(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】分離装置
(51)【国際特許分類】
C02F 11/125 20190101AFI20240117BHJP
【FI】
C02F11/125 ZAB
(21)【出願番号】P 2020056323
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹 雅史
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/186612(WO,A1)
【文献】特開2019-209270(JP,A)
【文献】特開2009-154068(JP,A)
【文献】特開2003-320491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F11/00-11/20
B01D43/00
B04B1/00-15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部側に設けられ脱水した対象物を排出する対象物排出口、他方の端部側に設けられ分離液を排出する分離液排出口、及び、前記対象物排出口と前記分離液排出口との間に設けられ、前記対象物が投入される複数の対象物投入口が設けられるケーシングと、
前記ケーシングの内部に設けられて前記一方の端部から前記他方の端部への方向である延在方向に沿って延在するスクリュー軸と、
前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第1スクリュー羽根と、
前記第1スクリュー羽根に対して前記延在方向に沿って所定間隔を隔てるように前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第2スクリュー羽根と、
前記対象物が貯留される対象物供給源に接続される母管、及び、前記母管から分岐して前記複数の対象物投入口のそれぞれに接続される複数の分岐管を含む配管部と、
を備え
、
前記母管から前記複数の分岐管に分岐する部分である分岐部は、前記分離液排出口よりも、鉛直方向において、下方側に設けられる、分離装置。
【請求項2】
一方の端部側に設けられ脱水した対象物を排出する対象物排出口、他方の端部側に設けられ分離液を排出する分離液排出口、及び、前記対象物排出口と前記分離液排出口との間に設けられ、前記対象物が投入される複数の対象物投入口が設けられるケーシングと、
前記ケーシングの内部に設けられて前記一方の端部から前記他方の端部への方向である延在方向に沿って延在するスクリュー軸と、
前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第1スクリュー羽根と、
前記第1スクリュー羽根に対して前記延在方向に沿って所定間隔を隔てるように前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第2スクリュー羽根と、
を備え、
前記複数の対象物投入口は、前記ケーシングの外周面において、周方向に等間隔に設けられる
、分離装置。
【請求項3】
一方の端部側に設けられ脱水した対象物を排出する対象物排出口、他方の端部側に設けられ分離液を排出する分離液排出口、及び、前記対象物排出口と前記分離液排出口との間に設けられ、前記対象物が投入される複数の対象物投入口が設けられるケーシングと、
前記ケーシングの内部に設けられて前記一方の端部から前記他方の端部への方向である延在方向に沿って延在するスクリュー軸と、
前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第1スクリュー羽根と、
前記第1スクリュー羽根に対して前記延在方向に沿って所定間隔を隔てるように前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第2スクリュー羽根と、
を備え、
前記複数の対象物投入口は、それぞれ、前記延在方向において同じ位置に設けられる
