(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】警報ベル
(51)【国際特許分類】
G10K 1/063 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
G10K1/063 E
(21)【出願番号】P 2020029449
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】池端 利之
(72)【発明者】
【氏名】川島 高広
【審査官】金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-235394(JP,A)
【文献】実開昭56-023999(JP,U)
【文献】米国特許第04305066(US,A)
【文献】実開昭57-022794(JP,U)
【文献】実開昭64-25793(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 1/063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打撃されると鐘音を発生するゴングと、前記ゴングを前方に移動して打撃する打棒と、前記打棒を駆動するモータと、前記モータの動力を前記打棒に伝達する動力伝達部と、前記モータを収納するハウジングと、を備えた警報ベルにおいて、
前記動力伝達部は、基端側に前記モータの駆動軸に固定されるカムとの接続部を有すると共に、先端側に前記打棒との接続部を有する、線状の部材からなり、
そして、前記動力伝達部は、基端部が前記カムとの接続部に連続し、前記モータの駆動軸に対して略直角の向きで直線状に延びて、先端部が前記打棒の周囲側方の位置に至る第1の直線部を有しており、前記打棒の静止状態における前後方向の位置は、前記第1の直線部の長さによって決定されることを特徴とする警報ベル。
【請求項2】
前記動力伝達部は、基端部が前記第1の直線部の先端部に連続し、前記第1の直線部に対して略直角の向きで直線状に延びる第2の直線部を有することを特徴とする請求項1に記載の警報ベル。
【請求項3】
前記動力伝達部は、基端部が前記第2の直線部の先端部に連続し、前記第1の直線部と前記第2の直線部の両方に対して略直角の向きで直線状に延びて、先端部が前記打棒との接続部に連続する第3の直線部を有することを特徴とする請求項2に記載の警報ベル。
【請求項4】
前記動力伝達部とは別体のものとして、前記打棒を前方に弾圧する板バネをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の警報ベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータによって駆動される打棒がゴングを打撃して鐘音を発生する警報ベルに関する。
【背景技術】
【0002】
警報ベルは、打撃されると鐘音を発生するゴングと、前記ゴングを打撃する打棒と、前記打棒を駆動するモータと、前記モータを収納するハウジング等を備え、火災等の非常事態の発生時に鳴動して鐘音を発生し、警報を発するものとして用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の警報ベルの主な用例としては、自動火災報知設備の地区音響装置や非常警報設備の音響装置の非常ベル(以下、単に「非常ベル」という)等である。
【0005】
ところで、前記の特許文献1は、モータの駆動軸と共に回転するカム部材と打棒とを接続し、モータの動力を打棒に伝達する動力伝達部材として、コイル状の巻線部を有する線状の部材を用いる技術を開示している。この技術によれば、巻線部の弾力によって打棒の前方への移動を付勢することができ、巻線部の弾力を打棒の打撃力として利用することができる。しかしながら、この技術において、打棒の静止状態における前後方向の位置は、動力伝達部材の長さによって決まるが、その途中にコイル状の巻き線部があることにより、その長さに個体差が生じ易い。すなわち、打棒の静止状態における前後方向の位置に個体差が生じ易い。そのため、組み立てに際し、巻線部の弾力が打棒の打撃力として効率的に作用するように打棒の前後方向の位置を個々に調整(モータの取り付け位置を調整することにより調整)する必要がある。つまり、前記の特許文献1が開示の技術の場合、組み立てが容易ではない。
【0006】
この発明は、前記の事情に鑑み、組み立てが容易な警報ベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、打撃されると鐘音を発生するゴングと、前記ゴングを前方に移動して打撃する打棒と、前記打棒を駆動するモータと、前記モータの動力を前記打棒に伝達する動力伝達部と、前記モータを収納するハウジングと、を備えた警報ベルにおいて、前記動力伝達部は、基端側に前記モータの駆動軸に固定されるカムとの接続部を有すると共に、先端側に前記打棒との接続部を有する、線状の部材からなり、そして、前記動力伝達部は、基端部が前記カムとの接続部に連続し、前記モータの駆動軸に対して略直角の向きで直線状に延びて、先端部が前記打棒の周囲側方の位置に至る第1の直線部を有しており、前記打棒の静止状態における前後方向の位置は、前記第1の直線部の長さによって決定されることを特徴とする警報ベルである。
【0008】
