(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】チップ形電流ヒューズおよびチップ形電流ヒューズの実装構造
(51)【国際特許分類】
H01H 85/045 20060101AFI20240117BHJP
H01H 85/18 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
H01H85/045 B
H01H85/18
(21)【出願番号】P 2019219015
(22)【出願日】2019-12-03
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅司
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-273541(JP,A)
【文献】特表2019-533892(JP,A)
【文献】特開2004-200506(JP,A)
【文献】特開平8-222117(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125461(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 69/02
H01H 85/00 - 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に開口部を有する
凹部が設けられた有底形状のケース本体と、前記開口部を蓋閉するように前記
凹部に嵌め込まれて直方体形状のケーシングを形成する
板状の蓋体と、前記ケーシングの内部に配置されたヒューズエレメントと、前記ヒューズエレメントに接続されて前記ケーシングの両端面に露出する一対の電極と、を備え、
前記ケース本体と前記蓋体とが少なくとも長手方向の両端部どうしを接着することにより接合・一体化されていると共に、
前記凹部の内壁面と前記蓋体の外側面との間に前記ケーシングの内部と外部を連通する隙間が確保されており、前記一対の電極が前記蓋体の長手方向の端面から表面に亘って配置されていることを特徴とするチップ形電流ヒューズ。
【請求項2】
請求項1に記載されたチップ形電流ヒューズにおいて、
前記凹部の長手方向の両端部は幅狭な切欠き部となっており、
前記蓋体は、平面視が長方形状の幅広部と、前記幅広部の両端から外側へ突出する一対の幅狭部とからなり、
前記切欠き部と前記幅狭部だけを接着することにより、前記ケース本体と前記蓋体の他の部分に前記隙間が確保されていることを特徴とするチップ形電流ヒューズ。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたチップ形電流ヒューズにおいて、
前記ヒューズエレメントと前記一対の電極が長尺状の金属板に一体形成されており、前記一対の電極は該金属板の長手方向両端部に折曲形成された断面L字状の部位であることを特徴とするチップ形電流ヒューズ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載されたチップ形電流ヒューズにおいて、
前記ケーシングの内部に前記ヒューズエレメントを挟持する一対の消弧体が配置されており、該消弧体は低融点ガラスを焼結させた板状部材であることを特徴とするチップ形電流ヒューズ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載されたチップ形電流ヒューズが、前記蓋体の表面を下に向けた姿勢で回路基板上に搭載されていると共に、前記電極が前記回路基板に設けられたランドに半田接続されていることを特徴とするチップ形電流ヒューズの実装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面実装タイプのチップ形電流ヒューズおよびチップ形電流ヒューズの実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のチップ形電流ヒューズの一例として、一面に開口部を有する有底形状のケース本体と、開口部を蓋閉するようにケース本体に組み合わされて直方体形状のケーシングを形成する蓋体と、ケーシングの内部の中空部分に張架されたヒューズ線と、ケーシングの両端部に嵌着されてヒューズ線に接続する一対の金属キャップとを備えたチップ形電流ヒューズが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたチップ形電流ヒューズでは、ケース本体の両端面に凹状部が形成されていると共に、蓋体の両端部に凹状部に対応する凸状部が形成されおり、蓋体の側端面に接着剤を塗布して凸状部を凹状部に差し込むことにより、ケース本体と蓋体が一体化されてケーシングを形成するようになっている。
