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特許7421380ステッピングモータ制御装置、ムーブメント、時計及びステッピングモータ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】ステッピングモータ制御装置、ムーブメント、時計及びステッピングモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   G04C 3/14 20060101AFI20240117BHJP
   H02P 8/02 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
G04C3/14 X
H02P8/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020045057
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021148439
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】佐久本 和実
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-203191(JP,A)
【文献】特開2010-85730(JP,A)
【文献】特開2010-44315(JP,A)
【文献】実開昭58-77487(JP,U)
【文献】特開2005-160236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 1/00 - 99/00
H02P 8/00 - 8/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指針を回転させるロータと、前記ロータを回転させるための磁束を発生させるコイルとを備えるステッピングモータを駆動させる駆動部と、
前記コイルに第1の電圧を供給する供給部と、
前記供給部が前記コイルに供給する前記第1の電圧を第2の電圧まで昇圧させる昇圧部と、
前記ロータが衝撃により回転した場合に発生する誘起電圧を検出する衝撃検出部と、
前記衝撃検出部が検出する結果に基づいて、前記昇圧部を制御する制御部と、
前記衝撃検出部が検出する誘起電圧が所定の閾値を超えた場合に、衝撃ありと判定する判定部とを備え、
前記制御部は、前記判定部が衝撃ありと判定してから所定時間が経過するまで、前記第2の電圧を前記供給部に供給させ続ける
ステッピングモータ制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、複数の異なる閾値に基づいて、複数段階の衝撃の大きさを判定し、
前記制御部は、前記判定部が判定する前記複数段階の衝撃の大きさに基づいた大きさの前記第2の電圧となるように、前記昇圧部を制御する、
請求項に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記判定部が判定する前記複数段階の衝撃の大きさのうち、衝撃が大きいほど、前記供給部に供給される前記第2の電圧が大きくなるように、前記昇圧部を制御する
請求項に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項4】
前記昇圧部は、前記第2の電圧が前記第1の電圧の2倍の電圧となるように、前記第1の電圧を昇圧する
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置と、
前記ステッピングモータと
を備えるムーブメント。
【請求項6】
請求項に記載のムーブメントを備える時計。
【請求項7】
指針を回転させるロータ、および前記ロータを回転させるための磁束を発生させるコイル、を備えるステッピングモータの前記ロータが衝撃により回転した場合に発生する誘起電圧を検出し、
検出した前記誘起電圧が所定の閾値を超えたか否かに基づいて前記衝撃の有無を判定し、
前記衝撃の有無の判定結果に基づいて、第1の電圧を第2の電圧まで昇圧し、
前記第2の電圧を前記ステッピングモータの前記コイルに供給する、
ステッピングモータ制御方法であって、
検出された誘起電圧が所定の閾値を超えた場合に、衝撃ありと判定し、
衝撃ありと判定されてから所定時間が経過するまで、前記第2の電圧を前記ステッピングモータの前記コイルに供給し続ける
ステッピングモータ制御方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータ制御装置、ムーブメント、時計及びステッピングモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時計に与えられた衝撃を検出する技術として、ロータの振動に起因してコイルに発生する誘起電圧を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-172677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような技術では、時計に与えられた衝撃を検出した場合に、ロータの回転を制動するためのパルス(制動パルス)をコイルに印加することにより針飛びを抑制していた。しかしながら、指針のモーメントと、衝撃によるエネルギーによっては、制動パルスをコイルに印加したにも関わらず、針飛びが発生してしまう場合がある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、指針の針飛びを抑止することができるステッピングモータ制御装置、ムーブメント、時計及びステッピングモータ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置は、指針を回転させるロータと、前記ロータを回転させるための磁束を発生させるコイルとを備えるステッピングモータを駆動させる駆動部と、前記コイルに第1の電圧を供給する供給部と、前記供給部が前記コイルに供給する前記第1の電圧を第2の電圧まで昇圧させる昇圧部と、前記ロータが衝撃により回転した場合に発生する誘起電圧を検出する衝撃検出部と、前記衝撃検出部が検出する結果に基づいて、前記昇圧部を制御する制御部と、前記衝撃検出部が検出する誘起電圧が所定の閾値を超えた場合に、衝撃ありと判定する判定部とを備え、前記制御部は、前記判定部が衝撃ありと判定してから所定時間が経過するまで、前記第2の電圧を前記供給部に供給させ続ける
