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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】吸収体およびこれを備えた吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20240117BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20240117BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20240117BHJP
   A61L 15/46 20060101ALI20240117BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A61F13/15 141
A61F13/53 300
A61L15/24 200
A61L15/46 200
B01J20/26 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019221223
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021090476
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】太田 義久
(72)【発明者】
【氏名】垣鍔 裕介
【審査官】西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-501362(JP,A)
【文献】特開2016-138349(JP,A)
【文献】特開2014-158509(JP,A)
【文献】特開2008-264161(JP,A)
【文献】特開2008-007479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性材料を含有する吸水層と、前記吸水層を保持する基材シートとを有し、
前記吸水層がイソプロピルメチルフェノール粉末を有し、
前記吸水性材料が、ポリアクリル酸の中和塩を含む吸水性樹脂粉末を含有し、前記イソプロピルメチルフェノール粉末が、前記吸水性樹脂粉末を構成する粒子の表面に付着しており、
前記イソプロピルメチルフェノール粉末の個数平均粒子径が、5μm以下であることを特徴とする吸収体。
【請求項2】
前記基材シートがイソプロピルメチルフェノール粉末を有し、
前記基材シートにおけるイソプロピルメチルフェノール粉末の目付けが、0.06g/m 2 ~5g/m 2 である請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
前記吸水性材料中のパルプ繊維の含有率が10質量%以下である請求項1または2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記吸水性材料中のパルプ繊維の含有率が50質量%以上であり、
前記吸水層中の前記イソプロピルメチルフェノール粉末の含有量が、前記パルプ繊維100質量部に対して、0.0015質量部以上である請求項1または2に記載の吸収体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収体の製造方法であって、
下層基材シート上に、ポリアクリル酸の中和塩を含む吸水性樹脂粉末を含有する吸水性材料を載置し、吸水層を形成する形成工程、および、
前記吸水層に、イソプロピルメチルフェノール粉末の水分散液を付与し、乾燥させる付与工程を有し、
前記水分散液中のイソプロピルメチルフェノール粉末の個数平均粒子径が5μm以下であることを特徴とする吸収体の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収体の製造方法であって、
下層基材シート上に、ポリアクリル酸の中和塩を含む吸水性樹脂粉末を含有する吸水性材料を載置し、吸水層を形成する形成工程、
前記吸水層上に、前記吸水層の少なくとも一部を被覆する上層基材シートを積層する積層工程、および、
前記上層基材シートおよび前記吸水層に、イソプロピルメチルフェノール粉末の水分散液を付与し、乾燥させる付与工程を有し、
前記水分散液中のイソプロピルメチルフェノール粉末の個数平均粒子径が5μm以下であることを特徴とする吸収体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性材料を有する吸収体に関し、特に体液を吸収した後の吸収体の防臭に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品は、身体から排泄される尿や経血等の体液を吸収、保持させて使用するが、使用時あるいは使用後に廃棄する時の不快臭に対する対策が求められている。
【0003】
従来、このような不快臭を防止する吸収性物品が提案されている。例えば、特許文献1には、基材繊維とフマル酸とを有し、前記基材繊維が吸水性繊維を含有し、前記フマル酸が前記基材繊維とフマル酸含有水溶液とを接触させた後、水を除去することにより付与されたものであり、前記フマル酸の付与量が吸水性繊維100質量部に対して0.0001質量部~0.15質量部であるフマル酸含有繊維を吸水性材料として用いた吸収体が提案されている(特許文献1(請求項7)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-138349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸収体の防臭、抗菌剤として、フマル酸、クエン酸等の有機酸を用いた場合、局所的に吸収体のpHが大きく低下するおそれがある。このような場合に、吸収体に吸収された体液等が液戻りすると、肌荒れの原因となり得る。また、吸収体の防臭、抗菌剤として、カチオン系の抗菌剤を使用した場合、吸収体に含まれる吸水性樹脂粒子のアクリル酸中和塩と塩交換を生じる可能性があり、吸収性能の低下を引き起こすおそれがあった。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、優れた防臭性能を有する吸収体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸収体は、吸水性材料を含有する吸水層と、前記吸水層を保持する基材シートとを有し、前記吸水層および/または前記基材シートがイソプロピルメチルフェノール粉末を有し、前記イソプロピルメチルフェノール粉末の個数平均粒子径が5μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた防臭性能を有する吸収体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の吸収性物品の一例の平面図。