、分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、2つのスクリュー羽根を設けたスクリューを回転させて、汚泥を搬送しつつ圧搾する分離装置が知られている。この分離装置は、側面に対象物投入口が設けられたケーシングの内部に、2つのスクリュー羽根に挟まれた第1空間と第2空間を形成する。この分離装置は、第1空間で対象物(原汚泥)を脱水して排出し、脱水により生じた分離液を、スクリュー羽根の外周とケーシング内周との間の間隙を介して、第1空間から第2空間に流出させて、排出する。この分離装置は、対象物投入口からの原汚泥が第2空間に流入しないように、第2空間の外周を覆うカバー部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような分離装置において、さらに固液分離効率を高めることができればより好ましい。
【0005】
本発明は、上述の課題を鑑みてなされたものであって、固液分離効率をより高めることが可能な分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成する為に、本開示に係る分離装置は、一方の端部側に設けられ脱水した対象物を排出する対象物排出口、他方の端部側に設けられ分離液を排出する分離液排出口、及び、前記対象物排出口と前記分離液排出口との間に設けられ、前記対象物が投入される複数の対象物投入口が設けられるケーシングと、前記ケーシングの内部に設けられて前記一方の端部から前記他方の端部への方向である延在方向に沿って延在するスクリュー軸と、前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第1スクリュー羽根と、前記第1スクリュー羽根に対して前記延在方向に沿って所定間隔を隔てるように前記スクリュー軸の外周面に螺旋状に延在する第2スクリュー羽根と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る分離装置によれば、固液分離効率をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示に係る第1実施形態の分離装置の一部断面図である。
【
図2】
図2は、本開示に係る第1実施形態の分離装置の断面図である。
【
図3】
図3は、本開示に係る第2実施形態の分離装置の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により、この開示が限定されるものではない。
【0010】
(第1実施形態)
(分離装置の全体構成)
図1は、本開示に係る第1実施形態の分離装置の一部断面図である。
図1に示すように、分離装置1は、スクリュー型分離装置であり、ケーシング10、スクリュー軸12、第1スクリュー羽根14、第2スクリュー羽根16、第1隔壁部18、第2隔壁部20、カバー部22、排出ポンプ26、傾斜調整部28、及び制御部29を備える。分離装置1は、配管部Lを介して、対象物供給源30に接続されている。対象物供給源30は、対象物A0を供給する供給源である。対象物供給源30として用いることが可能なものとしては、沈殿池、ろ過濃縮装置などが挙げられるが、対象物を供給可能なものであればよく、これに限定するものではない。分離装置1は、対象物供給源30から配管部Lを介して供給された対象物A0が、後述する対象物投入口11Aから、ケーシング10内に投入され、投入された対象物A0を脱水して、脱水した後の濃縮対象物Aを、後述する対象物排出口11Bから排出する。分離装置1は、脱水により対象物A0から分離された分離液Cを、分離液排出口11Cから排出する。この対象物A0は、含水率が高い下水や工場排水等の汚泥である。対象物A0は、対象物供給源30で凝集剤が添加されて固形成分がフロック化していてもよいし、凝集剤が添加されずにフロック化されていない汚泥であってもよい。
【0011】
以下、
図1に示す地表Gに平行な方向、すなわち水平方向を、方向Xとする。そして、方向Xのうちのケーシング10の端部10B側の方向を、方向X1とし、方向Xのうちのケーシング10の端部10C側の方向、すなわちX1方向と反対の方向を、X2方向とする。また、方向Xに直交する方向であって、地表Gにも直交する方向、すなわち鉛直方向を、方向Zとする。そして、方向Zのうちの一方の方向を、Z1方向とし、方向Zのうちの他方の方向、すなわちZ1方向と反対の方向を、Z2方向とする。Z1方向は、鉛直方向の上方に向かう方向、すなわち地表Gと離れる方向であり、Z2方向は、鉛直方向の下方に向かう方向、すなわち地表G側に向かう方向である。
