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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】ガラスを均質化する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20240117BHJP
   C03B 23/043 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
C03B20/00 E
C03B23/043
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019184264
(22)【出願日】2019-10-07
(65)【公開番号】P2020079191
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】18202836.5
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599089712
【氏名又は名称】ヘレウス・クアルツグラース・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディット・ゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(73)【特許権者】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン トマス
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヴィドラ
(72)【発明者】
【氏名】マルティーン トロンマー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヒューナーマン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ラングナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター レーマン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヘングシュテーア
(72)【発明者】
【氏名】クラオス ベッカー
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-267662(JP,A)
【文献】特表2009-508789(JP,A)
【文献】特開2014-160237(JP,A)
【文献】米国特許第05090978(US,A)
【文献】米国特許第05169422(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 20/00,23/043
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスを均質化する方法であって、
(a)前記ガラスからなる円柱形のブランク(1)であり、該ブランクの第1の端面(1b)と第2の端面(1c)との間の長さに渡って、前記ブランクの長手軸(10)に沿って延びる円柱形の外表面(1a)を有するものを用意する工程と、
(b)前記ブランク(1)の長手方向の一部分を軟化して熱機械的混合処理を施すことによって前記ブランク(1)に剪断帯(9)を形成する工程と、
(c)前記剪断帯(9)を前記ブランクの前記長手軸(10)に沿って動かす工程と
を含み、
前記剪断帯(9)を少なくとも部分的に囲む熱放散器(20)が用いられ、前記熱放散器の横方向の寸法は、前記ブランクの前記長手軸(10)の方向に、前記剪断帯(9)より大きく前記ブランクの長さより小さく、前記熱放散器(20)は前記剪断帯(9)と同期して前記ブランクの前記長手軸(10)に沿って動き、
前記熱放散器(20)は、前記剪断帯(9)に向き合い、780nmから3000nmの間であるNIR波長範囲からの赤外線に対して透明な石英ガラスからなるガラス層(21)を備える壁を含み、前記透明な石英ガラスは、サンプル厚さ10mmで、入射するNIR放射出力の内少なくとも50%を透過することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記熱放散器(20)と前記ブランク(1)の前記円柱形の外表面(1a)との間には、前記ブランクの直径の15%から80%の範囲の隙間(12)が設けられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱放散器は不透明な石英ガラスからなる層(22)を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
