(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】発振装置およびシンセサイザシステム
(51)【国際特許分類】
H03L 7/14 20060101AFI20240117BHJP
H03L 7/10 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
H03L7/14
H03L7/10
(21)【出願番号】P 2020016035
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-09-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 シンセサイザシステムを有するシンセサイザを卸した。(販売日:令和1年8月1日)
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 健
(72)【発明者】
【氏名】土屋 昇一
(72)【発明者】
【氏名】大西 直樹
(72)【発明者】
【氏名】塩原 毅
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-237694(JP,A)
【文献】特開2019-201300(JP,A)
【文献】特開昭64-004117(JP,A)
【文献】特開2010-273299(JP,A)
【文献】特開2010-130147(JP,A)
【文献】特開2011-040967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03L1/00-H03L9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に対応する周波数の発振信号を出力する発振器と、
前記発振器の発振信号に基づく信号と基準信号との位相を比較して、比較結果に応じた第1信号を出力するPLL回路と、
前記基準信号が前記PLL回路に入力されている間に前記PLL回路が出力する前記第1信号を検出する信号検出部と、
前記第1信号の検出結果に基づく第2信号を出力する第2信号出力部と、
前記PLL回路および前記第2信号出力部のいずれか一方を前記発振器に接続する第1切換部と、
前記基準信号を検出する基準信号検出部と、
前記基準信号の検出結果に応じて、前記第1切換部を制御する制御部と
、
前記PLL回路および前記第2信号出力部のいずれか一方を前記信号検出部に接続する第2切換部と
を備え
、
前記制御部は、前記信号検出部の検出結果を受けとり、前記信号検出部の検出結果に基づくデジタル信号を前記第2信号出力部に供給し、
前記第2信号出力部は、前記制御部から受け取るデジタル信号に対応する前記第2信号を出力する、
発振装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記基準信号検出部が前記基準信号を検出した検出結果に応じて、前記PLL回路を前記発振器に接続し、前記基準信号検出部が前記基準信号を検出していない検出結果に応じて、前記第2信号出力部を前記発振器に接続する、請求項1に記載の発振装置。
【請求項3】
前記第2信号出力部が出力する前記第2信号の電圧レベルは、前記基準信号が前記PLL回路に入力されている間に前記PLL回路が出力する前記第1信号の電圧値を平滑化した電圧レベルである、請求項1または2に記載の発振装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2切換部を制御して、前記基準信号検出部が前記基準信号を検出した検出結果に応じて、前記PLL回路を前記信号検出部に接続し、前記基準信号検出部が前記基準信号を検出していない検出結果に応じて、前記第2信号出力部を前記信号検出部に接続する、請求項
1から3のいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1切換部を制御して前記PLL回路を前記
発振器に接続している期間に、前記第2切換部を制御して、前記PLL回路および前記信号検出部の接続と、前記第2信号出力部および前記信号検出部の接続とを、予め定められた時間が経過する毎に切り換える、請求項
1から3のいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第2信号出力部を前記信号検出部に接続している間に前記基準信号検出部が前記基準信号を検出したことを条件に、
前記第2切換部を制御して、前記PLL回路を前記信号検出部に接続し、
前記PLL回路が出力する前記第1信号の電圧レベルと、前記第2信号出力部が出力していた前記第2信号の電圧レベルとを比較し、
前記第1信号の電圧レベルと前記第2信号の電圧レベルとの差分が予め定められた閾値を超えた場合、前記第2信号の電圧レベルを前記第1信号の電圧レベルに近づけるように変更する前記デジタル信号を前記第2信号出力部に供給し、
前記第2信号の電圧レベルを変更してから、前記第1切換部を制御して、前記PLL回路を前記発振器に接続する、
請求項
1から
5のいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項7】
入力信号に対応する周波数の発振信号を出力する発振器と、
前記発振器の発振信号に基づく信号と基準信号との位相を比較して、比較結果に応じた第1信号を出力するPLL回路と、
前記基準信号が前記PLL回路に入力されている間に前記PLL回路が出力する前記第1信号を検出する信号検出部と、
前記第1信号の検出結果に基づく第2信号を出力する第2信号出力部と、
前記PLL回路および前記第2信号出力部のいずれか一方を前記発振器に接続する第1切換部と、
前記基準信号を検出する基準信号検出部と、
前記基準信号の検出結果に応じて、前記第1切換部を制御する制御部と
、
前記第2信号出力部および前記第1切換部の間に設けられ、前記第2信号出力部を前記第1切換部および第1終端回路のいずれか一方に接続する第3切換部と
を備え
、
前記制御部は、前記第1切換部を制御して前記PLL回路を前記発振器に接続した場合、前記第3切換部を制御して前記第2信号出力部を前記第1終端回路に接続する、
発振装置。
【請求項8】
入力信号に対応する周波数の発振信号を出力する発振器と、
前記発振器の発振信号に基づく信号と基準信号との位相を比較して、比較結果に応じた第1信号を出力するPLL回路と、
前記基準信号が前記PLL回路に入力されている間に前記PLL回路が出力する前記第1信号を検出する信号検出部と、
前記第1信号の検出結果に基づく第2信号を出力する第2信号出力部と、
前記PLL回路および前記第2信号出力部のいずれか一方を前記発振器に接続する第1切換部と、
前記基準信号を検出する基準信号検出部と、
前記基準信号の検出結果に応じて、前記第1切換部を制御する制御部と
、
前記PLL回路および前記第1切換部の間に設けられ、前記PLL回路を前記第1切換部および第2終端回路のいずれか一方に接続する第4切換部と
を備え
、
前記制御部は、前記第1切換部を制御して前記第2信号出力部を前記発振器に接続した場合、前記第4切換部を制御して前記PLL回路を前記第2終端回路に接続する、
発振装置。
【請求項9】
入力信号に対応する周波数の発振信号を出力する発振器と、
前記発振器の発振信号に基づく信号と基準信号との位相を比較して、比較結果に応じた第1信号を出力するPLL回路と、