図2図1のV-V線の模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[吸収体]
本発明の吸収体は、吸水性材料を含有する吸水層と、前記吸水層を保持する基材シートとを有し、前記吸水層および/または前記基材シートがイソプロピルメチルフェノール粉末を有する。そして、前記イソプロピルメチルフェノール粉末の個数平均粒子径が、5μm以下であることを特徴とする。吸水層および/または基材シートがイソプロピルメチルフェノール粉末を有することで、吸収体に吸収された体液中での腐敗細菌の繁殖を抑制し、悪臭の発生を抑制できる。また、イソプロピルメチルフェノール粉末の個数平均粒子径が、5μm以下であれば、吸水性材料や基材シートに対してイソプロピルメチルフェノール粉末が付着しやすく、脱落しにくいため、長期間にわたって優れた防臭性能を発揮できる。
【0011】
(吸水層)
前記吸水層は、吸水性材料を含有する。前記吸水性材料としては、吸水性樹脂粉末、吸水性繊維が挙げられる。
【0012】
(吸水性樹脂粉末)
前記吸水性樹脂粉末は、使用者から排泄された尿、経血等の体液を吸収し、保持する。前記吸水性樹脂は、特に限定されないが、ポリアクリル酸の中和塩を含有する樹脂であることが好ましい。前記ポリアクリル酸の中和塩は、アクリル酸を構成成分とする架橋重合体であって、そのカルボキシ基の少なくとも一部が中和されている。前記架橋重合体を構成するアクリル酸成分の含有率は、50質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましい。アクリル酸成分の含有率が前記範囲内であれば、得られる吸水性樹脂粉末が、所望の吸収性能を発現しやすくなる。
【0013】
架橋重合体のカルボキシ基の少なくとも一部を中和する陽イオンとしては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。これらの中でも、架橋重合体のカルボキシ基の少なくとも一部が、ナトリウムイオンで中和されていることが好ましい。なお、架橋重合体のカルボキシ基の中和は、重合して得られる架橋重合体のカルボキシ基を中和してもよいし、予め、中和された単量体を用いて架橋重合体を形成してもよい。
【0014】
架橋重合体のカルボキシ基の中和度は、60モル%以上が好ましく、65モル%以上がより好ましい。中和度が低すぎると、得られる吸水性樹脂粉末の吸収性能が低下する場合がある。また、中和度の上限は、特に限定されず、カルボキシ基のすべてが中和されていてもよい。なお、中和度は、下記式で求められる。
中和度(モル%)=100×「架橋重合体の中和されているカルボキシ基のモル数」/「架橋重合体が有するカルボキシ基の総モル数(中和、未中和を含む)」
【0015】
前記架橋重合体は、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび/または(a2)加水分解性モノマーと、(b)内部架橋剤とを含有する不飽和単量体組成物を重合して得られるものが好ましい。
【0016】
(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、少なくとも1個の水溶性置換基とエチレン性不飽和基とを有するモノマー等が使用できる。水溶性モノマーとは、25℃の水100gに少なくとも100g溶解する性質を持つモノマーを意味する。また、(a2)加水分解性モノマーは、50℃の水、必要により触媒(酸、塩基等)の作用により加水分解されて、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーを生成する。(a2)加水分解性モノマーの加水分解は、架橋重合体の重合中、重合後、および、これらの両方のいずれでもよいが、得られる吸水性樹脂粉末の分子量の観点等から重合後が好ましい。
【0017】
水溶性置換基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、スルホオキシ基、ホスホノ基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アミノ基、または、これらの塩、並びに、アンモニウム塩が挙げられ、カルボキシ基の塩(カルボキシレート)、スルホ基の塩(スルホネート)、アンモニウム塩が好ましい。また、塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。アンモニウム塩は、第1級~第3級アミンの塩または第4級アンモニウム塩のいずれであってもよい。これらの塩のうち、吸収特性の観点から、アルカリ金属塩およびアンモニウム塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましく、ナトリウム塩がさらに好ましい。
【0018】
前記カルボキシ基および/またはその塩を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、炭素数3~30の不飽和カルボン酸および/またはその塩が好ましい。前記カルボキシ基および/またはその塩を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、クロトン酸および桂皮酸等の不飽和モノカルボン酸および/またはその塩;マレイン酸、マレイン酸塩、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸および/またはその塩;マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸のエチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸グリコールモノエステル等の不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1~8)エステルおよび/またはその塩等が挙げられる。なお、本発明の説明において、「(メタ)アクリル」は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。