不透明な石英ガラスからなる前記層(22;34)は前記ガラス層(21)に接するか、又は前記ガラス層(21)に接合することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
不透明な石英ガラスからなる前記層(22)の不透明度は2から8%の範囲の前記石英ガラスの多孔度によることを特徴とする請求項又は請求項に記載の方法。
【請求項6】
ガラスからなる円柱形のブランク(1)であり、該ブランクの第1の端面(1b)と第2の端面(1c)との間の長さに渡って、前記ブランクの長手軸(10)に沿って延びる円柱形の外表面(1a)を有するものを均質化する装置であって、
(a)前記ブランクの前記第1の端面(1b)の、設置と第1の回転速度での回転のための第1の支持体(6)と、前記ブランクの前記第2の端面(1c)の、設置と第2の回転速度での回転のための第2の支持体(7)とを具備する支持・回転手段であり、前記第1(6)と前記第2の支持体(7)が作動距離(D)と前記支持・回転手段の作動軸(A)を定義するものと、
(b)前記ブランク(1)の長手方向の一部分を軟化するための加熱手段(2;5;20)と、
(c)前記作動軸(A)に沿った、加熱手段(2;5;20)とブランク(1)との間の相対的な運動を発生させるための移動手段(11)と
を含み、
前記加熱手段(2;5;20)は熱源(2;5)と熱放散器(20)を含み、前記熱放散器(20)は前記作動距離(D)よりも短く、前記ブランクに形成された剪断帯よりも大きい、前記作動軸(A)の方向の横方向の寸法を有し、
前記熱放散器(20)は、前記剪断帯に向き合い、780nmから3000nmの間であるNIR波長範囲からの赤外線に対して透明な石英ガラスからなるガラス層を備える壁を含み、前記透明な石英ガラスは、サンプル厚さ10mmで、入射するNIR放射出力の内少なくとも50%を透過することを特徴とする装置。
【請求項7】
前記熱放散器(20)は、前記熱放散器(20)の前記円柱形の外表面(1a)と前記ブランク(1)との間に前記ブランクの直径の15%から80%の範囲の隙間が得られるように、処理する前記ブランク(1)の直径に合わせて調整されることを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記熱放散器(20)は不透明な石英ガラスからなる層(22)を含むことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の装置。
【請求項9】
不透明な石英ガラスからなる前記層(22)は前記ガラス層(21)に接するか、又は前記ガラス層(21)に接合することを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項10】
不透明な石英ガラスからなる前記層(22)の不透明度は2から8%の範囲の、前記石英ガラスの多孔度によることを特徴とする請求項又は請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記熱放散器(20)はシリコンを含む出発物質から熱分解又は加水分解によって合成製造された石英ガラスからなることを特徴とする請求項から請求項10のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスを均質化する方法であって、
(a)前記ガラスからなる円柱形のブランクであり、該ブランクの第1の端面と第2の端面との間の長さに渡って、前記ブランクの長手軸に沿って延びる円柱形の外表面を有するものを用意する工程と、
(b)前記ブランクの長手方向の一部分を軟化して熱機械的混合処理を施すことによって前記ブランクに剪断帯を形成する工程と、
(c)前記剪断帯を前記ブランクの前記長手軸に沿って動かす工程と
を含む方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、ガラスからなる円柱形のブランクであり、該ブランクの第1の端面と第2の端面との間の長さに渡って、前記ブランクの長手軸に沿って延びる円柱形の外表面を有するものを均質化する装置であって、
(a)前記ブランクの前記第1の端面の、設置と第1の回転速度での回転のための第1の支持体と、前記ブランクの前記第2の端面の、設置と第2の回転速度での回転のための第2の支持体とを具備する支持・回転手段であり、前記第1と第2の支持体が作動距離と前記支持・回転手段の作動軸を定義するものと、
