(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20240117BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20240117BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20240117BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20240117BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20240117BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240117BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240117BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20240117BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240117BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/29
A61K8/27
A61K8/89
A61K8/891
A61K8/37
A61K8/81
A61K8/894
A61Q17/04
A61Q1/02
(21)【出願番号】P 2019164721
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 賢
(72)【発明者】
【氏名】菊地 典子
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112384(JP,A)
【文献】特開2014-019661(JP,A)
【文献】特開2016-102096(JP,A)
【文献】特開2015-147752(JP,A)
【文献】特表2005-516921(JP,A)
【文献】特開平10-330619(JP,A)
【文献】特開2019-094273(JP,A)
【文献】特許第6725575(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体、乳化剤、被膜形成剤、油剤および水を含む原液と、液化ガスとを含み、
前記粉体は、白色粉体と有色顔料とを含み、
前記乳化剤は、シリコーン系界面活性剤を含み、
前記被膜形成剤は、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ポリアクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル-メタクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル-ヒドロキシメタクリル酸共重合体、アクリル酸オクチル-酢酸ビニル共重合体、アクリル酸-スチレン共重合体またはアクリル酸-メタクリル酸アミド共重合体のうち、少なくとも1種を含み、
前記油分は、シリコーンオイルまたはエステル油を含み、
前記粉体の含有量(固形分)は、原液中、10~40質量%であ
り、
前記乳化剤の含有量は、原液中、0.1~10質量%であり、
前記被膜形成剤の含有量は、原液中、0.1~5質量%であり、
前記油分の含有量は、原液中、20~50質量%であり、
前記水の含有量は、原液中、10~60質量%であり、
前記白色粉体と前記有色顔料との配合比率(質量比)は、17:1~7:1である、エアゾール組成物。
【請求項2】
前記白色粉体は、親油性溶媒に分散している分散体である、請求項1記載のエアゾール組成物。
【請求項3】
前記有色顔料は、親水性溶媒に分散している分散体である、請求項1または2記載のエアゾール組成物。
【請求項4】
前記液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、30~85質量%である、請求項1~
3のいずれか1項に記載のエアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール組成物に関する。より詳細には、本発明は、噴射されると腕や身体に適した範囲に拡がりやすく、均等に付着して紫外線から皮膚を防御することができ、かつ、健康的な肌色を付与することのできるエアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線から皮膚を防御するための紫外線防御剤を含むエアゾール型化粧料が開発されている(特許文献1)。特許文献1には、ジメチコンクロスポリマーとシリコーンエラストマー型界面活性剤とを含む非水系外用組成物と噴射剤とを含むエアゾール型化粧料が開示されている。特許文献1に記載のエアゾール型化粧料は、紫外線防御剤を含んでもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のエアゾール型化粧料は、紫外線散乱剤などの紫外線防御剤を含んでもよい。ところで、酸化チタンなどの紫外線散乱剤は、白色粉体である。これら白色粉体を多く含む場合、肌の色が白くなりやすく、健康的な肌色に見えにくい。一方、白色粉体の含有量を少なくすると、充分な紫外線防御効果が得られない。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、噴射されると腕や身体に適した範囲に拡がりやすく、均等に付着して紫外線から皮膚を防御することができ、かつ、健康的な肌色を付与することのできるエアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)粉体、乳化剤、被膜形成剤、油剤および水を含む原液と、液化ガスとを含み、前記粉体は、白色粉体と有色顔料とを含み、前記粉体の含有量は、原液中、10~40質量%である、エアゾール組成物。
【0008】
このような構成によれば、粉体は、白色粉体を含んでいることにより、紫外線散乱効果を示し、紫外線から皮膚を防御し得る。また、粉体は、有色顔料を含んでおり、エアゾール組成物中で白色粉体と有色顔料は優れた分散性および再分散性等を示し、均一な組成で噴霧されやすい。そのため、皮膚に均等に付着しやすく、色ムラなく健康的な肌色を付与することができる。さらに、エアゾール組成物は、被膜形成剤を含んでいることにより、皮膚上において、水や汗により粉体が流されにくく、長時間にわたって優れた紫外線防御効果および健康的な肌色に見せる効果を持続しやすい。