【0019】
(a2)加水分解性モノマーとしては、特に限定されないが、加水分解により水溶性置換基となる加水分解性置換基を少なくとも1個有するエチレン性不飽和モノマーが好ましい。加水分解性置換基としては、酸無水物を含む基、エステル結合を含む基およびシアノ基等が挙げられる。
【0020】
酸無水物を含む基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、炭素数4~20の不飽和ジカルボン酸無水物等が用いられ、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。エステル結合を含む基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等のモノエチレン性不飽和カルボン酸の低級アルキルエステル;および、酢酸ビニル、酢酸(メタ)アリル等のモノエチレン性不飽和アルコールのエステルが挙げられる。シアノ基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、および、5-ヘキセンニトリル等の炭素数3~6のビニル基含有のニトリル化合物が挙げられる。
【0021】
(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび(a2)加水分解性モノマーとしては、さらに、特許第3648553号公報、特開2003-165883号公報、特開2005-75982号公報、および、特開2005-95759号公報に記載のものを用いることができる。(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび(a2)加水分解性モノマーはそれぞれ、単独で、または、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0022】
不飽和単量体組成物は、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび(a2)加水分解性モノマーの他に、これらと共重合可能な(a3)その他のビニルモノマーを用いることができる。共重合可能な(a3)その他のビニルモノマーとしては、疎水性ビニルモノマー等が使用できるが、これらに限定されるわけではない。
【0023】
(a3)その他のビニルモノマーとしては、さらに、特許第3648553号公報、特開2003-165883号公報、特開2005-75982号公報、および、特開2005-95759号公報に記載のものを用いることができる。
【0024】
アクリル酸を主構成成分とする架橋重合体を得るという観点から、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび/または(a2)加水分解性モノマーとして、(a1)アクリル酸またはアクリル酸塩、あるいは、加水分解によりアクリル酸またはアクリル酸塩を生成する(a2)加水分解性モノマーを使用することが好ましい。架橋重合体を形成する不飽和単量体組成物中の(a1)アクリル酸またはアクリル酸塩、あるいは、加水分解によりアクリル酸またはアクリル酸塩を生成する(a2)加水分解性モノマーの含有率は、50質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましい。
【0025】
(b)内部架橋剤としては、(b1)エチレン性不飽和基を2個以上有する内部架橋剤、(b2)(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーの水溶性置換基および/または(a2)加水分解性モノマーの加水分解によって生成する水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも1個有し、かつ、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する内部架橋剤、および、(b3)(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーの水溶性置換基および/または(a2)加水分解性モノマーの加水分解によって生成する水溶性置換基と反応し得る官能基を2個以上有する内部架橋剤等を挙げることができる。
【0026】
(b)内部架橋剤としては、吸収性能(特に吸収量、吸収速度)等の観点から、(b1)エチレン性不飽和基を2個以上有する内部架橋剤が好ましく、炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルがより好ましく、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタンまたはペンタエリスリトールトリアリルエーテルがさらに好ましく、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルが最も好ましい。
【0027】
(b)内部架橋剤としては、さらに、特許第3648553号公報、特開2003-165883号公報、特開2005-75982号公報、および、特開2005-95759号公報に記載のものを用いることができる。
【0028】
架橋重合体の重合形態としては、公知の方法が使用でき、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法等が適応できる。また、重合時の重合液の形状として、薄膜状、噴霧状等であってもよい。重合制御の方法としては、断熱重合法、温度制御重合法、等温重合法等が適用できる。重合方法としては、溶液重合法が好ましく、有機溶媒等を使用する必要がなく生産コスト面で有利なことから、水溶液重合法がより好ましい。
【0029】
架橋重合体は、乾燥後に粉砕することができる。粉砕方法については、特に限定されず、例えば、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機、ジェット気流式粉砕機等の通常の粉砕装置が使用できる。粉砕された架橋重合体は、必要によりふるい分け等により粒度調整できる。
【0030】
必要によりふるい分けした場合の架橋重合体の重量平均粒子径(μm)は、300μm以上が好ましく、より好ましくは350μm以上、さらに好ましくは400μm以上であり、500μm以下が好ましく、より好ましくは480μm以下、さらに好ましくは450μm以下である。架橋重合体の重量平均粒子径(μm)が、前記範囲内であれば、吸収性能がさらに良好となる。
