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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240117BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20240117BHJP
   H01C 1/14 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 513
H01G4/30 511
H01G4/228 A
H01C1/14 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019232828
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021101449
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】千明 巧
(72)【発明者】
【氏名】西川 潤
【審査官】多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-024077(JP,A)
【文献】特開2019-091800(JP,A)
【文献】特開2010-141300(JP,A)
【文献】特開2014-011210(JP,A)
【文献】特開2018-081996(JP,A)
【文献】特開2008-300563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 4/228
H01C 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の誘電体層と複数の内部電極層とを備え、積層方向に互いに対向して平面視で略矩形状を有する第1主面および第2主面を備える積層チップと、
前記略矩形状の4つの角部において前記第1主面から前記第2主面にかけて形成され、互いに離間し、それぞれ前記複数の内部電極層の一部に接続され、前記平面視で略矩形状を有する4つの外部電極と、を備え、
前記第1主面および前記第2主面の少なくともいずれか一方の面において、前記4つの外部電極の各々は、隣りの2つの外部電極に対し、前記一方の面の前記略矩形状の辺に沿って延びる延在部を備えることを特徴とするセラミック電子部品。
【請求項2】
前記延在部は、前記積層チップの側面まで設けられていることを特徴とする請求項1記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
積層方向における前記セラミック電子部品の高さは、150μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記延在部が前記一方の面の前記略矩形状の辺に沿って延びる長さは、5μm以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
平面視で、前記延在部が前記一方の面の前記略矩形状の辺に対して垂直方向に延びる長さは、5μm以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記延在部を備える前記外部電極と、隣りの外部電極との距離は、50μm以上であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記第1主面における隣り合う2側辺を第1側辺および第2側辺とした場合に、前記第1側辺の長さと前記第2側辺の長さとの比率は、0.80以上、1.20以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記4つの外部電極は、前記略矩形状の4辺に略平行な4辺を有していることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記延在部が前記隣りの2つの外部電極に対し延びる距離は、55μm以上であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの電子機器の小型化や薄型化に伴い、電子機器に搭載される基板の小型化および薄型化が進んでいる。それに合わせて、基板に実装される積層セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品も小型化および低背化が進んでいる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-24077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような低背化されたセラミック電子部品では、クラックの発生に伴って抗折強度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、クラックを抑制することができるセラミック電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るセラミック電子部品は、積層された複数の誘電体層と複数の内部電極層とを備え、積層方向に互いに対向して平面視で略矩形状を有する第1主面および第2主面を備える積層チップと、前記略矩形状の各角部において前記第1主面から前記第2主面にかけて形成され、互いに離間し、それぞれ前記複数の内部電極層の一部に接続され、前記平面視で略矩形状を有する複数の外部電極と、を備え、前記第1主面および前記第2主面の少なくともいずれか一方の面において、前記複数の外部電極の少なくともいずれかは、隣りの2つの外部電極のうち少なくとも一方に対し、前記一方の面の前記略矩形状の辺に沿って延びる延在部を備えることを特徴とする。
