IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イイダ産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車体下部構造 図1
  • 特許-車体下部構造 図2
  • 特許-車体下部構造 図3
  • 特許-車体下部構造 図4
  • 特許-車体下部構造 図5
  • 特許-車体下部構造 図6
  • 特許-車体下部構造 図7
  • 特許-車体下部構造 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】車体下部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240117BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B62D25/20 G
B62D25/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020139815
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035469
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000101905
【氏名又は名称】イイダ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】前野 真男
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-121382(JP,U)
【文献】特開2006-240134(JP,A)
【文献】特開2005-255067(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012010463(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08,
25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル部を有するフロアパネルと、
前記フロアパネルの後端部に接続され、車両幅方向に沿って延びる閉断面構造を有するクロスメンバと、を備え、
前記クロスメンバは、前記閉断面構造を形成する第1パネル部と第2パネル部とを有し、
前記閉断面構造の内周は、前記第1パネル部と前記第2パネル部とを組み付けることで形成される複数の角部を有する車体下部構造であって、
前記閉断面構造における内部空間の少なくとも一部に充填される充填体を備え、
前記充填体は、第1充填体と、前記第1充填体に対して車両幅方向に離間して配置される第2充填体とを含み、
前記第1充填体及び前記第2充填体は、前記複数の角部のうち、前記フロアパネルに最も近い位置に配置されるフロント角部に接着されるフロント充填部材を備え、
前記フロント充填部材は、平面視で前記トンネル部の位置に対応して規定される規定範囲と重なる位置に配置され、
前記規定範囲は、前記トンネル部の最大幅寸法を示す線分を車両前後方向に沿って前記閉断面構造上を移動させたときの軌跡で表される範囲である、車体下部構造。
【請求項2】
トンネル部を有するフロアパネルと、
前記フロアパネルの後端部に接続され、車両幅方向に沿って延びる閉断面構造を有するクロスメンバと、を備え、
前記クロスメンバは、前記閉断面構造を形成する第1パネル部と第2パネル部とを有し、
前記閉断面構造の内周は、前記第1パネル部と前記第2パネル部とを組み付けることで形成される複数の角部を有する車体下部構造であって、
前記閉断面構造における内部空間の少なくとも一部に充填される充填体を備え、
前記充填体は、前記複数の角部のうち、前記フロアパネルに最も近い位置に配置されるフロント角部に接着されるフロント充填部材を備え、
前記フロント充填部材は、平面視で前記トンネル部の位置に対応して規定される規定範囲と重なる位置に配置され、
前記規定範囲は、前記トンネル部の最大幅寸法を示す線分を車両前後方向に沿って前記閉断面構造上を移動させたときの軌跡で表される範囲であり、
前記フロント充填部材の全体が、平面視で前記規定範囲と重なる位置に配置される、車体下部構造。
【請求項3】
前記フロント充填部材は、発泡材料から構成される、請求項1又は請求項に記載の車体下部構造。
【請求項4】
前記充填体とは異なる材料から構成され、前記充填体を支持する支持体をさらに備え、
前記支持体は、平面視で前記規定範囲と重なる位置に配置され、
前記フロント充填部材は、前記支持体と前記第1パネル部とに挟まれる部分と、前記支持体と前記第2パネル部とに挟まれる部分とを有する、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の車体下部構造。
【請求項5】
前記充填体は、前記複数の角部のうち、前記フロント角部よりも車両の後方となる位置に配置されるリア角部に接着されるリア充填部材をさらに備え、
