット原子からなる薄膜43が基板41上に堆積する(工程(b)参照)。
【0057】
引き続いて、高周波電力の印加を停止するとともに、Arガスの供給を停止し、チャンバ201内を真空引きする。
【0058】
そして、基板温度を、例えば、400℃に設定し、例えば、60分、薄膜43を熱処理する(工程(c)参照)。この場合、熱処理は、真空中、窒素中および大気中のいずれかで行われる。この熱処理によって、薄膜43の結晶性が向上し、結晶性が向上した薄膜42が基板41上に形成される。なお、基板41として水晶振動子を用いる場合、熱処理温度は、キュリー点未満である。
【0059】
その後、基板41/薄膜42を基板ホルダー202から外す。これによって、振動子4の製造が終了する(
図5の工程)d)参照)。
【0060】
基板41/薄膜42を基板ホルダー202から外すことによって、基板41/薄膜42は、平板状になる。これによって、圧縮力が薄膜42に印加された振動子4が製造される。
【0061】
なお、振動子4は、
図5に示す工程(a),(b),(d)によって製造されてもよい。即ち、
図5に示す工程(c)は、実行されなくてもよい。
【0062】
図6は、別のスパッタ装置の概略図である。
図6を参照して、スパッタ装置200Aは、
図4に示すスパッタ装置200の基板ホルダー202を基板ホルダー208に変えたものであり、その他は、スパッタ装置200と同じである。
【0063】
基板ホルダー208は、支持台203と反対側へ窪んだ凹面208Aを有する。凹面208Aの曲率は、永久ひずみを生じる材料を基板とした場合、応力-ひずみ線図における降伏点未満となる曲率であり、永久ひずみを生じない材料(シリコンおよびバネ材料等)を基板とした場合、破断応力を生じる曲率未満である。また、基板ホルダー208は、ヒーターを内蔵する。
【0064】
スパッタ装置200Aにおいては、ジグ205Aは、基板ホルダー208の一方端において、ネジ206Aによって基板ホルダー208の凹面208Aに固定され、ジグ205Bは、基板ホルダー208の他方端において、ネジ206Bによって基板ホルダー208の凹面208Aに固定される。
【0065】
スパッタ装置200Aを用いることによって、
図5に示す工程(a),(b),(c),(d)(または工程(a),(b),(d))に従って、引張力が薄膜42に印加された振動子4を製造することができる。
【0066】
上述したように、この発明の実施の形態においては、振動子4は、基板41と、基板41上に形成され、圧縮力または引張力が印加された薄膜42とからなる。
【0067】
図7は、
図1および
図2に示す振動検出素子10の製造方法を示す工程図である。
図7を参照して、振動検出素子10の製造が開始されると、
図5に示す工程(a),(b),(c),(d)(または工程(a),(b),(d))に従って、基板41と、基板41上に形成され、圧縮力または引張力が印加された薄膜42とからなる振動子板を作製する(工程S1)。そして、ガラス基板に流路および支持部材を作製する(工程S2)。
【0068】
その後、振動子板を研磨およびパターンニングして振動子を作成する(工程S3)。引き続いて、シリコン基板に流路および支持部材を作製する(工程S4)。その後、振動子をパッケージして振動検出素子10を作製する(工程S5)。これによって、振動検出素子10が完成する。
【0069】
図8は、
図7に示す工程S2の詳細な工程を示す工程図である。なお、
図8は、
図1に示す線II-II間における断面図によって工程S2の詳細な工程を示す。
【0070】
図8を参照して、工程S2の詳細な工程が開始されると、ガラス基板100を準備する(工程A1-1)。そして、ガラス基板100の一方の表面にレジストを塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィによってパターンニングしてレジストパターン101を作製する(工程A1-2)。
【0071】
引き続いて、レジストパターン101をマスクとして、バッファードフッ酸を用いてガラス基板100をウェットエッチングし、凹部31およびピラー(支持部材32を構成する)を作製する(工程A1-3)。この場合、レジストパターン101に代えて、金属(例えば、Cr)薄膜をマスクとして用いてもよい。
【0072】
なお、工程A1-2,A1-3によって、
図1に示す流路7,8を構成する部分、導入口9を構成する部分、および排出口11を構成する部分も作製される。
【0073】
その後、機械加工またはブラスト加工によって送廃液口33を形成する(工程A1-4)。これによって、ガラス基板3が作製され、工程S2の詳細な工程が終了する。
【0074】
図9および
図10は、それぞれ、
図7に示す工程S3の詳細な工程を示す第1および第2の工程図である。なお、
図9および
図10は、
図1に示す線II-II間における断面図によって工程S2の詳細な工程を示す。
【0075】
図9を参照して、工程S3の詳細な工程が開始されると、シリコン基板110を準備する(工程B1-1)。
【0076】
そして、シリコン基板110の一方の面に接着剤111を塗布する(工程B1-2)。塗布された接着剤111は、「接着層」を構成する。接着剤111は、例えば、エポキシ系樹脂からなる。このエポキシ系樹脂は、金属粒子等の他の材料が含まれていない純粋な樹脂である。より具体的には、有機材料のエポキシ系樹脂、または無機材料である金属薄膜を用いることができる。そして、塗布された接着剤111の厚みは、例えば、数百nmである。また、接着剤を介さずに、基板同士を直接接合する表面活性化接合を利用してもよい。
【0077】
引き続いて、
図7に示す工程S1において作製された振動子板112(振動子板112は、ATカット水晶基板と、ATカット水晶基板上に形成され、圧縮力または引張力が印加された薄膜とからなる)を接着剤111によってシリコン基板110に張り合わせる(工程B1-3)。この場合、振動子板112の薄膜が接着剤111に接するように振動子板112をシリコン基板110に張り合わせる。
【0078】
その後、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)によって振動子板112のATカット水晶基板を所望の厚み(例えば3μm)に研磨する(工程B1-4)。
【0079】
そして、研磨された水晶板を有する振動子板113の表面に耐熱接着剤114を塗布する(工程B1-5)。耐熱接着剤114としては、例えば、東レ株式会社の製品名TP-424の耐熱接着剤が用いられる。この耐熱接着剤は、ポリイミド樹脂と、シリカと、ジプロピレングリコールメチルエーテルと、N-メチル-2-ピロリドンとを含む。ポリイミド樹脂の含有量は、例えば、30~70%であり、シリカの含有量は、例えば、1~10%であり、ジプロピレングリコールメチルエーテルの含有量は、例えば、30~70%であり、N-メチル-2-ピロリドンの含有量は、例えば、5~30%である。また、シリカの粒径は、数十nm~数百nmである。このように、耐熱接着剤114は、数十nm~数百nmの粒径を有する粒子を含む。そして、耐熱接着剤114は、400℃における体積変化が常温比で数%以下である。なお、耐熱接着剤は、シリカを含まない有機材料単体からなっていてもよい。
【0080】
耐熱接着剤114は、例えば、スピンコートによって振動子板113の表面に塗布され、厚みは、例えば、20μmである。なお、耐熱接着剤114は、ディスペンサーによって液滴状に振動子板113の表面に塗布されてもよい。
【0081】
耐熱接着剤114を塗布した後、例えば、350℃以上の温度で耐熱接着剤114を熱処理して耐熱接着剤114を硬化させる。この場合、耐熱接着剤114を350℃以上の温度で熱処理することによって、ポリイミド系の接着剤である耐熱接着剤114のイミド化が促進されるとともに溶媒が気化し、初期状態の泥状から硬質状になる。
【0082】
耐熱接着剤114を硬化させると、耐熱接着剤114の温度を常温に戻した後、真空中または窒素雰囲気における加熱プレスを用いて、振動子板113が接着されたシリコン基板110を、耐熱接着剤114によって、工程S2によって作製されたガラス基板3に張り合わせる(工程B1-6)。真空中で加熱プレスする場合、雰囲気の圧力は、例えば、10kPa以下であり、加熱プレス時の加熱温度は、例えば、150℃~220℃であり、加熱プレス時の圧力は、例えば、55.5kPa~155kPaである。窒素雰囲気中で加熱プレスする場合、窒素雰囲気中の酸素濃度は、10ppm以下であり、加熱プレスするときの加熱温度および圧力は、上記と同じである。なお、工程B1-6における加熱プレスによって、耐熱接着剤114の厚みは、20μmよりも若干薄くなる。
【0083】
なお、工程B1-5および工程B1-6は、耐熱接着剤114を薄膜上に塗布し、熱処理により硬化させ、一旦、常温に戻した後、再び、加熱および加圧することで、ガラス基板3とシリコン基板110とを張り合わせる工程を構成する。
【0084】
図10を参照して、工程(B1-6)の後、XeF
2ガス、またはSF
6ガスとO
2ガスとの混合ガスを用いたプラズマエッチングによってシリコン基板110をエッチングする(工程B1-7)。この場合、エッチング時の圧力は、10Paであり、パワーは、1kWであり、ステージ温度は、20℃である。この場合、XeF
2ガスを用いたプラズマエッチング装置としては、VPE-4F(サムコ株式会社製)、SF
6ガスとO
2ガスの混合ガスを用いたプラズマエッチング装置としては、RIE-10NR(サムコ株式会社製)を用いることができる。
【0085】
