(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】ドア枠と開口部枠材の固定構造及び方法
(51)【国際特許分類】
E06B 1/60 20060101AFI20240117BHJP
E06B 1/56 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
E06B1/60
E06B1/56 B
(21)【出願番号】P 2020032370
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【氏名又は名称】畑添 隆人
(72)【発明者】
【氏名】持田 典之
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-28142(JP,A)
【文献】特開平7-317437(JP,A)
【文献】実開昭48-54432(JP,U)
【文献】特公昭49-1095(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/52-1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア枠と開口部枠材の固定構造であって、
前記ドア枠の背面には第1見付片、第2見付片が設けてあり、
前記開口部枠材は第1見付面、第2見付面を備えており、
前記第1見付片の長さ方向の所定部位には、少なくとも1つの切り欠き部が形成されており、
前記切り欠き部の長手方向は前記第1見付片の長さ方向と一致しており、前記第1見付片と前記第1見付面との間には、前記切り欠き部の長手方向の端縁からスペーサが挿入可能となっており、第1見付片と第1見付面は、前記第1見付片と前記第1見付面との間にスペーサが挿入された状態で第1側固定用螺子で固定されており、
前記第2見付片と前記第2見付面は、第2側固定用螺子を用いて固定されている、
ドア枠と開口部枠材の固定構造。
【請求項2】
前記スペーサには、前記第1側固定用螺子の軸部に係止可能な係止溝が形成されており、
前記スペーサは、前記係止溝を前記第1側固定用螺子の軸部に係止した状態で、前記第1見付片と前記第1見付面の間に挟まれている、
請求項1に記載のドア枠と開口部枠材の固定構造。
【請求項3】
前記第2見付片は前記第1見付片に比べて短片であり、
前記第2見付片と前記第2見付面は、連結部材を介して前記第2側固定用螺子で固定されている、
請求項1、2いずれか1項に記載のドア枠と開口部枠材の固定構造。
【請求項4】
ドア枠と開口部枠材の固定構造であって、
前記ドア枠の背面には第1見付片、第2見付片が設けてあり、
前記開口部枠材は第1見付面、第2見付面を備えており、
前記第1見付片と前記第1見付面は、第1側固定用螺子を用いて固定されており、
前記第2見付片と前記第2見付面は、第2側固定用螺子を用いて固定されており、
前記第1見付片には、長さ方向に間隔を存して複数のスペーサ挿入用空間が形成されており、各スペーサ挿入用空間から前記第1見付片と前記第1見付面との間にスペーサが挿入可能となっており、
第1見付片と第1見付面の間には、0個以上のスペーサが挿入されている、
ドア枠と開口部枠材の固定構造。
【請求項5】
前記ドア枠と前記開口部枠材との間に位置して楔挿入部が形成されており、
前記楔挿入部の少なくとも一部は、前記スペーサ挿入用空間に位置して形成されている、
請求項4に記載のドア枠と開口部枠材の固定構造。
【請求項6】
ドア枠を開口部枠材に固定する方法であって、
前記ドア枠の背面には第1見付片、第2見付片が設けてあり、
前記開口部枠材は第1見付面、第2見付面を備えており、
前記第1見付片の長さ方向の所定部位には、少なくとも1つの切り欠き部が形成されており、
前記切り欠き部の長手方向は前記第1見付片の長さ方向と一致しており、前記第1見付片と前記第1見付面との間には、前記切り欠き部の長手方向の端縁からスペーサが挿入可能となっており、
スペーサの挿入が必要な場合には、前記第1見付片と前記第1見付面との間にスペーサを挿入し、前記第1見付片を、前記第1見付面との間に前記スペーサを挟んだ状態で、前記第1見付面に第1側固定用螺子で固定し、スペーサの挿入が必要ない場合には、スペーサを挿入することなく前記第1見付片を前記第1見付面に第1側固定用螺子で固定すること、
前記ドア枠の前記第2見付片を、前記開口部枠材の前記第2見付面に第2側固定用螺子を用いて固定すること、
を含む、固定方法。
【請求項7】
前記スペーサには、前記第1側固定用螺子の軸部に係止可能な係止溝が形成されており、
前記第1見付片と前記第1見付面との間に挿入した前記スペーサの前記係止溝を、前記第1側固定用螺子の軸部に係止させることを含む、
請求項6に記載の固定方法。
【請求項8】
前記第2見付片は前記第1見付片に比べて短片であり、
前記第2見付片と前記第2見付面を、連結部材を介して前記第2側固定用螺子で固定する、
請求項6、7いずれか1項に記載の固定方法。
【請求項9】
ドア枠を開口部枠材に固定する方法であって、
前記ドア枠の背面には第1見付片、第2見付片が設けてあり、
前記開口部枠材は第1見付面、第2見付面を備えており、
前記第1見付片には、長さ方向に間隔を存して複数のスペーサ挿入用空間が形成されており、前記第1見付片を第1側固定用螺子で前記第1見付面に仮固定した状態で、各スペーサ挿入用空間から前記第1見付片と前記第1見付面との間にスペーサが挿入可能となっており、
前記第1見付片を、第1側固定用螺子を用いて前記第1見付面に固定すること、
前記第2見付片を、第2側固定用螺子を用いて前記第2見付面に固定すること、