前記リア充填部材は、前記規定範囲と重なる位置に配置される、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の車体下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、トンネル部を有するフロント側のフロアパネルにリア側のフロアパネルが接合される車体下部構造が知られている。この車体下部構造では、リア側のフロアパネルの前端部にクロスメンバが組み付けられている。これにより、フロント側のフロアパネルの後端に隣接するとともに車両幅方向に沿って延びる閉断面構造が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平07-246956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トンネル部を有するフロアパネルの後端に隣接するとともに車両幅方向に沿って延びるように設けられる閉断面構造のうち、トンネル部近傍に位置する部分は、トンネル部の車両上下方向に沿った振動の影響を受け易い傾向にある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、閉断面構造の振動を抑えることのできる車体下部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車体下部構造は、トンネル部を有するフロアパネルと、前記フロアパネルの後端部に接続され、車両幅方向に沿って延びる閉断面構造を有するクロスメンバと、を備え、前記クロスメンバは、前記閉断面構造を形成する第1パネル部と第2パネル部とを有し、前記閉断面構造の内周は、前記第1パネル部と前記第2パネル部とを組み付けることで形成される複数の角部を有する車体下部構造であって、前記閉断面構造における内部空間の少なくとも一部に充填される充填体を備え、前記充填体は、前記複数の角部のうち、前記フロアパネルに最も近い位置に配置されるフロント角部に接着されるフロント充填部材を備え、前記フロント充填部材は、平面視で前記トンネル部に対応して規定される規定範囲と重なる位置に配置され、前記規定範囲は、前記トンネル部の最大幅寸法を示す線分を車両前後方向に沿って前記閉断面構造上を移動させたときの軌跡で表される範囲である。
【0007】
上記閉断面構造のフロント角部において、フロアパネルにおけるトンネル部に対応する上記規定範囲では、トンネル部の車両上下方向に沿った振動の影響を受けることで変形し易い。上記構成によれば、フロント角部に接着されるとともに、上記規定範囲と重なる位置に配置されるフロント充填部材により、トンネル部の振動を要因としたフロント角部の変形を抑えることができる結果、閉断面構造の振動を抑えることができる。
【0008】
上記車体下部構造において、前記充填体は、第1充填体と、前記第1充填体に対して車両幅方向に離間して配置される第2充填体とを含むことが好ましい。
この構成によれば、第1充填体と第2充填体とを離間して配置することで、充填体の材料の使用量を削減して、閉断面構造の振動を効率的に抑えることが可能となる。
【0009】
上記車体下部構造において、前記フロント充填部材の全体が、平面視で前記規定範囲と重なる位置に配置されることが好ましい。この構成によれば、上記閉断面構造の変形、すなわち閉断面構造の振動を効率的に抑えることができる。
【0010】
上記車体下部構造において、前記フロント充填部材は、発泡材料から構成されることが好ましい。この構成によれば、発泡材料により閉断面構造の振動を効率的に抑えることが可能となる。
【0011】
上記車体下部構造は、前記充填体とは異なる材料から構成され、前記充填体を支持する支持体をさらに備え、前記支持体は、平面視で前記規定範囲と重なる位置に配置され、前記フロント充填部材は、前記支持体と前記第1パネル部とに挟まれる部分と、前記支持体と前記第2パネル部とに挟まれる部分とを有することが好ましい。この構成によれば、例えば、フロント充填部材と支持体との一体品により閉断面構造の変形、すなわち閉断面構造の振動を抑えることができる。
【0012】
上記車体下部構造において、前記充填体は、前記複数の角部のうち、前記フロント角部よりも車両の後方となる位置に配置されるリア角部に接着されるリア充填部材をさらに備え、前記リア充填部材は、前記規定範囲と重なる位置に配置されることが好ましい。
【0013】
上記閉断面構造のリア角部についても、フロアパネルにおけるトンネル部に対応する上記規定範囲では、トンネル部の車両上下方向に沿った振動の影響を受けることで変形し易い。上記構成によれば、リア角部に接着されるとともに、上記規定範囲と重なる位置に配置されるリア充填部材により、トンネル部の振動を要因としたリア角部の変形を抑えることができる結果、閉断面構造の振動をさらに抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、閉断面構造の振動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態における車体下部構造を示す分解斜視図である。