【0004】
このように構成されたチップ形電流ヒューズは、一対の金属キャップを回路パターンのランドに半田付けすることで回路基板上に面実装され、一対の金属キャップに所定の過電流が流れたとき、ヒューズ線が発熱して溶断することにより、このチップ形電流ヒューズに接続された各種電子機器を保護するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたチップ形電流ヒューズでは、ヒューズ線に過電流が流れて溶断した後に、再び高電圧が印加されるとアーク放電を起こして再接続してしまう虞がある。そこで、ヒューズ線が収容されているケーシングの中空部分に珪砂等の消弧剤を充填し、この消弧剤を用いてアーク放電の拡がりを遮断することが考えられるが、チップ形電流ヒューズの小型化に伴ってケーシングの中空部分の容積が小さくなると、中空部分に充填された消弧剤によってアーク放電の発生を抑制することが困難となる。その結果、ヒューズ線を収容している中空部分の内圧が高くなり、ケーシングの破壊や消弧剤の飛散を引き起こすことが懸念される。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、第1の目的は、ヒューズエレメントの溶断時にケーシングが破壊しないように抑制可能なチップ形電流ヒューズを提供することにあり、第2の目的は、そのようなチップ形電流ヒューズの実装構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の目的を達成するために、本発明のチップ形電流ヒューズは、一面に開口部を有する凹部が設けられた有底形状のケース本体と、前記開口部を蓋閉するように前記凹部に嵌め込まれて直方体形状のケーシングを形成する板状の蓋体と、前記ケーシングの内部に配置されたヒューズエレメントと、前記ヒューズエレメントに接続されて前記ケーシングの両端面に露出する一対の電極と、を備え、前記ケース本体と前記蓋体とが少なくとも長手方向の両端部どうしを接着することにより接合・一体化されていると共に、前記凹部の内壁面と前記蓋体の外側面との間に前記ケーシングの内部と外部を連通する隙間が確保されており、前記一対の電極が前記蓋体の長手方向の端面から表面に亘って配置されていることを特徴としている。
【0009】
このように構成されたチップ形電流ヒューズでは、ケース本体の凹部に板状の蓋体を嵌め込んで形成されたケーシングの内部にヒューズエレメントが配置されており、このヒューズエレメントに電流が流れて溶断したとき、アーク放電の熱などによってケーシングの内部に高圧ガスが発生したとしても、当該ガスを凹部の内壁面と蓋体の外側面との間に確保された隙間から外部に逃がすことができるため、ケーシングが破壊してしまうことを防止できる。
【0010】
しかも、ケーシングの両端面に露出する一対の電極が蓋体の長手方向の端面から表面に亘って配置されており、これら電極を回路基板のランドに半田付けした実装状態において、蓋体が回路基板に近接対向する姿勢で保持されることになるため、ヒューズエレメントの溶断時に蓋体がケーシングの内圧を受けたとしても、蓋体のケース本体から外れる方向の動きが回路基板によって規制され、この点からもケーシングの破壊を防止することができる。
【0011】
この場合において、蓋体に形成した微細なスリットや貫通孔などによって前記隙間を確保するようにしても良いが、凹部の長手方向の両端部が幅狭な切欠き部となっていると共に、蓋体が、平面視を長方形状とする幅広部と、幅広部の両端から外側へ突出する一対の幅狭部とからなり、これら凹部の切欠き部と蓋体の幅狭部だけを接着することにより、この接着箇所を除くケース本体と蓋体の非接着部分に隙間が確保されるようにすると、蓋体を容易に製造することができて好ましい。
【0012】