スペーサの挿入が必要な場合には、前記複数のスペーサ挿入
用空間において1つあるいは複数のスペーサ挿入
用空間を選択し、選択されたスペーサ挿入用空間から前記第1見付片と前記第1見付面との間にスペーサを挿入し、前記第1見付片と前記第1見付面を、これらの間にスペーサを挟んで第1側固定用螺子で固定し、スペーサの挿入が必要ない場合には、スペーサを挿入することなく前記第1見付片と前記第1見付面を第1側固定用螺子で固定すること、
を含む、固定方法。
【請求項10】
ドア枠と開口部枠材とを備えた開口枠構造において、
前記ドア枠の背面には第1見付片、第2見付片が設けてあり、
前記開口部枠材は第1見付面、第2見付面を備えており、
前記第1見付片と前記第1見付面は、第1側固定用螺子を用いて固定されており、
前記第1見付片の長さ方向の所定部位には、少なくとも1つの切り欠き部が形成されており、
前記切り欠き部の長手方向は前記第1見付片の長さ方向と一致しており、前記第1見付片が第1側固定用螺子で前記第1見付面に固定された状態で、前記第1見付片と前記第1見付面の間には、前記切り欠き部の長手方向の端縁からスペーサが挿入可能となっている、
開口枠構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア枠と開口部枠材の固定構造及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドア枠は、現場において、建物躯体側の構造体に固定されることで、ドアによって開閉される開口部を形成する。また、ドア枠は、当該ドア枠の背面に設けた要素(アンカーと称する場合がある)を建物躯体側の構造体に溶接することで固定される場合が多い(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、ドア枠を溶接によって固定するやり方は、火気作業ができない現場で採用することができず、また、溶接作業には熟練の技術が必要となるため、施工技術者の確保も問題となる。したがって、ドア枠を、溶接作業を用いずに、建物躯体側の構造体に固定したいというニーズがある。
【0004】
特許文献2には、溶接作業を伴うことなく、鋼板製の枠体を建物駆体の開口部に装着する枠材の固定構造が開示されている。特許文献3、4には、ライナないしスペーサを用いて、建具枠と開口枠との隙間を調整する手段が開示されている。
【0005】
ここで、例えば、ドア枠が取り付けられる躯体側の構造体が前後方向に傾いているような場合には、当該構造体に取り付けたドア枠も前後方向に傾いてしまうおそれがあり、ドア枠の姿勢調整(傾きないし倒れを調整して垂直姿勢とする)を行って固定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-240305
【文献】特開2014-218839
【文献】実公昭63-29826
【文献】実用新案登録第2565741号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ドア枠を開口部枠材に固定するにあたり、溶接作業を伴わない固定構造及び方法であって、ドア枠の前後方向の倒れの調整が可能なドア枠と開口部枠材の固定構造及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ドア枠と開口部枠材の固定構造に係り、
前記ドア枠の背面には第1見付片、第2見付片が設けてあり、
前記開口部枠材は第1見付面、第2見付面を備えており、
前記第1見付片の長さ方向の所定部位には、少なくとも1つの切り欠き部が形成されており、前記第1見付片と前記第1見付面との間には、前記切り欠き部の長手方向の端縁からスペーサが挿入可能となっており、第1見付片と第1見付面は、前記第1見付片と前記第1見付面との間にスペーサが挿入された状態で第1側固定用螺子で固定されており、
前記第2見付片と前記第2見付面は、第2側固定用螺子を用いて固定されている。
【0009】
1つの態様では、前記ドア枠は、上枠と左右の縦枠を備えており、左右の縦枠および/あるいは上枠に切り欠き部が形成されており、前記左右の縦枠の第1見付片に形成された切り欠き部は縦長の切り欠き部であり、前記上枠の第1見付片に形成された切り欠き部は横長の切り欠き部である。
1つの態様では、前記切り欠き部は、前記ドア枠の長さ方向に離間して第1端縁及び第2端縁を備えており、前記切り欠き部の第1端縁あるいは/および第2端縁から、前記第1見付片と前記第1見付面との間にスペーサが挿入可能となっており、前記第1見付片と前記第1見付面は、第1端縁あるいは/および第2端縁から、前記第1見付片と前記第1見付面との間にスペーサが挿入された状態で第1側固定用螺子で固定されている。
後述する実施形態では、上端縁250、下端縁251のいずれか一方が第1端縁であり、他方が第2端縁である。また、第1端縁及び第2端縁を備えた切り欠き部は、上枠に形成されていてもよい。
1つの態様では、前記上枠の第1見付片の左右方向の両端部位に切り欠き部を形成することで、前記第1見付片の左右端縁(前記切り欠き部の端縁)は、前記上枠の残りの部分の左右端縁よりも内側に位置しており、前記左右端縁から、前記第1見付片と前記第1見付面との間にスペーサが挿入可能となっており、前記上枠の第1見付片と前記第1見付面は、前記上枠の第1見付片の左端縁あるいは/および右端縁から、前記第1見付片と前記第1見付面との間に少なくとも1枚のスペーサが挿入された状態で第1側固定用螺子で固定されている。
【0010】
1つの態様では、前記スペーサには、前記第1側固定用螺子の軸部に係止可能な係止溝が形成されており、
