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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-16
(45)【発行日】2024-01-24
(54)【発明の名称】自律飛行体及び飛行制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/46 20240101AFI20240117BHJP
【FI】
G05D1/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020056972
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021157494
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】523286071
【氏名又は名称】株式会社NTTデータ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】青山 美次
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一徳
(72)【発明者】
【氏名】三井 弘宜
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-197475(JP,A)
【文献】特開2018-206004(JP,A)
【文献】特開2012-230092(JP,A)
【文献】特開2016-177640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律飛行体であって、
前記自律飛行体の飛行を制御するフライトコントローラと、
磁気を検出し、検出した前記磁気の磁束密度である第1の磁束密度を求める電子コンパスモジュールと、
測位衛星が発する電波信号を受信し、前記自律飛行体の地球上における位置を緯度と経度と高度とにより表した第1の測位情報を前記電波信号に基づいて求める衛星測位モジュールと、
前記自律飛行体の周囲の障害物を検出する測域センサと、
前記測域センサによる検出結果に基づいて環境地図を作成する地図作成手段と、
前記環境地図上における前記自律飛行体の機首方向と位置とを推定する推定手段と、
前記推定手段が推定した前記位置を擬似的な緯度と経度と高度とにより表した第2の測位情報を求める擬似測位手段と、
前記推定手段が推定した前記機首方向に基づいて擬似的な磁束密度である第2の磁束密度を求める擬似コンパス手段と、
を備え、
前記フライトコントローラは、
前記自律飛行体の飛行を制御する飛行制御手段と、
前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とのうち少なくとも1つに異常があるか否かを判定する異常判定手段と、
前記異常判定手段が前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とのいずれにも異常がないと判定したとき、前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とを前記飛行制御手段に出力し、前記異常判定手段が前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とのうち少なくとも1つに異常があると判定したとき、前記第2の磁束密度と前記第2の測位情報とを前記飛行制御手段に出力する出力手段と、
を備え、
前記飛行制御手段は、前記出力手段が出力した前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とに基づいて、又は前記出力手段が出力した前記第2の磁束密度と前記第2の測位情報とに基づいて、前記自律飛行体の飛行を制御する、
自律飛行体。
【請求項2】
前記擬似コンパス手段は、予め定められた期間内に複数回推定された前記機首方向に基づいて平滑化された擬似的な磁束密度を前記第2の磁束密度として求める、
請求項1に記載の自律飛行体。
【請求項3】
前記異常判定手段は、前記第1の磁束密度が、前記電子コンパスモジュールが正常に地磁気を検出できなかったときのものであるとき、前記第1の磁束密度に異常があると判定し、前記第1の測位情報が、前記衛星測位モジュールが測位衛星からの電波を正常に受信できなかったときのものであるとき、前記第1の測位情報に異常があると判定する、
請求項1又は2に記載の自律飛行体。
【請求項4】
自律飛行体の飛行制御方法であって、
磁気を検出し、検出した前記磁気の磁束密度である第1の磁束密度を求め、
測位衛星が発する電波信号を受信し、前記自律飛行体の地球上における位置を緯度と経度と高度とにより表した第1の測位情報を前記電波信号に基づいて求め、
前記自律飛行体の周囲の障害物を検出して環境地図を作成し、
