(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】帳簿の作成を支援するための装置、方法及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/12 20230101AFI20240117BHJP
【FI】
G06Q40/12 420
(21)【出願番号】P 2018096697
(22)【出願日】2018-05-20
【審査請求日】2021-05-20
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】513056101
【氏名又は名称】フリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174078
【氏名又は名称】大谷 寛
(72)【発明者】
【氏名】米川 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一也
(72)【発明者】
【氏名】高木 悟
【合議体】
【審判長】伏本 正典
【審判官】松田 直也
【審判官】緑川 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-191609(JP,A)
【文献】特開2005-063108(JP,A)
【文献】特開2004-348420(JP,A)
【文献】特開2002-074254(JP,A)
【文献】特開2012-141851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバが、帳簿の作成を支援するための方法であって、
前記サーバが、試算表の少なくとも一部を前記サーバとコンピュータ・ネットワークを介して通信可能な端末の表示画面に表示するための試算表データ
であって、前記少なくとも一部に含まれる勘定に対する会計上の不備が存在する可能性を判定する判定基準による前記サーバにおける判定結果が有である場合に、前記勘定の数値をハイライト表示させる試算表データを、前記サーバがアクセス可能な、各取引に対する仕訳が記述された仕訳データを用いて生成するステップと、
前記サーバが、前記端末に、前記試算表データを送信するステップと
、
前記サーバが、前記試算表データを送信した後に、前記端末から、前記勘定の数値が選択されたことの通知を受信するステップと、
前記サーバが、前記端末に、選択された前記数値の前記勘定を有する1又は複数の仕訳を前記端末の表示画面に表示するための仕訳表示データを送信するステップと
を含み、
前記仕訳表示データは、前記不備の原因と推定される仕訳をハイライト表示させるデータである。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記判定基準には、個別の仕訳、特定の勘定の貸方若しくは借方、貸方と借方との差額、又は期末残高の不備が含まれる。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって
、
前記サーバが、前記端末から、前記1又は複数の仕訳のいずれかに関連する修正が入力されたことの通知を受信するステップと、
前記サーバが、前記端末に、前記修正が行われた仕訳に関連する1又は複数の仕訳を前記端末の表示画面に表示するための関連仕訳表示データを送信するステップと
をさらに含む。
【請求項4】
サーバに、
試算表の少なくとも一部を前記サーバとコンピュータ・ネットワークを介して通信可能な端末の表示画面に表示するための試算表データ
であって、前記少なくとも一部に含まれる勘定に対する会計上の不備が存在する可能性を判定する判定基準による前記サーバにおける判定結果が有である場合に、前記勘定の数値をハイライト表示させる試算表データを、前記サーバがアクセス可能な、各取引に対する仕訳が記述された仕訳データを用いて生成するステップと、
前記サーバが、前記端末に前記試算表データを送信するステップと
、
前記サーバが、前記試算表データを送信した後に、前記端末から、前記勘定の数値が選択されたことの通知を受信するステップと、
前記サーバが、前記端末に、選択された前記数値の前記勘定を有する1又は複数の仕訳を前記端末の表示画面に表示するための仕訳表示データを送信するステップと
を含む帳簿の作成を支援するための方法を実行させるためのプログラムであって、
前記仕訳表示データは、前記不備の原因と推定される仕訳をハイライト表示させるデータである。