【0012】
図1に示すように、ケーシング10は、延在方向Eに沿って一方の端部10Bから他方の端部10Cまで延在し、内部に空間が設けられる筒状の部材である。延在方向Eは、端部10Bから端部10C側(X2方向側)に向かう方向であり、端部10B側から端部10C側に向かうに従って、X2方向に対してZ1方向側に傾斜している。従って、ケーシング10は、端部10Bが、端部10Cよりも、Z2方向側に位置している。
【0013】
ケーシング10は、中間部10Aにおける側面(外周面)に、複数の対象物投入口11Aが開口しており、端部10B側に対象物排出口11Bが開口しており、端部10C側に分離液排出口11Cが開口している。中間部10A(対象物投入口11A)は、ケーシング10の延在方向Eに沿った端部10B(対象物排出口11B)と端部10C(分離液排出口11C)との間の箇所である。中間部10Aは、延在方向Eに沿ったケーシング10の中央に位置しているが、延在方向Eに沿った端部10Bと端部10Cとの間の任意の位置にあってよい。複数の対象物投入口11Aは、延在方向Eにおいて対象物排出口11Bと分離液排出口11Cとの間に設けられるが、詳細な説明は後述する。
【0014】
ケーシング10は、対象物投入口11A、対象物排出口11B、及び分離液排出口11C以外には、内部と外部とを連通する穴が形成されていないが、対象物投入口11A、対象物排出口11B、および、分離液排出口11C以外にも開口が形成されていてもよい。ただし、ケーシング10は、メッシュ及びパンチングプレートなどのスクリーンとは異なり、全域にわたり多数の開口が形成される構造ではない。
【0015】
スクリュー軸12は、円柱形状であり、ケーシング10の内部に設けられて延在方向Eに沿って延在している。スクリュー軸12は、一方の端部12B又は他方の端部12Cの少なくともいずれかが、軸受けによって軸支持されたモータ(電動機)(いずれも図示せず)に、減速機を介して、又は、減速機を介さずに、連結されている。スクリュー軸12は、このモータ(電動機)が制御部29によって駆動されることにより、延在方向Eを軸中心として、回転方向Rに回転される。第一実施形態では、回転方向Rは、端部12C側から見て、反時計回りの方向であるが、それに限られない。
【0016】
第1スクリュー羽根14は、一方の端部14Bから他方の端部14Cまで、ケーシング10の内部を、スクリュー軸12の外周面に螺旋状に延在するよう設けられている。端部14Bは、対象物排出口11B側の端部であり、対象物投入口11Aよりも対象物排出口11B側に位置している。端部14Cは、分離液排出口11C側の端部であり、対象物投入口11Aよりも分離液排出口11C側に位置している。第1スクリュー羽根14は対象物排出口11B側を向く表面である第1面14aと、分離液排出口11C側を向く表面である第2面14bとを有する。第1スクリュー羽根14を延在方向Eに沿って貫通する仮想の直線は、延在方向Eに進むに従って、第1面14aと第2面14bとに交互に交差することとなる。
【0017】
第1スクリュー羽根14は、端部14Cから端部14Bに向かって、回転方向Rと反対方向に巻回されている。すなわち、回転方向Rが端部12C側から見て反時計回りの場合は、第1スクリュー羽根14は、いわゆるZ巻き(右手)の螺旋状に設けられる。反対に、回転方向Rが、端部12C側から見て時計回りの場合は、第1スクリュー羽根14は、いわゆるS巻き(左手)の螺旋状に設けられる。第1スクリュー羽根14は、スクリュー軸12の回転に伴い、回転する。
【0018】
第1スクリュー羽根14の外周部14cは、ケーシング10の内周面10aとは接触せず、外周部14cと内周面10aとの間には、間隙(クリアランス)Hが形成されている。この間隙(クリアランス)Hは、微小な隙間であり、濃縮対象物Aの少なくとも一部の通過を抑制する(せき止める)程度の大きさであって、分離液Cなどの液体成分が通過可能な大きさとなっている。間隙(クリアランス)Hは、例えば、1mm以上2mm以下程度の隙間である。
【0019】
