(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】ガラスを均質化する方法
(51)【国際特許分類】
C03B 20/00 20060101AFI20240117BHJP
C03B 23/043 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
C03B20/00 E
C03B23/043
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019184267
(22)【出願日】2019-10-07
【審査請求日】2022-08-08
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599089712
【氏名又は名称】ヘレウス・クアルツグラース・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディット・ゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(73)【特許権者】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン トマス
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヴィドラ
(72)【発明者】
【氏名】マルティーン トロンマー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヒューナーマン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ラングナー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター レーマン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヘングシュテーア
(72)【発明者】
【氏名】クラオス ベッカー
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02904713(US,A)
【文献】特開平07-267662(JP,A)
【文献】特開2018-027882(JP,A)
【文献】特開2006-240978(JP,A)
【文献】特開平03-170340(JP,A)
【文献】特開2006-160561(JP,A)
【文献】特開平08-333125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスを均質化する方法であって、
(a)前記ガラスからなる円柱形のブランクであり、該ブランクの第1の端面と第2の端面との間の長さに渡って、前記ブランクの長手軸に沿って延びる円柱形の外表面を有するものを用意する工程と、
(b)前記ブランクの長手方向の一部分を軟化して熱機械的混合処理を施すことによって前記ブランクに剪断帯を形成する工程と、
(c)前記剪断帯を前記ブランクの前記長手軸に沿って移動させる工程と
を含み、
前記ブランクの円柱部が前記剪断帯の両側に隣接し、第1の円柱部は第1の中心軸を有し、第2の円柱部は第2の中心軸を有し、前記第1の中心軸と前記第2の中心軸は少なくとも一時的に互いに同軸でないことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の中心軸と前記第2の中心軸が少なくとも時々互いにオフセットされていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中心軸のオフセットは前記ブランクの直径の0.5%から15%の範囲の値に調整されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも前記第1の中心軸が、第1の機械回転軸の周りを回転し、前記第1の機械回転軸に対してオフセットされてさらに延びることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の円柱部
は第1の機械回転軸の周りを回転し、前記第2の円柱部は第2の機械回転軸の周りを回転し、前記第1
の機械回転軸と前記第2の
機械回転軸は互いに平行に延び、互いに相対的にオフセットされていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の中心軸と前記第2の中心軸は少なくとも時々互いに相対的に傾き、又は時々互いにねじれの位置であり、前記第1の円柱部は前記第1の中心軸の周りを回転し、前記第2の円柱部は前記第2の中心軸の周りを回転することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記両円柱部は前記剪断帯から始まり、斜め下に延びることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記両円柱部は前記剪断帯から始まり、斜め上に延びるように方向付けられていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ブランクは直径Dを有し、前記剪断帯は0.3×D未満の幅を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記剪断帯は少なくとも部分的に熱放散器で囲まれ、前記熱放散器の横方向の寸法は、前記ブランクの前記長手軸の方向に、前記剪断帯より大きく前記ブランクの長さより小さく、前記熱放散器は前記剪断帯と同期して前記ブランクの前記長手軸に沿って動くことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ガラスを均質化する方法であって、
(a)ブランクの第1の端面と第2の端面との間の長さに渡って、前記ブランクの長手軸に沿って延びる円柱形の外表面を有する、前記ガラスからなる円柱形のブランクを用意する工程、
(b)前記ブランクの長手方向の部分を軟化して熱機械的混合処理を施すことによって前記ブランクに剪断帯を形成する工程、
(c)前記剪断帯を前記ブランクの前記長手軸に沿って移動させる工程、
を含み、
前記ブランクの前記長手軸に沿った前記剪断帯の移動が少なくとも時々、前記剪断帯の、前記ブランクの前記長手軸に沿った振動運動によって重な
り、