【請求項5】
帳簿の作成を支援するためのサーバであって、
試算表の少なくとも一部を前記サーバとコンピュータ・ネットワークを介して通信可能な端末の表示画面に表示するための試算表データ
であって、前記少なくとも一部に含まれる勘定に対する会計上の不備が存在する可能性を判定する判定基準による前記サーバにおける判定結果が有である場合に、前記勘定の数値をハイライト表示させる試算表データを、前記サーバがアクセス可能な、各取引に対する仕訳が記述された仕訳データを用いて生成し、
前記端末に前記試算表データを送信し、
前記試算表データを送信した後に、前記端末から、前記勘定の数値が選択されたことの通知を受信して、前記端末に、選択された前記数値の前記勘定を有する1又は複数の仕訳を前記端末の表示画面に表示するための仕訳表示データを送信し、
前記仕訳表示データは、前記不備の原因と推定される仕訳をハイライト表示させるデータである。
【請求項6】
帳簿の作成を支援するための方法であって、
サーバが、損益計算書又は貸借対照表の月次推移を前記サーバとコンピュータ・ネットワークを介して通信可能な端末の表示画面に表示するための月次推移データ
であって、前記損益計算書又は貸借対照表に含まれる勘定に対する会計上の不備が存在する可能性を判定する判定基準による前記サーバにおける判定結果が有である場合に、前記勘定の数値をハイライト表示させる月次推移データを、前記サーバがアクセス可能な、各取引に対する仕訳が記述された仕訳データを用いて生成するステップと、
前記サーバが、前記端末に、前記月次推移データを送信するステップと
、
前記サーバが、前記月次推移データを送信した後に、前記端末から、前記勘定の数値が選択されたことの通知を受信するステップと、
前記サーバが、前記端末に、選択された前記数値の前記勘定を有する1又は複数の仕訳を前記端末の表示画面に表示するための仕訳表示データを送信するステップと
を含み、
前記仕訳表示データは、前記不備の原因と推定される仕訳をハイライト表示させるデータである。
【請求項7】
サーバに、
損益計算書又は貸借対照表の月次推移を前記サーバとコンピュータ・ネットワークを介して通信可能な端末の表示画面に表示するための月次推移データ
であって、前記損益計算書又は貸借対照表に含まれる勘定に対する会計上の不備が存在する可能性を判定する判定基準による前記サーバにおける判定結果が有である場合に、前記勘定の数値をハイライト表示させる月次推移データを、前記サーバがアクセス可能な、各取引に対する仕訳が記述された仕訳データを用いて生成するステップと、
前記端末に、前記月次推移データを送信するステップと
、
前記月次推移データを送信した後に、前記端末から、前記勘定の数値が選択されたことの通知を受信するステップと、
前記端末に、選択された前記数値の前記勘定を有する1又は複数の仕訳を前記端末の表示画面に表示するための仕訳表示データを送信するステップと
を含む帳簿の作成を支援するため方法を実行させるためのプログラムであって、
前記仕訳表示データは、前記不備の原因と推定される仕訳をハイライト表示させるデータである。
【請求項8】
帳簿の作成を支援するためのサーバであって、
損益計算書又は貸借対照表の月次推移を前記サーバとコンピュータ・ネットワークを介して通信可能な端末の表示画面に表示するための月次推移データ
であって、前記損益計算書又は貸借対照表に含まれる勘定に対する会計上の不備が存在する可能性を判定する判定基準による前記サーバにおける判定結果が有である場合に、前記勘定の数値をハイライト表示させる月次推移データを、前記サーバがアクセス可能な、各取引に対する仕訳が記述された仕訳データを用いて生成し、
前記端末に前記月次推移データを送信し、
前記月次推移データを送信した後に、前記端末から、前記勘定の数値が選択されたことの通知を受信して、前記端末に、選択された前記数値の前記勘定を有する1又は複数の仕訳を前記端末の表示画面に表示するための仕訳表示データを送信し、
前記仕訳表示データは、前記不備の原因と推定される仕訳をハイライト表示させるデータである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帳簿の作成を支援するための装置、方法及びそのためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