前記環境地図上における前記自律飛行体の機首方向と位置とを推定し、
推定した前記位置を擬似的な緯度と経度と高度とにより表した第2の測位情報を求め、
推定した前記機首方向に基づいて擬似的な磁束密度である第2の磁束密度を求め、
前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とのうち少なくとも1つに異常があるか否かを判定し、
前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とのいずれにも異常がないと判定したとき、前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とに基づいて前記自律飛行体の飛行を制御し、
前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とのうち少なくとも1つに異常があると判定したとき、前記第2の磁束密度と前記第2の測位情報とに基づいて前記自律飛行体の飛行を制御する、
飛行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自律飛行体及び飛行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自律飛行を行うドローン等の自律飛行体は、測域センサ、電子コンパス、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)受信機などの各種センサが検出した情報に基づいてプロペラを制御することにより、自律飛行を実現している。特に、電子コンパスが検出した地磁気に基づいて自律飛行体自身の機首方向を特定し、GNSS受信機が測位衛星から受信した電波信号に基づいて自律飛行体自身の位置を検出することにより、精度の高い自律飛行が実現される。
【0003】
例えば特許文献1には、電子コンパスとGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)受信器と備え、自律飛行が可能なマルチコプターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6661136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の自律飛行体は、測位衛星からの電波を正常に受信できない環境下、電子コンパスが正常に地磁気を検出できない環境下において、正常に自律飛行ができないという問題がある。
【0006】
例えば、送電線を収容する地下トンネルに撮像装置を搭載した自律飛行体を送り込んで、人員を輸送することなく送電線の状態を確認したい、といった要求がある。しかし、地下トンネルでは測位衛星からの電波を正常に受信できない可能性が高く、かつ、送電線から生じる磁気により電子コンパスも正常に地磁気を検出できない可能性が高い。
【0007】
本開示の目的は、上記の事情に鑑み、測位衛星からの電波を正常に受信できない環境下、地磁気を正常に検出できない環境下において自律飛行を可能とする自立飛行体等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本開示の第1の観点に係る自律飛行体は、
自律飛行体であって、
前記自律飛行体の飛行を制御するフライトコントローラと、
磁気を検出し、検出した前記磁気の磁束密度である第1の磁束密度を求める電子コンパスモジュールと、
測位衛星が発する電波信号を受信し、前記自律飛行体の地球上における位置を緯度と経度と高度とにより表した第1の測位情報を前記電波信号に基づいて求める衛星測位モジュールと、
前記自律飛行体の周囲の障害物を検出する測域センサと、
前記測域センサによる検出結果に基づいて環境地図を作成する地図作成手段と、
前記環境地図上における前記自律飛行体の機首方向と位置とを推定する推定手段と、
前記推定手段が推定した前記位置を擬似的な緯度と経度と高度とにより表した第2の測位情報を求める擬似測位手段と、
前記推定手段が推定した前記機首方向に基づいて擬似的な磁束密度である第2の磁束密度を求める擬似コンパス手段と、
を備え、
前記フライトコントローラは、
前記自律飛行体の飛行を制御する飛行制御手段と、
前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とのうち少なくとも1つに異常があるか否かを判定する異常判定手段と、
前記異常判定手段が前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とのいずれにも異常がないと判定したとき、前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とを前記飛行制御手段に出力し、前記異常判定手段が前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とのうち少なくとも1つに異常があると判定したとき、前記第2の磁束密度と前記第2の測位情報とを前記飛行制御手段に出力する出力手段と、