【0008】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記判定部は、複数の異なる閾値に基づいて、複数段階の衝撃の大きさを判定し、前記制御部は、前記判定部が判定する前記複数段階の衝撃の大きさに基づいた大きさの前記第2の電圧となるように、前記昇圧部を制御する。
【0009】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記制御部は、前記判定部が判定する前記複数段階の衝撃の大きさのうち、衝撃が大きいほど、前記供給部に供給される前記第2の電圧が大きくなるように、前記昇圧部を制御する。
【0010】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記昇圧部は、前記第2の電圧が前記第1の電圧の2倍の電圧となるように、前記第1の電圧を昇圧する。
【0011】
本発明の一態様に係るムーブメントは、上述したステッピングモータ制御装置と、前記ステッピングモータとを備える。
【0012】
本発明の一態様に係る時計は、上述したムーブメントを備える。
【0013】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御方法は、指針を回転させるロータ、および前記ロータを回転させるための磁束を発生させるコイル、を備えるステッピングモータの前記ロータが衝撃により回転した場合に発生する誘起電圧を検出し、検出した前記誘起電圧が所定の閾値を超えたか否かに基づいて前記衝撃の有無を判定し、前記衝撃の有無の判定結果に基づいて、第1の電圧を第2の電圧まで昇圧し、前記第2の電圧を前記ステッピングモータの前記コイルに供給する方法であって、検出された誘起電圧が所定の閾値を超えた場合に、衝撃ありと判定し、衝撃ありと判定されてから所定時間が経過するまで、前記第2の電圧を前記ステッピングモータの前記コイルに供給し続ける
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、指針の針飛びを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係る時計の機能構成の一例を示す図である。
図2】第1の実施形態に係るモータ駆動回路、衝撃検出回路、昇圧回路及びステッピングモータの一例を示す図である。
図3】第1の実施形態に係るコイル両端の電圧波形の一例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る時計の動作の一例を示す図である。
図5】第1の実施形態に係るコイルに流れる電流波形の一例を示す図である。
図6】第1の実施形態に係る針モーメント毎の針飛び数の一例をまとめた表である。
図7】第1の実施形態に係る針モーメント毎の針飛び数の一例をまとめた表である。
図8】第2の実施形態に係る時計の機能構成の一例を示す図である。
図9】第2の実施形態に係るモータ駆動回路、昇圧回路及びステッピングモータの一例を示す図である。
図10】第2の実施形態に係るコイル両端の電圧波形の一例を示す図である。
図11】第2の実施形態に係る時計の動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
図1から図7を参照しながら、第1の実施形態に係る時計の一例について説明する。図1は、第1の実施形態に係る時計1の構成の一例を示す図である。同図に示すように、時計1は、発振回路101と、分周回路102と、制御回路(制御部)103と、主駆動パルス発生回路104と、補正駆動パルス発生回路105と、モータ駆動回路(駆動部)106と、ステッピングモータ107と、時計ケース108と、アナログ表示部109と、ムーブメント110と、指針111と、カレンダ表示部112と、回転検出回路113と、衝撃検出回路(衝撃検出部)114と、昇圧回路(昇圧部)115と、針飛び抑制パルス発生回路116とを備える。
以後、発振回路101と、分周回路102と、制御回路103と、主駆動パルス発生回路104と、補正駆動パルス発生回路105と、モータ駆動回路106と、回転検出回路113と、衝撃検出回路114と、昇圧回路115と、針飛び抑制パルス発生回路116とをステッピングモータ制御装置10とも記載する。
【0017】
発振回路101は、所定の周波数を有する信号を発生させ、発生した信号を分周回路102に送信する。分周回路102は、発振回路101から受信した信号を分周して計時の基準となる時計信号を発生させ、発生した時計信号を制御回路103に送信する。制御回路103は、分周回路102から受信した時計信号等に基づいて、時計1の各部に制御信号を送信し、時計1の各部の動作を制御する。
【0018】
