IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井・デュポンポリケミカル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-積層体 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/082 20060101AFI20240117BHJP
   C09J 123/08 20060101ALN20240117BHJP
【FI】
B32B15/082 Z
C09J123/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020011312
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021115788
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・ダウポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】立石 浩一
(72)【発明者】
【氏名】錦織 雅弘
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-227982(JP,A)
【文献】特開昭59-049968(JP,A)
【文献】特開2015-080884(JP,A)
【文献】特開2019-018547(JP,A)
【文献】特開2001-239612(JP,A)
【文献】特表2008-508403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層(A)と、
スチレン系樹脂層(B)と、
前記金属層(A)と前記スチレン系樹脂層(B)との間に設けられ、かつ、エチレン・極性モノマー共重合体(C1)(ただし、下記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)を除く)およびエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)を含む接着性樹脂層(C)と、
を備え
JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、前記エチレン・極性モノマー共重合体(C1)のメルトマスフローレート(MFR1)と前記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)のメルトマスフローレート(MFR2)との比であるMFR1/MFR2が0.60以上2.00以下である積層体。
【請求項2】
請求項1に記載の積層体において、
前記接着性樹脂層(C)中の前記エチレン・極性モノマー共重合体(C1)および前記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)の合計量を100質量部としたとき、
前記接着性樹脂層(C)中の前記エチレン・極性モノマー共重合体(C1)の含有量が5質量部以上95質量部以下であり、
前記接着性樹脂層(C)中の前記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)の含有量が5質量部以上95質量部以下である積層体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の積層体において、
前記接着性樹脂層(C)が熱融着性を有する積層体。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の積層体において、
前記エチレン・極性モノマー共重合体(C1)は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体およびエチレン・ビニルエステル共重合体からなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含む積層体。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の積層体において、
前記スチレン系樹脂層(B)は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体およびアクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合体からなる群から選択される少なくとも一種のスチレン系樹脂を含む積層体。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の積層体において、
前記金属層(A)を構成する金属は、銅、銀、鉄、ニッケル、クロムおよびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む積層体。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の積層体において、
前記エチレン・極性モノマー共重合体(C1)中の極性モノマー由来の構成単位の含有量が、前記エチレン・極性モノマー共重合体(C1)の全体を100質量%としたとき、7質量%以上である積層体。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の積層体において、
前記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)中の不飽和エステル由来の構成単位の含有量が、前記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)の全体を100質量%としたとき、20質量%以上33質量%以下である積層体。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の積層体において、
建築材料である積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属層と樹脂層とが積層された積層体は、金属のみからなる部品よりも軽量であり、さらに樹脂のみからなる部品よりも強度が高く、様々な用途で使用されている。しかしながら、このような積層体は、金属層と樹脂層とは互いに接着しないことから、金属層と樹脂層との間に接着性樹脂層を設ける必要がある。
【0003】
