(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】インプリント装置、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240117BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2019134797
(22)【出願日】2019-07-22
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 亨
(72)【発明者】
【氏名】山本 磨人
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-086051(JP,A)
【文献】特開2019-029447(JP,A)
【文献】特開2013-062286(JP,A)
【文献】特開2011-233652(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1991640(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成された型と基板の上のインプリント材とを接触させて前記インプリント材を硬化させ、前記硬化したインプリント材と前記型とを引き離すことによって、前記基板の上にパターンを形成するインプリント装置であって、
型を保持する型保持部と、
前記型のパターン部の位置および前記型の外形を検出する検出部と、
前記検出部によ
る検出の結果から得られた、前記型の外形を基準とした前記パターン部の位置
と、予め得られた
前記型の外形を基準とした前記パターン部の位置
の目標値とに基づいて、前記パターン部が所定の基準位置に位置するように、前記型保持部が前記型を保持した状態で前記型保持部を移動させるよう前記型保持部を制御する制御部と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
基板を保持する基板保持部と、
前記型と前記インプリント材との接触および引き離しを行うために、前記型保持部と前記基板保持部との相対距離を変更する駆動部と、を有し、
前記制御部は、前記所定の基準位置を前記駆動部の駆動力作用点の中心に設定し、前記検出部による検出の結果に基づいて前記パターン部の中心が前記駆動部の駆動力作用点の中心に位置するように前記型保持部を制御する、ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記パターン部は、前記型の一面において周辺の領域よりも突出したメサ部に形成され、
前記検出部は、前記メサ部の側面を検出するように構成されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記型保持部に配置される、ことを特徴とする請求項3に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記型の搬送経路中の、前記型保持部から離れた位置に配置され、前記型が前記型保持部によって保持される前に前記パターン部の検出を行う、ことを特徴とする請求項3に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記パターン部を視野に収めて撮像する撮像部を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記制御部は、
外形に対するパターン部の位置が既知である基準型を前記型保持部に保持させ、前記基準型の前記パターン部の中心と前記所定の基準位置とが合致した状態での前記検出部による検出の結果を目標値としてメモリに記憶しておき、
前記型が前記型保持部に保持されたとき、前記検出部による検出の結果および前記目標値に基づいて、前記型の前記パターン部が前記所定の基準位置に位置するように前記型保持部を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記インプリント装置は、前記型をマスターモールドとし、前記基板をブランクモールドであるレプリカ基板とし、前記レプリカ基板の上に前記インプリント材のパターンが形成されたレプリカモールドを製造するレプリカモールド製造装置であり、
前記レプリカ基板は、該レプリカ基板の一面において周辺の領域よりも突出した、前記インプリント材が供給されるレプリカメサ部を有し、
前記インプリント装置は、
前記レプリカ基板を保持するレプリカ基板保持部と、
前記レプリカ基板保持部に保持された前記レプリカ基板の前記レプリカメサ部を検出するメサ検出部と、を有し、
前記制御部は、前記メサ検出部による検出の結果に基づいて前記レプリカメサ部が所定の基準位置に位置するように前記レプリカ基板保持部を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いて基板の上にパターンを形成する工程と、
前記工程において前記パターンが形成された基板の処理を行う工程と、
を含み、前記処理が行われた前記基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを製造するための新たなパターン形成技術として、インプリント技術が注目されている。インプリント装置は、シリコンウエハやガラスプレート等の基板の上のインプリント材に型を接触させた状態でインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材から型を剥離することによって基板上にインプリント材のパターンを形成する。インプリント材の硬化法の一つとして、光硬化法がある(例えば特許文献1)。
【0003】
型は、真空吸着あるいは静電吸着により型保持部によって保持される。型保持部に対する型の位置・姿勢は一般には、型の外形の計測結果に基づいて調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インプリント装置においては、重ね合わせ精度、生産性、欠陥数低減といった要求に応えるため、型と基板との間の相対的な挙動をコントロールすることが重要であり、駆動部の制御パラメータは精密に調整される。
