(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】画像形成装置、及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20240117BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20240117BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240117BHJP
B41J 2/52 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
H04N1/00 Z
G03G21/14
G03G15/00 303
B41J2/52
(21)【出願番号】P 2020041222
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2019070706
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 史明
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-112636(JP,A)
【文献】特開2012-160873(JP,A)
【文献】特開2019-097029(JP,A)
【文献】特開2004-101791(JP,A)
【文献】特開平07-264405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
G03G 15/00
15/36
21/00
21/02
21/14
21/20
B41J 2/52 - 2/525
G06T 1/00
1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて画像を形成する画像形成手段と、
原稿が積載される積載トレイと、前記積載トレイに積載された前記原稿を搬送する搬送部と、前記搬送部が前記原稿を搬送しながら前記積載トレイ上の前記原稿の下面の画像を読み取る第1読取部と、画像が読み取られた前記原稿を排出する排出部と、前記排出部により前記原稿が排出される排出トレイと、を有する原稿搬送手段と、
原稿が載置されるプラテンと、前記プラテンに載置された前記原稿の画像を読み取り、前記搬送部が前記積載トレイから前記原稿を搬送する場合には前記積載トレイ上の前記原稿の上面の画像を読み取る第2読取部と、
前記画像形成手段にシートの片面にテスト画像を形成させ、前記搬送部に前記積載トレイ上の前記シートを搬送させ、前記第1読取部による前記テスト画像が形成された前記シートに関する読取画像と、前記第2読取部による前記テスト画像が形成された前記シートに関する読取画像から、前記テスト画像が形成された面の読取画像を選択し、該選択された前記読取画像に基づいて前記画像形成手段により形成される画像の濃度を制御する制御手段と、を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1読取部による読取画像と前記第2読取部による読取画像とのうち、前記テスト画像を読み取った読取部の読取画像に基づいて、前記画像形成装置が形成する画像の階調特性を補正する階調補正条件を生成することにより、前記画像形成手段により形成される画像の濃度を制御する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成手段は、画像形成条件に基づいて制御され、
前記制御手段は、前記第1読取部による読取画像と前記第2読取部による読取画像とのうち、前記テスト画像を読み取った読取部の読取画像に基づいて、前記画像形成条件を生成することにより、前記画像形成手段により形成される画像の濃度を制御する、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成手段は、前記画像をシートに転写する転写手段を有し、
前記画像形成条件は、前記転写手段を制御する転写条件を含む、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1読取部による読取画像と前記第2読取部による読取画像との両方が、前記テスト画像を読み取った読取部による読取画像でない場合に、エラーを通知する、請求項1から4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記シートの片面には、前記画像形成手段によりマークが形成されており、
前記制御手段は、前記マークの読取結果に基づいて、前記第1読取部による読取画像と前記第2読取部による読取画像とのうちで、前記テスト画像を読み取った読取部の読取画像を判定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
画像を形成する画像形成装置との通信を可能にする情報処理装置であって、
前記画像形成装置は、画像データに基づいて画像を形成する画像形成手段と、原稿が積載される積載トレイと、前記積載トレイに積載された前記原稿を搬送する搬送部と、前記搬送部が前記原稿を搬送しながら前記積載トレイ上の前記原稿の下面の画像を読み取る第1読取部と、画像が読み取られた前記原稿を排出する排出部と、前記排出部により前記原稿が排出される排出トレイと、を有する原稿搬送手段と、原稿が載置されるプラテンと、前記プラテンに載置された前記原稿の画像を読み取り、前記搬送部が前記積載トレイから前記原稿を搬送する場合には前記積載トレイ上の前記原稿の上面の画像を読み取る第2読取部と、を有するものであり、
前記情報処理装置は、
前記画像形成手段にシートの片面にテスト画像を形成させ、前記搬送部に前記積載トレイ上の前記シートを搬送させ、前記第1読取部による前記テスト画像が形成された前記シートに関する読取画像と、前記第2読取部による前記テスト画像が形成された前記シートに関する読取画像とを前記画像形成装置から受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された、前記第1読取部による前記テスト画像が形成された前記シートに関する読取画像と、前記第2読取部による前記テスト画像が形成された前記シートに関する読取画像とから、前記テスト画像が形成された面の読取画像を選択し、該選択された前記読取画像に基づいて前記画像形成手段により形成される画像の濃度を制御する制御手段と、
を有する情報処理装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記選択された読取画像に基づいて、前記画像形成装置が形成する画像の階調特性を補正する階調補正条件を生成することにより、形成する画像の濃度を制御する、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記画像形成装置は、画像形成条件に基づいて制御され、
前記制御手段は、前記選択された読取画像に基づいて前記画像形成条件を生成することにより、前記画像形成装置により形成される画像の濃度を制御する、請求項7または8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記画像形成装置は、前記画像をシートに転写する転写手段を有し、