そして、O2ガスを用いたプラズマによって、接着剤111の表面に高エネルギー状態の酸素(酸素ラジカル)を照射し、接着剤111を構成する炭素と結合させ、CO2として気化、分解させ、アッシングによって接着剤111を除去する(工程B1-8)。この場合、アッシングの圧力は、10Paであり、パワーは、1kWであり、ステージ温度は、20℃である。これによって、振動子板113の表面を露出させる。
【0086】
その後、振動子板113の表面にレジストを塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィによってパターンニングしてレジストパターン115を形成する(工程B1-9)。
【0087】
引き続いて、レジストパターン115をマスクとして、CHF3ガスを用いたプラズマエッチングによって振動子板113をエッチングし、振動子4を作製する(工程B1-10)。この場合、エッチング時の圧力は、20Paであり、パワーは、100Wであり、ステージ温度は、20℃である。この場合、プラズマエッチング装置としては、RIE-800iPC(サムコ株式会社製)を用いることができる。
【0088】
そして、東レ株式会社の製品名TOS-02の除去剤を用いて、振動子4と支持部材32との間の耐熱接着剤114以外の耐熱接着剤114を除去する(工程B1-11)。この場合、耐熱接着剤114は、製品名TOS-02の除去剤の溶液を用いて除去される。製品名TOS-02の除去剤は、塩基性の除去剤であり、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)と、モノエタノールアミン(MEA)と、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)と、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)と、水とを含む。
【0089】
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)の含有量は、例えば、10~50重量%であり、モノエタノールアミン(MEA)の含有量は、例えば、10~50重量%であり、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の含有量は、例えば、10~50重量%であり、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の含有量は、例えば、0.1~10重量%であり、水の含有量は、例えば、0.5~30重量%である。
【0090】
なお、耐熱接着剤は、塩基性の溶液に限らず、酸性の溶液または有機系の溶液によって除去されてもよい。
【0091】
工程(B1-11)を実行することによって、振動子4が耐熱接着剤114によってガラス基板100の支持部材32にのみ接着した構造が形成される。これによって、工程S3の詳細な工程が終了する。
【0092】
図11および
図12は、それぞれ、
図7に示す工程S3の別の詳細な工程を示す第1および第2の工程図である。なお、
図11および
図12は、
図1に示す線II-II間における断面図によって工程S3の詳細な工程を示す。
【0093】
図11を参照して、工程S3の詳細な工程が開始されると、
図9に示す工程B1-1~工程B1-4と同じ工程が順次実行される(工程B2-1~工程B2-4)。
【0094】
そして、工程B2-4の後、振動子板113の表面にレジストを塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィによってパターンニングしてレジストパターン116を形成する(工程B2-5)。
【0095】
その後、レジストパターン116をマスクとして、CHF3ガスを用いたプラズマエッチングによって振動子板113をエッチングし、振動子4を作製する(工程B2-6)。この場合、プラズマエッチング時の圧力等の条件は、上述したとおりである。
【0096】
図12を参照して、工程B2-6の後、上述したO
2ガスを用いたアッシングによって、接着剤111のうち、振動子4に接していない部分を除去する(工程B2-7)。
【0097】
そして、
図9の工程B1-5と同じ方法によって振動子4の表面に耐熱接着剤117を塗布し、その塗布した耐熱接着剤117を硬化させる(工程B2-8)。耐熱接着剤117の代表的な具体例、塗布方法および厚みは、上述した耐熱接着剤114の具体例、塗布方法および厚みと同じである。
【0098】
そうすると、真空中または窒素雰囲気における加熱プレスを用いて、振動子4が接着されたシリコン基板110を、耐熱接着剤117によって、工程S2によって作製されたガラス基板3に張り合わせる(工程B2-9)。この場合、真空中で加熱プレスするときの雰囲気の圧力、加熱プレス時の加熱温度、および加熱プレス時の圧力の代表的な条件は、上述したとおりである。また、窒素雰囲気中で加熱プレスするときの加熱温度および圧力の代表的な条件についても、上記と同じである。
【0099】
なお、工程B2-8および工程B2-9は、耐熱接着剤117を薄膜上に塗布し、熱処理により硬化させ、一旦、常温に戻した後、再び、加熱および加圧することで、ガラス基板3とシリコン基板110とを張り合わせる工程を構成する。
【0100】
工程B2-9の後、XeF2ガス、またはSF6ガスとO2ガスとの混合ガスを用いたプラズマエッチングによってシリコン基板110をエッチングする(工程B2-10)。この場合、エッチング時の圧力等の条件は、上述したとおりである。
【0101】
そして、上述したO2ガスを用いたアッシングによって接着剤111を除去し、振動子4の表面を露出させる(工程B2-11)。これによって、工程S3の詳細な工程が終了する。
【0102】
なお、
図11および
図12に示す工程S3の詳細な工程においては、工程B2-8において、耐熱接着剤117を振動子4の表面に塗布した後、その塗布した耐熱接着剤117をガラス基板3の支持部材32に対向する部分だけが残るようにフォトリソグラフィによってパターンニングし、その後、工程B2-9を実行するようにしてもよい。これによって、振動子4は、支持部材32に対向する部分だけが耐熱接着剤117によって支持部材32に接着され、後述する
図18の工程D2-2において、耐熱接着剤117を容易に除去できる。その結果、振動子4の破損を更に防止できる。
【0103】
図13および
図14は、それぞれ、
図7に示す工程S3の更に別の詳細な工程を示す第1および第2の工程図である。なお、
図13および
図14は、
図1に示す線II-II間における断面図によって工程S3の詳細な工程を示す。
【0104】
図13を参照して、工程S3の詳細な工程が開始されると、
図9に示す工程B1-1~工程B1-4と同じ工程が順次実行される(工程B3-1~工程B3-4)。
【0105】
そして、振動子板113が接着剤111によって接着されたシリコン基板110をチップサイズにダイシングする。この場合、振動子板113は、振動子板113の表面側から見た平面視において、例えば、碁盤目状に切断されるようにダイシングされる。これによって、振動子4が接着剤111によって接着されたシリコン基板110を1つのチップとした複数のチップが作製される(工程B3-5)。
【0106】
図14を参照して、工程B3-5の後、
図9の工程B1-5と同じ方法によって複数のチップの複数の振動子4の表面に耐熱接着剤118を塗布し、その塗布した耐熱接着剤118を硬化させる(工程B3-6)。耐熱接着剤118の具体例、塗布方法および厚みは、上述した耐熱接着剤114の具体例、塗布方法および厚みと同じである。
【0107】
そうすると、真空中または窒素雰囲気における加熱プレスを用いて、振動子4が接着されたシリコン基板110を、耐熱接着剤118によって、工程S2によって作製されたガラス基板3に張り合わせる(工程B3-7)。この場合、真空中で加熱プレスするときの雰囲気の圧力、加熱プレス時の加熱温度、および加熱プレス時の圧力は、上述したとおりである。また、窒素雰囲気中で加熱プレスするときの加熱温度および圧力は、上記と同じである。
【0108】
なお、工程B3-6およびB3-7は、耐熱接着剤118を薄膜上に塗布し、熱処理により硬化させ、一旦、常温に戻した後、再び、加熱および加圧することで、ガラス基板3とシリコン基板110とを張り合わせる工程を構成する。
【0109】
工程B3-7の後、XeF2ガス、またはSF6ガスとO2ガスを用いたプラズマエッチングによってシリコン基板110をエッチングする(工程B3-8)。この場合、エッチング時の圧力等の条件は、上述したとおりである。
【0110】
そして、上述したO2ガスを用いたアッシングによって接着剤111を除去し、振動子4の表面を露出させる(工程B3-9)。これによって、工程S3の詳細な工程が終了する。
【0111】
図9および
図10に示す工程S3の詳細な工程においては、振動子板113のうち、レジストパターン115に接していない部分が除去され(工程B1-9,B1-10参照)、
図11および
図12に示す工程S3の詳細な工程においては、振動子板113のうち、レジストパターン116に接していない部分が除去される(工程B2-5,B2-6参照)。
【0112】
一方、
図13および
図14に示す工程S3の詳細な工程においては、振動子板113の一部は、ダイシングによってのみ除去されるだけである(工程B3-5参照)。
【0113】
従って、
図13および
図14に示す工程S3の詳細な工程によれば、振動子板113を除去する量が最小になり、振動子板113を最も有効に活用できる。
【0114】
また、振動子板113から振動子4を作製する際にレジストを用いないので、フォトリソグラフィを用いる必要がなく、工程数を少なくできる。
【0115】
図15および
図16は、それぞれ、
図7に示す工程S4の詳細な工程を示す第1および第2の工程図である。なお、
図15および
図16は、
図1に示す線II-II間における断面図によって工程S4の詳細な工程を示す。
