(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】ヘリコプターのトランスミッション構造
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20240117BHJP
B64C 27/14 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
F16H57/04 G
B64C27/14
(21)【出願番号】P 2019236613
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 健太
(72)【発明者】
【氏名】早坂 陽
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】有澤 秀則
(72)【発明者】
【氏名】篠田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】橋本 拓典
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-008461(JP,A)
【文献】特開平03-048018(JP,A)
【文献】特開2008-008408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
B64C 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリコプターの原動機から回転翼に動力を伝達するトランスミッション構造であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置されたギヤに前記原動機の動力を伝達する入力軸と、
前記ハウジング内において前記入力軸を回転可能に支持する軸受であって、前記入力軸を保持する環状の内輪と、前記内輪の径方向外方に配置され、前記ハウジングに対して固定された環状の外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に挟まれた複数の転動体とを有する軸受と、
前記外輪の外周面及び前記ハウジングの間に挟み込まれた、前記ハウジングに比べて熱伝導率が低い支持材と、を備え
、
前記支持材は、前記ハウジングに面する少なくとも1つの空気層が形成されるように、前記入力軸の軸線の周方向に互いに間隔をあけて、前記ハウジングに対して接触する複数の接触部を有する、ヘリコプターのトランスミッション構造。
【請求項2】
前記内輪の内周面及び前記入力軸の間に挟み込まれた、前記内輪及び前記入力軸に比べて熱伝導率が低いスリーブを更に備える、請求項
1に記載のヘリコプターのトランスミッション構造。
【請求項3】
前記支持材は、樹脂製である、請求項
1又は
2に記載のヘリコプターのトランスミッション構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリコプターのトランスミッション構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリコプターの回転翼は、原動機からトランスミッションを介して動力が伝達されることにより回転する。例えば特許文献1には、ケーシング内に取付けられた入力軸(トランスミッションシャフト)と、入力軸をケーシング内で回転可能に支持する多数の軸受を備えたトランスミッション構造が開示されている。入力軸から動力が伝達されるギヤや入力軸を支持する軸受には、潤滑油が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘリコプターのトランスミッションには、飛行中に潤滑油が潤滑系統によりトランスミッションに供給されない非常時においても一定時間継続的に運転できる継続運転能力(以下、ドライラン性能)が求められる。近年は、このドライラン性能の更なる向上が求められている。
【0005】
そこで本発明は、ヘリコプターのトランスミッション構造において、ドライラン性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るヘリコプターのトランスミッション構造は、ヘリコプターの原動機から回転翼に動力を伝達するトランスミッション構造であって、ハウジングと、前記ハウジング内に配置されたギヤに前記原動機の動力を伝達する入力軸と、前記ハウジング内において前記入力軸を回転可能に支持する軸受であって、前記入力軸を保持する環状の内輪と、前記内輪の径方向外方に配置され、前記ハウジングに対して固定された環状の外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に挟まれた複数の転動体とを有する軸受と、前記内輪の内周面及び前記入力軸の間に挟み込まれた、前記内輪及び前記入力軸に比べて熱伝導率が低いスリーブと、を備える。