【0006】
型の平面内の一部にパターンが配されており、あるいはその平面内の一部にメサと呼ばれる凸部が形成され、その天面にパターンが配されている。型は複雑な工程を経て製造されるため、複数の型の間には形状のばらつきを伴い、型におけるパターンの位置もばらつきを持つ。そのため、型の寿命や工程の変更等によって型を交換した場合、駆動部と型のパターンとの位置関係が変化しうる。したがって、駆動部の制御パラメータが一定であれば、型と基板上のインプリント材とを接触させる時の相対挙動が変化し、欠陥数の増大を招きうる。一方、制御パラメータの最適値を型個別に設定する場合には、その調整時間により生産性が大幅に低下することは自明である。
【0007】
本発明は、例えば、型の外形とパターン部との位置関係のばらつきに対するロバスト性能の点で有利なインプリント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によれば、パターンが形成された型と基板の上のインプリント材とを接触させて前記インプリント材を硬化させ、前記硬化したインプリント材と前記型とを引き離すことによって、前記基板の上にパターンを形成するインプリント装置であって、型を保持する型保持部と、前記型のパターン部の位置および前記型の外形を検出する検出部と、前記検出部による検出の結果から得られた、前記型の外形を基準とした前記パターン部の位置と、予め得られた前記型の外形を基準とした前記パターン部の位置の目標値とに基づいて、前記パターン部が所定の基準位置に位置するように、前記型保持部が前記型を保持した状態で前記型保持部を移動させるよう前記型保持部を制御する制御部と、を有することを特徴とするインプリント装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、型の外形とパターン部との位置関係のばらつきに対するロバスト性能の点で有利なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態におけるインプリント装置の構成を示す図。
【
図3】実施形態におけるインプリント処理のフローチャート。
【
図4】従来技術において、駆動部に対する型のパターン部の位置のずれが生じることを説明する図。
【
図5】実施形態において、駆動部に対する型のパターン部の位置のずれが補正されることを説明する図。
【
図6】実施形態におけるインプリント装置の構成を示す図。
【
図7】実施形態におけるインプリント装置の構成を示す図。
【
図9】実施形態におけるインプリント処理のフローチャート。
【
図10】従来技術において、ステージに対するレプリカ基板のメサ部の位置のずれが生じることを説明する図。
【
図11】実施形態において、ステージに対するレプリカ基板のメサ部の位置のずれが補正されることを説明する図。
【
図12】実施形態におけるインプリント装置の構成を示す図。
【
図13】実施形態における物品製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<第1実施形態>
まず、実施形態に係るインプリント装置の概要について説明する。インプリント装置は、基板上に供給されたインプリント材を型と接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。
【0013】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、インプリント材供給装置(不図示)により、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0014】
図1は、本実施形態のインプリント装置1の構成を示す図である。なお、本明細書および添付図面では、基板13の表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御または駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸、Z軸の座標に基づいて特定されうる情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸、θZ軸の値で特定されうる情報である。位置決めは、位置および/または姿勢を制御することを意味する。位置合わせは、基板および型の少なくとも一方の位置および/または姿勢の制御を含みうる。
【0015】
インプリント装置1は、接触工程と、硬化工程と、離型工程とを含むインプリント処理を実行する。接触工程は、基板13上のインプリント材14と型11とを接触させる工程である。硬化工程は、インプリント材14と型11とを接触させた状態でインプリント材14を硬化させる工程である。離型工程は、硬化後のインプリント材14と型11とを分離する工程である。本実施形態において、インプリント装置1は、インプリント材の硬化法として、紫外線の照射によってインプリント材を硬化させる光硬化法を採用するものとする。したがって、本実施形態では、インプリント材14には、紫外線が照射されることで硬化する紫外線硬化性のインプリント材が使用される。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば熱硬化性のインプリント材を用い、熱の印加によってインプリント材を硬化させる熱硬化法を採用することもできる。
【0016】