【0116】
図15を参照して、工程S4の詳細な工程が開始されると、ガラス基板1とシリコン基板130とを準備し、ガラス基板1とシリコン基板130を陽極接合によって接合する(工程C1-1)。この場合、陽極接合は、例えば、350℃の温度で600Vの電圧を印加して行われる。
【0117】
そして、CMPによってシリコン基板130を所望の厚み(例えば、60μm)に研磨し、シリコン基板140を作製する(工程C1-2)。
【0118】
その後、TEOS(テトラエチルオルソシリケート:Si(OC
2H
5)
4)を原料ガスとして、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)および熱CVD等によってシリコン酸化膜141をシリコン基板140の表面に形成する(工程C1-3)。なお、TEOSを用いてシリコン酸化膜を形成するときの基板温度および圧力等は、公知であるので、省略する。また、
図15,16においては、TEOSを原料ガスとして形成されたシリコン酸化膜を「TEOS膜」と表記する。
【0119】
工程C1-3の後、シリコン酸化膜141の表面にレジストを塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィによってパターンニングしてレジストパターン142をシリコン酸化膜141の表面に形成する(工程C1-4)。
【0120】
そして、CHF3ガスを用いたプラズマエッチングによって、レジストパターン142をマスクとしてシリコン酸化膜141をエッチングし、シリコン基板140の表面にシリコン酸化膜143を形成する(工程C1-5)。この場合、エッチング時の圧力は、20Paであり、パワーは、100Wであり、ステージ温度は、20℃である。
【0121】
その後、レジストをシリコン基板140およびシリコン酸化膜143の表面に塗布し、その塗布したレジストをフォトリソグラフィによってパターンニングしてレジストパターン144をシリコン基板140およびシリコン酸化膜143の表面に形成する(工程C1-6)。
【0122】
引き続いて、レジストパターン144をマスクとして、SF6ガスを用いたプラズマエッチングによってシリコン基板140をエッチングするエッチング工程と、C4H8ガスを用いたプラズマCVDによって、エッチングされたシリコン基板140の側壁をコーティングするコーティング工程とを繰り返し行い、シリコン基板140をエッチングする(工程C1-7)。
【0123】
この場合、エッチング工程における圧力は、10Paであり、パワーは、2kWであり、ステージ温度は、20℃である。また、コーティング工程における圧力は、10Paであり、パワーは、3kWであり、ステージ温度は、20℃である。
【0124】
図16を参照して、工程C1-7の後、上述したO
2ガスを用いたアッシングによってレジストパターン144を除去する。これによって、シリコン基板140の一部に凸部145が形成される(工程C1-8)。
【0125】
そして、シリコン酸化膜143をマスクとして、上述したエッチング工程と、上述したコーティング工程とを繰り返し行い、シリコン基板140を更にエッチングする(工程C1-9)。この場合、エッチングされたシリコン基板140の側壁は、コーティングされているので、シリコン酸化膜143によって被覆されていないシリコン基板140の一部分は、シリコン基板140の厚み方向にのみエッチングされる。これによって、シリコン基板2の厚み方向に深い凹部21と、凹部21内に形成された支持部材22とを有するシリコン基板2が作製される。この場合、工程C1-9において形成された凹部21の深さは、例えば、40~60μmである。
【0126】
その後、バッファードフッ酸によってシリコン酸化膜143を除去する(工程C1-10)。これによって、工程S4の詳細な工程が終了する。
【0127】
なお、工程C1-3~C1-10によって、
図1に示す流路7,8を構成する部分、導入口9を構成する部分、および排出口11を構成する部分も作製される。
【0128】
図17は、
図7に示す工程S5の詳細な工程を示す図である。なお、
図17は、
図1に示す線II-II間における断面図によって工程S5の詳細な工程を示す。
【0129】
図17を参照して、工程S5の詳細な工程が開始されると、
図10の工程B1-11に示す、耐熱接着剤114によってガラス基板3の支持部材32に接着された振動子4が支持部材22に向かい合うように、ギャップを保ってガラス基板3をガラス基板1およびシリコン基板2上に配置し、シリコン基板2とガラス基板3とを陽極接合によって接合する(工程D1-1)。この場合も、陽極接合は、例えば、350℃の温度で600Vの電圧を印加して行われる。これによって、空間部SP1が形成される。
【0130】
そして、上述した除去剤を送廃液口33から空間部SP1に充填し、耐熱接着剤114を除去する(工程D1-2)。この場合、耐熱接着剤114が除去されれば、除去剤は、送廃液口33から外部へ排出される。これによって、工程S5の詳細な工程が終了する。
【0131】
工程D1-2が実行されると、振動子4は、空間部SP1内において、支持部材22,32のいずれにも固定されずに支持部材22,32のいずれか一方に接触した状態となる。従って、振動子4は、空間部SP1内において振動可能である。
【0132】
図18は、
図7に示す工程S5の別の詳細な工程を示す図である。なお、
図18は、
図1に示す線II-II間における断面図によって工程S5の詳細な工程を示す。
【0133】
図18を参照して、工程S5の詳細な工程が開始されると、
図12の工程B2-11に示す、耐熱接着剤117によってガラス基板3の支持部材32に接着された振動子4が支持部材22に向かい合うように、ギャップを保ってガラス基板3をガラス基板1およびシリコン基板2上に配置し、シリコン基板2とガラス基板3とを陽極接合によって接合する(工程D2-1)。この場合も、陽極接合は、例えば、350℃の温度で600Vの電圧を印加して行われる。これによって、空間部SP1が形成される。
【0134】
そして、上述した除去剤を送廃液口33から空間部SP1に充填し、耐熱接着剤117を除去する(工程D2-2)。この場合、耐熱接着剤117が除去されれば、除去剤は、送廃液口33から外部へ排出される。これによって、工程S5の詳細な工程が終了する。
【0135】
工程D2-2が実行されると、振動子4は、空間部SP1内において、支持部材22,32のいずれにも固定されずに支持部材22,32のいずれか一方に接触した状態となる。従って、振動子4は、空間部SP1内において振動可能である。
【0136】
なお、
図14の工程B3-9に示す、耐熱接着剤118によってガラス基板3の支持部材32に接着された振動子4を用いて振動検出素子10を作製する場合も、工程S5の詳細な工程は、
図18に示す工程D2-1,D2-2に従って実行される。この場合、工程D2-2においては、耐熱接着剤118が、上述した除去剤によって除去される。
【0137】
上述した振動検出素子10の製造工程を用いれば、基本共振周波数が1GHz以上(振動子4の厚みが1.7μm以下)の振動検出素子10を実現できる。従って、バイオセンサーとして使用した場合、理論的な感度として、既存品であるBiolin Scientific社の水晶振動子バイオセンサーの8万倍程度の感度を実現できる。
【0138】
上述した振動検出素子10の製造工程においては、振動子4は、シリコン基板110に固定された振動子板112を研磨およびパターンニング(またはダイシング)して作製される(
図9の工程B1-3,B1-4、
図10の工程B1-8,B1-9、
図11の工程B2-3~B2-6、
図13の工程B3-3~B3-5の参照)。
【0139】
また、振動子4は、ガラス基板3に固定された状態でシリコン基板2の支持部材22に向かい合うように、ギャップを保って配置され、その後、シリコン基板2がガラス基板3と陽極接合され、耐熱接着剤114,117,118が除去される(
図17の工程D1-1,D1-2および
図18の工程D2-1,D2-2参照)。
【0140】
従って、振動検出素子10の製造工程においては、振動子4のみをピンセット等で操作することはないので、振動子4の厚みが10μmよりも薄くなっても、振動子4の破損を防止して振動検出素子10を製造できる。
【0141】
このように、この発明の実施の形態による振動検出素子10の製造方法は、耐熱接着剤114,117,118をスペーサーとして使用するとともに耐熱接着剤114,117,118を除去する点に特徴がある。
【0142】
耐熱接着剤は、封止剤または微小構造体を形成する材料として使用されるものであり、従来においては、一度、形成されると、その後、除去されることは無かった。つまり、耐熱接着剤は、永久膜であった。
【0143】
しかし、この発明の実施の形態においては、振動子板を所望の形状にパターンニング(またはダイシング)した後、最終的に振動子板を振動子4として空間部SP1に封止した後に耐熱接着剤114,117,118を除去する。
【0144】
従って、耐熱接着剤を除去する点は、従来の使用状況では、到底、想定できないことである。
【0145】
各種の材料について検討したが、耐熱接着剤以外の材料を用いた場合、熱処理した段階で炭化してしまい、うまく除去できなかった。
【0146】
耐熱接着剤の除去に関しては、耐熱接着剤と除去剤との組み合わせが重要である。この発明の実施の形態においては、空間部SP1に振動子4を閉じ込めた状態で耐熱接着剤114,117,118を除去し、振動子4を支持部材22(または支持部材32)によって支持する。
【0147】
つまり、振動子4は、耐熱接着剤114,117,118を除去するまでは固定されており、耐熱接着剤114,117,118を除去することにより、支持部材22(または支持部材32)と接触し、振動可能な状態になる。