この発明において、前記動力伝達部は、基端部が前記第1の直線部の先端部に連続し、前記第1の直線部に対して略直角の向きで直線状に延びる第2の直線部を有するものとすることができる。また、前記動力伝達部は、前記第2の直線部の先端部に連続し、前記第1の直線部及び前記第2の直線部に対して略直角の向きで直線状に延び、先端部が前記打棒との接続部に連続する第3の直線部を有するものとすることができる。また、前記動力伝達部とは別体のものとして、前記打棒を前方に弾圧する板バネをさらに備えたものとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明においては、動力伝達部の直線部分の長さによって、打棒の静止状態における前後方向の位置が決定される。動力伝達部の直線部分は、その長さに個体差が生じ難い。つまり、打棒の静止状態における前後方向の位置に個体差が生じ難いものとすることができ、組み立てに際し、その位置の調整を不要にすることができる。
【0010】
したがって、この発明によれば、組み立てが容易な警報ベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の警報ベルの実施形態の一例を示したものであり、警報ベルの内面側(裏面側)を示した裏面図(ハウジングの裏蓋を開けた状態のもの)である。
【
図4】同上の警報ベルにおける動力伝達部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の警報ベルの実施形態の一例について、図面を参照しつつ説明する。なお、この発明の警報ベルは、例えば、自動火災報知設備の地区音響装置や非常警報設備の音響装置の非常ベル等として用いることができるものである。
【0013】
<基本構成>
警報ベル1は、打撃されると鐘音を発生するゴング2と、ゴング2を前方に移動して打撃する打棒3と、打棒3を駆動するモータ4と、モータ4の駆動軸4aに固定されて駆動軸4aと共に回転するカム5と、打棒3とカム5に接続されてモータ4の動力を打棒3に伝達する動力伝達部6と、モータ4等を収納するハウジング7を備える(
図1乃至3参照)。
【0014】
<ゴング>
ゴング2は、底部2bと周側部2cを有し、深さの浅い平面視円形の椀状の形状をなす。内面側には、周囲が周側部2cによって囲まれる空間部2aが形成されており、その空間部2a内に、打棒3が周側部2cの内面を内側から打撃する配置でハウジング7が設けられる。具体的には、ゴング2の底部2bの内面上にハウジング固定用の固定部が設けられており(
図2参照)、その固定部にハウジング7が固定(ネジ止め)されて前記の配置で設けられる。
【0015】
<打棒>
打棒3は、先端側にゴング2を打撃する打撃部3aを有すると共に、後端側に動力伝達部6が接続される接続部3bを有し、前方に移動した際に、ハウジング7の外部に露出する先端側の打撃部3aがゴング2の周側部2cの内面を打撃する配置で設けられる。
【0016】
<モータ>
モータ4は、駆動軸4aが打棒3の前後方向(長さ方向)に対して略直角になる向きの配置で設けられる。なお、駆動軸4aの回りには、駆動軸4aと共に回転するカム5が設けられている。また、モータ4は、後述するようにハウジング7内に設けられる。このモータ4は、特許文献1で開示されるような技術とは異なり、位置調整が不要であるため、位置調整することなく、ハウジング7内の一定箇所に固定されるものである。
【0017】
<動力伝達部>
・全体の形状、配置
動力伝達部6は、先端側が接続部6aで打棒3に接続されると共に基端側が接続部6bでカム5に接続される、線状の部材からなり、モータ4の回転運動の動力をカム5を介して往復運動の動力に変換して打棒3に伝達し、打棒3を前後方向(長さ方向)に移動させる配置で設けられる。
【0018】
・第1の直線部
そして、動力伝達部6は、基端部6cbがカム5との接続部6bに連続し、モータ4の駆動軸4aに対して略直角の向きで直線状に延びて、先端部6caが打棒3の後端部の周囲側方の位置に至る第1の直線部6cを有する。打棒3の静止状態における前後方向の位置は、この第1の直線部6cの長さLによって決定される(
図1参照)なお、図示の例の場合、第1の直線部6cの長さLは、打棒3における、ハウジング7の周壁7aから外方に突出する部分の長さと略等しいものとしている。
【0019】
直線部分6cは、直線状であるため、その長さLに個体差が生じ難い。すなわち、打棒3の静止状態における前後方向の位置に個体差が生じ難い。
【0020】
したがって、この発明の警報ベル1においては、動力伝達部6が第1の直線部6cのような直線部分を有していることにより、組み立てに際し、打棒3の前後方向の位置の調整を不要にすることができ、組み立てを容易、言い換えると、モータ4のハウジング7内における位置調整が不要となることからモータ4の取付けを容易にすることができる。
【0021】
・第2の直線部、第3の直線部
動力伝達部6は、第1の直線部6cと先端部6caの位置で直交する立面上を直線状に延びる直線部をさらに有しており、そのような直線部を介して打棒3との接続部6aに至る。これにより、打棒3の静止状態における、動力伝達部6の接続部6aが接続される接続部3bの位置は、第1の直線部6cと先端部6caの位置で直交する立面上に位置することになり、打棒3の前後方向の位置は、第1の直線部6cの先端部6caの位置によって決定されることになる、すなわち、前記の通り、第1の直線部6cの長さLによって決定されることになる(
図1参照)。
【0022】
