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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】伝動ベルト用組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20240117BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240117BHJP
   C08L 77/10 20060101ALI20240117BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20240117BHJP
   F16G 1/08 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
C08L23/08
C08K3/013
C08L77/10
C08K7/02
F16G1/08 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019197196
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2020094185
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2018223407
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 啓介
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄二
(72)【発明者】
【氏名】末利 優樹
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/152711(WO,A1)
【文献】特開2018-172553(JP,A)
【文献】特開2001-310951(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194371(WO,A1)
【文献】特開2012-214576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08J5
F16G1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン[A1]に由来する構造単位と、炭素数4~20のα-オレフィン[A2]に由来する構造単位と、非共役ポリエン[A3]に由来する構造単位とを有し、下記(1)~(3)および(4’)の要件を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100質量部と、
カーボンブラック(B)0.1~200質量部と
短繊維(C)と、
を含有し、
前記短繊維(C)の平均繊維長が1~20μmであり、
前記短繊維(C)の含有量は、前記共重合体(A)100質量部に対して、3~20質量部であり、
JIS Z3284に準拠し、温度25℃、Immersion speed:120mm/min、Preload:600gf、Test speed:120mm/min、Press time:60sの条件で測定したときのプローブタック試験のピーク値が394gf以上である、伝動ベルト用組成物。
(1)エチレン[A1]に由来する構造単位と、炭素数4~20のα-オレフィン[A2]に由来する構造単位とのモル比〔[A1]/[A2]〕が、40/60~90/10であり、
(2)非共役ポリエン[A3]に由来する構造単位の含有割合が、[A1]、[A2]および[A3]に由来する構造単位の合計を100モル%として、0.1~6.0モル%であり、
(3)下記式(i)で表されるB値が、1.20以上であり、
B値=([EX]+2[Y])/〔2×[E]×([X]+[Y])〕・・・(i)
[ここで[E]、[X]および[Y]は、それぞれ、エチレン[A1]、炭素数4~20のα-オレフィン[A2]、および非共役ポリエン[A3]に由来する構造単位のモル分率を示し、[EX]はエチレン[A1]-炭素数4~20のα-オレフィン[A2]ダイアッド連鎖分率を示す。]
(4’)125℃におけるムーニー粘度ML (1+4) 125℃が、3~70である。
【請求項2】
前記共重合体(A)における炭素数4~20のα-オレフィン[A2]に由来する構造単位が、1-ブテンに由来する構造単位を含む請求項1に記載の伝動ベルト用組成物。
【請求項3】
前記短繊維(C)が、アラミド繊維である請求項1または2に記載の伝動ベルト用組成物。
【請求項4】
前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)が、下記(4)の要件をさらに満たす請求項1~のいずれか1項に記載の伝動ベルト用組成物。
(4)100℃におけるムーニー粘度ML(1+4)100℃が、5~150である。
【請求項5】
2つ以上のエチレン性二重結合を有する架橋助剤をさらに含有する請求項1~のいずれか1項に記載の伝動ベルト用組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の伝動ベルト用組成物から形成された成形体。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の伝動ベルト用組成物から形成された架橋成形体。
【請求項8】
請求項に記載の成形体または請求項に記載の架橋成形体を有する伝動ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動ベルト用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
伝動ベルトは、自動車用、自動二輪用および一般産業機械用に広く用いられている。伝動ベルトには、高ゴム弾性および耐摩耗性が必要とされている。前記性質を満たす伝動ベルトを製造するため、クロロプレンゴムが通常用いられている。ここで、耐熱性や耐寒性の改良、および軽量化の要求から、クロロプレンゴムにかえてエチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体ゴムを用いることが検討されている(例えば、特許文献1~2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-310951号公報
【文献】特開2012-215212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの検討によれば、エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体を用いた場合は、当該共重合体を含有する伝動ベルト用組成物から形成されたシート間の粘着力(タック)が不足し、したがって成形加工が困難となる傾向にある。本発明の課題は、粘着力が高く、したがって成形加工性に優れた伝動ベルト用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、下記構成の伝動ベルト用組成物により前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、例えば以下の[1]~[9]に関する。
【0006】
[1]エチレン[A1]に由来する構造単位と、炭素数4~20のα-オレフィン[A2]に由来する構造単位と、非共役ポリエン[A3]に由来する構造単位とを有し、下記(1)~(3)の要件を満たすエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100質量部と、カーボンブラック(B)0.1~200質量部とを含有する伝動ベルト用組成物。