硬化部2は、型11を通して基板13の上のインプリント材14に紫外線15を照射してインプリント材14を硬化させる。アライメントスコープ3は、型11に設けられたアライメントマークと、基板13に設けられたアライメントマークを観察するための光学系および撮像系を有する顕微鏡である。アライメントスコープ3は複数のユニットの組み合わせでもよい。アライメントスコープ3を用いて、型のパターン部の位置を検出することもできる。インプリントスコープ4は、インプリント処理中およびその前後における基板13上のインプリント材、あるいはその周りの部材の挙動を観察する撮像部である。アライメントスコープおよびインプリントスコープ4は、型11のパターン部12を視野に収めて撮像する撮像部を含みうる。したがって、アライメントスコープ3またはインプリントスコープ4を用いて、型のパターン部の位置を検出することもできる。
【0017】
型保持部であるインプリントヘッド5は、型11を保持する型保持機構6と、型11を保持した状態で型11を基板13に対して移動させるための駆動部7とを支持する。型保持機構6は、真空吸着、動作部の駆動による把持等によって型11を保持する。型保持機構6と駆動部7の駆動自由度は1自由度でもよいし、型11や基板13の姿勢に応じて補正するために多自由度でもよい。これにより型保持機構6は、型11の姿勢や位置を変化させることや、形状を弾性限度内で変形させることによる補正駆動を行うことができる。型保持機構6の制御は、動作部内に構成される変位センサで検出される変位に基づく位置制御のほか、変位センサの代わりに力センサを構成し、型を保持した状態で各動作部の力を時間的に変化させて行う力制御、あるいはその併用でもよい。駆動部7は例えば、複数のアクチュエータを含み、複数のアクチュエータそれぞれを制御することにより、型11と基板13との相対的な位置および/または傾きを変更することができる。これにより駆動部7は、型11と基板13の上のインプリント材14との接触および引き離しを行うために、型保持機構6と基板保持部であるステージ8との相対距離を変更することができる。なお、駆動部7の構成はこれに限定されない。例えば、型11側ではなくステージ8側にこの駆動部の構成を設けてもよいし、型11側およびステージ8側の双方に駆動部を設けてもよい。
【0018】
また、インプリントヘッド5は、保持した型を検出する不図示の型検出器を有し、これを用いて型の位置・姿勢を検出することができる。型検出器は例えばレーザー変位計を含み、複数チャネルの構成によって計測対象軸を例えばX,Y,θzとすることができるが、検出の方式や計測軸はこの限りではない。
【0019】
ステージ8は、基板13を真空吸着等により保持し、かつ、XY平面内を移動可能な基板保持部である。ステージ8は、Z軸周りの回転駆動機構を備えうる。ステージ8は、更に、上記したような駆動部の機能を持たせるべく、Z方向や、XY軸周りの回転機構を有していてもよい。
【0020】
制御部9は、インプリント装置1の各部に回線を介して接続され、インプリント装置1の各部の動作を司る。制御部9は、インプリント処理に係る各種演算も実行しうる。制御部9は、CPUおよびメモリを有するコンピュータによって実現されうる。
【0021】
型11は、
図2に示すように、その一面に、インプリント材14に転写すべきパターンが形成されたパターン部12を有する。パターン部12の位置は、その製造要件から、型の外形の中心に対してずれており、ずれ量は個々の型によってばらつきを持つ。
図2では、外形の中心線に対するパターン部12の中心のずれ量をΔx,Δy,θzで示す。インプリント処理において、
図1のように型11はインプリントヘッド5によって保持され、パターン部12を有する面は基板13に対向する。ここで、パターン部12は、周辺の領域よりも基板13側に突出した領域(メサ部ともよばれる)に形成されている。
【0022】
パターン検出部10は、型11のパターン部12を検出する。パターン検出部10は、例えばインプリントヘッド5の基部に設けられ、インプリントヘッド5の基部の位置を基準として、型保持機構6で保持されている型11のパターン部12(メサ部)の側面を検出する。ただし、パターン検出部10の基準位置は、インプリントヘッド5の基部ではなく、駆動部7や型保持機構6における所定位置としてもよい。また、パターン検出部10は、基準位置とパターン部12との相対位置が検出できる機構であればよく、例えば、側方から形状を検出するレーザー変位計を用いるものや、型11を透過して画像検出を行うものでもよい。また、装置を調整した時のパターン位置を記憶し、その位置を基準としてもよい。
【0023】
パターン部12は、インプリント材14に転写されるべき所定の凹凸パターンを有する。このパターン部12は、インプリント処理が繰り返されることによって損耗が進むほか、対象とする工程ごとにパターンの形状は異なるため、型11は交換可能である。なお、型11は、不図示の型搬送装置によって、インプリントヘッド5に対して搬入/搬出される。また、基板13は、不図示の基板搬送装置によって、ステージ8に対して搬入/搬出される。
【0024】
型11のパターン部12の中心の位置は、理想的には、型11の外形の中心と合致する。しかし実際には、上記したように、その製造要件から、パターン部12の中心と型の外形の中心との間にはずれがあり、そのずれ量は型によってばらつきがある。そこで本実施形態では、型が交換されてもそのようなずれが生じないように、制御部9は、パターン検出部10による検出の結果に基づいて、パターン部12が所定の基準位置に位置するように型保持機構6を制御する。以下では、これを実現する具体例を説明する。
【0025】
(事前調整工程)
デバイス製造工程における重ね合わせ精度向上、生産性向上、欠陥数低減といった目的のため、運用前(製造工程の前)のインプリント装置1の調整として、制御部9による種々の制御パラメータの最適化作業が行われる(事前調整工程)。事前調整工程では、型、基板、およびインプリント材を使用してインプリント動作が行われる。そのインプリント動作中、インプリントスコープ4による接触状態の観察が行われる。制御部9は、型保持機構6、駆動部7、ステージ8からの出力値等に基づいて駆動パラメータを調整することで、接触工程および離型工程における動作の最適化を行う。
【0026】