金属層と樹脂層とを接着するための接着性樹脂層に関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2010-76139号公報)および特許文献2(特開2003-112399号公報)に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、基材上に、2価の硫黄原子を有するエチレン性不飽和単量体から誘導される繰り返し単位を含むアクリル樹脂を含有する接着層用組成物を塗布した後、塗布された接着層用組成物にエネルギー付与を行い接着層を形成する工程と、該接着層上に、金属箔をラミネートする、又は、蒸着又はスパッタを用いて金属膜を形成する手段を用いて金属層を形成する工程と、を含む、基材と接着層と金属層とからなる積層体の製造方法が記載されている。
特許文献2には、金属層と熱可塑性樹脂フィルムとを接着するための接着性樹脂層として、2液硬化タイプのポリウレタン系接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-76139号公報
【文献】特開2003-112399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の接着性樹脂層に関する技術では、基材表面に接着層用組成物を均一に塗布する工程や接着層用組成物にエネルギーを付与する工程が必要であった。さらに、特許文献1に記載の接着性樹脂層に関する技術では、エネルギー付与後には、接着層中に残存する未反応の化合物を除去する目的で、溶媒や水による洗浄が行われることから、工程が複雑であった。
また、特許文献2に記載の2液硬化タイプのポリウレタン系接着剤では、主剤と硬化剤とを混合する比率によっては未硬化の部分が生じてしまう懸念があった。
以上から、成形加工が容易であり、かつ、金属層と樹脂層とのいずれにも接着できる技術が求められている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、成形性および層間接着性に優れた、金属層とスチレン系樹脂層との積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、金属層とスチレン系樹脂層とを接着させるための接着層として、エチレン・極性モノマー共重合体およびエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体を含む接着性樹脂層を用いることによって、成形性および層間接着性を良好にできることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下に示す積層体が提供される。
【0010】
[1]
金属層(A)と、
スチレン系樹脂層(B)と、
上記金属層(A)と上記スチレン系樹脂層(B)との間に設けられ、かつ、エチレン・極性モノマー共重合体(C1)(ただし、下記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)を除く)およびエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)を含む接着性樹脂層(C)と、
を備える積層体。
[2]
上記[1]に記載の積層体において、
上記接着性樹脂層(C)中の上記エチレン・極性モノマー共重合体(C1)および上記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)の合計量を100質量部としたとき、
上記接着性樹脂層(C)中の上記エチレン・極性モノマー共重合体(C1)の含有量が5質量部以上95質量部以下であり、
上記接着性樹脂層(C)中の上記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)の含有量が5質量部以上95質量部以下である積層体。
[3]
上記[1]または[2]に記載の積層体において、
JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、上記エチレン・極性モノマー共重合体(C1)のメルトマスフローレート(MFR1)と上記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)のメルトマスフローレート(MFR2)との比であるMFR1/MFR2が0.60以上2.00以下である積層体。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の積層体において、
上記接着性樹脂層(C)が熱融着性を有する積層体。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の積層体において、
上記エチレン・極性モノマー共重合体(C1)は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体およびエチレン・ビニルエステル共重合体からなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含む積層体。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の積層体において、
上記スチレン系樹脂層(B)は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体およびアクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合体からなる群から選択される少なくとも一種のスチレン系樹脂を含む積層体。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載の積層体において、
上記金属層(A)を構成する金属は、銅、銀、鉄、ニッケル、クロムおよびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む積層体。
[8]
上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の積層体において、
上記エチレン・極性モノマー共重合体(C1)中の極性モノマー由来の構成単位の含有量が、上記エチレン・極性モノマー共重合体(C1)の全体を100質量%としたとき、7質量%以上である積層体。
[9]
上記[1]乃至[8]のいずれか一つに記載の積層体において、
上記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)中の不飽和エステル由来の構成単位の含有量が、上記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)の全体を100質量%としたとき、20質量%以上33質量%以下である積層体。
[10]
上記[1]乃至[9]のいずれか一つに記載の積層体において、