図2】車体下部構造を示す斜視図である。
図3】車体下部構造を示す平面図である。
図4】車体下部構造の一部を切り欠いて示す平面図である。
図5】車体下部構造の要部を示す端面図である。
図6】(a)及び(b)は、変更例の車体下部構造の要部を示す端面図である。
図7】(a)及び(b)は、変更例の車体下部構造の要部を示す端面図である。
図8】(a)及び(b)は、変更例の車体下部構造の要部を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、車体下部構造の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1図5に示すように、車体下部構造11は、フロアパネル21と、フロアパネル21の後端部に接続されるクロスメンバ31とを備えている。クロスメンバ31は、車両幅方向Wに沿って延びる閉断面構造32を有している。車体下部構造11は、クロスメンバ31の後端部に接続されるリアパネル41をさらに備えている。
【0017】
車体下部構造11は、クロスメンバ31の閉断面構造32の内部空間の少なくとも一部に充填される充填体51を備えている。本実施形態の車体下部構造11は、充填体51を支持する支持体61をさらに備えている。
【0018】
<フロアパネル21、クロスメンバ31、及びリアパネル41>
フロアパネル21は、トンネル部22を有している。フロアパネル21は、トンネル部22の両側に配置される第1フロア部23及び第2フロア部24をさらに備えている。トンネル部22は、上方に突出する断面形状を有し、第1フロア部23と第2フロア部24との間において車両前後方向FRに沿って延びるように設けられている。詳述すると、トンネル部22は、第1フロア部23から立ち上がる第1側壁部22aと、第2フロア部24から立ち上がる第2側壁部22bと、第1側壁部22aの上端と第2側壁部22bの上端とを連結する上壁部22cとを有している。
【0019】
クロスメンバ31は、互いに組付けられることで閉断面構造32を形成する第1パネル部32aと第2パネル部32bとを有している。図5に示すように、閉断面構造32の内周は、第1パネル部32aと第2パネル部32bとにより形成される複数の第1角部C1を有している。第1角部C1は、第1パネル部32aと第2パネル部32bとに跨るように形成される角部である。第1角部C1は、フロアパネル21に最も近い位置に配置されるフロント角部C1aと、フロント角部C1aよりも車両の後方となる位置に配置されるリア角部C1bとを有している。なお、閉断面構造32の内周は、第1パネル部32a又は第2パネル部32bにより形成される第2角部C2をさらに有している。第2角部C2は、一枚のパネルの曲部により形成された角部である。第2角部C2は、第1パネル部32aにより形成される第1パネル角部C2aと、第2パネル部32bにより形成される第2パネル角部C2bとを有している。
【0020】
クロスメンバ31における第1パネル部32aの前端部は、フロアパネル21に接続されている。クロスメンバ31における第1パネル部32aの後端部は、リアパネル41に接続されている。
【0021】
<充填体51>
図1及び図4に示すように、本実施形態の充填体51は、第1充填体51aと、第1充填体51aに対して車両幅方向Wに離間して配置される第2充填体51bを含む。ここで、第1充填体51aと第2充填体51bとは共通する構成を有するため、図5では、第1充填体51a及び第2充填体51bを単に充填体51として図示する。
【0022】
図5に示すように、充填体51は、フロント角部C1aに接着されるフロント充填部材52を備えている。詳述すると、フロント充填部材52は、フロント角部C1aを形成する第1パネル部32aと第2パネル部32bとに接着されている。フロント充填部材52は、第1パネル部32aと第2パネル部32bとの境界部分を埋めるように設けられている。
【0023】
本実施形態の充填体51は、リア角部C1bに接着されるリア充填部材53をさらに備えている。リア充填部材53は、リア角部C1bを形成する第1パネル部32aと第2パネル部32bとに接着されている。リア充填部材53は、第1パネル部32aと第2パネル部32bとの境界部分を埋めるように設けられている。
【0024】
本実施形態の充填体51は、第1パネル角部C2aに接着される第1パネル充填部材54と、第2パネル角部C2bに接着される第2パネル充填部材55とをさらに備えている。充填体51は、フロント充填部材52、リア充填部材53、第1パネル充填部材54、及び第2パネル充填部材55が一体となった一体成形品である。
【0025】