主駆動パルス発生回路104は、制御回路103から受信した制御信号に基づいて、ステッピングモータ107を駆動する主駆動パルスP1を発生させ、発生した主駆動パルスP1をモータ駆動回路106に出力する。主駆動パルスP1は、後述するステッピングモータ107のロータ202を1ステップ、すなわち180度正転方向に回転させるために出力される櫛歯状の電圧パルスである。なお、ここで言う正転方向は、指針111を時計周りに回転させるために後述するロータ202が回転する方向である。一方、逆転方向は、正転方向と反対の方向である。
【0019】
補正駆動パルス発生回路105は、制御回路103から受信した制御信号に基づいて、ステッピングモータ107を駆動する補正駆動パルスP2を発生させ、発生した補正駆動パルスP2をモータ駆動回路106に出力する。補正駆動パルスP2は、後述するステッピングモータ107のロータ202が主駆動パルスP1により正転方向に回転しなかった場合に出力される電圧パルスである。したがって、補正駆動パルスP2のデューティ比は、主駆動パルスP1のデューティ比より大きく設定されており、補正駆動パルスP2のエネルギーは、主駆動パルスP1のエネルギーより大きい。
【0020】
モータ駆動回路106は、主駆動パルス発生回路104から受信した主駆動パルスP1と、補正駆動パルス発生回路105から受信した補正駆動パルスP2に基づいて、ステッピングモータ107を駆動する。
【0021】
ステッピングモータ107は、モータ駆動回路106により駆動され、輪列を介して指針111を回転させる。
【0022】
回転検出回路113は、モータ駆動回路106がステッピングモータ107に主駆動パルスP1を供給した際の、ロータ202の回転を検出する。回転検出回路113がロータ202の回転に関する信号として、ロータ202の回転を検出しないことを示す信号を制御回路103に出力すると、制御回路103は補正駆動パルス発生回路105に、補正駆動パルスP2を出力させる。補正駆動パルスP2のエネルギーは主駆動パルスP1のエネルギーより大きいため、主駆動パルスP1を与えた場合に比べ、補正駆動パルスP2を与えた場合の方が、ロータ202は回転しやすくなる。
【0023】
衝撃検出回路114は、ステッピングモータ107が備えるロータ202が停止している際に、時計1の外部から与えられた衝撃によるロータ202の回転を検出する。衝撃検出回路114は、ロータ202の回転に関する信号として、検出した衝撃に関する信号を制御回路103に出力する。制御回路103は、衝撃検出回路114から出力された衝撃に関する信号に基づいて、モータ駆動回路106を制御する。
【0024】
昇圧回路115は、制御回路103により制御され、モータ駆動回路106に供給する電圧を昇圧させる。具体的には、昇圧回路115は、モータ駆動回路106に供給する電圧を第1の電圧から、第2の電圧まで昇圧させる。以降の説明において、モータ駆動回路106には、電源電圧が供給される場合の一例について説明する。
制御回路103は、衝撃検出回路114及び回転検出回路113から受信するロータ202の回転に関する信号に基づき、昇圧回路115がモータ駆動回路106に供給する電源電圧を制御する。
【0025】
針飛び抑制パルス発生回路116は、制御回路103から受信した制御信号に基づいて、ステッピングモータ107を駆動する針飛び抑制パルスを発生させ、発生した針飛び抑制パルスをモータ駆動回路106に出力する。衝撃検出回路114が時計1の外部から与えられた衝撃によるロータの回転を検出した場合に、針飛び抑制パルス発生回路116は、針飛び抑制パルスを発生させる。針飛び抑制パルスは、衝撃検出回路114が衝撃によるロータの回転を検出した直前の駆動パルスと同一の位相のパルスである。
【0026】
時計ケース108は、発振回路101と、分周回路102と、制御回路103と、主駆動パルス発生回路104と、補正駆動パルス発生回路105と、モータ駆動回路106と、ステッピングモータ107と、アナログ表示部109と、ムーブメント110と、指針111と、カレンダ表示部112と、回転検出回路113と、衝撃検出回路114と、昇圧回路115と、針飛び抑制パルス発生回路116とを収納している筐体である。
【0027】
アナログ表示部109は、目盛りが刻まれた文字盤である。ムーブメント110は、時計1の各部を駆動させるための機械式の機構である。指針111は、時針、分針、秒針その他の針を含む。カレンダ表示部112は、ステッピングモータ107により駆動され、日付を表示する。
【0028】
図2は、第1の実施形態に係るモータ駆動回路106、衝撃検出回路114、昇圧回路115及びステッピングモータ107の一例を示す図である。同図を参照しながら、第1の実施形態に係るモータ駆動回路106、衝撃検出回路114、昇圧回路115及びステッピングモータ107の構成の一例について説明する。
同図に示すように、ステッピングモータ107は、ステータ201と、ロータ202と、ロータ収納用貫通孔203と、内ノッチ204と、内ノッチ205と、外ノッチ206と、外ノッチ207と、磁心208と、コイル209とを備える。
【0029】
ステータ201は、U字状に湾曲しており、磁性材料で作製されている部材である。ロータ202は、円柱状に形成されており、ステータ201に形成されたロータ収納用貫通孔203に対して回転可能な状態で挿入されている。また、ロータ202は、着磁されているため、N極及びS極を有する。ロータ202は、正転方向に回転することにより輪列を介して指針111を時計周りに回転させ、逆転方向に回転することにより輪列を介して指針111を反時計周りに回転させる。
【0030】
内ノッチ204及び内ノッチ205は、ロータ収納用貫通孔203の壁面に形成された切り欠きであり、ステータ201に対するロータ202の停止位置を決定している。すなわち、例えば、図2に示すように、ロータ202は、コイル209が励磁されていない場合、磁極軸が内ノッチ204と内ノッチ205とを結ぶ線分と直交する位置で静止する。