前記ブランクの第1の端は第1の回転速度で回転し、前記ブランクの第2の端は第2の回転速度で回転し、前記剪断帯の振動運動は前記第1の及び/又は第2の回転速度を周期的に変化させることで発生することを特徴とする方法。
【請求項12】
前記ブランクの前記長手軸に沿った前記剪断帯の移動は前記ブランクの前記長手軸に沿った熱源の軸方向の直線平行移動によって起こり、前記剪断帯の振動運動は前記熱源の後退運動を前記平行移動に重ねることで発生することを特徴とする請求項1
1に記載の方法。
【請求項13】
前記ブランクは直径Dを有し、前記剪断帯は0.3×D未満の幅を有することを特徴とする請求項11
又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記剪断帯は少なくとも部分的に熱放散器で囲まれ、前記熱放散器の横方向の寸法は、前記ブランクの前記長手軸の方向に、前記剪断帯より大きく前記ブランクの長さより小さく、前記熱放散器は前記剪断帯と同期して前記ブランクの前記長手軸に沿って動くことを特徴とする請求項11から請求項
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の方法と請求項11から請求項
14のいずれか一項に記載の方法との組み合わせを含むことを特徴とするガラスを均質化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスを均質化する方法であって、
(a)前記ガラスからなる円柱形のブランクであり、該ブランクの第1の端面と第2の端面との間の長さに渡って、前記ブランクの長手軸に沿って延びる円柱形の外表面を有するものを用意する工程と、
(b)前記ブランクの長手方向の一部分を軟化して熱機械的混合処理を施すことによって前記ブランクに剪断帯を形成する工程と、
(c)前記剪断帯を前記ブランクの前記長手軸に沿って移動させる工程と
を含む方法に関する。
【0002】
高精度システムに設置された、ガラスからなる光学部品は、透明性と均質性に関して厳しい要求を満たす必要がある。しかしガラスは、異なる組成や屈折率の違うガラスの領域に起因する層やいわゆる「脈理」等の不均質構造を示すことが多い。
【0003】
これは、SiO2の含有量が多い、例えば80重量%を超える高シリカガラス、特にSiO2の含有量が87重量%以上の石英ガラスにとって特に問題である。この場合、昇華に近い温度であっても粘性が高く、ルツボの中で攪拌したり精製したりすることで均質化するのは不可能である。
【0004】
石英ガラスにおける脈理や層を除くために、ルツボを使用しない溶融方法が知られており、この方法では、円柱形の開始体がガラス旋盤の両主軸台に挟持されて帯状に軟化され、両主軸台は同時に異なる速度で又は反対方向に回転軸の周りを回転する。軟化領域の両側の開始体の異なる回転の結果、ねじれ(ひねり)がそこで起こり、それにより、ガラスのバルクで機械的混合が起こる。混合する領域はここでは「剪断帯」とも呼ぶ。剪断帯は開始体に沿って移動され、これはその過程で長さに沿って形作られ、混合される。不均質構造(脈理や層)はこのように減らされ、又は除かれる。この熱機械的混合処理の結果は、少なくとも部分的に均質化されたガラスからなるブランクである。この種の、工具を使用しない成形による熱機械的混合処理は以下「均質化プロセス」、「ゾーンメルト法」又は「ひねり」とも呼び、ひねり後にある前記少なくとも部分的に均質化された円柱形のブランクは「ひねられた棒」と呼ぶ。
【背景技術】
【0005】
この種のゾーンメルト法はUS3,485,613Aによって公知である。ガラス旋盤に挟持された中空でないガラス柱又は粉末混合物で満たされたガラス筒は局所的に加熱され、帯状にひねられる。熱源としては、単独又は複数の炎のバーナー、又は電気熱源が採用される。剪断帯の回転軸方向の寸法(=剪断帯の幅)は粘性に依存する。約1013ポアズ(dPa・s)未満の粘性に対しては棒の直径の0.1から3倍の範囲の値に、約105ポアズ(dPa・s)未満の粘性に対しては棒の直径の0.1から1倍の範囲の値に調整される。それは、横方向に作用する冷却手段によって狭めることができる。
【0006】
均質化するブランクは水平に配置され、ブランクの端の支持体は水平に互いに向かい側にある。この概念に基づいて製造された剪断帯は理論上一様、円形、回転対称である。剪断帯内の物質輸送は実質的に接線方向に起こるが、径方向には起こらない。これは、ブランク内の径方向のガラス欠陥を除くことはとても難しい、又は不可能であることを意味する。特に、存在する気泡は円柱形の外表面に運ばれず、材料のバルクに残る。同様に、ドーパントの径方向の濃度勾配は除かれない。この問題は、石英ガラスの断熱効果の結果、外から中への熱輸送が遅いということによって強まる。従って、剪断帯は表面よりも中心の方が冷たく、このことはより高い粘性とより低い混合に寄与し、結晶子が完全に溶融するのは難しくなる。また、単純なゾーンメルト法によって、回転軸方向の均質化を達成するのは不可能である。
【0007】
互いに垂直な3方向に石英ガラス組成物を均質化するためにEP673888B1では多工程ゾーンメルト法が提案されており、そこではひねられた棒を圧縮することで球状の石英ガラス体が中間生成物として製造され、その両端に支持棒が置かれ、これらは前の回転軸に向かって横に延び、これらによって球状の石英ガラス体が伸ばされて異なる回転軸でさらにゾーンメルト法を施される。ひねりの最中、片方の支持棒は例えば毎分70から100回転で回転し、もう片方の支持棒は反対方向にこの速度の1から3倍の速度で回転する。酸水素又はプロパンガスバーナー又は電気発熱体が熱源として採用される。
【0008】
US2,904,713Aは石英ガラスの均質化プロセスを開示し、そこでは2つの支持棒に支えられた軟化された石英ガラス組成物が、支持チューブを互いに引き離したり近づけたりすることで交互に圧縮されたり引き延ばされたりする。
【技術的課題】
【0009】
公知の多工程ゾーンメルト法には時間がかかり、エネルギー集約的である。
【0010】
従って、本発明はガラス、特にSiO2の含有量が多いガラス、特に石英ガラスを均質化するためのゾーンメルト法を修正する問題に基づいており、可能な限り少ない時間とエネルギー入力で、接線方向の混合に加えて、剪断帯内で径方向の混合が可能となるようにする。
【発明の概要】
【0011】