前記画像形成条件は、前記転写手段を制御する転写条件を含む、請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記テスト画像に関連する読取画像が、前記第1読取部による前記テスト画像が形成された前記シートに関する読取画像と、前記第2読取部による前記テスト画像が形成された前記シートに関する読取画像とに含まれない場合、エラーを通知する、請求項7から10のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記シートの前記片面には、前記画像形成装置によりマークが形成されており、
前記制御手段は、前記マークの読取結果に基づいて、前記第1読取部による前記テスト画像が形成された前記シートに関する読取画像と、前記第2読取部による前記テスト画像が形成された前記シートに関する読取画像とから、前記テスト画像が形成された前記片面に対応する読取画像を選択する、請求項7から11のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートに印刷されたテスト画像に関する読取データに基づいて出力画像の濃度を制御する画像濃度制御に関する。
【背景技術】
【0002】
インクやトナーを用いてシートに画像を形成する画像形成装置では、使用環境の変化や経時変化に依存して、画像の濃度が変化しうる。そこで、画像形成装置は、シートにテスト画像を形成し、読取デバイスにテスト画像を読み取らせ、テスト画像の読取データに基づき階調補正条件を補正する。これは画質を調整するキャリブレーションのなかの階調補正制御と呼ばれる。特許文献1には、シートの表面に形成された画像がシートの裏面に写り込んでしまうこと(いわゆる裏写り)を抑制するように階調補正条件を調整する階調補正制御が提案されている。より具体的には、画像形成装置は、シートの表面(印刷面)にのみテスト画像を形成し、裏面にはテスト画像を形成しない。ユーザは、原稿を読み取るために用いられるイメージリーダのプラテンにシートを置いて、シートの表面に形成されたテスト画像をイメージリーダに読み取らせる。さらに、ユーザは、シートをひっくり返してプラテンに置いて、テスト画像の形成されていないシートの裏面をイメージリーダに読み取らせる。そして、裏写りが発生しないテスト画像の濃度が決定され、当該決定された濃度が最大濃度となるような階調補正条件が作成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は裏写りを防止できるものの、画像形成装置によりシートの表面に形成される画像の階調特性が、入力画像の階調特性と一致しないような階調補正条件が作成されてしまう恐れがある。ユーザによっては、裏写りの防止よりも、表面に形成される画像の階調特性を重視することもあろう。このようなユーザには特許文献1のキャリブレーションは向いていない。さらに、ユーザは、プラテンのシートの表裏を反転するために、プラテンにシートを載置するために圧板を開け閉めしなければならない。これはユーザにとって面倒であろう。一方で、トレイに載置された原稿を読取位置へ自動的に搬送するオート・ドキュメント・フィーダ(以下ADFと記述される)を使ってシート上のテスト画像を読取デバイスに読み取らせるものが知られている。ADFを用いてシートを読取デバイスに読み取らせる場合、圧板の開け閉めが不要となり、ユーザの負担が軽減される。しかし、ADFにより搬送されるシートの片面しか読み取れない場合には、ユーザがADFのトレイにシートを載置したときに当該シートの読取可能な面が決まってしまう。そのため、ユーザがシートの表裏を間違ってトレイにおいてしまうと、読取デバイスはシートに形成されたテスト画像を読み取ることができなかった。そこで、本発明は、テスト画像が形成されたシートをユーザがトレイに載置するときのユーザの負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、
画像データに基づいて画像を形成する画像形成手段と、
原稿が積載される積載トレイと、前記積載トレイに積載された前記原稿を搬送する搬送部と、前記搬送部が前記原稿を搬送しながら前記積載トレイ上の前記原稿の下面の画像を読み取る第1読取部と、画像が読み取られた前記原稿を排出する排出部と、前記排出部により前記原稿が排出される排出トレイと、を有する原稿搬送手段と、
原稿が載置されるプラテンと、前記プラテンに載置された前記原稿の画像を読み取り、前記搬送部が前記積載トレイから前記原稿を搬送する場合には前記積載トレイ上の前記原稿の上面の画像を読み取る第2読取部と、
前記画像形成手段にシートの片面にテスト画像を形成させ、前記搬送部に前記積載トレイ上の前記シートを搬送させ、前記第1読取部による前記テスト画像が形成された前記シートに関する読取画像と、前記第2読取部による前記テスト画像が形成された前記シートに関する読取画像から、前記テスト画像が形成された面の読取画像を選択し、該選択された前記読取画像に基づいて前記画像形成手段により形成される画像の濃度を制御する制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、テスト画像が形成されたシートをユーザがトレイに載置するときのユーザの負担が軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図6】テストチャートの作成方法を示すフローチャート
【
図7】階調補正条件の生成方法を示すフローチャート
【
図8】階調補正条件の生成方法を示すフローチャート
【
図9】階調補正条件の生成方法を示すフローチャート
【
図10】イメージリーダの変形例を説明する概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態が詳しく説明される。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでするものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一または同様の構成に同一の参照番号が付され、重複した説明は省略される。
【0009】
<第一実施形態>
[画像形成装置]
図1が示すように、画像形成装置1は電子写真方式のプリンタ100とイメージリーダ110とを有するマルチファンクションペリフェラル(MFP)である。電子写真方式は一例にすぎず、インクジェット方式などの他の画像形成方式が採用されてもよい。
【0010】
●プリンタ100
画像形成部50は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の四色の現像剤(トナー)を重ね合わせることでカラー画像を形成する。
図1において参照番号の末尾にはトナー色を示すYMCKの文字が付与されているが、四つの色に共通する事項が説明される際にはYMCKの文字が省略される。
【0011】
給送カセット2はシートPを収納する収納庫である。給送ローラ4は、給送カセット2からシートPを搬送路へ給送する。搬送ローラ対5は、給送カセット2から給送されたシートPを、シートPの搬送方向においてさらに下流へ搬送する。レジストローラ対6は、シートPが二次転写ローラ19に到着するタイミングと、トナー画像が二次転写ローラ19に到着するタイミングとを整合させるための搬送ローラである。シートセンサ22は、レジストローラ対6の近傍に設けられており、シートPの到着タイミングを検知する。
【0012】