前記基準信号が前記PLL回路に入力されている間に前記PLL回路が出力する前記第1信号を検出する信号検出部と、
前記第1信号の検出結果に基づく第2信号を出力する第2信号出力部と、
前記PLL回路および前記第2信号出力部のいずれか一方を前記発振器に接続する第1切換部と、
前記基準信号を検出する基準信号検出部と、
前記基準信号の検出結果に応じて、前記第1切換部を制御する制御部と
を備え
、
前記基準信号検出部は、
入力する信号の電圧レベルのピーク値を検出し、検出したピーク値と予め定められた閾値とを比較することにより前記基準信号を検出し、
前記基準信号を検出している間は、予め定められた第1時間間隔ごとに前記基準信号を検出し、
前記基準信号を検出しなかったことに応じて、前記第1時間間隔よりも長い第2時間間隔ごとに前記基準信号を検出する、
発振装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記基準信号検出部が前記基準信号を検出した検出結果に応じて、前記PLL回路を前記発振器に接続し、前記基準信号検出部が前記基準信号を検出していない検出結果に応じて、前記第2信号出力部を前記発振器に接続する、請求項
7から9のいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項11】
前記第2信号出力部が出力する前記第2信号の電圧レベルは、前記基準信号が前記PLL回路に入力されている間に前記PLL回路が出力する前記第1信号の電圧値を平滑化した電圧レベルである、請求項
7から10のいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記信号検出部の検出結果を受けとり、前記信号検出部の検出結果に基づくデジタル信号を前記第2信号出力部に供給し、
前記第2信号出力部は、前記制御部から受け取るデジタル信号に対応する前記第2信号を出力する、
請求項
7から11のいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の前記発振装置と、
入力する電圧に応じた周波数の発振信号を出力する電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器の発振信号に基づく信号と、前記発振装置が出力する発振信号との位相を比較して、比較結果に応じた駆動信号を前記電圧制御発振器に出力するPLL制御装置と
を備える、シンセサイザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振装置およびシンセサイザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単一の周波数で発振する発振素子を用いて異なる周波数の発振信号を安定に出力させる回路として、PLL(Phase Locked Loop)回路といった位相同期回路が知られている。このようなPLL回路において、基準信号が供給されなくなっても、予め定められた電気信号を発振素子に供給する自走モードに切り換えることで、発振信号の出力を継続させる発振装置が知られている(例えば、特許文献1~4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-40967号公報
【文献】特開2018-148514号公報
【文献】特開2017-92738号公報
【文献】特開2009-159013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような発振装置を構成している部品等の中には、環境変動、経時変化等によって特性が変化してしまう部品がある。この場合、外部基準信号の入力の有無に対応して、外部基準信号に同期させる状態と自走モードで動作させる状態とを切り換えると、発振装置が出力する発振信号の周波数が変動してしまうことがあった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、PLL回路を有する発振装置において、外部基準信号に同期させる状態と自走モードで動作させる状態とを切り換えた場合に生じる発振周波数の変動を低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、入力信号に対応する周波数の発振信号を出力する発振器と、前記発振器の発振信号に基づく信号と基準信号との位相を比較して、比較結果に応じた第1信号を出力するPLL回路と、前記基準信号が前記PLL回路に入力されている間に前記PLL回路が出力する前記第1信号を検出する信号検出部と、前記第1信号の検出結果に基づく第2信号を出力する第2信号出力部と、前記PLL回路および前記第2信号出力部のいずれか一方を前記発振器に接続する第1切換部と、前記基準信号を検出する基準信号検出部と、前記基準信号の検出結果に応じて、前記第1切換部を制御する制御部とを備える、発振装置を提供する。
【0007】
前記制御部は、前記基準信号検出部が前記基準信号を検出した検出結果に応じて、前記PLL回路を前記発振器に接続し、前記基準信号検出部が前記基準信号を検出していない検出結果に応じて、前記第2信号出力部を前記発振器に接続してもよい。
【0008】
前記第2信号出力部が出力する前記第2信号の電圧レベルは、前記基準信号が前記PLL回路に入力されている間に前記PLL回路が出力する前記第1信号の電圧値を平滑化した電圧レベルでもよい。
【0009】
前記制御部は、前記信号検出部の検出結果を受けとり、前記信号検出部の検出結果に基づくデジタル信号を前記第2信号出力部に供給し、前記第2信号出力部は、前記制御部から受け取るデジタル信号に対応する前記第2信号を出力してもよい。
【0010】
前記PLL回路および前記第2信号出力部のいずれか一方を前記信号検出部に接続する第2切換部を更に備えてもよい。
【0011】
前記制御部は、前記第2切換部を制御して、前記基準信号検出部が前記基準信号を検出した検出結果に応じて、前記PLL回路を前記信号検出部に接続し、前記基準信号検出部が前記基準信号を検出していない検出結果に応じて、前記第2信号出力部を前記信号検出部に接続してもよい。
【0012】
前記制御部は、前記第1切換部を制御して前記PLL回路を前記信号検出部に接続している期間に、前記第2切換部を制御して、前記PLL回路および前記信号検出部の接続と、前記第2信号出力部および前記信号検出部の接続とを、予め定められた時間が経過する毎に切り換えてもよい。
【0013】
前記制御部は、前記第2信号出力部を前記信号検出部に接続している間に前記基準信号検出部が前記基準信号を検出したことを条件に、前記第2切換部を制御して、前記PLL回路を前記信号検出部に接続し、前記PLL回路が出力する前記第1信号の電圧レベルと、前記第2信号出力部が出力していた前記第2信号の電圧レベルとを比較し、前記第1信号の電圧レベルと前記第2信号の電圧レベルとの差分が予め定められた閾値を超えた場合、前記第2信号の電圧レベルを前記第1信号の電圧レベルに近づけるように変更する前記デジタル信号を前記第2信号出力部に供給し、前記第2信号の電圧レベルを変更してから、前記第1切換部を制御して、前記PLL回路を前記発振器に接続してもよい。
【0014】
前記第2信号出力部および前記第1切換部の間に設けられ、前記第2信号出力部を前記第1切換部および第1終端回路のいずれか一方に接続する第3切換部を更に備え、前記制御部は、前記第1切換部を制御して前記PLL回路を前記発振器に接続した場合、前記第3切換部を制御して前記第2信号出力部を前記第1終端回路に接続してもよい。
