(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】フッ化ケイ素アクセプタ置換放射性医薬品とその前駆体
(51)【国際特許分類】
A61K 51/04 20060101AFI20240117BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240117BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A61K51/04 100
A61K51/04 200
A61K47/64
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2021544519
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2020052159
(87)【国際公開番号】W WO2020157128
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-15
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504150162
【氏名又は名称】テクニシェ ユニバーシタット ミュンヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】ディ・カルロ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ウェスター,ハンス-ユルゲン
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0246327(US,A1)
【文献】特表2018-521956(JP,A)
【文献】特表2010-536790(JP,A)
【文献】Litau, S. et al.,Next generation of SiFAlin-based TATE derivatives for PET imaging of SSTR-positive tumors: influence of molecular design on in vitro SSTR binding and in vivo pharmacokinetics,Bioconjugate Chemistry,2015年09月30日,Vol. 26,pp. 2350-2359
【文献】Lindner, S. et al.,Synthesis and in vitro and in vivo evaluation of SiFA-tagged bombesin and RGD peptides as tumor imaging probes for positron emission tomography,Bioconjugate Chemistry,2014年03月25日,Vol. 25,pp. 738-749
【文献】Dialer, L.O. et al.,Studies toward the development of new silicon-containing building blocks for the direct 18F-labeling of peptides,Journal of Medicinal Chemistry,2013年08月30日,Vol. 56,pp. 7552-7563
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 51/00
A61K 47/64
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
[式中:
R
Lは、前立腺特異的膜抗原(PSMA)へ結合することが可能であるリガンド部分であり;
R
SiFAは、
(i)ケイ素原子とフッ素原子を含むSiFA部分(ここで該フッ素原子は、共有結合を介して該ケイ素原子へ直接連結して、当該SiFA部分は、
19Fの
18Fによる同位体交換によって
18Fで標識され得るか又は
18Fで標識される);
(ii)ケイ素原子とヒドロキシ基を含むSiFA部分(ここで該ヒドロキシ基は、共有結合を介して該ケイ素原子へ直接連結して、当該SiFA部分は、OHの
18Fによる求核置換によって
18Fで標識され得る);及び
(iii)ケイ素原子と水素原子を含むSiFA部分(ここで該水素原子は、共有結合を介してケイ素原子へ直接連結して、当該SiFA部分は、Hの
18Fによる求核置換によって
18Fで標識され得る);
より選択されるフッ化ケイ素アクセプタ(SiFA)部分であり;
Lは、連結部分であり;
R
Hは、
(i)2~10個の親水性アミノ酸ユニットA
H(このそれぞれは、独立して、親水性側鎖を担う天然又は非天然アミノ酸に由来する)と、親水性側鎖を欠く天然又は非天然アミノ酸に由来する、有ってもよい1個のアミノ酸ユニットA
Nの直鎖又は分岐鎖配列(ここでこの親水性アミノ酸ユニットと、存在するならば、ユニットA
Nは、直接的な共有結合を介するか又はカップリングユニットを介して互いに結合する)を含み、そして場合によっては、さらに
(ii)1個以上の親水性残基R
T(このそれぞれは、アミノ酸ユニットのアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖の官能基へ結合し得る)
を含む、親水性部分である]
によって表されるリガンド-SiFAコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
-R
H部分が、式(3A)、式(3B)、式(3C)、式(3D)又は式(3G):
【化2】
[式中:
b1は、1~9の整数であり;
c1は、1~9の整数であり;
A
1Hは、それぞれの出現について独立して、親水性側鎖を担う天然又は非天然アミノ酸に由来する親水性アミノ酸ユニットであり;
A
2HとA
3Hは、それぞれ独立して、親水性側鎖を担う天然又は非天然アミノ酸に由来する親水性アミノ酸ユニットであり;
A
1Nは、親水性側鎖を欠くアミノ酸に由来するアミノ酸ユニットであり;
X
1Hは、それぞれの出現について独立して、結合又はカップリングユニットであり;
X
2HとX
3Hは、それぞれ独立して、結合又はカップリングユニットであり;
そして
R
Tは、アミノ酸ユニットA
3Hのアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖の官能基へ結合し得る親水性残基を表す]
【化3】
[式中:
A
7H、A
8H、及びA
9Hは、それぞれ独立して、親水性側鎖を担う天然又は非天然アミノ酸に由来する親水性アミノ酸ユニットであり;そして
X
8HとX
9Hは、それぞれ独立して、直結合又はカップリングユニットであり;
そして場合によっては、親水性残基R
Tは、アミノ酸ユニットA
8H及びA
9Hの一方又は両方のアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖の官能基へ結合し得る]
によって表される構造を有する、請求項1に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項3】
-R
H部分が式(3E)又は式(3F):
【化4】
[式中:
A
4H、A
5H、及びA
6Hは、それぞれ独立して、親水性側鎖を担う天然又は非天然アミノ酸に由来する親水性アミノ酸ユニットであり;
X
4HとX
5Hは、それぞれ独立して、直結合又はカップリングユニットであり、そして場合によっては、親水性残基R
Tは、アミノ酸ユニットA
6Hのアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖の官能基へ結合し得て;そして
A
1Nは、親水性側鎖を欠くアミノ酸に由来するアミノ酸ユニットである]
によって表される構造を有する、請求項1又は請求項2のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項4】
親水性部分R
Tが、キレーター基、錯化(complexed)金属又は放射性金属付きのキレート基、炭水化物残基、ポリエチレングリコール残基、還元性(reduced)アミノ酸、及びカルボン酸同配体(isoster)付きのアミノ酸類似体より選択される、請求項1~3のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項5】
親水性アミノ酸ユニットが、それぞれ独立して、アミノ基、カルボン酸基、ヒドロキシ基、グアニジノ基、アミド基、及び尿素基より、又はこれらの基の同配体より選択される少なくとも1つの親水性官能基を含む親水性側鎖を担うアミノ酸に由来する、請求項1~4のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項6】
R
H中の親水性アミノ酸ユニットが、それぞれ独立して、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、2,4-ジアミノブタン酸(Dab)、オルニチン(Orn)、リジン(Lys)、4-アミノピペリジン-4-カルボン酸(Apc4)、3-アミノピペリジン-3-カルボン酸(Apc3)、2-アミノピペリジン-2-カルボン酸(Apc2)、アスパラギン酸(Asp)、ホモグルタミン酸(Hgl)、グルタミン酸(Glu)、2,3-ジアミノコハク酸、ジアミノペンタン二酸、ジアミノヘキサン二酸、ジアミノヘプタン二酸、ジアミノオクタン二酸、スレオニン(Thr)、及びシトルリン(Cit)より選択されるアミノ酸に由来して、ここで該アミノ酸は、好ましくはD-配置にある、請求項1~5のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項7】
-R
H部分中の親水性側鎖を欠くアミノ酸に由来するいずれのアミノ酸ユニットは、グリシン(Gly)、フェニルアラニン(Phe)、β-アラニン(β-Ala)、及びアミノヘキサン酸(Ahx)より選択されるアミノ酸に由来する、請求項1~6のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項8】
リガンド部分R
Lが式(6):
【化5】
[式中:
rは、2~6、好ましくは2~4の整数、より好ましくは2であり;
R
1Lは、CH
2、NH、又はO、好ましくはNHであり;
R
2Lは、C又はP(OH)、好ましくはCであり;
R
3Lは、CH
2、NH、又はO、好ましくはNHであり;
R
4Lは、-COOH置換基を担う直鎖C1~C7アルカンジイル基であり;
そして式中、破線は、該部分を該コンジュゲート化合物の残部へ付ける結合を示す]
によって表される構造を有する、請求項1~7のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項9】
リガンド部分R
Lが、式(6A)、式(6B)、式(6C)又は式(6D):
【化6】
[式中:
rは、2~6、好ましくは2~4の整数、より好ましくは2であり;
sは、2~6、好ましくは2~4の整数、より好ましくは2又は4であり;
s2は、2~6、好ましくは2~4の整数、より好ましくは4であり;
tは、1~4、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1又は3であり;
uは、1~4、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1であり;
そして式中、破線は、該部分を該コンジュゲート化合物の残部へ付ける結合を示す]
によって表される構造を有する、請求項8に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項10】
SiFA部分のR
SiFAが、式(7):
【化7】
[式中:
X
Sは、F、OH、又はHであり;
R
1SとR
2Sは、独立して、直鎖又は分岐鎖C3~C10アルキル基であり、好ましくはR
1SとR
2Sは、独立して、イソプロピルとtert-ブチルより選択され、そしてより好ましくはR
1SとR
2Sは、tert-ブチルであり;
R
3Sは、C1~C20炭化水素基であり(ここでは3個までの炭素原子がN、O、及びSより選択されるヘテロ原子に置き換わってよい);好ましくはR
3Sは、芳香環を含んで、1個以上の脂肪族ユニットを含み得るC6~C10炭化水素基であり(ここでは1個の炭素原子が、芳香環中のものも、窒素原子に置き換わってよい);より好ましくはR
3Sは、フェニル環であり、そして最も好ましくは、R
3Sは、Si含有置換基と破線によって示される結合がパラ位にあるフェニル環であり;
そして式中、破線は、該部分を該コンジュゲート化合物の残部へ付ける結合を示す]
によって表される構造を有する、請求項1~9のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項11】
式(1A):
【化8】
[式中、R
1L、R
2L、R
3L、R
4L、R
1S、R
2S、R
3S、X
S、R
H、L、及びrは、請求項1~10にあるように定義される]
によって表される、請求項1~10のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項12】
式(1G)又は式(1H):
【化9】
[式中、R
1L、R
2L、R
3L、R
4L、R
1S、R
2S、R
3S、X
S;R
H、A
4H、X
4H、A
5H、X
5H、A
6H、A
1N、L、及びRは、請求項1~11にあるように定義される]
によって表される、請求項11に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項13】
連結部分Lが式(8A)又は式(8B):
【化10】
[式中:
X
1での破線で示した結合は、R
Lと形成され、X
3での破線で示した結合は、R
SiFAと形成され、そしてX
4での破線で示した結合は、R
Hと形成され;
X
1は、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、及びアミン結合より選択されて、好ましくはアミド結合であり;
X
2は、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、及びアミン結合より選択されて、好ましくはアミド結合であり;
X
2Aは、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、及びアミン結合より選択されて、好ましくはアミド結合であり;
X
3は、アミド結合、エステル結合、エーテル結合、アミン結合、及び式:
【化11】
{式中、NH基での破線で示した結合は、L
2と形成されて、破線で示した他の結合は、R
SiFAと形成される}の連結基より選択され、好ましくはX
3は、アミド結合であり;
X
4は、-R
Hのアミノ酸ユニットに含有される-NH基又は-C(O)-基と一緒に、又はR
Hに含有されるカップリングユニットと一緒になって、アミド結合、エステル結合、チオエステル結合、又は尿素結合を形成する基であり;より好ましくはX
4は、-C(O)-又は-NH-であって、X
4を介して付くR
Hのアミノ酸ユニットの配列中の第一アミノ酸ユニットの対応する-NH-又は-C(O)-基とアミド結合を形成し;
L
1は、X
1からX
2まで延びる6~36個の原子の連続した鎖を含んでなる二価連結基であり、ここで前記鎖は、炭素原子と(1個より多いヘテロ原子が存在するならば、それぞれの出現についてN、O、及びSより独立して選択される)有ってもよいヘテロ原子によって形成され(そしてここで該鎖は、1個以上の二価環式基又は複素環式基を含み得て、この場合、該環原子のすべてがこの連続鎖の原子として計数される);
L
1Aは、X
2AからX
4まで延びる6~24個の原子の連続した鎖を含んでなる二価連結基であり、ここで前記鎖は、炭素原子と(1個より多いヘテロ原子が存在するならば、それぞれの出現についてN、O、及びSより独立して選択される)有ってもよいヘテロ原子によって形成され(そしてここで該鎖は、1個以上の二価環式基又は複素環式基を含み得て、この場合、該環原子のすべてがこの連続鎖の原子として計数される);そして
L
2は、三価部分である]
によって表される構造を有する、請求項1~11のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項14】
L
2が式(9):
【化12】
[式中:
R
1は、N、CR
2(ここでR
2は、H又はC1-C6アルキルである)、及び5~7員の炭素環式基又は複素環式基より選択され;好ましくはR
1は、NとCHより選択され、そしてより好ましくはR
1は、CHであり;
(CH
2)
xでの破線によって示した結合は、X
2と形成され、そしてxは、0~4の整数、好ましくは0又は1、そして最も好ましくは0であり;
(CH
2)
yでの破線によって示した結合は、X
3と形成され、そしてyは、0~4、好ましくは0~2の整数、そしてより好ましくは0又は1であり;そして
(CH
2)
zでの破線によって示した結合は、X
4又はX
2Aとそれぞれ形成され、そしてzは、0~4、好ましくは0~2の整数、そしてより好ましくは0又は1である]
によって表される、請求項13に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項15】
連結部分Lが式(10A)又は式(10B):
【化13】
[式中:
X
1、X
2、X
2A、X
3、X
4、及びL
2は、請求項13又は14に定義される通りであり;
vは、0又は1であり;
L
1Bは、置換されていてもよいC1-C8アルカンジイル基、好ましくは、エーテル結合によって中断されていてもよい直鎖アルカンジイル基であり(そしてここで該アルカンジイル基が4個以上の炭素原子の鎖を含むならば、該鎖中の4個の連続した炭素原子は、ベンゼンジイル基又はシクロヘキサンジイル基に置き換わってよい);
L
1CとL
1Fは、独立して、置換されていてもよいC1-C8アルカンジイル基、好ましくはエーテル結合によって中断されていてもよい直鎖アルカンジイル基であり(そしてここで該アルカンジイル基が4個以上の炭素原子の鎖を含むならば、該鎖中の4個の連続した炭素原子は、ベンゼンジイル基又はシクロヘキサンジイル基に置き換わってよい);
L
1DとL
1Eは、独立して、置換されていてもよいC1-C8アルカンジイル基、好ましくはエーテル結合によって中断されていてもよい直鎖アルカンジイル基であり(そしてここで該アルカンジイル基が4個以上の炭素原子の鎖を含むならば、該鎖中の4個の連続した炭素原子は、ベンゼンジイル基又はシクロヘキサンジイル基に置き換わってよい);
X
1Bは、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、及びアミン結合より選択されて、好ましくはアミド結合であり;そして
X
1CとX
1Fは、独立して、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、及びアミン結合より選択されて、好ましくはアミド結合である]
によって表される構造を有する、請求項1~14のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【請求項16】
請求項1~
15のいずれか1項に記載の1個以上のコンジュゲート化合物又は塩を含んでなるか又はそれからなる、医薬組成物又は診断組成物。
【請求項17】
(a)前立腺癌が含まれる癌;又は
(b)血管新生/血管形成
を診断する、治療する、又は診断して治療する方法において使用するための、請求項1~
15のいずれか1項に記載のコンジュゲート化合物又は塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺癌の診断と治療に適しているフッ化ケイ素アクセプタ(SiFA)置換(substituted)放射性医薬品とその前駆体に関する。
本明細書では、特許出願と製造業者マニュアルが含まれる、数多くの文献が引用される。これら文献の開示内容は、本発明の特許性に関連があるとは考慮されないものの、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。より具体的には、すべての参照文献は、それぞれ個別の文献が具体的かつ個別的に参照により組み込まれると示されるのと同じ程度で、参照により組み込まれる。
【発明の概要】
【0002】
背景技術
前立腺癌とPSMA
前立腺癌(PCa)は、この数十年にわたって、発症率が高くて生存率が低い、男性の最も一般的な悪性疾患であり続けている。前立腺癌におけるその過剰発現(Silver, D.A., et al., Prostate-specific membrane antigen expression in normal and malignant human tissues[正常ヒト組織と悪性ヒト組織における前立腺特異的膜抗原の発現]. Clinical Cancer Research, 1997. 3(1): p. 81-85)の故に、前立腺特異的膜抗原(PSMA)又はグルタミン酸カルボキシペプチダーゼII(GCPII)は、PCaの内部放射線療法及びイメージングのための高感度放射標識剤の開発への優れた標的としてのその適格性が証明された(Afshar-Oromieh, A., et al., The diagnostic value of PET/CT imaging with the 68Ga-labelled PSMA ligand HBED-CC in the diagnosis of recurrent prostate cancer[再発性前立腺癌の診断における、68Ga-標識化PMSAリガンドHBED-CCを用いたPET/CTイメージングの診断価値]. European journal of nuclear medicine and molecular imaging, 2015. 42(2): p. 197-209;Benesova, M., et al., Preclinical Evaluation of a Tailor-Made DOTA-Conjugated PSMA Inhibitor with Optimized Linker Moiety for Imaging and Endoradiotherapy of Prostate Cancer[前立腺癌のイメージング及び内部放射線療法のために最適化したリンカー部分のあるテーラーメイドDOTA共役PSMA阻害剤の前臨床評価]. Journal of Nuclear Medicine, 2015. 56(6): p. 914-920;Robu, S., et al., Preclinical evaluation and first patient application of 99mTc-PSMA-I&S for SPECT imaging and radioguided surgery in prostate cancer[前立腺癌におけるSPECTイメージングとラジオガイド手術への99mTc-PSMA-I&Sの前臨床評価と最初の患者適用]. Journal of Nuclear Medicine, 2016: p. jnumed. 116.178939;Weineisen, M., et al., Development and first in human evaluation of PSMA I&T-ligand for diagnostic imaging and endoradiotherapy of prostate cancer[前立腺癌の診断イメージング及び内部放射線療法のためのPSMA I&T-リガンドの開発と初めてのヒト評価]. Journal of Nuclear Medicine, 2014. 55(supplement 1): p. 1083-1083;Rowe, S., et al., PET imaging of prostate-specific membrane antigen in prostate cancer: current state of the art and future challenges[前立腺癌における前立腺特異的膜抗原のPETイメージング:現行の技術水準と将来の課題]. Prostate cancer and prostatic diseases, 2016;Maurer, T., et al., Current use of PSMA-PET in prostate cancer management[前立腺癌マネジメントにおける現下のPSMA-PETの使用]. Nature Reviews Urology, 2016)。前立腺特異的膜抗原は、その触媒中心が2個の亜鉛(II)イオンを架橋ヒドロキシドリガンドとともに含む、細胞外ヒドロラーゼである。それは、転移性及びホルモン不応性の前立腺癌において高度に上方調節されているが、その生理学的な発現は、腎臓、唾液腺、小腸、脳でも、そして低い程度で、健常な前立腺組織でも報告されている。腸において、PSMAは、プテロイルポリ-γ-グルタミン酸塩のプテロイルグルタメート(葉酸塩)への変換によって、葉酸塩(folate)の吸収を促進する。脳において、それは、N-アセチル-L-アスパルチル-L-グルタメート(NAAG)をN-アセチル-L-アスパラギン酸塩とグルタメートへ加水分解する。
【0003】
PSMA-標的指向性の活性薬剤
PSMA標的指向分子は、通常、P1’グルタメート部分へ連結した亜鉛結合基(尿素(Zhou, J., et al., NAAG peptidase inhibitors and their potential for diagnosis and therapy[NAAGペプチダーゼ阻害剤と診断及び療法へのその潜在可能性]. Nature Reviews Drug Discovery, 2005. 4(12): p. 1015-1026)、ホスフィネート、又はホスホロアミダートのような)を取り囲む結合ユニットを含むが、それは、PSMAへの高い親和性及び特異性を保証して、典型的には、エフェクター官能基へさらに連結している(Machulkin, A.E., et al., Small-molecule PSMA ligands. Current state, SAR and perspectives[低分子PSMAリガンド。現状、最高技術水準、及び展望]. Journal of drug targeting, 2016: p. 1-15)。このエフェクター部分は、より柔軟であって、構造上の修飾に対してある程度まで耐性がある。PSMAの結合部位への入口漏斗部分(entrance funnel)は、リガンド結合に重要である、他の2つの顕著な構造特徴を収容する。第一の特徴は、入口漏斗部分の壁にある陽荷電領域であって、PSMAのP1位置にある陰荷電官能基の選好性の構造上の説明となる、アルギニンパッチである。結合時に、このアルギニン側鎖の協奏的なリポジショニングは、S1疎水性アクセサリーポケット(第二の重要な構造であって、数種の尿素ベース阻害剤のヨード-ベンジル基を収容することが示されている)の開放をもたらすことが可能であり、それによってPMSAへのその高い親和性に貢献する(Barinka, C., et al., Interactions between Human Glutamate Carboxypeptidase II and Urea-Based Inhibitors: Structural Characterization[ヒトグルタミン酸カルボキシペプチダーゼIIと尿素ベース阻害剤の間の相互作用:構造特性決定]. Journal of medicinal chemistry, 2008. 51(24): p. 7737-7743)。
【0004】
Zhang et al. は、二座結合様式に利用され得る、PSMAの離れた結合部位を発見した(Zhang, A.X., et al., A remote arene-binding site on prostate specific membrane antigen revealed by antibody-recruiting small molecules[抗体動員低分子によって明らかにされた前立腺特異的膜抗原上の離れたアレーン結合部位]. Journal of the American Chemical Society, 2010. 132(36): p. 12711-12716)。この所謂アレーン結合部位は、Arg463、Arg511、及びTrp541の側鎖によって形成される単純な構造モチーフであって、PSMAの入口蓋部分(entrance lid)の一部である。遠位の阻害剤部分によるアレーン結合部位の関与は、アビディティー効果による、PSMAへの阻害剤親和性の実質的な増加を生じ得る。PSMA I&Tは、このようにしてPSMAと相互作用させる意図をもって開発された(もっとも、結合様式についての結晶構造解析は、得られていない)。必要な特徴は、Zhang et al. によれば、PSMAの入口蓋部分の開いたコンホメーションを促進して、それによってアレーン結合部位の接近可能性を可能にするリンカーユニット(PSMA I&Tの場合は、スベリン酸)である。さらに、このリンカーの構造組成は、腫瘍標的化と生理活性に対してだけでなく、画像対比と薬物動態に対しても有意な影響を及ぼすことが示された(Liu, T., et al., Spacer length effects on in vitro imaging and surface accessibility of fluorescent inhibitors of prostate specific membrane antigen[前立腺特異的膜抗原の蛍光阻害剤の試験管内イメージングと表面接近可能性に対するスペーサーの長さの効果]. Bioorganic & medicinal chemistry letters, 2011. 21(23): p. 7013-7016)。この特性は、高いイメージング品質と効率的な標的指向性の内部放射線療法の両方にとってきわめて重要である。
【0005】