画像形成部50において、感光ドラム11は静電潜像やトナー画像を担持する像担持体である。帯電ローラ12は、感光ドラム11の表面の電位が一様な電位となるように感光ドラム11の表面を帯電させる。露光装置13は感光ドラム11の表面に光を照射することで静電潜像を形成する。現像装置15はトナーを用いて静電潜像を現像し、トナー画像を形成する。一次転写器16は、トナー画像を中間転写体17に転写する。二次転写ローラ19はトナー画像を中間転写体17からシートPへ転写する。定着装置20は、熱と圧力とを用いてトナー画像をシートPに定着させる。排出ローラ21は、シートPを画像形成装置1の外部に設けられたトレイに排出する。
【0013】
●イメージリーダ
イメージリーダ110は、読取ユニット70と原稿搬送装置80とを有している。読取ユニット70は、原稿(シート)が載置されるプラテン71、前記プラテン71に載置された原稿(シート)を読み取るイメージセンサ72を有する。イメージセンサ72はプラテン71に載置された原稿(シート)を読み取るため、プラテンの直下を図面の右から左へ移動しながら原稿(シート)を読み取る。本実施形態のイメージセンサ72は、光源としてのLEDと、レンズを含む光学部品とを有し、原稿(シート)からの反射光を受光することでプラテン71に伏せられた原稿(シート)の面を読み取る。なお、読取ユニット70は、LEDと光学部品を備えた筐体と、イメージセンサ72とを有し、イメージセンサ72が移動せずに、LEDと光学部品を備えた筐体が移動する構成としてもよい。なお、ユーザがプラテンに原稿(シート)を載置できるように、原稿搬送装置80は読取ユニット70に対して回動可能である。
【0014】
また、ユーザがプラテン71に原稿(シート)を載置せずに原稿(シート)を読み取る構成が以下に説明される。シートセンサ82が原稿トレイ81に原稿(シート)が載置されたことを検知すると、ピックアップローラ83が回転し、シートを原稿搬送装置80の搬送路に取り込む。分離ローラ84は、原稿トレイ81から複数のシートが引き込まれた場合に、複数のシートから一枚のシートを分離して、さらに下流側に位置する搬送ローラ85、86へ搬送する。搬送ローラ85、86はシートの先端をレジストローラ87に突き当てることで、シートの斜行を補正する。レジストローラ87が回転を開始すると、シートは読取ユニット70へ搬送される。搬送ベルト88はシートをプラテン71に沿って搬送する。この時、イメージセンサ72は、原稿読取位置に静止しており、プラテン71に沿って搬送されるシートに形成されている画像を読み取る。搬送ベルト88および排紙ローラ89はシートを排紙トレイ91へ排出する。なお、排紙センサ90はシートが排紙トレイ91へ排出されたことを検知する。
【0015】
●制御部
図2が示すように、制御部10は画像形成装置1の全体を統括的に制御する。制御部10は、デバイスIF116を介してプリンタ100と接続されており、プリンタ100を制御してシートに画像を形成させる。制御部10は、デバイスIF116を介してイメージリーダ110と接続されており、イメージリーダ110により生成された原稿の画像データ(読取データ)を取得する。CPU111は、記憶部112に記憶されている制御プログラムに基づいて画像形成装置1を制御する。記憶部112は、RAM、ROMおよびハードディスクドライブなどを有している。CPU111は、ネットワークIF115を介してホストコンピュータなどから印刷ジョブを受信する。CPU111は、操作部IF117を介して接続された操作部150の表示装置にメッセージを表示したり、操作部150の入力装置からユーザ指示を受け付けたりする。画像処理部118はネットワークIF115受信された印刷データ(印刷用の画像データ)に対して所定の画像処理を行う。画像処理部118は、印刷データをビットマップデータに展開し、ビットマップデータの色空間(RGB→YMCK)を変換し、さらに階調補正条件に基づき階調補正を実行する。画像処理部118は、イメージリーダ110から受信された画像データの色空間(RGB→YMCK)を変換し、さらに階調補正条件に基づき階調補正を実行する。画像メモリ119は、画像処理のために画像データを一時的に保持する高速なメモリである。なお、階調補正条件は、例えば、画像データに含まれる画像信号値を変換するために用いられる1次元テーブルとする。階調補正条件は、プリンタ100により形成される画像の階調特性を理想的な階調特性に補正するために用いられる。画像処理部118により変換された画像データはプリンタ100の露光装置13に転送される。露光装置13は転送された画像データに基づいて感光ドラム11を露光する光を制御する。
【0016】
[面判定]
イメージリーダ110は固定読みモードと流し読みモードを有している。固定読みモードは、原稿搬送装置80が開かれてシートがプラテン71に載置され、原稿搬送装置80が閉じられる。原稿搬送装置80の下面はシートをプラテン71に圧接する圧板になっている。この場合、ユーザは、テスト画像が形成された面をプラテン71に向けてシートをプラテン71に載置する。一方で、流し読みモードでは、原稿搬送装置80の原稿トレイ81に載置されたシートを原稿搬送装置80により搬送しながらシートの画像が読み取られる。この場合、ユーザは、テスト画像を表にしてシートを原稿トレイ81に置くべきか、テスト画像を裏にしてシートを原稿トレイ81に置くべきかを悩むことが多い。もし、シートの表裏を誤ってしまうと、CPU111は、正しい階調補正条件を作成できない。そこで、本実施形態は、ユーザがテスト画像の表裏を意図することなく、シートを原稿トレイ81に置けるようにする。本実施形態では、イメージリーダ110は、シートの第一面と第二面との両方を読み取る。ここで、第一面とは、最初にイメージリーダ110により読み取られる面である。第二面とは、第一面の次にイメージリーダ110により読み取られる面である。ユーザは、最初にテスト画像が目視できるようにシートを原稿トレイ81に置き、次にテスト画像が目視できないようにシートを原稿トレイ81に置いてもよい。あるいは、ユーザは、最初にテスト画像が目視できないようにシートを原稿トレイ81に置き、次にテスト画像が目視できるようにシートを原稿トレイ81に置いてもよい。CPU111は、第一面の読取データと第二面の読取データとを解析し、テスト画像の読み取り結果を含む読取データを選択する。さらに、CPU111は、選択された読取データに基づき階調補正条件を作成する。これにより、テスト画像を形成されたシートの載置に関するユーザの負担が軽減される。
【0017】
[テスト画像]
図3(A)はシートPの印刷面300aに形成されたテスト画像301を示している。
図3(B)はシートPの非印刷面300bを示している。非印刷面300bにおいて裏写り画像302は、非印刷面300bに、印刷面300aに形成されたテスト画像301がすけて見える画像である。裏写り画像302はテスト画像301の濃度が濃くなるほど発生しやすい。つまり、テスト画像301の低濃度領域に対応する裏写り画像302は発生しにくい。本実施形態では、印刷面300aにテスト画像が形成され、非印刷面300bにはテスト画像が形成されていない。さらに、CPU111は読取データからエッジ、マークまたはヒストグラムを検出し、この検出結果に基づいて印刷面300aと非印刷面300bとを区別できる。印刷面300aと非印刷面300bとを区別する方法は後に詳細に述べられる。
【0018】
図3(C)が示すように、印刷面300aにはテスト画像301とともにマーク303aが形成されてもよい。
