(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】嵌合式建材パネル
(51)【国際特許分類】
E04D 3/362 20060101AFI20240117BHJP
E04D 3/363 20060101ALI20240117BHJP
E04F 13/12 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
E04D3/362 C
E04D3/362 A
E04D3/363 A
E04F13/12 101K
(21)【出願番号】P 2020019947
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2019107641
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000200323
【氏名又は名称】JFE鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】押田 博之
(72)【発明者】
【氏名】松田 宗久
(72)【発明者】
【氏名】太田 克也
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-205120(JP,A)
【文献】実開昭60-011926(JP,U)
【文献】実開昭63-186823(JP,U)
【文献】実開平02-134123(JP,U)
【文献】特開2013-133609(JP,A)
【文献】特開平07-317230(JP,A)
【文献】実開昭59-106953(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/00- 3/40
E04F 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って伸延する一対の長尺縁部とこれら各長尺縁部を挟み込み幅方向に沿って伸延する一対の短尺縁部とによって区画された輪郭形状を有するパネル本体と、該パネル本体の各短尺縁部にそれぞれ設けられた下継手、上継手と、該パネル本体の各長尺縁部のそれぞれに沿って一体連結する上ハゼ、下ハゼとを備え、該下継手を、該パネル本体の水上側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの上継手に嵌合、引っ掛け、該上継手を、該パネル本体の水下側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの下継手に嵌合、引っ掛けてパネル同士を縦方向に接続する一方、該上ハゼ、下ハゼを、隣接配置する別の嵌合式建材パネルの下ハゼ、上ハゼにそれぞれ嵌合させてパネル同士を横方向に接続して建築構造物の屋根、壁を構築する嵌合式建材パネルであって、
前記下継手は、該パネル本体の短尺縁部の全域にわたって面一状態でつながる板状体と、該板状体の後端部でパネル本体の水下側に向けて折り返され、水上側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの上継手に引っ掛け可能な二重以上の折り返し構造からなる引っ掛け片とを有し、
前記上継手は、該パネル本体に面一状態で一体連結する第一の板状体と、該第一の板状体の先端部でパネル本体の水上側に向けて折り返され、水下側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの下継手に引っ掛け可能な二重以上の折り返し構造からなる第一の引っ掛け片とを有し、
前記下継手の引っ掛け片、前記上継手の第一の引っ掛け片は、それぞれ、折り返し構造の内部に別途に用意された少なくとも一枚の金属板を有することを特徴とする嵌合式建材パネル。
【請求項2】