第2スクリュー羽根16は、ケーシング10の内部において、延在方向Eに沿ってスクリュー軸12の外周面に螺旋状に延在する。第2スクリュー羽根16は、第1スクリュー羽根14に対して、延在方向Eに沿って所定間隔を隔てて離間した位置に設けられており、第1スクリュー羽根14と同じ巻回方向で巻回されている。第2スクリュー羽根16も、スクリュー軸12の回転に伴い、回転する。第2スクリュー羽根16は、対象物排出口11B側を向く表面である第1面16aと、分離液排出口11C側を向く表面である第2面16bとを有する。第2スクリュー羽根16を延在方向Eに沿って貫通する仮想の直線は、延在方向Eに進むに従って、第1面16aと第2面16bとに交互に交差することとなる。
【0020】
第2スクリュー羽根16は、一方の端部16Bから他方の端部16Cまで、螺旋状に延在する。端部16Bは、対象物排出口11B側の端部であり、対象物投入口11Aよりも対象物排出口11B側に位置している。端部16Cは、分離液排出口11C側の端部であり、対象物投入口11Aよりも分離液排出口11C側に位置している。
図1の例では、端部16Bは、延在方向Eにおいて、第1スクリュー羽根14の端部14Bよりも対象物排出口11B側にあり、端部16Cは、延在方向Eにおいて、第1スクリュー羽根14の端部14Cよりも分離液排出口11C側にある。ただし、端部16B、16Cと第1スクリュー羽根14の端部14B、14Cの位置関係は、以上の説明に限られず任意であってよい。
【0021】
第2スクリュー羽根16の外周部16cは、ケーシング10の内周面10aとは接触せず、外周部16cと内周面10aとの間には、間隙(クリアランス)Hが形成されている。
【0022】
第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16とは以上のような位置に設けられているため、第1スクリュー羽根14の端部14Bから端部14Cまでの区間(以下、この区間を搬送促進区間K1とする)では、第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16との両方が設けられている。また、第2スクリュー羽根16の端部16Bから第1スクリュー羽根14の端部14Bまでの区間(以下、この区間を対象物搬送区間K2とする)では、第2スクリュー羽根16が設けられて第1スクリュー羽根14が設けられていない。また、第2スクリュー羽根16の端部16Cから第1スクリュー羽根14の端部14Cまでの区間(以下、この区間を分離液搬送区間K3とする)でも、第2スクリュー羽根16が設けられて第1スクリュー羽根14が設けられていない。
【0023】
搬送促進区間K1は、第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16とが設けられるダブルスクリュー区間である。搬送促進区間K1は、中心軸AXを中心とした径方向から見て、少なくとも一部の区間において、対象物投入口11Aに重なるように設定されている。搬送促進区間K1においては、対象物A0や濃縮対象物Aが搬送される第1空間S1と、分離液Cが搬送される第2空間S2とが形成される。第1空間S1は、第2スクリュー羽根16の第1面16aと、その第1面16aに対向する第1スクリュー羽根14の第2面14bとの間に形成される。第1面16aは、第1空間S1の分離液排出口11C側に面しており、第2面14bは、第1空間S1の対象物排出口11B側に面している。第2空間S2は、第2スクリュー羽根16の第2面16bと、その第2面16bに対向する第1スクリュー羽根14の第1面14aとの間に形成される。第2面16bは、第2空間S2の対象物排出口11B側に面しており、第1面14aは、第2空間S2の分離液排出口11C側に面している。
【0024】
対象物搬送区間K2は、搬送促進区間K1よりも対象物排出口11B側の区間である。対象物搬送区間K2内の空間S3は、対象物排出口11Bと、搬送促進区間K1の第1空間S1とに連通する。空間S3は、後述する第1隔壁部18に遮られることで、間隙(クリアランス)H以外の領域においては、搬送促進区間K1の第2空間S2から遮断されている。なお、対象物搬送区間K2は、第一実施形態では、第2スクリュー羽根16が設けられて第1スクリュー羽根14が設けられないシングルスクリュー区間であるが、例えば第1スクリュー羽根14の端部14Bと第2スクリュー羽根16の端部16Bとが延在方向Eにおいて同じ位置にある場合は、第1スクリュー羽根14及び第2スクリュー羽根16の両方が設けられない区間となる。