この問題は本発明によって、上記のようなタイプの方法から出発し、一方においては、ブランクの円柱部が剪断帯の両端に隣接し、このうち第1の円柱部は第1の中心軸を有し、第2の円柱部は第2の中心軸を有し、第1の中心軸と第2の中心軸は少なくとも一時的に互いに同軸でないことにより、解決される。
【0012】
本発明に係る方法は少なくとも部分的に均質化されたガラス、特に高シリカガラス、またさらに特には純粋な又はドープされた石英ガラスの製造に用いられる。ここでの円柱形のブランクに熱機械的混合処理であるゾーンメルト法を施す。この目的のために、(通常、融合された支持棒によって両端を延ばされている)ブランクが、ブランクの局所的な軟化のための少なくとも1つの熱源を備えたガラス旋盤等の回転手段に挟持される。両端のブランク支持体の異なる回転速度及び/又は回転方向の結果、剪断帯が軟化されたガラスの中で形成され、そこでガラスのねじれと熱機械的混合が起こる。加熱手段を連続的にブランクに沿って移動させることによって、及び/又はブランクを連続的に加熱手段に沿って移動させることによって、剪断帯はブランクを通過する。この熱機械的混合処理は剪断帯がブランクの長手軸に沿って一方向に及び/又は後退するように移動する1つ以上のパス(複数のひねりストローク)を含む。
【0013】
均質化の最中、ブランクの長手軸の空間的配向は任意である。ブランクは長手軸が水平に方向付けられるように回転手段に挟持されることが多く、この場合、良好な素材の損失を最小化するためにダミー棒をブランクの両端に溶接することができる。例えばガラス旋盤のスピンドルのような、両端のブランク保持体は従来技術では同じ回転軸を有し、これは均質化するブランクの長手軸と同軸である。円形の剪断帯が形成され、剪断帯の両端を縁取る、ブランクの円柱部の中心軸は互いに同軸であり、共通の回転軸上である。
【0014】
これに比べ、第1の中心軸と第2の中心軸は少なくとも一時的に互いに同軸でないことが提供される。結果的に形成される剪断帯は回転対称ではない、すなわち、円形でもない。この剪断帯内の物質輸送は純粋に接線方向だけでなく径方向にも起こることが示されている。
【0015】
この同軸でない2つの円柱部の中心軸の配向は、既に軟化された剪断帯を有するブランクにおいてとても簡単に確立され、熱機械的混合処理の最中、常に維持することができ、又は該処理の最中に時間や程度を変化させることができる。従来技術における「3次元均質化」の効果は、脈理のなさ、気泡のなさ、及び屈折率分布に関しては、単独の混合操作(ひねりストローク)のみであってもある程度はこの方法で達成することができる。
【0016】
同軸でない中心軸のゾーンメルト法は様々な方法で実施することができる。例えば、2つの円柱部の中心軸は互いに平行にオフセットすることができ、互いに相対的に傾いて角度をなすことができ、又は、ねじれの位置であることができる。
【0017】
第1の基本概念において、第1の中心軸と第2の中心軸は少なくとも一時的に互いにオフセットされる。最も単純な場合、第1の中心軸と第2の中心軸は(それらの延長線において)平行であるが、互いに横方向にオフセットされている。
【0018】
ここでの中心軸のオフセットはブランクの直径の0.5%から15%の範囲の値に調整されることが好ましい。外径が50mm未満のブランクにおいてはより大きいオフセット範囲(2から15%)の中心軸オフセットが最適であり、外径が50mm以上のブランクにおいてはより小さいオフセット範囲(0.5から7%)の中心軸オフセットが最適である。
【0019】
この基本概念の好ましい実施形態において、第1の中心軸と第2の中心軸は互いにオフセットされ、少なくとも第1の中心軸が該第1の機械回転軸(ここで、第1の中心軸が第1の機械回転軸の周りを回転する)に対してさらにオフセットされる。
【0020】
第1の機械回転軸は例えば第1の円柱部の回転手段の回転軸に対応する。この円柱部の第1の中心軸は一般にこの回転軸と平行であるが、横方向にオフセットされている、すなわち回転手段の回転軸の外にある。ここで関わる円柱部は必ずしもそれ自身の(第1の)中心軸の周りを回転せず、第1の機械回転軸の周りを回転し、この回転の最中、この第1の機械回転軸の周りに円軌道を描く。この回転軸は第1の円柱部の重心を通らないため、永続的に剪断帯を変形させる静的不均衡が形成される。
【0021】
同様に、第2の円柱部の中心軸の方が、例えば第2の円柱部の回転手段の回転軸に対応する第2の機械回転軸に対してオフセットされてもよい。しかし、より好ましくは、第2の円柱部はそれ自身の(第2の)中心軸の周りを回転し、該中心軸は第2の機械回転軸と同軸であり、特に好ましくは第1の機械回転軸とも同軸である。
【0022】
図10は位置と回転のスケッチを用いてこの概念を説明する。ここで第1の円柱部1.1は旋盤の第1のスピンドル6(
図1参照)と、第2の円柱部1.2は旋盤の第2のスピンドル7と接続される。両端のスピンドル6、7は機械回転軸104を定義する。例示的な実施形態において第2の円柱部1.2は機械回転軸に対して偏心的に第2のスピンドル7に設置される。言い換えると、第2の円柱部1.2の中心軸7.1は旋盤の機械回転軸104の外に位置する。従って、ここで関わる円柱部1.2は回転軸104の周りに、第2のスピンドルの回転速度と回転方向108で円軌道106を描く。第1の円柱部1.1は回転軸104に対して偏心的又は同軸的に配置することができる。しかし、
図10の例示的な実施形態においては、中心軸6.1と機械回転軸104は一致し、第1の円柱部
1.1はその中心軸6.1の周りを、第1のスピンドルによって、好ましくは108とは反対の回転方向107で回転する。第2の円柱部1.2はさらにその中心軸7.1の周りを、回転方向矢印109で示される回転方向に回転する。
【0023】
これは、設計に関しては例えば
図11に模式的に示したような装置で達成される。ここで第2の円柱部1.2の偏心的支持には、スピンドルヘッドの中心から移動することができるチャック112が第
2の円柱部1.2の回転可能な支持体に採用される。同様に、第1の円柱部
1.1も機械回転軸104の周りを回転できるように、スピンドルヘッドの中心から移動することができるチャック111に設置される。チャック111、112それぞれの移動性はそれぞれ方向矢印111aと112aによって示される。ブロック矢印Aは軸6.1と104からの軸7.1のオフセットを示す。
【0024】
この概念における剪断帯においてはねじれがあり、これは円柱部のそれぞれの中心軸の周りの異なる回転だけでなく、そこに常に働いている、不均衡によるトルクのためでもある。この結果、剪断帯において特に強い混合が起こる。
