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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】ガス検知体
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/00 20060101AFI20240117BHJP
   G01N 31/22 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
G01N31/00 N
G01N31/22 121A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020003661
(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公開番号】P2021110675
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】加納 正挙
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 昭彦
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-296268(JP,A)
【文献】特開平08-129009(JP,A)
【文献】特開2019-113536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00-31/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体の表面に形成され、ホスフィン反応性金属化合物を含む検知インク固化体からなるガス検知部と、
を備え
前記ホスフィン反応性金属化合物として、塩基性炭酸銅、酢酸銅、及び酢酸銀の3種類の金属塩を用い、
前記ガス検知部が3個形成され、各ガス検知部は1種類の前記ホスフィン反応性金属化合物のみを含む、ガス検知体。
【請求項2】
前記支持体の裏面に粘着層をさらに備えたラベルである請求項1に記載のガス検知体。
【請求項3】
前記ガス検知部はバーコード又はQRコードである請求項1又は2に記載のガス検知体。
【請求項4】
前記ガス検知部は多孔質体を含む請求項1又は2に記載のガス検知体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検知体に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスフィンPHを用いた燻蒸作業は、害虫を駆除するため、倉庫、船上、機器内等において広く実施されている。例えば、貨物船での燻蒸作業は、通常、貨物倉を締め切った状態で貨物を数日以上所定量のホスフィンに曝露させる。
【0003】
しかし、ホスフィンは、人間に有害であるため、環境中のホスフィンの検知が必要である。従来、環境中のホスフィンの検知は、電力で駆動するセンサ等のガス検出機構を備えたガス測定装置、及びガス検知管等を用いて実施されてきた。なお、ガス検知管を用いる場合、環境中から人力で又は電動で断続的に吸引したガス試料を用いて検知する。
【0004】
特許文献1には、ホスフィン等の複数種類の被測定ガスに反応して光学濃度が変化する反応痕を生じる試薬を担持した検知紙を用いるガス測定装置が開示されている。このガス測定装置によれば、複数種類の被測定ガスの種類とその濃度を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-232532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、燻蒸作業が行われた個々の物品について、過去におけるホスフィンの曝露濃度の高さを知ることが望まれるようになっている。この過去におけるホスフィンの曝露濃度の高さを検知するためには、個々の物品のホスフィンの曝露濃度を常時検知できることが好ましい。また、貨物船等に積み込まれる多くの物品についてホスフィンの曝露濃度の常時検知をするためには、人が介在しない検知器である必要がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1のガス測定装置は、電力が必要でかつ装置が大きい。このため、特許文献1のガス測定装置では、小さな個々の物品のホスフィンの曝露濃度を常時検知することは困難であり、また常時検知のコストが高いという問題があった。また、ガス検知管では、ガス試料を断続的に吸引して検知するため、ホスフィンの曝露濃度を常時検知することはできないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、無電力で、ホスフィンの常時検知が可能な、小型のガス検知体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様に係るガス検知体は、支持体と、前記支持体の表面に形成され、ホスフィン反応性金属化合物を含む検知インク固化体からなるガス検知部と、を備える。
【0010】
前記ホスフィン反応性金属化合物は、塩基性炭酸銅、酢酸銅、及び酢酸銀からなる群より選択される1種以上の金属塩であることが好ましい。
【0011】
前記ホスフィン反応性金属化合物として、塩基性炭酸銅、酢酸銅、及び酢酸銀からなる群より選択される2種以上の金属塩を用い、前記ガス検知部が2個以上形成され、各ガス検知部は1種類のホスフィン反応性金属化合物のみを含むことが好ましい。
【0012】
前記ホスフィン反応性金属化合物として、塩基性炭酸銅、酢酸銅、及び酢酸銀の3種類の金属塩を用い、前記ガス検知部が3個形成されることが好ましい。
【0013】
前記ホスフィン反応性金属化合物として、平均粒径D50、及び比表面積からなる群より選択される1種以上の物性が異なる塩基性炭酸銅を2種以上用い、前記ガス検知部は2個以上形成され、各ガス検知部は同じ物性の塩基性炭酸銅のみを含むことが好ましい。
【0014】
前記ホスフィン反応性金属化合物として、平均粒径D50、及び比表面積からなる群より選択される1種以上の物性の異なる、2種類の塩基性炭酸銅を用い、2種類の塩基性炭酸銅のうち、よりホスフィンで還元されやすい塩基性炭酸銅を第1の塩基性炭酸銅、他方の塩基性炭酸銅を第2の塩基性炭酸銅としたとき、前記ガス検知部は、一方向に向かって、前記検知インク固化体中の第1の塩基性炭酸銅の含有比率が減少しかつ第2の塩基性炭酸銅の含有比率が増加することが好ましい。
【0015】
前記ガス検知部が短冊状であり、その一方端から他方端に向かって、前記検知インク固化体中の第1の塩基性炭酸銅の含有比率が減少しかつ第2の塩基性炭酸銅の含有比率が増加することが好ましい。
【0016】
前記支持体の裏面に粘着層をさらに備えたラベルであることが好ましい。
【0017】
前記ガス検知部はバーコード又はQRコード(登録商標)であることが好ましい。
【0018】
前記ガス検知部は多孔質体を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、無電力で、ホスフィンの常時検知が可能な、小型のガス検知体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1及び第3の実施形態に係るガス検知体の平面図である。
図2】第1の実施形態に係るガス検知体の図1のA-A線に沿った断面図である。