【0031】
なお、重量平均粒子径は、ロータップ試験篩振とう機および標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンバニー、1984、21頁)に記載の方法で測定される。すなわち、JIS標準ふるいを、上から1000μm、850μm、710μm、500μm、425μm、355μm、250μm、150μm、125μm、75μmおよび45μm、並びに受け皿の順に組み合わせる。最上段のふるいに測定粒子の約50gを入れ、ロータップ試験篩振とう機で5分間振とうさせる。各ふるいおよび受け皿上の測定粒子の質量を秤量し、その合計を100質量%として各ふるい上の粒子の質量分率を求め、この値を対数確率紙{横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が質量分率}にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、質量分率が50質量%に対応する粒子径を求め、これを重量平均粒子径とする。
【0032】
架橋重合体は、必要に応じてさらに表面架橋を行うことができる。表面架橋を行うための架橋剤(表面架橋剤)としては、(b)内部架橋剤と同じものが使用できる。表面架橋剤としては、吸水性樹脂粉末の吸収性能等の観点から、(b3)(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーの水溶性置換基および/または(a2)加水分解性モノマーの加水分解によって生成する水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも2個以上有する架橋剤が好ましく、より好ましくは多価グリシジル、さらに好ましくはエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびグリセリンジグリシジルエーテル、最も好ましくはエチレングリコールジグリシジルエーテルである。
【0033】
架橋重合体は、さらに表面改質剤で処理されてもよい。表面改質剤としては、硫酸アルミニウム、カリウム明礬、アンモニウム明礬、ナトリウム明礬、(ポリ)塩化アルミニウム、これらの水和物等の多価金属化合物;ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等のポリカチオン化合物;無機微粒子;フッ素原子を持つ炭化水素基を含有する表面改質剤;ポリシロキサン構造を持つ表面改質剤等が挙げられる。
【0034】
架橋重合体を表面改質剤で処理する方法としては、表面改質剤が架橋重合体の表面に存在するように処理する方法であれば、特に限定されない。しかし、表面改質剤は、架橋重合体の乾燥体と混合されることが表面の表面改質剤の量をコントロールする観点から好ましい。なお、混合は、均一に行うことが好ましい。
【0035】
吸水性樹脂粉末の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状、米粒状等が挙げられる。これらのうち、吸収性物品(紙おむつ用途等)での繊維状物とのからみが良く、繊維状物からの脱落の心配がないという観点から、不定形破砕状が好ましい。
【0036】
前記吸水性樹脂粉末には、防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、消臭剤、無機質粉末、有機質繊維状物等の添加剤を含むことができる。添加剤としては、特開2003-225565号公報、特開2006-131767号公報等に例示されているものを挙げることができる。
【0037】
前記吸水性材料が、ポリアクリル酸の中和塩を含む吸水性樹脂粉末を含有する場合、前記イソプロピルメチルフェノールは、前記吸水性樹脂粉末を構成する粒子の表面に付着していることが好ましい。イソプロピルメチルフェノールが吸水性樹脂粒子の表面に付着していることで、体液を吸収した後の吸水性樹脂粉末からの悪臭の発生をより抑制できる。また、イソプロピルメチルフェノールのpKaは約10であり、アクリル酸のpKaが4.26であるため、ポリアクリル酸の中和塩が維持され、吸水性樹脂粉末の吸収性能の低下が抑制される。
【0038】
(吸水性繊維)
前記吸水性繊維としては、例えば、パルプ繊維、セルロース繊維、レーヨン、アセテート繊維が挙げられる。
【0039】
前記吸水性材料は吸水性繊維としてパルプ繊維を含有することが好ましい。前記吸収性材料中のパルプ繊維の含有率は40質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、95質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。吸水性材料中のパルプ繊維の含有率が上記範囲内であれば、吸水層の吸収性能が高く、かつ、吸水層にクッション性を付与できる。
【0040】
なお、吸収体を薄型化する場合、吸水性材料中の吸水性繊維の含有量は少ないことが好ましい。この場合、吸水性材料中の吸水性繊維の含有率は30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。また、この場合、前記吸水性材料中のパルプ繊維の含有率は10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0041】
(繊維基材)
前記吸水層は、吸水性材料に加えて、繊維基材を含有してもよい。前記繊維基材としては、熱融着繊維等を挙げることができる。熱融着性繊維は、保形性を高めるために使用される。熱融着繊維の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維や複合繊維等が用いられる。吸水性材料として、吸水性樹脂粉末のみを含有する吸水層は、薄型化が可能である。繊維基材を含有する吸水層は、体液の分散性に優れる。
【0042】
前記吸水層が繊維基材を含有する場合、吸水層中の繊維基材の含有率は、1質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0043】
(基材シート)
前記吸収体は、前記吸水層を保持する基材シートを有する。前記基材シートとしては、透液性のシート材料、例えば、不織布が挙げられる。このような不織布は、例えば、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、ティッシュペーパーが挙げられる。これらの不織布を形成する繊維としては、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等の疎水性繊維;表面を界面活性剤により親水化処理した疎水性繊維が挙げられる。