を備え、
前記飛行制御手段は、前記出力手段が出力した前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とに基づいて、又は前記出力手段が出力した前記第2の磁束密度と前記第2の測位情報とに基づいて、前記自律飛行体の飛行を制御する。
【0009】
前記擬似コンパス手段は、予め定められた期間内に複数回推定された前記機首方向に基づいて平滑化された擬似的な磁束密度を前記第2の磁束密度として求める、
ようにしてもよい。
【0010】
前記異常判定手段は、前記第1の磁束密度が、前記電子コンパスモジュールが正常に地磁気を検出できなかったときのものであるとき、前記第1の磁束密度に異常があると判定し、前記第1の測位情報が、前記衛星測位モジュールが測位衛星からの電波を正常に受信できなかったときのものであるとき、前記第1の測位情報に異常があると判定する、
ようにしてもよい。
【0011】
上記の目的を達成するため、本開示の第2の観点に係る飛行制御方法は、
自律飛行体の飛行制御方法であって、
磁気を検出し、検出した前記磁気の磁束密度である第1の磁束密度を求め、
測位衛星が発する電波信号を受信し、前記自律飛行体の地球上における位置を緯度と経度と高度とにより表した第1の測位情報を前記電波信号に基づいて求め、
前記自律飛行体の周囲の障害物を検出して環境地図を作成し、
前記環境地図上における前記自律飛行体の機首方向と位置とを推定し、
推定した前記位置を擬似的な緯度と経度と高度とにより表した第2の測位情報を求め、
推定した前記機首方向に基づいて擬似的な磁束密度である第2の磁束密度を求め、
前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とのうち少なくとも1つに異常があるか否かを判定し、
前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とのいずれにも異常がないと判定したとき、前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とに基づいて前記自律飛行体の飛行を制御し、
前記第1の磁束密度と前記第1の測位情報とのうち少なくとも1つに異常があると判定したとき、前記第2の磁束密度と前記第2の測位情報とに基づいて前記自律飛行体の飛行を制御する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、測位衛星からの電波を正常に受信できない環境下、地磁気を正常に検出できない環境下において自律飛行が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施の形態に係るドローンの構成を示す図
図2】本開示の実施の形態に係る飛行計画データの一例を示す図
図3】本開示の実施の形態に係るコンパニオンコンピュータの機能的構成を示す図
図4】本開示の実施の形態に係るフライトコントローラの機能的構成を示す図
図5】本開示の実施の形態に係るドローンによる飛行制御の動作の一例を示すフローチャート
図6図5における、本開示の実施の形態に係るドローンが備えるフライトコントローラによる飛行制御の動作の一例を示すフローチャート
図7】本開示の実施の形態の変形例1に係るコンパニオンコンピュータの機能的構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る自律飛行体をドローンに適用した実施の形態を説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0015】
(実施の形態)
図1を参照しながら、実施の形態に係るドローン1を説明する。後述するように、ドローン1は、地下トンネル内、電力施設内など、測位衛星からの電波を正常に受信できない環境下、地磁気を正常に検出できない環境下において自律飛行が可能な自律飛行体である。詳細は後述するが、ドローン1は、測位衛星からの電波を正常に受信できない環境下、地磁気を正常に検出できない環境下においては、擬似的な磁束密度及び擬似的な測位情報に基づいて自律飛行を行う。
【0016】
ドローン1は、コンパニオンコンピュータ2とフライトコントローラ3と測域センサ4と電子コンパスモジュール5と衛星測位モジュール6と駆動部7とを備える。コンパニオンコンピュータ2は、測域センサ4及びフライトコントローラ3に通信可能に接続されている。フライトコントローラ3は、コンパニオンコンピュータ2、電子コンパスモジュール5、衛星測位モジュール6及び駆動部7に通信可能に接続されている。ドローン1は、本開示に係る自律飛行体の一例である。
【0017】
