(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】免疫調節融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240117BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240117BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240117BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20240117BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240117BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240117BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240117BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240117BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240117BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240117BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240117BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240117BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240117BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240117BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240117BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240117BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240117BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20240117BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240117BHJP
A61K 35/768 20150101ALI20240117BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20240117BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240117BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/861 Z
C07K14/47
C07K16/00
C07K14/705
C12N15/09 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K38/17
A61K39/395 Y
A61K47/68
A61K47/65
A61K48/00
A61K35/768
A61K35/761
A61K35/17
(21)【出願番号】P 2019516603
(86)(22)【出願日】2017-09-27
(86)【国際出願番号】 US2017053765
(87)【国際公開番号】W WO2018064190
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-25
(32)【優先日】2016-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518246958
【氏名又は名称】エピセントアールエックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】リード,トニー
(72)【発明者】
【氏名】オロンスキー,ブライアン,ティー.
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-519014(JP,A)
【文献】特表2013-521311(JP,A)
【文献】特表2011-526794(JP,A)
【文献】特表平11-509739(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0004037(US,A1)
【文献】特表2015-516815(JP,A)
【文献】特表2016-512508(JP,A)
【文献】特表2001-515360(JP,A)
【文献】特表2008-526189(JP,A)
【文献】国際公開第2016/100788(WO,A1)
【文献】特開2008-106076(JP,A)
【文献】国際公開第2015/077540(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 43/00
A61K 35/00-35/768
A61K 38/17
A61K 39/395
A61K 47/65
A61K 47/68
A61K 48/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:62および配列番号:63から選択されるアミノ酸配
列、または
b
)配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32および配列番号:33から選択されるアミノ酸配列
を含む
、単離された融合タンパク質。
【請求項2】
該融合タンパク質が、配列番号:22、配列番号:62および配列番号:63から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の単離された融合タンパク質。
【請求項3】
請求項1
または2記載の2つの融合タンパク質を含むヒトTGFβ結合タンパク質であって、2つの融合タンパク質が互いに共有結合し、2つの細胞外ドメインが一緒になって、ヒトTGFβに結合するための結合部位を画定する、ヒトTGFβ結合タンパク質。
【請求項4】
請求項1
または2記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
【請求項5】
請求項
4記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項6】
該発現ベクターが腫瘍崩壊性ウイルスである、請求項
5記載の発現ベクター。
【請求項7】
腫瘍崩壊性ウイルスがアデノウイルスであり、
a)融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、E1b-19Kの開始部位とE1b-55Kの開始部位の間に配置されるE1b-19K挿入部位に挿入される、および/または
b)E1b-19K挿入部位が、Ad5ゲノム(配列番号:52)のヌクレオチド1714~1916に対応する欠損を含む、および/または
c)融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、Ad5ゲノム(配列番号:52)の1714に対応するヌクレオチドと1916に対応するヌクレオチドの間に挿入される、および/または
d)融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、CTGACCTC(配列番号:53)とTCACCAGG(配列番号:54)の間に挿入される、および/または
e)アデノウイルスが、5'~3'の方向で、CTGACCTC(配列番号:53)、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列およびTCACCAGG(配列番号:54)を含む、および/または
f)アデノウイルスが、Pea3結合部位またはその機能的断片の欠損を含む、
請求項
6記載の発現ベクター。
【請求項8】
腫瘍崩壊性ウイルスが、過剰増殖細胞中で選択的に複製される、および/または過剰増殖細胞中で融合タンパク質を選択的に発現する、請求項
5~
7いずれか記載の発現ベクター。
【請求項9】
請求項
5~
8いずれか記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項10】
(i)請求項1
もしくは2記載の融合タンパク質、請求項
3記載のヒトTGFβ結合タンパク質または請求項
5~
8いずれか記載の発現ベクター;および(ii)少なくとも1つの薬学的に許容され得る担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
【請求項11】
a)腫瘍細胞の増殖を阻害する方法に使用するための、
b)腫瘍増殖の阻害を必要とする被験体において腫瘍増殖を阻害する方法に使用するための、または
c)癌の治療を必要とする被験体において癌を治療する方法に使用するための、
請求項
3記載のヒトTGFβ結合タンパク質、請求項1
もしくは2記載の融合タンパク質または請求項
5~
8いずれか記載の発現ベクター。
【請求項12】
a)癌が、黒色腫、皮膚の扁平上皮癌、基底細胞癌、頭部頸部癌、乳癌、肛門癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、中皮腫、小細胞肺癌、腎細胞癌、前立腺癌、胃食道癌、結腸直腸癌、精巣癌、膀胱癌、卵巣癌、肝臓癌、肝細胞癌、胆管癌、脳および中枢神経系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、子宮内膜癌、神経内分泌癌、リンパ腫、白血病、メルケル細胞癌、消化管間質腫瘍、多発性骨髄腫、子宮癌、肉腫、腎臓癌、眼の癌、膵臓癌ならびに生殖細胞癌から選択される、または
b)癌が、白血病、乳癌、肺癌、膵臓癌、子宮内膜癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頸癌、脳の癌、皮膚癌、結腸直腸癌、胃癌、頭部頸部癌および白血病から選択される、
請求項
11記載のヒトTGFβ結合タンパク質、融合タンパク質または発現ベクター。
【請求項13】
a)発現ベクターが、手術、放射線照射、化学療法、免疫療法、ホルモン療法およびウイルス療法から選択される1つ以上の治療と組み合わせて投与される、または
b)発現ベクターが、リンパ球と組み合わせて投与される、
請求項
11または
12記載のヒトTGFβ結合タンパク質、融合タンパク質または発現ベクター。
【請求項14】
被験体がヒトまたは動物である、請求項
11~
13いずれか記載のヒトTGFβ結合タンパク質、融合タンパク質または発現ベクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、それぞれがそれらの全体において本明細書に参照により援用される、2016年9月27日に出願された米国仮特許出願第62/400,338号および2017年4月12日に出願された米国仮特許出願第62/484,841号の利益および優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明の分野は、分子生物学、特に免疫学および融合タンパク質、例えばサイトカイン受容体融合タンパク質である。
【背景技術】
【0003】
背景
サイトカインは、細胞の増殖および分化ならびに免疫機能の調節を含む広範囲の活性を有する、小さな、分泌される細胞シグナル伝達タンパク質である。サイトカイン、サイトカイン受容体および特定の他の免疫調節タンパク質は、種々の医学的状態を治療するための治療剤として使用されている。しかしながら、例えば皮下または血管の経路によるかかるタンパク質の投与は、不適切な細胞性および細胞外の局在を生じ得、それにより治療活性が限定されおよび/または毒性のリスクが増加する。
【0004】
トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)は、炎症およびアレルギー性免疫応答の限定および終結などの免疫調節特性を有する多面発現性のサイトカインである(Taylor (2009) J. LEUKOC. BIOL. 85(1):29-33)。TGFβは、炎症性、悪性、感染性および自己免疫性の疾患、ならびに骨粗鬆症および線維症、例えば肝硬変および全身性硬化症に関連する。特に、腫瘍中の持続性の高レベルのTGFβは、免疫寛容、脈管形成、転移および腫瘍細胞外マトリックス沈着の増加に関連し、それらの全ては、癌の進行および治療への抵抗性をもたらし得る。
【0005】
TGFβをトラップ(trap)または引き離してTGFβ活性を低減または調節するためのいくつかの治療剤が開発されている。例としては、TGFβに対するモノクローナル抗体、例えばフレソリムマブ(fresolimumab)が挙げられ、これは癌および全身性硬化症の治療のためのいくつかの臨床試験において投与されている(Connolly et al. (2012) INT. J. BIOL. SCI. 8(7): 964-78)。
【0006】
モノクローナル抗体についての代替的なアプローチとしては、TGFβII型受容体(TβRII)またはTGFβIII型受容体(TβRIIIまたはベータグリカン)の細胞外ドメインの可溶性部分を含む組み換えFc融合タンパク質の使用が挙げられる(Connolly et al. (2012) supra)。TGFβトラップ(trap)として知られるかかる分子は、典型的に、二量体TGFβ受容体複合体の二本の鎖の細胞外ドメインを含む。可溶性TβRII-Fc融合の発現は、腫瘍崩壊性アデノウイルスに結び付けられており、原発性の腫瘍増殖および骨溶解性の骨の破壊の有意な低減を生じることが示されている(Hu et al. (2010) HUM. GENE THER. 21(11): 1623-9)。
【0007】
今日までの努力にかかわらず、TGFβに媒介されるヒト患者における障害を治療するために、ヒトTGFβの生物学的活性を中和する向上された融合タンパク質、例えばサイトカイン受容体融合タンパク質、特に向上されたTGFβ受容体融合タンパク質の必要性がある。
【0008】
発明の概要
本発明は、融合タンパク質、例えばサイトカイン受容体融合タンパク質、例えばTGFβII型(TβRII)受容体融合タンパク質、例えばTGFβトラップの機能を向上するリンカー配列の発見に部分的に基づく。リンカー配列は、融合タンパク質(例えばサイトカイン受容体)のリガンド結合部分を最適にリガンド(例えばサイトカイン)に結合させ得、融合タンパク質の2つ以上の成分(例えば二量体サイトカインの2つのサブユニット)の時間的および空間的な共局在を提供し得、発現ベクター(例えばウイルスベクター)からの発現を最適化し得、免疫原性を低減し得、または融合タンパク質の成分の放出を可能にする切断部位を提供し得る。例えば、リンカー配列は、サイトカイン受容体のリガンド結合ドメインが融合タンパク質に関して天然の立体構造を採用することを可能にする充分な柔軟性を提供し得、治療剤としての使用のための融合タンパク質の潜在的な免疫原性を最小化し得る。
【0009】
一局面において、本発明は、例えばN~C末端の方向で、サイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの第1の部分;アミノ酸リンカー;ならびにサイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの第2の部分;免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;および免疫グロブリン(Ig)Fcドメインの少なくとも1つを含む単離された融合タンパク質を提供する。ある態様において、リンカーは約5~約40アミノ酸残基を含む。
【0010】
別の局面において、本発明は、N~C末端の方向で、サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分;アミノ酸リンカー;免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;および免疫グロブリン(Ig)Fcドメインを含む単離された融合タンパク質を提供し、ここで該リンカーは約5~約40 アミノ酸残基を含む。
【0011】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、アミノ酸リンカーは、例えば約5~約15、約5~約20、約5~約30、約10~約15、約10~約20、約10~約30、約10~約40、約15~約20、約15~約30または約15~約40アミノ酸残基を含み得る。
【0012】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、アミノ酸リンカー配列は、内因性ヒトタンパク質、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgM、アルブミンまたはカゼインに由来する。ある態様において、アミノ酸リンカーは、免疫グロブリン(Ig)CH1ドメイン、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEまたはIgM CH1ドメインのC末端部分を含む。ある態様において、アミノ酸リンカーは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:60および配列番号:61から選択されるアミノ酸配列を含む。ある態様において、アミノ酸リンカーは、IgG1 CH1ドメインのC末端部分を含み、例えばアミノ酸リンカーは、配列番号:1、配列番号:60および配列番号:61から選択されるアミノ酸配列、例えば配列番号:1のアミノ酸配列を含む。