【0015】
前記PLL回路および前記第1切換部の間に設けられ、前記PLL回路を前記第1切換部および第2終端回路のいずれか一方に接続する第4切換部を更に備え、前記制御部は、前記第1切換部を制御して前記第2信号出力部を前記発振器に接続した場合、前記第4切換部を制御して前記PLL回路を前記第2終端回路に接続してもよい。
【0016】
前記基準信号検出部は、入力する信号の電圧レベルのピーク値を検出し、検出したピーク値と予め定められた閾値とを比較することにより前記基準信号を検出してもよい。
【0017】
前記基準信号検出部は、前記基準信号を検出している間は、予め定められた第1時間間隔ごとに前記基準信号を検出し、前記基準信号を検出しなかったことに応じて、前記第1時間間隔よりも長い第2時間間隔ごとに前記基準信号を検出してもよい。
【0018】
本発明の第2の態様においては、第1の態様の前記発振装置と、入力する電圧に応じた周波数の発振信号を出力する電圧制御発振器と、前記電圧制御発振器の発振信号に基づく信号と、前記発振装置が出力する発振信号との位相を比較して、比較結果に応じた駆動信号を前記電圧制御発振器に出力するPLL制御装置とを備える、シンセサイザシステムを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、PLL回路を有する発振装置において、外部基準信号と同期させる状態と自走モードで動作させる状態とを切り換えた場合に生じる発振周波数の変動を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係るシンセサイザシステム10の構成例を示す。
【
図3】本実施形態に係る発振装置100の第1構成例を示す。
【
図4】本実施形態に係る発振装置100の第2構成例を示す。
【
図5】第2構成例の発振装置100の動作フローの一例を示す。
【
図6】本実施形態に係る発振装置100の第3構成例を示す。
【
図7】比較対象の発振装置20の発振周波数の変化の一例を示す。
【
図8】第3構成例の発振装置100の発振周波数の変化の一例を示す。
【
図9】本実施形態に係る基準信号検出部250の検出周期に対する発振器210の発振周波数の変化の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[シンセサイザシステム10の構成例]
図1は、本実施形態に係るシンセサイザシステム10の構成例を示す。シンセサイザシステム10は、予め定められた周波数帯域の発振信号を出力する。シンセサイザシステム10は、例えば、数十MHz程度から数十GHz程度の範囲の発振信号を出力する。シンセサイザシステム10は、一例として、470MHz程度から770MHz程度の範囲の発振信号を出力する。シンセサイザシステム10は、発振装置100と、電圧制御発振器110と、PLL制御装置120と、出力調整部130と、制御部140とを備える。
【0022】
発振装置100は、外部から供給される基準信号に同期して、予め定められた周波数の発振信号を出力する。発振装置100は、例えば、数MHz程度から数十MHz程度の周波数の発振信号を出力する。本実施形態において、発振装置100は、略40MHzの周波数の発振信号を出力する例を説明する。また、基準信号の周波数を略10MHzとする。
【0023】
電圧制御発振器110は、入力する電圧に応じた周波数の発振信号を出力する、発振周波数可変の発振器である。電圧制御発振器110は、例えば、数十MHz程度から数十GHz程度の範囲の周波数を有する発振信号を出力する。
【0024】
PLL制御装置120は、電圧制御発振器110の発振信号に基づく信号と、発振装置100が出力する発振信号との位相を比較して、比較結果に応じた駆動信号を電圧制御発振器110に出力する。PLL制御装置120は、例えば、電圧制御発振器110の発振信号を分周する分周器と、分周器の出力信号の位相と発振装置100の発振信号の位相とを比較する位相比較器と、位相比較器の比較結果を平滑化するループフィルタとを有する。
【0025】
PLL制御装置120が有する分周器は、制御信号に応じて分周比が可変の分周器である。PLL制御装置120は、分周器の分周比を異ならせることで、電圧制御発振器110の発振信号を異なる周波数に変更する駆動信号を出力する。PLL制御装置120の具体的な構成は既知なので、詳細についての説明は省略する。
【0026】
出力調整部130は、電圧制御発振器110が出力する発振信号の信号レベルを調整する。出力調整部130は、例えば、可変アッテネータ132、増幅器134、信号レベル検出回路136、フィルタ部138等を有する。
【0027】
可変アッテネータ132は、入力信号の信号レベルを減衰させる。可変アッテネータ132は、例えば、制御信号に応じて減衰量が可変のアッテネータである。可変アッテネータ132は、増幅器134の前段および/または後段に設けられている。
図1は、可変アッテネータ132が増幅器134の前段に設けられている例を示す。増幅器134は、入力する信号を増幅して出力する。増幅器134は、増幅率が固定の増幅器を有してよく、これに代えて、制御信号に応じて増幅率が可変の増幅器を有してもよい。
【0028】
信号レベル検出回路136は、シンセサイザシステム10の出力信号の信号レベルを検出する。信号レベル検出回路136は、例えば、増幅器134の出力信号の信号レベルを検出する。信号レベル検出回路136は、検出した信号レベルの情報を制御部140に供給する。
【0029】
フィルタ部138は、電圧制御発振器110が出力する発振信号を通過させ、当該発振信号の周波数帯域とは異なる周波数の信号成分を低減させる。フィルタ部138は、バンドパスフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタのうち少なくとも1つを有する。
【0030】
制御部140は、発振装置100、PLL制御装置120、および出力調整部130を制御する。制御部140は、例えば、基準信号の検出結果に応じた制御信号を発振装置100に供給して、発振装置100が出力する発振信号の周波数を安定化させる。また、制御部140は、出力すべき周波数に応じた制御信号をPLL制御装置120に供給して、電圧制御発振器110が出力する発振信号の周波数を設定する。
【0031】
制御部140は、出力調整部130から受け取った信号レベルの情報に応じた制御信号を出力調整部130に供給して、出力調整部130が出力する出力信号を予め定められた信号レベルに調節してもよい。制御部140は、例えば、外部から受け取る指示信号に応じて、発振信号の周波数、信号レベル等を制御してもよい。また、制御部140は、ユーザ等からの出力周波数、信号レベル等の指示を受け付ける入力部等を更に有してもよい。
【0032】
制御部140は、集積回路等で構成されていることが望ましい。例えば、制御部140は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、および/またはCPU(Central Processing Unit)を含む。
【0033】
