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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】防水ゴム栓を有する電線接続端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20240117BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
H01R13/52 301E
H01R4/18 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020036423
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021140910
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】竹田 浩崇
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-343493(JP,A)
【文献】実開昭60-022772(JP,U)
【文献】実開昭60-080680(JP,U)
【文献】特開2018-041571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水ゴム栓を有する電線接続端子であって、
芯線と前記芯線を覆う被覆を有する電線と、
前記芯線を加締めて接続する芯線加締め片と前記被覆側に加締められる被覆加締め片を有する端子と、
前記電線が貫通される貫通孔と前記被覆加締め片により前記被覆と共に加締められて接続される加締め部を有する防水ゴム栓と、
を備え、
前記端子の前記被覆加締め片の前方にスリットを設け、
前記防水ゴム栓の前記加締め部の前方にフランジを設け、
前記被覆加締め片を前記加締め部に加締めた状態において、前記フランジが前記スリット内に位置し、且つ、前記スリットの後側の縁部が前記フランジの後面と当接し、前記スリットの前側の縁部が前記フランジの前面と当接するようにした、防水ゴム栓を有する電線接続端子。
【請求項2】
前記芯線加締め片と前記被覆加締め片は、底壁により連設されるように一体形成され、
前記底壁の前記芯線加締め片と前記被覆加締め片との間の該被覆加締め片寄りの位置に前記スリットを設けた、請求項1に記載の防水ゴム栓を有する電線接続端子。
【請求項3】
前記スリットの前側の上端縁から前記底壁の底面にかけて前方に向けて傾斜するテーパ面を設けた、請求項2に記載の防水ゴム栓を有する電線接続端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水ゴム栓を有する電線接続端子に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の防水ゴム栓を有する電線接続端子として、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に開示された防水コネクタ用のゴム栓は、電線が貫通する貫通孔を有していて、その外周前側の防水鍔と突条(リップ)との間に形成された圧着部に端子のゴム栓用バレルが加締めにより圧着されている。また、ゴム栓の貫通孔に貫通した電線の被覆を剥いだ芯線には、端子のワイヤバレルが加締めにより圧着されている。
【0003】
そして、ゴム栓と電線を加締め圧着により組み付けた端子をコネクタのキャビティ内に嵌入すると、ゴム栓の防水鍔と突条がキャビティの内周面に弾性撓みを生じつつ水密状態に密着し、キャビティ内への水の浸入を防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-335311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の防水コネクタ用のゴム栓を有する端子では、電線がキャビティから抜ける外側の方向に引っ張られると、ゴム栓が端子の加締め位置であるゴム栓用バレルからズレてしまい防水性が低下する虞があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、電線に外方への引張力が加わっても端子の被覆加締め片からの防水ゴム栓のズレや抜けを防ぐことができる防水ゴム栓を有する電線接続端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る防水ゴム栓を有する電線接続端子は、芯線と前記芯線を覆う被覆を有する電線と、前記芯線を加締めて接続する芯線加締め片と前記被覆側に加締められる被覆加締め片を有する端子と、前記電線が貫通される貫通孔と前記被覆加締め片により前記被覆と共に加締められて接続される加締め部を有する防水ゴム栓と、を備え、前記端子の前記被覆加締め片の前方にスリットを設け、前記防水ゴム栓の前記加締め部の前方にフランジを設け、前記被覆加締め片を前記加締め部に加締めた状態において、前記フランジが前記スリット内に位置するようにしたものである。
【0008】
前記芯線加締め片と前記被覆加締め片は、底壁により連設されるように一体形成され、前記底壁の前記芯線加締め片と前記被覆加締め片との間の該被覆加締め片寄りの位置に前記スリットを設けることが好ましい。
【0009】
前記スリットの前側の上端縁から前記底壁の底面にかけて前方に向けて傾斜するテーパ面を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電線に外方へ引っ張られる引張力が加わっても、端子の被覆加締め片からの防水ゴム栓のズレや抜けを防止することができる防水ゴム栓を有する電線接続端子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る防水ゴム栓を有する電線接続端子の一例を示す斜視図である。
図2】上記防水ゴム栓を有する電線接続端子の分解斜視図である。
図3】上記電線接続端子の正面図である。
図4】上記電線接続端子の底面図である。
図5図3中V-V線に沿う断面図である。
図6図1中VI-VI線に沿う断面図である。
図7】上記防水ゴム栓を有する電線接続端子をコネクタのハウジングの端子収容室に収容した状態を示す断面図である。
図8図7中符号E部分の拡大断面図である。
図9】上記電線接続端子の電線に矢印F方向の引張力が加わった際の図7中符号E部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係る防水ゴム栓を有する電線接続端子について詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の実施形態に係る防水ゴム栓を有する電線接続端子の一例を示す斜視図である。図2は防水ゴム栓を有する電線接続端子の分解斜視図である。図3は電線接続端子の正面図である。図4は電線接続端子の底面図である。図5図3中V-V線に沿う断面図である。図6図1中VI-VI線に沿う断面図である。図7は防水ゴム栓を有する電線接続端子をコネクタのハウジングの端子収容室に収容した状態を示す断面図である。図8図7中符号E部分の拡大断面図である。図9は電線接続端子の電線に矢印F方向の引張力が加わった際の図7中符号E部分の拡大断面図である。