【0148】
耐熱接着剤114,117,118は、除去剤の溶液に溶け、除去剤の溶液は、送廃液口33から排出されるので、振動子4が配置された空間部SP1に残らない。従って、振動子4の厚みが10μm未満になっても、振動子4だけを空間部SP1に閉じ込めることができる。
【0149】
【0150】
図9および
図10に示す工程では、耐熱接着剤114を振動子板113の全面に塗布している(工程B1-5参照)。
【0151】
一方、
図11および
図12に示す工程では、耐熱接着剤117をパターンニング後の振動子4のみに塗布し、振動子4以外の部分には、塗布していない(工程B2-8参照)。即ち、必要な部分のみに耐熱接着剤117を塗布している。
【0152】
また、上述したように、フォトリソグラフィによって耐熱接着剤117を支持部材32と接触する振動子4の一部分にのみ形成するようにしてもよい。
【0153】
従って、
図11および
図12に示す工程を用いることによって、耐熱接着剤117を塗布する領域を必要最小限にできる。
【0154】
その結果、
図11および
図12に示す工程では、耐熱接着剤117を除去し易くなり、振動子4の破損を更に防止できる。
【0155】
なお、
図13および
図14に示す工程においては、耐熱接着剤118は、ダイシングした後の振動子4のみに塗布されるので(工程B3-6参照)、
図13および
図14に示す工程も、
図11および
図12に示す工程と同じ効果を享受できる。
【0156】
工程C1-7では、SF6ガスを用いたプラズマエッチングと、C4H8ガスを用いたコーティングとを繰り返し実行することにより、急峻な凹部を形成できる。
【0157】
耐熱接着剤114は、工程D1-2において除去され、耐熱接着剤117,118は、工程D2-2において除去される。その結果、振動子4と支持部材32との間隔を耐熱接着剤114,117,118の厚みによって調節できる。
【0158】
図19は、この発明の実施の形態による別の振動検出素子の斜視図である。
図20は、
図19に示す線XX-XX間における振動検出素子の断面図である。なお、
図19においては、アンテナが省略されている。
【0159】
この発明の実施の形態による振動検出素子は、
図19および
図20に示す振動検出素子10Aであってもよい。
図19および
図20を参照して、振動検出素子10Aは、
図1および
図2に示す振動検出素子10の基板1~3および振動子4をそれぞれ基板51~53および振動子54に変えたものであり、その他は、振動検出素子10と同じである。
【0160】
基板52は、凹部521と、支持部材522とを有する。基板53は、凹部531と、支持部材532と、送廃液口533とを有する。支持部材522は、凹部521の底面521Aから凹部531の底面531Aへ向かって突出している。支持部材532は、凹部531の底面531Aから凹部521の底面521Aへ向かって突出している。基板53の凹部531は、基板52の凹部521に対向している。支持部材522,532の各々は、例えば、円柱形状からなる。送廃液口533は、基板53の外表面から凹部531の底面531Aに至るまで基板53を厚み方向に貫通する。なお、
図20においては、送廃液口533が中央の支持部材532を貫通するように表示されているが、実際には、送廃液口533は、
図20の紙面に垂直な方向において、支持部材532の位置と異なる位置で基板53を貫通している。
【0161】
基板51は、陽極接合によって基板52の一方の面に接合される。基板53は、凹部531が凹部521に対向するように陽極接合によって基板52の他方の面に接合される。その結果、凹部521,531によって空間部SP2が形成される。
【0162】
振動子54は、例えば、四角形の平面形状を有する。また、振動子54は、基板53から基板51へ向かう方向に突出した円弧状の断面形状を有する。振動子54は、基板541と、薄膜542とからなる。基板541は、例えば、水晶からなる。薄膜542は、基板541に接して基板541上に配置される。薄膜542は、上述した薄膜42と同じ材料からなる。基板541の厚みは、一般的には、10μmよりも薄く、例えば、3μmである。薄膜542の厚みは、例えば、数nm~数百nmである。
【0163】
振動子54の曲率は、永久ひずみを生じる材料を基板541とした場合、応力-ひずみ線図における降伏点未満となる曲率であり、永久ひずみを生じない材料(シリコンおよびバネ材料等)を基板541とした場合、破断応力を生じる曲率未満である。
【0164】
複数の支持部材522のうち、空間部SP2の周縁部に配置される支持部材522は、最も高い高さを有し、空間部SP2の中心に配置される支持部材522は、最も低い高さを有し、空間部SP2の周縁部と空間部SP2の中心との間に配置される支持部材522は、空間部SP2の周縁部から空間部SP2の中心に向かうに従って高さが低くなる。複数の支持部材532についても同様である。
【0165】
振動子54を構成する基板541および薄膜542は、上述したように薄いので、振動検出素子10Aの基板51が下地側に配置された場合、振動子54は、高さが異なる複数の支持部材522に接して配置され、基板53から基板51へ向かう方向に突出した円弧状の断面形状を有する。その結果、振動子54の薄膜542には、基板541の面内方向に圧縮力が印加されている。
【0166】
また、振動検出素子10Aの基板53が下地側に配置された場合、振動子54は、高さが異なる複数の支持部材532に接して配置され、基板51から基板53へ向かう方向に突出した円弧状の断面形状を有する。その結果、振動子54の薄膜542には、基板541の面内方向に引張力が印加されている。
【0167】
このように、振動検出素子10Aにおいては、基板51,53のいずれが下地側に配置されても、振動子54は、
図20の紙面の左右方向における中央部が下地側に突出した円弧状の断面形状を有し、複数の支持部材522または複数の支持部材532に接して配置される。従って、基板51,53のいずれが下地側に配置されても、振動子54の薄膜542には、基板541の面内方向に圧縮力または引張力が印加されている。
【0168】
なお、
図20においては、3個の支持部材522が図示されているが、実際には、
図19に示すように、3個よりも多くの支持部材522が凹部521内に形成されている。支持部材532についても同様である。
【0169】
図21は、
図20に示す空間部SP2およびその周辺の拡大図である。
図21を参照して、基板51の厚みD1は、例えば、250μmであり、基板52の厚みD2は、例えば、60μmであり、基板53の厚みD3は、例えば、250μmである。
【0170】
空間部SP2(
図21における斜線部)の幅Wは、例えば、2mmであり、空間部SP2の高さH1は、例えば、90μmである。
図21の紙面に垂直な方向における空間部SP2の長さは、例えば、2.9mmである。空間部SP2の中心に配置される支持部材522の高さH3は、例えば、20μmであり、空間部SP2の周縁部に配置される支持部材522の高さH4は、例えば、30μmである。支持部材522の直径は、例えば、60μmである。
【0171】
支持部材532は、それぞれ、対向する支持部材522と同じ高さH3,H4を有するとともに支持部材522と同じ直径を有する。
【0172】
振動子54は、
図21の紙面の左右方向において、例えば、1.7mmの長さを有し、
図21の紙面に垂直な方向において、例えば、2.5mmの長さを有する。
【0173】
図22は、
図21に示す基板53側から見た振動子54および支持部材522の平面図である。なお、
図22においては、支持部材522は、振動子54と支持部材522との位置関係を示すために、支持部材522が分かるように表示されている。
【0174】
図22を参照して、9個の支持部材522が碁盤目状に配置される。
図22においては、9個の支持部材522を支持部材522a,522b,522c,522d,522e,522f,522g,522h,522iによって表記する。
【0175】
支持部材522aは、振動子54の中心に対向する位置に配置され、支持部材522b,522c,522d,522e,522f,522g,522h,522iは、振動子54の周縁部に対向する位置に配置される。
【0176】
支持部材522b,522c,522dは、Y軸の負方向における振動子54の端部から0.15mmの位置に配置され、支持部材522f,522g,522hは、Y軸の正方向における振動子54の端部から0.15mmの位置に配置される。支持部材522b,522i,522hは、X軸の負方向における振動子54の端部から0.15mmの位置に配置され、支持部材522d,522e,522fは、X軸の正方向における振動子54の端部から0.15mmの位置に配置される。
【0177】
そして、支持部材522b,522i,522hと支持部材522c,522a,522gとの間隔d1、および支持部材522c,522a,522gと支持部材522d,522e,522fとの間隔d1は、0.7mmに設定される。また、支持部材522b,522c,522dと支持部材522e,522a,522iとの間隔d2、および支持部材522e,522a,522iと支持部材522f,522g,522hとの間隔d2は、1.1mmに設定される。
【0178】
図23は、支持部材522の高さを説明するための図である。
図23を参照して、支持部材522cは、点Aにおいて振動子54に接し、支持部材522dは、点Bにおいて振動子54に接する。そして、振動子54の曲率を1/rとすると、曲率半径rを有する円の円周は、振動子54の曲面に沿って配置され、点A,Bを通過する。
【0179】