制御部140の少なくとも一部をコンピュータ等で構成する場合、当該制御部140は、記憶部を含む。記憶部は、一例として、制御部140を実現するコンピュータ等のBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)、および作業領域となるRAM(Random Access Memory)を含む。また、記憶部は、OS(Operating System)、アプリケーションプログラム、および/または当該アプリケーションプログラムの実行時に参照されるデータベースを含む種々の情報を格納してよい。即ち、記憶部は、HDD(Hard Disk Drive)および/またはSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置を含んでよい。
【0034】
CPU等のプロセッサは、記憶部に記憶されたプログラムを実行することによって制御部140として機能する。制御部140は、GPU(Graphics Processing Unit)等を含んでもよい。
【0035】
以上の本実施形態に係るシンセサイザシステム10は、電圧制御発振器110が出力する予め定められた周波数帯域の発振信号の周波数および信号レベルを安定化させて出力する。シンセサイザシステム10は、基準信号の供給が途絶えても、発振装置100を制御することで、出力する発振信号の周波数および信号レベルの変動を低減させる。このような発振装置100を説明するために、まずは比較対象の発振装置について説明する。
【0036】
[比較対象の発振装置20の構成例]
図2は、比較対象の発振装置20の構成例を示す。発振装置20は、外部から供給される基準信号に同期して、予め定められた周波数の発振信号を出力する。
図2は、発振装置20が略40MHzの周波数の発振信号を出力する例を示す。発振装置20は、発振器210と、PLL回路220と、定電圧出力部230と、第1切換部240と、基準信号検出部250とを備える。なお、発振装置20の動作は、制御部140によって制御される。
【0037】
発振器210は、入力信号に対応する周波数の発振信号を出力する。発振器210は、0.1ppm程度以下の周波数安定度を有することが望ましい。発振器210は、例えば、入力する電圧に応じて出力する発振信号の周波数を微調整可能なOCXO(Oven Controlled Crystal Oscillator)等の水晶発振器である。
【0038】
PLL回路220は、発振器210の発振信号に基づく信号と基準信号との位相を比較して、比較結果に応じた第1信号を出力する。PLL回路220は、例えば、発振器210の発振信号を分周する分周器と、分周器の出力信号の位相と基準信号の位相とを比較する位相比較器と、位相比較器の比較結果を平滑化するループフィルタとを有する。PLL回路220は、ループフィルタの出力を第1信号として出力する。
【0039】
PLL回路220は、位相比較器の比較結果を電圧信号に変換し、変換した電圧信号をループフィルタに供給するチャージポンプ回路を更に有してもよい。また、PLL回路220は、位相比較器による比較結果をロック検出信号として出力してもよい。PLL回路220は、集積回路で構成されていてもよい。PLL回路220の具体的な構成は既知なので、詳細についての説明は省略する。
【0040】
定電圧出力部230は、予め定められた略一定の電圧を出力する。予め定められた略一定の電圧は、PLL回路220が安定な動作をしている状態において出力する電圧と略一致する電圧である。定電圧出力部230は、例えば、略一定の電圧の値を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された電圧値をアナログ信号に変換するDA変換器とを有する。この場合、記憶部および記憶部からデータを読み出す構成等は、制御部140に設けられていてもよい。
【0041】
第1切換部240は、制御信号に応じて、PLL回路220および定電圧出力部230のいずれか一方を発振器210に接続する。第1切換部240は、例えば、2入力1出力のアナログスイッチである。なお、第1切換部240および発振器210の間には、ノイズ等を低減させるためのフィルタ等が設けられていてもよい。
【0042】
基準信号検出部250は、基準信号を検出する。基準信号検出部250は、基準信号が入力しているか否かを検出する。基準信号検出部250は、例えば、時間とともに変化する信号の実効的な大きさを示す実効値RMS(Root Mean Square)を検出する。基準信号検出部250は、基準信号の実効値が予め定められた実効値の範囲内であるか否かを検出してもよい。基準信号検出部250は、検出結果を制御部140に供給する。
【0043】
制御部140は、基準信号検出部250による基準信号の検出結果に応じて、第1切換部を制御する。制御部140は、例えば、基準信号検出部250が基準信号を検出した検出結果に応じて、PLL回路220を発振器210に接続する。制御部140は、また、基準信号の実効値が予め定められた実効値の範囲内である検出結果に応じて、PLL回路220を発振器210に接続してもよい。これにより、発振器210は、PLL回路220による位相制御によって発振周波数が安定化される。本実施形態において、PLL回路220による位相制御によって発振器210を動作させている状態を位相制御モードと呼ぶ。
【0044】
制御部140は、基準信号検出部250が基準信号を検出していない検出結果に応じて、定電圧出力部230を発振器210に接続する。制御部140は、また、基準信号の実効値が予め定められた実効値の範囲外である検出結果に応じて、定電圧出力部230を発振器210に接続してもよい。
【0045】
例えば、基準信号を発生させる信号源が故障した場合、信号源と発振装置20との接続配線の断線等、基準信号の入力に異常が発生している場合、制御部140は、略一定の電圧を発振器210に供給する。略一定の電圧は、安定動作をしているPLL回路220から出力される電圧と略一致するので、発振器210は、略一定の電圧に対応する発振周波数の発振信号を安定に出力する。なお、発振装置20が基準信号を用いずに、略一定の電圧を発振器210に供給して動作している状態を自走モードと呼ぶ。
【0046】
以上のように、発振装置20は、基準信号が供給されなくなっても、予め定められた電気信号を発振器210に供給する自走モードに切り換えることで発振信号の出力を継続させることができる。また、制御部140は、基準信号の供給が復活した場合は、PLL回路220を発振器210に接続してもよい。これにより、一時的に基準信号の供給が切断されても、発振装置20は、発振器210からの発振信号の出力を継続して出力させることができる。
【0047】
しかしながら、発振装置20を構成する部品等は、環境変動、経時変化等により、特性が変化してしまうことがある。例えば、発振器210の入力電圧に対する出力周波数の応答特性が変化してしまうことがある。この場合、位相制御モードから自走モードへの切り換え、および/または、自走モードから位相制御モードへの切り換えにおいて、発振信号の周波数が変動してしまうことがあった。
【0048】
そこで、本実施形態に係る発振装置100は、PLL回路220の出力電圧を監視し、監視した結果に基づく信号を用いることで、位相制御モードおよび自走モードの間を切り換えた場合に生じる発振周波数の変動を低減できるようにする。このような発振装置100について次に説明する。
【0049】
[発振装置100の第1構成例]
図3は、本実施形態に係る発振装置100の第1構成例を示す。第1構成例の発振装置100において、