図3】第1の実施形態に係るガス検知体におけるホスフィンの曝露前の状態の一例を示す平面図である。
図4】第1の実施形態に係るガス検知体における所定量のホスフィンの曝露後の状態の一例を示す平面図である。
図5】第2の実施形態に係るガス検知体の斜視図である。
図6】第2の実施形態に係るガス検知体におけるホスフィンの曝露前の状態の一例を示す平面図である。
図7】第2の実施形態に係るガス検知体における所定量のホスフィンの曝露後の状態の一例を示す平面図である。
図8】第3の実施形態に係るガス検知体の図1のA-A線に沿った断面図である。
図9】第3の実施形態に係るガス検知体の使用例を示す図である。
図10】第4の実施形態に係るガス検知体におけるホスフィンの曝露前の状態の一例を示す平面図である。
図11】第4の実施形態に係るガス検知体における所定量のホスフィンの曝露後の状態の一例を示す平面図である。
図12】第4の実施形態に係るガス検知体の使用例を示す図である。
図13】第5の実施形態に係るガス検知体におけるホスフィンの曝露前の状態の一例を示す平面図である。
図14】第5の実施形態に係るガス検知体における所定量のホスフィンの曝露後の状態の一例を示す平面図である。
図15】第5の実施形態に係るガス検知体の使用例を示す図である。
図16】第6の実施形態に係るガス検知体におけるホスフィンの曝露前の状態の一例を示す平面図である。
図17】第6の実施形態に係るガス検知体に用いられる2種類の検知インク固化体の10ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後の状態の一例を示す写真である。
図18】第6の実施形態に係るガス検知体に用いられる2種類の検知インク固化体の100ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後の状態の一例を示す写真である。
図19】第6の実施形態に係るガス検知体に用いられる2種類の検知インク固化体の1000ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後の状態の一例を示す写真である。
図20】第6の実施形態に係るガス検知体における10ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後の状態の一例を示す平面図である。
図21】第6の実施形態に係るガス検知体における100ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後の状態の一例を示す平面図である。
図22】第6の実施形態に係るガス検知体における1000ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後の状態の一例を示す平面図である。
図23】第7の実施形態に係るガス検知体におけるホスフィンの曝露前の状態の一例を示す写真である。
図24】第7の実施形態に係るガス検知体における1ppm以下のホスフィンでの72時間曝露後の状態の一例を示す写真である。
図25】第7の実施形態に係るガス検知体における1ppm超10ppm以下のホスフィンでの72時間曝露後の状態の一例を示す写真である。
図26】第7の実施形態に係るガス検知体における100ppm以上のホスフィンでの72時間曝露後の状態の一例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて実施形態に係るガス検知体について詳細に説明する。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は、第1及び第3の実施形態に係るガス検知体1A(1)及び1C(1)の平面図である。第1の実施形態に係るガス検知体1Aと第3の実施形態に係るガス検知体1Cとは、図1の紙面奥行き方向の構造が異なるが平面図が同じである。このため、第1の実施形態に係るガス検知体1Aと第3の実施形態に係るガス検知体1Cとを、共に図1に示す。図2は、第1の実施形態に係るガス検知体1Aの図1のA-A線に沿った断面図である。なお、第3の実施形態に係るガス検知体1Cの図1のA-A線に沿った断面図は、図8に示す。
【0023】
図1及び図2に示すように、ガス検知体1Aは、支持体10A(10)と、支持体10Aの表面に形成され、ホスフィン反応性金属化合物を含む検知インク固化体25A(25)からなるガス検知部20A(20)と、を備える、
【0024】
(支持体)
支持体10A(10)は、検知インク固化体25Aからなるガス検知部20Aを担持可能な物質が用いられる。支持体10Aの材質としては、ガス検知部20Aを担持可能であればよく、特に限定されないが、例えば、紙、プラスチック、金属、セラミックス、木材、及びこれらの組み合わせ等が用いられる。なお、支持体10Aは、少なくとも支持体10Aの表面にガス検知部20Aを担持可能であればよい。このため、支持体10Aの内部に後述の検知インクが含侵することにより支持体10Aの表面に加えて支持体10Aの内部にガス検知部20Aが形成されていてもよい。
【0025】
支持体10Aの形状としては、ガス検知部20Aを担持可能であればよく、特に限定されない。支持体10Aの形状としては、例えば、平板状、曲面状等が用いられる。
【0026】
なお、ガス検知部20Aを構成する検知インク固化体25Aは、ホスフィン反応性金属化合物を含む検知インクが固化したものである。この検知インクは、例えば、トナー印刷、インクジェット印刷等の印刷、塗布、噴霧等により支持体10Aに固定された後、固化することにより、検知インク固化体25Aからなるガス検知部20Aを形成する。支持体10Aの材質としては、上記検知インクの印刷、塗布、噴霧等が可能な材質が好ましい。
【0027】
(ガス検知部)
ガス検知部20A(20)は、ホスフィンで還元されやすいホスフィン反応性金属化合物を含む検知インク固化体25A(25)からなる。検知インク固化体25Aはホスフィン反応性金属化合物を含む検知インクが固化したものである。検知インクの固化は、通常、検知インクに含まれるバインダーが、水分等の溶媒の蒸発、化学反応等により固化してバインダー固化物となることにより生じる。このため、検知インク固化体25Aは、その原料である検知インクに対して、バインダー及び溶媒の少なくとも一方が異なる以外は、同じ成分を有する。
【0028】
図1及び図2に示すように、ガス検知体1Aのガス検知部20Aは、断面形状が台形になっている。しかし、本実施形態のガス検知部20Aは断面形状が台形以外の形状、例えば、矩形状であってもよい。なお、後述の実施形態に示すようにガス検知部20の形状は、バーコード状、QRコード状にすることも可能である。
【0029】
<ホスフィン反応性金属化合物>
検知インク固化体25Aは、少なくともホスフィン反応性金属化合物を含む。ここで、ホスフィン反応性金属化合物とは、ホスフィンに対して反応性を有する金属化合物を意味する。ホスフィン反応性金属化合物としては、例えば、塩基性炭酸銅、酢酸銅、及び酢酸銀からなる群より選択される1種以上の金属塩;有機金属鎖体;金属有機構造体(MOF)等が用いられる。
【0030】
このうち、塩基性炭酸銅Cu(OH)・CuCOは、マラカイトとも称され、ホスフィンでの曝露以外の化学的に安定であるため好ましい。塩基性炭酸銅は、ホスフィンの曝露前が緑色GRNであり、ホスフィンの曝露で還元されると黒色BLKに変色する性質を有する。塩基性炭酸銅の色の変化は、下記式(1)の反応での生成物であるCuOとリン酸由来の固体との混合物が黒色であることによると推測される。なお、式(1)中の「リン酸由来の固体」は存在が推測されるものであって、式(1)は厳密な式ではない。