事前調整工程においてはまず、外形に対するパターン部の位置が既知である基準型11’を準備する。この基準型11’を型保持機構6に保持させる。この状態は、パターン部12の中心が所定の基準位置に位置している状態であり、制御部9は、この状態でパターン検出部10によるパターン部12の位置検出を行い、この検出結果を目標値としてメモリに記憶する。これ以降の事前調整工程で使用される複数の型に対して、制御部9は、型が搭載される都度、パターン検出部10によるパターン部12の位置検出を行い、メモリに記憶されている目標値を参照して型保持機構6の補正駆動を行う。これにより、型が交換されても、交換後の型11のパターン部12の中心が所定の基準位置に位置するようになる。所定の基準位置は、予め定められた点であればよい。所定の基準位置は、例えば、インプリントヘッド5の中心、具体的には、駆動部7の駆動力作用点の中心に設定されうる。
【0027】
なお、この最適化は、パターン検出部10のかわりに、アライメントスコープ3またはインプリントスコープ4を用いて行うことも可能である。この場合、アライメントスコープ3またはインプリントスコープ4によって基準型11’のパターン部12が観察される。制御部9は、アライメントスコープ3あるいはインプリントスコープ4を基準とするパターン部12の位置を目標値としてメモリに記憶する。これ以降の事前調整工程で使用される複数の型に対して、制御部9は、型が搭載される都度、アライメントスコープ3によるパターン部12の位置検出を行い、メモリに記憶されている目標値を参照して型保持機構6の補正駆動を行う。なお、このときの位置検出は、パターン部12自体ではなくパターン中の所定の位置に存在するアライメントマークの位置検出としてもよい。これにより、型が交換されても、交換後の型11のパターン部12の中心が所定の基準位置(例えばインプリントヘッド5の中心)に合うようになる。
【0028】
以上のような事前調整工程の後、デバイス製造工程におけるインプリント処理が実施される。以下、
図3のフローチャートを参照して、デバイス製造工程における一枚の基板に対するインプリント処理を説明する。インプリント処理は、準備工程とインプリント工程を含み、インプリント工程は、上記した接触工程、硬化工程、および離型工程を含む。
【0029】
(準備工程)
S1で、制御部9は、不図示の型搬送装置を制御して、使用する型11をインプリントヘッド5に搬送する。S2で、パターン検出部10によりパターン部12の位置が検出される。あるいは、アライメントスコープ3またはインプリントスコープ4によりパターン部12またはパターン内のアライメントマークの位置が検出される。検出結果は制御部9に送られる。S3で、制御部9は、検出結果およびメモリに記憶されている目標値に基づいて、パターン部12の中心がインプリントヘッド5の中心(具体的には、駆動部7の駆動力作用点の中心)に位置するようにインプリントヘッド5を駆動する。このときのインプリントヘッド5の駆動は、型保持機構6のみの駆動でもよいし、駆動部7のみの駆動でもよいし、型保持機構6および駆動部7の両方の駆動でもよい。
【0030】
S4で、制御部9は、不図示の基板搬送装置を制御して、基板13をステージ8に搬送する。S5で、制御部9は、ステージ8を制御して基板13を不図示のインプリント材供給装置の下の位置に搬送し、ステージ8およびインプリント材供給装置を制御して、基板13の所定の範囲(ショット領域)にインプリント材14を供給する。
【0031】
(インプリント工程)
S6で、制御部9は、ステージ8を制御して基板13をインプリントヘッド5の下の位置に移動させ、インプリントヘッド5を制御して、パターン部12と基板13上のインプリント材14とを接触させる(接触工程)。このとき、インプリント材14がパターン部12内に気泡を含むことなく充填されるよう、制御部9は、型保持機構6によって保持された型11のパターン部12を基板13に対して凸状に変形させる。このパターン部12の変形は、例えば、型11の裏面側(基板13と対面する面の反対側)に形成された閉空間の圧力を大気圧より高くすることによって行われる。あるいは、その他の機械的な手法によりパターン部の変形が行われてもよい。このとき典型的には、パターン部12とインプリント材14との接触が開始される点がパターン部12の中心になるよう制御される。
【0032】
接触が完了した後、S7で、パターン部12と基板13とのアライメントが行われる。すなわち、制御部9は、アライメントスコープ3によってパターン部12と基板13との相対位置を計測し、パターン部12と基板13とのずれ量が目標値になるよう(S8)、インプリントヘッド5および/またはステージ8を駆動する。
【0033】
制御部9は、ずれ量が目標値に到達したと判断した後、S9で、硬化部2から紫外線15を照射させてインプリント材14を硬化させる。これによって、基板13のショット領域上にインプリント材14のパターンが形成される。インプリント材14の硬化後、制御部9は、駆動部7および/またはステージ8を制御して、硬化したインプリント材14と型11とを分離させる(離型工程)。このとき、制御部9は、インプリント材14のパターンに欠陥や歪みなどのダメージを与えることがないように、駆動部7および/またはステージ8を制御する。
【0034】
各ショット領域に対してS5~S10の処理が繰り返されて、一枚の基板に対するインプリント処理が完了する。デバイス製造工程において、このようなインプリント処理が多数の基板にわたって繰り返されると、型11の損耗や製造工程の変更等の理由により、型11は交換されることになる。この型11の交換後、再度デバイス製造工程を開始した状態を以下に説明する。
【0035】
まず、準備工程で示したパターン検出部10によるパターン部12の位置の検出が行われない従来の場合を
図4で説明する。
図4は、インプリントヘッド5によって型11が保持され、駆動部7によって型11を基板13上のインプリント材14と接触させる直前の状態を示している。パターン部12と基板13上のインプリント材14との相対位置はアライメントスコープ3によって計測され、目標位置にアライメントされる。