【0025】
分離液搬送区間K3は、搬送促進区間K1よりも分離液排出口11C側の区間である。分離液搬送区間K3内の空間S4は、分離液排出口11Cと、搬送促進区間K1の第2空間S2とに連通する。空間S4は、後述する第2隔壁部20に遮られることで、間隙(クリアランス)H以外の領域においては、搬送促進区間K1の第1空間S1とは遮断されている。なお、分離液搬送区間K3は、第一実施形態では、第2スクリュー羽根16が設けられて第1スクリュー羽根14が設けられないシングルスクリュー区間であるが、例えば第1スクリュー羽根14の端部14Bと第2スクリュー羽根16の端部16Bとが延在方向Eにおいて同じ位置にある場合は、第1スクリュー羽根14及び第2スクリュー羽根16の両方が設けられない区間となる。
【0026】
第1隔壁部18は、第1スクリュー羽根14から、その第1スクリュー羽根14に対して延在方向Eにおいて隣り合う第2スクリュー羽根16までにわたって設けられる壁状の部材である。第1隔壁部18は、第2スクリュー羽根16の端部16Bに設けられている。第1隔壁部18は、第2空間S2と空間S3とを区切るように設けられており、第2空間S2を、対象物搬送区間K2の空間S3から遮蔽する。なお、第1隔壁部18は、必須の構成でなく、省略可能である。
【0027】
第2隔壁部20は、第1スクリュー羽根14から、その第1スクリュー羽根14に対して延在方向Eにおいて隣り合う第2スクリュー羽根16までにわたって設けられる壁状の部材である。第2隔壁部20は、第2スクリュー羽根16の端部16Cに設けられている。第2隔壁部20は、第1空間S1と空間S4とを区切るように設けられており、第1空間S1を、分離液搬送区間K3の空間S4から遮蔽する。なお、第2隔壁部20は、必須の構成でなく、省略可能である。
【0028】
カバー部22は、第2空間S2を形成する第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16との間における、対象物投入口11Aと重なる領域に設けられている。カバー部22は、延在方向Eにおいて対象物投入口11Aと重なる箇所における、第2スクリュー羽根16の第2面16b側の外周部16cから、第1スクリュー羽根14の第1面14a側の外周部14cまでを延在方向Eに沿って覆い、第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16の1巻き分の外周部を覆うように形成されている。ただし、カバー部22が形成される区間は、第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16の1巻き分の外周部に限られない。例えば、カバー部22が形成される区間は、第1スクリュー羽根14の分離液排出口11C側の面の外周部から第2スクリュー羽根16の対象物排出口11B側の面の外周部までであって、第1スクリュー羽根14と第2スクリュー羽根16とが両方設けられる区間である搬送促進区間K1の全てであってもよい。カバー部22は、対象物投入口11Aと重なる区間における第2空間S2の外周部を覆うため、対象物投入口11Aからの対象物A0が、第2空間S2に投入されることを抑制することができる。
【0029】
排出ポンプ26は、対象物排出口11Bに接続されるポンプである。排出ポンプ26は、停止時には、ケーシング10の端部10Bまで移動してきた濃縮対象物Aをせき止める。また、排出ポンプ26は、駆動時には、排出管26Bを吸引することにより、ケーシング10内の濃縮対象物Aを、対象物排出口11Bから強制的に排出する。排出ポンプ26としては、スクリュー付き遠心式ポンプなどを用いることが出来る。ただし、排出ポンプ26は必須の構成でなく、例えば重力により排出させてもよい。
【0030】
傾斜調整部28は、ケーシング10に取付けられている。傾斜調整部28は、油圧アクチュエータ、電動アクチュエータなどの動力伝達装置によって構成されてよい。傾斜調整部28は、制御部29の制御により、油圧アクチュエータ、電動アクチュエータなどを動作させることにより、ケーシング10の傾斜角度θを変化させる。ただし、傾斜調整部28は必須の構成でなく、傾斜角度θは一定であってもよい。
【0031】