(b)前記ブランクの長手方向の一部分を軟化するための加熱手段と、
(c)前記作動軸に沿った、加熱手段とブランクとの間の相対的な運動を発生させるための移動手段と
を含む装置に関する。
【0003】
高精度システムに設置された、ガラスからなる光学部品は、透明性と均質性に関して厳しい要求を満たす必要がある。しかしガラスは、異なる組成や屈折率の違うガラスの領域に起因する層やいわゆる「脈理」等の不均質構造を示すことが多い。
【0004】
これは、SiOの含有量が多い、例えば80重量%を超える高シリカガラス、特にSiOの含有量が87重量%以上の石英ガラスにとって特に問題である。この場合、昇華に近い温度であっても粘性が高く、ルツボの中で攪拌したり精製したりすることで均質化するのは不可能である。
【0005】
石英ガラスにおける脈理や層を除くために、ルツボを使用しない溶融方法が知られており、この方法では、円柱形の開始体がガラス旋盤の両主軸台に挟持されて帯状に軟化され、両主軸台は同時に異なる速度で又は反対方向に回転軸の周りを回転する。軟化領域の両側の開始体の異なる回転の結果、ねじれ(ひねり)がそこで起こり、それにより、ガラスのバルクで機械的混合が起こる。混合する領域はここでは「剪断帯」とも呼ぶ。剪断帯は開始体に沿って動かされ、これは長さに沿って形作られ、混合される。不均質構造(脈理や層)はこのように減らされ、又は除かれる。この熱機械的混合処理の結果は、少なくとも部分的に均質化されたガラスからなるブランクである。この種の、工具を使用しない成形による熱機械的混合処理は以下「均質化プロセス」、「ゾーンメルト方法」又は「ひねり」とも呼び、ひねり後にある前記少なくとも部分的に均質化された円柱形のブランクは「ひねられた棒」と呼ぶ。
【背景技術】
【0006】
この種のゾーンメルト法はUS3,485,613Aによって公知である。ガラス旋盤に挟持された中空でないガラス柱又は粉末混合物で満たされたガラス筒は局所的に加熱され、帯状にひねられる。熱源としては、単独又は複数の炎のバーナー、又は電気熱源が採用される。剪断帯の回転軸方向の寸法(=剪断帯の幅)は粘性に依存する。約1013ポアズ(dPa・s)未満の粘性に対しては棒の直径の0.1から3倍の範囲の値に、約10ポアズ(dPa・s)未満の粘性に対しては棒の直径の0.1から1倍の範囲の値に調整される。それは、横方向に作用する冷却手段によって狭めることができる。
【0007】
単純なゾーンメルト法によって、回転軸方向の均質化を達成するのは不可能である。互いに垂直に延びる3方向に石英ガラス組成物を均質化するためにEP673888B1では多工程ゾーンメルト法が提案されており、そこではひねられた棒を圧縮することで球状の石英ガラス体が中間生成物として製造され、その両端に支持棒が置かれ、これらは前の回転軸に向かって横に延び、これらによって球状の石英ガラス体が伸ばされて異なる回転軸でさらにゾーンメルト法を施される。ひねりの最中、片方の支持棒は例えば毎分20から100回転で回転し、もう片方の支持棒は反対方向にこの速度の1から3倍の速度で回転する。酸水素若しくはプロパンガスバーナー又は電気発熱体が熱源として採用される。
【0008】
EP2757078A1は、円柱形のブランクに剪断帯を形成し、ブランクの長手軸に沿って剪断帯を動かすことによる、チタンドープガラスからなる円柱の均質化を記載している。
【0009】
DE102005044947A1は、不透明な石英ガラスからなるマッフルチューブ内で2つの石英ガラス柱を溶接する方法を記載している。その内面は事前に洗浄された石英砂の内層で覆われている。さらに、内面は、ハーフシェルの形状の石英ガラスでできた挿入部によって加熱バーナーから守られている。マッフルチューブの内径は400mmであり、結合させる石英ガラスの中空の円筒の外径は180mmである。マッフルチューブの製造の最中、薄く、透明な表層が形成されるが、このことは、それ以外は不透明な石英ガラス壁の断熱効果に負の影響を及ぼさないことが言及されている。
【0010】
EP1533283A2より、軸方向に移動可能な炉を用いたガラスチューブの帯状の加熱が知られている。
【技術的課題】
【0011】
特に高い成形速度、すなわち、剪断帯がブランクの長手軸に沿って動かされる速度において、ひねられた棒に割れや棒破壊が見られる。
【0012】
従って、本発明はガラス、特にSiOの含有量が多いガラス、特に石英ガラスのための修正したゾーンメルト法を特定する問題に基づいており、本発明により、割れや破壊の恐れを減少する。