長手方向に沿って伸延する一対の長尺縁部とこれら各長尺縁部を挟み込み幅方向に沿って伸延する一対の短尺縁部とによって区画された輪郭形状を有するパネル本体と、該パネル本体の各短尺縁部にそれぞれ設けられた下継手、上継手と、該パネル本体の各長尺縁部のそれぞれに沿って一体連結する上ハゼ、下ハゼとを備え、該下継手を、該パネル本体の水上側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの上継手に嵌合、引っ掛け、該上継手を、該パネル本体の水下側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの下継手に嵌合、引っ掛けてパネル同士を縦方向に接続する一方、該上ハゼ、下ハゼを、隣接配置する別の嵌合式建材パネルの下ハゼ、上ハゼにそれぞれ嵌合させてパネル同士を横方向に接続して建築構造物の屋根、壁を構築する嵌合式建材パネルであって、
前記下継手は、該パネル本体の短尺縁部の全域にわたって面一状態でつながる板状体と、該板状体の後端部でパネル本体の水下側に向けて折り返され、水上側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの上継手に引っ掛け可能な二重以上の折り返し構造からなる引っ掛け片とを有し、
前記上継手は、該パネル本体に面一状態で一体連結する第一の板状体と、該第一の板状体の先端部でパネル本体の水上側に向けて折り返され、水下側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの下継手に引っ掛け可能な二重以上の折り返し構造からなる第一の引っ掛け片とを有し、
前記引っ掛け片は、板状体から切り離され、該板状体の上面において固定保持されたものであることを特徴とする嵌合式建材パネル。
【請求項3】
前記引っ掛け片は、板状体の上面に配置されるベースと、該ベースに片持ち状態でつながる舌片からなることを特徴とする請求項2に記載した嵌合式建材パネル。
【請求項4】
前記板状体は、上方に膨出し、且つ前記板状体の幅方向に延びるリブを有し、
前記ベースは、前記リブが嵌合される横長の凹所を設け、
前記引っ掛け片は、前記板状体に設けたリブを当該引っ掛け片の前記凹所に嵌合させることで、前記板状体の上面に固定保持されることを特徴とする請求項
3に記載した嵌合式建材パネル。
【請求項5】
前記下継手の引っ掛け片、前記上継手の第一の引っ掛け片は、それぞれ、折り返し構造の内部に別途に用意された少なくとも一枚の金属板を有することを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載した嵌合式建材パネル。
【請求項6】
前記下継手は、前記板状体の幅方向の端縁および該上ハゼの端部につながるとともに水上側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの上ハゼに嵌合可能な第一のハゼと、該板状体のもう一方の幅方向の縁部および該下ハゼの端部につながるとともに水上側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの下ハゼに嵌合可能な第二のハゼとを有し、
前記上継手は、前記第一の板状体の幅方向の各端部および前記上ハゼ、下ハゼにそれぞれ面一状態で一体連結する第三のハゼ、第四のハゼとを有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載した嵌合式建材パネル。
【請求項7】
前記板状体は、パネル本体の短尺縁部に段差を介してつながるものであることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載した嵌合式建材パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般住宅や事務所、マンション、福祉施設、リゾート施設等の屋根や壁を構築するのに用いて好適な、嵌合式建材パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
嵌合式の建材パネルは、従来、屋根材として広く用いられており、パネル本体の幅方向の端部に設けられた上ハゼ、下ハゼを、隣接配置する他の建材パネルの下ハゼ、上ハゼにそれぞれ嵌合させることによりパネル同士をつなぎ合わせる施工が行われてきている。しかし、近年では、さらに、パネル本体の長手方向に上継手、下継手を設け、水下側、水上側に隣接配置される建材パネルとの相互間で上継手、下継手をそれぞれ相互に嵌合させてパネル同士をつなぎ合わせる構造の建材パネルも開発されてきており、この点に関する先行技術としては、例えば、特許文献1が参照される。