制御部29は、分離装置1を制御する制御装置である。制御部29は、モータ(電動機)によるスクリュー軸12の回転数と、排出ポンプ26の動作、すなわち、ケーシング10内の濃縮対象物Aの排出量と、傾斜調整部28による傾斜角度θと、の少なくとも1つを制御する。制御部29は、例えば、演算装置、すなわち、CPU(Central Processing Unit)を有するコンピュータを備えてよいし、機械式の演算装置を備えてもよい。制御部29が備える演算装置の演算結果に従って制御対象を動作させることにより、分離装置1の動作を制御する。
【0032】
(対象物投入口)
複数の対象物投入口11Aは、カバー部22が回転方向Rにおいてどの位置にある場合にも、一部の領域がカバー部22に塞がれずに開放されるように配置されている。すなわち、スクリュー軸12が回転しても、少なくとも1つの対象物投入口11Aの一部の領域がカバー部22と重ならないように、対象物投入口11Aの位置が設定されている。複数の対象物投入口11Aは、カバー部22の回転方向Rにおける位置毎の、有効投入口面積(全ての対象物投入口11Aの面積からカバー部22が重なる部分の面積を引いた値)の差が、できるだけ少なくなるように配置されていることが好ましく、カバー部22が回転方向Rにおいてどの位置にある場合にも、有効投入口面積が一定になるように配置されることがより好ましい。有効投入口面積が一定になるように対象物投入口11Aを配置することによって、時間当たりの対象物A0の投入量を均一に近づけて、固液分離効率の低下を抑制できる。複数の対象物投入口11Aは、延在方向Eを軸方向とした場合の周方向において、それぞれ異なる位置に配置されることで、カバー部22が回転方向Rにおいてどのような位置に配置される場合であっても、少なくとも1つの対象物投入口11Aの一部の領域がカバー部22に重ならないように設定されている。また、少なくとも1つの対象物投入口11Aの一部の領域がカバー部22に重ならせない、有効投入口面積の差を小さくする、又は、有効投入口面積を一定にすることを実現するために、対象物投入口11Aの位置に加え、対象物投入口11Aの大きさ、第1スクリュー羽根14及び第2スクリュー羽根16のピッチについても設定してもよい。複数の対象物投入口11Aは、周方向において等間隔に設けられることが好ましいが、それに限られず、周方向に異なる間隔で設けられてもよい。
【0033】
本実施形態においては、対象物投入口11Aは、2つ設けられている。ただし、対象物投入口11Aの数は2つに限定されるものではなく、2つ以上の任意の数であってよく、例えば3つ乃至4つ設けられていてもよい。対象物投入口11Aの数を4つ以下とすることで、製造コストの増加を抑えて、対象物投入口11A毎の対象物A0の流入量のバランスを適切に保つことができる。
【0034】
図1に示すように、それぞれの対象物投入口11Aは、延在方向Eにおいて同じ位置に配置される。これにより、少なくとも1つの対象物投入口11Aの一部の領域がカバー部22に重ならせなかったり、有効投入口面積の差を小さく有効投入口面積を常に一定に保ったり、有効投入口面積を常に一定にしたりすることが可能となる。ここで、延在方向Eにおいて同じ位置とは、複数の対象物投入口11Aが形成されるケーシング10を、対象物投入口11Aが設けられる位置において、延在方向Eに垂直な平面で切断した場合に、同一の平面上に、複数の対象物投入口11Aの全てが配置されることを意味する。ただし、それぞれの対象物投入口11Aは、延在方向Eにおいて同じ位置に配置されることに限られず、延在方向Eにおいて異なる位置に配置されてもよい。
【0035】
(配管部)
図1に示すように、対象物供給源30と対象物投入口11Aに接続される配管部Lは、母管31と、分岐部32と、複数の分岐管33とを含む。母管31は、一方の端部が対象物供給源30に接続され、他方の端部が、分岐部32に接続される配管である。分岐管33は、一方の端部が分岐部32に接続され、他方の端部がケーシング10の対象物投入口11Aに接続される配管である。分岐管33は、対象物投入口11Aごとに設けられるため、対象物投入口11Aが2つ設けられる本実施形態の場合は、分岐管33Aと分岐管33Bとの2つが設けられている。分岐部32は、母管31と分岐管33A、33Bとを接続するジョイント(接合部分)であるといえ、母管31は、分岐部32を介してそれぞれの分岐管33に接続されている。