なお、ドローン1は、上記のほか、ジャイロセンサ、加速度センサ、気圧センサなどの各種センサを備えてもよい。
【0018】
コンパニオンコンピュータ2は、例えばドローン1に内蔵可能な一般的なマイクロコントローラである。コンパニオンコンピュータ2は、バスB2を介して互いに接続された、プロセッサ201と、メモリ202と、インタフェース203と、二次記憶装置204と、を備える。
【0019】
プロセッサ201は、例えばCPU(Central Processing Unit:中央演算装置)である。プロセッサ201が、二次記憶装置204に記憶された動作プログラムをメモリ202に読み込んで実行することにより、後述する各機能部の機能が実現される。
【0020】
メモリ202は、例えば、RAM(Random Access Memory)により構成される主記憶装置である。メモリ202は、プロセッサ201が二次記憶装置204から読み込んだ動作プログラムを記憶する。また、メモリ202は、プロセッサ201が動作プログラムを実行する際のワークメモリとして機能する。
【0021】
インタフェース203は、例えばGPIO(General-purpose input/output)、シリアルポート、USB(Universal Serial Bus)ポート、ネットワークインタフェースなどのI/O(input/output)インタフェースである。インタフェース203に測域センサ4及びフライトコントローラ3が接続されることにより、コンパニオンコンピュータ2は測域センサ4及びフライトコントローラ3に通信可能に接続される。
【0022】
二次記憶装置204は、例えばフラッシュメモリである。二次記憶装置204は、プロセッサ201が実行する動作プログラムを記憶する。また、二次記憶装置204は、後述の飛行計画データも記憶する。例えば、ドローン1のユーザが予めパーソナルコンピュータ上で飛行計画データを作成し、インタフェース203に当該パーソナルコンピュータを接続して飛行計画データをコンパニオンコンピュータ2に転送することにより、飛行計画データが二次記憶装置204に保存される。
【0023】
図2に示す例を参照しながら、飛行計画データについて説明する。飛行計画データは、例えばドローン1のユーザが、地図上にて始点と1以上の経由点と終点とを指定して飛行ルートを設定することにより作成される。図2に示す例は、地下トンネルを示す地図上において、始点と1つの経由点と終点とを指定することにより、ドローン1が地下トンネル内をどのような飛行ルートにて飛行すべきかを指定する例である。図2に示す例では、始点、経由点及び終点は、緯度、経度及び高度の組により示されている。フライトコントローラ3は、飛行制御において緯度、経度及び高度にて表された情報を利用するため、飛行計画データにおける各点も緯度、経度及び高度にて表現されている。
【0024】
再び図1を参照する。フライトコントローラ3は、例えばマイクロコントローラにより構成されるフライトコントローラである。フライトコントローラ3として、例えば市販のフライトコントローラを採用することができる。フライトコントローラ3は、コンパニオンコンピュータ2と同様に、バスB3を介して互いに接続された、プロセッサ301と、メモリ302と、インタフェース303と、二次記憶装置304と、を備える。また、二次記憶装置304は、フライトコントローラ3の動作プログラムとして、ドライバプログラムP31と飛行プログラムP32とを備える。
【0025】
プロセッサ301は、例えばCPUである。プロセッサ301が、二次記憶装置304に記憶されたドライバプログラムP31及び飛行プログラムP32をメモリ302に読み込んで実行することにより、後述する各機能部の機能が実現される。
【0026】
メモリ302は、例えば、RAMにより構成される主記憶装置である。メモリ302は、プロセッサ301が二次記憶装置304から読み込んだ動作プログラムを記憶する。また、メモリ302は、プロセッサ301がドライバプログラムP31及び飛行プログラムP32を実行する際のワークメモリとして機能する。
【0027】
インタフェース303は、例えばGPIO、シリアルポート、USBポート、ネットワークインタフェースなどのI/Oインタフェースである。インタフェース303にコンパニオンコンピュータ2、電子コンパスモジュール5、衛星測位モジュール6及び駆動部7が接続されることにより、フライトコントローラ3はコンパニオンコンピュータ2、電子コンパスモジュール5、衛星測位モジュール6及び駆動部7に通信可能に接続される。
【0028】