[化1]
塩基性炭酸銅+PH→CuO+リン酸由来の固体 (1)
【0031】
また、酢酸銅Cu(CHCOO)は、ホスフィンの曝露前が青色BLUであり、ホスフィンの曝露で還元されると黒色BLKに変色する性質を有する。酢酸銅の色の変化は、下記式(2)の反応での生成物であるCuOとリン酸由来の固体との混合物が黒色であることによると推測される。なお、式(2)中の「リン酸由来の化合物」は存在が推測されるものであって、式(2)は厳密な式ではない。
[化2]
Cu(CHCOO)+PH→CuO+リン酸由来の固体 (2)
【0032】
さらに、酢酸銀AgCHCOOは、ホスフィンの曝露前が灰色GRYであり、ホスフィンの少量の曝露で還元されると茶色BRNに変色し、多量の所定量の曝露後はさらに還元されて薄茶色BEGに変色する性質を有する。酢酸銀の色の変化は、下記式(3)の反応での生成物であるAgが茶色及び薄茶色であることによると推測される。なお、式(3)中の「リン酸由来の化合物」は存在が推測されるものであって、式(3)は厳密な式ではない。
[化3]
AgCHCOO+PH
→Ag+CHCOOH(ガス)+リン酸由来の化合物 (3)
【0033】
塩基性炭酸銅、酢酸銅、及び酢酸銀は、ホスフィンでの曝露濃度により、反応性に差異がある。このため、ホスフィン反応性金属化合物として、塩基性炭酸銅、酢酸銅、及び酢酸銀の一種以上を適宜組み合わせて用いることにより、ホスフィンの曝露濃度に対する反応性を制御した検知インク固化体25Aを得ることができる。
【0034】
ホスフィン反応性金属化合物は、通常、微粒子である。ホスフィン反応性金属化合物の平均粒径D50は、特に限定されないが、通常0.1~50μm、好ましくは0.5~2μm、より好ましくは0.8~1.2μmである。ここで、平均粒径D50は、メジアン径である。このように、ホスフィン反応性金属化合物は、通常、微粒子であるため、ガス検知部20Aを構成する検知インク固化体25Aには、通常、多数のホスフィン反応性金属化合物の微粒子が含まれる。検知インク固化体25A中に含まれる多数のホスフィン反応性金属化合物の粒子間、及び検知インク固化体25Aの表面の多数のホスフィン反応性金属化合物の粒子間には、通常、空隙が存在する。
【0035】
ホスフィン反応性金属化合物の比表面積は、特に限定されない。
【0036】
<ホスフィン反応性金属化合物以外の成分>
ガス検知部20Aは、ホスフィン反応性金属化合物以外の成分として、通常、バインダー固化物を含む。バインダー固化物としては、検知インク固化体25Aの固化体の形状を維持可能なものである限り、特に限定されない。バインダー固化物としては、例えば、アクリル系、ビニル系、セルロース系の樹脂固化物等が用いられる。
【0037】
ガス検知部20Aは、必要により、多孔質体を含んでいてもよい。ガス検知部20Aが多孔質体を含むと、ホスフィン反応性金属化合物が分散され検知体対象ガスと反応しやすくなり、かつホスフィン反応性金属化合物を孔の中に入れることで検知選択性を制御することができるため好ましい。多孔質体としては、例えば、パルプ等の繊維、アルミナ、シリカ、MOF(金属有機構造体)等が用いられる。
【0038】
ガス検知部20Aは、ホスフィン反応性金属化合物を含む検知インクが固化することにより得られる。検知インクは、通常、ガス検知部20Aを構成する検知インク固化体25Aに比較して、バインダー固化物に代えて流動性バインダーを有しかつ溶媒を有する。
【0039】
ガス検知体1Aは、ホスフィンの曝露の測定対象となる測定対象物品の表面又は物品中に配置する。ガス検知体1Aを測定対象物品の表面又は物品中に配置する場合、単に載置してもよいし、粘着剤、粘着テープ等を用いて貼付してもよい。
【0040】
(作用)
ガス検知体1Aの作用について説明する。ガス検知体1Aのガス検知部20Aは、所定量のホスフィンに曝露される前後で色が変化する。例えば、ガス検知部20Aに含まれるホスフィン反応性金属化合物が塩基性炭酸銅である場合、ホスフィンの曝露前が緑色GRNであり、ホスフィンの曝露で還元されると黒色BLKに変色する性質を有する。
【0041】
図3は、第1の実施形態に係るガス検知体1Aにおけるホスフィンの曝露前の状態の一例を示す平面図である。図4は、第1の実施形態に係るガス検知体1Aにおける所定量のホスフィンの曝露後の状態の一例を示す平面図である。図3及び図4は、ホスフィン反応性金属化合物が塩基性炭酸銅である場合の一例を示す。
【0042】
図3に示すように、ガス検知体1Aのガス検知部20Aは、ホスフィンの曝露前は、塩基性炭酸銅が還元されていないため緑色GRNである。一方、図4に示すように、ガス検知体1Aのガス検知部20Aは、所定量のホスフィンの曝露後に上記式(1)の反応が生じ塩基性炭酸銅が還元されるため、黒色BLKに変色する。
【0043】
図3及び図4はホスフィン反応性金属化合物が塩基性炭酸銅である場合の一例であるが、ホスフィン反応性金属化合物が塩基性炭酸銅以外である場合でも、ガス検知体1Aのガス検知部20Aは、所定量のホスフィンの曝露前後において、変色する。
【0044】
例えば、ガス検知体1Aにおいてホスフィン反応性金属化合物が酢酸銅である場合、ガス検知部20Aは、ホスフィンの曝露前は酢酸銅が還元されていないため青色BLUである。一方、ガス検知部20Aは、所定量のホスフィンの曝露後に上記式(2)の反応が生じ酢酸銅が還元されるため、黒色BLKに変色する。
【0045】
また、例えば、ガス検知体1Aにおいてホスフィン反応性金属化合物が酢酸銀である場合、ガス検知部20Aは、ホスフィンの曝露前は酢酸銀が還元されていないため灰色GRYである。一方、ガス検知部20Aは、所定量のホスフィンの曝露後に上記式(3)の反応が生じ酢酸銀が還元されるため茶色BRNに変色し、さらに還元されると薄茶色BEGに変色する。
【0046】
上記ガス検知部20Aの変色作用は、一旦変色すると、変色後の色を維持する。このため、ガス検知体1Aによれば、過去におけるホスフィンの曝露濃度の高さを検知することができる。
【0047】
上記ガス検知部20Aの変色作用は、目視で、又は機械を用いて、変色度合いを検知することができる。
【0048】
また、上記変色作用は、ホスフィンによるホスフィン反応性金属化合物の還元に基づくため、無電力で発現する。さらに、上記作用は、無電力で発現するため、ホスフィンの曝露について常時検知可能である。また、上記変色作用は、ガス検知体1Aのみで発現するため、変色作用の検知が可能な範囲内でガス検知体1Aを小型化することができる。
【0049】
(製造方法)
ガス検知体1Aは、支持体10Aの表面に検知インク固化体25Aを形成することにより得られる。検知インク固化体25Aは、ホスフィン反応性金属化合物を含む検知インクを固化させることにより得られる。
【0050】
検知インクは、少なくともホスフィン反応性金属化合物を含み、通常、固化してホスフィン反応性金属化合物を固定するバインダーを含む。
【0051】
バインダーとしては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル等の無機バインダー、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂等の有機バインダー等が用いられる。上記バインダーは検知インクにおいて流動性を有するが、固化後はバインダー固化物となりホスフィン反応性金属化合物を固化して検知インク固化体25Aを形成する。