【0013】
これに加えて、本発明はこの方法を実施するための装置を提供する問題に基づく。
【発明の概要】
【0014】
この方法に関して、上記のような方法で始まり、熱放散器が採用され、該熱放散器は少なくとも部分的に剪断帯を囲み、その横方向の寸法は、ブランクの長手軸の方向に、剪断帯より大きく、ブランクの長さより小さく、熱放散器は剪断帯と同期してブランクの長手軸に沿って動くことにより、この問題は本発明によって解決される。
【0015】
本発明に係る方法は少なくとも部分的に均質化されたガラス、特に高シリカガラス、またさらに特に純粋な又はドープされた石英ガラスの製造に用いられる。ここでの円柱形のブランクに熱機械的混合処理であるゾーンメルト法を施す。これは1つ以上のパス(複数のひねりストローク)を含む。この目的のために、(通常、融合された支持棒によって両端を延ばされている)ブランクが、ブランクの局所的な軟化のための少なくとも1つの熱源を備えたガラス旋盤等の回転手段に挟持される。両端のブランク支持体の異なる回転速度及び/又は回転方向の結果、剪断帯が軟化されたガラスの中で形成され、そこでガラスのねじれと混合が起こる。加熱手段を連続的にブランクの長手軸に沿って移動させることによって、及び/又はブランクを連続的に加熱手段に沿って移動させることによって、剪断帯はブランクの中を動かされる。
【0016】
ガラスは、剪断帯を形成するためには高温まで加熱されなければならない。例えば、純粋な石英ガラスに必要な温度は2000℃を超える。効果的に混合する剪断帯が形成されるためには、ブランクの直径全体に渡るガラスの十分な加熱が必要である。
【0017】
一方、ガラス、特に石英ガラスは良い断熱材であり、ガラスのバルクに熱を導入してブランクの直径に渡って均質な温度プロファイルを生成するのは困難である。ブランクの中央、すなわち長手軸の領域で、十分な温度に達することが重要である。ブランクの中央における十分な加熱は、ブランクの外周領域における、より著しく高い温度、すなわちブランクの中央と円柱形の外表面との間の、径方向の大きな温度差ΔTrを要求する。
【0018】
このことの1つの可能な説明は、熱伝導は実質的にブランクの円柱形の外表面を介して起こるということである。円柱形の外表面における熱はブランクの内側へ分配される。しかし、2000℃付近の温度では、加熱された石英ガラスはこの熱を大量に放射し、その放射は、シュテファン-ボルツマンの法則に従って局所的な温度の4乗に比例して、ガラスのバルク全体から起こる。従って、加熱は主に熱伝達により表面を介して起こるが、熱損失はバルク全体から由来するため、径方向の温度勾配ΔTrが形成される。
【0019】
ブランクが熱放散器なしで加熱される場合、熱は、放射シンクとして機能する、より冷えた周囲へと放射され、よって、該径方向の温度勾配は特に高い。従って、ブランクの中央における粘性を十分減らすためには外からの比較的高い入熱がなければならない。
【0020】
一方、熱放散器が使用される場合、複数の改善が得られる。
【0021】
・熱放散器は剪断帯の周りの熱放射シンクを減らす。径方向の温度勾配ΔTrはこのようにして減らされる。より一様な径方向の温度分布は、径方向に、より一様な剪断作用を起こし、剪断帯の形成を促進する。
【0022】
・熱放散器は、熱いバーナーガスと放射された熱(円柱形の外表面とバルク)の両方によって加熱され、プロセスの中で加熱する。これはプロセスの中で、熱放散器の、赤外線の放射源としての形成につながる。ブランクガラスの赤外線透過性のため、この赤外線は内向きにも通り、少なくとも部分的に、そこからの放射損失を補償する。
【0023】
・高温プラズマや加熱ガスがある場合、これらの高温ガスは剪断帯の両端からブランクと熱放散器の間の中間的空間でブランクに沿って左右に流出することができることがさらに貢献する。またこれは、剪断帯の両隣の領域を前及び/又は後加熱する。この予備加熱はブランク内の径方向の温度分布の一様化に寄与することができ、後加熱は、急激に冷えることに起因する熱応力を減らすことに寄与することができる。
【0024】
本発明によるひねり方法で採用される熱放散器は、剪断帯の領域からの熱エネルギーの少なくとも一部を熱放射、熱伝達又は熱対流によって吸収し、これにより、それ自身も加熱され、このエネルギーの少なくとも一部をブランク、特に剪断帯により長波長な赤外線として放出し返す。しかし、その横方向の寸法が剪断帯よりも大きいため、熱エネルギーは剪断帯に隣接したガラスにも伝達される。剪断帯に接するガラスバルクの領域、すなわち剪断帯の前後の加熱の結果、径方向の温度勾配は減少し、これは、この予備加熱の結果、剪断帯に入ろうとしているガラスのバルクは十分な温度に達するために熱源から必要な追加の入熱がより低いためである。