【0044】
前記基材シートの目付けは、10g/m2以上が好ましく、より好ましくは14g/m2以上、さらに好ましくは16g/m2以上であり、50g/m2以下が好ましく、より好ましくは45g/m2以下、さらに好ましくは40g/m2以下である。
【0045】
前記基材シートが前記吸水層を保持する態様としては、1枚の基材シートに吸水層が接着剤により固定されている態様;1枚の基材シートによって、吸水層が包まれている態様;2枚の基材シートによって、吸水層が挟持されている態様等が挙げられる。なお、吸水層が基材シートで包まれている態様とは、吸水層の表面の70%以上が基材シートで覆われた状態をいう。
【0046】
(イソプロピルメチルフェノール)
前記吸収体は、前記吸水層および/または前記基材シートがイソプロピルメチルフェノール粉末を有している。前記吸水層がイソプロピルメチルフェノール粉末を有する態様としては、吸水層の内部および/または表面にイソプロピルメチルフェノール粉末が配置されている態様が挙げられる。前記基材シートがイソプロピルメチルフェノール粉末を有する態様としては、基材シートの内部および/または表面にイソプロピルメチルフェノール粉末が配置されている態様が挙げられる。
【0047】
前記イソプロピルメチルフェノールは、4-イソプロピル-3-メチルフェノールである。前記イソプロピルメチルフェノールは、水への溶解度(25℃)が、0.015g/100g、融点が110℃~113℃、沸点が244℃である。
【0048】
前記イソプロピルメチルフェノール粉末の個数平均粒子径は、5μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。前記個数平均粒子径が5μm以下であれば、吸水性材料や基材シートに対してイソプロピルメチルフェノール粉末が付着しやすく、脱落しにくいため、長期間にわたって優れた防臭性能を発揮できる。前記イソプロピルメチルフェノール粉末の個数平均粒子径の下限値は特に限定されないが、0.001μmが好ましい。なお、本発明において、イソプロピルメチルフェノール粉末の個数平均粒子径は、電子顕微鏡を用いて測定すればよい。また、後述するように吸水層および/または基材シート基材にイソプロピルメチルフェノール粉末の水分散液を噴霧する場合、水分散液中のイソプロピルメチルフェノール粉末の個数平均粒子径を、吸水層および/または基材シートが有するイソプロピルメチルフェノール粉末の個数平均粒子径とみなせる。
【0049】
前記吸水層がイソプロピルメチルフェノール粉末を有する場合、吸水層におけるイソプロピルメチルフェノール粉末の目付けは、0.01g/m2以上が好ましく、より好ましくは0.06g/m2以上、さらに好ましくは0.18g/m2以上、特に好ましくは1.8g/m2以上である。吸水層におけるイソプロピルメチルフェノール粉末の目付けが0.01g/m2以上であれば防臭性能をより発揮することができる。上限値は特に限定されないが、好ましくは40g/m2以下である。40g/m2であれば、吸水層における吸水性能を阻害しない。
【0050】
前記吸水層が吸水性樹脂粉末を含有する場合、吸水層中のイソプロピルメチルフェノール粉末の含有量は、前記吸水性樹脂粉末100質量部に対して、0.003質量部以上が好ましく、より好ましくは0.009質量部以上、さらに好ましくは0.09質量部以上であり、5質量部以下が好ましく、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。イソプロピルメチルフェノール粉末の含有量が前記範囲内であれば吸水性樹脂粉末に吸水された吸水性樹脂粉末表面における水の通液性を阻害しない。
【0051】
前記吸水層がパルプ繊維を含有する場合、吸水層中のイソプロピルメチルフェノール粉末の含有量は、前記パルプ繊維100質量部に対して、0.0015質量部以上が好ましく、より好ましくは0.0045質量部以上、さらに好ましくは0.045質量部以上であり、0.75質量部以下が好ましく、より好ましくは0.6質量部以下、さらに好ましくは0.45質量部以下である。イソプロピルメチルフェノール粉末の含有量が前記範囲内であれば防臭性能をより発揮することができる。
【0052】
前記基材シートがイソプロピルメチルフェノール粉末を有する場合、基材シートにおけるイソプロピルメチルフェノール粉末の目付けは、0.06g/m2以上が好ましく、より好ましくは0.18g/m2以上、さらに好ましくは0.5g/m2以上であり、5g/m2以下が好ましく、より好ましくは3g/m2以下、さらに好ましくは2g/m2以下である。基材シートにおけるイソプロピルメチルフェノール粉末の目付けが0.06g/m2以上であれば基材シートおよび吸収層が防臭性能を発揮することができ、5g/m2以下であれば基材シートの通液性の低下を抑えることができる。
【0053】
(吸収体の構成)
前記吸収体の構成は特に限定されず、前記吸水性材料を含有する吸水層と、前記吸水層を保持する基材シートとを有していればよい。前記吸収体の構成としては、例えば、吸水性材料およびイソプロピルメチルフェノール粉末の混合物からなる吸水層を、基材シートに固定したもの;吸水性材料およびイソプロピルメチルフェノール粉末の混合物からなる吸水層を基材シートで包んだもの;吸水性材料およびイソプロピルメチルフェノール粉末の混合物からなる吸水層を、第1基材シートと第2基材シートとで挟持したもの;吸水性材料からなる吸水層をイソプロピルメチルフェノール粉末を有する基材シートで包んだもの;吸水性材料からなる吸水層を、第1基材シートとイソプロピルメチルフェノール粉末を有する第2基材シートとで挟持したもの等が挙げられる。
【0054】
前記吸水層および吸収体の平面視形状は特に限定されず、例えば、長方形型、砂時計型、ひょうたん型、羽子板型等が挙げられる。また、吸収体は、前記吸水層の他に、吸水性樹脂粉末を固定するための接着剤層を有していてもよい。
【0055】
(吸収体の製造方法)
第1態様
吸収体の製造方法の第1態様は、下層基材シート上に吸水性材料を載置し、吸水層を形成する形成工程;および、前記吸水層に、イソプロピルメチルフェノール粉末の水分散液を付与し、乾燥させる付与工程を有する。
【0056】
第2態様