【0013】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、アミノ酸リンカーは、サイトカイン、シグナル伝達分子、免疫調節タンパク質もしくはペプチド、または生物学的活性ペプチド由来の配列を含む。
【0014】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、アミノ酸リンカーは、切断部位、例えばタンパク質分解性切断部位、例えば真核細胞の小胞体またはゴルジ体に存在するプロテアーゼにより切断されるタンパク質分解性切断部位を含む。ある態様において、タンパク質分解性切断部位は、フューリン切断部位、例えば配列RX1X2R(配列番号:50)を含むフューリン切断部位であり、ここでX1は任意のアミノ酸であり、X2はLysまたはArgであり、例えば配列RAKR(配列番号:51)を含むフューリン切断部位である。前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、アミノ酸リンカーは、哺乳動物または植物においてタンパク質分解的に安定である。
【0015】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分は、ヒトTβRII受容体の細胞外ドメインの可溶性部分である。例えば、ある態様において、サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分は、配列番号:12のアミノ酸配列または配列番号:12のアミノ酸残基23~159を含む。
【0016】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、融合タンパク質は、TGF-β、CD80、CD19、CD20、IL-1、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-12B/p40、IL-23A/p19、IL27A/p28、IL-27B/EBI3、CD154、CD86、CD137、CD137L、IFN-α、IFN-β、BORIS/CTCFL、FGF、ICAM、IL-24、MAGE、NY-ESO-1、アンギオスタチン、エンドスタチン、アセチルコリン、インターフェロンγ、DKK1/Wnt、p53、チミジンキナーゼ、抗PD-1抗体重鎖もしくは軽鎖、および抗PD-L1抗体重鎖もしくは軽鎖、またはそれらの機能的断片の1つ以上を含む。例えばある態様において、融合タンパク質は、CD80およびCD137L;IL-23A/p19およびIL-12B/p40またはIL-27A/p28およびIL-27B/EBI3を含み得る。
【0017】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、Igヒンジ領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびIgMヒンジ領域から選択され、Ig Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびIgM Fcドメインから選択される。ある態様において、Igヒンジ領域およびFcドメインは一緒になって、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20および配列番号:21から選択されるアミノ酸配列を含む。ある態様において、Ig Fc、Igヒンジ領域およびIg CH1ドメインは単一免疫グロブリンに由来する。
【0018】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、融合タンパク質は、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:62および配列番号:63から選択されるアミノ酸配列を含む。ある態様において、融合タンパク質は、配列番号:22、配列番号:62および配列番号:63から選択されるアミノ酸配列を含む。ある態様において、融合タンパク質は配列番号:22のアミノ酸配列を含む。
【0019】
前述の融合タンパク質のいずれかのある態様において、融合タンパク質は、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:62および配列番号:63から選択される配列に対して、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%より高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0020】
別の局面において、本発明は、一緒になって共有結合する前述の融合タンパク質のいずれかの2つを含む二量体サイトカイン結合タンパク質を提供し、ここでそれぞれの融合タンパク質は、サイトカイン受容体の細胞外ドメインを含み、ここで2つの細胞外ドメインは一緒になってサイトカインのための結合部位を画定する。
【0021】
別の局面において、本発明は、前述の融合タンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0022】
別の局面において、本発明は、前述の核酸のいずれかを含む発現ベクターを提供する。発現ベクターは、腫瘍崩壊性ウイルスであり得、例えば該ウイルスは、過増殖(hyperproliferative)細胞中で選択的に複製し得、および/または過増殖細胞中で融合タンパク質を選択的に発現し得る。ある態様において、腫瘍崩壊性ウイルスは、腫瘍崩壊性アデノウイルス、例えば腫瘍崩壊性2型または5型アデノウイルスである。
【0023】
前述の発現ベクターのいずれかのある態様において、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、E1b-19Kの開始部位とE1b-55Kの開始部位の間に配置されるE1b-19K挿入部位に挿入される。ある態様において、E1b-19K挿入部位は、E1b-19Kの開始部位とE1b-19Kの停止部位の間に配置される。ある態様において、E1b-19K挿入部位は、E1b-19Kの開始部位に隣接する約200ヌクレオチド、例えば203ヌクレオチドの欠損を含む。ある態様において、E1b-19K挿入部位は、Ad5ゲノム(配列番号:52)のヌクレオチド1714~1916に対応する欠損を含むか、または融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、Ad5ゲノム(配列番号:5)の1714および1916に対応するヌクレオチドの間に挿入される。ある態様において、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、CTGACCTC(配列番号:53)とTCACCAGG(配列番号:54)の間に挿入され、例えばアデノウイルスは、5'~3'の方向で、CTGACCTC(配列番号:53)、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列およびTCACCAGG(配列番号:54)を含む。
【0024】
前述の発現ベクターのいずれかのある態様において、アデノウイルスは、少なくとも1つのPea3結合部位またはその機能的部分の欠損を含み得、例えばアデノウイルスはE1aの開始部位の約-300~約-250上流に対応するヌクレオチドの欠損またはE1aの開始部位の-305~-255上流に対応するヌクレオチドの欠損を含み得る。ある態様において、アデノウイルスは、Ad5ゲノム(配列番号:52)の195~244に対応するヌクレオチドの欠損を含み得、および/または組み換えアデノウイルスは、配列GGTGTTTTGG(配列番号:55)を含み得る。ある態様において、組み換え腫瘍崩壊性アデノウイルスは、少なくとも1つのPea3結合部位またはその機能的部分の欠損を含み得、E2F結合部位の欠損を含まない。ある態様において、アデノウイルスは、少なくとも1つのE2F結合部位またはその機能的部分の欠損を含み得る。ある態様において、アデノウイルスは、少なくとも1つのE2F結合部位またはその機能的部分を含み得、Pea3結合部位の欠損を含まない。
【0025】
前述の発現ベクターのいずれかのある態様において、アデノウイルスは、E3欠損を含み得る。ある態様において、E3欠損は、約500~約3185、約500~約3000、約500~約2500、約500~約2000、約500~約1500、約500~約1000、約1000~約3185、約1000~約3000、約1000~約2500、約1000~約2000、約1000~約1500、約1500~約3185、約1500~約3000、約1500~約2000、約2000~約3185、約2000~約3000、約2000~約2500、約2500~約3185、約2500~約3000または約3000~約3185ヌクレオチドの欠損を含む。ある態様において、E3欠損部位は、pVIIIの停止部位とFiberの開始部位の間に配置される。ある態様において、E3欠損部位は、E3-10.5Kの停止部位とE3-14.7Kの停止部位の間に配置される。ある態様において、E3欠損は、E3-10.5Kの停止部位に隣接する約500~約1551、約500~約1500、約500~約1000、約1000~約1551、約1000~約1500または約1500~約1551ヌクレオチドの欠損を含む。ある態様において、E3欠損は、E3-10.5Kの停止部位に隣接する約1050ヌクレオチドの欠損を含み、例えばE3欠損は、E3-10.5Kの停止部位に隣接する1064ヌクレオチドの欠損を含む。ある態様において、E3欠損は、Ad5 dl309 E3欠損に対応する欠損を含む。ある態様において、E3欠損は、Ad5ゲノム(配列番号:52)のヌクレオチド29773~30836に対応する欠損を含む。
【0026】
ある態様において、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、E3欠損に挿入され、例えばヌクレオチド配列は、CAGTATGA(配列番号:56)とTAATAAAAAA(配列番号:57)の間に挿入され、例えばアデノウイルスは、5'~3'の方向で、CAGTATGA(配列番号:56)、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列およびTAATAAAAAA(配列番号:57)を含む。
【0027】
ある態様において、腫瘍崩壊性アデノウイルスは、E1b-19K挿入部位に挿入される融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで該挿入部位は、E1b-19Kの開始部位とE1b-55Kの開始部位および/または改変されたE1a制御配列の間に配置され、ここで少なくとも1つのPea3結合部位またはその機能的部分は欠損される。
【0028】
別の局面において、本発明は、前述の発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を提供する。別の局面において、本発明は、融合タンパク質を発現する条件下で宿主細胞を増殖させる工程および該融合タンパク質を精製する工程を含む、融合タンパク質を産生する方法を提供する。別の局面において、本発明は、標的細胞を、前述の発現ベクターのいずれかの有効量に暴露する工程を含む、標的細胞において融合タンパク質を発現させる方法を提供する。ある態様において、融合タンパク質は翻訳後に2つのポリペプチド鎖に切断される。
【0029】
別の局面において、前述の融合タンパク質または発現ベクターのいずれかを、例えば被験体におけるサイトカイン活性を低減するために使用して、それによりサイトカイン、例えばTGFβにより媒介される種々の医学的適応症を治療し得る。別の局面において、前述の融合タンパク質または発現ベクターのいずれかを使用して、インビトロおよび/またはインビボにおいて腫瘍細胞の増殖を阻害し得、腫瘍増殖の阻害を必要とする被験体において腫瘍増殖を阻害し得、または癌の治療を必要とする被験体において癌を治療し得る。該被験体は、例えば動物、例えば哺乳動物、例えばヒト、例えば小児のヒトであり得る。例えば、癌を有するヒト被験体に投与する場合、融合タンパク質または発現ベクターは、被験体において、腫瘍増殖を阻害もしくは低減し得るか、または腫瘍負荷を低減し得る。
【0030】
ある態様において、癌は、黒色腫、皮膚の扁平上皮癌、基底細胞癌、頭部頸部癌、乳癌、肛門癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、中皮腫、小細胞肺癌、腎細胞癌、前立腺癌、胃食道癌、結腸直腸癌、精巣癌、膀胱癌、卵巣癌、肝臓癌、肝細胞癌、胆管癌、脳および中枢神経系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌(例えば副甲状腺癌腫)、子宮内膜癌、神経内分泌癌、リンパ腫(例えばホジキンおよび非ホジキン)、白血病、メルケル細胞癌、消化管間質腫瘍、多発性骨髄腫、子宮癌、肉腫、腎臓癌、眼の癌(ocular cancer)、膵臓癌ならびに生殖細胞癌(例えば卵巣生殖細胞癌)から選択され得る。ある態様において、癌は、白血病、乳癌、肺癌、膵臓癌、子宮内膜癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頸癌、脳腫瘍、皮膚癌、結腸直腸癌、胃癌、頭部頸部癌および白血病から選択され得る。
【0031】
ある態様において、融合タンパク質または発現ベクターは、手術、放射線照射、化学療法、免疫療法、ホルモン療法およびウイルス療法から選択される1つ以上の治療と組み合わせて投与される。ある態様において、融合タンパク質または発現ベクターは、リンパ球、例えばT細胞、例えばCAR T細胞と組み合わせて投与される。
【0032】
前述の融合タンパク質または発現ベクターのいずれかはまた、炎症状態または感染の治療を必要とする被験体において、炎症状態または感染を治療するために使用され得る。
【0033】
本発明のこれらおよび他の局面ならびに利点は、以下の図面、詳細な説明および特許請求の範囲により説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図面の説明
本発明は、以下の図面を参照してより完全に理解され得る。
【
図1】
図1Aは、細胞表面(左)、抗体(中央)および標的サイトカインに任意に結合する受容体-Fc融合(右)上の二量体サイトカイン受容体の模式図を示す。
図1Bは、標的サイトカインへの最適な結合が立体的に妨げられる(左)または最適な結合配置を採用する(右)受容体-Fc融合、例えばサイトカイントラップを示す。
【
図2】
図2は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびIgMのCH1ドメイン(上部)およびCH2ドメイン(底部)のアミノ酸配列の配列整列を示す。
【
図3】
図3は、示されるような、レポーター細胞の、TGFβおよび/またはTGFβII型受容体融合タンパク質hTGFβR-IgG-1およびhTGFβR-Fcでの治療後のリン酸化Smad2のウエスタンブロットを示す。総Smad2およびSmad3をローディング対照として使用した。TGFβ活性は、hTGFβR-Fcと比較してhTGFβR-IgG-1により著しく低減した。
【
図4】
図4は、示されるような、レポーター細胞の、TGFβおよび/またはTGFβII型受容体融合タンパク質hTGFβR-IgG1-1(1)、hTGFβR-IgG1-2(2)、hTGFβR-IgG1-3(3)およびhTGFβR-IgG1-4(4)での治療後のリン酸化Smad2のウエスタンブロットを示す。β-アクチンを負荷対象として使用した。
【
図5-1】
図5A~5Bは、示されるウイルスでの治療後のマウスにおける腫瘍体積を示す。それぞれの線は、1マウスの腫瘍体積を示す。
【
図5-2】
図5Cは、示されるウイルスでの治療後のマウスにおける腫瘍体積を示す。それぞれの線は、1マウスの腫瘍体積を示す。
【
図6】
図6A~6Bは、示される細胞株の、TGFβおよび/または示されるウイルスでの治療後のリン酸化Smad2のウエスタンブロットを示す。総Smad2およびSmad3を負荷対象として使用した。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
本発明は、被験体における種々の医学的状態の治療、例えば腫瘍細胞の増殖の阻害、腫瘍増殖の阻害、癌の治療、炎症状態の治療または感染の治療における使用のための単離された融合タンパク質を提供する。例示的な融合タンパク質は、サイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの第1の部分;アミノ酸リンカー;ならびにサイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの第2の部分;免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;および免疫グロブリン(Ig)Fcドメインの少なくとも1つを含む。ある態様において、リンカーは、約5~約40アミノ酸残基を含む。本発明の例示的な融合タンパク質としては、サイトカイントラップが挙げられる。
【0036】
サイトカイントラップ、例えばTGFβトラップは、標的サイトカインに結合するかまたはそうでなければ該サイトカインを引き離すように設計された、サイトカイン受容体、例えばTGFβ受容体、例えばTGFβII型受容体(TβRII)の細胞外ドメインの可溶性部分を含む分子である。サイトカイントラップにおいて、サイトカイン受容体の細胞外ドメインは、免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域および免疫グロブリン(Ig)Fcドメインに融合され得、例えば増加した安定性、Fcエフェクター機能および/または多量体化、例えば二量体化を可能にし得る。Igヒンジ領域およびIg Fcドメインへの融合により付与される二量体化は、例えばTβRIIなどの細胞表面上の二量体受容体複合体を示すサイトカイン受容体について特に有利である。
【0037】