(1)エチレン[A1]に由来する構造単位と、炭素数4~20のα-オレフィン[A2]に由来する構造単位とのモル比〔[A1]/[A2]〕が、40/60~90/10であり、
(2)非共役ポリエン[A3]に由来する構造単位の含有割合が、[A1]、[A2]および[A3]に由来する構造単位の合計を100モル%として、0.1~6.0モル%であり、
(3)下記式(i)で表されるB値が、1.20以上である。
B値=([EX]+2[Y])/〔2×[E]×([X]+[Y])〕・・・(i)
[ここで[E]、[X]および[Y]は、それぞれ、エチレン[A1]、炭素数4~20のα-オレフィン[A2]、および非共役ポリエン[A3]に由来する構造単位のモル分率を示し、[EX]はエチレン[A1]-炭素数4~20のα-オレフィン[A2]ダイアッド連鎖分率を示す。]
[2]前記共重合体(A)における炭素数4~20のα-オレフィン[A2]に由来する構造単位が、1-ブテンに由来する構造単位を含む前記[1]に記載の伝動ベルト用組成物。
[3]短繊維(C)をさらに含有し、前記短繊維(C)の含有量が、前記共重合体(A)100質量部に対して0.1~100質量部である前記[1]または[2]に記載の伝動ベルト用組成物。
[4]前記短繊維(C)が、アラミド繊維である前記[3]に記載の伝動ベルト用組成物。
[5]前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)が、下記(4)の要件をさらに満たす前記[1]~[4]のいずれかに記載の伝動ベルト用組成物。
(4)100℃におけるムーニー粘度ML(1+4)100℃が、5~150である。
[6]2つ以上のエチレン性二重結合を有する架橋助剤をさらに含有する前記[1]~[5]のいずれかに記載の伝動ベルト用組成物。
[7]前記[1]~[6]のいずれかに記載の伝動ベルト用組成物から形成された成形体。
[8]前記[1]~[6]のいずれかに記載の伝動ベルト用組成物から形成された架橋成形体。
[9]前記[7]に記載の成形体または前記[8]に記載の架橋成形体を有する伝動ベルト。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粘着力が高く、したがって成形加工性に優れた伝動ベルト用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について詳細に説明する。
[伝動ベルト用組成物]
本発明の伝動ベルト用組成物(以下「本発明の組成物」ともいう)は、以下に説明するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、カーボンブラック(B)とを含有する。本発明の組成物は、短繊維(C)をさらに含有することが好ましい。
【0009】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)>
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、エチレン[A1]に由来する構造単位と、炭素数4~20のα-オレフィン[A2]に由来する構造単位と、非共役ポリエン[A3]に由来する構造単位とを有し、下記(1)~(3)の要件を満たす。以下、前記(A)を「成分(A)」ともいう。成分(A)は、一実施態様において、後述する要件(4)または(4')を満たすことが好ましい。
【0010】
なお、成分(A)は、エチレン[A1]に由来する構造単位と、少なくとも1種類の炭素数4~20のα-オレフィン[A2]に由来する構造単位と、少なくとも1種類の非共役ポリエン[A3]に由来する構造単位とを有することができる。
(1)エチレン[A1]に由来する構造単位と、炭素数4~20のα-オレフィン[A2]に由来する構造単位とのモル比〔[A1]/[A2]〕が、40/60~90/10である。
(2)非共役ポリエン[A3]に由来する構造単位の含有割合が、[A1]、[A2]および[A3]に由来する構造単位の合計を100モル%として、0.1~6.0モル%である。
(3)下記式(i)で表されるB値が、1.20以上である。
B値=([EX]+2[Y])/〔2×[E]×([X]+[Y])〕・・(i)
ここで[E]、[X]および[Y]は、それぞれ、エチレン[A1]、炭素数4~20のα-オレフィン[A2]、および非共役ポリエン[A3]に由来する構造単位のモル分率を示し、[EX]はエチレン[A1]-炭素数4~20のα-オレフィン[A2]ダイアッド連鎖分率を示す。
【0011】
炭素数4~20のα-オレフィン[A2]としては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ノナデセン、1-エイコセン等の直鎖状α-オレフィン;4-メチル-1-ペンテン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等の側鎖含有α-オレフィンが挙げられる。これらの中でも、炭素数4~10のα-オレフィンが好ましく、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンがより好ましく、1-ブテンがさらに好ましい。
【0012】
炭素数4~20のα-オレフィン[A2]は単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
α-オレフィンがプロピレンであるエチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体は、得られる組成物同士の粘着力が低く、したがって当該組成物の、成形体および架橋成形体(以下、これらをあわせて「(架橋)成形体」ともいう)への成形性が低い傾向にある。また、この共重合体は、短繊維(C)との混練性も低い傾向にある。
【0013】
一方、本発明では、ゴム成分として成分(A)を少なくとも用いる。成分(A)は、炭素数4~20のα-オレフィン[A2]に由来する構造単位を有しているので、得られる組成物同士の粘着力が高くなったと推察され、したがって当該組成物の、(架橋)成形体、特に伝動ベルトへの成形性が高い。また、成分(A)は、短繊維(C)との混練性にも優れている。
【0014】
非共役ポリエン[A3]としては、例えば、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン等の環状非共役ジエン;2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,5-ノルボルナジエン、1,3,7-オクタトリエン、1,4,9-デカトリエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン等のトリエンが挙げられる。これらの中でも、1,4-ヘキサジエン等の鎖状非共役ジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン等の環状非共役ジエンが好ましく、環状非共役ジエンがより好ましく、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネンがさらに好ましい。
【0015】
非共役ポリエン[A3]は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