会計事務所における主要業務の1つとして、月次監査等の定期的な監査業務が挙げられる。顧問先の企業の総勘定元帳に代表される帳簿の正確さを担保するために、仕訳帳から合計試算表又は残高試算表を作成して、賃借平均の原理に従っていることの確認が行われる。賃借平均の原理に従っていない場合には、仕訳の誤りが存在することを意味するため、関連帳簿を精査して誤りを見つけ、修正を行う必要がある。また、そのほかにも帳簿として不適切な点がないかの確認が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした帳簿の不備の発見には多くの労力と時間を要することから、その効率化を図ることができれば、会計事務所はより付加価値の高い業務に時間を当てることができ、また、より多くの顧客を支えることができる。特に、貸借平均の原理の充足性に影響を与えない種類の不備の発見の負担は大きい。
【0004】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、帳簿の作成を支援するための装置、方法及びそのためのプログラムにおいて、会計上の不備発見を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、試算表の少なくとも一部を表示するための試算表データを送信するステップと、表示された前記試算表に含まれるいずれかの勘定の数値が選択されたことの通知を受信するステップと、選択された前記数値の勘定を有する1又は複数の仕訳を表示するための仕訳表示データを送信するステップと、前記1又は複数の仕訳のいずれかに関連する修正が入力されたことの通知を受信するステップと、前記修正が行われた仕訳に関連する1又は複数の仕訳を表示するための関連仕訳表示データを送信するステップとを含むことを特徴とする方法である。
【0006】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記少なくとも一部は、損益計算書又は賃借対照表に含まれる勘定であることを特徴とする。
【0007】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記試算表データは、会計上の不備が存在する可能性がある勘定をハイライト表示させることを特徴とする。
【0008】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれかの態様において、前記選択は、前記数値又は前記数値に関連づけられた表示のクリック又はタップであることを特徴とする。
【0009】
本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれかの態様において、前記仕訳表示データは、前記1又は複数の仕訳を前記試算表の右方に表示させることを特徴とする。
【0010】
本発明の第6の態様は、第5の態様において、前記仕訳表示データは、前記1又は複数の仕訳を表示画面の右方から左方に向けて移動表示させることを特徴とする。
【0011】
本発明の第7の態様は、第1から第6のいずれかの態様において、前記仕訳表示データは、会計上の不備の原因と推定される仕訳をハイライト表示させることを特徴とする。
【0012】
本発明の第8の態様は、第1から第7のいずれかの態様において、前記修正は、勘定科目の変更であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第9の態様は、第1から第8のいずれかの態様において、前記関連する1又は複数の仕訳は、前記修正の特徴に基づいて特定することを特徴とする。
【0014】
本発明の第10の態様は、第1から第8のいずれかの態様において、1又は複数の取引に対する仕訳を記述した仕訳データを登録するステップをさらに含み、前記関連の有無は、仕訳が、前記修正が行われた仕訳と前記修正の前の時点で勘定科目が同一であり、かつ、同一の組織に属するユーザーが複数存在する場合に前記修正が行われた仕訳と同一のユーザーによって登録内容が入力された仕訳であるか否かによって判定することを特徴とする。
【0015】
本発明の第11の態様は、第1から第8のいずれかの態様において、仕訳の対象となる1又は複数の取引を記述した取引データを登録するステップをさらに含み、前記関連の有無は、仕訳が、前記修正が行われた仕訳と前記修正の前の時点で勘定科目が同一であり、かつ、前記修正が行われた仕訳に関する取引と同一の経路で登録された取引に関する仕訳であるか否かによって判定することを特徴とする。
