(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】アバランシェ光検出器(変形形態)およびこれを製造するための方法(変形形態)
(51)【国際特許分類】
H01L 31/107 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
H01L31/10 B
(21)【出願番号】P 2021555093
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(86)【国際出願番号】 RU2020050038
(87)【国際公開番号】W WO2020185125
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-08-22
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】521412386
【氏名又は名称】デファン リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】コロボフ ニコライ アファナセヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】シタルスキー コンスタンティン ユレヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】シュビン ヴィタリィ エマヌイロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】シュシャコフ ドミトリィ アレクセーヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ボグダノフ セルゲイ ヴィタレヴィッチ
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-544496(JP,A)
【文献】特開昭62-033482(JP,A)
【文献】特開2008-311651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アバランシェ光検出器を製造するための方法であって、以下のステップ:
‐ 半導体ウエハの表面全体に増倍層を形成するステップと、
‐ 前記増倍層の表面上に閉塞した溝をエッチング形成するステップであって、その深さは前記増倍層の厚さ以上であるが、前記ウエハと増倍層を組み合わせた合計厚さ未満であり、前記溝によって境界付けられている領域の内側に光検出部が形成される、エッチング形成するステップと、
‐ 前記閉塞した溝を前記増倍層と同じ導電性タイプの高濃度ドープされた多結晶シリコンで充填するステップ
であって、前記閉塞した溝は、光の有無に依らず隣接する領域から前記光検出部内に入る寄生電荷キャリアの流入を抑制する、前記ステップと、
‐ 前記閉塞した溝によって境界付けられている、前記増倍層の上面の特定のエリア上に、少なくとも1つのアバランシェ増幅部のコンタクト層を形成すると共に、前記コンタクト層の外側に光変換部領域を形成するステップと、
‐ 前記コンタクト層上に第1の透明電極を形成するステップと、
‐ 前記半導体ウエハの底面上に第2の電極を形成するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
アバランシェ光検出器を製造するための方法であって、以下のステップ:
‐ 半導体ウエハの表面全体に増倍層を形成するステップと、
‐ 前記増倍層の表面上に閉塞した溝をエッチング形成するステップであって、その深さは前記増倍層の厚さ以上であるが、前記ウエハと増倍層を組み合わせた合計厚さ未満であり、前記溝によって境界付けられている領域の内側に光検出部が形成される、エッチング形成するステップと、
‐ 前記閉塞した溝を前記増倍層と同じ導電性タイプの高濃度ドープされた多結晶シリコンで充填するステップと、
‐ 前記閉塞した溝によって境界付けられている、前記増倍層の上面の特定のエリア上に、少なくとも1つのアバランシェ増幅部のコンタクト層を形成すると共に、前記コンタクト層の外側に光変換部領域を形成するステップと、
‐ 前記光変換部領域内の前記増倍層の一部をエッチング除去するステップであって、前記エッチングされる量は前記
増倍層の厚さ未満である、エッチング除去するステップと、
‐ 前記増倍層の前記エッチング除去されている表面上に誘電体層を設置するステップであって、前記誘電体層の厚さは前記光変換部領域内の前記増倍層の前記エッチング除去された量と等しい、設置するステップと、