【0007】
前記トランスミッション構造によれば、内輪の内周面及び入力軸の間に熱伝導率の低いスリーブが挟み込まれている。このため、オイル切れにより入力軸において生じた熱が、入力軸から内輪へ伝達されるのが抑制される。これにより、軸受の温度上昇の抑制による焼き付きの防止及び軸受における内輪と外輪の間の温度差低減による軸受の内部に存在する隙間の減少の抑制が可能となる。これらにより、軸受の損傷を抑制することができ、従って、ドライラン性能を向上させることができる。
【0008】
本発明の別の態様に係るヘリコプターのトランスミッション構造は、ヘリコプターの原動機から回転翼に動力を伝達するトランスミッション構造であって、ハウジングと、前記ハウジング内に配置されたギヤに前記原動機の動力を伝達する入力軸と、前記ハウジング内において前記入力軸を回転可能に支持する軸受であって、前記入力軸を保持する環状の内輪と、前記内輪の径方向外方に配置され、前記ハウジングに対して固定された環状の外輪と、前記内輪及び前記外輪の間に挟まれた複数の転動体とを有する軸受と、前記外輪の外周面及び前記ハウジングの間に挟み込まれた、前記ハウジングに比べて熱伝導率が低い支持材と、を備える。
【0009】
オイル切れにより入力軸において生じた熱は、入力軸、内輪及び転動体を通じて外輪へ伝達される。前記トランスミッション構造によれば、外輪の外周面及びハウジングの間に熱伝導率の低い支持材が挟み込まれている。このため、外輪の熱がハウジングへ伝達されるのが抑制される。これにより、軸受における内輪と外輪の間の温度差を低減することができ、軸受の内部に存在する隙間の減少を抑制できるため、軸受の損傷を抑制することができる。従って、ドライラン性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヘリコプターのトランスミッション構造において、ドライラン性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るヘリコプターのトランスミッションの概略斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るヘリコプターのトランスミッション構造を示す図面である。
【
図3】第2実施形態に係るヘリコプターのトランスミッション構造を示す図面である。
【
図4】第2実施形態に係るトランスミッション構造の変形例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るヘリコプターのトランスミッションについて、図面を参照して説明する。なお、以下の説明における方向の概念は、便宜上、ヘリコプターの機体を基準とする。つまり、トランスミッションの前、後、上、下、左、右は、トランスミッションを搭載するヘリコプターの機体の前、後、上、下、左、右にそれぞれ一致する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るヘリコプターのトランスミッション1の概略斜視図である。トランスミッション1は、ヘリコプターに搭載された原動機(図示せず)から回転翼(図示せず)に動力を伝達する。トランスミッション1は、ギヤボックスであり、複数のギヤを収容したハウジング2を有する。ハウジング2は、例えばマグネシウム合金製である。例えば原動機は、タービンであり、例えば回転翼は、ヘリコプターの機体上部で回転する主回転翼である。ハウジング2は、ヘリコプターの上下方向に延びる主軸3を支持しており、当該主軸3に主回転翼が取り付けられている。
【0014】
ハウジング2には、2つの挿通口4を有する。2つの挿通口4は、ハウジング2の後側部分に左右に並んで配置されている。各挿通口4は、円筒状の内周面4a(
図2参照)を有している。本実施形態では、2つの挿通口4の中心軸線Cは、概ね前後方向に延びており、互いに概ね平行である。
【0015】
図2は、第1実施形態に係るヘリコプターのトランスミッション1の構造を示す図面である。
図2には、トランスミッション1における挿通口4近傍部分を挿通口4の中心軸線Cに沿って切断した断面が示されている。各挿通口4には、入力軸5が挿通される。入力軸5の軸線は、挿通口4の軸線Cに一致する。入力軸5は、軸部5aと、ハウジング2内に配置されたギヤ6と噛み合う噛合い部5bを有する。入力軸5は、ハウジング2内のギヤ6と噛合い部5bを通して接続されており、原動機の動力をハウジング2内のギヤ6に伝達する。入力軸5は、例えば合金鋼製である。
【0016】