図3及び図4に示すように、第1充填体51a及び第2充填体51bは、平面視でフロアパネル21のトンネル部22に対応して規定される規定範囲A1と重なる位置に配置されている。図3及び図4には、トンネル部22の最大幅寸法を示す線分L1を車両前後方向FRに沿って移動させたときの軌跡を梨地模様で示している。規定範囲A1は、線分L1を車両前後方向FRに沿って閉断面構造32上を移動させたときの軌跡で表される範囲である。
【0026】
トンネル部22の幅寸法は、第1側壁部22aの外面の下端と、第2側壁部22bの外面の下端とを車両幅方向Wに沿って結ぶ直線の長さであり、トンネル部22の最大幅寸法は、トンネル部22の車両前後方向FRにおいて最大となる幅寸法である。このようにトンネル部22に対応して規定される規定範囲A1において、フロアパネル21の後端に隣接する範囲は、トンネル部22の近傍となり、トンネル部22の影響を受け易い範囲となる。本実施形態では、第1充填体51aの全体及び第2充填体51bの全体が、規定範囲A1と重なる位置に配置されている。
【0027】
第1充填体51a及び第2充填体51bは、発泡材料又は非発泡材料から構成される。フロント充填部材52は、閉断面構造32の振動を効率的に抑えることができるという観点から、発泡材料から構成されることが好ましい。リア充填部材53、第1パネル充填部材54、及び第2パネル充填部材55の少なくとも一つについても、閉断面構造32の振動を効率的に抑えることができるという観点から、発泡材料から構成されることが好ましい。
【0028】
充填体51は、充填体用組成物を加熱により硬化させることで得ることができる。充填体用組成物は、高分子材料を含有する。高分子材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂系材料、SBR(スチレン/ブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)等のゴム系材料等が挙げられる。充填体用組成物には、硬化剤、発泡剤、充填材等を含有させることもできる。硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、エチレンジアミン等が挙げられる。発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、4,4′-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等が挙げられる。充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、カーボンブラック等が挙げられる。
【0029】
<支持体61>
図1及び図4に示すように、支持体61は、第1充填体51aを支持する第1支持体61aと、第2充填体51bを支持する第2支持体61bとを含む。第1支持体61a及び第2支持体61bは、充填体51とは異なる材料から構成されている。支持体61は、例えば、樹脂材料、金属材料等から構成される。本実施形態の支持体61は、例えば、ポリアミド等の樹脂材料から構成されている。支持体61は、閉断面構造32の内部空間のうち上記規定範囲A1と重なる位置に配置されている。本実施形態の支持体61の全体が、規定範囲A1と重なる位置に配置されている。
【0030】
支持体61は、充填体51が取り付けられる支持部材と、支持部材に設けられる係止部とを備えていてもよい。この場合、係止部を第1パネル部32a又は第2パネル部32bに形成した係止孔に係止することで、充填体51と支持部材とを閉断面構造32の内部空間に配置することもできる。
【0031】
<充填体51と支持体61との関係>
図5に示すように、フロント充填部材52は、支持体61と第1パネル部32aとに挟まれる部分と、支持体61と第2パネル部32bとに挟まれる部分とを有している。詳述すると、支持体61は、第1パネル部32a及び第2パネル部32bと向かい合うように配置された支持面を有している。フロント充填部材52は、第1パネル部32aと支持面との間、第2パネル部32bと支持面との間に充填されている。
【0032】
本実施形態の支持体61は、リア充填部材53、第1パネル充填部材54、及び第2パネル充填部材55についても支持している。リア充填部材53は、支持体61と第2パネル部32bとに挟まれる部分を有している。第1パネル充填部材54は、支持体61と第1パネル部32aとに挟まれる部分を有している。第2パネル充填部材55は、支持体61と第2パネル部32bとに挟まれる部分を有している。
【0033】
<車体下部構造11の形成方法>
次に、車体下部構造11の形成方法について説明する。
車体下部構造11の形成方法では、充填体用組成物を、第1パネル部32a及び第2パネル部32bの少なくとも一方の所定の位置に配置する。充填体用組成物を配置する方法としては、例えば、充填体用組成物から構成した充填性部材の自己粘着性により、充填性部材を貼り付ける方法、接着剤を用いて充填性部材を貼り付ける方法、充填性部材を支持した支持体61を閉断面構造32に係止する方法等が挙げられる。