建築材料である積層体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、成形性および層間接着性に優れた、金属層とスチレン系樹脂層との積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る実施形態の積層体の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、数値範囲の「X~Y」は特に断りがなければ、X以上Y以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは」アクリル、メタクリルまたはアクリルとメタクリルの両方を意味する。
【0014】
1.積層体
図1は、本発明に係る実施形態の積層体10の構造の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係る積層体10は、金属層(A)と、スチレン系樹脂層(B)と、金属層(A)とスチレン系樹脂層(B)との間に設けられ、かつ、エチレン・極性モノマー共重合体(C1)(ただし、下記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)を除く)およびエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)を含む接着性樹脂層(C)と、を備える。
【0015】
本実施形態に係る積層体10によれば、金属層(A)とスチレン系樹脂層(B)とを接着させるための接着層として、エチレン・極性モノマー共重合体(C1)およびエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)を含む接着性樹脂層(C)を用いることによって、金属層(A)とスチレン系樹脂層(B)との層間接着性を向上させることができる。さらに、接着性樹脂層(C)を用いることによって、熱融着や熱成形によって、金属層(A)とスチレン系樹脂層(B)とを接着できるため、本実施形態に係る積層体10は成形加工が容易である。
以上から、本実施形態に係る積層体10は、成形性および層間接着性に優れている。
【0016】
本実施形態において、積層体10の全体の厚みは、柔軟性、機械的強度および層間接着性の性能バランスの点から、好ましくは500μm以上5000μm以下、より好ましくは1000μm以上3000μm以下である。
【0017】
本実施形態に係る積層体10において、柔軟性、機械的強度および層間接着性の性能バランスの点から、金属層(A)の厚みは好ましくは5μm以上4000μm以下、より好ましくは45μm以上2200μm以下であり、スチレン系樹脂層(B)の厚みは好ましくは400μm以上2000μm以下、より好ましくは800μm以上1500μm以下であり、接着性樹脂層(C)の厚みは好ましくは50μm以上500μm以下、より好ましくは100μm以上300μm以下である。
【0018】
また、本実施形態に係る積層体10は、金属層(A)、接着性樹脂層(C)およびスチレン系樹脂層(B)のみで構成されていてもよいし、積層体10に様々な機能を付与する観点から、金属層(A)、接着性樹脂層(C)およびスチレン系樹脂層(B)以外の層(以下、その他の層とも呼ぶ。)を金属層(A)および/またはスチレン系樹脂層(B)の表層側に有していてもよい。その他の層としては、例えば、基材層、無機物層、ガスバリア層、帯電防止層、ハードコート層、接着層、反射防止層、防汚層、シーラント層、アンダーコート層、粘着層等を挙げることができる。その他の層は1層単独で有してもよいし、2層以上を組み合わせて有してもよい。
【0019】
本実施形態に係る積層体10の形状は特に限定されないが、例えば、フィルム、チューブ・ホース、テープ、シート等が挙げられる。
本実施形態に係る積層体10は特に限定されないが、例えば、建築材料、自動車用部品、土木資材、OA機器用部品、家庭電化製品用部品、その他電気部品、文具、玩具、雑貨、家具、楽器等からなる群から選択される少なくとも一種として好適に用いることができる。
これらの中でも、本実施形態に係る積層体10は建築材料として特に好適に用いることができる。
建築材料としては、例えば、床材、壁紙、手摺等が挙げられる。
【0020】
以下、積層体10を構成する各層について説明する。
【0021】
<金属層(A)>
本実施形態に係る金属層(A)を構成する金属としては、例えば、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、銅、鉛、亜鉛、銀、金、チタン、白金、パラジウム、ステンレススチール、ハステロイ、インジウム、ガリウム、錫、ケイ素などの金属又はこれらの合金等が挙げられる。これらの金属は金属箔として使用してもよい。
これらの中でも、本実施形態に係る金属層(A)を構成する金属としては、銅、銀、鉄、ニッケル、クロムおよびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種の金属が好ましく、アルミニウムがより好ましい。
【0022】
<スチレン系樹脂層(B)>
スチレン系樹脂層(B)はスチレン系樹脂を含有する。
スチレン系樹脂層(B)は、スチレン系樹脂を含有する層が単一の層により構成されていることが好ましいが、スチレン系樹脂の種類や含有量等が異なる複数の層により構成されていてもよい。
【0023】
本実施形態に係るスチレン系樹脂とは、スチレンの単独重合体又はスチレンを主成分とする共重合体である。さらに、ここでの「主成分」とは、全構成単位の中で「スチレン由来の構成単位」の含有量が最も多いことをいう。
スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂(アクリロニトリル・スチレン共重合体)、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合体)、スチレン系エラストマー等が挙げられる。ハイインパクトポリスチレンは、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、エチレン・プロピレン共重合ゴムのようなゴム成分にスチレンをグラフト重合して得られるものである。スチレン系エラストマーとしては、エラストマーの重合単位(繰り返し単位)として、スチレンを含むものであれば特に制限されない。スチレン系エラストマーとしては、例えば、SIS(スチレン・イソプレン・スチレン)共重合体、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレン)共重合体等が挙げられる。また、SEPS(スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン)共重合体、SEBS(スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン)共重合体などの水添系のスチレン系エラストマーを用いてもよい。共重合体の形態は、特に制限されず、ブロック共重合体でも、グラフト共重合体でもよいが、通常、ブロック共重合体が用いられる。これらのスチレン系樹脂の中で、耐衝撃性や剛性、耐候性の観点から、少なくともアクリロニトリルとスチレンとが共重合したスチレン系共重合体が好ましく、ABS樹脂およびAES樹脂からなる群から選択される少なくとも一種のスチレン系樹脂がより好ましい。