【0036】
本実施形態では、母管31から分岐部32までは、対象物投入口11AよりZ1方向側に配置される。分岐管33は、分岐部32と接続されている端部から対象物投入口11Aに接続されている端部に向かって、Z2方向に向けて延在する。母管31や分岐管33は、対象物供給源30から対象物投入口11Aに向かって、Z1方向に向けて延在せず、水平方向又は水平方向よりもZ2方向に向けて延在することが好ましい。これにより、対象物供給源30から母管31、分岐管33に供給される対象物が、重力によって対象物供給源30に逆流したり、母管31や分岐管33内で対象物A0が溜まったりすることを防ぐことができる。
【0037】
図2は、本開示に係る第1実施形態の分離装置の断面図である。
図2は、本実施形態に係るケーシング10を、対象物投入口11Aが設けられる位置において、延在方向Eに対して垂直な平面で切断した面を、対象物排出口11Bが設けられる側の端部から延在方向Eに沿って見た場合の模式的な断面図である。
図2に示すように、対象物投入口11Aと分岐管33とは、対象物投入口11Aを、分岐管33の端部33aにおける延在方向Axaに沿ってケーシング10の内周面に向けて投影した場合に、投影した部分がスクリュー軸12に重ならないように、設けられていることが好ましい。このように対象物投入口11Aと分岐管33とを設けることにより、対象物投入口11Aからの対象物A0の投入される方向が回転方向Rに沿わせることが可能となり、投入された対象物A0がスクリュー軸12にあたることを抑制できる。なお、端部33aは、分岐管33の対象物投入口11Aに接続される端部である。また、対象物投入口11Aから投入された対象物A0は、重力によって対象物投入口11Aの鉛直方向下方に流れ落ちる場合がある。したがって、対象物投入口11Aをスクリュー軸12に対して鉛直方向の上方側に設ける場合には、対象物投入口11Aは、スクリュー軸12に対して水平方向に離れた位置に配置されることが好ましい。すなわち、スクリュー軸12を鉛直方向の下方側からケーシング10の内周部に正投影した際に、ケーシング10の内周部に形成されるスクリュー軸12の投影部分には、対象物投入口11Aが設けられないことが好ましい。これにより、対象物投入口11Aから投入された対象物A0が鉛直方向下方に流下した際にスクリュー軸12の上に堆積することを抑制できる。
【0038】
図2の例では、複数の対象物投入口11Aのそれぞれに接続する複数の分岐管33の長さは互いに異なっているが、それぞれの分岐管33の長さは、均等になっていてもよい。それぞれの分岐管33の長さが均等になることで、対象物供給源30から供給された対象物A0が、母管31を経由して分岐部32に到達し、分岐部32において分岐管33A、33Bに分配された後に、分岐管33A、33Bにおいて対象物が分岐管の内面から受ける摩擦損失を同等とすることができる。その為、分岐管33A、33Bを経由して、対象物投入口11Aから投入される対象物の流速を、分岐管ごとに均等に近づけることで、対象物投入口11A毎の対象物の投入量をそれぞれの開口面積に応じた量として、全ての対象物投入口11Aからの対象物の投入量の合計を一定に近づけることが可能となる。
【0039】
(分離装置の動作)
次に、上述のように構成された分離装置1の動作および対象物の挙動について説明する。
図1に示すように、分離装置1においては、制御部29の制御によりスクリュー軸12が回転している。対象物供給源30から供給された対象物A0は、母管31を経由して、分岐部32において分岐管33A、33Bに分配される。分岐管33A、33Bに分配された対象物A0は、分岐管33A、33Bを経由して、それぞれの対象物投入口11Aまで到達する。ここで、カバー部22は、スクリュー軸12の回転に伴い、位置が重なる対象物投入口11Aが切り替わる。言い換えれば、それぞれの対象物投入口11Aは、スクリュー軸12の回転に伴い、カバー部22に重なっている状態と、カバー部22に重ならずに第1空間S1に連通している状態とが切り替わる。なお、対象物投入口11Aの全てにおいて、スクリュー軸の回転に伴い一部がカバー部22に重なる瞬間がある可能性もあるが、この場合でも、少なくとも1つの対象物投入口11Aの一部の領域は、カバー部22に重ならずに第1空間S1に連通している。カバー部22に重ならない対象物投入口11Aからは、ケーシング10の第1空間S1内に、対象物A0が投入される。一方、カバー部22に重なっている対象物投入口11Aに到達した対象物A0は、カバー部22に遮られて、ケーシング10内への投入が抑制される。そのため、カバー部22に重なっている対象物投入口11Aを介した第2空間S2への対象物A0の投入が抑制される。