従来のサイトカイントラップ、例えばTGFβトラップは2つのポリペプチド鎖を含み、それぞれのポリペプチド鎖はIgヒンジ領域およびIg Fcドメインに融合したサイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分を含む。サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分は典型的に、逆配列(inverting sequence)を有することなく、Igヒンジ領域に直接融合される。2つのポリペプチド鎖は、Igヒンジ領域のそれぞれのシステイン残基間でジスルフィド結合により共有結合される。それぞれのポリペプチド鎖は、サイトカイン受容体、例えばTβRIIの細胞外ドメインの可溶性部分を提供し、サイトカイン受容体の細胞外ドメインの2つの可溶性部分は一緒になって、サイトカインのための結合部位を画定する。それぞれIgヒンジ領域およびIg Fcドメインに融合されたサイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分を含む、二量体サイトカイン受容体、免疫グロブリン(抗体)分子および2つの共有結合された融合タンパク質を含む二量体タンパク質の模式的表示を
図1Aに示す。
【0038】
本発明は部分的に、Igヒンジ領域およびIg Fcドメインに対するサイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分の融合タンパク質を含む従来のサイトカイントラップ、例えばTGFβトラップが、それらの標的サイトカインに最適には結合しないという発見に基づく。例えば、従来のTGFβトラップは、2つのTβRIIリガンド結合ドメインの間に、2つのTβRIIリガンド結合ドメインが一緒になって最適立体配置に入りTGFβ結合部位を画定することを可能にするのに十分な柔軟性を提供しない。
【0039】
したがって、一局面において、本発明は、N~C末端の方向で、サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分;アミノ酸リンカー;免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;および免疫グロブリン(Ig)Fcドメインを含む単離された融合タンパク質を提供し、ここで、該リンカーは約5~約40 アミノ酸残基を含む。リンカー配列は、例えばサイトカイン受容体の細胞外ドメイン中の結合ドメインが、その標的サイトカインに最適に結合することを可能にする。これは、サイトカイン結合タンパク質が、一緒になって標的サイトカインに結合するための結合部位を画定する前述の融合タンパク質の2つを含む二量体である場合に特に重要である。リンカーなしでは、2つの結合ドメインは、最適な結合部位を形成することが立体的に妨げられ得る(
図1B)。本発明の種々の特徴および局面を以下により詳細に記載する。
【0040】
I. 融合タンパク質
例示的な融合タンパク質は、サイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの第1の部分;アミノ酸リンカー;ならびにサイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの第2の部分;免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;および免疫グロブリン(Ig)Fcドメインの少なくとも1つを含み得る。サイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの第1の部分は、サイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの第2の部分と同じであり得るかまたは異なり得ることが企図される。
【0041】
例えば、開示される融合タンパク質は、N~C末端の方向で、サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分;アミノ酸リンカー;免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;および免疫グロブリン(Ig)Fcドメインを含み得、ここで該リンカーは、約5~約40アミノ酸残基を含む。
【0042】
例示的なサイトカインとしては、IL-1α、IL-1β、IL-18、IL-4、IL-9、IL-13、IL-3、IL-5、IL-6、IL-11、G-CSF、LIF、OSM、IL-10、IL-20、IL-14、IL-16、IL-17、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、CD154、LT-β、TNF-β、4-1BBL APRIL、CD153、CD178、LIGHT、TALL-1、TRAIL、TWEAK、TRANCE、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、Epo、Tpo、Flt-3L、SCF、M-CSFおよびMSPが挙げられる。
【0043】
本明細書で使用する場合、「免疫調節」タンパク質は、被験体の免疫系の機能を調節するタンパク質をいう。免疫調節タンパク質は、例えばB細胞、T細胞の機能および/または抗体の産生を調節し得る。例示的な免疫調節タンパク質としては、チェックポイント阻害剤が挙げられる。例示的な免疫調節タンパク質としては、例えばPD-1もしくはPD-L1、またはそれらの活性を調節する任意のタンパク質が挙げられ得る。さらなる例示的な免疫調節タンパク質としては、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体が挙げられ得る。
【0044】
本明細書で使用する場合、「サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分」は、標的サイトカインに結合し得る任意のサイトカイン受容体の細胞外ドメインまたはサイトカイン受容体の細胞外ドメインの断片をいう。サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分はまた、単独または第2の結合ドメインと組み合わせて(例えば二量体融合タンパク質の場合)標的サイトカインに結合し得る結合ドメインを含む細胞外ドメインの部分を企図することが理解される。
【0045】
例示的なサイトカイン受容体としては、I型サイトカイン受容体(例えばGM-CSF受容体、G-CSF受容体、I型IL受容体、Epo受容体、LIF受容体、CNTF受容体またはTPO受容体)、II型サイトカイン受容体(例えばIFN-α受容体(例えばIFNAR1またはIFNAR2)、IFN-β受容体、IFN-γ受容体(例えばIFNGR1またはIFNGR2)、ケモカイン受容体(例えばCCケモカイン受容体、CXCケモカイン受容体、CX3Cケモカイン受容体またはXCケモカイン受容体)、腫瘍壊死因子スーパーファミリー受容体(TNFR;例えばTNFRSF5/CD40、TNFRSF8/CD30、TNFRSF7/CD27、TNFRSF1A/TNFR1/CD120aまたはTNFRSF1B/TNFR2/CD120b)、TGFβスーパーファミリー受容体(例えばTGFβI型受容体またはTGFβII型受容体)、または免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリー受容体(例えばインターロイキン-1受容体、CSF-1R、PDGFR(例えばPDGFRAまたはPDGFRB)またはSCFR)が挙げられる。好ましいサイトカイン受容体としては、二量体サイトカイン受容体、例えばTGFβスーパーファミリー受容体、例えばヒトTGFβII型受容体(TβRII)が挙げられる。ある態様において、サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分は、例えば配列番号:12のアミノ酸配列、または配列番号:12に対して85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%より高い配列同一性を有するアミノ酸配列、および/またはTGFβに結合する結合ドメインを含むそれらの断片を含むヒトTGFβII型受容体(TβRII)の細胞外ドメインの可溶性部分である。
【0046】
サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分は、その天然のリガンドに結合するその能力を保持する。ある態様において、細胞外ドメインの可溶性部分は、完全長サイトカイン受容体と比較した場合、その天然のリガンドに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または95%の結合活性を保持する。
【0047】
ある態様において、融合タンパク質は、例えばTβRII、TGF-β、CD80、CD19、CD20、IL-1、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-12B/p40、IL-23A/p19、IL-27A/p28、IL-27B/EBI3、CD154、CD86、CD137、CD137L、IFN-α、IFN-β、BORIS/CTCFL、FGF、ICAM、IL-24、MAGE、NY-ESO-1、アンギオスタチン、エンドスタチン、アセチルコリン、インターフェロン-γ、DKK1/Wnt、p53、チミジンキナーゼ、抗PD-1抗体重鎖もしくは軽鎖および抗PD-L1抗体重鎖もしくは軽鎖、またはそれらの機能的断片の1つ以上を含み得る。例えば、融合タンパク質は、CD80およびCD137L;IL-23A/p19およびIL-12B/p40またはIL-27A/p28およびIL-27B/EBI3を含み得る。
【0048】
本明細書で使用する場合、用語「免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域」は、典型的に免疫グロブリン重鎖定常領域のCH1ドメインとCH2ドメインを連結するアミノ酸配列をいう。Igヒンジ領域は、例えば別のタンパク質鎖中のシステイン残基とジスルフィド結合を形成し得る1つ以上のシステイン残基を含み得る。本明細書で使用する場合、用語「免疫グロブリン(Ig)Fcドメイン」は、Fc受容体に結合し得る免疫グロブリン重鎖定常領域の断片をいう。Ig Fcドメインとしては、例えば免疫グロブリン(Ig)CH2およびCH3ドメインが挙げられ得る。Ig CH1、CH2およびCH3ドメインの間の境界は当該技術分野で周知であり、例えばPROSITEデータベース(prosite.expasy.orgにてワールドワイドウェブ上で利用可能)において見られ得る。明確さのために、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、ならびにIgM CH1およびCH2ドメインのアミノ酸配列の整列を
図2に示す。
【0049】
ある態様において、Igヒンジ領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびIgMヒンジ領域から選択され、Ig Fcドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびIgM Fcドメインから選択される。ある態様において、Igヒンジ領域およびFcドメインは一緒になって、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20および配列番号:21から選択されるアミノ酸配列を含む。ある態様において、Igヒンジ領域およびFcドメインは一緒になって、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20および配列番号:21から選択される配列と85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%より高い同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0050】
アミノ酸リンカーは、融合タンパク質(例えばサイトカイン受容体)のリガンド結合部分がリガンド(例えばサイトカイン)に最適に結合することを可能にし得るか、融合タンパク質の2つ以上の成分(例えば二量体サイトカインの2つのサブユニット)の時間および空間的な共局在を提供し得るか、発現ベクター(例えばウイルスベクター)からの発現を最適化し得るか、免疫原性を低減し得るか、または融合タンパク質の成分の放出を可能にする切断部位を提供し得る。
【0051】
アミノ酸リンカーは、例えば約5~約15、約5~約20、約5~約25、約5~約30、約5~約35、約5~約40、約10~約15、約10~約20、約10~約25、約10~約30、約10~約35、約10~約40、約15~約20、約15~約25、約15~約30、約15~約35または約15~約40アミノ酸残基を含み得る。リンカー中のアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸または改変されたアミノ酸であり得る。
【0052】
ある態様において、アミノ酸リンカー配列は、内因性ヒトタンパク質、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgM、アルブミンまたはカゼインに由来する。ある態様において、アミノ酸リンカーは、C末端部分、例えば免疫グロブリン(Ig)CH1ドメイン、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEまたはIgM CH1ドメインの約5~約40アミノ酸を含む。ある態様において、アミノ酸リンカーは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:60および配列番号:61から選択されるアミノ酸配列を含む。ある態様において、アミノ酸リンカーは、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11、配列番号:60および配列番号:61から選択されるアミノ酸配列に対して80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%より高い配列同一性を有する配列を含む。
【0053】
タンパク質またはポリペプチドが参照タンパク質またはポリペプチドの野生型アミノ酸配列の全部または対応する部分と実質的に同様のアミノ酸配列を含む場合、タンパク質またはポリペプチドは、参照タンパク質またはポリペプチドに「由来する」。ある態様において、野生型タンパク質またはポリペプチドに由来するタンパク質またはポリペプチドは、野生型タンパク質またはポリペプチドに対して1つ以上のアミノ酸置換を有し得る。例えば、野生型タンパク質またはポリペプチドに由来するタンパク質またはポリペプチドが、野生型タンパク質またはポリペプチドに対して70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%より高い配列同一性を有し得ることが企図される。さらに、野生型タンパク質またはポリペプチドに由来するタンパク質またはポリペプチドが、野生型タンパク質またはポリペプチドに対してより保存的な置換を含み得ることが企図される。本明細書で使用する場合、用語「保存的な置換」は、構造的に類似のアミノ酸による置換をいう。例えば、保存的な置換としては、以下の群:SerおよびCys;Leu、IleおよびVal;GluおよびAsp;LysおよびArg;Phe、TyrおよびTrp;ならびにGln、Asn、Glu、AspおよびHisにおけるものが挙げられ得る。保存的な置換はまた、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)アルゴリズム、BLOSUM置換マトリックス(例えばBLOSUM 62マトリックス)またはPAM置換:pマトリックス(例えばPAM 250マトリックス)により画定され得る。
【0054】
ある態様において、アミノ酸リンカー配列は、サイトカイン、シグナル伝達分子、免疫調節タンパク質もしくはペプチドまたは生物学的に活性なペプチドに由来する。
【0055】
さらなる企図されるリンカー配列としては、グリシンおよびセリンリッチリンカー、例えば(G4S)3(配列番号:49)が挙げられる。さらなる例示的なリンカー配列は、例えばGeorge et al. (2003) PROTEIN ENGINEERING 15:871-879ならびに米国特許番号第5,482,858号および第5,525,491号に開示される。
【0056】
ある態様において、アミノ酸リンカーは、切断部位、例えばタンパク質分解性または非タンパク質分解性の切断部位を含み得る。ある態様において、タンパク質分解性切断部位は、特定の組織、細胞小器官または細胞内成分に存在するプロテアーゼにより切断される。ある態様において、リンカーは、タンパク質分解性切断部位およびタンパク質分解性切断後にジスルフィド結合を生じる2つのシステイン残基を含む。ある態様において、タンパク質分解性切断部位は、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、フューリン、PC1、PC2、PC3、カテプシンB、プロテイナーゼ3およびカスパーゼ3から選択されるプロテアーゼにより切断される。ある態様において、切断部位は、真核細胞の小胞体またはゴルジ体内に存在するプロテアーゼにより切断されるタンパク質分解性切断部位である。ある態様において、タンパク質分解性切断部位は、フューリン切断部位である。フューリンは、遍在的に発現されてゴルジ体に局在されるプロテアーゼであり、フューリンは、コンセンサス配列RX1X2R(配列番号:50)を認識し、ここでX1は任意のアミノ酸であり、X2はLysまたはArgであり、最後のArgの後ろを切断する。フューリンは、ゴルジ体を通じて取り扱われるタンパク質のプロペプチドの切断特性において生物学的役割を担う。したがって、ある態様においてタンパク質分解性切断部位は、配列RX1X2R(配列番号:50)を含むフューリン切断部位であり、ここでX1は任意のアミノ酸であり、X2はLysまたはArgであり、例えば配列RAKR(配列番号:51)を含むフューリン切断部位である。