【0036】
ここで、事前調整工程の段階から型11の交換を経ることによって型11の外形とパターン部12との相対位置、ひいては駆動部7とパターン部12との相対位置は変化している。すなわち、インプリントヘッド5の中心17と型11のパターン部12の中心18との間にずれが生じている。にもかかわらず従来は、交換される前の型11に最適された制御パラメータのまま駆動部7が駆動されていた。そのため、インプリント工程のパターン部12とインプリント材14の相対的な挙動が再現されず、アライメント完了までの経過遅滞による生産性低下やパターン部12およびその転写パターンの変形、破壊による欠陥の増加が生じうる。このように、型11を交換する毎に型11の外形に対するパターン部12の位置が異なるため、型が交換される都度、制御パラメータの最適化作業を行う必要がある。
【0037】
一方、本実施形態では、
図5のように、型11が交換された場合、準備工程のS2と同様に、パターン検出部10によって型11のパターン部12の位置が検出される。制御部9のメモリには、事前調整工程で計測されたインプリントヘッド5の中心と基準型11’のパターン部12の中心とが合致した状態の位置情報が保持されている。制御部9は、この位置情報と、パターン検出部10によって検出された新たな型11のパターン部12の位置とに基づき、インプリントヘッド5の中心17にパターン部12の中心18が合致するようにインプリントヘッド5を駆動する。これにより、駆動部7とパターン部12との相対位置は変わらないため、制御パラメータの最適値が維持される。
【0038】
このように本実施形態によれば、型の交換が行われても、事前準備工程で得られた情報に基づいて駆動部に対する型のパターン部の位置のずれが補正される。したがって、インプリント動作が繰り返し行われ、かつ、型の交換が行われても、残膜厚の均一性、パターンの欠陥または歪みの度合い等の再現性が維持される。また、これによって再調整にかかる時間も低減され、あるいは不要となりうる。さらに、これにより、型11の外形に対するパターン部12のずれ量Δx,Δy,θzの許容値を拡大することもでき、型11の製造コストの低減も期待できる。このように、本実施形態によれば、型の外形とパターン部との位置関係のばらつきに対するロバスト性能の点で有利なインプリント装置が実現される。
【0039】
<第2実施形態>
上述の第1実施形態は、準備工程におけるS2では、インプリントヘッド5に型11が搭載された状態で、パターン検出部10によりパターン部12の位置の検出を行うものであった。これに対し第2実施形態では、型11をインプリントヘッド5に搬送する前にパターン部12の位置の検出を行う。
【0040】
本実施形態では、
図6に示すように、パターン検出部10は、インプリントヘッド5(型保持機構6)から離れた位置に設けられたパターン検出モジュール24に設けられる。このパターン検出モジュール24も制御部9の制御下に置かれる。パターン検出部10は、パターン部12の検出を行う他、型11の外形を検出する機能も有する。パターン検出部10は、例えば、保持されている型11の側方からレーザー変位計を用い、その端面までの距離を検出し、上方または下方からイメージセンサを用いて画像判定するなどして、検出を行う。パターン検出モジュール24は、型の搬送経路中の、インプリントヘッド5(型保持機構6)から離れた位置に配置される。
【0041】
本実施形態では、型保持機構6に型11を搭載する前に、パターン検出モジュール24において、パターン部12の位置が検出される。このときのパターン検出部10の測定基準は、このパターン検出部10によって検出される型11の外形となる。
【0042】
(事前調整工程)
第1実施形態と同じく、事前調整工程において、制御部9による種々の制御パラメータの最適化作業が行われる。まず、パターン検出モジュール24に基準型11’が搭載される。制御部9は、パターン検出部10により型11’の外形の計測とパターン部の位置の計測を行い、計測値を目標値としてメモリに記憶する。
【0043】
その後、インプリント装置1で使用される予定の型11について、パターン検出モジュール24において型の外形計測とパターン部の位置計測を行う。制御部9は、その計測結果とメモリに記憶されている目標値とを比較することによって、型の外形を基準とした型11のパターン部の位置を算出する。
【0044】
その後、型11はインプリントヘッド5に搬送される。制御部9は、インプリントヘッド5に搭載された型11に対して、アライメントスコープ3またはインプリントスコープ4を用いて、外形計測を行う。制御部9は、この計測値に基づき例えばパターン部12の中心をインプリントヘッド5の中心に合わせるように、型保持機構6および/または駆動部7の補正駆動を行う。この補正駆動は、型11をインプリントヘッド5に搬送する過程で行ってもよい。
【0045】
これ以降、事前調整工程で使用される複数の型についても、搬送毎にパターン検出モジュール24においてパターン部12の検出を行い、メモリに記憶されている目標値を参照してインプリントヘッド5の中心に型11のパターン部12の中心を合わせる。
【0046】
(準備工程)
準備工程では、まず、パターン検出モジュール24によって型11のパターン部12の位置と型の外形が検出され、計測結果が制御部9に送られる。制御部9は、この計測結果と事前調整工程で記憶した計測値(目標値)に基づいて、パターン部12の中心がインプリントヘッド5の中心に位置するように不図示の型搬送装置またはインプリントヘッド5を制御する。このときのインプリントヘッド5の駆動は、型保持機構6のみの駆動でもよいし、駆動部7のみの駆動でもよいし、型保持機構6および駆動部7の両方の駆動でもよい。
【0047】
準備工程におけるその他の工程、および、インプリント工程の内容は第1実施形態と同一のため省略する。
【0048】
<第3実施形態>
第3実施形態では、レプリカモールド製造工程に使用されるインプリント装置について説明する。