‐ 前記コンタクト層および誘電体層の両方の表面上に、透明な材料で作製されている第1の電極を設置するステップと、
‐ 前記半導体ウエハの底面上に第2の電極を形成するステップと、を含む、方法。
【請求項3】
前記半導体ウエハは低抵抗材料で作製されている、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ウエハおよび前記増倍層はいずれも同じ半導体材料で作製されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記増倍層は前記ウエハ表面上にエピタキシ法を使用して形成される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記コンタクト層は、反対の導電性を有する層を形成するドーパントで前記増倍層をドープすることによって作製される、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記閉塞した溝は1.5μm~2.0μmの幅を有する、請求項
1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
アバランシェ光検出器を製造するための方法であって、以下のステップ:
‐ 半導体ウエハの表面全体に増倍層を形成するステップと、
‐ 前記増倍層の表面上に閉塞した溝をエッチング形成するステップであって、その深さは前記増倍層の厚さ以上であるが、前記ウエハと増倍層を組み合わせた合計厚さ未満であり、前記溝によって境界付けられている領域の内側に光検出部が形成される、エッチング形成するステップと、
‐ 前記閉塞した溝を前記増倍層と同じ導電性タイプの高濃度ドープされた多結晶シリコンで充填するステップと、
‐ 前記閉塞した溝によって境界付けられている、前記増倍層の上面の特定のエリア上に、少なくとも1つのアバランシェ増幅部のコンタクト層を形成すると共に、前記コンタクト層の外側に光変換部領域を形成するステップと、
‐ 前記光変換部領域内の前記増倍層の一部をエッチング除去するステップであって、前記エッチングされる量は前記増倍層の厚さ未満である、エッチング除去するステップと、
‐ 前記増倍層の前記エッチング除去されている表面上に誘電体層を設置するステップであって、前記誘電体層の厚さは前記光変換部領域内の前記増倍層の前記エッチング除去された量と等しい、設置するステップと、
前記アバランシェ増幅部の前記コンタクト層上に
高抵抗層を設置
するステップと、
‐ 前記高抵抗層および誘電体層の両方の表面上に、透明な材料で作製されている第1の電極を設置するステップと、
‐ 前記半導体ウエハの底面上に第2の電極を形成するステップと、を含む、方法。
【請求項9】
アバランシェ光検出器であって、
‐ 半導体ウエハと、
‐ 前記半導体ウエハの表面全体を覆う増倍層と、
‐ 前記増倍層の特定のエリア上に設置されているコンタクト層と、を備え、前記増倍層内には少なくとも1つのアバランシェ増幅部領域および光変換部領域が形成されており、前記光検出器は更に、
‐ 深さが前記増倍層の厚さ以上であるが、前記ウエハと増倍層を組み合わせた合計厚さ未満であり、前記増倍層と同じ導電性タイプの高濃度ドープされた多結晶シリコンで充填されている、閉塞した溝であって、前記溝によって境界付けられている領域の内側にアバランシェ増幅部および光変換部が位置して
おり、
光の有無に依らず隣接する領域から前記光検出部内に入る寄生電荷キャリアの流入を抑制する、閉塞した溝と、
‐ 前記コンタクト層上に形成されている第1の透明電極と、
‐ 前記半導体ウエハの底面上に形成されている第2の電極と、を備える、アバランシェ光検出器。
【請求項10】
前記閉塞した溝は1.5μm~2.0μmの幅を有する、請求項
9に記載のアバランシェ光検出器。
【請求項11】
アバランシェ光検出器であって、
‐ 半導体ウエハと、
‐ 前記半導体ウエハの表面全体を覆う増倍層と、
‐ 深さが前記増倍層の厚さ以上であるが、前記ウエハと増倍層を組み合わせた合計厚さ未満であり、前記増倍層と同じ導電性タイプの高濃度ドープされた多結晶シリコンで充填されている、閉塞した溝であって、前記溝によって境界付けられている領域の内側にアバランシェ増幅部および光変換部が位置している、閉塞した溝と、
‐ 前記増倍層の特定のエリア上に設置されているコンタクト層と、を備え、前記増倍層内には少なくとも1つのアバランシェ増幅部領域および前記コンタクト層の外側の光変換部領域が形成されており、前記光検出器は更に、
‐ 前記コンタクト層の外側のエッチング除去されている前記増倍層の前記光変換部領域全体を埋めている誘電体層であって、前記エッチングされている量は前記光変換部領域の厚さ未満である、誘電体層と、