軸部5aは、挿通口4の内周面4aの径方向内方に位置している。軸部5aは、挿通口4の内周面4aに配置された複数の軸受10に支持される。噛合い部5bは、軸部5aより前側に位置する。本実施形態では、ギヤ6及び噛合い部5bは、互いに噛み合うベベルギヤである。なお、ギヤ6の回転力は、上述の主軸3に伝達される。
【0017】
本実施形態において、入力軸5は、中空に形成されている。入力軸5は、内部空間Sを有しており、入力軸5の前端には、入力軸5の内部空間Sを開放する開口部5cが形成されている。また、入力軸5の軸部5aには、内部空間Sを外部に連通させる複数の噴射孔5dが形成されている。各噴射孔5dは、例えば円形である。噴射孔5dは、軸受10に向けられている。
【0018】
挿通口4の内周面4aには、複数の軸受10が挿通口4の軸線C方向に並んで配置されている。軸受10は、入力軸5を回転可能に支持する。軸受10は、例えば鉄製である。各軸受10は、環状の内輪11と、内輪11の径方向外方に配置された環状の外輪12と、内輪11及び外輪12の間に挟まれた複数の転動体13とを有する。環状の外輪12は、ハウジング2に対して固定されている。外輪12の外周面は、挿通口4の内周面4aに当接している。各転動体13は、球である。即ち、本実施形態では、軸受10は、玉軸受である。但し、軸受10は、ころ軸受など他の形式であってもよい。
【0019】
内輪11は、入力軸5を保持する。本実施形態では、内輪11は、入力軸5に当接していない。具体的には、内輪11の内周面及び入力軸5の軸部5aの外周面の間には、スリーブ20が径方向に挟み込まれている。
【0020】
スリーブ20は、円筒部21及び突設部22を有する。円筒部21の内周面は、入力軸5の軸部5aの外周面に当接しており、円筒部21の外周面は、軸受10の内輪11の内周面に当接している。突設部22は、円筒部21の前側端部(ハウジング2中央側の端部)にて、径方向外方に突出している。例えば突設部22は、円筒部21の周方向に延び、環状に形成されている。突設部22は、複数の軸受10の中で最も前側(ハウジング2中央側)に位置する軸受10の内輪11の前側端面に当接している。これにより、複数の軸受10とスリーブ20とは、軸線C方向の互いの位置を容易に合わせられる。
【0021】
スリーブ20は、内輪11及び入力軸5に比べて熱伝導率が低い。本実施形態では、スリーブ20は、樹脂製である。スリーブ20の原料としては、耐熱性と耐摩耗性の高い樹脂が採用される。円筒部21及び突設部22とは一体的に成形されている。
【0022】
スリーブ20は、入力軸5の軸線方向及び入力軸5の軸線の周方向において噴射孔5dと対応する位置に開口23を有する。開口23は、スリーブ20の円筒部21に形成されている。本実施形態では、各開口23を通じて軸受10に潤滑油が供給される。開口23は、噴射孔5dの軸線方向から見て噴射孔5dを包含するように、若干大きめに形成されている。
【0023】
具体的には、トランスミッション1は、動作中に潤滑液で適切に潤滑される必要があるため、当該ヘリコプターは、トランスミッション潤滑装置30を備える。本実施形態では、本実施形態では、入力軸5の回転による遠心力で潤滑油を軸受10に供給する油供給方式、いわゆる遠心潤滑を採用している。トランスミッション潤滑装置30は、入力軸5の内部空間Sに潤滑油を吐出するノズル31と、ノズル31に潤滑油を供給する油供給装置32を備える。ノズル31は、入力軸5の開口部5cを通して入力軸5の内部空間Sに潤滑液を吐出する。例えば、油供給装置32は、ハウジング2内において潤滑油を貯留する図示しないオイルサンプと、当該オイルサンプに貯留された潤滑油をノズルに圧送するポンプとを備える。
【0024】
入力軸5における軸部5aより後側部分には、入力軸5の内部空間Sを閉鎖するプラグ5eが設けられている。なお、入力軸5の後端には、プラグ5eを設けずに、内部の潤滑油の排出を遅らせるように穴が形成された板が設けられた構成としてもよい。トランスミッション潤滑装置30により入力軸5の内部空間Sに溜まった潤滑液は、入力軸5の回転による遠心力で噴射孔5dにより開口23を通過するように外部に噴射され、軸受10を潤滑する。
【0025】
本実施形態では、開口23は、噴射孔5dから噴射した潤滑油を確実に通過させるように、噴射孔5dに比べて若干大きめに形成されている。例えば、開口23は、その挿通方向から見て、噴射孔5dを包含するように形成されている。このため、入力軸5とスリーブ20との間の入力軸5の軸線方向及び/又は軸線の周方向の多少の位置ずれは吸収される。本実施形態では、開口23を噴射孔5dに比べて大きめに(例えば周方向に長い円弧長穴状に)形成されているため、入力軸5に対してスリーブ20を組み付ける際の周方向の多少の位置ずれは吸収される。但し、開口23は、噴射孔5dと同形同大でもよい。
【0026】