【0057】
ある態様において、Ig Fc、Igヒンジ領域およびIg CH1ドメインは単一の免疫グロブリンに由来する。
【0058】
ある態様において、融合タンパク質は、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:62および配列番号:63から選択されるアミノ酸配列を含む。ある態様において、開示される融合タンパク質は、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:62および配列番号:63から選択される配列に対して80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%より高い配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0059】
配列同一性は、例えば公的に利用可能なコンピューターソフトウェア例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign (DNASTAR)ソフトウェアを使用して、当該技術分野にある種々の方法において決定され得る。プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxにより使用されるアルゴリズムを使用したBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)分析(Karlin et al., (1990) PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 87:2264-2268; Altschul, (1993) J. MOL. EVOL. 36, 290-300; Altschul et al., (1997) NUCLEIC ACIDS RES. 25:3389-3402、参照により援用される)は、配列類似性の検索のために調整される。配列データベースの検索における基本的な問題の議論については、参照により十分に援用されるAltschul et al., (1994) NATURE GENETICS 6:119-129参照。当業者は、比較されている配列の全長にわたり最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、整列を測定するための適切なパラメーターを決定し得る。ヒストグラム、記載、整列、予測(すなわちデータベース配列に対する適合を報告するための統計的有意さ閾値)、カットオフ、マトリックスおよびフィルターのための検索パラメーターは、デフォルト設定にある。blastp、blastx、tblastnおよびtblastxにより使用されるデフォルトスコアリングマトリックスは、BLOSUM62マトリックスである(Henikoff et al., (1992) PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 89:10915-10919、参照により十分に援用される)。4つのblastnパラメーターは以下の通りに調整され得る:Q=10(ギャップ生成ペナルティー);R=10(ギャップ伸長ペナルティー);wink=1(クエリに沿った全てのwink.sup.th位置でのワードヒットを生じる);およびgapw=16(ギャップのある整列が生成されるウィンドウ幅を設定する)。同等のBlastpパラメーター設定は、Q=9;R=2;wink=1;およびgapw=32であり得る。検索はまた、NCBI (National Center for Biotechnology Information) BLAST Advanced Optionパラメーターを使用して実施され得る(例えば:-G、オープンギャップについてのコスト[整数]:デフォルト=ヌクレオチドについて5/タンパク質について11;-E、伸張ギャップについてのコスト[整数]:デフォルト=ヌクレオチドについて2/タンパク質について1;-q、ヌクレオチドミスマッチについてのペナルティー[整数]:デフォルト=-3;-r、ヌクレオチド適合についての報酬[整数]:デフォルト=1;-e、予測値[実数]:デフォルト=10;-W、ワードサイズ[整数]:デフォルト=ヌクレオチドについて11/megablastについて28/タンパク質について3;-y、ビットにおけるblast伸長についてのドロップオフ(X):デフォルト=blastnについて20/その他について7;-X、ギャップが生じる整列についてのXドロップオフ値(ビットにおいて):デフォルト=全てのプログラムについて15であるがblastnには適用可能ではない;および-Z、ギャップが生じる整列についての最終Xドロップオフ値(ビットにおいて):blastnについて50、その他について25)。ペアワイズタンパク質整列についてのClustalWも使用される(デフォルトパラメータは、例えばBlosum62マトリックスおよびギャップオープンペナルティー=10およびギャップ伸長ペナルティー=0.1を含み得る)。GCGパッケージバージョン10.0において利用可能な配列間の最適合比較はDNAパラメーターGAP=50(ギャップ生成ペナルティー)およびLEN=3(ギャップ伸長ペナルティー)を使用し、タンパク質比較における同等の設定はGAP=8およびLEN=2である。
【0060】
一局面において、本発明は、2つの融合タンパク質を含むサイトカイン結合タンパク質を提供し、それぞれの融合タンパク質は、N~C末端の方向で、サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分;アミノ酸リンカー;免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;および免疫グロブリン(Ig)Fcドメインを含み、ここで該リンカーは約5~約40のアミノ酸残基を含み、2つの融合タンパク質は一緒になって共有結合し、2つの細胞外ドメインは一緒になってサイトカインのための結合部位を画定する。
【0061】
サイトカイン結合タンパク質は、一緒になって共有結合する前述の融合タンパク質の2つを含み得、ここでそれぞれの融合タンパク質はサイトカイン受容体の細胞外ドメインを含み、2つの細胞外ドメインは一緒になってサイトカインのための結合部位を画定する。融合タンパク質は、例えばそれぞれの融合タンパク質のIgヒンジ領域中のシステイン残基の間のジスルフィド結合により共有結合し得る。ある態様において、単量体または多量体(例えば二量体)のいずれかである融合タンパク質は、天然の全長サイトカイン受容体と比較した場合、標的リガンドの結合活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または95%を保持する。
【0062】
ある態様において、本発明のサイトカイン結合タンパク質は、200nM、100nM、20nM、15nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、50pM、25pMまたはそれ以下のKDでサイトカインに結合する。ある態様において、本発明のサイトカイン結合タンパク質は、200nM~100nM、200nM~20nM、200nM~10nM、200nM~5nM、200nM~1nM、200nM~50pM、200nM~25pM、100nM~20nM、100nM~10nM、100nM~5nM、100nM~1nM、100nM~50pM、100nM~25pM、20nM~10nM、20nM~5nM、20nM~1nM、20nM~50pM、20nM~25pM、10nM~5nM、10nM~1nM、10nM~50pM、10nM~25pM、5nM~1nM、5nM~50pM、5nM~25pM、1nM~50pM、1nM~25pMまたは50pM~25pMのKDでサイトカインに結合する。ある態様において、本発明のサイトカイン結合タンパク質は、200nM、100nM、20nM、15nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、50pM、25pMまたはそれ以下のKDでTGFβに結合する。ある態様において、本発明のサイトカイン結合タンパク質は、200nM~100nM、200nM~20nM、200nM~10nM、200nM~5nM、200nM~1nM、200nM~50pM、200nM~25pM、100nM~20nM、100nM~10nM、100nM~5nM、100nM~1nM、100nM~50pM、100nM~25pM、20nM~10nM、20nM~5nM、20nM~1nM、20nM~50pM、20nM~25pM、10nM~5nM、10nM~1nM、10nM~50pM、10nM~25pM、5nM~1nM、5nM~50pM、5nM~25pM、1nM~50pM、1nM~25pMまたは50pM~25pMのKDでTGFβに結合する。KD値は、表面プラスモン共鳴または生体層干渉法(bio-layer interferometry method)などの当該技術分野で周知の方法により決定され得る。
【0063】
本発明の例示的な融合タンパク質としては、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:62および配列番号:63から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質が挙げられる。明確さのために、これらのタンパク質の個々の因子および個々の因子の配列が由来するタンパク質、例えばサイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分、アミノ酸リンカー、Igヒンジ領域およびIg Fcドメインの配列を表1に示す。
【0064】
【0065】
【0066】
II. 融合タンパク質作製
本発明の融合タンパク質を作製する方法は当該技術分野で公知である。例えば、開示される融合タンパク質をコードするDNA分子は、本明細書に提供される配列情報を使用して化学的に合成され得る。合成DNA分子を、他の適切なヌクレオチド配列、例えば発現制御配列に連結して、所望の融合タンパク質をコードする従来の遺伝子発現構築物を作製し得る。画定された遺伝子構築物の作製は当該技術分野の常套的な技術の範囲内にある。配列番号:22~32の融合タンパク質をコードする例示的な核酸配列、配列番号:37~47は表2に見られ得る。
【0067】
所望の融合タンパク質をコードする核酸は、発現ベクターに組み込まれ(連結され)得、該ベクターは、従来のトランスフェクションまたは形質転換技術により宿主細胞に導入され得る。例示的な宿主細胞は、大腸菌細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、新生児ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2)および骨髄腫細胞である。形質転換された宿主細胞は、宿主細胞に所望の融合タンパク質をコードする遺伝子を発現させる条件下で増殖され得る。
【0068】
特定の発現および精製条件は、使用される発現系に応じて変化する。例えば、遺伝子が大腸菌中で発現される場合、遺伝子は最初に、適切な細菌プロモーター、例えばTrpまたはTacおよび原核生物シグナル配列の下流に作り変えられた遺伝子を配置することにより発現ベクター中にクローニングされる。発現され、分泌されたタンパク質は、屈折体(refractile)または封入体中に蓄積し、フレンチプレスまたは超音波処理による細胞の破砕後に回収され得る。次いで屈折体を可溶化して、タンパク質を当該技術分野で公知の方法により再度折り畳み、切断する。
【0069】
作り変えられた遺伝子が真核生物宿主細胞、例えばCHO細胞中で発現される場合、該遺伝子は最初に、適切な真核生物プロモーター、分泌シグナル、ポリA配列および停止コドンを含む発現ベクターに挿入され、任意に、エンハンサーおよび種々のイントロンを含み得る。これらの遺伝子構築物は、従来技術を使用して真核生物宿主細胞に導入され得る。
【0070】
開示される融合タンパク質を含むポリペプチドは、かかるタンパク質をコードする発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞を、ポリペプチドの発現を可能にする条件下で増殖させる(培養する)ことにより作製され得る。発現に続いて、ポリペプチドは、当該技術分野で公知の技術、例えばプロテインA、プロテインG、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)またはヒスチジンタグなどの親和性タグを使用して、回収および精製または単離され得る。
【0071】
III. ウイルスベクター
ある態様において、開示される発現ベクターはウイルスベクターである。用語「ウイルスベクター」および「ウイルス」は、タンパク質合成またはエネルギー生成機構を有さない細胞内絶対寄生菌のいずれかをいうように、本明細書において交換可能に使用される。ウイルスゲノムはRNAまたはDNAであり得る。本発明の実施に有用なウイルスとしては、好ましくはバキュロウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科またはアデノウイルス科から選択される組換えにより改変されて封入されるかまたは封入されないDNAおよびRNAウイルスが挙げられる。ウイルスは、組み換えDNA技術により改変されて、外因性トランスジーンの発現を含み得、複製不完全、条件的複製または複製コンピテントであるように作り変えられ得る。親ベクターの特性のそれぞれの有利な因子を利用するキメラウイルスベクター(例えばFeng et al. (1997) NATURE BIOTECHNOLOGY 15:866-870)も本発明の実施において有用であり得る。治療対象である種由来のウイルスを使用することが一般的に好ましいが、いくつかの例において、好ましい病原性特徴を有する異なる種由来のベクターを使用することが有利であり得る。例えば、ヒト遺伝子治療についてウマヘルペスウイルスベクターがPCT公開公報WO 98/27216に記載される。該ベクターは、ウマウイルスがヒトに対して病原性ではないのでヒトの治療に有用であると記載される。同様に、ヒツジアデノウイルスベクターは、ヒトアデノウイルスベクターに対する抗体を回避することが求められるので、ヒト遺伝子治療に使用され得る。かかるベクターはPCT公開公報WO 97/06826に記載される。
【0072】
ある態様において、ウイルスベクターは、腫瘍崩壊性ウイルス、例えば腫瘍選択的複製および/またはウイルス媒介性溶解を発揮するウイルスである。ある態様において、腫瘍崩壊性ウイルスは、開示される融合タンパク質の選択的な発現を可能にし、例えば該ウイルスは、新形成細胞における融合タンパク質の発現を可能にするが、正常細胞における発現を弱める。ある態様において、非過増殖細胞における融合タンパク質の発現は、過増殖細胞における発現の約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%または約5%である。ある態様において、該ウイルスは、非過増殖細胞において融合タンパク質の検出可能な発現を発揮しない。融合タンパク質発現は、当該技術分野で公知の適切な方法、例えばウエスタンブロットまたはELISAにより決定され得る。過増殖細胞は、癌細胞、例えば癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫、前立腺癌、肺癌、胃腸管癌、結腸直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、胃癌、甲状腺癌、中皮腫、肝臓癌、腎臓癌、皮膚癌、頭部頸部癌または脳癌の細胞であり得る。
【0073】
好ましくは、ウイルスベクターはアデノウイルスである。アデノウイルスは、ヌクレオカプシドおよび二本鎖直鎖DNAゲノムで構成される中程度のサイズ(90~100nm)で、封入されておらず(ネイキッド)、正二十面体のウイルスである。アデノウイルスは、宿主の複製機構を使用して哺乳動物細胞の核内で複製する。用語「アデノウイルス」は、ヒト、ウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ブタ、マウスおよびサルアデノウイルス亜属を含むが限定されないアデノウイルス属の任意のウイルスをいう。特に、ヒトアデノウイルスは、A-F亜属およびその個々の血清型を含み、個々の血清型およびA-F亜群は、限定されないがヒトアデノウイルス型1、2、3、4、4a、5、6、7、8、9、10、11(Ad11aおよびAd11p)、12、13、14、15、16、17、18、19、19a、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、34a、35、35p、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48および91を含む。ヒトアデノウイルス2および5型由来のベクターが好ましい。そうではないと記載されなければ、全てのアデノウイルス5型ヌクレオチド番号は、本明細書中配列番号:52に示されるNCBI参照配列AC_000008.1に関連性がある。
【0074】
アデノウイルス複製サイクルは、2つの段階:初期段階(その間に4転写ユニット(E1、E2、E3およびE4)が発現される)およびウイルスDNA合成の開始後に生じる後期段階(その間に主要後期プロモーター(MLP)から転写産物が主に発現される)を有する。後期メッセンジャーは、ウイルスの構造タンパク質のほとんどをコードする。E1、E2およびE4の遺伝子産物は、転写活性化、細胞形質転換、ウイルスDNA複製、および他のウイルス機能の原因であり、ウイルス成長に必要である。
【0075】