成分(A)としては、例えば、エチレン・1-ブテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ペンテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ヘキセン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-へプテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-オクテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ノネン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-デセン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン・1,4-ヘキサジエン共重合体、エチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ペンテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ヘキセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-へプテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ノネン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-デセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ペンテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ヘキセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-へプテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ノネン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-デセン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体、エチレン・1-ブテン・1-オクテン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネン共重合体が挙げられる。
【0016】
《要件(1)》
成分(A)は、(1)エチレン[A1]に由来する構造単位と、炭素数4~20のα-オレフィン[A2]に由来する構造単位とのモル比〔[A1]/[A2]〕が、40/60~90/10である。モル比が前記範囲にある成分(A)は、低温でのゴム弾性と常温での引張強度とのバランスに優れる。
【0017】
[A1]/[A2]の下限は、好ましくは45/55、より好ましくは50/50、特に好ましくは55/45である。また、[A1]/[A2]の上限は、好ましくは80/20、より好ましくは75/25、さらに好ましくは70/30である。
【0018】
《要件(2)》
成分(A)は、(2)非共役ポリエン[A3]に由来する構造単位の含有割合が、前記[A1]に由来する構造単位、前記[A2]に由来する構造単位および前記[A3]に由来する構造単位の合計を100モル%として、0.1~6.0モル%である。この含有割合が前記範囲にある成分(A)は、充分な架橋性および柔軟性を有する。
【0019】
前記[A3]に由来する構造単位の含有割合の下限は、好ましくは0.5モル%である。前記[A3]に由来する構造単位の含有割合の上限は、好ましくは4.0モル%、より好ましくは3.5モル%、さらに好ましくは3.0モル%である。
【0020】
《要件(3)》
成分(A)は、(3)前記式(i)で表されるB値が、1.20以上、好ましくは1.20~1.80、より好ましくは1.22~1.40である。
【0021】
B値が1.20未満のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、低温での圧縮永久ひずみが大きくなり、低温でのゴム弾性と常温での引張強度とのバランスに優れないおそれがある。B値が1.20以上である成分(A)は、共重合体を構成するモノマー単位の交互性が高く結晶性が低いため、得られる組成物の加工性が向上する。
【0022】
なお、B値は、共重合体中における共重合モノマー連鎖分布のランダム性を示す指標であり、前記式(i)中の[E]、[X]、[Y]、[EX]は、13C-NMRスペクトルを測定し、J. C.Randall [Macromolecules, 15, 353 (1982)]、J. Ray [Macromolecules, 10, 773 (1977)]らの報告に基づいて求めることができる。一方、前記(1)~(2)における、エチレン[A1]に由来する構造単位、炭素数4~20のα-オレフィン[A2]に由来する構造単位および非共役ポリエン[A3]に由来する構造単位のモル量は、1H-NMRスペクトルメーターによる強度測定によって求めることができる。
【0023】
《要件(4)》
成分(A)は、(4)100℃におけるムーニー粘度ML(1+4)100℃が、好ましくは5~150、より好ましくは5~100、さらに好ましくは5~50である。ムーニー粘度が前記範囲にある成分(A)は、加工性および流動性が良好であり、また良好な後処理品質(リボンハンドリング性)を示すと共に優れたゴム物性を有する。
【0024】
《要件(4')》
成分(A)は、(4')125℃におけるムーニー粘度ML(1+4)125℃が、好ましくは3~100、より好ましくは3~70、さらに好ましくは3~30である。ムーニー粘度が前記範囲にある成分(A)は、加工性および流動性が良好であり、また良好な後処理品質(リボンハンドリング性)を示すと共に優れたゴム物性を有する。
【0025】
本発明の組成物は、1種の成分(A)を含有してもよく、2種以上の成分(A)を含有してもよい。
本発明の組成物中の成分(A)の含有割合は、通常は20質量%以上、好ましくは30~90質量%である。
【0026】
《成分(A)の製造方法》
成分(A)は、メタロセン触媒を用いた従来公知の製造方法で得ることができる。メタロセン触媒および当該触媒を用いた製造方法としては、例えば、国際公開第2015/122415号、特に当該公報の段落[0249]~[0320]に記載の例を採用することができる。
【0027】
具体的には、
下記式(a)で表される遷移金属化合物(a)と、
有機金属化合物(b-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)、および遷移金属化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物(b-3)から選ばれる少なくとも1種の化合物(b)と
を含むオレフィン重合用触媒の存在下において、エチレン[A1]と炭素数4~20のα-オレフィン[A2]と非共役ポリエン[A3]とを共重合することにより、成分(A)を得ることができる。
【0028】
【化1】
【0029】
上記式(a)について説明する。
Mは、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子である。
Rは、それぞれ独立に、アリール基の水素原子の一つ以上をハメット則の置換基定数σが-0.2以下の電子供与性基で置換してなる置換アリール基である。前記置換アリール基が電子供与性基を複数個有する場合、それぞれの電子供与性基は同一でも異なっていてもよい。
【0030】
Qは、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、アニオン配位子および孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一のまたは異なる組合せで選ばれ、好ましくはハロゲン原子である。