‐ 前記アバランシェ増幅部のコンタクト層の上にある高抵抗層と、
‐ 透明な材料で作製され前記高抵抗層および誘電体層の両方の表面上に設置されている、第1の電極と、
‐ 前記半導体ウエハの底面上に形成されている第2の電極と、を備える、アバランシェ光検出器。
【請求項12】
前記閉塞した溝は1.5μm~2.0μmの幅を有する、請求項
11に記載のアバランシェ光検出器。
【請求項13】
前記光変換部領域全体を埋めている前記誘電体層は0.5μm~2.5μmの厚さを有する、請求項
11または
12に記載のアバランシェ光検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弱い光信号を検出可能なアバランシェ光検出器(avalanche photodetector,APD)に関する。そのようなAPDは、LiDAR、通信システム、マシンビジョン、ロボット工学、医学、生物学、環境モニタリング、等において広く使用されている。
【背景技術】
【0002】
従来のアバランシェ光検出器(APD)は、半導体ウエハ上に連続的に設置されるいくつかの半導体材料層を備える。
【0003】
半導体層のグループは光変換部を形成し、そこで信号光子が吸収されて、自由電荷キャリア、すなわち電子または電子正孔が生成される。これら光が生成した電荷キャリアは次いで半導体層の別のグループ、すなわちアバランシェ増幅部(avalanche amplifier)内に入り、その内部で、電界の強度が電荷キャリアのアバランシェ増倍(avalanche multiplication)にとって十分な高さであるエリアが形成される。
【0004】
閾値感度はAPDの主要なパラメータであり、光変換部およびアバランシェ増幅部の両方の特性に依存する。
【0005】
閾値感度はアバランシェ増幅部の暗電流によって大きく制限されるが、このことは主として、光キャリアのアバランシェ増倍に必要な非常に強い場によって引き起こされる。
【0006】
アバランシェ増幅部の暗電流を減らし、これによりAPDの閾値感度を上げるために、アバランシェ増幅部が占める面積を、光変換部が占める面積よりも小さくすることができる。
【0007】
これの例を、例えば米国特許第9,035,410号およびロシア特許第2,641,620号によるアバランシェ光検出器に見ることができるが、これらには、2つの層‐コンタクト層および増倍層(multiplication layer)‐を備えるアバランシェ増幅部、ならびに光変換部の両方が、同じウエハ上で互いの近くに位置しており、光変換部の面積が増幅部の面積よりも大きい構造が開示されている。
【0008】
ロシア特許第2,641,620号によるAPDでは、増倍層は、信号光変換部と同じ導電性タイプを有する半導体材料で作製され、ウエハに面し、自律的な光変換部と直接接合しており、このことにより、光変換部からアバランシェ増幅部へ外部電気回路を介して移動中の光キャリアが引き起こす過剰な暗騒音を低減することが可能になる(米国特許第9,035,410号を参照)。
【0009】
従来技術の欠点
主要な欠点は、増倍層を光変換部から独立させることによって、光変換部層内で生成される光キャリアの増倍層への到達が妨げられ、この結果、増倍された光信号の損失が生じることである。この結果、光検出器の基本パラメータである閾値感度が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示の目的は、光変換部からアバランシェ増幅部への光キャリアの移動の効率の悪さによって制限されない、高い閾値感度を有するアバランシェ光検出器(APD)を作り出すことである。更に、提案されるAPDの実施形態のうちの1つでは、近隣の領域からの暗電流がより小さくなる。最後に、特許請求されるAPD設計では、同じAPDにおいてそのような増幅部が複数使用される場合に、隣接するアバランシェ増幅部からの干渉ノイズがより小さくなる。
【0011】
これらの問題を全て解決することによって、その基本パラメータであるAPDの閾値感度を改善することが可能になるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
特許請求される発明は、アバランシェ光検出器(APD)およびこれを製造するための方法を含み、これらによって、導電性のウエハの全体にわたって増倍層を設置することで、光変換部からアバランシェ増幅部への光キャリアの移動をより効率的にすることが可能になる。少なくとも1つのアバランシェ増幅部のコンタクト層が、増倍層の特定のエリア内に形成される。このことにより、コンタクト層の外側の増倍層は光変換部として機能する。この結果、光変換部において生じた光キャリアは、妨げられることなくアバランシェ増幅部の増倍領域内に入ることになる。アバランシェ光検出器の第1の電極および第2の電極はそれぞれ、コンタクト層およびウエハ上に置かれる。