【0034】
車体下部構造11は、フロアパネル21等の構成部材をスポット溶接等により組み付けた後、洗浄処理工程、電着塗装工程、焼き付け工程を順に行うことで得られる。ここで、焼き付け工程は、加熱炉を用いて電着塗装の塗膜を焼き付ける工程である。この焼き付け工程を利用して、充填性部材を加熱硬化させることができる。なお、充填体用組成物が発泡剤を含有する場合、充填体用組成物を加熱により発泡させることで、発泡材料から構成された充填体を得ることができる。
【0035】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)車体下部構造11は、閉断面構造32における内部空間の少なくとも一部に充填される充填体51を備えている。充填体51は、閉断面構造32における複数の角部のうち、フロアパネル21に最も近い位置に配置されるフロント角部C1aに接着されるフロント充填部材52を備えている。フロント充填部材52は、平面視でトンネル部22の位置に対応して規定される規定範囲A1と重なる位置に配置される。規定範囲A1は、トンネル部22の最大幅寸法を示す線分L1を車両前後方向FRに沿って閉断面構造32上を移動させたときの軌跡で表される範囲である。
【0036】
上記閉断面構造32のフロント角部C1aにおいて、フロアパネル21におけるトンネル部22の位置に対応する上記規定範囲A1では、トンネル部22の車両上下方向に沿った振動の影響を受けることで変形し易い。上記構成によれば、フロント角部C1aに接着されるとともに、上記規定範囲A1と重なる位置に配置されるフロント充填部材52により、トンネル部22の振動を要因としたフロント角部C1aの変形を抑えることができる結果、閉断面構造32の振動を抑えることができる。
【0037】
(2)充填体51は、第1充填体51aと、第1充填体51aに対して車両幅方向Wに離間して配置される第2充填体51bとを含んでいる。この場合、第1充填体51aと第2充填体51bとを離間して配置することで、充填体51の材料の使用量を削減して、閉断面構造32の振動を効率的に抑えることが可能となる。
【0038】
(3)車体下部構造11において、フロント充填部材52の全体が、平面視で規定範囲A1と重なる位置に配置されている。この場合、上記閉断面構造32の変形、すなわち閉断面構造32の振動を効率的に抑えることができる。
【0039】
(4)フロント充填部材52は、発泡材料から構成されることが好ましい。この場合、発泡材料により閉断面構造32の振動を効率的に抑えることが可能となる。
(5)車体下部構造11は、充填体51とは異なる材料から構成され、充填体51を支持する支持体61をさらに備えている。支持体61は、平面視で上記規定範囲A1と重なる位置に配置されている。フロント充填部材52は、支持体61と第1パネル部32aとに挟まれる部分と、支持体61と第2パネル部32bとに挟まれる部分とを有している。この場合、例えば、フロント充填部材52と支持体61との一体品により閉断面構造32の変形、すなわち閉断面構造32の振動を抑えることができる。
【0040】
(6)上記閉断面構造32のリア角部C1bについても、フロアパネル21におけるトンネル部22の位置に対応する上記規定範囲A1では、トンネル部22の車両上下方向に沿った振動の影響を受けることで変形し易い。本実施形態の車体下部構造11は、リア角部C1bに接着されるとともに、上記規定範囲A1と重なる位置に配置されるリア充填部材53をさらに備えている。これにより、トンネル部22の振動を要因としたリア角部C1bの変形を抑えることができる結果、閉断面構造32の振動をさらに抑えることができる。
【0041】
(変更例)
上記実施形態を次のように変更して構成してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0042】
図6(a)に示すように、第1パネル部32aは、上記実施形態の第1パネル部をパネル部本体P1として備え、パネル部本体P1の内側に取り付けられる補強パネル部材P2をさらに備えていてもよい。第2パネル部32bについても、図示を省略するが、上記実施形態の第2パネル部をパネル部本体として備え、パネル部本体の内側に取り付けられる補強パネル部材をさらに備えていてもよい。
【0043】
このように第1パネル部32a及び第2パネル部32bの各パネル部を構成するパネル部材の数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。なお、第1パネル部32a又は第2パネル部32bは、閉断面構造32の周方向に配置される複数のパネル部材から構成されてもよい。例えば、第1パネル部32a又は第2パネル部32bは、フロアパネル21と一体に構成されるとともにフロント角部C1aを形成するフロント側パネル部材と、このフロント側パネル部材に接続されるとともにリア角部C1bを形成するリア側パネル部材とを有していてもよい。また、例えば、第1パネル部32a又は第2パネル部32bは、リアパネル41と一体に構成されるとともにリア角部C1bを形成するリア側パネル部材と、このリア側パネル部材に接続されるとともにフロント角部C1aを形成するフロント側パネル部材とを有していてもよい。