【0031】
jは、1~4の整数であり、好ましくは2である。
Rにおけるアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、テトラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、インデニル基、アズレニル基、ピロリル基、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0032】
ハメット則の置換基定数σが-0.2以下の電子供与性基は、以下のように定義および例示される。ハメット則はベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L. P. Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則で求められた置換基定数にはベンゼン環のパラ位に置換した際のσpおよびメタ位に置換した際のσmがあり、これらの値は多くの一般的な文献に見出すことができる。例えば、HanschおよびTaftによる文献[Chem. Rev., 91, 165 (1991)]には非常に広範な置換基について詳細な記載がなされている。ただし、これらの文献に記載されているσpおよびσmは、同じ置換基であっても文献によって値が僅かに異なる場合がある。本明細書ではこのような状況によって生じる混乱を回避するために、記載のある限りの置換基においてはHanschおよびTaftによる文献[Chem. Rev., 91, 165 (1991)]のTable 1(168-175頁)に記載された値をハメット則の置換基定数σpおよびσmと定義する。本明細書においてハメット則の置換基定数σが-0.2以下の電子供与性基とは、電子供与性基がフェニル基のパラ位(4位)に置換している場合はσpが-0.2以下の電子供与性基であり、フェニル基のメタ位(3位)に置換している場合はσmが-0.2以下の電子供与性基である。また、電子供与性基がフェニル基のオルト位(2位)に置換している場合、またはフェニル基以外のアリール基の任意の位置に置換している場合は、σpが-0.2以下の電子供与性基である。
【0033】
ハメット則の置換基定数σpまたはσmが-0.2以下の電子供与性基としては、例えば、p-アミノ基(4-アミノ基)、p-ジメチルアミノ基(4-ジメチルアミノ基)、p-ジエチルアミノ基(4-ジエチルアミノ基)、m-ジエチルアミノ基(3-ジエチルアミノ基)等の窒素含有基;p-メトキシ基(4-メトキシ基)、p-エトキシ基(4-エトキシ基)等の酸素含有基;p-t-ブチル基(4-t-ブチル基)等の三級炭化水素基;p-トリメチルシロキシ基(4-トリメチルシロキシ基)等のケイ素含有基が挙げられる。
【0034】
Rは、それぞれ独立に、前記電子供与性基としての窒素含有基および酸素含有基から選ばれる基を含む置換フェニル基であることが好ましい。
前記置換アリール基は、ハメット則の置換基定数σが-0.2以下の電子供与性基以外の、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、酸素含有基、ハロゲン原子およびハロゲン含有基から選ばれる他の置換基を有していてもよい。前記置換アリール基が他の置換基を複数個有する場合、それぞれの他の置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0035】
一つの置換アリール基に含まれるハメット則の置換基定数σが-0.2以下の電子供与性基および他の置換基の各々のハメット則の置換基定数σの総和は-0.15以下であることが好ましい。このような置換アリール基としては、例えば、m,p-ジメトキシフェニル基(3,4-ジメトキシフェニル基)、p-(ジメチルアミノ)-m-メトキシフェニル基(4-(ジメチルアミノ)-3-メトキシフェニル基)、p-(ジメチルアミノ)-m-メチルフェニル基(4-(ジメチルアミノ)-3-メチルフェニル基)、p-メトキシ-m-メチルフェニル基(4-メトキシ-3-メチルフェニル基)、p-メトキシ-m,m-ジメチルフェニル基(4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル基)が挙げられる。
【0036】
Qにおいて、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示され;炭素数1~20の炭化水素基としては、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~10のシクロアルキル基が例示され;アニオン配位子としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、カルボキシレート基、スルホネート基が例示され;孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン等の有機リン化合物、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル化合物が例示される。
【0037】
遷移金属化合物(a)としては、例えば、[ビス(4-メトキシフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-2,3,6,7-テトラメチルフルオレニル)]ハフニウムジクロリドが挙げられる。
【0038】
有機金属化合物(b-1)(ただし、有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)を除く)としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウム、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0039】
有機アルミニウムオキシ化合物(b-2)としては、例えば、従来公知のアルミノキサンが挙げられる。
遷移金属化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物(b-3)としては、例えば、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP-5321106号、国際公開第2015/122415号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物が挙げられる。
【0040】
オレフィン重合用触媒は、必要に応じて担体(c)を含むことができる。担体(c)は、無機化合物または有機化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
【0041】
重合方法としては、溶液(溶解)重合、懸濁重合等の液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施可能である。重合温度は、通常は-50~+200℃、好ましくは0~200℃である。重合圧力は、通常は常圧~10MPaゲージ圧、好ましくは常圧~5MPaゲージ圧である。重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0042】
<カーボンブラック(B)>
カーボンブラック(B)は、例えば、得られる(架橋)成形体の機械的強度、モジュラス、耐摩耗性の向上に寄与する成分である。
【0043】