【0013】
隣接するウエハ領域からのAPDの暗電流を低減するために、増倍層表面上に閉塞した溝がエッチング形成され、その深さは増倍層の厚さ以上であるが、ウエハと増倍層を組み合わせた合計厚さ未満であり、上記溝によって境界付けられている領域の内側に光検出部が形成される。溝には、増倍層と同じ導電性タイプの高濃度ドープされた多結晶シリコンが充填されている。
【0014】
隣接するアバランシェ増幅部からの干渉ノイズ(隣接するアバランシェ増幅部内の高温の電荷キャリアからの光子の寄生光電子が増倍領域内に入るときに生じるノイズ)を抑制するために、アバランシェ増幅部の上記領域は、光キャリア生成領域よりも高い位置に配置される。
【0015】
これを達成するために、光変換部領域内の増倍層の一部がエッチング除去(etch away)され、エッチングされる量は層の厚さ未満である。次いで、増倍層のエッチング除去された表面上に誘電体層が設置されるが、誘電体層の厚さは光変換部領域内の増倍層のエッチング除去された量と等しく、透明な材料で作製されている第1の電極は、アバランシェ増幅部のコンタクト層および誘電体層の両方の表面上に設置される。
【0016】
効率を高めるために、半導体ウエハは低抵抗材料で作製されるべきである。
【0017】
ウエハおよび増倍層がいずれも同じ半導体材料で作製されているのが望ましい。
【0018】
ウエハ表面上の増倍層はエピタキシ法を使用して作製することができ、コンタクト層は、反対の導電性を有する層を形成するドーパントで増倍層をドープすることによって作製することができる。
【0019】
閉塞した溝は1.5μm~2.0μmの幅を有するのが望ましい。
【0020】
アバランシェ増幅部のコンタクト層と第1の電極との間に、高抵抗層を設置することも可能である。
【0021】
本発明の目的、特徴、および利点を、詳細な説明および付属の図面において更に指摘する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】半導体ウエハ101と、半導体ウエハの表面全体を覆う増倍層102と、増倍層の特定のエリアを覆うコンタクト層105と、を備え、少なくとも1つのアバランシェ増幅部103およびアバランシェ増幅部の外側にある光変換部104が形成されており、更に、コンタクト層105上に形成されている第1の電極106と、半導体ウエハ101上に形成されている第2の電極107と、を備える、第1の実施形態に係る特許請求されるAPDの概略横方向断面図である。
【
図1A】シリコンウエハ101上に増倍層102を設置するプロセスを示す図である。
【
図1B】コンタクト層105を作り出すことによってアバランシェ増幅部103領域を形成するプロセスを示す図である。
【
図1C】コンタクト層105上に第1の電極106を形成するプロセスを示す図である。
【
図1D】半導体ウエハ101上に第2の電極107を形成するプロセスを示す図である。
【
図2】半導体ウエハ201と、半導体ウエハの表面全体を覆う増倍層202と、増倍層202の特定のエリアを覆うコンタクト層205と、を備え、少なくとも1つのアバランシェ増幅部203領域およびアバランシェ増幅部の外側にある光変換部204領域が形成されており、更に、幅が1.5μm~2.0μm、深さが増倍層の厚さ以上であるが、ウエハと増倍層を組み合わせた合計厚さ未満であり、増倍層と同じ導電性タイプの高濃度ドープされた多結晶シリコンで充填され、アバランシェ増幅部および光変換部を取り囲んでいる、閉塞した溝208と、コンタクト層上に形成されている第1の電極206と、半導体ウエハ上に形成されている第2の電極207と、を備える、第2の実施形態に係る特許請求されるAPDの概略横方向断面図である。閉塞した溝208は図面に示されているような矩形の外形を有することができるが、その外形は、シリコンに溝をエッチング形成するために使用されるディープエッチング法に大きく依存する。
【
図2A】シリコンウエハ201上に増倍層202を設置するプロセスを示す図である。
【
図2B】増倍層と同じ導電性タイプの高濃度ドープされた多結晶シリコンで充填される閉塞した溝208を形成するプロセスであって、光検出部を上記溝によって境界付けられている領域の内側に形成できるようになっているプロセスを示す図である。
【
図2C】コンタクト層205を作り出すことによってアバランシェ増幅部203領域を形成するプロセスを示す図である。