【0007】
上記セラミック電子部品において、前記延在部は、前記積層チップの側面まで設けられていてもよい。
【0008】
上記セラミック電子部品において、積層方向における前記セラミック電子部品の高さは、150μm以下としてもよい。
【0009】
上記セラミック電子部品において、前記延在部が前記一方の面の前記略矩形状の辺に沿って延びる長さは、5μm以上としてもよい。
【0010】
上記セラミック電子部品において、平面視で、前記延在部が前記一方の面の前記略矩形状の辺に対して垂直方向に延びる長さは、5μm以上としてもよい。
【0011】
上記セラミック電子部品において、前記延在部を備える前記外部電極と、隣りの外部電極との距離は、50μm以上としてもよい。
【0012】
上記セラミック電子部品において、前記第1主面における隣り合う2側辺を第1側辺および第2側辺とした場合に、前記第1側辺の長さと前記第2側辺の長さとの比率は、0.80以上、1.20以下としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、クラックを抑制することができるセラミック電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】積層セラミックコンデンサの斜視図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のB-B線断面図である。
図4】内部電極層の積層構造を例示する図である。
図5】外部電極の断面図であり、図1のB-B線の部分断面図である。
図6】クラックについて例示する図である。
図7】(a)~(c)は外部電極の詳細を例示する図である。
図8】(a)~(c)は外部電極の他の例である。
図9】外部電極の他の例である。
図10】積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
図11】クラック発生率および抗折強度比を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0016】
(実施形態)
まず、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の基本構造について説明する。図1は、積層セラミックコンデンサ100の斜視図である。図2は、図1のA-A線断面図である。図3は、図1のB-B線断面図である。図1図3で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、略平板形状を有する積層チップ10と、4つの外部電極20a~20dとを備える。
【0017】
図2および図3で例示するように、積層チップ10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、内部電極層12とが、交互に積層された構成を有する。図3の例では、各内部電極層12の端縁は、外部電極20aと外部電極20dとに、交互に露出している。それにより、各内部電極層12は、外部電極20aと外部電極20dとに、交互に導通している。なお、外部電極20aに接続される内部電極層12は、外部電極20cにも接続されている。また、外部電極20dに接続される内部電極層12は、外部電極20bにも接続されている。したがって、外部電極20aは、外部電極20cと同極である。外部電極20bは、外部電極20dと同極である。誘電体層11と内部電極層12との積層体において、積層方向の最外層には内部電極層12が配置され、当該積層体の上面および下面は、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13の材料は、誘電体層11とセラミック材料の主成分が同じである。
【0018】
積層チップ10は、積層方向の上面40aおよび下面40bの2つの主面を備える。上面40aと下面40bとは、互いに対向する。積層チップ10は、上面40aおよび下面40b以外の4面として、側面50a~50dを備えている。側面50aと側面50cとは、互いに対向する。側面50bと側面50dとは、互いに対向する。
【0019】
なお、誘電体層11と内部電極層12との積層方向と直交し、側面50a,50cと平行な方向における積層セラミックコンデンサ100の長さを、長さLとする。積層方向と直交し、側面50b,50dと平行な方向における積層セラミックコンデンサ100の幅を、幅Wとする。積層方向における積層セラミックコンデンサ100の厚さを、厚さTとする。積層方向から見た平面視において、積層チップ10は、略矩形状を有する。長さLおよび幅Wは、当該略矩形状の隣り合う2辺の長さに相当する。