【0025】
これによる結果は、ブランクの外周領域の最高温度と、従って、ブランクの中央と外周との間の温度差ΔTrも、熱放散器のない形成プロセスよりも低いことである。
【0026】
特に、狭い剪断帯は比較的広い剪断帯よりもより強い、ガラスのバルクの混合を引き起こすことを考慮すると、剪断帯の幅は好ましくはブランクの直径の0.3倍未満である。
【0027】
ゾーンメルト法において、「剪断帯」の両側の回転速度ωとωは等しくない。両端の回転速度の差の量はΔω=|ω-ω|から得られる。反対方向の回転の場合、一方の回転速度は負符号を有する。剪断帯内で一方の回転速度ωから他方のωへの移行が起こる。剪断帯の中央で、両端における回転速度の平均値
に相当する回転速度が確立する(
=(ω+ω)/2)。ここで「剪断帯」はガラスのバルクの、回転速度の軸方向の変化dω/dxに/dω/dx/>0.5×|dω/dx|maxが適合する部分と定義される。「剪断帯の幅」は、上記条件が満たされる、ブランクの長手軸の方向の長手方向の部分と定義される。
【0028】
回転速度は、光学画像処理を用いて表面の近くの例えば気泡等の凹凸の動きを評価し、表面速度を測定することで求める。
【0029】
熱放散器が剪断帯とともにブランクの長手軸に沿って動くことで、成形プロセスの最中に剪断帯とガラスのバルクの隣接する領域の温度条件が変動しないことが保証される。
【0030】
剪断帯は回転軸の周りを回転するが熱放散器はしない(ブランクの長手軸の周りの回転に対して固定されている)ため、熱放散器がブランクの周りを部分的な円で覆えば十分である。単純な場合では、例えば、ブランクの長手軸と円柱形の外表面に平行に延びる帯又はハーフシェルとして設計される。
【0031】
しかし、剪断帯から放出された熱を可能な限り完全に捕獲、変換、利用するためには、円柱形の表面を、好ましくはチューブの形状で囲む熱放散器の設計が好都合であることが分かった。このチューブは任意に、両端が完全に又は部分的に開いていてもよく、閉じた、又は大半が閉じたチューブ壁を有する。放射又は対流による熱エネルギーの損失はこのように避けられる。最も単純な場合、チューブの内部の穴は丸い、楕円形、又は多角形の断面を有するシリンダー形状である。これは、ブランクの長手軸と同軸に延びてもよく、例えば、円錐状であってもよく、例えば、断面の変化等の軸方向の不均質性を有してもよい。チューブ壁に開口が存在してもよく、そこを通して熱の一部を放散することができ、又はそこを通して、可能な限り狭い剪断帯のために入熱の調整を可能にするように能動的な冷却が可能である。チューブ壁は一体である、又は接続された複数のチューブ区間若しくは複数の別の部材からなる。
【0032】
ここで熱源はチューブ開口の中に位置するか、例えばチューブ壁の1つ又は複数の開口を通して又は長手方向のスリットを通して外から剪断帯に作用する。長手方向のスリット以外は連続的であるチューブ壁において、スリットには、高温や熱膨張による機械的応力が避けられるという利点もあり、それは、剪断帯内とその周りの温度の均質化への影響に関する、長手方向のスリットによる不利益を相殺する。
【0033】
特に好ましい手法においては、ブランクの直径の15%から80%の範囲の隙間が熱放散器の円筒形の表面とブランクとの間に設けられる。
【0034】
間隙はブランクの表面における温度と温度分布に影響を及ぼす。比較的大きい間隙であると、ブランクの表面に入射する放射強度はより低いが、より広い放射角によって、照射表面領域はより大きい。ブランクの直径の80%を超える隙間であると、比較的大きい照射面積が得られ、狭い剪断帯とは反対に作用する。ブランクの直径の15%未満の比較的小さい隙間であると、封入された気体による圧力が蓄積し、バーナー又はプラズマ炎のアクセスを阻害する。
【0035】
NIR波長範囲からの赤外線に対して透明な石英ガラスからなるガラス層を含む、剪断帯に向き合った反射する内表面を備える壁を有する熱放散器を採用することは特に好都合であることが分かった。
【0036】
このガラス層は、好ましくは異物が収まることができるような開いた細孔を有さず、ひねりプロセスの最中に汚染物がブランクに入ることが防止される。NIR透明な石英ガラスからのガラス層の形成は、内表面の反射率と、従ってその剪断帯の領域の温度プロファイルに対する影響が、気化されたSiOがSiO層(以下「SiO堆積物」とも呼ぶ)として内表面に析出し、ひねりプロセスの最中の高温の結果ガラス化して石英ガラスを形成したために時間の経過につれて変化することはないことを保証する。両方の効果(純度と反射率)のため、層の厚さは例えば、0.1mm以上で十分である。