【
図2D】コンタクト層205上に第1の電極206を形成するプロセスを示す図である。
【
図2E】半導体ウエハ201上に第2の電極207を形成するプロセスを示す図である。
【
図3】半導体ウエハ301と、半導体ウエハの表面全体を覆う増倍層302と、増倍層302の特定のエリアを覆うコンタクト層305と、を備え、少なくとも1つのアバランシェ増幅部303領域およびアバランシェ増幅部の外側にある光変換部304領域が形成されており、更に、幅が1.5μm~2.0μm、深さが増倍層の厚さ以上であるが、ウエハと増倍層を組み合わせた合計厚さ未満であり、増倍層と同じ導電性タイプの高濃度ドープされた多結晶シリコンで充填され、アバランシェ増幅部および光変換部を取り囲んでいる、閉塞した溝308と、増倍層の厚さ未満の量だけエッチング除去されている光変換部304領域を部分的に埋める誘電体層309と、アバランシェ増幅部領域内のコンタクト層305上に形成されている高抵抗層310と、高抵抗層310および誘電体層309の表面上に形成されている透明電極311と、半導体ウエハ上に形成されている第2の電極307と、を備える、第3の実施形態に係る特許請求されるAPDの概略横方向断面図である。光変換部304領域を、例えば約1.5~2.5μmだけエッチング除去することができる。
【
図3A】シリコンウエハ301上に増倍層302を設置するプロセスを示す図である。
【
図3B】増倍層と同じ導電性タイプの高濃度ドープされた多結晶シリコンで充填される閉塞した溝308を形成するプロセスであって、光検出部を上記溝によって境界付けられている領域の内側に形成できるようになっているプロセスを示す図である。
【
図3C】増倍層302を導電性タイプが反対のドーパントでドープすることによりコンタクト層305を作り出すことによって、1つまたは複数のアバランシェ増幅部303領域を形成し、この結果アバランシェ増幅部303の外側に光変換部304領域を形成するプロセスを示す図である。
【
図3D】アバランシェ増幅部303の外側の光変換部304の一部のエリアを、増倍層302の厚さ未満である量だけエッチング除去するプロセスを示す図である。
【
図3E】光変換部304のエッチング除去されたエリアを誘電体層309で埋めるプロセスを示す図である。
【
図3F】アバランシェ増幅部303領域内のコンタクト層305上に、高抵抗層310を形成するプロセスを示す図である。
【
図3G】高抵抗層310および誘電体層309の表面上に透明電極311を形成するプロセスを示す図である。
【
図3H】半導体ウエハ301上に第2の電極307を形成するプロセスを示す図である。
【
図4A】それぞれ、単一のアバランシェ増幅部または4つのアバランシェ増幅部を備える、第2の実施形態に係るAPDの概略上面図である。
【
図4B】それぞれ、単一のアバランシェ増幅部または4つのアバランシェ増幅部を備える、第2の実施形態に係るAPDの概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示および添付の図面にわたって使用される参照マーキングは、数字100(入射光)を除いて、3つの数字から成り、最初の数字は図番であり、最後の2つの数字は設計の特定の要素を標示している。
【0024】
例えば、
図3において、マーキング306は要素番号06(以下のリストを参照)を指している。
【0025】
設計の特定の要素を指すために、以下のマーキングが使用される:
01‐ ウエハ、
02‐ 増倍層、
03‐ アバランシェ増幅部、
04‐ 光変換部、
05‐ コンタクト層、
06‐ 第1の電極、
07‐ 第2の電極、
08‐ 閉塞した溝、
09‐ 誘電体層、
10‐ 高抵抗材料層、
11‐ 透明電極。
【0026】
図1は、半導体ウエハ101と、半導体ウエハの表面全体を覆う増倍層102と、増倍層の特定のエリアを覆うコンタクト層105と、を備え、少なくとも1つのアバランシェ増幅部103領域およびアバランシェ増幅部の外側にある光変換部104が形成されており、更に、コンタクト層上に形成されている第1の電極106と、半導体ウエハ101上に形成されている第2の電極107と、を備える、第1の実施形態に係る特許請求されるAPDの概略横方向断面図を示す。
【0027】
【0028】
シリコンウエハ101上に、ウエハと同じ導電性タイプの増倍層102を設置するステップ(
図1Aを参照)。
【0029】
増倍層102に導電性タイプが反対のドーパントをドープすることによって、増倍層の上に1つまたは複数のアバランシェ増幅部103領域を形成するステップ(
図1Bを参照)。
【0030】
コンタクト層上に第1の電極106を形成するステップ(