【0020】
例えば、上面40aおよび下面40bは、積層方向から見た平面視において、略正方形状を有する。積層セラミックコンデンサ100の積層方向の厚さTは、例えば、150μm以下、120μm以下、90μm以下である。長さLは、例えば、1.7mm、1.2mm、0.6mmである。幅Wは、例えば、1.7mm、1.2mm、0.6mmである。なお、長さLおよび幅Wのいずれかと、高さTとの比は、54:46~95:5程度である。L/Wの比は、例えば、0.80以上、1.20以下である。
【0021】
外部電極20aは、上面40aと下面40bと側面50a,50bとがなす角部において、上面40aと下面40bと側面50a,50bとに延在するように設けられている。外部電極20bは、上面40aと下面40bと側面50b,50cとがなす角部において、上面40aと下面40bと側面50b,50cとに延在するように設けられている。外部電極20cは、上面40aと下面40bと側面50c,50dとがなす角部において、上面40aと下面40bと側面50c,50dとに延在するように設けられている。外部電極20dは、上面40aと下面40bと側面50d,50aとがなす角部において、上面40aと下面40bと側面50d,50aとに延在するように設けられている。外部電極20a~20dは、互いに離間している。本実施形態においては、外部電極20a~20dのそれぞれは、積層方向から見た平面視において、略矩形状(例えば、略正方形状)を有している。
【0022】
図4は、内部電極層12の積層構造を例示する図である。図4の最左図は、上面40aの平面図であり、外部電極20a~20dも合わせて例示されている。図4の最右図は、下面40bの透過図であり、外部電極20a~20dも合わせて例示されている。最左図と最右図との間において、左側から右側にかけて、上面40a側の内部電極層12から下面40b側の内部電極層12まで順に例示されている。
【0023】
図4で例示するように、積層チップ10において、側面50aと側面50bとがなす角部に露出するような引出部12a、および側面50cと側面50dとがなす角部に露出するような引出部12cを有する第1の内部電極層12と、側面50bと側面50cとがなす角部に露出するような引出部12b、および側面50dと側面50aとがなす角部に露出するような引出部12dを有する第2の内部電極層12と、が誘電体層11を挟んで交互に積層されている。なお、第1の内部電極層12においては、引出部12a,12c以外は積層チップ10の側面に露出していない。第2の内部電極層12においては、引出部12b,12d以外は積層チップ10の側面に露出していない。
【0024】
以上の構造により、外部電極20aおよび外部電極20cが、第1の極性の電極として機能する。外部電極20bおよび外部電極20dが、第2の極性の電極として機能する。
【0025】
内部電極層12は、Ni(ニッケル),Cu(銅),Sn(スズ)等の卑金属を主成分とする。内部電極層12として、Pt(白金),Pd(パラジウム),Ag(銀),Au(金)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。誘電体層11は、例えば、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。例えば、当該セラミック材料として、BaTiO(チタン酸バリウム),CaZrO(ジルコン酸カルシウム),CaTiO(チタン酸カルシウム),SrTiO(チタン酸ストロンチウム),ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaSrTi1-zZr(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等を用いることができる。
【0026】
図5は、外部電極20aの断面図であり、図1のB-B線の部分断面図である。なお、図5では、断面を表すハッチを省略している。図5で例示するように、外部電極20aは、下地層上にめっき層が形成された構造を有し、例えば、下地層21上に、Cuめっき層22、Niめっき層23およびSnめっき層24が形成された構造を有する。各めっき層は、特に限定されず、Auめっきなどの他のめっき層を設けてもよい。下地層21は、例えば、Cu,Tiなどの導電性金属のスパッタ膜である。なお、図5では、外部電極20aについて例示しているが、外部電極20b~20dも同様の構造を有する。
【0027】
低背構造を有する積層セラミックコンデンサでは、クラックが発生し得る。例えば、特定の外部電極と隣接する一方の外部電極との間から、当該特定の外部電極と隣接する他方の外部電極との間にかけてクラックが発生し得る。図6の例では、積層方向から見た積層セラミックコンデンサ100の平面視において、外部電極20aと外部電極20bとの間の辺における外部電極20aの近傍位置から、外部電極20bと外部電極20cとの間の辺における外部電極20cの近傍位置にかけてクラックが発生している。クラックが発生すると、積層セラミックコンデンサの抗折強度が低下するおそれがある。そこで、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100は、クラックの発生を抑制するための構造を有している。