点Aにおいて、円弧ABに接する直線は、水平方向に沿って配置され、点Bにおいて、円弧ABに接する直線は、水平方向とαの角度を成す。
【0180】
支持部材522cと支持部材522dとの水平方向の間隔をaとし、支持部材522cの高さと支持部材522dの高さとの差をΔhとする。
【0181】
三角形OABにおいて、角∠AOBは、αに等しい。また、三角形ABCにおいて、角∠BACは、α/2である。
【0182】
三角形OABの頂点Oから線分ABに垂線を下し、その垂線と線分ABとの交点をHとする。その結果、線分BHの長さは、r×sin(α/2)によって表わされ、線分ABの長さは、2×r×sin(α/2)によって表わされる。また、線分ABの長さは、(a2+(Δh)2)1/2によっても表わされる。従って、次式が成立する。
【0183】
2×r×sin(α/2)=(a2+(Δh)2)1/2・・・(1)
一方、三角形ABCの角∠BAC(=α/2)は、次式によって表わされる。
【0184】
tan(α/2)=Δh/a・・・(2)
式(1),(2)を用いてΔhを求めると、次式のようになる。
【0185】
Δh=[r2-a2±r{r2-2a2}1/2]1/2・・・(3)
式(3)におけるaは、支持部材522cと支持部材522dとの水平方向の間隔であり、既知である。また、式(3)におけるrは、振動子54の曲率半径であり、既知である。
【0186】
従って、式(3)を用いれば、Δhを算出できる。
【0187】
支持部材522cの高さを30μmとすると、支持部材522dの高さは、30μm+Δhとなる。
【0188】
振動子54がX軸方向のみにおいて曲面を有する場合、支持部材522c,522a,522gは、30μmの高さを有し、支持部材522b,522d,522e,522f,522h,522iは、30μm+Δhの高さを有する。
【0189】
また、振動子54がY軸方向のみにおいて曲面を有する場合、支持部材522e,522a,522iは、30μmの高さを有し、支持部材522b,522c,522d,522f,522g,522hは、30μm+Δhの高さを有する。
【0190】
支持部材522が9個の支持部材522a,522b,522c,522d,522e,522f,522g,522h,522iからなる場合、支持部材532は、9個の支持部材532a,532b,532c,532d,532e,532f,532g,532h,532iからなる。そして、支持部材532a,532b,532c,532d,532e,532f,532g,532h,532iは、それぞれ、支持部材522a,522b,522c,522d,522e,522f,522g,522h,522iに対向して配置され、それぞれ、支持部材522a,522b,522c,522d,522e,522f,522g,522h,522iと同じ高さを有する。また、支持部材532a,532b,532c,532d,532e,532f,532g,532h,532iの相互の間隔は、支持部材522a,522b,522c,522d,522e,522f,522g,522h,522iの相互の間隔と同じである。
【0191】
このように、振動検出素子10Aにおいては、複数の支持部材522および複数の支持部材532は、振動子54の曲率1/rに応じた高さを有し、複数の支持部材522および複数の支持部材532の各々の高さは、式(3)を用いて曲率半径rに基づいて決定される。
【0192】
上述したように、振動子54は、空間部SP2内において、凹部521の底面521Aおよび凹部531の底面531Aに接触せず、支持部材522または支持部材532に接触し、圧縮力または引張力が薄膜542に印加された状態で保持される。その結果、振動子54は、安定に振動することができる。
【0193】
【0194】
図24に示す工程図は、
図7に示す工程図の工程S1,S2,S4をそれぞれ工程S1A,S2A,S4Aに変えたものであり、その他は、
図7に示す工程図と同じである。
【0195】
図24を参照して、振動検出素子10Aの製造が開始されると、基板541と、基板541上に形成され、圧縮力または引張力が印加されていない薄膜とからなる振動子板を作製する(工程S1A)。この場合、
図4に示すスパッタ装置200の基板ホルダー202を基板ホルダー209に変えたスパッタ装置200を用いて、上述した方法によって基板541上に薄膜を形成し、圧縮力または引張力が印加されていない薄膜を有する振動子板を作製する。
【0196】
そして、ガラス基板に流路と、高さが異なる支持部材とを作製する(工程S2A)。その後、上述した工程S3が実行される。引き続いて、シリコン基板に流路と、高さが異なる支持部材とを作製する(工程S4A)。その後、上述した工程S5が実行され、振動検出素子10Aが完成する。
【0197】
図25は、
図24に示す工程S2Aの詳細な工程を示す工程図である。なお、
図25は、
図19に示す線XX-XX間における断面図によって工程S2Aの詳細な工程を示す。
図25を参照して、工程S2Aの詳細な工程が開始されると、
図8に示す工程A1-1,A1-2と同じ工程が順次実行される(工程A2-1,A2-2)。
【0198】
そして、レジストパターン101をマスクとして、バッファードフッ酸を用いてガラス基板100をウェットエッチングする(工程A2-3)。
【0199】
その後、レジストパターンの一部を除去する。あるいは、再度、フォトリソグラフィを行い、一部の支持部材532上には、レジスト(または金属薄膜マスク(例えば、クロム薄膜))を残さないようにする(工程A2-4)。引き続いて、残ったレジストパターン101をマスクとして、バッファードフッ酸を用いてガラス基板100を更にウェットエッチングし、凹部531およびピラー(支持部材532を構成する)を作製する(工程A2-5)。
【0200】
なお、工程A2-3~A2-5によって、
図19に示す流路7,8を構成する部分、導入口9を構成する部分、および排出口11を構成する部分も作製される。
【0201】
その後、機械加工またはブラスト加工によって送廃液口533を形成する(工程A2-6)。これによって、ガラス基板53が作製され、工程S2Aの詳細な工程が終了する。
【0202】
図26および
図27は、それぞれ、
図24に示す工程S3の詳細な工程を示す第1および第2の工程図である。なお、
図26および
図27は、
図19に示す線XX-XX間における断面図によって工程S3の詳細な工程を示す。
【0203】
【0204】
なお、
図26の工程B4-6においては、シリコン基板110が、
図25に示す工程A2-1~A2-6によって作製された基板53と張り合わされる。また、工程B4-10においては、振動子54が作製される。
【0205】
図28および
図29は、それぞれ、
図24に示す工程S4Aの詳細な工程を示す第1および第2の工程図である。なお、
図28および
図29は、
図19に示す線XX-XX間における断面図によって工程S4Aの詳細な工程を示す。
【0206】
図28および
図29を参照して、工程S4Aの詳細な工程が開始されると、
図15に示す工程C1-1~C1-7と同じ工程が順次実行される(工程C2-1~C2-7)。この場合、工程C2-7において、シリコン基板140に凸部146が形成される。
【0207】
そして、工程C2-7の後、レジストパターン144の一部を除去する。あるいは、再度、フォトリソグラフィを行い、一部の凸部146上には、レジストを残さないようにする(工程C2-8)。引き続いて、残ったレジストパターンをマスクとして、SF6ガスを用いたプラズマエッチングによってシリコン基板140をエッチングするエッチング工程と、C4H8ガスを用いたプラズマCVDによって、エッチングされたシリコン基板140の側壁をコーティングするコーティング工程とを繰り返し行い、シリコン基板140を更にエッチングする(工程C2-9)。これによって、高さが異なる凸部147がシリコン基板140に形成される。
【0208】
この場合、エッチング工程およびコーティング工程における条件は、上述した通りである。
【0209】
工程C2-9の後、
図16に示す工程C1-8~C1-10と同じ工程が順次実行され(工程C2-10~C2-12)、工程S4Aの詳細な工程が終了する。この場合、工程C2-10において、凹部521が形成されるとともに、高さが異なる支持部材522が形成される。
【0210】
図30は、
図24に示す工程S5の詳細な工程を示す工程図である。なお、
図30は、
図19に示す線XX-XX間における断面図によって工程S5の詳細な工程を示す。
【0211】
図30に示す工程D3-1,D3-2は、それぞれ、
図17に示す工程D1-1,D1-2と同じである。
【0212】
なお、工程D3-1においては、
図27の工程B4-11に示す、耐熱接着剤114によってガラス基板53の一部の支持部材532に接着された振動子54が凹部521内の一部の支持部材522に向かい合うようにギャップを保ってガラス基板53をガラス基板51およびシリコン基板52上に配置し、シリコン基板52とガラス基板53とを陽極接合によって接合する。この場合、陽極接合の条件は、上述した通りである。工程D3-1よって、空間部SP2が形成される。
【0213】
また、工程D3-2においては、上述した除去剤を送廃液口533から空間部SP2に充填し、耐熱接着剤114を除去する。この場合、耐熱接着剤114が除去されれば、除去剤は、送廃液口533から外部へ排出される。これによって、工程S5の詳細な工程が終了する。
【0214】
工程D3-2が実行されると、振動子54は、空間部SP2内において、支持部材522,532のいずれにも固定されずに支持部材522,532のいずれか一方に接触し、基板51または基板53の方向に突出した円弧状の断面形状を有し、基板541の面内方向において圧縮力または引張力が薄膜542に印加された状態となる。従って、振動子54は、空間部SP2内において振動可能である。