これらのスチレン系樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本実施形態に係るスチレン系樹脂層(B)中のスチレン系樹脂の含有量は、スチレン系樹脂層(B)の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。本実施形態に係るスチレン系樹脂層(B)中のスチレン系樹脂の含有量が上記下限値以上であることにより、積層体10の加工性や層間接着性、機械的強度等の性能バランスをより一層良好にすることができる。
本実施形態に係るスチレン系樹脂層(B)中のスチレン系樹脂の含有量の上限は特に限定されないが、例えば、100質量%以下である。
【0025】
本実施形態に係るスチレン系樹脂層(B)には、本発明の目的を損なわない範囲内において、各種添加剤を含有させることができる。各種添加剤としては特に限定されないが、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、波長変換剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、光安定剤、発泡剤、潤滑剤、結晶核剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、触媒失活剤、熱線吸収剤、熱線反射剤、放熱剤、スチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、無機充填剤、有機充填剤、耐衝撃性改良剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、加工助剤、離型剤、加水分解防止剤、耐熱安定剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、難燃剤、難燃助剤、光拡散剤、抗菌剤、防黴剤、分散剤、有機フィラー、無機フィラーやその他の樹脂等を挙げることができる。
有機フィラーとしては特に限定されないが、例えば、木粉、ケナフ繊維、竹繊維、有機化クレー等を挙げることができる。
無機フィラーとしては特に限定されないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維、タルク、マイカ、クレー等を挙げることができる。
各種添加剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
<接着性樹脂層(C)>
本実施形態に係る接着性樹脂層(C)は、エチレン・極性モノマー共重合体(C1)(ただし、下記エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)を除く)およびエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)を含む接着性樹脂組成物(P)により構成される。
本実施形態に係る接着性樹脂層(C)は熱融着性を有する。これにより、熱融着や熱成形によって、金属層(A)とスチレン系樹脂層(B)とを接着できるため、本実施形態に係る積層体10は成形加工が容易になる。
【0027】
本実施形態に係る接着性樹脂組成物(P)において、エチレン・極性モノマー共重合体(C1)の含有量とエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)の含有量との合計含有量は、接着性樹脂組成物(P)の全体を100質量%としたとき、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。エチレン・極性モノマー共重合体(C1)の含有量とエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)の含有量との合計含有量が上記範囲内であると、得られる接着性樹脂層(C)の接着性や柔軟性、機械的特性、耐熱性、取扱い性、加工性等のバランスをより一層良好なものとすることができる。
【0028】
本実施形態に係る接着性樹脂組成物(P)すなわち接着性樹脂層(C)中のエチレン・極性モノマー共重合体(C1)およびエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)の合計量を100質量部としたとき、接着性樹脂層(C)中のエチレン・極性モノマー共重合体(C1)の含有量は例えば5質量部以上95質量部以下であり、好ましくは10質量部以上85質量部以下である。
また、本実施形態に係る接着性樹脂組成物(P)すなわち接着性樹脂層(C)中のエチレン・極性モノマー共重合体(C1)およびエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)の合計量を100質量部としたとき、接着性樹脂層(C)中のエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)の含有量は例えば5質量部以上95質量部以下であり、好ましくは15質量部以上90質量部以下である。
【0029】
また、接着性樹脂層(C)の接着性をより一層良好にする観点から、本実施形態に係る接着性樹脂組成物(P)すなわち接着性樹脂層(C)中のエチレン・極性モノマー共重合体(C1)およびエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)の合計量を100質量部としたとき、接着性樹脂層(C)中のエチレン・極性モノマー共重合体(C1)の含有量が65質量部以上85質量部以下であり、本実施形態に係る接着性樹脂組成物(P)すなわち接着性樹脂層(C)中のエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)の含有量が15質量部以上35質量部以下であることが好ましい。この配合量であると、各成分の微分散性が良好になるため、接着性がより一層向上すると推測される。
【0030】