【0025】
第1の基本概念の別の実施形態において、第1の円柱部は第1の回転軸の周りを、第2の円柱部は第2の回転軸の周りを回転し、第1と第2の回転軸は互いに平行であり、互いにオフセットされている。
【0026】
この実施形態において、2つの円柱部はそれぞれの中心軸の周りを回転し、共通の回転軸を持たない。剪断帯において、ねじれは円柱部の異なる回転によってだけでなく、2つの中心軸の互いの横方向のオフセットにより起こる。
【0027】
上記の第1の基本概念の方法の変形例において、第1の中心軸と第2の中心軸は横方向のオフセットを持ち、互いに平行に、延びる。中心軸の平行な配置は設計の観点から、達成するのは簡単である。本発明の第2の基本概念は、均質化プロセスの最中に少なくとも時々第1の中心軸と第2の中心軸が互いに傾き、又は互いにねじれの位置であるということに特徴付けられている。
【0028】
この結果、剪断帯において特に強い混合が起こる。傾きの場合、2つの中心軸は、ゾーンメルト法の最中に変化させることができ、傾斜角度をなす。しかし、傾斜角度は145から175度の範囲に調整され、ゾーンメルト法の最中は固定されるのが好ましい。ねじれの位置の軸の配置の場合、傾斜角度は、中心軸の1つが延びる平面の1つへの軸の配置の射影によって得られる。
【0029】
特に重いブランクの均質化において、両円柱部が剪断帯から始まり、斜め下に延びる傾きが有利であることが分かった。
【0030】
これは、剪断帯が上部にあり、下部にある2つの円柱部によって支えられていることを意味する。
【0031】
別の、同等に好ましい傾きの変形例において、両円柱部は剪断帯から始まり、斜め上に延びるように方向付けられている。
【0032】
これは、剪断帯が下部にあることを意味し、これは円柱部自体の重さによって、達成するのが特に簡単である。
【0033】
これらの第1の基本概念の実施形態において、両端での円柱部の間のオフセット及び/又はそれぞれの中心軸の互いの傾きは石英ガラスの3つの空間的方向における混合を引き起こす。気泡やその他の不均質性はこのように回転軸の周りにねじのようにして引き出される。気泡やその他の不均質性が、より消滅させにくい、回転軸の周りの、閉じた同軸の環上に分布される難しい公知の方法と比べ、ねじ状の形は消散されるまで回転によってさらに引き出して薄くすることができる。これは、第1のひねりストロークとは反対の回転方向の第2のひねりストロークによっても特に容易に達成することができる。
【0034】
上記の技術的課題は本発明によって、他方においては、上記のようなタイプの方法から出発し、ブランクの長手軸に沿った剪断帯の移動が少なくとも時々、剪断帯の、ブランクの長手軸に沿った振動運動によって重なることによっても解決される。
【0035】
ブランクの長手軸に沿った剪断帯の横への移動とは独立して、剪断帯は小さい振幅で交互運動を行う。これは、物質輸送が純粋に接線方向のみにではなく、径方向や、軸方向にさえも起こる、回転対称でない剪断帯も導くことがわかった。
【0036】
剪断帯の振動運動は既に軟化された剪断帯を有するブランクにおいて発生し、均質化プロセスの最中常に維持することができ、又は時間の経過とともにその程度を変化させることができる。この手段によっても「3次元均質化」の効果は、脈理のなさ、気泡のなさ、及び屈折率分布に関しては、単独の混合操作(ひねりストローク)のみであってもある程度得られる。
【0037】
第1の好ましい手法において、剪断帯の振動運動は、ブランクの第1の端を第1の回転速度で回転させ、ブランクの第2の端を第2の回転速度で回転させ、周期的に第1及び/又は第2の回転速度を変化させることで発生する。
【0038】
ここで、第1と第2の回転速度の変化は、少なくとも一方の回転速度の水準と、第1と第2の回転速度の間の速度の違いとの両方が周期的に変化するのが好ましい。
【0039】
別の好ましい手法において、剪断帯の振動運動は、ブランクの長手軸に沿った剪断帯の移動はブランクの長手軸に沿った熱源の軸方向の直線平行移動によって起こり、熱源の後退運動がその平行移動に重ねられることによって起こる。
【0040】
熱源は一種の振り子運動を行い、運動の軌道は、剪断帯の、移動速度での比較的長い距離の前向きの運動と規則的又は不規則に散在する同じ又は異なる移動速度での比較的短い距離の後ろ向きの運動からなる。
【0041】
上記した本発明に係る方法の全ての実施形態において、回転対称でない剪断帯が生成され、これは、接線方向のみでなく径方向や、部分的にはブランクの長手軸の軸方向にも混合を可能とする。また、この結果、剪断帯の径方向の温度分布がより一様となり気泡が表面に運ばれ、ガラスのバルクの気泡の含有量が全体的に減少する。ブランクの原料内に存在する結晶子も全て完全に溶け、このようにして除かれる。ドープされた石英ガラスの場合、さらに、より均質なドーパント分布が得られ、屈折率変動が除かれる。
【0042】
また、剪断帯におけるより一様な径方向の温度分布は、狭い剪断帯の形成を促進する。狭い剪断帯は比較的広い剪断帯よりもより強い、ガラスのバルクの混合を引き起こす。剪断帯の最適な幅は、ブランクの直径による。目安として、直径Dのブランクでは、剪断帯は0.3×D未満の幅を有する。
【0043】
ゾーンメルト法において、「剪断帯」の両側の回転速度ω
1とω
2は等しくない。両端の回転速度の差の量はΔω=|ω
2-ω
1|から得られる。反対方向の回転の場合、一方の回転速度は負符号を有する。剪断帯内で一方の回転速度ω
1から他方のω
2への移行が起こる。剪断帯の中央で、両端における回転速度の平均値
に相当する回転速度が確立する(
=(ω
2+ω
1)/2)。ここで「剪断帯」はガラスのバルクの、回転速度の軸方向の変化dω/dxに/dω/dx/>0.5×|dω/dx|
maxが適合する部分と定義される。「剪断帯の幅」は、上記条件が満たされる、ブランクの長手軸の方向の長手方向の部分と定義される。
【0044】
回転速度は、光学画像処理を用いて表面の近くの例えば気泡等の凹凸の動きを評価し、表面速度を測定することで求める。
【0045】
広すぎる剪断帯においては、局所的速度勾配と局所的粘性勾配がともにとても低く、気泡、結晶やその他のガラス欠陥が、それらの熱安定性によっては、全体として保持されることがある。最適な消散のためには、ガラス欠陥の一部がより冷たくより粘性のある部分に保持されたままであり、その上を、より粘性の少なく、より高温の溶融体が、それが消散/分布されている反対側で流れるのが有利である。粘性勾配が低すぎると、「回転」されるだけで、最終的には単に同伴される。