図1Cを参照)。
【0031】
半導体ウエハ101上に第2の電極107を形成するステップ(
図1Dを参照)。
【0032】
図1に係る例示的なAPDを、10
18cm
-3よりも高いドーパント濃度を有するp+型のシリコンウエハ101上に、10
15~10
17cm
-3のドーパント濃度を有するp型シリコンで作製されている、5~7μmの幅を有する増倍層102を、エピタキシによって形成することを含む方法を使用して、製造することができる。アバランシェ増幅部103は、n型ドーパントを10
18cm
-3を超える濃度で0.5~1.0μmの深さまで拡散させることによって形成されるコンタクト層105を、増倍層102上に設置することによって作製される。第1の電極106はコンタクト層105の上に形成され、第2の電極107はウエハ101の底面上に形成される。両電極は、約0.5~1.0μmの厚さを有するアルミニウム箔で作製されている。
【0033】
【0034】
電極107と対照的に、電極106には、アバランシェ増幅部103の増倍層102において衝突電離をトリガして自由電荷キャリアを増倍させるのに十分な正電圧が印加される。
【0035】
光変換部104領域の表面上に差す信号光100は吸収され、自由電荷キャリア、すなわち電子および電子正孔が生成される。光変換部104領域において光が誘起した自由電子は、アバランシェ増幅部103から浸出する場によって捕捉され、次いでアバランシェ増倍領域102に向かってドリフトしてそこで増倍され、APDの出力信号を生成し、このとき正孔はウエハ101内へと進む。光変換部104の非空乏化エリア内で光が誘起した光電子は、光変換部内の自由電子の濃度勾配が引き起こす拡散によって、光変換部の空乏エリア内に集められる。アバランシェ増幅部における光キャリアのドリフト拡散収集のプロセスは非常に効率的であるが、その理由は、増幅部の増倍領域および光変換部領域がいずれも、ウエハを覆う同じ増倍層の一部だからである。
【0036】
APDの性能を改善するために、光変換部の幅は主として、拡散によって収集される光キャリアの割合が小さくなるように、10μm未満である。
【0037】
図2は、半導体ウエハ201と、半導体ウエハの表面全体を覆う増倍層202と、増倍層202の特定のエリアを覆うコンタクト層205と、を備え、少なくとも1つのアバランシェ増幅部203領域およびアバランシェ増幅部の外側にある光変換部204領域が形成されており、更に、幅が1.5μm~2.0μm、深さが増倍層の厚さ以上であるが、ウエハと増倍層を組み合わせた合計厚さ未満であり、増倍層と同じ導電性タイプの高濃度ドープされた多結晶シリコンで充填され、アバランシェ増幅部および光変換部を取り囲んでいる、閉塞した溝208と、コンタクト層上に形成されている第1の電極206と、半導体ウエハ上に形成されている第2の電極207と、を備える、第2の実施形態に係る特許請求されるAPDの概略横方向断面図を示す。閉塞した溝208は図面に示されているような矩形の外形を有することができるが、その外形は、シリコンに溝をエッチング形成するために使用されるディープエッチング法に大きく依存する。
【0038】
【0039】
シリコンウエハ201上に、ウエハと同じ導電性タイプの増倍層202を設置するステップ(
図2Aを参照)。
【0040】
増倍層202表面上に、増倍層の厚さ以上であるが、ウエハと増倍層を組み合わせた合計厚さ未満である深さを有する閉塞した溝208をエッチング形成し、それを、上記溝によって境界付けられている領域の内側に光検出部を形成できるように、増倍層202と同じ導電性タイプの高濃度ドープされた多結晶シリコンで充填するステップ(
図2Bを参照)。
【0041】
閉塞した溝208によって境界付けられた領域内で、増倍層202の上に、増倍層202を導電性タイプが反対のドーパントでドープすることによりコンタクト層205を作り出すことによって、1つまたは複数のアバランシェ増幅部203領域を形成し、この結果アバランシェ増幅部203の外側に光変換部204領域を形成するステップ(
図2Cを参照)。
【0042】
コンタクト層上に第1の電極206を形成するステップ(
図2Dを参照)。
【0043】
半導体ウエハ201上に第2の電極207を形成するステップ(
図2Eを参照)。
【0044】
図2に係る例示的なAPDを、10
18cm
-3よりも高いドーパント濃度を有するp+型のシリコンウエハ201上に、10
15~10
17cm