【0003】
ところで、上記従来の建材パネルは、強風の吹き込みや過大な負圧が作用した場合に、パネルのつなぎ合わせ部分で変形を引き起こすことがないとはいえず未だ改善の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上継手、下継手の強化を図り、つなぎ合わせ部分での変形を確実に回避し得る嵌合式建材パネルを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、長手方向に沿って伸延する一対の長尺縁部とこれら各長尺縁部を挟み込み幅方向に沿って伸延する一対の短尺縁部とによって区画された輪郭形状を有するパネル本体と、該パネル本体の各短尺縁部にそれぞれ設けられた下継手、上継手と、該パネル本体の各長尺縁部のそれぞれに沿って一体連結する上ハゼ、下ハゼとを備え、該下継手を、該パネル本体の水上側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの上継手に嵌合、引っ掛け、該上継手を、該パネル本体の水下側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの下継手に嵌合、引っ掛けてパネル同士を縦方向に接続する一方、該上ハゼ、下ハゼを、隣接配置する別の嵌合式建材パネルの下ハゼ、上ハゼにそれぞれ嵌合させてパネル同士を横方向に接続して建築構造物の屋根、壁を構築する嵌合式建材パネルであって、前記下継手は、該パネル本体の短尺縁部の全域にわたって面一状態でつながる板状体と、該板状体の後端部でパネル本体の水下側に向けて折り返され、水上側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの上継手に引っ掛け可能な二重以上の折り返し構造からなる引っ掛け片とを有し、前記上継手は、該パネル本体に面一状態で一体連結する第一の板状体と、該第一の板状体の先端部でパネル本体の水上側に向けて折り返され、水下側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの下継手に引っ掛け可能な二重以上の折り返し構造からなる第一の引っ掛け片とを有することを特徴とする嵌合式建材パネルである。
【0007】
上記の構成からなる嵌合式建材パネルにおいて、前記下継手の引っ掛け片、前記上継手の第一の引っ掛け片は、それぞれ、折り返し構造の内部に別途に用意された少なくとも一枚の金属板を有するものとするのが好ましく、また、前記下継手は、前記板状体の幅方向の端縁および該上ハゼの端部につながるとともに水上側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの上ハゼに嵌合可能な第一のハゼと、該板状体のもう一方の幅方向の縁部および該下ハゼの端部につながるとともに水上側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの下ハゼに嵌合可能な第二のハゼとを有し、前記上継手は、前記第一の板状体の幅方向の各端部および前記上ハゼ、下ハゼにそれぞれ面一状態で一体連結する第三のハゼ、第四のハゼとを有することが望ましい。
【0008】
また、上記の構成からなる嵌合式建材パネルにおいて、前記引っ掛け片は、板状体から切り離され、該板状体の上面において固定保持されたものであること、前記引っ掛け片は、板状体の上面に配置されるベースと、該ベースに片持ち状態でつながる舌片からなること、さらに、前記板状体は、パネル本体の端部に段差を介してつながるものであること、が課題解決のための手段として好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下継手の板状体に設けられた引っ掛け片および上継手の第一の板状体に設けられた引っ掛け片をそれぞれ二重以上の折り返し構造としたため、その部位の強度を高めることが可能となり、強風が吹き込んだり過大な負圧が作用しても建材パネルが簡単に変形することがない。
【0010】
また、本発明によれば、下継手の引っ掛け片、上継手の第一の引っ掛け片の折り返し構造の内部に別途に用意された少なくとも一枚の金属板を配置することにより嵌合式建材パネルの耐風圧強度、耐風圧性能をより一層改善することができる。