【0031】
外ノッチ206及び外ノッチ207は、それぞれ湾曲しているステータ201の内側及び外側に形成されている切り欠きであり、ロータ収納用貫通孔203との間に過飽和部を形成している。ここで、過飽和部は、ロータ202の磁束により磁気飽和せず、コイル209が励磁されたときに磁気飽和して磁気抵抗が大きくなる部分である。
【0032】
磁心208は、磁性材料で作製されている棒状の部材であり、ステータ201の両端と接合されている。コイル209は、磁心208に巻き付けられており、端子ОUT1に一端が接続されており、端子ОUT2に他端が接続されている。
コイル209は、端子ОUT1から端子ОUT2に、又は端子ОUT2から端子ОUT1に電流が流れることにより、ロータ202を回転させるための磁束を発生させる。
【0033】
モータ駆動回路106は、トランジスタTP1と、トランジスタTP2と、トランジスタTN1と、トランジスタTN2とを備える。モータ駆動回路106は、ロータ202の磁極軸が内ノッチ204と内ノッチ205とを結ぶ線分と直交した状態で静止している場合において、モータ駆動回路106が備えるそれぞれのトランジスタのゲート電圧を制御することにより、ステッピングモータ107を制御する。
【0034】
トランジスタTP1及びトランジスタTP2は、pチャネル型のトランジスタである。トランジスタTN1及びトランジスタTN2は、nチャネル型のトランジスタである。
モータ駆動回路106は、トランジスタTP1及びトランジスタTN2をオンさせることにより、昇圧回路115により供給される電源電圧をコイル209に印加し、端子ОUT1から端子ОUT2に電流を流す。
モータ駆動回路106は、トランジスタTP2及びトランジスタTN1をオンさせることにより、昇圧回路115により供給される電源電圧をコイル209に印加し、端子ОUT2から端子ОUT1に電流を流す。
【0035】
ここで、昇圧回路115と、モータ駆動回路106との接続点を供給部Pと記載する。供給部Pは、コイル209に電流を流すための電源電圧を昇圧回路115から供給する。昇圧回路115は、制御回路103から取得した昇圧指示信号IBに基づき、供給部Pに電源電圧を印加する。
【0036】
モータ駆動回路106は、ロータ202を回転させたあとの駆動状態において、トランジスタTP1及びトランジスタTP2をオンし、コイル209の端子ОUT1及び端子ОUT2の電位を、それぞれ電源電位にすることで、コイル209の両端の電位を同電位に制御する。
【0037】
衝撃検出回路114は、トランジスタTP3と、トランジスタTP4と、電流検出抵抗RS1と、電流検出抵抗RS2とを備える。衝撃検出回路114は、制御回路103によって制御される。具体的には、制御回路103は、時計1の外部から与えられた衝撃によるロータ202の回転を検出する場合、トランジスタTP1に代えてトランジスタTP3を、トランジスタTP2に代えてトランジスタTP4を、オンさせる。この状態において、外部からの衝撃によりロータ202が回転すると、コイル209の両端(端子ОUT1及び端子ОUT2)には誘起電圧が発生する。衝撃検出回路114は、外部からの衝撃によりロータ202が回転した場合に発生する誘起電圧を検出する。
衝撃検出回路114は、検出した誘起電圧を制御回路103に出力する。
【0038】
なお、検出した誘起電圧が小さい場合において、制御回路103は、トランジスタTP3及びトランジスタTP4をスイッチング動作させることにより、発生した誘起電圧を増幅してもよい。
その場合、衝撃検出回路114は、衝撃判定回路(判定部)1141を備えていてもよい。衝撃判定回路1141は、増幅された誘起電圧が閾値を超えたか否かを判定する。衝撃判定回路1141は、判定した結果を制御回路103に出力する。
【0039】
図3は、第1の実施形態に係るコイル209両端の電圧波形の一例を示す図である。図3(A)は端子ОUT1の電位を、図3(B)は端子ОUT2の電位をそれぞれ示す。
制御回路103は、駆動周期T1ごとに、主駆動パルス発生回路104に主駆動パルスP1を発生させ、指針111を運針させる。時計1は1秒ごとに指針111を運針させるため、駆動周期T1は1秒である。この一例において、制御回路103は、時刻t11及び時刻t15において、主駆動パルスP1を発生させている。
【0040】
制御回路103は、主駆動パルスP1を発生させたのち、所定の回転検出区間T2の間、ロータ202が回転したか否かを監視する。制御回路103は、回転検出回路113がロータ202の回転を検出しない場合、補正駆動パルス発生回路105に補正駆動パルスP2を出力させる。回転検出区間T2の間に、回転検出回路113がロータ202の回転を検出した場合、補正駆動パルスP2は出力される。図3に示す一例では、回転検出区間T2の詳しい動作は図示していないが、回転検出回路113がロータ202の回転を検出した場合を示しており、制御回路103は、補正駆動パルス発生回路105から補正駆動パルスP2を発生させない。
【0041】
制御回路103は、所定の回転検出区間T2の後、時計1の外部から与えられた衝撃によるロータ202の回転を、所定の期間検出する(衝撃検出区間T3)。制御回路103は、衝撃検出区間T3において、トランジスタTP3及びトランジスタTP4をスイッチング動作させることにより、発生した誘起電圧を増幅させる。
同図に示す一例では、衝撃検出区間T3の期間である時刻t12において衝撃が発生している。時刻t12において衝撃が発生しているため、端子ОUT1の電位は、誘起電圧により降下する。時刻t12において降下した電位は、時刻t12から時刻t13において、トランジスタTP3及びトランジスタTP4のスイッチング動作により増幅される。増幅された電位は、時刻t13において所定の閾値Vthを超える。所定の閾値Vthとは、例えば衝撃判定回路1141が備えるインバータの入力閾値である。衝撃判定回路1141は、衝撃により生じた誘起電圧が所定の閾値Vthを超えた場合に衝撃ありと判定し、判定結果を制御回路103に出力する。