図3(D)が示すように、印刷面300aにはテスト画像301とともにマーク303bが形成されてもよい。非印刷面300bにはマーク303a、303bは形成されない。あるいは、印刷面300aにはマーク303a、303bが形成され、非印刷面300bに、マーク303a、303bとは異なるマークが形成されてもよい。あるいは、印刷面300aにはマークが形成されず、非印刷面300bにマークが形成されてもよい。なお、印刷面300aにのみマークを形成する場合、画像形成装置1は片面印刷を実行すればよいため、テストチャートの形成時間を短縮できる。テストチャートとは、テスト画像301を形成されたシートPのことである。非印刷面300bにマークを形成する場合、画像形成装置1は両面印刷を実行しなければならないため、テストチャートの形成時間が長くなる。
【0019】
[CPUの機能]
図4はCPU111が制御プログラムを実行することで実現する機能を示している。ただし、これらの機能のすべてまたは一部がASICやFPGAなどのハードウエア回路により実装されてもよい。
【0020】
キャリブレーション部400は、テスト画像301の読取結果に基づき階調補正条件を生成する。テスト画像部401は、テストデータ451を生成するか、または、記憶部112からテストデータ451を読み出して画像処理部118に送る。テストデータ451は、テスト画像301をシートPに形成するための画像データである。マーク部402は、オプションであり、マーク303a、303bをシートPに形成するための画像データを生成するか、記憶部112から画像データを読み出して画像処理部118に送る。生成部403は、テスト画像301の読取結果に基づき階調補正条件(補正テーブル452)を生成する。UI部404は、操作部150の表示装置にキャリブレーションのガイダンスメッセージを表示したり、入力装置からユーザ指示を受け付けたりする。キャリブレーション部400は、イメージリーダ110を制御し、テスト画像301を形成されたシートPの第一面と第二面との両方を読み取らせる。キャリブレーション部400は、イメージリーダ110から第一面の読取結果である第一読取データ453と、第二面の読取結果である第二読取データ454とを記憶部112に格納する。
【0021】
選択部410は、第一読取データ453と第二読取データ454を解析して、第一読取データ453と第二読取データ454とのうち、テスト画像301の読取結果を含む読取データを選択する。解析部420は、テスト画像301の読取結果を含む読取データを選択するために、第一読取データ453と第二読取データ454を解析する。縮小部421は、第一読取データ453を縮小して第一縮小データ455を生成する。縮小部421は、第二読取データ454を縮小して第二縮小データ456を生成する。第一読取データ453と第二読取データ454は、キャリブレーションに使用されるため、高解像度の画像である。その一方で、テスト画像301が形成されている印刷面300aを判定するためには、このような高解像度の画像は不要である。したがって、解析部420の解析処理を高速化するために、縮小部421が採用されてもよい。つまり、解析部420は、第一読取データ453と第二読取データ454の代わりに第一縮小データ455と第二縮小データ456を解析する。以下において、第一読取データ453と第二読取データ454に関する記載は、第一縮小データ455と第二縮小データ456にも適用される。エッジ検出部422は、第一読取データ453と第二読取データ454とに含まれているエッジを検出する。
【0022】
図5はCPU111が画像メモリ119に展開したテスト画像301の画像データを模式的に表している。エッジ検出部422は、画像メモリ119に展開された画像データの先端から、矢印501が示す方向に、所定の間隔dずつ離れた複数の画素502~505の画素値を参照する。画素値は輝度値であってもよいし、濃度値であってもよい。エッジ検出部422は、複数の画素502~505のうち隣り合った二つの画素の画素値の差を求める。エッジ検出部422は、この差が閾値を超えているかどうかを判定する。この差が閾値を超えている場合、エッジ検出部422は、二つの画素の間にエッジが存在すると判定する。この差が閾値を超えていない場合、エッジ検出部422は、二つの画素の間にエッジが存在しないと判定する。
図5によれば、画素503と画素504との間にエッジがあると判定される。エッジ検出部422は、エッジの位置または画素504の位置が所定範囲内にあるかどうかを判定する。エッジ検出部422は、エッジの位置または画素504の位置が所定範囲内にある場合に、読取データがテスト画像301を含むと判定する。エッジ検出部422は、エッジの位置または画素504の位置が所定範囲内に無い場合に、読取データがテスト画像301を含まないと判定する。なお、仮に
図3(B)に示すように裏写りが生じた場合であっても、エッジの位置または画素504の位置が所定範囲内にないのでCPU111は読取データにテスト画像301が含まれないと判定する。これは、
図3(A)および
図3(B)に示すように、裏写りを生じるような高濃度のテスト画像が所定範囲外に位置するように形成されているからである。
【0023】
マーク検出部423は、第一読取データ453と第二読取データ454を解析し、第一読取データ453または第二読取データ454にマーク303a(または303b)が含まれているかどうかを判定する。マーク303a(または303b)もシートPの所定位置に形成される。したがって、マーク検出部423は、第一読取データ453の所定位置にマーク303a(または303b)が形成されている場合に、第一読取データ453を選択する。マーク検出部423は第二読取データ454の所定位置にマーク303a(または303b)が形成されている場合に、第二読取データ454を選択する。なお、マーク303a(または303b)は裏写りが生じない程度の低濃度となるように形成されてもよい。この構成によれば、CPU111がマーク検出部423の検出結果(選択結果)に基づいて第一読取データと第二読取データとからテスト画像が含まれる読取データを選択できる。あるいは、マーク検出部423は、マーク303a(または303b)が形成されていると予測される領域の輝度を比較し、輝度の比較結果に基づいて判定してもよい。第一読取データの予想領域の画素の輝度が第二読取データの予想領域の画素の輝度より低い場合、マーク検出部423は第一読取データ453を選択する。一方、第二読取データの予想領域の画素の輝度が第一読取データの予想領域の画素の輝度より低い場合、マーク検出部423は第二読取データ454を選択する。
【0024】
ヒストグラム部424は、第一読取データ453と第二読取データ454とのそれぞれについてヒストグラムを演算する。シートPの印刷面300aにはテスト画像301が形成されるが、非印刷面300bにはテスト画像301が形成されない。つまり、非印刷面300bのヒストグラムは白紙のヒストグラムと類似しているはずである。あるいは、印刷面300aのヒストグラムは、テスト画像301に由来した固有のヒストグラムとなるはずである。よって、ヒストグラム部424は、ヒストグラムに基づき、第一読取データ453と第二読取データ454とのうちテスト画像301の読取結果を含む読取データを選択してもよい。
【0025】
判定部430は、解析部420の解析結果に基づき、第一読取データ453と第二読取データ454とのうちテスト画像301を含む読取データを判定する。判定部430は、第一読取データ453と第二読取データ454とのうちどちらを使用すべきかを生成部403に通知する。
【0026】
[キャリブレーションのフローチャート]
●テストチャートの作成
図6はCPU111が制御プログラムにしたがって実行するテストチャートの作成方法を示している。キャリブレーションは、テストチャートの作成処理と、階調補正条件の作成処理とに分かれている。CPU111は、操作部150などからキャリブレーションの実行指示が入力されると、以下の処理を実行する。