前記スペーサは、前記係止溝を前記第1側固定用螺子の軸部に係止した状態で、前記第1見付片と前記第1見付面の間に挟まれている。
【0011】
1つの態様では、前記第2見付片は前記第1見付片に比べて短片であり、
前記第2見付片と前記第2見付面は、連結部材を介して前記第2側固定用螺子で固定されている。
【0012】
本発明は、ドア枠と開口部枠材の固定構造に係り、
前記ドア枠の背面には第1見付片、第2見付片が設けてあり、
前記開口部枠材は第1見付面、第2見付面を備えており、
前記第1見付片と前記第1見付面は、螺子を用いて固定されており、
前記第2見付片と前記第2見付面は、螺子を用いて固定されており、
前記第1見付片には、長さ方向に間隔を存して複数のスペーサ挿入用空間が形成されており、各スペーサ挿入用空間から前記第1見付片と前記第1見付面との間にスペーサが挿入可能となっており、
第1見付片と第1見付面の間には、0個以上のスペーサが挿入されている。
1つの態様では、第1見付片と第1見付面の間には、選択された1つあるいは複数のスペーサ挿入用空間から1つあるいは複数のスペーサが挿入されており、前記第1見付片と前記第1見付面は、これらの間にスペーサを挟んだ状態で、第1側固定用螺子を用いて固定されている。
1つの態様では、第1見付片と第1見付面の間には、スペーサが挿入されておらず、前記第1見付片と前記第1見付面は、スペーサを介さずに、第1側固定用螺子を用いて固定されている(第1見付片と第1見付面の間に0個のスペーサが挿入されている場合)。
【0013】
1つの態様では、前記ドア枠と前記開口部枠材との間に位置して楔挿入部が形成されており、
前記楔挿入部の少なくとも一部は、前記スペーサ挿入用空間に位置して形成されている。
1つの態様では、前記楔挿入部は、前記ドア枠の見込方向に貫通している。
【0014】
本発明は、ドア枠を開口部枠材に固定する方法に係り、
前記ドア枠の背面には第1見付片、第2見付片が設けてあり、
前記開口部枠材は第1見付面、第2見付面を備えており、
前記第1見付片の長さ方向の所定部位には、少なくとも1つの切り欠き部が形成されており、前記第1見付片と前記第1見付面との間には、前記切り欠き部の長手方向の端縁からスペーサが挿入可能となっており、
スペーサの挿入が必要な場合には、前記第1見付片と前記第1見付面との間にスペーサを挿入し、前記第1見付片を、前記第1見付面との間に前記スペーサを挟んだ状態で、前記第1見付面に第1側固定用螺子で固定し、スペーサの挿入が必要ない場合には、スペーサを挿入することなく前記第1見付片を前記第1見付面に第1側固定用螺子で固定すること、
前記ドア枠の前記第2見付片を、前記開口部枠材の前記第2見付面に第2側固定用螺子を用いて固定すること、
を含む。
1つの態様では、スペーサの挿入の要否を判定すること、を含み、スペーサの挿入が必要だと判定された場合には、前記第1見付片と前記第1見付面との間にスペーサを挿入し、前記第1見付片を、前記第1見付面との間に前記スペーサを挟んだ状態で、前記第1見付面に第1側固定用螺子で固定し、スペーサの挿入が必要ないと判定された場合には、スペーサを挿入することなく前記第1見付片を前記第1見付面に第1側固定用螺子で固定する。
【0015】
1つの態様では、前記ドア枠は、上枠と左右の縦枠を備えており、左右の縦枠および/あるいは上枠に切り欠き部が形成されており、前記左右の縦枠の第1見付片に形成された切り欠き部は縦長の切り欠き部であり、前記上枠の第1見付片に形成された切り欠き部は横長の切り欠き部である。
1つの態様では、前記切り欠き部は、前記ドア枠の長さ方向に離間して第1端縁及び第2端縁を備えており、前記切り欠き部の第1端縁あるいは/および第2端縁から、前記第1見付片と前記第1見付面との間にスペーサが挿入可能となっており、スペーサを、第1端縁あるいは/および第2端縁から、前記第1見付片と前記第1見付面との間に挿入し、前記第1見付片を、前記第1見付面との間に前記スペーサを挟んだ状態で、前記第1見付面に第1側固定用螺子で固定することを含む。
1つの態様では、前記上枠の第1見付片の左右方向の両端部位に切り欠き部を形成することで、前記第1見付片の左右端縁(前記切り欠き部の端縁)は、前記上枠の残りの部分の左右端縁よりも内側に位置しており、前記左右端縁から、前記第1見付片と前記第1見付面との間にスペーサが挿入可能となっており、スペーサを、前記上枠の第1見付片の左端縁あるいは/および右端縁から、前記第1見付片と前記第1見付面との間に挿入し、前記第1見付片を、前記第1見付面との間に前記スペーサを挟んだ状態で、前記第1見付面に第1側固定用螺子で固定することを含む。
【0016】
1つの態様では、前記スペーサには、前記第1側固定用螺子の軸部に係止可能な係止溝が形成されており、
前記第1見付片と前記第1見付面との間に挿入した前記スペーサの前記係止溝を、前記第1側固定用螺子の軸部に係止させることを含む。
【0017】
1つの態様では、前記第2見付片は前記第1見付片に比べて短片であり、
前記第2見付片と前記第2見付面を、連結部材を介して前記第2側固定用螺子で固定する。
【0018】
本発明は、ドア枠を開口部枠材に固定する方法に係り、
前記ドア枠の背面には第1見付片、第2見付片が設けてあり、
前記開口部枠材は第1見付面、第2見付面を備えており、
前記第1見付片には、長さ方向に間隔を存して複数のスペーサ挿入用空間が形成されており、前記第1見付片を第1側固定用螺子で前記第1見付面に仮固定した状態で、各スペーサ挿入用空間から前記第1見付片と前記第1見付面との間にスペーサが挿入可能となっており、
前記第1見付片を、第1側固定用螺子を用いて前記第1見付面に固定すること、