【0215】
なお、
図24に示す工程S3の詳細な工程として、
図11および
図12に示す工程B2-1~B2-11、および
図13および
図14に示す工程B3-1~B3-9に相当する工程を示していないが、この発明の実施の形態においては、
図26および
図27に示す工程B4-1~B4-11に代えて
図11および
図12に示す工程B2-1~B2-11、および
図13および
図14に示す工程B3-1~B3-9に相当する工程を採用して、工程S3の詳細な工程を実行してもよい。
【0216】
この場合、
図24に示す工程S5の詳細な工程は、
図18に示す工程D2-1,D2-2と同じ工程によって実行される。従って、
図18に示す基板1~3、支持部材22,32、振動子4および空間部SP1をそれぞれ基板51~53、支持部材522,532、振動子54および空間部SP2に変えればよい。
【0217】
図31は、この発明の実施の形態による更に別の振動検出素子の斜視図である。
図32は、
図31に示す線XXXII-XXXII間における振動検出素子の断面図である。なお、
図31においては、アンテナが省略されている。
【0218】
この発明の実施の形態による振動検出素子は、
図31および
図32に示す振動検出素子10Bであってもよい。
図31および
図32を参照して、振動検出素子10Bは、
図1および
図2に示す振動検出素子10の基板1~3および振動子4をそれぞれ基板61~63および振動子64に変えたものであり、その他は、振動検出素子10と同じである。
【0219】
基板62は、凹部621と、支持部材622とを有する。基板63は、凹部631と、支持部材632と、送廃液口633とを有する。支持部材622は、凹部621の底面621Aから凹部631の底面631Aへ向かって突出している。支持部材632は、凹部631の底面631Aから凹部621の底面621Aへ向かって突出している。基板63の凹部631は、基板62の凹部621に対向している。支持部材622,632の各々は、例えば、円柱形状からなる。送廃液口633は、基板63の外表面から凹部631の底面631Aに至るまで基板63を厚み方向に貫通する。なお、
図32においては、送廃液口633が中央の支持部材632を貫通するように表示されているが、実際には、送廃液口633は、
図32の紙面に垂直な方向において、支持部材532の位置と異なる位置で基板63を貫通している。
【0220】
基板61は、陽極接合によって基板62の一方の面に接合される。基板63は、凹部631が凹部621に対向するように陽極接合によって基板62の他方の面に接合される。その結果、凹部621,631によって空間部SP3が形成される。
【0221】
振動子64は、例えば、四角形の平面形状を有する。また、振動子64は、基板61から基板63へ向かう方向に突出した円弧状の断面形状を有する。振動子64は、基板641と、薄膜642とからなる。基板641は、例えば、水晶からなる。薄膜642は、基板641に接して基板641上に配置される。薄膜642は、上述した薄膜42と同じ材料からなる。基板641の厚みは、一般的には、10μmよりも薄く、例えば、3μmである。薄膜642の厚みは、例えば、数nm~数百nmである。
【0222】
振動子64の曲率は、永久ひずみを生じる材料を基板641とした場合、応力-ひずみ線図における降伏点未満となる曲率であり、永久ひずみを生じない材料(シリコンおよびバネ材料等)を基板641とした場合、破断応力を生じる曲率未満である。
【0223】
複数の支持部材622のうち、空間部SP3の中心に配置される支持部材522は、最も高い高さを有し、空間部SP3の周縁部に配置される支持部材622は、最も低い高さを有し、空間部SP3の周縁部と空間部SP3の中心との間に配置される支持部材622は、空間部SP3の周縁部から空間部SP3の中心に向かうに従って高さが高くなる。複数の支持部材632についても同様である。
【0224】
振動子64を構成する基板641および薄膜642は、上述したように薄いので、振動検出素子10Bの基板61が下地側に配置された場合、振動子64は、高さが異なる複数の支持部材622に接して配置され、基板61から基板63へ向かう方向に突出した円弧状の断面形状を有する。その結果、振動子64の薄膜642には、基板641の面内方向に引張力が印加されている。
【0225】
また、振動検出素子10Bの基板63が下地側に配置された場合、振動子64は、高さが異なる複数の支持部材632に接して配置され、基板63から基板61へ向かう方向に突出した円弧状の断面形状を有する。その結果、振動子64の薄膜642には、基板641の面内方向に圧縮力が印加されている。
【0226】
このように、振動検出素子10Bにおいては、基板61,63のいずれが下地側に配置されても、振動子64は、
図32の紙面の左右方向における中央部が下地と反対側に突出した円弧状の断面形状を有し、複数の支持部材622または複数の支持部材632に接して配置される。従って、基板61,63のいずれが下地側に配置されても、振動子64の薄膜642には、基板641の面内方向に引張力または圧縮力が印加されている。
【0227】
なお、
図32においては、3個の支持部材622が図示されているが、実際には、
図31に示すように、3個よりも多くの支持部材622が凹部621内に形成されている。支持部材632についても同様である。
【0228】
図33は、
図32に示す空間部SP3およびその周辺の拡大図である。
図33を参照して、基板61の厚みD1は、例えば、250μmであり、基板62の厚みD2は、例えば、60μmであり、基板63の厚みD3は、例えば、250μmである。
【0229】
空間部SP3(
図33における斜線部)の幅Wは、例えば、2mmであり、空間部SP3の高さH1は、例えば、90μmである。
図33の紙面に垂直な方向における空間部SP3の長さは、例えば、2.9mmである。空間部SP3の中心に配置される支持部材622は、上述した高さH4を有し、空間部SP3の周縁部に配置される支持部材622は、上述した高さH3を有する。支持部材622の直径は、例えば、60μmである。
【0230】
支持部材632は、それぞれ、対向する支持部材622と同じ高さH3,H4を有するとともに支持部材622と同じ直径を有する。
【0231】
振動子64は、
図33の紙面の左右方向および
図33の紙面に垂直な方向において、上述した振動子54と同じ寸法を有する。
【0232】
図34は、
図33に示す基板63側から見た振動子64および支持部材622の平面図である。なお、
図34においては、支持部材622は、振動子64と支持部材622との位置関係を示すために、支持部材622が分かるように表示されている。
【0233】
図34を参照して、9個の支持部材622が碁盤目状に配置される。
図34においては、9個の支持部材622を支持部材622a,622b,622c,622d,622e,622f,622g,622h,622iによって表記する。
【0234】
支持部材622aは、振動子64の中心に対向する位置に配置され、支持部材622b,622c,622d,622e,622f,622g,622h,622iは、振動子64の周縁部に対向する位置に配置される。
【0235】
支持部材622b,622c,622dは、Y軸の負方向における振動子64の端部から0.15mmの位置に配置され、支持部材622f,622g,622hは、Y軸の正方向における振動子64の端部から0.15mmの位置に配置される。支持部材622b,622i,622hは、X軸の負方向における振動子54の端部から0.15mmの位置に配置され、支持部材622d,622e,622fは、X軸の正方向における振動子64の端部から0.15mmの位置に配置される。
【0236】
そして、支持部材622b,622i,622hと支持部材622c,622a,622gとの間隔は、上述した間隔d1であり、支持部材622c,622a,622gと支持部材622d,622e,622fとの間隔は、上述した間隔d1である。また、支持部材622b,622c,622dと支持部材622e,622a,622iとの間隔は、上述した間隔d2であり、支持部材622e,622a,622iと支持部材622f,622g,622hとの間隔は、上述した間隔d2である。
【0237】
振動検出素子10Bにおいては、振動子64は、支持部材622または支持部材632に接した状態で保持されるので、安定して振動することができる。
【0238】
【0239】
振動検出素子10Bを製造する際の
図24に示す工程S2Aの詳細な工程を示す
図35の工程A3-3において、凸部148がガラス基板100に形成される。また、
図35の工程A3-4において、
図35の紙面の左右方向に配置された3個のレジストパターン101,101,101のうち、中央のレジストパターン101が残され、両端のレジストパターン101が除去される。あるいは、再度、フォトリソグラフィを行い、中央の凸部148以外の凸部148にはレジスト(または金属薄膜マスク(例:クロム薄膜))を残さないようにする。その結果、工程A3-5において、
図35の紙面の左右方向に配置された3個の支持部材632,632,632のうち、中央の支持部材632が最も高い高さを有し、両端部の支持部材632,632が最も低い高さを有するように3個の支持部材632,632,632が形成されるとともに凹部631が形成される。
【0240】
振動検出素子10Bを製造する際の
図24に示す工程S3の詳細な工程を示す
図36の工程B5-6において、振動子板113が接着されたシリコン基板110が、耐熱接着剤114によって、