図2に示された比較対象の発振装置20の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第1構成例の発振装置100は、発振器210と、PLL回路220と、第1切換部240と、基準信号検出部250と、信号検出部310と、第2信号出力部320とを備える。なお、発振装置100の動作は、制御部140によって制御される。
【0050】
信号検出部310は、基準信号がPLL回路220に入力されている間にPLL回路220が出力する第1信号を検出する。信号検出部310は、例えば、第1切換部240から発振器210へと伝送される信号を分岐した信号が入力される。信号検出部310は、例えば、AD変換器を有し、第1信号の電圧をデジタル値に変換した結果を検出結果として出力する。信号検出部310は、アッテネータおよび/または増幅器を更に有し、第1信号の電圧レベルを調整してからデジタル値に変換してもよい。
【0051】
信号検出部310は、例えば、第1信号の検出結果を制御部140に供給する。この場合、制御部140は、信号検出部310の検出結果を受けとり、受け取った検出結果を記憶部等に記憶する。そして、制御部140は、信号検出部310の検出結果に基づくデジタル信号を第2信号出力部に供給する。
【0052】
第2信号出力部320は、第1信号の検出結果に基づく第2信号を出力する。第2信号出力部320は、例えば、制御部140から受け取る第1信号のデジタル信号に対応する第2信号を出力する。一例として、第2信号出力部320は、DA変換器を有し、デジタル信号をアナログ信号に変換した結果を第2信号として出力する。これに代えて、信号検出部310は、記憶部等に第1信号の検出結果を記憶し、第2信号出力部320は、制御部140を介さずに直接記憶部から検出結果を読み出してもよい。
【0053】
第1切換部240は、PLL回路220および第2信号出力部320のいずれか一方を発振器210に接続する。そして制御部140は、基準信号検出部250による基準信号の検出結果に応じて、第1切換部240を制御する。制御部140は、例えば、基準信号検出部250が基準信号を検出した検出結果に応じて、PLL回路220を発振器210に接続する。この場合の制御部140の動作は、
図2で説明した制御部140の動作と同様である。
【0054】
制御部140は、基準信号検出部250が基準信号を検出していない検出結果に応じて、第2信号出力部320を発振器210に接続する。制御部140は、また、基準信号の実効値が予め定められた実効値の範囲外である検出結果に応じて、第2信号出力部320を発振器210に接続してもよい。
【0055】
このように、基準信号を発生させる信号源が故障した場合、信号源と発振装置20との接続配線の断線等、基準信号の入力に異常が発生している場合、制御部140は、第1信号の電圧に相当する第2信号を発振器210に供給する。第2信号の電圧は、安定動作をしているPLL回路220から出力される電圧の検出結果なので、発振器210は、PLL回路220で制御されていた場合に出力していた発振信号と同様の周波数の発振信号を継続して出力できる。
【0056】
ここで、発振装置20を構成する部品等の特性が変化した場合、PLL回路220から出力される第1信号が変化してしまうことがある。しかしながら、本実施形態に係る発振装置100は、第1信号の検出結果に対応する第2信号を用いるので、第2信号の電圧値を第1信号の電圧値と略一致させた値にすることができる。したがって、位相制御モードから自走モードへの切り換えが生じても、切換時に発生する発振周波数の変動を低減できる。
【0057】
以上のように、本実施形態に係る発振装置100は、PLL回路220が出力する第1信号の検出結果を用いることで、発振周波数の変動を低減させる。したがって、信号検出部310は、PLL回路220による位相制御モードで動作をしている期間において、定期的に第1信号を検出し、検出結果を更新することが望ましい。また、信号検出部310の単位時間当たりの第1信号の検出タイミングは、多い方が好ましい。
【0058】
なお、PLL回路220が出力する第1信号が変動することもあり、また、第1信号の検出結果に誤差が含まれることもある。そこで、第2信号出力部320が出力する第2信号の電圧レベルは、基準信号がPLL回路220に入力されている間にPLL回路220が出力する第1信号の電圧値を平滑化した電圧レベルであることが望ましい。この場合、制御部140が第1信号の検出結果の移動平均を算出して第2信号出力部320に供給してもよく、これに代えて、第2信号出力部320が第1信号の検出結果を平均化してもよい。
【0059】
以上の第1構成例の発振装置100は、基準信号が入力していない場合、第2信号出力部320が出力する第2信号で発振器210を駆動する。この場合、PLL回路220には基準信号が入力していないので、例えば、PLL回路220は略0Vの第1信号を出力する。そして、基準信号が復活してPLL回路220に入力すると、PLL回路220は、復活した基準信号と発振器210の発振信号を分周した信号との位相比較結果を出力することになる。
【0060】
この場合、過渡的には、PLL回路220が出力する第1信号の電圧値は、発振器210を駆動している第2信号の電圧値とは異なる場合がある。したがって、基準信号が入力した検出結果に応じて、制御部140が直ちにPLL回路220と発振器210とを接続すると、発振器210の発振信号の周波数が変動してしまうことがある。
【0061】
そこで、制御部140は、基準信号検出部250から基準信号の入力を検出した検出結果を受け取った場合、予め定められた時間が経過してから、PLL回路220と発振器210とを接続してもよい。また、制御部140は、第2信号の電圧値を調整してからPLL回路220と発振器210とを接続してもよい。制御部140が第2信号の電圧値を調整する構成について、次に説明する。
【0062】
[発振装置100の第2構成例]
図4は、本実施形態に係る発振装置100の第2構成例を示す。第2構成例の発振装置100において、
図3に示された第1構成例の発振装置100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第2構成例の発振装置100は、第2切換部330を更に備える。
【0063】
第2切換部330は、PLL回路220および第2信号出力部320のいずれか一方を信号検出部310に接続する。第2切換部330は、例えば、第1切換部240と同様に、2入力1出力のアナログスイッチである。第2切換部330の一方の入力端子には、例えば、PLL回路220が出力する第1信号を分岐した信号が入力する。PLL回路220および第2切換部330の間には、アッテネータおよび増幅回路等の信号レベルを調節する回路が設けられていてもよい。また、PLL回路220および第1切換部240の間に、信号レベルを調節する回路が設けられていてもよい。
【0064】
第2切換部330の他方の入力端子には、例えば、第2信号出力部320が出力する第2信号を分岐した信号が入力する。第2信号出力部320および第2切換部330の間には、アッテネータおよび増幅回路等の信号レベルを調節する回路が設けられていてもよい。また、第2信号出力部320および第1切換部240の間に、信号レベルを調節する回路が設けられていてもよい。なお、第2切換部330および信号検出部310の間には、ノイズを低減させるためのフィルタ等が設けられていてもよい。
【0065】