【0028】
図7(a)~図7(c)は、外部電極20a~20dの詳細を例示する図である。図7(a)は、積層方向から見た場合の積層セラミックコンデンサ100の平面図である。図7(b)は、積層セラミックコンデンサ100の側面図である。図7(c)は、積層セラミックコンデンサ100の側面図の他の例である。
【0029】
例えば、図7(a)で例示するように、外部電極20aは、積層方向から見た場合の平面視で略矩形状を有している。当該略矩形状において、長さLの方向の長さをE1とし、幅Wの方向の長さをE2とする。
【0030】
さらに、外部電極20aは、側面50aに相当する辺に沿って(接しつつ)、外部電極20dに向かって延びる延在部20a1を備えている。さらに、外部電極20aは、側面50bに相当する辺に沿って(接しつつ)、外部電極20bに向かって延びる延在部20a2を備えている。すなわち、外部電極20aは、隣接する外部電極20b,20dに対して、積層チップ10がなす略矩形状の辺に沿って(接しつつ)延びる延在部を備えている。これらの延在部が辺に沿って(接しつつ)延びる長さを長さRxとする。これらの延在部が当該辺に向かって延びる方向(辺に対して垂直方向)の長さを長さRyとする。隣接する2つの外部電極の延在部同士が辺において離間する距離を距離Gとする。
【0031】
図7(b)で例示するように、側面50aにおいて、延在部20a1は、下面40bまで延びている。同様に、側面50bにおいて、延在部20a2は、下面40bまで延びている。すなわち、外部電極20aは、積層チップ10の側面において、隣接する外部電極20b,20dに対して延びる延在部を備えている。
【0032】
図7(c)で例示するように、延在部20a1は、上面40aから下面40bにかけて延びる途中で、途切れているか、幅が狭くなっていてもよい。この場合、延在部20a1は、上面40aおよび下面40bの近傍では外部電極20dに対して延在し、上面40aと下面40bとの間の一部で、途切れているか幅が狭くなっていることが好ましい。
【0033】
外部電極20b~20dも外部電極20aと同様の構造を有している。すなわち、外部電極20b~20dは、隣接する2つの外部電極に対して、積層チップ10がなす略矩形状の辺に沿って(接しつつ)延びる延在部を備えている。また、外部電極20b~20dの延在部は、積層チップ10の側面において、上面40aから下面40bまで延びていてもよい。この場合の延在部は、側面に対する平面視において、一部で途切れているか、幅が狭くなっていてもよい。
【0034】
積層方向における積層セラミックコンデンサ100の平面視において、各外部電極の延在部の形状は、特に限定されない。延在部は、図7(a)で例示するように、辺に向かって凹んでいてもよく、図8(a)で例示するように辺から内方に凸状であってもよい。図8(a)の例では、延在部は、扇形状を有している。または、図8(b)で例示するように、延在部は、積層セラミックコンデンサ100の上面視において、曲率を有さず、略三角形状を有していてもよい。または、図8(c)で例示するように、延在部は、積層セラミックコンデンサ100の上面視において、略矩形状を有していてもよい。
【0035】
本実施形態によれば、外部電極から、積層チップを平面視した場合の辺に沿って延在部が設けられていることから、延在部が設けられていない場合と比較して強度が向上する。それにより、クラックの発生が抑制される。例えば、図6で例示したクラック発生経路に対して、垂直方向(Rx方向)に外部電極の延在部が設けられていることから、クラックの発生が抑制される。それにより、積層セラミックコンデンサ100の抗折強度を向上させることができる。また、延在部が積層チップ10の側面にまで延在すれば、さらに強度が向上する。
【0036】
長さRxおよび長さRyが小さすぎると、延在部が十分に長くなく、クラックの発生が十分に抑制されないおそれがある。そこで、長さRxおよび長さRyに下限を設けることが好ましい。例えば、長さRxは、5μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、70μm以上であることがさらに好ましい。長さRyは、5μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、70μm以上であることがさらに好ましい。
【0037】
一方、長さRxが大きすぎると、積層セラミックコンデンサの基板への実装時の半田ブリッジによる外部電極間のショートの発生といった不具合が生じるおそれがある。そこで、距離Gに下限を設けることが好ましい。例えば、距離Gは、50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、180μm以上であることがさらに好ましい。