【0046】
発明の特に好ましい手法においては、上記で説明した、剪断帯の両端における円柱部の回転軸の同軸でない配置を含む均質化手段は、同様に上記で説明した、剪断帯の振動運動に関する均質化手段と組み合わせられる。
【0047】
このガラスを均質化する手法において、ブランクの円柱部が剪断帯の両側に隣接し、このうち第1の円柱部は第1の中心軸を有し、第2の円柱部は第2の中心軸を有し、第1の中心軸と第2の中心軸は均質化の最中に少なくとも一時的に互いに同軸でない手段は、ブランクの長手軸に沿った剪断帯の移動が少なくとも時々、剪断帯の、ブランクの長手軸に沿った振動運動によって重なる手段と組み合わせられる。
【0048】
ここで、剪断帯の振動運動は好ましくはブランクの第1の端が第1の回転速度で回転し、ブランクの第2の端が第2の回転速度で回転し、第1の及び/又は第2の回転速度は周期的に変化する手段の変形例に基づいて発生するか、ブランクの長手軸に沿った剪断帯の移動がブランクの長手軸に沿った熱源の軸方向の直線平行移動によって起こり、熱源の後退運動が平行移動に重なる手段の変形例に基づいて発生する。
【0049】
少なくとも部分的に剪断帯を囲む熱放散器が採用され、その横方向の寸法は、ブランクの長手軸の方向に、剪断帯より大きく、ブランクの長さより小さく、熱放散器は剪断帯と同期してブランクの長手軸に沿って動く別の手法が好ましいことが分かった。
【0050】
熱放散器は、剪断帯の領域からの熱エネルギーの少なくとも一部を熱放射、熱伝達又は熱対流によって吸収し、これにより、それ自身も加熱され、このエネルギーの少なくとも一部をブランク、特に剪断帯により長波長な赤外線として放出し返す。しかし、その横方向の寸法が剪断帯よりも大きいため、熱エネルギーは剪断帯に隣接したガラスにも伝達される。剪断帯を縁取るガラスバルクの領域、すなわち剪断帯の前後の加熱の結果、径方向の温度勾配は減少し、これは、この予備加熱の結果、剪断帯に入ろうとしているガラスのバルクは十分な温度に達するために熱源から必要な追加の入熱がより低いためである。
【0051】
これによる結果は、ブランクの外周領域の最高温度と、従って、ブランクの中央と外周との間の温度差も、熱放散器のない成形プロセスよりも低いことである。
【0052】
熱放散器はこのように、温度勾配を減らし、剪断帯内の温度プロファイルを一様にすることに寄与する。その結果、機械的応力による割れの恐れが減る。
【0053】
しかし、剪断帯から放出された熱を可能な限り完全に捕獲、変換、利用するためには、円柱形の表面を、好ましくはチューブの形状で囲む熱放散器の設計が好都合であることが分かった。このチューブは任意に、両端が完全に又は部分的に開いていてもよく、閉じた、又は大半が閉じたチューブ壁を有する。放射又は対流による熱エネルギーの損失はこのように減らされる。最も単純な場合、チューブの内部の穴は丸い、楕円形、又は多角形の断面を有するシリンダー形状である。これは、ブランクの長手軸と同軸に延びてもよく、例えば、円錐状であってもよく、例えば、断面の変化等の軸方向の不均質性を有してもよい。チューブ壁に開口が存在してもよく、そこを通して熱の一部を放散することができ、又はそこを通して、可能な限り狭い剪断帯のために入熱の調整を可能にするように能動的な冷却が可能である。チューブ壁は一体である、又は接続された複数のチューブ区間若しくは複数の別の部材からなる。ここで熱源はチューブ開口の中に位置するか、例えばチューブ壁の1つ又は複数の開口を通して又は長手方向のスリットを通して外から剪断帯に作用する。長手方向のスリット以外は連続的であるチューブ壁において、スリットには、高温や熱膨張による機械的応力が避けられるという利点もあり、それは、剪断帯内とその周りの温度の均質化への影響に関する、長手方向のスリットによる不利益を相殺する。
【0054】
寸法が、ブランクの長手軸の方向にブランクの長さより小さく、ブランクの長手軸に沿って剪断帯と同期して動く熱放散器が採用される。熱放散器が剪断帯とともにブランクの長手軸に沿って動くことで、成形プロセスの最中に剪断帯とガラスのバルクの隣接する領域の温度条件が変動しないことが保証される。
【0055】
ブランクの長さに比べて短い熱放散器はさらに、バルクの温度が高いことを保証し、そのため、昇華堆積物がガラス化され、ブランクの上に落ちない。
【0056】
熱放散器とブランクの間には、ブランクの直径の15%から80%の範囲の隙間が設けられるのが好ましい。間隙はブランクの表面における温度と温度分布に影響を及ぼす。比較的大きい間隙であると、ブランクの表面に入射する放射強度はより低いが、より広い放射角によって、照射表面領域はより大きい。ブランクの直径の80%を超える隙間であると、比較的大きい照射面積が得られ、狭い剪断帯とは反対に作用する。ブランクの直径の15%未満の比較的小さい隙間であると、封入された気体による圧力が蓄積し、バーナー又はプラズマ炎のアクセスを阻害する。
【0057】
NIR波長範囲からの赤外線に対して透明な石英ガラスからなる、少なくとも厚さ0.1mmのガラス層を用いて形成され、剪断帯に向き合った部分的に反射する内表面を備えた壁を有する熱放散器を採用することは特に好都合であることが分かった。このガラス層は、好ましくは異物が収まることができるような開いた細孔を有さず、ひねりプロセスの最中に汚染物がブランクに入ることが防止される。NIR透明な石英ガラスからのガラス層の形成は、内表面の反射率と、従ってその剪断帯の領域の温度プロファイルに対する影響が、気化されたSiO2がSiO2層(以下「SiO2堆積物」とも呼ぶ)として内表面に析出し、ひねりプロセスの最中の高温の結果ガラス化したために時間の経過につれて変化することはないことを保証する。両方の効果(純度と反射率)のために、層の厚さは例えば、0.1mm以上で十分である。
【0058】