図35の工程A3-6において作製されたガラス基板63に張り合わされる。この場合、耐熱接着剤114は、ガラス基板63に形成された複数の支持部材632のうち、最も高い支持部材632のみに接する。
【0241】
また、
図37の工程B5-11においては、振動子64は、耐熱接着剤114によって最も高い高さを有する支持部材632のみに接着される。
【0242】
振動検出素子10Bを製造する際の
図24に示す工程S4Aの詳細な工程を示す
図39の工程C3-7において、凸部149がシリコン基板140に形成される。また、
図39の工程C3-8において、一部のレジストパターン144が除去される。そして、工程C3-9において、残ったレジストパターン144をマスクとして、SF
6ガスを用いたプラズマエッチングによってシリコン基板140をエッチングするエッチング工程と、C
4H
8ガスを用いたプラズマCVDによって、エッチングされたシリコン基板140の側壁をコーティングするコーティング工程とを繰り返し行い、シリコン基板140を更にエッチングする(工程C3-9)。これによって、高さが異なる凸部150がシリコン基板140に形成される。なお、エッチング工程およびコーティング工程における条件は、上述した通りである。
【0243】
また、工程C3-11においても、SF6ガスを用いたプラズマエッチングによってシリコン基板140をエッチングするエッチング工程と、C4H8ガスを用いたプラズマCVDによって、エッチングされたシリコン基板140の側壁をコーティングするコーティング工程とを繰り返し行い、シリコン基板140をエッチングする。これによって、凹部621が形成されるとともに、高さが異なる支持部材622が形成される。この場合も、エッチング工程およびコーティング工程における条件は、上述した通りである。
【0244】
振動検出素子10Bを製造する際の
図24に示す工程S5の詳細な工程を示す
図40の工程D4-1においては、
図40の紙面の左右方向における中央の支持部材632のみに耐熱接着材114によって接着された振動子64が基板62の中央の支持部材622のみに向かい合うようにギャップを保って、基板63が基板61,62に配置される。
【0245】
そして、工程D4-2において、耐熱接着剤114が除去されると、振動子64は、支持部材622に接触し、基板61から基板63の方向へ突出した円弧状の断面形状を有する状態になり、基板641の面内方向において引張力が薄膜642に印加される。
【0246】
上述したように、振動検出素子10においては、スパッタ装置200によって振動子4を作製するときに圧縮力または引張力が薄膜42に印加され、振動検出素子10A,10Bにおいては、スパッタ装置200によって振動子54,64を作製する際には、圧縮力または引張力が薄膜542,642に印加されておらず、振動子54,64をそれぞれ空間部SP2,SP3に配置することによって圧縮力または引張力が薄膜542,642に印加される。
【0247】
従って、この発明の実施の形態による振動検出素子は、振動子が空間部(空間部SP1~SP3のいずれか)に配置された時点で圧縮力または引張力が印加された薄膜を備えていればよい。
【0248】
図41は、入力電圧Vinおよび受信信号Rのタイミングチャートである。
図42は、共振周波数のタイミングチャートである。
【0249】
図41および
図42を参照して、振動検出素子10,10A,10Bにおける検出対象物の検出方法について説明する。検出対象物を検出する場合、印加回路(図示せず)は、タイミングt1からタイミングt2までの間、振動波形からなる入力電圧Vinをアンテナ5に印加する。そして、印加回路は、タイミングt2以降、入力電圧Vinのアンテナ5への印加を停止する。
【0250】
そうすると、アンテナ5は、タイミングt1からタイミングt2までの間、入力電圧Vinに基づいて生成される振動電場Eを振動子4,54,64に印加する。
【0251】
振動子4,54,64は、振動電場Eが印加されると、逆圧電効果によって共振し、表面に電位分布が発生する。
【0252】
そうすると、アンテナ6は、振動子4,54,64の表面に発生した電位分布を振動波形からなる受信信号Rとして受信する。この場合、アンテナ6は、検出対象物が振動子4,54,64に付着していなければ、振動波形からなる受信信号R0を受信し、検出対象物が振動子4,54,64に付着していれば、振動波形からなる受信信号R1を受信する。そして、アンテナ6は、その受信した受信信号R0,R1を検出回路(図示せず)へ出力する。
【0253】
検出回路は、アンテナ6から受信信号R0を受信すると、その受信した受信信号R0の共振周波数f0を検出する。また、検出回路は、アンテナ6から受信信号R1を受信すると、その受信した受信信号R1の共振周波数f1を検出する。そして、検出回路は、共振周波数の変化量Δf=|f0-f1|(f0とf1との差分の絶対値)を検出し、検出対象物が振動子4,54,64に付着したことを検知する。
【0254】
なお、
図41に示した発振・検出方法は一例にすぎない。例えば、ネットワークアナライザーを用いて、その透過応答(S12やS21)、反射応答(S11やS22)を計測することによっても、同様に、共振周波数を測定することができる。
【0255】
検出対象物が振動子4,54,64に付着すると、振動子4,54,64の質量が大きくなるので、振動子4,54,64の共振周波数f1は、検出対象物が振動子4,54,64に付着しない場合に比べ、低下する。
【0256】
従って、検出回路は、入力電圧Vinがアンテナ5へ印加された後、受信信号Rをアンテナ6から受信し、検出対象物が振動子4,54,64に付着していないとき、受信信号Rから共振周波数f0を検出し、検出対象物が振動子4,54,64に付着すると、共振周波数f1まで徐々に変化する共振周波数fを検出する(
図42参照)。そして、検出回路は、共振周波数fの変化量Δf=|f0-f1|を検出し、検出対象物が振動子4,54,64に付着したことを検知する。
【0257】
振動子4,54,64の共振周波数をfとし、振動子4,54,64の質量をmとし、振動子4,54,64の質量の変化量(=検出対象物の質量)をΔmとした場合、振動子4,54,64の共振周波数の変化量Δfは、次式によって表される。
【0258】
Δf=f・Δm/m・・・(1)
このように、共振周波数の変化量Δfは、振動子4,54,64の質量の変化量Δm、すなわち、検出対象物の質量に比例し、振動子4,54,64の質量mに反比例する。したがって、検出対象物の質量が大きくなる程、または振動子4,54,64の質量(=厚み)が小さくなる程、共振周波数fの変化量Δfが大きくなり、検出対象物の振動子4,54,64への付着を検知し易くなる。
【0259】
振動検出素子10,10A,10Bにおいては、導入口9および流路7を介して検査対象の液体を空間部SPに導入し流路8および排出口11を介して空間部SPから検査対象の液体を排出しながら、即ち、検査対象の液体を循環させながら、上述した方法によって検出対象物の検出が行なわれる。なお、検査対象物は、液体に限らず、気体であってもよい。
【0260】
この場合、振動子4,54,64は、上述したように、支持部材22,522,622または支持部材32,532,632に接触するのみであるので、アンテナ5によって電磁場が印加されると、自由に振動する。従って、振動子4,54,64の安定な振動を確保して検出対象物を検出できる。
【0261】
そして、振動検出素子10,10A,10Bは、水素等の可燃ガスを検出するための「ガスセンサ」、呼気中に含まれる成分分析のための「呼気センサ」、食品の腐敗にともない発せられる成分分析のための「匂いセンサ(鮮度センサ)」、溶液または血液中の成分分析のための「イオン濃度センサ」、特定の空間中における湿度を計測するための「湿度センサ」として用いられる。
【0262】
既存のガスセンサは、酸化物半導体式と接触燃料式(バルク型ガスセンサ)が主流である。これらのガスセンサには、次の3つの課題がある。
【0263】
(1)常時、加熱(200~500℃)が必要であり、センサ駆動のためのエネルギー消費が大きい。
【0264】
(2)ガス検出性能が定常状態となるまでに一定の時間を要するため、センサの取り扱いが面倒である。
【0265】
(3)無酸素雰囲気で使用できないため、不活性ガスをバッファとする可燃ガスの濃度測定には使用できない。
【0266】
一方、上述した振動検出素子10,10A,10Bは、(1)~(3)の課題を改善でき、更に、好感度化が可能である。具体的には、常時加熱を必要としないので、省エネルギーであり、また、直ちに測定を行うことができため操作が簡便であり、燃焼反応を利用していないため、無酸素雰囲気での使用も可能である。また、後述するように、振動検出素子10,10A,10Bを用いれば、検出対象物を高感度に検出できる。
【0267】
図43は、
図1および
図2に示す振動検出素子の変形例を示す断面図である。この発明の実施の形態においては、
図1および
図2に示す振動検出素子10を
図43に示す振動検出素子10-1に変形してもよい。
【0268】
図43を参照して、振動検出素子10-1は、
図1および
図2に示す振動検出素子10の基板2を基板2Aに変えたものであり、その他は、振動検出素子10と同じである。
【0269】
基板2Aは、基板1との接合面2A-1を有する。そして、基板2Aは、基板2Aを厚さ方向に貫通する貫通部2A-2を有する。その結果、支持部材22は、基板1の面1Aに接している。また、空間部SP4内においては、
図43の紙面の左右方向において支持部材22を除いて基板2Aの一部分が存在しない。つまり、基板2Aは、空間部SP4の領域においては、厚さ方向に貫通している。従って、空間部SP4は、基板1、基板2Aの側壁部2A-3および基板3の凹部31によって構成される。
【0270】