【0038】
各外部電極からの上記延在部が薄すぎると、強度を十分に向上させることができないおそれがある。そこで、延在部の厚さに下限を設けることが好ましい。例えば、延在部の厚さは、2μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。
【0039】
なお、本実施形態においては、4つの外部電極20a~20dのそれぞれに、延在部を設けたが、それに限られない。4つの外部電極20a~20dの少なくともいずれかに延在部が設けられていればよい。また、各外部電極から、隣の2つの外部電極に向かって延在部が設けられているが、それに限られない。隣の2つの外部電極の少なくともいずれか一方に向かって延在部が設けられていればよい。
【0040】
または、外部電極20a~20dは、必ずしも積層チップ10の角をなす2つの辺にまで設けられていなくてもよい。例えば、各外部電極は、一方の辺まで延在している一方で、他方の辺までは延在していなくてもよい。図9の例では、外部電極20aは、側面50aに相当する辺まで延在している一方、側面50bに相当する辺まで延在していない。すなわち、積層チップ10を積層方向から見た場合の平面視における略矩形状において、辺の垂直二等分線(図9の点線)で区切られる4つの各角部内に、外部電極20a~20dのそれぞれが配置され、外部電極20a~20dのそれぞれは、少なくともいずれか一方の辺にかけて設けられていればよい。このとき、内部電極層12は外部電極の設けられていない辺まで延在しない。この場合においても、各外部電極が延在部を備えることで、積層セラミックコンデンサ100の強度が向上する。それにより、クラックの発生を抑制することができる。
【0041】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。図10は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0042】
(原料粉末作製工程)
まず、誘電体層11を形成するための誘電体材料を用意する。誘電体層11に含まれるAサイト元素およびBサイト元素は、通常はABOの粒子の焼結体の形で誘電体層11に含まれる。例えば、BaTiOは、ペロブスカイト構造を有する正方晶化合物であって、高い誘電率を示す。このBaTiOは、一般的に、二酸化チタンなどのチタン原料と炭酸バリウムなどのバリウム原料とを反応させてチタン酸バリウムを合成することで得ることができる。誘電体層11を構成するセラミックの合成方法としては、従来種々の方法が知られており、例えば固相法、ゾル-ゲル法、水熱法等が知られている。本実施形態においては、これらのいずれも採用することができる。
【0043】
得られたセラミック粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、Mg(マグネシウム)、Mn(マンガン),V(バナジウム),Cr(クロム),希土類元素(Y(イットリウム),Sm(サマリウム),Eu(ユウロピウム),Gd(ガドリニウム),Tb(テルビウム),Dy(ジスプロシウム),Ho(ホロミウム),Er(エルビウム),Tm(ツリウム)およびYb(イッテルビウム))の酸化物、並びに、Co(コバルト),Ni,Li(リチウム),B(ホウ素),Na(ナトリウム),K(カリウム)およびSi(シリコン)の酸化物もしくはガラスが挙げられる。
【0044】
本実施形態においては、好ましくは、まず誘電体層11を構成するセラミックの粒子に添加化合物を含む化合物を混合して820~1150℃で仮焼を行う。続いて、得られたセラミック粒子を添加化合物とともに湿式混合し、乾燥および粉砕してセラミック粉末を調製する。例えば、セラミック粉末の平均粒子径は、誘電体層11の薄層化の観点から、好ましくは50~300nmである。例えば、上記のようにして得られたセラミック粉末について、必要に応じて粉砕処理して粒径を調節し、あるいは分級処理と組み合わせることで粒径を整えてもよい。
【0045】
(積層工程)
次に、得られた誘電体材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリーを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に誘電体グリーンシートを塗工して乾燥させる。
【0046】
次に、誘電体グリーンシートの表面に、有機バインダを含む内部電極形成用の金属導電ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等により印刷することで、内部電極層用のパターンを配置する。金属導電ペーストには、共材としてセラミック粒子を添加する。セラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層11の主成分セラミックと同じであることが好ましい。
【0047】
その後、基材から剥離した状態で、内誘電体グリーンシートを交互に積層する。例えば、合計の積層数を100~500層とする。