【0016】
本発明の第12の態様は、第11の態様において、前記経路は、データファイルのアップロード、APIを用いた入力及びウェブ明細データの取得のいずれかであることを特徴とする。
【0017】
本発明の第13の態様は、第9から第12のいずれかの態様において、前記関連の有無は、仕訳の税区分が、前記修正が行われた仕訳と前記修正の前の時点で同一であるか否かによってさらに判定されることを特徴とする。
【0018】
本発明の第14の態様は、第1から第13のいずれかの態様において、前記仕訳表示データは、前記1又は複数の仕訳を前記試算表の右方に表示させ、前記関連仕訳表示データは、前記関連する1又は複数の仕訳を前記1又は複数の仕訳の下方に表示させることを特徴とする。
【0019】
本発明の第15の態様は、第14の態様において、前記関連仕訳表示データは、前記関連する1又は複数の仕訳を表示画面の下方から上方に向けて移動表示させることを特徴とする。
【0020】
本発明の第16の態様は、コンピュータに、試算表の少なくとも一部を表示するための試算表データを送信するステップと、表示された前記試算表に含まれるいずれかの勘定の数値が選択されたことの通知を受信するステップと、選択された前記数値の勘定を有する1又は複数の仕訳を表示するための仕訳表示データを送信するステップと、前記1又は複数の仕訳のいずれかに関連する修正が入力されたことの通知を受信するステップと、前記修正が行われた仕訳に関連する1又は複数の仕訳を表示するための関連仕訳表示データを送信するステップとを含む方法を実行させるためのプログラムである。
【0021】
本発明の第17の態様は、試算表の少なくとも一部を表示するための試算表データを送信し、表示された前記試算表に含まれるいずれかの勘定の数値が選択されたことの通知を受信して、選択された前記数値の勘定を有する1又は複数の仕訳を表示するための仕訳表示データを送信し、前記1又は複数の仕訳のいずれかに関連する修正が入力されたことの通知を受信して、前記修正が行われた仕訳に関連する1又は複数の仕訳を表示するための関連仕訳表示データを送信することを特徴とする装置である。
【0022】
本発明の第18の態様は、試算表の少なくとも一部を表示するステップと、表示された前記試算表に含まれるいずれかの勘定の数値が選択されたことを検知するステップと、選択された前記数値の勘定を有する1又は複数の仕訳を表示するステップと、前記1又は複数の仕訳のいずれかに関連する修正が入力されたことを検知するステップと、前記修正が行われた仕訳に関連する1又は複数の仕訳を表示するステップとを含むことを特徴とする方法である。
【0023】
本発明の第19の態様は、1又は複数の仕訳を表示するための仕訳表示データを送信するステップと、前記1又は複数の仕訳のいずれかに関連する修正が入力されたことの通知を受信するステップと、前記修正が行われた仕訳に関連する1又は複数の仕訳を表示するための関連仕訳表示データを送信するステップとを含むことを特徴とする方法である。
【0024】
本発明の第20の態様は、損益計算書又は貸借対照表の月次推移を表示するための月次推移データを送信するステップと、表示された前記月次推移に含まれるいずれかの勘定の数値が選択されたことの通知を受信するステップと、選択された前記数値の勘定を有する1又は複数の仕訳を表示するための仕訳表示データを送信するステップと、前記1又は複数の仕訳のいずれかに関連する修正が入力されたことの通知を受信するステップと、前記修正が行われた仕訳に関連する1又は複数の仕訳を表示するための関連仕訳表示データを送信するステップとを含むことを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、ユーザー端末に表示された仕訳に関連する修正が入力された場合に当該修正に関連する仕訳を特定して監査対象としてさらに表示させることによって、会計上の不備の発見を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる帳簿作成支援装置を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる帳簿作成支援方法の流れ図である。
【