-3のドーパント濃度を有するp型シリコンで作製されている、5~7μmの幅を有する増倍層202を、エピタキシによって形成することを含む方法を使用して、製造することができる。次いで、増倍層202表面上に、幅が1.5μm~2.0μm、深さが増倍層の厚さ以上であるが、ウエハと増倍層を組み合わせた合計厚さ未満である、閉塞した溝208がエッチング形成され、上記溝によって境界付けられている領域の内側に光検出部を形成できるように、増倍層202と同じ導電性タイプの高濃度ドープされた多結晶シリコンで充填される。アバランシェ増幅部203は、n型ドーパントを10
18cm
-3を超える濃度で0.5~1.0μmの深さまで拡散させることによって形成されるコンタクト層205を、増倍層202上に設置することによって作製される。第1の電極206はコンタクト層205の上に形成され、第2の電極207はウエハ201の底面上に形成される。両電極は、0.5~1.0μmの厚さを有するアルミニウム箔で作製されている。
【0045】
図2に示すような、すなわち増倍層の縁部に沿って延びる閉塞した溝を有するAPDは、これにより、隣接する領域からアバランシェ増幅部内に入る寄生電荷キャリアの流入‐光の有無に依らず(both dark and light)‐を抑制できることを特徴とする。そのような寄生電流を効果的に抑制するために、増倍層の厚さを超える深さの溝は、増倍層と同じ導電性タイプの高濃度ドープされた多結晶シリコンで充填されることになる。APD内の暗電流がより小さいことは閾値感度の更なる改善をもたらす。
【0046】
それ以外の点では、このAPD実施形態は
図1が示すものと同じように機能する。
【0047】
図3は、半導体ウエハ301と、半導体ウエハの表面全体を覆う増倍層302と、増倍層302の特定のエリアを覆うコンタクト層305と、を備え、少なくとも1つのアバランシェ増幅部303領域およびアバランシェ増幅部の外側にある光変換部304領域が形成されており、更に、幅が1.5μm~2.0μm、深さが増倍層の厚さ以上であるが、ウエハと増倍層を組み合わせた合計厚さ未満であり、増倍層と同じ導電性タイプの高濃度ドープされた多結晶シリコンで充填され、アバランシェ増幅部および光変換部を取り囲んでいる、閉塞した溝308と、増倍層の厚さ未満の量だけエッチング除去されている光変換部304領域を部分的に埋める誘電体層309と、アバランシェ増幅部領域内のコンタクト層305上に形成されている高抵抗層310と、高抵抗層310および誘電体層309の表面上に形成されている透明電極311と、半導体ウエハ上に形成されている第2の電極307と、を備える、第3の実施形態に係る特許請求されるAPDの概略横方向断面図を示す。上記の実施形態の場合と同様に、溝308は図面に示されているような矩形の外形を有することができるが、その外形は、シリコンに溝をエッチング形成するために使用されるディープエッチング法に大きく依存する。
【0048】
【0049】
シリコンウエハ301上に、ウエハと同じ導電性タイプの増倍層302を設置するステップ(
図3Aを参照)。
【0050】
増倍層302表面上に、増倍層の厚さ以上であるが、ウエハと増倍層を組み合わせた合計厚さ未満である深さを有する閉塞した溝308をエッチング形成し、それを、上記溝によって境界付けられている領域の内側に光検出部を形成できるように、増倍層302と同じ導電性タイプの高濃度ドープされた多結晶シリコンで充填するステップ(
図3Bを参照)。
【0051】
増倍層302頂面上に、増倍層302を導電性タイプが反対のドーパントでドープすることによりコンタクト層305を作り出すことによって、1つまたは複数のアバランシェ増幅部303領域を形成し、この結果アバランシェ増幅部303の外側に光変換部304領域を形成するステップ(
図3Cを参照)。
【0052】
アバランシェ増幅部303領域の外側にある光変換部304領域を、0.5μm~2.5μmの深さであるが、ただし増倍層302の厚さ未満までエッチングするステップ(
図3Dを参照)。
【0053】
光変換部304領域のエッチング除去されたエリア上に、エッチング除去されている光変換部304の全エリアを埋めるように誘電体層を堆積させるステップ(
図3Eを参照)。
【0054】
アバランシェ増幅部303領域のコンタクト層305内に、高抵抗層310を形成するステップ(
図3Fを参照)。
【0055】
高抵抗層310および誘電体層309の上に、透明電極311を形成するステップ(
図3Gを参照)。
【0056】
半導体ウエハ301の上に第2の電極307を形成するステップ(
図3Hを参照)。
【0057】
図3に係る例示的なAPDを、10
18cm
-3よりも高いドーパント濃度を有するp+型のシリコンウエハ301上に、10
15~10
17cm