二次記憶装置304は、例えばフラッシュメモリである。前述のとおり、二次記憶装置304は、プロセッサ301が実行する動作プログラムとしてドライバプログラムP31及び飛行プログラムP32を記憶する。ドローン1の製造者は、ドライバプログラムP31を作成して二次記憶装置204に保存することができる。つまり、ドローン1の製造者は、自身がドライバプログラムP31を作成して保存することにより、後述する各機能部のうち一部の機能部の機能を実現できる。詳細は後述するが、コンパニオンコンピュータ2の各機能と、ドローン1の製造者が作成したドライバプログラムP31とにより、測位衛星からの電波を受信できない環境下、地磁気を正常に検出できない環境下においてドローン1の自律飛行を実現できる。
【0029】
測域センサ4は、ドローン1の周囲の障害物を検出し、検出した障害物の相対位置(ドローン1の現在位置を基準とした距離及び方向)を示す情報をコンパニオンコンピュータ2に出力する。測域センサ4は、例えば水平方向の周囲360度にある障害物を検知可能なLiDAR(Light Detection and RangingもしくはLaser Imaging Detection and Ranging)である。測域センサ4は、本開示に係る測域センサの一例である。
【0030】
電子コンパスモジュール5は、電子コンパスモジュール5自身を通過する磁気を検出し、検出した磁気を示す第1の磁束密度を求め、求めた第1の磁束密度をフライトコントローラ3に出力する。電子コンパスモジュール5は、例えばホール素子を備え、当該ホール素子により磁気を検出する電子コンパスモジュールである。電子コンパスモジュール5は、本開示に係る電子コンパスモジュールの一例である。
【0031】
衛星測位モジュール6は、測位衛星からの電波信号を受信し、受信した電波信号に基づいてドローン1の地球上における位置を緯度・経度・高度にて表した第1の測位情報を求め、求めた第1の測位情報をフライトコントローラ3に出力する。ただし、衛星測位モジュール6は、測位衛星からの電波信号を正常に受信できない場合は、測位できなかった旨の情報を第1の測位情報としてフライトコントローラ3に出力する。衛星測位モジュール6は、例えばGPS衛星からの電波信号を受信して測位するGPS受信器である。衛星測位モジュール6は、本開示に係る衛星測位モジュールの一例である。
【0032】
駆動部7は、フライトコントローラ3による制御に基づいて揚力を発生させ、ドローン1を飛行させる。駆動部7は、例えばESC(Electric Speed Controller)とモータとプロペラとを備える。例えば、ドローン1が4つのプロペラを備えるマルチコプターであるとき、駆動部7はESCとモータとプロペラとの組を4組備える。
【0033】
次に、図3を参照しながら、コンパニオンコンピュータ2のプロセッサ201が動作プログラムを実行したときにおける、コンパニオンコンピュータ2の機能的構成を説明する。コンパニオンコンピュータ2は、機能的構成として、地図作成部21と推定部22と機首方向出力部23と擬似測位部24と飛行指令部25とを備える。
【0034】
地図作成部21は、測域センサ4が検出した障害物の相対位置に基づいて環境地図を作成する。地図作成部21は、後述の推定部22とともに、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を行う。地図作成部21は、例えば、初めに環境地図を作成する際には、任意の方向を暫定的に「北」と定めて環境地図を作成する。地図作成部21は、作成した環境地図と、飛行計画データが示す地図とを対比して、暫定的に「北」と定めた方向を適宜修正する。地図作成部21は、本開示に係る地図作成手段の一例である。
【0035】
推定部22は、地図作成部21が作成した環境地図に基づいて、環境地図上におけるドローン1の位置及び機首方向を推定する。環境地図上におけるドローン1の位置は、例えば飛行開始時におけるドローン1の位置を原点としたときの相対座標にて表現される。環境地図上における機首方向は、例えば環境地図上における位置の変化に基づいて推定される。推定部22は、前述の地図作成部21とともにSLAMを行う。推定部22は、本開示に係る推定手段の一例である。
【0036】
機首方向出力部23は、推定部22が推定した環境地図上における機首方向を示す機首方向情報を、フライトコントローラ3に出力する。機首方向情報は、後述するフライトコントローラ3の擬似コンパス部31により処理されるため、図3では機首方向出力部23から擬似コンパス部31に出力されるように図示している。
【0037】
擬似測位部24は、推定部22が推定した環境地図上におけるドローン1の位置を擬似的な緯度と経度と高度とにより表した第2の測位情報を求め、求めた第2の測位情報をフライトコントローラ3に出力する。フライトコントローラ3は、緯度、経度及び高度にて表された測位情報に基づいてドローン1の飛行制御を行うので、擬似測位部24はそれに合わせて、擬似的な測位情報として第2の測位情報を出力する。つまり、擬似測位部24は、擬似的な衛星測位モジュールとして機能する。第2の測位情報は、後述するフライトコントローラ3の出力部33により処理されるため、図3では擬似測位部24から出力部33に出力されるように図示している。擬似測位部24は、本開示に係る擬似測位手段の一例である。