図3】本発明の一実施形態において、試算表のうち損益計算書に含まれる勘定を表示した例を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態において、選択された勘定を有する仕訳を試算表の右方に表示した例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態において、試算表の右方に表示された仕訳のいずれかに対する修正画面の一例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態において、試算表の右方に表示された仕訳のいずれかに対する修正が入力された後の画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態にかかる帳簿作成支援装置を示す。装置100は、コンピュータ・ネットワークを介して、当該装置により提供される帳簿作成支援サービスの第1のユーザーが用いる第1のユーザー端末110及び第2のユーザーが用いる第2のユーザー端末120と通信可能である。第1のユーザーは、たとえば企業又は事業所若しくはその経理担当者であり、第1のユーザー端末110からは、帳簿作成に必要な会計データが提供され、装置100において当該会計データに基づいて試算表データが生成される。第2のユーザーは、たとえば第1のユーザーを顧客とする会計事務所又はその所員であり、第2のユーザー端末120からは、作成された帳簿に対する監査が行われる。ここでは、第1のユーザー端末110から会計データが装置100に対して提供されるものとして説明をするが、こうした会計データの入力、生成等についても第2のユーザー端末120から行うことが考えられる。
【0029】
装置100が受信する会計データとしては、銀行、クレジットカード会社等が提供するウェブ明細データなどの取引が記述された取引データを挙げることができる。取引データを受信して登録することに加えて、又はこれに代替して、装置100は各取引に対する仕訳が記述された仕訳データを会計データとして受信してもよく、あるいは受信した取引データに基づいて仕訳対象となる取引を第1のユーザー端末110において表示し、第1のユーザーが行った仕訳内容の入力を受信して仕訳登録を行うことで仕訳データを生成してもよい。いずれにしても、装置100において、仕訳データがアクセス可能であればよい。また、会計データは、第1のユーザー端末110から直接的に受信せずに銀行、クレジットカード会社、会計事務所等のその他の企業から間接的に受信してもよく、第1のユーザーと関連づけが可能であればよい。
【0030】
装置100は、通信インターフェースなどの通信部101と、プロセッサ、CPU等の処理部102と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置又は記憶媒体を含む記憶部103とを備え、各処理を行うためのプログラムを実行することによって以下で説明する各機能を実現することができる。装置100は1又は複数の装置ないしサーバを含むことがあり、クラウド上のリソースにより構成することができる。また、当該プログラムは1又は複数のプログラムを含むことがあり、また、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。
【0031】
図示はしないが、第1のユーザー端末110及び第2のユーザー端末120についても、装置100と同様の構成を有することができる。
【0032】
図2に、本実施形態にかかる帳簿の作成支援方法の流れを示す。まず、装置100は、アクセス可能な仕訳データに基づいて、各勘定についての借方と貸方との差額並びに借方及び貸方の少なくとも一方を含む試算表の少なくとも一部を表示するための試算表データを生成して第2のユーザー端末120に送信する(S201)。対象企業又は対象事業所のすべての勘定について表示することができるが、損益計算書又は貸借対照表に含まれる勘定のみについて表示するようにしてもよい。また、試算表データの送信は、第2のユーザー端末120からの帳簿チェックリクエストに応じて行うようにしてもよい。
【0033】
図3は、試算表のうち損益計算書に含まれる勘定について第2のユーザー端末120の表示画面121に表示した例を示すものであり、一例として「消耗品費」について、借方と貸方との差額がハイライト表示されている。装置100は、各勘定について、会計上の不備が存在する可能性を判定するための判定基準を記憶部103又は装置100からアクセス可能な記憶装置又は記憶媒体に記憶しており、判定結果が有の場合に当該勘定の数値をハイライト表示させることができる。