現在、臨床現場では、2種のカテゴリーのPSMA標的指向阻害剤が使用されている。一方は、PSMA I&T又は関連化合物のような、放射性核種錯体化のためのキレート形成ユニット付きのトレーサーである(Kiess, A.P., et al., Prostate-specific membrane antigen as a target for cancer imaging and therapy[癌のイメージング及び治療用の標的としての前立腺特異的膜抗原]. The quarterly journal of nuclear medicine and molecular imaging: 2015. 59(3): p. 241)。他方は、標的指向ユニットとエフェクター分子を含んでなる低分子である。使用される放射性核種/ハロゲンに依拠して、この放射標識PSMA阻害剤は、イメージング又は内部放射線療法のために使用され得る。イメージング用キレーター付き低分子阻害剤の中で、選択的PSMAイメージングのために最もよく使用されているのは、PSMA HBED-CC(Eder, M., et al., 68Ga-complex lipophilicity and the targeting property of a urea-based PSMA inhibitor for PET imaging[68Ga錯体の親油性とPETイメージング用の尿素ベースPSMA阻害剤標的指向特性]. Bioconjugate chemistry, 2012. 23(4): p. 688-697)、PSMA-617(Benesova, M., et al., Preclinical Evaluation of a Tailor-Made DOTA-Conjugated PSMA Inhibitor with Optimized Linker Moiety for Imaging and Endoradiotherapy of Prostate Cancer[前立腺癌のイメージング及び内部放射線療法のために最適化したリンカー部分のあるテーラーメイドDOTA共役PSMA阻害剤の前臨床評価]. Journal of Nuclear Medicine, 2015. 56(6): p. 914-920)、及びPSMA I&T(Weineisen, M., et al., Development and first in human evaluation of PSMA I&T-ligand for diagnostic imaging and endoradiotherapy of prostate cancer[前立腺癌の診断イメージング及び内部放射線療法のためのPSMA I&T-リガンドの開発と初めてのヒト評価]. Journal of Nuclear Medicine, 2014. 55(supplement 1): p. 1083-1083)である。PSMA HBED-CC又はPSMA-11は、最初のPSMA阻害剤の1つであったが、現在では、キレーターHBED-CCでは治療応用が可能でないので、イメージング用に使用されている。しかしながら、より高度なイメージ解像を生じる、独自の物理特性とPETイメージングへの18Fの利点(より長い半減期、低いポジトロンエネルギー、等)とサイクロトロンにおける大量生産の可能性の故に、いくつかの研究グループは、PCaイメージング用の18F-標識化尿素ベース阻害剤の開発に注力してきた。
【0006】
18F-標識化尿素ベースPSMA阻害剤の18F-DCFPylは、原発性及び転移性PCaの検出において有望な結果(Rowe et al., Molecular Imaging and Biology, 1-9 (2016))を、そして比較試験において68Ga-PSMA-HBED-CCに対する優越性(Dietlein et al., Molecular Imaging and Biology 17, 575-584 (2015))を実証した。PSMA-617の構造に基づいて、18F-標識化類似体のPSMA-1007が最近開発されたが、それは、同等の「腫瘍」対「臓器」比を示した(Cardinale et al., Journal of nuclear medicine: official publication, Society of Nuclear Medicine 58, 425-431 (2017); Giesel et al., European journal of nuclear medicine and molecular imaging 43, 1929-1930 (2016))。68Ga-PSMA-HBED-CCとの比較試験では、両方のトレーサーの類似の診断精度と、前立腺のより良好な評価を可能にする、18F-PSMA-1007の尿クリアランスの低下が明らかになった(Giesel et al., European journal of nuclear medicine and molecular imaging 44, 678-688 (2017))。
【0007】
18F標識を導入するための魅力的なアプローチは、フッ化ケイ素アクセプタ(SiFA)の使用である。フッ化ケイ素アクセプタについては、例えば、Lindner et al., Bioconjugate Chemistry 25, 738-749 (2014) に記載されている。文献では、19Fに代わる18F-同位体交換反応によるだけでなく、例えば、Mu L et al., Angew Chem Int Ed Engl. 2008;47(26):4922-5 と Hohne A et al., Bioconjug Chem. 2008 Sep;19(9):1871-9 にそれぞれある、-OHに代わる18F-の置換反応と-Hに代わる18F-の置換反応によっても、18F-標識化SiFA化合物を産生することができることが実証されている。しかしながら、フッ化ケイ素結合を保存するためのフッ化ケイ素アクセプタの使用は、立体的に嵩張る(sterically demanding)基、例えば、Si-F及びSi-18Fケイ素(slicone)基付近にある2つのtert-ブチル基(例えば、Si(tert-ブチル)2X(ここでXは、F又は18Fである)のような)の必要性を招くものである。するとこれにより、フッ化ケイ素アクセプタは、きわめて疎水性になる。標的分子、特にPSMAである標的タンパク質への結合に関して言えば、フッ化ケイ素アクセプタによって提供される疎水性部分は、放射性診断又は放射性治療化合物の疎水性ポケット(Zhang et al., Journal of the American Chemical Society 132, 12711-12716 (2010) に記載されている)との相互作用を確立する目的に利用し得るかもしれない。それでも、結合すること以前に、その分子中へ導入されるより高度の親油性は、好適な生体内(in vivo)生体分布(biodistribution)(即ち、非標的組織における低い非特異結合)のある放射性医薬品の開発に関して重大な問題を提起するものである。
【0008】
SiFA付随性の疎水性問題を解決することの失敗
多くの試みにもかかわらず、フッ化ケイ素アクセプタによって引き起こされる疎水性の問題は、先行技術において満足のゆくほどに解決されてはいない。
【0009】
さらに説明すると、Schirrmacher E. et al.(Bioconjugate Chem. 2007, 18, 2085-2089)は、フッ化ケイ素アクセプタの1例である、きわめて有効な標識化シントンのp-(ジtert-ブチルフルオロシリル)ベンズアルデヒド([18F]SiFA-A)を使用して、様々な18F-標識化ペプチドを合成した。このSiFA技術は、予想外に効率的な19Fに代わる18F-同位体交換をもたらして、225~680GBq/マイクロモル(6081~18378Ci/ミリモル)の高比活性の18F-シントンを、HPLC精製を適用することなくほとんど定量的な収率で生じた。最終的には、[18F]SiFA-ベンズアルデヒドを使用して、N末端アミノ-オキシ(N-AO)誘導体化ペプチドのAO-Tyr3-オクトレオテート(AO-TATE)、シクロ(fK(AO-N)RGD)、及びN-AO-PEG2-[D-Tyr-Gln-Trp-Ala-Val-Ala-His-Thi-Nle-NH2](AO-BZH3,ボンベシン誘導体)を高い放射化学収率で標識した。それでもやはり、この標識化ペプチドは、きわめて親油性である(この論文に記載された条件を使用するHPLC保持時間よりみなし得るように)ので、動物モデル又はヒトでのさらなる評価には不適切である。
【0010】
Wangler C. et al.(Bioconjugate Chem., 2009, 20 (2), pp 317-321)には、あるタンパク質(ラット血清アルブミン、RSA)の最初のSiFAベースキット様の放射性フッ素化が記載されている。標識剤として4-(ジtert-ブチル[18F]フルオロシリル)ベンゼンチオール([18F]SiFA-SH)を単純な同位体交換によって40~60%の放射化学収率(RCY)で生成して、20~30分以内に12%の全体RCYで、マレイミド誘導体化血清アルブミンへ直接共役させた。この技術的に単純な標識手順は、巧緻な精製手順を必要としないで、Si-18F化学をPETでの生体内(in vivo)イメージングに成功裡に応用した直截的な例である。時間-活性曲線とマウスのμPET画像は、放射活性の大部分が肝臓に局在化していることを示し、それによってこの標識剤があまりに親油性であって、この生体内(in vivo)プローブを胆汁排泄と広汎な肝代謝へ指向させることを実証した。
【0011】
Wangler C. et al.(Bioconjug Chem. 2010 Dec 15;21(12):2289-96)は、引き続き、新しいSiFA-オクトレオテート類似体(SiFA-Tyr3-オクトレオテート、SiFA-Asn(AcNH-β-Glc)-Tyr3-オクトレオテート、及びSiFA-Asn(AcNH-β-Glc)-PEG-Tyr3-オクトレオテート)を合成して評価することによって、このSiFA技術の重大な欠点である、生じる放射性医薬品の高い親油性を克服することを試みた。これらの化合物では、ペプチドとSiFA-部分の間に親水性リンカーと薬物動態修飾因子(即ち、炭水化物とPEGリンカー+炭水化物)が導入された。このコンジュゲートの親油性の尺度としてlogP(ow)を決定して、SiFA-Asn(AcNH-β-Glc)-PEG-Tyr3-オクトレオテートでは0.96で、SiFA-Asn(AcNH-β-Glc)-Tyr3-オクトレオテートでは1.23であることがわかった。これらの結果は、SiFA部分の高い親油性は、親水性部分を適用することによって、わずかに相殺され得るにすぎないことを示している。最初のイメージング試験で過度の肝クリアランス/肝臓取込みが証明されたので、初めてのヒト試験へ移行することはなかった。
【0012】
Kostikov et al.(J. Fluorine Chem., 2011, 132, 27-34)は、テトラアルキルアンモニウム基をSiFA部分の一部として有する、帯電性SiFAを担う分子を提示した。
Bernard-Gauthier et al.(Biomed Res Int. 2014;2014:454503)では、小補欠分子族と他の低分子量化合物から標識化ペプチドとごく最近のアフィボディ(affibody)分子に及ぶ、文献に報告されてきたごく多数の様々なSiFA分子種が概説されている。これらのデータに照らせば、SiFAベース補欠分子族の親油性の問題は、これまで解決されていない。即ち、SiFA共役ペプチドの全親油性を概ね-2.0未満のlogDへ低下させる方法論について、これまで記載されていないのである。
【0013】
Lindner S. et al.(Bioconjug Chem. 2014 Apr 16;25(4):738-49)には、特異的GRP受容体リガンドとしてのPEG化ボンベシン(PESIN)誘導体と特異的αvβ3結合剤としてのRGD(アルギニン-グリシン-アスパラギン酸の1文字略号)ペプチドを合成して、SiFA部分にタグ付けしたことが記載されている。SiFA部分の高い親油性を相殺するために様々な親水性構造の修飾を導入して、logD値の低下をもたらした。SiFA-Asn(AcNH-β-Glc)-PESIN、SiFA-Ser(β-Lac)-PESIN、SiFA-Cya-PESIN、SiFA-LysMe3-PESIN、SiFA-γ-カルボキシ-D-Glu-PESIN、SiFA-Cya2-PESIN、SiFA-LysMe3-γ-カルボキシ-D-Glu-PESIN、SiFA-(γ-カルボキシ-D-Glu)2-PESIN、SiFA-RGD、SiFA-γ-カルボキシ-D-Glu-RGD、SiFA-(γ-カルボキシ-D-Glu)2-RGD、SiFA-LysMe3-γ-カルボキシ-D-Glu-RGD。親油性を低下させる目的ですでに改善されて誘導体化された、これらペプチドのいずれも、logD値を+2と-1.22の間の範囲に示した。
【0014】
Niedermoser S. et al.(J Nucl Med. 2015 Jul;56(7):1100-5)では、新たに開発された[18F]SiFA-及び[18F]SiFAlin-修飾化TATE誘導体を、ソマトスタチン受容体を担う腫瘍の高品質イメージングについて、現行の臨床の規範である68Ga-DOTATATEと比較した。この目的のために、[18F]SiFA-TATEと2種のきわめて複雑な類似体、[18F]SiFA-Glc-PEG1-TATEと[18F]SiFAlin-Glc-Asp2-PEG1-TATEを開発した。これらの薬剤のいずれも、-1.5未満のlogDを示さなかった。
【0015】
US2017/0246327A1は、PSMAの18F-タグ付き阻害剤に関する。
S. Litau et al.(Bioconjug. Chem., 2015 Dec 16;26(12):2350-59)は、SSTR陽性腫瘍のPETイメージング用のSiFAベースTATE誘導体を開示する。
【0016】
L.O. Dialer et al.,(J. Med. Chem., 2013 Oct. 10; 56(19): 7552-63)は、ペプチドの18F-標識化用のケイ素含有ビルディングブロック(building blocks)の開発に向けての研究の結果を開示する。
【0017】
上記に引用した先行技術について考慮すると、本発明の技術的課題は、改善された放射性診断薬及び放射性治療薬を提供することである。
諸定義
「アミノ酸」は、アミノ基とカルボン酸基を同じ分子中に担っている化合物を意味する。特定の文脈において他に示さなければ、それには、タンパク質を構成する(proteinogenic)アミノ酸とタンパク質を構成しない(non-proteinogenic)アミノ酸が含まれる。いずれの場合でも、選好されるのは、α-アミノ酸である。また、好ましいのは、D-アミノ酸である。
【0018】
本明細書において、「天然アミノ酸」という用語と「タンパク質を構成するアミノ酸」という用語は、同等に使用される。好ましくは、前記タンパク質を構成するアミノ酸は、Ala、Asn、Asp、Arg、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、及びValである。場合によっては、セレノシステインが使用され得る。タンパク質を構成するアミノ酸はL型であるが、本発明では、好ましくは、対応するD型が利用されると理解される。
【0019】
当業者によって理解されるように、医薬的に許容される塩という用語は、患者への投与用の医薬組成物における使用に適している塩を意味する。それらは、例えば、アミノ基のような、プロトン化を受け易い孤立電子対を担っている原子の無機酸又は有機酸でのプロトン化によって、又は当該技術分野でよく知られているような生理学的に許容されるカチオンとカルボン酸基の塩として生成され得る。例示の塩基付加塩は、例えば、ナトリウム塩又はカリウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウム塩又はマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、プロカイン塩、メグルミン塩、ジエタノールアミン塩、又はエチレンジアミン塩のような脂肪族アミン塩;N,N-ジベンジルエチレンジアミン塩、べネタミン塩のようなアラルキルアミン塩;ピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、又はイソキノリン塩のような複素環式芳香族アミン塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、又はテトラブチルアンモニウム塩のような四級アンモニウム塩;並びに、アルギニン塩又はリジン塩のような塩基性アミノ酸塩を含む。例示の酸付加塩は、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸の塩(例えば、リン酸塩、リン酸水素塩、又はリン酸二水素塩のような)、炭酸塩、炭酸水素塩、又は過塩素酸塩のような鉱酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ペンタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプタン酸塩、オクタン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ウンデカン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、ニコチン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、又はアスコルビン酸塩のような有機酸塩;メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩(トシラート)、2-ナフタレンスルホン酸塩、3-フェニルスルホン酸塩、又はカンファースルホン酸塩のようなスルホン酸塩;並びに、アスパラギン酸塩又はグルタミン酸塩のような酸性アミノ酸塩を含む。
【0020】
医薬的に許容される塩のさらなる例には、限定されないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、エデト酸カルシウム、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、カンシル酸塩(camsylate)、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、クラブラン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、二塩酸塩、ドデシル硫酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩(edisylate)、エストレート、エシレート、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプテート、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘキシルリゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ヒドロキシナフト酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩(mesylate)、メタンスルホン酸塩、メチル硫酸塩、ムコ酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ナプシレート、ニコチン酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、亜酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩(tosylate)、トリエチオジド(triethiodide)、ウンデカン酸塩、吉草酸塩、等が含まれる(例えば, S. M. Berge et al., 「Phamaceutical Salts(医薬品の塩類)」, J. Pharm. Sci., 66, pp. 1-19 (1977) を参照のこと)。
【0021】
本明細書を通して、「化合物」という用語には、他に断らなければ、溶媒和物、多形、プロドラッグ、共薬(codrugs)、共結晶、互変異性体、ラセミ化合物、エナンチオマー、又はジアステレオマー、又はこれらの混合物が含まれると理解される。
【0022】
本発明の化合物が結晶形で提供される場合、その構造は、溶媒分子を含有することができる。溶媒は、典型的には、医薬的に許容される溶媒であって、中でも、水(水和物)又は有機溶媒が含まれる。可能な溶媒和物の例には、エタノール和物とイソプロパノール和物が含まれる。
【0023】
「共薬(codrug)」という用語は、共有化学結合を介して結合した2個以上の治療用化合物を意味する。例えば、N. Das et al., European Journal of Pharmaceutical Sciences, 41, 2010, 571-588 には、詳しい定義を見出すことができる。
【0024】
「共結晶」という用語は、すべての成分がその純粋形態にあるときに周囲条件下で固体である、多成分結晶を意味する。これらの成分は、標的分子又はイオン(即ち、本発明の化合物)と1個以上の中性の分子共結晶形成因子(formers)の化学量論比又は非化学量論比として共存する。例えば、Ning Shan et al., Drug Discovery Today, 13(9/10), 2008, 440-446 と D. J. Good et al., Cryst. Growth Des., 9(5), 2009, 2252-2264 に詳しい考察を見出すことができる。
【0025】
さほど好ましくはないが、本発明の化合物は、プロドラッグ、即ち、生体内で(in vivo)活性代謝産物へ代謝される化合物の形態でも提供することができる。好適なプロドラッグは、例えば、エステル類である。好適な基の具体例については、中でも、US2007/0072831のパラグラフ[0082]~[0118]に、「プロドラッグと保護基」という見出しで示されている。
【0026】
本発明の化合物がpH依存性の荷電状態を明示するということから、すべての可能な荷電状態が含まれると理解される。この点で好ましいpH範囲は、0~14である。
本発明による化合物が正味荷電を担うということから、該化合物は、電気的中性型で提供されると理解される。このことは、1個以上の対イオンによって達成されて、好ましい対イオンは、本明細書の上記の「塩」という用語に関連して定義されている。
【0027】
この「諸定義」セクションにおいて示した好ましい定義は、他に断らなければ、下記に記載される態様のすべてに適用される。
発明の概要
本発明は、式(1):
【0028】
【0029】
[式中:
RLは、前立腺特異的膜抗原(PSMA)へ結合することが可能であるリガンド部分であり;
RSiFAは、
(i)ケイ素原子とフッ素原子を含むSiFA部分(ここで該フッ素原子は、共有結合を介して該ケイ素原子へ直接連結して、当該SiFA部分は、19Fの18Fによる同位体交換によって18Fで標識され得るか又は18Fで標識される);
(ii)ケイ素原子とヒドロキシ基を含むSiFA部分(ここで該ヒドロキシ基は、共有結合を介して該ケイ素原子へ直接連結して、当該SiFA部分は、OHの18Fによる求核置換によって18Fで標識され得る);及び
(iii)ケイ素原子と水素原子を含むSiFA部分(ここで該水素原子は、共有結合を介してケイ素原子へ直接連結して、当該SiFA部分は、Hの18Fによる求核置換によって18Fで標識され得る);
より選択されるフッ化ケイ素アクセプタ(SiFA)部分であり;
Lは、連結部分であり;
RHは、
(i)2~10個の親水性アミノ酸ユニットAH(このそれぞれは、独立して、親水性側鎖を担う天然又は非天然アミノ酸に由来する)と、親水性側鎖を欠く天然又は非天然アミノ酸に由来する、有ってもよい1個のアミノ酸ユニットANの直鎖又は分岐鎖配列(ここでこの親水性アミノ酸ユニットと、存在するならば、ユニットANは、直接的な共有結合を介するか又はカップリングユニットを介して互いに結合する)を含み、そして場合によっては、さらに
(ii)1個以上の親水性残基RT(このそれぞれは、アミノ酸ユニットのアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖へ結合し得る)を含む、親水性部分である]によって表されるリガンド-SiFAコンジュゲート化合物、
を含む親水性部分である、
によって表されるリガンドSiFaコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩を提供する。
【0030】
本発明のさらなる側面は、本明細書において定義されるような1個以上のコンジュゲート化合物又は塩を含んでなるか又はそれからなる、医薬組成物又は診断組成物に関する。なおさらなる側面によれば、本発明は、(a)前立腺癌が含まれる癌;又は(b)血管新生/血管形成を診断する、治療する、又は診断して治療する方法において使用するための、本明細書に定義されるようなコンジュゲート化合物又は塩を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】「HSA結合の文献値の参照物質対数K」対「Chiralpak HSAカラムでの保持時間の各対数」の例示シグモイドプロット。
【
図2】LNCaP担腫瘍CB17-SCIDマウスにおける注射後1時間での[
18F]01aの生体内分布プロフィール。データは、平均(%)ID/g±SD(n=4)として表す。
【
図3】LNCaP担腫瘍CB17-SCIDマウスにおける注射後1時間での[
18F]01dの生体内分布プロフィール。データは、平均(%)ID/g±SD(n=4)として表す。
【
図4】LNCaP担腫瘍CB17-SCIDマウスにおける注射後1時間での[
18F]01aの代表的なPET/CT-画像(体軸断面)(15分の捕捉時間)と破線によって示した選択臓器のROI。
【
図5】LNCaP担腫瘍CB17-SCIDマウスにおける注射後1時間での[
18F]02cの生体内分布プロフィール。データは、平均(%)ID/g±SD(n=4)として表す。
【
図6】LNCaP担腫瘍CB17-SCIDマウスにおける注射後1時間での[
18F]03fの生体内分布プロフィール。データは、平均(%)ID/g±SD(n=4)として表す。
【
図7】LNCaP担腫瘍CB17-SCIDマウスにおける注射後1時間での[
18F]06の生体内分布プロフィール。データは、平均(%)ID/g±SD(n=4)として表す。
【
図8】LNCaP担腫瘍CB17-SCIDマウスにおける注射後1時間での[
18F]07の生体内分布プロフィール。データは、平均(%)ID/g±SD(n=5)として表す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明によって提供されるリガンド-SiFAコンジュゲート化合物(本明細書では、本発明による化合物又はコンジュゲート化合物として、又は「本明細書に定義される」化合物又はコンジュゲート化合物として言及され得る)は、単一の化合物の中で、該化合物が前立腺特異的膜抗原(PSMA)へ結合することを可能にするリガンド部分と、該化合物がフッ素同位体18Fで標識されて、例えば、患者の身体中のPSMAへ結合した後で検出されることを可能にするフッ化ケイ素アクセプタ(SiFA)部分を組み合わせる。異なる機能を達成する部分の組合せ(又はコンジュゲーション)に鑑みて、本発明による化合物は、コンジュゲート又はコンジュゲート化合物とみなすことができる。
【0033】
リガンド部分とSiFA部分に加えて、本発明による化合物は、親水性の薬物動態修飾因子の機能を達成する親水性部分RH、即ち、本発明による化合物の薬物動態特性に有益な影響を及ぼす部分を含む。これについて、下記により詳しく説明する。
【0034】
親水性部分:RH
親水性部分のRHは、2~10個の親水性アミノ酸ユニットAH(このそれぞれは、独立して、親水性側鎖を担うアミノ酸に由来する)と、親水性側鎖を欠くアミノ酸に由来する、有ってもよい1個のアミノ酸ユニットANを含んでなる直鎖又は分岐鎖の配列(本明細書では、アミノ酸ユニットの配列とも呼ばれる)を含む。このアミノ酸ユニットに加えて、この直鎖又は分岐鎖の配列は、1個以上のカップリングユニットを含み得る。
【0035】
親水性側鎖を担うアミノ酸(親水性アミノ酸と言及される場合もある)は、天然のアミノ酸であり得るが、非天然の(例、合成の)アミノ酸でもよい。理解されるように、親水性側鎖を担うアミノ酸は、アミノ基:-NH2、カルボン酸基:-COOH(又はその塩)、及びこのアミノ基とカルボン酸基に加えて、1個以上の親水性官能基を含む親水性側鎖を含有し、この親水性側鎖は、親水性官能基からなるという可能性が含まれる。好ましくは、親水性側鎖は、アミノ基:-NH2又はそのN-メチル化誘導体、カルボン酸基:-COOH、ヒドロキシ基:-OH、グアニジノ基:-NH-C(NH)-NH2又はそのN-メチル化誘導体、アミド基:-C(O)-NH2又は-NH-C(O)-OH又はそのN-メチル化誘導体、及び尿素基:-NH-C(O)-NH2又はそのN-メチル化誘導体より、並びにこれら基の同配体より選択される少なくとも1つの親水性官能基を含むか又はそれからなる。より好ましくは、親水性側鎖は、アミノ基:-NH2、カルボン酸基:-COOH、ヒドロキシ基、グアニジノ基:-NH-C(NH)-NH2、及び尿素基:-NH-C(O)-NH2より、並びにこれら基の同配体より選択される少なくとも1つの親水性官能基を含むか又はそれからなる。なおより好ましくは、この親水性アミノ酸ユニットの少なくとも1つは、カルボン酸基を親水性官能基として含むか又はそれからなる親水性側鎖のあるアミノ酸に由来する。
【0036】
親水性側鎖を担うアミノ酸において、この親水性側鎖は、一般に、親水性アミノ酸のアミノ基とカルボン酸基の間に拡がる原子の鎖へ付く基であって、それ故に側鎖と呼ばれる。このことは、アミノ基とカルボン酸基の間に拡がる原子の鎖(これは、主鎖とも呼ばれる)に比較した、この側鎖の相対的な長さにいかなる制限も課すものではないと理解されたい。例えば、本発明の文脈における使用にとって好ましい、親水性側鎖を担うアミノ酸は、好適にも、構造:HOOC-(CH2)h1-NH2(ここでh1は、1、2、3、4、5、及び6より選択される整数であって、このメチレン基:-CH2-の1つにおいて、水素原子の1つが親水性側鎖に置き換わる)を有し得る。本発明の文脈における使用にとってより好ましい、親水性側鎖を担うこのようなアミノ酸の例は、HOOC-CH2-NH2という構造を有し、ここではこのメチレン基:-CH2中の水素原子の1つが親水性側鎖に置き換わる。
【0037】