【0009】
(2)前記白色粉体は、親油性溶媒に分散している分散体である、(1)記載のエアゾール組成物。
【0010】
このような構成によれば、エアゾール組成物は、容器内において白色粉体が優れた分散性および再分散性等を示し、均一な組成で噴霧されやすく、紫外線散乱効果が得られやすい。
【0011】
(3)前記有色顔料は、親水性溶媒に分散している分散体である、(1)または(2)記載のエアゾール組成物。
【0012】
このような構成によれば、エアゾール組成物は、容器内において有色顔料が優れた分散性および再分散性等を示し、均一な組成で噴霧されやすく、色ムラなく健康的な肌色を付与しやすい。
【0013】
(4)前記白色粉体と前記有色顔料との配合比率(質量比)は、25:1~4:1である、(1)~(3)のいずれかに記載のエアゾール組成物。
【0014】
このような構成によれば、エアゾール組成物は、白色粉体によって優れた紫外線防御効果が得られつつ、皮膚に有色顔料による健康的な肌色を付与しやすい。
【0015】
(5)前記水の含有量は、原液中、5~60質量%である、(1)~(4)のいずれかに記載のエアゾール組成物。
【0016】
このような構成によれば、エアゾール組成物は、粘度および粉体の沈降速度が調節されやすい。特に有色顔料を均等に分散させやすい。その結果、得られるエアゾール組成物は、噴霧時に噴霧通路等において詰まりを生じにくく、かつ、再分散性が優れる。
【0017】
(6)前記液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、30~85質量%である、(1)~(4)のいずれかに記載のエアゾール組成物。
【0018】
このような構成によれば、エアゾール組成物は、健康的な肌色に見せる効果を発揮しやすい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、噴射されると腕や身体に適した範囲に拡がりやすく、均等に付着して紫外線から皮膚を防御することができ、かつ、健康的な肌色を付与することのできるエアゾール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<エアゾール組成物>
本発明の一実施形態のエアゾール組成物は、粉体、乳化剤、被膜形成剤、油剤および水を含む原液と、液化ガスとを含む。粉体は、白色粉体と有色顔料とを含む。粉体の含有量は、原液中、10~40質量%である。このように、粉体は、白色粉体を含んでいることにより、紫外線散乱効果を示し、紫外線から皮膚を防御し得る。また、粉体は、有色顔料を含んでおり、エアゾール組成物中で白色粉体と有色顔料は優れた分散性および再分散性等を示し、均一な組成で噴霧されやすい。そのため、皮膚に均等に付着しやすく、色ムラなく健康的な肌色を付与することができる。さらに、エアゾール組成物は、被膜形成剤を含んでいることにより、皮膚上において、水や汗により粉体が流されにくく、長時間にわたって優れた紫外線防御効果および健康的な肌色に見せる効果を持続しやすい。以下、それぞれについて説明する。
【0021】
(原液)
原液は、粉体、乳化剤、被膜形成剤、油剤および水を含む。
【0022】
・粉体
粉体は、白色粉体と有色顔料とを含む。白色粉体は、皮膚に付着して紫外線を散乱させ、日焼けしないように皮膚を防御するために配合される。一方、有色顔料は、使用者の肌色に影響されることなく、肌色として有色顔料の色を付与するために配合される。
【0023】
白色粉体は特に限定されない。一例を挙げると、白色粉体は、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム等である。なお、白色粉体は、表面をハイドロジェンジメチコンなどのシリコーン、水酸化アルミニウム、含水シリカ、ステアリン酸などで処理したものが用いられてもよい。また、白色粉体は、シクロペンタシロキサンなどのシリコーンオイル、パルミチン酸エチルヘキシルなどのエステル油、油脂、炭化水素などの親油性溶媒に分散させた分散液やスラリーであってもよい。これらの中でも、エアゾール組成物中において、白色粉体を均一に分散させ得る点から、白色粉体は、シクロペンタシロキサンなどのシリコーンオイル、パルミチン酸エチルヘキシルなどのエステル油などの親油性溶媒に分散させた分散液やスラリーであることが好ましい。白色粉体は併用されてもよい。なお、白色粉体を分散させる親油性溶媒は、原液やエアゾール組成物としては後述する油剤に含まれる。
【0024】
白色粉体(固形分)の含有量は、原液中、8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、白色粉体の含有量は、原液中、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。白色粉体の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、皮膚に付着して紫外線を散乱させ、日焼けしないように皮膚を防御する。
【0025】
有色顔料は特に限定されない。一例を挙げると、有色顔料は、カーボンブラック、カラミン、グンジョウ、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、雲母チタン、ベントナイト、カオリン、タルク、マイカ、リソールルビンBCA(赤色202号)、レーキレッドC(赤色203号)、レーキレッドCBA(赤色204号)、リソールレッド(赤色205号)、リソールレッドCA(赤色206号)、リソールレッドBA(赤色207号)、リソールレッドSR(赤色208号)、ブリリアントレーキレッドR(赤色219号)、ディープマルーン(赤色220号)、トルイジンレッド(赤色221号)、パーマネントレッド(赤色228号)、パーマネントオレンジ(だいだい色201号)、ベンチジンオレンジG(だいだい色204号)、ベンチジンエローG(黄色205号)、ブリリアントファストスカーレット(赤色404号)、パーマネントレッドF5R(赤色405号)、ハンザオレンジ(だいだい色401号)、ハンザエロー(黄色401号)、フタロシアニンブルー(青色404号)等である。また、有色顔料は、シリコーンオイル、エステル油、油脂、炭化水素などの親油性溶媒、1,3-ブチレングリコールなどの親水性溶媒、およびこれらの混合溶媒に分散させた分散液やスラリーであってもよい。特に、エアゾール組成物中に分散させやすく、色ムラなく健康的な肌色を付与しやすい点から、有色顔料は、親水性溶媒に分散させた分散液やスラリーを用いることが好ましい。有色顔料は併用されてもよい。これらの有色顔料が配合されることにより、肌色は、適度に日焼けしたような健康的な色が付与され得る。