用語「操作可能に連結される」は、機能的な関係にあるポリヌクレオチド因子の連結をいう。核酸配列は、別の核酸配列と機能的な関係に配置される場合「操作可能に連結される」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、遺伝子の転写に影響を及ぼす場合に遺伝子に操作可能に連結される。操作可能に連結されたヌクレオチド配列は典型的に連続である。しかしながら、エンハンサーは通常、プロモーターから数キロベース分離される場合に機能し、イントロン配列は可変的な長さであり得るので、いくつかのポリヌクレオチド因子は、直接隣り合わないが、操作可能に連結され得、異なる対立遺伝子または染色体からトランスに機能し得る。
【0076】
ある態様において、ウイルスは制御配列またはプロモーターに1つ以上の改変を有する。制御配列またはプロモーターに対する改変は、制御配列またはプロモーターの野生型配列と比較して1つ以上のヌクレオチドの欠損、置換または付加を含む。
【0077】
ある態様において、制御配列またはプロモーターの改変は、例えば転写因子結合部位の部分を欠損させるか、または該結合部位に単一点変異を挿入することにより転写因子についての親和性を低減するための、転写因子結合部位の配列の改変を含む。ある態様において、さらなる改変された制御配列は、新形成細胞において発現を高めるが、正常細胞において発現を弱める。
【0078】
ある態様において、改変された制御配列は、タンパク質をコードする配列に操作可能に連結される。ある態様において、アデノウイルスE1aおよびE1b遺伝子(コーディング領域)の少なくとも1つは、改変された制御配列に操作可能に連結される。ある態様において、E1a遺伝子は、改変された制御配列に操作可能に連結される。
【0079】
E1a制御配列は、Pea3 I、Pea3 II、Pea3 III、Pea3 IVおよびPea3 Vと指定される転写因子Pea3についての5個の結合部位を含み、ここでPea3 IはE1a開始部位の最も近位にあるPea3結合部位であり、Pea3 Vは最も遠位にある。E1a制御配列はまた、本明細書でE2F IおよびE2F IIと指定される転写因子E2Fについての結合部位を含み、ここでE2F IはE1a開始部位の最も近位にあるE2F結合部位であり、E2F IIはより遠位にある。E1a開始部位から結合部位を整列する:Pea3 I、E2F I、Pea3 II、E2F II、Pea3 III、Pea3 IVおよびPea3 V。
【0080】
ある態様において、これらの7個の結合部位またはその機能的部分の少なくとも1つは欠損される。「機能的部分」は、欠損した場合に機能性、例えば結合部位のそれぞれの転写因子(Pea3またはE2F)への結合親和性を、完全配列に対して、例えば少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%低減または排除する結合部位の一部である。ある態様において、1つ以上の結合部位全体が欠損される。ある態様において、1つ以上の結合部位の機能的部分が欠損される。「欠損された結合部位」は、結合部位全体の欠損およびその機能的部分の欠損の両方を包含する。2つ以上の結合部位が欠損される場合、結合部位全体と機能的部分の欠損の任意の組合せが使用され得る。
【0081】
ある態様において、少なくとも1つのPea3結合部位またはその機能的部分が欠損される。欠損されたPea3結合部位は、Pea3 I、Pea3 II、Pea3 III、Pea3 IVおよび/またはPea3 Vであり得る。ある態様において、欠損されたPea3結合部位は、Pea3 II、Pea3 III、Pea3 IVおよび/またはPea3 Vである。ある態様において、欠損されたPea3結合部位は、Pea3 IVおよび/またはPea3 Vである。ある態様において、欠損されたPea3結合部位は、Pea3 IIおよび/またはPea3 IIIである。ある態様において、欠損されたPea3結合部位は、Pea3 IIおよびPea3 IIIの両方である。ある態様において、Pea3 I結合部位またはその機能的部分が保持される。
【0082】
ある態様において、少なくとも1つのE2F結合部位またはその機能的部分が欠損される。ある態様において、少なくとも1つのE2F結合部位またはその機能的部分が保持される。ある態様において、保持されるE2F結合部位はE2F Iおよび/またはE2F IIである。ある態様において、保持されるE2F結合部位はE2F IIである。ある態様において、全ての欠損は本質的にPea3 II、Pea3 III、Pea3 IVおよび/またはPea3 Vまたはその機能的部分の1つ以上からなる。
【0083】
ある態様において、ウイルスは、E1a開始部位の上流-305~-255に位置する、例えばAd5ゲノム(配列番号:52)の195~244に対応する50塩基対領域の欠損を有し、以降TAV-255欠損と称する。ある態様において、TAV-255欠損は、配列GGTGTTTTGG(配列番号:55)を含むE1aプロモーターを生じる。
【0084】
アデノウイルスE1b-19k遺伝子は主に、抗アポトーシス遺伝子として機能し、細胞性抗アポトーシス遺伝子BCL-2のホモログである。子孫ウイルス粒子の成熟の前の宿主細胞の死はウイルス複製を制限するので、E1b-19kは、前成熟細胞死を防ぐためのElカセットの一部として発現され、それにより成熟ビリオンに進行して生成するための感染が可能になる。したがって、ある態様において、E1b-19K挿入部位を含む組み換えウイルスが提供され、例えばアデノウイルスは、E1b-19K挿入部位に挿入された開示される融合タンパク質をコードする外因性ヌクレオチド配列を有する。
【0085】
ある態様において、E1b-19K挿入部位は、E1b-19Kの開始部位(すなわちE1b-19kKの開始コドンをコードする、例えば配列番号:52のヌクレオチド1714~1716に対応するヌクレオチド配列)と、E1b-55Kの開始部位(すなわちE1b-55kの開始コドンをコードする、例えば配列番号:52のヌクレオチド2019~2021に対応するヌクレオチド配列)の間に位置する。明細書および特許請求の範囲を通じて、2つの部位の間の挿入、例えば(i)第1の遺伝子(例えばE1b-19k)の開始部位と第2の遺伝子(例えばE1b-55K)の開始部位、(ii)第1の遺伝子の開始部位と第2の遺伝子の停止部位、(iii)第1の遺伝子の停止部位と第2の遺伝子の開始部位または(iv)第1の遺伝子の停止部位と第2の遺伝子の停止部位の間の挿入は、挿入の周囲の所定の開始部位または停止部位を構成するヌクレオチドの全部または一部が最終ウイルス中に存在し得るかまたは非存在であり得ることを意味すると理解される。同様に、2つのヌクレオチドの間の挿入は、挿入の周囲のヌクレオチドが最終ウイルス中に存在し得るかまたは非存在であり得ることを意味すると理解される。
【0086】
ある態様において、E1b-19K挿入部位は、E1b-19Kの開始部位(すなわちE1b-19kKの開始コドンをコードする、例えば配列番号:52のヌクレオチド1714~1716に対応するヌクレオチド配列)と、E1b-19Kの停止部位(すなわちE1b-19kの停止コドンをコードする、例えば配列番号:52のヌクレオチド2242~2244に対応するヌクレオチド配列)の間に位置する。ある態様において、E1b-19K挿入部位は、E1b-19Kの開始部位に隣接する約100~約305、約100~約300、約100~約250、約100~約200、約100~約150、約150~約305、約150~約300、約150~約250または約150~約200ヌクレオチドの欠損を含む。ある態様において、E1b-19K挿入部位は、E1b-19Kの開始部位に隣接する約200ヌクレオチド、例えば203ヌクレオチドの欠損を含む。ある態様において、E1b-19K挿入部位は、Ad5ゲノム(配列番号:52)のヌクレオチド1714~1916に対応する欠損を含むか、または外因性ヌクレオチド配列がAd5ゲノム(配列番号:52)の1714および1916に対応するヌクレオチドの間に挿入される。ある態様において、外因性ヌクレオチド配列は、CTGACCTC(配列番号:53)とTCACCAGG(配列番号:54)の間に挿入され、例えば組み換えアデノウイルスは、5'~3'の方向で、CTGACCTC(配列番号:53)、外因性ヌクレオチド配列およびTCACCAGG(配列番号:54)を含む。CTGACCTC(配列番号:53)およびTCACCAGG(配列番号:54)は、Ad5ゲノム(配列番号:52)中のE1b-19K挿入部位についての特有の境界配列を画定する。明細書および特許請求の範囲を通じて、部位に隣接する欠損、例えば遺伝子の開始部位に隣接する欠損または遺伝子の停止部位に隣接する欠損は、該欠損が所定の開始部位または停止部位を構成するヌクレオチドの全て、一部または該ヌクレオチドなしの欠損を含み得ることを意味すると理解される。
【0087】
ある態様において、組み換えアデノウイルスはE3欠損を含む。ある態様において、E3欠損は、約500~約3185、約500~約3000、約500~約2500、約500~約2000、約500~約1500、約500~約1000、約1000~約3185、約1000~約3000、約1000~約2500、約1000~約2000、約1000~約1500、約1500~約3185、約1500~約3000、約1500~約2000、約2000~約3185、約2000~約3000、約2000~約2500、約2500~約3185、約2500~約3000または約3000~約3185ヌクレオチドの欠損を含む。
【0088】
ある態様において、E3欠損は、pVIIIの停止部位(すなわちpVIIIの停止コドンをコードする、例えば配列番号:52のヌクレオチド27855~27857に対応するヌクレオチド配列)と、Fiberの開始部位(すなわちFiberの開始コドンをコードする、例えば配列番号:52のヌクレオチド31042~31044に対応するヌクレオチド配列)の間に配置される欠損を含む。ある態様において、E3欠損は、E3-10.5Kの停止部位(すなわちE3-10.5Kの停止コドンをコードする、例えば配列番号:52のヌクレオチド29770~29772に対応するヌクレオチド配列)と、E3-14.7Kの停止部位(すなわちE3-14.7Kの停止コドンをコードする、例えば配列番号:52のヌクレオチド30837~30839に対応するヌクレオチド配列)の間に配置される欠損を含む。ある態様において、E3欠損は、E3-10.5Kの停止部位に隣接する約500~約1551、約500~約1500、約500~約1000、約1000~約1551、約1000~約1500または約1500~約1551ヌクレオチドの欠損を含む。ある態様において、E3欠損は、E3-10.5Kの停止部位(すなわちE3-10.5Kの停止コドンをコードする、例えば配列番号:52のヌクレオチド29770~29772に対応するヌクレオチド配列)に隣接する約1050ヌクレオチドの欠損を含み、例えばE3欠損は、E3-10.5Kの停止部位に隣接する1064ヌクレオチドの欠損を含む。ある態様において、E3欠損は、Ad5 dl309 E3欠損に対応する欠損を含む。ある態様において、E3欠損は、Ad5ゲノム(配列番号:52)のヌクレオチド29773~30836に対応する欠損を含む。
【0089】
ある態様において、E3欠損は、E3-gp19Kの停止部位(すなわちE3-gp19Kの停止コドンをコードする、例えば配列番号:52のヌクレオチド29215~29217に対応するヌクレオチド配列)と、E3-14.7Kの停止部位(すなわちE3-14.7Kの停止コドンをコードする、例えば配列番号:52のヌクレオチド30837~30839に対応するヌクレオチド配列)の間に配置される欠損を含む。ある態様において、E3欠損は、E3-gp19Kの停止部位に隣接する約500~約1824、約500~約1500、約500~約1000、約1000~約1824、約1000~約1500または約1500~約1824ヌクレオチドの欠損を含む。ある態様において、E3欠損は、E3-gp19Kの停止部位に隣接する約1600ヌクレオチドの欠損を含み、例えばE3挿入部位は、E3-gp19Kの停止部位に隣接する1622ヌクレオチドの欠損を含む。ある態様において、E3欠損は、Ad5ゲノム(配列番号:52)のヌクレオチド29218~30839に対応する欠損を含む。
【0090】
ある態様において、組み換えアデノウイルスは、E3挿入部位を含み、例えばアデノウイルスは、E3欠損に挿入される開示された融合タンパク質をコードする外因性ヌクレオチド配列を有する。例えば、ある態様において、外因性ヌクレオチド配列は、Ad5ゲノム(配列番号:52)の29773および30836に対応するヌクレオチドの間に挿入される。ある態様において、外因性ヌクレオチド配列は、CAGTATGA(配列番号:56)とTAATAAAAAA(配列番号:57)の間に挿入され、例えば組み換えアデノウイルスは、5'~3'の方向で、CAGTATGA(配列番号:56)、外因性ヌクレオチド配列、およびTAATAAAAAA(配列番号:57)を含む。CAGTATGA(配列番号:56)およびTAATAAAAAA(配列番号:57)は、Ad5ゲノム(配列番号:52)内のE3挿入部位のための特有の境界配列を画定する。
【0091】
ある態様において、外因性ヌクレオチド配列は、Ad5ゲノム(配列番号:52)の29218および30839に対応するヌクレオチドの間に挿入される。ある態様において、外因性ヌクレオチド配列は、TGCCTTAA(配列番号:58)とTAAAAAAAAAT(配列番号:59)の間に挿入され、例えば組み換えアデノウイルスは、5'~3'の方向で、TGCCTTAA(配列番号:58)、外因性ヌクレオチド配列、およびTAAAAAAAAAT(配列番号:59)を含む。TGCCTTAA(配列番号:58)およびTAAAAAAAAAT(配列番号:59)は、Ad5ゲノム(配列番号:52)内のE3挿入部位のための特有の境界配列を画定する。
【0092】
本発明のこの局面の実施に有用なさらなる例示的なアデノウイルスベクターは、米国特許第9,073,980号に記載される。
【0093】
IV. 融合タンパク質改変
治療剤として使用する場合、融合タンパク質は、親和性および/または特異性などの生化学的特性を向上するため、凝集、安定性、沈殿および/または非特異的相互作用などの生物物理学的特性を向上するためおよび/または免疫原性を低減するために、最適化(例えば親和性成熟)され得る。親和性成熟手順は、当該技術分野における通常の技術の範囲内にある。例えば、DNAシャッフリング、鎖シャッフリング、CDRシャッフリング、ランダム突然変異誘発および/または部位特異的突然変異誘発により多様性を開示される融合タンパク質に導入し得る。
【0094】
一般的に、最適化された融合タンパク質は、リガンドについて、それが由来する最適化されていない(または親)融合タンパク質と少なくとも同じまたは実質的に同じ(例えば少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の親和性を有する。好ましくは、最適化された融合タンパク質は、親融合タンパク質と比較した場合、リガンドについてより高い親和性を有する。
【0095】
融合タンパク質(例えば親および最適化されたバリアント)は、特定のエフェクター機能(例えば抗体依存的細胞傷害性(ADCC))を有する特定の定常(すなわちFc)領域を含むように作り変えられ得る。ヒト定常領域は当該技術分野で公知である。
【0096】
さらに、融合タンパク質が治療剤としての使用のためのものである場合、融合タンパク質は、標準的なインビトロコンジュゲーション化学を使用して、小分子毒素または放射性核種などのエフェクター剤にコンジュゲートされ得る。エフェクター剤がポリペプチドである場合、抗体は、エフェクターに化学的にコンジュゲートされ得るかまたは融合タンパク質としてエフェクターに結合され得る。融合タンパク質の構築は当該技術分野の通常の技術の範囲内である。
【0097】
V. 治療の方法
前述の融合タンパク質または発現ベクターを使用して、種々の医学的適応症を治療し得る。ある態様において、前述の融合タンパク質または発現ベクターを使用して、サイトカイン、例えばTGFβにより媒介される医学的適応症を治療し得る。例えば、融合タンパク質および発現ベクターを使用して、種々の癌または炎症性疾患を治療し得る。
【0098】
本明細書で使用する場合、「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」および「治療(treatment)」は、被験体、例えば哺乳動物、例えばヒトにおける疾患の治療を意味する。これは、(a)疾患を阻害すること、すなわちその発症を拘束すること、および(b)疾患を緩和すること、すなわち疾患状態の寛解を引き起こすことを含む。本明細書で使用する場合、用語「被験体」および「患者」は、本明細書に記載される方法および組成物により治療される生物をいう。好ましくは、かかる生物としては、限定されないが、哺乳動物(例えばマウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等)が挙げられ、より好ましくはヒトが挙げられる。
【0099】
ある態様において、本明細書に開示される融合タンパク質および発現ベクターを使用して、種々の癌を治療し得る。癌細胞の増殖を阻害または低減するように、癌細胞を、融合タンパク質または発現ベクターの治療有効量に暴露する。ある態様において、癌細胞への融合タンパク質または発現ベクターの治療有効量の投与は、細胞中のTGFβを少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%低減する。TGFβ活性は、実施例2に記載されるようにウエスタンブロットにより測定し得る。いくつかの態様において、開示される融合タンパク質または発現ベクターを使用して、被験体(例えばヒト患者、ヒト被験体とも称される)において腫瘍増殖を阻害し得、これは該被験体に、融合タンパク質または発現ベクターの有効量を投与することにより達成され得る。ある態様において、被験体に、融合タンパク質または発現ベクターの有効量を投与することで、被験体における腫瘍負荷が少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%低減される。