図7に、本実施形態におけるインプリント装置19の構成を示す。インプリント装置19は、ブランクモールドであるレプリカ基板に対してマスターモールドのパターンを転写してレプリカモールドを製造するレプリカモールド製造装置である。このインプリント装置19にも、第1実施形態のインプリント装置1と同様、光硬化法を採用するものとする。
【0049】
上記したように、本実施形態のインプリント装置19では、処理対象は基板13ではなく、レプリカモールドとなるブランクモールドであり、以下ではこれをレプリカ基板20と呼ぶ。レプリカ基板20の一面には、インプリント材が供給されパターンが転写される領域である、周辺の領域よりも型11側に突出したレプリカメサ部が形成されている。
【0050】
レプリカ基板保持部21は、ステージ8上でレプリカ基板20を保持する。また、レプリカ基板保持部21は、型保持機構6と同様に構成されて、レプリカ基板20を圧縮、伸長したり、凸形状や凹形状に変形させることができる。レプリカ基板保持部21の動作部は単一でも、複数構成でもよい。レプリカ基板保持部21の制御は、その可動部位置に基づく位置制御、あるいは保持で生じる力に基づく力制御でもよい。レプリカ基板保持部21によるレプリカ基板20の保持は、真空吸着、動作部の駆動による把持等によって行われうる。レプリカ基板保持部21の駆動自由度は1自由度でもよいし、多自由度でもよい。これにより、レプリカ基板20の姿勢や位置を変化させることや、形状を弾性限度内で変形させることによる補正駆動を行うことができる。レプリカ基板保持部21の制御は、動作部内に構成される変位センサで検出する変位に基づく位置制御のほか、変位センサに代わり力センサを構成し、レプリカ基板を保持した状態で各動作部の力を時間的に変化させて行う力制御、あるいはその併用でもよい。レプリカ基板20は、不図示のレプリカ基板搬送装置によってステージ8に搭載される。
【0051】
レプリカ基板20は、
図8に示すように、その一面に、レプリカメサ部23を有する。レプリカメサ部23の位置は、その製造要件から、レプリカ基板20の外形の中心に対してずれており、ずれ量は個々のレプリカ基板によってばらつきを持つ。
図8では、外形の中心線に対するレプリカメサ部23の中心のずれ量をΔx,Δy,θzで示す。インプリント処理において、レプリカ基板保持部21によって保持されたレプリカ基板20のレプリカメサ部23を有する面は、型11に対向する。
【0052】
メサ検出部22は、ステージ8を基準として、ステージ8によって保持されたレプリカ基板20のレプリカメサ部23を検出し、制御部9に計測結果を送る。
図8の例では、メサ検出部22が搭載されているステージ8を検出の基準として、レプリカメサ部23の位置が検出される。ただし、基準位置はこれに限定されるものではなく、レプリカ基板保持部21またはレプリカ基板20の外形を基準位置としてもよい。また、メサ検出部22は、基準位置とレプリカメサ部23との相対位置が検出できる機構であればよく、例えば、型11を透過して画像検出を行うものでもよい。また、装置を調整した時のメサ部の位置を記憶し、その位置を基準としてもよい。
【0053】
(事前調整工程)
レプリカモールド製造工程における重ね合わせ精度向上、生産性向上、欠陥数低減といった目的のため、運用前のインプリント装置19の調整として、制御部9による種々の制御パラメータ最適化作業が行われる(事前調整工程)。事前調整工程では、型、レプリカ基板、およびインプリント材を使用してインプリント動作が行われる。そのインプリント動作中、インプリントスコープ4による接触状態の観察が行われる。制御部9は、型保持機構6、駆動部7、レプリカ基板保持部21、ステージ8からの出力値等に基づいて駆動パラメータを調整することで、接触工程および離型工程における動作の最適化を行う。
【0054】
事前調整工程においてはまず、インプリントヘッド5に送り込まれる型11の位置調整を第1実施形態と同様、基準型11’を使用して行う。次に、外形に対するレプリカメサ部23の位置が既知である基準レプリカ基板20’を準備する。この基準レプリカ基板20’をレプリカ基板保持部21に保持させる。この状態は、レプリカメサ部23の中心が所定の基準位置(例えばステージ8の中心)に合致した状態であり、制御部9は、この状態でメサ検出部22によるレプリカメサ部23の位置検出を行い、この検出結果を目標値としてメモリに記憶する。これ以降の事前調整工程で使用される複数のレプリカ基板に対して、制御部9は、レプリカ基板20が搭載される都度、メサ検出部22によるレプリカメサ部23の位置検出を行い、記憶された目標値を参照してレプリカ基板保持部21で補正駆動を行う。これにより、レプリカ基板が交換されても、交換後のレプリカ基板20のレプリカメサ部23の中心が所定の基準位置(例えばステージ8の中心)に位置するようになる。
【0055】
なお、この最適化は、メサ検出部22のかわりに、アライメントスコープ3を用いて行うことも可能である。この場合、アライメントスコープ3によって基準レプリカ基板20’のレプリカメサ部23が観察される。制御部9は、アライメントスコープ3を基準とするレプリカメサ部23の位置を目標値としてメモリに記憶する。これ以降の事前調整工程で使用される複数のレプリカ基板に対し、制御部9は、レプリカ基板が搭載される都度、アライメントスコープ3によるレプリカメサ部23の位置検出を行い、記憶された目標値を参照してレプリカ基板保持部21の補正駆動を行う。
【0056】
以上のような事前調整工程の後、レプリカモールド製造工程におけるインプリント処理が実施される。以下、
図9のフローチャートを参照して、レプリカモールド製造工程におけるインプリント処理を説明する。
【0057】
(準備工程)