制御部140は、第2切換部330を制御して、基準信号検出部250が基準信号を検出した検出結果に応じて、PLL回路220を信号検出部310に接続する。これにより、信号検出部310は、基準信号がPLL回路220に入力している間、PLL回路220が出力する第1信号を検出することができる。
【0066】
また、制御部140は、基準信号検出部250が基準信号を検出していない検出結果に応じて、第2信号出力部320を信号検出部310に接続する。これにより、信号検出部310は、基準信号がPLL回路220に入力していない間、第2信号出力部320が出力する第2信号を検出することができる。
【0067】
以上の第2構成例の発振装置100は、例えば、信号検出部310が第1信号および第2信号を検出して比較できるように、第2切換部330が設けられている。これにより、発振装置100は、第1切換部240の切り換え動作を実行する前に、第1信号および第2信号を検出して比較結果を確認することができる。
【0068】
例えば、制御部140は、第1切換部240を制御してPLL回路220を発振器210に接続している期間に、第2切換部330を制御して、PLL回路220および信号検出部310の接続と、第2信号出力部320および信号検出部310の接続とを、予め定められた時間が経過する毎に切り換える。このように、発振器210の発振周波数を位相制御モードで安定化させている期間に、PLL回路220が出力している第1信号と、第1信号の検出結果に基づく第2信号とを定期的にモニタして比較する。これにより、制御部140は、第1信号に対応した第2信号が出力しているか否かを確認できる。
【0069】
例えば、予め定められた時間が経過しても、第1信号および第2信号の検出結果が略一致する電圧レベルにならない場合、制御部140は、異常が発生していると判断できる。この場合、制御部140は、一例として、ユーザ等に異常の発生を通知する。また、制御部140は、第1信号および第2信号の検出結果が略一致する電圧となっている場合、正常動作していることを表示部等に表示させてもよい。
【0070】
また、制御部140は、第2信号出力部320を信号検出部310に接続している間に基準信号検出部250が基準信号を検出したことを条件に、まず、第2切換部330を制御して、PLL回路220を信号検出部310に接続する。この場合、PLL回路220は、入力した基準信号と自走モードで動作している発振器210の発振信号を分周した信号との位相比較結果を出力する。信号検出部310は、PLL回路220が出力する第1信号を検出する。
【0071】
そして、制御部140は、PLL回路220が出力する第1信号の電圧レベルと、第2信号出力部320が出力していた第2信号の電圧レベルとを比較する。制御部140は、第1信号と更新前の第2信号とを比較することにより、第1信号と第2信号とが異なっているか否かを確認できる。
【0072】
ここで、例えば、第1信号の電圧レベルと第2信号の電圧レベルの差分が予め定められた閾値以下の場合、制御部140は、第1切換部240を制御して、PLL回路220と発振器210とを接続する。第1信号および第2信号が略同一の電圧レベルなので、自走モードから位相制御モードに切り換えても、発振器210の発振周波数の変化を低減させることができる。
【0073】
また、第1信号の電圧レベルと第2信号の電圧レベルとの差分が予め定められた閾値を超えた場合、制御部140は、第2信号の電圧レベルを第1信号の電圧レベルに近づけるように変更するデジタル信号を第2信号出力部に供給する。これに代えて、制御部140は第1信号の検出結果に基づき、第2信号を更新する。これにより、PLL回路220は、入力した基準信号と自走モードで動作している発振器210の発振信号との位相を速やかに同期させることができる。
【0074】
制御部140は、第2信号の電圧レベルを変更してから、第1切換部240を制御して、PLL回路220を発振器210に接続する。以上のように、第2構成例の発振装置100は、自走モードから位相制御モードに切り換えても、発振器210の発振周波数の変化を低減させることができる。このような第2構成例の発振装置100の動作フローについて次に説明する。
【0075】
[発振装置100の動作フローの一例]
図5は、第2構成例の発振装置100の動作フローの一例を示す。まず、制御部140は初期設定を行う(S1010)。制御部140は、例えば、記憶部に記憶されている初期値を第2信号出力部320に供給する。第2信号出力部320は、初期値に応じた第2信号を出力する。ここで、初期値は、過去に信号検出部310が第1信号を検出した検出結果でよく、これに代えて、予め設計または算出された値等でもよい。
【0076】
次に、制御部140は、基準信号検出部250による基準信号の検出結果を確認する(S1020)。制御部140は、基準信号が検出されていない場合(S1020:No)、第1切換部240を制御して、第2信号出力部320を発振器210に接続する(S1030)。これにより、発振器210は自走モードで動作する。なお、第2信号出力部320および発振器210が既に接続されている場合、制御部140は、第1切換部240の接続を維持させる。
【0077】
ここで、制御部140は、第2切換部330を制御して、第2信号出力部320を信号検出部310に接続し、第2信号をモニタしてもよい。制御部140は、基準信号が検出されるまで、S1020およびS1030を繰り返し、自走モードの動作を継続させる。
【0078】
制御部140は、基準信号が検出された場合(S1020:Yes)、第2切換部330を制御して、PLL回路220を信号検出部310に接続し(S1040)、第1信号をモニタする。制御部140は、信号検出部310の検出結果の移動平均を算出してもよい。
【0079】
そして、制御部140は、第1信号と更新前の第2信号とを比較する(S1050)。第1信号と第2信号とが略一致していない場合(S1050:No)、制御部140は、第2信号の値を調整する(S1060)。制御部140は、第1信号と第2信号とが略一致するまで、第1信号のモニタから第2信号の調整までの動作を繰り返す。
【0080】
第1信号と第2信号とが略一致した場合(S1050:Yes)、制御部140は、第1切換部240を制御して、PLL回路220を発振器210に接続する(S1070)。これにより、発振器210の動作は自走モードから位相制御モードに切り換わる。
【0081】
そして、制御部140は、第2切換部330を制御して、PLL回路220を信号検出部310に接続し、第1信号をモニタする。制御部140は、信号検出部310の検出結果の移動平均を算出してもよい。そして、制御部140は、信号検出部310の検出結果を更新してもよい。
【0082】
次に、制御部140は、第2切換部330を制御して、PLL回路220および信号検出部310の接続と、第2信号出力部320および信号検出部310の接続とを、予め定められた時間が経過する毎に切り換える。制御部140は、第1信号および第2信号を定期的にモニタして比較する(S1080)。
【0083】
次に、制御部140は、基準信号検出部250による基準信号の検出結果を確認する(S1090)。制御部140は、基準信号が検出されている場合(S1090:Yes)、S1080およびS1090の動作を繰り返し、位相制御モードを継続させる。
【0084】
制御部140は、基準信号が検出されなかった場合(S1090:No)、第1切換部240を制御して、第2信号出力部320を発振器210に接続し、自走モードに切り換える(S1100)。制御部140は、S1020に戻り、基準信号の検出結果を確認する。