【0037】
ガラス層の石英ガラスはNIR波長範囲からの赤外線に対して透明であるが、内表面に入射する放射線の一部は、ガス雰囲気とガラスの屈折率の違いによって反射する。入射する放射強度全体における反射する部分は一般的に約4%である。赤外線の反射されなかった部分はガラス層でさらに伝搬し、そのうち少量の一部はそこで散乱又は吸収される。サンプル厚さが10mmのガラス層の透明な石英ガラスは、入射するNIR放射出力のうち少なくとも50%を透過するのが有利である。
【0038】
好ましくは、ここで透過された放射成分は不透明な石英ガラスの層に入射し、当該石英ガラスは赤外線を拡散するように散乱及び吸収する。
【0039】
不透明な石英ガラスの層の不透明性は赤外線の直接透過を阻害し、代わりに散乱や吸収をする。不透明な石英ガラスの層において、赤外線の一部は再び反射する。ガラス層と不透明な石英ガラスの層の層列での二重反射は、反射されなかった放射成分は赤外線を吸収する層の不透明な石英ガラスの内部のみで吸収され、そこで発熱し、一方、剪断帯の周りの熱いガス雰囲気は熱伝達によって、ブランクに向き合った内側のみに影響を及ぼすことを意味する。従って、放射による熱放散器への入熱は実質的に不透明な石英ガラスの層内、よって、熱伝達による入熱とは異なる地点で起こる。その結果、一方では、内部は、SiO堆積物を、落ちないように内部に留め、ガラス化するのに十分熱いままであり、他方では、内部の過熱が避けられる。
【0040】
不透明な石英ガラスの層の不透明度は、好ましくは2から8%の範囲の、石英ガラスの多孔度による。
【0041】
熱放散器は好ましくは完全に石英ガラス、特に好ましくはシリコンを含む出発物質から熱分解又は加水分解によって合成製造された石英ガラスからなる。
【0042】
装置に関して、上記のようなタイプの装置から出発し、加熱手段が熱源と熱放散器を含み、熱放散器が作動距離よりも短い、作動軸の方向の横方向の寸法を有することによって上記の技術的課題は本発明によって解決される。
【0043】
本発明に係る装置は、上記で説明した本発明に係る方法を実施するのに特に適している。この装置で採用される熱放散器は、熱源と合わせて、加熱手段の重要な構成要素である。熱放散器は、剪断帯の領域からの熱エネルギーの少なくとも一部を熱放射、熱伝達又は熱対流によって吸収し、それにより、それ自身も加熱され、このエネルギーの少なくとも一部を周囲に、より長波長な赤外線として放出し返す。
【0044】
その作動軸の方向の横方向の寸法は剪断帯のものよりも大きく、そのため、放出する熱エネルギーは、剪断帯に隣接したガラスのバルクにも伝達される。本発明に係る方法を参照して上記で説明したように、ブランクの中央と外周との間の径方向の温度差ΔTrはその結果小さく抑えることができる。
【0045】
熱放散器は、通常、作動軸の周りの回転に対して固定されている。熱放散器はブランクの周りを部分的な円で覆えば十分である。単純な場合では、例えば、ブランクの長手軸と円柱形の外表面に平行に延びる帯又はハーフシェルとして設計される。
【0046】
しかし、剪断帯から放出された熱を可能な限り完全に捕獲、変換、利用するためには、好ましくはチューブの形状で、完全な又は部分的な囲みを剪断帯の周りに形成する。このチューブは任意に、両端が完全に又は部分的に開いていてもよく、閉じた、又は大半が閉じたチューブ壁を有する。放射又は対流による熱エネルギーの損失はこのように減らされる。最も単純な場合、チューブの内部の穴は丸い、楕円形、又は多角形の断面を有するシリンダー形状である。これは、ブランクの長手軸と同軸に延びてもよく、例えば、円錐状であってもよく、例えば、剪断帯の領域に断面の変化等の不均質性を有してもよい。チューブ壁に開口が存在してもよく、そこを通して熱の一部を放散することができ、又はそこを通して、可能な限り狭い剪断帯のために入熱の調整を可能にするように能動的な冷却が可能である。チューブ壁は一体である、又は接続された複数のチューブ区間若しくは複数の別の部材からなる。ここで熱源はチューブ開口の中に位置するか、例えばチューブ壁の1つ又は複数の開口を通して又は長手方向のスリットを通して外から剪断帯に作用する。長手方向のスリット以外は連続的であるチューブ壁において、スリットには、高温や熱膨張による機械的応力が避けられるという利点もあり、それは、剪断帯内とその周りの温度の均質化への影響に関する、長手方向のスリットによる不利益を相殺する。