【0026】
有色顔料(固形分)の含有量は、原液中、1.0質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましい。また、有色顔料の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。有色顔料の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、肌色は適度に日焼けしたような健康的な色が付与され得る。
【0027】
粉体(固形分)の含有量は、原液中、10質量%以上であればよく、12質量%以上であることが好ましい。また、粉体の含有量は、原液中、40質量%以下であればよく、30質量%以下であることが好ましい。粉体の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、白色粉体によって優れた紫外線防御効果が得られつつ、皮膚に有色顔料による健康的な肌色を付与しやすい。
【0028】
本実施形態において、白色粉体と有色顔料との配合比率(質量比)は特に限定されない。一例を挙げると、白色粉体と有色顔料との配合比率は、25:1~4:1であることが好まく、17:1~7:1であることがより好ましい。白色粉体と有色顔料との配合比率が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、白色粉体によってより優れた紫外線防御効果が得られつつ、皮膚に有色顔料による健康的な肌色をより付与しやすい。
【0029】
・乳化剤
乳化剤は、エアゾール組成物中での粉体の沈降状態や再分散性などを調整し、粉体を均一な組成で噴霧しやすくするために配合される。
【0030】
乳化剤は特に限定されない。一例を挙げると、乳化剤は、ポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤、(アクリレーツ/イタコン酸ステアレスー20)コポリマー等の会合型増粘剤、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などの非イオン性界面活性剤、アルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩、POEアルキルエーテル硫酸塩などのアニオン性界面活性剤、ラウリルベタイン等の両性界面活性剤、サポニン等の天然系界面活性剤等である。これらの中でも、乳化剤は、エアゾール組成物中での粉体、沈降状態や再分散性に優れている点から、ポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤であることが好ましい。乳化剤は併用されてもよい。
【0031】
乳化剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、乳化剤の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、乳化剤の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。乳化剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、粉体の沈降速度が適切に調整されやすく、かつ、再分散性が優れる。
【0032】
・被膜形成剤
被膜形成剤は、水や汗で粉体が落ちないようにするために配合される。
【0033】
被膜形成剤は特に限定されない。一例を挙げると、被膜形成剤は、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ポリアクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル-メタクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル-ヒドロキシメタクリル酸共重合体、アクリル酸オクチル-酢酸ビニル共重合体、アクリル酸-スチレン共重合体、アクリル酸-メタクリル酸アミド共重合体等である。これらの中でも、被膜形成剤は、油剤に溶解しやすく、耐水性が優れ、粉体のはがれ落ちを防止する効果が得られやすい点から、ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマーであることが好ましい。被膜形成剤は併用されてもよい。
【0034】
被膜形成剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、被膜形成剤の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、被膜形成剤の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。被膜形成剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、適用された皮膚上において、優れた耐水性が示され、水や汗で粉体がより落ちにくい。
【0035】
・油剤
油剤は、皮膚上に適用されたエアゾール組成物のすべりを良くしたり、使用感を調節したりするために配合される。
【0036】
油剤は特に限定されない。一例を挙げると、油剤は、シリコーンオイル、エステル油、炭化水素油、油脂、脂肪酸、高級アルコール等である。油剤は併用されてもよい。
【0037】
油剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、油剤の含有量は、原液中、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。また、油剤の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。なお、油剤の含有量は前述の白色粉体に含まれる親油性溶媒を含む。油剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、適用された皮膚上において、優れた耐水性が示され、水や汗で粉体がより落ちにくい。