【0085】
制御部140は、例えば、動作の停止が入力された場合、異常を検出した場合等に動作を停止するまで、以上の動作フローを繰り返す。このように、本実施形態に係る発振装置100は、基準信号が入力している状態から基準信号の入力がなくなった状態に変化した場合、および、基準信号が入力していない状態から基準信号が入力した状態に変化した場合であっても、第1信号および第2信号をモニタすることで発振器210の発振周波数の変動を低減させることができる。
【0086】
例えば、
図2に示す発振装置20が数百MHzの発振信号を出力している場合、位相制御モードおよび自走モードの間の切り換えによって1000Hz程度以上の周波数変動が観測されることがある。これに対し、
図3に示す本実施形態に係る発振装置100の場合、略同一の条件において、周波数変動を400Hz程度以下に低減できるシミュレーション結果が得られた。
【0087】
以上の本実施形態に係る発振装置100は、基準信号の検出結果に応じて、第1信号および第2信号の電圧レベルを信号検出部310が検出する例を説明した。この場合、発振装置100は、例えば、PLL回路220を終端させてから第1信号を検出してもよい。また、発振装置100は、第2信号出力部320を終端させてから第2信号を検出してもよい。このような発振装置100について、次に説明する。
【0088】
[発振装置100の第3構成例]
図6は、本実施形態に係る発振装置100の第3構成例を示す。第3構成例の発振装置100において、
図3および
図4に示された第1構成例および第2構成例の発振装置100の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第3構成例の発振装置100は、第1終端回路410、第2終端回路420、第3切換部430、および第4切換部440を更に備える。
【0089】
第1終端回路410は、第2信号出力部320を終端させるための回路である。第1終端回路410は、例えば、発振器210の入力インピーダンスと略等しいインピーダンスを有する。また、第1終端回路410は、第2信号出力部320が発振器210を動作させる接続状態において、第2信号出力部320の出力端子に負荷として加わるインピーダンスと略等しいインピーダンスを有することがより望ましい。
【0090】
第3切換部430は、第2信号出力部320および第1切換部240の間に設けられ、第2信号出力部320を第1切換部240および第1終端回路410のいずれか一方に接続する。第3切換部430は、例えば、1入力2出力のアナログスイッチである。第3切換部430の入力端子には、例えば、第2信号出力部320が出力する第2信号を分岐した信号が入力する。第2信号出力部320および第3切換部430の間には、アッテネータおよび増幅回路等の信号レベルを調節する回路等が設けられていてもよい。
【0091】
制御部140は、第2信号出力部320が出力する第2信号をモニタする場合、第3切換部430を制御して、第2信号出力部320の出力を第1終端回路410に接続して終端させる。例えば、制御部140は、第1切換部240を制御してPLL回路220を発振器210に接続した場合、第3切換部430を制御して第2信号出力部320を第1終端回路410に接続する。
【0092】
これにより、第2信号出力部320の出力端子には、発振器210を自走モードで動作させる負荷と同様の負荷で終端されることになる。そして、PLL回路220によって発振器210が位相制御モードで動作している間に、適切なインピーダンスで終端した第2信号出力部320の出力をモニタできる。
【0093】
したがって、信号検出部310は、第2信号出力部320が出力する第2信号を、実際の発振器210の駆動動作時に近い値として正確に検出することができる。これにより、制御部140は、例えば、第2信号をより適切な値に調節することができる。例えば、第2信号を第1信号と一致させるように調節してから自走モードから位相制御モードに切り換えることができるので、位相制御モードに切り換えた場合に発生する周波数の変動をより低減させることができる。
【0094】
なお、発振器210を位相制御モードで動作させつつ、第2信号出力部320の出力をモニタしている場合に、基準信号検出部250が基準信号の入力がなくなったことを検出すると、制御部140は、発振器210を自走モードに切り換える。この場合、制御部140は、第3切換部430を制御して第2信号出力部320を第1切換部240に接続してから、第1切換部240を制御して第2信号出力部320を発振器210に接続する。これにより、第2信号出力部320が出力する第2信号を速やかに発振器210に供給することができる。
【0095】
第2終端回路420は、PLL回路220を終端させるための回路である。第2終端回路420は、例えば、発振器210の入力インピーダンスと略等しいインピーダンスを有する。また、第2終端回路420は、PLL回路220が発振器210を動作させる接続状態において、PLL回路220の出力端子に負荷として加わるインピーダンスと略等しいインピーダンスを有することがより望ましい。
【0096】
第4切換部440は、PLL回路220および第1切換部240の間に設けられ、PLL回路220を第1切換部240および第2終端回路420のいずれか一方に接続する。第4切換部440は、例えば、1入力2出力のアナログスイッチである。第4切換部440の入力端子には、例えば、PLL回路220が出力する第1信号を分岐した信号が入力する。PLL回路220および第4切換部440の間には、アッテネータおよび増幅回路等の信号レベルを調節する回路等が設けられていてもよい。
【0097】
制御部140は、PLL回路220が出力する第1信号をモニタする場合、第4切換部440を制御して、PLL回路220の出力を第2終端回路420に接続して終端させる。例えば、制御部140は、第1切換部240を制御して第2信号出力部320を発振器210に接続した場合、第4切換部440を制御してPLL回路220を第2終端回路420に接続する。
【0098】
これにより、PLL回路220の出力端子には、発振器210を位相制御モードで動作させる負荷と同様の負荷で終端されることになる。そして、第2信号出力部320によって発振器210を自走モードで動作している間に、適切なインピーダンスで終端したPLL回路220の出力をモニタできる。
【0099】
したがって、信号検出部310は、PLL回路220が出力する第1信号を、実際の発振器210の駆動動作時に近い値として正確に検出することができる。これにより、制御部140は、例えば、第1信号がより適切な値となってから自走モードから位相制御モードに切り換えることができるので、位相制御モードに切り換えた場合に発生する周波数の変動をより低減させることができる。
【0100】
なお、発振器210を自走モードで動作させている場合に、基準信号検出部250が基準信号の入力を検出し、PLL回路220が出力する第1信号が第2信号と略一致する値になると、制御部140は、発振器210の動作を位相制御モードに切り換える。この場合、制御部140は、第4切換部440を制御してPLL回路220を第1切換部240に接続してから、第1切換部240を制御してPLL回路220を発振器210に接続する。これにより、PLL回路220が出力する第1信号を速やかに発振器210に供給することができる。
【0101】
[発振周波数の変化の例]