【0011】
また、本発明によれば、板状体を、パネル本体の端部に段差を介してつながるものとすることにより、建材パネルのパネル本体同士がフラットな状態でつながるため、屋根や壁の美観が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明にしたがう嵌合式建材パネルの実施の形態をその全体について示した外観斜視図である。
【
図2】(a)は、
図1のA-A断面を拡大して示した図であり、(b)は、
図1のB-B断面を示した図である。
【
図4】
図1に示した嵌合式建材パネルを下継手側から見た外観斜視図である。
【
図5】本発明にしたがう嵌合式建材パネルの他の実施の形態を一部分について示した外観斜視図である。
【
図6】本発明にしたがう嵌合式建材パネルのつなぎ合わせ状況の説明図である。
【
図7】本発明にしたがう嵌合式建材パネルのつなぎ合わせ状況の説明図である。
【
図8】本発明にしたがう嵌合式建材パネルのつなぎ合わせ状況の説明図である。
【
図9】(a)(b)は、本発明にしたがう嵌合式建材パネルの他の実施の形態を、下継手、上継手の断面について示した図である。
【
図10】本発明にしたがう嵌合式建材パネルのさらに他の実施の形態を、下継手について示した外観斜視図である。
【
図12】本発明にしたがう嵌合式建材パネルの他の実施の形態を、下継手について示した外観斜視図である。
【
図14】嵌合式建材パネルのつなぎ合わせ状態を要部について示した図である。
【
図15】引っ掛け片を板状体の上面に固定保持した固定構造の一例を示した図である。
【
図16】(a)~(c)は、リブの断面形状の変形例を示した図である。
【
図17】本発明にしたがう嵌合式建材パネルを上継手について示した外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明にしたがう嵌合式建材パネルの実施の形態をその全体について示した外観斜視図であり、
図2(a)(b)は、
図1のA-A断面、B-B断面をそれぞれ拡大して示した図であり、
図3は、
図1のC-C断面を示した図であり、
図4は、本発明にしたがう嵌合式建材パネルを下継手側から見た外観斜視図である。
【0014】
本発明にしたがう嵌合式建材パネルは、屋根を葺きあげる場合、壁を構築する場合のいずれにおいても、下継手が設けられた側を水上側に向け、上継手が設けられた側を水下側に向けて配置するものとする。
【0015】
建築構造物の屋根、壁を構築するにあたっては、本発明にしたがう嵌合式建材パネルと同じ構成からなる嵌合式建材パネルを複数枚用いることを前提としており、隣接配置する他の嵌合式建材パネル、隣接配配置する別の嵌合式建材パネルについても本願発明にしたがう嵌合式建材パネルと同じ構成からなるものを用いる。また、嵌合式建材パネルを構成する素材としては、厚さ0.2~1.0mm程度になる亜鉛めっき鋼板、アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板、銅板、アルミニウム板、ステンレス鋼板あるいは、それらの塗装または被覆鋼板等を用いることができる。
【0016】
図1~4における符号1は、パネル本体である。パネル本体1は、長手方向に沿って伸延する一対の長尺縁部1a、1bと、これら長尺縁部1a、1bを挟み込み、幅方向に沿って伸延する一対の短尺縁部1c、1dによって区画された、全体として矩形状をなす輪郭形状を有している。
【0017】
また、符号2は、パネル本体1の長尺縁部1aに一体連結するとともに、隣接配置する別の嵌合式建材パネルの下ハゼに嵌合してパネル同士を接続する上ハゼである。
【0018】
上ハゼ2は、長尺縁部1aから立ち上がる傾斜側板2aと、この傾斜側板2aの上端に係止顎部t1を介してつながるとともに、桁方向に隣接配置する別の嵌合式建材パネルの下ハゼに嵌合可能な内部空間を有する先端先細り形状をなすドーム型の頭部2bと、この頭部2bに係止顎部t2を介して垂下、保持され、傾斜側板2aとの相互間にて下開き開口を形成する傾斜側板2cとから構成されている。上ハゼ2は、頭部2bの側壁に長尺縁部1aに沿って延伸する凹部を設けることが可能であり、これにより、桁方向に隣接配置する別の嵌合式建材パネルの下ハゼに嵌合させた際に、その相互間で面接触するのを避けて雨水の侵入を防止することができるようになっている。