【0038】
上述したように、二次記憶装置204に保存された飛行計画データにおいては、始点、経由点及び終点の各点が緯度、経度及び高度にて表されている。また、上述したように、環境地図上においては、例えば飛行開始時におけるドローン1の位置が原点となっている。したがって、飛行計画データにおける始点の緯度及び経度と、環境地図上における原点とが対応する。そのため、擬似測位部24は、環境地図上におけるドローン1の位置を、緯度及び経度にて擬似的に表すことができる。ただし、擬似的に表した緯度及び経度は、現実の緯度及び経度と多少のズレが生じていてもよい。後述する飛行指令部25が、当該ズレも考慮してフライトコントローラ3に飛行指令をするからである。なお、高度については、擬似測位部24は、例えば飛行計画データにおける各点の高度により表してもよいし、図示しない気圧センサが検出した気圧に基づいて高度を求めてもよい。
【0039】
飛行指令部25は、推定部22が推定した環境地図上におけるドローン1の位置と、飛行計画データが示す飛行ルートとに基づいてドローン1が飛行移動すべき位置を決定し、決定した位置への飛行をフライトコントローラ3に指令する。飛行指令部25によるフライトコントローラ3への指令は、後述するフライトコントローラ3の飛行制御部34により処理されるため、図3では飛行指令部25から飛行制御部34に出力されるように図示している。
【0040】
次に、図4を参照しながら、フライトコントローラ3のプロセッサ301がドライバプログラムP31及び飛行プログラムP32を実行したときにおける、フライトコントローラ3の機能的構成を説明する。フライトコントローラ3は、機能的構成として、擬似コンパス部31と異常判定部32と出力部33と飛行制御部34とを備える。これらの機能部のうち、擬似コンパス部31、異常判定部32及び出力部33の機能は、プロセッサ301がドライバプログラムP31を実行することにより実現され、飛行制御部34の機能は、プロセッサ301が飛行プログラムP32を実行することにより実現される。
【0041】
擬似コンパス部31は、コンパニオンコンピュータ2の機首方向出力部23が出力した、環境地図上におけるドローン1の機首方向を示す機首方向情報に基づいて擬似的な磁束密度である第2の磁束密度を求める。具体的には、擬似コンパス部31は、現実において機首方向情報が示す方向にドローン1の機首が向いていると仮定したときの、ドローン1を通過する磁気を示す磁束密度を第2の磁束密度として求める。例えば、機首方向情報が示す方向が「北」であるとき、ドローン1の機首が現実に「北」を向いているときに電子コンパスモジュール5が検出することが想定される磁気の磁束密度を、第2の磁束密度として求める。つまり、擬似コンパス部31は、環境地図上における機首方向に基づいて磁気を検出する擬似的な電子コンパスモジュールとして機能する。擬似コンパス部31は、本開示に係る擬似コンパス手段の一例である。
【0042】
異常判定部32は、電子コンパスモジュール5が出力する第1の磁束密度と、衛星測位モジュール6が出力する第1の測位情報と、の少なくとも1つに異常があるか否かを判定する。異常判定部32は、例えば、第1の磁束密度の向きが常時大きく変動するとき、第1の磁束密度の大きさが地磁気によるものよりも遙かに大きいときなどの場合に、第1の磁束密度に異常があると判定する。異常判定部32は、例えば、第1の測位情報が示す緯度、経度及び高度が、飛行計画データが示す飛行ルートから大きくずれているとき、第1の測位情報が上述した測位できなかった旨を示す情報であるときなどの場合に、第1の測位情報に異常があると判定する。つまり、第1の磁束密度が、電子コンパスモジュール5が正常に地磁気を検出できなかったときのものであるとき、異常判定部32は、第1の磁束密度に異常があると判定し、第1の測位情報が、衛星測位モジュール6が測位衛星からの電波を正常に受信できなかったときのものであるとき、異常判定部32は、第1の測位情報に異常があると判定する。異常判定部32は、本開示に係る異常判定手段の一例である。
【0043】
出力部33は、異常判定部32が第1の磁束密度と第1の測位情報とのいずれにも異常がないと判定したとき、第1の磁束密度と第2の測位情報とを飛行制御部34に出力する。出力部33は、異常判定部32が第1の磁束密度と第1の測位情報とのうち少なくとも1つに異常があると判定したとき、第2の磁束密度と第2の測位情報とを飛行制御部34に出力する。つまり、出力部33は、電子コンパスモジュール5及び衛星測位モジュール6が共に正常に機能しているとき、現実の磁束密度及び測位情報である第1の磁束密度及び第1の測位情報を飛行制御部34に出力し、電子コンパスモジュール5及び衛星測位モジュール6の少なくとも1つが正常に機能していないとき、擬似的な磁束密度及び測位情報である第2の磁束密度及び第2の測位情報を飛行制御部34に出力する。出力部33は、本開示に係る出力手段の一例である。