吸収体の製造方法の第2態様は、下層基材シート上に吸水性材料を載置し、吸水層を形成する形成工程;前記吸水層上に、前記吸水層の少なくとも一部を被覆する上層基材シートを積層する積層工程;および、前記上層基材シートに、イソプロピルメチルフェノール粉末の水分散液を付与し、乾燥させる付与工程を有する。
【0057】
第3態様
吸収体の製造方法の第3態様は、下層基材シート上に吸水性材料を載置し、吸水層を形成する形成工程;前記吸水層に、イソプロピルメチルフェノール粉末の水分散液を付与し、乾燥させる第1付与工程;前記吸水層上に、前記吸水層の少なくとも一部を被覆する上層基材シートを積層する積層工程;および、前記上層基材シートに、イソプロピルメチルフェノール粉末の水分散液を付与し、乾燥させる第2付与工程を有する。
【0058】
前記第1~第3態様のように、イソプロピルメチルフェノール粉末の水分散液を用いることで、イソプロピルメチルフェノール粉末が飛散することを抑制でき、作業効率が向上する。また、イソプロピルメチルフェノール粉末の水分散液を吸水層および/または基材シートに付与することで、イソプロピルメチルフェノール粉末が水によって、吸水層および/または基材シートの内部へと運ばれるため、イソプロピルメチルフェノール粉末の担持性がより向上する。さらに、セルロース繊維のような吸水性繊維の場合、イソプロピルメチルフェノール粉末が水とともに吸水性繊維の内部に侵入することができ、担持性がより一層向上する。
【0059】
前記形成工程では、下層基材シート上に吸水性材料を載置し、吸水層を形成する。前記吸水性材料は、基材シート上に直接載置してもよいし、基材シート上に接着剤を塗布した後、この接着剤上に吸水性材料を載置してもよい。
【0060】
前記付与工程(第1付与工程、第2付与工程)では、前記吸水層および/または基材シートに、イソプロピルメチルフェノール粉末の水分散液を付与し、乾燥させる。前記吸水層に水分散液を付与する方法としては、吸水層に水分散液を噴霧する方法、吸水層に水分散液を塗布する方法等が挙げられる。前記基材シートに水分散液を付与する方法としては、基材シートに水分散液を噴霧する方法、基材シートに水分散液を塗布する方法、基材シートを水分散液に浸漬する方法等が挙げられる。
【0061】
前記イソプロピルメチルフェノール粉末の水分散液中のイソプロピルメチルフェノールの含有率は、1質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。イソプロピルメチルフェノールの含有率が上記範囲内であればイソプロピルメチルフェノールを所望量付与しやすく、また、分散状態が安定する。
【0062】
前記水分散液中のイソプロピルメチルフェノール粉末の個数平均粒子径は、5μm以下、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。前記個数平均粒子径が5μm以下であれば、吸水性材料や基材シートに対してイソプロピルメチルフェノール粉末が付着しやすく、脱落しにくいため、長期間にわたって優れた防臭性能を発揮できる。前記イソプロピルメチルフェノール粉末の個数平均粒子径の下限値は特に限定されないが、0.001μmが好ましい。
【0063】
前記水分散液は、溶媒として水以外の水性溶剤(水と混和可能な溶剤)を含有してもよい。前記水性溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコール、モノメチルエーテル、トリエチレンエチレングリコール、モノエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの中でも、アルコール類、グリコール類が好ましく、1,3-ブチレングリコールおよびジプロピレングリコールがより好ましい。前記水性溶剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
前記水分散剤は、界面活性剤を含有してもよい。前記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸(塩)、スルホン酸(塩)、硫酸エステル塩等が挙げられる。前記カルボン酸(塩)としては、炭素数6~15の脂肪酸の塩(例えば、有機アミン塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)が挙げられる。スルホン酸(塩)としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩(例えば、有機アミン塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)が挙げられる。硫酸エステル塩としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩(例えば、有機アミン塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩(例えば、有機アミン塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)等が挙げられる。
【0065】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン、多価アルコール等が挙げられる。前記ポリオキシアルキレンとしては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシエチレン/プロピレンブロックポリマー等が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(エチレンオキサイドの平均付加モル数が30~120)、ポリエチレングリコールジステアレート等が挙げられる。前記多価アルコールとしては、多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエステルエーテル、脂肪酸ジアルキロールアミド等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、4級アンモニウムが挙げられる。
【0066】
前記水分散液が、水性溶媒および界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の質量(a)と水性溶媒の質量(b)との質量比((a)/(b))は、0.5以上が好ましく、より好ましくは1.0以上であり、2.0以下が好ましく、より好ましくは1.5以下である。前記質量比((a)/(b))が上記範囲内であれば、イソプロピルメチルフェノール粉末の分散性がより向上する。
【0067】