ガラス層はNIR波長範囲からの赤外線に対して透明であるが、一部は、ガス雰囲気とガラスの屈折率の違いによって内表面で反射する。入射する放射強度全体における反射する部分は一般的に約4%である。赤外線の反射されなかった部分は透明な層でさらに伝搬し、そのうち少量の一部は散乱又は吸収される。好ましくは、ここで透過された放射成分は不透明な石英ガラスの層に入射し、当該石英ガラスは赤外線を拡散するように散乱及び吸収する。不透明な石英ガラスの層の不透明性は赤外線の直接透過を阻害し、代わりに散乱や吸収をする。不透明な石英ガラスの層において、赤外線の一部は再び反射する。ガラス層と不透明な石英ガラスの層の層列での二重反射は、反射されなかった放射成分は赤外線を吸収する層の不透明な石英ガラスの内部のみで吸収され、そこで発熱し、一方、剪断帯の周りの熱いガス雰囲気は熱伝達によって、ブランクに向き合った内側のみに影響を及ぼすことを意味する。従って、放射による熱放散器への入熱は実質的に不透明な石英ガラスの層内、よって、熱伝達による入熱とは異なる地点で起こる。その結果、一方では、内部は、SiO2堆積物を、落ちないように内部に留め、ガラス化するのに十分熱いままであり、他方では、内部の過熱が避けられる。不透明な石英ガラスの層の不透明度は、好ましくは2から8%の範囲の、石英ガラスの多孔度による。
【0059】
熱放散器は好ましくは完全に石英ガラス、特に好ましくはシリコンを含む出発物質から熱分解又は加水分解によって合成製造された石英ガラスからなる。
【0060】
[定義と測定手段]
上記説明における個々の工程と用語及び測定手段が以下さらに定義される。定義は本発明の説明の一部である。下記の定義と明細書の残りの部分との間に本質的な矛盾がある場合は明細書内の記述が決定的である。
【0061】
[石英ガラス]
ここで石英ガラスとは、SiO2の含有量が少なくとも87重量%であるガラスのことである。これは、ドープされていない(SiO2含有量=100%)又は、例えば、フッ素、塩素、又は希土類金属、アルミニウム、若しくはチタンの酸化物等のドーパントを含む。高シリカガラスとは、SiO2の含有量が少なくとも80重量%であるガラスのことである。
【0062】
[多孔度-細孔容積の測定]
多孔質材料の「細孔容積」とは、空隙が占める材料内の自由体積のことをいう。細孔容積は例えば、非濡れ液体(例えば水銀等)が外からの圧力の作用の下で多孔質材料の細孔に、対抗する表面張力に対して押し込まれる、ポロシメーターを用いて測定される。必要な力は孔径と反比例するため、細孔容積の合計だけでなく、サンプルの孔径分布も求めることができる。水銀圧入法は2nmを超える孔径(メソ細孔とマクロ細孔)のみを検出する。「ミクロ細孔」は孔径が2nm未満の細孔である。その多孔度と比表面積への寄与は、サンプルが様々な圧力と77Kで保持される、吸窒によるV-t法を用いて求められる。この方法はBET法と同等であり、圧力の範囲がより高い圧力まで拡張されているので、材料の非ミクロ多孔質の部分の表面積も決定される。
【0063】
[NIR波長範囲における透明度]
「近赤外」(NIRと省略)の波長範囲には異なる名称がある。この出願の枠内では、DIN 5031 part 7 (1984年1月)に従って、780nmから3000nmの間のスペクトル領域と定義される。
【0064】
ここでNIR波長範囲において透明とは、サンプル厚さが10mmであれば、入射するNIR放射出力の内少なくとも50%を透過するガラスのことをいう。
【0065】
[水酸基(OH基)の濃度の測定]
測定は、D.M. Dodd and D.B. Fraser, “Optical determination of OH in fused silica”, Journal of Applied Physics, Vol. 37(1966), p. 3911の方法を用いて行われる。
【例示的な実施の形態】
【0066】
以下、実施形態の一例と図を参照して、本発明をより詳細に説明する。個々の図は以下の概略図を示す。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】本発明による、回転軸が互いにオフセットされたゾーンメルト法を実施するための装置。
【
図4】本発明による第3の手順における、熱源の、ブランクの長手軸に沿った平行移動速度の経路-時間図。
【
図5】本発明による、回転軸が互いに傾いた、ゾーンメルト法の変形例。
【
図6】
図5の手順におけるひねりストロークの間中傾斜角度を一定に保つ手段。
【
図8】処理したブランクにおける径方向のOH基濃度プロファイルに対する熱機械的混合処理の実施形態の作用を説明する図。
【
図9】処理したブランクにおける径方向のOH基濃度プロファイルに対する熱機械的混合処理のさらなる実施形態の作用を説明する図。
【
図10】熱機械的混合処理の実施形態を説明するスケッチ。
【
図11】熱機械的混合処理を実施するために適した手段の概略図。
【0068】
[ドープ石英ガラスからなる円柱形のブランクの用意]
[実施例1:ガス圧焼結による製造]
ガス圧焼結プロセスで、SiO2ペレットの円柱形成形体が融合され、ドープされた、透明な石英ガラスからなる部品が形成された。ガス圧焼結プロセスは、黒鉛からなり、円筒形の内部空間を有する排気可能な焼結型を有するガス圧焼結炉で実施された。型はまず、陰圧を維持しながら1700℃の焼結温度まで加熱された。焼結温度に達すると、15barの陽圧が炉内に確立され、型はこの温度で約30分間保たれた。次の室温への冷却の最中、陽圧は400℃の温度に達するまでさらに維持された。得られた石英ガラスブランクは直径が16mm、長さが100mmであった。
【0069】
[実施例2:気相蒸着による製造]
公知のOVD法を用いた支持体への外部堆積により、石英ガラスからなるスート体が製造され、そしてこれは真空炉内でガラス化された。ガラス化されたOVD柱から1/6の長手方向の部分が切り取られ、これはガラス旋盤で丸められた。直径80mmの石英ガラスブランクが得られ、これは直径に渡って、実質的にOH含有量の不均質な分布に起因する顕著な屈折率の変化を示した。
【0070】
[ゾーンメルト法]
[方法の実施例(a)]
実施例1によるブランクに、次に、ゾーンメルト法(ひねり)を実施した。この処理動作は
図1の図に示す。この目的のため、2つの支持棒3がプラズマトーチを用いて棒状のブランク1の両端面に溶接された。支持棒3はガラス旋盤のスピンドル6、7に挟持された。スピンドル6、7はガラス旋盤の作動距離「D」を定義する。
【0071】
ガラス旋盤は酸水素炎5を放出する酸素水素加熱バーナー2を備えていた。
【0072】
加熱バーナー2は移動可能な運搬体11の上に設置され、そこで駆動部によって、ガラス旋盤に挟持されたブランク1に沿って動かされ(図中で方向矢印8によって示される)、ブランク1は局所的に、2000℃を超える温度に加熱された。ブランクの表面上の、酸水素炎が当たる領域は幅が約20mmであった。