親水性側鎖は、好ましくは、-(CH2)c-COOH基、-(CH2)c-NH2基又はそのN-メチル化誘導体、-(CH2)c-CH(NH2)-COOH基、-(CH2)c-NH-C(O)-NH2基又はそのN-メチル化誘導体、及び-(CH2)c-NH-C(NH)-NH2基又はそのN-メチル化誘導体(ここでcは、0~6、好ましくは1~6の整数である)より選択される。より好ましくは、親水性側鎖は、-(CH2)c-COOH基、-(CH2)c-NH2基、-(CH2)c-CH(NH2)-COOH基、-(CH2)c-NH-C(O)-NH2基、及び-(CH2)c-NH-C(NH)-NH2基(ここでcは、0~6、好ましくは1~6の整数である)より選択される。なおより好ましくは、親水性アミノ酸ユニットの少なくとも1つは、-(CH2)c-COOH基(ここでcは、0~6、好ましくは1~6の整数である)を親水性側鎖として担うアミノ酸に由来する。
【0038】
好ましいのは、RH中の親水性アミノ酸ユニットが、それぞれ独立して、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、2,4-ジアミノブタン酸(Dab)、オルニチン(Orn)、リジン(Lys)、4-アミノピペリジン-4-カルボン酸(Apc4)、3-アミノピペリジン-3-カルボン酸(Apc3)、2-アミノピペリジン-2-カルボン酸(Apc2)、アスパラギン酸(Asp)、ホモグルタミン酸(Hgl)、グルタミン酸(Glu)、2,3-ジアミノコハク酸、ジアミノペンタン二酸、ジアミノヘキサン二酸、ジアミノヘプタン二酸、ジアミノオクタン二酸、スレオニン(Thr)、及びシトルリン(Cit)より選択されるアミノ酸に由来することである。これらのアミノ酸は、D-配置にあることがさらに好ましい。より好ましくは、RH中の親水性アミノ酸ユニットは、それぞれ独立して、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、オルニチン(Orn)、リジン(Lys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、及びシトルリン(Cit)より選択されるアミノ酸に由来する。この文脈においても、これらのアミノ酸は、好ましくは、D-配置にある。
【0039】
RHに含まれる親水性アミノ酸ユニットのそれぞれは、アミノ酸ユニットの直鎖又は分岐鎖配列の中へ該アミノ酸を組み込むために該アミノ酸によって提供される官能基を使用する1個以上の結合の形成によって親水性側鎖を担うアミノ酸に由来する。
【0040】
従って、形式的な観点からすると、親水性アミノ酸ユニットは、アミノ酸より、自由原子価が得られるように官能基を変換することによって入手される。理解されるように、この自由原子価は、本発明による化合物中の別の基との結合を提供するために使用される。例えば、主鎖又は側鎖の-COOHを-C(O)-へ変換して、主鎖又は側鎖の-NH2を-NH-へ変換する。親水性アミノ酸ユニットがRHの直鎖又は分岐鎖配列中の分岐点であるならば、それに応じて3つの官能基が変換される。親水性アミノ酸ユニットがRHの直鎖又は分岐鎖配列の直鎖セグメント中に位置していれば、2つの官能基が自由原子価を提供する。親水性アミノ酸ユニットがRHの直鎖又は分岐鎖配列中の末端ユニットであれば、1つの官能基が自由原子価を提供する。
【0041】
理解されるように、結合が隣接ユニットと(又はさらに本発明による化合物に含まれる連結部分Lと、又は有ってもよい親水性残基RTと)形成されることを可能にする、親水性側鎖を担うアミノ酸によって提供される官能基は、アミノ基、カルボン酸基、及び親水性側鎖に含まれる親水性官能基である。この点に関して、信頼を置くことができるのは、合成化学全般において、そして特にタンパク質合成において確立された、アミド結合(-NH-C(O)-)の形成又は尿素結合(-NH-C(O)-NH-)の形成のような、カップリング反応である。このように、直鎖又は分岐鎖配列中の親水性アミノ酸ユニットは、隣接ユニットとともに少なくとも1つの結合(これは、別の隣接アミノ酸ユニットとの直結合であっても、隣接カップリングユニットとの結合であってもよい)を形成して、1又は2のさらなる結合(これは、独立して、隣接ユニットとの結合であっても、本発明による化合物に含まれる連結部分Lとの結合であっても、有ってもよい親水性残基RTとの結合であってもよい)を形成し得る。アミノ酸の親水性側鎖に含まれる官能基を使用して結合が形成される場合、それぞれの親水性アミノ酸ユニットは、末端アミノ基又は末端カルボン酸基を含んでなる親水性側鎖を担うアミノ酸に由来することが好ましい場合がある。
【0042】
場合によっては、アミノ酸の直鎖又は分岐鎖配列は、親水性側鎖を欠くアミノ酸に由来する、1個のアミノ酸ユニットANを含む。理解されるように、RHに含まれてもよいアミノ酸ユニットANは、アミノ酸ユニットの直鎖又は分岐鎖配列の中へ該アミノ酸を組み込むために該アミノ酸によって提供される官能基を使用する1個以上の結合の形成によって、親水性側鎖を欠くアミノ酸に由来する。親水性側鎖を欠くアミノ酸(非親水性アミノ酸と呼ばれる場合もある)は、天然のアミノ酸であっても、非天然の(例、合成の)アミノ酸であってもよい。親水性側鎖を欠くアミノ酸は、該アミノ酸のアミノ基とカルボン酸基の間に拡がる原子の鎖へ付くどの側鎖も欠いてよく、また親水性側鎖でなければ、そのような側鎖を含有してもよい。親水性側鎖を欠くアミノ酸に由来するアミノ酸ユニットの例には、グリシン(Gly)に由来するアミノ酸ユニット、フェニルアラニン(Phe)に由来するユニット、β-アラニン(β-Ala)に由来するユニット、又はアミノヘキサン酸(Ahx)に由来するユニットといった、該アミノ酸のアミノ基とカルボン酸基の間に拡がる原子の鎖へ付く側鎖を担わないアミノ酸、又はヒドロカービル基(例、アルキル基又はアラルキル基)を側鎖として担うアミノ酸に由来するユニットが含まれる。
【0043】
親水性アミノ酸ユニットAHが、序論において説明したようなSiFA部分によって引き起こされる疎水性問題を解決するための手段であるのに対し、非親水性ユニットANは、本発明の化合物の中へ前記ユニットAHによって導入される親水性の度合いを補正するか又は微調整する手段である。そのような補正又は微調整は、好ましくは、(i)好ましいlogD7.4値、及び/又は(ii)好ましい薬物動態を確実にするのに役立つ。
【0044】
さらに説明すると、本発明の化合物は、好ましくは、logD7.4値を約-1.5と-4.0の間、好ましくは-2.0と-3.5の間、より好ましくは-2.5と-3.5の間に有する。logD7.4が上記の範囲にある化合物は、以下に説明される薬物動態を本質的に有する。
【0045】
外科的介入(さらに下記を参照のこと)の間のイメージングという好ましい使用の観点からすれば、膀胱又は尿道における化合物の早過ぎる発生(premature occurrence)は、そのことが特に前立腺中の新生物組織だけでなく骨盤領域中のリンパ節転移の検出に干渉する可能性があるので、望ましくない。早過ぎる発生とは、患者における放射性医薬品の投与後約0~約240分、好ましくは約40~約120分、そしてより好ましくは約60~約90分で有意量の化合物が発生することである。そのような発生は、患者の陽電子放出断層撮影(PET)スキャンを獲得するのに通常必要とされる時間枠内でそのことが生じ得るという意味で、早過ぎるのである。従って、好ましいのは、これら好ましい時間範囲内では有意量の標識化合物が尿道中に発生しないことである。有意量とは、前立腺中の新生物組織と骨盤領域中の転移の信頼し得る検出に干渉する量である。
【0046】
より長い時間のPETイメージング手順が想定される場合は、本発明の化合物の全親水性のさらなる微調整又は異なる微調整を、さらに手間をかけずに、そして上記の開示に基づいて、実施することができる。
【0047】
従って、本発明はまた、さらなる側面において、複数の化合物を提供し、該化合物は、同じ部分:RL、RSiFA、及びLを共有するが、それらのRHに関して異なる。「複数」は、好ましくは、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の化合物を意味する。各化合物は、イメージングの間の新生物組織の妨害されない検出と尿道を介した後続のクリアランスの間に均衡をうまくとるが、ここでは異なる度合いの親水性により、イメージング手順の明確な時間枠が可能になる。
【0048】
上記に定義したように、親水性部分RHは、2~10個の親水性アミノ酸ユニットの直鎖又は分岐鎖配列と、有ってもよい1個のアミノ酸ユニットANを含む。
本発明の文脈では、RHについて、その配列が直鎖配列であることが概して好ましい。
【0049】
本発明の文脈では、RHについて、RHとアミノ酸ユニットの配列が、合計3~10個、より好ましくは3~5個、そしてなおより好ましくは3個の親水性アミノ酸ユニットを含むことが概して好ましい。
【0050】
別の好ましい態様において、RHは、親水性側鎖を欠くアミノ酸由来の1個のアミノ酸ユニットANと2個の親水性アミノ酸ユニットを含む。
RHに含まれる配列において、親水性アミノ酸ユニットと、存在するならば、ユニットANは、直接共有結合を介するか又はカップリングユニットを介して互いに結合する。さらに、カップリングユニットは、連結部分LとRHに含まれる配列の第一アミノ酸ユニットの間にも存在し得る。
【0051】
上記に注記したように、親水性アミノ酸ユニットは、隣接ユニット(即ち、隣接アミノ酸ユニット又は隣接カップリングユニット)へ(i)親水性アミノ酸ユニットに由来する該アミノ酸のアミノ基を使用して形成される結合によって、(ii)親水性アミノ酸ユニットに由来する該アミノ酸のカルボン酸基を介して形成される結合によって、及び/又は(iii)親水性アミノ酸ユニットに由来する該アミノ酸の親水性側鎖に含まれる親水性官能基を介して形成される結合によって、結合し得る。言い換えると、親水性アミノ酸ユニットのいずれかと隣接のアミノ酸ユニット又はカップリングユニットの間の連結は、親水性側鎖の官能基を介して形成され得る。このような結合を提供するのに適した、選択肢(iii)における親水性官能基の例には、アミノ基又はカルボン酸基が含まれる。上記にまた注記したように、結合(i)、(ii)及び(iii)に好ましい例は、アミド結合と尿素結合である。従って、「イソペプチド結合」と一般的に明記されるものが、隣接するアミノ酸ユニットを連結する結合として含まれるものと想定される。
【0052】
理解されるように、2個のアミノ酸ユニットが直接共有結合を介して互いに結合する場合、第一アミノ酸の1つの官能基が第二アミノ酸の適合可能な官能基と反応する。好ましくは、これらの官能基がアミノ基とカルボン酸基であるので、2個のアミノ酸ユニット間の直結合は、アミド結合によって提供される。
【0053】
有機合成化学の技術分野の当業者には、アミノ酸ユニットを結びつけるのに使用し得る好適なカップリングユニットが知られている。本発明の文脈では、特に好適なカップリングユニットがカップリングユニット:-C(O)-であって、このカップリングユニットは、RHに含まれる2個の隣接アミノ酸ユニットのアミノ基とともに、又は連結部分Lのアミノ基とRHに含まれるアミノ酸ユニットのアミノ基とともに尿素結合(-NH-C(O)-NH-)を形成する。実のところ、RH基は、RHに含まれる2個の隣接アミノ酸ユニットのアミノ基とともに、又は連結部分Lのアミノ基とRHに含まれるアミノ酸ユニットのアミノ基とともに尿素結合:-NH-C(O)-NH-を形成する少なくとも1つのカップリングユニット:-C(O)-を含むことが好ましい。
【0054】
さらに、本発明によるコンジュゲート化合物の親水性部分は、1個以上の親水性残基RTを含んでもよく、このそれぞれは、アミノ酸ユニットのアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖中の官能基(即ち、親水性官能基)へ結合し得る。従って、当業者によって理解されるように、親水性残基RTを含んでなるRH部分において、アミノ酸ユニットのアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖中の官能基は、RTと反応して結合(例、アミド結合又はエステル結合)を形成することになる。さらに理解されるように、この親水性残基は、アミノ酸ユニットのアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖中の官能基へ結合しても、アミノ酸ユニットの配列中のフリー基として、即ち、隣接するアミノ酸ユニットの間の結合にも、アミノ酸ユニットの連結部分Lとの結合にも、アミノ酸ユニットとカップリングユニットの間の結合にも関与しないものとして存続するものである。
【0055】
単独でも組合せでも存在し得る、このような親水性残基の好ましい例は、キレーター基、錯化金属又は放射性金属とのキレート基、炭水化物残基、ポリエチレングリコール残基、還元性アミノ酸(即ち、カルボン酸がアルコールへ還元されたアミノ酸の残基)、及びカルボン酸同配体(即ち、カルボン酸ではないが、カルボン酸基と等比体積(isosteric)である構造を有する基)付きのアミノ酸類似体である。
【0056】
しかしながら、本発明によるコンジュゲート化合物は、放射性医薬品又はその前駆体として、特に診断目的のために、キレーター基やキレート基の非存在下でも(これらの基が存在する必要が無いように)きわめて好適であることが注目される。
【0057】
好ましくは、その親水性部分は、1個以下の親水性残基RTを含んで、有ってもよい親水性残基RTは、非存在であることがより好ましい。
親水性部分RHの好ましい構造について、以下に考察する。他に断らなければ、上記に示す説明は、これらの好ましい構造に同様に適用されると理解されたい。
【0058】
RH部分の好ましい構造は、式(2):
【0059】
【0060】
[式中:
R1Hは、2~10個の親水性アミノ酸ユニット(このそれぞれは、独立して、親水性側鎖を担う天然又は非天然アミノ酸に由来する)と、有ってもよい、親水性側鎖を欠く天然又は非天然アミノ酸に由来する1個のアミノ酸ユニットANの直鎖又は分岐鎖、好ましくは直鎖の配列を表し、
ここで親水性アミノ酸ユニットと、存在するならば、ユニットANは、直接共有結合を介するか又はカップリングユニットを介して互いに結合し;
RTは、配列R1H中のアミノ酸ユニットのアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖の官能基へ結合し得る親水性残基を表し;そして
a1は、0又は1、好ましくは0である]によって表される。
【0061】
上記に注記したように、上記に提供される、親水性アミノ酸ユニットについて、親水性側鎖を担うアミノ酸について、アミノ酸ユニットANについて、そしてRTについての、例えば、構造、数、及び連結に関する諸定義(及び、好ましい定義)は、RHのこの好ましい構造にも適用され続ける。
【0062】
式(2)中のa1が1であれば、RTは、配列R1H中の末端アミノ酸ユニットへ結合することが好ましくて、RTは、直鎖配列であって、RTは、末端アミノ酸ユニットへ結合することがより好ましい。
【0063】
-RH部分は、式(3A)又は式(3B)、あるいは式(3C)又は式(3D):
【0064】
【0065】
[式中:
b1は、1~9、好ましくは2~9、そしてより好ましくは2~4の整数であり;
A1Hは、それぞれの出現について独立して、親水性側鎖を担う(天然又は非天然)アミノ酸に由来する親水性アミノ酸ユニットであり;
A2HとA3Hは、それぞれ独立して、親水性側鎖を担う(天然又は非天然)アミノ酸に由来する親水性アミノ酸ユニットであり;
X1Hは、それぞれの出現について独立して、結合又はカップリングユニットであり;
X2HとX3Hは、それぞれ独立して、結合又はカップリングユニットであり;
そして
RTは、アミノ酸ユニットA3Hのアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖の官能基へ結合し得る親水性残基を表す]によって、
【0066】
【0067】
[式中:
c1は、1~9の整数;そして好ましくは1~4の整数であり;
A1Nは、親水性側鎖を欠くアミノ酸に由来するアミノ酸ユニットであり;
A1Hは、それぞれの出現について独立して、親水性側鎖を担う(天然又は非天然)アミノ酸に由来する親水性アミノ酸ユニットであり;
A2HとA3Hは、それぞれ独立して、親水性側鎖を担う(天然又は非天然)アミノ酸に由来する親水性アミノ酸ユニットであり;
X1Hは、それぞれの出現について独立して、結合又はカップリングユニットであり;
X2HとX3Hは、それぞれ独立して、結合又はカップリングユニットであり;
そして
RTは、アミノ酸ユニットA3Hのアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖の官能基へ結合し得る親水性残基を表す]によって表される構造を有することがより好ましい。
【0068】
この文脈においても、上記に提供される、親水性アミノ酸ユニットについて、親水性側鎖を担うアミノ酸について、親水性側鎖を欠くアミノ酸に由来するアミノ酸ユニットについて、カップリングユニットについて、そしてRTについての、例えば、構造、数、及び連結に関する諸定義(及び、好ましい定義)が適用され続ける。
【0069】
RH部分は、式(3E)又は式(3F):
【0070】
【0071】
[式中:
A4H、A5H、及びA6Hは、それぞれ独立して、親水性側鎖を担う(天然又は非天然)アミノ酸に由来する親水性アミノ酸ユニットであり;
X4HとX5Hは、それぞれ独立して、直結合又はカップリングユニットであり、そして場合によっては、親水性残基RTは、アミノ酸ユニットA6Hのアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖の官能基へ結合し得て;そして
A1Nは、親水性側鎖を欠くアミノ酸に由来するアミノ酸ユニットである]によって表される構造を有することがなおより好ましい。
【0072】
この文脈においても、上記に提供される、親水性アミノ酸ユニットについて、親水性側鎖を担うアミノ酸について、親水性側鎖を欠くアミノ酸に由来するアミノ酸ユニットについて、親水性残基について、そしてカップリングユニットについての、例えば、構造と連結に関する諸定義(及び、好ましい定義)が適用され続ける。
【0073】
従って、1例として、好ましい式(3E)に含まれる-RH基において、A4H、A5H、及びA6Hのそれぞれは、独立して、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、オルニチン(Orn)、リジン(Lys)、スレオニン(Thr)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、及びシトルリン(Cit)より選択されるアミノ酸に由来し得て、X4HとX5Hのそれぞれは、独立して、結合又はカップリングユニット:-C(O)-であり、このカップリングユニットは、2個の隣接アミノ酸ユニットのアミノ基と尿素結合を形成する。好ましい式(3E)に含まれる-RH基の1つのより好ましい例において、アミノ酸ユニットA4Hは、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、オルニチン(Orn)、リジン(Lys)、スレオニン(Thr)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、及びシトルリン(Cit)より選択されるアミノ酸に由来し、A5HとA6Hは、グルタミン酸に由来するアミノ酸ユニットであり、X4Hは、結合であって、X5Hは、結合とカップリングユニット:-C(O)-より選択され、このカップリングユニットは、2個の隣接アミノ酸ユニットのアミノ基と尿素結合を形成する。好ましい式(3E)に含まれる-RH基の別のより好ましい例において、アミノ酸ユニットA4Hは、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、オルニチン(Orn)、リジン(Lys)、スレオニン(Thr)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、及びシトルリン(Cit)より選択されるアミノ酸に由来し、A5HとA6Hは、シトルリンに由来するアミノ酸ユニットであって、X4HとX5Hは、それぞれ結合である。
【0074】
好ましい式(3F)に含まれる例示の-RH基において、A1Nは、グリシン(Gly)、フェニルアラニン(Phe)、β-アラニン(β-Ala)、及びアミノヘキサン酸(Ahx)に由来するアミノ酸ユニットであり、A5HとA6Hは、独立して、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、オルニチン(Orn)、リジン(Lys)、スレオニン(Thr)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、及びシトルリン(Cit)より選択されるアミノ酸に由来して、X4HとX5Hのそれぞれは、独立して、結合又はカップリングユニット:-C(O)-であり、このカップリングユニットは、2個の隣接アミノ酸ユニットのアミノ基と尿素結合を形成する。好ましい式(3F)に含まれる-RH基の1つのより好ましい例において、アミノ酸ユニットA1Nは、グリシン(Gly)、フェニルアラニン(Phe)、β-アラニン(β-Ala)、及びアミノヘキサン酸(Ahx)に由来し、A5HとA6Hは、グルタミン酸に由来するアミノ酸ユニットであり、X4Hは、結合であって、X5Hは、結合とカップリングユニット:-C(O)-より選択され、このカップリングユニットは、2個の隣接アミノ酸ユニットのアミノ基と尿素結合を形成する。
【0075】
代わりの好ましい態様において、RH部分は、式(3G):
【0076】
【0077】
[式中:
A7H、A8H、及びA9Hは、それぞれ独立して、親水性側鎖を担う(天然又は非天然)アミノ酸に由来する親水性アミノ酸ユニットであり;そして
X8HとX9Hは、それぞれ独立して、直結合又はカップリングユニットであり;
そして場合によっては、親水性残基RTは、アミノ酸ユニットA8H及びA9Hの一方又は両方のアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖の官能基へ結合し得る]によって表される構造を有する。
【0078】
この文脈においても、上記に提供される、親水性アミノ酸ユニットについて、親水性側鎖を担うアミノ酸について、親水性残基について、そしてカップリングユニットについての、例えば、構造と連結に関する諸定義(及び、好ましい定義)が適用され続ける。
【0079】
上記の好ましい(3A)基~(3G)基の中で、特に好ましいのは、(3E)と(3F)である。
RH中に存在して、式(1)、式(2)の特に(3A)~(3G)における構造の一部を形成し得る親水性アミノ酸ユニットの好ましい構造について、以下に考察する。
【0080】
例えば、式(3A)、式(3B)、式(3C)及び式(3D)中の親水性アミノ酸ユニットA1Hは、それぞれの出現について独立して、そして式(3B)及び式(3D)中の親水性アミノ酸ユニットA3Hは、好ましくは、式(4A)又は式(4B):
【0081】
【0082】
によって表される。
式(3A)と式(3C)中の親水性アミノ酸ユニットA2Hは、好ましくは、式(4C)又は式(4D):
【0083】
【0084】
によって表される構造を有する。
式(4A)~式(4D)では、それぞれのアミノ酸ユニットについて独立して、
aは、0~6の整数であり、bは、0~6の整数であり(但し、a+bの合計は、6以下である);そしてR2Hは、親水性置換基である。
【0085】
式(3E)と式(3F)において、親水性アミノ酸ユニットのA4HとA5Hは、好ましくは、式(4A)又は式(4B):
【0086】
【0087】
によって表される構造を有して、親水性アミノ酸ユニットA6Hは、好ましくは、式(4C)又は式(4D):
【0088】
【0089】
[式中、それぞれのアミノ酸ユニットについて独立して、
aは、0~6の整数であり、bは、0~6の整数であり(但し、a+bの合計は、6以下である);そしてR2Hは、親水性置換基である]によって表される構造を有する。
【0090】
式(3C)、式(3D)、及び式(3F)において、親水性側鎖を欠くアミノ酸に由来するユニットA1Nは、好ましくは、式(4E)又は式(4F):
【0091】
【0092】
によって表される構造を有する。
式(4E)と式(4F)では、それぞれのアミノ酸ユニットについて独立して、
aは、0~6の整数であり、bは、0~6の整数であり(但し、a+bの合計は、6以下である);そしてR2Nは、H又は非親水性置換基である。
【0093】
最後に、親水性部分RHのさらに好ましい構造として、式(5A)、式(5B)、式(5C)、又は式(5D):
【0094】
【0095】
[式中:
R3H~R5Hは、独立して、親水性置換基であり;
dは、0~3の整数であり、eは、0~3の整数であり(但し、d+eの合計は、3以下である);
fは、0~3の整数であり、gは、0~3整数であり(但し、f+gの合計は、3以下である);
hは、0~3の整数であり、iは、0~3の整数である(但し、h+iの合計は、3以下である)];
【0096】
【0097】
[式中:
R6H~R8Hは、独立して、親水性置換基であり;
jは、0~3の整数であり、kは、0~3の整数であり(但し、j+kの合計は、3以下である);
mは、0~3の整数であり、nは、0~3の整数であり(但し、m+nの合計は、3以下である);
pは、0~3の整数であり、qは、0~3の整数である(但し、p+qの合計は、3以下である)];
【0098】
【0099】
[式中:
R3Nは、H又は非親水性置換基であり;
R4HとR5Hは、独立して、親水性置換基であり;
dは、0~3の整数であり、eは、0~3の整数であり(但し、d+eの合計は、3以下である);
fは、0~3の整数であり、gは、0~3の整数であり(但し、f+gの合計は、3以下である);
hは、0~3の整数であり、iは、0~3の整数である(但し、h+iの合計は、3以下である);
【0100】
【0101】
[式中:
R6Nは、H又は非親水性置換基であり;
R7HとR8Hは、独立して、親水性置換基であり;
jは、0~3の整数であり、kは、0~3の整数であり(但し、j+kの合計は、3以下である);
mは、0~3の整数であり、nは、0~3の整数であり(但し、m+nの合計は、3以下である);
pは、0~3の整数であり、qは、0~3の整数であり(但し、p+qの合計は、3以下である)]によって表される構造に言及することができる。
【0102】
式(4A)~式(4D)と式(5A)~式(5D)は、1個以上の親水性置換基を含有する。これらの親水性置換基は、親水性アミノ酸ユニットに由来するアミノ酸の親水性側鎖によって提供され得ると理解されよう。しかしながら、そのユニットが連結されるやり方によっては、このことは必ずしもあてはまらない。
【0103】
式(4A)~式(4D)と式(5A)~式(5D)について明確化されるような親水性置換基のそれぞれは、好ましくは、それぞれの出現について独立して、アミノ基又はそのN-メチル化誘導体、カルボン酸基、ヒドロキシ基、グアニジノ基又はそのN-メチル化誘導体、アミド基、及び尿素基又はそのN-メチル化誘導体より、又はこれらの基の同配体より選択される少なくとも1つの親水性官能基を含む。より好ましくは、式(4A)~式(4D)と式(5A)~式(5D)について明確化される親水性置換基のそれぞれは、それぞれの出現について独立して、アミノ基、カルボン酸基、ヒドロキシ基、グアニジノ基、アミド基、及び尿素基より、又はこれらの基の同配体より選択される少なくとも1つの親水性官能基を含む。
【0104】
なおより好ましくは、式(4A)~式(4D)と式(5A)~式(5D)について明確化されるようなそれぞれの親水性置換基は、独立して、-(CH2)c-COOH基、-(CH2)c-NH2基又はそのN-メチル化誘導体、-(CH2)c-CH(NH2)-COOH基、-(CH2)c-NH-C(O)-NH2基又はそのN-メチル化誘導体、及び-(CH2)c-NH-C(NH)-NH2基又はそのN-メチル化誘導体(ここでcは、0~6の整数である)より選択される。より好ましくは、親水性置換基は、独立して、-(CH2)c-COOH基、-(CH2)c-NH2基、-(CH2)c-CH(NH2)-COOH基、-(CH2)c-NH-C(O)-NH2基、及び-(CH2)c-NH-C(NH)-NH2基(ここでcは、0~6の整数である)より選択される。
【0105】
上記に即して言えば、式(4A)~式(4D)と式(5A)~式(5D)のそれぞれでは、少なくとも1つの親水性置換基が-(CH2)c-COOH基(ここでcは、0~6の整数である)であることが特に好ましい。
【0106】
式(4E)、式(4F)、式(5C)、及び式(5D)は、非親水性置換基を含有する場合がある。この非親水性置換基は、好ましくは、アルキル基(例、C1~C6アルキル基)又はアラルキル基(例、ベンジル基)である。
【0107】
リガンド部分:RL
本発明によるコンジュゲート化合物において、RLは、前立腺特異的膜抗原(PSMA)へ結合することが可能であるリガンド部分である。上記に考察したように、当業者には、好適なリガンド構造が知られている。
【0108】
本発明の文脈において、リガンド部分RLは、好ましくは、式(6):
【0109】
【0110】
[式中:
rは、2~6、好ましくは2~4の整数、より好ましくは2であり;
R1Lは、CH2、NH、又はO、好ましくはNHであり;
R2Lは、C又はP(OH)、好ましくはCであり;
R3Lは、CH2、NH、又はO、好ましくはNHであり;
R4Lは、-COOH置換基を担う直鎖C1~C7アルカンジイル基であり;
そして式中、破線は、該部分を該コンジュゲート化合物の残部へ付ける結合を示す]によって表される構造を有する。
【0111】
より好ましくは、リガンド部分RLは、式(6A)~式(6D):
【0112】
【0113】
[式中:
rは、2~6、好ましくは2~4の整数、より好ましくは2であり;
sは、2~6、好ましくは2~4の整数、より好ましくは2又は4であり;
s2は、2~6、好ましくは2~4の整数、より好ましくは4であり;
tは、1~4、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1又は3であり;
uは、1~4、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1であり;
そして式中、破線は、該部分を該コンジュゲート化合物の残部へ付ける結合を示す]のいずれか1つによって表される構造を有する。