【0042】
制御回路103は、衝撃判定回路1141が衝撃を検出すると、昇圧回路115に対し昇圧指示信号IBを出力する。昇圧指示信号IBとは、昇圧回路115に電源電圧を昇圧させるための信号である。時刻t14における針飛び抑制パルスP3は、時刻t12において発生した衝撃に対する針飛び抑制パルスP3であるため、その直前に印加した主駆動パルスP1(つまり、時刻t11において印加した主駆動パルスP1)と同位相のパルスである。
この一例において、昇圧回路115は、電源電圧を、主駆動パルスP1印加時(すなわち、非昇圧時)の電位Lの2倍である電位2Lに昇圧している。
【0043】
なお、昇圧回路115は、昇圧を行った後、所定の期間、昇圧された電位を維持し続けてもよい。その場合、制御回路103は、衝撃判定回路1141が衝撃ありと判定してから所定時間が経過するまで、昇圧された電源電圧(第2の電圧)を供給部Pに供給させ続ける。制御回路103は、衝撃判定回路1141が衝撃ありと判定してから所定時間が経過後、昇圧された電源電圧を、非昇圧時の電源電圧に降圧する。
【0044】
なお、衝撃検出区間T3のうち、複数回の衝撃を検出した場合は、複数回の針飛び抑制パルスP3を発生させてもよい。その場合、昇圧回路115は、所定の期間、昇圧された電位を維持し続けているため、再度の昇圧をしなくとも、昇圧された電源電圧を供給部Pに印加することができる。
【0045】
図4は、第1の実施形態に係る時計1の動作の一例を示す図である。同図を参照しながら時計1の動作の一例について説明する。同図を参照しながら説明する時計1の動作の一例は、駆動周期T1における動作の一例である。すなわち、時計1は、駆動周期T1ごとに同図に示す動作を繰り返す。
【0046】
(ステップS110)制御回路103は、主駆動パルス発生回路104に主駆動パルスP1を出力させることにより、ステッピングモータ107を駆動する。
(ステップS120)制御回路103は、所定の回転検出区間T2が終了したか否かを判定する。制御回路103は、所定の回転検出区間T2が終了したことを判定するまで、この判定を繰り返す(ステップS120;NO)。制御回路103は、所定の回転検出区間T2が終了したことを判定した場合には処理を、ステップS130に進める。
(ステップS130)制御回路103は、衝撃検出回路114により時計1が外部から衝撃を受けたか否かを検出する。制御回路103は、衝撃検出回路114が衝撃を検出した場合(ステップS130;YES)には、処理をステップS140に進める。制御回路103は、衝撃検出回路114が衝撃を検出しない場合(ステップS130;NO)には、処理をステップS150に進める。
【0047】
(ステップS140)制御回路103は、昇圧回路115に昇圧指示信号IBを出力させ、針飛び抑制パルス発生回路116に針飛び抑制パルスP3を発生させる。モータ駆動回路106は、昇圧された電源電圧を印加することによりコイル209を励磁し、ロータ202が衝撃により回転してしまうことを防ぐ。
(ステップS150)制御回路103は、衝撃検出区間T3が終了していない場合(ステップS150;NO)には、処理をステップS130に進める。制御回路103は、衝撃検出区間T3が終了した場合(ステップS150;YES)には、処理を終了する。
【0048】
図5は、第1の実施形態に係るコイルに流れる電流波形の一例を示す図である。同図において横軸は時刻を示し、縦軸はコイル209に流れる電流を示す。波形W1は非昇圧時の波形であり、例えば電源電圧が1.57Vの場合の波形である。波形W2は昇圧時の波形であり、例えば電源電圧が3Vの場合の波形である。
【0049】
時刻0ms(ミリ秒)の時点において、制御回路103は、針飛び抑制パルスP3を発生させる。針飛び抑制パルスP3の発生と同時に、コイル209に電流が流れ始める。同図に示す一例においては、2ms後の時点において、ほぼ目標の電流値に達している。電流値が目標値に達するまでの時間はコイル209のインダクタンス成分等に依存する。
なお。与えられた衝撃からロータ202の回転を抑制するには、より早く目標の電流値に達することが望ましく、そのためには、昇圧の時間を短くすることが望ましい。例えば、昇圧回路115が不図示のチャージポンプにより昇圧する構成とする場合、昇圧時の電源電圧値を非昇圧時の2倍(すなわち、第2の電圧が第1の電圧の2倍の電圧となるように)と設定することで、より早く目標の電流値に達することができる。
【0050】
[第1の実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、ステッピングモータ制御装置10は、衝撃検出回路114を備えることにより、時計1の外部から与えられた衝撃を検出する。ステッピングモータ制御装置10は、モータ駆動回路106と、供給部Pと、昇圧回路115と、制御回路103とを備えることにより、時計1の外部から与えられた衝撃を検出した場合に、ステッピングモータ107に昇圧した電源電圧を印加し、コイル209を励磁する。したがって、本実施形態によれば、衝撃によりロータ202が意図しない回転をしてしまうことを抑止することができる。
【0051】
ここで、時計1が備える指針111の針モーメントが大きいほど、大きなエネルギーの針飛び抑制パルスP3を与えなければ、衝撃に対する針飛びの発生を抑止することはできない。したがって、時計1が備える指針111の針モーメントは小さければ、衝撃に対する針飛びの発生を抑止することができる。一方、時計1のデザイン性を考慮して、針モーメントの大きな指針111が採用される場合がある。本実施形態においては、時計1の外部から与えられた衝撃を検出した場合に、ステッピングモータ107に昇圧した電源電圧を印加するため、針モーメントが大きい指針111を採用した場合においても、針飛びを抑止することができる。