また、上記構成のチップ形電流ヒューズにおいて、ヒューズエレメントと一対の電極は溶接等を用いて接合・一体化したものでも良いが、ヒューズエレメントと一対の電極が長尺状の金属板に一体形成されており、一対の電極が該金属板の長手方向両端部に折曲形成された断面L字状の部位であると、ヒューズエレメントと電極を接合するための工程が不要になるだけでなく、ヒューズエレメントと電極の接合部が安定するため、実装時の熱や外部環境の熱衝撃等によって接合部が不用意に断線してしまうことがなくなる。
【0013】
また、上記構成のチップ形電流ヒューズにおいて、ケーシングの内部にヒューズエレメントを挟持する一対の消弧体が配置されており、これら消弧体が低融点ガラスを焼結させた板状部材であると、粒状の消弧剤をケーシングの内部に充填する場合のように、製造途中で消弧剤が飛散することがなくなるため、消弧体の取り扱いが容易になって組立作業性を向上させることができる。
【0014】
また、上記第2の目的を達成するために、本発明によるチップ形電流ヒューズの実装構造は、上記構成のチップ形電流ヒューズが、前記蓋体の表面を下に向けた姿勢で回路基板上に搭載されていると共に、前記電極が前記回路基板に設けられたランドに半田接続されていることを特徴としている。このように構成されたチップ形電流ヒューズの実装構造では、チップ形電流ヒューズが蓋体を回路基板に近接対向する姿勢で実装されているため、ヒューズエレメントの溶断時に蓋体がケーシングの内圧を受けたとしても、蓋体のケース本体から外れる方向への動きが回路基板によって規制され、高圧ガスが周囲に飛散してしまうことを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヒューズエレメントの溶断時にケーシングが破壊しないように抑制可能なチップ形電流ヒューズ、および、そのようなチップ形電流ヒューズの実装構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態例に係るチップ形電流ヒューズの外観斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】該チップ形電流ヒューズの分解斜視図である。
【
図5】該チップ形電流ヒューズを回路基板に実装した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明すると、
図1は本発明の実施形態例に係るチップ形電流ヒューズの外観斜視図、
図2は
図1のII-II線に沿う断面図、
図3は
図1のIII-III線に沿う断面図、
図4は該チップ形電流ヒューズの分解斜視図である。
【0018】
図1~
図4に示すように、本実施形態例に係るチップ形電流ヒューズ10は、一面を開口した有底形状のケース本体1と、ケース本体1に組み合わされて直方体形状のケーシング3を形成する蓋体2と、ケーシング3の内部に配置されたヒューズエレメント4と、ヒューズエレメント4に一体形成されてケーシング3の両端面に露出する一対の電極5と、ケーシング3の内部に配置されてヒューズエレメント4を挟持する一対の消弧体6,7と、によって主として構成されている。
【0019】
ケース本体1はセラミック焼結体などの線膨張係数が低くて耐熱衝撃性の高い材料からなり、このケース本体1は、ヒューズエレメント4を収容するための凹部1aと、凹部1aの長手方向両側部に連続する切欠き部1bとを有している。これら凹部1aと切欠き部1bの上面は開放されており、切欠き部1bは凹部1aに比べて幅狭に設定されている。なお、凹部1aの底面は切欠き部1bの底面に対して低い位置にあり、この段差部分が一方の消弧体6の収納スペースとなっている。
【0020】
蓋体2もセラミック焼結体などの線膨張係数が低くて耐熱衝撃性の高い材料からなり、この蓋体2は、平面視が長方形状の幅広部2aと、幅広部2aの長手方向両端部から外側へ突出する一対の幅狭部2bとを有している。幅広部2aの厚みは幅狭部2bの厚みに比べて薄くなっており、この段差部分が他方の消弧体7の収納スペースとなっている。そして、幅広部2aをケース本体1の凹部1aに嵌め込むと共に、一対の幅狭部2bをケース本体1の切欠き部1bに嵌め込むことにより、ケース本体1と蓋体2が組み合わされて直方体形状のケーシング3を構成するようになっている。その際、幅広部2aとケース本体1は接着せず、両幅狭部2bだけをケース本体1に接着することにより、ケース本体1の凹部1aの内壁面と蓋体2の幅広部2aの両側面との間に、ケーシング3の内部と外部を連通する隙間Gが確保されるようになっている(