カーボンブラック(B)としては、例えば、SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MTが挙げられる。カーボンブラックの表面はシランカップリング剤で処理されていてもよい。市販されているカーボンブラックとしては、例えば、「旭#55G」、「旭#50HG」、「旭#60G」、「旭#60UG」(商品名、旭カーボン社製)、「シーストV」、「シーストSO」(商品名、東海カーボン社製)が挙げられる。
【0044】
本発明の組成物は、1種のカーボンブラック(B)を含有してもよく、2種以上のカーボンブラック(B)を含有してもよい。
本発明の組成物におけるカーボンブラック(B)の含有量は、成分(A)100質量部に対して、0.1~200質量部であり、好ましくは10~200質量部、より好ましくは20~100質量部である。このような態様であると、得られる(架橋)成形体の機械的強度と、本発明の組成物の加工性との観点から好ましい。
【0045】
<短繊維(C)>
本発明の組成物は、短繊維(C)をさらに含有することが好ましい。短繊維(C)を用いることにより、前記組成物から形成される(架橋)成形体のモジュラス、機械的強度を改善することができる。成分(A)は短繊維(C)との混練性にも優れているので、本発明の組成物は、短繊維(C)を含有したとしても、成形加工性に優れる傾向にある。
【0046】
短繊維(C)としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、レーヨン、ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、フッ素系ポリマー等の合成樹脂からなる繊維;綿、木材セルロース繊維等の天然繊維が挙げられる。これらの中でも、合成樹脂からなる短繊維が好ましく、ポリアミドからなる短繊維がより好ましい。短繊維(C)は、通常、成分(A)から形成された短繊維ではない。
【0047】
ポリアミドとしては、例えば、ポリカプラミド、ポリ-ω-アミノヘプタン酸、ポリ-ω-アミノノナン酸、ポリウンデカンアミド、ポリエチレンジアミンアジパミド、ポリテトラメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカミド、ポリオクタメチレンアジパミド、ポリデカメチレンアジパミド等の脂肪族ポリアミド;ポリパラフェニレンテレフタラミド(商品名「ケブラー」、東レ・デュポン社製)、ポリメタフェニレンイソフタラミド、コポリパラフェニレン-3,4'-オキシジフェニレンテレフタラミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンピメラミド、ポリメタキシリレンアゼラミド、ポリパラキシリレンアゼラミド、ポリパラキシリレンデカナミド等の芳香族ポリアミド(アラミド)が挙げられる。
【0048】
短繊維(C)としては、得られる(架橋)成形体の引張応力および引裂強さをより向上させるという観点から、芳香族ポリアミドからなる短繊維、すなわちアラミド短繊維が好ましく、ポリパラフェニレンテレフタラミド短繊維、ポリメタフェニレンイソフタラミド短繊維、コポリパラフェニレン-3,4'-オキシジフェニレンテレフタラミド短繊維がより好ましい。
【0049】
短繊維(C)の平均繊維長は、通常は0.1~50mm、好ましくは0.5~10mm、より好ましくは0.5~6mmである。短繊維(C)の繊維径は、通常は0.1~100μm、好ましくは0.1~25μm、より好ましくは1~20μmである。
【0050】
短繊維(C)の平均繊維長は、例えば、光学顕微鏡により短繊維の写真撮影を行い、得られた写真において無作為に選んだ100個の短繊維の長さを測定し、これを算術平均することにより求めることができる。
【0051】
短繊維(C)は、チョップドファイバー(カットファイバー)状短繊維でも、フィブリルを有するパルプ状短繊維でもよい。
本発明の組成物は、1種の短繊維(C)を含有してもよく、2種以上の短繊維(C)を含有してもよい。
【0052】
本発明の組成物における短繊維(C)の含有量は、成分(A)100質量部に対して、通常は0.1~100質量部、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは3~20質量部である。このような態様であると、得られる(架橋)成形体のモジュラス、機械的強度の観点から好ましい。
【0053】
<その他の成分>
本発明の組成物は、架橋剤をさらに含有することが好ましい。本発明の組成物は、架橋助剤、軟化剤、無機充填剤、補強剤、老化防止剤、加工助剤、活性剤、吸湿剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤および増粘剤から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することができる。本発明の組成物は、成分(A)以外の他のポリマー、例えばエラストマーおよび/またはゴムをさらに含有することができる。以下に説明する各成分は、それぞれ1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0054】
《架橋剤》
架橋剤としては、ゴムを架橋する際に一般的に使用される架橋剤が挙げられ、例えば、有機過酸化物、硫黄系化合物、フェノール樹脂、ヒドロシリコーン系化合物、アミノ樹脂、キノンまたはその誘導体、アミン系化合物、アゾ系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物が挙げられる。これらの中でも、有機過酸化物、硫黄系化合物が好ましい。
【0055】
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイドが挙げられる。
【0056】
本発明の組成物において、架橋剤として有機過酸化物を用いる場合、有機過酸化物の含有量は、成分(A)および必要に応じて配合される架橋が必要な他のポリマー(ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は0.1~20質量部、好ましくは0.2~15質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部である。
【0057】
架橋剤として有機過酸化物を用いる場合、架橋助剤を併用することが好ましい。この場合、架橋助剤をさらに含有する本発明の組成物を用い、当該組成物に、架橋工程前に有機過酸化物を配合し、架橋工程を行ってもよい。
【0058】
架橋助剤としては、例えば、イオウ;p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム系架橋助剤;2つ以上のエチレン性二重結合を有する架橋助剤;マレイミド系架橋助剤;酸化亜鉛(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種(JIS規格(K-1410))、ハクスイテック社製)、酸化マグネシウム、亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業社製)などの酸化亜鉛)等の金属酸化物が挙げられ、2つ以上のエチレン性二重結合を有する架橋助剤が好ましい。
【0059】
2つ以上のエチレン性二重結合を有する架橋助剤中のエチレン性二重結合数は、好ましくは2~6、より好ましくは2~4である。前記架橋助剤を用いることにより、例えば共重合体(A)と短繊維(C)との間で良好にネットワークを形成することができると考えられる。2つ以上のエチレン性二重結合を有する架橋助剤としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系架橋助剤;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系架橋助剤;ジビニルベンゼン等のビニル系架橋助剤が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル系架橋助剤が好ましく、エチレングリコールジメタクリレートがより好ましい。