【0019】
また、符号3は、パネル本体1の長尺縁部1bに一体連結するとともに、もう一方に隣接配置する別の建材パネルの下ハゼに嵌合してパネル同士を接続する下ハゼである。
【0020】
この下ハゼ3は、長尺縁部1bから立ち上がる側板3aと、この側板3aの上端に係止顎部t3を介してつながるとともに、隣接配置する別の嵌合式建材パネルの上ハゼに嵌合可能な先端先細り形状をなすドーム型の頭部3bと、この頭部3bに係止顎部t4介して垂下、保持され、側板3aとの相互間にて下開き開口を形成する側板3cと、この側板3cの下端に水平姿勢でもって一体的につながるビス止め片3dから構成されている。
【0021】
係止顎部t1と係止顎部t2とは相互に逆向きに突出していて、両者でもって嵌合させたハゼの引き抜けを防止する。また、係止顎部t3と係止顎部t4とは、上記の係止顎部t1、係止顎部t2と同様に、相互に逆向きになっており、両者でもって嵌合させたハゼの引き抜けを防止する。
【0022】
符号4は、パネル本体1の短尺縁部1cに設けられた下継手である。下継手4は、水上側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの上継手の下側において重ね合わさるものであって、パネル本体1の短尺縁部1cの全域にわたって面一状態でつながる板状体4aと、該板状体4aの後端部でパネル本体1の水下側に向けて折り返され、水上側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの上継手に引っ掛け可能な二重以上の折り返し構造からなる引っ掛け片4bと、該板状体4aの幅方向の端縁および上ハゼ2の端部につながるとともに水上側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの上ハゼ(上継手の第三のハゼに相当するもの)に嵌合可能な第一のハゼ4cと、該板状体4aのもう一方の幅方向の縁部および下ハゼ3の端部においてつながるとともに水上側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの下ハゼ(上継手の第四のハゼに相当するもの)に嵌合可能な第二のハゼ4dとから構成されている。第二のハゼ4dの下端には、下ハゼ3のビス止め片3dに同一平面でつながる舌片4eを設けておくことができる。
【0023】
引っ掛け片4bは、ここでは、二重の折り返し構造からなるもの(
図2(a)参照)としてその部位の強度を高める場合について示したが、該引っ掛け片4bは、三重以上の折り返し構造とすることも可能であり、図示のものに限定されない。
【0024】
下継手4は、基本的には、ロール成形によりパネル本体1、上ハゼ2、下ハゼ3と同一断面形状に形成したのち、プレス成形による絞り加工を施すことによって成形される。
【0025】
下継手4の幅寸法は、水上側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルとのつなぎ合わせに際して相互に確実に重ね合わせることができるように、水上側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルのパネル本体の幅寸法(実際には上継手の幅寸法)よりも若干広くしておくのが好ましい。
【0026】
また、符号5は、パネル本体1のもう一方の短尺縁部1dに設けられた上継手(パネルの水下側に配置される)である。この上継手5は、パネル本体1と面一状態でつながり、水下側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの短尺縁部(下継手に相当する部分)の上側において重ね合わさるものである。
【0027】
上継手5は、パネル本体1に面一状態で一体連結する第一の板状体5aと、この第一の板状体5aの先端部でパネル本体1の水上側に向けて折り返され、水下側に隣接配置する他の嵌合式建材パネルの下継手に引っ掛け可能な二重以上の折り返し構造からなる第一の引っ掛け片5bと、第一の板状体5aの幅方向の各端部および上ハゼ2、下ハゼ3にそれぞれ面一状態で一体連結する第三のハゼ5c、第四のハゼ5dとから構成されている。