【0100】
癌の例としては、固形腫瘍、軟組織腫瘍、造血腫瘍および転移性病変が挙げられる。造血腫瘍の例としては、白血病、急性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞、T細胞もしくはFAB ALL、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、例えば変形CLL、びまん性大型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、毛様細胞白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、リンパ腫、ホジキン病、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、またはリヒター症候群(リヒター変形)が挙げられる。固形腫瘍の例としては、種々の臓器系の悪性疾患、例えば肉腫、腺癌および癌腫、例えば頭部頸部(咽頭を含む)、甲状腺、肺(小細胞または非小細胞肺癌(NSCLC))、乳房、リンパ、胃腸(例えば口腔、食道、胃、肝臓、膵臓、小腸、結腸および直腸、肛門管)、生殖器および尿生殖器管(例えば腎臓、尿路上皮、膀胱、卵巣、子宮、子宮頸、子宮内膜、前立腺、精巣)、CNS(例えば神経またはグリア細胞、例えば神経芽腫または神経膠腫)、または皮膚(例えば黒色腫)に影響するものが挙げられる。
【0101】
ある態様において、癌は、黒色腫、皮膚の扁平上皮癌、基底細胞癌、頭部頸部癌、乳癌、肛門癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、中皮腫、小細胞肺癌、腎細胞癌、前立腺癌、胃食道癌、結腸直腸癌、精巣癌、膀胱癌、卵巣癌、肝臓癌、肝細胞癌、胆管癌、脳および中枢神経系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌(例えば副甲状腺癌腫)、子宮内膜癌、神経内分泌癌、リンパ腫(例えばホジキンおよび非ホジキン)、白血病、メルケル細胞癌、消化管間質腫瘍、多発性骨髄腫、子宮癌、肉腫、腎臓癌、眼の癌、膵臓癌ならびに生殖細胞癌(例えば卵巣生殖細胞癌)から選択される。ある態様において、癌は、白血病、乳癌、肺癌、膵臓癌、子宮内膜癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頸癌、脳腫瘍、皮膚癌、結腸直腸癌、胃癌、頭部頸部癌および白血病から選択され得る。ある態様において、癌は、白血病、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、胃癌、頭部頸部癌、子宮内膜癌および卵巣癌から選択される。
【0102】
ある態様において、本開示の融合タンパク質または発現ベクターは、サイトカインのレベルの減少を必要とする被験体(例えば炎症状態を有する被験体)において1つ以上のサイトカインのレベルを減少するために投与される。ある態様において、開示される融合タンパク質または発現ベクターを使用して、被験体(例えばヒト被験体)における炎症状態を治療し得、これは被験体に、融合タンパク質または発現ベクターの有効量を投与することにより達成され得る。
【0103】
本明細書で使用する場合、炎症状態は、全体または部分的に患者における炎症または炎症性応答を特徴とする疾患または状態である。本発明の融合タンパク質または発現ベクターを使用して治療可能な炎症状態は、例えば罹患した主な組織、該状態の基底にある作用機構または制御を損なったもしくは過剰に活性な免疫系の部分に基づいて特徴付けられ得る。ある態様において、治療され得る炎症状態の例としては、肺(例えば喘息、成人呼吸促進症候群、気管支炎、肺の炎症、肺の線維症および嚢胞性線維症)、関節(例えば関節リウマチ、リウマチ様脊椎炎、若年性関節リウマチ、変形性関節炎、痛風関節炎および他の関節性状態)、結合組織、眼(例えばブドウ膜炎(虹彩炎を含む)、結膜炎、強膜炎および乾性角結膜炎)、鼻腔、腸(例えばクローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、炎症性腸症候群および遠位直腸炎)、腎臓(例えば糸球体腎炎、間質性腎炎、ループス腎炎、ヴェーゲナー病に続発性の腎炎、急性腎炎に続発性の急性腎不全、グッドパスチャー病、後閉塞性症候群および管状虚血)、肝臓(例えば肝炎(ウイルス肝炎、自己免疫応答、薬物治療、毒素、環境因子または原発性障害の続発性の結果により生じる)、肥満、胆道閉鎖、胆汁性肝硬変および原発性硬化性胆管炎)、皮膚(例えば乾癬、湿疹および皮膚炎、例えば湿疹性皮膚炎、局所および脂漏性皮膚炎、アレルギー性または刺激性接触皮膚炎、亀裂性湿疹(eczema craquelee)、光アレルギー性皮膚炎、光毒性皮膚炎、植物性光線皮膚炎、放射線皮膚炎、およびうっ血性皮膚炎)、中枢神経系(例えば多発性硬化症および神経変性性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病またはHIV感染に関連する痴呆)、脈管系(例えば冠状梗塞損傷、末梢血管疾患、心筋炎、脈管炎、狭窄の血管再生、アテローム硬化症、およびII型糖尿病に関連する血管疾患)、内分泌系(例えば自己免疫甲状腺炎(橋本病)、I型糖尿病、II型糖尿病に関連する肝臓および脂肪組織における炎症、ならびに急性および慢性の副腎皮質の炎症)心臓、または脂肪組織の炎症が挙げられる。本開示は、いくつかの炎症状態が複数の組織における炎症を含むことを企図する。さらに、本開示は、いくつかの炎症状態が複数のカテゴリーに当てはまることを企図する。ある態様において、炎症状態は自己免疫疾患である。例示的な自己免疫疾患としては、限定されないが、関節リウマチ、乾癬(斑乾癬を含む)、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、狼瘡、脱毛、自己免疫膵臓炎、セリアック病、ベーチェット病、クッシング症候群、およびグレーブス病が挙げられる。ある態様において、炎症状態は、リウマチ様障害である。例示的なリウマチ様障害としては限定されないが、関節リウマチ、若年性関節炎、滑液包炎、脊椎炎、痛風、強皮症、スティル病および脈管炎が挙げられる。特定のカテゴリーの状態が重複することに注意されたい。例えば、関節リウマチは、炎症性リウマチ様障害、炎症性関節障害および自己免疫障害である。
【0104】
用語「有効量」は、本明細書で使用する場合、有益または所望の結果をもたらすのに十分な活性成分の量(例えば本発明の融合タンパク質または発現ベクターの量)をいう。有効量は1つ以上の投与、適用または用量において投与され得、特定の製剤または投与経路に限定されることを意図しない。
【0105】
ある態様において、融合タンパク質の治療有効量は、0.1mg/kg~100mg/kg、例えば1mg/kg~100mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、1mg/kg~5mg/kg、10mg/kg、7.5mg/kg、5mg/kgまたは2.5mg/kgの範囲内にある。ある態様において、発現ベクター、例えば組み換えウイルスの治療有効量は、102~1015プラーク形成単位(pfu)、例えば102~1010、102~105、105~1015、105~1010または1010~1015プラーク形成単位の範囲内にある。投与量は、治療される疾患または適応症の種類および程度、患者の全体的な健康状態、融合タンパク質または発現ベクターのインビボ能力、医薬製剤、ならびに投与経路などの変数に依存する。所望の血液レベルまたは組織レベルを迅速に達成するために、初期用量は、上限を超えて増加され得る。代替的に、初期用量は、最適よりも小さくあり得、日用量は治療経過の間に段々に増加され得る。ヒト用量は、例えば0.5mg/kgから20mg/kgまで試行されるように設計された従来のフェーズI用量段階的拡大試験において最適化され得る。投与頻度は、投与経路、投与量、抗体の血清半減期、および治療されている疾患などの要因に応じて変化し得る。例示的な投与頻度は、1日に1回、1週間に1回および2週間毎に1回である。好ましい投与経路は非経口、例えば静脈内注入である。融合タンパク質または発現ベクターに基づく薬物の調製は当該技術分野における通常の技術の範囲内にある。いくつかの態様において、融合タンパク質または発現ベクターは凍結乾燥され、次いで投与の時点で、緩衝化食塩水中で再構成される。
【0106】
治療用途のために、融合タンパク質または発現ベクターは、好ましくは薬学的に許容され得る担体と組み合される。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容され得る担体」は、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なく、妥当な利益/リスク比に釣り合って、ヒトおよび動物の組織との接触における使用に適した緩衝剤、担体および賦形剤を意味する。担体(1つまたは複数)は、製剤の他の成分と適合性である意味において「許容され得る」べきであり、レシピエントに対して有害ではない。薬学的に許容され得る担体としては、医薬投与と適合性である、緩衝剤、溶媒、分散媒体、コーティング、等張化剤および吸収遅延剤等が挙げられる。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体および薬剤の使用は当該技術分野で公知である。
【0107】
本明細書に開示される融合タンパク質または発現ベクターを含む医薬組成物は、単位剤型で存在し得、任意の適切な方法により調製され得る。医薬組成物は、意図される投与経路に適合性となるように調製されるべきである。投与経路の例は、静脈内(IV)、皮内、吸入、眼内、鼻腔内、経皮、局所、経粘膜および直腸の投与である。
【0108】
融合タンパク質のための好ましい投与経路はIV注入である。有用な製剤は、医薬の分野で公知の方法により調製され得る。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed. (Mack Publishing Company, 1990)参照。非経口投与に適した製剤成分としては、注射用水、食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤;EDTAなどのキレート剤;酢酸、クエン酸またはリン酸塩などの緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの浸透圧の調整のための薬剤が挙げられる。
【0109】
静脈内投与のための、適切な担体としては、生理的食塩水、静菌水、クレモフォールELTM (BASF, Parsippany, NJ)またはリン酸緩衝化食塩水(PBS)が挙げられる。担体は、製造および保存の条件下で安定であるべきであり、微生物に対して保存されるべきである。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)を含む溶媒または分散媒体、ならびにそれらの適切な混合物であり得る。
【0110】
好ましくは、医薬製剤は滅菌である。滅菌は、任意の適切な方法、例えば滅菌濾過膜を通した濾過により達成され得る。組成物が凍結乾燥される場合、凍結乾燥および再構成の前後に濾過滅菌を行い得る。ある態様において、本発明の送達ビヒクル(例えば組み換えウイルス)および/または治療剤は、チェックポイント阻害剤、例えば抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体と組み合わせて投与される。例示的な抗PD-1抗体としては、例えばニボルマブ(Opdivo(登録商標), Bristol-Myers Squibb Co.)、ペンブロリズマブ(Keytruda(登録商標), Merck Sharp & Dohme Corp.)、PDR001 (Novartis Pharmaceuticals)およびピジリズマブ(pidilizumab)(CT-011, Cure Tech)が挙げられる。例示的な抗PD-L1抗体としては、例えばアテゾリズマブ(atezolizumab)(Tecentriq(登録商標), Genentech)、デュバルマブ(duvalumab)(AstraZeneca)、MEDI4736、アベルマブ(Bavencio(登録商標), EMD Serono)およびBMS 936559 (Bristol Myers Squibb Co.)が挙げられる。
【0111】
本明細書で使用する場合、用語「組み合わせて」投与されるは、2つ(またはそれ以上)の異なる治療が、障害を有する被験体の苦痛の過程において被験体に対する治療の効果が時間内の時点で重複するように、被験体に投与されることを意味すると理解される。ある態様において、1つの治療の送達は、第2の送達が始まる際に依然行われているので、投与期間の重複がある。これはしばしば、本明細書において「同時(simultaneous)」または「同時送達(concurrent delivery)」と称される。他の態様において、1つの治療の送達は、他の治療の送達が開始される前に終了する。いずれかの場合のいくつかの態様において、治療は、組み合わされた投与のためにより効果的である。例えば、第2の治療はより効果的であり、例えばより少ない第2の治療により同等の効果が見られるか、または第2の治療は、第2の治療が第1の治療の非存在下で投与されるかもしくは第1の治療により同等の状況が見られる場合に見られるよりも大きな程度に症状を低減する。ある態様において、送達は、症状または障害に関連する他のパラメーターの低減が、1つの治療が他の治療の非存在下で送達されることにより観察されるものよりも大きくなるようなものである。2つの治療の効果は、部分的に相加的であるか、全体的に相加的であるかまたは相加的よりも大きい。送達は、送達される第1の治療の効果が第2の治療を送達した際に依然として検出可能であるようなものであり得る。
【0112】
明細書を通じて、組成物、デバイスおよび系が、特定の成分を有する、含む(including)もしくは含む(comprising)と記載される場合、またはプロセスおよび方法が特定の工程を有する、含むもしくは含むと記載される場合、さらに、記載される成分から本質的になるかまたはそれからなる本発明の組成物、デバイスおよび系があること、ならびに記載されるプロセス工程から本質的になるかまたはそれからなる本発明によるプロセスおよび方法があることが企図される。
【0113】
本願において、因子もしくは成分が記載される因子もしくは成分のリストに含まれるおよび/またはそれから選択されるといえる場合、該因子または成分は、記載される因子もしくは成分のいずれか1つであり得るか、または該因子もしくは成分は、記載される因子もしくは成分の2つ以上からなる群より選択され得ることが理解されるべきである。
【0114】
さらに、本明細書に記載される組成物もしくは方法の因子および/または特徴は、本明細書において明示的であろうと暗示的であろうと、本発明の精神および範囲を逸脱することなく種々の方法で組み合され得ることが理解されるべきである。例えば、特定のウイルスについて参照がなされる場合、ウイルスは、文脈からそうではないと理解されなければ、本発明の組成物および/または本発明の方法の種々の態様において使用され得る。すなわち、本願において、態様は、明確および簡潔な適用を記載および図示する方法で記載されて示されているが、態様は、本教示および発明(1つまたは複数)から逸脱することなく種々に組み合されるかまたは分離され得ることが意図され、理解される。例えば、本明細書に記載および示される全ての特徴は、本明細書に記載および示される発明(1つまたは複数)の全ての局面に適用可能であり得ることが理解される。
【0115】
表現「少なくとも1つの」は、文脈および用途からそうではないと理解されなければ、該表現の後の記載されるもののそれぞれを個々におよび記載されるものの2つ以上の種々の組合せを含むことが理解されるべきである。3つ以上の記載されたものに関して、表現「および/または」は、文脈からそうではないと理解されなければ、同じ意味を有すると理解されるべきである。
【0116】
それらの同等物を含む用語「含む(include)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(contain)」、「含む(contains)」または「含む(containing)」の使用は、文脈にそうではないと具体的に記されないかまたは文脈からそうではないと具体的に理解されなければ、例えば記載されていないさらなる因子または工程を排除することなく、一般的に、限度を設定しないものおよび非限定的なものとして理解されるべきである。
【0117】
用語「約」の使用が同量の値の前にある場合、本発明は、そうではないと具体的に記載されなければ、具体的な量的値自体も含む。本明細書で使用する場合、用語「約」は、そうではないと示されないかまたは推測されなければ、名目上の値から±10%の変動の度合いをいう。
【0118】
工程の順序または特定の行為を実行するための順序は、本発明が実施可能なままである限りは重要ではないことが理解されるべきである。さらに、2つ以上の工程または行為は同時に実施されてもよい。
【0119】
本明細書における任意および全ての例または例示的な用語、例えば「など(such as)」または「含む(including)」の使用は、単に本発明をよりよく説明するために意図され、特許請求されなければ、本発明の範囲の限定を提示しない。明細書における用語は、本発明の実施に必須のものとして、任意の特許請求されない因子を示すように企図されるべきではない。
【実施例】
【0120】
実施例
以下の実施例は単なる説明であり、いかなる方法においても本発明の範囲または内容を限定することは意図しない。
【0121】
実施例1:TGFβR融合タンパク質プラスミドおよびアデノウイルス構築物
この実施例には、TGFβR融合タンパク質をコードするプラスミドおよびウイルス発現ベクターの作製が記載される。
【0122】