【0040】
スクリュー軸12の回転に伴い、カバー部22に重なっていた対象物投入口11Aも、カバー部22と重ならなくなるタイミングが発生するため、そのタイミングにおいて、その対象物投入口11Aから、第1空間S1内に対象物A0が投入される。また、スクリュー軸12の回転に伴い、カバー部22と位置が重なる対象物投入口11Aが切り替わるが、カバー部22と重ならない対象物投入口11Aが常に存在する。そのため、本実施形態に係る分離装置1によると、どのタイミングにおいても、いずれかの対象物投入口11Aからは第1空間S1に対象物A0が投入されることとなり、全体として第1空間S1に一定量の対象物A0を安定的に供給することが可能となる。
【0041】
第1空間S1内に投入された対象物A0は、重力と、第2スクリュー羽根16の第1面16aに押されることにより、液体成分が分離されつつ、対象物排出口11B側に移動する。第1空間S1内の対象物A0の固形成分は、間隙(クリアランス)Hを通り難いため第2空間S2への流入が抑えられつつ、第1空間S1内を通って第1空間S1に連通する空間S3に流入する。そして、空間S3に流入した対象物A0の固形成分は、制御部29に駆動される排出ポンプ26により、液体成分が分離された濃縮対象物Aとして、対象物排出口11Bから、ケーシング10の外部に排出される。一方、対象物A0から分離した液体成分は、間隙(クリアランス)Hを通って第2空間S2に流入し、分離液Cは、分離液排出口11Cから外部に排出される。
【0042】
このように、本実施形態に係る分離装置1によると、複数の対象物投入口11Aが形成されているため、スクリュー軸12が回転しても、複数の対象物投入口11Aの内の一部の対象物投入口11Aはカバー部22に遮断されずに、第1空間S1に連通している。その為、本実施形態に係る分離装置1によると、複数の対象物投入口11Aの内の1つの対象物投入口11Aに重なる位置にカバー部22が配置されるタイミングであっても、ケーシング10の内部への対象物A0の投入が一時的に阻害されることを抑制して、一定量の対象物A0を安定的に供給することができ、固液分離効率を高めることができる。
【0043】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る分離装置1の構成は、分岐部32に係る部分以外は第1実施形態の構成と同じである。その為、第2実施形態の第1実施形態と共通する部分については、説明を省略する。
【0044】
図3は、本開示に係る第2実施形態の分離装置の一部断面図である。
図3に示す第2実施形態においては、分岐部32と分岐管33とが、分離液排出口11Cに対して、Z方向(鉛直方向)において、下方側に設けられる。分岐部32では、母管31からの対象物A0が、ケーシング10に接続される複数の分岐管33に分配される。ケーシング10内においては、分離液排出口11Cから分離液Cが排出されるため、ケーシング10内における液面は、Z方向において分離液排出口11Cの位置とほぼ同じ位置(例えば数cm程度の差)となる。ケーシング10に接続されている分岐管33及び分岐部32は、ケーシング10における分離液Cの液面の位置より低くなり、分岐部32から分岐管33までが、対象物A0によって満たされることになる。その為、分岐部32に供給される対象物A0に作用する圧力によって、対象物A0をそれぞれの分岐管33に各対象物投入口11Aとカバー部22との重なり具合に応じて適量を分配することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 分離装置
10 ケーシング
11A 対象物投入口
11B 対象物排出口
11C 分離液排出口
12 スクリュー軸
14 第1スクリュー羽根
16 第2スクリュー羽根
18 第1隔壁部
20 第2隔壁部
22 カバー部
26 排出ポンプ
28 傾斜調整部
29 制御部