以上に説明したように、本実施形態に係るヘリコプターのトランスミッション構造は、内輪11の内周面及び入力軸5の間に挟み込まれた、内輪11及び入力軸5に比べて熱伝導率が低いスリーブ20を備える。本実施形態では、内輪11の内周面及び入力軸5の間に挟み込まれたスリーブ20により、オイル(潤滑油)切れにより入力軸5の噛合い部5bにおいて生じた熱が、入力軸5から内輪11へ伝達されるのが抑制される。これにより、軸受10の温度上昇の抑制による焼き付きの防止、及び軸受10における内輪11と外輪12の間の温度差低減による軸受10の内部に存在する隙間の減少の抑制が可能となる。これらにより、軸受10の損傷を抑制することができ、従って、ドライラン性能を向上させることができる。
【0027】
また、本実施形態では、スリーブ20は、入力軸5の軸線方向及び入力軸5の軸線の周方向において噴射孔5dと対応する位置に開口を有するため、スリーブ20と入力軸5との間の一定の摩擦力を確保しつつ、入力軸5の遠心力を利用した軸受10への潤滑油の供給を実現できる。
【0028】
なお、本実施形態において、軸受10に潤滑油を供給する方式として、入力軸5の回転による遠心力で潤滑油を軸受10に供給する油供給方式、いわゆる遠心潤滑方式が説明されたが、例えば、入力軸5の外部に設けられたノズル(図示せず)から軸受10に潤滑油を供給するなど、別の方式により軸受10に潤滑油を供給してもよい。この場合、入力軸5は噴射孔5dを有さなくてもよく、スリーブ20は開口23を有さなくてもよい。
【0029】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るヘリコプターのトランスミッション構造について、
図3を参照して説明する。本実施形態において、第1実施形態と異なる構成を主に説明し、第1実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0030】
本実施形態では、内輪11の内周面及び入力軸5の軸部5aの外周面の間にスリーブ20が挟み込まれる代わりに、外輪12の外周面及びハウジング2の間に支持材40が挟み込まれている点で第1実施形態と異なる。
【0031】
内輪11は、入力軸5に当接している。具体的には、軸受10の内輪11の内周面が、入力軸5の軸部5aの外周面に当接している。
【0032】
支持材40は、円筒部41及び突設部42を有する。円筒部41の内周面は、軸受10の外輪12の外周面に当接しており、円筒部41の外周面は、挿通口4の内周面4aに当接している。突設部42は、円筒部41の前側端部(ハウジング2中央側の端部)にて、径方向内方に突出している。例えば突設部42は、円筒部41の周方向に延び、環状に形成されている。突設部42は、複数の軸受10の中で最も前側(ハウジング2中央側)に位置する軸受10の外輪12の前側端面に当接している。これにより、複数の軸受10と支持材40とは、軸線C方向の互いの位置を容易に合わせられる。
【0033】
支持材40は、マグネシウム合金製であるハウジング2に比べて熱伝導率が低い。本実施形態では、支持材40は、樹脂製である。支持材40の原料としては、耐熱性と耐摩耗性の高い樹脂が採用される。円筒部41及び突設部42とは一体的に成形されている。
【0034】
なお、本実施形態では、軸受10に潤滑油を供給する方式として、第1実施形態で説明された遠心潤滑方式を採用しておらず、入力軸5の外部に設けられたノズル(図示せず)から軸受10に潤滑油が供給される。このため、入力軸5は噴射孔5dを有していない。但し、本実施形態でも、第1実施形態と同様に遠心潤滑を採用してもよく、この場合、入力軸5の軸部5aに噴射孔5dが形成される。
【0035】
オイル切れにより入力軸5の噛合い部5bにおいて生じた熱は、入力軸5、内輪11及び転動体13を通じて外輪12へ伝達される。本実施形態のトランスミッション構造によれば、外輪12の外周面及びハウジング2の間に熱伝導率の低い支持材40が挟み込まれているため、外輪12の熱がハウジング2へ伝達されるのが抑制される。これにより、軸受10における内輪11と外輪12の間の温度差を低減することができ、軸受10の内部に存在する隙間の減少を抑制できるため、軸受10の損傷を抑制することができる。従って、ドライラン性能を向上させることができる。
【0036】
(変形例)
図4は、第2実施形態に係るトランスミッション構造の変形例を示す図面である。本変形例において、第2実施形態と異なる構成を主に説明し、第2実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0037】
この変形例では、外輪12の外周面及びハウジング2の間に挟み込まれた支持材50が、挿通口4の内周面4aに面する複数の空気層が形成されるように、入力軸5の軸線方向に互いに間隔をあけて挿通口4の内周面4aに対して接触する複数の接触部53を有する。