【0034】
上記判定基準は、貸借平均の原理の充足性に影響を与えない種類の不備が存在する可能性を判定するものとすることが好ましい。不備の種類として、個別の仕訳における不備と、いずれの仕訳に起因するものかは特定ないし推定できないものの、特定の勘定の貸方、借方、これらの差額又は期末残高における不備が挙げられる。前者の例には、個別の仕訳における勘定科目の誤り、個別の仕訳の重複、個別の仕訳に対する監査コメントの未解決等が含まれる。後者の例には、負の値の期末残高等が含まれる。
【0035】
次に、装置100は、表示された試算表に含まれるいずれかの勘定の数値が選択されたことの通知を受信して(S202)、選択された勘定を有する1又は複数の仕訳を表示するための仕訳表示データを送信する(S203)。
【0036】
図4は、「消耗品費」の差額が選択された際に表示画面121に「消耗品費」の勘定を有する複数の仕訳を試算表の右方に内訳として表示した例を示すものである。単一の画面に試算表及び不備が存在する可能性のある勘定の仕訳を表示することによって、不備の発見及びその原因の理解を容易にすることができる。不備の原因と推定される仕訳をハイライト表示させることが好ましく、また、不備の原因と推定される仕訳のみを試算表の右方に表示させてもよい。また、試算表領域300の右方に仕訳領域400を表示する際に、表示画面の右方から左方に向けて1又は複数の仕訳を移動表示させることで、ユーザーに対して直感的に不備の原因を伝えることができる。
【0037】
数値の選択は、当該数値自体のクリック又はタップである場合のほかに、
図4に示すような数値に関連づけられた表示のクリック又はタップである場合がある。関連づけられた表示としては、ハイライト表示の理由の表示が挙げられ、たとえば、数値がクリック又はタップされたとき、数値又はその近傍にカーソルを移動させたとき等に表示させることができる。また、関連づけられた表示として、ハイライト表示された部分のうちの数値以外の部分を考えることもできる。
【0038】
不備の原因と推定される仕訳が選択された場合、
図5に示すように、当該仕訳に対する修正画面500を表示させて、ユーザーによる修正の入力を受け付けることができる。仕訳に対する修正としては、たとえば勘定科目の修正が挙げられ、この例では「消耗品費」から「建物」という固定資産科目への変更を行っている。修正の種類としては、勘定科目の変更のほかに、固定資産台帳への登録等、仕訳自体の修正ではないものの当該仕訳に関連する修正を含む。
【0039】
第2のユーザー端末120から、いずれかの仕訳に関連する修正が入力されたことの通知を受信した後(S204)、装置100は、当該修正が行われた仕訳に関連する1又は複数の仕訳を表示するための関連仕訳表示データを送信する(S205)。
【0040】
図6は、修正が行われた仕訳に関連ないし類似する仕訳を選択された勘定を有する仕訳の下方に表示した例を示すものである。不備の原因とは自動的に推定されないものの、入力された修正の特徴に基づいて、不備の可能性が疑われる仕訳を関連仕訳ないし類似仕訳として特定してさらに表示することによって、不備の発見を一層容易にすることが可能となる。仕訳領域400の下方に関連仕訳領域600を表示する際に、表示画面の下方から上方に向けて関連仕訳を移動表示させることで、ユーザーの注意を惹き、確認を促すことができる。関連仕訳の詳細については、第2の実施形態でさらに説明する。
【0041】
また、
図6に示すように、修正入力の受信に応じて、試算表及び選択された勘定を有する仕訳の表示を更新することができる。このようにすることで、会計上の不備が解消又は減少したことを一目で理解することが可能となる。
図6において「消耗品費」の差額がハイライト表示されているが、これは当該勘定が選択されて内訳が表示されていることを表すものであって、不備の存在の可能性を表すものではなく、たとえば不備の存在は橙色等の暖色で表し、特定の勘定が選択されていることは青色等の寒色で表すといったことが可能である。
【0042】