【0060】
本発明の組成物が架橋助剤を含有する場合、架橋助剤の含有量は、有機過酸化物1モルに対して、通常は0.5~10モル、好ましくは0.5~7モル、より好ましくは1~5モルである。
【0061】
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、その具体例としては、硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸セレンが挙げられる。
【0062】
本発明の組成物において、架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、硫黄系化合物の含有量は、成分(A)および必要に応じて配合される架橋が必要な他のポリマー(ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は0.3~10質量部、好ましくは0.5~7.0質量部、さらに好ましくは0.7~5.0質量部である。
【0063】
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、加硫促進剤を併用することが好ましい。加硫促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N'-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(4-モルホリノジチオ)ペンゾチアゾール)、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルフォリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤;アセトアルデヒド・アニリン縮合物、ブチルアルデヒド・アニリン縮合物等のアルデヒドアミン系加硫促進剤;2-メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系加硫促進剤;ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア等のチオウレア系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系加硫促進剤;エチレンチオ尿素(例えば、サンセラー22C(商品名;三新化学工業社製))、N,N'-ジエチルチオ尿素、N,N'-ジブチルチオ尿素等のチオウレア系加硫促進剤;ジブチルキサトゲン酸亜鉛等のザンテート系加硫促進剤;その他、亜鉛華が挙げられる。
【0064】
本発明の組成物が加硫促進剤を含有する場合、加硫促進剤の含有量は、成分(A)および必要に応じて配合される架橋が必要な他のポリマー(ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は0.1~20質量部、好ましくは0.2~15質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部である。
【0065】
加硫助剤は、架橋剤が硫黄系化合物である場合に好ましく用いることができ、例えば、酸化亜鉛(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種、ハクスイテック社製)、酸化マグネシウム、亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業社製)等の酸化亜鉛)が挙げられる。
【0066】
本発明の組成物が加硫助剤を含有する場合、加硫助剤の含有量は、成分(A)および必要に応じて配合される架橋が必要な他のポリマー(ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は1~20質量部である。
【0067】
《軟化剤》
軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸またはその塩;ナフテン酸、パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、炭化水素系合成潤滑油、トール油、サブ(ファクチス)が挙げられ、石油系軟化剤が好ましく、プロセスオイルがより好ましい。
【0068】
本発明の組成物が軟化剤を含有する場合、軟化剤の含有量は、成分(A)および必要に応じて配合される他のポリマー(エラストマー、ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は2~100質量部、好ましくは5~100質量部である。
【0069】
《無機充填剤》
無機充填剤としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレーが挙げられる。これらの中でも、重質炭酸カルシウムが好ましい。
【0070】
本発明の組成物が無機充填剤を含有する場合、無機充填剤の含有量は、成分(A)および必要に応じて配合される他のポリマー(エラストマー、ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は2~50質量部、好ましくは5~50質量部である。
【0071】
《補強剤》
補強剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、活性化炭酸カルシウム、微粉タルク、微分ケイ酸が挙げられ、ただし、前述したカーボンブラック(B)を除く。
【0072】
本発明の組成物が補強剤を含有する場合、補強剤の含有量は、成分(A)および必要に応じて配合される他のポリマー(エラストマー、ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は0.1~100質量部、好ましくは5~30質量部である。
【0073】
《老化防止剤(安定剤)》
本発明の組成物は、老化防止剤(安定剤)を含有することにより、当該組成物から形成される(架橋)成形体の寿命を長くすることができる。老化防止剤としては、例えば、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤が挙げられる。
【0074】
アミン系老化防止剤としては、例えば、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p―フェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤が挙げられる。フェノール系老化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]が挙げられる。イオウ系老化防止剤としては、例えば、ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイルイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートが挙げられる。
【0075】
本発明の組成物が老化防止剤を含有する場合、老化防止剤の含有量は、成分(A)および必要に応じて配合される他のポリマー(エラストマー、ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は0.3~10質量部、好ましくは0.5~7.0質量部である。
【0076】
《加工助剤》