マウスTGFβR-IgG1融合タンパク質(mTGFβR-IgG1)をコードするヌクレオチド配列を構築するために、プラスミドpORF9-mIL10RA、pUNO1-mTGFBR2およびpFUSEss-CHIg-mG1をInvivogenから購入した。pUNO1-mTGFBR2プラスミドをKasIおよびNheIで切断して、マウスTGFβ2型受容体のコーディング領域を有する1.7kb断片を放出した。pORF9-mIL10RAプラスミドをKasIおよびNheIで切断して、ベクター骨格を含む3kb断片を放出した。これら2つの断片を連結して、プラスミドpORF9-TGFBR2を作製した。
【0123】
プラスミドpORF9-TGFBR2を、コーディング領域のKasI部位5'に隣接するプライマーを用いて増幅し、おのおののプライマーは細胞外ドメインのみを作製するためのNheI部位が続く細胞外ドメインの3'末端に対応するか、または融合遺伝子の5'半分を作製するためのマウスIgG1(mIgG1)CH1ドメインの一部が続く細胞外ドメインの3'末端に対応した。プラスミドpFUSEss-CHIg-mG1は、NheI部位が続くmIgG1遺伝子の3'末端およびmIgG1 CH1ドメインの一部が続くmTGFβRの細胞外ドメインの3'末端に対応するプライマーを用いて増幅した。第2ラウンドのPCR反応においてこれらのPCR産物を組み合わせて融合遺伝子を作製した。次いでPCR産物をKasIおよびNheIで切断して、同じ酵素で切断したpORF9骨格に連結し、細胞外ドメインまたはmIgG1融合遺伝子のいずれかを有するpORF9プラスミドを作製した。得られたヌクレオチド配列は、直後にmIgG1配列の残基90~324が続き、第2の免疫グロブリン折りたたみの最後のβ鎖(STKVDで開始)の開始で始まるmTGFβR配列の残基1~159(TSSPDで終了)を含む融合タンパク質(mTGFβR-IgG、配列番号:33)をコードした。
【0124】
ヒトTGFβR-IgG1融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を構築するために、ヒトIgG1 (hIgG1、pCMV-SPORT6中受託BC072419)およびヒトTGFβ受容体2型(pBluescriptR中受託BC040499)のcDNAを有するプラスミドをThermo Scientificから購入した。SalI部位を有する5'プライマー、XhoI部位を有する3'プライマーおよびhTGFβRの3'末端からhIgG1の5'末端までの配列を有する連結プライマーを使用したPCR増幅を、マウス遺伝子のために記載されるとおりに行った。
【0125】
一連の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を作製した。第1の誘導タンパク質hTGFβR-IgG1-1(配列番号:22)は、hTGFβRの残基1~159(TSNPDで終了)の直後に第2の免疫グロブリン折りたたみの最後のβ鎖の開始(KPSNTで開始)で始まるhIgG1の残基88~330を含んだ。第2の融合タンパク質hTGFβR-IgG1-2(配列番号:62)は、hTGFβRの残基1~159(TSNPDで終了)の直後にhIgG1の残基90~330(SNTKVで開始)を含んだ。第3の融合タンパク質hTGFβR-IgG1-3(配列番号:63)は、hTGFβRの残基1~159(TSNPDで終了)の直後にhIgG1の残基92~330(TKVDKで開始)を含んだ。第4の融合タンパク質hTGFβR-IgG1-4は、hTGFβRの残基1~159(TSNPDで終了)の直後にhIgG1の残基94~330(VDKRVで開始)を含んだ。第5の融合タンパク質hTGFβR-Fc(配列番号:48)は、TGFβRの残基1~159(TSNPDで終了)の直後にhIgG1の残基100~330(PKSCDで開始)を含んだ。第5の融合タンパク質は、hIgG1から6~12個のさらなるアミノ酸を含むhTGFβR-IgG-1、hTGFβR-IgG-2、hTGFβR-IgG-3およびhTGFβR-IgG-4とは対照的に、免疫グロブリンのFcドメインおよびヒンジ領域のみを含んでいたのでhTGFβR-Fcと称した。融合タンパク質の詳細を表3に示す。
【0126】
【0127】
融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を、以下の適用のために、適切にプラスミドにクローニングした。アデノウイルス構築物について、ヌクレオチド配列を、E1B-19k領域の開始部位にSalI部位およびSalI部位のXhoI部位200塩基対3'を有するように改変したpXC1の誘導体(アデノウイルスゲノムの5'部分を有する)にクローニングした。示される場合、pXC1をさらに、E1Aプロモーター領域で改変して、E1A発現を癌選択的にするプラスミドpXC1-TAV-255を作製した(米国特許第9,073,980号に以前に記載される)。製造業者の指示書に従って、InFusion (Clontech)を使用してPCR産物をpXC1(またはpXC1-TAV)骨格にクローニングした。
【0128】
示される場合、pXC1プラスミドは、プラスミドpJM17と共にHEK-293A細胞中に共トランスフェクトして、組み換えウイルスを救出するように相同組み換えを行った。ウイルスを回収して2回のプラーク精製および融合タンパク質の存在を確認するための配列決定、ならびに必要な場合はTAV-255欠損の存在についての試験に供した。マウスアイソフォームを有するウイルスは293細胞中で増殖させ、ヒトアイソフォームを有するウイルスは、プラーク精製して、293細胞中の最初のウイルス救出の後に排除的にA549細胞中で増殖させた。動物実験に使用するウイルスは、Fast-Trapアデノウイルス精製キット(Millipore)を使用して精製し、ウイルス保存バッファ(25mM NaCl、10mM Tris pH8、5%グリセロール)中で透析し、使用まで-80℃で保存した。試験したウイルスの詳細を表4に示す。
【0129】
【0130】
実施例2:TGFβシグナル伝達の阻害
この実施例には、開示されるhTGFβR-IgG1融合タンパク質と従来のhTGFβR-IgG1融合タンパク質の間の比較が記載される。
【0131】
実施例1に記載されるように、一連のヒトTGFβトラップ融合タンパク質:hTGFβR-IgG1-1、hTGFβR-IgG1-2、hTGFβR-IgG1-3、hTGFβR-IgG1-4およびhTGFβR-Fcをコードするプラスミドを作製した。
【0132】
hTGFβR-Fc(配列番号:48)は、ヒトTGFβII型受容体のアミノ酸Thr23~Asp159およびヒトIgG1のアミノ酸Pro100~Lys330を含む。この配列は、市販のTGFβトラップ融合タンパク質(R&D Systems)において使用されるものと同一である。
【0133】
従来のTGFβトラップ融合タンパク質とは対照的に、hTGFβR-IgG1-1(配列番号:22)、hTGFβR-IgG-2(配列番号:54)、hTGFβR-IgG-3(配列番号:55)およびhTGFβR-IgG-4は、IgG1のCH1ドメインからそれぞれ12、10、8または6個のアミノ酸を含み、TGFβII型受容体とIgG1のヒンジおよびFc領域の間の柔軟な非免疫原性リンカーとして機能する。
【0134】
HEK-293細胞を、hTGFβR-IgG1-1、hTGFβR-IgG1-2、hTGFβR-IgG1-3、hTGFβR-IgG1-4またはhTGFβR-Fc遺伝子を有するpXC1プラスミドでトランスフェクトしたか、または非トランスフェクト対照として維持し、5日間インキュベートして、タンパク質発現および培地への分泌を可能にした。条件づけられた培地を回収して、示される場合にTGFβを500pg/mlで培地に添加し、次いで培地を新しいレポーター細胞にかぶせ、1時間インキュベートした。遊離TGFβはレポーター細胞中でSmad2リン酸化を誘導するが、TGFβトラップ融合タンパク質がTGFβを遮断する場合、融合タンパク質はSmad2リン酸化を引き起こさない。レポーター細胞のタンパク質抽出は、リン酸化Smad2についてのウエスタンブロットにより調査した。β-アクチンを負荷対照として使用したか、または続いてブロットを細長い形にして、ローディング対照として機能させるために総Smad2およびSmad3について再度調査した。
【0135】
hTGFβR-IgG1-1とhTGFβR-Fcの比較を
図3に示す。
図3に見られるように、従来のhTGFβR-Fc融合遺伝子をトランスフェクトした細胞からの条件づけられた培地はTGFβの適度な阻害を有するが、hTGFβR-IgG-1はより効果的にTGFβシグナル伝達を遮断した。ウエスタンブロットの強度の定量化により、対照と比較して、hTGFβR-FcがTGFβ活性の21%低下を生じ、hTGFβR-IgGがTGFβ活性の92%低下を生じたことが示される。
【0136】
hTGFβR-IgG1-1、hTGFβR-IgG1-2、hTGFβR-IgG1-3およびhTGFβR-IgG1-4の比較を
図4に示す。
図4に見られるように、hTGFβR-IgG1-1およびhTGFβR-IgG1-2融合遺伝子をトランスフェクトした細胞からの条件づけられた培地は、TGFβシグナル伝達を効果的に遮断した。
【0137】
まとめると、これらの結果は、従来のhTGFβR-IgG1融合タンパク質、例えばhTGFβR-Fcと比較して、開示されたhTGFβR-IgG1融合タンパク質、例えばhTGFβR-IgG1-1およびhTGFβR-IgG1-2によりTGFβ活性が顕著に低下したことを示す。
【0138】
実施例3:腫瘍増殖の阻害
ヒトTGFβRアイソフォームに対するマウス抗体の望ましくない誘導を防ぐために、mTGFβR-IgG1融合遺伝子を有するウイルスであるAd-mTGFβR-IgG1を使用してマウスにおいて実験を行った。トランスジーンを保有するように使用したE1B-19k部位を欠損させた対照ウイルスであるAd-対照も試験した。Ad-mTGFβR-IgG1およびAd-対照ウイルスは、50bp TAV-255欠損を有さず、正常細胞におけるウイルス複製を低減するための弱体化機構として機能する。ウイルスは実施例1に記載されるように調製して、ウイルスの中心的な特徴は上述の表4に簡単に示す。
【0139】
多くのマウス細胞は、ある程度のウイルス遺伝子発現を有するヒトアデノウイルスにより感染され得るが、ほとんどのマウス細胞株はヒトアデノウイルス5型複製について許容されない。ADS-12は、最近最初に(および現在のみ)同定され、ヒト細胞と同等のレベルでヒトアデノウイルスの複製を支持するマウス癌細胞株であると記載されたマウス肺癌細胞株であるので、モデル系として選択された(Zhang et al. (2015) CANCER GENE THER. 22(1):17-22)。
【0140】
皮下ADS-12腫瘍を有するマウスに、腫瘍内注射を4日毎に、ビヒクル、Ad-対照またはAd-mTGFβR-IgG1を109PFU/投与の3回の合計用量で投与して治療した。
【0141】
図5A~5Cに示されるように、緩衝剤単独の腫瘍内注射により治療した全ての腫瘍は進行した。「アームなし(unarmed)」Ad-対照ウイルスで治療した10個の腫瘍のうち4個は完全に退縮し、腫瘍特異的TGFβトラップトランスジーン発現の非存在下で腫瘍崩壊性活性を示した。対照的にAd-mTGFβR-IgG1で治療した10個の腫瘍のうち8個が完全に退縮し、トランスジーンにより向上された腫瘍殺傷が示された。
【0142】
要約すると、本明細書に開示される新規のTGFβトラップを発現する腫瘍崩壊性ウイルスは、有意に高められた抗腫瘍効果を示した。
【0143】
実施例4:癌細胞株におけるTGFβシグナル伝達の阻害
Ad-hTGFβR-IgG1-1、Ad-mTGFβR-IgG1およびAd-対照ウイルスを使用してヒト細胞株においてTGFβ阻害についてのアッセイを行った。ウイルスは実施例1に記載の通りに調製して、ウイルスの中心的な特徴を簡単に上述の表4に示す。正常(WI-38およびMRC5)および癌性(ADS-12、A549およびMCF7)細胞においてウイルスの効果を試験した。示されるウイルスを感染させた細胞由来の条件づけられた培地を、新しいレポーター細胞にかぶせ、実施例2に記載のようにTGFβを添加した。
図6A~6Bに見られるように、Smad2リン酸化のTGFβ誘導は、Ad-hTGFβR-IgG1-1を感染させた全ての細胞株由来の条件づけられた培地において低下した。要約すると、Ad-hTGFβR-IgG1-1は、癌性細胞においてTGFβの強固な阻害を誘導し、感染正常細胞においてもTGFβ活性を鈍く阻害した。
【0144】
参照による援用
本明細書で言及される特許文献および科学論文のそれぞれの全開示は、全ての目的で参照により援用される。
【0145】
均等物
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく他の特定の形態で実現され得る。そのため、前述の態様は、全ての局面において本明細書に記載される発明の限定ではなく、例示としてみなされる。したがって、本発明の範囲は、前述の記載ではなく添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の同等物の意味および範囲内にある全ての変更が本発明に包含されることが意図される。
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
項1
(i)サイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの第1の部分;
(ii)アミノ酸リンカー;ならびに
(iii)サイトカイン、サイトカイン受容体または免疫調節タンパク質の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインの第2の部分;
(iv)免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;および
(v)免疫グロブリン(Ig)Fcドメインの少なくとも1つ
を含む、単離された融合タンパク質。
項2
リンカーが約5~約40アミノ酸残基を含む、項1記載の単離された融合タンパク質。
項3
NからC末端の方向に、
(i)サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分;
(ii)アミノ酸リンカー;
(iii)免疫グロブリン(Ig)ヒンジ領域;および
(iv)免疫グロブリン(Ig)Fcドメイン
を含む、単離された融合タンパク質であって、該リンカーが、約5~約40アミノ酸残基を含む、単離された融合タンパク質。
項4
該リンカーが約5~約30アミノ酸残基を含む、項1~3いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項5
該リンカーが約5~約20アミノ酸残基を含む、項1~3いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項6
該リンカーが約5~約15アミノ酸残基を含む、項1~3いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項7
該リンカーが約10~約40アミノ酸残基を含む、項1~3いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項8
該リンカーが約10~約30アミノ酸残基を含む、項1~3いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項9
該リンカーが約10~約20アミノ酸残基を含む、項1~3いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項10
該リンカーが約10~約15アミノ酸残基を含む、項1~3いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項11
該リンカーが内因性ヒトタンパク質由来の配列を含む、項1~10いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項12
該リンカーが免疫グロブリン(Ig)CH1ドメインのC末端部分を含む、項1~11いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項13
Ig CH1ドメインがIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびIgMのCH1ドメインから選択される、項12記載の単離された融合タンパク質。
項14
該リンカーが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:60および配列番号:61から選択されるアミノ酸配列を含む、項13記載の単離された融合タンパク質。
項15
該リンカーが、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:3、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8および配列番号:9から選択されるアミノ酸配列を含む、項13記載の単離された融合タンパク質。
項16
Ig CH1ドメインがIgG1 CH1ドメインである、項14または15記載の単離された融合タンパク質。
項17
該リンカーが、配列番号:1、配列番号:60および配列番号:61から選択されるアミノ酸配列を含む、項16記載の単離された融合タンパク質。
項18
該リンカーが、配列番号:1のアミノ酸配列を含む、項16記載の単離された融合タンパク質。
項19
該リンカーが、アルブミンおよびカゼインから選択されるヒトタンパク質由来の配列を含む、項1~11いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項20
該リンカーが、配列番号:10および配列番号:11から選択されるアミノ酸配列を含む、項19記載の単離された融合タンパク質。
項21