前記第2見付片を、第2側固定用螺子を用いて前記第2見付面に固定すること、
スペーサの挿入が必要な場合には、前記複数のスペーサ挿入空間において1つあるいは複数のスペーサ挿入空間を選択し、選択されたスペーサ挿入用空間から前記第1見付片と前記第1見付面との間にスペーサを挿入し、前記第1見付片と前記第1見付面を、これらの間にスペーサを挟んで第1側固定用螺子で固定し、スペーサの挿入が必要ない場合には、スペーサを挿入することなく前記第1見付片と前記第1見付面を第1側固定用螺子で固定すること、
を含む。
1つの態様では、スペーサの挿入の要否を判定すること、を含み、スペーサの挿入が必要だと判定された場合には、前記第1見付片と前記第1見付面との間にスペーサを挿入し、前記第1見付片を、前記第1見付面との間に前記スペーサを挟んだ状態で、前記第1見付面に第1螺子で固定し、スペーサの挿入が必要ないと判定された場合には、スペーサを挿入することなく前記第1見付片を前記第1見付面に第1側固定用螺子で固定する。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、ドア枠を開口部枠材に固定するにあたり、ドア枠の第1見付片の所定部位と開口部枠材の第1見付面との間にスペーサを設け、ドア枠の第1見付片の所定部位と開口部枠材の第1見付面との間隔を調整することで、ドア枠の前後方向の姿勢(倒れ)を調整することができる。
本発明において、ドア枠の第1見付片には、スペーサ挿入用空間ないし切り欠き部が形成されており、開口部枠材の第1見付面にドア枠の第1見付片を固定(仮固定)した状態において、ドア枠の周辺にスペーサを挿入するスペースが無い納まりであっても、スペーサを挿入して前後方向の位置調整が可能である。
本発明は、ドア枠の第1見付片の所定部位と開口部枠材の第1見付面との間にスペーサを設ける必要がある場合(例えば、ドア枠の前後方向の位置調整が必要な場合)、ドア枠の第1見付片の所定部位と開口部枠材の第1見付面との間にスペーサを設ける必要がない場合(例えば、ドア枠の前後方向の位置調整が必要ない場合)のいずれにも対応することができる。
【0020】
ドア枠の第1見付片と開口部枠材の第1見付面を螺子で固定することに加えて、ドア枠の第2見付片と開口部枠材の第2見付面を螺子で固定するようにしたので、
ドア枠の固定作業において溶接を伴うことがなく、火気作業が出来ない現場にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】建物開口部に取り付けられたドア枠を第1側から見た正面図である(仕上げの壁パネルは省略されている)。
【
図2】建物開口部に取り付けられたドア枠を第2側から見た正面図である(仕上げの壁パネルは省略されている)。
【
図3】建物開口部に取り付けられたドア枠を第1側から見た正面図の部分拡大図であって、スペーサを設けた状態を示している。
【
図4】建物開口部に取り付けられたドア枠の横断面図である。
【
図5】(A)~(C)は、開口部枠材に対するドア枠(縦枠)の固定の工程を示す図である。
【
図6】
図5(A)~(C)の工程によって固定されたドア枠(縦枠)を示す図である。
【
図7】本実施形態の固定構造の構成要素であるスペーサを示す図である。
【
図10】ドア枠の見付方向の位置調整を説明する正面図である。
【
図11】ドア枠の見付方向の位置調整を説明する横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、建物開口部に取り付けられたドア枠を第1側から見た正面図、
図2は、建物開口部に取り付けられたドア枠を第2側から見た正面図であって、仕上げの壁パネルW(
図4参照)は省略されており、いわば、壁パネルWが取り付けられる前の状態を示している。本実施形態に係るドア枠の固定構造ないし固定方法において、ドア枠の前後方向の位置調整を行うスペーサ5(
図3、
図7等参照)は主要要素の1つであるが、
図1において、スペーサ5は図示されていない点(スペーサ5を設ける前の状態、あるいは、前後方向の位置調整が必要無い場合として捉えることができる)に留意されたい。
【0023】
本実施形態に係るドア枠は、上枠1と、左右の縦枠2と、からなる三方枠であり、三方枠であるドア枠と床面FLで囲まれた空間が建物開口部となっており、図示しないドアによって当該建物開口部が開閉されるようになっている。図示の態様のドア枠は、開き戸用であるが、ドアの種類は限定されない。
【0024】
三方枠であるドア枠は、工場において、左右の金属製(例えば、スチール製)の縦枠2の上端を金属製(例えば、スチール製)の上枠1の長さ方向両端にそれぞれ固定(溶接、螺子止め等)することで組み立てられる。すなわち、ドア枠は工場で組み立てられて、現場に搬入され、躯体側の構造体に固定される。本実施形態では、躯体側の構造体は、開口部枠材3と、開口部枠材3が固定されたスタッド4、ランナー4´から構成されており、ドア枠は開口部枠材3に取り付けられる。なお、三方枠のドア枠は例示であって、ドア枠は四周枠であってもよい。
【0025】
ドア枠の構成について、主として縦枠2の構成に基づいて説明する。左右の縦枠2は、高さ方向(垂直方向)に延びる長尺部材であって、
図4に示すように、第1見付面20と、第2見付面21と、第1見付面20と第2見付面21の内側端を接続する内側見込部22と、第1見付面20の外側端から見込方向に延びる第1外側見込辺23と、第2見付面21の外側端から見込方向に延びる第2外側見込辺24と、第1外側見込辺23の先端から外側に延びる第1外側見付片25と、第2外側見込辺24の先端から外側に延びる第2外側見付片26と、からなる。
【0026】