S11で、制御部9は、不図示の型搬送装置を制御して、使用する型11をインプリントヘッド5に搬送する。S12で、パターン検出部10によりパターン部12の位置が検出される。あるいは、アライメントスコープ3またはインプリントスコープ4によりパターン部12またはパターン内のアライメントマークの位置が検出される。検出結果は制御部9に送られる。S13で、制御部9は、パターン部12の中心がインプリントヘッド5の中心に位置するようにインプリントヘッド5を駆動する。このときのインプリントヘッド5の駆動は、型保持機構6のみの駆動でもよいし、駆動部7のみの駆動でもよいし、型保持機構6および駆動部7の両方の駆動でもよい。
【0058】
S14で、制御部9は、不図示のレプリカ基板搬送装置を制御して、レプリカ基板20をステージ8に搬送する。S15で、メサ検出部22によりレプリカ基板20のレプリカメサ部23の位置が検出される。あるいは、アライメントスコープ3またはインプリントスコープ4によりレプリカ基板20のレプリカメサ部23の位置が検出される。検出結果は制御部9に送られる。S16で、制御部9は、レプリカメサ部23の中心がステージ8の中心に位置するようにレプリカ基板保持部21を駆動する。S17で、制御部9は、ステージ8を制御してレプリカ基板20を不図示のインプリント材供給装置の下の位置に搬送し、ステージ8およびインプリント材供給装置を制御して、レプリカ基板20のレプリカメサ部23上にインプリント材14を供給する。
【0059】
(インプリント工程)
S18で、制御部9は、ステージ8を制御してレプリカ基板20をインプリントヘッド5の下の位置に移動させ、インプリントヘッド5を制御して、パターン部12とレプリカ基板20上のインプリント材14とを接触させる(接触工程)。このとき、インプリント材14がパターン部12内に気泡を含むことなく充填されるよう、制御部9は、型保持機構6によって保持された型11のパターン部12をレプリカ基板20に対して凸状に変形させる。このパターン部12の変形は、例えば、型11の裏面側(レプリカ基板20と対面する面の反対側)に形成された閉空間の圧力を大気圧より高くすることによって行われる。あるいは、その他の機械的な手法によりパターン部の変形が行われてもよい。このとき典型的には、パターン部12とインプリント材14との接触が開始される点がパターン部12の中心になるよう制御される。
【0060】
接触が完了した後、S19で、パターン部12とレプリカ基板20とのアライメントが行われる。すなわち、制御部9は、アライメントスコープ3によってパターン部12とレプリカ基板20の相対位置を計測し、パターン部12とレプリカ基板20のずれ量が目標値になるよう(S20)、インプリントヘッド5および/またはステージ8を駆動する。
【0061】
制御部9は、ずれ量が目標値に到達したと判断した後、S21で、硬化部2から紫外線15を照射させてインプリント材14を硬化させる。これによって、レプリカ基板20のレプリカメサ部23上にインプリント材のパターンが形成される。インプリント材14の硬化後、制御部9は、駆動部7および/またはステージ8を制御して、硬化したインプリント材14と型11とを分離させる(離型工程)。このとき、制御部9は、インプリント材14のパターンに欠陥や歪みなどダメージを与えることがないように、駆動部7および/またはステージ8を制御する。
【0062】
レプリカモールド製造工程において、レプリカ基板20へのインプリントが完了し、次のレプリカ基板20が搬送され、レプリカモールド製造工程を再開する場合の、レプリカ基板20に対する処理について説明する。なお、型の交換後の型に対する処理については第1実施形態と同一のため、省略する。
【0063】
まず、準備工程で示したメサ検出部22によるレプリカメサ部23の位置の検出が行われない従来の場合を
図10で説明する。
図10は、ステージ8にレプリカ基板20が保持され、駆動部7によって型11をレプリカ基板20上のインプリント材14(
図10では図示領略)と接触させる直前の状態を示している。レプリカ基板20は、レプリカ基板保持部21によって、レプリカ基板20の中心がステージ8の中心26に位置するよう保持される。あるいは、レプリカ基板20は、計測のないままレプリカ基板保持部21によって保持される。型11とレプリカ基板20との相対位置はアライメントスコープ3によって計測され、目標位置にアライメントされる。
【0064】
ここで、レプリカ基板20の交換を経ることによってレプリカ基板20の外形とレプリカメサ部23の相対位置、ひいてはステージ8とレプリカメサ部23との相対位置は変化している。にもかかわらず従来は、交換される前のレプリカ基板20に最適化された制御パラメータのままステージ8が駆動されていた。そのため、インプリント工程のレプリカメサ部23とパターン部12の相対的な挙動が再現されず、アライメント完了までの経過遅滞による生産性低下やパターン部12およびその転写パターンの変形、破壊による欠陥の増加が生じうる。このように、レプリカ基板20を交換する毎にレプリカ基板の外形に対するレプリカメサ部23の位置が異なるため、レプリカ基板が交換される都度、制御パラメータの最適化作業を行う必要がある。
【0065】
一方、本実施形態では、
図11のように、レプリカ基板が交換された場合、準備工程のS12と同様に、メサ検出部22によってレプリカ基板のレプリカメサ部23の位置が検出される。制御部9のメモリには、事前調整工程のS16で計測された、レプリカメサ部23の中心とステージ8の中心とが合致した状態の位置情報が保持されている。制御部9は、この位置情報と、メサ検出部22によって検出された新たなレプリカ基板20のレプリカメサ部23の位置とに基づき、レプリカメサ部23の中心とステージ8の中心とが合致するようにステージ8を駆動する。これにより、ステージ8とレプリカメサ部23との相対位置は変わらないため、制御パラメータの最適値が維持される。
【0066】