【0028】
第一の引っ掛け片5bは、第一の板状体5aに対して180°曲げとなるように折り返しておくことができるものであって、ここでは、引っ掛け片4bと同様に二重の折り返し構造からなるもの(
図2(b)参照)としてその部位の強度を高める場合について示したが、該第一の引っ掛け片5bは、三重以上の折り返し構造とすることも可能であり、図示のものに限定されない。
【0029】
上記の構成からなる嵌合式建材パネルは、下継手4の引っ掛け片4bおよび上継手5の第一の引っ掛け片5bは、いずれも少なくとも二重の折り返し構造からなっており、その部位の強度が高められているため強い風が吹き込んだり過大な負圧が作用しても簡単に変形することがない。
【0030】
なお、本発明にしたがう嵌合式建材パネルは、
図5に示すように、第一のハゼ4c、第二のハゼ4dおよび引っ掛け片4bの外表面には、第一のハゼ4cから第二のハゼ4dに至るまでの間で連続的に伸延する止水用のパッキン6を設けることもでき、嵌合式建材パネル同士をつなぎ合わせた際にパッキン6を押し潰すことにより屋根あるいは壁の止水性を高めることが可能となる。
【0031】
本発明にしたがう嵌合式建材パネルを用いて屋根を葺きあげる場合において、嵌合式建材パネルを梁間方向、すなわち、縦方向につなぎ合わせるには、まず、
図6、
図7に示すように、下継手4に水上側において隣接配置する他の嵌合式建材パネルの上継手5′の第一の引っ掛け片5b′を下継手4の引っ掛け片4bに引っ掛けるとともに、下継手4の第一のハゼ4cを、水上側において隣接配置する他の嵌合式建材パネルの上継手5′の第三のハゼ5c′に、また、下継手4の第二のハゼ4dを、該水上側において隣接配置する他の嵌合式建材パネルの上継手5′の第四のハゼ5d′にそれぞれ嵌合させる一方、上継手5の第三のハゼ5cを、水下側において隣接配置する他の嵌合式建材パネルの下継手4′の第一のハゼ4c′に、また、上継手5の第四のハゼ5dを、水下側において隣接配置する他の嵌合式建材パネルの下継手4′の第二のハゼ4d′に嵌合させればよい。
【0032】
また、本発明にしたがう嵌合式建材パネルを桁方向、すなわち、横方向につなぎ合わせるには、
図8に示すように、下ハゼ3を、隣接配置する別の嵌合式建材パネルの上ハゼ2′′に嵌合させ、上ハゼ2を、隣接配置する別の嵌合式建材パネルの下ハゼ3′′に嵌合させればよく、この作業を、縦方向のつなぎ合わせ作業と並行して行うことにより建築構造物の屋根を葺きあげることができる。
【0033】
建築構造物の壁を構築するに際しても、屋根を葺きあげる場合と同じ手順で建材パネルをつなぎ合わせればよい。
【0034】
図9(a)(b)は、本発明にしたがう嵌合式建材パネルの他の実施の形態を、下継手4、上継手5の断面について示した図である。下継手4の引っ掛け片4b、上継手5の第一の引っ掛け片5bの折り返し構造の内部には、別途に用意した金属板7を配置することも可能であり、これにより耐風圧強度、耐風圧性能を一層高めることができる。なお、
図9(a)(b)には、金属板7を一枚配置したものを例として示したが、金属板7は、折り返し構造が複数の折り返し部分からなるものにあっては、折り返し部分の数に応じてその枚数を増やすことが可能であり、図示のものに限定されることはない。
【0035】
図10は、本発明にしたがう嵌合式建材パネルのさらに他の実施の形態を、下継手4について示した外観斜視図であり、
図11は、
図10のD-D断面を拡大して示した図である。この例は、引っ掛け片4bを、板状体4aの上面に配置されるベース4b1と、該ベース4b1に片持ち状態でつながる舌片4b2にて構成して引っ掛け片4bそのものを板状体4aから切り離した構造のものである。
【0036】
かかる下継手4においては、引っ掛け片4bを、カシメ接合やリベット接合、両面テープ、接着剤等により板状体4aの上面に固定保持する作業が必要になるが、この場合にも、嵌合式建材パネル同士を強固につなぎ合わせることができる。
【0037】