縦枠2において、第1外側見込辺23と第2外側見込辺24は離間しており、第1外側見込辺23と第2外側見込辺24の間には、縦枠2の高さ方向に間隔を存して複数の接続要素27が固定(溶接、螺子止め等)されており、縦枠2の強度を向上させている。内側見込部22は、第1見付面20の内側端から見込方向に延びる第1内側見込面220と、第2見付面21の内側端から見込方向に延びる第2内側見込面221と、第1内側見込面220と第2内側見込面221の間に位置した凸状の中央見込部222と、からなる。縦枠2(特に、内側見込部22)の断面形状は限定されない。一方(戸尻側)の縦枠2の第1内側見込面220には、高さ方向に間隔を存して複数のヒンジ要素Hが設けてある。
【0027】
第1外側見付片25と第2外側見付片26は、縦枠2の背面に位置して離間対向して延びており、本実施形態では、第1外側見付片25が長片、第2外側見付片26が短片となっている。第1外側見付片25と第2外側見付片26は、縦枠2を躯体側の構造体に取り付けるための取付片を構成しており、縦枠2は、第1外側見付片25と第2外側見付片26を介して、高さ方向に延びる開口部枠材3に固定される。
【0028】
上枠1は、開口幅方向(水平方向)に延びる長尺部材であって、本実施形態では、縦枠2と同一の断面形状を備えている。すなわち、縦枠2を、内側見込部22が下面となり、第1外側見付片25と第2外側見付片26が上側に位置して離間対向して上方に延びるように向けた時の姿勢にしたがって上枠1を説明することができる。
【0029】
より具体的には、上枠1は、第1見付面10と、第2見付面11と、第1見付面10と第2見付面11の内側端(下端)を接続する内側見込部(下面部)12と、第1見付面10の外側端(上端)から見込方向に延びる第1外側(上側)見込辺と、第2見付面11の外側端(上端)から見込方向に延びる第2外側(上側)見込辺と、第1外側見込辺の先端から外側(上方)に延びる第1外側(上側)見付片15と、第2外側見込辺の先端から外側(上方)に延びる第2外側(上側)見付片16と、からなる。なお、上枠1の断面形状は、縦枠2と同様に限定されない。
【0030】
第1外側見付片15と第2外側見付片16は、上枠1の背面(上方)に位置して離間対向して延びており(
図1、
図2、
図8、
図9参照)、本実施形態では、第1外側見付片15が長片、第2外側見付片16が短片となっている。第1外側見付片15と第2外側見付片16は、上枠1の取付片を構成しており、上枠1は、第1外側見付片15と第2外側見付片16を介して、開口幅方向に延びる開口部枠材3に固定される。
【0031】
本実施形態に係るドア枠の縦枠2の第1外側見付片25は、高さ方向に間隔を存して複数箇所において切り欠かれている。より具体的には、
図1に示すように、左右の縦枠2の第1外側見付片25は、それぞれ、高さ方向の上方部位、下方部位、中間部位に3つの切り欠き部C1を備えている。縦枠2に形成された切り欠き部C1は縦長の切り欠き部である。これらの切り欠き部C1は、スペーサ挿入用空間として機能する。なお、本明細書において、「切り欠き部」という文言は、要素の形状ないし構成を規定するものであり、必ずしも、要素の一部を切り欠いて得られた形状であるものに限定されない。
【0032】
図1、
図2に示すように、左右の縦枠2の第2外側見付片26は、対向する第1外側見付片25の上方部位、下方部位の切り欠き部C1に対応して切り欠き部C2が形成されており、縦枠2の第1外側見付片25及び第2外側見付片26を見込方向に連通している。この連通空間は、楔挿入部K´として機能する。なお、切り欠き部C2は任意要素であり、切り欠き部C2が設けてなくてもよい。楔の挿入の態様によっては、切り欠き部C1のみで楔挿入部を形成し得る。
【0033】
上枠1の第1外側見付片15の長さ方向の左右両端は、それぞれ切り欠かれて切り欠き部C3が形成されており、第1外側見付片15の長さ方向の左右端縁150、151は、上枠1の他の部分の左右端縁よりも内側に位置している。上枠1に形成された切り欠き部C3は横長の切り欠き部である。これらの切り欠き部C3は、スペーサ挿入用空間として機能する。なお、縦枠2と同様に、上枠1の第1外側見付片15の長さ方向両端部を残すように切り欠き部を形成してもよい。
【0034】
本実施形態に係る躯体側の構造体は、ドア枠が固定される開口部枠材(補強枠材と称される場合もある)3と、開口部枠材3が固定されている下地枠材と、から構成されている。下地枠材は、垂直方向に延びる左右のスタッド4と、左右のスタッド4の高さ方向の上側の所定部位間を水平に連結するランナー4´と、左右のスタッド4の下端部位を水平に連結するランナー(図示せず)と、を含む。典型的には、開口部枠材3、スタッド4、ランナーは金属製(例えば、スチール製)である。
【0035】
スタッド4は、第1見付辺40、第2見付辺41、見込辺42とから断面視コ字形状を備え(
図5(A)参照)、高さ方向に延びる長尺部材であり、見込辺42を開口部側に位置させた垂直姿勢で設けてある。ランナー4´は、スタッド4と実質的に同じ断面形状を備え、水平方向に延びる長尺部材であり、見込辺を開口部側(下側)に位置させた向きで設けてある。
【0036】
開口部枠材3は、第1見付辺30、第2見付辺31、見込辺32とから断面視コ字形状を備えた(