また、接着性樹脂層(C)の接着性をより一層良好にする観点から、JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、エチレン・極性モノマー共重合体(C1)のメルトマスフローレート(MFR1)とエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)のメルトマスフローレート(MFR2)との比であるMFR1/MFR2が0.60以上2.00以下であることが好ましく、0.65以上1.30以下であることがより好ましい。MFR1/MFR2が上記範囲内であると、エチレン・極性モノマー共重合体(C1)及びエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)のMFRが近いことでお互いが微分散した状態を作り易くなるため、接着性が向上すると推測される。
【0031】
以下、接着性樹脂組成物(P)を構成する各成分について説明する。
【0032】
(エチレン・極性モノマー共重合体(C1))
エチレン・極性モノマー共重合体(C1)としては、例えば、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体およびエチレン・ビニルエステル共重合体からなる群から選択される少なくとも一種の重合体が挙げられる。
本実施形態において極性モノマーとは官能基を有するモノマーを意味する。
【0033】
本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと、不飽和カルボン酸の少なくとも1種とを共重合した重合体である。不飽和カルボン酸エステルが共重合していてもよい。
具体的には、エチレンと、不飽和カルボン酸と、からなる共重合体を例示することができる。
【0034】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
これらの不飽和カルボン酸は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これら中でも、アクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。
本実施形態において、特に好ましいエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレン
・(メタ)アクリル酸共重合体である。
【0035】
本実施形態に係るエチレン・ビニルエステル共重合体としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0036】
本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレンと、不飽和カルボン酸エステルの少なくとも1種とを共重合した重合体である。
具体的には、エチレンと、不飽和カルボン酸のアルキルエステルと、からなる共重合体を例示することができる。
【0037】
不飽和カルボン酸エステルにおける不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
不飽和カルボン酸のアルキルエステルにおけるアルキル部位としては、炭素数1~12のものを挙げることができ、より具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、2-エチルヘキシル、イソオクチル等のアルキル基を例示することができる。本実施形態では、アルキルエステルのアルキル部位の炭素数は、1~8が好ましい。
【0038】
不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル等から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。これらの不飽和カルボン酸エステルは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これら中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、および(メタ)アクリル酸n-ブチル等から選択される一種または二種以上を含むことがより好ましい。
【0039】
本実施形態において、好ましいエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。その中でも(メタ)アクリル酸エステルとして1種類の化合物からなる共重合体が好ましい。このような共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソオクチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体等が挙げられる。
【0040】
エチレン・極性モノマー共重合体(C1)は、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体およびエチレン・(メタ)アクリル酸n-ブチル共重合体から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
なお、本実施形態においてはエチレン・極性モノマー共重合体(C1)は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
エチレン・極性モノマー共重合体(C1)中の極性モノマー由来の構成単位の含有量は、金属層(A)とスチレン系樹脂層(B)との層間接着性をより一層良好にする観点から、エチレン・極性モノマー共重合体(C1)の全体を100質量%としたとき、好ましくは7質量%以上、より好ましくは8質量%以上である。
また、エチレン・極性モノマー共重合体(C1)中の極性モノマー由来の構成単位の含有量の上限は特に限定されないが、積層体10の機械的特性や耐熱性、取扱い性、加工性をより良好にする観点から、接着性樹脂組成物(P)中の樹脂成分全体に対して好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
極性モノマーが酢酸ビニルの場合、極性モノマーの含有量は、例えば、JIS K7192:1999に準拠して測定することができる。
また、極性モノマーが不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸エステルの場合は、極性モノマーの含有量は、例えば、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸エステルに帰属する赤外吸収スペクトル(IR)により測定される。例えば、不飽和カルボン酸エステルがアクリル酸エチル(EA)の場合、EAに帰属する860cm-1の吸光度から求める。ただし、検量線は、核磁気共鳴スペクトル(NMR)によりEA濃度を求め、IRの860cm-1の吸光度との相関によって求める。