【0073】
2つのガラス旋盤スピンドル6、7の等しくない回転速度(ω1=80rpm、ω2=(-170)rpm)と反対方向の回転の結果、酸水素炎5の加熱領域に剪断帯9が形成された。剪断帯9内で、ガラスの混合と、従って、均質化が起こった。その幅Bは酸水素炎5が当たる領域よりも小さく、約5mmであった。剪断帯9は、酸素水素バーナー2の後退運動によってブランク1の長手軸に沿って動かされ、棒状のブランク1の全長に渡って強く混合された。ブランクの長手軸に沿った動きにおいて、剪断帯9は、片側は右手円柱部1.2によって、もう一方の側は左手円柱部1.1によって制限されていた。
【0074】
軟らかい剪断帯9が形成されるとすぐ、ガラス旋盤の2つのスピンドル6、7は、スピンドルの2つの回転軸6.1と7.1が互いに平行だが同軸でないように、互いに径方向に約2mmオフセットされた。この径方向のオフセットによって、剪断帯9の変形が、円形でなく、回転対称でない形の方向とより小さい幅で得られた。これはゾーンメルト法の均質化効率を高めた。
【0075】
このようにして得られた均質化されたガラス柱は直径が約15.5mm、長さが約100mmであった。
【0076】
図2は中心軸6.1と7.1の側面図で、対応する回転の図を示す。ここで第1の円柱部1.1と第2の円柱部1.2はそれぞれそれ自身の、互いに平行に延び、スピンドルのオフセットによって、垂直方向の位置が前記2mmで互いにオフセットされた回転軸の周りを回転する。回転軸は中心軸6.1(円柱部1.1について)と7.1(円柱部1.2について)に対応する。2つの円柱部1.1と1.2はこのように、共通した回転軸を持たない。剪断帯9において、ねじれは、円柱部1.1、1.2の異なる回転によってのみでなく、2つの中心軸6.1と7.1の互いの横方向のオフセットによっても得られる。
【0077】
[方法の実施例(b)]
OH分布を均質化するために、実施例2によるブランクに同様にゾーンメルト法を実施した。処理動作は、
図1に模式的に示された装置を用い、剪断帯9を囲むチューブ状の熱放散器を追加的に用いて行われた。この長さ(ブランクの長手軸の方向の寸法)は300mm、内径は120mm、壁の厚さは27mmであった。これは同様に運搬体11の上に設置され、加熱バーナー2と同期して、同じ駆動部を用い、ガラス旋盤に挟持されたブランク1に沿って動かされた。熱放散器70の壁は開口73を有し、そこを通して加熱バーナー2又は酸水素炎5が突出した。ブランク1と熱放散器70の内壁との間に、平均間隙幅が20mmの環状の間隙12が残った。
【0078】
2つのガラス旋盤スピンドル6、7の等しくない回転速度(ω1=(-40)rpm;ω2=120rpm)と反対方向の回転の結果、酸水素炎5の加熱領域に剪断帯9が形成された。剪断帯9内で、ガラスの混合と、従って、均質化が起こった。その幅Bは酸水素炎5が当たる領域よりも小さく、約10mmであった。剪断帯9は、酸素水素バーナー2の後退運動によってブランク1の長手軸に沿って動かされ、棒状のブランク1の全長に渡って強く混合された。
【0079】
ブランクの長手軸に沿った動きにおいて、剪断帯9は、片側は右手円柱部1.2によって、もう一方の側は左手円柱部1.1によって制限されていた。軟らかい剪断帯9が形成されるとすぐ、ガラス旋盤の2つのスピンドル6、7は、スピンドルの2つの回転軸6.1と7.1が互いに平行だが同軸でないように、互いに径方向に約2mmオフセットされた。この径方向のオフセットによって、剪断帯9の変形が、円形でなく、回転対称でない形の方向とより小さい幅で得られた。これはゾーンメルト法の均質化効率を高めた。
【0080】
このようにして、直径が約79mmのガラス柱が得られた。
【0081】
[方法の例(c)-比較例]
OH分布を均質化するために、実施例2によって製造されたブランク1に同様にゾーンメルト法を実施したが、スピンドルの2つの回転軸6.1と7.1の間にオフセットを設けずに実施した。こうして回転軸6.1と7.1は一致した。この径方向のオフセットのない手法において、剪断帯9は円形又は回転対称の様式で変形された。
【0082】
図8の図は、方法の実施例(b)と比較例(c)のサンプルの、径方向の水酸基分布の違いを示す。y軸には、均質化されたガラス棒内で測定した水酸基濃度C
OH(重量ppm)が径方向の位置P(mm)に対してプロットされている。曲線(c)は、横方向のオフセットなしでは170から215重量ppmの濃度範囲で放物線状のOH基分布が維持されたことを示し、これも同様に熱機械的混合処理前の、元のひねられた棒でも測定された。一方で、方法の実施例(b)による、回転軸の横方向のオフセットがあると、中央でOH変動が180から190重量ppmの濃度範囲で著しく低く、平坦になる分布曲線(b)が得られる。
【0083】
図3は、スピンドル7における、右手円柱部1.2のための支持棒3の中心からずれた配置によって行われる別の手法における回転の図を示す。ここで、円柱部1.2及び/又はその支持棒3の中心軸7.1はスピンドル7の機械回転軸7.2から3mmオフセットされている。第1の円柱部1.1はこのように、中心軸6.1の周りを回転速度ω
1で回転し、第2の円柱部1.2は回転速度ω
2でスピンドル7の、中心軸6.1と同軸な機械回転軸7.2を中心とする円軌道の周りで回転される。ここで、第2の円柱部1.2はそれ自身の中心軸7.1の周りを回転せず、実際の機械回転軸7.2の周りと、これと同軸である中心軸6.1の周りに円軌道を描く。
【0084】
剪断帯9において、ねじれは、円柱部(1.1、1.2)の、それぞれの中心軸(6.1、7.1)の周りの異なる回転(ω1,ω2=0)によってのみでなく、同時に、スピンドル7の機械回転軸7.2に対してオフセットされている円柱部1.2が、共通の回転軸(中心軸6.1)の周りに円軌道を描くことによっても得られる。この結果、剪断帯9において、接線方向のみでなく径方向や部分的にはブランクの長手軸の軸方向にも、特に強い混合が起こる。
【0085】
回転対称でなく、狭い、径方向においても良好な混合の剪断帯を形成する別の手法において、剪断帯は、ブランクの長手軸に沿った横への移動の最中に交互運動を行う。
図4は、対応する時間-位置図の図を示す。y軸には時間t(s)が熱源の空間的位置P(mm)に対してプロットされている。熱源の、ブランクの長手軸に沿った軸方向の平行移動には、よりやや短い後退運動が重ねられる。いくつかの後退地点は破線によって印される。前向きと後ろ向きの動きの最中、それらの距離は約2倍異なり、前進の割合は等しい。