【0052】
図6は、第1の実施形態に係る針モーメント毎の針飛び数の一例をまとめた表である。同図では、針飛び数を、“衝撃検出無し”の場合と、“衝撃検出有り”の場合と、に分けてまとめている。同図は、ハンマー衝撃試験器により、時計1の外部から地上50cm(センチメートル)落下に相当にする衝撃を与えた場合の針飛び数の結果である。“衝撃検出無し”に示す結果は、衝撃検出回路114が衝撃を検出した場合においても、針飛び抑制パルスP3を与えない場合の結果である。“衝撃検出有り”に示す結果は、衝撃検出回路114が衝撃を検出した場合に、針飛び抑制パルスP3を与えた場合の結果である。
図6において、針モーメントの単位は、mg・mm(ミリグラム・ミリメートル)で示され、針飛び数はstep数で示される。step数とは、ロータ202の回転に応じた値であり、ロータ202が180度回転することを1stepと称する。
【0053】
図6に示すように、針飛び抑制パルスP3を与えない場合において、針モーメントが7mg・mmでは針飛びが発生しない。しかしながら、針モーメントが10mg・mm以上では1stepの針飛びが発生する。
針飛び抑制パルスP3を与えた場合においては、10mg・mm以下の針モーメントでは針飛びが発生しない。しかしながら、針モーメントが15mg・mm以上の針モーメントでは2stepの針飛びが発生する。ここで、針飛び抑制パルスP3を与えない場合に比べて、針飛び抑制パルスP3を与えた場合の方が針飛び数は大きくなる。針飛び抑制パルスP3を与えた場合、コイル209が励磁されることにより、衝撃によるロータ202の回転が大きいと、ロータ202の位相が180度進んだ(又は遅れた)状態において、ステータ201とロータ202とが反発しあい、さらに180度進める駆動力を得るためである。
【0054】
図7は、第1の実施形態に係る針モーメント毎の針飛び数の一例をまとめた表である。同図では、針飛び数を、“印加電圧1.57V”の場合と、“印加電圧3V”の場合と、に分けてまとめている。同図は、図6と同様に、ハンマー衝撃試験器により、時計1の外部から地上50cm落下に相当にする衝撃を与えた場合の針飛び数の結果である。“1.57V”に示す結果は、針飛び抑制パルスP3を非昇圧状態(1.57V)で与えた場合の結果である。“3V”に示す結果は、針飛び抑制パルスP3を昇圧状態(3V)で与えた場合の結果である。
図7においても、図6と同様に針モーメントの単位を、mg・mmで示し、針飛び数をstep数で示す。
【0055】
図7に示すように、針飛び抑制パルスP3を非昇圧状態(1.57V)で与えた場合においては、10mg・mm以下の針モーメントでは針飛びが発生しない。しかしながら、針モーメントが15mg・mm以上では2stepの針飛びが発生する。
針飛び抑制パルスP3を昇圧状態(3V)で与えた場合においては、15mg・mm以下の針モーメントでは針飛びが発生しない。しかしながら、針モーメントが20mg・mm以上では2stepの針飛びが発生する。
したがって、針飛び抑制パルスP3を非昇圧状態(1.57V)で与えた場合にくらべ、針飛び抑制パルスP3を昇圧状態(3V)で与えた場合の方が、針飛びを抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、昇圧回路115は、昇圧を行った後、所定の期間、昇圧された電位を維持し続ける。
ここで、所定期間内に複数の衝撃が与えられる場合がある。例えば、時計1に対して落下等により振動が与えられた場合、1度目の衝撃の後、短い期間内(例えば1秒以内)に、2度目の衝撃がある場合がある。このような場合において、制御回路103針飛び抑制パルスP3を与えるたびに昇圧及び降圧を行うと、衝撃の回数だけ昇圧及び降圧を繰り返すことになる。
【0057】
本実施形態によれば、昇圧回路115は、昇圧を行った後、所定の期間、昇圧された電位を維持し続けるため、複数の衝撃に対して、複数回の昇圧及び降圧を繰り返すことがない。したがって、昇圧及び降圧に伴う消費電力を抑制することができる。また、本実施形態によれば、2度目以降の衝撃に対しては昇圧に要する時間がないため、衝撃を検出してから、昇圧されるまでの期間を要しない。したがって、本実施形態によれば、より大きなエネルギーで針飛び抑制パルスP3を与えることができる。
【0058】
[第2の実施形態]
図8から図11を参照しながら、第2の実施形態に係る時計1Aの一例について説明する。図8は、第2の実施形態に係る時計1Aの機能構成の一例を示す図である。同図に示す時計1Aは、時計1の変形例である。時計1Aは、衝撃力判別回路117を備える点において、時計1とは異なる。図1で説明した構成については、同様の符号を付すことにより、説明を省略する場合がある。衝撃力判別回路117は、第1の実施形態において説明した衝撃判定回路1141の一例である。
【0059】
時計1Aは、ステッピングモータ制御装置10Aを備える。ステッピングモータ制御装置10Aは、ステッピングモータ制御装置10の一例である。ステッピングモータ制御装置10Aは、衝撃力判別回路117を備える点においてステッピングモータ制御装置10とは異なる。
衝撃力判別回路117は、時計1に外部から与えられる衝撃の大きさを判別する。具体的には、衝撃力判別回路117は、複数の異なる閾値を有し、衝撃検出回路114が出力する電位に基づき、衝撃の大きさを複数段階に判定する。
【0060】