図5(A)参照)長尺部材である。開口部枠材3は、見込辺32を開口部側に位置させた垂直姿勢でスタッド4に固定され、見込辺32を開口部側(下側)に位置させた水平姿勢でランナー4´に固定される。より具体的には、開口部枠材3の第1見付辺30、第2見付辺31の先端を内側に折り曲げることで折り曲げ片300、310が形成されており、開口部枠材3は、折り曲げ片300、310をスタッド4の見込辺42、ランナー4´の見込辺に当接させて固定されている。開口部枠材3の固定手段としては溶接が例示される。開口部枠材3を取り付ける段階では、火気作業が問題となるような可燃物が現場に存在しないため、溶接を用いることによる不具合は生じない。なお、開口部枠材3を螺子を用いてスタッド4、ランナー4´に固定してもよい。
【0037】
図5等に示すように、開口部枠材3の見込寸法は、スタッド4の見込寸法よりも僅かに小さく、開口部枠材3をスタッド4に固定した状態において、開口部枠材3の第1見付辺30とスタッド4の第1見付辺40、開口部枠材3の第2見付辺31とスタッド4の第2見付辺41は、それぞれ段差状となっている。
【0038】
このように、本実施形態では、建物躯体側の構造体は、開口部枠材3、スタッド4、ランナー4´から構成されており、ドア枠(上枠1と左右の縦枠2からなる三方枠)は、躯体側の構造体(開口部枠材3)に対して位置調整を行って位置決めした上で固定される。この位置調整には、開口部枠材3に対するドア枠の見付方向の位置調整が含まれる。ドア枠の見付方向の位置調整は、主として、
図4、
図10、
図11におけるX方向、Z方向の位置調整である。
【0039】
図10、
図11を参照しつつ、ドア枠の見付方向の位置調整について説明する。
図10、
図11は専らドア枠の見付方向の位置調整を説明するための図であり、
図10、
図11に示すドア枠(上枠1´、左右の縦枠2´)と開口部枠材3との固定構造は、本実施形態に係るドア枠の固定構造と異なる点に留意されたい。躯体側の構造体である開口部枠材3によって囲まれる縦長方形状の空間の寸法は、ドア枠(上枠1´、左右の縦枠2´)の外形寸法よりも少し大きく、ドア枠の背面側の見込面(第1外側見込辺23、第2外側見込辺24)と開口部枠材3の見込辺32とは隙間を介して離間対向するようになっている。この隙間の寸法(X方向の寸法、Z方向)を調整することによって、開口部枠材3に対するドア枠の見付方向の位置調整を行う。なお、開口部枠材3に対するドア枠の見込方向(Y方向)のおおまかな位置調整を行ってもよい。
【0040】
具体的な調整手法としては、いわゆる楔Kを用いる手法を例示することができる。断面視直角三角形の楔Kを第1側及び第2側から見込方向に上記隙間に差し込み、2つの楔Kを傾斜面同士が重なるように組み合わせて(楔セット)、傾斜面の重なりの程度によって、楔セットの厚さが可変となっており、楔セットの厚さによってドア枠と開口部枠材との隙間を決定する。図示の楔Kは例示であって、楔の形状は断面視直角三角形に限定されず、また、隙間に挿入される楔の個数も限定されず、1個でも3個以上であってもよい。
【0041】
図10に示す例では、上枠1´の左右両端部位、左右の縦枠2´の上方部位及び下方部位、左右の縦枠2´の下端に楔セットを設けることで、ドア枠の見込方向の位置調整を行いつつ、ドア枠の位置(X方向の位置、Z方向の位置)を仮固定する。複数の楔セットを用いて仮固定されたドア枠を開口部枠材3に固定した後で、楔Kを取り外す。
【0042】
本実施形態においても、上枠1の左右両端部位、左右の縦枠2の上方部位及び下方部位に位置して、楔を挿入する楔挿入部K´が形成されており(
図1~
図3参照)、楔を用いてドア枠の見付方向の位置調整を行うことができる。より具体的には、左右の縦枠2の第1外側見付片25及び第2外側見付片26の上方部位、下方部位を見込方向に貫通する上方部位の切り欠き部C1、C2、下方部位の切り欠き部C1、C2が楔挿入部を形成している。また、上枠1の左右端部の外側かつ左右の縦枠2の上端部の上側に位置して楔挿入部K´が形成されている。
【0043】
ここで、ドア枠の位置調整は、見付方向の位置調整に留まらない。例えば、ドア枠が取り付けられる躯体側の構造体である開口部枠材3は必ずしも厳密に垂直姿勢であるとは限らない。例えば、開口部枠材3が前後方向(開口部の出入方向、すなわちY方向)に僅かに傾いているような場合(
図8、
図9参照)に、開口部枠材3に取り付けたドア枠も前後方向に傾いてしまうおそれがある。本実施形態では、必要時に、ドア枠の姿勢調整(傾きないし倒れを調整して垂直姿勢とする)を可能とするドア枠と開口部枠材の固定構造を提供する。
【0044】
本実施形態に係るドア枠と開口部枠材3の固定構造及び方法について、縦枠2と開口部枠材3の固定構造及び方法に基づいて説明する。上枠1と左右の縦枠2からなる三方枠が工場で組み立てられ、現場に搬入される。現場における躯体側の構造体は、左側のスタッド4と右側のスタッド4間を連結するランナー4´からなる下地枠と、下地枠に固定された三方枠状の開口部枠材3と、からなる。ドア枠は、開口部枠材3に対して取り付けられる。
【0045】
ドア枠の縦枠2の背面には、第1外側見付片25と第2外側見付片26が離間対向して延びている。第1外側見付片25は、第2外側見付片26に対して長尺である。すなわち、第1外側見付片25は長片、第2外側見付片26は短片である。ドア枠の第1外側見付片25の内面と第2外側見付片26の内面間の寸法は、開口部枠材3の見込寸法(第1見付辺30の外面と第2見付辺31の外面間の寸法)よりも僅かに小さい。
【0046】
本実施形態では、縦枠2の第2外側見付片26を第1外側見付片25に比べて短尺としたことによって、第2外側見付片26が邪魔となることなく、第1外側見付片25を正面から開口部枠材3の第1見付辺30に対向させて、螺子S1で固定することが可能となっている(
図5(A)、(B))。