【0038】
具体的には、支持材50は、円筒部51及び突設部52を有する。円筒部51及び突設部52は、それぞれ、上述の支持材40の円筒部41及び突設部42と同様の構成であるが、円筒部51の外周面の形状が円筒部41のそれと異なる。円筒部51の外表面には、入力軸5の軸線方向に間隔をあけて並んだ複数の環状の溝54が形成されている。つまり、円筒部51の外周面には、接触部53と溝54とが入力軸5の軸線方向に交互に並んでいる。これにより、円筒部51は、その外周面の全部ではなく部分的に挿通口4の内周面4aに当接する。
【0039】
溝54と挿通口4の内周面4aとにより囲まれた空間が空気層として構成される。空気は樹脂よりも熱伝導率が低いため、外輪12の熱がハウジング2へ伝達されるのを第2実施形態に比べて更に抑制できる。また、支持材50が溝54を有することで、第2実施形態に比べて支持材50を軽量化でき、ひいてはトランスミッション1の軽量化を図ることができる。
【0040】
(その他の実施形態)
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。
【0041】
例えば、本発明のヘリコプターのトランスミッション構造は、主回転翼の代わりに尾回転翼に動力を伝達するものであってもよい。また、ハウジングが有する挿通口は、2つでなくてもよく、1つまたは3つ以上でもよい。また、挿通口は、ハウジングの後側部分以外の箇所に配置されてもよい。
【0042】
また、第1実施形態、第2実施形態及び変形例の各構成に対して、遠心潤滑方式、及び入力軸の外部に設けられたノズルから潤滑油を供給する方式のいずれの方式を適用してもよい。
【0043】
また、挿通口及び入力軸の中心軸線の方向も上記実施形態で説明されたもの限定されない。
【0044】
また、本発明のトランスミッション構造は、内輪の内周面及び入力軸の間に挟み込まれたスリーブと、外輪の外周面及びハウジングの間に挟み込まれた支持材の双方を備えてもよい。
【0045】
また、スリーブは樹脂製でなくてもよく、内輪及び入力軸に比べて熱伝導率が低いものであれば、別の材質であってもよい。また、支持材も樹脂製でなくてもよく、ハウジングに比べて熱伝導率が低いものであれば、別の材質であってもよい。また、上記実施形態では、ハウジング2はマグネシウム合金製、入力軸5及び軸受10は、合金鋼製であったが、本発明はこれに限定されない。
【0046】
例えば、スリーブ及び支持材の一方又は双方は、鉄よりも熱伝導率が低い金属(例えばチタン)で製作されてもよい。但し、スリーブ及び支持材の一方又は双方を樹脂製とすることで、チタンなどの熱伝導率が低い金属により製作されたものと比べて熱伝導率をより低くすることができ、好適である。
【0047】
例えばハウジングが、ギヤを収容するハウジング本体と、当該ハウジング本体に固定され、入力軸が挿通される挿通口を構成する円筒状のライナ部材とを備える構成である場合、ハウジング本体とライナ部材とが異なる材質で構成されてもよい。この場合、本発明における支持材は、少なくともハウジングにおけるライナ部材に比べて熱伝導率が低い材質で構成されていればよい。
【0048】
また、スリーブの形状は、上記実施形態で説明されたものに限定されない。例えば上記第1実施形態では、スリーブ20の突設部22は、円筒部21の周方向に延び、環状に形成されていたが、突設部22は、周方向に一定の間隔をあけて径方向外方に突出する複数の突出部により構成されていてもよい。また、スリーブ20は突設部22を有していなくてもよい。
【0049】
また、支持材の形状は、上記実施形態で説明されたものに限定されない。例えば上記第2実施形態では、支持材40の突設部42は、円筒部41の周方向に延び、環状に形成されていたが、突設部42は、周方向に一定の間隔をあけて径方向内方に突出する複数の突出部により構成されていてもよい。また、支持材40は突設部42を有していなくてもよい。
【0050】
また、例えば上記第2実施形態の変形例において、支持材50は、入力軸5の軸線方向ではなく、入力軸5の軸線の周方向に互いに間隔をあけてハウジング2の挿通口4の内周面4aに対して接触する複数の接触部を有してもよい。支持材50における円筒部51の外周面に、メッシュ状の溝が形成されてもよい。また、支持材50における円筒部51全体がメッシュ構造を有していてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 :トランスミッション
2 :ハウジング
5 :入力軸
5b :噛合い部
6 :ギヤ
10 :軸受
11 :内輪
12 :外輪
13 :転動体
20 :スリーブ
40,50 :支持材
43,53 :接触部