【0044】
上述のとおり、擬似コンパス部31、異常判定部32及び出力部33の機能は、フライトコントローラ3のプロセッサ301がドライバプログラムP31を実行することにより実現される。プロセッサ301がドライバプログラムP31を実行することにより、最終的には出力部33の機能によって第1の磁束密度又は第2の磁束密度と、第1の測位情報又は第2の測位情報とが飛行制御部34に出力される。そのため、飛行制御部34からは、あたかも1つの仮想的な電子コンパスモジュール及び1つの仮想的な衛星測位モジュールから、磁束密度及び測位情報が出力されているように見える。
【0045】
飛行制御部34は、出力部33から出力された、第1の磁束密度又は第2の磁束密度と、第1の測位情報又は第2の測位情報と、コンパニオンコンピュータ2の飛行指令部25からの飛行指令とに基づいて駆動部7を制御して、ドローン1の飛行を制御する。飛行制御部34自身は、第1の磁束密度と第2の磁束密度とを区別することも、第1の測位情報と第2の測位情報とを区別することもなく、単に出力部33から出力された磁束密度及び測位情報に基づいて駆動部7を制御する。飛行制御部34は、本開示に係る飛行制御手段の一例である。
【0046】
上述のとおり、飛行制御部34の機能は、フライトコントローラ3のプロセッサ301が飛行プログラムP32を実行することにより実現される。飛行プログラムP32は、例えばフライトコントローラ3の製造者により作成されたプログラムである。飛行プログラムP32は、地磁気と地球上における位置とが正常に検出されることを前提として作成されているので、飛行制御の際に何らかのドライバプログラムから磁束密度及び測位情報が出力されることを必須としている。したがって、飛行プログラムP32(により機能する飛行制御部34)は、第1の磁束密度と第2の磁束密度とを区別することも、第1の測位情報と第2の測位情報とを区別することもない。
【0047】
したがって、ドローン1のユーザは、フライトコントローラ3として市販のフライトコントローラを採用する場合において、フライトコントローラ3のハードウェア構成を変更することも、飛行プログラムP32を変更することもなく、ドライバプログラムP31を作成することにより、フライトコントローラ3の各機能を実現できる。
【0048】
次に、図5を参照しながら、ドローン1による飛行制御の動作の一例を説明する。図5に示す動作の開始時においては、すでに飛行計画データが二次記憶装置204に保存されており、かつ飛行が開始されているものとする。
【0049】
ドローン1の電子コンパスモジュール5は、磁気を検出して第1の磁束密度を求めてフライトコントローラ3に出力する(ステップS1)。
【0050】
ドローン1の衛星測位モジュール6は、測位衛星が発する電波信号を受信し、受信した電波信号に基づいて、ドローン1の地球上における位置を緯度、経度及び高度により表した第1の測位情報を求めてフライトコントローラ3に出力する(ステップS2)。
【0051】
ドローン1の測域センサ4は、ドローン1の周囲の障害物を検出し、検出した障害物の相対位置を示す情報をコンパニオンコンピュータ2に出力する(ステップS3)。
【0052】
ドローン1のコンパニオンコンピュータ2の地図作成部21は、ステップS3にて検出した障害物の相対位置に基づいて環境地図を作成する(ステップS4)。
【0053】
コンパニオンコンピュータ2の推定部22は、ステップS4にて作成した環境地図上におけるドローン1の機首方向と位置とを推定する(ステップS5)。
【0054】
コンパニオンコンピュータ2の機首方向出力部23は、ステップS5にて推定された機首方向を示す機首方向情報をフライトコントローラ3に出力する(ステップS6)。
【0055】
コンパニオンコンピュータ2の擬似測位部24は、ステップS5にて推定された位置を擬似的な緯度、経度及び高度によりに表した第2の測位情報を求めてフライトコントローラ3に出力する(ステップS7)。
【0056】
コンパニオンコンピュータ2の飛行指令部25は、ステップS5にて推定された環境地図上におけるドローン1の位置と、飛行計画データが示す飛行ルートとに基づいてドローン1が飛行移動すべき位置を決定し、決定した位置への飛行をフライトコントローラ3に指令する(ステップS8)。
【0057】
ドローン1のフライトコントローラ3は、図6に示す動作を実行してドローン1の飛行制御を行う(ステップS9)。そしてドローン1は、ステップS1からの動作を繰り返す。以下、図6に示す動作を説明する。
【0058】
フライトコントローラ3の擬似コンパス部31は、図5のステップS6にて出力された機首方向情報に基づいて、擬似的な磁束密度である第2の磁束密度を求める(ステップS91)。
【0059】