【0086】
[方法の実施例(d)]
OH分布を均質化するための別の手法において、さらなる、段状の径方向の水酸基プロファイルを有するブランク(
図9参照)に、同様に、熱放散器10(
図1を参照して説明されるように)を用いてゾーンメルト法を実施した。ここで剪断帯の振動運動は、第1の円柱部を第1の回転速度ω
1で、第2の円柱部を第2の回転速度ω
2で回転させ、第1及び/又は第2の回転速度を周期的に変化させることで発生させた。表1は好ましい実施形態の一例のパラメータを与える。
【0087】
【0088】
回転速度ω1とω2は正弦波振動によって周期的に変化し、振動数は等しく、一定の200rpmの位相変位が得られた。しかし、平均値と振幅は異なり、回転速度の周期的変化が得られ、剪断帯の振動運動を導いた。
【0089】
[方法の例(e)-比較例]
OH分布を均質化するために、段状の径方向の水酸基分布プロファイルを有する、方法の実施例(d)で言及したような石英ガラスブランクに、同様にゾーンメルト法を実施したが、方法の実施例(d)のような剪断帯の振動運動を伴わずに実施した。ここで、スピンドルの回転軸6.1と7.1の回転速度はそれぞれ一定値の-20rpmと+180rpmに調整され、これにより、回転軸6.1と7.1は一致した。この手法において、剪断帯9は円形又は回転対称の様式で変形された。
【0090】
図9の図は、方法の実施例(d)と比較例(e)のサンプルの、径方向の水酸基分布の違いを示す。y軸には、均質化されたガラス棒内で測定した水酸基濃度C
OH(重量ppm)が径方向の位置P(mm)に対してプロットされている。曲線(e)は、剪断帯の振動運動なしでは、200から270重量ppmの濃度範囲で顕著な濃度最大値のOH基分布が、ブランクの中央に得られることを示す。これに比べ、曲線(d)は、方法の実施例(d)による剪断帯の振動運動があると、中央で平坦になり、OH変動が210から250重量ppmの濃度範囲で著しく低い水酸基濃度プロファイルが得られることを示す。
【0091】
図5は、剪断帯における強い混合のさらなる手法の図を示す。
図1と同じ参照番号は、
図1を参照して既に説明したのと同じ又は同等の要素又は部分を表す。この手法において、2つの中心軸6.1と7.1は約165度の傾斜角度αをなすように、互いに傾くように配置されている。ここで、円柱部1.1と1.2は、第1の中心軸6.1と第2の中心軸7.1が剪断帯9から始まって下向きに延びるように方向付けられている。2つのガラス旋盤スピンドル6、7の縦方向の位置がひねりストローク(方向矢印8によって示される)の最中一定のままであるとき、傾斜角度は連続的に変化する。この方法の変化においても、
図1を参照して説明した熱放散器70を有利に使用することができる。
【0092】
ゾーンメルト法の経過に渡って傾斜角度αを一定に保つため、3つのプロセス段階A、B、Cを参照して
図6に模式的に示されるように、スピンドル6、7(又はそれぞれのチャックの)の縦方向の調整が必要である。比較的短い左手円柱部1.1と比較的長い右手円柱部1.2でプロセス段階Aから始まり、加熱バーナー2と剪断帯9の右手ガラス旋盤スピンドル7へ向かった連続した移動は、ゾーンメルト法の経過に渡って傾斜角度αを一定に保つために、方向矢印62で示すように、右手ガラス旋盤スピンドル7を連続的に上げることを要求する。スピンドル(チャック)の片方の連続的な動きの代わりに、両方の(スピンドル)チャックを縦方向に移動させることも可能である。ブランクの長さを一定に保つために、チャックを互いに向かって動かすことができる。
【0093】
図7は、
図1の熱放散器70の端面のより大きい図を示す。壁は2つの同軸で隣接した層、具体的には、合成的に製造された、気泡の含有量が低く、層の厚さが1.5mmである石英ガラスからなる内層71と、直接隣接している、合成的に製造された、層の厚さが15mmである不透明な石英ガラスからなる外層72からなる。ガラス状の内層71は、視覚的に確認できる細孔を含まない。内層は入射する赤外線の一部(放射強度全体の約4%)を反射し、それ以外は広い波長範囲に渡って赤外線に対して透明である。隣接する外層72の不透明度は約5%の多孔度によって生じる。外層72に入射する赤外線も同様に、内層71との境界で部分的に反射するが、主に、外層72で散乱・吸収される。加熱バーナー2のためのアクセス開口73以外、壁は閉じている。両端面は開いている。
【0094】
本発明に係るゾーンメルト法において、熱放散器70は剪断帯9からの熱エネルギーの一部を、特に、熱放射と熱伝達によって吸収し、こうしてそれ自身が加熱され、このエネルギーをより長い波長の赤外線として放出する。熱放散器70は剪断帯9に対して中央に配置され、両端でその先まで突出するため、放出された熱エネルギーが、剪断帯9に隣接したガラスのバルクにも伝達される。熱放散器70のないゾーンメルト法に比べると、軸方向の温度勾配と、ブランクの中央とその外周の温度差は前・後加熱によって減少する。中央アクセス開口23を通って熱放散器70とブランク1の間の間隙12の中へ導入されるバーナーのガスが、剪断帯9の両端から、ブランク1の長手軸に沿って左右に流出することがこれに寄与し、剪断帯9の両隣の領域を加熱する。
【0095】
この剪断帯9内の温度プロファイルの一様化の結果、機械的応力による割れの恐れが減少する。
【0096】
内層71と外層72の層列での二重反射は、反射されなかった放射成分は赤外線を吸収する外層72のみで吸収され、そこで発熱し、一方、剪断帯9の周りの熱いガス雰囲気は熱伝達によって、熱放散器70のチューブ状の内壁のみに作用することを意味する。従って、放射による熱放散器70への入熱は実質的に外層72内で、よって、熱伝達による入熱とは異なる地点で起こる。その結果、一方では、内部は、SiO2堆積物を、落ちないように内部に留め、ガラス化するのに十分熱いままであり、他方では、内部の過熱が避けられる。
【0097】
以下の表は、テストパラメーターと、熱放散器がある場合(テスト1)と熱放散器がない場合(テスト2)のゾーンメルト法の結果を示す。
【0098】
【0099】
表における用語は以下の意味を有する:
ω1、ω2:剪断帯の両側における回転速度
Tmax:剪断帯の領域における最大温度
v:加熱バーナーと熱放散器の平行移動速度
B:剪断帯の幅の最大値
割れ:ゾーンメルト法完了後の割れの発生。