図5(B)に示すように、螺子S1で第1外側見付片25を第1見付辺30に固定した状態において、縦枠2の第2外側見付片26の先端は、開口部枠材3(第2見付辺31と見込辺32からなる角部)から離間している。
【0047】
1つの態様では、螺子S1を締め込んで、第1外側見付片25を第1見付辺30に当接させた時(スペーサ5を設けない場合)に、縦枠2の第2外側見付片26の外面と開口部枠材3の第2見付辺31の外面が略面一となるように設計されている。よって、縦枠2の高さ方向において、前後方向(Y方向)の位置調整が不要な箇所においては、面一である第2見付辺31と第2外側見付片26の外面に跨るように金属板からなる連結部材6を当接させ、螺子S2で連結部材6と第2見付辺31を連結し、螺子S3で連結部材6と第2外側見付片26を連結する。
図5(C)では、第1外側見付片25を第1見付辺30の間にスペーサ5を挿入した態様を示している点に留意されたい。
【0048】
開口部枠材3に対する縦枠2の見込方向(Y方向)の位置調整について説明する。第1外側見付片25を螺子S1によって第1見付辺30に固定する際に、見込方向(Y方向)の位置調整が必要な場合には、第1外側見付片25と第1見付辺30との間にスペーサ5を挿入することで、縦枠2の見込方向ないし前後方向の位置調整を行う。スペーサ5の挿入は、螺子S1で第1外側見付片25を第1見付辺30に固定(仮固定)した状態で行われる(
図5(B)参照)。
図5(B)に示すように、螺子S1で第1外側見付片25を第1見付辺30に固定(仮固定)した状態では、第1外側見付片25の先端の外側に隣接してスタッド4が位置して段差部Dが形成されており(スペーサの挿入作業のためのスペースが無い)、側方からスペーサ5を挿入することができない点に留意されたい。
【0049】
図7に示すように、スペーサ5は、所定厚みの長尺状の金属製板片であり、長方形状の板状部50の一方の長辺の長手方向の一端側には短手方向に延びる第1係止溝51が形成されており、長手方向の他端側の短辺には長手方向に延びる第2係止溝52が形成されている。溝の方向が異なる第1係止溝51、第2係止溝52を設けることで、一種類のスペーサ5を用意することで、スペーサ5の挿入方向(垂直方向、水平方向)、挿入姿勢(垂直姿勢、水平姿勢)に応じて第1係止溝51ないし第2係止溝52を選択して、螺子S1の軸部に係止させることができる。図示の態様では、スペーサ5の長手方向の寸法は、切り欠き部C1の高さ寸法よりも小さい。
図7に示すスペーサ5は例示であって、スペーサ5の形状は図示の態様に限定されない。縦枠2の前後方向の位置調整において、スペーサ5を重ねて設けてもよく、あるいは、厚さの異なる複数種類のスペーサを用意してもよい。
【0050】
図1、
図3に示すように、縦枠2の第1外側見付片25を開口部枠材3の第1見付辺30に固定する螺子S1の一部は、第1外側見付片25に形成された切り欠き部C1の上端縁250、下端縁251の近傍に設けられる。このような螺子S1をスペーサ係止用螺子と呼ぶことにする。
図3に示すように、切り欠き部C1の上端縁250の上方、下端縁251の下方にそれぞれ位置してスペーサ係止用螺子S1が設けてある。
図3から明らかなように、スペーサ係止用螺子S1と上端縁250との垂直方向の距離、スペーサ係止用螺子S1と下端縁251との垂直方向の距離は、スペーサ5の長手寸法よりも短く、図示の態様では、スペーサ5の長手寸法の略半分の距離である。
【0051】
ドア枠を開口部枠材3に固定するにあたり、縦枠2の前後方向の位置調整が必要な場合には、切り欠き部C1の1つあるいは複数を選択し、上端縁250、あるいは/および、下端縁251から、第1外側見付片25の長さ方向(高さ方向)にスペーサ5を差し込み、スペーサ5をスペーサ係止用螺子S1の軸部に係止させた状態でスペーサ係止用螺子S1を締め込むことで、スペーサ5を挟んだ状態で第1外側見付片25を第1見付辺30に固定する(
図5(C))。スペーサ5を切り欠き部C1の上端縁250から上方に向かって挿入する場合には、スペーサ5の第1係止溝51をスペーサ係止用螺子S1に係止させるように挿入し、スペーサ5を切り欠き部C1の下端縁251から下方に向かって挿入する場合には、スペーサ5の第1係止溝51あるいは第2係止溝52をスペーサ係止用螺子S1に係止させるように挿入する。
【0052】
図3に示す態様では、スペーサ5を切り欠き部C1の上端縁250から第1外側見付片25と第1見付辺30の隙間に差し入れ、第1係止溝51をスペーサ係止用螺子S1の軸部に係止させた垂直姿勢で挿入されている。スペーサ5は、切り欠き部C1の上端縁250を跨ぐように、第1外側見付片25と第1見付辺30の間に挿入されており、第1部分(上側半部)5Aが第1外側見付片25と第1見付辺30の間に位置し、第2部分(下側半部)5Bが第1見付辺30に当接している。なお、スペーサ5の第2部分5Bを螺子で第1見付辺30に固定してもよい。例えば、第1部分5Aをスペーサ係止用螺子S1の軸部に係止せずに、第1部分5Aを第1見付辺30と第1外側見付片25の間に挟み込んだ状態とし、第2部分5Bを螺子で第1見付辺30に固定してもよい。
【0053】
第1外側見付片25と第1見付辺30の間にスペーサ5を挿入することで、第1外側見付片25が手前側(第1側)へ押し出されて、縦枠2が手前側(第1側)へ移動する。この時、縦枠2の第2外側見付片26の先端は、開口部枠材3(第2見付辺31と見込辺32からなる角部)から離間しているので、第2外側見付片26が開口部枠材3に干渉することがない。
【0054】
縦枠2が第1側に移動することで、開口部枠材3の第2見付辺31の外面と、縦枠2の第2外側見付片26の外面との間に段差が生じる。
図5(C)、