【0052】
なお、検知インク固化体25A中に含まれる多数のホスフィン反応性金属化合物の粒子間、及び検知インク固化体25Aの表面の多数のホスフィン反応性金属化合物の粒子間には、通常、空隙が存在する。このため、ガス検知部20Aでは、バインダーが固化してバインダー固化物が形成されても、多数のホスフィン反応性金属化合物の粒子間に残存する空隙を通して、ホスフィンの検知が可能である。
【0053】
検知インクは、必要により、検知インクの流動性を調整する溶媒を含む。溶媒としては、例えば、水等の無機溶媒、アルコール等の有機溶媒が用いられる。
【0054】
検知インクは、必要により、分散性、粘度等を調整する多孔質体を含む。
【0055】
検知インクは、例えば、トナー印刷、インクジェット印刷等の印刷、凸版印刷、凹版印刷、塗布、噴霧等により支持体10Aに固定される。支持体10Aに固定された検知インクは、固化することにより、検知インク固化体25Aからなるガス検知部20Aを形成する。
【0056】
(効果)
ガス検知体1Aによれば、所定量のホスフィンの曝露前後で、ガス検知部20Aの色が変わる。このため、ガス検知体1Aによれば、無電力で、ホスフィンの常時検知が可能な、小型のガス検知体を得ることができる。
【0057】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態に係るガス検知体1B(1)の斜視図である。第2の実施形態に係るガス検知体1Bは、第1の実施形態に係るガス検知体1Aの平板状の支持体10Aに代えて、袋状の支持体10Bを用いたものである。
【0058】
図5に示すように、ガス検知体1Bは、袋状の支持体10B(10)と、支持体10Bの表面に形成され、ホスフィン反応性金属化合物を含む検知インク固化体25B(25)からなるガス検知部20B(20)と、を備える、
【0059】
第2の実施形態に係るガス検知体1Bは、袋状の支持体10Bが第1の実施形態に係るガス検知体1Aの平板状の支持体10Aと異なる以外は、第1の実施形態に係るガス検知体1Aと同じである。このため、第2の実施形態に係るガス検知体1Bにおいて、第1の実施形態に係るガス検知体1Aと同じ構成に同じ符号を付し、構成及び作用の説明を簡略化又は省略する。
【0060】
(支持体)
袋状の支持体10Bの材質としては、第1の実施形態に係るガス検知体1Aの平板状の支持体10Aと同様のものを用いることができる。例えば、支持体10Bの材質をプラスチックと金属とを貼り合わせた複合材料とし、ガス検知体1Bをラミネート袋とすることが可能である。
【0061】
(ガス検知部)
ガス検知部20B及び検知インク固化体25Bは、それぞれ、ガス検知部20A及び検知インク固化体25Aと同様の構成であるため説明を省略する。
【0062】
(作用)
ガス検知体1Bの作用について説明する。ガス検知体1Bのガス検知部20Bは、所定量のホスフィンに曝露される前後で色が変化する。この作用はガス検知体1Aの作用と同じである。例えば、ガス検知部20Bに含まれるホスフィン反応性金属化合物が塩基性炭酸銅である場合、ホスフィンの曝露前が緑色GRNであり、ホスフィンの曝露で還元されると黒色BLKに変色する性質を有する。
【0063】
図6は、第2の実施形態に係るガス検知体1Bにおけるホスフィンの曝露前の状態の一例を示す平面図である。図7は、第2の実施形態に係るガス検知体1Bにおける所定量のホスフィンの曝露後の状態の一例を示す平面図である。
【0064】
図6に示すように、ガス検知体1Bのガス検知部20Bは、ホスフィンの曝露前は、塩基性炭酸銅が還元されていないため緑色GRNである。一方、図7に示すように、ガス検知体1Bのガス検知部20Bは、所定量のホスフィンの曝露後に上記式(1)の反応が生じ塩基性炭酸銅が還元されるため、黒色BLKに変色する。
【0065】
図6及び図7はホスフィン反応性金属化合物が塩基性炭酸銅である場合の一例であるが、ホスフィン反応性金属化合物が塩基性炭酸銅以外である場合でも、ガス検知体1Bのガス検知部20Bは、所定量のホスフィンの曝露前後において、変色する。
【0066】
例えば、ガス検知体1Bにおいてホスフィン反応性金属化合物が酢酸銅である場合、ガス検知部20Bは、ホスフィンの曝露前は酢酸銅が還元されていないため青色BLUである。一方、ガス検知部20Bは、所定量のホスフィンの曝露後に上記式(2)の反応が生じ酢酸銅が還元されるため、黒色BLKに変色する。
【0067】
また、例えば、ガス検知体1Bにおいてホスフィン反応性金属化合物が酢酸銀である場合、ガス検知部20Bは、ホスフィンの曝露前は酢酸銀が還元されていないため灰色GRYである。一方、ガス検知部20Bは、所定量のホスフィンの曝露後に上記式(3)の反応が生じ酢酸銀が還元されるため茶色BRNに変色し、さらに還元されると薄茶色BEGに変色する。
【0068】
その他の作用は、ガス検知体1Aの作用と同じであるため説明を省略する。
【0069】
(製造方法)
ガス検知体1Bは、ガス検知体1Aと同様にして製造することができる。
【0070】
(効果)
ガス検知体1Bによれば、ガス検知体1Aと同様に所定量のホスフィンの曝露前後で、ガス検知部20Bの色が変わる。このため、ガス検知体1Bによれば、無電力で、ホスフィンの常時検知が可能な、小型のガス検知体を得ることができる。
【0071】
[第3の実施形態]
図1は、第1及び第3の実施形態に係るガス検知体1A及び1Cの平面図である。第3の実施形態に係るガス検知体1Cと第1の実施形態に係るガス検知体1Aとは、図1の平面図が同じであるが、紙面奥行き方向の構造が異なる。図8は、第3の実施形態に係るガス検知体の図1のA-A線に沿った断面図である。
【0072】
図8に示すように、ガス検知体1Cは、支持体10C(10)と、支持体10Cの表面に形成され、ホスフィン反応性金属化合物を含む検知インク固化体25C(25)からなるガス検知部20C(20)と、を備える。また、ガス検知体1Cは、支持体10C(10)の裏面に形成された粘着層30C(30)を備える。すなわち、ガス検知体1Cは、支持体10Cの裏面に粘着層30Cをさらに備えたラベルになっている。
【0073】
第3の実施形態に係るガス検知体1Cは、粘着層30Cをさらに備える以外は、第1の実施形態に係るガス検知体1Aと同じである。このため、第3の実施形態に係るガス検知体1Cにおいて、第1の実施形態に係るガス検知体1Aと同じ構成に同じ符号を付し、構成及び作用の説明を簡略化又は省略する。
【0074】
(粘着層)
粘着層30Cは、特に限定されないが、例えば、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、シリコーン系接着剤等からなる。
【0075】
(作用)
ガス検知体1Cの作用について説明する。ガス検知体1Cのガス検知部20Cは、ガス検知体1Aのガス検知部20Aと同じ構成であるため、ガス検知体1Cの作用はガス検知体1Aの作用と同じである。このため、ガス検知体1Cのガス検知部20Cの作用についての説明を省略する。なお、ガス検知体1Cは、ガス検知体1Aに比較して粘着層30Cをさらに備えるラベルになっている。
【0076】
図9は、第3の実施形態に係るガス検知体1Cの使用例を示す図である。具体的には、図9は、箱本体61と蓋体65とを備えた箱状容器60の蓋体65の内面にガス検知体1Cを貼付した使用例を示す図である。
【0077】