【0114】
なおより好ましくは、リガンド部分RLは、式(6E):
【0115】
【0116】
[式中:
sは、2~6、好ましくは2~4の整数、より好ましくは2又は4であり;
そして式中、破線は、該部分を該コンジュゲート化合物の残部へ付ける結合を示す]によって表される構造を有する。式(6E)のリガンド部分の1つの特に好ましい態様では、sが2であって、破線は、アミド結合の炭素原子へ付く結合を示す。式(6E)のリガンド部分の別の特に好ましい態様では、sが4であって、破線は、アミド結合の窒素原子へ付く結合を示す。
【0117】
フッ化ケイ素アクセプタ(SiFA)部分:RSiFA
上記に考察したように、当業者には、18F標識を導入するためのフッ化ケイ素アクセプタ(SiFA)の使用についても知られていて、文献には、好適なSiFA基について記載されてきた。本発明による化合物において、SiFA部分のRSiFAは、好ましくは、式(7):
【0118】
【0119】
[式中:
XSは、F、OH、又はH、好ましくはFであり;
R1SとR2Sは、独立して、直鎖又は分岐鎖C3~C10アルキル基であり、好ましくはR1SとR2Sは、独立して、イソプロピルとtert-ブチルより選択され、そしてより好ましくはR1SとR2Sは、tert-ブチルであり;
R3Sは、C1~C20炭化水素基であり(ここでは3個までの炭素原子がN、O、及びSより選択されるヘテロ原子に置き換わってよい);好ましくはR3Sは、芳香環を含んで、1個以上の脂肪族ユニットを含み得るC6~C10炭化水素基であり(そしてここでは1個の炭素原子が、芳香環中のものも、窒素原子に置き換わってよい);より好ましくはR3Sは、フェニル環であり、そして最も好ましくは、R3Sは、Si含有置換基と破線によって示される結合がパラ位にあるフェニル環であり;
そして式中、破線は、該部分を該コンジュゲート化合物の残部へ付ける結合を示す]によって表される構造を有する。
【0120】
より好ましくは、SiFA部分のRSiFAは、式(7A):
【0121】
【0122】
[式中:
XSは、F、OH、又はH、好ましくはFであり;
t-Buは、tert-ブチル基を示し;そして
破線は、該部分を該コンジュゲート化合物の残部へ付ける結合を示す]によって表される構造を有する。
【0123】
最も好ましくは、SiFA部分のRSiFAは、式(7B):
【0124】
【0125】
[式中:
t-Buは、tert-ブチル基を示し;そして
破線は、該部分を該コンジュゲート化合物の残部へ付ける結合を示す]によって表される構造を有する。
【0126】
連結部分:L
当業者には、さらなる機能部分をPSMAリガンドへ付けるために使用し得る連結部分についても知られている。
【0127】
例えば、本発明によるコンジュゲート化合物において、連結部分のLは、好ましくは、式(8A)又は式(8B):
【0128】
【0129】
[式中:
X1での破線で示した結合は、RLと形成され、X3での破線で示した結合は、RSiFAと形成され、そしてX4での破線で示した結合は、RHと形成され;
X1は、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、及びアミン結合より選択されて、好ましくはアミド結合であり;
X2は、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、及びアミン結合より選択されて、好ましくはアミド結合であり;
X2Aは、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、及びアミン結合より選択されて、好ましくはアミド結合であり;
X3は、アミド結合、エステル結合、エーテル結合、アミン結合、及び式:
【0130】
【0131】
{式中、NH基での破線で示した結合は、L2と形成されて、破線で示した他の結合は、RSiFAと形成される}の連結基より選択され、好ましくはX3は、アミド結合であり;
X4は、-RHのアミノ酸ユニットに含有される-NH基又は-C(O)-基と一緒に、又はRHに含有されるカップリングユニットと一緒になって、アミド結合、エステル結合、チオエステル結合、又は尿素結合を形成する基であり;より好ましくはX4は、-C(O)-又は-NH-であって、X4を介して付くRHのアミノ酸ユニットの配列中の第一アミノ酸ユニットの対応する-NH-又は-C(O)-基とアミド結合を形成し;
L1は、X1からX2まで延びる6~36個の原子、好ましくは6~24個の原子の連続した鎖を含んでなる二価連結基であり、ここで前記鎖は、炭素原子と(1個より多いヘテロ原子が存在するならば、それぞれの出現についてN、O、及びSより独立して選択される)有ってもよいヘテロ原子によって形成され(そしてここで該鎖は、1個以上の二価環式基又は複素環式基を含み得て、この場合、該環原子のすべてがこの連続鎖の原子として計数される);
L1Aは、X2AからX4まで延びる6~24個の原子、好ましくは6~18個の原子の連続した鎖を含んでなる二価連結基であり、ここで前記鎖は、炭素原子と(1個より多いヘテロ原子が存在するならば、それぞれの出現についてN、O、及びSより独立して選択される)有ってもよいヘテロ原子によって形成され(そしてここで該鎖は、1個以上の二価環式基又は複素環式基を含み得て、この場合、該環原子のすべてがこの連続鎖の原子として計数される);そして
L2は、三価部分である]によって表される構造を有する。
【0132】
X1からX2まで延びる6~36個の原子の連続した鎖を含んでなる二価連結基としてのL1の上記定義に関して、その原子の数は、互いに結合してX1からX2まで延びる鎖を形成する原子だけに言及すると理解されよう。従って、例えば、X1とX2を連結するC6アルカンジイル基:-(CH2)6-では、連続した鎖中の原子の数は、6になる。同様に、L1がアミド結合のような官能基を含んでなる二価連結基であれば、この鎖の一部を形成する官能基中の原子(例えば、アミド結合の場合は、-C-N-)だけを計数する。L1Aとこの基について明確化される原子の数に関しても、同じ考察が適用される。
【0133】
式(8A)の連結部分において、L2は、好ましくは、式(9):
【0134】
【0135】
[式中:
R1は、N、CR2(ここでR2は、H又はC1-C6アルキルである)、及び5~7員の炭素環式基又は複素環式基より選択され;好ましくはR1は、NとCHより選択され、そしてより好ましくはR1は、CHであり;
(CH2)xでの破線によって示した結合は、X2と形成され、そしてxは、0~4の整数、好ましくは0又は1、そして最も好ましくは0であり;
(CH2)yでの破線によって示した結合は、X3と形成され、そしてyは、0~4、好ましくは0~2の整数、そしてより好ましくは0又は1であり;そして
(CH2)zでの破線によって示した結合は、X4と形成され、そしてzは、0~4、好ましくは0~2の整数、そしてより好ましくは0又は1である]によって表される。
【0136】
式(8B)の連結部分において、L2は、好ましくは、上記に示したような式(9)によって表され、ここで
R1は、N、CR2(ここでR2は、H又はC1-C6アルキルである)、及び5~7員の炭素環式基又は複素環式基より選択され;好ましくはR1は、NとCHより選択され、そしてより好ましくはR1は、CHであり;
(CH2)xでの破線によって示した結合は、X2と形成され、そしてxは、0~4の整数、好ましくは0又は1、そして最も好ましくは0であり;
(CH2)yでの破線によって示した結合は、X3と形成され、そしてyは、0~4、好ましくは0~2の整数、そしてより好ましくは0又は1であり;そして
(CH2)zでの破線によって示した結合は、X2Aと形成され、そしてzは、0~4、好ましくは0~2の整数、そしてより好ましくは0又は1である]によって表される。
【0137】
さらに、X1は、好ましくは、アミド結合である。
同様に、X2とX2Aは、好ましくはアミド結合であり;X3は、好ましくはアミド結合であり;そしてX4は、好ましくは-C(O)-又は-NH-であって、X4へ付くRHのアミノ酸ユニットの配列中の第一アミノ酸ユニットの対応する-NH-又は-C(O)-基とアミド結合を形成する。
【0138】
好ましいアミド結合X2と好ましいアミド結合X3を形成するために、そしてRHのアミノ酸ユニットの配列中の第一アミノ酸ユニットの対応する-NH-又は-C(O)-基との好ましいアミド結合、又は好ましいアミド結合X2Aを形成するために必要とされる三価部分のL2と官能基は、好ましくは、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、2,4-ジアミノブタン酸(Dab)、オルニチン(Orn)、リジン(Lys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、及びホモグルタミン酸(Hgl)より選択されるアミノ酸によって提供される。このアミノ酸は、好ましくは、D-配置にある。
【0139】
連結部分のLは、式(10A)又は式(10B):
【0140】
【0141】
[式中:
X1、X2、X2A、X3、X4、及びL2は、式(8A)及び式(8B)とそれらの好ましい態様について上記に定義された通りであり;
vは、0又は1であり;
L1Bは、置換されていてもよいC1-C8アルカンジイル基、好ましくは、エーテル結合によって中断されていてもよい直鎖アルカンジイル基であり(そしてここで該アルカンジイル基が4個以上の炭素原子の鎖を含むならば、該鎖中の4個の連続した炭素原子は、ベンゼンジイル基又はシクロヘキサンジイル基に置き換わってよい);
L1CとL1Fは、独立して、置換されていてもよいC1-C8アルカンジイル基、好ましくはエーテル結合によって中断されていてもよい直鎖アルカンジイル基であり(そしてここで該アルカンジイル基が4個以上の炭素原子の鎖を含むならば、該鎖中の4個の連続した炭素原子は、ベンゼンジイル基又はシクロヘキサンジイル基に置き換わってよい);
L1DとL1Eは、独立して、置換されていてもよいC1-C8アルカンジイル基、好ましくはエーテル結合によって中断されていてもよい直鎖アルカンジイル基であり(そしてここで該アルカンジイル基が4個以上の炭素原子の鎖を含むならば、該鎖中の4個の連続した炭素原子は、ベンゼンジイル基又はシクロヘキサンジイル基に置き換わってよい);
X1Bは、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、及びアミン結合より選択されて、好ましくはアミド結合であり;そして
X1CとX1Fは、独立して、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、及びアミン結合より選択されて、好ましくはアミド結合である]によって表される構造を有することがより好ましい。
【0142】
好ましくは、式(10A)と式(10B)中のL1B、L1C、及びL1Dの有ってもよい置換基(複数)と式(10B)中のL1EとL1Fの有ってもよい置換基は、独立して、-OH、-OCH3、-COOH、-COOCH3、-NH2、-NHR、-NHC(NH)NH2、フェニル、ピリジニル、ナフチル、-CH2-フェニル、-CH2-ピリジニル、及び-CH2-ナフチルより選択され、ここで-NHR置換基中のR基は、アシル基であって、ここでいずれのフェニル基も、ハロゲン(好ましくは-F又は-I)と-OHより選択される1個以上の置換基によってさらに置換されてよい。Rとして好適なアシル基の例は、トリメシン酸に由来するアシル基である。
【0143】
より好ましくは、L1Bの有ってもよい置換基(複数)は、独立して、-COOH、-NH2、-CH2-フェニル、-CH2-ピリジニル、及び-CH2-ナフチルより選択され、ここでどのフェニル基も、ハロゲン(好ましくは-F又は-I)と-OHより選択される1個以上の置換基によってさらに置換されてよく;
そしてL1C、L1F、L1D、及びL1Eの有ってもよい置換基(複数)は、-COOH、-NHR、及び-NH2より独立して選択される。
【0144】
L1B基、L1C基、L1D基、L1E基、及びL1F基は、独立して、未置換であるか又は1個の置換基を含むことがさらに好ましい。
さらに、式(10A)と式(10B)の連結部分について、X1Bは、アミド結合と尿素結合より選択されて、より好ましくはアミド結合であり;そしてX1CとX1Fは、独立して、アミド結合と尿素結合より選択されて、より好ましくはアミド結合であることが好ましい。
【0145】
例えば、式(10A)又は式(10B)の連結基において、vは、1であり得て、
-X1-L1B-X1B-L1C-X1C-L1D-X2-は、式(11A)又は式(11B):
【0146】
【0147】
[式中:
R3~R8は、独立して、C2~C8アルカンジイル、好ましくは直鎖C2~C8アルカンジイルより選択され、このアルカンジイル基は、それぞれ、-OH、-OCH3、-COOH、-COOCH3、-NH2、-NHR、及び-NHC(NH)NH2より独立して選択される1個以上の置換基によって置換されてよく(ここでRは、上記に定義したようなアシル基である);
そして式中、*は、該基のX1末端を示す]の二価基によって表され得る。
【0148】
同様に、式(10B)の連結基において、-X2A-L1E-X1F-L1F-X4-は、式(11C)、式(11D)又は式(11E):
【0149】
【0150】
[式中:
R9~R14は、独立して、C1~C8アルカンジイル、好ましくは直鎖C1~C8アルカンジイルより選択され、このアルカンジイル基は、それぞれ、-OH、-OCH3、-COOH、-COOCH3、-NH2、-NHR、及び-NHC(NH)NH2より独立して選択される1個以上の置換基によって置換されてよく(ここでRは、上記に定義したようなアシル基である);
そして式中、*は、該基のX4末端を示す]の二価基によって表され得る。
【0151】
別のより好ましい例では、式(10A)又は式(10B)の連結基において、vは、1であり得て、
-X1-L1B-X1B-L1C-X1C-L1D-X2-は、式(12A)又は式(12B):
【0152】
【0153】
[式中:
R15~R20は、独立して、C2~C8アルカンジイル、好ましくは直鎖C2~C8アルカンジイルより選択されて、R16又はR19は、-NHRによって置換されてもよく(ここでRは、上記に定義したようなアシル基である)、そして式中、*は、該基のX1末端を示す]の二価基によって表され得る。
【0154】
同様に、式(10B)の連結基において、-X2A-L1E-X1F-L1F-X4-は、そのより好ましい例としての式(12C)、式(12D)又は式(12E):
【0155】
【0156】
[式中:
R21~R22は、独立して、C1~C8アルカンジイル、好ましくは直鎖C1~C8アルカンジイルより選択されて、R22又はR24は、-NHRによって置換されてもよく(ここでRは、上記に定義したようなアシル基である)、R25とR26は、独立して、C1~C3アルカンジイル、好ましくは直鎖C1~C3アルカンジイルより選択されて、式中、*は、該基のX4末端を示す]の二価基によって表され得る。
【0157】
上記より明らかなように、本発明によるコンジュゲート化合物に好ましい式は、その好ましい態様を含めて、式(1A):
【0158】
【0159】
[式中、諸変数は、上記に定義された意味を有する]又はその医薬的に許容される塩である。
さらに、本発明によるさらに好ましいコンジュゲート化合物は、それらの好ましい態様を含めて、式(1B)~式(1F):
【0160】
【0161】
【0162】
[式中、諸変数は、上記に定義された意味を有する]の化合物又はその医薬的に許容される塩である。
本発明によるなおさらに好ましいコンジュゲート化合物は、それらの好ましい態様を含めて、式(1G)と式(1H):
【0163】
【0164】
[式中、諸変数は、上記に定義された意味を有する]の化合物又はその医薬的に許容される塩である。
さらに、上記に即して言えば、本発明によるなおさらに好ましいコンジュゲート化合物は、それらの好ましい態様を含めて、式(1I)と式(1J):
【0165】
【0166】
[諸変数は、上記に定義された意味を有する]の化合物又はその医薬的に許容される塩であると理解される。
さらなる側面において、本発明は、本明細書の上記に開示したような本発明の1個以上の化合物又は塩を含んでなるか又はそれからなる診断組成物を提供する。本明細書に使用される「放射性医薬品」という用語には、診断活性薬剤、並びに診断活性薬剤を含んでなるか又はそれからなる診断組成物が含まれると理解される。本発明の化合物は、診断活性薬剤として有用である。
【0167】
さらなる側面において、本発明は、本明細書の上記に開示したような本発明の1個以上の化合物又は塩を含んでなるか又はそれからなる医薬組成物を提供する。
さらなる側面において、本発明は、本明細書の上記に開示したような本発明の1個以上の化合物又は塩を含んでなるか又はそれからなる治療組成物を提供する。
【0168】
この医薬、診断、治療組成物は、医薬的に許容される担体、賦形剤、及び/又は希釈剤をさらに含み得る。当該技術分野では、好適な医薬担体、賦形剤及び/又は希釈剤の例がよく知られていて、リン酸緩衝化生理食塩水溶液、等張生理食塩水、又は静脈内注射用の他の緩衝溶液剤、水、水中油型乳剤のような乳剤、様々な種類の湿潤剤、無菌溶液剤、放射線分解を回避して最小化するのに適してよく使用される安定化剤(エタノール、他のアルコール類、ゲンチジン酸、アスコルビン酸、等のような)が含まれる。このような担体を含んでなる組成物は、よく知られた慣用の方法によって製剤化することができる。これらの医薬組成物は、被験者へ好適な用量で投与することができる。好適な組成物の投与は、様々なやり方によって、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、皮内、鼻腔内、又は気管支内の投与によって有効にし得る。前記投与は、注射によって(特に、診断調製物では静脈内注射、そして治療調製物では静脈内注射又は持続注入によって)行うことが特に好ましい。該組成物はまた、標的部位へ直接投与してよい。その投与方式(dosage regimen)は、担当医/外科医と臨床要因によって決定されるものである。医療技術分野でよく知られているように、どの患者への投与量も、患者のサイズ、体表面積、年齢、腫瘍負荷、臓器機能、個人線量、投与される特別な化合物、性別、投与の時間及び経路、全般的な健康状態、並びに同時に投与されている他の薬物が含まれる、多くの要因に依拠する。医薬活性物質は、患者あたりの用量につき、0.1ngと10mg/kgの間、好ましくは0.1ngと500μgの間、より好ましくは0.1ngと200μgの間であるが、上述した要因について具体的に考慮すれば、この例示範囲より少ないか又は多い用量も想定される。
【0169】
上記に開示した医薬組成物、診断組成物、及び治療組成物が本発明の1個以上の化合物を含む限りにおいて、さらなる医薬活性化合物、診断活性化合物、又は治療活性化合物が存在しないことが好ましい。代替態様では、さらなる治療活性化合物、診断活性化合物、又は医薬活性化合物、例えば、抗癌剤が存在してよい。
【0170】
さらなる側面において、本発明は、本明細書の上記に開示したような本発明の1個以上のコンジュゲート化合物又は塩を医学における使用に提供する。
医学における使用は、核診断イメージング(核分子イメージングとも呼ばれる)、及び/又は罹患組織上のPSMAの過剰発現に関連した疾患の標的指向性の放射線療法のような核医学における使用である。前記イメージングには、外科的介入の間のイメージングが含まれ、ここでは本発明の診断組成物に含まれるような本発明の化合物を利用して、外科医を新生物組織へ誘導する。好ましくは、この外科的介入は、本発明に含まれない。
【0171】
さらなる側面において、本発明は、本明細書の上記に定義したような本発明の化合物又は塩を、癌、好ましくは前立腺について診断する、及び/又は段階付けする方法における使用に提供する。
【0172】
好ましい適応は、限定されないが、限定されないが、高悪性度神経膠腫、肺癌、そして特に前立腺癌と転移性前立腺癌のような癌の検出又はステージング、中等度リスク~高リスクの原発性前立腺癌患者における転移性疾患の検出、並びに低血清PSA値であっても生化学的に再発性の前立腺癌患者における転移部位の検出である。別の好ましい適応は、心血管形成のイメージング及び可視化である。
【0173】
療法、特に放射線療法へ処すべき医学適応症に関して言えば、癌が好ましい適応症である。前立腺癌は、特に好ましい適応症である。
さらなる側面において、本発明は、本明細書の上記に定義したような本発明の化合物又は塩を、癌、好ましくは前立腺について診断する、及び/又は段階付けする方法における使用に提供する。
【0174】
本明細書において、特に特許請求項において特徴付けられる態様に関して言えば、従属項において言及される各態様は、前記従属項が従属する各請求項(独立項又は従属項)の各態様と組み合わされると企図される。例えば、独立項1が3つの代替態様:A、B、及びCを列挙し、従属項2が3つの代替態様:D、E、及びFを列挙して、請求項3が請求項1と請求項2に従属して3つの代替態様:G、H、及びIを列挙する場合、本明細書では、他に具体的に言及されなければ、種々の組合せ:A、D、G;A、D、H;A、D、I;A、E、G;A、E、H;A、E、I;A、F、G;A、F、H;A、F、I;B、D、G;B、D、H;B、D、I;B、E、G;B、E、H;B、E、I;B、F、G;B、F、H;B、F、I;C、D、G;C、D、H;C、D、I;C、E、G;C、E、H;C、E、I;C、F、G;C、F、H;C、F、Iに対応する態様が明確に開示されると理解されたい。
【0175】
同様に、そしてまた、独立項及び/又は従属項が代替態様を列挙しない場合は、従属項が複数の先行請求項を参照するならば、それに含まれる内容(subject-matter)のあらゆる組合せが明白に開示されているとみなされると理解される。例えば、独立項1があって、従属項2が請求項1を参照して、従属項3が請求項2と請求項1をともに参照する場合、請求項3と請求項1の内容の組合せは、請求項3、請求項2、及び請求項1の内容の組合せと同じように明瞭かつ明白に開示されていることになる。請求項1~3のいずれか1項に言及するさらなる従属項4が存在する場合、請求項4と請求項1の内容、請求項4、請求項2、及び請求項1の内容、請求項4、請求項3、及び請求項1の内容、並びに請求項4、請求項3、請求項2、及び請求項1の内容の組合せは、明瞭かつ明白に開示されていることになる。
【0176】
以下の項目は、本発明の要約とその好ましい態様を提供する。
1.式(1):
【0177】
【0178】
[式中:
RLは、前立腺特異的膜抗原(PSMA)へ結合することが可能であるリガンド部分であり;
RSiFAは、
(i)ケイ素原子とフッ素原子を含むSiFA部分(ここで該フッ素原子は、共有結合を介して該ケイ素原子へ直接連結して、当該SiFA部分は、19Fの18Fによる同位体交換によって18Fで標識され得るか又は18Fで標識される);
(ii)ケイ素原子とヒドロキシ基を含むSiFA部分(ここで該ヒドロキシ基は、共有結合を介して該ケイ素原子へ直接連結して、当該SiFA部分は、OHの18Fによる求核置換によって18Fで標識され得る);及び
(iii)ケイ素原子と水素原子を含むSiFA部分(ここで該水素原子は、共有結合を介してケイ素原子へ直接連結して、当該SiFA部分は、Hの18Fによる求核置換によって18Fで標識され得る);
より選択されるフッ化ケイ素アクセプタ(SiFA)部分であり;
Lは、連結部分であり;
RHは、
(i)2~10個の親水性アミノ酸ユニットAH(このそれぞれは、独立して、親水性側鎖を担う天然又は非天然アミノ酸に由来する)と、親水性側鎖を欠く天然又は非天然アミノ酸に由来する、有ってもよい1個のアミノ酸ユニットANの直鎖又は分岐鎖配列(ここでこの親水性アミノ酸ユニットと、存在するならば、ユニットANは、直接的な共有結合を介するか又はカップリングユニットを介して互いに結合する)を含み、そして場合によっては、さらに
(ii)1個以上の親水性残基RT(このそれぞれは、アミノ酸ユニットのアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖の官能基へ結合し得る)を含む、親水性部分である]によって表されるリガンド-SiFAコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0179】
2.-RH部分が、式(2):
【0180】
【0181】
[式中:
R1Hは、2~10個の親水性アミノ酸ユニット(このそれぞれは、独立して、親水性側鎖を担う天然又は非天然アミノ酸に由来する)と、有ってもよい、親水性側鎖を欠く天然又は非天然アミノ酸に由来する1個のアミノ酸ユニットANの直鎖又は分岐鎖、好ましくは直鎖の配列を表し、
ここで親水性アミノ酸ユニットと、存在するならば、ユニットANは、直接共有結合を介するか又はカップリングユニットを介して互いに結合し;
RTは、アミノ酸ユニットのアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖の官能基へ結合し得る親水性残基を表し;そして
a1は、0又は1である]によって表される構造を有する、項目1に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0182】
3.-RH部分が、式(3A)、式(3B)、式(3C)、又は式(3D):
【0183】
【0184】
[式中:
b1は、1~9の整数であり;
A1Hは、それぞれの出現について独立して、親水性側鎖を担う天然又は非天然アミノ酸に由来する親水性アミノ酸ユニットであり;
A2HとA3Hは、それぞれ独立して、親水性側鎖を担う天然又は非天然アミノ酸に由来する親水性アミノ酸ユニットであり;
X1Hは、それぞれの出現について独立して、結合又はカップリングユニットであり;
X2HとX3Hは、それぞれ独立して、結合又はカップリングユニットであり;
そして
RTは、アミノ酸ユニットA3Hのアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖の官能基へ結合し得る親水性残基を表す]
【0185】
【0186】
[式中:
c1は、1~9、好ましくは1~4の整数であり;
A1Nは、親水性側鎖を欠くアミノ酸に由来するアミノ酸ユニットであり;
A1Hは、それぞれの出現について独立して、親水性側鎖を担う(天然又は非天然)アミノ酸に由来する親水性アミノ酸ユニットであり;
A2HとA3Hは、それぞれ独立して、親水性側鎖を担う(天然又は非天然)アミノ酸に由来する親水性アミノ酸ユニットであり;
X1Hは、それぞれの出現について独立して、結合又はカップリングユニットであり;
X2HとX3Hは、それぞれ独立して、結合又はカップリングユニットであり;
そして
RTは、アミノ酸ユニットA3Hのアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖の官能基へ結合し得る親水性残基を表す]によって表される構造を有する、項目1又は項目2に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0187】
4.-RH部分が式(3E)又は式(3F):
【0188】
【0189】
[式中:
A4H、A5H、及びA6Hは、それぞれ独立して、親水性側鎖を担う(天然又は非天然)アミノ酸に由来する親水性アミノ酸ユニットであり;
X4HとX5Hは、それぞれ独立して、直結合又はカップリングユニットであり、そして場合によっては、親水性残基RTは、アミノ酸ユニットA6Hのアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖の官能基へ結合し得て;そして
A1Nは、親水性側鎖を欠くアミノ酸に由来するアミノ酸ユニットである]によって表される構造を有する、項目3のコンジュゲート化合物又はその医薬的に許容される塩。
【0190】
5.-RH部分が、式(3G):
【0191】
【0192】
[式中:
A7H、A8H、及びA9Hは、それぞれ独立して、親水性側鎖を担う天然又は非天然アミノ酸に由来する親水性アミノ酸ユニットであり;そして
X8HとX9Hは、それぞれ独立して、直結合又はカップリングユニットであり;
そして場合によっては、親水性残基RTは、アミノ酸ユニットA8H及びA9Hの一方又は両方のアミノ基、カルボン酸基、又は親水性側鎖の官能基へ結合し得る]によって表される構造を有する、項目1のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0193】
6.親水性部分RTが、キレーター基、錯化(complexed)金属又は放射性金属付きのキレート基、炭水化物残基、ポリエチレングリコール残基、還元性(reduced)アミノ酸、及びカルボン酸同配体(isoster)付きのアミノ酸類似体より選択される、項目1~項目5のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0194】
7.親水性アミノ酸ユニットが、それぞれ独立して、アミノ基、カルボン酸基、ヒドロキシ基、グアニジノ基、アミド基、及び尿素基より、又はこれらの基の同配体より選択される少なくとも1つの親水性官能基を含む親水性側鎖を担うアミノ酸に由来する、項目1~項目6のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0195】
8.親水性アミノ酸ユニットが、それぞれ独立して、-(CH2)c-COOH基、-(CH2)c-NH2基又はそのN-メチル化誘導体、-(CH2)c-CH(NH2)-COOH基、-(CH2)c-NH-C(O)-NH2基又はそのN-メチル化誘導体、及び-(CH2)c-NH-C(NH)-NH2基又はそのN-メチル化誘導体(ここでcは、0~6、好ましくは1~6の整数である)より選択される親水性側鎖を担うアミノ酸に由来する、項目1~項目6のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0196】
9.親水性アミノ酸ユニットの少なくとも1つが-(CH2)c-COOH基(ここでcは、0~6、好ましくは1~6の整数である)を親水性側鎖として担うアミノ酸に由来する、項目1~項目8のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0197】
10.親水性アミノ酸ユニットA1Hと、それぞれの出現について独立して、A3Hが、式(4A)又は式(4B):
【0198】
【0199】