図9は、第2の実施形態に係るモータ駆動回路、昇圧回路及びステッピングモータの一例を示す図である。同図を参照しながら、衝撃力判別回路117について説明する。図2で説明した内容については、同様の符号を付すことにより、説明を省略する場合がある。
衝撃力判別回路117は、インバータ1171と、インバータ1172と、OR回路1173と、インバータ1174と、インバータ1175と、OR回路1176とを備える。
インバータ1171及びインバータ1174の入力端子には、それぞれコイル209の一端である端子ОUT1の電位が入力される。インバータ1172及びインバータ1175の入力端子には、それぞれコイル209の他端である端子ОUT2の電位が入力される。
【0061】
衝撃検出区間T3において、端子ОUT1及び端子ОUT2の電位は電源電圧と同電位であるため、衝撃力判別回路117が備えるそれぞれのインバータには、Hレベルの電位が入力される。すなわち、衝撃を検出していない状態において、OR回路1173及びOR回路1176の出力電位はそれぞれローレベルである。
OR回路1173及びOR回路1176は、いずれかのインバータに入力される電位が、インバータの入力閾値を超えた場合に、ハイレベルを出力する。
【0062】
この一例において、インバータ1171及びインバータ1172の入力閾値は高く、インバータ1174及びインバータ1175の入力閾値は低く設定されている。すなわち、時計1に与えられる衝撃が小さい場合には、インバータ1171及びインバータ1172に接続されるOR回路1173のみがハイレベルを出力する。時計1に与えられる衝撃が大きい場合には、更に、インバータ1174及びインバータ1175に接続されるOR回路1176に接続されるOR回路1176がハイレベルを出力する。よって、衝撃力判別回路117は、衝撃の大きさを検出することができる。
【0063】
衝撃力判別回路117は、判定した衝撃の大きさを、制御回路103に出力する。制御回路103は、供給部Pに供給される電源電圧を、衝撃力判別回路117が判定した複数段階の衝撃の大きさに基づいた大きさの第2の電圧となるように昇圧回路115を制御する。
制御回路103は、衝撃力判別回路117が判定した複数段階の衝撃の大きさのうち、衝撃の大きさが大きい場合には、昇圧回路115に昇圧させることにより供給部Pに高い電源電圧を供給する。制御回路103は、衝撃力判別回路117が判定した複数段階の衝撃の大きさのうち、衝撃の大きさが小さい場合には、昇圧回路115に昇圧させないことにより供給部Pに低い電源電圧である通常駆動時の電源電圧を供給する。すなわち、制御回路103は、衝撃力判別回路117が判定する複数段階の衝撃の大きさのうち、衝撃が大きいほど、供給部Pに供給される第2の電圧が大きくなるように、昇圧回路115を制御する。
【0064】
図10は、第2の実施形態に係るコイル209の両端の電圧波形の一例を示す図である。図10(A)は端子ОUT1の電位を示し、図10(B)は端子ОUT2の電位を示し、図10(C)は制御回路103が出力する昇圧指示信号IBを示し、図10(D)はコイル209の両端の電位を示す。同図には、衝撃検出区間T3におけるそれぞれの電位の時間変化を示している。同図を参照しながら、衝撃検出区間T3において、小さい衝撃を検出した場合と、大きい衝撃を検出した場合の、それぞれの動作を説明する。
この一例において、小さい衝撃とは、時計1の外部から与えられる衝撃力が小さい衝撃であり、大きい衝撃とは、時計1の外部から与えられる衝撃力が大きい衝撃である。
【0065】
時刻t21において、時計1の外部から衝撃が与えられる。時刻t21における衝撃は、小さい衝撃である。時刻t21において衝撃が発生しているため、端子ОUT1の電位は、誘起電圧により降下する。時刻t21において降下した電位は、時刻t21から時刻t22において、トランジスタTP3及びトランジスタTP4のスイッチング動作により増幅される。増幅された電位は、時刻t22において第1の閾値Vth1を超える。第1の閾値Vth1とは、例えばインバータ1171及びインバータ1172の入力閾値である。OR回路1173は、衝撃により生じた誘起電圧が第1の閾値Vth1を超えた場合に小さい衝撃ありと判定し、ハイレベルを制御回路103に出力する。
【0066】
時刻t22において、制御回路103は、衝撃力判別回路117から小さい衝撃ありの信号を取得すると、針飛び抑制パルスP3を出力する。時刻t21により発生した衝撃は、小さい衝撃のため、制御回路103は、昇圧指示信号IBを出力しない。したがって、コイル209の両端には、非昇圧時の電源電圧Lによる針飛び抑制パルスP32が印加される。
【0067】
時刻t31において、時計1の外部から衝撃が与えられる。時刻t31における衝撃は、大きい衝撃である。時刻t31において衝撃が発生しているため、端子ОUT2の電位は、誘起電圧により降下する。時刻t31において降下した電位は、時刻t31から時刻t32において、トランジスタTP3及びトランジスタTP4のスイッチング動作により増幅される。増幅された電位は、時刻t32において第2の閾値Vth2を超える。第2の閾値Vth2とは、例えばインバータ1174及びインバータ1175の入力閾値である。OR回路1176は、衝撃により生じた誘起電圧が第2の閾値Vth2を超えた場合に大きい衝撃ありと判定し、ハイレベルを制御回路103に出力する。
【0068】
時刻t32において、制御回路103は、衝撃力判別回路117から大きい衝撃ありの信号を取得すると、針飛び抑制パルスP3を出力する。時刻t31により発生した衝撃は、大きい衝撃のため、制御回路103は、昇圧指示信号IBを出力する。したがって、コイル209の両端には、昇圧時の電源電圧2Lによる針飛び抑制パルスP33が印加される。
【0069】