図6に示す態様では、連結部材6を、開口部枠材3の第2見付辺31の外面に当接させて螺子S2で固定する一方、連結部材6と縦枠2の第2外側見付片26との間にスペーサ7を設けることで段差を無くして、螺子S3で連結部材6とスペーサ7と第2外側見付片26を連結している。あるいは、スペーサ7を挿入せずに、連結部材6と第2外側見付片26を螺子S3で直接固定してもよい。金属板からなる連結部材6は弾性を備えているので、螺子S3を締め込むことで連結部材6が変形して第2外側見付片26に当接する。
【0055】
開口部枠材3に対する縦枠2の固定構造及び固定方法について説明したが、開口部枠材3に対する上枠1の固定構造も基本的には同じ構造を備えており(スペーサの挿入空間及び挿入方向が異なる)、縦枠2の第1外側見付片25、第2外側見付片26を、上枠1の第1外側見付片15、第2外側見付片16に置き換えることで、上記固定構造及び固定方法の記載を援用することができる。
【0056】
本実施形態では、上枠1の第1外側見付片15の長さ方向の左右両端は、それぞれ切り欠かれて切り欠き部C3が形成されており、第1外側見付片15の長さ方向の左右端縁150、151を、上枠1の他の部分の左右端縁よりも内側に位置させることで、スペーサ5の挿入用空間を形成している。
図1に示すように、上枠1の第1外側見付片15を開口部枠材3の第1見付辺30に固定する螺子S1の一部は、第1外側見付片15の左右端縁150、151の近傍に設けられる。
【0057】
ドア枠を開口部枠材3に固定するにあたり、上枠1の前後方向の位置調整が必要な場合には、例えば、左右端縁150、151のそれぞれから、第1外側見付片15の長さ方向(左右方向)にスペーサ5を差し込み、スペーサ5の第1係止溝51あるいは第2係止溝52をスペーサ係止用螺子S1の軸部に係止させた状態でスペーサ係止用螺子S1を締め込むことで、スペーサ5を挟んだ状態で第1外側見付片15を第1見付辺30に固定する(
図8参照)。なお、
図8の態様では、スペーサ5の第2係止溝52をスペーサ係止用螺子S1の軸部に係止させている。
【0058】
なお、縦枠2と同様に、上枠1の第1外側見付片15の長さ方向両端部を残すように切り欠き部を形成し、切り欠き部の長さ方向端部(左右端縁)から左右方向にスペーサ5を挿入するようにしてもよい。
【0059】
図8、
図9を参照しつつ、ドア枠の前後方向の姿勢調整、すなわち、傾きないし倒れを調整して垂直姿勢とする調整、について説明する。
図8、
図9は、開口部枠材3が前後方向(Y方向)に傾いている場合を想定している。仮に、ドア枠を開口部枠材3に沿って取り付けるとすると、ドア枠も前後方向に倒れた状態で固定されることになる。具体的には、
図8では、開口部枠材3は、上方に向かうにしたがって、第1側から第2側に傾いており、
図9では、開口部枠材3は、上方に向かうにしたがって、第2側から第1側に傾いている。説明の便宜上、傾きは誇張されている点に留意されたい。本実施形態では、ドア枠の縦枠2の第1外側見付片25及び上枠1の第1外側見付片15に形成された複数の切り欠き部C1、C3から所定の位置の切り欠き部C1、C3を選択してスペーサ5を挿入することで、ドア枠を前後方向の姿勢を調整するようにしている。なお、開口部枠材3が前後方向(Y方向)に実質的に垂直に精度良く取り付けられている場合には、スペーサ5を挿入する必要は無い。
【0060】
図8の例では、ドア枠の上方部位にスペーサ5を挿入して、ドア枠の上方部位を第1側に押し出すことで、ドア枠を垂直姿勢とすることができる。縦枠2の第1外側見付片25の上方部位、中間部位、下方部位に形成された切り欠き部C1において、上方部位の切り欠き部C1、中間部位の切り欠き部C1を選択して、上端縁250からスペーサ5を挿入して、スペーサ係止用螺子S1の軸部に係止させた状態で縦枠2を開口部枠材3に固定している。また、上枠1の左端縁150からスペーサ5を挿入して、スペーサ係止用螺子S1の軸部に係止させた状態で上枠1を開口部枠材3に固定している。
図8では、左側部位のみを示すが、他方の縦枠2の第1外側見付片25、上枠1の第1外側見付片15の右端側にも同様にスペーサ5が設けられる。
【0061】
図9の例では、ドア枠の上方部位にスペーサ5を挿入して、ドア枠の下方部位を第1側に押し出すことで、ドア枠を垂直姿勢とすることができる。縦枠2の第1外側見付片25の上方部位、中間部位、下方部位に形成された切り欠き部C1において、中間部位の切り欠き部C1、下方部位の切り欠き部C1を選択して、上端縁250からスペーサ5を挿入して、スペーサ係止用螺子S1の軸部に係止させた状態で縦枠2を開口部枠材3に固定している。上枠1には、スペーサ5は設けられていない。
【符号の説明】
【0062】
1 上枠
10 第1見付面
15 第1外側見付片(ドア枠の背面の第1見付片)
150 左端縁(長手方向の端縁)
151 右端縁(長手方向の端縁)
16 第2外側見付片(ドア枠の背面の第2見付片)
2 縦枠
20 第1見付面
21 第2見付面
25 第1外側見付片(ドア枠の背面の第1見付片)
250 切り欠き部の上端縁(長手方向の端縁)
251 切り欠き部の下端縁(長手方向の端縁)
26 第2外側見付片(ドア枠の背面の第2見付片)
3 開口部枠材
30 第1見付辺(第1見付面)
31 第2見付辺(第2見付面)
32 見込辺
4 スタッド
4´ ランナー
5 スペーサ
51 第1係止溝
52 第2係止溝
6 連結部材
C1 切り欠き部(スペーサ挿入用空間、楔挿入部)
C2 切り欠き部(楔挿入部)
C3 切り欠き部(スペーサ挿入用空間)
S1 螺子(第1側固定用螺子)
S2 螺子(第2側固定用螺子)
S3 螺子(第2側固定用螺子)
K´ 楔挿入部