・S601でCPU111(テスト画像部401)はプリンタ100に対してプリント開始を指示する。プリンタ100は、プリント開始を指示されると、プリントを実行するために必要となる準備動作を実行し、画像データ(画像信号)が制御部10から出力されるのを待つ。
・S602でCPU111(テスト画像部401)はテスト画像の画像データであるテストデータ451を生成する。この処理は、テストデータ451を画像メモリ119に画像データとして書き込む処理である。テストデータ451は予め記憶部112に記憶されていてもよい。テスト画像部401が制御プログラムにしたがってテストデータ451を生成してもよい。
・S603でCPU111(テスト画像部401)は画像メモリ119に展開されたテストデータ451を、デバイスIF116を介してプリンタ100に供給することで、プリンタ100にテストチャートを作成させる。プリンタ100はテスト画像301をシートPに形成することで、テストチャートを作成する。
・S604でCPU111(テスト画像部401)はプリンタ100に対してプリント終了を指示する。
【0027】
●階調補正条件の生成
図7はCPU111が制御プログラムにしたがって実行する階調補正条件の生成方法を示している。テストチャートの作成が完了すると、CPU111は、以下の処理を実行する。
・S701でCPU111(キャリブレーション部400)はイメージリーダ110に対して読取開始を指示する。CPU111は操作部150の表示装置にテストチャートを原稿トレイ81に載置するよう促すメッセージを表示してもよい。なお、ユーザは、テスト画像301が見えるようにテストチャートを原稿トレイ81に載置してもよいし、テスト画像が見えないようにテストチャートを原稿トレイ81に載置してもよい。
・S702でCPU111(キャリブレーション部400)はイメージリーダ110からテストチャートの第一面の読取結果を取得する。たとえば、CPU111は、イメージリーダ110が出力する第一読取データ453を受信し、記憶部112に記憶させる。上述したように、CPU111は第一読取データ453を縮小して第一縮小データ455を生成して、記憶部112に記憶させてもよい。CPU111は、テストチャートの表裏を反転して原稿トレイ81に載置するよう促すメッセージを操作部150に表示してもよい。
・S703でCPU111(キャリブレーション部400)はイメージリーダ110からテストチャートの第二面の読取結果を取得する。たとえば、CPU111は、イメージリーダ110が出力する第二読取データ454を受信し、記憶部112に記憶させる。上述したように、CPU111は第二読取データ454を縮小して第二縮小データ456を生成して、記憶部112に記憶させてもよい。
・S704でCPU111(解析部420)は第一読取データ453を解析する。第一読取データ453の代わりに第一縮小データ455が解析されてもよい。これらの読取データは解析処理を高速化するために画像メモリ119に展開されてもよい。解析結果は、エッジの検出結果(例:エッジの有無やエッジの位置)、マークの検出結果、ヒストグラムの演算結果など、テスト画像301の有無を判定するために役立つ情報であればよい。
・S705でCPU111(判定部430)は解析結果に基づき第一読取データ453がテスト画像の読み取り結果を含むかどうかを判定する。第一読取データ453がテスト画像の読み取り結果を含む場合、CPU111は処理をS706に進める。第一読取データ453がテスト画像の読み取り結果を含まない場合、CPU111は処理をS710に進める。
【0028】
●第一読取データ453がテスト画像の読み取り結果を含む場合
・S706でCPU111(生成部403)は第一読取データ453について、階調補正条件を作成するためのサンプリングを実行する。テスト画像301は、それぞれ階調が異なる複数の階調パターン(パッチ画像)を有している。したがって、生成部403は、複数の階調パターンのそれぞれについてサンプリングを実行する。
・S707でCPU111(生成部403)はサンプリング結果に基づき階調補正条件を更新する。たとえば、ある階調の階調補正条件は、その階調のサンプリング結果と、その階調のテストデータ451とを比較することで更新される。上述されたように階調補正条件は階調補正テーブル(補正テーブル452)であってもよい。生成部403はサンプリング結果に基づき新しい補正テーブル452を作成し、記憶部112に記憶されている古い補正テーブル452を上書きする。
・S708でCPU111(UI部404)は補正完了をユーザに通知する。たとえば、UI部404は操作部150に、補正完了を示すメッセージを表示してもよい。
・S708でCPU111(生成部403)は読取データ(例:第一読取データ453、第二読取データ454、第一縮小データ455、第二縮小データ456)を記憶部112や画像メモリ119から削除する。
【0029】
●第一読取データ453がテスト画像の読み取り結果を含まない場合
・S710でCPU111(解析部420)は第二読取データ454を解析する。第二読取データ454の代わりに第二縮小データ456が解析されてもよい。これらの読取データは解析処理を高速化するために画像メモリ119に展開されてもよい。解析結果は、エッジの検出結果(例:エッジの有無やエッジの位置)、マークの検出結果、ヒストグラムの演算結果など、テスト画像301の有無を判定するために役立つ情報であればよい。
・S711でCPU111(判定部430)は解析結果に基づき第二読取データ454がテスト画像の読み取り結果を含むかどうかを判定する。第二読取データ454がテスト画像の読み取り結果を含む場合、CPU111は処理をS706に進める。この場合、S706ないしS709が第二読取データ454について実行される。第二読取データ454もテスト画像の読み取り結果を含まない場合、CPU111は処理をS712に進める。
【0030】
●第二読取データ454もテスト画像の読み取り結果を含まない場合
S712でCPU111(UI部404)はエラーをユーザに通知する。たとえば、UI部404は操作部150に、エラーが発生したことを示すメッセージを表示してもよい。第一読取データ453と第二読取データ454との両方ともテスト画像を含まないことは、通常はない。ただし、ユーザが、テストチャートの表裏反転を失念すると、このようなエラーが発生しうる。
【0031】
<第二実施形態>
図8はCPU111が制御プログラムにしたがって実行する階調補正条件の他の生成方法を示している。
図8において
図7と異なる点は、S705、S706、S710およびS711が、S801ないしS805に置換されている点である。ここでは、S801ないしS805について中心に説明される。
図7についてすでに説明された事項については説明の重複を避けるために、説明が省略される。S704が終了すると、CPU111は処理をS801に進める。
・S801でCPU111は第二読取データ454を解析する。S801はS710と同一の処理である。
・S802でCPU111は第一読取データ453の解析結果と第二読取データ454とに基づきテストチャートの第一面と第二面とのうちのいずれかの面がテスト画像301を含むかを判定する。つまり、CPU111は、第一読取データ453と第二読取データ454とのうちのどちらかがテスト画像301の読取結果を含むかを判定する。上述されたように、エッジ、マークまたはヒストグラムに基づき、テスト画像301の有無が判定されてもよい。第一読取データ453と第二読取データ454とのうちのどちらかがテスト画像301の読取結果を含む場合、CPU111は処理をS803に進める。第一読取データ453と第二読取データ454との両方がテスト画像301の読取結果を含まない場合、CPU111は処理をS712に進める。