【0042】
本実施形態において、流動性および成形性をより向上させる観点から、JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、エチレン・極性モノマー共重合体(C1)のメルトフローレート(MFR)は、0.1g/10分以上150g/10分以下であることが好ましく、0.2g/10分以上100g/10分以下であることがより好ましく、0.5g/10分以上50g/10分以下であることがさらに好ましい。
エチレン・極性モノマー共重合体(C1)のMFRは、異なるMFRを有するエチレン・極性モノマー共重合体(C1)を複数ブレンドして調整してもよい。
【0043】
本実施形態に係るエチレン・極性モノマー共重合体(C1)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、各重合成分を高温、高圧下でラジカル共重合することによって得ることができる。また、エチレン・極性モノマー共重合体(C1)は市販されているものを用いてもよい。
【0044】
(エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2))
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)は、エチレンと、不飽和エステルの少なくとも1種と、一酸化炭素と、を共重合した重合体である。エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)としては、エチレンと不飽和エステルと一酸化炭素共重合体とを含む共重合体を例示することができる。
【0045】
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)を構成する不飽和エステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらの不飽和エステルは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、酢酸ビニルおよび(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸イソブチルおよび(メタ)アクリル酸n-ブチルから選択される少なくとも一種がより好ましい。
【0046】
本実施形態において、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)としては、エチレン・酢酸ビニル・一酸化炭素共重合体およびエチレン・(メタ)アクリル酸エステル・一酸化炭素共重合体が好ましく、エチレン・酢酸ビニル・一酸化炭素共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル・一酸化炭素共重合体およびエチレン・(メタ)アクリル酸n-ブチル・一酸化炭素共重合体から選択される少なくとも一種がより好ましい。
なお、本実施形態において、「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸、メタクリル酸またはアクリル酸とメタクリル酸を意味する。
エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)において、エチレン由来の構成単位の含有量は、機械的特性、取扱性、加工性の観点から、好ましくは50質量%以上75質量%以下、より好ましくは55質量%以上65質量%以下である。
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)において、不飽和エステル由来の構成単位の含有量は、接着性樹脂層(C)の柔軟性をより一層良好にする観点から、好ましくは20質量%以上33質量%以下、より好ましくは25質量%以上31質量%以下である。
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)において、一酸化炭素由来の構成単位の含有量は、接着性樹脂層(C)のスチレン系樹脂層(B)への接着性をより良好にする観点から、好ましくは5質量%以上20質量%以下、より好ましくは8質量%以上15質量%以下である。
【0048】
本実施形態において、流動性および成形性をより向上させる観点から、JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)のメルトフローレート(MFR)は、0.1g/10分以上150g/10分以下であることが好ましく、0.2g/10分以上100g/10分以下であることがより好ましく、0.5g/10分以上50g/10分以下であることがさらに好ましい。
エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)のMFRは、異なるMFRを有するエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)を複数ブレンドして調整してもよい。
【0049】
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、各重合成分を高温、高圧下でラジカル共重合することによって得ることができる。また、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)は市販されているものを用いてもよい。
【0050】
(その他の成分)
本実施形態に係る接着性樹脂組成物(P)には、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン・極性モノマー共重合体(C1)およびエチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)以外の樹脂や添加剤を含有してもよい。
その他の樹脂としては特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。添加剤としては特に限定されないが、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、光安定剤、発泡剤、潤滑剤、結晶核剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、触媒失活剤、無機充填剤、有機充填剤、耐衝撃性改良剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、加工助剤、離型剤、加水分解防止剤、耐熱安定剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、難燃剤、難燃助剤、放熱剤、光拡散剤、抗菌剤、防黴剤、分散剤、有機フィラー、無機フィラー等を挙げることができる。