フライトコントローラ3の異常判定部32は、図5のステップS1にて出力された第1の磁束密度と、ステップS2にて出力された第1の測位情報との少なくとも1つに異常があるか否かを判定する(ステップS92)。
【0060】
第1の磁束密度と第1の測位情報との少なくとも1つに異常があると判定されたとき(ステップS92:Yes)、フライトコントローラ3の出力部33は、ステップS91にて求められた第2の磁束密度と、図5のステップS7にて出力された第2の測位情報とを、飛行制御部34に出力する(ステップS93)。そしてステップS95からの動作を実行する。
【0061】
第1の磁束密度と第1の測位情報とのいずれも異常がないと判定されたとき(ステップS92:No)、出力部33は、第1の磁束密度と第1の測位情報とを飛行制御部34に出力する(ステップS94)。そしてステップS95からの動作を実行する。
【0062】
フライトコントローラ3の飛行制御部34は、ステップS93又はステップS94にて出力部33から出力された磁束密度及び測位情報と、図5のステップS8での飛行指令部25からの飛行指令とに基づいて駆動部7を制御する(ステップS95)。飛行制御部34が駆動部7を制御することにより、飛行指令部25による飛行指令に従ってドローン1は飛行移動する。そしてドローン1は、図5のステップS1からの動作を繰り返す。
【0063】
以上、実施の形態に係るドローン1を説明した。ドローン1よれば、測位衛星からの電波を正常に受信できない環境下、地磁気を正常に検出できない環境下においては、擬似的な磁束密度である第2の磁束密度と、擬似的な測位情報である第2の測位情報とに基づいてドローン1の飛行制御が行われる。したがって、ドローン1よれば、測位衛星からの電波を正常に受信できない環境下、地磁気を正常に検出できない環境下において自律飛行が可能となる。
【0064】
また、フライトコントローラ3として市販のフライトコントローラを採用する場合、ドローン1のユーザは、フライトコントローラ3のハードウェア構成及び飛行プログラムP32を変更することなく、ドライバプログラムP31を作成することにより、ドローン1を構成することができる。また、コンパニオンコンピュータ2の各機能についても、一般的なマイクロコントローラが動作プログラムを実行することにより実現される。したがって、ドローン1によれば、測位衛星からの電波を正常に受信できない環境下、地磁気を正常に検出できない環境下における自律飛行を低コストに実現できる。
【0065】
(変形例1)
実施の形態では、フライトコントローラ3が擬似コンパス部31を備えるものとしたが、コンパニオンコンピュータ2が擬似コンパス部31と同様の機能部を備え、フライトコントローラ3は擬似コンパス部31を備えないものであってもよい。
【0066】
例えば、図7に示すように、コンパニオンコンピュータ2が擬似コンパス部29を備え、フライトコントローラ3は擬似コンパス部31を備えないものであってもよい。擬似コンパス部29は、推定部22が推定した環境地図上における機首方向に基づいて、実施の形態の擬似コンパス部31と同様にして第2の磁束密度を求め、求めた第2の磁束密度をフライトコントローラ3に出力する。第2の磁束密度は、出力部33により処理されるため、図7では擬似コンパス部29から出力部33に出力されるように図示している。
【0067】
(変形例2)
ドローン1のフライトコントローラ3は、飛行時には常に駆動部7を制御している。そのため、ドローン1の位置は短期間に上下左右への若干の変化を繰り返すものとなる(例えば、1秒間に30回、100回など)。したがって、推定部22により推定される機首方向も、短期間に変化を繰り返すものとなる。
【0068】
短期間に変化を繰り返す機首方向に基づいて第2の磁束密度を求め、第2の磁束密度に基づいて飛行制御を行うこととなると、ドローン1の位置の変化がさらに激しくなることが想定される。したがって、擬似コンパス部31は、予め定められた期間内(例えば100ミリ秒)における機首方向の平均に基づいて、平滑化された擬似的な磁束密度を第2の磁束密度として求めてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 ドローン、2 コンパニオンコンピュータ、3 フライトコントローラ、4 測域センサ、5 電子コンパスモジュール、6 衛星測位モジュール、7 駆動部、21 地図作成部、22 推定部、23 機首方向出力部、24 擬似測位部、25 飛行指令部、29 擬似コンパス部、31 擬似コンパス部、32 異常判定部、33 出力部、34 飛行制御部、201 プロセッサ、202 メモリ、203 インタフェース、204 二次記憶装置、301 プロセッサ、302 メモリ、303 インタフェース、304 二次記憶装置、B2,B3 バス、P31 ドライバプログラム、P32 飛行プログラム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7