【0044】
図5に示されるフロアパネル21は、第1パネル部32aの前端部に接続されているが、第2パネル部32bの前端部に接続されていてもよい。
図5に示されるリアパネル41は、第1パネル部32aの後端部に接続されているが、第2パネル部32bの後端部に接続されていてもよい。
【0045】
図6(b)に示すように、第1パネル部32aとリアパネル41とを一体に構成することもできる。また、図7(a)に示すように、第2パネル部32bとリアパネル41とを一体に構成することもできる。
【0046】
図5に示される車体下部構造11において、リア充填部材53及び第1パネル充填部材54を省略し、図7(b)に示すように、充填体51をフロント充填部材52及び第2パネル充填部材55から構成してもよい。
【0047】
図5に示される車体下部構造11において、第1パネル充填部材54を省略し、図8(a)に示すように、充填体51をフロント充填部材52、リア充填部材53、及び第2パネル充填部材55から構成してもよい。
【0048】
図5に示される車体下部構造11において、リア充填部材53、第1パネル充填部材54、及び第2パネル充填部材55を省略し、図8(b)に示すように、充填体51をフロント充填部材52から構成してもよい。
【0049】
図5に示される車体下部構造11において、リア充填部材53及び第2パネル充填部材55を省略し、充填体51をフロント充填部材52及び第1パネル充填部材54から構成してもよい。また、図5に示される車体下部構造11において、リア充填部材53を省略し、充填体51をフロント充填部材52、第1パネル充填部材54及び第2パネル充填部材55から構成してもよい。
【0050】
・充填体51は、閉断面構造32の断面において内部空間の全体を充填するように配置することもできる。但し、例えば、図7(b)、図8(a)及び図8(b)に示すように、閉断面構造32における断面の一部に空間を設けてもよい。この場合、閉断面構造32の長さ方向において充填体51が配置されている部分と充填体51が配置されていない部分との境界部分に局所的に加わる荷重が緩和される。これにより、閉断面構造に加わる荷重を好適に分散させることができる。
【0051】
・上記車体下部構造11では、充填体51の全体が、平面視で規定範囲A1と重なる位置に配置されているが、充填体51は、規定範囲A1と重なる部分と、規定範囲A1と重ならずに規定範囲A1の外方に突出する部分とを有していてもよい。例えば、フロント充填部材52の全体が、規定範囲A1と重なる位置に配置され、リア充填部材53は、規定範囲A1と重なる部分と、規定範囲A1と重ならずに規定範囲A1の外方に突出する突出部を有していてもよい。
【0052】
・フロント充填部材52を有する充填体51の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
・上記充填体51は、フロント充填部材52、リア充填部材53、第1パネル充填部材54、及び第2パネル充填部材55が一体となった一体成形品であるが、少なくとも一つの充填部材を別体として構成することもできる。
【0053】
・支持体61を省略することもできる。また、支持体61の形状は、例えば、図8(a)及び図8(b)に示すように、充填体51の構成に応じて適宜変更することができる。
・上記支持体61の全体が、平面視で規定範囲A1と重なる位置されているが、支持体61は、規定範囲A1と重なる部分と、規定範囲A1と重ならずに規定範囲A1の外方に突出する部分とを有していてもよい。
【0054】
・車体下部構造11のフロアパネル21、クロスメンバ31、及びリアパネル41は、鋼板等の金属材料から形成されてもよいし、樹脂材料等の非金属材料から形成されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
11…車体下部構造
21…フロアパネル
22…トンネル部
22a…第1側壁部
22b…第2側壁部
22c…上壁部
23…第1フロア部
24…第2フロア部
31…クロスメンバ
32…閉断面構造
32a…第1パネル部
32b…第2パネル部
41…リアパネル
51…充填体
51a…第1充填体
51b…第2充填体
52…フロント充填部材
53…リア充填部材
54…第1パネル充填部材
55…第2パネル充填部材
61…支持体
61a…第1支持体
61b…第2支持体
A1…規定範囲
C1…第1角部
C1a…フロント角部
C1b…リア角部
C2…第2角部
C2a…第1パネル角部
C2b…第2パネル角部
FR…車両前後方向
L1…線分
P1…パネル部本体
P2…補強パネル部材
W…車両幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8