によって表される構造を有して、親水性アミノ酸ユニットA2Hは、式(4C)又は式(4D):
【0200】
【0201】
[式中、それぞれのアミノ酸ユニットについて独立して、
aは、0~6の整数であり、bは、0~6の整数であり(但し、a+bの合計は、6以下である);
そしてR2Hは、親水性置換基である]によって表される構造を有する、項目3又は項目6に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0202】
11.親水性アミノ酸ユニットのA4HとA5Hが式(4A)又は式(4B):
【0203】
【0204】
によって表される構造を有して、親水性アミノ酸ユニットA6Hが式(4C)又は式(4D):
【0205】
【0206】
[式中、それぞれのアミノ酸ユニットについて独立して、
aは、0~6の整数であり、bは、0~6の整数であり(但し、a+bの合計は、6以下である);そしてR2Hは、親水性置換基である]によって表される構造を有する、項目4に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0207】
12.親水性側鎖を欠くアミノ酸に由来するアミノ酸ユニットA1Nが、好ましくは式(4E)又は式(4F):
【0208】
【0209】
[式中:
aは、0~6の整数であり、bは、0~6の整数であり(但し、a+bの合計は、6以下である);そしてR2Nは、H又は非親水性置換基である]によって表される構造を有する、項目3、項目4、及び項目6~項目11のいずれかに記載のコンジュゲート化合物。
【0210】
13.RHが3~10個、より好ましくは3~5個、そしてなおより好ましくは3個の全数の親水性アミノ酸ユニットを含む、項目1~項目3と項目6~項目12のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0211】
14.親水性アミノ酸ユニットと、存在するならば、ユニットANが、直接共有結合を介するか又はカップリングユニット:-C(O)-を介して互いに結合して、このカップリングユニットは、RHに含まれる2個の隣接アミノ酸ユニットのアミノ基とともに、又は連結部分Lのアミノ基とRHに含まれるアミノ酸ユニットのアミノ基とともに尿素結合-NH-C(O)-NH-を形成する、項目1~項目13のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0212】
15.-RH部分が、RHに含まれる2個の隣接アミノ酸ユニットのアミノ基とともに、又は連結部分Lのアミノ基とRHに含まれるアミノ酸ユニットのアミノ基とともに尿素結合-NH-C(O)-NH-を形成する、少なくとも1つのカップリングユニット:-C(O)-を含む、項目1~項目14のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0213】
16.-RH部分が、式(5A)、式(5B)、式(5C)、又は式(5D):
【0214】
【0215】
[式中:
R3H~R5Hは、独立して、親水性置換基であり;
dは、0~3の整数であり、eは、0~3の整数であり(但し、d+eの合計は、3以下である);
fは、0~3の整数であり、gは、0~3整数であり(但し、f+gの合計は、3以下である);
hは、0~3の整数であり、iは、0~3の整数である(但し、h+iの合計は、3以下である)];
【0216】
【0217】
[式中:
R6H~R8Hは、独立して、親水性置換基であり;
jは、0~3の整数であり、kは、0~3の整数であり(但し、j+kの合計は、3以下である);
mは、0~3の整数であり、nは、0~3の整数であり(但し、m+nの合計は、3以下である);
pは、0~3の整数であり、qは、0~3の整数である(但し、p+qの合計は、3以下である)];
【0218】
【0219】
[式中:
R3Nは、H又は非親水性置換基であり;
R4HとR5Hは、独立して、親水性置換基であり;
dは、0~3の整数であり、eは、0~3の整数であり(但し、d+eの合計は、3以下である);
fは、0~3の整数であり、gは、0~3の整数であり(但し、f+gの合計は、3以下である);
hは、0~3の整数であり、iは、0~3の整数である(但し、h+iの合計は、3以下である);
【0220】
【0221】
[式中:
R6Nは、H又は非親水性置換基であり;
R7HとR8Hは、独立して、親水性置換基であり;
jは、0~3の整数であり、kは、0~3の整数であり(但し、j+kの合計は、3以下である);
mは、0~3の整数であり、nは、0~3の整数であり(但し、m+nの合計は、3以下である);
pは、0~3の整数であり、qは、0~3の整数であり(但し、p+qの合計は、3以下である)]によって表される構造を有する、項目1~項目4と項目6~項目12のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0222】
17.それぞれの親水性置換基が、それぞれの出現について独立して、アミノ基、カルボン酸基、ヒドロキシ基、グアニジノ基、アミド基、及び尿素基より、又はこれらの基の同配体より選択される、少なくとも1つの親水性官能基を含む、項目11~項目16のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0223】
18.それぞれの親水性置換基が、独立して、-(CH2)c-COOH基、-(CH2)c-NH2基又はそのN-メチル化誘導体、-(CH2)c-CH(NH2)-COOH基、-(CH2)c-NH-C(O)-NH2基又はそのN-メチル化誘導体、及び-(CH2)c-NH-C(NH)-NH2基又はそのN-メチル化誘導体(ここでcは、0~6の整数である)より選択される、項目11~項目16のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0224】
19.少なくとも1つの親水性置換基が-(CH2)c-COOH基(ここでcは、0~6の整数である)である、項目11~項目18のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0225】
20.非親水性置換基がアルキル基又はアラルキル基である、項目12~項目19のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
21.-RH部分中の親水性アミノ酸ユニットが、それぞれ独立して、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、2,4-ジアミノブタン酸(Dab)、オルニチン(Orn)、リジン(Lys)、4-アミノピペリジン-4-カルボン酸(Apc4)、3-アミノピペリジン-3-カルボン酸(Apc3)、2-アミノピペリジン-2-カルボン酸(Apc2)、アスパラギン酸(Asp)、ホモグルタミン酸(Hgl)、グルタミン酸(Glu)、2,3-ジアミノコハク酸、ジアミノペンタン二酸、ジアミノヘキサン二酸、ジアミノヘプタン二酸、ジアミノオクタン二酸、スレオニン(Thr)、及びシトルリン(Cit)より選択されるアミノ酸に由来して、ここで該アミノ酸は、好ましくはD-配置にある、項目1~項目19のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0226】
22.-RH部分中の親水性アミノ酸ユニットが、それぞれ独立して、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、オルニチン(Orn)、リジン(Lys)、スレオニン(Thr)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、及びシトルリン(Cit)より選択されるアミノ酸に由来して、ここで該アミノ酸は、好ましくはD-配置にある、項目21に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0227】
23.-RH部分中の親水性側鎖を欠くアミノ酸に由来するいずれのアミノ酸ユニットも、グリシン(Gly)、フェニルアラニン(Phe)、β-アラニン(β-Ala)、及びアミノヘキサン酸(Ahx)より選択されるアミノ酸に由来する、項目1~項目4と項目6~項目22のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0228】
24.式(3E)において、A4H、A5H、及びA6Hのそれぞれが、独立して、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、オルニチン(Orn)、リジン(Lys)、スレオニン(Thr)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、及びシトルリン(Cit)より選択されるアミノ酸に由来するアミノ酸ユニットであり、X4HとX5Hのそれぞれが、独立して、結合又はカップリングユニット:-C(O)-であり、このカップリングユニットは、2個の隣接アミノ酸ユニットのアミノ基と尿素結合を形成する、項目4のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0229】
25.アミノ酸ユニットA4Hが、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、オルニチン(Orn)、リジン(Lys)、スレオニン(Thr)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、及びシトルリン(Cit)より選択されるアミノ酸に由来し、A5HとA6Hがグルタミン酸に由来するアミノ酸ユニットであり、X4Hが結合であって、X5Hが結合とカップリングユニット:-C(O)-より選択され、このカップリングユニットは、2個の隣接アミノ酸ユニットのアミノ基と尿素結合を形成する;又は
アミノ酸ユニットA4Hが、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、オルニチン(Orn)、リジン(Lys)、スレオニン(Thr)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、及びシトルリン(Cit)より選択されるアミノ酸に由来し、A5HとA6Hがシトルリンに由来するアミノ酸ユニットであって、X4HとX5Hがそれぞれ結合である、項目24のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0230】
26.式(3F)において、A1Nが、グリシン(Gly)、フェニルアラニン(Phe)、β-アラニン(β-Ala)、及びアミノヘキサン酸(Ahx)に由来するアミノ酸ユニットであり、A5HとA6Hが、独立して、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、オルニチン(Orn)、リジン(Lys)、スレオニン(Thr)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、及びシトルリン(Cit)より選択されるアミノ酸に由来して、X4HとX5Hのそれぞれが、独立して、結合又はカップリングユニット:-C(O)-であり、このカップリングユニットは、2個の隣接アミノ酸ユニットのアミノ基と尿素結合を形成する、項目4のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0231】
27.リガンド部分RLが、式(6):
【0232】
【0233】
[式中:
rは、2~6、好ましくは2~4の整数、より好ましくは2であり;
R1Lは、CH2、NH、又はO、好ましくはNHであり;
R2Lは、C又はP(OH)、好ましくはCであり;
R3Lは、CH2、NH、又はO、好ましくはNHであり;
R4Lは、-COOH置換基を担う直鎖C1~C7アルカンジイル基であり;
そして式中、破線は、該部分を該コンジュゲート化合物の残部へ付ける結合を示す]によって表される構造を有する、項目1~項目26のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0234】
28.リガンド部分RLが、式(6A)、式(6B)、式(6C)、又は式(6D):
【0235】
【0236】
[式中:
rは、2~6、好ましくは2~4の整数、より好ましくは2であり;
sは、2~6、好ましくは2~4の整数、より好ましくは2又は4であり;
s2は、2~6、好ましくは2~4の整数、より好ましくは4であり;
tは、1~4、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1又は3であり;
uは、1~4、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1であり;
そして式中、破線は、該部分を該コンジュゲート化合物の残部へ付ける結合を示す]によって表される構造を有する、項目27に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0237】
29.リガンド部分RLが、式(6E):
【0238】
【0239】
[式中:
sは、2~6、好ましくは2~4の整数、より好ましくは2又は4であり;
そして式中、破線は、該部分を該コンジュゲート化合物の残部へ付ける結合を示す]によって表される構造を有する、項目27に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0240】
30.SiFA部分のRSiFAが、式(7):
【0241】
【0242】
[式中:
XSは、F、OH、又はH、好ましくはFであり;
R1SとR2Sは、独立して、直鎖又は分岐鎖C3~C10アルキル基であり、好ましくはR1SとR2Sは、独立して、イソプロピルとtert-ブチルより選択され、そしてより好ましくはR1SとR2Sは、tert-ブチルであり;
R3Sは、C1~C20炭化水素基であり(ここでは3個までの炭素原子がN、O、及びSより選択されるヘテロ原子に置き換わってよい);好ましくはR3Sは、芳香環を含んで、1個以上の脂肪族ユニットを含み得るC6~C10炭化水素基であり(ここでは1個の炭素原子が、芳香環中のものも、窒素原子に置き換わってよい);より好ましくはR3Sは、フェニル環であり、そして最も好ましくは、R3Sは、Si含有置換基と破線によって示される結合がパラ位にあるフェニル環であり;
そして式中、破線は、該部分を該コンジュゲート化合物の残部へ付ける結合を示す]によって表される構造を有する、項目1~項目29のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0243】
31.SiFA部分のRSiFAが、式(7A):
【0244】
【0245】
[式中:
XSは、F、OH、又はH、好ましくはFであり;
t-Buは、tert-ブチル基を示し;そして
破線は、該部分を該コンジュゲート化合物の残部へ付ける結合を示す]によって表される構造を有する、項目30に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0246】
32.式(1A):
【0247】
【0248】
[式中、諸変数は、項目1~項目31におけるように定義される]によって表される、項目1~項目31のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0249】
33.式(1G)又は式(1H):
【0250】
【0251】
[式中、諸変数は、項目1~項目32におけるように定義される]によって表される、項目32に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
34.式(1I)又は式(1J):
【0252】
【0253】
[式中、諸変数は、項目1~項目33におけるように定義される]によって表される、項目33に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
35.連結部分Lが、式(8A)又は式(8B):
【0254】
【0255】
[式中:
X1での破線で示した結合は、RLと形成され、X3での破線で示した結合は、RSiFAと形成され、そしてX4での破線で示した結合は、RHと形成され;
X1は、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、及びアミン結合より選択されて、好ましくはアミド結合であり;
X2は、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、及びアミン結合より選択されて、好ましくはアミド結合であり;
X2Aは、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、及びアミン結合より選択されて、好ましくはアミド結合であり;
X3は、アミド結合、エステル結合、エーテル結合、アミン結合、及び式:
【0256】
【0257】
{式中、NH基での破線で示した結合は、L2と形成されて、破線で示した他の結合は、RSiFAと形成される}の連結基より選択され、好ましくはX3は、アミド結合であり;
X4は、-RHのアミノ酸ユニットに含有される-NH基又は-C(O)-基と一緒に、又はRHに含有されるカップリングユニットと一緒になって、アミド結合、エステル結合、チオエステル結合、又は尿素結合を形成する基であり;より好ましくはX4は、-C(O)-又は-NH-であって、X4を介して付くRHのアミノ酸ユニットの配列中の第一アミノ酸ユニットの対応する-NH-又は-C(O)-基とアミド結合を形成し;
L1は、X1からX2まで延びる6~36個の原子の連続した鎖を含んでなる二価連結基であり、ここで前記鎖は、炭素原子と(1個より多いヘテロ原子が存在するならば、それぞれの出現についてN、O、及びSより独立して選択される)有ってもよいヘテロ原子によって形成され(そしてここで該鎖は、1個以上の二価環式基又は複素環式基を含み得て、この場合、該環原子のすべてがこの連続鎖の原子として計数される);
L1Aは、X2AからX4まで延びる6~24個の原子の連続した鎖を含んでなる二価連結基であり、ここで前記鎖は、炭素原子と(1個より多いヘテロ原子が存在するならば、それぞれの出現についてN、O、及びSより独立して選択される)有ってもよいヘテロ原子によって形成され(そしてここで該鎖は、1個以上の二価環式基又は複素環式基を含み得て、この場合、該環原子のすべてがこの連続鎖の原子として計数される);そして
L2は、三価部分である]によって表される構造を有する、項目1~項目34のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0258】
36.L2が式(9):
【0259】
【0260】
[式中:
R1は、N、CR2(ここでR2は、H又はC1-C6アルキルである)、及び5~7員の炭素環式基又は複素環式基より選択され;好ましくはR1は、NとCHより選択され、そしてより好ましくはR1は、CHであり;
(CH2)xでの破線によって示した結合は、X2と形成され、そしてxは、0~4の整数、好ましくは0又は1、そして最も好ましくは0であり;
(CH2)yでの破線によって示した結合は、X3と形成され、そしてyは、0~4、好ましくは0~2の整数、そしてより好ましくは0又は1であり;そして
(CH2)zでの破線によって示した結合は、X4又はX2Aとそれぞれ形成され、そしてzは、0~4、好ましくは0~2の整数、そしてより好ましくは0又は1である]によって表される、項目35に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0261】
37.X1がアミド結合である、項目35又は項目36のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
38.X2がアミド結合であり;X2Aがアミド結合であり;X3がアミド結合であり;そしてX4が-C(O)-又は-NH-であって、X4を介して付くRHのアミノ酸ユニットの配列中の第一アミノ酸ユニットの対応する-NH-又は-C(O)-基とアミド結合を形成する、項目35~項目37のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0262】
39.アミド結合X2とアミド結合X3を形成するために、そしてRHのアミノ酸ユニットの配列中の第一アミノ酸ユニットの対応する-NH-又は-C(O)-基とのアミド結合又はアミド結合X2Aを形成するために必要とされる三価部分L2と官能基が、Dap、Dab、Orn、Lys、Asp、Glu、及びHglより選択されるアミノ酸によって提供されて、ここで該アミノ酸は、好ましくはD-配置にある、項目38に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0263】
40.連結部分Lが、式(10A)又は式(10B):
【0264】
【0265】
[式中:
X1、X2、X2A、X3、X4、及びL2は、項目35~項目39のいずれかに定義される通りであり;
vは、0又は1であり;
L1Bは、置換されていてもよいC1-C8アルカンジイル基、好ましくは、エーテル結合によって中断されていてもよい直鎖アルカンジイル基であり(そしてここで該アルカンジイル基が4個以上の炭素原子の鎖を含むならば、該鎖中の4個の連続した炭素原子は、ベンゼンジイル基又はシクロヘキサンジイル基に置き換わってよい);
L1CとL1Fは、独立して、置換されていてもよいC1-C8アルカンジイル基、好ましくはエーテル結合によって中断されていてもよい直鎖アルカンジイル基であり(そしてここで該アルカンジイル基が4個以上の炭素原子の鎖を含むならば、該鎖中の4個の連続した炭素原子は、ベンゼンジイル基又はシクロヘキサンジイル基に置き換わってよい);
L1DとL1Eは、独立して、置換されていてもよいC1-C8アルカンジイル基、好ましくはエーテル結合によって中断されていてもよい直鎖アルカンジイル基であり(そしてここで該アルカンジイル基が4個以上の炭素原子の鎖を含むならば、該鎖中の4個の連続した炭素原子は、ベンゼンジイル基又はシクロヘキサンジイル基に置き換わってよい);
X1Bは、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、及びアミン結合より選択されて、好ましくはアミド結合であり;そして
X1CとX1Fは、独立して、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、尿素結合、チオ尿素結合、及びアミン結合より選択されて、好ましくはアミド結合である]によって表される構造を有する、項目1~項目39のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0266】
41.L1B、L1C、L1D、L1E、及びL1Fの有ってもよい置換基(複数)が、独立して、-OH、-OCH3、-COOH、-COOCH3、-NH2、-NHR、-NHC(NH)NH2、フェニル、ピリジニル、ナフチル、-CH2-フェニル、-CH2-ピリジニル、及び-CH2-ナフチルより選択され、ここで-NHR置換基中のR基は、アシル基であって、ここでどのフェニル基も、ハロゲン(好ましくは-F又は-I)と-OHより選択される1個以上の置換基によってさらに置換されてよい、項目40に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0267】
42.L1Bの有ってもよい置換基(複数)が、独立して、-COOH、-NH2、-CH2-フェニル、-CH2-ピリジニル、及び-CH2-ナフチルより選択され、ここでどのフェニル基も、ハロゲン(好ましくは-F又は-I)と-OHより選択される1個以上の置換基によってさらに置換されてよく;
そしてここでL1C、L1D、L1E、及びL1Fの有ってもよい置換基(複数)は、独立して、-COOH、-NHR、及び-NH2(ここでR基は、アシル基である)より選択される、項目41に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0268】
43.X1Bが、アミド結合と尿素結合より選択されて、好ましくはアミド結合であり;そして
X1CとX1Fが、独立して、アミド結合と尿素結合より選択されて、好ましくはアミド結合である、項目40~項目43のいずれかに記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0269】
44.vが1であって、
-X1-L1B-X1B-L1C-X1C-L1D-X2-が式(11A)又は式(11B):
【0270】
【0271】
[式中:
R3~R8は、独立して、C2~C8アルカンジイル、好ましくは直鎖C2~C8アルカンジイルより選択され、このアルカンジイル基は、それぞれ、-OH、-OCH3、-COOH、-COOCH3、-NH2、-NHR、及び-NHC(NH)NH2より独立して選択される1個以上の置換基によって置換されてよく(ここでRは、上記に定義したようなアシル基である)、そして式中、*は、該基のX1末端を示す]の二価基によって表される、項目40に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0272】
45.-X2A-L1E-X1F-L1F-X4-が、式(11C)、式(11D)又は式(11E):
【0273】
【0274】
[式中:
R9~R14は、独立して、C1~C8アルカンジイル、好ましくは直鎖C1~C8アルカンジイルより選択され、このアルカンジイル基は、それぞれ、-OH、-OCH3、-COOH、-COOCH3、-NH2、-NHR、及び-NHC(NH)NH2より独立して選択される1個以上の置換基によって置換されてよく(ここでRは、アシル基である);
そして式中、*は、該基のX4末端を示す]の二価基によって表され得る、項目40又は項目44に記載のコンジュゲート化合物。
【0275】
46.vが1であって、-X1-L1B-X1B-L1C-X1C-L1D-X2-が式(12A)又は式(12B):
【0276】
【0277】
[式中:
R15~R20は、独立して、C2~C8アルカンジイル、好ましくは直鎖C2~C8アルカンジイルより選択されて、R16又はR19は、-NHRによって置換されてもよく(ここでRは、上記に定義したようなアシル基である)、そして式中、*は、該基のX1末端を示す]の二価基によって表される、項目44又は項目45に記載のコンジュゲート化合物、又はその医薬的に許容される塩。
【0278】
47.-X2A-L1E-X1F-L1F-X4-が、式(12C)、式(12D)又は式(12E):
【0279】
【0280】
[式中:
R21~R22は、独立して、C1~C8アルカンジイル、好ましくは直鎖C1~C8アルカンジイルより選択されて、R22又はR24は、-NHRによって置換されてもよく(ここでRは、上記に定義したようなアシル基である)、R25とR26は、独立して、C1~C3アルカンジイル、好ましくは直鎖C1~C3アルカンジイルより選択されて、式中、*は、該基のX4末端を示す]の二価基によって表される、項目44~項目46のいずれかに記載のコンジュゲート化合物。
【0281】
48.logD7.4値を-1.5~-4.0、より好ましくは-2.0~-3.5、なおより好ましくは-2.5~-3.5の範囲に有する、項目1~項目47のいずれかに記載のコンジュゲート化合物又は塩。
【0282】
49.項目1~項目48のいずれか1項に記載の1個以上のコンジュゲート化合物又は塩を含んでなるか又はそれからなる、医薬組成物又は診断組成物。
50.医学における使用のための、項目1~項目48のいずれかに記載のコンジュゲート化合物又は塩。
【0283】
51.(a)前立腺癌が含まれる癌;又は
(b)血管新生/血管形成
を診断する、治療する、又は診断して治療する方法に使用のための、項目1~項目48のいずれか1項に記載のコンジュゲート化合物又は塩。
【実施例】
【0284】
実施例は、本発明を例解する。SiFA部分とPSMA結合部分の存在により、本発明のコンジュゲート化合物は、実施例の文脈において「SiFA-PSMAリガンド」とも言及される。
【0285】
1.材料と方法
1.1 化合物の合成と特性決定
固相ペプチド合成(SPPS)のために、2-クロロトリチルクロリド-(2-CTC)樹脂を Sigma-Aldrich Chemie GmbH(シュタインハイム、ドイツ)より購入する一方、保護化アミノ酸を Iris Biotech GmbH(マルクトレドヴィッツ、ドイツ)、Carbolution Chemicals GmbH(サンクト・イングベルト、ドイツ)、又は Bachem AG(ブーベンドルフ、スイス)より入手した。さらなる試薬及び溶媒は、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldric)Chemie GmbH、VWR International GmbH(ダルムシュタット、ドイツ)、Alfa Aesar GmbH & Co. KG(カールスルーエ、ドイツ)、メルク(Merck)KGaA(ダルムシュタット、ドイツ)、又は ACROS Organics BVBA(ギール、ベルギー)のいずれかより「合成用」品質グレードで入手した。SiFA-ビルディングブロックの合成用の出発材料としてのジtert-ブチルジフルオロシランは、Fluorochem 社(ハドフィールド、イギリス)より納入済みであった。
【0286】
反応混合物の分析用(anal.)薄層クロマトグラフィー(TLC)では、試料をシリカゲル60 F254プレート(Merck KGaA)上でクロマトグラフ処理して、その後これを紫外(UV)光(λ=254nm)下に分析するか又は塩基性KMnO4へ曝露した。
【0287】
手動フラッシュカラムクロマトグラフィーは、Sigma-Aldrich Chemie GmbH より入手したシリカゲル(60A(オングストローム)、孔径230~400メッシュ、粒径40~63μm)を使用して行って、一方自動化フラッシュクロマトグラフィーは、SNAP KPC18-HSカラム(12g,93A,382m2/g,12mL/分)を装備したBiotage SP1 HPFCシステム(Biotage AB(ウプサラ、スウェーデン)製)で実施した。
【0288】