図11は、第2の実施形態に係る時計1Aの動作の一例を示す図である。同図を参照しながら時計1Aの動作の一例について説明する。同図を参照しながら説明する時計1Aの動作の一例は、駆動周期T1における動作の一例である。すなわち、時計1Aは、駆動周期T1ごとに同図に示す動作を繰り返す。
【0070】
(ステップS210)制御回路103は、主駆動パルス発生回路104に主駆動パルスP1を出力させることにより、ステッピングモータ107を駆動する。
(ステップS220)制御回路103は、所定の回転検出区間T2が終了したか否かを判定する。制御回路103は、所定の回転検出区間T2が終了したことを判定するまで、この判定を繰り返す(ステップS220;NO)。制御回路103は、所定の回転検出区間T2が終了したことを判定した場合には処理を、ステップS230に進める。
(ステップS230)制御回路103は、衝撃検出回路114により時計1が外部から衝撃を受けたか否かを検出する。制御回路103は、衝撃検出回路114が衝撃を検出した場合(ステップS230;YES)には、処理をステップS240に進める。制御回路103は、衝撃検出回路114が衝撃を検出しない場合(ステップS230;NO)には、処理をステップS150に進める。
【0071】
(ステップS240)制御回路103は、衝撃力判別回路117が判別する衝撃の大きさが大きい場合(すなわち、第2の閾値を超えている場合)(ステップS240;YES)には、処理をステップS250に進める。制御回路103は、衝撃力判別回路117が判別する衝撃の大きさが小さい場合(すなわち、第2の閾値を超えていない場合)(ステップS240;NO)には、処理をステップS260に進める。
(ステップS250)制御回路103は、昇圧回路115に電源電圧を昇圧させ、針飛び抑制パルスP3を出力する。
(ステップS260)制御回路103は、昇圧回路115に電源電圧を維持させ、針飛び抑制パルスP3を出力する。
(ステップS270)制御回路103は、衝撃検出区間T3が終了していない場合(ステップS270;NO)には、処理をステップS230に進める。制御回路103は、衝撃検出区間T3が終了した場合(ステップS270;YES)には、処理を終了する。
【0072】
[第2の実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、ステッピングモータ制御装置10は、衝撃力判別回路117を備えることにより、時計1の外部から与えられる衝撃の大きさを検出することができる。また、ステッピングモータ制御装置10は、衝撃の大きさを検出することができるため、衝撃の大きさに応じたエネルギーによりコイル209を励磁することができる。
したがって、第2の実施形態によれば、大きな衝撃が与えられたときに、高い電位で例示することにより、衝撃による針飛びを抑止することができる。
【0073】
また、第2の実施形態によれば、衝撃の大きさに応じて必要なエネルギーを与えることで、エネルギーを抑止することができる。すなわち、第2の実施形態によれば、電池のエネルギーを効率よく使うことができる。
【0074】
なお、上述した時計1が備える機能の全部又は一部は、プログラムとしてコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、このプログラムがコンピュータシステムにより実行されてもよい。コンピュータシステムは、OS、周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えば、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置、インターネット等のネットワーク上のサーバ等が備える揮発性メモリ(Random Access Memory:RAM)である。なお、揮発性メモリは、一定時間プログラムを保持する記録媒体の一例である。
【0075】
また、上述したプログラムは、伝送媒体、例えば、インターネット等のネットワーク、電話回線等の通信回線により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。
【0076】
また、上記プログラムは、上述した機能の全部又は一部を実現するプログラムであってもよい。なお、上述した機能の一部を実現するプログラムは、上述した機能をコンピュータシステムに予め記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるプログラム、いわゆる差分プログラムであってもよい。
【0077】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明したが、具体的な構成が上述した実施形態に限られるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1…時計、101…発振回路、102…分周回路、103…制御回路、104…主駆動パルス発生回路、105…補正駆動パルス発生回路、106…モータ駆動回路、107…ステッピングモータ、108…時計ケース、109…アナログ表示部、110…ムーブメント、111…指針、112…カレンダ表示部、113…回転検出回路、114…衝撃検出回路、115…昇圧回路、116…針飛び抑制パルス発生回路、117…衝撃力判別回路、1141…衝撃判定回路、201…ステータ、202…ロータ、203…ロータ収納用貫通孔、204…内ノッチ、205…内ノッチ、206…外ノッチ、207…外ノッチ、208…磁心、209…コイル、P…供給部、P1…主駆動パルス、P2…補正駆動パルス、P3…針飛び抑制パルス、T1…駆動周期、T2…回転検出区間、T3…衝撃検出区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11