【0047】
熱放散器は、両端のブランクの支持体によって定義される作動距離よりも短い、作動軸の方向の寸法を有する。この方向における寸法はこのように、支持体に挟持されたブランクの長さよりも短い。これは、作動軸に沿って熱源と同期して動かすことができる。
【0048】
本発明に係る装置の有利な実施形態は従属項から取り出すことができる。従属項に記述されている装置の実施形態が本発明に係る方法に関連した従属項で言及した手法をモデルにしている部分では、補足の説明のために、対応する方法の請求項に関連する上記の記述を参照するべきである。
【0049】
[定義と測定手段]
上記説明における個々の工程と用語及び測定手段が以下さらに定義される。定義は本発明の説明の一部である。下記の定義と明細書の残りの部分との間に本質的な矛盾がある場合は明細書内の記述が決定的である。
【0050】
[石英ガラス-高シリカガラス]
ここで石英ガラスとは、SiOの含有量が少なくとも87重量%であるガラスのことである。これは、ドープされていない(SiO含有量=100%)又は、例えば、フッ素、塩素、又は希土類金属、アルミニウム、若しくはチタンの酸化物等のドーパントを含む。高シリカガラスとは、SiOの含有量が少なくとも80重量%であるガラスのことである。
【0051】
[多孔度-細孔容積の測定]
多孔質材料の「細孔容積」とは、空隙に占められた材料内の自由体積のことをいう。細孔容積は例えば、非濡れ液体(例えば水銀等)が外からの圧力の作用の下で多孔質材料の細孔に、対抗する表面張力に対して押し込まれる、ポロシメーターを用いて測定される。必要な力は孔径と反比例するため、細孔容積の合計だけでなく、サンプルの孔径分布も求めることができる。水銀圧入法は2nmを超える孔径(メソ細孔とマクロ細孔)のみを検出する。「ミクロ細孔」は孔径が2nm未満の細孔である。その多孔度と比表面積への寄与は、サンプルが様々な圧力と77Kで保持される、吸窒によるV-t法を用いて求められる。この方法はBET法と同等であり、圧力の範囲がより高い圧力まで拡張されているので、材料の非ミクロ多孔質の部分の表面積も決定される。
【0052】
[NIR波長範囲における透明度]
「近赤外」(NIRと略記)の波長範囲には異なる名称がある。この出願の枠内では、DIN 5031 part 7 (1984年1月)に従って、780nmから3000nmの間のスペクトル領域と定義される。
【0053】
ここでNIR波長範囲において透明とは、サンプル厚さが10mmであれば、入射するNIR放射出力の内少なくとも50%を透過するガラスのことをいう。
【例示的な実施の形態】
【0054】
以下、実施形態の一例と図を参照して、本発明をより詳細に説明する。個々の図は以下の概略図を示す。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】熱放散器を用いたゾーンメルト法。
図2】チューブ状の熱放散器の端面の拡大図。
【0056】
[ドープ石英ガラスからなる円柱形のブランクの用意]
[実施例1:ガス圧焼結による製造]
ガス圧焼結プロセスで、SiOペレットの円柱形成形体が融合され、ドープされた、透明な石英ガラスからなる部品が形成された。ガス圧焼結プロセスは、黒鉛からなり、円筒形の内部空間を有する排気可能な焼結型を有するガス圧焼結炉で実施された。型はまず、陰圧を維持しながら1700℃の焼結温度まで加熱された。焼結温度に達すると、15barの陽圧が炉内に確立され、型はこの温度で約30分間保たれた。次の室温への冷却の最中、陽圧は400℃の温度に達するまでさらに維持された。得られたブランクは直径が16mm、長さが100mmの石英ガラス棒の形態であった。
【0057】
[実施例2:気相蒸着による製造]
公知のOVD法を用いた支持体への外部堆積により、石英ガラスからなるスート体が製造され、そしてこれは真空炉内でガラス化された。ガラス化されたOVD柱から1/6の長手方向の部分が切り取られ、これはガラス旋盤で丸められた。直径80mm、長さ2500mmの石英ガラスブランクが得られた。
【0058】
[ゾーンメルト法]
実施例1、2によるブランクに、次に、ゾーンメルト法(ひねり)を、熱放散器を用いて実施した。実施例2のブランクについては、この処理動作は図1の図に示す。この目的のため、2つの支持棒3がプラズマトーチを用いてブランク1の両端面に溶接された。支持棒3はガラス旋盤のスピンドル6、7に挟持された。スピンドル6、7はガラス旋盤の作動距離「D」と、ブランク1の回転軸10と一致する作動軸「A」を定義する。
【0059】