図9に示すように、ガス検知体1Cは、図示しない粘着層30Cを介して蓋体65の内面に貼付される。これにより、ガス検知体1Cのガス検知部20Cの変色作用の有無により、箱状容器60の蓋体65の内面、例えば箱状容器60の内部空間が所定量のホスフィンに曝露されたか否かを判別することができる。
【0078】
(製造方法)
ガス検知体1Cは、支持体10Cの裏面に、粘着層30Cを形成することにより得られる。
【0079】
(効果)
ガス検知体1Cによれば、ガス検知体1Aと同様に所定量のホスフィンの曝露前後で、ガス検知部20Cの色が変わる。このため、ガス検知体1Cによれば、無電力で、ホスフィンの常時検知が可能な、小型のガス検知体を得ることができる。
【0080】
また、ガス検知体1Cは粘着層30Cを備える。このため、ガス検知体1Cによれば、粘着層30Cを介して、様々な測定対象物品の表面又は物品中に容易に配置することができる。
【0081】
[第4の実施形態]
図10は、第4の実施形態に係るガス検知体1Dにおけるホスフィンの曝露前の状態の一例を示す平面図である。図11は、第4の実施形態に係るガス検知体1Dにおける所定量のホスフィンの曝露後の状態の一例を示す平面図である。
【0082】
図10に示すように、ガス検知体1Dは、支持体10D(10)と、支持体10Dの表面に形成され、ホスフィン反応性金属化合物を含む検知インク固化体25D(25)からなるガス検知部20D(20)と、を備える。また、ガス検知体1Dは、バーコード部80を備える。
【0083】
図10に示すように、第4の実施形態に係るガス検知体1Dは、ガス検知部20Dの形状がQRコードになっている。ガス検知部20Dは、形状がQRコードになっている以外は、ガス検知体1Aのガス検知部20Aと同じである。また、第4の実施形態に係るガス検知体1Dは、バーコード部80を備える点で、ガス検知体1Aと異なる。すなわち、第4の実施形態に係るガス検知体1Dは、ガス検知部20D及びバーコード部80以外は、第1の実施形態に係るガス検知体1Aと同じである。このため、第4の実施形態に係るガス検知体1Dにおいて、第1の実施形態に係るガス検知体1Aと同じ構成に同じ符号を付し、構成及び作用の説明を簡略化又は省略する。
【0084】
(ガス検知部)
ガス検知部20Dは、ガス検知体1Aのガス検知部20AをQRコードの形状にしたものである。ガス検知部20Dは、所定量のホスフィンの曝露後に、図11に示すようにQRコードの形状が不明になるようにQRコードの全体が変色するようになっている。具体的には、ガス検知部20DのQRコードは、少なくとも淡色部が、必要により淡色部と濃色部とが検知インク固化体25Dで形成されている。検知インク固化体25Dの材質は、ガス検知体1Aのガス検知部20Aの検知インク固化体25Aと同じである。これにより、ガス検知部20Dは、所定量のホスフィンの曝露後は、QRコードの淡色部と濃色部との色の濃度差が減少してQRコードを読み取ることができなくなるようになっている。あるいは、QRコードを読み取れるようになる、または、QRコードが部分的に変化して読み取る値が変化する。
【0085】
(バーコード部)
バーコード部80は、検知インク固化体25からなるものでなく、公知の方法で形成されたバーコードからなる。
【0086】
(作用)
ガス検知体1Dの作用について説明する。ガス検知体1Dのガス検知部20Dは、形状がQRコードとなっている以外は、ガス検知体1Aのガス検知部20Aと同じである。このため、以下、ガス検知部20DがQRコードであることに基づく作用について説明する。
【0087】
ガス検知部20Dは、ホスフィンの曝露前は、図10に示すようにQRコードの形状が明瞭である。しかし、ガス検知部20Dは、所定量のホスフィンの曝露後に、図11に示すようにQRコードの形状が不明になるようにQRコードの全体が変色するようになっている。具体的には、ガス検知部20Dは、所定量のホスフィンの曝露後は、QRコードの淡色部と濃色部との色の濃度差が減少してQRコードを読み取ることができなくなるようになっている。このため、ガス検知部20Dを備えたガス検知体1Dによれば、目視で所定量のホスフィンの曝露後であることを確認することができるとともに、QRコードリーダーでのQRコードの読み取りができなくなる。これにより、測定対象物品に備えられたガス検知体1Dに対してQRコードリーダーを用いると、所定量のホスフィンの曝露後の測定対象物品を選別することができる。
【0088】
図12は、第4の実施形態に係るガス検知体1Dの使用例を示す図である。具体的には、図12は、第4の実施形態に係るガス検知体1Dをケーブル70D(70)に使用した使用例を示す図である。
【0089】
図12に示すように、ケーブル70Dは、ケーブル本体71の一部がケーブル被覆部72で被覆されている。ケーブル被覆部72は支持体10Dとして機能しており、支持体10Dであるケーブル被覆部72の表面にガス検知部20Dとバーコード部80とが形成されることによりガス検知体1Dになっている。
【0090】
図12に示すケーブル70Dでは、ガス検知体1Dのガス検知部20Dの変色作用の有無により、ケーブル70Dが所定量のホスフィンに曝露されたか否かを判別することができる。
【0091】
(製造方法)
ガス検知体1Dは、ガス検知部20Dの形状をQRコードとする以外は、ガス検知体1Aと同様にして製造することができる。
【0092】
(効果)
ガス検知体1Dでは、ガス検知体1Aと同様に所定量のホスフィンの曝露前後で、ガス検知部20Dの色が変わる。このため、ガス検知体1Dでは、所定量のホスフィンの曝露前後で、QRコードの淡色部と濃色部との色の濃度差が減少することにより、目視で所定量のホスフィンの曝露後であることを確認することができる。また、ガス検知体1Dでは、所定量のホスフィンの曝露前後で、QRコードの淡色部と濃色部との色の濃度差が減少するため、所定量のホスフィンの曝露後にQRコードを読み取ることができなくなるようになっている。このため、ガス検知体1Dによれば、無電力で、ホスフィンの常時検知が可能な、小型のガス検知体を得ることができる。
【0093】
[第5の実施形態]
図13は、第5の実施形態に係るガス検知体1Eにおけるホスフィンの曝露前の状態の一例を示す平面図である。図14は、第5の実施形態に係るガス検知体1Eにおける所定量のホスフィンの曝露後の状態の一例を示す平面図である。
【0094】
図13に示すように、ガス検知体1Eは、支持体10E(10)と、支持体10Eの表面に形成され、ホスフィン反応性金属化合物を含む検知インク固化体25E(25)からなるガス検知部20E(20)と、を備える。また、ガス検知体1Eは、QRコード部85を備える。
【0095】
図13に示すように、第5の実施形態に係るガス検知体1Eは、ガス検知部20Eの形状がバーコードになっている。ガス検知部20Eは、形状がバーコードになっている以外は、ガス検知体1Aのガス検知部20Aと同じである。また、第5の実施形態に係るガス検知体1Eは、QRコード部85を備える点で、ガス検知体1Aと異なる。すなわち、第5の実施形態に係るガス検知体1Eは、ガス検知部20E及びQRコード部85以外は、第1の実施形態に係るガス検知体1Aと同じである。このため、第5の実施形態に係るガス検知体1Eにおいて、第1の実施形態に係るガス検知体1Aと同じ構成に同じ符号を付し、構成及び作用の説明を簡略化又は省略する。
【0096】
(ガス検知部)