振動検出素子10においては、支持部材22と基板1との間に基板2の一部分が存在しているが、振動検出素子10-1においては、支持部材22と基板1との間に基板2Aの一部分が存在しない。従って、基板2Aがシリコンからなる場合でも、入力電圧Vinがアンテナ6を介して支持部材22に伝達され易くなり、振動子4の振動を促進できる。その結果、振動検出素子10-1の検出感度を向上できる。
【0271】
振動検出素子10-1は、
図7~
図18を用いて説明した製造方法のよって製造される。この場合、
図16の工程(C1-9)において、シリコン基板140を厚さ方向に貫通するまで(即ち、基板1の表面が露出するまで)、シリコン基板140をエッチングする。その結果、
図16の工程(C1-9)においては、支持部材22が基板1に接して形成される。
【0272】
なお、この発明の実施の形態においては、
図19および
図20に示す振動検出素子10Aに対して、
図1および
図2に示す振動検出素子10から
図43に示す振動検出素子10-1への変形と同じ変形を行ってもよく、
図31および
図32に示す振動検出素子10Bに対して、
図1および
図2に示す振動検出素子10から
図43に示す振動検出素子10-1への変形と同じ変形を行ってもよい。
【0273】
なお、
図19および
図20に示す振動検出素子10Aに対して、
図1および
図2に示す振動検出素子10から
図43に示す振動検出素子10-1への変形と同じ変形を行う場合、
図29の工程(C2-11)において、シリコン基板140を厚さ方向に貫通するまで(即ち、基板51の表面が露出するまで)、シリコン基板140をエッチングする。その結果、
図29の工程(C2-11)においては、支持部材522が基板51に接して形成される。
【0274】
また、
図31および
図32に示す振動検出素子10Bに対して、
図1および
図2に示す振動検出素子10から
図43に示す振動検出素子10-1への変形と同じ変形を行う場合、
図39の工程(C3-11)において、シリコン基板140を厚さ方向に貫通するまで(即ち、基板61の表面が露出するまで)、シリコン基板140をエッチングする。その結果、
図39の工程(C3-11)においては、支持部材622が基板61に接して形成される。
【0275】
そして、
図19および
図20に示す振動検出素子10Aに対して、
図1および
図2に示す振動検出素子10から
図43に示す振動検出素子10-1への変形と同じ変形を行った場合、および
図31および
図32に示す振動検出素子10Bに対して、
図1および
図2に示す振動検出素子10から
図43に示す振動検出素子10-1への変形と同じ変形を行った場合、それぞれの変形例における振動検出素子は、上述した振動検出素子10-1と同じ効果を享受できる。
【0276】
上記においては、振動検出素子10は、ガラスからなる基板1,3とシリコンからなる基板2とを備えると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、振動検出素子10は、同じ種類の基板を備えていてもよい。振動検出素子10A,10Bの基板についても同様である。
【0277】
また、上記においては、水晶板を研磨およびパターンニングして振動子4,54,64を作製すると説明したが、この発明の実施の形態によれば、これに限らず、一般的には、圧電体板を所望の厚みおよび所望の形状に研磨およびパターンニングして振動子4,54,64を作製してもよい。
【0278】
更に、上記においては、薄膜42,542,642は、スパッタリング法によってそれぞれ基板41,541,641上に形成されると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、薄膜42,542,642は、CVD法によってそれぞれ基板41,541,641上に形成されてもよく、メッキ法によってそれぞれ基板41,541,641上に形成上に形成されてもよく、化学蒸着法によってそれぞれ基板41,541,641上に形成上に形成されてもよい。
【0279】
上述した実施の形態によれば、この発明の実施の形態による振動検出素子は、第1の面と第1の面に対向する第2の面とを有する空間部を含む基材と、空間部の前記第1の面から第2の面の方向へ突出した第1の支持部材と、空間部の前記第2の面から第1の面の方向へ突出した第2の支持部材と、空間部内において振動可能に第1の支持部材または第2の支持部材に接して配置された振動子とを備え、振動子は、圧電体からなる基板と、基板上に配置され、基板の面内方向に圧縮力または引張力が印加された薄膜とを含むものであればよい。
【0280】
また、上述した実施の形態によれば、この発明の実施の形態による振動検出素子の製造方法は、基板ホルダーの円弧状の表面に圧電体からなる第1の基板を取り付ける第1の工程と、
第1の基板上に薄膜を形成して第1の基板と薄膜とからなる振動子を作製する第2の工程と、
振動子を基板ホルダーから取り外し、その取り外した振動子を第1の凹部の底面から突出した第1の支持部材に耐熱接着剤によって接着する第3の工程と、
振動子が耐熱接着剤によって接着された第2の基板を、第2の凹部の底面から突出した第2の支持部材を有する第3の基板の第2の支持部材に振動子が対向するように第3の基板と接合する第4の工程と、
第4の工程の後、耐熱接着剤を除去する第5の工程とを備えていればよい。
【0281】
第1の工程から第5の工程を備えていれば、圧縮力または引張力が印加された薄膜を有する振動子は、第2の基板に固定された状態で第1の基板の第1の支持部材に接着され、第1の基板の第1の支持部材に接着された状態で空間部内に配置され、第1の基板と第3の基板とが接合された後に耐熱接着剤が除去されることにより、第1の支持部材または第2の支持部材に接触する状態となる。その結果、振動子が空間部内に閉じ込められるまで、ピンセット等で振動子を移動等させる必要がなく、振動子の破損を防止できるからである。
【0282】
以下、実施例について説明する。
【0283】
(実施例1)
図4に示すスパッタ装置200の基板ホルダー202の凸面202AにAT-cut水晶板からなる基板41を固定し、パラジウム(Pd)からなる薄膜42をスパッタリングによって基板41上に形成した。この場合、AT-cut水晶板は、例えば、2.5mm×1.7mm×25μmのサイズを有し、薄膜42の膜厚は、例えば、10nmである。引き続いて、基板41/薄膜(Pd)42を基板ホルダー202から取り外し、圧縮力が印加された薄膜(Pd)を有する振動子4を作製した。
【0284】
その後、作製した振動子4を用いて、上述した方法によって実施例1における振動検出素子10-1を作製した。
【0285】
(比較例1)
図4に示すスパッタ装置200の基板ホルダー202を基板ホルダー209に変えたスパッタ装置200を用いて、実施例1と同様にして振動子を作製した。その後、作製した振動子を用いて、上述した方法によって比較例1における振動検出素子10-Comp1を作製した。
【0286】
(比較例2)
薄膜が形成されていないAT-cut水晶板のみからなる振動子を作製した。その後、作製した振動子を用いて、上述した方法によって比較例2における振動検出素子10-Comp2を作製した。
【0287】
[評価]
振動検出素子10-1,10-Comp1,10-Comp2を用いて1vol%の水素(H2)ガスを検出したときの共振周波数の変化量を調べた。
【0288】
図44は、共振周波数の変化量の時間依存性を示す図である。
図44において、縦軸は、共振周波数の変化量を表し、横軸は、時間を表す。また、曲線k1は、実施例1における振動検出素子10-1を用いたときの共振周波数の変化量の時間依存性を示し、曲線k2は、比較例1における振動検出素子10-Comp1を用いたときの共振周波数の変化量の時間依存性を示し、直線k3は、比較例2における振動検出素子10-Comp2を用いたときの共振周波数の変化量の時間依存性を示す。
【0289】
図44を参照して、実施例1における振動検出素子10-1の共振周波数の変化量は、比較例1,2における振動検出素子10-Comp1,10-Comp2の共振周波数の変化量よりも非常に大きい。
【0290】
より具体的には、比較例2における振動検出素子10-Comp2の共振周波数の変化量は、殆ど、零(0)である(直線k3参照)。また、比較例1における振動検出素子10-Comp1の共振周波数の変化量は、最大で約0.07(MHz)である(曲線k2参照)。
【0291】
一方、実施例1における振動検出素子10-1の共振周波数の変化量は、0.24(MHz)以上である(曲線k1参照)。
【0292】
従って、実施例1における振動検出素子10-1は、比較例1における振動検出素子10-Comp1よりも検出感度が3倍以上高いことが分かった。
【0293】
これは、圧縮力が印加された薄膜(Pd)を有する振動子を用いることによって、薄膜(Pd)が検出対象物(H2ガス)に対して感応膜として機能し、より多くの検出対象物(H2ガス)が薄膜(Pd)に付着するためであると考えられる。
【0294】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0295】
この発明は、振動検出素子およびその製造方法に適用される。
【符号の説明】
【0296】
1~3,41,51~53,61~63,541,641 基板、4,54,64 振動子、5,6 アンテナ、7,8 流路、9 導入口、10,10A,10B 振動検出素子、11 排出口、21,31,521,531,621,631 凹部、22,32,522,532,622,632 支持部材、33,533,633 送廃液口、42,542,642 薄膜、100 ガラス基板、110 シリコン基板、112,113 水晶板、111 接着剤、114,117,118 耐熱接着剤。