有機フィラーとしては特に限定されないが、例えば、木粉、ケナフ繊維、竹繊維、有機化クレー等を挙げることができる。
無機フィラーとしては特に限定されないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維、タルク、マイカ、クレー等を挙げることができる。
その他の成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
(接着性樹脂組成物(P)の調製方法)
接着性樹脂組成物(P)の調製方法としては特に限定されないが、例えば、エチレン・極性モノマー共重合体(C1)と、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)と、必要に応じてその他の樹脂と、添加剤と、をドライブレンドして混合することにより調製する方法、エチレン・極性モノマー共重合体(C1)と、エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)と、必要に応じてその他の樹脂と、添加剤と、を押出機で溶融混練することにより調製する方法、等を適用することができる。
【0052】
2.積層体の製造方法
本実施形態に係る積層体10の製造方法は特に限定されず、熱可塑性樹脂について一般に使用されている成形法を適用することができる。例えば、各層を積層して加熱加圧する方法、T-ダイ押出機あるいはインフレーション成形機等を用いる公知の方法によって作製することができる。
例えば、金属層(A)とスチレン系樹脂層(B)との間に接着性樹脂層(C)を狭持した後、加熱加圧する方法により得ることができる。
例えば、接着性樹脂層(C)を形成するための接着性樹脂組成物(P)を、T-ダイ押出機のホッパーから供給してTダイ先端から金属層(A)上に接着性樹脂層(C)をフィルム状に押出成形し、次いで、スチレン系樹脂層(B)を形成するための樹脂組成物を、T-ダイ押出機のホッパーから供給してTダイ先端から接着性樹脂層(C)上にスチレン系樹脂層(B)をフィルム状に押出成形することにより得ることができる。あるいは多層Tダイ押し出し機によって接着樹脂層(C)とスチレン系樹脂層(B)を共押出によりフィルム状に成形した後に、当該フィルムに金属層(A)を積層し、さらに加熱加圧することにより得ることもできる。
【0053】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例
【0054】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
積層体の作製に用いた成分の詳細は以下の通りである。
【0056】
<金属層(A)>
・アルミ箔(東洋アルミニウム株式会社製、A1N30H-0、0.05mm厚)
<スチレン系樹脂層(B)>
・AES(テクノUMG株式会社製、テクノAES W220、1mm厚プレスシート)
【0057】
<エチレン・極性モノマー共重合体(C1)>
・EMAA1:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン含有量:89.5質量%、メタクリル酸含有量:10.5質量%、MFR(190℃、2160g荷重):8.0g/10分)
・EMAA・BA1:エチレン・メタクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体(エチレン含有量:81.0質量%、メタクリル酸含有量:11.0質量%、アクリル酸ブチル含有量:8.0質量%、MFR(190℃、2160g荷重):10.0g/10分)
・EMAA・BA2:エチレン・メタクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体(エチレン含有量:90.3質量%、メタクリル酸含有量:9.1質量%、アクリル酸ブチル含有量:0.6質量%、MFR(190℃、2160g荷重):1.7g/10分)
・EMAA2:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン含有量:91.0質量%、メタクリル酸含有量:9.0質量%、MFR(190℃、2160g荷重):2.7g/10分)
【0058】
<エチレン・不飽和エステル・一酸化炭素共重合体(C2)>
・EnBACO:エチレン・アクリル酸n-ブチル・一酸化炭素共重合体(エチレン含量:57質量%、BA含量:30質量%、CO含量:13質量%)、MFR(190℃、2160g荷重):12g/10分)
【0059】
[実施例1]
(1)メルトブレンド
東洋精機工業株式会社製ラボプラストミルを使用して、温度130℃、回転数50rpm、溶融混合時間10分の条件で、EMAA1とEnBACOとを表1に示す割合でメルトブレンドした。なお、表1に示す配合割合の数値の単位は質量部である。
【0060】
(2)積層体の作製
上記メルトブレンドにより得られた接着性樹脂組成物を、200μmのスペーサーを使用して、アルミ箔の光沢面とAESプレスシートの間に配置した。東邦マシナリー株式会社製50ton圧縮成形機を用いて、プレス温度170℃、プレス圧力5MPa、プレス時間2分の条件でプレス成型し、1.25mm厚みの積層体を作製した。得られた積層体を大気中に静置し、自然冷却によって徐冷した。
【0061】
(3)層間接着性評価
得られた積層体のプレスシート部分に15mm幅のスリットを入れて試験片とした。JIS Z1707に準拠して、15mm幅のフィルムを180度剥離した際のシール界面の状況を観察すると共に、このときの積層体の剥離強度を測定した。測定には、積層体作成後24時間経過したサンプルを使用した。得られた結果を表1に示す。
【0062】
[実施例2~7および比較例1]
表1に示す配合とした以外は実施例1と同様にして積層体を作製し、実施例1と同様の評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1にそれぞれ示す。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例1~7の積層体は、熱融着により成形が可能であり、成形加工が容易であった。さらに、実施例1~7の積層体は剥離強度が高く、金属層(A)とスチレン系樹脂層(B)との層間接着性が良好であった。
【符号の説明】
【0065】
A 金属層
B スチレン系樹脂層
C 接着性樹脂層
10 積層体
図1