ガス検知部20Eは、ガス検知体1Aのガス検知部20Aをバーコードの形状にしたものである。ガス検知部20Dは、所定量のホスフィンの曝露後に、図14に示すようにバーコードの形状が不明になるようにバーコードの全体が変色するようになっている。具体的には、ガス検知部20Eのバーコードは、少なくとも淡色部24が、必要により淡色部24と濃色部23とが検知インク固化体25Eで形成されている。検知インク固化体25Eの材質は、ガス検知体1Aのガス検知部20Aの検知インク固化体25Aと同じである。これにより、ガス検知部20Eは、所定量のホスフィンの曝露後は、バーコードの淡色部24と濃色部23との色の濃度差が減少してバーコードを読み取ることができなくなるようになっている。あるいは、バーコードを読み取れるようになる、または、バーコードが部分的に変化して読み取る値が変化する。
【0097】
(QRコード部)
QRコード部85は、検知インク固化体25からなるものでなく、公知の方法で形成されたQRコードからなる。
【0098】
(作用)
ガス検知体1Eの作用について説明する。ガス検知体1Eのガス検知部20Eは、形状がバーコードとなっている以外は、ガス検知体1Aのガス検知部20Aと同じである。このため、以下、ガス検知部20Eがバーコードであることに基づく作用について説明する。
【0099】
ガス検知部20Eは、ホスフィンの曝露前は、図13に示すようにバーコードの形状が明瞭である。しかし、ガス検知部20Eは、所定量のホスフィンの曝露後に、図14に示すようにバーコードの形状が不明になるようにバーコードの全体が変色するようになっている。具体的には、ガス検知部20Eは、所定量のホスフィンの曝露後は、バーコードの淡色部24と濃色部23との色の濃度差が減少してバーコードを読み取ることができなくなるようになっている。このため、ガス検知部20Eを備えたガス検知体1Eによれば、目視で所定量のホスフィンの曝露後であることを確認することができるとともに、バーコードリーダーでのバーコードの読み取りができなくなる。これにより、測定対象物品に備えられたガス検知体1Dに対してバーコードリーダーを用いると、所定量のホスフィンの曝露後の測定対象物品を選別することができる。
【0100】
図15は、第5の実施形態に係るガス検知体1Eの使用例を示す図である。具体的には、図15は、第5の実施形態に係るガス検知体1Eをケーブル70E(70)に使用した使用例を示す図である。
【0101】
図15に示すように、ケーブル70Eは、ケーブル本体71の一部がケーブル被覆部72で被覆されている。ケーブル被覆部72は支持体10Eとして機能しており、支持体10Eであるケーブル被覆部72の表面にガス検知部20EとQRコード部85とが形成されることによりガス検知体1Eになっている。
【0102】
図15に示すケーブル70Eでは、ガス検知体1Eのガス検知部20Eの変色作用の有無により、ケーブル70Eが所定量のホスフィンに曝露されたか否かを判別することができる。
【0103】
(製造方法)
ガス検知体1Eは、ガス検知部20Eの形状をバーコードとする以外は、ガス検知体1Aと同様にして製造することができる。
【0104】
(効果)
ガス検知体1Eでは、ガス検知体1Aと同様に所定量のホスフィンの曝露前後で、ガス検知部20Eの色が変わる。このため、ガス検知体1Eでは、所定量のホスフィンの曝露前後で、バーコードの淡色部24と濃色部23との色の濃度差が減少することにより、目視で所定量のホスフィンの曝露後であることを確認することができる。また、ガス検知体1Eでは、所定量のホスフィンの曝露前後で、バーコードの淡色部24と濃色部23との色の濃度差が減少するため、所定量のホスフィンの曝露後にバーコードを読み取ることができなくなるようになっている。このため、ガス検知体1Eによれば、無電力で、ホスフィンの常時検知が可能な、小型のガス検知体を得ることができる。
【0105】
[第6の実施形態]
図16は、第6の実施形態に係るガス検知体1Fにおけるホスフィンの曝露前の状態の一例を示す平面図である。
【0106】
図16に示すように、ガス検知体1Fは、支持体10F(10)と、支持体10Fの表面に形成され、ホスフィン反応性金属化合物を含む検知インク固化体25F(25)からなるガス検知部20F(20)と、を備える。
【0107】
図16に示すように、第6の実施形態に係るガス検知体1Fは、ガス検知部20Fの全体形状が短冊状(ストリップ状)になっている。また、ガス検知部20Fは、ガス検知部20FA、ガス検知部20FB及びガス検知部20FGからなる。ガス検知部20FAは、検知インク固化体25FAからなる。ガス検知部20FBは、検知インク固化体25FBからなる。ガス検知部20FGは、検知インク固化体25FAと検知インク固化体25FBの混合物からなる。
【0108】
ガス検知部20Fを構成する検知インク固化体25Fは、ホスフィンでの還元されやすさが異なる2種類の塩基性炭酸銅を含む。具体的には、ガス検知部20FAを構成する検知インク固化体25FAは、後述の第2の塩基性炭酸銅(塩基性炭酸銅B)よりもホスフィンで還元されやすい第1の塩基性炭酸銅(塩基性炭酸銅A)を含む。ガス検知部20FBを構成する検知インク固化体25FBは、第1の塩基性炭酸銅(塩基性炭酸銅A)よりもホスフィンで還元されにくい第2の塩基性炭酸銅(塩基性炭酸銅B)を含む。
【0109】
ガス検知部20FGを構成する検知インク固化体25FGは、塩基性炭酸銅A及びBを含む。また、ガス検知部20FGを構成する検知インク固化体25FGは、ガス検知部20FAに近いほど塩基性炭酸銅Aの含有比率が多く、ガス検知部20FBに近いほど塩基性炭酸銅Bの含有比率が多くなるようになっている。
【0110】
ガス検知部20FGを構成する検知インク固化体25FGの、上記のような塩基性炭酸銅A及びBの含有比率の変化は、例えば、塩基性炭酸銅Aを含む検知インクAと、塩基性炭酸銅Bを含む検知インクBと、の印刷量を変化させることにより生じさせている。
【0111】
ガス検知体1Fは、ガス検知部20Fが短冊状であり、その一方端から他方端に向かって、検知インク固化体25F中の第1の塩基性炭酸銅(塩基性炭酸銅A)の含有比率が減少しかつ第2の塩基性炭酸銅(塩基性炭酸銅B)の含有比率が増加するようになっている。換言すれば、ガス検知体1Fにおいて、ガス検知部20Fは、一方向に向かって、検知インク固化体25F中の第1の塩基性炭酸銅の含有比率が減少しかつ第2の塩基性炭酸銅の含有比率が増加するようになっている。
【0112】
なお、ホスフィンで還元されやすい第1の塩基性炭酸銅(塩基性炭酸銅A)及び塩基性炭酸銅Aよりもホスフィンで還元されにくい塩基性炭酸銅(塩基性炭酸銅B)は、物性の異なる、2種類の塩基性炭酸銅を用いることにより実現される。具体的には、平均粒径D50、及び比表面積からなる群より選択される1種以上の物性の異なる、2種類の塩基性炭酸銅を用いることにより、第1の塩基性炭酸銅及び第2の塩基性炭酸銅が得られる。
【0113】
ガス検知部20F及び検知インク固化体25Fは、ホスフィン反応性金属化合物として2種類の塩基性炭酸銅を用いる以外は、ガス検知体1Aのガス検知部20A及び検知インク固化体25Aと同じである。
【0114】
(作用)
ガス検知体1Fの作用について説明する。ガス検知体1Fのガス検知部20Fは、所定量のホスフィンに曝露される前後で色が変化する。ガス検知部20Fに含まれる2種類の塩基性炭酸銅は、ホスフィンの曝露前が緑色GRNであり、ホスフィンの曝露で還元されると黒色BLKに変色する性質を有する。
【0115】