有機化合物の分析用の特性決定と分取用(prep.)の精製は、グラジエントポンプ(2台のLC-20AD又は1台のLC-20AT)、システムコントローラー(CBM-20A)、カラムオーブン(CTO-20A)、及びUV/Vis検出器(SPD-20A)からなる、ドイツ島津製作所(Shimadzu Deutschland GmbH(ノイファーンバイフライジング、ドイツ))製の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムで実施した。クロマトグラムの可視化及び解析には、ドイツ島津製作所による LabSolutions ソフトウェアを使用した。分析用及び分取用の逆相(RP)HPLC用のカラムについては、Nucleosil 100-5 C18(カラムI,125x4.6mm,5μm,1mL/分)を Macherey-Nagel GmbH & Co.KG(デューレン、ドイツ)より購入して、MultoKrom 100-5 C18(カラムII,125x4.6mm,5μm,1mL/分)、Multospher 100 RP 18-5μ(カラムIII,125x4.6mm,5μm,1mL/分)、MultoKrom 100-5 C18(カラムIV,250x10mm,5μm,5mL/分)、MultoHigh 100 RP 18-5μ(カラムV,250x10mm,5μm,5mL/分)、及び Multospher 100 RP 18-5μ(カラムVI,250x10mm,5μm,5mL/分)を CS-Chromatographie Service GmbH(ランガーヴェーエ、ドイツ)より購入した。水中0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)(v/v,溶媒A)とアセトニトリル(MeCN)中0.1% TFA並びに5%水(v/v/v,溶媒B)の異なるグラジエントを一定流量で適用することによって、分析される有機化合物を溶出させた。有機化合物のエレクトロスプレーイオン化(ESI)質量分析法(MS)分析は、expressionLCMS質量分析計(Advion 社、イサカ、アメリカ)で実施した。
【0289】
1.2 放射標識化装置
塩基性溶液としての[125I]NaI(74TBq/ミリモル、3.1GBq/mL,40mM NaOH)を Hartmann Analytic GmbH(ブラウンシュヴァイク、ドイツ)より購入する一方、水性(aq.)[18F]フッ化物(概ね0.6~2.0GBq/mL)は、Klinikum rechts der Isar(ミュンヘン、ドイツ)によって提供された。
【0290】
[18F]フッ化物の定着のために、Waters GmbH(エシュボルン、ドイツ)製の Sep-Pak Accell Plus QMA Carbonate Plus Light カートリッジ(46mg吸着剤/カートリッジ、粒径40μm)を使用した。「DNA合成用、99.9%以上」の品質グレードの無水(anhyd.)MeCN(VWR International GmbH)でこのカートリッジを濯ぐことによって、[18F]フッ化物ロード化QMAを乾燥させた。乾燥させた[18F]フッ化物のQMAからの溶出は、「合成用」品質グレードのKryptofix(登録商標)222(Merck KGaA)と「99.99%,半導体グレード」品質のKOH(Sigma-Aldrich Chemie GmbH)の無水MeCN(「DNA合成用99.9%以上」)中の溶液を使用して達成した。「99.999%,不純物金属に基づく濃度」品質グレードのシュウ酸(Sigma-Aldrich Chemie GmbH)の「DNA合成用、99.9%以上」の品質グレードの無水MeCN中の溶液を用いて、[18F]フッ化物含有溶出液の部分中和を行った。標識すべきSiFA-PSMAリガンドは、品質グレード「99.9%以上」の無水ジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma-Aldrich Chemie GmbH)中の溶液として加えた。18F-標識化SiFA-PSMAリガンドの固相抽出(SPE)には、Waters GmbH 製の Oasis HLB Plus Light カートリッジ(30mg吸着剤/カートリッジ、粒径30μm)を使用した。125I-標識化参照リガンドXIIは、やはり Waters GmbH より購入した Sep-Pak C18 Plus Short カートリッジ(360mg吸着剤/カートリッジ、粒径55~105μm)を用いたSPEにより精製した。
【0291】
放射標識された化合物の分析用の特性決定と分取用の精製は、グラジエントポンプ(2台のLC-20AD)、オートサンプラー(SIL-20AHT)、システムコントローラー(CBM-20A)、カラムオーブン(CTO-10ASVP)、UV/Vis検出器(SPD-20A)、及びNaI検出器付きLB 500 HERM無線フローモニター(Berthold Technologies GmbH & Co. KG,バート・ヴィルトバート、ドイツ)からなるHPLCシステム(ドイツ島津製作所)において Multospher100 RP 18-5μ(カラムIII,125x4.6mm,5μm,1mL/分)で実施した。クロマトグラムの可視化及び解析には、ドイツ島津製作所製の LabSolutions ソフトウェアを再び使用した。放射標識化合物の溶出には、先に紹介したのと同じ溶媒(溶媒Aと溶媒B)を異なるグラジエントで、そして一定の流量で適用した。活性の定量は、2480 WIZARD2 自動ガンマカウンター(パーキン・エルマー社、ウォルサム、アメリカ)を使用して実施した。
【0292】
1.3 細胞培養と動物
ライプツィヒ・ドイツ微生物及び細胞培養物保存機関(Leibniz-Institute German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)(ブラウンシュヴァイク、ドイツ)より、PSMAを発現するLNCaP細胞(ヒト前立腺癌細胞系)を購入した。
【0293】
1.4 放射標識化
1.4.1 SiFA担持化合物の18F-標識化
SiFA担持化合物の18F-標識化を既報のプロトコール(C. Wangler, S. Niedermoser, J. Chin, K. Orchowski, E. Schirrmacher, K. Jurkschat, L. Iovkova-Berends, A. P. Kostikov, R. Schirrmacher, B. Wangler, nature protocols 2012, 7, 1946)に従って、わずかな変更を加えて実施した。18F-標識化に先立って、Kryptofix(登録商標)222(51.25mg,136マイクロモル、1.1当量)を水(1mL)中1M KOH(125μL,125マイクロモル、1.1当量)に溶かして、この混合物を凍結乾燥させることによって、[K+@2.2.2]OH-溶出カクテルキットをすでに調製した。放射性フッ素化のための乾燥標識化条件を得るために、水(10mL)で予備状態調整した(precon.)Sep-Pak Accell Plus QMA Carbonate Plus Light カートリッジの上へ水性[18F]フッ化物をロードした。空気(2x20mL)で乾燥後、このカートリッジを無水MeCN(10mL)でゆっくり濯いで、その後空気(2x20mL)で再び乾燥させた。調製済みの[K+@2.2.2]OH-キットを無水MeCN(750μL)に溶かして、このカクテルキットの一部(500μL)を使用して、乾燥済み[18F]フッ化物をこのカートリッジより溶出させた。その後、無水MeCN中1Mシュウ酸(30μL、30マイクロモル)の添加によって、この溶出物を部分中和した。この混合物全体又はそのアリコートを無水DMSO中のSiFA担持化合物(1mM,20~30μL,20~30 ナノモル)とともに室温(rt)で5分間インキュベートした。この反応混合物をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS,pH=3,HCl水溶液を含む、10mL)でさらに希釈して、無水(abs.)エタノール(EtOH,10mL)と水(10mL)で予備状態調整した Oasis HLB Plus Light カートリッジに通した。最後に、このカートリッジを水(10mL)又はPBS(10mL)で濯ぎ、空気(20mL)で乾燥させて、この放射性フッ素化した化合物を無水EtOH/水の混合物(1:1,v/v,200~350μL)で溶出させた。無線RP-HPLC及び/又は無線TLCによって、この18F-標識化SiFA担持化合物の放射化学純度を決定した。
【0294】
1.4.2 参照化合物前駆体Xの125I-標識化
【0295】
【0296】
試験管内(in vitro)試験のために、既報のプロトコール(M. Weineisen, J. Simecek, M. Schottelius, M. Schwaiger, H.-J. Wester, EJNMMI research 2014, 4, 63)に従って、放射性ヨウ素化参照リガンド[125I]L-Glu-u-L-Lys(p-I-BA)(XII)を調製した。30% H2O2(130μL)を酢酸(50μL)と混合して、この混合物を室温で2時間インキュベートすることによって、最初の過酢酸の調製を達成した。その後で、過酢酸(20μL)、酢酸(10μL)、MeCN(20μL)、及び塩基性[125I]NaI(5μL,40mM NaOH,13.8MBq,74TBq/ミリモル)の溶液に参照化合物前駆体X(概ね0.1mg)を溶かした。この反応混合物を室温で15分間インキュベートして、引き続きメタノール(MeOH,10mL)と水(10mL)で予備状態調整した Sep-Pak C18 Plus Short カートリッジ上へロードした。このカートリッジを水(10mL)と空気(2x20mL)で濯いだ後、この放射性ヨウ素化生成物を無水EtOH/MeCNの混合物(1:1,v/v,1.5mL)で溶出させて、穏やかな窒素流の下で蒸発乾固させた。この残渣をTFA(400μL)に再び溶かして、室温で30分間インキュベートした。最後に、溶媒を蒸発乾固させ、残渣をMeCN/水(1:5,v/v,400μL)に溶かして、無線RP-HPLCにより精製して、放射性ヨウ素化参照リガンドXII(3.85MBq)の溶液を得た。一定容量の活性決定の後で、ハンクス平衡化塩溶液(HBSS,1%ウシ血清アルブミン(BSA)添加、v/v)での希釈によって、参照化合物XIIの2nM溶液を調製した。
【0297】
分取用無線RP-HPLC(カラムIII,A中20~40% B,20分):tR=12.1分。
1.5 試験管内(in vitro)評価
1.5.1 IC50-決定
ダルベッコ改良イーグル培地/栄養混合物F-12(DMEM/F-12,10%胎仔ウシ血清(FCS)添加、v/v)においてLNCaP細胞を増殖させて、加湿した5% CO2雰囲気において37℃で維持した。PSMA結合親和性(IC50)の決定のために、実験の24±2時間前に細胞を採取して、24ウェルプレートに播いた(1mL中1.5x105個の細胞/ウェル)。培養基の除去後、LNCaP細胞をHBSS(1% BSA添加、v/v,4℃,500μL)で処理して、その後HBSS(1% BSA添加、v/v,4℃,200μL)中での平衡化のために氷上に15分放置した。その後で、SiFA-PSMAリガンドの適正濃度でのHBSS溶液(10-4~10-10M,25μL)並びに放射性ヨウ素化参照化合物XIIの2nM HBSS溶液(1% BSA添加、v/v,25μL)を加え、SiFA-PSMA阻害剤のウェル上清中10-5~10-11M溶液を得た。対照系列では、SiFA-PSMAリガンド溶液の代わりにHBSS(1% BSA添加、v/v,25μL)を使用した。各濃度溶液と対照溶液は、同一3検体(triplicate)で調製した。氷上で1時間のインキュベーション後、アッセイ培地を除去して、細胞をHBSS(200μL,4℃)で洗浄した。この洗浄画分を上清と合わせて、競合剤XIIの非結合画分とした。引き続き、LNCaP細胞を1M NaOH水溶液(200μL)で少なくとも10分間処理して、生じる細胞溶解液を除去した。このウェルを1M NaOH水溶液(200μL)で再び処理して、この洗浄画分を先の溶解液と合わせて、放射性リガンドXIIのPSMA結合画分を得た。最後に、この上清と溶解液のいずれについても、活性をガンマカウンターで測定した。この実験は、少なくとも3回繰り返して、GraphPad PRISM 8.0.2 ソフトウェア(Graphpad Software 社、ラホヤ、アメリカ)を使用してIC50値を計算した。
【0298】
1.5.2 内部移行(internalization)
LNCaP細胞をDMEM/F-12(10% FCS添加、v/v)において増殖させて、加湿した5% CO2雰囲気において37℃で維持した。内部移行試験のために、実験の24±2時間前にLNCaP細胞を採取して、24ウェルプレートに播いた(1mL中1.25x105個の細胞/ウェル)。培養基の除去に続いて、細胞をDMEM-F12(5% BSA添加、v/v,500μL)で洗浄して、DMEM-F12(5% BSA添加、v/v,200μL)中で平衡化させるために37℃で15分間放置した。各ウェルを遮断のためにDMEM-F12(5% BSA添加、v/v,25μL)又は2-(ホスホノメチル)-ペンタン二酸(PMPA)溶液(PBS中100μM,25μL)のいずれかで処理した。その後で、18F-標識化SiFA-PSMAリガンド(PBS中5nM,25μL)を加えて、この細胞を37℃で1時間インキュベートした。この実験は、24ウェルプレートを氷上に3分間置くこととアッセイ培地の除去によって止めた。各ウェルをHBSS(4℃,250μL)で濯いで、その画分を先のアッセイ培地と合わせて、非結合放射性リガンドの量とした。表面結合活性の除去のために、LNCaP細胞をPMPA溶液(PBS中10μM,4℃,250μL)とともに5分間インキュベートして、PBS(250μL,4℃)で再び濯いだ。LNCaP細胞を1M NaOH水溶液(250μL)と少なくとも10分間インキュベートして、後続の1M NaOH水溶液(200μL)での洗浄工程の画分と合わせることによって、内部移行した活性を決定した。それぞれの実験(対照と遮断)は、同一3検体で実施した。最後に、この上清、表面結合画分、及び溶解液について、活性をガンマカウンターで測定した。いずれの内部移行試験にも、同様に実施される、参照化合物XII(1% BSA添加HBSS中2nM,v/v)を使用する参照試験が付随した。データを非特異的な内部移行について補正して、放射性ヨウ素化参照化合物について観測される特異的内部移行へ正規化した。
【0299】
1.5.3 n-オクタノール-PBS分配係数
n-オクタノール(500μL)とPBS(500μL,pH=7.4)を含有する試験管の中へ概ね0.5MBqの18F-標識化SiFA-PSMAリガンドを加えた。この2相混合物を室温で3分間激しく振り混ぜた後で、この試験管を9,000rpmで5分間遠心分離させて、定量的な相分離を達成した。最後に、各層の150μLをピペットで取り出して、ガンマカウンターを使用して活性を測定した。この実験を少なくとも5回繰り返した後で、以下の式に従って、n-オクタノール-PBS分配係数のlogD7.4を計算した:
【0300】
【0301】
1.5.4 HSAへの結合
ヒト血清アルブミン(HSA)への結合の決定のために、Chiralpak HSA カラム(50x3mm,5μm,H13H-2433)を0.5mL/分の一定流速で使用した。50mM NH4OAc水溶液(pH=7)(溶媒C)とイソプロパノール(溶媒D)からなる移動相を各実験について用時調製して、1回のみ使用した。参照物質(表1)並びに分析されるSiFA-PSMAリガンドを溶媒C/溶媒Dの混合物(1:1,v/v,0.5mg/mL)に溶かして、HSAカラム(0~3分:100% C,3~20分:C中20% D,λ=254nm)より溶出させた。このカラムを室温に保って、捕捉時間を低下させるシグナルの検出後に各試行を止めた。9種の参照物質は、13%~99%のHSA結合範囲を示すので、連続的に注入して、ソフトウェアの OriginPro 2018b(図面1)を用いてS字状(シグモイド)の較正曲線を確定した。
【0302】
表1.Chiralpak HSA カラムの較正に使用した参照物質と、例示的に実施した実験に対応する保持時間:tR、それぞれのHSA結合の文献値(K. Yamazaki, M. Kanaoka, Journal of pharmaceutical sciences 2004, 93, 1480-1494)、及びHSA結合文献値の対数K。
【0303】
【0304】
図面1は、「参照物質のHSA結合文献値の対数K」対「Chiralpak HSA カラムでの保持時間の各対数」の例示のS字状プロットを示す。
1.6 生体内(in vivo)評価
いずれの動物実験も、ドイツにおける一般的な動物福祉規制と実験動物の管理及び使用についての研究施設ガイドラインに従って行った。腫瘍異種移植片を定着させるために、LNCaP細胞(概ね107個)をDMEM-F12/Matrigelの混合物(200μL,1:1,v/v)に再懸濁させて、6~8週齢のCB-17 SCID雄性マウスの右肩に皮下接種した。腫瘍体積が直径4~7mmに達したとき(接種後概ね3~4週)に動物を実験に使用した。
【0305】
1.6.1 生体内分布試験
生体内分布試験では、イソフルラン麻酔したLNCaP担腫瘍CB-17 SCID雄性マウスに尾静脈より概ね1~4MBq(0.2ナノモル)の18F-標識化SiFA-PSMAリガンドを注射して、注射後1時間で犠牲にした(n=4~5)。選択した臓器、組織、及び体液(血液、心臓、肺、肝臓、脾臓、膵臓、内容物無しの胃、内容物有りの腸、腎臓、副腎、筋肉、骨、腫瘍、唾液腺、及び尾)を取り出し、秤量して、ガンマカウンターを使用して活性を測定した。
【0306】
1.6.2 小動物のμPET/CTイメージング
μPET/CTイメージング試験では、イソフルラン麻酔下のLNCaP担腫瘍CB-17 SCID雄性マウスに尾静脈より概ね6MBq(0.2ナノモル)の18F-標識化SiFA-PSMAリガンドを注射した。注射の1時間後に、VECTor4CTスキャナー(MILabs B. V.,ユトレヒト、オランダ)にて15分の捕捉時間で静止画像を記録して、ソフトウェア PMOD 4.0(PMOD Technologies LLC,チューリッヒ、スイス)を使用して再構成した。
【0307】
2.合成プロトコール
2.1 SiFA-ビルディングブロックの合成
SiFA-ビルディングブロックの合成は、既報のプロトコールに従って、わずかな変更を加えて行った(スキーム1)。化合物IVをもたらす最終反応は、各アルコールIIIの直接酸化によって達成した。報告された分光分析データは、文献と一致している(L. Iovkova, B. Wangler, E. Schirrmacher, R. Schirrmacher, G. Quandt, G. Boening, M. Schurmann, K. Jurkschat, Chemistry-A European Journal 2009, 15, 2140-2147;D. P. Smith, J. Anderson, J. Plante, A. E. Ashcroft, S. E. Radford, A. J. Wilson, M. J. Parker, Chemical Communications 2008, 5728-5730)。
【0308】
【0309】
スキーム1. 4-(ジtert-ブチルフルオロシリル)安息香酸(IV)の合成:a)イミダゾール、塩化tert-ブチルジメチルシリル、(DCM);b)ペンタン中1.7M tBuLi,ジtert-ブチルジフルオロシラン、(THF);c)37% .HCl水溶液、(MeOH);d)1M KMnO4水溶液、1.25M NaH2PO4水溶液、(DCM)。
【0310】
2.1.1 合成実施例1:((4-ブロモベンジル)オキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン(I)
【0311】
【0312】
4-ブロモベンジルアルコール(4.68g,25.0ミリモル、1.0当量)の無水ジメチルホルムアミド(DMF,70mL)溶液へイミダゾール(2.04g,30.0ミリモル、1.2当量)と塩化tert-ブチルジメチルシリル(4.52g,30.0ミリモル、1.2当量)を加えた。生じる混合物を室温で16時間撹拌し、続いて氷冷水(250mL)中へ注いで、ジエチルエーテル(Et2O,5x50mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3水溶液(2x100mL)と飽和NaCl水溶液(100mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過して、真空で濃縮した。生じる粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル(PE)中5%酢酸エチル(EtOAc)、v/v)によって精製して、I(7.27g,24.1ミリモル、96%)を無色のオイルとして得た。
【0313】
分析用RP-HPLC(カラムI、A中50~100% B、15分、λ=220nm):tR=14.0分;TLC:Rf(PE中5% EtOAc,v/v)=0.87[UV];MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m. i.(モノアイソトピック)質量(C13H21BrOSi):300.1,m/z 実測値:不検出。
【0314】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 0.11 (s, 6H, C7-H3, C8-H3), 0.96 (s, 9H, C10-H3, C11-H3, C12-H3), 4.77 (s, 2H, C1-H2), 7.34 (d, J = 7.9 Hz, 2H, C3-H, C4-H), 7.57 (d, J = 8.0 Hz, 2H, C5-H, C6-H)。
【0315】
2.1.2 合成実施例2:ジtert-ブチル(4-(((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)フェニル)-フルオロシラン(II)
【0316】
【0317】
((4-ブロモベンジル)オキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン(I)(2.00g,6.64ミリモル、1.0当量)の無水テトラヒドロフラン(THF,20mL)溶液へtert-ブチルリチウム(tBuLi)のペンタン溶液(9.37mL,1.7m,15.9ミリモル、2.4当量)を-78℃で加えた。生じる黄色の反応混合物を-78℃で30分間撹拌した後で、ジtert-ブチルジフルオロシラン(1.43g,1.60mL,7.97ミリモル、1.2当量)の無水THF(15ml)中の撹拌溶液へ-78℃で滴下した。引き続き、この混合物をそのまま室温まで18時間にわたり温めて、飽和NaCl水溶液(120mL)で加水分解して、Et2O(4x100mL)で抽出した。合わせた有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過して真空で濃縮して、II(2.77g)を薄黄色のオイルとして得た。この生成物は、さらに精製せずに次の反応工程に使用した。
【0318】
分析用RP-HPLC(カラムI,A中80~100% B,20分、λ=220nm):tR=16.9分;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C21H39FOSi2):382.3,m/z 実測値:不検出。
【0319】
2.1.3 合成実施例3:(4-(ジtert-ブチルフルオロシリル)フェニル)メタノール(III)
【0320】
【0321】
ジtert-ブチル(4-(((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)フェニル)フルオロシラン(II)(1.88g,4.92ミリモル、1.0当量)のMeOH(75mL)溶液へ触媒量の37% HCl水溶液(0.8mL)を加えた。この反応混合物を室温で20時間撹拌して、その後真空で濃縮した。引き続き、この残渣をEt2O(50mL)に溶かし、飽和NaHCO3水溶液(50mL)で洗浄してEt2O(3x50mL)で抽出した。合わせた有機画分をMgSO4で乾燥させ、濾過して真空で濃縮して、III(1.96g)を黄色がかったオイルとして得た。この生成物は、さらに精製せずに次の反応工程に使用した。
【0322】
分析用RP-HPLC(カラムI,A中50~100% B,15分、λ=220nm):tR=9.3分;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C15H25FOSi):268.2,m/z 実測値:不検出。
【0323】
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 1.06 (d, 18H, J = 1.2 Hz, C8-H3, C9-H3, C10-H3, C12-H3, C13-H3, C14-H3), 4.71 (s, 2H, C1-H2), 7.38 (d, 2H, J = 7.8 Hz, C5-H, C6-H), 7.61 (d, 2H, J = 8.0 Hz, C3-H, C4-H)。
【0324】
2.1.4 合成実施例4:4-(ジtert-ブチルフルオロシリル)安息香酸(IV)
【0325】
【0326】
1M KMnO4水溶液(37mL,36.7ミリモル、1.5当量)、tert-ブチルアルコール(tBuOH,65mL)、ジクロロメタン(DCM,9mL)、及び1.25M NaH2PO4水溶液(65mL,81.5ミリモル、3.3当量)の混合物に(4-(ジtert-ブチルフルオロシリル)フェニル)メタノール(III)(6.61g,24.6ミリモル、1.0当量)を溶かした。この反応混合物を室温で45分間撹拌してからそれを0℃へ冷やした後で、過剰のKMnO4(7.78g,49.2ミリモル、2.0当量)を加えて、この混合物を0℃でさらに2時間撹拌した。引き続き、この反応を飽和Na2SO3水溶液(150mL)の添加によってクエンチした。沈殿したMnO2を37% HCl水溶液(20mL)で溶かして、生じる溶液をEt2O(3x300mL)で抽出した。合わせた有機画分を飽和NaHCO3水溶液(300mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過して真空で濃縮して白色の固形物を得て、これをEt2O/n-ヘキサン(1:3,v/v)からの再結晶によって精製して、IV(2.57g,9.10ミリモル、37%)を得た。
【0327】
分析用RP-HPLC(カラムI,A中50~100% B,15分、λ=220nm):tR=8.5分;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C15H23FO2Si):282.2,m/z 実測値:不検出。
【0328】
2.2 PSMA-結合モチーフの合成
既報の類似化合物の合成プロトコール(スキーム2)(M. Weineisen, J. Simecek, M. Schottelius, M. Schwaiger, H. J. Wester, EJNMMI research 2014, 4, 63)に従って、PSMA-結合モチーフ:tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu-OtBu(VII)を入手した。
【0329】
【0330】
スキーム2.tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu-OtBu(VII)の合成:a)CDI,DMAP,TEA,(DCM);b)H-l-Glu(OBn)-OtBu・HCl,TEA,(DCE);c)10% Pd/C,(EtOH)。
【0331】
2.2.1 合成実施例5:2-(1H-イミダゾール-1-カルボキサミド)ペンタン二酸(S)-ジtert-ブチル(V)
【0332】
【0333】
アルゴン雰囲気下に、H-l-Glu(OtBu)-OtBu・HCl(2.91g,11.2ミリモル、1.0当量)及び4-ジメチルアミノピリジン(DMAP,54.7mg,0.450ミリモル、0.04当量)の無水DCM(25mL)溶液へトリエチルアミン(TEA,3.90mL,28.0ミリモル、2.5当量)を室温で滴下すると、白色の沈殿が生成した。この懸濁液を0℃へ冷やして、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI,2.00g,12.3ミリモル、1.1当量)の無水DCM(25mL)中の氷冷溶液へ滴下した。生じる無色の溶液を室温で一晩撹拌した後で、DCM(25mL)を加えて、有機相を飽和NaHCO3(30mL)、水(2x30mL)、及び飽和NaCl(30mL)で抽出した。最後にこの有機画分を真空で濃縮して、V(4.05g)を黄色がかったゲルの形態で得た。この生成物は、さらに精製せずに次の反応工程に使用した。
【0334】
分析用RP-HPLC(カラムI,A中10~90% B,15分、λ=220nm):tR=14.5分;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C17H27N3O5):353.2,m/z 実測値:376.3[M+Na]+。
【0335】
2.2.2 合成実施例6:tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu(OBn)-OtBu(VI)
【0336】
【0337】
2-(1H-イミダゾール-1-カルボキサミド)ペンタン二酸(S)-ジtert-ブチル(V)(2.73g,7.73ミリモル、1.0当量)及びH-l-Glu(OBn)-OtBu・HCl(2.55g,7.73ミリモル、1.0当量)の1,2-ジクロロエタン(DCE,25mL)溶液を0℃へ冷やして、その後TEA(2.16mL,15.5ミリモル、2.0当量)を滴下して処理した。この反応混合物を初めに0℃で1時間、次いで室温で5時間撹拌して、最後に40℃で一晩撹拌した。この混合物を真空で濃縮した後で、残渣をMeOH(5mL)に溶かしてフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、n-ヘキサン中40→50% EtOAc,v/v)によって精製して、VI(3.89g,6.72ミリモル、87%)を黄色がかった粘稠なオイルとして得た。
【0338】