・S803でCPU111は第一面がテスト画像301を含むかどうかを判定する。たとえば、判定部430は、第一読取データ453の解析結果に基づき、第一読取データ453がテスト画像301の読取結果を含むかどうかを判定する。上述されたように、エッジ、マークまたはヒストグラムに基づき、テスト画像301の有無が判定されてもよい。第一面がテスト画像301を含む場合、CPU111は処理をS804に進める。第一面がテスト画像301を含まない場合(第二面がテスト画像301を含む場合)、CPU111は処理をS805に進める。
・S804でCPU111(生成部403)は第一読取データ453について、階調補正条件を作成するためのサンプリングを実行する。S804はS706と同一の処理である。
・S805でCPU111(生成部403)は第二読取データ454について、階調補正条件を作成するためのサンプリングを実行する。S805もS706と同一の処理である。
【0032】
<第三実施形態>
図9はCPU111が制御プログラムにしたがって実行する階調補正条件のさらに他の生成方法を示している。
図9において
図7と異なる点は、S703ないしS705が、S901ないしS903に置換されている点である。ここでは、S901ないしS903について中心に説明される。
図7についてすでに説明された事項については説明の重複を避けるために、説明が省略される。S702が終了すると、CPU111は処理をS901に進める。
・S901でCPU111は第一読取データ453を解析する。S901はS704と同一の処理である。
・902でCPU111(判定部430)は解析結果に基づき第一読取データ453がテスト画像の読み取り結果を含むかどうかを判定する。第一読取データ453がテスト画像の読み取り結果を含む場合、CPU111は処理をS706に進める。第一読取データ453がテスト画像の読み取り結果を含まない場合、CPU111は処理をS903に進める。
・S903でCPU111はイメージリーダ110からテストチャートの第二面の読取結果を取得する。S903はS703と同一の処理である。その後、CPU111は処理をS710に進める。
【0033】
このように
図9では第二面の読取処理は、第一面にテスト画像301が形成されていない場合にのみ実行される。第一面にテスト画像301が形成されている場合は、第二面の読取処理はスキップされる。
図7および
図8と比較して、
図9では、キャリブレーションの開始から終了までの時間が短縮されるであろう。
【0034】
<その他の実施形態>
画像形成装置1は、
図1に示すイメージリーダ110の代わりに、
図10に示すイメージリーダ110を有する構成であってもよい。
図10のイメージリーダ110の構成を詳細に説明する。
図10のイメージリーダ110は原稿搬送装置80と読取ユニット70を有する。
図10に示すイメージリーダの原稿搬送装置80は、
図1に示すイメージリーダ110の原稿給送装置80と異なる。なお、イメージセンサ72Aは
図1のイメージセンサ72と同じ構成である。
【0035】
ピックアップローラ83は、原稿トレイ81に積載された原稿(シート)を原稿搬送装置80の内部に給送する。分離ローラ84は、ピックアップローラ83により複数の原稿(シート)が同時に給送されることを防ぐように回転が制御されている。搬送路に給送された原稿(シート)は搬送ローラ85、及び86aによって読取位置Aに向けて搬送される。ここで、読取ユニット70は、読取位置Aに対向する位置に透明なガラス73を有する。なお、ガラス73はプラテン71と別に設けられているが、プラテン71の一部が読取位置Aとオーバーラップする構成であってもよい。
【0036】
原稿搬送装置80により搬送される原稿(シート)が読取位置Aにおいて読取ユニット70のガラス73に押圧されるように、原稿搬送装置80には開口が形成されている。そして、原稿搬送装置80に搬送された原稿(シート)をイメージセンサ72Aが読み取る場合、ガラス73の直下に読取ユニット70のイメージセンサ72Aが移動する。原稿搬送装置80に搬送された原稿(シート)をイメージセンサ72Aが読み取る場合、イメージセンサ72Aは読取位置Aの直下に留まる。これにより、原稿搬送装置により原稿(シート)が読取位置Aを通過することで、イメージセンサ72Aにより読取位置Aを通過する原稿(シート)が読み取られる。以降、イメージセンサ72Aにより読み取られた原稿(シート)の面を第1面と称す。
【0037】
なお、原稿搬送装置80は、原稿(シート)の搬送方向において読取位置Aの上流に、搬送路を搬送される原稿(シート)の先端を検知するセンサを有する。制御部10は、センサが原稿(シート)の先端を検知したタイミングに基づきイメージセンサ72Aが原稿(シート)の読取を開始するタイミングを制御する。また、原稿搬送装置80は、読取位置Aを通過する原稿(シート)のバタつきを抑制するためのバックアップローラを有する。
【0038】
読取位置Aを通過した原稿(シート)は、搬送ローラ86bにより読取位置Bに向けて搬送される。原稿搬送装置80は、読取位置Bを搬送される原稿(シート)を読み取るイメージセンサ72Bを有する。イメージセンサ72Bは、
図10の手前から奥が長手方向になっている。イメージセンサ72BはLEDと光学部品をさらに含む。イメージセンサ72Bはシートの搬送方向に直交する方向が長手方向になっている。イメージセンサ72Bはその長手方向においてR(赤)、G(緑)、B(青)の光を受光する複数の画素を有する。イメージセンサ72Bはイメージセンサ72Aにより読み取られる原稿(シート)の第1面の裏面である第2面を読み取る。
【0039】
イメージセンサ72Bは、以下のようにして原稿(シート)の第2面を読み取る。具体的には、光源としてのLEDが原稿(シート)の第2面に光を照射する。原稿(シート)からの反射光はガラスを透過して光学部品へ到達する。光学部品は、原稿(シート)からの反射光をイメージセンサ72Bへ導く。イメージセンサ72Bは、受光した反射光に基づきアナログ読取データを出力する。なお、イメージセンサ72Bはその長手方向に亘る1ライン分の画像を同時に読み取る。したがって、イメージセンサ72Bは、原稿(シート)を搬送しながら複数回に亘って読取を実行することで、原稿(シート)1頁分のアナログ読取データを取得する。アナログ読取データは、イメージセンサ72Bの図示しないA/D変換回路によってデジタル読取データ(第二読取データ)に変換され、制御部10へ出力される。
【0040】
なお、イメージセンサ72Bが読み取りを開始するタイミングも、センサが原稿(シート)の先端を検知したタイミングに基づいて制御される。読取位置Bを通過した原稿(シート)は排紙ローラ89により排紙トレイ91に排出される。
【0041】
また、本実施形態のイメージセンサ72Aは、光源としてのLEDと、レンズを含む光学部品とを有し、原稿(シート)からの反射光を受光することでプラテン71に伏せられた原稿(シート)の面を読み取る。なお、読取ユニット70は、LEDと光学部品を備えた筐体と、イメージセンサ72とを有し、イメージセンサ72が移動せずに、LEDと光学部品を備えた筐体が移動する構成としてもよい。
【0042】