ただし、ガス検知部20Fを構成する検知インク固化体25Fに含まれる2種類の塩基性炭酸銅A及びBは、ホスフィンでの還元されやすさが異なる。また、検知インク固化体25FGは、ガス検知部20FAに近いほど塩基性炭酸銅Aの含有比率が多く、ガス検知部20FBに近いほど塩基性炭酸銅Bの含有比率が多くなるようになっている。
【0116】
このため、ガス検知体1Fのガス検知部20Fがホスフィンに曝露されると、ホスフィンでの曝露の程度の大小に応じて色が変化する。具体的には、ホスフィンの曝露量が少ない状態ではガス検知部20FAのみが緑色GRNから黒色BLKに変色する。ホスフィンの曝露量がこれよりも多くなるとガス検知部20FGのガス検知部20FA側の部分も緑色GRNから黒色BLKに変色する。ホスフィンの曝露量がさらに多くなるとガス検知部20FGのガス検知部20FB側の部分も緑色GRNから黒色BLKに変色する。ホスフィンの曝露量がさらにまた多くなるとガス検知部20FBも緑色GRNから黒色BLKに変色する。
【0117】
図17は、第6の実施形態に係るガス検知体1Fに用いられる2種類の検知インク固化体の10ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後の状態の一例を示す写真である。図18は、第6の実施形態に係るガス検知体1Fに用いられる2種類の検知インク固化体の100ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後の状態の一例を示す写真である。図19は、第6の実施形態に係るガス検知体1Fに用いられる2種類の検知インク固化体の1000ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後の状態の一例を示す写真である。
【0118】
図17図19において、検知インク固化体25FAは、ガス検知部20FAを構成し、第2の塩基性炭酸銅(塩基性炭酸銅B)よりもホスフィンで還元されやすい第1の塩基性炭酸銅(塩基性炭酸銅A)を含む検知インク固化体25を示す。図17図19において、検知インク固化体25FBは、ガス検知部20FBを構成し、第1の塩基性炭酸銅(塩基性炭酸銅A)よりもホスフィンで還元されにくい第2の塩基性炭酸銅(塩基性炭酸銅B)を含む検知インク固化体25を示す。
【0119】
図17に示すように、10ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後では、検知インク固化体25FAは、面積の20%程度が緑色GRNから黒色BLKに変色する。一方、同じ曝露条件で、検知インク固化体25FBは、面積の全体が緑色GRNのままである。
【0120】
図18に示すように、100ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後では、検知インク固化体25FAは、面積の80%程度が緑色GRNから黒色BLKに変色する。一方、同じ曝露条件で、検知インク固化体25FBは、面積の50%程度が緑色GRNから黒色BLKに変色する。
【0121】
図19に示すように、1000ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後では、検知インク固化体25FAは、面積の95%程度が緑色GRNから黒色BLKに変色する。一方、同じ曝露条件で、検知インク固化体25FBは、面積の85%程度が緑色GRNから黒色BLKに変色する。
【0122】
ガス検知体1Fの具体的な作用について説明する。図20は、第6の実施形態に係るガス検知体1Fにおける10ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後の状態の一例を示す平面図である。図21は、第6の実施形態に係るガス検知体1Fにおける100ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後の状態の一例を示す平面図である。図22は、第6の実施形態に係るガス検知体1Fにおける1000ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後の状態の一例を示す平面図である。
【0123】
図20に示すように、10ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後では、ガス検知部20FAと、ガス検知部20FGのうちのガス検知部20FA側の30%程度とが、緑色GRNから黒色BLKに変色する。一方、同じ曝露条件で、ガス検知部20FBと、ガス検知部20FGのうちのガス検知部20FB側の70%程度とは、緑色GRNのままである。
【0124】
図21に示すように、100ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後では、ガス検知部20FAと、ガス検知部20FGのうちのガス検知部20FA側の70%程度とが、緑色GRNから黒色BLKに変色する。一方、同じ曝露条件で、ガス検知部20FBと、ガス検知部20FGのうちのガス検知部20FB側の30%程度とは、緑色GRNのままである。
【0125】
図22に示すように、1000ppmのホスフィンでの所定時間の曝露後では、ガス検知部20FA、ガス検知部20FG、及びガス検知部20FBの全てが、緑色GRNから黒色BLKに変色する。
【0126】
このように、ガス検知体1Fによれば、ガス検知部20Fの部位の変色度合いにより、曝露されたホスフィンの濃度を検知することができる。
【0127】
(製造方法)
ガス検知体1Fは、例えば、塩基性炭酸銅Aを含む検知インクAと塩基性炭酸銅Bを含む検知インクBとを用い、これらの配合比率を変化させながら、支持体10Fの表面に印刷することで得られる。具体的には、検知インクA及び検知インクBの印刷の際に各検知インクのドットの大きさ、ドット数等を制御することにより、検知インク固化体25Fからなるガス検知部20Fを形成することができる。
【0128】
(効果)
ガス検知体1Fでは、ガス検知部20Fの部位の変色度合いにより、曝露されたホスフィンの濃度を検知することができる。このため、ガス検知体1Fによれば、無電力で、ホスフィンの常時検知が可能な、小型のガス検知体を得ることができる。
【0129】
[第7の実施形態]
図23は、第7の実施形態に係るガス検知体1Gにおけるホスフィンの曝露前の状態の一例を示す写真である。なお、写真には、ガス検知体1Gが配置されるシャーレが写っているが、シャーレは第7の実施形態に係るガス検知体1Gに含まれない。
【0130】
図23に示すように、ガス検知体1Gは、支持体10G(10)と、支持体10Gの表面に形成され、ホスフィン反応性金属化合物を含む検知インク固化体からなるガス検知部20G(20)と、を備える。
【0131】
図23に示すように、第7の実施形態に係るガス検知体1Gは、3個のガス検知体1GA、1GB、及び1GCの組み合わせからなる。ガス検知体1GAは、支持体10GA(10)と、検知インク固化体25GA(25)からなるガス検知部20GA(20)と、を備える。ガス検知体1GBは、支持体10GB(10)と、検知インク固化体25GB(25)からなるガス検知部20GB(20)と、を備える。ガス検知体1GCは、支持体10GC(10)と、検知インク固化体25GC(25)からなるガス検知部20GC(20)と、を備える。このように、ガス検知体1Gは、3個のガス検知体1GA、1GB、及び1GCを備え、3個のガス検知部20GA、20GB、及び20GCを備える。
【0132】
ガス検知体1Gにおいて、検知インク固化体25GA、25GB、及び25GCは、