加工助剤としては、一般的に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く用いることができる。加工助剤としては、例えば、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、エステル類が挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸が好ましい。
【0077】
本発明の組成物が加工助剤を含有する場合、加工助剤の含有量は、成分(A)および必要に応じて配合される他のポリマー(エラストマー、ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は10質量部以下、好ましくは8.0質量部以下である。
【0078】
《活性剤》
活性剤としては、例えば、ジ-n-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン等のアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルートメリレート、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の亜鉛化合物等の活性剤;過酸化亜鉛調整物;クタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0079】
本発明の組成物が活性剤を含有する場合、活性剤の含有量は、成分(A)および必要に応じて配合される他のポリマー(エラストマー、ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は0.2~10質量部、好ましくは0.3~5質量部である。
【0080】
《吸湿剤》
吸湿剤としては、例えば、酸化カルシウム、シリカゲル、硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、ホワイトカーボンが挙げられる。
本発明の組成物が吸湿剤を含有する場合、吸湿剤の含有量は、成分(A)および必要に応じて配合される他のポリマー(エラストマー、ゴム等)の合計100質量部に対して、通常は0.5~15質量部、好ましくは1.0~12質量部である。
【0081】
《他のポリマー》
本発明の組成物は、成分(A)以外の他のポリマーをさらに含有することができる。
架橋が必要な他のポリマーとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴムが挙げられる。
【0082】
架橋が不要な他のポリマーとしては、例えば、スチレンとブタジエンとのブロック共重合体(SBS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブチレン)-ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-ポリスチレン(SEPS)等のスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、塩ビ系エラストマー(TPVC)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、アミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、その他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等のエラストマーが挙げられる。
本発明の組成物が他のポリマーを含有する場合、他のポリマーの含有量は、成分(A)100質量部に対して、通常は100質量部以下、好ましくは80質量部以下である。
【0083】
<組成物の調製>
本発明の組成物は、成分(A)と、カーボンブラック(B)と、必要に応じて配合される短繊維(C)、その他の成分とを、例えば、ミキサー、ニーダー、ロール等の混練機を用いて所望の温度で混練することにより調製することができる。
【0084】
本発明の組成物の一実施態様は、例えば以下のように調製される。成分(A)と、カーボンブラック(B)と、必要に応じて短繊維(C)と、所定のその他の成分とを、混練機に投入して所定の加熱条件(例えば80~200℃で3~30分)で混練して均一化する(A練り)。なお、A練りでは、A練りの加熱温度まで加熱すると成分(A)を架橋させる、架橋剤等は投入されない。A練りで混練された混合物の温度を、次いで、架橋剤の架橋温度未満(例えば、130℃以下)まで下げた後、A練りで添加されなかった架橋剤等を前記混合物に添加し、所定の加熱条件(例えばロール温度30~80℃で1~30分間)でさらに混練して均一化し(B練り)、本発明の組成物を得ることができる。
【0085】
本発明の組成物は、架橋剤を配合する前の組成(A練り)において、125℃におけるムーニー粘度ML(1+4)が、通常は10~250、好ましくは10~100、より好ましくは10~50である。ムーニー粘度が前記範囲にある組成物は、良好な後処理品質を示すと共に優れたゴム物性を有する。
【0086】
[(架橋)成形体、伝動ベルト]
本発明の組成物から、(架橋)成形体を得ることができる。本発明の組成物は、例えば、押出成形、射出成形、プレス成形、カレンダー成形、トランスファー成形、発泡成形等の熱成形方法によって成形できる。本発明において、前記組成物の架橋温度は、通常は140℃以上、好ましくは150~220℃、より好ましくは160~200℃である。また、この架橋反応は、空気中で行うことができる。
【0087】
本発明では、前記(架橋)成形体は、伝動ベルトの構成部材として好適に用いることができる。例えば、本発明の組成物は、成形加工性に適した高い粘着力を有しており、ベルト加工性に優れている。また、本発明の組成物を用いることにより、高ゴム弾性、耐摩耗性、耐熱性および耐寒性に優れた、伝動ベルトの構成部材を製造することができる。
【0088】
本発明の伝動ベルトは、本発明の組成物から形成された(架橋)成形体を有する。
本発明の伝動ベルトとしては、例えば、Vベルト、Vリブドベルト等の摩擦伝動ベルト;タイミングベルト等のかみ合い伝動ベルトが挙げられる。伝動ベルトは、例えば、自動車用伝動ベルト、自動二輪用伝動ベルト、一般産業機械用伝動ベルトである。Vベルトとしては、例えば、ラップドベルト、ローエッジベルトが挙げられる。
【0089】
伝動ベルトの一実施形態は、例えば、心線が埋設された接着ゴム部を有しており、さらに、前記接着ゴム部の下面に形成された底ゴム部を有することができる。前記伝動ベルトは、必要に応じて、接着ゴム部上に形成された上部帆布、および/または底ゴム部下に形成された下部帆布を有することができる。本発明の組成物は、例えば、接着ゴム部および/または底ゴム部を形成するために好適に用いられる。具体的には、接着ゴム部および/または底ゴム部として、本発明の組成物から形成された架橋成形部が好適に用いられる。
【0090】
伝動ベルトの抗張部材である心線は、接着ゴム部において、ベルトの長手方向に延在する。心線としては、例えば、ポリエステル系コードが挙げられる。接着ゴム部は、心線を取り囲み、かつ心線に接着されている。一実施形態では、例えば、本発明の組成物を心線周りに配置して架橋することにより、心線に接着された接着ゴム部を形成することができる。帆布としては、例えば、綿、綿とポリエステルとの混紡からなるもの、綿とポリアミドとの混紡からなるものが挙げられる。
【実施例
【0091】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。特に言及しない限り「部」は「質量部」を表す。
[エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体の物性]
<エチレンに由来する構造単位、α-オレフィンに由来する構造単位、および非共役ポリエンに由来する構造単位のモル量>