図示の例の場合、動力伝達部6は、そのような直線部として、まずは、基端部6dbが第1の直線部6cの先端部6caと折曲しつつ連続し、第1の直線部6cに対して略直角の向きで直線状に延びる第2の直線部6dを有するものとしている。また、そのような直線部として、さらに、基端部6ebが第2の直線部6dの先端部6daと折曲しつつ連続し、第1の直線部6cと第2の直線部6dの両方に対して略直角の向きで直線状に延び、先端部6eaが打棒3との接続部6aに連続する第3の直線部6eを有するものとしている。
【0023】
・複数の直線部によるバネ性
動力伝達部6は、例えば前記の第1~3の直線部6c、6d、6eのように、異なる向きに折曲して連続する、複数の直線部を有しており、バネ性を有する。すなわち、動力伝達部6は、線バネとして機能する。
【0024】
・各直線部の配置
図示の例の場合、第1の直線部6cと第2の直線部6dは、ハウジング7の底壁7bに沿って延びるものとしており、第3の直線部6eは、ハウジング7の底壁7b側から起立するように延びるものとしている(
図3参照)。
【0025】
・接続部
図示の例の場合、打棒3との接続部6aは、鉤状をなすものとして打棒3の接続部3bに掛け止めされて接続されものとしている。また、カム5との接続部6bは、カム5の周りに巻回されて接続されるものとしている(
図4参照)。
【0026】
<板バネ>
警報ベル1は、動力伝達部6とは別体のものとして、打棒3を前方(ゴング2側)に弾圧する板バネ8をさらに備える(
図1及び3参照)。この板バネ8をさらに備えることによって、前記の通り、組み立てに際し、打棒3の前後方向の位置の調整を不要にすることができるものでありながら、打棒3による打撃力を強いものとすることができる。
【0027】
なお、板バネ8は、図示の例の場合、ハウジング7の底壁7b上に固定(ネジ止め)される固定片部8bと、固定片部8bから底壁7b上に起立するように略直角に折曲する揺動片部8aとからなり、揺動片部8aが打棒3の後端部3cに後方から接触して、打棒3に対して前方への弾発力を与える配置で設けられるものとしている(
図1及び3参照)。また、板バネ8の幅は、打棒3の外径と略同じものとしている。
【0028】
<ハウジング>
・形状、配置
図示の例の場合、ハウジング7は、周方向に平面視Y字状に連続する周壁7aを有するものとしており、全体として平面視Y字状の形状をなすものとしている。なお、ハウジング7は、底壁7bをさらに有しており、その底壁7b側がゴング2の底部2bの内面に固定され、ゴング2内面側の空間部2a内に平面視略中央に位置する配置で設けられている。なお、ハウジング7の裏面側の開口7fは、図示は省略するが、常時は裏蓋により閉じられる。
【0029】
・分岐空間部
図示の例において、ハウジング7の内部7cには、そのケース形状に対応し、中央空間部7caから分岐する、3つの分岐空間部7cb~7cdが形成されている。それら分岐空間部7cb~7cdのうち、分岐空間部7cbの部分の周壁7aを貫通して打棒3が、後端側の動力伝達部6との接続部3bが分岐空間部7cbの内部に位置し、先端側の打撃部3aが分岐空間部7cbの外部に位置する配置で設けられている。
【0030】
そして、打棒3が設けられる分岐空間部7cbは、隣接する分岐空間部7ccと中央空間部7caを介して連続しており、それら空間部7ca、7ccと共に平面視V字状に連続する空間部を形成している。そのV字状に連続する空間部内に、モータ4と動力伝達部6が前記の配置で収納されている。具体的には、モータ4は、本体側が分岐空間部7cc内に位置すると共に、駆動軸4a側が中央空間部7ca内に位置しつつ、駆動軸4aが打棒3の前後方向に対して略直角になる向きの配置で収納されている。また、動力伝達部6は、カム5との接続部6b側が中央空間部7ca内に位置すると共に、駆動軸4aに対して第1の直線部6cが略直角の方向に延びて、第2の直線部6dと第3の直線部6eを介して連続する、打棒3との接続部6a側が分岐空間部7cb内に位置する配置で収納されている。なお、分岐空間部7cbの周壁7aの打棒3が貫通する部分には、打棒3を前後方向に移動可能に支持するカラー7d等の支持部材が設けられている(カラー7dはハウジング7と一体に形成されるものとしてもよい)。
【0031】
なお、このハウジング7は、打棒3、モータ4及び動力伝達部6等を前記の配置で収納することができるものであれば、他の形状をなすものとしてもよい。
【0032】
<構成の変更例>
この発明の警報ベル1においては、例えば、以下のように構成を変更することができる。
【0033】
動力伝達部6における、第1の直線部6cと先端部6caの位置で直交する立面上を直線状に延びる直線部の数については、第2、3の直線部6d、6eのように2つとするのに代えて、1つとしてもよいし、3つ以上としてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1:警報ベル
2:ゴング 2a:空間部 2b:底部 2ba:固定部 2bb:凹溝
2c:周側部 2d:口縁部 2e:スリット
3:打棒 3a:打撃部 3b:接続部 3c:後端部
4:モータ 4a:駆動軸
5:カム
6:動力伝達部 6a:接続部(打棒側) 6b: 接続部(カム側)
6c:第1の直線部 6ca:先端部 6cb:基端部 6d:第2の直線部
6da:先端部 6db:基端部 6e:第3の直線部 6ea:先端部
6eb:基端部
7:ハウジング 7a:周壁 7b:底壁 7c:内部 7ca:中央空間部
7cb~7cd:分岐空間部 7d:カラー 7f:開口
8:板バネ 8a:揺動片部 8b:固定片部
L:長さ(第1の直線部)