また、前記水分散液が、水性溶媒および界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の質量(a)と水溶溶媒の質量(b)との合計量と、前記イソプロピルメチルフェノール粉末の質量(c)との質量比(((a)+(b))/(c))は、5以上が好ましく、20以下が好ましく、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である。
【0068】
前記積層工程では、吸水層の少なくとも一部を被覆する上層基材シートを積層する。前記上層基材シートは、吸水層の少なくとも一部を被覆すればよい。前記上層基材シートが被覆する吸水層の面積率は、50%以上が好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。前記上層基材シートが、前記吸収体の全体を被覆することがより好ましい。なお、上層基材シートは前記下層基材シートとは異なる基材シートであってもよいし、下層基材シートの端部を吸水層上に折返してこの折返し部分を上層基材シートとしてもよい。また、前記第1態様において、積層工程を追加してもよい。
【0069】
(吸収性物品)
本発明の吸収体を用いた吸収性物品について説明する。吸収性物品は、前記吸収体を備えたことを特徴とする。前記吸収性物品としては、例えば、前記吸収体と、前記吸収体の肌面側に配置されたトップシートと、前記吸収体の外面側に配置されたバックシートとを有する構造が挙げられる。また、前記吸収体が、吸水層を第1基材シートと第2基材シートとで挟持したものである場合、前記第2基材シートを吸収性物品のトップシートとしてもよい。
【0070】
前記トップシートは、吸収性物品の最も着用者側に配置されるものであり、着用者の体液を速やかに捕捉して吸収体へと移動させる。前記トップシートは、透液性のシート材料、例えば、親水性繊維により形成された不織布が使用できる。トップシートとして利用される不織布は、例えば、ポイントボンド不織布やエアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布であり、これらの不織布を形成する親水性繊維としては通常、セルロース、レーヨン、コットン等が用いられる。なお、トップシートとして、表面を界面活性剤により親水化処理した疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド)にて形成された透液性の不織布が用いられてもよい。
【0071】
前記バックシートは、吸収性物品の最も外面側に配置されるものであり、体液等が外部に漏れだすことを防止する。バックシートに使用される不透液性シートとしては、例えば、疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド)にて形成された撥水性または不透液性の不織布(例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、SMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)不織布)や、撥水性または不透液性のプラスチックフィルムが利用され、不透液性シートに到達した体液が、吸収性物品の外側にしみ出すのを防止する。不透液性シートにプラスチックフィルムが利用される場合、ムレを防止して着用者の快適性を向上するという観点からは、透湿性(通気性)を有するプラスチックフィルムが利用されることが好ましい。また、さらなる拡散性付与、形状安定性のために、プラスチックフィルムと、吸収体との間に紙シートを配置してもよい。
【0072】
次に、前記吸収性物品の具体的な適用例について説明する。前記吸収性物品としては、例えば、使い捨ておむつ、失禁パッド、生理用ナプキン等の人体から排出される体液を吸収するために用いられる吸収性物品が挙げられる。
【0073】
前記吸収性物品が、失禁パッド、生理用ナプキンである場合、これらは、例えば、トップシートとバックシートとの間に、吸収体が配置される。失禁パッド、生理用ナプキンの形状としては、略長方形、砂時計型、ひょうたん型等が挙げられる。また、必要に応じて、前記透液性のトップシートの幅方向両側に不透液性のサイドシートが設けられていてもよい。サイドシートは、トップシートの幅方向両側の上面に接合され、接合点より幅方向内方のサイドシートは、吸収体の両側縁に沿って一対の立ち上がりフラップを形成する。
【0074】
前記吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつとしては、例えば、後背部または前腹部の左右に一対の止着部材が設けられ、当該止着部材により着用時にパンツ型に形成するテープ型使い捨ておむつ;前腹部と後背部とが接合されることによりウェスト開口部と一対の脚開口部とが形成されたパンツ型使い捨ておむつ等が挙げられる。
【0075】
吸収性物品が、使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、例えば、内側シートと外側シートとからなる積層体が前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とからなるおむつ本体を形成し、前記股部に、トップシートとバックシートとの間に吸収体が配置されていてもよい。また、使い捨ておむつは、例えば、トップシートとバックシートとの間に、吸収体が配置された積層体からなり、この積層体が前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とを有していてもよい。なお、前腹部、後背部、股部とは、使い捨ておむつを着用の際に、着用者の腹側に当てる部分を前腹部と称し、着用者の尻側に当てる部分を後背部と称し、前腹部と後背部との間に位置し着用者の股間に当てる部分を股部と称する。前記内側シートは、親水性または撥水性であることが好ましく、前記外側シートは、撥水性であることが好ましい。
【0076】
吸収性物品には、吸収体の両側縁部に沿って、立ち上がりフラップが設けられていることが好ましい。立ち上がりフラップは、例えば、吸収体の上面の幅方向両側縁部に設けられてもよく、吸収体の幅方向両外側に設けられてもよい。立ち上がりフラップを設けることにより、体液の横漏れを防ぐことができる。立ち上がりフラップは、トップシートの幅方向両側に設けられたサイドシートの内方端が立ち上げられて、形成されてもよい。前記立ち上がりフラップおよびサイドシートは、撥水性であることが好ましい。
【0077】