前記モル量は、1H-NMRスペクトルメーターによる強度測定によって求めた。測定条件の詳細は、国際公開第2015/122415号に記載されている。
【0092】
<ムーニー粘度>
ムーニー粘度(ML(1+4)100℃、125℃)は、ムーニー粘度計(島津製作所社製SMV202型)を用いて、JIS K6300(1994)に準じて測定した。
【0093】
<B値>
o-ジクロロベンゼン-d4/ベンゼン-d6(4/1[v/v])を測定溶媒とし、測定温度120℃にて、13C-NMRスペクトル(100MHz、日本電子製ECX400P)を測定し、下記式(i)に基づき算出した。
B値=([EX]+2[Y])/〔2×[E]×([X]+[Y])〕・・・(i)
ここで[E]、[X]および[Y]は、それぞれ、エチレン[A1]、炭素数4~20のα-オレフィン[A2]、および非共役ポリエン[A3]に由来する構造単位のモル分率を示し、[EX]はエチレン[A1]-炭素数4~20のα-オレフィン[A2]ダイアッド連鎖分率を示す。
【0094】
[エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体]
国際公開第2015/122415号の[合成例C1]の記載に準じて、下記の物性を有するエチレン/1-ブテン/5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)共重合体を得た。以下、これを「EBDM-1」と記載する。
EBDM-1の構成および物性は、以下のとおりである。
エチレンに由来する構造単位:67.7モル%
1-ブテンに由来する構造単位:30.0モル%
ENBに由来する構造単位:2.3モル%
ムーニー粘度ML(1+4)100℃:30
ムーニー粘度ML(1+4)125℃:22
B値:1.3
【0095】
[実施例1]
MIXTRON BB MIXER(神戸製鋼所社製、BB-2型、容積1.7L、ローター2WH)を用いて、100部のEBDM-1に対して、架橋助剤としてZnO#1・酸化亜鉛2種(JIS規格(K-1410))を5部、加工助剤としてステアリン酸を1部、カーボンブラックとして旭#60UGを40部、シリカとしてシリカVN3を10部、老化防止剤としてサンダントMB(2-メルカプトベンゾイミダゾール)を4部、老化防止剤としてイルガノックス1010(ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート])を2部、軟化剤としてダイアナプロセスオイルPW-380(パラフィン系プロセスオイル)を10部の配合量で配合した後混練し、配合物1を得た。
【0096】
配合物1調製時の混練条件は、ローター回転数が40rpm、フローティングウェイト圧力が3kg/cm2、混練時間が5分間で行い、混練排出温度は144℃であった。
配合物1のムーニー粘度ML(1+4)125℃を、ムーニー粘度計(島津製作所社製SMV202型)を用いて、JIS K6300(1994)に準じて測定した。
【0097】
次いで、配合物1が温度40℃となったことを確認した後、6インチロールを用いて、配合物1に、架橋剤としてカヤクミルDCP-40C(ジクミルパーオキサイド40質量%)を6.8部の配合量で添加して混練し、配合物2を得た。
【0098】
配合物2調製時の混練条件は、ロール温度を前ロール/後ロール=50℃/50℃、ロール周速さを前ロール/後ロール=18rpm/15rpm、ロール間隙を3mmとして、混練時間8分間で分出しし、配合物2を得た。
【0099】
配合物2に対して、プレス成形機を用いて170℃で15分間プレス処理を行って、厚さ2mmの架橋シートを作製した。得られた架橋シートについて、後述する硬度試験、引張試験、耐熱老化性試験およびゲーマン捻り試験を行った。
【0100】
配合物2に対して、円柱状の金型がセットされたプレス成形機を用いて170℃で20分間プレス処理を行って、厚さ12.7mm、直径29mmの直円柱形の試験片を作製し、圧縮永久歪み(CS)測定用試験片を得た。
【0101】
[実施例2~3、比較例1~3]
表2に記載した組成および硬化系に基づいたこと以外は実施例1と同様に行った。
実施例および比較例で用いた材料を以下の表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
[比重]
原料ポリマーまたは配合物1(A練り)を1g切り取り、試験片を作製した。試験片を25℃雰囲気下で自動比重計(東洋精機製作所製:M-1型)に取り付け、空気中および純水中の質量の差から比重測定を行った。表2中におけるraw polymerはクロロプレンゴム、2060MまたはEBDM-1(原料ポリマー)を指し、compoundは配合物1を指す。
【0104】
[プローブタック試験]
プローブタックは、配合物1に対して、JIS Z3284に準拠しRHESCA社製 TAC-IIを用いて測定した。条件は温度25℃、Immersion speed:120mm/min、Preload:600gf、Test speed:120mm/min、Press time:60sとした。
【0105】
[コンパウンド同士の粘着性]
配合物1(A練り)に対して、50トンプレス成形機を用いて190℃で10分間プレス処理を行って、厚さ2mmのシートを作製した。前記シート2枚を貼り合わせ、軽く手で圧をかけた。貼り合わせた2枚のシートを手で剥がしたときの状況を以下の通り分類した。
【0106】
<評価>
◎:手で剥がそうとしても剥がれず基材破壊する。
〇:手で剥がそうとしても剥がれづらいが粘着面で剥がれる。
△:剥がそうとした際に手に圧を感じるが剥がれる。
×:剥がそうとした際に手にほぼ圧を感じず剥がれる。
【0107】
[硬度試験(Durometer-A)]
厚さ2mmの前記架橋シートの平らな部分を重ねて厚さ12mmのシートとし、JIS K6253に従い、硬度(JIS-A)を測定した。
【0108】
[引張試験:モジュラス、引張破断点応力、引張破断点伸び]
厚さ2mmの前記架橋シートを打抜いてJIS K6251(1993)に記載されている3号形ダンベル試験片を作製し、この試験片を用いてJIS K6251第3項に規定される方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、伸び率が25%であるときの引張応力(25%モジュラス(M25))、引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)を測定した。
【0109】
[圧縮永久歪み試験]
圧縮永久歪み(CS)測定用試験片について、JIS K6262(1997)に従って、-20℃×22時間処理後または180℃×70時間処理後の圧縮永久歪みを測定した。圧縮永久歪みは小さいことが望ましい。
【0110】
[耐熱性試験(耐熱老化性試験)]
厚さ2mmの前記架橋シートを、JIS K6257に従い、180℃で70時間保持する熱老化試験を行った。熱老化試験後のシートの硬度、TBおよびEBを、前記硬度試験および引張試験の項目と同様の方法で測定した。
熱老化試験前後の硬度の差より、AH(Duro-A)を求め、熱老化試験前後のTBおよびEBから、熱老化試験前の値に対する試験後の変化率をそれぞれ、Ac(TB)、Ac(EB)として求めた。
【0111】
[ゲーマン捻り試験(低温捻り試験)]
低温捻り試験は、JIS K6261(1993)に従って、ゲーマン捻り試験機を用いて、厚さ2mmの前記架橋シートのT2(℃)、T5(℃)、T10(℃)およびT100(℃)を測定した。これらの温度は、架橋ゴムの低温柔軟性の指標となる。例えばT2が低いほど、低温柔軟性が良好である。
【0112】
【表2】