上述の説明では、第2のユーザー端末120における第2のユーザーによる操作に応じて装置100が必要なデータを第2のユーザー端末120に向けて送信するものとしているが、第2のユーザーによる操作に応じた処理に必要なデータ、プログラムなどをあらかじめ第2のユーザー端末120において保持しておき、第2のユーザーの操作を検知して装置100と通信することなく次の処理を行うようにしてもよい。具体的には、第2のユーザー端末120において、試算表の少なくとも一部を表示し、表示された当該試算表に含まれるいずれかの勘定の数値が選択されたことを検知し、選択された当該勘定を有する1又は複数の仕訳を表示し、当該1又は複数の仕訳のいずれかに関連する修正が入力されたことを検知し、修正が行われた仕訳に関連する1又は複数の仕訳を表示するようにしてもよい。この際、装置100との間の通信が必要に応じて発生することを除外するものではない。
【0043】
また、上述の説明では、仕訳データから試算表データを生成し、第2のユーザー端末120において表示される試算表を起点として不備の存在の可能性をユーザーに伝えているが、試算表データではなく損益計算書又は貸借対照表の月次推移を表示するための月次推移データを生成し、月次推移を起点として不備の存在の可能性をユーザーに伝えることも考えられる。
【0044】
なお、「××のみに基づいて」、「××のみに応じて」、「××のみの場合」というように「のみ」との記載がなければ、本明細書においては、付加的な情報も考慮し得ることが想定されていることに留意されたい。
【0045】
また、念のため、なんらかの方法、プログラム、端末、装置、サーバ又はシステム(以下「方法等」)において、本明細書で記述された動作と異なる動作を行う側面があるとしても、本発明の各態様は、本明細書で記述された動作のいずれかと同一の動作を対象とするものであり、本明細書で記述された動作と異なる動作が存在することは、当該方法等を本発明の各態様の範囲外とするものではないことを付言する。
【0046】
(第2の実施形態)
修正が行われた仕訳に関連する仕訳の詳細について説明する。関連仕訳は、行われた修正の特徴に基づいて特定を行うところ、
図6の例では、取引日が同一会計期間内で、修正が行われた仕訳と修正の前の時点で勘定科目が同一であり、かつ、同一の企業、事業所、会計事務所等の同一の組織に属するユーザーが複数存在する場合に修正が行われた仕訳と同一のユーザーによって登録内容が入力された仕訳を表示している。これにより、不備のある仕訳登録を行ったユーザーによる同一勘定のその他の仕訳の確認が容易になる。たとえば、複数のユーザーとして経験に富む者と経験の浅い者がいる場合、経験の浅い者による入力に類似する不備が見出される可能性が高い。
【0047】
修正が行われた仕訳に関連する仕訳としては、取引日が同一会計期間内で、修正が行われた仕訳と修正の前の時点で勘定科目が同一であり、かつ、修正が行われた仕訳に関する取引と同一の経路で登録された取引に関する仕訳を表示することもできる。
【0048】
取引データの登録は、第1のユーザー端末110からのデータファイルのアップロード、第1のユーザー端末110からのAPIを用いた入力、金融機関等からのウェブ明細データの取得等、さまざまな経路で実行可能である。不備のある仕訳に関する取引が登録された経路を監査対象として抽出することで、不備の発見の効率化が図られる。
【0049】
経路の同一性は、上記のような形式の同一性に加えて、アップロードが行われたデータファイルが同一であること、入力が行われたAPIが同一であること、取得されたウェブ明細データが同一であること等のように、より詳細に判定することができる。
【0050】
さらに、修正が行われた仕訳と修正の前の時点で税区分が同一であることを関連性の条件とすることもできる。また、ユーザーに関する特徴、経路に関する特徴及びその他の特徴は、組み合わせて関連性の有無の判定に用いることができる。
【0051】
ここまでの説明では、試算表領域300の右方に仕訳領域400を表示させ、仕訳領域400に会計上の不備の原因と推定される仕訳として表示された仕訳に関連する修正が行われた場合に関連仕訳を関連仕訳領域600に表示させるものとして説明したが、仕訳領域400に表示されたいずれかの仕訳に関連する修正が行われた場合に関連仕訳を表示してもよく、また、試算表領域300及びその右方の仕訳領域400を前提とせずに、表示画面121に表示されたいずれかの仕訳に関連する修正が行われた場合に、必要に応じて修正が行われた当該仕訳と関連づけて、関連仕訳をさらに表示することも可能である。
【符号の説明】
【0052】
100 帳簿作成支援装置
101 通信部
102 処理部
103 記憶部
110 第1のユーザー端末
120 第2のユーザー端末
121 表示画面
300 試算表領域
400 仕訳領域
500 修正画面
600 関連仕訳領域