該リンカーが、サイトカイン、シグナル伝達分子、免疫調節タンパク質またはペプチド由来の配列を含む、項1~11いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項22
該リンカーが切断部位を含む、項1~21いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項23
該切断部位がタンパク質分解性切断部位である、項22記載の単離された融合タンパク質。
項24
該タンパク質分解性切断部位が、真核細胞の小胞体またはゴルジ体に存在するプロテアーゼにより切断される、項23記載の単離された融合タンパク質。
項25
該タンパク質分解性切断部位がフューリン切断部位である、項23または24記載の単離された融合タンパク質。
項26
該フューリン切断部位がRX
1
X
2
R(配列番号:50)を含み、ここでX
1
が任意のアミノ酸であり、X
2
がLysまたはArgである、項25記載の単離された融合タンパク質。
項27
フューリン切断部位がRAKR(配列番号:51)を含む、項26記載の単離された融合タンパク質。
項28
該リンカーが、哺乳動物または植物においてタンパク質分解的に安定なアミノ酸配列を含む、項1~21いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項29
サイトカイン受容体がヒトTGFβII型受容体である、項1~28いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項30
サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分が配列番号:12のアミノ酸配列を含む、項29記載の単離された融合タンパク質。
項31
サイトカイン受容体の細胞外ドメインの可溶性部分が配列番号:12のアミノ酸残基23~159を含む、項29記載の単離された融合タンパク質。
項32
該融合タンパク質が、TGF-β、CD80、CD19、CD20、IL-1、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-12B/p40、IL-23A/p19、IL27A/p28、IL-27B/EBI3、CD154、CD86、CD137、CD137L、IFN-α、IFN-β、BORIS/CTCFL、FGF、ICAM、IL-24、MAGE、NY-ESO-1、アンギオスタチン、エンドスタチン、アセチルコリン、インターフェロン-γ、DKK1/Wnt、p53、チミジンキナーゼ、抗PD-1抗体の重鎖もしくは軽鎖、および抗PD-L1抗体の重鎖もしくは軽鎖、またはそれらの機能的断片の1つ以上を含む、項1~31いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項33
Ig Fcドメインおよびヒンジ領域が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびIgMのFcドメインおよびヒンジ領域から選択される、項1~32いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項34
Ig Fcドメインおよびヒンジ領域が、配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20および配列番号:21から選択されるアミノ酸配列を含む、項33記載の単離された融合タンパク質。
項35
Ig Fcドメインおよびヒンジ領域がヒトIgG1 Fcドメインおよびヒンジ領域である、項34記載の単離された融合タンパク質。
項36
Ig Fcドメインおよびヒンジ領域が配列番号:13のアミノ酸配列を含む、項35記載の単離された融合タンパク質。
項37
Ig Fc、Igヒンジ領域およびIg CH1ドメインが、単一免疫グロブリンに由来する、項1~36いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項38
該融合タンパク質が、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:62および配列番号:63から選択されるアミノ酸配列を含む、項1~37いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項39
該融合タンパク質が、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31、配列番号:32および配列番号:33から選択されるアミノ酸配列を含む、項1~37いずれか記載の単離された融合タンパク質。
項40
該融合タンパク質が、配列番号:22、配列番号:62および配列番号:63から選択されるアミノ酸配列を含む、項38または39記載の単離された融合タンパク質。
項41
該融合タンパク質が、配列番号:22のアミノ酸配列を含む、項38または39記載の単離された融合タンパク質。
項42
項1~41いずれか記載の2つの融合タンパク質を含むサイトカイン結合タンパク質であって、それぞれの融合タンパク質がサイトカイン受容体の細胞外ドメインを含み、2つの融合タンパク質が互いに共有結合し、2つの細胞外ドメインが一緒になって、サイトカインに結合するための結合部位を画定する、サイトカイン結合タンパク質。
項43
項1~42いずれか記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
項44
項43記載の核酸を含む、発現ベクター。
項45
該発現ベクターが腫瘍崩壊性ウイルスである、項44記載の発現ベクター。
項46
腫瘍崩壊性ウイルスがアデノウイルスである、項45記載の発現ベクター。
項47
アデノウイルスが2型または5型アデノウイルスである、項46記載の発現ベクター。
項48
アデノウイルスが5型アデノウイルスである、項47記載の発現ベクター。
項49
融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、E1b-19Kの開始部位とE1b-55Kの開始部位の間に配置されるE1b-19K挿入部位に挿入される、項46~48いずれか記載の発現ベクター。
項50
E1b-19K挿入部位が、E1b-19Kの開始部位に隣接する約200ヌクレオチドの欠損を含む、項49記載の発現ベクター。
項51
E1b-19K挿入部位が、E1b-19Kの開始部位に隣接する203ヌクレオチドの欠損を含む、項49または50記載の発現ベクター。
項52
E1b-19K挿入部位が、Ad5ゲノム(配列番号:52)のヌクレオチド1714~1916に対応する欠損を含む、項49~51いずれか記載の発現ベクター。
項53
融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、Ad5ゲノム(配列番号:52)の1714および1916に対応するヌクレオチドの間に挿入される、項49~52いずれか記載の発現ベクター。
項54
融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、CTGACCTC(配列番号:53)とTCACCAGG(配列番号:54)の間に挿入される、項49~53いずれか記載の発現ベクター。
項55
アデノウイルスが、5'~3'の方向で、CTGACCTC(配列番号:53)、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列およびTCACCAGG(配列番号:54)を含む、項49~54いずれか記載の発現ベクター。
項56
アデノウイルスが、Pea3結合部位またはその機能的断片の欠損を含む、項46~55いずれか記載の発現ベクター。
項57
アデノウイルスが、E1aの開始部位の約-300~約-250上流に対応するヌクレオチドの欠損を含む、項56記載の発現ベクター。
項58
アデノウイルスが、E1aの開始部位の-305~-255上流に対応するヌクレオチドの欠損を含む、項56または57記載の発現ベクター。
項59
アデノウイルスが、Ad5ゲノム(配列番号:52)の195~244に対応するヌクレオチドの欠損を含む、項56~58いずれか記載の発現ベクター。
項60
アデノウイルスが、配列GGTGTTTTGG(配列番号:55)を含む、項56~59いずれか記載の発現ベクター。
項61
アデノウイルスがE3欠損を含み、E3欠損が、pVIIIの停止部位とFiberの開始部位の間に配置される、項46~60いずれか記載の発現ベクター。
項62
E3欠損が、E3-10.5Kの停止部位とE3-14.7Kの停止部位の間に配置される、項61記載の発現ベクター。
項63
E3欠損が、約500~約3185、約500~約3000、約500~約2500、約500~約2000、約500~約1500、約500~約1000、約1000~約3185、約1000~約3000、約1000~約2500、約1000~約2000、約1000~約1500、約1500~約3185、約1500~約3000、約1500~約2000、約2000~約3185、約2000~約3000、約2000~約2500、約2500~約3185、約2500~約3000または約3000~約3185ヌクレオチドの欠損を含む、項61または62記載の発現ベクター。
項64
E3欠損が、E3-10.5Kの停止部位に隣接する約500~約1551、約500~約1500、約500~約1000、約1000~約1551、約1000~約1500または約1500~約1551ヌクレオチドの欠損を含む、項61~63いずれか記載の発現ベクター。
項65
E3欠損が、E3-10.5Kの停止部位に隣接する約1050ヌクレオチドの欠損を含む、項61~64いずれか記載の発現ベクター。
項66
E3欠損が、E3-10.5Kの停止部位に隣接する1064ヌクレオチドの欠損を含む、項61~65いずれか記載の発現ベクター。
項67
E3欠損が、Ad5 dl309 E3欠損に対応する欠損を含む、項61~66いずれか記載の発現ベクター。
項68
E3欠損が、Ad5ゲノム(配列番号:52)のヌクレオチド29773~30836に対応する欠損を含む、項61~67いずれか記載の発現ベクター。
項69
融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、E3欠損に挿入される、項61~68いずれか記載の発現ベクター。
項70
融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、Ad5ゲノム(配列番号:52)の29773および30836に対応するヌクレオチドの間に挿入される、項69記載の発現ベクター。
項71
融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列が、CAGTATGA(配列番号:56)とTAATAAAAAA(配列番号:57)の間に挿入される、項69または70記載の発現ベクター。
項72
アデノウイルスが、5'~3'の方向で、CAGTATGA(配列番号:56)、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列およびTAATAAAAAA(配列番号:57)を含む、項69~71いずれか記載の発現ベクター。
項73
アデノウイルスが機能的E2F結合部位の欠損を含まない、項46~72いずれか記載の発現ベクター。
項74
アデノウイルスが機能的E2F結合部位の欠損を含む、項46~73いずれか記載の発現ベクター。
項75
アデノウイルスが、
(i)E1b-19KおよびE1b-55Kの開始部位;
(ii)E1b-19K挿入部位に挿入される項1~42いずれか記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列、ここで該挿入部位は、E1b-19Kの開始部位とE1b-55Kの開始部位の間に配置される;ならびに
(iii)改変されたE1a制御配列、ここで少なくとも1つのPea3結合部位またはその機能的部分は欠損する、
を含む、項46~74いずれか記載の発現ベクター。
項76
腫瘍崩壊性ウイルスが、過剰増殖細胞中で選択的に複製される、項45~75いずれか記載の発現ベクター。
項77
腫瘍崩壊性ウイルスが、過剰増殖細胞中で融合タンパク質を選択的に発現する、項45~76いずれか記載の発現ベクター。
項78
項44~77いずれか記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
項79
(a) 項78に記載の宿主細胞を、融合タンパク質を発現する条件下で増殖させる工程;および
(b) 融合タンパク質を精製する工程
を含む、融合タンパク質を作製する方法。
項80
(i)項1~42いずれか記載の融合タンパク質または項44~77いずれか記載の発現ベクター;および(ii)少なくとも1つの薬学的に許容され得る担体または希釈剤を含む、医薬組成物。
項81
細胞を、項44~77のいずれか記載の発現ベクターの有効量に暴露して融合タンパク質を発現させる工程を含む、標的細胞中で融合タンパク質を発現させる方法。
項82
融合タンパク質が、翻訳後に2つのポリペプチド鎖に切断される、項81記載の方法。
項83
細胞を、項42記載の二量体融合タンパク質の有効量に暴露して腫瘍細胞の増殖を阻害する工程を含む、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法。
項84
細胞を、項1~41いずれか記載の融合タンパク質の有効量に暴露して、腫瘍細胞の増殖を阻害する工程を含む、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法。
項85
腫瘍増殖の阻害を必要とする被験体に、項42記載の二量体融合タンパク質の有効量を投与して、腫瘍の増殖を阻害する工程を含む、該被験体において腫瘍増殖を阻害する方法。
項86
腫瘍増殖の阻害を必要とする被験体に、項1~41のいずれか記載の融合タンパク質の有効量を投与して、腫瘍の増殖を阻害する工程を含む、該被験体において腫瘍増殖を阻害する方法。
項87
癌の治療を必要とする被験体に、項42記載の二量体融合タンパク質の有効量を投与する工程を含む、該被験体において癌を治療する方法。
項88
癌の治療を必要とする被験体に、項1~41いずれか記載の融合タンパク質の有効量を投与する工程を含む、該被験体において癌を治療する方法。
項89
細胞を、項42記載の二量体融合タンパク質の有効量に暴露して、TGFβ活性を低減する工程を含む、細胞においてTGFβ活性を低減する方法。
項90
細胞を、項1~41いずれか記載の融合タンパク質の有効量に暴露して、TGFβ活性を低減する工程を含む、細胞においてTGFβ活性を低減する方法。
項91
炎症状態の治療を必要とする被験体に、項42記載の二量体融合タンパク質の有効量を投与する工程を含む、該被験体において炎症状態を治療する方法。
項92
炎症状態の治療を必要とする被験体に、項1~41いずれか記載の融合タンパク質の有効量を投与する工程を含む、該被験体において炎症状態を治療する方法。
項93
細胞を、項44~77いずれか記載の発現ベクターの有効量に暴露して、腫瘍細胞の増殖を阻害する工程を含む、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法。
項94
腫瘍増殖の阻害を必要とする被験体に、項44~77いずれか記載の発現ベクターの有効量を投与して、腫瘍の増殖を阻害する工程を含む、該被験体において腫瘍増殖を阻害する方法。
項95
癌の治療を必要とする被験体に、項44~77いずれか記載の発現ベクターの有効量を投与する工程を含む、該被験体において癌を治療する方法。
項96
細胞を、項44~77いずれか記載の発現ベクターの有効量に暴露して、TGFβ活性を低減する工程を含む、該細胞においてTGFβ活性を低減する方法。
項97
炎症状態の治療を必要とする被験体に、項44~77いずれか記載の発現ベクターの有効量を投与する工程を含む、該被験体において炎症状態を治療する方法。
項98
感染の治療を必要とする被験体に、項44~77いずれか記載の発現ベクターの有効量を投与する工程を含む、該被験体において感染を治療する方法。
項99
癌が、黒色腫、皮膚の扁平上皮癌、基底細胞癌、頭部頸部癌、乳癌、肛門癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、中皮腫、小細胞肺癌、腎細胞癌、前立腺癌、胃食道癌、結腸直腸癌、精巣癌、膀胱癌、卵巣癌、肝臓癌、肝細胞癌、胆管癌、脳および中枢神経系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌(例えば副甲状腺癌腫)、子宮内膜癌、神経内分泌癌、リンパ腫(例えばホジキンおよび非ホジキン)、白血病、メルケル細胞癌、消化管間質腫瘍、多発性骨髄腫、子宮癌、肉腫、腎臓癌、眼の癌、膵臓癌ならびに生殖細胞癌(例えば卵巣生殖細胞癌)から選択される、項87、88または95いずれか記載の方法。
項100
癌が、白血病、乳癌、肺癌、膵臓癌、子宮内膜癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頸癌、脳腫瘍、皮膚癌、結腸直腸癌、胃癌、頭部頸部癌および白血病から選択される、項87、88または95いずれか記載の方法。
項101
癌が、皮膚癌、頭部頸部癌および肺癌から選択される、項100記載の方法。
項102
発現ベクターが、手術、放射線照射、化学療法、免疫療法、ホルモン療法およびウイルス療法から選択される1つ以上の治療と組み合わせて投与される、項85~88、91、92、94、95または97~101いずれか記載の方法。
項103
発現ベクターが、リンパ球、例えばT細胞、例えばCAR T細胞と組み合わせて投与される、項85~88、91、92、94、95または97~101いずれか記載の方法。
項104
リンパ球がT細胞である、項103記載の方法。
項105
T細胞がCAR T細胞である、項104記載の方法。
項106
被験体がヒトまたは動物である、項85~88、91、92、94、95または97~101いずれか記載の方法。
項107
被験体が小児のヒトである、項106記載の方法。
【配列表】