次に、本実施形態のCPU111が制御プログラムにしたがって実行する階調補正条件の生成方法を、第一実施形態の
図7と異なる点に着目して説明する。本実施形態のCPU111(キャリブレーション部400)は、ステップS702においてイメージセンサ72Aからテストチャートの第一面の読取結果を取得すると共に、ステップS703においてイメージセンサ72Bからテストチャートの第二面の読取結果を取得する。CPU111は、イメージセンサ72Aから取得された第一読取データ453と、イメージセンサ72Bから取得された第二読取データ454を取得し、記憶部112に記憶させる。なお、CPU111は第一読取データ453から第一縮小データ455を生成すると共に、第二読取データ454から第二縮小データ456を生成してもよい。このとき、CPU111は第一縮小データ455と第二縮小データ456とを記憶部112に記憶させる。他のステップの処理は
図7と同様であるので、ここでの説明は省略される。
【0043】
また、シートセンサ82が原稿トレイ81に原稿(シート)が載置されたことを検知せず、読取開始指示が入力された場合、原稿(シート)がプラテン71に載置されていると推定される。そのため、イメージリーダ70は、公知の原稿固定読みを実行する。原稿固定読みは公知の技術であるので、詳細な説明は省略する。
【0044】
図1の原稿搬送装置80は、読取ユニット70が読み取る原稿(シート)の第1面とは反対側の原稿(シート)の第2面を読み取る読取部を有していない。そのため、
図1のイメージリーダ110は、シートの両面の読取データを取得するために排紙トレイ91に排出されたシートをユーザが再び原稿トレイ81に載置しなければならなかった。一方、
図10のイメージリーダ110は、原稿搬送装置80にもシートの第2面を読み取る読取部が配置されている。これによって、排紙トレイ91に排出されたシートをユーザが再び原稿トレイ81に載置する必要がない。そして、
図10のイメージリーダ110によればシートの一方の面が読み取られたシートを再載置する必要がないので、第1読取データと第2読取データの何れもテスト画像301の形成されていない非印字面の読取データになってしまうという問題も発生しない。
【0045】
また、第一乃至第三実施形態、及びその他の実施形態において、階調補正条件を生成するために用いられるテストチャートを原稿搬送装置80によって搬送して読み取る構成について説明した。しかしながら、原稿搬送装置80によって搬送して読み取るテストチャートは、階調補正条件を生成するものに限定されず、例えば、トナー画像を転写するための転写条件を調整するためのテストチャートでもよい。トナー画像を転写するための転写条件を調整するためのテストチャートも、転写条件の異なるテスト画像がシートPの第一面と第二面とのうちの一方の面(印刷面300a)にのみ形成される。
【0046】
トナー画像を転写するための転写条件を調整するためのテストチャートは、例えば、転写条件が異なる複数のテスト画像が形成されたシートPである。ここで、転写条件とは、例えば二次転写ローラ19に印加される転写電圧である。二次転写ローラ19や中間転写体17の抵抗値は、温度、湿度、及び累積駆動時間が原因で変化する。そして、二次転写ローラ19や中間転写体17の抵抗値が変化してしまうと、転写効率が低下し、画像形成装置1により形成される出力画像の濃度が変化してしまう。そこで、制御部10は、トナー画像を転写するための転写条件を調整するためのテストチャートに関する読取データに基づいて転写条件を調整することで、画像形成装置1により形成される出力画像の画質を調整する。
【0047】
<第一実施形態乃至第三実施形態から導き出される技術思想とその効果>
[観点1]
図1が示すように、プリンタ100は、階調補正条件を決定するためのテスト画像301をシートPの第一面と第二面とのうちの一方の面(印刷面300a)にのみ形成する画像形成手段として機能する。イメージリーダ110は、シートPの第一面と第二面とをそれぞれ読み取ることで第一面の読取データ(第一読取データ453)と第二面の読取データ(第二読取データ454)とを生成する読取手段として機能する。選択部410は第一面の読取データと第二面の読取データとを解析し、第一面の読取データと第二面の読取データとのうちテスト画像301の読み取り結果を含む読取データを選択する選択手段として機能する。生成部403は選択された読取データに基づき階調補正条件(例:補正テーブル452)を生成する生成手段として機能する。このように、本実施形態によれば、基本的にシートPの表面と裏面との両方が読み取られる。とりわけ、ユーザは、初回の読取処理において、印刷面300aが見えるようにシートPを原稿トレイ81に載置してもよいし、印刷面300aが見えないようにシートPを原稿トレイ81に載置してもよい。したがって、テスト画像を形成されたシートPの載置に関するユーザの負担が軽減される。また、画像形成装置1は、テスト画像301の読み取り結果を含む読取データを選択し、選択された読取データに基づき階調補正条件を生成する。画像形成装置1は、生成された階調補正条件を使用することで、画像形成装置1により形成される出力画像の階調特性を理想的な階調特性に補正できる。
【0048】
[観点2]
原稿搬送装置80は自動原稿搬送装置の一例である。原稿トレイ81はシートPが載置される載置手段の一例である。搬送ローラ85は、載置手段に載置されたシートを読取手段に搬送する搬送手段の一例である。第一面が読取手段に読み取られるようにシートが載置手段に載置された後で、第二面が読取手段に読み取られるようにシートが載置手段に載置される。つまり、ユーザは、初回の読取処理が終了すると、二回目の読取処理のためにシートPの表裏を反転させるだけで良い。
【0049】
[観点3]
操作部150の表示装置は、第一面が読取手段に読み取られると、シートの表裏を反転して載置手段にシートを載置するよう促すメッセージを出力する出力手段として機能してもよい。これにより、ユーザは、躊躇することなくシートの反転作業を実施できるようになろう。
【0050】
[観点4]
図5に関連して説明されたように、選択部410は、第一面の読取データについてエッジ検出を実行し、所定位置にエッジが存在する場合に、第一面の読取データを選択してもよい。選択部410は、第二面の読取データについてエッジ検出を実行し、所定位置にエッジが存在する場合に、第二面の読取データを選択してもよい。
図5が示すように、テスト画像301の外周にはエッジが存在する。そこで、エッジに着目することでテスト画像301の有無が判別されてもよい。
【0051】
[観点5]
第一面の読取データにおいて所定位置にエッジが存在せず、かつ、第二面の読取データにおいて所定位置にエッジが存在しない場合もある。たとえば、ユーザは、シートの反転作業を失念したり、テストチャートとは異なるシートを原稿トレイ81に載置したりすると、このようなケースが発生しうる。この場合に、選択部410は、第一面の読取データと第二面の読取データとのいずれも選択しない。これにより、誤った階調補正条件が生成されにくくなろう。
【0052】
[観点6]
プリンタ100は、第一面と第二面とのうちの一方の面にのみテスト画像と第一マーク(例:マーク303a、303b)を形成してもよい。選択部410は、第一面の読取データと第二面の読取データとを解析し、第一面の読取データと第二面の読取データとのうち第一マークを含む読取データを選択してもよい。このようなマークを形成することで、印刷面300aと非印刷面300bとが容易に区別されるようになろう。
【0053】
[観点7]