このように本実施形態によれば、レプリカ基板の交換が行われても、事前準備工程でられた情報に基づいてステージ8に対するレプリカメサ部23の位置のずれが補正される。したがって、レプリカ基板の交換が行われても、残膜厚の均一性、パターンの欠陥または歪みの度合い等の再現性が維持される。また、これによって再調整にかかる時間も低減され、あるいは不要となりうる。さらに、これにより、レプリカ基板20の外形に対するレプリカメサ部23のずれ量Δx,Δy,θzの許容値を拡大することもでき、レプリカ基板20の製造コストの低減も期待できる。このように、本実施形態によれば、レプリカ基板の外形とレプリカメサ部との位置関係のばらつきに対するロバスト性能の点で有利なインプリント装置が実現される。
【0067】
<第4実施形態>
上述の第3実施形態は、準備工程におけるS15では、ステージ8にレプリカ基板20が搭載された状態で、メサ検出部22によりレプリカメサ部23の位置の検出を行うものであった。これに対し第4実施形態では、レプリカ基板20をステージ8に搬送する前にレプリカメサ部23の位置の検出を行う。
【0068】
本実施形態では、
図12に示すように、メサ検出部22は、ステージ8から離れた位置に設けられたレプリカメサ検出モジュール27に設けられる。このレプリカメサ検出モジュール27も制御部9の制御下に置かれる。メサ検出部22は、レプリカメサ部23の検出を行う他、レプリカ基板20の外形を検出する機能も有する。メサ検出部22は、例えば、保持されているレプリカ基板20の側方からレーザー変位計を用い、その端面までの距離を検出し、上方または下方からイメージセンサを用いて画像判定するなどして、検出を行う。レプリカメサ検出モジュール27は、ステージ8から離れた位置に配置されるが、レプリカ基板の搬送経路中に配置される。
【0069】
本実施形態では、レプリカ基板保持部21にレプリカ基板20を搭載する前に、レプリカメサ検出モジュール27において、レプリカメサ部23の位置が検出される。このときのメサ検出部22の測定基準は、レプリカ基板20の外形となる。
【0070】
(事前調整工程)
第3実施形態と同じく、事前調整工程において、制御部9による種々の制御パラメータの最適化作業が行われる。まず、レプリカメサ検出モジュール27に基準レプリカ基板20’が搭載される。制御部9は、レプリカメサ検出モジュール27により基準レプリカ基板20’の外形の計測とレプリカメサ部の位置の計測を行い、計測値を目標値としてメモリに記憶する。
【0071】
その後、インプリント装置19に搬入されるレプリカ基板20について、レプリカメサ検出モジュール27においてレプリカ基板の外形計測とメサ部の位置計測を行う。制御部9は、その計測結果とメモリに記憶されている目標値とを比較することによって、レプリカ基板の外形を基準としたレプリカ基板20のメサ部の位置を算出する。
【0072】
その後、レプリカ基板20はステージ8に搬送される。制御部9は、ステージ8に搬送されたレプリカ基板20に対して、アライメントスコープ3またはインプリントスコープ4を用いて、外形計測を行う。制御部9は、この計測値に基づき例えばレプリカメサ部23の中心をステージ8の中心に合わせるように、レプリカ基板保持部21および/またはステージ8の補正駆動を行う。この補正駆動は、レプリカ基板20をステージ8に搬送する過程で行ってもよい。
【0073】
これ以降、事前調整工程で使用される複数のレプリカ基板においても、搬送毎にレプリカメサ検出モジュール27においてレプリカ基板の外形とレプリカメサ部の検出を行う。そして、メモリに記憶されている目標値を参照してステージ8の中心にレプリカ基板20のレプリカメサ部23の中心を合わせる。
【0074】
(準備工程)
準備工程では、まず、レプリカメサ検出モジュール27によってレプリカ基板20のレプリカメサ部23の位置とレプリカ基板の外形が検出され、計測結果が制御部9に送られる。制御部9は、この計測結果と事前調整工程で記憶した計測値(目標値)に基づいて、レプリカメサ部23の中心がステージ8の中心に位置するように不図示のレプリカ基板搬送装置またはステージ8を制御する。このときのステージ8の駆動は、レプリカ基板保持部21のみの駆動でもよいし、ステージ8のみの駆動でもよいし、レプリカ基板保持部21およびステージ8の両方の駆動でもよい。
【0075】
準備工程におけるその他の工程、および、インプリント工程の内容は第3実施形態と同一のため省略する。
【0076】
<物品製造方法の実施形態>
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0077】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0078】
次に、物品製造方法について説明する。
図13の工程SAでは、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコン基板等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0079】
図13の工程SBでは、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。
図13の工程SCでは、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0080】
図13の工程SDでは、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0081】
図13の工程SEでは、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図13の工程SFでは、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0082】
<他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0083】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0084】
1:インプリント装置、5:インプリントヘッド、6:型保持部、7:駆動部、10:パターン検出部、11:型、12:パターン部、13:基板、14:インプリント材