次に、吸収性物品について、失禁パッドを例に挙げ、図1、2を参照して説明する。図1は、失禁パッドの平面図を表す。図2は、図1の失禁パッドのV-V断面図を表す。なお、図では、矢印Bを幅方向とし、矢印Aを長手方向と定義付ける。また、矢印A,Bにより形成される面上の方向を、平面方向と定義付ける。
【0078】
失禁パッド11は、液透過性のトップシート12と、不透液性のバックシート13と、これらの間に配置された吸収体1とを有している。吸収体1は、吸水性樹脂粒子2、イソプロピルメチルフェノール粉末3および繊維基材4をティッシュペーパ14に固定することで形成されている。
【0079】
トップシート12は、着用者の股部の肌に面するように配置され、着用者の体液を透過する。トップシート12を通過した体液は、吸収体1に取り込まれ、吸水性樹脂粒子2に吸収される。
【0080】
トップシート12の幅方向Bの両側縁には、失禁パッド11の長手方向Aに延在するサイドシート15が接合している。サイドシート15は、液不透過性のプラスチックフィルム、撥水性不織布等により構成される。サイドシート15には、失禁パッド11の幅方向内方端に起立用弾性部材16が設けられている。失禁パッド11の使用時には、起立用弾性部材16の収縮力によりサイドシート15の内方端が着用者の肌に向かって立ち上がり、これにより体液の横漏れが防止される。
【0081】
なお、図2では吸収体1が一層の吸水層を有する態様を図示しているが、吸収体1の構成はこれに限られるものではない。図2では、吸収性物品11が1つの吸収体1を有する態様を図示しているが、吸収体1を2以上配置してもよい。
【0082】
図2では吸水性樹脂粒子2、イソプロピルメチルフェノール粉末3および繊維基材4をティッシュペーパー14に固定して吸収体1を形成しているが、これらの吸水性樹脂粒子2、イソプロピルメチルフェノール粉末3および繊維基材4はティッシュペーパー14で覆われていてもよい。また、吸収体1は、第1基材シートと第2基材シートとで、吸水性樹脂粒子2、イソプロピルメチルフェノール粉末3および繊維基材4を挟持した構成としてもよい。なお、図2では、吸収体1が繊維基材4を含有する態様を図示しているが、繊維基材4を含有していなくてもよい。
【0083】
本発明の吸収性物品の具体例としては、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の人体から排出される体液を吸収するために用いられる吸収性物品を挙げることができる。
【実施例
【0084】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0085】
[評価方法]
(防臭効果の評価)
吸収体に、混合人尿50mLを吸収させ、40℃恒温槽にて所定時間保管した。所定時間経過後、恒温槽から吸収体を取り出し、吸収体の臭いを官能試験し、6段階評定(「ハンドブック悪臭防止法 第4章」、ぎょうせい発行)で評価した。官能試験は、6人で行い、平均値を求めた。
評価基準
0:無臭である。
1:やっと感知できる。
2:尿のにおいがわかるがにおいが弱い。
3:楽に尿として感知できる。
4:尿臭が強い。
5:強烈な尿臭がする。
【0086】
[イソプロピルメチルフェノールの水分散液の調製]
(水分散液No.1)
イソプロピルメチルフェノールの水分散液No.1として、大阪化成社製のBIOSOL(登録商標)-LIQUID(組成:イソプロピルメチルフェノール、ブチレングリコール、界面活性剤、水)を用いた。水分散液No.1は、液中のイソプロピルメチルフェノールの個数平均粒子径が0.001μm以上、1μm以下、イソプロピルメチルフェノールの濃度が100g/Lであった。
【0087】
(水分散液No.2)
水90mLに、イソプロピルメチルフェノール(富士フィルム和光純薬社製)を10g添加し、撹拌して分散させた後、メスアップにより液量を100mlに調整した。水分散液No.2は、液中のイソプロピルメチルフェノールの個数平均粒子径が5μm超、イソプロピルメチルフェノールの濃度が100g/Lであった。
【0088】
[吸収体の作製]
(吸収体No.1)
パルプ繊維40gとパルプ繊維中に散布した吸水性樹脂粒子20gとからなる吸水層を一辺の長さが10cmの正方形状に成型した後、水分散液No.1を噴霧し、その後、両面を同形状のティッシュペーパーでそれぞれ被覆した。さらに、一方の面に透湿性の不透液性プラスチックシートを載置し、また、他方の面に透液性エアスルー不織布で載置した後、周囲を熱融着することにより吸収体No.1を作製した。
【0089】
(吸収体No.2)
吸水層に噴霧するイソプロピルメチルフェノールの水分散液の量を、イソプロピルメチルフェノールの目付けが表1に示した量となるように変更したこと以外は、吸収体No.1の作製方法と同様にして、吸収体No.2を作製した。
【0090】
(吸収体No.3)
透液性エアスルー不織布に接するティッシュペーパーにイソプロピルメチルフェノールを噴霧したこと以外は、吸収体No.1の作製方法と同様にして、吸収体No.3を作製した。なお、吸水層にはイソプロピルメチルフェノールを噴霧していない。
【0091】
(吸収体No.4)
吸水層に噴霧するイソプロピルメチルフェノールの水分散液を、水分散液No.2に変更したこと以外は、吸収体No.1の作製方法と同様にして、吸収体No.4を作製した。
【0092】
(吸収体No.5)
透液性エアスルー不織布に接するティッシュペーパーにイソプロピルメチルフェノールを噴霧したこと以外は、吸収体No.4の作製方法と同様にして、吸収体No.5を作製した。なお、吸水層にはイソプロピルメチルフェノールを噴霧していない。
【0093】
(吸収体No.6)
吸水層にイソプロピルメチルフェノールの水分散液を噴霧しないように変更したこと以外は、吸収体No.1の作製方法と同様にして、吸収体No.6を作製した。
【0094】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の吸収体は、例えば、人体から排出される体液を吸収するために用いられる吸収性物品に好適に使用でき、特に失禁パッド、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0096】
1:吸収体、2:吸水性樹脂粉末、3:イソプロピルメチルフェノール粉末、4:繊維基材、11:失禁パッド(吸収性物品)、12:トップシート、13:バックシート、14:ティッシュペーパー、15:サイドシート、16:起立用弾性部材
図1
図2