図3参照)。
【0021】
ヒューズエレメント4と電極5は銀や錫などの金属板8を打ち抜き加工したものからなり、この金属板8には、溶断部8aと係止部8bと連通部8cおよび導出部8dが一体形成されている(
図4参照)。溶断部8aは細帯状に形成されたヒューズエレメント4であり、この溶断部8aはケース本体1の凹部1a内に張架されている。係止部8bは溶断部8aの両端に形成されており、これら係止部8bが凹部1aの長手方向両端部に係合することにより、ヒューズエレメント4がケーシング3に位置決めされて脱落しないようになっている。一対の連通部8cは係止部8bの外側に連続する部位であり、これら連通部8cは、ケース本体1の切欠き部1b内に配置されて、切欠き部1bの底面と蓋体2の幅狭部2bとの間に挟持されている。一対の導出部8dは連通部8cの外側に連続する部位であり、これら導出部8dは、ケーシング3の長手方向両端面から露出して電極5を形成している。これら電極5は、蓋体2の幅狭部2bの端面から上面に沿ってL字状に折り曲げられており、蓋体2の外表面に沿った同一平面上に一対の電極5が配置されるようになっている。
【0022】
消弧体6と消弧体7は、ヒューズエレメント4の溶断に伴って発生するアーク放電の拡がりを遮断する消弧剤であり、いずれも低融点ガラスを焼結させた板状部材(タブレット)によって構成されている。一方の消弧体6は凹部1aの内底面に載置されており、この消弧体6と蓋体2の幅広部2aとの間に他方の消弧体7を配置することにより、ヒューズエレメント4が一対の消弧体6,7間に挟持されるようになっている。
【0023】
このように構成されたチップ形電流ヒューズ10の組立手順について説明すると、まず、ケース本体1の凹部1aの内底面に一方の消弧体6を載置した後、
図4に示す金属板8をケース本体1の凹部1aと切欠き部1bの上部開口から内部に挿入する。その際、係止部8bを凹部1aの両端部に当接させることにより、金属板8がケース本体1に対して位置規制されるため、ヒューズエレメント4である溶断部8aが消弧体6上に載置される。また、一対の連通部8cは切欠き部1bの内底面に配置され、一対の導出部8dは切欠き部1bから外方に向かって突出した状態となる。
【0024】
次に、消弧体6上にヒューズエレメント4を介して他方の消弧体7を搭載した後、蓋体2の幅広部2aをケース本体1の凹部1aに差し込むと共に、蓋体2の両幅狭部2bをケース本体1の切欠き部1bに差し込む。これにより、ケース本体1と蓋体2が組み合わされて直方体形状のケーシング3が構成される。その際、幅広部2aをケース本体1に接着せず、両幅狭部2bだけをケース本体1に接着するため、
図3に示すように、ケース本体1の凹部1aの内壁面と幅広部2aの両側面との間に、ケーシング3の内部と外部を連通する隙間Gが確保される。なお、この隙間G側に配置される消弧体7を、ケース本体1の凹部1aが形成された幅より小さく設定すると、より高圧ガスを隙間Gから逃がすことができる。最後に、ケーシング3の長手方向両端面から突出する導出部8dをL字状に折り曲げ加工し、蓋体2の幅狭部2bの端面から上面に沿って連続する電極5を形成することにより、
図1~
図3に示すチップ形電流ヒューズ10が完成する。
【0025】
図5に示すように、本実施形態例に係るチップ形電流ヒューズ10は、ケース本体1を上向きにして蓋体2が下側を向く姿勢で回路基板11上に搭載され、この状態で一対の電極5と回路パターン12のランドが半田13を介して接続される。そして、実装後に一対の電極5に所定の過電流が流れたとき、ヒューズエレメント4が発熱して溶断することにより、チップ形電流ヒューズ10に接続された各種電子機器を保護するようになっている。
【0026】
ここで、ケーシング3として組み合わされたケース本体1と蓋体2のうち、電極5が延在しない蓋体2の幅広部2aの周囲にケーシング3の内部と外部を連通する隙間Gが確保されているため、ヒューズエレメント4の溶断に伴って発生するアーク放電の熱などによってケーシング3の内部に高圧ガスが発生したとしても、当該ガスを上記隙間Gから外部に逃がすことができ、高圧ガスによってケーシング3が破壊してしまうことを防止できる。
【0027】