分析用RP-HPLC(カラムI,A中10~90% B,15分、λ=220nm):tR=17.4分;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C30H46N2O9):578.3,m/z 実測値:411.3[M-3tBu+H]+,467.3[M-2tBu+H]+,523.3[M-tBu+H]+,601.5[M+Na]+。
【0339】
2.2.3 合成実施例7:tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu-OtBu(VII)
【0340】
【0341】
ベンジル-(Bn)脱保護化のために、tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu(OBn)-OtBu(VI)(3.89g,6.73 ミリモル、1.0当量)を無水EtOH(35mL)に溶かして、10%パラジウム担持カーボン(390mg,0.673ミリモル、0.1当量、w/w)で処理した。この反応混合物水素雰囲気下に室温で一晩撹拌し、Celite(登録商標)に通して濾過して真空で濃縮して、VII(3.00g,6.14ミリモル、91%)を無色の吸湿性固形物として得た。
【0342】
分析用RP-HPLC(カラムI,A中10~90% B,15分、λ=220nm):tR=11.3分;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C23H40N2O9):488.3,m/z 実測値:321.2[M-3tBu+H]+,489.1[M+H]+,511.4[M+Na]+。
【0343】
2.3 合成実施例8:参照化合物前駆体Xの合成
参照化合物前駆体:tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Lys(p-SnBu3-BA)-OtBu(X)は、既報の手順(スキーム3)(M. Weineisen, J. Simecek, M. Schottelius, M. Schwaiger, H.-J. Wester, EJNMMI research 2014, 4, 63)に従って、3つの反応工程で合成した。
【0344】
【0345】
スキーム3.参照化合物前駆体Xの合成:a)H-l-Lys(Cbz)-OtBu・HCl,TEA,(DCE);b)10% Pd/C,(EtOH);c)4-(トリ-n-ブチルスタンニル)安息香酸N-スクシンイミジル、TEA,(DCM)。
【0346】
tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Lys(Cbz)-OtBu(VIII)
【0347】
【0348】
2-(1H-イミダゾール-1-カルボキサミド)ペンタン二酸(S)-ジtert-ブチル(V)(3.57g,10.1ミリモル、1.0当量)のDCE(45mL)溶液を0℃へ冷やして、TEA(2.82mL,20.2ミリモル、2.0当量)並びにH-l-Lys(Cbz)-OtBu・HCl(4.14g,11.1ミリモル、1.1当量)を撹拌下に加えた。この反応混合物を40℃まで一晩加熱し、引き続き水(45mL)と飽和NaCl水溶液(45mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過して、真空で濃縮した。生じる粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカ、n-ヘキサン中40% EtOAc,v/v)によって精製して、VIII(5.04g,8.11ミリモル、80%)を無色のオイルとして得た。
【0349】
TLC:Rf(n-ヘキサン中5% EtOAc,v/v)=0.45[KMnO4]。
tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Lys-OtBu(IX)
【0350】
【0351】
ベンジルオキシカルボニル-(Cbz)脱保護化のために、tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Lys(Cbz)-OtBu(VIII)(6.03g,9.71ミリモル、1.0当量)を無水EtOH(150mL)に溶かして、10%パラジウム担持カーボン(600mg,1.00ミリモル、0.1当量、w/w)で処理した。この反応混合物を水素雰囲気下に室温で一晩撹拌し、Celite(登録商標)に通して濾過して真空で濃縮して、IX(4.33g,8.88ミリモル、91%)を無色のワックス状固形物として得た。
【0352】
分析用RP-HPLC(カラムI,A中10~90% B,15分、λ=220nm):tR=12.6分;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C24H45FN3O7):487.3,m/z 実測値:488.3[M+H]+,510.3[M+Na]+。
【0353】
tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Lys(p-SnBu3-BA)-OtBu(X)
【0354】
【0355】
tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Lys-OtBu(IX)(86.4mg,0.177ミリモル、1.2当量)と4-(トリ-n-ブチルスタンニル)安息香酸N-スクシンイミジル(75.0mg,0.148ミリモル、1.0当量)をDCM(1.5mL)に溶かして、TEA(92.6μL,0.664リモル、4.5当量)を加えた。この反応混合物を室温で一晩撹拌して、引き続き水(50mL)で洗浄した。最後に、分離した有機相を真空で濃縮して、参照化合物前駆体X(118.6mg)を薄黄色のオイルとして得た。この粗生成物をさらに精製せずに125I-標識化反応に使用した。
【0356】
MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C43H75N3O8Sn):881.5,m/z 実測値:882.7[M+H]+,1764.5[2M+H]+。
【0357】
2.4 合成実施例9:tBuO-d-Glu(OtBu)-u-d-Glu-OtBu(XV)の合成
薬物動態修飾因子XVは、PSMA-結合モチーフ:tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu-OtBu(VII)と同様に合成した(スキーム4)。
【0358】
【0359】
スキーム4.tBuO-d-Glu(OtBu)-u-d-Glu-OtBu(XV)の合成:a)CDI,DMAP,TEA,(DCM);b)H-d-Glu(OBn)-OtBu・HCl,TEA,(DCE);c)10% Pd/C,(EtOH)。
【0360】
【0361】
H-d-Glu(OtBu)-OtBu・HClを出発材料として、第一の反応工程において2-(1H-イミダゾール-1-カルボキサミド)ペンタン二酸(R)-ジtert-ブチル(XIII)(1.48g,4.19ミリモル、91%)を合成し、H-d-Glu(OBn)-OtBu・HClとカップリングさせて、第二の変換でtBuO-d-Glu(OtBu)-u-d-Glu(OBn)-OtBu(XIV)(2.05g,3.54ミリモル、84%)を得て、最後にBn-脱保護化して、薬物動態修飾因子XV(1.42g,2.91ミリモル、82%)を無色の吸湿性固形物として得た。
【0362】
分析用RP-HPLC(カラムI,A中10~90% B,15分、λ=220nm):tR=12.0分;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C23H40N2O9):488.3,m/z 実測値:489.5[M+H]+。
【0363】
2.5 合成実施例10:3,5-ビス(tert-ブトキシカルボニル)安息香酸(XVI)の合成
トリメシン酸の2部分のtBu-保護化(スキーム5)によって、3,5-ビス(tert-ブトキシカルボニル)安息香酸(XVI)を合成した。
【0364】
【0365】
スキーム5.3,5-ビス(tert-ブトキシカルボニル)安息香酸(XVI)の合成:a)CDI,tBuOH,DBU,(DMF)。
【0366】
【0367】
トリメシン酸(500mg,2.38 ミリモル、1.0当量)とCDI(769mg,4.76ミリモル、2.0当量)をDMF(10mL)に溶かして、この溶液を40℃で1時間撹拌した。その後、tBuOH(667μL,7.14リモル、3.0当量)と1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデク-7-エン(DBU,707μL,4.76ミリモル、2.0当量)を加えて、この反応混合物を40℃でさらに24時間撹拌した後で、フラッシュクロマトグラフィーによって精製した。3,5-ビス(tert-ブトキシカルボニル)安息香酸(XVI)(310mg,0.962ミリモル、40%)を無色の固形物として入手した。
【0368】
フラッシュクロマトグラフィー(BiotageTM SNAP KPC18-HSカラム、12g,93A(オングストローム),382m2/g,A中30~80% B,20分、λ=220nm):tR=15.5分;MS(ESI,ネガティブ):m/z 計算 m.i.質量(C17H22O6):322.1,m/z 実測値:320.9[M-H]-。
【0369】
2.6 SPPSについての一般的な合成手順
GSP1 樹脂ローディング
2-CTC-樹脂(1.0量、1.60ミリモル/g)をシリンジ中へ移して、溶解したフルオレニルメチルオキシカルボニル-(Fmoc)保護化アミノ酸又はFmoc-保護化カルボキシ担持化合物(1.5当量)をDMF(樹脂1gにつき10mL)中のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA,1.3当量)とともに含有する溶液で膨潤させた。この混合物を室温で5分間振り混ぜてから、DIPEA(2.6当量)を再び加えた。このシリンジ内容物を室温でさらに90分間振り混ぜた。次いで、MeOH(樹脂1gにつき1mL)を加えて、この混合物を室温で15分間振り混ぜることによって、2-CTC樹脂上の未反応基をキャッピングした。最後に、この樹脂を濾過し、DMF(樹脂1gにつき3x15mL)、MeOH(樹脂1gにつき3x15mL)、DCM(樹脂1gにつき3x15mL)で連続的に洗浄して、真空で乾燥させた。樹脂ローディングは、以下の式に従って計算した(等式1)。
【0370】
【0371】
等式1.樹脂ローディングの計算
GSP2 樹脂上でのFmoc-脱保護化
カップリング反応に先立って、この樹脂をDMF(v/v,樹脂1gにつき15mL)中20% ピペリジン(Pip)の溶液で2回(それぞれ室温で5分間と15分間)処理することによって、アミン官能基をFmoc-脱保護化した。1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘクス-1-イリデン)エチル-(Dde)保護基を含有する化合物では、この処理を室温で5分間、2回実施した。引き続き、この樹脂を濾過して、DMF(樹脂1gにつき7x15mL)で徹底的に洗浄した。
【0372】
GSP3 樹脂上でのアミド結合形成
a)アミノ酸/カルボキシ担持化合物のカップリング反応
アミノ酸又はカルボキシ-担持化合物(1.5~3.0当量)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt,1.5~3.0当量)、及びO-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム・テトラフルオロホウ酸塩(TBTU,1.5~3.0当量)をDMF(樹脂1gにつき10mL)に溶かして、sym-コリジン(4.5~9.0当量)を加えた。10分後、膨潤した樹脂を含有するシリンジ中へこの混合物を移して、室温で1.5時間振り混ぜた。最後に、この樹脂を濾過して、DMF(樹脂1gにつき3x15mL)並びにDCM(樹脂1gにつき3x15mL)で洗浄した。
【0373】
b)無水コハク酸カップリング反応
無水コハク酸(7.0当量)及びDIPEA(7.0当量)のDMF(樹脂1gにつき10mL)溶液を、膨潤した樹脂を含有するシリンジ中へ移して、室温で12時間振り混ぜた。その後この樹脂を濾過して、DMF(樹脂1gにつき3x15mL)並びにDCM(樹脂1gにつき3x15mL)で洗浄した。
【0374】
c)SiFA-カップリング反応
4-(ジtert-ブチルフルオロシリル)安息香酸(IV)(2.0当量)、HOAt(2.0当量)、及びTBTU(2.0当量)をDMF(樹脂1gにつき10mL)に溶かして、sym-コリジン(6.0当量)を加えた。10分後、膨潤した樹脂を含有するシリンジ中へこの混合物を移して、室温で2時間振り混ぜた。引き続き、この樹脂を濾過して、DMF(樹脂1gにつき3x15mL)並びにDCM(樹脂1gにつき3x15mL)で洗浄した。
【0375】
GSP4 樹脂上でのDde-脱保護化
(a)Fmoc-保護基の非存在時でのDde-脱保護化
Fmoc-保護基の非存在時には、DMF(v/v,樹脂1gにつき15mL)中2%ヒドラジン一水和物の溶液で該樹脂を室温で20分間処理することによってDde-脱保護化を行った。最後に、この樹脂を濾過して、DMF(樹脂1gにつき7x15mL)並びにDCM(樹脂1gにつき3x15mL)で徹底的に洗浄した。
【0376】
(b)Fmoc-保護基の存在時での選択的Dde-脱保護化
Fmoc-保護基の存在時には、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びDMFの混合物(5:1,v/v,樹脂1gにつき15mL)中のイミダゾール(90当量)及び塩酸ヒドロキシルアミン(120当量)の溶液で該樹脂を室温で1.5時間、2回処理することによってDde-脱保護化を実施した。最後にこの樹脂を濾過して、DMF(樹脂1gにつき3x15mL)並びにDCM(樹脂1gにつき3x15mL)で徹底的に洗浄した。
【0377】
GSP5 樹脂からの切断と最終の脱保護化
酸に不安定な保護基が付いた、樹脂に結合した化合物をTFA/トリイソプロピルシラン(TIPS)/水(95:2.5:2.5,v/v/v,樹脂1gにつき10mL)の溶液で、室温で1時間、2回処理して、引き続き切断カクテル(樹脂1gにつき10mL)で洗浄した。次いで、窒素流を使用して、合わせた酸性画分を濃縮した。生じる残渣を水性tBuOHに取り、凍結乾燥させて、必要とされるならば、適正な溶媒中での溶解によって、分取用RP-HPLC精製のために調製した。
【0378】
2.7 合成実施例11:SiFA-d-Asp(OH)-OH(XVII)の合成
SiFA-d-Asp(OH)-OH(XVII)は、SPPSより入手した(スキーム6)
【0379】
【0380】
スキーム6.SiFA-d-Asp(OH)-OH(XVII)の合成:a)DMF中20% Pip;b)4-(ジtert-ブチルフルオロシリル)安息香酸(IV)、HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);c)95% TFA/2.5% TIPS/2.5%水。
【0381】
【0382】
2-CTC-樹脂にFmoc-d-Asp(OtBu)-OHをロードした(GSP1)。引き続きこのアミノ酸をFmoc-脱保護化して(GSP2)、4-(ジtert-ブチルフルオロシリル)安息香酸(IV)とカップリングした(GSP3c)。最後にこの化合物をtBu-保護基の除去下に樹脂より切断して(GSP5)、粗製のSiFA-d-Asp(OH)-OH(XVII)(126mg,0.316ミリモル、定量的)を無色のオイルとして得た。
【0383】
分析用RP-HPLC(カラムII,A中10~90% B,15分、λ=220nm):tR=13.0分;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C19H28FNO5Si):397.2,m/z 実測値:398.2[M+H]+。
【0384】
2.8 新規SiFA-PSMAリガンドの合成
2.8.1 合成実施例12:樹脂に結合したSiFA-PSMAリガンド前駆体XI
【0385】
【0386】
スキーム7.樹脂に結合したSiFA-PSMAリガンド前駆体XIの合成:a)DMF中20% Pip;b)tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu-OtBu(VII),HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);c)DMF中2%ヒドラジン一水和物;d)無水コハク酸、DIPEA,(DMF);e)Fmoc-d-Lys-OtBu,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);f)Fmoc-d-Dap(Dde)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);g)イミダゾール、塩酸ヒドロキシルアミン、(DMF/NMP);h)4-(ジtert-ブチルフルオロシリル)安息香酸(IV)、HOAt,TBTU,(DMF)。
【0387】
新規SiFA-PSMAリガンドの合成用の樹脂に結合した前駆体XIは、SPPSより入手した(スキーム7)。故に、2-CTC-樹脂にFmoc-d-Orn(Dde)-OHをロードした(GSP1)。引き続き、このアミノ酸をFmoc-脱保護化(GSP2)して、tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu-OtBu(VII)とカップリングした(GSP3a)。Dde-保護基を切断した(GSP4a)後で、生じるNδ-アミンを無水コハク酸とカップリングした(GSP3b)。次いで、無水物の開放より生じるカルボキシル官能基とFmoc-d-Lys-OtBuをカップリングして(GSP3a)、Fmoc-保護基を切断した(GSP2)。樹脂に結合したペプチドをFmoc-d-Dap(Dde)-OHでさらに伸長して(GSP3a)、Dde-脱保護化した(GSP4b)。最後に、生じるNβ-アミンを4-(ジtert-ブチルフルオロシリル)安息香酸(IV)とカップリングして(GSP3c)、樹脂に結合したペプチドをFmoc-脱保護化して(GSP2)、SiFA-PSMAリガンド前駆体XIを得た。
【0388】
【0389】
2.8.2 実施例1a~実施例1k:SiFA-PSMAリガンド:01a~01k
【0390】
【0391】
スキーム8.SiFA-PSMAリガンド:01a~01kの合成:a1)Fmoc-d-Asp(OtBu)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a2)Fmoc-d-Glu(OtBu)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a3)Fmoc-l-Glu(OtBu)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a4)Fmoc-d-Cit-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a5)Fmoc-d-Dap(Boc)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a6)Fmoc-d-Orn(Boc)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a7)Fmoc-d-Lys(Boc)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a8)Fmoc-l-Lys(Boc)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a9)Fmoc-Gly-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a10)Fmoc-d-Thr(OtBu)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a11)Fmoc-d-Phe-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);b)DMF中20% Pip;c)tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu-OtBu(VII),HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);d)95% TFA/2.5% TIPS/2.5%水。
【0392】
SPPSについての一般手順(スキーム8)に従って、SiFA-PSMAリガンドの01a~01kを合成した。簡潔に言えば、樹脂に結合したペプチドXIをそれぞれのFmoc-保護化アミノ酸とカップリングした(GSP3a)。Fmoc-保護基の切断(GSP2)後、生じるNα-アミンをtBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu-OtBu(VII)とカップリングした(GSP3a)。最後に、このリガンドを酸に不安定な保護基の除去下に樹脂より切断して(GSP5)、分取用RP-HPLCにより精製した。SiFA-PSMAリガンドの01a~01kを無色の固形物として得た。
【0393】
【0394】
理解されるように、R=D-Asp、D-Glu、L-Glu、D-Cit、D-Dap、D-Orn、D-Lys、L-Lys、Gly、D-Thr、及びD-Pheは、化合物01a~化合物01kの式においてR基を担うアミノ酸ユニット:-(CO)-CH(R)-NH-が、D-Asp(実施例01a)、D-Glu(実施例01b)、L-Glu(実施例01c)、D-Cit(実施例01d)、D-Dap(実施例01e)、D-Orn(実施例01f)、D-Lys(実施例01g)、L-Lys(実施例01h)、Gly(実施例01i)、D-Thr(実施例01j)、及びD-Phe(実施例01k)にそれぞれ由来することを示す。
【0395】
01a:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中38~45% B,20分、λ=220nm):tR=9.4分;収量:6.40mg(4.47マイクロモル、36%);分析用RP-HPLC(カラムIII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=11.2分;純度:96%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C59H88FN11O27Si):1429.6,m/z 実測値:716.2[M+2H]2+,1430.9[M+H]+。
【0396】
01b:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中38~45% B,20分、λ=220nm):tR=9.6分;収量:4.70mg(3.25マイクロモル、40%);分析用RP-HPLC(カラムIII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=11.5分;純度:95%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C60H90FN11O27Si):1443.6,m/z 実測値:723.1[M+2H]2+,1445.0[M+H]+。
【0397】
01c:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中38~45% B,20分、λ=220nm):tR=11.0分;収量:4.34mg(3.00マイクロモル、49%);分析用RP-HPLC(カラムIII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=11.4分;純度:98%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C60H90FN11O27Si):1443.6,m/z 実測値:723.2[M+2H]2+,1444.7[M+H]+。
【0398】
01d:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中38~45% B,20分、λ=220nm):tR=8.2分;収量:4.01mg(2.72マイクロモル、56%);分析用RP-HPLC(カラムIII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=11.0分;純度:99%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C61H94FN13O26Si):1471.6,m/z 実測値:737.2[M+2H]2+,1473.0[M+H]+。
【0399】
01f:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中38~45% B,20分、λ=220nm):tR=6.4分;収量:3.82mg(2.47マイクロモル、59%);分析用RP-HPLC(カラムIII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=10.8分;純度:98%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C60H93FN12O25Si):1428.6,m/z 実測値:715.7[M+2H]2+,1429.8[M+H]+。
【0400】
01g:分取用RP-HPLC(カラムVI,A中40~70% B,20分、λ=220nm):tR=6.3分;収量:7.96mg(5.11マイクロモル、49%);分析用RP-HPLC(カラムIII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=10.9分;純度:99%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C61H95FN12O25Si):1442.6,m/z 実測値:722.5.0[M+2H]2+,1443.6[M+H]+。
【0401】
01h:分取用RP-HPLC(カラムVIII,A中35~40% B,20分、λ220nm):tR=7.7分;収量:4.96mg(3.18マイクロモル、37%);分析用RP-HPLC(カラムII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=10.1分;純度:98%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C61H95FN12O25Si):1442.6,m/z 実測値:722.8[M+2H]2+,1443.8[M+H]+。
【0402】
01i:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中38~45% B,20分、λ=220nm):tR=10.5分;収量:7.46mg(5.44マイクロモル、50%);分析用RP-HPLC(カラムII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=11.1分;純度:98%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C57H86FN11O25Si):1371.6,m/z 実測値:687.3[M+2H]2+,1373.6[M+H]+。
【0403】
01j:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中35~45% B,20分、λ=220nm):tR=13.9分;収量:5.56mg(3.93マイクロモル、36%);分析用RP-HPLC(カラムII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=11.0分;純度:97%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C59H90FN11O26Si):1415.6,m/z 実測値:709.1[M+2H]2+,1417.0[M+H]+。
【0404】
01k:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中40~60% B,20分、λ=220nm):tR=11.2分;収量:7.06mg(4.83マイクロモル、47%);分析用RP-HPLC(カラムII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=12.5分;純度:98%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C64H92FN11O25Si):1461.6,m/z 実測値:732.5[M+2H]2+,1464.0[M+H]+。
【0405】
2.8.3 実施例2a:SiFA-PSMAリガンド02a
【0406】
【0407】
スキーム9.SiFA-PSMAリガンド02aの合成:a)Fmoc-d-Dap(Dde)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);b)イミダゾール、塩酸ヒドロキシルアミン、(DMF/NMP);c)tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu-OtBu(VII),HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);d)95% TFA/2.5% TIPS/2.5%水;e)DMF中20% Pip。
【0408】
SiFA-PSMAリガンド02aは、SPPSについて言及した手順(スキーム9)に従って合成した。簡単に言えば、樹脂に結合したペプチドXIをFmoc-d-Dap(Dde)-OHとカップリングした(GSP3a)。Dde-保護基の切断(GSP4b)後、生じるNβ-アミンをtBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu-OtBu(VII)とカップリングした(GSP3a)。引き続き、このFmoc-保護化リガンドをtBu-保護基の除去下に樹脂より切断して(GSP5)、分取用RP-HPLC(カラムV,A中40~70% B,20分、λ=220nm,tR=11.7分)により精製した。最後に、入手したペプチドをFmoc-脱保護化して(GSP2)、分取用RP-HPLCにより再び精製して、SiFA-PSMAリガンド02aを無色の固形物として得た。