【0038】
・水
水は、原液やエアゾール組成物の粘度を調節したり、粉体の沈降速度を調節するために配合される。
【0039】
水は特に限定されない。一例を挙げると、水は、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水等である。
【0040】
水の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水の含有量は、原液中、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、水の含有量は、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、原液およびエアゾール組成物は、粘度が適切に調整されやすい。また、エアゾール組成物は、粉体の沈降速度が適切に調節されやすい。
【0041】
任意成分
原液は、上記粉体、乳化剤、被膜形成剤、油剤および水を含む原液と、液化ガスのほかに、適宜、有効成分、アルコール、水溶性高分子等の任意成分を含んでもよい。
【0042】
有効成分は、製品の用途や目的などに応じて適宜選択することができる。一例を挙げると、有効成分は、アマランス(赤色2号)、エリスロシン(赤色3号)、ニューコクシン(赤色102号)、ローズベンガル(赤色105号)、アシッドレッド(赤色106号)、ローズベンカルK(赤色232号)、ビオラミンR(赤色401号)、レゾルシンブラウン(かっ色201号)、オレンジI(だいだい色402号)、オレンジII(だいだい色205号)、タートラジン(黄色4号)、サンセットイエロー(黄色5号)、ウラニン(黄色202号)、キノリンイエローWS(黄色203号)、ナフト-ルイエローS(黄色403号)、ファストグリーン(緑色3号)、アリザリンシアニングリーンF(緑色201号)、ピラニンコンク(緑色204号)、ナフトールグリーンB(緑色401号)、ブリリアントブルーFCF(青色1号)、インジゴカルミン(青色2号)、パテントブルー(青色203号)、アリズロールパープル(紫色401号)、ナフトールブルーブラック(黒色401号)などの色素、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゼン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、dl-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、ジベンゾイルチアミン、リボフラビンおよびこれらの混合物などのビタミン類、センブリ抽出液やローズマリー抽出液などの各種抽出物、ミントやメントールなどの清涼剤、塩化セチルピリジニウムやイソプロピルメチルフェノールなどの殺菌消毒剤、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、ヒアルロン酸などの保湿剤、フローラル、グリーン、シトラスグリーン、グリーンフローラル、シトラス、ローズ、ローズウッド、ハーバルウッド、レモン、ペパーミントなどの香料、クエン酸や乳酸などのpH調整剤、エデト酸二ナトリウムなどのキレート剤、パラベンやフェノキシエタノールなどの防腐剤などである。
【0043】
アルコールは、水に溶解しにくい有効成分の溶媒として好適に配合される。また、アルコールは、乾燥性を調整する等の目的で好適に配合される。
【0044】
アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、アルコールは、エタノール、イソプロパノール等の炭素数が2~3個の1価アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリンなどの多価アルコールである。
【0045】
アルコールが配合される場合、アルコールの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルコールの含有量は、原液中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、原液中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、アルコールを配合することによる効果が得られやすく、かつ、エアゾール組成物は、アルコールによって乾燥性が調整できる。
【0046】
水溶性高分子は、原液の粘度を調節する等の目的で好適に配合される。
【0047】
水溶性高分子は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系高分子;キサンタンガム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガムなどのガム質;デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー等である。
【0048】
水溶性高分子が配合される場合、水溶性高分子の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、水溶性高分子の含有量は、原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。水溶性高分子の含有量が上記範囲内であることにより、水溶性高分子を配合することによる効果が得られやすく、かつ、原液の粘度が高くなり過ぎない。
【0049】
原液全体の説明に戻り、原液の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、原液の含有量は、エアゾール組成物中、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。また、原液の含有量は、エアゾール組成物中、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。原液の含有量が上記範囲内であることにより、噴射されたエアゾール組成物は、身体に適した範囲に拡がりやすく、均等に付着して、健康的な肌色に見せる効果をより発揮しやすい。
【0050】