【0014】
図1図2に示すように、防水ゴム栓を有する電線接続端子10は、端子20と、防水ゴム栓30と、電線40と、を備えている。
【0015】
図1図6に示すように、端子20は、雌型端子であり、四角筒状の接触部21と、後述する電線40の芯線41を加締めて接続する断面U字状の芯線加締め片23と、電線40の被覆42側に加締められる断面U字状の被覆加締め片24と、を有する。これら接触部21と、芯線加締め片23と被覆加締め片24は、底壁25により連設されるように一体形成されている。なお、図2図6に示すように、芯線加締め片23と被覆加締め片24との間の底壁25は、後方に傾斜する繋ぎ部25aにより連設されている。この繋ぎ部25aにより、被覆加締め片24が芯線加締め片23より下側に位置するようになっている。
【0016】
図5図6に示すように、四角筒状の接触部21の内部には、底壁25の前方でU字状に折り返されることにより連設されたバネ片22が配置されている。この接触部21内に相手コネクタにおける雄型端子のタブ(いずれも図示省略)が挿入されて、このタブが接触部21の天井壁の接点部21aとバネ片22の接点部22aとの間で挟まれて接触することで電気的に接続されるようになっている。また、図1図2に示すように、芯線加締め片23は、電線40の芯線41に加締められて、芯線41と電気的に接続される部分である。さらに、被覆加締め片24は、電線40における被覆42の外周に取り付けられた後述する防水ゴム栓30の加締め部35に加締められる部分である。
【0017】
図2図6に示すように、端子20の被覆加締め片24の前方、つまり、底壁25の芯線加締め片23と被覆加締め片24との間の被覆加締め片24寄りの位置には、湾曲矩形孔状のスリット26が形成されている。図8図9に示すように、スリット26の前側の上端縁26aから底壁25の底面25bにかけて前方に向けて傾斜する前側のテーパ面26bが設けられている。また、スリット26の後側の上端縁26cから底壁25の底面25bにかけて後方に向けて傾斜する後側のテーパ面26dが設けられている。
【0018】
図1図2図6に示すように、防水ゴム栓30は、電線40が貫通される貫通孔31を有した略円筒状に形成されている。また、防水ゴム栓30は、前端に円環状に突出したフランジ32と、中央に円環凸状に突出した一対のリップ33,33と、後部側に筒体部34と、を有している。そして、フランジ32と前側のリップ33との間が端子20の被覆加締め片24により電線40の被覆42と共に加締められて接続される円環凹状の加締め部35になっている。すなわち、防水ゴム栓30の加締め部35の前側にフランジ32が位置していると共に、加締め部35の後側にリップ33が位置している。そして、図6図9に示すように、端子20の被覆加締め片24を防水ゴム栓30の加締め部35に加締めた状態において、防水ゴム栓30の円環状のフランジ32の下側が端子20のスリット26内に位置するようになっている。
【0019】
図1図2図6に示すように、電線40は、複数の素線41aからなる芯線41と、この芯線41を覆う被覆(絶縁被覆)42と、を有する。
【0020】
そして、上記構成の電線接続端子10は、図7に示すように、ハウジング2における端子収容室3に収容され、可撓性のランス4と端子20の底壁25に設けられた係合孔25cの係合により、ハウジング2に対し端子20が保持された雌型のコネクタ1となる。
【0021】
以上実施形態の防水ゴム栓を有する電線接続端子10によれば、図7に示すように、端子収容室3内に挿入された防水ゴム栓30は、リップ33が端子収容室3を構成する内壁に弾性接触していることにより、シール性(防水性)が確保されている。
【0022】
そして、車両へのワイヤハーネスの配索作業時等において、図7に示すように、電線40に矢印F方向の引張力が加わると、相対的にハウジング2と防水ゴム栓30がズレるようになる。すなわち、端子収容室3内で所定位置より防水ゴム栓30が矢印F方向にズレようとする作用が及んだ場合、リップ33に捩れが生じる虞があり、このリップ33の捩れにより、コネクタ1としてのシール性(防水性)の低下が懸念される。
【0023】
しかしながら、本実施形態では、図8に示すように、防水ゴム栓30の加締め部35が端子20の被覆加締め片24に加締められた状態で、防水ゴム栓30の円環状のフランジ32が端子20のスリット26内に位置している。そして、図9に示すように、電線40に矢印F方向の引張力が加わった際に、端子20のスリット26の後側の上端縁26cが防水ゴム栓30のフランジ32の後面32bに引っ掛かると共に、フランジ32が前方に変形する。このフランジ32の変形で、スリット26の前側のテーパ面26bがフランジ32の前面32aと当接し、摺動摩擦が発生する。これら引っ掛かりと摺動摩擦とにより、スリット26内よりフランジ32が抜け難くなっており、その結果、端子20と防水ゴム栓30は、相対的にズレ難くなっている。
【0024】
相対的なハウジング2と防水ゴム栓30のズレは、相対的な端子20と防水ゴム栓30のズレともいえることから、本実施形態では、防水ゴム栓30は、ハウジング2の端子収容室3内で所定位置より矢印F方向にズレることが抑制される。従って、図9に示すように、電線40に、矢印F方向の引張力が加わっても、防水ゴム栓30のリップ33が捩れることを抑制できるので、結果的にコネクタ1としてのシール性(防水性)の低下を抑制できる。
【0025】
このように、コネクタ1の端子収容室3内に、防水ゴム栓を有する電線接続端子10の端子20が収容された状態で、電線40に外方へ引っ張られる引張力が加わっても、端子20の被覆加締め片24からの防水ゴム栓30のズレや抜けを防ぐことができる。つまり、防水ゴム栓30のリップ33の捩れを抑制し、コネクタ1のシール性(防水性)の低下を防止することができる。
【0026】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0027】
10 防水ゴム栓を有する電線接続端子
20 端子
23 芯線加締め片
24 被覆加締め片
25 底壁
25b 底面
26 スリット
26a 前側の上端縁
26b 前側のテーパ面
30 防水ゴム栓
31 貫通孔
32 フランジ
35 加締め部
40 電線
41 芯線
42 被覆
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9