-3のドーパント濃度を有するp型シリコンで作製されている、5~7μmの幅を有する増倍層302を、エピタキシによって形成することを含む方法を使用して、製造することができる。次いで、増倍層302表面上に、幅が1.5μm~2.0μm、深さが増倍層の厚さ以上であるが、ウエハと増倍層を組み合わせた合計厚さ未満である、閉塞した溝308がエッチング形成され、上記溝によって境界付けられている領域の内側に光検出部を形成できるように、増倍層302と同じ導電性タイプの高濃度ドープされた多結晶シリコンで充填される。アバランシェ増幅部303は、n型ドーパントを10
18cm
-3を超える濃度で0.5~1.0μmの深さまで拡散させることによって形成されるコンタクト層305を、増倍層302上に設置することによって作製される。アバランシェ増幅部303の外側の光変換部層304は、増倍層302の厚さ未満である深さまでエッチング除去され、光変換部層のエッチング除去されたエリアは、誘電体層309で、その外縁がコンタクト層305の外縁と揃うように埋められる。光変換部304領域を、例えば約1.5~2.5μmだけエッチング除去することができる。高抵抗層310は、コンタクト層305の表面上に、厚さ約100nmの高抵抗多結晶シリコンフィルムの形態で形成され、次いで、厚さ100~200nmのITOまたはAZOフィルムである透明電極311が、高抵抗層および誘電体層の外面全体上に堆積される。最後に、0.5~1.0μmの厚さを有するアルミニウム箔である第2の電極307が、ウエハ301の底面上に堆積される。
【0058】
図3に示すようなAPDでは、電極307と対照的に、透明電極311に印加される正電圧は、アバランシェ増幅部の増倍領域302内に、上記領域内で衝突電離をトリガするのに十分な強さの電界を生成して、自由電荷キャリアを増倍させる。一方で、光変換部304領域内に現れる光電子は、電界の重ね合わせによって駆動されて増倍領域302に向かってドリフトするが、これら電界のうちの一方はアバランシェ増幅部から浸出し、他方は誘電体層309上に設置されている透明電極311のもとで形成され、この結果、アバランシェ増幅部内への信号光キャリアの効率的な移動が可能になり、これに応じて、機器の高い閾値感度が達成される。
【0059】
同時に、増倍領域302および光キャリア生成領域304を異なるレベルに配置することによって、寄生的な光学的相互作用(optical communication)を低減できる、すなわち、増幅部におけるアバランシェ増倍中に高温の電荷キャリアによって生み出される光子が、隣接する増幅部においてアバランシェ増倍をトリガする可能性が低くなる。この効果が引き起こす、複数のアバランシェ増幅部を有するAPDの閾値感度を低下させる過剰なノイズが、アバランシェ増幅部同士の間に位置している誘電体層309の境界から寄生光子を反射させることによって、更に低減される。
【0060】
アバランシェ増幅部のコンタクト層305の上に位置している高抵抗層310は、アバランシェが形成されるとき負のフィードバックを提供し、このことにより、特にいわゆる「ガイガー」モードでの動作時に、より高い増倍係数を達成することが可能になる。
【0061】
特に、
図3に示すようなAPDに、その閾値感度を改善するべく適用される設計および技術ステップは全て、独自の動作パラメータ‐とりわけ、特に車両用LiDARに典型的な背景照射が過剰な状況において、従来のAPDの場合よりも何倍も高い閾値感度‐のセットを有する、多チャンネル増幅を行う機器をもたらす。特許請求される解決法の利点の詳細な説明が、以下の発明者ら:D.A. Shushakov, S.V. Bogdanov, N.A. Kolobov, E.V. Levin, Y.I. Pozdnyakov, T.V. Shpakovskiy, V.E. Shubin, K.Y. Sitarsky, R.A Torgovnikovが共同執筆した論文「The new-type silicon photomultiplier for ToF LIDAR and other pulse detecting applications」, Proc. SPIE 10817, Optoelectronic Imaging and Multimedia Technology V, 108170J (8 November 2018); doi: 10.1117/12.2505120 (https://www.researchgate.net/publication/328836757_The_new-type_silicon_photomultiplier_for_ToF_LIDAR_and_other_pulse_detecting_applications)に示されている。