原液の調製方法は特に限定されない。原液は、従来公知の方法により調製することができる。たとえば、原液は、水に粉体、乳化剤、被膜形成剤および油剤、任意成分等を添加し、混合することにより調製し得る。
【0051】
(液化ガス)
液化ガスは、エアゾール容器内では蒸気圧を有する液体であり、エアゾール容器からエアゾール組成物を霧状に吐出したり、粉体を分散させる溶媒として作用する。また、液化ガスは、適用箇所である皮膚上において、乾燥性を改善するために配合される。
【0052】
液化ガスは特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスは、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンなどのハイドロフルオロオレフィン、およびこれらの混合物等である。
【0053】
液化ガスの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。また、液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。液化ガスの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、身体に適した範囲に拡がりやすく、均等に付着して、健康的な肌色に見せる効果をより発揮しやすい。
【0054】
なお、本実施形態のエアゾール組成物は、霧の粗さを調節する目的で、噴射剤として圧縮ガスが併用されてもよい。圧縮ガスは、亜酸化窒素ガス、炭酸ガス、窒素ガス、圧縮空気、酸素ガス等である。
【0055】
エアゾール組成物全体の説明に戻り、エアゾール組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール組成物は、耐圧性の容器本体に原液を充填し、バルブを容器本体の開口部上に保持して開口部とバルブの隙間から液化ガスをアンダーカップ充填し、容器本体にバルブを固着することにより調製し得る。なお、原液を充填した後にバルブを固着し、バルブから液化ガスを充填してもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0057】
(実施例1)
以下の表1に示される処方にしたがって、原液Aを調製した。この原液A12g(30質量%)をポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に充填し、耐圧容器の口部にバルブを固着した。バルブから液化石油ガス28g(70質量%)を充填し、実施例1のエアゾール組成物を調製した。
【0058】
【0059】
(実施例2~5、比較例1~2)
表1に示される処方にしたがって、原液B~Fを調製した。得られた原液A~Fを用いて、表2に示される処方にしたがって、実施例1と同様の方法により液化石油ガスを充填し、それぞれ実施例2~5および比較例1~2のエアゾール組成物を調製した。
【0060】
実施例1~5および比較例1~2において得られたエアゾール組成物を用いて、以下の評価方法により、エアゾール組成物の調整しやすさ、分散性、再分散性、色および耐水性を評価した。結果を表2に示す。
【0061】
1.エアゾール組成物の調整しやすさ
耐圧容器内でエアゾール組成物を調整し、耐圧容器を上下に振盪したときのエアゾール組成物の様子を、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:エアゾール組成物の液相が安定な乳化物を形成し、エアゾール組成物中に粉体が均等に分散した。
×:エアゾール組成物の液相が分離し、粉体の分散性が悪かった。
【0062】
2.分散性
耐圧容器を上下に振盪し粉体をエアゾール組成物中で分散させてから容器を静置したときの粉体の分散性(沈降状態)を、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:10秒以上経過しても、粉体が容器の底部に沈降しなかった。
△:4~9秒で粉体が容器の底部に沈降した。
×:3秒以内に粉体が容器の底部に沈降した。
-:調整直後の粉体の分散性が悪かったため評価せず。
【0063】
3.再分散性
25℃の恒温室内で1週間静置して粉体を容器内で沈降させた耐圧容器を、10回上下に振ったときの粉体のエアゾール組成物中での再分散性を、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:粉体は、均一に分散した。
×:粉体の一部が底部に残留しており、均一に分散しなかった。
-:調整直後の粉体の分散性が悪かったため評価せず。
【0064】
4.色
耐圧容器を25℃の恒温水槽に1時間浸漬し、エアゾール組成物を、人工皮革に噴霧し、塗り広げた。塗り広げられた色を、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:色ムラなく所望の肌色になった。
△:色ムラはなかったが、所望の肌色からわずかに薄くなった。
×:色ムラができ、所望の色にならなかった。
-:調整直後の粉体の分散性が悪かったため評価せず。
【0065】
5.耐水性
耐圧容器を25℃の恒温水槽に1時間浸漬し、エアゾール組成物を、人工皮革に噴霧し、塗り広げた。100mLのビーカーに50gの水を入れ、水に人工皮革を1分間つけたときの水の外観変化を、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
○:人工皮革は色落ちせず、ビーカーの水は透明のままであった。
×:人工皮革は色落ちし、ビーカーの水は濁った。
-:調整直後の粉体の分散性が悪かったため評価せず。
【0066】
【0067】
表2に示されるように、実施例1~5のエアゾール組成物は、エアゾール組成物を調整しやすく、分散性、再分散性が優れており、かつ、色ムラなく所望の色となるよう塗布することができた。また、塗布された実施例1~5のエアゾール組成物は、耐水性にも優れていた。
【0068】
一方、白色粉体を含有しない比較例1のエアゾール組成物は、エアゾールの調整はできたが、分散性、再分散性が劣り、かつ、色ムラができ、所望の色となるよう塗布することができなかった。また、塗布された比較例1のエアゾール組成物は、耐水性にも劣っていた。水を含有しない比較例2のエアゾール組成物は、エアゾール組成物の調整で、液相が分離してしまい、有色顔料の分散性が悪かった。