とくに、引っ掛け片4bを板状体4aから切り離した構造とすることにより、板状体4aの末端に設けられた水返しwの前段に位置する一次止水部材として機能させることが可能となり、嵌合式建材パネルのつなぎ合わせ部分から雨水が侵入したとしても、侵入した雨水のほとんどは引っ掛け片4bで止水され、そこを乗り越えた雨水は、水返しwで確実に止水されることになる(二次止水構造)。なお、この場合、引っ掛け片4bには、該引っ掛け片4bを乗り越えた雨水を速やかに軒側へと返すために水抜き孔を設けるのが好ましい。また、引っ掛け片4bは、舌片4b2を二重の折り返し構造とすることができるが、引っ掛け片4bそのものの厚さを厚くすることが可能であり、引っ掛け片4bを折り返し構造としなくても建材パネルのつなぎ合わせ部分の強度を高めることができる利点もある。
【0038】
本発明にしたがう嵌合式建材パネルとしては、板状体4aが、パネル本体1の短尺縁部の全域において面一状態でつながるものの他、
図12、
図13に示すように、板状体4aを、パネル本体1の短尺縁部1cに2~3mm程度低くなる段差dを介してつなげてもよい。
【0039】
板状体4aを、パネル本体1の短尺縁部1cに段差dを介してつなげることより、
図14に示すように、嵌合式建材パネルのパネル本体1同士がフラットな状態でつなげることが可能となり屋根や壁の美観を高めることができるだけでなく、第一のハゼ4cと第三のハゼ5c′との相互間、第二のハゼ4dと第四のハゼ5d′との相互間に形成されがちな隙間をなくすことができ、雨仕舞がよくなる。
【0040】
図15は、板状体4aに、上方へ向けて膨出し、かつ、該板状体4aの幅方向に沿って伸びるリブ4a1を設け、引っ掛け片4bのベース4b1に、該リブ4a1に嵌合する横長の凹所4b3を設け、この部位で引っ掛け片4bを板状体4aの上面に固定保持した固定構造の一例を示した図である。
【0041】
かかる固定構造においては、凹所4b3を形成する際に形成される背面凸部4b4にて水上側に隣接配置される嵌合式建材パネルのパネル本体1を支持することができ、建材パネルのつなぎ合わせ姿勢がより安定化される。
【0042】
リブ4a1は、幅方向に沿って連続的に伸びるものであってもよいし、断続的に伸びるものであってもよく、また、板状体4aの長手方向に沿い複数設けることもできる。
【0043】
また、リブ4a1の断面形状は、図示の形状に限定されるものではなく、例えば、
図16(a)~(c)に示すように、棟側部分が軒側部分に比較して低くなるような傾斜を付けた片台形状の断面を有するものや、三角形状の断面を有するものの他、半円形状あるいはドーム形を有するもの等を適用することができる。
【0044】
建材パネルの上継手5については、
図17に示すように、第三のハゼ5c、第四のハゼ5dの端面を、第一の引っ掛け片5bの先端よりも突出させ、第四のハゼ5dの端面に隣接するビス止め片3aの一部分およびこのビス止め片3aにつながる第四のハゼ5dの脚部の一部分を切り欠いて切欠き部cを形成しておくことも可能であり、これにより、建材パネルを幅方向につなぎ合わせる際、つなぎ合わせ作業をスムーズに行うことができる。
【0045】
本発明にしたがう嵌合式建材パネルは、基本的には、上掲
図7に示したように嵌合式建材パネルを長手方向につなぎ合わせる作業を先行して行い、次いで、上掲
図8に示したように嵌合式建材パネルを幅方向につなぎ合わせる作業を繰り返し行うことによって屋根や壁を構築するが、第二のハゼ4d、第一のハゼ4c、第四のハゼ5d、第三のハゼ5の嵌合サイズを、(第二のハゼ4d)<(第一のハゼ4c)<(第四のハゼ5d)<(第三のハゼ5)とすることにより、嵌合式建材パネルを幅方向につなぎ合わせる作業を、長手方向のつなぎ合わせ作業に先行して行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、つなぎ合わせ部分の強度を高めることが可能な嵌合式建材パネルが提供できる。
【符号の説明】
【0047】
1 パネル本体
1a 長尺縁部
1b 長尺縁部
1c 短尺縁部
1d 短尺縁部
2 上ハゼ
2a 傾斜側板
2b 頭部
2c 傾斜側板
3 下ハゼ
3a 側板
3b 頭部
3c 側板
3d ビス止め片
4 下継手
4a 板状体
4a1 リブ
4b 引っ掛け片
4b1 ベース
4b2 舌片
4c 第一のハゼ
4d 第二のハゼ
4e 舌片
5 上継手
5a 第一の板状体
5b 第一の引っ掛け片
5c 第三のハゼ
5d 第四のハゼ
6 パッキン
7 金属板
d 段差
c 切欠き部