【0409】
【0410】
02a:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中35~45% B,20分、λ=220nm):tR=11.6分;収量:3.48mg(2.30マイクロモル、21%);分析用RP-HPLC(カラムIII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=11.4分;純度:97%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C58H89FN12O25Si):1400.6,m/z 実測値:701.7[M+2H]2+,1402.0[M+H]+。
【0411】
2.8.4:実施例2bと実施例2c:SiFA-PSMAリガンド:02b~02c
【0412】
【0413】
スキーム10.SiFA-PSMAリガンド:02b~02cの合成:a1)Fmoc-β-Ala-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a2)Fmoc-Ahx-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);b)DMF中20% Pip;c)tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu-OtBu(VII),HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);d)95% TFA/2.5% TIPS/2.5%水。
【0414】
SiFA-PSMAリガンドの02b~02cは、SPPSについて言及した手順(スキームX)に従って合成した。簡潔に言うと、樹脂に結合したペプチドXIをそれぞれのFmoc-保護化アミノ酸とカップリングして(GSP3a)、そのペプチドを引き続きFmoc-脱保護化した(GSP2)。その後、生じるアミンをtBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu-OtBu(VII)とカップリングした(GSP3a)。最後に、リガンドをtBu-保護基の除去下に樹脂より切断して(GSP5)、分取用RP-HPLCにより精製して、SiFA-PSMAリガンドの02b~02cを無色の固形物として得た。
【0415】
【0416】
02b:分取用RP-HPLC(カラムVII,A中40~50% B,20分、λ=220nm):tR=17.0分;収量:3.89mg(2.81マイクロモル、25%);分析用RP-HPLC(カラムII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=10.9分;純度:97%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C58H88FN11O25Si):1385.6,m/z 実測値:694.0[M+2H]2+,1386.8[M+H]+。
【0417】
02c:分取用RP-HPLC(カラムVII,A中40~50% B,20分、λ=220nm):tR=13.0分;収量:5.00mg(3.50マイクロモル、29%);分析用RP-HPLC(カラムII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=11.1分;純度:96%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C61H94FN11O25Si):1427.6,m/z 実測値:714.4[M+2H]2+,1427.4[M+H]+。
【0418】
2.8.5 実施例2d:SiFA-PSMAリガンド02d
【0419】
【0420】
スキーム11.SiFA-PSMAリガンド02dの合成:a)Fmoc-Ahx-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);b)DMF中20% Pip;c)tBuO-d-Glu(OtBu)-u-d-Glu-OtBu(XV),HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);d)95% TFA/2.5% TIPS/2.5%水。
【0421】
SiFA-PSMAリガンド02dは、SiFA-PSMAリガンド02cと同様に合成した(スキーム11)。簡潔に言えば、樹脂に結合したペプチドXIをFmoc-Ahx-OHとカップリングした(GSP3a)。Fmoc-保護基を切断した(GSP2)後で、このアミンをtBuO-d-Glu(OtBu)-u-d-Glu-OtBu(XV)とカップリングした(GSP3a)。最後に、リガンドをtBu-保護基の除去下に樹脂より切断して(GSP5)、分取用RP-HPLCにより精製して、SiFA-PSMAリガンド02dを無色の固形物として得た。
【0422】
【0423】
02d:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中45~55% B,20分、λ=220nm):tR=5.4分;収量:1.24mg(0.868マイクロモル、7%);分析用RP-HPLC(カラムII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=11.0分;純度:99%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C61H94FN11O25Si):1427.6,m/z 実測値:714.7[M+2H]2+,1427.6[M+H]+。
【0424】
2.8.6 実施例2e:SiFA-PSMAリガンド02e
【0425】
【0426】
スキーム12.SiFA-PSMAリガンド02eの合成:a)Fmoc-Gly-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);b)DMF中20% Pip;c)tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu-OtBu(VII),HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);d)95% TFA/2.5% TIPS/2.5%水。
【0427】
SiFA-PSMAリガンド02eは、SPPSについて言及した手順(スキーム12)に従って合成した。簡潔に言うと、樹脂に結合したペプチドXIをFmoc-Gly-OHとの反復カップリングによって3個のグリシンユニットで伸長して(GSP3a)、Fmoc-脱保護化(GSP2)を続けた。その後、生じるアミンをtBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu-OtBu(VII)とカップリングして(GSP3a)、最後に、リガンドをtBu-保護基の除去下に樹脂より切断して(GSP5)、分取用RP-HPLCにより精製して、SiFA-PSMAリガンド02eを無色の固形物として得た。
【0428】
【0429】
02e:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中38~45% B,20分、λ=220nm):tR=9.8分;収量:2.12mg(1.43マイクロモル、12%);分析用RP-HPLC(カラムII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=10.5分;純度:96%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C61H92FN13O27Si):1485.6,m/z 実測値:743.9[M+2H]2+,1486.6[M+H]+。
【0430】
2.8.7 実施例3a~実施例3i:SiFA-PSMAリガンド:03a~03i
【0431】
【0432】
スキーム13.SiFA-PSMAリガンドの03a~03iの合成:a1)Fmoc-d-Asp(OtBu)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a2)Fmoc-d-Glu(OtBu)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a3)Fmoc-d-Cit-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a4)Fmoc-d-Dap(Boc)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a5)Fmoc-d-Orn(Boc)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a6)Fmoc-d-Lys(Boc)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a7)Fmoc-Gly-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a8)Fmoc-d-Thr(OtBu)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a9)Fmoc-d-Phe-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);b)DMF中20% Pip;c)95% TFA/2.5% TIPS/2.5%水。
【0433】
SiFA-PSMAリガンドの03a~03fは、SPPSについての一般手順(スキーム13)に従って合成した。簡潔に言えば、樹脂に結合したペプチドXIをそれぞれのFmoc-保護化アミノ酸とカップリングした(GSP3a)。Fmoc-保護基の切断(GSP2)後、生じるNα-アミンをFmoc-d-Glu(OtBu)-OHとカップリングして(GSP3a)、このペプチドを再びFmoc-脱保護化した(GSP2)。この手順をもう1回繰り返した。最後に、リガンドを酸に不安定な保護基の除去下に樹脂より切断して(GSP5)、分取用RP-HPLCにより精製した。SiFA-PSMAリガンドの03a~03iは、無色の固形物として生じた。
【0434】
【0435】
理解されるように、R=D-Asp、D-Glu、D-Cit、D-Dap、D-Orn、D-Lys、Gly、D-Thr、及びD-Pheは、化合物03a~03iの式においてR基を担うアミノ酸ユニット:-(CO)-CH(R)-NH-が、D-Asp(実施例03a)、D-Glu(実施例03b)、D-Cit(実施例03c)、D-Dap(実施例03d)、D-Orn(実施例03e)、D-Lys(実施例03f)、Gly(実施例03g)、D-Thr(実施例03h)、及びD-Phe(実施例03i)にそれぞれ由来することを示す。
【0436】
03a:分取用RP-HPLC(カラムV,A中38~45% B,20分、λ=220nm):tR=13.6分;収量:5.06mg(3.37マイクロモル、25%);分析用RP-HPLC(カラムIII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=11.3分;純度:96%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C58H88FN11O25Si):1385.6,m/z 実測値:694.1[M+2H]2+,1387.0[M+H]+。
【0437】
03b:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中38~45% B,20分、λ=220nm):tR=7.8分;収量:5.10mg(3.37マイクロモル、25%);分析用RP-HPLC(カラムIII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=11.4分;純度:98%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C59H90FN11O25Si):1399.6,m/z 実測値:701.2[M+2H]2+,1401.0[M+H]+。
【0438】
03c:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中38~45% B,20分、λ=220nm):tR=7.0分;収量:5.40mg(3.50マイクロモル、31%);分析用RP-HPLC(カラムIII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=11.0分;純度:98%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C60H94FN13O24Si):1427.6,m/z 実測値:715.2[M+2H]2+,1428.8[M+H]+。
【0439】
03d:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中38~45% B,20分、λ=220nm):tR=5.4分;収量:4.65mg(3.16マイクロモル、46%);分析用RP-HPLC(カラムIII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=10.8分;純度:97%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C57H89FN12O23Si):1356.6,m/z 実測値:679.7[M+2H]2+,1358.0[M+H]+。
【0440】
03e:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中35~40% B,20分、λ=220nm):tR=10.2分;収量:4.51mg(2.80マイクロモル、25%);分析用RP-HPLC(カラムII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=9.6分;純度:98%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C59H93FN12O23Si):1384.6,m/z 実測値:693.8[M+2H]2+,1386.7[M+H]+。
【0441】
03f:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中35~45% B,20分、λ=220nm):tR=7.5分;収量:7.44mg(4.57マイクロモル、40%);分析用RP-HPLC(カラムII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=9.9分;純度:95%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C60H95FN12O23Si):1398.6,m/z 実測値:700.9[M+2H]2+,1400.8[M+H]+。
【0442】
03g:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中38~45% B,20分、λ=220nm):tR=9.5分;収量:2.50mg(1.73マイクロモル、17%);分析用RP-HPLC(カラムII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=10.3分;純度:98%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C56H86FN11O23Si):1327.6,m/z 実測値:665.0[M+2H]2+,1328.7[M+H]+。
【0443】
03h:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中38~45% B,20分、λ=220nm):tR=9.5分;収量:4.38mg(2.95マイクロモル、28%);分析用RP-HPLC(カラムII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=10.2分;純度:>99%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C58H90FN11O24Si):1371.6,m/z 実測値:687.1[M+2H]2+,1372.8[M+H]+。
【0444】
03i:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中40~50% B,20分、λ=220nm):tR=12.4分;収量:5.35mg(3.49マイクロモル、31%);分析用RP-HPLC(カラムII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=11.3分;純度:99%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C63H92FN11O23Si):1417.6,m/z 実測値:710.1[M+2H]2+,1418.9[M+H]+。
【0445】
2.8.8 実施例4:SiFA-PSMAリガンド04
【0446】
【0447】
スキーム14.SiFA-PSMAリガンド04の合成:a1)Boc-d-Dap(Fmoc)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);a2)Fmoc-d-Glu(OtBu)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);b)DMF中20% Pip;c)95% TFA/2.5% TIPS/2.5%水。
【0448】
SPPSについての一般手順(スキーム14)に従って、ペプチドベースの修飾因子04付きのSiFA-PSMAリガンドを合成した。簡単に言えば、樹脂に結合したペプチドXIをBoc-d-Dap(Fmoc)-OHとカップリングして(GSP3a)、このペプチドをFmoc-脱保護化した(GSP2)。その後、生じるNβ-アミンをFmoc-d-Glu(OtBu)-OHとカップリングして(GSP3a)、このペプチドを再びFmoc-脱保護化した(GSP2)。この手順をもう1回繰り返した。最後に、リガンドを酸に不安定な保護基の除去下に樹脂より切断して(GSP5)、分取用RP-HPLCにより精製して、SiFA-PSMAリガンド04を無色の固形物として得た。
【0449】
【0450】
04:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中32~40% B,20分、λ=220nm):tR=13.2分;収量:4.87mg(3.07マイクロモル、27%);分析用RP-HPLC(カラムII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=9.8分;純度:98%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C57H89FN12O23Si):1356.6,m/z 実測値:679.5[M+2H]2+,1357.8[M+H]+。
【0451】
2.8.9 実施例5:SiFA-PSMAリガンド05
【0452】
【0453】
スキーム15.SiFA-PSMAリガンド05の合成:a)Fmoc-d-Cit-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);b)DMF中20% Pip;c)95% TFA/2.5% TIPS/2.5%水。
【0454】
SiFA-PSMAリガンド05は、SPPSについての一般手順(スキーム15)に従って合成した。簡潔に言うと、樹脂に結合したペプチドXIをFmoc-d-Cit-OHとカップリングして(GSP3a)、このペプチドをFmoc-脱保護化した(GSP2)。この手順をさらに2回繰り返した。最後に、リガンドを酸に不安定なt-Bu-保護基の除去下に樹脂より切断して(GSP5)、分取用RP-HPLCにより精製して、SiFA-PSMAリガンド05を無色の固形物として得た。
【0455】
【0456】
05:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中35~45% B,20分、λ=220nm):tR=8.3分;収量:7.56mg(4.73マイクロモル、36%);分析用RP-HPLC(カラムII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=10.0分;純度:97%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C62H102FN17O22Si):1483.7,m/z 実測値:743.4[M+2H]2+,1486.5[M+H]+。
【0457】
2.8.10 実施例6:SiFA-PSMAリガンド06
【0458】
【0459】
スキーム16.SiFA-PSMAリガンド06の合成:a)DMF中20% Pip;b)SiFA-d-Asp(OH)-OH(XVII),HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);c)95% TFA/2.5% TIPS/2.5%水。
【0460】
SPPSについての一般的な合成手順(スキーム16)に従って、SiFA-PSMAリガンド06を合成した。簡潔に言うと、樹脂に結合したペプチドXVIIIをFmoc-脱保護化して(GSP2)、引き続きSiFA-d-Asp(OH)-OH(XVII)とカップリングして(GSP3a)、二量体化したリガンドを樹脂上で得た。最後に、このペプチドを酸に不安定なtBu-保護基の除去下に樹脂より切断して(GSP5)、分取用RP-HPLCにより精製して、SiFA-PSMAリガンド06を無色の固形物として得た。
【0461】
【0462】
06:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中38~45% B,20分、λ=220nm):tR=7.6分;収量:3.42mg(4.47マイクロモル、14%);分析用RP-HPLC(カラムIII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=11.1分;純度:97%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C71H108FN13O31Si):1685.7,m/z 実測値:844.3[M+2H]2+,1687.3[M+H]+。
【0463】
2.8.11 実施例7:SiFA-PSMAリガンド07
【0464】
【0465】
スキーム17.SiFA-PSMAリガンド07の合成:a)DMF中20% Pip;b)tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu-OtBu(VII)、HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);c)DMF中2%ヒドラジン一水和物;d)Fmoc-d-Orn(Dde)-OH,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);e)3,5-ビス(tert-ブトキシカルボニル)安息香酸(XVI)、HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);f)Fmoc-d-Asp(OH)-OtBu,HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);g)SiFA-d-Asp(OH)-OH(XVII)、HOAt,TBTU,sym-コリジン、(DMF);h)95% TFA/2.5% TIPS/2.5%水。
【0466】
SiFA-PSMAリガンド07は、SPPSについての一般的な合成手順(スキーム17)に従って入手した。故に、2-CTC-樹脂にFmoc-d-Lys(Dde)-OHをロードした(GSP1)。引き続き、このアミノ酸をFmoc-脱保護化して(GSP2)、tBuO-l-Glu(OtBu)-u-l-Glu-OtBu(VII)とカップリングした(GSP3a)。Dde-保護基を切断した(GSP4a)後で、生じるNε-アミンをFmoc-d-Orn(Dde)-OHとカップリングした(GSP3a)。次いで、樹脂に結合したペプチドをFmoc-脱保護化して(GSP2)、3,5-ビス(tert-ブトキシカルボニル)安息香酸(XVI)で伸長した(GSP3a)。引き続き、Dde-保護基を切断して(GSP4a)、生じるNδ-アミンをFmoc-d-Asp(OH)-OtBuとカップリングした(GSP3a)。Fmoc-脱保護化(GSP2)の後で、樹脂に結合したペプチドをSiFA-d-Asp(OH)-OH(XVII)とカップリングして(GSP3a)、二量体化したリガンドを樹脂上で得た。最後に、このペプチドを酸に不安定なtBu-保護基の除去下に樹脂より切断して(GSP5)、分取用RP-HPLCにより精製して、SiFA-PSMAリガンド07を無色の固形物として得た。
【0467】
【0468】
07:分取用RP-HPLC(カラムIV,A中40~50% B,20分、λ=220nm):tR=7.5分;収量:10.5mg(4.99マイクロモル、25%);分析用RP-HPLC(カラムII,A中10~70% B,15分、λ=220nm):tR=10.3分;純度:99%;MS(ESI,ポジティブ):m/z 計算 m.i.質量(C89H118FN15O41Si):2099.7,m/z 実測値:1050.7[M+2H]2+。
【0469】
3.結果
3.1 放射性フッ素化
尿素ベース/ペプチドベースの修飾因子付きSiFA-PSMAリガンドの放射性フッ素化のRCYを下記に要約する(表2)。
【0470】
表2.尿素ベース及びペプチドベースの修飾因子付きSiFA-PSMAリガンドの18F-標識化のRCY(30ナノモル、開始活性としてのQMAからの溶出活性を基準にした、精製後の最終活性に基づく)。データは、平均%±SDとして表す。
【0471】
【0472】
【0473】
3.2 親油性
表3.尿素ベース及びペプチドベースの修飾因子付き18F-標識化SiFA-PSMAリガンドの決定されたlogD7.4値。データは、平均%±SD(n=5)として表す。
【0474】
【0475】
【0476】
3.3 PSMAへの結合親和性
表4.[125I]l-Glu-u-l-Lys(p-I-BA)(XII)[IC50=7.9±2.4nm]を基準とした、LNCaP細胞(150,000個の細胞/ウェル)に対する、尿素ベース及びペプチドベースの修飾因子付き合成SiFA-PSMAリガンドの決定された結合親和性(IC50)(c=0.2nM,1時間、4℃,HBSS,1% BSA添加)。データは、平均nM±SD(n=3)として表す。
【0477】
【0478】
【0479】
3.4 内部移行
表5.[125I]l-Glu-u-l-Lys(p-I-BA)(XII)を基準(c=0.2nM,37℃,DMEM/F-12,5% BSA添加)とした、LNCaP細胞(125,000個の細胞/ウェル)に対する、尿素ベース及びペプチドベースの修飾因子付き18F-標識化SiFA-PSMAリガンド(c=0.5nM)の決定された1時間での内部移行活性(%)。データは、非特異的結合(10μM PMPA)について補正して、平均%±SD(n=3)として表す。
【0480】
【0481】
【0482】
3.5 HSAへの結合
尿素ベース及びペプチドベースの修飾因子付きSiFA-PSMAリガンドの決定されたHSA結合値を下記に要約する(表6)。
【0483】
表6. 尿素ベース及びペプチドベースの修飾因子付き合成SiFA-PSMAリガンドのChiralpak HSA カラム上での決定されたHSA結合値。
【0484】
【0485】
【0486】
3.6 既知のPSMA阻害剤の特性
以下の表7は、既知のPSMA阻害剤の試験管内(in vitro)特性を要約する。
表7:立証されたPSMA-標的指向阻害剤のPSMA結合親和性(IC50)、内部移行(1時間後)、及びlogP(o/w)の比較
【0487】
【0488】
表7中の参考文献:
【0489】
【0490】
3.7 生体内分布と小動物のμPET/CTイメージング
LNCaP担腫瘍CB17-SCIDマウスにおける注射後1時間での[18F]01a、[18F]01d、[18F]02c、[18F]03f、[18F]06、及び[18F]07の決定された生体内分布プロフィール、並びにLNCaP担腫瘍CB17-SCIDマウスにおける、注射後1時間での[18F]01aの代表的なPET/CT画像を図面2~図面8に要約する。
【0491】
図面2は、LNCaP担腫瘍CB17-SCIDマウスにおける注射後1時間での[18F]01aの生体内分布プロフィールを示す。データは、平均(%)ID/g±SD(n=4)として表す。
【0492】
図面3は、LNCaP担腫瘍CB17-SCIDマウスにおける注射後1時間での[18F]01dの生体内分布プロフィールを示す。データは、平均(%)ID/g±SD(n=4)として表す。
【0493】
図面4は、LNCaP担腫瘍CB17-SCIDマウスにおける注射後1時間での[18F]01aの代表的なPET/CT-画像(体軸断面)(15分の捕捉時間)と破線によって示した選択臓器のROIを示す。
【0494】
図面5は、LNCaP担腫瘍CB17-SCIDマウスにおける注射後1時間での[18F]02cの生体内分布プロフィールを示す。データは、平均(%)ID/g±SD(n=4)として表す。
【0495】
図面6は、LNCaP担腫瘍CB17-SCIDマウスにおける注射後1時間での[18F]03fの生体内分布プロフィールを示す。データは、平均(%)ID/g±SD(n=4)として表す。
【0496】
図面7は、LNCaP担腫瘍CB17-SCIDマウスにおける注射後1時間での[18F]06の生体内分布プロフィールを示す。データは、平均(%)ID/g±SD(n=4)として表す。
【0497】
図面8は、LNCaP担腫瘍CB17-SCIDマウスにおける注射後1時間での[18F]07の生体内分布プロフィールを示す。データは、平均(%)ID/g±SD(n=5)として表す。