図7は、比較対象の発振装置20の発振周波数の変化の一例を示す。
図7Aは、基準信号の信号レベルが低下して位相制御モードから自走モードに切り換えた場合の発振器210の発振周波数を示す。
図7Bは、基準信号が入力して自走モードから位相制御モードに切り換えた場合の発振器210の発振周波数を示す。
【0102】
図7の横軸は時間を示し、縦軸は発振器210の発振周波数を示す。なお、縦軸の発振周波数は、位相制御モードで発振器210を動作させた場合の発振周波数を0Hzとしている。ここで、発振器210の発振周波数は、数百MHz程度である。
【0103】
図7Aは、略0秒程度の時刻において、基準信号の信号レベルが低下してしまった例を示す。位相制御モードから自走モードへ切り換えた場合、発振器210の発振周波数が150Hzを超えて変動してしまうことが観測された。また、
図7Bは、略0秒程度の時刻において、基準信号が入力した例を示す。自走モードから位相制御モードへ切り換えた場合、発振器210の発振周波数が1000Hzを超えて変動してしまうことが観測された。
【0104】
図8は、第3構成例の発振装置100の発振周波数の変化の一例を示す。
図8Aは、基準信号の信号レベルが低下して位相制御モードから自走モードに切り換えた場合の発振器210の発振周波数を示す。
図8Bは、基準信号が入力して自走モードから位相制御モードに切り換えた場合の発振器210の発振周波数を示す。
【0105】
図8の横軸は時間を示し、縦軸は発振器210の発振周波数を示す。なお、縦軸の発振周波数は、位相制御モードで発振器210を動作させた場合の発振周波数を0Hzとしている。ここで、発振器210の発振周波数は、数百MHz程度である。
【0106】
図8Aは、略0秒程度の時刻において、基準信号の信号レベルが低下してしまった例を示す。位相制御モードから自走モードへ切り換えた場合、発振器210の発振周波数の変動を10Hz程度以下に低減できたことがわかる。また、
図8Bは、略0秒程度の時刻において、基準信号が入力した例を示す。自走モードから位相制御モードへ切り換えた場合、発振器210の発振周波数の変動を400Hz程度以下に低減できたことがわかる。
【0107】
以上の本実施形態に係る発振装置100は、基準信号検出部250が基準信号の実効値を検出する例を説明したが、これに限定されることはない。実効値の検出回路は、基準信号の検出回路として既知であるが、ノイズ除去の効果を有するので反応が鈍く、検出速度が比較的遅いことが知られている。
【0108】
[ピークレベル検出回路]
そこで、基準信号検出部250は、基準信号のピークレベルを検出する回路を有してもよい。基準信号検出部250は、例えば、AD変換器を有し、入力する信号の電圧レベルのピーク値を検出し、検出したピーク値と予め定められた閾値とを比較することにより基準信号を検出する。基準信号検出部250は、電圧レベルの許容できる最大値を設定するハイレベル閾値と、電圧レベルの許容できる最小値を設定するローレベル閾値とを用いて、予め定められた電圧レベル範囲の基準信号を検出してもよい。
【0109】
このようなピークレベル検出回路は、実効値の検出回路と比較して、基準信号の電圧レベルの低減をより高速に検出することができる。したがって、ピークレベル検出回路を有する基準信号検出部250を用いることにより、発振装置100は、位相制御モードから自走モードへと速やかに切り換えることができる。
【0110】
図9は、本実施形態に係る基準信号検出部250の検出周期に対する発振器210の発振周波数の変化の一例を示す。
図9の横軸は時間を示し、縦軸は発振器210の発振周波数を示す。なお、縦軸の発振周波数は、位相制御モードで発振器210を動作させた場合の発振周波数を0Hzとしている。また、
図9は、略0秒程度の時刻において、基準信号の信号レベルが低下してしまった例を示す。
【0111】
基準信号検出部250が基準信号の実効値を検出する回路を有する場合、検出周期は、一例として、10msec程度である。この場合、基準信号の信号レベルが急激に低下した場合、位相制御モードから自走モードへの切り換えタイミングが遅れてしまい、発振器210の発振周波数の変動が大きくなってしまうことがある。
図9の例の場合、400Hz程度の変動が観測された。
【0112】
基準信号検出部250が基準信号のピークレベルを検出する回路を有する場合、検出周期は、10msecよりも速くすることができ、一例として、50μsec程度である。この場合、基準信号の信号レベルが急激に低下しても、位相制御モードから自走モードへと速やかに切り換えることができ、発振器210の発振周波数の変動を低減できる。
図9の例の場合、250Hz程度の変動に低減できることがわかる。
【0113】
なお、基準信号検出部250がピークレベルを検出する回路を有する場合、感度が高くなるので、ノイズの影響等を受けやすくなることがある。この場合、基準信号検出部250は、例えば、予め電圧レベルの変動のパターンを計測して記憶しておき、記憶した信号パターンと計測結果とを比較することで、ノイズの重畳を判別する。また、基準信号検出部250は、移動平均を算出してノイズを低減させてもよい。
【0114】
以上の本実施形態に係る発振装置100は、基準信号の入力の有無に応じて、位相制御モードおよび自走モードを適切に切り換える例を説明した。ここで例えば、基準信号の入力がなくなって位相制御モードから自走モードに切り換える場合、第1信号は0Vへと変化して発振器210の発振周波数が速やかに変動してしまうので、なるべく速く自走モードに切り換えることが望ましい。
【0115】
これに対し、例えば、基準信号の入力が復活して自走モードから位相制御モードに切り換える場合、第2信号は変化しないので、第1信号と第2信号が略一致してから位相制御モードへ切り換えることが望ましい。制御部140は、このように切り換えタイミングを制御してもよく、これに代えて、基準信号検出部250が基準信号の検出周期を切り換えてもよい。
【0116】
例えば、基準信号検出部250は、基準信号を検出している間は、予め定められた第1時間間隔ごとに基準信号を検出する。なお、基準信号検出部250は、基準信号の電圧レベルがハイレベル閾値を超えた場合も、第1時間間隔ごとに基準信号を検出することが望ましい。第1時間は、例えば、1msec程度未満であることが望ましく、一例として、50μsecである。
【0117】
また、基準信号検出部250は、基準信号を検出しなかったことに応じて、第1時間間隔よりも長い第2時間間隔ごとに基準信号を検出する。第1時間は、例えば、1msec程度以上であることが望ましく、一例として、10msecである。このように、基準信号検出部250は、基準信号が低下した場合は検出周期を長くするので、発振装置100の消費電力を低減させることができる。
【0118】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0119】
10 シンセサイザシステム
20 発振装置
100 発振装置
110 電圧制御発振器
120 PLL制御装置
130 出力調整部
132 可変アッテネータ
134 増幅器
136 信号レベル検出回路
138 フィルタ部
140 制御部
210 発振器
220 PLL回路
230 定電圧出力部
240 第1切換部
250 基準信号検出部
310 信号検出部
320 第2信号出力部
330 第2切換部
410 第1終端回路
420 第2終端回路
430 第3切換部
440 第4切換部