それぞれ、酢酸銀、酢酸銅、及び塩基性炭酸銅を含む検知インク固化体25になっている。このため、ガス検知体1Gは、ホスフィン反応性金属化合物として、塩基性炭酸銅、酢酸銅、及び酢酸銀の3種類の金属塩を用い、ガス検知部20が3個(ガス検知部20GA、20GB、及び20GC)形成されるものとなっている。
【0133】
支持体10G(10GA、10GB及び10GC)としては、第1の実施形態に係るガス検知体1Aの平板状の支持体10Aと同様のものを用いることができる。
【0134】
(作用)
ガス検知体1Gの作用について説明する。ガス検知体1Gのガス検知部20Gを構成する3個のガス検知部20GA、20GB、及び20GCは、それぞれ、所定量のホスフィンに曝露される前後で色が変化する。
【0135】
図24は、第7の実施形態に係るガス検知体における1ppm以下のホスフィンでの72時間曝露後の状態の一例を示す写真である。図25は、第7の実施形態に係るガス検知体における1ppm超10ppm以下のホスフィンでの72時間曝露後の状態の一例を示す写真である。図26は、第7の実施形態に係るガス検知体における100ppm以上のホスフィンでの72時間曝露後の状態の一例を示す写真である。
【0136】
ガス検知部20GAに含まれる酢酸銀は、ホスフィンの曝露前が灰色GRYであり、ホスフィンの少量の曝露で還元されると茶色BRNに変色し、多量の所定量の曝露後はさらに還元されて薄茶色BEGに変色する性質を有する。例えば、図24図26に示すように、ガス検知部20GAに含まれる酢酸銀は、ホスフィンの曝露前が灰色GRYであり、1ppm以下のホスフィンでの72時間の曝露後は茶色BRNに変色する性質を有する。また、ガス検知部20GAに含まれる酢酸銀は、1ppm超10ppm以下のホスフィンでの72時間の曝露後はさらに薄茶色BEGに変色する性質を有する。
【0137】
ガス検知部20GBに含まれる酢酸銅は、ホスフィンの曝露前が青色BLUであり、ホスフィンの曝露で還元されると黒色BLKに変色する性質を有する。例えば、図24図26に示すように、ガス検知部20GBに含まれる酢酸銅は、ホスフィンの曝露前が青色BLUであり、100ppm以上のホスフィンでの72時間の曝露後は黒色BLKに変色する性質を有する。
【0138】
ガス検知部20GCに含まれる塩基性炭酸銅は、ホスフィンの曝露前が緑色GRNであり、ホスフィンの曝露で還元されると黒色BLKに変色する性質を有する。例えば、図24図26に示すように、ガス検知部20GCに含まれる塩基性炭酸銅は、ホスフィンの曝露前が緑色GRNであり、100ppm以上のホスフィンでの72時間の曝露後は黒色BLKに変色する性質を有する。
【0139】
図24図26に示すように、ガス検知部20GA、20GB、及び20GCを組み合わせて用いると、ホスフィンの曝露濃度を検知することができる。
【0140】
例えば、72時間曝露後にガス検知部20GAのみが茶色BRNに変色している場合、ガス検知体1Gが1ppm以下のホスフィンに曝露されたことが分かる。
【0141】
また、72時間曝露後に、ガス検知部20GAが薄茶色BEGに変色し、ガス検知部20GBが青色BLUであり、ガス検知部20GCが緑色GRNである場合、ガス検知体1Gが1ppm超10ppm以下のホスフィンに曝露されたことが分かる。
【0142】
さらに、72時間曝露後に、ガス検知部20GAが薄茶色BEGに変色し、ガス検知部20GBが黒色BLKに変色し、ガス検知部20GCが黒色BLKに変色している場合、ガス検知体1Gが1ppm超10ppm以下のホスフィンに曝露されたことが分かる。
【0143】
このように、ガス検知体1Gによれば、ガス検知部20Gを構成するガス検知部20GA、20GB、及び20GCの変色度合いにより、曝露されたホスフィンの濃度を検知することができる。
【0144】
(製造方法)
ガス検知体1Gは、これを構成するガス検知体1GA、1GB、及び1GCのそれぞれを、ガス検知体1Aと同様にして製造することができる。
【0145】
(効果)
ガス検知体1Gでは、ガス検知部20Gを構成するガス検知部20GA、20GB、及び20GCの変色度合いにより、曝露されたホスフィンの濃度を検知することができる。このため、ガス検知体1Gによれば、無電力で、ホスフィンの常時検知が可能な、小型のガス検知体を得ることができる。
【0146】
(第7の実施形態の第1の変形例)
第7の実施形態に係るガス検知体1Gは、ホスフィン反応性金属化合物として、塩基性炭酸銅、酢酸銅、及び酢酸銀の3種類の金属塩を用い、ガス検知部20が3個(ガス検知部20GA、20GB、及び20GC)形成されるものとした。
【0147】
これに対し、第7の実施形態に係るガス検知体1Gの第1の変形例として、次のような構成の変形例とすることができる。すなわち、ホスフィン反応性金属化合物として塩基性炭酸銅、酢酸銅及び酢酸銀からなる群より選択される2種以上の金属塩を用い、ガス検知部20が2個以上形成され各ガス検知部20は1種類のホスフィン反応性金属化合物のみを含む変形例とすることができる。
【0148】
(第7の実施形態の第2の変形例)
また、第7の実施形態に係るガス検知体1Gの第2の変形例として、次のような構成の変形例とすることができる。すなわち、この変形例では、ホスフィン反応性金属化合物として、平均粒径D50、及び比表面積からなる群より選択される1種以上の物性が異なる塩基性炭酸銅を2種以上用いる。そして、この変形例では、さらに、ガス検知部20は2個以上形成され、各ガス検知部20は同じ物性の塩基性炭酸銅のみを含むようにする。
【0149】
第2の変形例に係るガス検知体は、第7の実施形態に係るガス検知体1Gの塩基性炭酸銅、酢酸銅、及び酢酸銀の3種類の金属塩に代えて、物性が異なる塩基性炭酸銅を2種以上用いるようにしたものである。
【0150】
この物性が異なる2種以上の塩基性炭酸銅は、物性が異なる限りにおいて、化学組成が同一であってもよい。例えば、第2の変形例に係るガス検知体の物性が異なる2種以上の塩基性炭酸銅は、物性が異なる塩基性炭酸銅としたり、物性が異なる酢酸銅としたり、物性が異なる酢酸銀としたりすることができる。
【0151】
なお、第2の変形例に係るガス検知体において、物性が異なる2種類の塩基性炭酸銅を用い、この2種類の塩基性炭酸銅の含有比率を変えて短冊状のガス検知部20を形成した場合は、第6の実施形態に係るガス検知体1Fになる。
【0152】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0153】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1GA、1GB、1GC ガス検知体
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10GA、10GB、10GC 支持体
20、20A、20B、20C、20D、20E、20F、20FA、20FB、20FG、20G、20GA、20GB、20GC ガス検知部
23 濃色部
24 淡色部
25、25A、25B、25C、25D、25E、25FA、25FB、25FG、25GA、25GB、25GC 検知インク固化体
30 粘着層
50 袋状容器
60 箱状容器
61 箱本体
65 蓋体
70、70D、70E ケーブル
71 ケーブル本体
72 ケーブル被覆部
80 バーコード部
85 QRコード部
図1
図2
図3
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