図3(C)などが示すように、プリンタ100は、テスト画像301から離れた位置に第一マークを形成してもよい。これにより、第一マークが階調補正条件の作成に影響しにくくなろう。
【0054】
[観点8]
プリンタ100は、第一面と第二面とのうちの他方の面にテスト画像301を形成せずに、第一マークと異なる第二マークを形成してもよい。このようなマークを形成することで、印刷面300aと非印刷面300bとが容易に区別されるようになろう。
【0055】
[観点9]
選択部410は、第一面の読取データについてヒストグラムを求め、第一面の読取データについて求められた当該ヒストグラムが白紙に特有のヒストグラムであれば、第二面の読取データを選択してもよい。選択部410は、第二面の読取データについてヒストグラムを求め、第二面の読取データについて求められた当該ヒストグラムが白紙に特有のヒストグラムであれば、第一面の読取データを選択してもよい。本実施形態ではテスト画像301が印刷面300aにのみ形成され、非印刷面300bは白紙とされてもよい。したがって、ヒストグラムに基づき、印刷面300aと非印刷面300bとが容易に区別されるようになろう。
【0056】
[観点10]
選択部410は、第一面の読取データについてヒストグラムを求め、第一面の読取データについて求められた当該ヒストグラムがテスト画像に特有のヒストグラムであれば、第一面の読取データを選択してもよい。選択部410は、第二面の読取データについてヒストグラムを求め、第二面の読取データについて求められた当該ヒストグラムがテスト画像に特有のヒストグラムであれば、第二面の読取データを選択してもよい。本実施形態ではテスト画像301が印刷面300aにのみ形成され、非印刷面300bは白紙とされてもよい。したがって、ヒストグラムに基づき、印刷面300aと非印刷面300bとが容易に区別されるようになろう。
【0057】
[観点11]
階調補正条件は、入力画像データの階調特性を変換して出力画像データを生成する一次元の階調補正テーブル(例:補正テーブル452)であってもよい。画像処理部118は階調補正テーブルを用いて入力画像データの階調特性を変換して出力画像データを生成する。入力画像データはイメージリーダにより生成されるか、または印刷ジョブを展開することで生成される。あるいは、入力画像データはこれらの画像データの色空間を変換することで生成されてもよい。出力画像データはプリンタに供給されるために生成される画像データである。これにより、入力画像の階調特性と、シートPに形成された出力画像の階調特性が近づくようになろう。
【0058】
[観点12]
図7などが示すように、選択部410は、第一面の読取データを解析し、第一面の読取データがテスト画像301の読み取り結果を含む場合に、第一面の読取データを選択してもよい。生成部403は、選択手段により選択された第一面の読取データに基づき階調補正条件を生成してもよい。選択部410は、第一面の読取データがテスト画像の読み取り結果を含まない場合に、第二面の読取データを解析し、第二面の読取データがテスト画像の読み取り結果を含む場合に、第二面の読取データを選択してもよい。生成部403は、選択手段により選択された第二面の読取データに基づき階調補正条件を生成してもよい。
【0059】
[観点13]
図8が示すように、選択部410は、第一面の読取データと第二面の読取データとをそれぞれ解析し、第一面の読取データと第二面の読取データとのいずれがテスト画像の読み取り結果を含むかを判定してもよい。これにより、選択部410はテスト画像の読み取り結果を含む読取データを選択してもよい。生成部403は、選択手段により選択された読取データに基づき階調補正条件を生成する。
【0060】
[観点14]
図9が示すように、選択部410が第一面の読取データを選択した場合、イメージリーダ110は、シートの第二面の読み取りをスキップしてもよい。これにより、キャリブレーションに要する時間が短縮されるようになろう。
【0061】
[観点15]
図4が示すように、縮小部421は、第一面の読取データを縮小した第一縮小データと第二面の読取データを縮小した第二縮小データを生成する縮小手段として機能する。解析部420は、第一縮小データと第二縮小データとを解析する解析手段として機能する。選択部410は、第一縮小データの解析結果と第二縮小データの解析結果との少なくとも一方に基づき、第一面の読取データと第二面の読取データとのうちテスト画像の読み取り結果を含む読取データを選択してもよい。このようにサイズが縮小された読取データを解析することで、解析時間が短縮されるようになろう。
【0062】
[観点16]
プリンタ100は画像データに基づき画像を形成する画像形成手段として機能する。イメージリーダ110は、シートが載置されるトレイと、トレイ上のシートを搬送する搬送部とを有し、搬送部により搬送されたシートを読み取る読取手段として機能する。制御部10は、画像形成手段にテスト画像をシートの片面に形成させ、搬送部にテスト画像が形成されたシートを搬送させ、テスト画像が形成されたシートの第1面の読取結果に関する第1読取データを取得し、テスト画像が形成されたシートの第1面と異なる第2面の読取結果に関する第2読取データを取得する取得手段として機能する。選択部410は、取得手段により取得された第1読取データと第2読取データとからテスト画像に関する読取結果に関する読取データを選択する選択手段として機能する。CPU111は、画像形成手段により形成される出力画像の濃度を、選択手段により選択された読取データに基づいて制御する制御手段として機能する。
【0063】
画像処理部118は、画像データを階調補正条件に基づいて変換する変換手段として機能してもよい。制御手段(例:CPU111)は、選択手段により選択された読取データに基づいて階調補正条件を生成ししてもよい。画像形成手段(例:プリンタ100)は、変換手段により変換された画像データに基づいて出力画像を形成してもよい。
【0064】
画像形成手段(例:プリンタ100)は画像形成条件(例:転写条件)に基づいて制御されてもよい。制御手段(例:CPU111)は、選択手段により選択された読取データに基づいて画像形成条件を決定してもよい。
【0065】
図10が例示するように、読取手段は、搬送部により搬送されたシートの第1面を読み取る第1センサ(例:72A)と、シートの第2面を読み取る第2センサ(例:72B)と、を有してもよい。
【0066】
制御部10は情報処理装置の一例である。制御部10はパーソナルコンピュータ(PC)により実現されてもよい。制御部10は、読取装置から出力されたシートの第1面の読取結果に関する第1読取データを取得し、読取装置から出力されたシートの第1面と異なる第2面の読取結果に関する第2読取データを取得する取得手段として機能してもよい。制御部10は、第1読取データと第2読取データとから、プリンタによりシートの片面に印刷されたテスト画像の読取結果に関する読取データを選択する選択手段として機能してもよい。制御部10は、プリンタにより形成される画像の階調特性を補正する階調補正条件を、選択手段により選択された読取データに基づいて生成する生成手段として機能してもよい。
図10が示すように、制御部10は、読取装置の第1センサから出力された第1読取データを取得し、読取装置の第2センサから出力された第2読取データを取得してもよい。
【0067】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項が添付される。
【符号の説明】
【0068】
1:画像形成装置、10:制御部、100:プリンタ、110:イメージリーダ