しかも、このチップ形電流ヒューズ10は蓋体2を回路基板11に近接対向する姿勢で実装されるため、ヒューズエレメント4の溶断時に蓋体2がケーシング3の内圧を受けたとしても、蓋体2のケース本体1から外れる方向(下方)への動きが回路基板11によって規制され、高圧ガスが周囲に飛散してしまうことを抑制することができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態例に係るチップ形電流ヒューズ10は、ケース本体1と蓋体2を組み合わせて形成されたケーシング3の内部にヒューズエレメント4が配置されており、このヒューズエレメント4に電流が流れて溶断したとき、アーク放電の熱などによってケーシング3の内部に高圧ガスが発生したとしても、当該ガスをケース本体1と蓋体2の非接着部分に確保された隙間Gから外部に逃がすことができるため、高圧ガスによってケーシング3が破壊してしまうことを防止できる。
【0029】
しかも、ケーシング3の両端面に露出する一対の電極5が蓋体2の端面から表面に亘って配置されているため、これら電極5を回路基板11に設けられた回路パターン12のランドに半田付けした実装状態において、蓋体2が回路基板11に近接対向する姿勢で保持されることになる。これにより、ヒューズエレメント4の溶断時に蓋体2がケーシング3の内圧を受けたとしても、蓋体2のケース本体1から外れる方向の動きが回路基板11によって規制され、この点からもケーシング3の破壊を防止することができると共に、隙間Gから噴出する高圧ガスが周囲に飛散してしまうことを抑制することができる。
【0030】
また、本実施形態例に係るチップ形電流ヒューズ10では、ヒューズエレメント4と一対の電極5が長尺状の金属板8に一体形成されており、一対の電極5が該金属板8の長手方向両端部に折曲形成された断面L字状の部位(導出部8d)となっているため、ヒューズエレメント4と電極5を接合する工程が不要になるだけでなく、ヒューズエレメント4と電極5の接合部が安定するため、実装時の熱や外部環境の熱衝撃等によって接合部が不用意に断線してしまうことを防止できる。
【0031】
また、本実施形態例に係るチップ形電流ヒューズ10では、ケーシング3の内部にヒューズエレメント4を挟持する一対の消弧体6,7が配置されており、これら消弧体6,7が低融点ガラスを焼結させた板状部材であるため、粒状の消弧剤をケーシング3の内部に充填する場合のように、製造途中で消弧剤が飛散することがなくなり、消弧体6,7の取り扱いが容易になって組立作業性を向上させることができる。
【0032】
また、消弧体6,7が板状部材であるため、ヒューズエレメント4の両側に間隙ができ、少なくとも隙間G側に配置される消弧体7をケース本体1の凹部1aが形成された幅より小さくすると、この間隙がケース本体1と蓋体2の非接着部分に確保された隙間Gと繋がることになり、ヒューズエレメント4の周辺に発生する高圧ガスを逃がし易くなる。なお、凹部1aの底面側に配置される消弧体6についても、隙間G側に配置される消弧体7と同様に構成すると、一対の消弧体6,7を共通部品として取り扱うことができて好ましい。
【0033】
なお、上記した実施形態例は本発明の説明のための例示であり、他の様々な態様で本発明を実施することができる。例えば、上記の実施形態例では、ケース本体1と蓋体2とを両者の長手方向両端部だけ接着し、ケース本体1と蓋体2の非接着部分に外部と連通する隙間Gを確保する構成としたが、このような隙間Gを蓋体2に形成した微細なスリットや貫通孔によって構成することも可能である。また、一体品からなるヒューズエレメント4と電極5を用いる代わりに、後工程で接合・一体化した別部品からなるヒューズエレメント4と電極5を用いても良く、低融点ガラスを焼結させた板状の消弧体6,7を用いる代わりに、珪砂等からなる粒状の消弧体を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 ケース本体
1a 凹部
1b 切欠き部
2 蓋体
2a 幅広部
2b 幅狭部
3 ケーシング
4 ヒューズエレメント
5 電極
6,7 消弧体
8 金属板
8a 溶断部(ヒューズエレメント)
8b 係止部
8c 連通部
8d 導出部(電極)
10 チップ形電流ヒューズ
11 回路基板
12 回路パターン
13 半田
G 隙間