【0048】
その後、積層した誘電体グリーンシートの積層体の上下にカバー層13となるカバーシートを圧着することで、セラミック積層体を得る。その後、得られたセラミック積層体に対して、250~500℃のN雰囲気中で脱バインダ処理する。
【0049】
(焼成工程)
このようにして得られた成型体を酸素分圧10-7~10-10atmの還元雰囲気中で1100~1300℃で10分~2時間焼成する。このようにして、積層セラミックコンデンサ100が得られる。
【0050】
(再酸化処理工程)
その後、Nガス雰囲気中で600℃~1000℃で再酸化処理を行ってもよい。
【0051】
(外部電極形成工程)
次に、外部電極20a~20d以外の領域にマスクをし、スパッタ法を用いて、下地層21を形成する。スパッタ法以外にも、蒸着法、スプレー法など、薄膜形成できる方法であれば用いることができる。その後、めっき処理によって、Cuめっき層22、Niめっき層23およびSnめっき層24を順に形成する。
【0052】
なお、上記各実施形態においては、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、バリスタやサーミスタなどの、他の電子部品を用いてもよい。
【実施例
【0053】
以下、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを作製し、特性について調べた。
【0054】
(実施例1~実施例15)
0606形状(L=0.6mm、W=0.6mm)で、積層チップ10の厚みが70μm、めっき後寸法で厚さT=90μm、E1=E2=200μmの積層セラミックコンデンサ100を作製した。外部電極の形状は、図7(a)の形状とした。実施例1では、Rx=5~10μmであり、Ry=5~10μmであった。実施例2では、Rx=5~10μmであり、Ry=20~25μmであった。実施例3では、Rx=5~10μmであり、Ry=70~75μmであった。実施例4では、Rx=15~20μmであり、Ry=5~10μmであった。実施例5では、Rx=15~20μmであり、Ry=20~25μmであった。実施例6では、Rx=15~20μmであり、Ry=70~75μmであった。実施例7では、Rx=30~35μmであり、Ry=5~10μmであった。実施例8では、Rx=30~35μmであり、Ry=20~25μmであった。実施例9では、Rx=30~35μmであり、Ry=70~75μmであった。実施例10では、Rx=55~60μmであり、Ry=5~10μmであった。実施例11では、Rx=55~60μmであり、Ry=20~25μmであった。実施例12では、Rx=55~60μmであり、Ry=70~75μmであった。実施例13では、Rx=70~75μmであり、Ry=5~10μmであった。実施例14では、Rx=70~75μmであり、Ry=20~25μmであった。実施例15では、Rx=70~75μmであり、Ry=70~75μmであった。RxおよびRy以外の条件は、実施例1~実施例15で共通とした。
【0055】
(比較例)
比較例では、Rx=Ry=0とした。すなわち、比較例では、外部電極に延在部を設けなかった。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0056】
実施例1~実施例15および比較例のそれぞれについて、1000個のサンプルを作製した。各サンプルについて、抗折強度試験をした場合に図6のようなクラックが発生したか否かを確認した。実施例1~実施例15および比較例のそれぞれについて、クラックが発生したサンプル数の、測定対象サンプル数に対する比率を、クラック発生率とした。
【0057】
また、実施例1~実施例15および比較例のそれぞれについて、抗折強度を測定した。図11は、クラック発生率および抗折強度比を示すグラフである。図11において、横軸はRxを示し、左側の縦軸は抗折強度比(比較例の抗折強度を1とした場合の比率)を示し、右側の縦軸はクラック発生率を示す。なお、各Rxの抗折強度比は、異なる3つのRy値の平均値から算出した。
【0058】
図11に示すように、比較例と比較して、実施例1~15では、クラック発生率が低下した。これは、外部電極に延在部を設けることによって強度が向上したからであると考えられる。また、RxおよびRyが大きくなるにつれて、クラック発生率が低下した。これは、RxおよびRyが大きくなるにつれて延在部が大きくなって、強度が向上したからであると考えられる。なお、クラック発生率の低下に伴って、抗折強度比が向上する結果も確認された。
【0059】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 積層チップ
11 誘電体層
12 内部電極層
13 カバー層
20a,20b 外部電極
20a1,20a2 延在部
21 下地層
22 Cuめっき層
23 Niめっき層
24 Snめっき層
40a 上面
40b 下面
50a~50d 側面
100 積層セラミックコンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11