ガラス旋盤は酸水素炎5を放出する酸素水素加熱バーナー2を備えていた。
【0060】
加熱バーナー2は移動可能な運搬体11の上に設置され、そこで駆動部によって、ガラス旋盤に挟持されたブランク1に沿って動かされ(図中で方向矢印8によって示される)、ブランク1は局所的に、2000℃を超える温度に加熱された。
【0061】
2つのガラス旋盤スピンドル6、7の等しくない回転速度(ω1=(-40)rpm;ω2=120rpm)と反対方向の回転の結果、酸水素炎5の加熱領域に剪断帯9が形成された。剪断帯9内で、ガラスの混合と、従って、均質化が起こった。その幅Bは酸水素炎5が当たる領域とおおよそ対応し、例えば12mmであった。剪断帯9は、酸素水素バーナー2の後退運動によってブランクの長手軸に沿って動かされ、棒状のブランク1の全長に渡って強く混合された。このようにして、直径が約79mmのガラス柱が得られた。
【0062】
ここで剪断帯9は石英ガラスからなるチューブ状の熱放散器20に囲まれた。この長さ(ブランクの長手軸の方向の寸法)は300mm、内径は120mm、壁の厚さは27mmであった。これは同様に運搬体11の上に設置され、加熱バーナー2と同期して、同じ駆動部を用い、ガラス旋盤に挟持されたブランク1に沿って動かされた。熱放散器20の壁は開口23を有し、そこを通して加熱バーナー2又は酸水素炎5が突出していた。ブランク1と熱放散器20の内壁との間に、平均間隙幅が約20mmの環状の間隙12が残った。
【0063】
図2は、図1の熱放散器20の端面のより大きい図を示す。壁は2つの同軸で隣接した層、具体的には、合成的に製造された、気泡の含有量が低く、層の厚さが1mmである石英ガラスからなる内層21と、直接隣接している、合成的に製造された、層の厚さが25mmである不透明な石英ガラスからなる外層22からなる。ガラス状の内層21は、視覚的に確認できる細孔を含まない。内層は入射する赤外線の一部(放射強度全体の約4%)を反射し、それ以外は広い波長範囲に渡って赤外線に対して透明である。隣接する外層22の不透明度は約5%の多孔度によって生じる。外層22に入射する赤外線も同様に、内層21との境界で部分的に反射するが、主に、外層22で散乱・吸収される。加熱バーナー2のためのアクセス開口23以外、壁は閉じている。両端面は開いている。
【0064】
本発明に係るゾーンメルト法において、熱放散器20は剪断帯9からの熱エネルギーの一部を、特に、熱放射と熱伝達によって吸収し、こうしてそれ自身が加熱され、このエネルギーをより長い波長の赤外線として放出する。熱放散器20は剪断帯9に対して中央に配置され、両端でその先まで突出するため、放出された熱エネルギーが、剪断帯9に隣接したガラスのバルクにも伝達される。熱放散器20のないゾーンメルト法に比べると、ブランクの中央とその外周の温度差ΔTrは前・後加熱によって減少する。中央アクセス開口23を通って熱放散器20とブランク1の間の間隙12の中へ導入されるバーナーのガスが、剪断帯9の両端から、ブランクの長手軸に沿って左右に流出することがこれに寄与し、剪断帯9の両隣の領域を加熱する。
【0065】
この結果、剪断帯9内で温度プロファイルが一様化され、効果的に混合する剪断帯9の形成を促進するだけでなく、急激に冷えることに起因する機械的応力による割れの恐れを減らす。形成される剪断帯9は幅が約12mm、すなわちブランクの外径の約13%である。これは比較的小さい幅である。より狭い剪断帯は比較的広い剪断帯よりもより強い、ガラスのバルクの混合を引き起こす。
【0066】
内層21と外層22の層列での二重反射は、反射されなかった放射成分は赤外線を吸収する外層22のみで吸収され、そこで発熱し、一方、剪断帯9の周りの熱いガス雰囲気は熱伝達によって、熱放散器20のチューブ状の内壁のみに作用することを意味する。従って、放射による熱放散器20への入熱は実質的に外層22内で、よって、熱伝達による入熱とは異なる地点で起こる。その結果、一方では、内部は、SiO堆積物を、落ちないように内部に留め、ガラス化するのに十分熱いままであり、他方では、内部の過熱が避けられる。
【0067】
以下の表は、テストパラメーターと、熱放散器がある場合(テスト1)と熱放散器がない場合(テスト2)のゾーンメルト法の結果を示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表における用語は以下の意味を有する:
ω、ω:「剪断帯」の両側における回転速度
max:剪断帯の領域における最大温度
v:加熱バーナーと熱放散器の平行移動速度
B:剪断帯の幅の最大値
割れ:ゾーンメルト法完了後の割れの発生。
図1
図2